JP2018104860A - 消臭効果を有する水分散シート - Google Patents
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Abstract
Description
このような水分散シートとしては、アルカリ化した繊維状カルボキシアルキルセルロースと製紙用水分散性繊維から成る水分散紙(特許文献1、2等)や、このようなアルカリ化した繊維状カルボキシアルキルセルロースを使用しない水分散紙(特許文献3等)が知られている。また、変性ポリビニルアルコールを含む水分散紙に有機塩や無機塩を添加して水分散性や湿潤強度などを高めたシートが知られている(特許文献4)。
一方、消臭剤として安全性の観点から食品添加用の有機酸を利用することが知られている(特許文献2、5等)
そのため、本発明は、アンモニア臭等の悪臭に対する消臭効果を有するとともに、使用後に水洗トイレ等で容易に処理することのできる水分散性を有する水分散シートを提供することを目的とする。
そのため、本発明においては、消臭剤として食品添加用の有機酸を用いるとともに、低叩解の製紙用水分散性繊維を用いることにより、目標とする水分散性能と消臭性能をバランスよく達成することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、カナダ標準ろ水度が600mlCSF以上の水分散性繊維から成る基紙に、有機酸を添加してなる水分散シートである。
即ち、本発明は、この水分散シートの基紙に更に変性ポリビニルアルコールを添加してなる水分散シートである。
更に、本発明は、上記水分散シートを簡易トイレの排泄物受け器に投入して使用することから成る水分散シートの使用方法である。
更に、本発明は、カナダ標準ろ水度が600mlCSF以上の水分散性繊維から成る基紙に、水及び/又はアルコールに有機酸及び変性ポリビニルアルコールを溶解させた溶液を含浸し、乾燥させることから成る上記水分散シートの製造方法である。
この水分散性繊維としては、一般に製紙用に用いられている木材パルプ繊維又は非木材系パルプ繊維、例えば、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、溶解パルプ、マーセル化パルプ等の木材パルプ繊維、亜麻パルプ、マニラ麻パルプ、ケナフパルプ等の非木材系パルプ繊維、リヨセル等の精製セルロース繊維等を利用できる。水分散性繊維の平均繊維長は、通常0.1〜5mm、好ましくは0.5〜3mm、さらに好ましくは0.8〜2mmである。
この水分散性繊維のカナダ標準ろ水度は、600mlCSF以上、好ましくは600〜780mlCSF、より好ましくは630〜720mlCSFである。このカナダ標準ろ水度は、JIS P8121−2 2012に従って測定されたものである。
叩解が進む(ろ水度は低くなる)と、繊維のフィブリル化、切断、内部膨潤が多くなり、基紙の密度、強度、平滑度が高くなる一方で、水分散性は下がる。
本発明の基紙の坪量は、通常10〜200g/m2、好ましくは30〜100g/m2である。坪量が10g/m2未満の場合には水分散シートの厚さが薄すぎるため、必要量の有機酸の担持が難しくなると共に使用者にとっての使い勝手が悪い。また、200m2を超える場合には充分な水分散性が得られない。
本発明の水分散シートの基紙として、精製パルプと無精製パルプを配合することが好ましく、一方のみでは十分な品質を確保できないことがある。また、天然パルプ繊維の形態を保持した状態のパルプ繊維の形態が本発明では使用形態として望ましい。
本発明に用いる精製パルプは、パルプ製造時の蒸解条件の強化、蒸解前又は蒸解後の化学処理によってヘミセルロース等を除去し、セルロース純度を高めたパルプであって、αセルロース含有率を88重量%以上に精製したパルプをいう。
本発明に用いられる精製パルプに含まれるヘミセルロースは12重量%未満である。
本願発明の精製パルプには、レーヨン等の再生セルロース繊維、繊維状カルボキシルメチルセルロース、繊維状カルボキシルメチルセルロースNa塩などは含まれない。
マーセル化パルプとは、クラフトパルプや亜硫酸塩パルプを強アルカリ溶液に浸漬処理した後、水洗してアルカリ分を除去して得られるパルプである。
溶解パルプは、亜硫酸塩蒸解や前加水分解クラフト蒸解で得られるセルロース純度の高いパルプで、蒸解後の漂白、精選処理を組み合わせることでさまざまなセルロース純度のパルプが得られる。
