本発明は、アクティブフィルタ内蔵機器に関するものである。
空気調和装置などでは、高調波電流が電力系統(例えば商用電源を含む電力系統)に流出するのを防止するために、アクティブフィルタ装置が設けられる場合がある(例えば特許文献1を参照)。
しかしながら、空気調和装置が接続される電力系統には、該空気調和装置以外の負荷器(例えばインバータ回路などを有した機器。一例としてエレベータなど)も接続される場合があり、空気調和装置以外の負荷器が高調波電流の発生源となることがある。その場合には、空気調和装置の高調波電流の対策を行うのみでは不十分であり、他の機器を含めて高調波電流の対策が望まれる。また、設備容量の低減や省エネルギーの観点などから、基本波力率の改善が求められる。
本発明は、アクティブフィルタ装置を内蔵したアクティブフィルタ内蔵機器において、アクティブフィルタ内蔵機器とは異なる他の負荷器も含めて、アクティブフィルタ装置が作用できるようにすることを目的としている。
前記の課題を解決するため、第1の態様は、
アクティブフィルタ装置(4)を内蔵するとともに、交流電源(3)に接続されるアクティブフィルタ内蔵機器において、
前記アクティブフィルタ装置(4)は、当該アクティブフィルタ内蔵機器の外部において前記交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部(5)の検出値に基づいて動作するように構成されていることを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、アクティブフィルタ内蔵機器の外部の電力系統における交流電源(3)の負荷情報に基づいてアクティブフィルタ装置(4)が機能する。
また、第2の態様は、第1の態様において、
前記アクティブフィルタ装置(4)は、前記検出値に基づいて、前記交流電源(3)における高調波電流の低減及び前記交流電源(3)における基本波力率の改善の少なくとも一方を行うための電流を出力することを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、アクティブフィルタ装置(4)によって、高調波電流の低減及び基本波力率の改善の少なくとも一方が行われる。
また、第3の態様は、第1の態様において、
前記アクティブフィルタ装置(4)は、当該アクティブフィルタ内蔵機器に搭載された制御器(43)によってその動作が制御され、
前記制御器(43)は、前記交流電源(3)に接続された他の負荷器(20)における無効電流に相当する電流値(iq2*)と、前記交流電源(3)から当該アクティブフィルタ内蔵機器に流れる電流の電流値(ir1,it1)とを用いて、前記アクティブフィルタ装置(4)が出力する電流(Ic)の大きさを求めることを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、他の負荷器(20)における無効電流に基づいて力率の改善を図るようにした。そのため、電力系統に空気調和装置とともに他の負荷が接続された場合において、アクティブフィルタ装置の容量を大きくすることなく、力率の改善を図ることが可能になる。
また、第4の態様は、第3の態様において、
前記アクティブフィルタ装置(4)は、前記無効電流に相当する電流値(iq2*)として該無効電流の基本波成分のみを用いることを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、他の負荷器(20)が出力する高調波電流が小さい乃至は出力しない構成において、力率の改善を行うのに適した構成である。
また、第5の態様は、第1の態様において、
前記交流電源(3)には、当該アクティブフィルタ内蔵機器と並列に接続され、該交流電源(3)における無効電力を制御する調相設備(200)が接続され、
前記アクティブフィルタ装置(4)は、前記交流電源(3)の無効電力及び電源力率の少なくとも1つに基づいて、前記調相設備(200)の前記無効電力の制御による進み力率が改善するように動作することを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、アクティブフィルタ装置(4)が動作した際、調相設備(200)とは対照的に、実際の電源力率は目標力率よりも遅れ力率となる。そこで、ここでは、調相設備(200)の無効電力の制御によって実際の電源力率が目標力率よりも進み力率となることを、アクティブフィルタ装置(4)の動作を制御することによって改善する。これにより、調相設備(200)が起因して実際の電源力率が進み力率となる現象は簡易に改善され、実際の電源力率の適切な補償及び基本波力率の改善を図ることができる。従って、交流電源(3)の電力系統の電力損失の増加、及び、当該系統の電圧の不必要な上昇等の障害の発生の可能性を抑制することができる。
また、第6の態様は、第1の態様において、
前記交流電源(3)に接続された、当該アクティブフィルタ内蔵機器以外の負荷器(10)及び調相設備(200)の無効電流に相当する電流値(iq)と、前記交流電源(3)から前記負荷器(10)に流れる電流の電流値(ir1,it1)とを用いて、前記アクティブフィルタ装置(4)が出力する電流(Ic)の大きさを求めることを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、アクティブフィルタ内蔵機器以外の負荷器及び調相設備の無効電流を把握し、それを補償するように電流(Ic)が流される。
また、第7の態様は、第1から第6の態様の何れかにおいて、
前記負荷情報検出部(5)は、電流値(Irs,Its)を検出するように構成され、検出した電流値(Irs,Its)の送信方式が無線方式であることを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、無線方式の採用により、配線の省略が可能になる。
また、第8の態様は、第1から第7の態様の何れかにおいて、
前記負荷情報検出部(5)は、無電源方式で動作することを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、無電源方式の採用により、配線の省略が可能になる。
また、第9の態様は、第1から第8の態様の何れかにおいて、
前記負荷情報検出部(5)には、電流値(Irs,Iss,Its)を検出する電流検出器(4a,4b,4c)が、前記交流電源(3)の各相(R,S,T)に対応して設けられていることを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、負荷器(1,2)が単相交流で動作する機器であっても、電流値を確実に検出できる。
第1の態様によれば、アクティブフィルタ装置を内蔵したアクティブフィルタ内蔵機器において、アクティブフィルタ内蔵機器とは異なる、交流電源に接続された他の負荷器も含めて、アクティブフィルタ装置が作用することが可能になる。
また、第2の態様によれば、複数の負荷器が接続された電力系統において、高調波電流の低減及び基本波力率の改善の少なくとも一方を図ることが可能になる。
また、第3の態様によれば、アクティブフィルタ装置の大型化を抑制しつつ、力率の改善を図ることが可能になる。
また、第4の態様によれば、アクティブフィルタ内蔵機器とともに電力系統に接続された負荷において、高調波電流対策が不要の場合に適した補償電流の生成が可能になる。
また、第5の態様によれば、調相設備が起因して実際の力率が進み力率となる現象は簡易に改善され、実際の力率の適切な補償及び基本波力率の改善を図ることができる。従って、交流電源の電力系統の電力損失の増加、及び、当該系統の電圧の不必要な上昇等の障害の発生の可能性を抑制することができる。
また、第6の態様によれば、調相設備を有したビル等における力率を改善することが可能になる。
また、第7の態様や第8の態様によれば、機器の設置が容易になる。
また、第9の態様によれば、負荷器が単相交流で動作する機器であっても、確実に前記効果を得ることが可能になる。
図1は、実施形態1にかかる空気調和システムを示すブロック図である。
図2は、実施形態1にかかる制御器の一例を示すブロック図である。
図3は、実施形態2にかかる空気調和システムを示すブロック図である。
図4は、実施形態3にかかる空気調和システムを示すブロック図である。
図5は、実施形態4にかかる空気調和システムを示すブロック図である。
図6は、実施形態4にかかる制御器を示すブロック図である。
図7は、実施形態5に係る空気調和システムを示すブロック図である。
図8は、実施形態5の変形例に係る空気調和システムを示すブロック図である。
図9は、実施形態6に係る空気調和システムを示すブロック図である。
図10は、調相設備の構成を模式的に示す。
図11は、実施形態7に係る電源力率制御システムの構成を示すブロック図である。
図12は、実施形態7に係る調相設備制御器の構成を示すブロック図である。
図13は、調相機器の切替組合せテーブルの概念図である。
図14は、実施形態7において、アクティブフィルタ装置による補償がなされていない状態と、アクティブフィルタ装置による補償がなされた状態とを示す図である。
図15は、実施形態7に係るアクティブフィルタ制御器の構成を示すブロック図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1にかかる空気調和システム(100)を示すブロック図である。この例では、空気調和システム(100)は、空気調和装置(11)とアクティブフィルタ装置(4)とを備えている。空気調和システム(100)は、マンション、工場、ビルや戸建て住宅等(以下、ビル等)に設置され、空気調和装置(11)によって室内の空気調和(冷房や暖房)を行う。
空気調和装置(11)が設置されるビル等には、交流電源(3)を含む電力系統から電力が供給されている。この例では、交流電源(3)は、三相の交流電源(例えば三相の商用電源)であり、複数の負荷器(後述)に電力を分岐して供給する。そして、このビル等には、交流電源(3)に接続され、交流電源(3)からの交流電力を受電する分電盤(60)が設けられている。分電盤(60)は、複数のブレーカを備えており、各ブレーカを介して、交流電源(3)からの交流電力を複数の機器に分岐させている。この例では、それらのブレーカの1つに空気調和装置(11)が接続されている。空気調和装置(11)は、分電盤(60)を介して供給された交流電力によって稼働する。すなわち、空気調和システム(100)は、アクティブフィルタ装置(4)を内蔵するとともに、交流電源(3)に接続されるアクティブフィルタ内蔵機器の一例である。なお、アクティブフィルタ内蔵機器は、ビルに設けられたエレベータ、ファン、ポンプ、エスカレータ、三相電源で駆動する照明である場合もある。
また、分電盤(60)には、空気調和装置(11)の他にも負荷器(2)が接続されている。この例では、負荷器(2)は、インバータ回路などの高調波電流の発生源となり得る回路を備えている機器(高調波発生負荷器と命名する)とする。負荷器(2)としては、ビルに設けられたエレベータ、ファン、ポンプ、エスカレータ、三相電源で駆動する照明、更には、アクティブフィルタなどの高調波対策を実施していない、空気調和装置(11)とは別の空気調和装置などを例示できる。
〈空気調和装置(11)〉
空気調和装置(11)は、圧縮機を有した冷媒回路(図示を省略)、及び電力変換装置(1)を備え、アクティブフィルタ装置(4)が組み込まれている。電力変換装置(1)は、交流電源(3)に接続された負荷器であって、前記高調波発生負荷器の一例である。電力変換装置(1)は、分電盤(60)を介して交流電源(3)に接続されている。この電力変換装置(1)は、コンバータ回路とインバータ回路とを有している(何れも図示を省略)。電力変換装置(1)に供給された交流電力は、この電力変換装置(1)によって、所望周波数及び所望電圧を有した交流電力に変換され、圧縮機(より詳しくは圧縮機が備える電動機)に供給されている。それにより、圧縮機が稼働して冷媒回路が機能し、その結果、室内の空気調和が行われる。
空気調和装置(11)において、電力変換装置(1)や圧縮機の電動機が稼働すると、高調波電流が発生する場合がある。この高調波電流は、分電盤(60)から空気調和装置(11)へ電力を供給する電流経路を介して、交流電源(3)に流出する可能性がある。このような高調波電流は、一般的には、交流電源(3)側への流出レベルが規制されているので、空気調和システム(100)では、アクティブフィルタ装置(4)によって、流出する高調波電流の低減を図っている。また、設備容量や省エネルギーの観点などから、配電・受電端の基本波力率の改善が求められるところ、本実施形態のアクティブフィルタ装置(4)は、基本波力率の改善機能も備えている。以下では、アクティブフィルタ装置(4)の構成について説明する。
〈アクティブフィルタ装置(4)〉
アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和装置(11)に組み込まれており、前記高調波発生負荷器から流出する高調波電流を打ち消す機能を有する。すなわち、アクティブフィルタ装置(4)は、交流電源(3)と分電盤(60)とを結ぶ電流経路(以下、受電経路とも呼ぶ)における電流が正弦波に近づくように電流(補償電流)を流す。より具体的には、受電経路に現れている高調波電流を検出し、検出した高調波電流とは逆位相の補償電流を生成して空気調和装置(11)の受電経路(図1の受電経路(12))に供給する。
空気調和装置(11)において発生する高調波電流が最も大きくなるのは、空気調和装置(11)の負荷がもっとも大きな場合(例えば冷房の最大出力時)と考えられる。そのため、アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和装置(11)の負荷最大時における高調波電流を想定して能力(生成可能な電力の大きさ)が設定されている。一般的に空気調和装置(11)は、最大負荷の状態で使用されることよりも中間の負荷で使用されることが多いので、このように能力が設定されたアクティブフィルタ装置(4)は、稼働中には、空気調和装置(11)の高調波電流対策のみに使用したとすれば、能力が余剰となる期間が多いと考えられる。
また、このアクティブフィルタ装置(4)は、基本波力率改善の機能を有する。この例では、基本波の無効成分も補償する補償電流を流すようにアクティブフィルタ装置(4)を構成することで、基本波の力率改善を行う。アクティブフィルタ装置(4)におけるこれらの機能を実現するため、本実施形態のアクティブフィルタ装置(4)は、図1に示すように、電流源(30)、制御器(43)、電圧検出器(46)、第1電流検出部(5)、及び第2電流検出部(47)を備えている。
−電圧検出器、電流検出部−
電圧検出器(46)は、交流電源(3)の電圧(Vrs)を検出するセンサである。
また、第2電流検出部(47)は、アクティブフィルタ装置(4)に入力される電流値(以下、電流値(Ir2a,It2a)と命名する)を検出するためのものである。この例では、第2電流検出部(47)は、電流検出器(45a)と電流検出器(45b)とを備えている。電流検出器(45a)は、交流電源(3)からアクティブフィルタ装置(4)に入力されるR相の電流値(Ir2a)を検出し、電流検出器(45b)は、交流電源(3)からアクティブフィルタ装置(4)に入力されるT相の電流値(It2a)を検出する。それぞれの電流検出器(45a,45b)の検出値は、制御器(43)(より詳しくは後述の第2電流演算部(434))に送信されている。
それぞれの電流検出器(45a,45b)の構成は、特に限定はないが、例えばカレントトランスを採用することなどが考えられる。これらの電流検出器(45a,45b)は、制御器(43)に対して、有線方式で検出値を送信するように構成してもよいし、無線方式で検出値を送信するように構成してもよい。なお、図1では、第2電流検出部(47)を構成する電流検出器(45a,45b)を2相分しか記載していないが、第2電流検出部(47)に3つの電流検出器を設けて3相分の電流を検出する構成でも問題ない。
一方、第1電流検出部(5)は、負荷情報検出部の一例であり、空気調和装置(11)の受電経路(12)における電流値を検出する。詳しくは、第1電流検出部(5)は、交流電源(3)からの電流が、各負荷器(高調波発生負荷器)に分岐する前の段階における該交流電源(3)の電流値を検出する。この例では、第1電流検出部(5)は、電流検出器(4a)と電流検出器(4b)とを備えている。これらの電流検出器(4a,4b)は、分電盤(60)に入力される前の段階の交流電源(3)の電流を検出する。より具体的には、電流検出器(4a)は、交流電源(3)におけるR相の電流値(Irs)を検出し、電流検出器(4b)は、交流電源(3)におけるT相の電流値(Its)を検出する。それぞれの電流検出器(4a,4b)の検出値は、制御器(43)(より詳しくは後述の第1電流演算部(435))に送信されている。
それぞれの電流検出器(4a,4b)の構成には、特に限定はないが、例えばカレントトランスを採用することなどが考えられる。電流検出器(4a)や電流検出器(4b)は、制御器(43)に対して、有線方式で検出値を送信するように構成してもよいし、無線方式で検出値を送信するように構成してもよい。
また、第1電流検出部(5)は、分電盤(60)の内側に設置される構成でもよいし、外側に設置される構成でもよいが、本実施形態は、電流検出器(4a,4b)は、分電盤(60)内に設置されている。電流検出器(4a,4b)が分電盤(60)内に設置されることにより、電流検出器(4a,4b)等に雨風が当ることが無くなるため、電流検出器(4a,4b)の信頼性を高めることや寿命を延ばすことができる効果がある。また、電流検出器(4a,4b)の検出値は、無線方式で制御器(43)に送信される構成としている。分電盤(60)と空気調和装置(11)との距離は、20〜30メートル離れることがある。そのため、分電盤(60)内の電流検出器(4a,4b)から空気調和装置(11)までを有線で接続するにはかなりの手間が掛かる。それに対し、本実施形態では、電流検出器(4a,4b)の検出値が無線方式で制御器(43)に送信されるように構成されているので有線の工事を削減できる。
また、電流検出器(4a,4b)に流れる電流により電流検出器(4a,4b)を貫く磁束が時間に対して変化する現象を電磁誘導といい、その電磁誘導によって生じる起電力である誘導起電力を、第1電流検出部(5)を駆動させる電源(例えば通信のための電源)として利用してもよい。そのことにより、第1電流検出部(5)は、無電源方式で動作(すなわち第1電流検出部(5)の外部から電源を接続せずに動作)できる。第1電流検出部(5)を無電源方式で動作できるように構成することで、工事の手間などを削減できる効果がある。
−電流源(30)−
電流源(30)は、高調波電流の低減、及び基本波力率改善を行うための電流(すなわち補償電流)を生成する。電流源(30)の出力端子は、電力変換装置(1)の受電経路(12)に接続されており、生成された補償電流は受電経路(12)に出力される。本実施形態の電流源(30)は、いわゆるインバータ回路を用いて構成されている。電流源(30)には、制御器(43)より、後述するスイッチング指令値(G)が入力されている。電流源(30)は、スイッチング指令値(G)に応じてスイッチングすることによって、補償電流を生成する。
