(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら第1実施形態に係る車両の運転支援装置(以下、「第1実施装置」と称呼する。)について説明する。第1実施装置は、図1に示した車両Vに適用される。第1実施装置は、運転支援ECU10、表示ECU20及び警報ECU30を備える。
ECUは、エレクトリックコントロールユニットの略称であり、ECU10、20及び30は、それぞれ、CPU、ROM、RAM及びインターフェース等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品として有する電子制御回路である。CPUは、メモリ(ROM)に格納されたインストラクション(ルーチン)を実行することにより、後述する各種機能を実現する。これらECUは、1つのECUに統合されてもよい。
運転支援ECU10、表示ECU20及び警報ECU30は、通信・センサ系CAN(Controller Area Network)90を介してデータ交換可能(通信可能)であるように互いに接続されている。
車両Vは、図示しないウィンカーレバーを備える。ウィンカーレバーは、ステアリングコラムに配設され、運転者によって操作される。運転者がウィンカーレバーを定常位置から一方の方向に操作すると、車両Vの左前端部及び左後端部にそれぞれ設けられた図示しない方向指示器(以下、「左方向指示器」と称呼する。)が不灯状態(非作動状態)から点滅状態(作動状態)へと変化する。運転者がウィンカーレバーを定常位置に戻すと、左方向指示器が点滅状態から不灯状態へと変化する。
一方、運転者がウィンカーレバーを定常位置から他方の方向に操作すると、車両Vの右前端部及び右後端部にそれぞれ設けられた図示しない方向指示器(以下、「右方向指示器」と称呼する。)が不灯状態(非作動状態)から点滅状態(作動状態)へと変化する。運転者がウィンカーレバーを定常位置に戻すと、右方向指示器が点滅状態から不灯状態へと変化する。
車両Vは、アクセルペダル操作量センサ11、ブレーキペダル操作量センサ12、左方向指示器センサ13L、右方向指示器センサ13R、操舵角センサ14、車速センサ15、左前方レーダーセンサ16L、右前方レーダーセンサ16R、ヨーレートセンサ17、前後加速度センサ18、及び、横加速度センサ19、を備える。これらセンサは、運転支援ECU10に接続されている。
アクセルペダル操作量センサ11は、アクセルペダル11aの操作量AP[%]を検出し、その操作量(以下、「アクセルペダル操作量」と称呼する。)APを表す信号(自車両情報の一例)を運転支援ECU10に出力する。運転支援ECU10は、アクセルペダル操作量センサ11から受信した信号に基づいてアクセルペダル操作量APを所定演算時間Tcalの経過毎に取得する。
ブレーキペダル操作量センサ12は、ブレーキペダル12aの操作量BP[%]を検出し、その操作量(以下、「ブレーキペダル操作量」と称呼する。)BPを表す信号(自車両情報の一例)を運転支援ECU10に出力する。運転支援ECU10は、ブレーキペダル操作量センサ12から受信した信号に基づいてブレーキペダル操作量BPを所定演算時間Tcalの経過毎に取得する。
左方向指示器センサ13Lは、左方向指示器が不灯状態から点滅状態へと変化すると、左方向指示器が点滅状態にあることを表す信号を運転支援ECU10に出力する。左方向指示器センサ13Lは、左方向指示器が点滅状態から不灯状態へと変化すると、左方向指示器が不灯状態にあることを表す信号を運転支援ECU10に出力する。以下、これら信号を「左折信号」とも称呼する。左折信号は、自車両情報の一例である。運転支援ECU10は、左方向指示器センサ13Lから受信した左折信号に基づいて左方向指示器の状態を所定演算時間Tcalの経過毎に取得する。
右方向指示器センサ13Rは、右方向指示器が不灯状態から点滅状態へと変化すると、右方向指示器が点滅状態にあることを表す信号を運転支援ECU10に出力する。右方向指示器センサ13Rは、右方向指示器が点滅状態から不灯状態へと変化すると、右方向指示器が不灯状態にあることを表す信号を運転支援ECU10に出力する。以下、これら信号を「右折信号」とも称呼する。右折信号は、自車両情報の一例である。運転支援ECU10は、右方向指示器センサ13Rから受信した右折信号に基づいて右方向指示器の状態を所定演算時間Tcalの経過毎に取得する。
操舵角センサ14は、車両Vを直進させるときのステアリングホイール14aの回転位置を基準位置としてその基準位置からのステアリングホイール14aの回転角度θsw[°]を検出し、その操舵角θswを表す信号(自車両情報の一例)を運転支援ECU10に出力する。運転支援ECU10は、操舵角センサ14から受信した信号に基づいて操舵角θswを所定演算時間Tcalの経過毎に取得する。この場合、取得される操舵角θswは、ステアリングホイール14aが車両Vを左折させる方向に回転されている場合、ゼロよりも大きい値であり、ステアリングホイール14aが車両Vを右折させる方向に回転されている場合、ゼロよりも小さい値である。
車速センサ15は、車両Vの速度SPD[km/h]を検出し、その速度(以下、「車速」と称呼する。)SPDを表す信号(自車両情報の一例)を運転支援ECU10に出力する。運転支援ECU10は、車速センサ15から受信した信号に基づいて車速SPDを所定演算時間Tcalの経過毎に取得する。
左前方レーダーセンサ16Lは、図2に示したように、車両Vの前端部の左端に設けられる。左前方レーダーセンサ16Lは、車両Vの左斜め前方に向かって電波を送信する。その電波(以下、「送信波」と称呼する。)の到達範囲に歩行者及び他車両等の物体が存在する場合、送信波は、その物体によって反射される。左前方レーダーセンサ16Lは、その反射された送信波(以下、「反射波」と称呼する。)を受信する。左前方レーダーセンサ16Lは、送信波を表す信号及び反射波を表す信号を運転支援ECU10に出力する。
運転支援ECU10は、左前方レーダーセンサ16Lから受信した信号に基づいて車両Vの周辺に存在する物体の有無を所定演算時間Tcalの経過毎に判定する。運転支援ECU10は、物体が存在すると判定した場合、車両Vから物体までの距離及び車両Vに対する物体の方位を算出し、当該距離及び方位から「車両Vに対する物体の位置、物体の移動方向及び物体の移動速度」を含む物体情報を取得する。
右前方レーダーセンサ16Rは、図2に示したように、車両Vの前端部の右端に設けられる。右前方レーダーセンサ16Rは、車両Vの右斜め前方に向かって電波を送信する。その電波(以下、「送信波」と称呼する。)の到達範囲に歩行者及び他車両等の物体が存在する場合、送信波は、その物体によって反射される。右前方レーダーセンサ16Rは、その反射された送信波(以下、「反射波」と称呼する。)を受信する。右前方レーダーセンサ16Rは、送信波を表す信号及び反射波を表す信号を運転支援ECU10に出力する。
運転支援ECU10は、右前方レーダーセンサ16Rから受信した信号に基づいて車両Vの周辺に存在する物体の有無を所定演算時間Tcalの経過毎に判定する。運転支援ECU10は、物体が存在すると判定した場合、車両Vから物体までの距離及び車両Vに対する物体の方位を算出し、当該距離及び方位から「車両Vに対する物体の位置、物体の移動方向及び物体の移動速度」を含む物体情報を取得する。
尚、左前方レーダーセンサ16L及び右前方レーダーセンサ16Rが同一物体により反射された信号を運転支援ECU10に出力する場合、運転支援ECU10は、それらの信号に基づいて当該同一物体についての物体情報を取得する。
再び図1を参照すると、ヨーレートセンサ17は、車両Vの角速度Y[°/sec]を検出し、その角速度Y(以下、「ヨーレートY」と称呼する。)を表す信号(自車両情報の一例)を運転支援ECU10に出力する。運転支援ECU10は、ヨーレートセンサ17から受信した信号に基づいてヨーレートYを所定演算時間Tcalの経過毎に取得する。この場合、取得されるヨーレートYは、車両Vが左方向に旋回している場合、ゼロよりも大きい値であり、車両Vが右方向に旋回している場合、ゼロよりも小さい値であり、車両Vが直進している場合、ゼロである。
前後加速度センサ18は、車両Vの前後方向における加速度Gx[m/s2]を検出し、その加速度(以下、「前後加速度」と称呼する。)Gxを表す信号(自車両情報の一例)を運転支援ECU10に出力する。運転支援ECU10は、前後加速度センサ18から受信した信号に基づいて前後加速度Gxを所定演算時間Tcalの経過毎に取得する。この場合、取得される前後加速度Gxは、車両Vが加速されている場合、ゼロよりも大きい値であり、車両Vが減速されている場合、ゼロよりも小さい値であり、車両Vが加速も減速もされていない場合、ゼロである。
横加速度センサ19は、車両Vの横方向における加速度Gy[m/s2]を検出し、その加速度(以下、「横加速度」と称呼する。)Gyを表す信号(自車両情報の一例)を運転支援ECU10に出力する。運転支援ECU10は、横加速度センサ19から受信した信号に基づいて横加速度Gyを所定演算時間Tcalの経過毎に取得する。この場合、取得される横加速度Gyは、車両Vが左方向に旋回している場合、ゼロよりも大きい値であり、車両Vが右方向に旋回している場合、ゼロよりも小さい値であり、車両Vが直進している場合、ゼロである。
自車両情報は、車両Vに搭載された上記各種のセンサにより取得される車両Vの運転状態を示す情報である。運転支援ECU10は、取得した自車両情報及び物体情報をそのRAMに格納する。
運転支援ECU10は、車両Vが走行すると予測される経路(以下、「車両Vの予測経路」と称呼する。)を物体が横切る可能性がある場合(後述)、車両Vの運転者の注意を喚起するための注意喚起を行うための要求信号を表示ECU20及び警報ECU30に送信する。
表示装置21は、車両Vの運転席から視認可能な位置(例えば、メータクラスタパネル内)に設けられたディスプレイ装置である。図1に示したように、表示装置21は、表示ECU20に接続されている。表示ECU20は、運転支援ECU10から上記要求信号を受信すると、表示装置21に指令信号を送信する。表示装置21は、表示ECU20から指令信号を受信すると、運転者の注意を喚起するための表示(注意喚起)を行う。表示装置21は、ヘッドアップディスプレイ及びセンターディスプレイ等であってもよい。
ブザー31は、警報ECU30に接続されている。警報ECU30は、運転支援ECU10から上記要求信号を受信すると、ブザー31に指令信号を送信する。ブザー31は、警報ECU30から指令信号を受信すると、運転者の注意を喚起するための警報(注意喚起)を発する。注意喚起は、表示装置21とブザー31との何れか一方を用いて行われてもよい。
<第1実施装置の作動の概要>
次に、第1実施装置の作動の概要について説明する。以下、車両Vが旋回場所で左折又は右折するときの第1実施装置の作動について説明する。尚、「旋回場所」とは、交差点、駐車場の入口が隣接している道路、施設の駐車場等である。以下、交差点を例に挙げて説明する。
運転者が車両Vを交差点で左折又は右折させようとした場合、運転者は、まず、車速SPDを落としつつ車両Vを交差点に進入させ、その後、ステアリングホイール14aを回転操作して車両Vを左折又は右折させ、最終的には、ステアリングホイール14aの回転位置を基準位置まで戻して車両Vの左折又は右折を終了する。
このとき、車両Vの予測経路を歩行者及び他車両等の物体が横切ることがある。第1実施装置は、車両Vが左折又は右折する場合、交差点内における車両Vの予測経路が円弧形状になると仮定して、当該予測経路を推定する。
更に、第1実施装置は、車両Vが交差点で旋回したトータルの角度(以下、「旋回角度θtotal」と称呼する。)を算出し、その旋回角度θtotalに基づいて車両Vの左折又は右折終了までに車両Vを旋回させるべき残りの角度(以下、「旋回残余角度」と称呼する。)を算出し、その旋回残余角度に基づいて予測経路の有効長さを算出する。最後に、第1実施装置は、その有効長さに対応する予測経路の部分を物体が横切る可能性がある場合、表示装置21及びブザー31を用いて運転者に対して注意喚起を行う。
具体的には、第1実施装置は、運転者が車両Vを左折又は右折させようとしているか否か、換言すると、実際には車両Vが左折又は右折しているとは言えないが車両Vが左折又は右折しようとして待機している状態にあるか否かを所定演算時間Tcalの経過毎に判定する。
<左折待機条件>
第1実施装置は、左折待機条件が成立した場合、車両Vが左折しようとして待機している状態(以下、「左折待機状態」と称呼する。)にあると判定する。左折待機条件は、以下に述べる条件LW1乃至LW3の何れか1つが成立した場合に成立する。
尚、下記の待機車速範囲Rspd1は、車両Vが左折待機状態にあるときの一般的な速度範囲であり、その範囲Rspd1の下限値である第1車速SPD1は、本例では、0km/hであり、待機車速範囲Rspd1の上限値である第2車速SPD2は、本例では、20km/hである。これは、右折についても同様である。
条件LW1:車速SPDが待機車速範囲Rspd1内にある状況で左方向指示器が不灯状態から点滅状態へと変化する。
条件LW2:左方向指示器が点滅状態である状況で車速SPDが待機車速範囲Rspd1内の速度に変化する。
条件LW3:車速SPDが待機車速範囲Rspd1内の速度に変化すると同時に左方向指示器が不灯状態から点滅状態へと変化する。
<右折待機条件>
一方、第1実施装置は、右折待機条件が成立した場合、車両Vが右折しようとして待機している状態(以下、「右折待機状態」と称呼する。)にあると判定する。右折待機条件は、以下に述べる条件RW1乃至RW3の何れか1つが成立した場合に成立する。
条件RW1:車速SPDが待機車速範囲Rspd1内にある状況で右方向指示器が不灯状態から点滅状態へと変化する。
条件RW2:右方向指示器が点滅状態である状況で車速SPDが待機車速範囲Rspd1内の速度に変化する。
条件RW3:車速SPDが待機車速範囲Rspd1内の速度に変化すると同時に右方向指示器が不灯状態から点滅状態へと変化する。
以下、任意の要素eに関し、演算周期がn周期目の要素eに符号(n)を付して「e(n)」と表す。従って、特に断らない限り、要素を表す符号に符号(n)が付されている場合、その要素は、n周期目の要素である。尚、左折又は右折待機条件が成立した時点(即ち、車両Vが左折又は右折待機状態にあると判定された時点)をn=0と規定する。
更に、図2に示した点O(n)(以下、「車両基準点O(n)」と称呼する。)は、車両Vの前端部近傍の車幅方向中央の点である。
加えて、第1実施装置は、「図4に破線で示した0周期目の車両基準点O(0)から図4に実線で示したn周期目の車両基準点O(n)まで車両Vが旋回した角度」である旋回角度θtotal(n)を算出する。第1実施装置は、車両Vが左折又は右折を開始してから終了するまでに一般的に走行する必要がある角度(本例では、90°であり、以下、「旋回終了角度θend」と称呼する。)を予め設定している。そして、第1実施装置は、旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θendよりも大きくなった場合、又は、旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θendよりも大きくなる前に左方向指示器又は右方向指示器が点滅状態から不灯状態に変化した場合、車両Vの左折又は右折が終了したと判定する。
一般に、車両Vが左折又は右折待機状態にある間、車両Vの車速SPDが上記待機車速範囲Rspd1の車速である状態が継続すると共に、左方向指示器又は右方向指示器が点滅している状態が継続する。従って、左折又は右折待機条件が一旦成立すれば、車両Vの左折又は右折が終了するまで、上記条件LW1乃至LW3又は条件RW1乃至RW3は何れも成立せず、このため、左折又は右折待機条件が再び成立することはない。
第1実施装置は、左折又は右折待機条件が一旦成立した後は、左方向指示器又は右方向指示器が点滅している限り、後述する左折開始条件又は右折開始条件が成立するまで、車両Vが左折又は右折待機状態にあると判定する。
尚、左折又は右折の途中で運転者が方向指示器を不灯状態に戻す操作を行うという例外的な場合を除けば、左折又は右折待機条件が成立するのは、1つの交差点での左折又は右折につき1回のみである。
<左折開始判定>
第1実施装置は、車両Vが左折待機状態にあると判定した後(即ち、左折待機条件の成立後)、左方向指示器が点滅している間(換言すると、運転者が車両Vを左折させる意思を示している間)、車両Vが実際に左折している状態(以下、「左折状態」と称呼する。)にあるか否かを所定演算時間Tcalの経過毎に判定する。
第1実施装置は、左折待機条件の成立後、左方向指示器が点滅している状況で以下に述べる左折開始条件が初めて成立したときに車両Vが左折を開始したと判定する。左折開始条件は、以下に述べる条件LS1乃至LS6の総てが成立している場合に成立する。
尚、下記の旋回車速範囲Rspd2は、車両Vが左折しているときの一般的な速度範囲であり、その範囲Rspd2の下限値である下限車速SPDLは、上記第1車速SPD1よりも大きく、本例では、5km/hであり、旋回車速範囲Rspd2の上限値である上限車速SPDUは、第2車速SPD2以下であり、本例では、20km/hである。
条件LS1:車速SPDが旋回車速範囲Rspd2内にある。
条件LS2:前後加速度Gxがゼロ以上であり且つ加速閾値Gxa(本例では、4m/s2)よりも小さいか、或いは、前後加速度Gxがゼロよりも小さく且つその前後加速度Gxの絶対値が減速閾値Gxd(本例では、4m/s2)よりも小さい。
条件LS3:アクセルペダル操作量APが操作量閾値APth(本例では、2%)よりも小さい。
条件LS4:ヨーレートYがゼロよりも大きく且つ右左折判定閾値Yth(旋回開始指標閾値であり、本例では、8°/sec)よりも大きい。
条件LS5:横加速度Gyがゼロよりも大きく且つ右左折判定閾値Gyth(本例では、3m/s2)よりも大きい。
条件LS6:操舵角θswがゼロよりも大きく且つ右左折判定閾値θswth(本例では、45°)よりも大きい。
左折開始条件が初めて成立した後、左折開始条件が継続して成立している場合、第1実施装置は、車両Vが左折状態にあると判定する。
ところで、車両Vが左折を開始した後、例えば、交差点の中央付近で対向車及び歩行者等の通過を待つために一時停止した場合、左折開始条件が成立しなくなる。しかしながら、車両Vが左折の途中で一時停止している場合においても、運転者は、左方向指示器を点滅させている。
そこで、第1実施装置は、左折開始条件の成立後、左折開始条件が成立しなくなったときでも、左方向指示器が点滅している場合、車両Vが左折状態にあると判定する。
そして、左折開始条件の成立後、左方向指示器が不灯状態になった場合、又は、左折開始条件の成立後、旋回角度θtotalが旋回終了角度θendよりも大きくなった場合、第1実施装置は、車両Vの左折が終了したと判定する。
以下、車両Vが左折を開始しようとしているがまだ実際には左折を行っていないと判定された状態を「左折待機状態L1」とも称呼し、車両Vが実際に交差点内で左折していると判定された状態を「左折状態L2」とも称呼する。
<右折開始判定>