本発明における精製パルプのセルロース純度の別種の指標としてヘミセルロース含有率を用いることができる。精製パルプのヘミセルロース含有量は、通常12重量%未満、好ましくは8重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満である。ヘミセルロース含有量は、精製パルプ又は無精製パルプを酸加水分解して単糖に変え、単糖類の組成をアルジトールアセテート化法によって定量することにより測定できる。即ち、パルプの加水分解により得られる単糖類を水素化ホウ素ナトリウムで還元し相当するアルジトールアセテートに変え、無水酢酸とピリジンでアセチル化し、アルジトールアセテート誘導体とした後、アルジトールアセテート誘導体をガスクロマトグラフィーにより分析して構成糖を同定、定量することができる。
基紙は、単層のシートとして抄紙するほか、同じ紙料から2基以上の抄網をもつ抄紙機で複数の湿紙を製造し抄き合わせることにより、坪量の大きいシートの製造も可能であり、異種の紙料のシートとの抄合わせ紙を製造することも可能である。
これらの有機酸は、アンモニアを中和することにより、アンモニア臭の消臭効果を有すると考えられる。
本発明の水分散シートに含まれる有機酸の量は、水分散性繊維に対して、固形分で、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは12[エステー2]〜60重量%である。この量が多すぎると、水分散シートから有機酸が脱落し易くなり、少なすぎると消臭効果が少ない。
本発明で用いる変性ポリビニルアルコールとしては、スルホン酸変性ポリビニルアルコールやカルボン酸変性ポリビニルアルコールが挙げられるが、繊維シートの水解性や有機酸や香料粉末等の粉体添加物の脱落の防止の観点から、スルホン酸変性ポリビニルアルコールが好ましい。
スルホン酸基を有する単量体としては、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそれらの塩等があげられる。スルホン[Wユ3]酸基を有する化合物としては、P−スルホン酸ベンズアルデヒド及びそれら塩等のスルホン酸基を有するアルデヒド誘導体があげられ、従来公知のアセタール化反応による導入が可能である。これらの化合物が有するスルホン酸基のpKa値は通常3以下で、前記有機酸のpKa値より低いため、該スルホン酸基は前記有機酸によって解離が妨げられることがなく、水溶性は損なわれない。
本発明の水分散シートに含まれる成分として、上記変性ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子は、有機酸の共存下で、水溶性繊維の水への溶解性が低下して難[Wユ4]溶化するため好ましくない。例えば、カルボキシメチルセルロース塩やアルギン酸塩は有機酸によりカルボキシメチルセルロースやアルギン酸に変化して水不溶性となる。また、部分ケン化型の冷水可溶性ポリビニルアルコール[Wユ5]は有機酸により水溶性が低下し、長時間の接触や加温によりケン化度が高まり冷水に難[Wユ6]溶となる。
この変性ポリビニルアルコールのケン化度は、特に制限はないが、好ましくは80〜99mol%、より好ましくは86〜99mol%である。
また、この変性ポリビニルアルコールの粘度平均重合度は低いものが用いられ、好ましくは100〜1000程度、より好ましくは200〜500程度、更に好ましくは250〜400程度である。
本発明の水分散シートに含まれる変性ポリビニルアルコールの量は、水分散性繊維に対して、固形分で、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.5[エステー7]〜10重量%である。この量が多すぎると、水分散シートが固くて割れ易くなり、少なすぎると有機酸や粉体添加物の脱落が発生し易くなる。
また、上記変性ポリビニルアルコールが可溶で、かつ有機酸が不溶な有機溶剤を用いて、変性ポリビニルアルコールを溶解後に有機酸粉砕物を分散した塗工液を調製して基紙に塗工してもよい。
塗工機としては、サイズプレス、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、トランスファーロールコーター等が使用される。
なお、以下の実施例と比較例において、クエン酸などの薬剤の付着量は、これらの薬剤又はその溶液を含浸又は塗工して乾燥した加工紙を115℃の乾燥機中で10分間加熱後に測定した重量から算出した。
カナダ標準ろ水度664mlCSFに叩解した針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP、αセルロース含有率 85.6%、無精製パルプ)40重量%とカナダろ水度740mlCSFに叩解した針葉樹マーセル化パルプ(αセルロース含有率 97.5%、450mlCSFにおける保水度138%、精製パルプ)60重量%とを配合した抄紙用原料を円網式抄紙機で抄造し、坪量52.1g/m2の水分散紙を得た。