−制御器(43)−
図2は、実施形態1にかかる制御器(43)の一例を示すブロック図である。制御器(43)は、電流源(30)の出力電流を制御する。この例では、制御器(43)は、ゲートパルス発生器(431)、電流指令演算部(432)、負荷電流演算部(433)、第2電流演算部(434)、第1電流演算部(435)、及び位相検出部(436)を備えている。制御器(43)は、例えば、マイクロコンピュータと、それを動作させるためのプログラムを格納したメモリディバイスを用いて構成することができる。
位相検出部(436)は、電圧検出器(46)が検出した電圧(Vrs)が入力されており、受電経路(12)における電源電圧の位相を検出し、検出した位相を第1電流演算部(435)及び第2電流演算部(434)に送信する。
第1電流演算部(435)は、位相検出部(436)によって検出された位相と、電流検出器(4a,4b)によって検出された電流値(Irs,Its)とに基づいて、高調波電流の補償(高調波電流の低減)と、基本波の無効成分の補償(基本波の力率改善)の双方を行うために必要な電流(第1電流値(i1)とする)を求め、第1電流値(i1)を負荷電流演算部(433)に出力する。より具体的には、電流検出器(4a,4b)の検出値(電流値(Irs,Its))から高調波電流成分と、基本波の無効成分とを抽出して、第1電流値(i1)として出力する。
また、第2電流演算部(434)は、位相検出部(436)によって検出された位相と、電流検出器(45a,45b)によって検出された電流値(Ir2a,It2a)とに基づいて、現時点での高調波電流の補償(高調波電流の低減)と、基本波の無効成分の補償(基本波の力率改善)の双方を行っているアクティブフィルタ装置(4)に流れ込む電流(第2電流値(i2)とする)を求め、第2電流値(i2)を負荷電流演算部(433)に出力する。より具体的には、電流検出器(45a,45b)の検出値(電流値(Ir2a,It2a))から高調波電流成分と、基本波の無効成分とを抽出して、第2電流値(i2)として出力する。
負荷電流演算部(433)は、負荷器(2)(三相の高調波発生負荷器)と、電力変換装置(1)(高調波発生負荷器)とに流れる電流を算出する。ここで、三相の高調波発生負荷器の一例である負荷器(2)に入力される各相の電流値(Ir1L,Is1L,It1L)、空気調和装置(11)に入力される各相の電流値(Ir2,Is2,It2)、電力変換装置(1)(すなわち高調波発生負荷器)に入力される各相の電流値(Ir2L,Is2L,It2L)、及びアクティブフィルタ装置(4)に入力される各相の電流値(Ir2a,Is2a,It2a)の間には、各相について以下の関係式が成り立つ。
R相:Irs=Ir1L+Ir2=Ir1L+Ir2L+Ir2a
S相:Iss=Is1L+Is2=Is1L+Is2L+Is2a ・・・・(1)
T相:Its=It1L+It2=It1L+It2L+It2a
これらの関係式から分かるように、交流電源(3)に流れる各相の電流値(Irs,Iss,Its)からアクティブフィルタ装置(4)に入力される各相の電流値(Ir2a,Is2a,It2a)を減算すると以下の式のようになる。
R相:Irs-Ir2a=Ir1L+Ir2−Ir2a=Ir1L+Ir2L+Ir2a−Ir2a
S相:Iss-Is2a=Is1L+Is2−Is2a=Is1L+Is2L+Is2a−Is2a ・・・・(2)
T相:Its-It2a=It1L+It2−It2a=It1L+It2L+It2a−It2a
これらの(2)式は、以下のように整理できる。
Irs−Ir2a=Ir1L+Ir2L
Iss−Is2a=Is1L+Is2L ・・・・(3)
Its−It2a=It1L+It2L
前記の(3)式から分かるように、交流電源(3)に流れる各相の電流値(Irs,Iss,Its)からアクティブフィルタ装置(4)に入力される各相の電流値(Ir2a,Is2a,It2a)を減算することにより、負荷器(2)(三相の高調波発生負荷器)と、電力変換装置(1)(高調波発生負荷器)とに流れる電流を求めることができる。そのことを利用して、本実施形態では、負荷器(2)と電力変換装置(1)の基本波力率及び発生する高調波を抑制し、交流電源(3)近くの配電・受電端の基本波力率の改善、及び高調波電流の低減を実現する。具体的に本実施形態では、負荷電流演算部(433)が、負荷器(2)と電力変換装置(1)に流れる電流を演算して電流指令演算部(432)に出力する。具体的には負荷電流演算部(433)は、第1電流値(i1)−第2電流値(i2)を演算して電流指令演算部(432)に出力する。
電流指令演算部(432)は、負荷電流演算部(433)で演算した電流の逆位相の電流値を演算して、その値を電流指令値(Iref)としてゲートパルス発生器(431)に出力する。ゲートパルス発生器(431)は、電流源(30)を構成するインバータ回路におけるスイッチングを指示するスイッチング指令値(G)を生成する。詳しくは、ゲートパルス発生器(431)は、電流源(30)の出力電流値と電流指令値(Iref)との偏差に基づいてスイッチング指令値(G)を生成する動作を繰り返すフィードバック制御を行う。それにより、電流源(30)からは、電流指令値(Iref)に相当する電流(補償電流)が受電経路(12)に供給される。より詳しくは、ゲートパルス発生器(431)では、第2電流演算部(434)で求めた第2電流値(i2)が電流指令値(Iref)に一致するように、スイッチング指令値(G)を電流源(30)に出力する。そのことにより、負荷器(2)と電力変換装置(1)に流れる電流に含まれている高調波成分とアクティブフィルタ装置(4)が出力する電流が相殺され、交流電源(3)から流れる電流は、高調波電流が除去された正弦波となり、力率が改善される。
〈アクティブフィルタ装置(4)の動作〉
アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和システム(100)に組み込まれているので、空気調和システム(100)に通電すると、アクティブフィルタ装置(4)も稼働状態となる。
電流指令演算部(432)によって電流指令値(Iref)が生成されると、ゲートパルス発生器(431)がスイッチング指令値(G)を生成し、電流源(30)からは電流指令値(Iref)に相当する補償電流が受電経路(12)に出力される。本実施形態では、空気調和装置(11)のみでなく、他の負荷器(2)を起因とする高調波電流を低減したり基本波力率を改善したりすることが可能になる。
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態によれば、複数の負荷器(ここでは、電力変換装置(1)や負荷器(2))が接続された電力系統において、高調波電流の低減を図ることが可能になる。更には、本実施形態では、基本波力率の改善を図ることも可能になる。
《発明の実施形態2》
図3は、本発明の実施形態2にかかる空気調和システム(100)を示すブロック図である。実施形態1と異なる点は、高調波発生負荷器である他の負荷器(21)が単相電圧で駆動する機器であり、他の負荷器(21)は、LEDなどの照明機器や単相のファン・ポンプなどを想定している。本実施形態では、他の負荷器(21)、すなわち単相電圧で駆動する機器の接続相が判らない場合を想定して、第1電流検出部(5)には、3つの電流検出器(4a,4b,4c)を設けて、交流電源(3)の各相(R,S,T)の電流値(すなわち3相すべての電流値)を検出している。すなわち、この構成では、負荷器(21)が単相交流で動作する機器であっても、電流値を確実に検出できる。
以上の構成により、本実施形態によれば、空気調和装置(11)とともに単相の他の負荷器(21)が接続された場合において、高調波電流の低減を図ることが可能になる。更には、本実施形態では、基本波力率の改善を図ることも可能になる。
なお、単相の負荷器(21)が接続される、交流電源(3)の相が予め分かっている場合には、負荷器(21)が接続される2つの相のみに電流検出器(4a,4b)をそれぞれ設置するように第1電流検出部(5)を構成してもよい。
《発明の実施形態3》
図4は、本発明の実施形態3にかかる空気調和システム(100)を示すブロック図である。実施形態1と異なる点は、図4に示すように、電力系統に、複数台の負荷器が接続されている点である。具体的にこの電力系統には、三相の高調波発生負荷器である負荷器(22)と、三相の高調波発生負荷器である負荷器(21)とが接続されている。すなわち、本実施形態では、電力変換装置(1)の他に、高調波発生負荷器(三相)が2台ある。このように、高調波発生負荷器(三相)が複数台になっても、実施形態1と同様の制御を行うことで、同様の効果が得られる。すなわち、本実施形態によれば、空気調和装置(11)とともに、他の負荷器(21,22)が複数台接続された場合において、高調波電流の低減を図ることが可能になる。更には、本実施形態では、基本波力率の改善を図ることも可能になる。
《発明の実施形態4》
図5は、本発明の実施形態4にかかる空気調和システムを示すブロック図である。実施形態1と異なる点は、図5に示すように、電力系統に複数台(この例では2台)の空気調和装置(11,11)が設けられていることである。この例では、これらの空気調和装置(11,11)は、それぞれアクティブフィルタ装置(4)を備えている。空気調和装置(11)が複数台になることにより、アクティブフィルタ装置(4)の電流負担容量を減らすことが可能になる。そのため、本実施形態では、アクティブフィルタ装置(4)の電流容量を低減してコストを下げることができるし、小型にできる効果がある。
図6に本実施形態における制御器(43)のブロック図の一例を示す。実施形態1と異なる点は、電流検出器(4a,4b)により検出された、交流電源(3)に流れる各相の電流値(Irs,Its)を制御器(43)の台数演算部(437)に入力しているところである。台数演算部(437)は、高調波発生負荷器である負荷器(21)の高調波電流の低減及び力率を改善するために、その低減、改善を負担するアクティブフィルタ装置(4)の台数を考慮する。本実施形態では、1台の負荷器(21)(すなわち高調波発生負荷器)に対してアクティブフィルタ装置(4)が2台あるので、これらのアクティブフィルタ装置(4)の電流容量が同じであるとすると、台数演算部(437)は、電流検出器(4a,4b)により検出された電流値(Irs)及び電流値(Its)のそれぞれを2で割って求めた各値を第1電流演算部(435)に出力する。それにより、1台のアクティブフィルタ装置(4)で分担する相毎の補償電流を求めることができる。この例では、それぞれのアクティブフィルタ装置(4)の出力電力は、1台のアクティブフィルタ装置(4)で補償電流を出力する場合の半分になる。
また、アクティブフィルタ装置(4)の電流容量が互いに異なる場合には、電流容量に応じて分担する電流を求める。例えば一方のアクティブフィルタ装置(4)の電流容量が10kW、もう一方のアクティブフィルタ装置(4)の電流容量が50kWであるとしたら、10kWのアクティブフィルタ装置(4)の台数演算部(437)は、電流検出器(4a,4b)により検出された電流値(Irs)及び電流値(Its)のそれぞれを6で割って求めた各値を第1電流演算部(435)に出力する。第1電流演算部(435)では、台数演算部(437)から送られてきたこれらの値に応じて第1電流値(i1)を出力する。また、50kWのアクティブフィルタ装置(4)の台数演算部(437)は、電流検出器(4a,4b)により検出された電流値(Irs,Its)に5/6を掛けた値を第1電流演算部(435)に出力する。第1電流演算部(435)では、台数演算部(437)から送られてきた値に応じて第1電流値(i1)を出力する。それぞれのアクティブフィルタ装置(4)の出力電力は、1台のアクティブフィルタ装置(4)で補償電流を出力する場合よりも低減する。
以上のように、本実施形態によれば、電力系統に複数台の空気調和装置(11,11)とともに他の負荷器(21)が接続された場合において、高調波電流の低減を図ることが可能になる。更には、本実施形態では、基本波力率の改善を図ることも可能になる。
《発明の実施形態5》
図7は、本発明の実施形態5に係る空気調和システム(100)を示すブロック図である。空気調和システム(100)は、アクティブフィルタ内蔵機器の一例であって、空気調和装置(11)とアクティブフィルタ装置(4)とを内蔵している。空気調和システム(100)は、ビル、工場、マンション、戸建て住宅等(以下、ビル等)に設置される。ビル等には、交流電源(3)を含む電力系統から電力が供給されている。この例では、交流電源(3)は、三相の交流電源(商用電源)である。
また、ビル等には、交流電源(3)に接続されて交流電源(3)からの交流電力を受電する分電盤(60)が設けられている。分電盤(60)は、複数のブレーカを備えており、各ブレーカを介して、交流電源(3)からの交流電力を複数の機器に分配している。この例では、それらのブレーカの1つに空気調和システム(100)が接続されている。空気調和システム(100)は、分電盤(60)を介して供給された交流電力によって稼働する。
具体的に、空気調和装置(11)は、冷媒が循環して冷凍サイクル運転動作を行う冷媒回路(図示省略)を備え、ビル等において室内の冷房や暖房を行う。空気調和装置(11)の冷媒回路は、冷媒を圧縮する圧縮機を備えている。また、空気調和装置(11)は、図7に示すように、コンバータ回路(511)、リアクトル(512)、コンデンサ(513)、インバータ回路(514)、及びモータ(515)を備えている。
コンバータ回路(511)は、交流を直流に変換する回路である。例えばコンバータ回路(511)は、ダイオードブリッジ回路で構成される。コンデンサ(513)は、コンバータ回路(511)の出力を平滑化するものである。また、インバータ回路(514)は、コンデンサ(513)によって平滑化された直流を、所定周波数及び所定電圧を有した交流に変換する。インバータ回路(514)は、具体的には、ブリッジ接続された複数(ここでは6個)のスイッチング素子を備え、入力された直流をスイッチングすることで、直流を交流に変換する。
空気調和装置(11)のモータ(515)は、いわゆるIPMモータ(Interior Permanent Magnet Motor)である。モータ(515)は、前記圧縮機を駆動する。ここで、何らの手当も行わないとすれば、モータ(515)が稼働することにより、電力系統の電流(以下、系統電流(Is))に高調波電流が加わる。
また、ブレーカの1つには、空気調和装置(11)とは別の負荷器(20)も接続されている。ここでは、負荷器(20)の一例として、エレベータを挙げる。エレベータは、図7に示すように、コンバータ回路(521)、リアクトル(522)、コンデンサ(523)、インバータ回路(524)、及びモータ(525)を備えている。コンバータ回路(521)は、交流を直流に変換する回路であり、空気調和装置(11)のコンバータ回路(511)と同様の構成である。コンデンサ(523)は、コンバータ回路(521)の出力を平滑化する。また、インバータ回路(524)は、コンデンサ(523)によって平滑化された直流を、所定周波数及び所定電圧を有した交流に変換する。インバータ回路(524)は、コンバータ回路(511)を同様の構成を有している。モータ(525)も、いわゆるIPMモータであり、前記エレベータを駆動する。ここで、何らの手当も行わないとすれば、モータ(525)が稼働することにより、系統電流(Is)に高調波電流が加わる。
〈アクティブフィルタ装置の構成〉
図7に示すように、アクティブフィルタ装置(4)は、電流源(5110)、力率制御器(5120)、及びPWM制御器(5140)を備えている。この例では、アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和装置(11)とともに空気調和システム(100)に組み込まれている。アクティブフィルタ装置(4)は、後述の補償電流(Ic)を電源系統に流すことで、力率改善と空気調和装置(11)の高調波抑制とを行う。なお、ここでは、補償電流(Ic)は、一例として、アクティブフィルタ装置(4)から交流電源(3)に向かう方向を正とする。また、系統電流(Is)と補償電流(Ic)の和が、電源系統(交流電源(3))から空気調和装置(11)に流れる電流(負荷電流(I1))と電源系統(交流電源(3))から負荷器(20)に流れる電流(負荷電流(I2))との和に等しいものとする。
−電流源(5110)−
電流源(5110)は、インバータ回路(5111)とコンデンサ(5113)を備えている。コンデンサ(5113)は、例えば電解コンデンサで構成される。インバータ回路(5111)は、補償電流(Ic)を入出力することにより、コンデンサ(5113)に充放電を行わせる。この例では、インバータ回路(5111)は、交流電源(3)に三相のリアクトル(5160)を介して接続されている。
本実施形態のインバータ回路(5111)では、詳細な図示を省略するが、6つのスイッチング素子(5112)がブリッジ接続されている。このインバータ回路(5111)は、所定周波数のキャリア信号に同期して、複数のスイッチング素子(5112)のスイッチング状態(オンオフ状態)をそれぞれ変化させて、補償電流(Ic)を入出力する。スイッチング素子(5112)のオンオフの制御は、PWM制御器(5140)が行う。なお、この例では、補償電流(Ic)のリプルを除去する目的で、ローパスフィルタ(5150)が、リアクトル(5160)と、ブレーカと空気調和装置(11)の接続点との間に設けられている。ローパスフィルタ(5150)は、いわゆるLCフィルタである。
−力率制御器(5120)−
力率制御器(5120)は、電源位相検出器(5121)、位相演算部(5122)、3つの電流センサ(5123,5124,5125)、3つのdq変換器(5126,5127)、ハイパスフィルタ(5129)、2つの加算器(5130,5132)、3つの減算器(5131,5133,5135)、電圧制御器(5134)、及び2つの電流制御器(5136,5137)を備えている。力率制御器(5120)の主要部は、具体的には、マイクロコンピュータと、それを動作させるためのソフトウエアが格納されたメモリディバイス等を用いて構成することができる。
電源位相検出器(5121)は、交流電源(3)の所定の線間(r相,s相,t相の何れか2つ)に接続され、その線間電圧の位相を検出して位相演算部(5122)に出力する。位相演算部(5122)は、電源位相検出器(5121)が出力した信号(ゼロクロス信号(S1)と呼ぶ)を用いて、電源位相検出器(5121)が接続された線間の位相(ωt)を求める。位相演算部(5122)は、求めた位相(ωt)をdq変換器(5126)、dq変換器(5127)、及びdq変換器(5128)に出力する。