一方、第1実施装置は、車両Vが右折待機状態にあると判定した後(即ち、右折待機条件の成立後)、右方向指示器が点滅している間(換言すると、運転者が車両Vを右折させる意思を示している間)、車両Vが実際に右折している状態(以下、「右折状態」と称呼する。)にあるか否かを所定演算時間Tcalの経過毎に判定する。
第1実施装置は、右折待機条件の成立後、右方向指示器が点滅している状況で以下に述べる右折開始条件が初めて成立したときに車両Vが右折を開始したと判定する。右折開始条件は、以下に述べる条件RS1乃至RS6の総てが成立している場合に成立する。
条件RS1:車速SPDが上記旋回車速範囲Rspd2内にある。
条件RS2:前後加速度Gxがゼロ以上であり且つ上記加速閾値Gxaよりも小さいか、或いは、前後加速度Gxがゼロよりも小さく且つその前後加速度Gxの絶対値が上記減速閾値Gxdよりも小さい。
条件RS3:アクセルペダル操作量APが上記閾値操作量閾値APthよりも小さい。
条件RS4:ヨーレートYがゼロよりも小さく且つその絶対値が上記右左折判定閾値Ythよりも大きい。
条件RS5:横加速度Gyがゼロよりも小さく且つその絶対値が上記右左折判定閾値Gythよりも大きい。
条件RS6:操舵角θswがゼロよりも小さく且つその絶対値が上記右左折判定閾値θswthよりも大きい。
右折開始条件が初めて成立した後、右折開始条件が継続して成立している場合、第1実施装置は、車両Vが右折状態にあると判定する。
ところで、車両Vが左折する場合と同様に、車両Vが右折を開始した後、交差点の中央付近で対向車及び歩行者等の通過を待つために一時停止した場合、右折開始条件が成立しなくなる。しかしながら、車両Vが右折の途中で一時停止している場合においても、運転者は、右方向指示器を点滅させている。
そこで、第1実施装置は、右折開始条件の成立後、右折開始条件が成立しなくなったときでも、右折方向指示器が点滅している場合、車両Vが右折状態にあると判定する。
そして、右折開始条件の成立後、右方向指示器が不灯状態になった場合、又は、右折開始条件の成立後、旋回角度θtotalが旋回終了角度θendを超えた場合、第1実施装置は、車両Vの右折が終了したと判定する。
以下、車両Vが右折を開始しようとしているがまだ実際には右折を行っていないと判定された状態を「右折待機状態R1」とも称呼し、車両Vが実際に交差点内で右折していると判定された状態を「左折状態R2」とも称呼する。
<平滑ヨーレートYsの算出>
第1実施装置は、後述するように、予測経路を推定するために車両VのヨーレートYを使用する。但し、ヨーレートセンサ17により検出されるヨーレートYは安定していない。そこで、第1実施装置は、左折待機条件の成立後、車両Vの左折が終了したとの判定(以下、「左折終了判定」と称呼する。)をするまでの間(以下、「車両Vの左折中」と称呼する。)、及び、右折待機条件の成立後、車両Vの右折が終了したとの判定(以下、「右折終了判定」と称呼する。)するまでの間(以下、「車両Vの右折中」と称呼する。)、所定演算時間Tcalの経過毎にヨーレートYを平滑化し、平滑化された値を平滑ヨーレートYsとして算出する。
但し、車両Vが左方向に旋回しているときのヨーレートYの符号(正の値)と、車両Vが右方向に旋回しているときのヨーレートYの符号(負の値)は異なる。そこで、第1実施装置は、平滑ヨーレートYsを以下に述べるように算出する。尚、以下の説明において、「M」は、所定の正の整数であり、「所定周期M」と称呼する。
左折待機条件の成立後、周期nが所定周期Mに達するまでの間(n<M)、第1実施装置は、下式(1L)に示したように、平滑ヨーレートYs(n)を「Y(0)からY(n)までのn+1個のヨーレートYの平均値」として算出する。
Ys(n)={Y(0)+・・・+Y(n-1)+Y(n)}/(n+1) …(1L)
周期nが所定周期Mに達した後(n≧M)は、第1実施装置は、下式(2L)に示したように、平滑ヨーレートYs(n)を「最新のヨーレートY(n)を含む、直近に取得されたM個のヨーレートYの平均値」として算出する。
Ys(n)={Y(n-(M-1))+・・・+Y(n-1)+Y(n)}/M …(2L)
一方、車両Vが右折を開始しようとしていると判定された場合、周期nが所定周期Mに達するまでの間(n<M)、第1実施装置は、下式(1R)に示したように、平滑ヨーレートYs(n)を「Y(0)からY(n)までのn+1個のヨーレートYのそれぞれに−1を乗じた値の平均値」として算出する。
Ys(n)={(-Y(0))+・・・+(-Y(n-1))+(-Y(n))}/(n+1) …(1R)
周期nが所定周期Mに達した後(n≧M)は、第1実施装置は、下式(2R)に示したように、平滑ヨーレートYs(n)を「最新のヨーレートY(n)に−1を乗じた値(即ち、Y(n)の符号を反転した値)を含む、直近に取得されたM個のヨーレートYのそれぞれに−1を乗じた値の平均値」として算出する。
Ys(n)={(-Y(n-(M-1)))+・・・+(-Y(n-1))+(-Y(n))}/M …(2R)
上述したように、車両Vが右方向に旋回(以下、「右旋回」と称呼する。)しているときのヨーレートは負の値である。このため、右折待機条件が成立した場合、ヨーレートYに−1を乗じて符号を反転し、反転後の値を平滑化することにより、車両Vが右旋回しているときの平滑ヨーレートYsを、車両Vが左方向に旋回(以下、「左旋回」と称呼する。)しているときの平滑ヨーレートYsと同等に扱うことができる。
尚、左折時及び右折時の平滑ヨーレートYsは常に正の値とは限らない。即ち、例えば、車両Vの左折時であっても、一時的に車両Vが右旋回した場合(例えば、ステアリングホイール14aが一時的に車両を右折させる方向に回転された場合)、その周期におけるヨーレートYは負の値となる。このとき、式(1L)又は(2L)に則って算出される平滑ヨーレートYsが負の値となる場合もある。
同様に、車両Vの右折時であっても、一時的に車両Vが左旋回した場合(例えば、ステアリングホイール14aが一時的に車両を左折させる方向に回転された場合)、その周期におけるヨーレートYは正の値となるため、当該ヨーレートYに−1を乗じると負の値となる。このとき、式(1R)又は(2R)に則って算出される平滑ヨーレートYsが負の値となる場合もある。
ここで、車両Vは、実際に左折又は右折を開始したと判定された後で一時的に停止することがある。このとき、ヨーレートYはノンゼロ値(ゼロではない値)からゼロ値に変化する。この場合、上式(1L)乃至(2R)に則ってヨーレートYを平滑化すると、実際のヨーレートYがゼロ値であるにも関わらず、平滑ヨーレートYsは、ゼロ値から乖離したノンゼロ値として算出される場合があり、却って不正確な値が算出されることとなる。
そこで、第1実施装置は、車両Vが実際に左折又は右折を開始したと判定した後でヨーレートYがノンゼロ値からゼロ値に変化した場合、上式(1L)乃至(2R)に代えて、下式(3)又は(4)に示したように、平滑ヨーレートYsをゼロに設定する。
即ち、a周期目(1≦a)で車両Vが実際に左折又は右折を開始したと判定され(上記条件LS4又はRS4より、Y(a)≠0)、その後、b周期目(a<b<n)で車両Vが一時停止してヨーレートY(b)が初めてゼロになった場合、第1実施装置は、下式(3)に示したように、b周期目の平滑ヨーレートYs(b)をゼロに設定する。
Y(i)(i:a〜b−1)≠0であり且つY(b)=0である場合
Ys(b)=0 …(3)
その後、b+1周期目からd周期目(b<d<n)まで車両Vの停止状態が継続している間(即ち、ヨーレートY=0の状態が継続している間)、第1実施装置は、下式(4)に示したように、b+1周期目からd周期目までの平滑ヨーレートYsをゼロに設定する。
Y(j)(j:b+1〜d)=0である場合
Ys(j)=0 …(4)
更に、車両Vが一時停止した状態から旋回を再開すると、ヨーレートYは、ゼロ値からノンゼロ値に変化する。この場合、上式(1L)乃至(2R)に則ってヨーレートYを平滑化すると、実際のヨーレートYはノンゼロ値であるにも関わらず、平滑ヨーレートYsは、略ゼロ値となる場合があり、却って不正確な値が算出されることになる。
そこで、第1実施装置は、左折開始条件の成立後、ヨーレートYがゼロ値からノンゼロ値に変化した場合、左折時の平滑ヨーレートYsを以下に述べるように算出する。
即ち、左折待機条件の成立後、車両Vがd周期目まで一時停止しており、d+1周期目から旋回を再開し、n周期目まで停止せずに旋回を継続している状況(即ち、d+1周期目からn周期目までヨーレートY≠0の状態が継続している状況)においては、ノンゼロ値のヨーレートYの個数が連続してM個以上である場合、第1実施装置は、下式(5L)に示したように、平滑ヨーレートYs(n)を「最新のヨーレートY(n)を含む、直近に取得されたM個のヨーレートYの平均値」として算出する。
Y(k)(k:d+1〜n)≠0であり且つn−d≧Mである場合
Ys(n)={Y(n-(M-1))+・・・+Y(n-1)+Y(n)}/M …(5L)
一方、ノンゼロ値のヨーレートYの個数が連続してM個に満たない場合、第1実施装置は、下式(6L)に示したように、平滑ヨーレートYs(n)を「d+1周期目以降の総てのノンゼロ値のヨーレートYの平均値」として算出する(換言すると、Y(d+1)からY(n)までのn−d個のヨーレートYの平均値として算出する。)。
Y(k)(k:d+1〜n)≠0であり且つn−d<Mである場合
Ys(n)={Y(d+1)+・・・+Y(n-1)+Y(n)}/(n−d) …(6L)
(右折時)
一方、第1実施装置は、右折開始条件の成立後、ヨーレートYがゼロ値からノンゼロ値に変化した場合、右折時の平滑ヨーレートYsを以下に述べるように算出する。
即ち、右折開始条件の成立後、上記状況と同じ状況においては、ノンゼロ値のヨーレートの個数が連続してM個以上である場合、第1実施装置は、下式(5R)に示したように、平滑ヨーレートYs(n)を「直近に取得されたM個のヨーレートYのそれぞれに−1を乗じた値の平均値」として算出する。
Y(k)(k:d+1〜n)≠0であり且つn−d≧Mである場合
Ys(n)={(-Y(n-(M-1)))+・・・+(-Y(n-1))+(-Y(n))}/M …(5R)
一方、ノンゼロ値のヨーレートYの個数が連続してM個に満たない場合、第1実施装置は、下式(6R)に示したように、平滑ヨーレートYs(n)を「d+1周期目以降の総てのノンゼロ値のヨーレートYのそれぞれに−1を乗じた値の平均値」として算出する。
Y(k)(k:d+1〜n)≠0であり且つn−d<Mである場合
Ys(n)={(-Y(d+1))+・・・+(-Y(n-1))+(-Y(n))}/(n−d) …(6R)
<旋回角度の算出>
第1実施装置は、後述するように予測経路の有効長さを算出するために、車両Vが0周期目からn周期目までの間に旋回した角度である旋回角度θtotal(n)を使用する。第1実施装置は、この旋回角度θtotal(n)を算出するために、車両Vが所定演算時間Tcalの間に旋回した角度である瞬時旋回角度θを以下に述べるように算出する。
第1実施装置は、左折又は右折待機条件が成立した時点(周期n=0)で下式(7)に示したように瞬時旋回角度θ(0)をゼロに設定する。
θ(0)=0° …(7)
これ以降(周期n≧1)、第1実施装置は、左折又は右折終了判定をするまで、下式(8)に示したように、平滑ヨーレートYs(n)に所定演算時間Tcalを乗じて瞬時旋回角度θ(n)を算出する。
θ(n)=Ys(n)・Tcal …(8)
そして、第1実施装置は、左折又は右折待機条件が成立した時点(周期n=0)において、下式(9)に示したように、旋回角度θtotal(0)を0°に設定(初期化)する。
θtotal(0)=0° …(9)
それ以降(n≧1)は、第1実施装置は、下式(10)に示したように、直前の旋回角度θtotal(n-1)に瞬時旋回角度θ(n)を加えて旋回角度θtotal(n)を算出する。これにより、車両Vが交差点内で左折又は右折する際の旋回角度を適切に算出することができる。
θtotal(n)=θtotal(n-1)+θ(n) …(10)
<旋回半径の算出>
第1実施装置は、後述するように2つの予測経路を推定する。これら2つの予測経路は、半径の異なる2つの円の式により表される。これら2つの円の半径は、それぞれ、車両基準点O(図2参照)が通過すると予測される円の半径(以下、「旋回半径R」と称呼する。)に基づいて算出される。第1実施装置は、車両Vの左折又は右折中、旋回半径Rを所定演算時間Tcalの経過毎に以下に述べるように算出する。
第1実施装置は、平滑ヨーレートYs(n)が所定の閾値Y0(本例では、10−6であり、以下、「直進閾値」と称呼する。)よりも大きいときには、車両Vが左折待機状態L1、右折待機状態R1、左折状態L2及び右折状態R2の何れの状態にある場合においても、下式(11)に示したように、車速SPD(n)を平滑ヨーレートYs(n)で除して旋回半径R(n)を算出する。換言すると、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0よりも大きい場合、旋回半径R(n)は、車両基準点O(n)における曲率半径である(図4参照)。
R(n)=SPD(n)/Ys(n) …(11)
尚、直進閾値Y0は、「0」に近い平滑ヨーレートYs(n)によって車速SPD(n)を除して旋回半径R(n)を算出した場合にその旋回半径R(n)が過大になることを回避するための閾値である。
車両Vが右折又は左折しようとしている方向と同一方向に車両Vが旋回している場合に、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0よりも大きくなる。一方、典型的には、車両Vが一時停止している場合、若しくは、車両Vが直進している場合、若しくは、車両Vが右折又は左折しようとしている方向とは反対方向に車両Vが(少なくとも一時的に)旋回した結果、平滑ヨーレートYsが負の値として算出される場合、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下となる。
平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合、第1実施装置は、車両Vが左折待機状態L1又は右折待機状態R1にある場合と、車両Vが左折状態L2又は右折状態R2にある場合とで、旋回半径R(n)の算出方法を切り替える。
具体的には、車両Vが左折待機状態L1又は右折待機状態R1にある場合、車両Vは、左折又は右折を開始しようとしているが実際には左折又は右折を行っていない。この場合、車両Vは、交差点の入口近傍に位置している可能性が高い。本願発明者は、このときに平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合、交差点内での予測経路の形状が略直線状であるほうが運転者に適切に注意喚起できるとの知見を得た。
そこで、第1実施装置は、車両Vが左折待機状態L1又は右折待機状態R1にあるときに平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合、下式(12)に示したように、旋回半径R(n)を「一般的な交差点における車両Vの旋回半径に比べて大幅に大きい値である所定値(本例では、12700mであり、以下、「直線相当値Rc」と称呼する。)」に設定する。これにより、交差点内での予測経路の形状を略直線状とすることができる(後述)。
R(n)=Rc=12700m …(12)
一方、車両Vが左折状態L2又は右折状態R2にある場合、車両Vの左折又は右折が開始されている。このときに平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合、車両Vが交差点内で一時停止しているか、或いは、車両Vが右折又は左折している方向とは反対方向に車両Vが一時的に旋回した可能性が高い。
そこで、車両Vが左折状態L2又は右折状態R2にあるときに平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合、第1実施装置は、下式(13)に示したように、現時点よりも前の周期(以下、「過去の周期」と称呼する。)であって直進閾値Y0よりも大きい平滑ヨーレートYsを取得した周期のうち直近の周期cの旋回半径R(c)を旋回半径R(n)に設定する。
R(n)=R(c) …(13)
尚、車両Vが左折待機状態L1及び右折待機状態R1にあるときに平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合の旋回半径R(n)の値は、12700mに限られない。この場合の旋回半径R(n)には、一般的な交差点における車両Vの旋回半径に比べて大幅に大きい任意の値を設定し得る。
<旋回中心の算出>
第1実施装置は、旋回半径R(n)に基づいて、「左折待機状態L1及び左折状態L2における車両Vの旋回中心座標(Cx(n),Cy(n))」並びに「右折待機状態R1及び右折状態R2におけるn周期目の車両Vの旋回中心座標(Cx(n),Cy(n))」をそれぞれ以下に述べるように算出する。
車両Vが左折待機状態L1又は左折状態L2にある場合、第1実施装置は、n周期目の車両Vの進行方向(以下、「車両進行方向」と称呼する。)と直交する方向に原点O(n)から旋回半径R(n)の長さだけ車両進行方向に対して左側に移動した位置を「旋回中心座標(Cx(n),Cy(n))」として算出する。尚、「n周期目の車両進行方向」は、平滑ヨーレートYs(n)から算出され得る。
一方、車両Vが右折待機状態R1及び右折状態R2にある場合、第1実施装置は、n周期目の車両進行方向TDと直交する方向に原点O(n)から旋回半径R(n)の長さだけ車両進行方向TDに対して右側に移動した位置を「旋回中心座標(Cx(n),Cy(n))」として算出する(図4参照)。
尚、図4に示した例においては、車両Vは、一定の車速SPD及び一定の平滑ヨーレートYsで右折している。このため、車両Vの右折中、旋回半径R(n)が一定であり且つ旋回中心座標(Cx(n),Cy(n))も一点に定まっている。しかしながら、車両Vの右折中に車速SPD及び平滑ヨーレートYsが変化する場合、旋回半径R(n)は周期によって異なる値となり、その結果、旋回中心座標(Cx(n),Cy(n))も一点に定まらなくなる。この場合も、上述したように旋回角度θtotal(n)を算出することにより、後述する左端予測経路の有効長さLLe及び右端予測経路の有効長さLReを適切に算出することができる。
<左端旋回半径及び右端旋回半径の算出>
第1実施装置は、旋回半径R(n)に基づいて左端旋回半径RL(n)及び右端旋回半径RR(n)を以下に述べるように算出する。
車両Vが左折する場合(即ち、左折待機状態L1又は左折状態L2にある場合)、第1実施装置は、下式(15)に示したように、旋回半径R(n)から車両Vの車幅Wの半分の長さ(半車幅長)W/2を減算して左端旋回半径RL(n)を算出し、下式(16)に示したように、旋回半径R(n)に半車幅長W/2を加算して右端旋回半径RR(n)を算出する。
RL(n)=R(n)−W/2…(15)
RR(n)=R(n)+W/2…(16)
一方、車両Vが右折する場合(即ち、右折待機状態R1又は右折状態R2にある場合)は、第1実施装置は、下式(17)に示したように、旋回半径R(n)に半車幅長W/2を加算して左端旋回半径RL(n)を算出し、下式(18)に示したように、旋回半径R(n)から半車幅長W/2を減算して右端旋回半径RR(n)を算出する。
RL(n)=R(n)+W/2…(17)
RR(n)=R(n)−W/2…(18)