含浸加工用の薬液として、水40.6重量部とエチルアルコール40.6重量部にクエン酸(無水塩、粉末、純度99.5%以上、磐田化学(株)製)11.0重量部とスルホン酸変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、商品名 ゴーセネックス L−3266、固形分93%以上、以下「スルホン酸変性PVA」という。)7.7重量部を溶解し、溶液(固形分濃度18.7重量%)を調製した。
卓上型含浸加工機を用い、この溶液に上記水分散紙を浸漬して過剰液を絞り、105℃で熱風乾燥して水分散シートを得た。
含浸加工用の薬液として、水81.5重量部にクエン酸15.2重量部とスルホン酸変性PVA3.3重量部を溶解して調整した水溶液(固形分濃度18.5重量%)を用いたほかは実施例1と同様にして水分散シートを得た。
実施例3
含浸加工用の薬液として、水72.6重量部にクエン酸22.6重量部とスルホン酸変性PVA4.8重量部を溶解して調整した水溶液(固形分濃度27.0重量%)を用いたほかは実施例1と同様にして水分散シートを得た。
実施例4
含浸加工用の薬液として、水52.4重量部にクエン酸43.0重量部とスルホン酸変性PVA4.6重量部を溶解して調整した水溶液(固形分濃度47.6重量%)を用いたほかは実施例1と同様にして水分散シートを得た。
実施例1で得た水分散紙に、卓上型含浸加工機を用いて、固形分濃度1重量%のスルホン酸変性PVA水溶液を含浸、乾燥し、次いで、水:エチルアルコール=70重量部:30重量部からなる混合液70重量部にクエン酸30重量部を溶解したクエン酸濃度30重量%の溶液を含浸、乾燥して、水分散シートを得た。
実施例6
含浸加工用の薬液として、水:エチルアルコール=70重量部:30重量部からなる混合液80重量部にクエン酸20重量部を溶解して調整した溶液(クエン酸濃度20重量%)を用いたほかは実施例1と同様にして水分散シートを得た。
実施例1で得た水分散紙に、含浸加工用の薬液を含浸せずに、水分散シートとした。
比較例2
含浸加工用の薬液として、固形分濃度5重量%のスルホン酸変性PVA水溶液を用いたほかは実施例1と同様にして水分散シートを得た。
1)水分散性能
脱イオン水300mlを入れた300mlビーカーに、スターラーで650rpmに攪拌しながら、3cm角の試験片を投入した。試験片が2つ以上に千切れる時間をフロック状水分散時間とし、試[Wユ8]験片が繊維一本一本にほぐれる時間を繊維状水分散時間とした。それぞれの時間は、ストップウオッチで測定し、5回の測定の平均値とし、下記のように評価した。
○:フロック状水分散時間が20秒以内でかつ繊維状水分散時間が100秒以内で、水分散性は良好であると評価される。
△:フロック状水分散時間が20秒を越えるか、又は繊維状水分散時間が100秒を越えるもの(但し、フロック状水分散時間が100秒を越えるか、又は繊維状水分散時間が300秒を越えるものを除く)で、水分散性ありと評価される。
×:フロック状水分散時間が100秒を越えるか、又は繊維状水分散時間が300秒を越えるもので、水分散困難と評価される。
10ppmアンモニア水溶液750mlを入れた1800mlの上面開口容器に、4cm×8cm角の試験片を投入し、蓋をして密封状態にして静置した。15分後に、上記容器の上部空間にて検知管を用いて気相中のアンモニア濃度を測定し、残存臭気を確認し、下記のように評価した。
◎:アンモニア濃度が1ppm以下のもので、消臭作用が非常に良好と評価される。
○:アンモニア濃度が1ppmを超えて3ppm以下のもので、消臭作用が良好と評価される。
×:アンモニア濃度が3ppmを超えるもので、消臭作用が認められないと評価される。
これらの有機酸は、アンモニアを中和することにより、アンモニア臭の消臭効果を有すると考えられる。
本発明の水分散シートに含まれる有機酸の量は、水分散性繊維に対して、固形分で、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは12〜60重量%である。この量が多すぎると、水分散シートから有機酸が脱落し易くなり、少なすぎると消臭効果が少ない。
本発明で用いる変性ポリビニルアルコールとしては、スルホン酸変性ポリビニルアルコールやカルボン酸変性ポリビニルアルコールが挙げられるが、繊維シートの水解性や有機酸や香料粉末等の粉体添加物の脱落の防止の観点から、スルホン酸変性ポリビニルアルコールが好ましい。