電流センサ(5123)は、空気調和システム(100)の外部に設けられており、負荷電流(I1)を検出する。負荷電流(I1)は三相であるが、電流センサ(5123)は、三相のうちの二相分の負荷電流(ir1,it1)を検出している。電流センサ(5124)は、補償電流(Ic)を検出する。補償電流(Ic)も三相であるが、電流センサ(5124)は、三相のうちの二相分の負荷電流を検出している。また、電流センサ(5125)は、空気調和システム(100)の外部に設けられており、負荷電流(I2)を検出する。負荷電流(I2)も三相であるが、電流センサ(5125)は、三相のうちの二相分の負荷電流(ir2,it2)を検出している。なお、負荷電流(I1,I2)や補償電流(Ic)は、三相のうちの二相の電流値を検出しておけば、残りの一相の電流値は容易に算出することができるので、各電流センサ(5123,5124,5125)は、二相分の電流を検出する構成でよい。また、これらの電流センサ(5123,5124,5125)には種々の構成の電流センサを採用できる。これらの電流センサ(5123,5124,5125)の一例としては、カレントトランスが挙げられる。また、電流センサ(5125)の検出値を無線方式でdq変換器(5128)に送信するように構成することも可能である。
dq変換器(5126)は、電流センサ(5123)の検出値から求めた負荷電流(I1)(三相)に対して三相/二相変換(dq軸変換)を行う。ここで、d軸及びq軸は、位相演算部(5122)で求められた位相(ωt)と同期して回転する回転座標系である。dq変換器(5126)の変換結果として得られたq軸成分(以下、q軸成分(iq1*))は、空気調和装置(11)における無効電流である。一方、変換結果として得られたd軸成分は、空気調和装置(11)における有効電流である。dq変換器(5126)は、q軸成分(iq1*)を加算器(5130)に出力し、d軸成分をハイパスフィルタ(5129)に出力する。
dq変換器(5127)は、電流センサ(5124)の検出値から求めた補償電流(Ic)に対して三相/二相変換を行って、有効電流であるd軸成分(以下、d軸電流(id)と呼ぶ)と、無効電流であるq軸成分(以下、q軸電流(iq)と呼ぶ)とを求める。d軸電流(id)は、減算器(5135)に出力され、q軸電流(iq)は、減算器(5131)に出力される。
また、dq変換器(5128)は、電流センサ(5125)の検出値から求めた負荷電流(I2)(三相)に対して三相/二相変換を行って、q軸成分(iq2*)を求める。q軸成分(iq2*)は、負荷器(20)における無効電流である。dq変換器(5128)が求めたq軸成分(iq2*)は、加算器(5130)に出力されている。これにより、加算器(5130)からは、q軸成分(iq1*)とq軸成分(iq2*)との加算値が出力される。この加算値は、アクティブフィルタ装置(4)が設置されているビル等における無効電流の合計値と考えてよい。すなわち、この加算値は、補償電流(Ic)として流すべき電流のq軸成分と考えてよい。以下では、この加算値をq軸電流指令値(iq*)と呼ぶことにする。
ハイパスフィルタ(5129)は、dq変換器(5126)が出力した負荷電流(I1)のd軸成分から直流成分を除去して、加算器(5132)に出力する。dq変換器(5126)の出力は、負荷電流(I1)に高調波成分が無ければ直流となる。これは、負荷電流(I1)のうちで交流電源(3)の位相と同期する成分が直流として現れるからである。すなわち、ハイパスフィルタ(5129)は、負荷電流(I1)のd軸成分に含まれる高調波成分のみを加算器(5132)に出力する。
補償電流(Ic)におけるd軸成分及びq軸成分のそれぞれが、負荷電流(I1)の高調波成分とそれぞれ一致するように、補償電流(Ic)を流したとすれば、負荷電流(I1)の高調波成分を打ち消すことができる(以下、このように、所定の成分が打ち消されるように電流を流すことを補償と呼ぶ)。すなわち、ハイパスフィルタ(5129)の出力は、補償電流(Ic)のd軸成分(d軸電流(id))の指令値(d軸電流指令値(id*))の生成に用いることができる。
一方、dq変換器(5126)が出力する負荷電流(I1)のq軸成分(iq1*)は、直流成分も含んでいる。そのため、このq軸成分(iq1*)に相当する電流を、補償電流(Ic)に重畳することで、負荷電流(I1)が含む高調波成分の低減に加え、基本波力率も改善することが可能になる。
なお、この例では、d軸電流指令値(id*)として、ハイパスフィルタ(5129)の出力をそのまま用いるのではなく、コンデンサ(5113)の端子間電圧(以下、直流電圧(Vdc))の変動に対応するための修正が行われている。具体的に力率制御器(5120)では、まず、減算器(5133)によって、コンデンサ(5113)の直流電圧(Vdc)とその指令値(Vdc*)との偏差が求められる。電圧制御器(5134)は、減算器(5133)によって求められた偏差に基づいて比例積分制御を行って修正値を求める。この修正値は、加算器(5132)においてハイパスフィルタ(5129)の出力と加算され、加算結果がd軸電流指令値(id*)として出力される。これにより、直流電圧(Vdc)の変動の影響が低減される。
減算器(5135)は、d軸電流(id)をd軸電流指令値(id*)から差し引いた偏差(Δid)を求め、偏差(Δid)を電流制御器(5136)に出力する。また、減算器(5131)は、q軸電流(iq)をq軸成分(iq1*)から差し引いた偏差(Δiq)を求め、偏差(Δiq)を電流制御器(5137)に出力する。
電流制御器(5136)は、偏差(Δid)に基づいてフィードバック制御(例えば、いわゆるPID制御)等のアルゴリズムを利用することによって、二相の電圧指令値のうちの1つであるd軸電圧指令値(Vid)を出力する。また、電流制御器(5137)は、偏差(Δiq)に基づいてフィードバック制御(例えば、いわゆるPID制御)等のアルゴリズムを利用することによって、二相の電圧指令値のうちの1つであるq軸電圧指令値(Viq)を出力する。
−PWM制御器(5140)−
PWM制御器(5140)は、d軸電圧指令値(Vid)及びq軸電圧指令値(Viq)に基づいて電流源(5110)を駆動するスイッチング指令値(駆動信号(G))を生成する。具体的に、PWM制御器(5140)は、いわゆるPWM(pulse width modulation)制御を行って、電流源(5110)に補償電流(Ic)の入出力を行わせる。PWM制御器(5140)は、マイクロコンピュータと、それを動作させるためのソフトウエアが格納されたメモリディバイスを用いて構成することができる。
〈アクティブフィルタ装置の動作〉
アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和システム(100)に組み込まれているので、アクティブフィルタ装置(4)を稼働させるには、空気調和システム(100)に通電させる。そうすると、アクティブフィルタ装置(4)では、力率制御器(5120)において、電流センサ(5123)の検出値等に基づいて、負荷電流(I1)のq軸成分(iq1*)が求められる。また、電流センサ(5125)の検出値に基づいて、q軸成分(iq2*)が、dq変換器(5128)によって求められる。
負荷電流(I1)のq軸成分(iq1*)と、負荷電流(I2)のq軸成分(iq2*)とは、加算器(5130)で加算され、q軸電流指令値(iq*)として出力される。このq軸電流指令値(iq*)からは、dq変換器(5127)が求めたq軸電流(iq)が、減算器(5131)によって減算されて、偏差(Δiq)として出力される。
更に、力率制御器(5120)では、dq変換器(5126)等の動作によってd軸電流指令値(id*)が生成される。このd軸電流指令値(id*)からは、dq変換器(5127)が求めたd軸電流(id)が、減算器(5135)によって減算されて、偏差(Δid)として出力される。
偏差(Δid)が定まると、電流制御器(5136)からd軸電圧指令値(Vid)が出力される。また、偏差(Δiq)が定まると、電流制御器(5137)からq軸電圧指令値(Viq)が出力される。それにより、d軸電圧指令値(Vid)及びq軸電圧指令値(Viq)に見合った駆動信号(G)がPWM制御器(5140)からインバータ回路(5111)に出力される。その結果、電流源(5110)からは、d軸電流指令値(id*)及びq軸電流指令値(iq*)に相当する成分を有した補償電流(Ic)が流れる。これにより、系統電流(Is)からは、空気調和装置(11)による高調波電流が低減するとともに、基本波力率が改善する。
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態では、空気調和装置(11)に関しては、その有効電流の高調波成分及び無効電流を補償して、高調波電流の低減と力率改善の両方を行っている。一方、空気調和装置(11)と同じ電力系統に接続された他の負荷器(20)に関しては、その無効電流のみに基づいて力率改善(補償)を行い、有効電流に関しては補償を行っていない。すなわち、アクティブフィルタ装置(4)では、他の負荷器(20)に関して有効電流の補償を行わないので、その分のアクティブフィルタ装置(4)の容量を確保する必要がない。したがって、本実施形態を適用すれば、電力系統に空気調和装置(11)とともに別の負荷器(20)が接続された場合において、アクティブフィルタ装置(4)の容量を大きくすることなく、力率の改善を図ることが可能になる。本実施形態は、空気調和装置(11)に組み込まれているアクティブフィルタ装置(4)の余力を利用してビル等全体の力率改善を図る場合に有用な形態である。
《実施形態5の変形例》
図8は、実施形態5の変形例に係る空気調和システム(100)を示すブロック図である。同図に示すように、本変形例に係る空気調和システム(100)は、実施形態5のアクティブフィルタ装置(4)にローパスフィルター(5138)を追加したものである。また、この例では、空気調和装置(11)とは別の負荷器(20)として、電流に高調波成分を含まない誘導性のモータ(525)が接続されている。この場合も、何らの手当も行わないとすれば、系統電流(Is)は、遅れ位相となる。
本変形例では、図8に示すように、dq変換器(5128)のq軸成分がローパスフィルター(5138)を通してq軸成分(iq2*)として出力されるように構成されている。そのため、本変形例では、負荷器(20)の無効電流の基本波成分のみが補償される。すなわち、本変形例は、他の負荷器(20)の無効電流が、高調波成分を含まない場合に有用な構成である。
《発明の実施形態6》
図9は、本発明の実施形態6に係る空気調和システム(100)を示すブロック図である。空気調和システム(100)は、アクティブフィルタ内蔵機器の一例であって、空気調和装置(11)とアクティブフィルタ装置(4)とを内蔵している。空気調和システム(100)は、ビル、工場、マンション等に設置される。ビル等には、交流電源(3)を含む電力系統から電力が供給されている。この例では、交流電源(3)は、三相の交流電源(商用電源)である。なお、電力系統の送電網には、インピーダンスがある(図9では、交流電源(3)と分電盤(60)(後述)の間に、当該インピーダンスを示すためにコイルの記号を付与してある)。調相設備(200)の存在によって、交流電源(3)から分電盤(60)に電力が入る段階で、電流は進み位相となる傾向があり、当該インピーダンスの存在によって、分電盤(60)での受電電圧は、交流電源よりも高くなる。
また、ビル等には、交流電源(3)に接続されて交流電源(3)からの交流電力を受電する分電盤(60)が設けられている。分電盤(60)は、複数のブレーカを備えており、各ブレーカを介して、交流電源(3)からの交流電力を複数の機器に分配している。この例では、それらのブレーカの1つに空気調和システム(100)が接続されている。空気調和システム(100)は、分電盤(60)を介して供給された交流電力によって稼働する。
具体的に、空気調和装置(11)は、冷媒が循環して冷凍サイクル運転動作を行う冷媒回路(図示省略)を備え、ビル等において室内の冷房や暖房を行う。空気調和装置(11)の冷媒回路は、冷媒を圧縮する圧縮機を備えている。また、空気調和装置(11)は、図9に示すように、コンバータ回路(611)、リアクトル(612)、コンデンサ(613)、インバータ回路(614)、及びモータ(615)を備えている。
コンバータ回路(611)は、交流を直流に変換する回路である。例えばコンバータ回路(611)は、ダイオードブリッジ回路で構成される。コンデンサ(613)は、コンバータ回路(611)の出力を平滑化するものである。また、インバータ回路(614)は、コンデンサ(613)によって平滑化された直流を、所定周波数及び所定電圧を有した交流に変換する。インバータ回路(614)は、具体的には、ブリッジ接続された複数(ここでは6個)のスイッチング素子を備え、入力された直流をスイッチングすることで、直流を交流に変換する。
空気調和装置(11)のモータ(615)は、いわゆるIPMモータ(Interior Permanent Magnet Motor)である。モータ(615)は、前記圧縮機を駆動する。ここで、何らの手当も行わないとすれば、モータ(615)が稼働することにより、電力系統の電流(以下、系統電流(Is))に高調波電流が加わる。すなわち、空気調和装置(11)は、高調波発生機器の一例である。なお、図示は省略するが、このビル等には、空気調和装置(11)以外の負荷器(例えばエレベータなど)も分電盤(60)を介して電力供給を受けている。
また、ビル等には、調相設備(200)が設けられている。図10に、調相設備(200)の構成を模式的に示す。図10に示すように、調相設備(200)は、直列接続された進相コンデンサ(201)とリアクトル(202)とから成る直列ユニットを3組(3相分)備えている。各直列ユニットは、図10に示すように、分電盤(60)の入力側に設けられている。詳しくは、各直列ユニットは、一端側が交流電源(3)の所定の一相に接続され、他端側が互いに接続されている。なお、以下では、調相設備(200)に流れる電流を進相コンデンサ電流(Isc)と命名する。
〈アクティブフィルタ装置の構成〉
図9に示すように、アクティブフィルタ装置(4)は、電流源(6110)、力率制御器(6120)、及びPWM制御器(6140)を備えている。この例では、アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和装置(11)とともに空気調和システム(100)に組み込まれている。アクティブフィルタ装置(4)は、後述の補償電流(Ic)を電源系統に流すことで、力率改善と空気調和装置(11)の高調波抑制とを行う。なお、ここでは、補償電流(Ic)は、一例として、アクティブフィルタ装置(4)から交流電源(3)に向かう方向を正とする。また、系統電流(Is)と補償電流(Ic)の和が、電源系統(交流電源(3))から空気調和装置(11)に流れる電流(負荷電流(I1))と調相設備(200)に流れる進相コンデンサ電流(Isc)との和に等しいものとする。
−電流源(6110)−
電流源(6110)は、インバータ回路(6111)とコンデンサ(6113)を備えている。コンデンサ(6113)は、例えば電解コンデンサで構成される。インバータ回路(6111)は、補償電流(Ic)を入出力することにより、コンデンサ(6113)に充放電を行わせる。この例では、インバータ回路(6111)は、交流電源(3)に三相のリアクトル(6160)を介して接続されている。
本実施形態のインバータ回路(6111)では、詳細な図示を省略するが、6つのスイッチング素子(6112)がブリッジ接続されている。このインバータ回路(6111)は、所定周波数のキャリア信号に同期して、複数のスイッチング素子(6112)のスイッチング状態(オンオフ状態)をそれぞれ変化させて、補償電流(Ic)を入出力する。スイッチング素子(6112)のオンオフの制御は、PWM制御器(6140)が行う。なお、この例では、補償電流(Ic)のリプルを除去する目的で、ローパスフィルタ(6150)が、リアクトル(6160)と、ブレーカと空気調和装置(11)の接続点との間に設けられている。ローパスフィルタ(6150)は、いわゆるLCフィルタである。
−力率制御器(6120)−
力率制御器(6120)は、電源位相検出器(6121)、位相演算部(6122)、3つの電流センサ(6123,6124,6125)、3つのdq変換器(6126,6127,6128)、ハイパスフィルタ(6129)、加算器(6132)、3つの減算器(6131,6133,6135)、電圧制御器(6134)、及び2つの電流制御器(6136,6137)を備えている。力率制御器(6120)の主要部は、具体的には、マイクロコンピュータと、それを動作させるためのソフトウエアが格納されたメモリディバイス等を用いて構成することができる。
電源位相検出器(6121)は、交流電源(3)の所定の線間(r相,s相,t相の何れか2つ)に接続され、その線間電圧の位相を検出して位相演算部(6122)に出力する。位相演算部(6122)は、電源位相検出器(6121)が出力した信号(ゼロクロス信号(S1)と呼ぶ)を用いて、電源位相検出器(6121)が接続された線間の位相(ωt)を求める。位相演算部(6122)は、求めた位相(ωt)をdq変換器(6126)、dq変換器(6127)、及びdq変換器(6128)に出力する。
電流センサ(6123)は、空気調和システム(100)の外部に設けられており、負荷電流(I1)を検出する。負荷電流(I1)は三相であるが、電流センサ(6123)は、三相のうちの二相分の負荷電流(ir1,it1)を検出している。電流センサ(6124)は、補償電流(Ic)を検出する。補償電流(Ic)も三相であるが、電流センサ(6124)は、三相のうちの二相分の負荷電流を検出している。
また、電流センサ(6125)は、負荷情報検出部の一例であり、系統電流(Is)を検出する。ここで、系統電流(Is)は、調相設備(200)も含めたビル等全体における電流である。この例では、電流センサ(6125)は、分電盤(60)内に設けられている。すなわち、電流センサ(6125)は、空気調和システム(100)の外部に設けられている。電流センサ(6125)は、分電盤(60)の入力側であって、且つ、調相設備(200)よりも交流電源(3)寄りで電流値(系統電流(Is))を検出する。系統電流(Is)も三相であるが、電流センサ(6125)は、三相のうちの二相分の系統電流(ir2,it2)を検出している。電流センサ(6125)の検出値(系統電流(Is))は、dq変換器(6128)に対して無線方式により送信されている。勿論、電流センサ(6125)の検出値を有線方式でdq変換器(6128)に送信するように構成することも可能である。
なお、負荷電流(I1)、系統電流(Is)、及び補償電流(Ic)は、三相のうちの二相の電流値を検出しておけば、残りの一相の電流値は容易に算出することができるので、各電流センサ(6123,6124,6125)は、二相分の電流を検出する構成でよい。また、これらの電流センサ(6123,6124,6125)には種々の構成の電流センサを採用できる。これらの電流センサ(6123,6124,6125)の一例としては、カレントトランスが挙げられる。
dq変換器(6126)は、電流センサ(6123)の検出値から求めた負荷電流(I1)(三相)に対して三相/二相変換(dq軸変換)を行う。ここで、d軸及びq軸は、位相演算部(6122)で求められた位相(ωt)と同期して回転する回転座標系である。変換結果として得られたd軸成分は、空気調和装置(11)における有効電流である。dq変換器(6126)は、d軸成分をハイパスフィルタ(6129)に出力する。なお、dq変換器(6126)の変換結果として得られたq軸成分は、空気調和装置(11)における無効電流であるが、本実施形態ではこのq軸成分は制御には用いられていない。