ここで、図2に示すように、n周期目の車両Vの前端部の左端OL(n)(以下、「車両左端OL(n)」と称呼する。)は、車両進行方向TDと直交する方向に車両基準点O(n)から、半車幅長W/2だけ車両進行方向TDに対して左側に移動した位置であり、n周期目の車両Vの前端部の右端OR(n)(以下、「車両右端OR(n)」」と称呼する。)は、車両進行方向TDと直交する方向に車両基準点O(n)から半車幅長W/2だけ車両進行方向TDに対して右側に移動した位置である。
このため、左端旋回半径RL(n)は、車両左端OL(n)が通過すると予測される予測経路を表す円の半径と一致し、右端旋回半径RR(n)は、車両右端OL(n)が通過すると予測される予測経路を表す円の半径と一致する。
尚、車幅Wは、第1実施装置が搭載される予定の車両毎に予め設定され、その車両の実際の車幅よりも大きい長さであってもよいし、その車両の実際の車幅よりも小さい長さであってもよい。
<左端予測経路及び右端予測経路の推定>
第1実施装置は、車両Vの左折又は右折中、「車両左端OLが通過すると予測される予測経路(以下、「左端予測経路」と称呼する。)」及び「車両右端ORが通過すると予測される予測経路(以下、「右端予測経路」と称呼する。)」を所定演算時間Tcalの経過毎に以下に述べるようにそれぞれ推定する。
まず、第1実施装置は、「n周期目の左端予測経路を表す左端予測経路式fL(n)」及び「n周期目の右端予測経路を表す右端予測経路式fR(n)」をそれぞれ算出する(図4参照)。
即ち、第1実施装置は、下式(19)に示したように、「中心が旋回中心座標(Cx(n),Cy(n))であり、半径が左端旋回半径RL(n)である円」の式として左端予測経路式fL(n)を算出し、下式(20)に示したように、「中心が旋回中心座標(Cx(n),Cy(n))であり、半径が右端旋回半径RR(n)である円」の式として右端予測経路式fR(n)を算出する。
(x−Cx(n))2+(y−Cy(n))2=RL(n)2 …(19)
(x−Cx(n))2+(y−Cy(n))2=RR(n)2 …(20)
先に述べたように、車両Vが左折待機状態L1又は右折待機状態R1にあるときに平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0(=10−6)以下である場合、旋回半径R(n)は、直線相当値Rc(=12700m)に設定される(上式(12)を参照。)。このため、この場合の左端予測経路式fL(n)及び右端予測経路式fR(n)は、図3に示したように、何れもn周期目の車両進行方向TDに延びる直線の式に近似される。
<左端予測経路の有効長さ及び右端予測経路の有効長さの算出>
第1実施装置は、車両Vの左折又は右折中、左端予測経路の有効長さLLe(以下、「左端有効長さLLe」と称呼する。)及び右端予測経路の有効長さLRe(以下、「右端有効長さLRe」と称呼する。)を所定演算時間Tcalの経過毎に以下に述べるように算出する。そして、第1実施装置は、左端有効長さLLe以内の部分及び右端有効長さLRe以内の部分の少なくとも一方に所定時間以内に交差する物体が存在する場合、運転者に対する注意喚起を行う。
先に述べたように、車両Vが左折待機状態L1又は右折待機状態R1にあるときに平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合、予測経路式fL(n)及びfR(n)は、それぞれ、直線の式に近似される。この場合、第1実施装置は、下式(21)に示したように、左端有効長さLLe(n)及び右端有効長さLRe(n)を、一般的な交差点において車両Vが左折又は右折後に進入する予定の道路の幅の長さ(本例では、15m)を基準として設定する(図3に太線で示す。)。尚、この長さは、例えば、15〜20mの任意の値に設定され得る。
LLe(n)=LRe(n)=15m …(21)
一方、車両Vが左折待機状態L1又は右折待機状態R1にあるときに平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0よりも大きい場合、又は、車両Vが左折状態L2又は右折状態R2にある場合、第1実施装置は、左端有効長さLLe及び右端有効長さLReを、車両Vの旋回角度θtotalが現時点の旋回角度θtotalから旋回終了角度θendになるまでに車両Vが旋回(移動、走行)することになる左端予測経路の長さ及び右端予測経路の長さとしてそれぞれ算出する。
具体的には、第1実施装置は、下式(22)及び(23)に則って左端有効長さLLe(n)及び右端有効長さLRe(n)を算出する。即ち、第1実施装置は、旋回終了角度θend(=90°)から旋回角度θtotalを減算することにより、旋回角度θtotalが旋回終了角度θendになるまでに車両Vが旋回することになる残りの角度(即ち、旋回残余角度)を算出し、その単位をラジアンに変換する。更に、第1実施装置は、その変換後の旋回残余角度に左端旋回半径RL(n)を乗じて左端有効長さLLe(n)(図4に太線で示す。)を算出し、上記変換後の旋回残余角度に右端旋回半径RR(n)を乗じて右端有効長さLRe(n)(図4に太線で示す。)を算出する。
LLe(n)=RL(n)・(90°−θtotal(n))・π/180° …(22)
LRe(n)=RR(n)・(90°−θtotal(n))・π/180° …(23)
<注意喚起>
第1実施装置は、車両Vの左折又は右折中、「左端予測経路の有効長さLLe以内の部分(以下、「左端予測経路の有効部分LLe」又は「予測経路の有効部分」と称呼する。)」及び「右端予測経路の有効長さLRe以内の部分(以下、「右端予測経路の有効部分LRe」又は「予測経路の有効部分」と称呼する。)」の少なくとも一方に所定時間以内に交差する物体(即ち、移動物であり、以下、「対象物体」とも称呼する。)が存在するか否かを所定演算時間Tcalの経過毎に判定する。
第1実施装置は、対象物体が存在すると判定した場合、予測経路の有効部分を物体が横切る可能性があると判断し、車両Vの運転者の注意を喚起するための注意喚起を行う。第1実施装置は、対象物体が存在するか否かの判定を行うために以下に述べる処理を行う。
<物体情報の取得>
第1実施装置は、車両Vの左折又は右折中、車両Vの周辺に存在する物体の物体情報(車両Vに対する物体の位置、物体の移動方向及び物体の移動速度等)を所定演算時間Tcalの経過毎に取得する。図5に示した例においては、第1実施装置は、n周期目の車両Vの周辺に存在する物体A乃至Dのn周期目の物体情報をそれぞれ取得する。
<物体の予測経路式の算出>
第1実施装置は、物体情報に基づいて物体の位置からその移動方向に延びる半直線の予測経路式gを算出する。図5に示した例においては、第1実施装置は、物体A乃至Dのn周期目の物体情報に基づいて物体A乃至Dのそれぞれの位置からそれぞれの移動方向(図5の矢印を参照。)に延びる予測経路式ga(n)、gb(n)、gc(n)及びgd(n)をそれぞれ算出する。以下、予測経路式g(n)を単に「式g(n)」とも称呼する。この場合、式g(n)は、式ga(n)、gb(n)、gc(n)及びgd(n)の何れかである。
<第1交差条件>
第1実施装置は、式g(n)によって表される直線(以下、「直線g(n)」と表記する。)が「左端予測経路の有効部分LLe」と「右端予測経路の有効部分LRe」との少なくとも一方と交差しているとの条件(以下、「第1交差条件」とも称呼する。)が成立しているか否かを判定する。尚、本明細書では、「2つの線が交差している」とは、一方の線が他方の線を横切っている場合を意味し、2つの線が接している場合は含まれない。
図5に示した例においては、式ga(n)によって表される直線は、太い実線で示した左端予測経路の有効部分LLe(n)と点A1で交差していると共に、太い実線で示した右端予測経路の有効部分LRe(n)と点A2で交差している。このため、式ga(n)は、第1交差条件を満たしている。式gb(n)によって表される直線は、左端予測経路の有効部分LLe(n)と点B1で交差している。このため、式gb(n)も、第1交差条件を満たしている。
一方、式gc(n)及び式gd(n)によって表される直線は、左端予測経路の有効部分LLe(n)及び右端予測経路の有効部分LRe(n)の何れとも交差していない。このため、式gc(n)及び式gd(n)は、第1交差条件を満たしていない。
<交点Pの座標の算出>
第1実施装置は、式g(n)が第1交差条件を満たしている場合、直線g(n)が左端予測経路の有効部分LLe(n)及び/又は右端予測経路の有効部分LRe(n)と交差している交点(以下、「第1交点」と称呼する。)の数を算出する。
第1交点の数が2個である場合、第1実施装置は、「直線g(n)が物体の移動方向において予測経路の有効部分と最初に交差する点の座標」を交点P(n)の座標として算出する。一方、第1交点の数が1個である場合、第1実施装置は、その第1交点の座標を交点P(n)の座標として算出する。
図5に示した例においては、式ga(n)については、第1交点の数が点A1及びA2の2個である。このため、第1実施装置は、「式ga(n)によって表される直線が物体Aの移動方向(図5の紙面下方向)において左端予測経路の有効部分LLe(n)と交差している点A1の座標」を交点Pa(n)の座標として算出する。一方、式gb(n)については、第1交点の数が点B1の1個である。このため、第1実施装置は、その点B1の座標を交点Pb(n)の座標として算出する。
<時間t1の算出>
第1実施装置は、時間条件が成立するか否かを判定するために、物体が予測経路に到達すると予測される時間t1を算出する。具体的には、第1実施装置は、直線g(n)が予測経路の有効部分と点P(n)で交差している物体について、その物体が点P(n)に到達するまでの時間t1(n)(以下、「第1時間t1(n)」と称呼する。)を算出する。第1時間t1(n)は、その物体のn周期目の位置から点P(n)までの直線の長さをその物体の移動速度SPDs(n)で除して算出される。
図5に示した例においては、第1実施装置は、物体Aが点Pa(n)に到達するまでの第1時間t1a(n)及び物体Bが点Pb(n)に到達するまでの第1時間t1b(n)をそれぞれ算出する。
<時間条件>
第1実施装置は、第1時間t1(n)が第1所定時間t1th(本例では、4秒)以下であるとの時間条件が成立しているか否かを判定する。何れかの式g(n)について時間条件が成立している場合、第1実施装置は、対象物体が存在すると判定する。一方、何れの式g(n)についても時間条件が成立していない場合、第1実施装置は、対象物体が存在しないと判定する。
図5に示した例において、例えば、第1時間t1a(n)が「3秒」であり、第1時間t1b(n)が「10秒」である場合、第1時間t1a(n)が第1所定時間以下であり、式ga(n)について時間条件が成立している。この場合、第1実施装置は、対象物体(即ち、物体A)が存在すると判定する。
一方、第1時間t1a(n)が「5秒」であり、第1時間t1b(n)が「10秒」である場合、何れの第1時間t1a(n)及びt1b(n)も第1所定時間を越えており、何れの式ga(n)及びgb(n)についても時間条件が成立していない。この場合、第1実施装置は、対象物体が存在しないと判定する。
第1実施装置は、対象物体が存在すると判定した場合、車両Vの運転者の注意を喚起するための注意喚起を行う。一方、対象物体が存在しないと判定した場合、第1実施装置は、注意喚起を行わない。
<第1実施装置の具体的作動>
次に、第1実施装置の具体的な作動について説明する。第1実施装置の運転支援ECU10のCPU(以下、単に「CPU」と称呼する。)は、図6にフローチャートにより示したルーチンを所定演算時間Tcalの経過毎に実行するようになっている。
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図6のステップ600から処理を開始してステップ605に進み、上記自車両情報を取得して運転支援ECU10のRAM(以下、単に「RAM」と称呼する。)に格納する。その後、CPUは、ステップ610に進み、自車両情報に基づいて上記左折待機条件が成立しているか否かを判定する。
左折待機条件が成立している場合、CPUは、ステップ610にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ615及びステップ620の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ625に進む。上述したように、左折待機条件が成立するのは、1つの交差点につき1回のみである。従って、CPUがステップ610にて「Yes」と判定するのは、1つの交差点につき1回のみである。
ステップ615:CPUは、左折待機フラグXLWの値を「1」に設定する。左折待機フラグXLWの値は、左折待機条件の成立後、左折開始条件が成立するまでの間、「1」に設定され、左折開始条件が成立した時点で「0」に設定される(後述するステップ640を参照。)。
ステップ620:CPUは、旋回角度θtotalを0°に設定(初期化)する。このステップ620の処理は、ステップ610にて「Yes」と判定された場合に実行される。従って、旋回角度θtotalの初期化は、左折待機条件が成立したときに1回のみ行われ、その後、車両Vが左折を終了するまでの間は行われない。
CPUは、ステップ625に進むと、図7にフローチャートにより示したルーチンを実行する。従って、CPUは、ステップ625に進むと、図7のステップ700から処理を開始し、以下に述べるステップ705乃至ステップ715の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ720に進む。
ステップ705:CPUは、上式(1L)、(2L)、(3)、(4)、(5L)及び(6L)の何れかに則って平滑ヨーレートYs(n)を算出してRAMに格納する。
ステップ710:CPUは、上式(7)及び(8)の何れかに則って瞬時旋回角度θ(n)を算出してRAMに格納する。
ステップ612:CPUは、上式(9)及び(10)の何れかに則って旋回角度θtotal(n)を算出してRAMに格納する。
CPUは、ステップ720に進むと、旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θend(=90°)以下であるか否か(即ち、車両Vの左折中であるか否か)を判定する。旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θend以下である場合、CPUは、ステップ720にて「Yes」と判定してステップ725に進み、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0(=10−6)よりも大きいか否かを判定する。
平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0よりも大きい場合、CPUは、ステップ725にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ730の処理を行う。その後、CPUは、ステップ735に進む。尚、ステップ725にて「Yes」と判定される場合とは、典型的には、車両Vが左折を開始しようとしてから旋回可能な地点まで直進しているときに、車両Vが一時的に左方向に旋回した場合である。
ステップ730:CPUは、上式(11)に示したように、車速SPD(n)を平滑ヨーレートYs(n)によって除した値を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
CPUがステップ725の処理を実行する時点において平滑ヨーレートYsが直進閾値Y0以下である場合、CPUは、ステップ725にて「No」と判定し、以下に述べるステップ740の処理を行う。その後、CPUは、ステップ735に進む。尚、ステップ725にて「No」と判定される場合とは、典型的には、車両Vが左折するために信号待ちで停止している場合、左折待機条件の成立後、車両Vが旋回可能な地点まで直進している場合、左折待機条件の成立後、車両Vが旋回可能な地点まで直進しているときに車両Vが一時的に右方向に旋回した結果、平滑ヨーレートYsが負の値として算出された場合である。
ステップ740:CPUは、上式(12)に示したように、直線相当値Rc(=12700m)を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
CPUは、ステップ735に進むと、左折フラグXLの値を「1」に設定し、その後、ステップ795を経由して図6のステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
CPUがステップ720の処理を実行する時点において旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θendよりも大きい場合、CPUは、ステップ720にて「No」と判定して(即ち、車両Vの左折が終了したと判定して)ステップ745に進み、左折フラグXLの値を「0」に設定する。その後、CPUは、ステップ795を経由して図6のステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
CPUが図6のステップ610の処理を実行する時点において左折待機条件が成立していない場合、CPUは、ステップ610にて「No」と判定してステップ630に進み、左方向指示器が点滅しているか否かを判定する。
尚、ステップ610にて「No」と判定される場合とは、前回の左折又は右折終了判定後に左折待機条件が成立したと初めて判定された後にステップ610の判定が行われる場合、及び、前回の左折又は右折終了判定後に左折待機条件が一度も成立していない場合である。
いま、前回の左折又は右折終了判定後に左折待機条件が成立したと初めて判定された後にステップ610の判定が行われた結果、CPUがステップ610にて「No」と判定され、このとき、運転者が車両Vを左折させる意思を有しているために左方向指示器を点滅状態に維持していると仮定する。この場合、CPUは、ステップ630にて「Yes」と判定してステップ635に進む。
CPUは、ステップ635に進むと、左折待機フラグXLWの値が「0」であるか否か、及び、左折開始条件が成立しているか否かを判定する。このとき、CPUは、自車両情報に基づいて左折開始条件が成立しているか否かを判定する。
左折待機フラグXLWの値が「0」である場合、又は、左折開始条件が成立している場合、CPUは、ステップ635にて「Yes」と判定してステップ640に進む。
上記仮定に従えば、前回の左折又は右折終了判定後に左折待機条件が一旦成立しているので、ステップ615にて左折待機フラグXLWの値は「1」に設定されている。従って、この場合、左折開始条件が成立している場合に限り、CPUは、ステップ635にて「Yes」と判定する(即ち、車両Vが左折状態であると判定する)。
一方、CPUがステップ635の処理を実行する時点において左折待機フラグXLWの値が「1」である場合、又は、左折開始条件が成立していない場合、CPUは、ステップ635にて「No」と判定してステップ625に進み、先に述べた図7のルーチンを実行する。尚、CPUがステップ635にて「No」と判定するのは、典型的には、左折待機条件の成立後、車両Vの左折が開始されていない場合である。