スルホン酸基を有する単量体としては、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそれらの塩等があげられる。スルホン酸基を有する化合物としては、P−スルホン酸ベンズアルデヒド及びそれら塩等のスルホン酸基を有するアルデヒド誘導体が挙げられ、従来公知のアセタール化反応による導入が可能である。これらの化合物が有するスルホン酸基のpKa値は通常3以下で、前記有機酸のpKa値より低いため、該スルホン酸基は前記有機酸によって解離が妨げられることがなく、水溶性は損なわれない。
本発明の水分散シートに含まれる成分として、上記変性ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子は、有機酸の共存下で、水溶性繊維の水への溶解性が低下して難溶化するため好ましくない。例えば、カルボキシメチルセルロース塩やアルギン酸塩は有機酸によりカルボキシメチルセルロースやアルギン酸に変化して水不溶性となる。また、部分ケン化型の冷水可溶性ポリビニルアルコールは有機酸により水溶性が低下し、長時間の接触や加温によりケン化度が高まり冷水に難溶となる。
この変性ポリビニルアルコールのケン化度は、特に制限はないが、好ましくは80〜99mol%、より好ましくは86〜99mol%である。
また、この変性ポリビニルアルコールの粘度平均重合度は低いものが用いられ、好ましくは100〜1000程度、より好ましくは200〜500程度、更に好ましくは250〜400程度である。
本発明の水分散シートに含まれる変性ポリビニルアルコールの量は、水分散性繊維に対して、固形分で、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。この量が多すぎると、水分散シートが固くて割れ易くなり、少なすぎると有機酸や粉体添加物の脱落が発生し易くなる。
1)水分散性能
脱イオン水300mlを入れた300mlビーカーに、スターラーで650rpmに攪拌しながら、3cm角の試験片を投入した。試験片が2つ以上に千切れる時間をフロック状水分散時間とし、試験片が繊維一本一本にほぐれる時間を繊維状水分散時間とした。それぞれの時間は、ストップウオッチで測定し、5回の測定の平均値とし、下記のように評価した。
○:フロック状水分散時間が20秒以内でかつ繊維状水分散時間が100秒以内で、水分散性は良好であると評価される。
△:フロック状水分散時間が20秒を越えるか、又は繊維状水分散時間が100秒を越えるもの(但し、フロック状水分散時間が100秒を越えるか、又は繊維状水分散時間が300秒を越えるものを除く)で、水分散性ありと評価される。
×:フロック状水分散時間が100秒を越えるか、又は繊維状水分散時間が300秒を越えるもので、水分散困難と評価される。
Claims (10)
- カナダ標準ろ水度が600mlCSF以上の水分散性繊維から成る基紙に、有機酸[エステー9]を添加してなる水分散シート。
- 前記基紙に更に変性ポリビニルアルコールが添加された請求項1に記載の水分散シート。
- 前記変性ポリビニルアルコールがスルホン酸変性ポリビニルアルコールである請求項2に記載の水分散シート。
- 前記有機酸がクエン酸である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水分散シート。
- 前記水分散性繊維が木材パルプ及び/又は非木材パルプからなり、全パルプの15〜95重量%がαセルロース含有率88重量%以上の精製パルプであり、残部がαセルロース含有率88重量%未満の無精製パルプである請求項1〜4のいずれか一項に記載の水分散シート。
- 前記精製パルプの450mlCSFにおける保水度が140%以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の水分散シート。
- 前記水分散シートのフロック状水分散時間が100秒以内である請求項1〜6のいずれか一項に記載の水分散シート。
- 前記基紙に更に香料が添加された請求項1〜7のいずれか一項に記載の水分散シート。
- [エステー10] 請求項1〜8のいずれか一項に記載の水分散シートを簡易トイレの排泄物受け器に投入して使用することから成る水分散シートの使用方法。
- カナダ標準ろ水度が600mlCSF以上の水分散性繊維から成る基紙に、水及び/又はアルコールに有機酸及び変性ポリビニルアルコールを溶解させた溶液を含浸し、乾燥させることから成る請求項2〜8のいずれか一項に記載の水分散シートの製造方法。
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