dq変換器(6127)は、電流センサ(6124)の検出値から求めた補償電流(Ic)に対して三相/二相変換を行って、有効電流であるd軸成分(以下、d軸電流(id)と呼ぶ)と、無効電流であるq軸成分とを求める。d軸電流(id)は、減算器(6135)に出力される。なお、本実施形態では、dq変換器(6127)が求めたq軸電流は、制御に使用されていない。
また、dq変換器(6128)は、電流センサ(6125)の検出値から求めた系統電流(Is)(三相)に対して三相/二相変換を行って、q軸成分(以下、q軸電流(iq))を求める。q軸電流(iq)は、受電した電力における無効電流である。換言すると、アクティブフィルタ装置(4)が設置されているビル等における無効電流の合計値と考えてよい。すなわち、このq軸電流(iq)は、補償電流(Ic)として流すべき電流のq軸成分と考えてよい。dq変換器(6128)が求めたq軸電流(iq)は、減算器(6131)に出力されている。なお、本実施形態では、dq変換器(6128)が求めたd軸電流は、制御に使用されていない。
ハイパスフィルタ(6129)は、dq変換器(6126)が出力した負荷電流(I1)のd軸成分から直流成分を除去して、加算器(6132)に出力する。dq変換器(6126)の出力は、負荷電流(I1)に高調波成分が無ければ直流となる。これは、負荷電流(I1)のうちで交流電源(3)の位相と同期する成分が直流として現れるからである。すなわち、ハイパスフィルタ(6129)は、負荷電流(I1)のd軸成分に含まれる高調波成分のみを加算器(6132)に出力する。
補償電流(Ic)におけるd軸成分及びq軸成分のそれぞれが、負荷電流(I1)の高調波成分とそれぞれ一致するように、補償電流(Ic)を流したとすれば、負荷電流(I1)の高調波成分を打ち消すことができる(以下、このように、所定の成分が打ち消されるように電流を流すことを補償と呼ぶ)。すなわち、ハイパスフィルタ(6129)の出力は、補償電流(Ic)のd軸成分(d軸電流(id))の指令値(d軸電流指令値(id*))の生成に用いることができる。
なお、この例では、d軸電流指令値(id*)として、ハイパスフィルタ(6129)の出力をそのまま用いるのではなく、コンデンサ(6113)の端子間電圧(以下、直流電圧(Vdc))の変動に対応するための修正が行われている。具体的に力率制御器(6120)では、まず、減算器(6133)によって、コンデンサ(6113)の直流電圧(Vdc)とその指令値(Vdc*)との偏差が求められる。電圧制御器(6134)は、減算器(6133)によって求められた偏差に基づいて比例積分制御を行って修正値を求める。この修正値は、加算器(6132)においてハイパスフィルタ(6129)の出力と加算され、加算結果がd軸電流指令値(id*)として出力される。これにより、直流電圧(Vdc)の変動の影響が低減される。
減算器(6135)は、d軸電流(id)をd軸電流指令値(id*)から差し引いた偏差(Δid)を求め、偏差(Δid)を電流制御器(6136)に出力する。また、減算器(6131)には、固定値(具体的にはゼロ)がq軸電流指令値(iq*)として入力されている。減算器(6131)からは、q軸電流指令値(iq*)からq軸電流(iq)を減算した値(以下、偏差(Δiq)と呼ぶ)が出力される。偏差(Δid)は、電流制御器(6137)に入力されている。
電流制御器(6136)は、偏差(Δid)に基づいてフィードバック制御(例えば、いわゆるPID制御)等のアルゴリズムを利用することによって、二相の電圧指令値のうちの1つであるd軸電圧指令値(Vid)を出力する。また、電流制御器(6137)は、偏差(Δiq)に基づいてフィードバック制御(例えば、いわゆるPID制御)等のアルゴリズムを利用することによって、二相の電圧指令値のうちの1つであるq軸電圧指令値(Viq)を出力する。
−PWM制御器(6140)−
PWM制御器(6140)は、d軸電圧指令値(Vid)及びq軸電圧指令値(Viq)に基づいて電流源(6110)を駆動するスイッチング指令値(駆動信号(G))を生成する。具体的に、PWM制御器(6140)は、いわゆるPWM(pulse width modulation)制御を行って、電流源(6110)に補償電流(Ic)の入出力を行わせる。PWM制御器(6140)は、マイクロコンピュータと、それを動作させるためのソフトウエアが格納されたメモリディバイスを用いて構成することができる。
〈アクティブフィルタ装置の動作〉
アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和システム(100)に組み込まれているので、アクティブフィルタ装置(4)を稼働させるには、空気調和システム(100)に通電させる。そうすると、力率制御器(6120)では、電流センサ(6125)の検出値に基づいて、dq変換器(6128)によって、系統電流(Is)のq軸電流(iq)が求められる。また、減算器(6131)によって、q軸電流(iq)からq軸電流指令値(iq*)が減算されて、偏差(Δiq)が算出される。更に、力率制御器(6120)では、dq変換器(6126)等の動作によってd軸電流指令値(id*)が生成される。また、減算器(6135)によって、d軸電流指令値(id*)から、dq変換器(6127)が求めたd軸電流(id)が減算されて、偏差(Δid)が算出される。
偏差(Δid)が定まると、電流制御器(6136)からd軸電圧指令値(Vid)が出力される。また、偏差(Δiq)が定まると、電流制御器(6137)からq軸電圧指令値(Viq)が出力される。それにより、d軸電圧指令値(Vid)及びq軸電圧指令値(Viq)に見合った駆動信号(G)がPWM制御器(6140)からインバータ回路(6111)に出力される。
例えば、アクティブフィルタ装置(4)が設けられなかったとすれば、空気調和装置(11)の負荷が小さい場合には、進相コンデンサ電流(Isc)によって系統電流(Is)は、進み位相となる。しかしながら、本実施形態では、系統電流(Is)におけるq軸成分(q軸電流(iq))がゼロ(=q軸電流指令値(iq*))となるようにq軸電圧指令値(Viq)が生成される。それに応じて、電流源(6110)からは、q軸電流(iq)に相当する成分を有した補償電流(Ic)が流れる。その結果、本実施形態では、進み位相となっている進相コンデンサ電流(Isc)が補償され、受電した電力における基本波力率が改善される。
なお、空気調和装置(11)に関しては、負荷電流(I1)の高調波成分を補償するように、補償電流(Ic)のd軸成分が調整される。そのため、空気調和装置(11)に係る有効電流の高調波成分も補償される。すなわち、アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和装置(11)の高調波電流の低減も可能である。
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態では、調相設備(200)も含めたビル等の全体についての無効電流を把握し、その無効電流を補償するようにした。そのため、本実施形態では、調相設備を有したビル等における力率を改善することが可能になる。
《発明の実施形態7》
図11は、実施形態7に係る電源力率制御システム(7000)の構成を示すブロック図である。電源力率制御システム(7000)は、調相設備(200)と、空気調和システム(100)とを備える。
空気調和システム(100)は、ビルや戸建て住宅(以下、ビル等)に設置され、室内の空気調和(冷房や暖房)を行う。上記ビル等には、交流電源(3)を含む電力系統から電力が供給されている。この例では、交流電源(3)は、三相の交流電源(例えば三相の商用電源)であり、高調波発生負荷器である空気調和システム(100)に電力を供給する。空気調和システム(100)は、交流電源(3)から供給された交流電力によって稼働する。
調相設備(200)は、ビル等である建物全体の力率を改善するために、当該ビル等に取り付けられているものである。
〈空気調和システムの構成〉
空気調和システム(100)は、空気調和装置(11)及びアクティブフィルタ装置(4)を備える。空気調和装置(11)は、圧縮機を有した冷媒回路(図示せず)と、電力変換装置(1)とを備えている。
空気調和装置(11)の冷媒回路は、圧縮機、室外側熱交換器、膨張機構、室内側熱交換器が冷媒配管によって接続されることで構成される。冷媒回路内には冷媒が充填されており、冷媒が冷媒回路内を循環することによって、室内は冷却または暖められる。
電力変換装置(1)は、調相設備(200)を介して交流電源(3)に接続されており、コンバータ回路とインバータ回路とを有する。電力変換装置(1)は、交流電源(3)から交流電力を供給されると、これを所望周波数及び所望電圧を有した交流電力に変換し、変換後の電力を圧縮機(より詳しくは圧縮機が備える電動機)に供給する。それにより、圧縮機が稼働して冷媒回路が機能し、その結果、室内の空気調和が行われる。
空気調和装置(11)において、電力変換装置(1)や圧縮機の電動機が稼働すると、高調波電流が発生する場合がある。この高調波電流は、電力変換装置(1)に電力を供給する電流経路を介して、交流電源(3)に流出する可能性がある。このような高調波電流は、一般的には交流電源(3)側への流出レベルが規制されている。
そのため、空気調和システム(100)内には、アクティブフィルタ装置(4)が組み込まれている。アクティブフィルタ装置(4)は、電力変換装置(1)にて発生する高調波電流の低減を行う。
更に、設備容量や省エネルギーの観点などから、配電・受電端の基本波力率の改善が求められているところ、アクティブフィルタ装置(4)は、基本波力率の改善機能も備えている。基本波力率の改善がアクティブフィルタ装置(4)にて行われることにより、電源力率の改善が図られる。
以下、アクティブフィルタ装置(4)の構成について説明する。
〈アクティブフィルタ装置の構成〉
アクティブフィルタ装置(4)は、交流電源(3)に対し、高調波電流の発生源となる電力変換装置(1)と並列に接続されており、該電力変換装置(1)から流出し交流電源(3)からの受電経路に現れる高調波電流を打ち消す機能を有する。即ち、アクティブフィルタ装置(4)は、交流電源(3)の電流経路(以下、受電経路(12))における電流が正弦波に近づくように補償電流を流す。より具体的には、アクティブフィルタ装置(4)は、受電経路(12)に現れている高調波電流とは逆位相の補償電流を生成し、受電経路(12)に供給する。
そして、アクティブフィルタ装置(4)は、上述した補償電流を流すことにより、基本波力率を改善する力率改善の機能も有する。この例では、基本波の無効成分も補償する補償電流を流すようにアクティブフィルタ装置(4)を構成することで、基本波力率の改善を行う。
上記機能を実現するため、本実施形態に係るアクティブフィルタ装置(4)は、図11に示すように、電流源(730)、フィルタ側電流検出器(745a,745b)、フィルタ側電圧検出器(746)、及びアクティブフィルタ制御器(743)を有する。
なお、電力変換装置(1)において発生する高調波電流が最も大きくなるのは、空気調和装置(11)の負荷がもっとも大きな場合(例えば冷房の最大出力時)と考えられる。そのため、アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和装置(11)の負荷最大時における高調波電流を想定して、能力(生成可能な電流または電力の大きさ)、即ち容量が設定されている。この容量を、出力最大容量と言う。但し、一般的に、空気調和装置(11)は、最大負荷の状態で使用されることよりも小さい負荷(例えば中間の負荷)で使用される場合の方が多い。すると、このように出力最大能力が設定されたアクティブフィルタ装置(4)は、稼働中の殆どの期間において、能力が余剰となることが多いと考えられる。
−電流源−
電流源(730)は、高調波電流の低減及び基本波力率改善を行うための補償電流を生成する。電流源(730)の出力端子は、電力変換装置(1)に接続されており、生成した補償電流は受電経路(12)に出力される。
図示していないが、本実施形態の電流源(730)は、いわゆるインバータ回路を用いて構成されている(アクティブフィルタインバータ部)。電流源(730)には、アクティブフィルタ制御器(743)から後述するスイッチング指令値(G)が入力される。電流源(730)は、スイッチング指令値(G)に応じてスイッチングすることによって、補償電流を生成する。
−フィルタ側電流検出器−
フィルタ側電流検出器(745a,745b)は、アクティブフィルタ装置(4)の電流源(730)に入力される電流値(Ir2a,It2a)を検出する。
この例では、フィルタ側電流検出器(745a,745b)は、1つのアクティブフィルタ装置(4)において2つ設けられている。フィルタ側電流検出器(745a)は、交流電源(3)から電流源(730)に入力されるR相の電流値(Ir2a)を検出し、フィルタ側電流検出器(745b)は、交流電源(3)から電流源(730)に入力されるT相の電流値(It2a)を検出する。フィルタ側電流検出器(745a,745b)によって検出された電流値(Ir2a,It2a)は、アクティブフィルタ制御器(743)に送信される。
フィルタ側電流検出器(745a,745b)の構成には、特に限定はないが、例えばカレントトランスを採用することなどが考えられる。
また、フィルタ側電流検出器(745a,745b)は、検出結果をアクティブフィルタ制御器(743)に有線方式で送信する構成であってもよいし、無線方式で送信する構成であってもよい。
なお、本実施形態では、フィルタ側電流検出器(745a,745b)が交流電源(3)の2相分の出力電流値(Ir2a,It2a)を検出する場合を例示しているが、フィルタ側電流検出部は、交流電源(3)の3相分の出力電流値を検出する構成であってもよい。
−フィルタ側電圧検出器−
フィルタ側電圧検出器(746)は、交流電源(3)のR相及びS相に接続され、T相には接続されていない。フィルタ側電圧検出器(746)は、交流電源(3)の線間電圧(Vrs)のみを検出してアクティブフィルタ制御器(743)に入力する。
なお、本実施形態では、フィルタ側電圧検出器(746)が交流電源(3)の2相分の出力に接続された場合を例示しているが、フィルタ側電圧検出器(746)は、交流電源(3)の3相分の出力に接続される構成であってもよい。
−アクティブフィルタ制御器−
アクティブフィルタ制御器(743)は、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリディバイスとを用いて構成される。図11に示すように、アクティブフィルタ制御器(743)は、電流源(730)、フィルタ側電流検出器(745a,745b)、フィルタ側電圧検出器(746)、及び後述する調相設備(200)内の調相設備制御器(233)に接続されている。アクティブフィルタ制御器(743)は、各検出器(745a,745b,746)の検出結果と、調相設備制御器(233)を介して送られる交流電源(3)の電流値(Irs,Its)とに基づいて、アクティブフィルタインバータ部である電流源(730)の出力電流(即ち補償電流)を制御する。
〈調相設備の構成〉
図11に示すように、調相設備(200)は、受電経路(12)上において、交流電源(3)の出力と電力変換装置(1)及びアクティブフィルタ装置(4)の各入力との間に接続されている。調相設備(200)は、2つの調相機器(231,232)と、電力計(236)と、調相設備制御器(233)とを有する。電力計(236)は、負荷情報検出部の一例である。
−調相機器−
調相機器(231,232)は、交流電源(3)に対し、電力変換装置(1)及びアクティブフィルタ装置(4)と並列に接続されている。調相機器(231,232)は、電力変換装置(1)に供給される電力のうち無効電力を制御する。この例では、調相機器(231)は、20kVarの無効電力を吸収できる装置であり、調相機器(232)は、50kVarの無効電力を吸収できる装置である。
調相機器(231,232)は、いずれも、3つの進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)と、3つの進相リアクトル(La,Lb,Lc)と、2つの切替器(2311,2321)(切替部に相当)とで構成される。調相機器(231,232)が進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)のみならず進相リアクトル(La,Lb,Lc)を含む構成である理由は、仮に進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)が短絡故障した際に調相機器(231,232)に流れる電流の大きさを、進相リアクトル(La,Lb,Lc)によって絞ることができるためである。
切替器(2311,2321)は、調相設備制御器(233)の切替信号に基づいて調相機器(231,232)の投入及び開放を行う。即ち、各切替器(2311,2321)は、対応する調相機器(231,232)と交流電源(3)とを、接続または非接続の状態に切り換えるためのものである。
−電力計(負荷情報検出部)等−
交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部である電力計(236)は、受電経路(12)上において、交流電源(3)の出力と調相機器(231,232)の入力との間に接続されている。電力計(236)は、2つの電源側電流検出器(234a,234b)と1つの電源側電圧検出器(235)とを有する。
電源側電流検出器(234a,234b)は、受電経路(12)上において、各調相機器(231,232)及び空気調和システム(100)へと電流が分岐して流れる前の、交流電源(3)の出力電流を検出する。この例では、電源側電流検出器(234a,234b)は2つ設けられている。具体的に、電源側電流検出器(234a)は、交流電源(3)におけるR相の電流値(Irs)を検出する。電源側電流検出器(234b)は、交流電源(3)におけるT相の電流値(Its)を検出する。
電源側電圧検出器(235)は、交流電源(3)の各相の出力端子に接続され、交流電源(3)の出力電圧である交流電源(3)の線間電圧(Vrs,Vst,Vtr)を検出する。
このような交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部である電力計(236)は、ビル等の建物に既設の電力計またはスマートメータであることができる。電流及び電圧を計測するセンサや検出回路を、電力計及びスマートメータとは別途設けずに済むためである。
なお、電源側電流検出器(234a,234b)の構成は、特に限定はないが、例えばカレントトランスを採用することができる。
また、電源側電流検出器(234a,234b)は、検出結果を調相設備制御器(233)に有線方式で送信する構成であってもよいし、無線方式で送信する構成であってもよい。なお、交流電源(3)とアクティブフィルタ装置(4)との距離は、20〜30メートル離れることがある。そのため、電源側電流検出器(234a,234b)からアクティブフィルタ装置(4)までを配線で接続すると、この配線を長く引き回すこととなり、また、電源側電流検出器(234a,234b)とアクティブフィルタ装置(4)との接続作業自体にかなりの手間がかかってしまう。これに対し、電源側電流検出器(234a,234b)の検出結果が無線方式で送信する構成とすることにより、上記配線自体が不要となり、配線を引き回す作業を行わずに済む。既存の送信設備が近くに存在する場合には、最寄の接続点までを無線化する等、既存の送信設備を途中に介して送信しても良い。