CPUは、ステップ640に進むと、左折待機フラグXLWの値を「0」に設定し、その後、ステップ645に進む。これにより、左折待機フラグXLWの値は、車両Vの左折が開始された後(左折開始条件の成立後)、次の交差点で左折待機条件が成立するまでの間、「0」に設定され、車両Vが次の交差点で左折を開始しようとした時点(左折待機条件の成立時点)で「1」に設定される(ステップ610及びステップ615を参照。)。
従って、左折開始条件が初めて成立した場合(ステップ635での「Yes」との判定)、その後、左折開始条件が成立しなくなっても、次の交差点で左折待機条件が成立するまでの間、左折待機フラグXLWの値が「0」に維持される。このため、CPUは、ステップ635にて「Yes」と判定する(即ち、車両Vの左折中であると判定する。)。
CPUは、ステップ645に進むと、図8にフローチャートにより示したルーチンを実行する。従って、CPUは、ステップ645に進むと、図8のステップ800から処理を開始し、以下に述べるステップ805乃至ステップ815の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ820に進む。
ステップ805:CPUは、上式(1L)、(2L)、(3)、(4)、(5L)及び(6L)の何れかに則って平滑ヨーレートYs(n)を算出する。
ステップ810:CPUは、上式(8)に則って瞬時旋回角度θ(n)を算出する。
ステップ815:CPUは、上式(10)に則って旋回角度θtotal(n)を算出する。
CPUは、ステップ820に進むと、旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θend(=90°)以下であるか否かを判定する。旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θend以下である場合、CPUは、ステップ820にて「Yes」と判定してステップ825に進み、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0よりも大きいか否かを判定する。
平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0よりも大きい場合、CPUは、ステップ825にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ830の処理を行い、その後、ステップ835に進む。尚、ステップ825にて「Yes」と判定される場合とは、典型的には、車両Vの左折開始後、車両Vが左方向に旋回する場合である。
ステップ830:CPUは、上式(11)に示したように、車速SPD(n)を平滑ヨーレートYs(n)によって除した値を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
これに対し、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合、CPUは、ステップ825にて「No」と判定し、以下に述べるステップ840の処理を行い、その後、ステップ835に進む。尚、ステップ825にて「No」と判定される場合とは、典型的には、「左折開始条件の成立後、交差点の中央付近で対向車及び歩行者等の通過を待つために一時停止している場合」並びに「左折開始条件の成立後、車両Vが一時的に右方向に旋回した結果、平滑ヨーレートYsが負の値として算出された場合」である。
ステップ840:CPUは、上式(13)に示したように、c周期目の旋回半径R(c)を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
CPUは、ステップ835に進むと、左折フラグXLの値を「1」に設定し、その後、ステップ895を経由して図6のステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
CPUがステップ820の処理を実行する時点において旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θendよりも大きい場合、CPUは、ステップ820にて「No」と判定してステップ845に進み、左折フラグXLの値を「0」に設定する。その後、CPUは、ステップ895を経由して図6のステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
CPUが図6のステップ630の処理を実行する時点において左方向指示器が点滅していない場合、CPUは、ステップ630にて「No」と判定し、以下に述べるステップ650の処理を行う。その後、CPUは、ステップ655に進む。
ステップ650:CPUは、左折待機フラグXLWの値を「0」に設定する。これにより、左折待機フラグXLWの値が「1」の状態でステップ655以降の処理が行われることがなくなる。
CPUは、ステップ655に進むと、自車両情報に基づいて上記右折待機条件が成立しているか否かを判定する。右折待機条件が成立している場合、CPUは、ステップ655にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ660及びステップ665の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ670に進む。上述したように、右折待機条件が成立するのは、1つの交差点につき1回のみである。従って、CPUがステップ655にて「Yes」と判定するのは、1つの交差点につき1回のみである。
ステップ660:CPUは、右折待機フラグXRWの値を「1」に設定する。右折待機フラグXRWの値は、右折待機条件の成立後、右折開始条件が成立するまでの間、「1」に設定され、右折開始条件が成立した時点で「0」に設定される(後述するステップ660を参照。)。
ステップ665:CPUは、旋回角度θtotalを0°に設定(初期化)する。旋回角度θtotalの初期化は、右折待機条件が成立したときに1回のみ行われ、その後、車両Vが右折を終了するまでの間は行われない。
CPUは、ステップ670に進むと、図9にフローチャートにより示したルーチンを実行する。従って、CPUは、ステップ670に進むと、図9のステップ900から処理を開始し、以下に述べるステップ905乃至ステップ915の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ920に進む。
ステップ905:CPUは、上式(1R)、(2R)、(3)、(4)、(5R)及び(6R)の何れかに則って平滑ヨーレートYs(n)を算出してRAMに格納する。
ステップ910:CPUは、上式(7)及び(8)の何れかに則って瞬時旋回角度θ(n)を算出してRAMに格納する。
ステップ915:CPUは、上式(9)及び(10)の何れかに則って旋回角度θtotal(n)を算出してRAMに格納する。
CPUは、ステップ920に進むと、旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θend以下であるか否か(即ち、車両Vの右折中であるか否か)を判定する。旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θend以下である場合、CPUは、ステップ920にて「Yes」と判定してステップ925に進み、平滑ヨーレートYs(n)直進閾値Y0よりも大きいか否かを判定する。
平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0よりも大きい場合、CPUは、ステップ925にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ930の処理を行う。その後、CPUは、ステップ935に進む。尚、ステップ925にて「Yes」と判定される場合とは、典型的には、右折待機条件の成立後、車両Vが旋回可能な地点まで直進しているときに、車両Vが一時的に右方向に旋回した場合である。
ステップ930:CPUは、上式(11)に示したように、車速SPD(n)を平滑ヨーレートYs(n)によって除した値を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
CPUがステップ925の処理を実行する時点において平滑ヨーレートYsが直進閾値Y0以下である場合、CPUは、ステップ925にて「No」と判定し、以下に述べるステップ940の処理を行う。その後、CPUは、ステップ935に進む。尚、ステップ925にて「No」と判定される場合とは、典型的には、車両Vが右折するために信号待ちで停止している場合、右折待機条件の成立後、車両Vが旋回可能な地点まで直進している場合、及び、右折待機条件の成立後、車両Vが旋回可能な地点まで直進しているときに車両Vが一時的に左方向に旋回した結果、平滑ヨーレートYsが負の値として算出された場合である。
ステップ940:CPUは、上式(12)に示したように、直線相当値Rcを旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
CPUは、ステップ935に進むと、右折フラグXRの値を「1」に設定し、その後、ステップ995を経由して図6のステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
CPUがステップ920の処理を実行する時点において旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θendよりも大きい場合、CPUは、ステップ920にて「No」と判定して(即ち、車両Vの右折が終了したと判定して)ステップ945に進み、右折フラグXRの値を「0」に設定する。その後、CPUは、ステップ995を経由して図6のステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
CPUが図6のステップ655の処理を実行する時点において右折待機条件が成立していない場合、CPUは、ステップ655にて「No」と判定してステップ675に進み、右方向指示器が点滅しているか否かを判定する。
尚、ステップ655にて「No」と判定される場合とは、前回の左折又は右折終了判定後、右折待機条件が成立したと初めて判定された後にステップ655の判定が行われる場合、及び、前回の左折又は右折終了判定後、右折待機条件が一度も成立していない場合である。
いま、前回の左折又は右折終了判定後に右折待機条件が成立したと初めて判定された後にステップ655の判定が行われた結果、CPUがステップ655にて「No」と判定され、このとき、運転者が車両Vを右折させる意思を有しているために右方向指示器を点滅状態に維持していると仮定する。この場合、CPUは、ステップ675にて「Yes」と判定してステップ680に進む。
CPUは、ステップ680に進むと、右折待機フラグXRWの値が「0」であるか否か、及び、右折開始条件が成立しているか否かを判定する。このとき、CPUは、自車両情報に基づいて右折開始条件が成立しているか否かを判定する。
右折待機フラグXRWの値が「0」である場合、又は、右折開始条件が成立している場合、CPUは、ステップ680にて「Yes」と判定してステップ685に進む。
上記仮定に従えば、前回の左折又は右折終了判定後に右折待機条件が一旦成立しているので、ステップ660で右折待機フラグXRWの値は「1」に設定されている。従って、この場合、右折開始条件が成立している場合に限り、CPUは、ステップ680にて「Yes」と判定する(即ち、車両Vが右折状態であると判定する)。
一方、CPUがステップ680の処理を実行する時点において右折待機フラグXRWの値が「1」である場合、又は、右折開始条件が成立していない場合、CPUは、ステップ680にて「No」と判定してステップ670に進み、先に述べた図9のルーチンを実行する。尚、CPUがステップ680にて「No」と判定するのは、典型的には、右折待機条件の成立後、車両Vの右折が開始されていない場合である。
CPUは、ステップ685に進むと、右折待機フラグXRWの値を「0」に設定し、その後、ステップ690に進む。これにより、右折待機フラグXRWの値は、車両Vの右折が開始された後(右折開始条件の成立後)、次の交差点で右折待機条件が成立するまでの間、「0」に設定され、車両Vが次の交差点で右折を開始しようとした時点(右折待機条件の成立時点)で「1」に設定される(ステップ655及びステップ660を参照。)。
従って、右折開始条件が初めて成立した場合(ステップ680での「Yes」との判定)、その後、右折開始条件が成立しなくなっても、次の交差点で右折待機条件が成立するまでの間、右折待機フラグXRWの値が「0」に維持される。このため、CPUは、ステップ680にて「Yes」と判定する(即ち、車両Vの右折中であると判定する。)。
CPUは、ステップ690に進むと、図10にフローチャートにより示したルーチンを実行する。従って、CPUは、ステップ690に進むと、図10のステップ1000から処理を開始し、以下に述べるステップ1005乃至ステップ1015の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1020に進む。
ステップ1005:CPUは、上式(1R)、(2R)、(3)、(4)、(5R)及び(6R)の何れかに則って平滑ヨーレートYs(n)を算出する。
ステップ1010:CPUは、上式(8)に則って瞬時旋回角度θ(n)を算出する。
ステップ1015:CPUは、上式(10)に則って旋回角度θtotal(n)を算出する。
CPUは、ステップ1020に進むと、旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θend(=90°)以下であるか否かを判定する。旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θend以下である場合、CPUは、ステップ1020にて「Yes」と判定してステップ1025に進み、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0よりも大きいか否かを判定する。
平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0よりも大きい場合、CPUは、ステップ1025にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1030の処理を行い、その後、ステップ1035に進む。尚、ステップ1025にて「Yes」と判定される場合とは、典型的には、車両Vの右折開始後、車両Vが右方向に旋回する場合である。
ステップ1030:CPUは、上式(11)に示したように、車速SPD(n)を平滑ヨーレートYs(n)によって除した値を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
これに対し、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合、CPUは、ステップ1025にて「No」と判定し、以下に述べるステップ1040の処理を行い、その後、ステップ1035に進む。尚、ステップ1025にて「No」と判定される場合とは、典型的には、「右折開始条件の成立後、交差点の中央付近で対向車及び歩行者等の通過を待つために一時停止している場合」並びに「右折開始条件の成立後、車両Vが一時的に左方向に旋回した結果、平滑ヨーレートYsが負の値として算出された場合」である。
ステップ1040:CPUは、上式(13)に示したように、c周期目の旋回半径R(c)を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
CPUは、ステップ1035に進むと、右折フラグXRの値を「1」に設定し、その後、ステップ1095を経由して図6のステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
CPUがステップ1020の処理を実行する時点において旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θendよりも大きい場合、CPUは、ステップ1020にて「No」と判定してステップ1045に進み、右折フラグXRの値を「0」に設定する。その後、CPUは、ステップ1095を経由して図6のステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
CPUが図6のステップ675の処理を実行する時点において右方向指示器が点滅していない場合、CPUは、ステップ675にて「No」と判定し、以下に述べるステップ692の処理を行う。その後、CPUは、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ692:CPUは、右折待機フラグXRWの値を「0」に設定する。
更に、CPUは、図11にフローチャートにより示したルーチンを所定演算時間Tcalの経過毎に実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、図11のステップ1100から処理を開始し、以下に述べるステップ1105の処理を行う。その後、CPUは、ステップ1110に進む。
ステップ1105:CPUは、先に述べたように旋回半径R(n)に基づいて旋回中心座標(Cx(n),Cy(n))を算出してRAMに格納する。
CPUは、ステップ1110に進むと、左折フラグXLの値が「1」であるか否かを判定する。左折フラグXLの値が「1」である場合、CPUは、ステップ1110にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1115乃至ステップ1125の処理を行う。その後、CPUは、ステップ1130に進む。
ステップ1115:CPUは、上式式(15)に則って左端旋回半径RL(n)を算出してRAMに格納すると共に上式(16)に則って右端旋回半径RR(n)を算出してRAMに格納する。
ステップ1120:CPUは、上式(19)に則って左端予測経路式fL(n)を算出してRAMに格納すると共に上式(20)に則って右端予測経路式fR(n)を算出してRAMに格納する。
ステップ1125:CPUは、上式(22)に則って左端有効長さLLe(n)を算出してRAMに格納すると共に上式(23)に則って右端有効長さLRe(n)を算出してRAMに格納する。但し、現時点で車両Vが左折待機状態L1又は右折待機状態R2にあり且つ平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合、CPUは、左端予測経路式fL(n)のうち、車両左端OL(n)から車両進行方向に向かって15mの長さまでを左端有効長さLLe(n)として設定してRAMに格納すると共に、右端予測経路式fR(n)のうち、車両右端OR(n)から車両進行方向に向かって15mの長さまでを右端有効長さLRe(n)として設定してRAMに格納する(式(21)を参照。)。
一方、CPUがステップ1110の処理を実行する時点において左折フラグXLの値が「0」である場合、CPUは、ステップ1110にて「No」と判定してステップ1135に進み、右折フラグXRの値が「1」であるか否かを判定する。右折フラグXRの値が「1」である場合、CPUは、ステップ1135にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1140の処理並びに先に述べたステップ1120及びステップ1125の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1130に進む。
ステップ1140:CPUは、上式(17)に則って左端旋回半径RL(n)を算出してRAMに格納すると共に上式(18)に則って右端旋回半径RR(n)を算出してRAMに格納する。
CPUは、ステップ1130に進むと、図12にフローチャートにより示したルーチンを実行するようになっている。従って、CPUは、ステップ1130に進むと、図12のステップ1200から処理を開始し、以下に述べるステップ1205及びステップ1210の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1215に進む。尚、このルーチンでは、1つの物体についての物体情報が取得された場合について説明するが、複数の物体についての物体情報が取得された場合は、各物体情報についてこのルーチンを繰り返す。
ステップ1005:CPUは、先に述べたように車両Vの周辺に存在する物体のn周期目の物体情報を取得してRAMに格納する。
ステップ1010:CPUは、先に述べたように物体情報に基づいて物体の予測経路式g(n)を算出してRAMに格納する。
CPUは、ステップ1215に進むと、物体の予測経路式g(n)が第1交差条件を満たしているか否かを判定する。物体の予測経路式g(n)が第1交差条件を満たしている場合、CPUは、ステップ1215にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1220及び1225の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1230に進む。
ステップ1220:CPUは、先に述べたように式g(n)によって表される直線が左端予測経路の有効部分LLe(n)又は右端予測経路の有効部分LRe(n)と交差している点P(n)の座標を算出してRAMに格納する。
ステップ1225:CPUは、先に述べたように物体が点P(n)に到達するまでの時間(第1時間)t1(n)を算出してRAMに格納する。
CPUは、ステップ1230に進むと、第1時間t1(n)が4秒以下であるか否か、即ち、第1時間t1(n)が時間条件を満たしているか否かを判定する。第1時間t1(n)が時間条件を満たしている場合、CPUは、ステップ1230にて「Yes」と判定し(即ち、対象物体が存在すると判定し)、以下に述べるステップ1235の処理を行う。その後、CPUは、ステップ1295を経由して図11のステップ1195に進み、本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1235:CPUは、車両Vの運転者に対する注意喚起を行わせるための要求信号を表示ECU20のCPU及び警報ECU30のCPUに送信する。これにより、表示装置21及びブザー31によって注意喚起が行われる。
一方、物体の予測経路式g(n)が第1交差条件を満たしていない場合、CPUは、ステップ1215にて「No」と判定し(即ち、対象物体が存在しないと判定し)、ステップ1295を経由して図11のステップ1195に進み、本ルーチンを一旦終了する。
更に、第1時間t1(n)が時間条件を満たしていない場合、CPUは、ステップ1230にて「No」と判定し(即ち、対象物体が存在しないと判定し)、ステップ1295を経由して図11のステップ1195に進み、本ルーチンを一旦終了する。
以上が第1実施装置の具体的な作動である。第1実施装置は、車両Vに搭載された各種センサによって取得される自車両情報に基づいて「左折及び右折待機条件並びに左折及び右折開始条件」が成立するか否かを判定する。このため、GNSS及び/又は無線通信による自己位置推定ができない場合においても、自車両情報に基づいて車両Vが交差点で左折又は右折しているか否かを適切に判定することができる。
加えて、第1実施装置は、旋回残余角度(90°−旋回角度θtotal)と左端旋回半径RLとの積に基づく値を用いて左端有効長さLLeを算出し、旋回残余角度と右端旋回半径RRとの積に基づく値を用いて右端有効長さLReを算出する。換言すると、左端有効長さLLeは、左端予測経路式fLによって表される円のうち、旋回残余角度(90°−旋回角度θtotal)に対応する円弧の長さであり、右端有効長さLReは、右端予測経路式fRによって表される円のうち、旋回残余角度に対応する円弧の長さである。
即ち、第1実施装置によれば、左端有効長さLLe及び右端有効長さLReは、旋回角度θtotalに基づいて算出され、それら有効長さLLe及びLReは、旋回角度θtotalが大きくなるほど(即ち、交差点での左折又は右折が進行するほど)短くなる。このため、予測経路の有効部分LLe及びLReが、車両Vが進入する予定の車線を越えて、その予定の車線に対する対向車線又はその対向車線に付随する歩道に及ぶ可能性を大幅に低減できる。これによれば、GNSS及び/又は無線通信による自己位置推定ができない場合においても、車両Vが交差点で左折又は右折状態にあるときに運転者に不要に注意喚起してしまう可能性を低減でき、運転者に対してより適切に注意喚起が行われる。
特に、第1実施装置においては、車両左端OLの予測経路である左端予測経路と、車両右端ORの予測経路である右端予測経路と、が別々に推定される。左端予測経路と右端予測経路は、車両Vの車体が通過すると予測される領域の辺縁を構成する。このため、例えば、車両基準点O(即ち、車幅方向中央)が通過すると予測される予測経路が推定される構成に比べ、車両Vの実際の走行経路により近い予測経路を推定することができる。その結果、注意喚起の要否をより高精度に判定することができる。加えて、予測経路の有効長さLLe及びLReを算出する場合、推定旋回半径として、左端予測経路には左端旋回半径RLを用い、右端予測経路には右端旋回半径RRを用いる。このため、各有効長さLLe及びLReを適切に算出することができる。この構成によっても、注意喚起の要否をより高精度に判定することができる。
更に、一般に、運転者が車両Vの左折又は右折を開始しようとする場合、運転者は、車速SPDが左折又は右折を開始するのに適した速度(即ち、第1車速SPD1≦SPD≦第2車速SPD2)になるまで車両Vを減速してからウィンカーレバーを操作するか、若しくは、先にウィンカーレバーを操作してから車両Vを上記速度まで減速するか、若しくは、ウィンカーレバーの操作と車両Vの上記速度までの減速とを同時に行うか、の何れかの操作を行う。このため、車両Vが左折又は右折を開始しようとしているか否かの判定を上記左折待機条件LW1乃至LW3又は右折待機条件RW1乃至RW3に基づいて判定することにより、車両Vが左折又は右折を開始しようとしているか否か(即ち、運転者が車両Vの左折又は右折を開始させようとしているか否か)を適切に判定することができる。
更に、第1実施装置は、車両Vが左折を開始しようとしていると判定した後(即ち、左折待機条件の成立後)、左方向指示器が点滅しているときに左折開始条件LS1乃至LS6の総てが初めて成立したと判定した場合、車両Vが実際に左折を開始した(即ち、左折開始条件が成立した)と判定する。同様に、第1実施装置は、車両Vが右折を開始しようとしていると判定した後(即ち、右折待機条件の成立後)、右方向指示器13Rが点滅しているときに上記右折開始条件RS1乃至RS6の総てが初めて成立したと判定した場合、車両Vが実際に右折を開始した(即ち、右折開始条件が成立した)と判定する。従って、第1実施装置がGNSS及び/又は無線通信による自己位置推定機能を備えていない場合、又は、自己位置推定機能を備えていても当該機能を利用できない場合においても、いつ車両Vが実際に左折又は右折を開始したかを適切に判定することができる。
加えて、第1実施装置においては、式gによって表される直線(以下、「直線g」と表記する。)が予測経路の有効部分と交差している場合にのみ第1時間t1を算出し、直線gが予測経路の有効部分と交差していない場合、第1時間t1を算出しない。このため、処理時間を短縮することができる。更に、第1交点が2個である場合、これら2個の第1交点のうち、直線gが物体の現時点の移動方向において最初に予測経路の有効部分と交差している点に対してのみ第1時間t1を算出する。このため、直線gが物体の現時点の移動方向において予測経路の有効部分と2個目に交差している点について第1時間t1を算出する場合に比べ、物体が予測経路の有効部分を横切るか否かをより早く判定することができる。従って、運転者に対してより適切に注意喚起することができる。
更に、第1実施装置においては、左折時の左端旋回半径RLは「R−W/2」であり、右折時の左端旋回半径RLは「R+W/2」である。一方、左折時の右端旋回半径RRは「R+W/2」であり、右折時の右端旋回半径RRは「R−W/2」である。このため、車両Vが左折する場合及び車両が右折する場合の何れにおいても、左端旋回半径RL及び右端旋回半径RRを適切に算出することができる。
加えて、一般の交差点では、「左折又は右折開始前の車両Vの車軸(車両の前後方向の中心軸)」と「左折又は右折終了後の車両Vの車軸」とがなす角度は、約90°である。このため、旋回残余角度を算出するための基準となる旋回終了角度θendを90°に設定することにより、有効長さLLe及びLReは、車両Vの現在位置から左折又は右折を終了するまでの予測経路の長さと略等しくなる。従って、運転者に対してより適切に注意喚起することができる。
加えて、第1実施装置は、車両Vが左折又は右折を開始しようとしていると判定された場合にのみ、旋回角度θtotalを初期化し、それ以降、車両Vの左折又は右折が終了するまで旋回角度θtotalを初期化しない。このため、交差点での車両Vの左折又は右折中に旋回角度θtotalが初期化されてしまうことを防止できる。従って、旋回残余角度の算出に用いられる旋回角度θtotalを適切に算出することができる。
(変形例)
<第1変形装置の作動の概要>
次に、第1実施形態の変形例に係る車両の運転支援装置(以下、「第1変形装置」と称呼する。)について説明する。第1実施装置では、n周期目の予測経路は、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0(=10−6)より大きい場合、式(11)に則って平滑ヨーレートYs(n)から算出された旋回半径R(n)(即ち、R(n)=SPD(n)/Ys(n))に基づいて算出される。従って、第1実施装置は、例えば、車両Vが左折を開始しようとした時点においても、その時点の平滑ヨーレートYsが直進閾値Y0よりも大きければ、その時点の平滑ヨーレートYsから算出された旋回半径Rに基づいて予測経路を推定する。
しかしながら、運転者は、車両Vを左折させる場合、一般的には、まず、ステアリングホイール14aを回転操作して操舵角θswを徐々に大きくし、最大操舵角に達した後、暫く操舵角θswを最大操舵角に維持し、その後、操舵角θswを徐々に小さくし、操舵角θswをゼロにして車両Vの左折を終了する。
従って、車両Vが左折している期間は、「運転者がステアリングホイール14aを回転操作し始めようとする時点(即ち、車両Vが左折を開始しようとする時点)」から「操舵角θswが最大操舵角に達する直前の時点」までの期間(以下、「操舵増加期間」と称呼する。)と、操舵角θswが最大操舵角に達した時点から操舵角θswがゼロになる時点までの期間(以下、「操舵減少期間」と称呼する。)と、に分けられる。
操舵増加期間における平滑ヨーレートYsは、操舵角θswが最大操舵角になったときの平滑ヨーレートYsよりも小さい。従って、操舵増加期間において、車両Vの現時点の平滑ヨーレートYsから旋回半径Rを算出すると、その旋回半径Rは、操舵角θswが最大操舵角であるときの平滑ヨーレートYsから算出される旋回半径Rよりも大きい。このため、その旋回半径Rを用いて予測経路を算出すると、その予測経路は、実際の走行経路から乖離しており、運転者に対して適切な注意喚起が行われない可能性がある。
本願発明者らは、このような観点から検討を行った結果、操舵増加期間においては、現時点における平滑ヨーレートYsを用いるのではなく、以下に述べる推定ヨーレートYestを用いて旋回半径Rを算出し、その旋回半径Rに基づいて予測経路を推定したほうが、実際の走行経路により近い予測経路を推定することができ、注意喚起の精度が向上するとの知見を得た。
尚、本願発明者らは、操舵増加期間を、車両Vの現時点の旋回角度θtotalが「操舵角θswが最大操舵角になるときの旋回角度θtotal(本例では、45°)」に達するまでの期間と定義した。以下、操舵角θswが最大操舵角になるときの旋回角度θtotalを「操舵切替角度θth」と称呼する。尚、操舵切替角度θthは、実験に基づき、0°よりも大きく90°よりも小さい適値に設定可能である。
<操舵増加期間>
現時点の平滑ヨーレート変化量ΔYsがゼロより大きい場合(以下、「場合A1」と称呼する。)、第1変形装置は、推定ヨーレートYestを以下に述べるように算出する。
第1変形装置は、現時点の平滑ヨーレートYsの変化量ΔYs(厳密には、平滑ヨーレートYsの時間微分値であり、以下、「平滑ヨーレート変化量ΔYs」と称呼する。)で平滑ヨーレートYsが増加し続けると仮定し、操舵切替角度θthから現時点の旋回角度θtotalを減じた角度である操舵切替残余角度Δθ(=θth−θtotal)だけ車両Vが旋回するのに要する時間Treq(以下、「所要時間Treq」と称呼する。)を算出する。
そして、第1変形装置は、操舵切替残余角度Δθを所要時間Treqで除して推定ヨーレートYestを算出する(Yest=Δθ/Treq)。従って、推定ヨーレートYestは、車両Vが操舵切替残余角度Δθを所要時間Treqかけて旋回するときのヨーレートYの平均値である。そして、第1変形装置は、この推定ヨーレートYestを用いて算出した旋回半径である第1推定旋回半径Rest1を旋回半径Rとして設定し、その旋回半径Rに基づいて予測経路を推定する。
推定ヨーレートYestは、平滑ヨーレートYsが現時点の平滑ヨーレート変化量ΔYsで増加し続けると仮定して算出される値であるので、現時点の平滑ヨーレートYsよりも大きい。従って、推定ヨーレートYestを用いて算出される旋回半径Rは、現時点の平滑ヨーレートYsを用いて算出される旋回半径Rよりも小さくなる。その結果、第1変形装置は、実際の走行経路により近い予測経路を推定することができるので、より適切に注意喚起できる。
但し、後述するように、推定ヨーレートYestが直進閾値Y0(本例では、10−6)以下である場合、第1変形装置は、推定ヨーレートYestを用いて算出した旋回半径Rを用いるのではなく、直線相当値Rc(=12700m)に設定された旋回半径Rを用いて予測経路を推定する。
(場合A2)
ところで、上記仮定は、操舵増加期間における現時点の平滑ヨーレート変化量ΔYsがゼロよりも大きいことを前提としている。従って、操舵増加期間における現時点の平滑ヨーレート変化量ΔYsがゼロ以下である場合(換言すると、現時点で平滑ヨーレートYsが減少したか或いは変化していない場合)、上記場合A1に関連して説明した算出方法に則って推定ヨーレートYestを算出すると、その推定ヨーレートYestは、現時点の平滑ヨーレートYs以下になる。このため、その推定ヨーレートYestを用いて算出される旋回半径Rに基づいて推定される予測経路は、車両Vの実際の走行経路からより乖離することになる。
そこで、第1変形装置は、操舵増加期間において現時点の平滑ヨーレート変化量ΔYsがゼロ以下である場合(以下、「場合A2」と称呼する。)、推定ヨーレートYestを以下に述べるように算出する。
操舵増加期間における現時点の平滑ヨーレート変化量ΔYsがゼロ以下であるときに現時点よりも前の周期(以下、「過去の周期」と称呼する。)でゼロよりも大きい変化量ΔYsがある場合、第1変形装置は、「その中で最も現時点に近い周期の平滑ヨーレート変化量ΔYs」で平滑ヨーレートYsが増加し続けると仮定し、場合A1に関連して説明した算出方法と同じ算出方法により推定ヨーレートYestを算出する。そして、第1実施装置は、この推定ヨーレートYestを用いて算出した旋回半径である第1推定旋回半径Rest1を旋回半径Rとして設定し、その旋回半径Rに基づいて予測経路を推定する。
この場合に算出される推定ヨーレートYestは、現時点の平滑ヨーレートYsよりも大きくなるので、第1変形装置は、実際の走行経路により近い予測経路を推定することができる。
但し、後述するように、推定ヨーレートYestが直進閾値Y0(本例では、10−6)以下である場合、第1変形装置は、推定ヨーレートYestを用いて算出した旋回半径Rを用いるのではなく、直線相当値Rc(=12700m)に設定された旋回半径Rを用いて予測経路を推定する。
(場合A3)
一方、操舵増加期間において現時点の平滑ヨーレート変化量ΔYsがゼロ以下であったときに過去の周期でゼロよりも大きい平滑ヨーレート変化量ΔYsがなく且つ現時点の平滑ヨーレートYsが直進閾値Y0よりも大きい場合(以下、「場合A3」と称呼する。)、第1変形装置は、現時点の平滑ヨーレートYsを用いて算出した旋回半径Rに基づいて予測経路を推定する。
一方、操舵増加期間において現時点の平滑ヨーレート変化量ΔYsがゼロ以下であったときに過去の周期でゼロよりも大きい平滑ヨーレート変化量ΔYsがなく且つ現時点の平滑ヨーレートYsが直進閾値Y0以下である場合(場合A4)、第1変形装置は、現時点の平滑ヨーレートYsを用いて算出した旋回半径Rを用いるのではなく、直線相当値Rc(=12700m)に設定された旋回半径Rを用いて予測経路を推定する(後述)。
<操舵減少期間>
操舵増加期間終了後の操舵減少期間(即ち、車両Vの旋回角度θtotalが操舵切替角度θth以上となった後の期間)においては、操舵角θswが徐々に小さくなっていくため、平滑ヨーレートYsも次第に小さくなる。従って、現時点の平滑ヨーレートYsを用いて旋回半径Rを算出し、その旋回半径Rに基づいて予測経路を推定すると、その予測経路は実際の走行経路から乖離してしまう。
本願発明者らは、このような観点から検討を行った結果、操舵減少期間においては、操舵増加期間の終了直前の推定ヨーレートYestで車両Vが旋回を継続すると仮定し、その推定ヨーレートYestを用いて算出された旋回半径(後述する第2推定旋回半径Rest2)に基づいて予測経路を推定すれば、実際の走行経路により近い予測経路を推定できるとの知見を得た。
但し、上記場合A1と同様に、推定ヨーレートYestが直進閾値Y0以下である場合、第1変形装置は、推定ヨーレートYestを用いて算出した旋回半径Rではなく、直線相当値Rc(=12700m)に設定された旋回半径Rを用いて予測経路を推定する(後述)。
尚、旋回角度θtotalが操舵切替角度θthに達する直前の周期を周期mと規定した場合、「操舵増加期間終了直前の推定ヨーレートYest」とは、m周期目の推定ヨーレートYest(m)である。
但し、上記場合A3に関連した説明から明らかなように、操舵増加期間においてにゼロよりも大きい平滑ヨーレート変化量ΔYsがない場合、推定ヨーレートYestが算出されない。この場合、第1変形装置は、推定ヨーレートYestに代えて、m周期目の平滑ヨーレートYs(m)を用いて算出した旋回半径Rに基づいて予測経路を推定する。