また、電源側電流検出器(234a,234b)に流れる電流により電源側電流検出器(234a,234b)を貫く磁束が時間に対して変化する現象を電磁誘導というが、その電磁誘導によって生じる起電力である誘導起電力を、電源側電流検出器(234a,234b)を駆動させる電源(例えば通信のための電源)として利用してもよい。そのことにより、電源側電流検出器(234a,234b)は、無電源方式で動作(すなわち電源側電流検出器(234a,234b)の外部から電源を接続せずに動作)でき、電源側電流検出器(234a,234b)を外部の電源と接続する作業が不要となる。
また、本実施形態では、交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部である電力計(236)が調相設備(200)の内部に設けられているが、交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部である電力計(236)が調相設備(200)の外部に設けられていてもよい。なお、本実施形態のように、電力計(236)が調相設備(200)の内部に設けられている場合、電力計(236)が雨や風に晒されることが無くなるため、電力計(236)の信頼性が高まり且つ寿命を延ばすことができる。
また、電源側電流検出器(234a,234b)は、交流電源(3)の2相分に限定されず、交流電源(3)の3相各相それぞれに対応して設けられても良い。
−調相設備制御器−
調相設備制御器(233)は、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリディバイスとを用いて構成される。図11に示すように、調相設備制御器(233)は、電力計(236)と、調相機器(231,232)の各切替器(2311,2321)と、アクティブフィルタ装置(4)におけるアクティブフィルタ制御器(743)に接続されている。調相設備制御器(233)は、電力計(236)からの信号に基づいて、無効電力Pβ及び電源力率θαβそのものの演算または無効電力Pβ及び電源力率θαβを把握するための情報の算出を行う。また、調相設備制御器(233)は、各切替器(2311,2321)の切替制御、電源側電流検出器(234a,234b)の検出結果のアクティブフィルタ制御器(743)への出力を行う。
〈調相設備制御器による各切替器の切替制御動作〉
図12に示すように、上記調相設備制御器(233)は、電源力率演算部(2331)及び切替制御部(2332)を有する。
−電源力率演算部−
電源力率演算部(2331)には、電力計(236)における電源側電圧検出器(235)が検出した線間電圧(Vrs,Vst,Vtr)及び電源側電流検出器(234a,234b)の検出結果(Irs,Its)が入力される。電源力率演算部(2331)は、入力されたこれらの信号を下式(7の1)及び下式(7の2)に当てはめて、回転2軸(αβ軸)の電圧Vα,Vβ及びiα,iβを演算する。
次いで、電源力率演算部(2331)は、上式(7の1)及び上式(7の2)で求めた回転2軸(αβ軸)の電圧Vα,Vβ及び電流iα,iβを、下式(7の3)及び下式(7の4)に当てはめて、有効電力Pα及び無効電力Pβを演算する。
上記有効電力Pα及び無効電力Pβそれぞれを下式(7の5)に当てはめることにより、交流電源(3)の電源力率θαβが得られる。
上式(7の5)は、無効電力Pβが大きい程、電源力率θαβが低下し、逆に無効電力Pβが小さい程電源力率θαβは上昇して力率が向上(改善)することを示している。本実施形態では、無効電力Pβを調相機器(231,232)の切替信号の生成に使用するが、更に電源力率θαβ、または無効電力Pβ及び電源力率θαβの双方が演算されて、調相機器(231,232)の切替信号の生成に利用されてもよい。
−切替制御部−
切替制御部(2332)には、電源力率演算部(2331)が演算した無効電力Pβが入力される。切替制御部(2332)は、無効電力Pβに応じて、交流電源(3)と各調相機器(231,232)との接続状態の組合せが変更するように、各調相機器(231,232)における切替器(2311,2321)の切替制御を行う。具体的には、切替制御部(2332)は、無効電力Pβを、図13に係る各調相機器(231,232)の切替組合せテーブル(2332a)に当てはめて、各調相機器(231,232)の投入・開放の論理判断を行う。切替制御部(2332)は、この論理判断に応じた切替信号を、各調相機器(231,232)における切替器(2311,2321)に出力する。
ここで、図13の切替組合せテーブル(2332a)は、論理判断の基準として用いられるものであって、ここでは、20kVarの調相機器(232)と50kVarの調相機器(231)との投入可能な組合せは、0kVar、20kVar、50kVar、70kVarの4パターンとなっている。
図13では、無効電力Pβで示される負荷の範囲(無効電力負荷範囲)を例えば“0kVar〜3kVar”“3kVar〜20kVar”“20kVar〜50kVar”“50kVar〜70kVar”の4つのパターンに定義し、各調相機器(231,232)の受電経路(12)への接続状態を、パターン毎に表している。このような図13は、電源力率制御システム(7000)が現場に構築される前等から予め決定されている。図13では、調相機器(231,232)が受電経路(12)に接続される場合を“投入”、調相機器(231,232)が受電経路(12)に接続されない場合を“開放”と記している。つまり、“開放”と記されている調相機器(231,232)に対応する切替器(2311,2321)は、当該調相機器(231,232)と受電経路(12)とを非接続の状態にし、“投入”と記されている調相機器(231,232)に対応する切替器(2311,2321)は、当該調相機器(231,232)と受電経路(12)とを接続の状態にする。
例えば、図11及び図13において、無効電力Pβが0kVarから徐々に70kVarまで増加する場合、各切替器(2311,2321)による切替動作は、以下の(1)〜(4)の順番に従って行われる。
(1)いずれの調相機器(231,232)も受電経路(12)から開放する。
(2)50kVarの調相機器(231)が受電経路(12)から開放された状態を維持しつつ、20kVarの調相機器(232)を受電経路(12)に投入する。
(3)20kVarの調相機器(232)を受電経路(12)から開放し、50kVarの調相機器(231)を受電経路(12)に投入する。
(4)50kVarの調相機器(231)が受電経路(12)に投入された状態を維持しつつ、20kVarの調相機器(232)を受電経路(12)に再投入する(計70kVar)。
また、切替制御部(2332)は、無効電力Pβが、事前に設定された遮断点(図13の無効電力負荷範囲を定義する閾値)より進み方向(つまり進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)による無効電力Pβの補償が過剰になっている状態)となった時点で、調相機器(231,232)(具体的には進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc))の投入量を減らす。この場合も、切替制御部(2332)は、負荷となる無効電力Pβを補償するのに必要十分な調相機器(231,232)の組合せを選択し、選択した調相機器(231,232)を投入し、且つ、それ以外の調相機器(231,232)を開放する制御を行う。
このような調相設備制御器(233)による無効電力Pβの制御のみによれば、図14の細い実線にて示すように、交流電源(3)の電源力率θαβは、無効電力Pβが0kVarから70kVarである範囲において、各調相機器(231,232)の接続状態が切り換えられたタイミングにて目標力率よりも一旦進み位相となるが、その後徐々に目標力率に近づいていく態様を、各調相機器(231,232)の接続状態が切り換えられる毎に繰り返す。
〈アクティブフィルタ制御器による力率改善制御〉
これに対し、アクティブフィルタ制御器(743)は、上述した調相設備制御器(233)における無効電力Pβの制御による進み力率が、交流電源(3)の無効電力Pβに基づいて改善するように、アクティブフィルタ装置(4)の電流源(730)による補償電流の生成動作を制御する。即ち、電流源(730)による補償電流の生成動作の制御により、交流電源(3)の電源力率θαβはより改善され、目標力率に瞬時に収束するようになる。
このようなアクティブフィルタ制御器(743)は、図15に示すように、位相検出部(7436)、第1電流演算部(7435)、第2電流演算部(7434)、負荷電流演算部(7433)、電流指令演算部(7432)、及びゲートパルス発生器(7431)を有する。
位相検出部(7436)には、フィルタ側電圧検出器(746)が検出した交流電源(3)の線間電圧(Vrs)が入力される。位相検出部(7436)は、入力された線間電圧(Vrs)を用いて受電経路(12)における電源電圧の位相を検出し、検出した位相を第1電流演算部(7435)及び第2電流演算部(7434)に出力する。
第1電流演算部(7435)には、位相検出部(7436)によって検出された電源電圧の位相、及び、電源側電流検出器(234a,234b)によって検出された交流電源(3)の電流値(Irs,Its)が入力される。第1電流演算部(7435)は、入力されたこれらの信号に基づいて、受電経路(12)における高調波電流の補償(高調波電流の低減)と基本波の無効成分の補償(基本波の力率改善)の双方を行うために必要な電流値(以下、第1電流値(i1))を求める。第1電流演算部(7435)は、求めた第1電流値(i1)を、負荷電流演算部(7433)に出力する。
第2電流演算部(7434)には、位相検出部(7436)によって検出された電源電圧の位相、及び、フィルタ側電流検出器(745a,745b)によって検出された電流源(730)に入力される電流値(Ir2a,It2a)が入力される。第2電流演算部(7434)は、入力されたこれらの信号に基づいて、現時点での高調波電流の補償(高調波電流の低減)及び基本波の無効成分の補償(基本波の力率改善)の双方を行っているアクティブフィルタ装置(4)に流れ込んでいる電流(以下、第2電流値(i2))を求める。第2電流演算部(7434)は、求めた第2電流値(i2)を、負荷電流演算部(7433)に出力する。
交流電源(3)の電流値(Irs,Its)からアクティブフィルタ装置(4)の電流源(730)に入力される電流値(Ir2a,It2a)を減算することにより、高調波の発生源となる電力変換装置(1)及び調相設備(200)の各調相機器(231,232)に流れる電流の合計値が求められる。これを利用して、本実施形態では、電力変換装置(1)の基本波力率及び調相設備(200)による進み力率の改善を実現することにより、交流電源(3)付近の配電・受電端の基本波力率の改善、及び高調波電流の低減を実現している。即ち、本実施形態に係るアクティブフィルタ装置(4)は、調相設備(200)の進み力率を補正するための負荷として機能していると言える。
具体的に、負荷電流演算部(7433)は、電力変換装置(1)及び調相設備(200)の各調相機器(231,232)に流れる電流の合計値を、第1電流演算部(7435)の第1電流値(i1)から第2電流演算部(7434)の第2電流値(i2)を減算することによって求め、求めた演算結果を電流指令演算部(7432)に出力する。
電流指令演算部(7432)は、負荷電流演算部(7433)の演算結果の逆位相の電流値を演算して、その値を電流指令値(Iref)としてゲートパルス発生器(7431)に出力する。
ゲートパルス発生器(7431)は、電流源(730)を構成するインバータ回路(アクティブフィルタインバータ部)におけるスイッチングを指示するためのスイッチング指令値(G)、を生成する。詳しくは、ゲートパルス発生器(7431)は、電流源(730)が出力する電流値と上記電流指令値(Iref)との偏差に基づいてスイッチング指令値(G)を生成する動作を繰り返す、いわゆるフィードバック制御を行う。これにより、電流源(730)からは、電流指令値(Iref)に相当する電流(補償電流)が受電経路(12)に供給される。
より詳しくは、ゲートパルス発生器(7431)では、第2電流演算部(7434)で求めた第2電流値(i2)が電流指令値(Iref)に一致するようなスイッチング指令値(G)を生成して電流源(730)に出力する。そのことにより、電力変換装置(1)に流れる電流に含まれている高調波成分とアクティブフィルタ装置(4)が出力する電流とは相殺され、交流電源(3)の出力電流(Irs,Itr,Its)は、高調波電流が除去された正弦波となり、力率が改善される。
本実施形態では、上述の通り、アクティブフィルタ制御器(743)には、電流源(730)に入力される電流値(Ir2a,It2a)のみならず、交流電源(3)の電流値(Irs,Its)が入力される。そのため、アクティブフィルタ制御器(743)は、各調相機器(231,232)に流れる電流と電力変換装置(1)に流れる電流との合計値を算出することができ、その算出結果に応じて、電流源(730)の補償電流を調整することができる。従って、上述したアクティブフィルタ制御器(743)による一連の制御により、アクティブフィルタ制御器(743)は、電力変換装置(1)のみならず調相機器(231,232)の影響を受けた実際の電源力率θαβを、目標力率に合わせ込む制御を行っている。
特に、アクティブフィルタ装置(4)の電流源(730)は、稼働することにより電源力率θαβを目標力率よりも遅れ力率にする性質を有する。アクティブフィルタ制御器(743)は、調相機器(231,232)による進み力率がアクティブフィルタ装置(4)による遅れ力率によって相殺されて交流電源(3)の電源力率θαβが目標力率に収束するように、アクティブフィルタ装置(4)の電流源(730)を動作させる制御を行う。
図14は、調相設備(200)が上述した調相設備制御器(233)の制御に基づき稼働しているがアクティブフィルタ装置(4)は稼働していない状態時の電源力率θαβを細い実線で表し、目標力率を破線で表している。調相設備制御器(233)により各調相機器(231,232)の接続状態が切り換えられる毎に、電源力率θαβは目標力率に対し一旦進み力率となりその後徐々に目標力率に近づいていくため、図14には、細い実線と破線とにより囲まれた領域にて現れるように、アクティブフィルタ装置(4)が補償するべき電源力率θαβの領域が現れる。
図14では、更にアクティブフィルタ装置(4)が上述したアクティブフィルタ制御器(743)の制御に基づき稼働した状態時の電源力率θαβを、太い実線で表している。この図14の太い実線で示された電源力率θαβは、調相機器(231,232)の切替時に目標力率に対して一瞬のみ進み力率になることを除けば、調相設備(200)による進み力率分がアクティブフィルタ装置(4)による遅れ力率によって概ね相殺されたことにより、細い実線に比べて瞬時に目標力率に収束している。即ち、アクティブフィルタ装置(4)が補償するべき電源力率θαβの領域が、上述したアクティブフィルタ制御器(743)の制御によるアクティブフィルタ装置(4)の稼働によって補償されたことを表す。
従って、本実施形態に係る電源力率制御システム(7000)は、調相設備(200)を起因とする進み力率を、アクティブフィルタ装置(4)の稼働によって改善することができる。
なお、本実施形態では、受電経路(12)に1台の空気調和システム(100)が接続された場合を例示している。この受電経路(12)に、ビル等の建物に設置されている他の装置も接続されていれば、電源力率制御システム(7000)は、調相設備(200)が起因する進み力率を低減して建物全体の基本波力率を改善することが可能になる。
〈効果〉
アクティブフィルタ装置(4)が動作した際、調相機器(231,232)とは対照的に、実際の電源力率θαβは目標力率よりも遅れ力率となる。そこで、本実施形態では、調相機器(231,232)の無効電力Pβの制御によって実際の電源力率θαβが目標力率よりも進み力率となることを、アクティブフィルタ装置(4)の動作を制御することによって改善する。これにより、調相機器(231,232)が起因して実際の電源力率θαβが進み力率となる現象は簡易に改善され、実際の電源力率θαβの適切な補償及び基本波力率の改善を図ることができる。従って、交流電源(3)の電力系統の電力損失の増加、及び、当該系統の電圧の不必要な上昇等の障害の発生の可能性を抑制することができる。
より詳細には、調相機器(231,232)による進み力率がアクティブフィルタ装置(4)による遅れ力率によって相殺されて交流電源(3)の電源力率θαβが目標力率に収束するように、アクティブフィルタ装置(4)の動作が制御される。
本実施形態では、電源力率θαβの制御にて用いられる無効電力Pβの実際の値は、電源側電流検出器(234a,234b)の検出結果及び電源側電圧検出器(235)の検出結果に基づく演算により、簡単に得られる。
ビルや工場等の建物には、電流の実際の値及び電圧の実際の値から電力を測定する電力計(236)が接続されている。電力計(236)は、交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部の一例である。本実施形態では、電源側電流検出器(234a,234b)及び電源側電圧検出器(235)を予め含む電力計(236)である電力計を利用するため、特別に電流及び電圧の検出用センサや検出回路を取り付ける必要がない。従って、別途センサ及び検出回路を取り付けるための工事が不要であり、センサ及び検出回路を設けずに済む分コストを削減できる。
本実施形態では、交流電源(3)の無効電力Pβに応じて切替器(2311,2321)の切替制御がなされ、交流電源(3)と調相機器(231,232)との接続状態の組合せが適宜変更されるようになる。例えば、交流電源(3)への無効電力Pβを制御する調相機器(231,232)の数が少ない程、調相機器(231,232)の制御による進み力率の度合いは抑えられ、アクティブフィルタ装置(4)の補償量もその分小さくなり、アクティブフィルタ装置(4)の容量も小さくて済むようになる。
また、本実施形態では、空気調和システム(100)(具体的には空気調和システム(100)における電力変換装置(1))が高調波発生機器であり、アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和システムに組み込まれている。
《その他の実施形態》
なお、アクティブフィルタ装置(4)は、基本波力率改善機能を必ずしも備える必要はない。すなわち、アクティブフィルタ装置(4)は、高調波電流の低減機能のみを有する構成でもよい。また、アクティブフィルタ装置(4)は、基本波力率改善機能のみを有する構成とすることも可能である。