操舵減少期間においては、操舵角θswが徐々に小さくなっていくため、m周期目の平滑ヨーレートYs(m)は、操舵減少期間における何れの時点の平滑ヨーレートYsよりも大きい。従って、第1変形装置は、操舵減少期間において、m周期目の平滑ヨーレートYs(m)に基づいて予測経路を推定することにより、現時点の平滑ヨーレートYsに基づいて予測経路を推定する場合に比べ、車両Vの実際の走行経路により近い予測経路を推定することができる。
但し、m周期目の平滑ヨーレートYs(m)が直進閾値Y0以下である場合、第1変形装置は、その平滑ヨーレートYs(m)を用いて算出した旋回半径Rではなく、直線相当値Rcに設定された旋回半径Rを用いて予測経路を推定する(後述)。
以下、操舵減少期間に算出される旋回半径Rを「第2推定旋回半径Rest2」と称呼する。
第1変形装置は、車両Vが右折する場合も上記場合A1乃至A3に関連して説明した方法と同様の方法により、旋回半径Rを設定し、その旋回半径Rに基づいて予測経路を推定する。
更に、第1変形装置は、車両Vの左折中、上記場合A1乃至A3に関連して説明した方法により旋回半径Rを設定し、その旋回半径に基づいて予測経路を推定する。即ち、第1変形装置は、左折待機条件が一旦成立すると、その後、左方向指示器が点滅状態から不灯状態に変化するまで、又は、旋回角度θtotalが旋回終了角度θend(=90°)よりも大きくなるまで予測経路を推定する。このため、第1変形装置は、車両Vが左折状態にあるか否かの判定(即ち、左折開始条件が成立したか否かの判定)を行わない。車両Vが右折する場合も同様である。
以上が第1変形装置の作動の概要である。以下、第1変形装置のより詳細な作動について、特に第1実施装置との相違点を中心として説明する。
<平滑ヨーレート変化量ΔYsの算出>
第1変形装置は、車両Vの実際の走行経路により近い予測経路の推定に必要な旋回半径(第1推定旋回半径Rest1、旋回半径R及び第2推定旋回半径Rest2)を算出するために、操舵増加期間(即ち、旋回角度θtotalが操舵切替角度θth(=45°)に達するまでの期間)においては、下式(24)に示したように、0周期目(n=0)の平滑ヨーレート変化量ΔYs(0)をゼロに設定する。
ΔYs(0)=0 …(24)
その後(n≧1)は、第1変形装置は、下式(25)に則って、n−1周期目の平滑ヨーレートYs(n-1)からのn周期目の平滑ヨーレートYs(n)の変化量を1周期目以降の平滑ヨーレート変化量ΔYs(n)として算出する。尚、所定演算時間Tcalは非常に小さい値であるため、この平滑ヨーレート変化量ΔYs(n)は、実質的には、平滑ヨーレートYs(n)の時間微分値dYs(n)/dtとして取り扱うことができる。
ΔYs(n)=Ys(n)−Ys(n-1) …(25)
一方、操舵減少期間においては、第1変形装置は、平滑ヨーレート変化量ΔYsを算出しない。
<平滑ヨーレート変化量ΔYsの変換値ΔYscの算出>
上述したように、第1変形装置は、平滑ヨーレート変化量ΔYsの値に応じて旋回半径Rの算出方法を切り替えるが、変化量ΔYsのままでは説明が煩雑になる。そこで、以下、変化量ΔYsを変換した値である変換値ΔYscを導入して説明を簡略化する。変換値ΔYscは、以下に述べるように算出される。
平滑ヨーレート変化量ΔYs(n)がゼロよりも大きい場合、第1変形装置は、下式(26)に示したように、平滑ヨーレート変化量ΔYs(n)を変換値ΔYsc(n)として設定する。
ΔYsc(n)=ΔYs(n)…(26)
これに対し、平滑ヨーレート変化量ΔYs(n)がゼロ以下であり且つ現時点の周期nよりも前の周期i(過去の周期i)においてゼロよりも大きい平滑ヨーレート変化量ΔYsがある場合、そのゼロよりも大きい平滑ヨーレート変化量ΔYsが算出された過去の周期iのうち現時点の周期nに最も近い周期を周期eと規定すると、第1変形装置は、下式(27)に示したように、e周期目の平滑ヨーレート変化量ΔYs(e)を変換値ΔYsc(n)として設定する。
ΔYsc(n)=ΔYs(e) …(27)
一方、平滑ヨーレート変化量ΔYs(n)がゼロ以下であり且つ過去の周期iにおいてゼロよりも大きい平滑ヨーレート変化量ΔYsがない場合、第1変形装置は、下式28に示したように、変換値ΔYsc(n)をゼロに設定する。
ΔYsc(n)=0 …(28)
以下、第1変形装置は、次に述べる各場合に応じて、第1推定旋回半径Rest1、旋回半径R及び第2推定旋回半径Rest2を算出する。
<<旋回角度θtotal(n)<操舵切替角度θth、且つ、変換値ΔYsc(n)>0の場合>>
〔所要時間Treqの算出〕
旋回角度θtotalが操舵切替角度θth(=45°)に達しておらず(即ち、操舵増加期間中)且つ現時点の変換値ΔYsc(n)がゼロよりも大きい場合、第1変形装置は、平滑ヨーレートYsが変換値ΔYsc(n)の割合で増加し続けると仮定し、車両Vが操舵切替残余角度Δθ(n)(=45°−θtotal(n))だけ旋回するのに要する時間Treq(n)(即ち、所要時間Treq(n))を下式(32)に則って算出する。
下式(32)は、以下に述べるように得られる。即ち、上記仮定の下においては、下式(29)が成立する。下式(29)を展開すると、下式(30)が得られる。下式(30)を変形すると、下式(31)が得られる。更に、下式(31)を所要時間Treq(n)について解くと、下式(32)が得られる。尚、式(29)の変換値ΔYsc(n)は、平滑ヨーレート変化量ΔYs(n)(即ち、時間微分値dYs(n)/dt)に対応する変換値である。
第1変形装置は、上式(32)に「操舵切替角度θth(=45°)、旋回角度θtotal(n)、平滑ヨーレートYs(n)及び変換値ΔYsc(n)」を代入して所要時間Treq(n)を算出する。
〔推定ヨーレートYestの算出〕
加えて、第1変形装置は、操舵切替残余角度Δθ(n)(=θth−θtotal(n))を算出し、その操舵切替残余角度Δθ(n)と上記所要時間Treq(n)とを下式(33)に代入することにより、旋回角度θtotal(n)が操舵切替角度θthに達するまで推定ヨーレートYest(n)を算出する。即ち、第1変形装置は、車両Vが操舵切替残余角度Δθ(n)を所要時間Treq(n)かけて旋回した場合のヨーレートの平均値を推定ヨーレートYest(n)として算出する。
Yest(n)=Δθ(n)/Treq(n) …(33)
〔第1推定旋回半径の算出〕
推定ヨーレートYest(n)が直進閾値Y0よりも大きい場合、第1変形装置は、下式(34)に示したように、平滑ヨーレートYs(n)ではなく、推定ヨーレートYest(n)で車速SPD(n)を除した値を第1推定旋回半径Rest1(n)として算出し、その第1推定旋回半径Rest1(n)を旋回半径R(n)に設定する。尚、直進閾値Y0は、「0」に近い推定ヨーレートYest(n)によって車速SPD(n)を除して第1推定旋回半径Rest1(n)を算出した場合に、その第1推定旋回半径Rest1(n)が過大になることを回避するための閾値であり、本例では、10−6である。
Rest1(n)=SPD(n)/Yest(n) …(34)
一方、例えば、車両Vが交差点で略直進している場合、平滑ヨーレートYs及び変換値ΔYscが非常に小さい値となるので、式(32)に則って算出される所要時間Treqは、非常に大きい値となり、その結果、式(33)に則って算出される推定ヨーレートYestは、略ゼロになる。この場合、式(34)に則って第1推定旋回半径Rest1(n)を算出すると、第1推定旋回半径Rest1(n)が過大な値となり、CPUの処理に負荷がかかる可能性がある。
そこで、第1変形装置は、推定ヨーレートYestが直進閾値Y0以下である場合、式(34)に代えて、下式(35)に示したように、第1推定旋回半径Rest1(n)を直線相当値Rc(=12700m)に設定する。
Rest1(n)=Rc=12700m …(35)
<<旋回角度θtotal(n)<操舵切替角度であり且つ変換値ΔYsc(n)=0である場合>>
〔旋回半径の算出〕
上式(28)に示したように、操舵増加期間において、過去の周期の総ての平滑ヨーレート変化量ΔYsがゼロ以下であり、その結果、現時点の変換値ΔYsc(n)がゼロであるときに、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0よりも大きい場合、第1変形装置は、下式(36)に示したように、車速SPD(n)を平滑ヨーレートYs(n)で除した値を旋回半径R(n)として設定する。
R(n)=SPD(n)/Ys(n) …(36)
一方、本願発明者らは、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0(=10−6)以下である場合、交差点内での予測経路の形状が略直線状であるほうが運転者に適切に注意喚起できるとの知見を得た。
そこで、第1変形装置は、操舵増加期間において現時点の変換値ΔYsc(n)がゼロであるときに、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合、下式(37)に示したように、直線相当値Rc(=12700m)を旋回半径R(n)として設定する。これにより、交差点内における予測経路の形状を略直線状とすることができる。
R(n)=Rc=12700m …(37)
尚、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下となる場合とは、典型的には、車両Vが一時停止している場合、車両Vが直進している場合、及び、車両Vが左折又は右折しようとしている方向とは反対方向に車両Vが旋回した結果、平滑ヨーレートYsが負の値として算出される場合である。
〔第2推定旋回半径の算出〕
操舵減少期間においては、第1変形装置は、第2推定旋回半径Rest2を以下に述べるように算出する。
旋回角度θtotalが操舵切替角度θth(=45°)に達した後、即ち、操舵減少期間中は、操舵角θswが徐々に小さくなっていくため、平滑ヨーレートYsも小さくなる。そこで、操舵減少期間中は、第1変形装置は、旋回角度θtotalが操舵切替角度θthに達する直前の周期mにおいて算出したm周期目の推定ヨーレートYest(m)で車両Vが旋回を継続すると仮定する。
但し、先に述べたように、変換値ΔYscがゼロよりも大きい場合にのみ、推定ヨーレートYestが算出される。このため、変換値ΔYscがゼロである場合、m周期目の推定ヨーレートYest(m)ではなく、m周期目の平滑ヨーレートY(m)で車両Vが旋回を継続すると仮定する。
即ち、第1変形装置は、m周期目の変換値ΔYsc(m)がゼロよりも大きく且つm周期目の推定ヨーレートYest(m)が直進閾値Y0(本例では、10−6)よりも大きい場合、下式(38)に示したように、車速SPD(n)をm周期目の推定ヨーレートYest(m)で除して第2推定旋回半径Rest2(n)を算出し、この第2推定旋回半径Rest2(n)を旋回半径R(n)として設定する。
Rest2(n)=SPD(n)/Yest(m) …(38)
一方、m周期目の推定ヨーレートYest(m)が直進閾値Y0以下である場合、第1変形装置は、下式(39)に示したように、直線相当値Rc(=12700m)を第2推定旋回半径Rest2(n)として設定し、この第2推定旋回半径Rest2(n)を旋回半径R(n)として設定する。
Rest2(n)=Rc=12700m …(39)
一方、m周期目の変換値ΔYsc(m)がゼロであるとき(即ち、操舵増加期間中の総ての平滑ヨーレート変化量ΔYsがゼロ以下であるとき)にm周期目の平滑ヨーレートYs(m)が直進閾値Y0よりも大きい場合、第1変形装置は、下式(40)に示したように、車速SPD(n)をm周期目の平滑ヨーレートYs(m)で除して第2推定旋回半径Rest2(n)を算出し、この第2推定旋回半径Rest2(n)を旋回半径R(n)として設定する。
Rest2(n)=SPD(n)/Ys(m) …(40)
一方、m周期目の変換値ΔYsc(m)がゼロであるときにm周期目の平滑ヨーレートYs(m)が直進閾値Y0以下である場合、第1変形装置は、下式(41)に示したように、直線相当値Rc(=12700m)を第2推定旋回半径Rest2(n)として設定し、この第2推定旋回半径Rest2(n)を旋回半径R(n)として設定する。
Rest2(n)=Rc=12700m …(41)
第1変形装置は、こうして設定された旋回半径R(n)に基づいて第1実施装置と同様の手順で予測経路式fL(n)、fR(n)を算出する。
第1変形装置は、車両Vが右折を開始しようとしていると判定した場合においても、車両Vが左折を開始しようとしていると判定した場合と同様にして旋回半径R(n)を設定する。
<第1変形装置の具体的な作動>
次に、第1変形装置の具体的な作動について説明する。第1変形装置の運転支援ECU10のCPU(以下、単に「CPU」と称呼する。)は、図13にフローチャートにより示したルーチンを所定演算時間Tcalの経過毎に実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、図13のステップ1300から処理を開始してステップ1305に進み、自車両情報を取得する。
次いで、CPUは、ステップ1310に進み、自車両情報に基づいて上記左折待機条件が成立しているか否かを判定する。左折待機条件が成立している場合(即ち、車両Vが左折を開始しようとしていると判定された場合)、CPUは、ステップ1310にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1315及びステップ1335の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1340に進む。
ステップ1315:CPUは、旋回角度θtotalを0°に設定(初期化)する。
ステップ1320:CPUは、左折フラグXLの値を「1」に設定すると共に右折フラグXRの値を「0」に設定する。
ステップ1325:CPUは、左折フラグXLの値が「1」である場合、上式(1L)、(2L)、(3)、(4)、(5L)及び(6L)の何れかに則って平滑ヨーレートYs(n)を算出する。一方、右折フラグXRの値が「1」である場合、上式(1R)、(2R)、(3)、(4)、(5R)及び(6R)の何れかに則って平滑ヨーレートYs(n)を算出する。
ステップ1330:CPUは、上式(7)及び(8)の何れかに則って瞬時旋回角度θ(n)を算出する。
ステップ1335:CPUは、上式(9)及び(10)の何れかに則って旋回角度θtotal(n)を算出する。
これに対し、CPUがステップ1310の処理を実行する時点において左折待機条件が成立していない場合、CPUは、ステップ1310にて「No」と判定してステップ1360に進み、左方向指示器が点滅しているか否かを判定する。尚、ステップ1310にて「No」と判定される場合とは、「前回の左折又は右折終了判定後に左折待機条件が成立したと初めて判定された後にステップ1310の判定が行われる場合」並びに「前回の左折又は右折終了判定後に左折待機条件が一度も成立していない場合」である。
いま、前回の左折又は右折終了判定後に左折待機条件が成立したと初めて判定された後にステップ1310の判定が行われた結果、CPUがステップ1310にて「No」と判定し、このとき、運転者が車両Vを左折させる意思を有しているために左方向指示器を点滅状態に維持していると仮定する。この場合、CPUは、ステップ1360にて「Yes」と判定し、先に述べたステップ1320乃至ステップ1335の処理を順に行い、その後、ステップ1340に進む。
CPUがステップ1360の処理を実行する時点において左方向指示器が点滅していない場合、CPUは、ステップ1360にて「No」と判定してステップ1365に進み、自車両情報に基づいて上記右折待機条件が成立しているか否かを判定する。
右折待機条件が成立している場合(即ち、車両Vが右折を開始しようとしていると判定された場合)、CPUは、ステップ1365にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1370及びステッ1375並びに先に述べたステップ1325乃至ステップ1335の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1340に進む。
ステップ1370:CPUは、旋回角度θtotalを0°に設定(初期化)する。
ステップ1375:CPUは、左折フラグXLの値を「0」に設定すると共に右折フラグXRの値を「1」に設定する。
CPUがステップ1365の処理を実行する時点において右折待機条件が成立していない場合、CPUは、ステップ1365にて「No」と判定してステップ1380に進み、右方向指示器が点滅しているか否かを判定する。尚、ステップ1365にて「No」と判定される場合とは、前回の左折又は右折終了判定後、右折待機条件が成立したと初めて判定された後にステップ1365の判定が行われる場合、及び、前回の左折又は右折終了判定後、右折待機条件が一度も成立していない場合である。
いま、前回の左折又は右折終了判定後に右折待機条件が成立したと初めて判定された後、ステップ1365の判定が行われた結果、CPUがステップ1365にて「No」と判定し、このとき、運転者が車両Vを右折させる意思を有しているために右方向指示器を点滅状態に維持していると仮定する。この場合、CPUは、ステップ1380にて「Yes」と判定し、先に述べたステップ1375及びステップ1325乃至ステップ1335の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1340に進む。
右方向指示器が点滅していない(不灯状態である)場合、CPUは、ステップ1380にて「No」と判定し、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
CPUは、ステップ1340に進むと、旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θend(=90°)以下であるか否かを判定する。旋回角度θtotal(n)が旋回終了角度θend以下である場合、CPUは、ステップ1340にて「Yes」と判定し(即ち、車両Vの左折中であると判定し)、ステップ1345に進み、旋回角度θtotal(n)が操舵切替角度θthよりも小さいか否かを判定する。旋回角度θtotal(n)が操舵切替角度θthよりも小さい場合、CPUは、ステップ1345にて「Yes」と判定し、ステップ1350に進む。
CPUは、ステップ1350に進むと、図14にフローチャートにより示したルーチンを実行するようになっている。従って、CPUは、ステップ1350に進むと、図14のステップ1400から処理を開始し、以下に述べるステップ1405及びステップ1410の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1415に進む。
ステップ1405:CPUは、上式(24)及び(25)の何れかに則って平滑ヨーレート変化量ΔYs(n)を算出してRAMに格納する。
ステップ1410:CPUは、上式(26)乃至(28)の何れかに則って平滑ヨーレート変化量ΔYs(n)を変換して変換値ΔYsc(n)を算出してRAMに格納する。
CPUは、ステップ1415に進むと、変換値ΔYsc(n)がゼロよりも大きいか否かを判定する。変換値ΔYsc(n)がゼロよりも大きい場合、CPUは、ステップ1415にて「Yes」と判定し、以下のステップ1420及びステップ1425の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1430に進む。
ステップ1420:CPUは、平滑ヨーレートYs(n)が変換値ΔYsc(n)の割合で増加し続けると仮定した場合に車両Vが操舵切替残余角度Δθ(n)(=θth−θtotal(n))を旋回するのに要する所要時間Treq(n)を上式(32)に則って算出してRAMに格納する。
ステップ1425:CPUは、上式(33)に則って操舵切替残余角度Δθ(n)を所要時間Treq(n)で除して推定ヨーレートYest(n)を算出してRAMに格納する。
CPUは、ステップ1430に進むと、推定ヨーレートYest(n)が直進閾値Y0(=10−6)よりも大きいか否かを判定する。推定ヨーレートYest(n)が直進閾値Y0よりも大きい場合、CPUは、ステップ1430にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1435及びステップ1440の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1495を経由して図13のステップ1395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1435:CPUは、上式(34)に示したように、車速SPD(n)を推定ヨーレートYest(n)で除して第1推定旋回半径Rest1(n)を算出してRAMに格納する。
ステップ1440:CPUは、上記第1推定旋回半径Rest1(n)を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
一方、推定ヨーレートYest(n)が直進閾値Y0以下である場合、CPUは、ステップ1430にて「No」と判定し、以下に述べるステップ1445及びステップ1450の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1495を経由して図13のステップ1395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1445:CPUは、上式(35)に示したように、直線相当値Rc(=12700m)を第1推定旋回半径Rest1(n)として設定してRAMに格納する。
ステップ1450:CPUは、上記第1推定旋回半径Rest1(n)を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
CPUがステップ1415の処理を実行する時点において変換値ΔYsc(n)がゼロである場合、CPUは、ステップ1415にて「No」と判定してステップ1455に進み、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0よりも大きいか否かを判定する。平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0よりも大きい場合、CPUは、ステップ1455にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1460の処理を行う。その後、CPUは、ステップ1495を経由して図13のステップ1395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1460:CPUは、上式(36)に示したように、車速SPD(n)を平滑ヨーレートYs(n)で除した値を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
一方、平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合、CPUは、ステップ1455にて「No」と判定し、以下に述べるステップ1465の処理を行う。その後、CPUは、ステップ1495を経由して図13のステップ1395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1465:CPUは、上式(37)に示したように、直線相当値Rc(=12700m)を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
CPUが図13のステップ1345の処理を実行する時点において旋回角度θtotal(n)が操舵切替角度θth以上である場合、CPUは、ステップ1345にて「No」と判定してステップ1355に進む。
CPUは、ステップ1355に進むと、図15にフローチャートにより示したルーチンを実行するようになっている。従って、CPUは、ステップ1355に進むと、図15のステップ1500から処理を開始してステップ1505に進み、RAMに格納されている変換値ΔYscのうち、最新の(直近の)変換値ΔYsc(m)がゼロよりも大きいか否かを判定する。
変換値ΔYsc(m)がゼロよりも大きい場合、CPUは、ステップ1505にて「Yes」と判定してステップ1510に進み、RAMに格納されている推定ヨーレートYestのうち、最新の(直近の)推定ヨーレートYest(m)が直進閾値Y0よりも大きいか否かを判定する。
推定ヨーレートYest(m)が直進閾値Y0よりも大きい場合、CPUは、ステップ1510にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1515及びステップ1520の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1595を経由して図13のステップ1395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1515:CPUは、上式(38)に示したように、n周期目の車速SPD(n)をm周期目の推定ヨーレートYest(m)で除してn周期目の第2推定旋回半径Rest2(n)を算出してRAMに格納する。
ステップ1520:CPUは、上記第2推定旋回半径Rest2(n)を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
これに対し、m周期目の推定ヨーレートYest(m)が直進閾値Y0以下である場合、CPUは、ステップ1510にて「No」と判定し、以下に述べるステップ1525及びステップ1530の処理を順に行う。
ステップ1525:CPUは、上式(39)に示したように、直線相当値Rc(=12700m)を第2推定旋回半径Rest2(n)として設定してRAMに格納する。
ステップ1530:CPUは、上記第2推定旋回半径Rest2(n)を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
CPUがステップ1505の処理を実行する時点においてm周期目の変換値ΔYsc(m)がゼロである場合、CPUは、ステップ1505にて「No」と判定してステップ1535に進み、RAMに格納されている平滑ヨーレートYsのうち、m周期目の平滑ヨーレートYs(m)が直進閾値Y0よりも大きいか否かを判定する。
m周期目の平滑ヨーレートYs(m)が直進閾値Y0よりも大きい場合、CPUは、ステップ1535にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1540及びステップ1545の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1595を経由して図13のステップ1395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1540:CPUは、上式(40)に示したように、n周期目の車速SPD(n)をm周期目の平滑ヨーレートYs(m)で除してn周期目の第2推定旋回半径Rest2(n)を算出してRAMに格納する。
ステップ1545:CPUは、上記第2推定旋回半径Rest2(n)を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
これに対し、m周期目の平滑ヨーレートYs(m)が直進閾値Y0以下である場合、CPUは、ステップ1535にて「No」と判定し、以下に述べるステップ1550及びステップ1555の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1595を経由して図13のステップ1395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1550:CPUは、上式(41)に示したように、直線相当値Rc(=12700m)を第2推定旋回半径Rest2(n)として設定してRAMに格納する。
ステップ1555:CPUは、上記第2推定旋回半径Rest2(n)を旋回半径R(n)として設定してRAMに格納する。
CPUが図13のステップ1340の処理を実行する時点において旋回角度θtotal(n)が90°よりも大きい場合、CPUは、ステップ1340にて「No」と判定し(即ち、車両Vが左折を終了したと判定し)、以下に述べるステップ1385の処理を行う。その後、CPUは、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1385:CPUは、左折フラグXL及び右折フラグXRの値をそれぞれ「0」に設定する。
以上が第1変形装置の具体的な作動である。第1変形装置は、第1実施装置と同様の作用効果を奏する。更に、第1変形装置は、「車両Vの現時点の旋回角度θtotal」と「現時点の変換値ΔYsc」とに応じて旋回半径Rの算出方法を切り替え、その旋回半径Rに基づいて推定した予測経路に基づいて運転者に対する注意喚起の要否を判定する。このため、常に現時点の平滑ヨーレートYsに基づいて予測経路を推定する場合に比べ、車両Vの実際の走行経路により近い予測経路を推定することができ、運転者に対してより適切に注意喚起することができる。
特に、旋回角度θtotal(n)が操舵切替角度θth(=45°)よりも小さく且つ変換値ΔYsc(n)がゼロよりも大きい場合、第1変形装置は、ヨーレートが一定の変化量で増加し続けると仮定し、車両Vが操舵切替残余角度Δθ(=θth−θtotal)だけ旋回するために要する所要時間Treqを算出し、その所要時間Treqから算出した推定ヨーレートYestに基づいて予測経路を算出する。このときに用いられる推定ヨーレートYestは、操舵増加期間における平滑ヨーレートYsよりも大きいので、この推定ヨーレートYestを用いて算出される第1推定旋回半径Rest1は、平滑ヨーレートYsを用いて算出される旋回半径Rよりも小さい。従って、第1推定旋回半径Rest1に基づいて算出される予測経路は、平滑ヨーレートYsを用いて算出される旋回半径Rに基づいて算出される予測経路に比べ、車両Vの実際の走行経路に近い。このため、運転者に対してより適切に注意喚起が行われる。
尚、図7のステップ740の処理を省略し、左折待機条件の成立後、左折開始条件が成立するまでの間において平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合(即ち、図7のステップ725にて「No」と判定される場合)、図11のステップ1120において各予測経路式fL(n)及びfR(n)をn周期目の車両進行方向に延びる直線の式として算出してもよい。
同様に、図9のステップ940の処理を省略し、右折待機条件の成立後、右折開始条件が成立するまでの間において平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合(即ち、図9のステップ925にて「No」と判定される場合)、図11のステップ1120において各予測経路式fL(n)及びfR(n)をn周期目の車両進行方向に延びる直線の式として算出してもよい。
更に、図14のステップ1445及びステップ1450並びにステップ1465の処理を省略し、操舵増加期間において推定ヨーレートYest(n)又は平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合(即ち、図14のステップ1430及びステップ1455それぞれにて「No」と判定される場合)、図11のステップ1120において各予測経路式fL(n)及びfR(n)をn周期目の車両進行方向に延びる直線の式として算出してもよい。
同様に、図15のステップ1525及びステップ1530並びにステップ1550及びステップ1555の処理を省略し、操舵減少期間において推定ヨーレートYest(n)又は平滑ヨーレートYs(n)が直進閾値Y0以下である場合(即ち、図15のステップ1510及びステップ1535それぞれにて「No」と判定される場合)、図11のステップ1120において各予測経路式fL(n)及びfR(n)をn周期目の車両進行方向に延びる直線の式として算出してもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る車両の運転支援装置(以下、「第2実施装置」と称呼する。)について説明する。第2実施装置は、注意喚起を行うべき物体が存在するか否かの判定手法が第1実施装置のそれとは異なる。
より具体的に述べると、第1実施装置は、物体の予測経路式g(n)によって表される直線(直線g(n))が「車両Vの予測経路の有効部分LLe及び/又はLRe」と1個又は2個の点(交点)で交差しているときに判定の対象となる点(交点)を特定してその点(交点)について時間条件が成立する場合、注意喚起を行った。
これに対し、第2実施装置は、直線g(n)が有効長さLLe及びLReを設定していない「車両Vの予測経路全体(即ち、円)」と2個又は4個の点(交点)で交差しているときにそれら点(交点)の中から判定の対象となる点(交点)を特定してその点(交点)に対して時間条件及び長さ条件が成立する場合、注意喚起を行う。
このように、第2実施装置は、直線g(n)が車両Vの予測経路全体と交差しているか否かを判定する点、及び、時間条件だけではなく長さ条件が成立するか否かを判定する点でのみ第1実施装置とは異なる。そこで、以下、図16を参照しつつ、第1実施形態との相違点を中心に第2実施装置について具体的に説明する。
<物体情報の取得>
第2実施装置は、第1実施装置と同様に、車両Vの周辺に存在する物体の物体情報を取得する。図16に示した例においては、第2実施装置は、n周期目の車両Vの周辺に存在する物体E乃至Iのn周期目の物体情報をそれぞれ取得する。
<物体の式gの算出>
第2実施装置は、第1実施装置と同様に、物体の予測経路式gを算出する。図16に示した例においては、第2実施装置は、物体E乃至Iの式ge(n)、gf(n)、gg(n)、gh(n)及びgi(n)をそれぞれ算出する。
<第2交差条件>
第2実施装置は、第1実施装置(又は第1変形装置)と同様にして、左端予測経路式fL(n)及び右端予測経路式fR(n)を算出する。更に、第2実施装置においては、左端予測経路式fL(n)と右端予測経路式fR(n)との間に対象領域r(n)が設けられている。第2実施装置は、式g(n)によって表される直線が「左端予測経路式fL(n)によって表される曲線」と「右端予測経路式fR(n)によって表される曲線」との少なくとも一方と交差しているとの条件(以下、「第2交差条件」とも称呼する。)が成立しているか否かを判定する。
図16に示した例においては、式ge(n)によって表される直線は、左端予測経路と点E1及び点E4で交差していると共に、右端予測経路と点E2及び点E3で交差している。このため、式ge(n)は、第2交差条件を満たしている。
式gf(n)によって表される直線は、左端予測経路と点F1及び点F4で交差していると共に、右端予測経路と点F2及び点F3で交差している。このため、式gf(n)も第2交差条件を満たしている。
式gg(n)によって表される直線は、左端予測経路と点G2で交差していると共に、右端予測経路と点G1で交差している。このため、式gg(n)も第2交差条件を満たしている。
式gh(n)によって表される直線は、左端予測経路と点H1及び点H2で交差している。このため、式gh(n)も第2交差条件を満たしている。
これに対し、式gi(n)によって表される直線は、左端予測経路及び右端予測経路の何れとも交差していない。このため、式gi(n)は、第2交差条件を満たしていない。
<交点の座標の算出>
第2実施装置は、式g(n)が第2交差条件を満たしている場合、式g(n)によって表される直線(直線g(n))が左端予測経路及び/又は右端予測経路と交差している点(以下、「第2交点」と称呼する。)の数を算出する。
第2交点の数が4個の場合、第2実施装置は、直線g(n)が物体の移動方向において対象領域r(n)外から対象領域r(n)内に進入する部分で左端予測経路及び右端予測経路の何れかと交差している2個の交点の座標を順に「交点Q1(n)の座標及び交点Q2(n)の座標」としてそれぞれ算出する。即ち、交点Q1(n)は、物体の移動方向において1個目の交点であり、交点Q2(n)は、物体の移動方向において3個目の交点である。
図16に示した例においては、式ge(n)については、第2交点の数が点E1乃至点E4の4個である。このため、第2実施装置は、式ge(n)によって表される直線が物体Eの移動方向(図16の紙面下方向)において、対象領域r(n)外から対象領域r(n)内に進入する部分で左側及び右端予測経路の何れかと交差している点E1及び点E3の座標を順に「交点Q1e(n)の座標及び交点Q2e(n)の座標」としてそれぞれ算出する。
同様に、式gf(n)についても、第2交点の数は点F1乃至点F4の4個である。このため、第2実施装置は、式gf(n)によって表される直線が物体Fの移動方向(図16の紙面上方向)において、対象領域r(n)外から対象領域r(n)内に進入する部分で左側及び右端予測経路の何れかと交差している点F1及び点F3の座標を順に「交点Q1f(n)の座標及び交点Q2f(n)の座標」としてそれぞれ算出する。
一方、第2交点の数が2個である場合、第2実施装置は、直線g(n)が物体の移動方向において対象領域r(n)外から対象領域r(n)内に進入する部分左側及び右端予測経路の何れかと交差している交点の座標を交点Q(n)の座標として算出する。即ち、交点Q(n)は、物体の移動方向において1個目の交点である。
図16に示した例においては、式gg(n)については、第2交点の数が点G1及び点G2の2個である。このため、第2実施装置は、式gg(n)によって表される直線が物体Gの移動方向(図16の紙面左方向)において対象領域r(n)外から対象領域r(n)内に進入する部分で右端予測経路と交差している点G1の座標を交点Qg(n)の座標として算出する。
同様に、式gh(n)についても、第2交点の数は点H1及び点H2の2個である。このため、第2実施装置は、式gh(n)によって表される直線が物体Hの移動方向(図16の紙面左方向)において対象領域r(n)外から対象領域r(n)内に進入する部分で左端予測経路と交差している点H1の座標を交点Qh(n)の座標として算出する。
以下、交点Q1(n)、Q2(n)及びQ(n)のそれぞれが左端予測経路上に位置している場合、車両左端OL(n)からその旋回方向における交点Q1(n)、Q2(n)及びQ(n)までの左端予測経路の長さ(経路に沿った弧の長さ)をそれぞれ「LL1(n)、LL2(n)及びLL(n)」と規定する。