また、1台の空気調和装置(11)に対して、複数台のアクティブフィルタ装置(4)を設ける構成も可能である。この場合には、各アクティブフィルタ装置(4)で、各アクティブフィルタ装置(4)の電流容量に合わせて、補償電流を分担するとよい。
また、交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部は、第1電流検出部(5)や電流センサ(6125)の代わりに、負荷情報の測定機能を持った機器を用い、電流の基本波成分、力率、無効電力等を計算して送ってもよい。このような機器の一例として、ビル等に設けられて、電力の使用量等の情報を電力会社などに送信する、いわゆるスマートメータが挙げられる。このように、スマートメータ等を用いた場合には、電流検出器のような瞬時の情報ではなく、所定の時間間隔で送られた負荷情報に基づいてアクティブフィルタを動作させるとよい。
また、前記実施形態では、制御器(43)をアクティブフィルタ装置(4)に搭載しているが、アクティブフィルタ内蔵機器の内部であれば、何処に搭載しても構わない。例えば、図示はしないが電力変換装置(1)を制御するための制御器と共用する形で電力変換装置(1)に搭載しても良い。
本発明は、アクティブフィルタ内蔵機器として有用である。
1 電力変換装置(負荷器)
2 負荷器
3 交流電源
4 アクティブフィルタ装置
4a 電流検出器
4b 電流検出器
4c 電流検出器
5 第1電流検出部(負荷情報検出部)
11 空気調和装置
30 電流源
60 分電盤
100 アクティブフィルタ内蔵機器
本発明は、アクティブフィルタ内蔵機器に関するものである。
空気調和装置などでは、高調波電流が電力系統(例えば商用電源を含む電力系統)に流出するのを防止するために、アクティブフィルタ装置が設けられる場合がある(例えば特許文献1を参照)。
しかしながら、空気調和装置が接続される電力系統には、該空気調和装置以外の負荷器(例えばインバータ回路などを有した機器。一例としてエレベータなど)も接続される場合があり、空気調和装置以外の負荷器が高調波電流の発生源となることがある。その場合には、空気調和装置の高調波電流の対策を行うのみでは不十分であり、他の機器を含めて高調波電流の対策が望まれる。また、設備容量の低減や省エネルギーの観点などから、基本波力率の改善が求められる。
本発明は、アクティブフィルタ装置を内蔵したアクティブフィルタ内蔵機器において、アクティブフィルタ内蔵機器とは異なる他の負荷器も含めて、アクティブフィルタ装置が作用できるようにすることを目的としている。
前記の課題を解決するため、第1の態様は、
アクティブフィルタ装置(4)を内蔵するとともに、交流電源(3)に接続されるアクティブフィルタ内蔵機器において、
前記アクティブフィルタ装置(4)は、当該アクティブフィルタ内蔵機器の外部において前記交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部(5)の検出値に基づいて動作するように構成され、
前記交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部(5)の検出値とともに、前記交流電源(3)から当該アクティブフィルタ内蔵機器に流れる電流を検出し、これらの検出値に応じて、前記アクティブフィルタ装置(4)が出力する電流(Ic)を変化させることを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、アクティブフィルタ内蔵機器の外部の電力系統における交流電源(3)の負荷情報に基づいてアクティブフィルタ装置(4)が機能する。
また、第2の態様は、第1の態様において、
前記アクティブフィルタ装置(4)は、当該アクティブフィルタ内蔵機器に搭載された制御器(43)によってその動作が制御され、
前記制御器(43)は、前記交流電源(3)に接続された他の負荷器(20)における無効電流に相当する電流値(iq2*)と、前記交流電源(3)から当該アクティブフィルタ内蔵機器に流れる電流の電流値(ir1,it1)とを用いて、前記アクティブフィルタ装置(4)が出力する電流(Ic)の大きさを求めることを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、他の負荷器(20)における無効電流に基づいて力率の改善を図るようにした。そのため、電力系統に空気調和装置とともに他の負荷が接続された場合において、アクティブフィルタ装置の容量を大きくすることなく、力率の改善を図ることが可能になる。
また、第3の態様は、第2の態様において、
前記アクティブフィルタ装置(4)は、前記無効電流に相当する電流値(iq2*)として該無効電流の基本波成分のみを用いることを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、他の負荷器(20)が出力する高調波電流が小さい乃至は出力しない構成において、力率の改善を行うのに適した構成である。
また、第4の態様は、アクティブフィルタ装置(4)を内蔵するとともに、交流電源(3)に接続されるアクティブフィルタ内蔵機器において、
前記アクティブフィルタ装置(4)は、当該アクティブフィルタ内蔵機器の外部において前記交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部(5)の検出値に基づいて動作するように構成され、
前記交流電源(3)には、当該アクティブフィルタ内蔵機器と並列に接続され、該交流電源(3)における無効電力を制御する調相設備(200)が接続され、
前記アクティブフィルタ装置(4)は、前記交流電源(3)の無効電力及び電源力率の少なくとも1つに基づいて、動作することを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、アクティブフィルタ装置(4)が動作した際、調相設備(200)とは対照的に、実際の電源力率は目標力率よりも遅れ力率となる。そこで、ここでは、調相設備(200)の無効電力の制御によって実際の電源力率が目標力率よりも進み力率となることを、アクティブフィルタ装置(4)の動作を制御することによって改善する。これにより、調相設備(200)が起因して実際の電源力率が進み力率となる現象は簡易に改善され、実際の電源力率の適切な補償及び基本波力率の改善を図ることができる。従って、交流電源(3)の電力系統の電力損失の増加、及び、当該系統の電圧の不必要な上昇等の障害の発生の可能性を抑制することができる。
また、第5の態様は、アクティブフィルタ装置(4)を内蔵するとともに、交流電源(3)に接続されるアクティブフィルタ内蔵機器において、
前記アクティブフィルタ装置(4)は、当該アクティブフィルタ内蔵機器の外部において前記交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部(5)の検出値に基づいて動作するように構成され、
前記交流電源(3)に接続された、当該アクティブフィルタ内蔵機器及び調相設備(200)の無効電流に相当する電流値(iq)と、前記交流電源(3)から、当該アクティブフィルタ内蔵機器が備える高調波発生機器に流れる電流の電流値(ir1,it1)とを用いて、前記アクティブフィルタ装置(4)が出力する電流(Ic)の大きさを求めることを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、アクティブフィルタ内蔵機器以外の負荷器及び調相設備の無効電流を把握し、それを補償するように電流(Ic)が流される。
また、第6の態様は、第1から第5の態様の何れかにおいて、
前記負荷情報検出部(5)は、電流値(Irs,Its)を検出するように構成され、検出した電流値(Irs,Its)の送信方式が無線方式であることを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、無線方式の採用により、配線の省略が可能になる。
また、第7の態様は、第1から第6の態様の何れかにおいて、
前記負荷情報検出部(5)は、無電源方式で動作することを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、無電源方式の採用により、配線の省略が可能になる。
また、第8の態様は、第1から第7の態様の何れかにおいて、
前記負荷情報検出部(5)には、電流値(Irs,Iss,Its)を検出する電流検出器(4a,4b,4c)が、前記交流電源(3)の各相(R,S,T)に対応して設けられていることを特徴とするアクティブフィルタ内蔵機器である。
この構成では、負荷器(1,2)が単相交流で動作する機器であっても、電流値を確実に検出できる。
第1の態様によれば、アクティブフィルタ装置を内蔵したアクティブフィルタ内蔵機器において、アクティブフィルタ内蔵機器とは異なる、交流電源に接続された他の負荷器も含めて、アクティブフィルタ装置が作用することが可能になる。
また、第2の態様によれば、アクティブフィルタ装置の大型化を抑制しつつ、力率の改善を図ることが可能になる。
また、第3の態様によれば、アクティブフィルタ内蔵機器とともに電力系統に接続された負荷において、高調波電流対策が不要の場合に適した補償電流の生成が可能になる。
また、第4の態様によれば、調相設備が起因して実際の力率が進み力率となる現象は簡易に改善され、実際の力率の適切な補償及び基本波力率の改善を図ることができる。従って、交流電源の電力系統の電力損失の増加、及び、当該系統の電圧の不必要な上昇等の障害の発生の可能性を抑制することができる。
また、第5の態様によれば、調相設備を有したビル等における力率を改善することが可能になる。
また、第6の態様や第7の態様によれば、機器の設置が容易になる。
また、第8の態様によれば、負荷器が単相交流で動作する機器であっても、確実に前記効果を得ることが可能になる。
図1は、実施形態1にかかる空気調和システムを示すブロック図である。
図2は、実施形態1にかかる制御器の一例を示すブロック図である。
図3は、実施形態2にかかる空気調和システムを示すブロック図である。
図4は、実施形態3にかかる空気調和システムを示すブロック図である。
図5は、実施形態4にかかる空気調和システムを示すブロック図である。
図6は、実施形態4にかかる制御器を示すブロック図である。
図7は、実施形態5に係る空気調和システムを示すブロック図である。
図8は、実施形態5の変形例に係る空気調和システムを示すブロック図である。
図9は、実施形態6に係る空気調和システムを示すブロック図である。
図10は、調相設備の構成を模式的に示す。
図11は、実施形態7に係る電源力率制御システムの構成を示すブロック図である。
図12は、実施形態7に係る調相設備制御器の構成を示すブロック図である。
図13は、調相機器の切替組合せテーブルの概念図である。
図14は、実施形態7において、アクティブフィルタ装置による補償がなされていない状態と、アクティブフィルタ装置による補償がなされた状態とを示す図である。
図15は、実施形態7に係るアクティブフィルタ制御器の構成を示すブロック図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1にかかる空気調和システム(100)を示すブロック図である。この例では、空気調和システム(100)は、空気調和装置(11)とアクティブフィルタ装置(4)とを備えている。空気調和システム(100)は、マンション、工場、ビルや戸建て住宅等(以下、ビル等)に設置され、空気調和装置(11)によって室内の空気調和(冷房や暖房)を行う。
空気調和装置(11)が設置されるビル等には、交流電源(3)を含む電力系統から電力が供給されている。この例では、交流電源(3)は、三相の交流電源(例えば三相の商用電源)であり、複数の負荷器(後述)に電力を分岐して供給する。そして、このビル等には、交流電源(3)に接続され、交流電源(3)からの交流電力を受電する分電盤(60)が設けられている。分電盤(60)は、複数のブレーカを備えており、各ブレーカを介して、交流電源(3)からの交流電力を複数の機器に分岐させている。この例では、それらのブレーカの1つに空気調和装置(11)が接続されている。空気調和装置(11)は、分電盤(60)を介して供給された交流電力によって稼働する。すなわち、空気調和システム(100)は、アクティブフィルタ装置(4)を内蔵するとともに、交流電源(3)に接続されるアクティブフィルタ内蔵機器の一例である。なお、アクティブフィルタ内蔵機器は、ビルに設けられたエレベータ、ファン、ポンプ、エスカレータ、三相電源で駆動する照明である場合もある。
また、分電盤(60)には、空気調和装置(11)の他にも負荷器(2)が接続されている。この例では、負荷器(2)は、インバータ回路などの高調波電流の発生源となり得る回路を備えている機器(高調波発生負荷器と命名する)とする。負荷器(2)としては、ビルに設けられたエレベータ、ファン、ポンプ、エスカレータ、三相電源で駆動する照明、更には、アクティブフィルタなどの高調波対策を実施していない、空気調和装置(11)とは別の空気調和装置などを例示できる。
〈空気調和装置(11)〉
空気調和装置(11)は、圧縮機を有した冷媒回路(図示を省略)、及び電力変換装置(1)を備え、アクティブフィルタ装置(4)が組み込まれている。電力変換装置(1)は、交流電源(3)に接続された負荷器であって、前記高調波発生負荷器の一例である。電力変換装置(1)は、分電盤(60)を介して交流電源(3)に接続されている。この電力変換装置(1)は、コンバータ回路とインバータ回路とを有している(何れも図示を省略)。電力変換装置(1)に供給された交流電力は、この電力変換装置(1)によって、所望周波数及び所望電圧を有した交流電力に変換され、圧縮機(より詳しくは圧縮機が備える電動機)に供給されている。それにより、圧縮機が稼働して冷媒回路が機能し、その結果、室内の空気調和が行われる。
空気調和装置(11)において、電力変換装置(1)や圧縮機の電動機が稼働すると、高調波電流が発生する場合がある。この高調波電流は、分電盤(60)から空気調和装置(11)へ電力を供給する電流経路を介して、交流電源(3)に流出する可能性がある。このような高調波電流は、一般的には、交流電源(3)側への流出レベルが規制されているので、空気調和システム(100)では、アクティブフィルタ装置(4)によって、流出する高調波電流の低減を図っている。また、設備容量や省エネルギーの観点などから、配電・受電端の基本波力率の改善が求められるところ、本実施形態のアクティブフィルタ装置(4)は、基本波力率の改善機能も備えている。以下では、アクティブフィルタ装置(4)の構成について説明する。
〈アクティブフィルタ装置(4)〉
アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和装置(11)に組み込まれており、前記高調波発生負荷器から流出する高調波電流を打ち消す機能を有する。すなわち、アクティブフィルタ装置(4)は、交流電源(3)と分電盤(60)とを結ぶ電流経路(以下、受電経路とも呼ぶ)における電流が正弦波に近づくように電流(補償電流)を流す。より具体的には、受電経路に現れている高調波電流を検出し、検出した高調波電流とは逆位相の補償電流を生成して空気調和装置(11)の受電経路(図1の受電経路(12))に供給する。
空気調和装置(11)において発生する高調波電流が最も大きくなるのは、空気調和装置(11)の負荷がもっとも大きな場合(例えば冷房の最大出力時)と考えられる。そのため、アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和装置(11)の負荷最大時における高調波電流を想定して能力(生成可能な電力の大きさ)が設定されている。一般的に空気調和装置(11)は、最大負荷の状態で使用されることよりも中間の負荷で使用されることが多いので、このように能力が設定されたアクティブフィルタ装置(4)は、稼働中には、空気調和装置(11)の高調波電流対策のみに使用したとすれば、能力が余剰となる期間が多いと考えられる。
また、このアクティブフィルタ装置(4)は、基本波力率改善の機能を有する。この例では、基本波の無効成分も補償する補償電流を流すようにアクティブフィルタ装置(4)を構成することで、基本波の力率改善を行う。アクティブフィルタ装置(4)におけるこれらの機能を実現するため、本実施形態のアクティブフィルタ装置(4)は、図1に示すように、電流源(30)、制御器(43)、電圧検出器(46)、第1電流検出部(5)、及び第2電流検出部(47)を備えている。
−電圧検出器、電流検出部−
電圧検出器(46)は、交流電源(3)の電圧(Vrs)を検出するセンサである。
また、第2電流検出部(47)は、アクティブフィルタ装置(4)に入力される電流値(以下、電流値(Ir2a,It2a)と命名する)を検出するためのものである。この例では、第2電流検出部(47)は、電流検出器(45a)と電流検出器(45b)とを備えている。電流検出器(45a)は、交流電源(3)からアクティブフィルタ装置(4)に入力されるR相の電流値(Ir2a)を検出し、電流検出器(45b)は、交流電源(3)からアクティブフィルタ装置(4)に入力されるT相の電流値(It2a)を検出する。それぞれの電流検出器(45a,45b)の検出値は、制御器(43)(より詳しくは後述の第2電流演算部(434))に送信されている。
それぞれの電流検出器(45a,45b)の構成は、特に限定はないが、例えばカレントトランスを採用することなどが考えられる。これらの電流検出器(45a,45b)は、制御器(43)に対して、有線方式で検出値を送信するように構成してもよいし、無線方式で検出値を送信するように構成してもよい。なお、図1では、第2電流検出部(47)を構成する電流検出器(45a,45b)を2相分しか記載していないが、第2電流検出部(47)に3つの電流検出器を設けて3相分の電流を検出する構成でも問題ない。
一方、第1電流検出部(5)は、負荷情報検出部の一例であり、空気調和装置(11)の受電経路(12)における電流値を検出する。詳しくは、第1電流検出部(5)は、交流電源(3)からの電流が、各負荷器(高調波発生負荷器)に分岐する前の段階における該交流電源(3)の電流値を検出する。この例では、第1電流検出部(5)は、電流検出器(4a)と電流検出器(4b)とを備えている。これらの電流検出器(4a,4b)は、分電盤(60)に入力される前の段階の交流電源(3)の電流を検出する。より具体的には、電流検出器(4a)は、交流電源(3)におけるR相の電流値(Irs)を検出し、電流検出器(4b)は、交流電源(3)におけるT相の電流値(Its)を検出する。それぞれの電流検出器(4a,4b)の検出値は、制御器(43)(より詳しくは後述の第1電流演算部(435))に送信されている。
それぞれの電流検出器(4a,4b)の構成には、特に限定はないが、例えばカレントトランスを採用することなどが考えられる。電流検出器(4a)や電流検出器(4b)は、制御器(43)に対して、有線方式で検出値を送信するように構成してもよいし、無線方式で検出値を送信するように構成してもよい。