加えて、交点Q1(n)、Q2(n)及びQ(n)のそれぞれが右端予測経路上に位置している場合、車両右端OR(n)からその旋回方向における交点Q1(n)、Q2(n)及びQ(n)までの右端予測経路の長さ(経路に沿った弧の長さ)をそれぞれ「LR1(n)、LR2(n)及びLR(n)」と規定する。
尚、LL1(n)の長さは、例えば、旋回中心座標(Cx(n),Cy(n))から交点Q1(n)に向かうベクトルと、旋回中心座標(Cx(n),Cy(n))から車両Vの位置O(n)に向かうベクトルとがなす角度に左端旋回半径RL(n)を乗じることにより算出される。他の長さの算出方法についても同様である。
<対象交点の特定>
第2実施装置は、特定された第2交点の数が2個であり、従って、交点Q1(n)及び交点Q2(n)の座標を算出した場合、「車両Vからその旋回方向における交点Q1(n)までの右端又は左端予測経路の長さ」と「車両Vからその旋回方向における交点Q2(n)までの右端又は左端予測経路の長さ」とを比較し、その長さが短い方の交点を対象交点Qt(n)として特定する。以下、具体的に説明する。
車両Vが右折する場合、交点Q1(n)(例えば、図16の交点Q1e(n))は、左端予測経路上に位置しており、交点Q2(n)(例えば、図16の交点Q2e(n))は、右端予測経路上に位置している。このため、第2実施装置は、「車両左端OL(n)からその旋回方向における交点Q1(n)(例えば、図16の交点Q1e(n))までの左端予測経路の長さLL1(n)」と「車両右端OR(n)からその旋回方向における交点Q2(n)(例えば、図16の交点Q2e(n))までの右端予測経路の長さLR2(n)」とを算出して両者の長さを比較し、より短い長さを有する交点(例えば、図16の交点Q1e(n))を対象交点Qt(n)として特定する。
同様に、車両Vが左折する場合は、交点Q1(n)は、右端予測経路上に位置しており、交点Q2(n)は、左端予測経路上に位置している。このため、第2実施装置は、「車両右端OR(n)からその旋回方向における交点Q1(n)までの右端予測経路の長さLR1(n)」と「車両左端OL(n)からその旋回方向における交点Q2(n)までの左端予測経路の長さLL2(n)」とを算出して両者の長さを比較し、より短い長さを有する交点を対象交点Qt(n)として特定する。
図16に示した例においては、車両Vが右折しているので、式ge(n)については、交点Q1e(n)は、左端予測経路上に位置しており、交点Q2e(n)は、右端予測経路上に位置している。「車両左端OL(n)からその旋回方向における交点Q1e(n)までの左端予測経路の長さLL1e(n)」と「車両右端OR(n)からその旋回方向における交点Q2e(n)までの右端予測経路の長さLR2e(n)」とを比較すると、長さLL1e(n)のほうが短いので、第2実施装置は、交点Q1e(n)を対象交点Qt(n)として特定する。
式gf(n)についても、交点Q1f(n)は、左端予測経路上に位置しており、交点Q2f(n)は、右端予測経路上に位置している。「車両左端OL(n)からその旋回方向における交点Q1f(n)までの左端予測経路の長さLL1f(n)」と「車両右端OR(n)からその旋回方向における交点Q2f(n)までの右端予測経路の長さLR2f(n)」とを比較すると、長さLR2f(n)のほうが短いので、第2実施装置は、交点Q2f(n)を対象交点Qt(n)として特定する。
以下、対象交点Qt(n)が左端予測経路上に位置している場合、車両左端OL(n)からその旋回方向における対象交点Qt(n)までの左端予測経路の長さを「LLt(n)」と称呼し、対象交点Qt(n)が右端予測経路上に位置している場合、車両右端OR(n)からその旋回方向における対象交点Qt(n)までの右端予測経路の長さを「LRt(n)」と称呼する。
<第2時間の算出>
第2実施装置は、時間条件が成立するか否かを判定するために、物体が予測経路に到達すると予測される時間t2(以下、「第2時間t2」と称呼する。)を算出する。具体的には、第2実施装置は、直線g(n)が左側又は右端予測経路と対象交点Qt(n)又は交点Q(n)で交差している物体について、その物体が対象交点Qt(n)又は交点Q(n)に到達するまでの第2時間t2(n)を算出する。第2時間t2(n)は、その物体の位置から対象交点Qt(n)又は交点Q(n)までの直線の長さを、その物体の移動速度v(n)で除して算出される。
図16に示した例においては、第2実施装置は、物体Eが対象交点Qte(n)に到達するまでの第2時間t2e(n)、物体Fが対象交点Qtf(n)に到達するまでの第2時間t2f(n)、物体Gが交点Qg(n)に到達するまでの第2時間t2g(n)、及び、物体Hが交点Qh(n)に到達するまでの第2時間t2h(n)をそれぞれ算出する。
<時間条件、長さ条件>
第2実施装置は、第2時間t2(n)が第2所定時間t2th(本例では、4秒)以下であるとの時間条件が成立しているか否かを判定する。第2実施装置は、何れかの式g(n)について時間条件が成立している場合、物体が第2所定時間以内に車両Vの予測経路を横切る可能性があると判断する。
このとき、第2実施装置が対象交点Qt(n)の座標を算出した場合、第2実施装置は、物体が車両Vの予測経路を横切る場所が予測経路の有効長さ以内の部分(予測経路の有効部分)に位置しているか否かを、対象交点Qt(n)が左端予測経路上に位置している場合には、下式(42)の不等式により示される長さ条件が成立しているか否かを判定することにより判定し、対象交点Qt(n)が右端予測経路上に位置している場合、下式(42)の不等式により示される長さ条件が成立しているか否かを判定することにより判定する。
長さLLt(n)≦左端有効長さLLe(n) …(42)
長さLRt(n)≦右端有効長さLRe(n) …(43)
一方、第2実施装置が交点Q(n)の座標を算出した場合、第2実施装置は、物体が車両Vの予測経路を横切る場所が予測経路の有効長さ以内の部分(予測経路の有効部分)に位置しているか否かを、交点Q(n)が左端予測経路上に位置している場合には、下式(44)の不等式により示される長さ条件が成立しているか否かを判定することにより判定し、交点Q(n)が右端予測経路上に位置している場合、下式(45)の不等式により示される長さ条件が成立しているか否かを判定することにより判定する。
長さLL(n)≦左端有効長さLLe(n) …(44)
長さLR(n)≦右端有効長さLRe(n) …(45)
第2実施装置は、何れかの式g(n)について上記長さ条件の何れかが成立する場合、物体が予測経路を横切る場所が予測経路の有効長さ以内の部分に位置している、即ち、対象物体が存在すると判定する。一方、何れの式g(n)についても上記長さ条件の何れも成立しない場合、第2実施装置は、物体が予測経路を横切る場所が予測経路の有効長さ以内の部分には位置していない、即ち、対象物体が存在しないと判定する。
図16に示した例において、例えば、第2時間t2e(n)が「1秒」であり、第2時間t2f(n)が「4秒」であり、第2時間t2g(n)が「3秒」であり、第2時間t2h(n)が「2秒」である場合、何れの式ge(n)、gf(n)、gg(n)及びgh(n)についても時間条件が成立している。このため、第2実施装置は、これらの式ge(n)乃至gh(n)について上記長さ条件が成立するか否かを判定する。
式ge(n)については、対象交点Qte(n)が算出されており、この対象交点Qte(n)は、左端予測経路上に位置しているので、第2実施装置は、上式(42)の長さ条件が成立するか否かを判定する。図16から明らかなように、長さLLte(n)は、左端有効長さLLe(n)よりも短いので、上式(42)の長さ条件が成立する。
式gf(n)については、対象交点Qtf(n)が算出されており、この対象交点Qtf(n)は、右端予測経路上に位置しているので、第2実施装置は、上式(43)の長さ条件が成立するか否かを判定する。図16から明らかなように、長さLRtf(n)は、右端有効長さLRe(n)よりも短いので、上式(43)の長さ条件が成立する。
式gg(n)については、交点Qg(n)が算出されており、この交点Qg(n)は、右端予測経路上に位置しているので、第2実施装置は、上式(45)の長さ条件が成立するか否かを判定する。図16から明らかなように、長さLRg(n)は、右端有効長さLRe(n)よりも長いので、上式(45)の長さ条件は成立しない。
式gh(n)については、交点Qh(n)が算出されており、この交点Qh(n)は、左端予測経路上に位置しているので、第2実施装置は、上式(44)の長さ条件が成立するか否かを判定する。図16から明らかなように、長さLLh(n)は、左端有効長さLLe(n)よりも長いので、上式(44)の長さ条件は成立しない。
以上より、式ge(n)及び式gf(n)については時間条件及び長さ条件が成立するので、第2実施装置は、対象物体(即ち、物体E及び物体F)が存在すると判定する。
一方、図16に示した例において、第2時間t2e(n)が「5秒」であり、第2時間t2f(n)が「10秒」であり、第2時間t2g(n)が「3秒」であり、第2時間t2h(n)が「2秒」である場合、第2実施装置は、式gg(n)及びgh(n)については時間条件が成立しているため、これら2つの式gg(n)及びgh(n)について上記の長さ条件が成立するか否か判定する。上述したように、式gg(n)及びgh(n)については長さ条件が成立しないため、第2実施装置は、対象物体が存在しないと判定する。
<注意喚起>
第2実施装置は、第1実施装置と同様に、対象物体が存在すると判定した場合、運転者に対して注意喚起を行い、対象物体が存在しないと判定した場合、運転者に対する注意喚起を行わない。
<第2実施装置の具体的な作動>
次に、第2実施装置の具体的な作動について説明する。第2実施装置の運転支援ECU10のCPU(以下、単に「CPU」と称呼する。)は、図11のステップ1130において、図17にフローチャートにより示したルーチンを実行するようになっている。尚、このルーチンでは、1つの物体についての物体情報が取得された場合について説明するが、複数の物体についての物体情報が取得された場合、各物体情報についてこのルーチンが繰り返される。CPUは、図11のステップ1130に進むと、図17のステップ1700から処理を開始し、以下に述べるステップ1705及びステップ1710の処理を順に行う。その後、CPUは、ステップ1715に進む。
ステップ1705:CPUは、先に述べたように車両Vの周辺に存在する物体のn周期目の物体情報を取得し、運転支援ECU10のRAM(以下、単に「RAM」と称呼する。)に格納する。
ステップ1710:CPUは、物体情報に基づいて物体のn周期目の予測経路式g(n)を算出してRAMに格納する。
CPUは、ステップ1715に進むと、物体の予測経路式g(n)が第2交差条件を満たしているか否かを判定する。物体の予測経路式g(n)が第2交差条件を満たしている場合、CPUは、ステップ1715にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1720の処理を行う。その後、CPUは、ステップ1725に進む。
ステップ1720:CPUは、先に述べたように、式g(n)によって表される直線が左端予測経路及び右端予測経路と4個の交点で交差している場合、それらの交点から交点Q1(n)及びQ2(n)の座標を算出してRAMに格納する。一方、式g(n)によって表される直線が左端予測経路及び/又は右端予測経路と2個の交点で交差している場合、それらの交点から交点Q(n)の座標を算出してRAMに格納する。
CPUは、ステップ1725に進むと、交点Q(n)の個数が2個であるか否かを判定する。交点Q(n)の個数が2個である場合(即ち、交点Q1(n)及びQ2(n)の座標が算出された場合)、CPUは、ステップ1725にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1730及びステップ1735の処理を順に行う。一方、交点Q(n)の個数が1個である場合(即ち、交点Q(n)の座標が算出された場合)、CPUは、ステップ1725にて「No」と判定し、以下に述べるステップ1735の処理のみを行う。
ステップ1730:CPUは、先に述べたように、2個の交点Q1(n)及びQ2(n)から対象交点Qt(n)を特定する。CPUは、その対象交点Qt(n)として特定された「交点Q1(n)及びQ2(n)の何れか」の座標を対象交点Qt(n)に更新してRAMに格納する。
ステップ1735:CPUは、先に述べたように、物体が交点Qt(n)又は交点Q(n)に到達するまでの時間(第2時間)t2(n)を算出してRAMに格納する。
次いで、CPUは、ステップ1740に進むと、第2時間t2(n)が時間条件(t2(n)≦第2所定時間=4秒)を満たしているか否かを判定する。第2時間t2(n)が時間条件を満たしている場合、CPUは、ステップ1740にて「Yes」と判定してステップ1745に進む。
CPUは、ステップ1745に進むと、上式(42)乃至(45)により示される長さ条件の何れかが成立しているか否かを判定する。長さ条件の何れかが成立している場合、CPUは、ステップ1745にて「Yes」と判定し(即ち、対象物体が存在すると判定し)、以下に述べるステップ1750の処理を行う。その後、CPUは、ステップ1795を経由して図11のステップ1195に進み、本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1750:CPUは、運転者に対して注意喚起を行うための要求信号を表示ECU20CPU及び警報ECU30のCPUに送信する。これにより、表示装置21及びブザー31によって注意喚起が実行される。
一方、CPUがステップ1715の処理を実行する時点において物体の予測経路式g(n)が第2交差条件を満たしていない場合、CPUは、ステップ1715にて「No」と判定し(即ち、対象物体が存在しないと判定し)、ステップ1795を経由して図11のステップ1195に進み、本ルーチンを一旦終了する。
CPUがステップ1740の処理を実行する時点において第2時間t2(n)が上記時間条件を満たしていない場合、CPUは、ステップ1740にて「No」と判定し(即ち、対象物体が存在しないと判定し)、ステップ1795を経由して図11のステップ1195に進み、本ルーチンを一旦終了する。
CPUがステップ1745の処理を実行する時点において長さ条件が成立していない場合、CPUは、ステップ1745にて「No」と判定し(即ち、対象物体が存在しないと判定し)、ステップ1795を経由して図11のステップ1195に進み、本ルーチンを一旦終了する。
以上が第2実施装置の具体的な作動である。第2実施装置によっても、第1実施装置と同様の作用効果が得られる。
尚、第2実施装置による旋回半径Rの算出方法は、第1実施装置と同じであった。しかしながら、第2実施装置に、第1実施形態の変形例において説明した旋回半径Rの算出方法を適用してもよい。
以上、本発明の実施形態及び変形例に係る運転支援装置について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施装置及び変形装置(以下、これらをまとめて「運転支援装置」と称呼する。)は、左端予測経路と右端予測経路の2つの予測経路を推定する代わりに、1つ又は3つ以上の予測経路を推定するようにも構成され得る。予測経路は、車両左端OL及び車両右端ORが通過すると予測される経路(即ち、左端予測経路及び右端予測経路)に限られない。例えば、予測経路は、車両基準点Oが通過すると予測される経路であってもよい。この場合、車両基準点Oは、車両左端OLと車両右端ORとの中央に限られず、車両Vの前端部の車幅方向中央に位置していてもよい。
更に、運転支援装置は、車両Vが交差点で左折又は右折する場合に限られず、車両Vが他の旋回可能な場所(例えば、駐車場の入口が隣接している道路、施設の駐車場等)で左折又は右折する場合にも運転者に対して注意喚起するようにも構成され得る。
更に、運転支援装置は、GNSS受信機を備えていてもよく、メモリには地図情報が格納されていてもよい。運転支援装置は、GNSSによる自己位置推定により車両Vが旋回場所に位置しているか否かを判定するようにも構成され得る。車両Vが旋回場所に位置していると判定された場合、運転支援装置は、地図情報に記載されている旋回場所の形状に基づいて旋回場所毎に「旋回残余角度を求めるための旋回終了角度θend」を算出するようにも構成され得る。この場合、GNSSによる自己位置推定が不可能な場所においては、上記実施装置及び変形装置に関連して説明した方法により車両Vが旋回場所に位置しているか否かを判定し、旋回終了角度θendを90°に設定するようにも構成され得る。
運転支援装置は、旋回場所に設置された路側機と通信可能な車載器を備えていてもよい。この場合、運転支援装置は、路側機との間で無線通信を行うことにより、車両Vが旋回場所に位置しているか否かを判定するように構成され得る。運転支援装置は、車両Vが旋回場所に位置していると判定した場合、旋回場所毎に「旋回残余角度を求めるための旋回終了角度θend」を算出するように構成され得る。この場合も、無線通信による自己位置推定が不可能な場所においては、上記実施装置及び変形装置に関連して説明した方法により車両Vが旋回場所に位置しているか否かを判定し、旋回終了角度θendを90°に設定するように構成され得る。
更に、運転支援装置は、左折待機条件が成立したと判定する条件として上記条件LW1乃至LW3のうちの1つを採用し、その条件が成立した場合、又は、上記条件LW1乃至LW3のうちの2つを採用し、これら条件の1つが成立した場合、左折待機条件が成立したと判定するように構成され得る。
同様に、運転支援装置は、右折待機条件が成立したと判定する条件として上記条件RW1乃至RW3のうちの1つを採用し、その条件が成立した場合、又は、上記条件RW1乃至RW3のうちの2つを採用し、これら条件の1つが成立した場合、右折待機条件が成立したと判定するように構成され得る。
更に、運転支援装置は、左折開始条件が成立したと判定する条件として上記条件LS1乃至LS6のうちの1つを採用し、その条件が成立した場合、又は、上記条件LS1乃至LS6のうちの2つ乃至5つを採用し、これら条件の1つが成立した場合、左折開始条件が成立したと判定するように構成され得る。
同様に、運転支援装置は、右折開始条件が成立したと判定する条件として上記条件RS1乃至RS6のうちの1つを採用し、その条件が成立した場合、又は、上記条件RS1乃至RS6のうちの2つ乃至5つを採用し、これら条件の1つが成立した場合、右折開始条件が成立したと判定するように構成され得る。
運転支援装置は、ヨーレートセンサ17が検出したヨーレートYを用いる代わりに「横加速度Gy及び車速SPDから推定したヨーレートY」又は「操舵角θsw及び車速SPDから推定したヨーレートY」を用いるように構成され得る。
運転支援装置は、車両Vの左折又は右折が終了したか否かを判定するために旋回角度θtotalが旋回終了角度θendよりも大きいか否かの判定を行わずに、方向指示器が点滅状態から不灯状態に変化した場合にのみ、車両Vの左折又は右折が終了したと判定するように構成され得る。
更に、運転支援装置は、前方レーダーセンサ16L及び16Rの代わりに、カメラ又は路側機を用いて物体情報を取得するように構成され得る。
更に、運転支援装置は、左側通行の道路を走行する車両だけではなく、右側通行の道路を走行する車両に搭載され得る。