また、第1電流検出部(5)は、分電盤(60)の内側に設置される構成でもよいし、外側に設置される構成でもよいが、本実施形態は、電流検出器(4a,4b)は、分電盤(60)内に設置されている。電流検出器(4a,4b)が分電盤(60)内に設置されることにより、電流検出器(4a,4b)等に雨風が当ることが無くなるため、電流検出器(4a,4b)の信頼性を高めることや寿命を延ばすことができる効果がある。また、電流検出器(4a,4b)の検出値は、無線方式で制御器(43)に送信される構成としている。分電盤(60)と空気調和装置(11)との距離は、20〜30メートル離れることがある。そのため、分電盤(60)内の電流検出器(4a,4b)から空気調和装置(11)までを有線で接続するにはかなりの手間が掛かる。それに対し、本実施形態では、電流検出器(4a,4b)の検出値が無線方式で制御器(43)に送信されるように構成されているので有線の工事を削減できる。
また、電流検出器(4a,4b)に流れる電流により電流検出器(4a,4b)を貫く磁束が時間に対して変化する現象を電磁誘導といい、その電磁誘導によって生じる起電力である誘導起電力を、第1電流検出部(5)を駆動させる電源(例えば通信のための電源)として利用してもよい。そのことにより、第1電流検出部(5)は、無電源方式で動作(すなわち第1電流検出部(5)の外部から電源を接続せずに動作)できる。第1電流検出部(5)を無電源方式で動作できるように構成することで、工事の手間などを削減できる効果がある。
−電流源(30)−
電流源(30)は、高調波電流の低減、及び基本波力率改善を行うための電流(すなわち補償電流)を生成する。電流源(30)の出力端子は、電力変換装置(1)の受電経路(12)に接続されており、生成された補償電流は受電経路(12)に出力される。本実施形態の電流源(30)は、いわゆるインバータ回路を用いて構成されている。電流源(30)には、制御器(43)より、後述するスイッチング指令値(G)が入力されている。電流源(30)は、スイッチング指令値(G)に応じてスイッチングすることによって、補償電流を生成する。
−制御器(43)−
図2は、実施形態1にかかる制御器(43)の一例を示すブロック図である。制御器(43)は、電流源(30)の出力電流を制御する。この例では、制御器(43)は、ゲートパルス発生器(431)、電流指令演算部(432)、負荷電流演算部(433)、第2電流演算部(434)、第1電流演算部(435)、及び位相検出部(436)を備えている。制御器(43)は、例えば、マイクロコンピュータと、それを動作させるためのプログラムを格納したメモリディバイスを用いて構成することができる。
位相検出部(436)は、電圧検出器(46)が検出した電圧(Vrs)が入力されており、受電経路(12)における電源電圧の位相を検出し、検出した位相を第1電流演算部(435)及び第2電流演算部(434)に送信する。
第1電流演算部(435)は、位相検出部(436)によって検出された位相と、電流検出器(4a,4b)によって検出された電流値(Irs,Its)とに基づいて、高調波電流の補償(高調波電流の低減)と、基本波の無効成分の補償(基本波の力率改善)の双方を行うために必要な電流(第1電流値(i1)とする)を求め、第1電流値(i1)を負荷電流演算部(433)に出力する。より具体的には、電流検出器(4a,4b)の検出値(電流値(Irs,Its))から高調波電流成分と、基本波の無効成分とを抽出して、第1電流値(i1)として出力する。
また、第2電流演算部(434)は、位相検出部(436)によって検出された位相と、電流検出器(45a,45b)によって検出された電流値(Ir2a,It2a)とに基づいて、現時点での高調波電流の補償(高調波電流の低減)と、基本波の無効成分の補償(基本波の力率改善)の双方を行っているアクティブフィルタ装置(4)に流れ込む電流(第2電流値(i2)とする)を求め、第2電流値(i2)を負荷電流演算部(433)に出力する。より具体的には、電流検出器(45a,45b)の検出値(電流値(Ir2a,It2a))から高調波電流成分と、基本波の無効成分とを抽出して、第2電流値(i2)として出力する。
負荷電流演算部(433)は、負荷器(2)(三相の高調波発生負荷器)と、電力変換装置(1)(高調波発生負荷器)とに流れる電流を算出する。ここで、三相の高調波発生負荷器の一例である負荷器(2)に入力される各相の電流値(Ir1L,Is1L,It1L)、空気調和装置(11)に入力される各相の電流値(Ir2,Is2,It2)、電力変換装置(1)(すなわち高調波発生負荷器)に入力される各相の電流値(Ir2L,Is2L,It2L)、及びアクティブフィルタ装置(4)に入力される各相の電流値(Ir2a,Is2a,It2a)の間には、各相について以下の関係式が成り立つ。
R相:Irs=Ir1L+Ir2=Ir1L+Ir2L+Ir2a
S相:Iss=Is1L+Is2=Is1L+Is2L+Is2a ・・・・(1)
T相:Its=It1L+It2=It1L+It2L+It2a
これらの関係式から分かるように、交流電源(3)に流れる各相の電流値(Irs,Iss,Its)からアクティブフィルタ装置(4)に入力される各相の電流値(Ir2a,Is2a,It2a)を減算すると以下の式のようになる。
R相:Irs-Ir2a=Ir1L+Ir2−Ir2a=Ir1L+Ir2L+Ir2a−Ir2a
S相:Iss-Is2a=Is1L+Is2−Is2a=Is1L+Is2L+Is2a−Is2a ・・・・(2)
T相:Its-It2a=It1L+It2−It2a=It1L+It2L+It2a−It2a
これらの(2)式は、以下のように整理できる。
Irs−Ir2a=Ir1L+Ir2L
Iss−Is2a=Is1L+Is2L ・・・・(3)
Its−It2a=It1L+It2L
前記の(3)式から分かるように、交流電源(3)に流れる各相の電流値(Irs,Iss,Its)からアクティブフィルタ装置(4)に入力される各相の電流値(Ir2a,Is2a,It2a)を減算することにより、負荷器(2)(三相の高調波発生負荷器)と、電力変換装置(1)(高調波発生負荷器)とに流れる電流を求めることができる。そのことを利用して、本実施形態では、負荷器(2)と電力変換装置(1)の基本波力率及び発生する高調波を抑制し、交流電源(3)近くの配電・受電端の基本波力率の改善、及び高調波電流の低減を実現する。具体的に本実施形態では、負荷電流演算部(433)が、負荷器(2)と電力変換装置(1)に流れる電流を演算して電流指令演算部(432)に出力する。具体的には負荷電流演算部(433)は、第1電流値(i1)−第2電流値(i2)を演算して電流指令演算部(432)に出力する。
電流指令演算部(432)は、負荷電流演算部(433)で演算した電流の逆位相の電流値を演算して、その値を電流指令値(Iref)としてゲートパルス発生器(431)に出力する。ゲートパルス発生器(431)は、電流源(30)を構成するインバータ回路におけるスイッチングを指示するスイッチング指令値(G)を生成する。詳しくは、ゲートパルス発生器(431)は、電流源(30)の出力電流値と電流指令値(Iref)との偏差に基づいてスイッチング指令値(G)を生成する動作を繰り返すフィードバック制御を行う。それにより、電流源(30)からは、電流指令値(Iref)に相当する電流(補償電流)が受電経路(12)に供給される。より詳しくは、ゲートパルス発生器(431)では、第2電流演算部(434)で求めた第2電流値(i2)が電流指令値(Iref)に一致するように、スイッチング指令値(G)を電流源(30)に出力する。そのことにより、負荷器(2)と電力変換装置(1)に流れる電流に含まれている高調波成分とアクティブフィルタ装置(4)が出力する電流が相殺され、交流電源(3)から流れる電流は、高調波電流が除去された正弦波となり、力率が改善される。
〈アクティブフィルタ装置(4)の動作〉
アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和システム(100)に組み込まれているので、空気調和システム(100)に通電すると、アクティブフィルタ装置(4)も稼働状態となる。
電流指令演算部(432)によって電流指令値(Iref)が生成されると、ゲートパルス発生器(431)がスイッチング指令値(G)を生成し、電流源(30)からは電流指令値(Iref)に相当する補償電流が受電経路(12)に出力される。本実施形態では、空気調和装置(11)のみでなく、他の負荷器(2)を起因とする高調波電流を低減したり基本波力率を改善したりすることが可能になる。
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態によれば、複数の負荷器(ここでは、電力変換装置(1)や負荷器(2))が接続された電力系統において、高調波電流の低減を図ることが可能になる。更には、本実施形態では、基本波力率の改善を図ることも可能になる。
《発明の実施形態2》
図3は、本発明の実施形態2にかかる空気調和システム(100)を示すブロック図である。実施形態1と異なる点は、高調波発生負荷器である他の負荷器(21)が単相電圧で駆動する機器であり、他の負荷器(21)は、LEDなどの照明機器や単相のファン・ポンプなどを想定している。本実施形態では、他の負荷器(21)、すなわち単相電圧で駆動する機器の接続相が判らない場合を想定して、第1電流検出部(5)には、3つの電流検出器(4a,4b,4c)を設けて、交流電源(3)の各相(R,S,T)の電流値(すなわち3相すべての電流値)を検出している。すなわち、この構成では、負荷器(21)が単相交流で動作する機器であっても、電流値を確実に検出できる。
以上の構成により、本実施形態によれば、空気調和装置(11)とともに単相の他の負荷器(21)が接続された場合において、高調波電流の低減を図ることが可能になる。更には、本実施形態では、基本波力率の改善を図ることも可能になる。
なお、単相の負荷器(21)が接続される、交流電源(3)の相が予め分かっている場合には、負荷器(21)が接続される2つの相のみに電流検出器(4a,4b)をそれぞれ設置するように第1電流検出部(5)を構成してもよい。
《発明の実施形態3》
図4は、本発明の実施形態3にかかる空気調和システム(100)を示すブロック図である。実施形態1と異なる点は、図4に示すように、電力系統に、複数台の負荷器が接続されている点である。具体的にこの電力系統には、三相の高調波発生負荷器である負荷器(22)と、三相の高調波発生負荷器である負荷器(21)とが接続されている。すなわち、本実施形態では、電力変換装置(1)の他に、高調波発生負荷器(三相)が2台ある。このように、高調波発生負荷器(三相)が複数台になっても、実施形態1と同様の制御を行うことで、同様の効果が得られる。すなわち、本実施形態によれば、空気調和装置(11)とともに、他の負荷器(21,22)が複数台接続された場合において、高調波電流の低減を図ることが可能になる。更には、本実施形態では、基本波力率の改善を図ることも可能になる。
《発明の実施形態4》
図5は、本発明の実施形態4にかかる空気調和システムを示すブロック図である。実施形態1と異なる点は、図5に示すように、電力系統に複数台(この例では2台)の空気調和装置(11,11)が設けられていることである。この例では、これらの空気調和装置(11,11)は、それぞれアクティブフィルタ装置(4)を備えている。空気調和装置(11)が複数台になることにより、アクティブフィルタ装置(4)の電流負担容量を減らすことが可能になる。そのため、本実施形態では、アクティブフィルタ装置(4)の電流容量を低減してコストを下げることができるし、小型にできる効果がある。
図6に本実施形態における制御器(43)のブロック図の一例を示す。実施形態1と異なる点は、電流検出器(4a,4b)により検出された、交流電源(3)に流れる各相の電流値(Irs,Its)を制御器(43)の台数演算部(437)に入力しているところである。台数演算部(437)は、高調波発生負荷器である負荷器(21)の高調波電流の低減及び力率を改善するために、その低減、改善を負担するアクティブフィルタ装置(4)の台数を考慮する。本実施形態では、1台の負荷器(21)(すなわち高調波発生負荷器)に対してアクティブフィルタ装置(4)が2台あるので、これらのアクティブフィルタ装置(4)の電流容量が同じであるとすると、台数演算部(437)は、電流検出器(4a,4b)により検出された電流値(Irs)及び電流値(Its)のそれぞれを2で割って求めた各値を第1電流演算部(435)に出力する。それにより、1台のアクティブフィルタ装置(4)で分担する相毎の補償電流を求めることができる。この例では、それぞれのアクティブフィルタ装置(4)の出力電力は、1台のアクティブフィルタ装置(4)で補償電流を出力する場合の半分になる。
また、アクティブフィルタ装置(4)の電流容量が互いに異なる場合には、電流容量に応じて分担する電流を求める。例えば一方のアクティブフィルタ装置(4)の電流容量が10kW、もう一方のアクティブフィルタ装置(4)の電流容量が50kWであるとしたら、10kWのアクティブフィルタ装置(4)の台数演算部(437)は、電流検出器(4a,4b)により検出された電流値(Irs)及び電流値(Its)のそれぞれを6で割って求めた各値を第1電流演算部(435)に出力する。第1電流演算部(435)では、台数演算部(437)から送られてきたこれらの値に応じて第1電流値(i1)を出力する。また、50kWのアクティブフィルタ装置(4)の台数演算部(437)は、電流検出器(4a,4b)により検出された電流値(Irs,Its)に5/6を掛けた値を第1電流演算部(435)に出力する。第1電流演算部(435)では、台数演算部(437)から送られてきた値に応じて第1電流値(i1)を出力する。それぞれのアクティブフィルタ装置(4)の出力電力は、1台のアクティブフィルタ装置(4)で補償電流を出力する場合よりも低減する。
以上のように、本実施形態によれば、電力系統に複数台の空気調和装置(11,11)とともに他の負荷器(21)が接続された場合において、高調波電流の低減を図ることが可能になる。更には、本実施形態では、基本波力率の改善を図ることも可能になる。
《発明の実施形態5》
図7は、本発明の実施形態5に係る空気調和システム(100)を示すブロック図である。空気調和システム(100)は、アクティブフィルタ内蔵機器の一例であって、空気調和装置(11)とアクティブフィルタ装置(4)とを内蔵している。空気調和システム(100)は、ビル、工場、マンション、戸建て住宅等(以下、ビル等)に設置される。ビル等には、交流電源(3)を含む電力系統から電力が供給されている。この例では、交流電源(3)は、三相の交流電源(商用電源)である。
また、ビル等には、交流電源(3)に接続されて交流電源(3)からの交流電力を受電する分電盤(60)が設けられている。分電盤(60)は、複数のブレーカを備えており、各ブレーカを介して、交流電源(3)からの交流電力を複数の機器に分配している。この例では、それらのブレーカの1つに空気調和システム(100)が接続されている。空気調和システム(100)は、分電盤(60)を介して供給された交流電力によって稼働する。
具体的に、空気調和装置(11)は、冷媒が循環して冷凍サイクル運転動作を行う冷媒回路(図示省略)を備え、ビル等において室内の冷房や暖房を行う。空気調和装置(11)の冷媒回路は、冷媒を圧縮する圧縮機を備えている。また、空気調和装置(11)は、図7に示すように、コンバータ回路(511)、リアクトル(512)、コンデンサ(513)、インバータ回路(514)、及びモータ(515)を備えている。
コンバータ回路(511)は、交流を直流に変換する回路である。例えばコンバータ回路(511)は、ダイオードブリッジ回路で構成される。コンデンサ(513)は、コンバータ回路(511)の出力を平滑化するものである。また、インバータ回路(514)は、コンデンサ(513)によって平滑化された直流を、所定周波数及び所定電圧を有した交流に変換する。インバータ回路(514)は、具体的には、ブリッジ接続された複数(ここでは6個)のスイッチング素子を備え、入力された直流をスイッチングすることで、直流を交流に変換する。
空気調和装置(11)のモータ(515)は、いわゆるIPMモータ(Interior Permanent Magnet Motor)である。モータ(515)は、前記圧縮機を駆動する。ここで、何らの手当も行わないとすれば、モータ(515)が稼働することにより、電力系統の電流(以下、系統電流(Is))に高調波電流が加わる。
また、ブレーカの1つには、空気調和装置(11)とは別の負荷器(20)も接続されている。ここでは、負荷器(20)の一例として、エレベータを挙げる。エレベータは、図7に示すように、コンバータ回路(521)、リアクトル(522)、コンデンサ(523)、インバータ回路(524)、及びモータ(525)を備えている。コンバータ回路(521)は、交流を直流に変換する回路であり、空気調和装置(11)のコンバータ回路(511)と同様の構成である。コンデンサ(523)は、コンバータ回路(521)の出力を平滑化する。また、インバータ回路(524)は、コンデンサ(523)によって平滑化された直流を、所定周波数及び所定電圧を有した交流に変換する。インバータ回路(524)は、コンバータ回路(511)を同様の構成を有している。モータ(525)も、いわゆるIPMモータであり、前記エレベータを駆動する。ここで、何らの手当も行わないとすれば、モータ(525)が稼働することにより、系統電流(Is)に高調波電流が加わる。
〈アクティブフィルタ装置の構成〉
図7に示すように、アクティブフィルタ装置(4)は、電流源(5110)、力率制御器(5120)、及びPWM制御器(5140)を備えている。この例では、アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和装置(11)とともに空気調和システム(100)に組み込まれている。アクティブフィルタ装置(4)は、後述の補償電流(Ic)を電源系統に流すことで、力率改善と空気調和装置(11)の高調波抑制とを行う。なお、ここでは、補償電流(Ic)は、一例として、アクティブフィルタ装置(4)から交流電源(3)に向かう方向を正とする。また、系統電流(Is)と補償電流(Ic)の和が、電源系統(交流電源(3))から空気調和装置(11)に流れる電流(負荷電流(I1))と電源系統(交流電源(3))から負荷器(20)に流れる電流(負荷電流(I2))との和に等しいものとする。
−電流源(5110)−
電流源(5110)は、インバータ回路(5111)とコンデンサ(5113)を備えている。コンデンサ(5113)は、例えば電解コンデンサで構成される。インバータ回路(5111)は、補償電流(Ic)を入出力することにより、コンデンサ(5113)に充放電を行わせる。この例では、インバータ回路(5111)は、交流電源(3)に三相のリアクトル(5160)を介して接続されている。
本実施形態のインバータ回路(5111)では、詳細な図示を省略するが、6つのスイッチング素子(5112)がブリッジ接続されている。このインバータ回路(5111)は、所定周波数のキャリア信号に同期して、複数のスイッチング素子(5112)のスイッチング状態(オンオフ状態)をそれぞれ変化させて、補償電流(Ic)を入出力する。スイッチング素子(5112)のオンオフの制御は、PWM制御器(5140)が行う。なお、この例では、補償電流(Ic)のリプルを除去する目的で、ローパスフィルタ(5150)が、リアクトル(5160)と、ブレーカと空気調和装置(11)の接続点との間に設けられている。ローパスフィルタ(5150)は、いわゆるLCフィルタである。
−力率制御器(5120)−
力率制御器(5120)は、電源位相検出器(5121)、位相演算部(5122)、3つの電流センサ(5123,5124,5125)、3つのdq変換器(5126,5127)、ハイパスフィルタ(5129)、2つの加算器(5130,5132)、3つの減算器(5131,5133,5135)、電圧制御器(5134)、及び2つの電流制御器(5136,5137)を備えている。力率制御器(5120)の主要部は、具体的には、マイクロコンピュータと、それを動作させるためのソフトウエアが格納されたメモリディバイス等を用いて構成することができる。
電源位相検出器(5121)は、交流電源(3)の所定の線間(r相,s相,t相の何れか2つ)に接続され、その線間電圧の位相を検出して位相演算部(5122)に出力する。位相演算部(5122)は、電源位相検出器(5121)が出力した信号(ゼロクロス信号(S1)と呼ぶ)を用いて、電源位相検出器(5121)が接続された線間の位相(ωt)を求める。位相演算部(5122)は、求めた位相(ωt)をdq変換器(5126)、dq変換器(5127)、及びdq変換器(5128)に出力する。
電流センサ(5123)は、空気調和システム(100)の外部に設けられており、負荷電流(I1)を検出する。負荷電流(I1)は三相であるが、電流センサ(5123)は、三相のうちの二相分の負荷電流(ir1,it1)を検出している。電流センサ(5124)は、補償電流(Ic)を検出する。補償電流(Ic)も三相であるが、電流センサ(5124)は、三相のうちの二相分の負荷電流を検出している。また、電流センサ(5125)は、空気調和システム(100)の外部に設けられており、負荷電流(I2)を検出する。負荷電流(I2)も三相であるが、電流センサ(5125)は、三相のうちの二相分の負荷電流(ir2,it2)を検出している。なお、負荷電流(I1,I2)や補償電流(Ic)は、三相のうちの二相の電流値を検出しておけば、残りの一相の電流値は容易に算出することができるので、各電流センサ(5123,5124,5125)は、二相分の電流を検出する構成でよい。また、これらの電流センサ(5123,5124,5125)には種々の構成の電流センサを採用できる。これらの電流センサ(5123,5124,5125)の一例としては、カレントトランスが挙げられる。また、電流センサ(5125)の検出値を無線方式でdq変換器(5128)に送信するように構成することも可能である。
dq変換器(5126)は、電流センサ(5123)の検出値から求めた負荷電流(I1)(三相)に対して三相/二相変換(dq軸変換)を行う。ここで、d軸及びq軸は、位相演算部(5122)で求められた位相(ωt)と同期して回転する回転座標系である。dq変換器(5126)の変換結果として得られたq軸成分(以下、q軸成分(iq1*))は、空気調和装置(11)における無効電流である。一方、変換結果として得られたd軸成分は、空気調和装置(11)における有効電流である。dq変換器(5126)は、q軸成分(iq1*)を加算器(5130)に出力し、d軸成分をハイパスフィルタ(5129)に出力する。
dq変換器(5127)は、電流センサ(5124)の検出値から求めた補償電流(Ic)に対して三相/二相変換を行って、有効電流であるd軸成分(以下、d軸電流(id)と呼ぶ)と、無効電流であるq軸成分(以下、q軸電流(iq)と呼ぶ)とを求める。d軸電流(id)は、減算器(5135)に出力され、q軸電流(iq)は、減算器(5131)に出力される。
また、dq変換器(5128)は、電流センサ(5125)の検出値から求めた負荷電流(I2)(三相)に対して三相/二相変換を行って、q軸成分(iq2*)を求める。q軸成分(iq2*)は、負荷器(20)における無効電流である。dq変換器(5128)が求めたq軸成分(iq2*)は、加算器(5130)に出力されている。これにより、加算器(5130)からは、q軸成分(iq1*)とq軸成分(iq2*)との加算値が出力される。この加算値は、アクティブフィルタ装置(4)が設置されているビル等における無効電流の合計値と考えてよい。すなわち、この加算値は、補償電流(Ic)として流すべき電流のq軸成分と考えてよい。以下では、この加算値をq軸電流指令値(iq*)と呼ぶことにする。
ハイパスフィルタ(5129)は、dq変換器(5126)が出力した負荷電流(I1)のd軸成分から直流成分を除去して、加算器(5132)に出力する。dq変換器(5126)の出力は、負荷電流(I1)に高調波成分が無ければ直流となる。これは、負荷電流(I1)のうちで交流電源(3)の位相と同期する成分が直流として現れるからである。すなわち、ハイパスフィルタ(5129)は、負荷電流(I1)のd軸成分に含まれる高調波成分のみを加算器(5132)に出力する。
補償電流(Ic)におけるd軸成分及びq軸成分のそれぞれが、負荷電流(I1)の高調波成分とそれぞれ一致するように、補償電流(Ic)を流したとすれば、負荷電流(I1)の高調波成分を打ち消すことができる(以下、このように、所定の成分が打ち消されるように電流を流すことを補償と呼ぶ)。すなわち、ハイパスフィルタ(5129)の出力は、補償電流(Ic)のd軸成分(d軸電流(id))の指令値(d軸電流指令値(id*))の生成に用いることができる。
一方、dq変換器(5126)が出力する負荷電流(I1)のq軸成分(iq1*)は、直流成分も含んでいる。そのため、このq軸成分(iq1*)に相当する電流を、補償電流(Ic)に重畳することで、負荷電流(I1)が含む高調波成分の低減に加え、基本波力率も改善することが可能になる。
なお、この例では、d軸電流指令値(id*)として、ハイパスフィルタ(5129)の出力をそのまま用いるのではなく、コンデンサ(5113)の端子間電圧(以下、直流電圧(Vdc))の変動に対応するための修正が行われている。具体的に力率制御器(5120)では、まず、減算器(5133)によって、コンデンサ(5113)の直流電圧(Vdc)とその指令値(Vdc*)との偏差が求められる。電圧制御器(5134)は、減算器(5133)によって求められた偏差に基づいて比例積分制御を行って修正値を求める。この修正値は、加算器(5132)においてハイパスフィルタ(5129)の出力と加算され、加算結果がd軸電流指令値(id*)として出力される。これにより、直流電圧(Vdc)の変動の影響が低減される。
減算器(5135)は、d軸電流(id)をd軸電流指令値(id*)から差し引いた偏差(Δid)を求め、偏差(Δid)を電流制御器(5136)に出力する。また、減算器(5131)は、q軸電流(iq)をq軸成分(iq1*)から差し引いた偏差(Δiq)を求め、偏差(Δiq)を電流制御器(5137)に出力する。
電流制御器(5136)は、偏差(Δid)に基づいてフィードバック制御(例えば、いわゆるPID制御)等のアルゴリズムを利用することによって、二相の電圧指令値のうちの1つであるd軸電圧指令値(Vid)を出力する。また、電流制御器(5137)は、偏差(Δiq)に基づいてフィードバック制御(例えば、いわゆるPID制御)等のアルゴリズムを利用することによって、二相の電圧指令値のうちの1つであるq軸電圧指令値(Viq)を出力する。
−PWM制御器(5140)−
PWM制御器(5140)は、d軸電圧指令値(Vid)及びq軸電圧指令値(Viq)に基づいて電流源(5110)を駆動するスイッチング指令値(駆動信号(G))を生成する。具体的に、PWM制御器(5140)は、いわゆるPWM(pulse width modulation)制御を行って、電流源(5110)に補償電流(Ic)の入出力を行わせる。PWM制御器(5140)は、マイクロコンピュータと、それを動作させるためのソフトウエアが格納されたメモリディバイスを用いて構成することができる。
〈アクティブフィルタ装置の動作〉
アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和システム(100)に組み込まれているので、アクティブフィルタ装置(4)を稼働させるには、空気調和システム(100)に通電させる。そうすると、アクティブフィルタ装置(4)では、力率制御器(5120)において、電流センサ(5123)の検出値等に基づいて、負荷電流(I1)のq軸成分(iq1*)が求められる。また、電流センサ(5125)の検出値に基づいて、q軸成分(iq2*)が、dq変換器(5128)によって求められる。
負荷電流(I1)のq軸成分(iq1*)と、負荷電流(I2)のq軸成分(iq2*)とは、加算器(5130)で加算され、q軸電流指令値(iq*)として出力される。このq軸電流指令値(iq*)からは、dq変換器(5127)が求めたq軸電流(iq)が、減算器(5131)によって減算されて、偏差(Δiq)として出力される。
更に、力率制御器(5120)では、dq変換器(5126)等の動作によってd軸電流指令値(id*)が生成される。このd軸電流指令値(id*)からは、dq変換器(5127)が求めたd軸電流(id)が、減算器(5135)によって減算されて、偏差(Δid)として出力される。
偏差(Δid)が定まると、電流制御器(5136)からd軸電圧指令値(Vid)が出力される。また、偏差(Δiq)が定まると、電流制御器(5137)からq軸電圧指令値(Viq)が出力される。それにより、d軸電圧指令値(Vid)及びq軸電圧指令値(Viq)に見合った駆動信号(G)がPWM制御器(5140)からインバータ回路(5111)に出力される。その結果、電流源(5110)からは、d軸電流指令値(id*)及びq軸電流指令値(iq*)に相当する成分を有した補償電流(Ic)が流れる。これにより、系統電流(Is)からは、空気調和装置(11)による高調波電流が低減するとともに、基本波力率が改善する。
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態では、空気調和装置(11)に関しては、その有効電流の高調波成分及び無効電流を補償して、高調波電流の低減と力率改善の両方を行っている。一方、空気調和装置(11)と同じ電力系統に接続された他の負荷器(20)に関しては、その無効電流のみに基づいて力率改善(補償)を行い、有効電流に関しては補償を行っていない。すなわち、アクティブフィルタ装置(4)では、他の負荷器(20)に関して有効電流の補償を行わないので、その分のアクティブフィルタ装置(4)の容量を確保する必要がない。したがって、本実施形態を適用すれば、電力系統に空気調和装置(11)とともに別の負荷器(20)が接続された場合において、アクティブフィルタ装置(4)の容量を大きくすることなく、力率の改善を図ることが可能になる。本実施形態は、空気調和装置(11)に組み込まれているアクティブフィルタ装置(4)の余力を利用してビル等全体の力率改善を図る場合に有用な形態である。
《実施形態5の変形例》
図8は、実施形態5の変形例に係る空気調和システム(100)を示すブロック図である。同図に示すように、本変形例に係る空気調和システム(100)は、実施形態5のアクティブフィルタ装置(4)にローパスフィルター(5138)を追加したものである。また、この例では、空気調和装置(11)とは別の負荷器(20)として、電流に高調波成分を含まない誘導性のモータ(525)が接続されている。この場合も、何らの手当も行わないとすれば、系統電流(Is)は、遅れ位相となる。
本変形例では、図8に示すように、dq変換器(5128)のq軸成分がローパスフィルター(5138)を通してq軸成分(iq2*)として出力されるように構成されている。そのため、本変形例では、負荷器(20)の無効電流の基本波成分のみが補償される。すなわち、本変形例は、他の負荷器(20)の無効電流が、高調波成分を含まない場合に有用な構成である。
《発明の実施形態6》
図9は、本発明の実施形態6に係る空気調和システム(100)を示すブロック図である。空気調和システム(100)は、アクティブフィルタ内蔵機器の一例であって、空気調和装置(11)とアクティブフィルタ装置(4)とを内蔵している。空気調和システム(100)は、ビル、工場、マンション等に設置される。ビル等には、交流電源(3)を含む電力系統から電力が供給されている。この例では、交流電源(3)は、三相の交流電源(商用電源)である。なお、電力系統の送電網には、インピーダンスがある(図9では、交流電源(3)と分電盤(60)(後述)の間に、当該インピーダンスを示すためにコイルの記号を付与してある)。調相設備(200)の存在によって、交流電源(3)から分電盤(60)に電力が入る段階で、電流は進み位相となる傾向があり、当該インピーダンスの存在によって、分電盤(60)での受電電圧は、交流電源よりも高くなる。
また、ビル等には、交流電源(3)に接続されて交流電源(3)からの交流電力を受電する分電盤(60)が設けられている。分電盤(60)は、複数のブレーカを備えており、各ブレーカを介して、交流電源(3)からの交流電力を複数の機器に分配している。この例では、それらのブレーカの1つに空気調和システム(100)が接続されている。空気調和システム(100)は、分電盤(60)を介して供給された交流電力によって稼働する。
具体的に、空気調和装置(11)は、冷媒が循環して冷凍サイクル運転動作を行う冷媒回路(図示省略)を備え、ビル等において室内の冷房や暖房を行う。空気調和装置(11)の冷媒回路は、冷媒を圧縮する圧縮機を備えている。また、空気調和装置(11)は、図9に示すように、コンバータ回路(611)、リアクトル(612)、コンデンサ(613)、インバータ回路(614)、及びモータ(615)を備えている。
コンバータ回路(611)は、交流を直流に変換する回路である。例えばコンバータ回路(611)は、ダイオードブリッジ回路で構成される。コンデンサ(613)は、コンバータ回路(611)の出力を平滑化するものである。また、インバータ回路(614)は、コンデンサ(613)によって平滑化された直流を、所定周波数及び所定電圧を有した交流に変換する。インバータ回路(614)は、具体的には、ブリッジ接続された複数(ここでは6個)のスイッチング素子を備え、入力された直流をスイッチングすることで、直流を交流に変換する。
空気調和装置(11)のモータ(615)は、いわゆるIPMモータ(Interior Permanent Magnet Motor)である。モータ(615)は、前記圧縮機を駆動する。ここで、何らの手当も行わないとすれば、モータ(615)が稼働することにより、電力系統の電流(以下、系統電流(Is))に高調波電流が加わる。すなわち、空気調和装置(11)は、高調波発生機器の一例である。なお、図示は省略するが、このビル等には、空気調和装置(11)以外の負荷器(例えばエレベータなど)も分電盤(60)を介して電力供給を受けている。
また、ビル等には、調相設備(200)が設けられている。図10に、調相設備(200)の構成を模式的に示す。図10に示すように、調相設備(200)は、直列接続された進相コンデンサ(201)とリアクトル(202)とから成る直列ユニットを3組(3相分)備えている。各直列ユニットは、図10に示すように、分電盤(60)の入力側に設けられている。詳しくは、各直列ユニットは、一端側が交流電源(3)の所定の一相に接続され、他端側が互いに接続されている。なお、以下では、調相設備(200)に流れる電流を進相コンデンサ電流(Isc)と命名する。
〈アクティブフィルタ装置の構成〉
図9に示すように、アクティブフィルタ装置(4)は、電流源(6110)、力率制御器(6120)、及びPWM制御器(6140)を備えている。この例では、アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和装置(11)とともに空気調和システム(100)に組み込まれている。アクティブフィルタ装置(4)は、後述の補償電流(Ic)を電源系統に流すことで、力率改善と空気調和装置(11)の高調波抑制とを行う。なお、ここでは、補償電流(Ic)は、一例として、アクティブフィルタ装置(4)から交流電源(3)に向かう方向を正とする。また、系統電流(Is)と補償電流(Ic)の和が、電源系統(交流電源(3))から空気調和装置(11)に流れる電流(負荷電流(I1))と調相設備(200)に流れる進相コンデンサ電流(Isc)との和に等しいものとする。
−電流源(6110)−
電流源(6110)は、インバータ回路(6111)とコンデンサ(6113)を備えている。コンデンサ(6113)は、例えば電解コンデンサで構成される。インバータ回路(6111)は、補償電流(Ic)を入出力することにより、コンデンサ(6113)に充放電を行わせる。この例では、インバータ回路(6111)は、交流電源(3)に三相のリアクトル(6160)を介して接続されている。
本実施形態のインバータ回路(6111)では、詳細な図示を省略するが、6つのスイッチング素子(6112)がブリッジ接続されている。このインバータ回路(6111)は、所定周波数のキャリア信号に同期して、複数のスイッチング素子(6112)のスイッチング状態(オンオフ状態)をそれぞれ変化させて、補償電流(Ic)を入出力する。スイッチング素子(6112)のオンオフの制御は、PWM制御器(6140)が行う。なお、この例では、補償電流(Ic)のリプルを除去する目的で、ローパスフィルタ(6150)が、リアクトル(6160)と、ブレーカと空気調和装置(11)の接続点との間に設けられている。ローパスフィルタ(6150)は、いわゆるLCフィルタである。
−力率制御器(6120)−
力率制御器(6120)は、電源位相検出器(6121)、位相演算部(6122)、3つの電流センサ(6123,6124,6125)、3つのdq変換器(6126,6127,6128)、ハイパスフィルタ(6129)、加算器(6132)、3つの減算器(6131,6133,6135)、電圧制御器(6134)、及び2つの電流制御器(6136,6137)を備えている。力率制御器(6120)の主要部は、具体的には、マイクロコンピュータと、それを動作させるためのソフトウエアが格納されたメモリディバイス等を用いて構成することができる。
電源位相検出器(6121)は、交流電源(3)の所定の線間(r相,s相,t相の何れか2つ)に接続され、その線間電圧の位相を検出して位相演算部(6122)に出力する。位相演算部(6122)は、電源位相検出器(6121)が出力した信号(ゼロクロス信号(S1)と呼ぶ)を用いて、電源位相検出器(6121)が接続された線間の位相(ωt)を求める。位相演算部(6122)は、求めた位相(ωt)をdq変換器(6126)、dq変換器(6127)、及びdq変換器(6128)に出力する。
電流センサ(6123)は、空気調和システム(100)の外部に設けられており、負荷電流(I1)を検出する。負荷電流(I1)は三相であるが、電流センサ(6123)は、三相のうちの二相分の負荷電流(ir1,it1)を検出している。電流センサ(6124)は、補償電流(Ic)を検出する。補償電流(Ic)も三相であるが、電流センサ(6124)は、三相のうちの二相分の負荷電流を検出している。
また、電流センサ(6125)は、負荷情報検出部の一例であり、系統電流(Is)を検出する。ここで、系統電流(Is)は、調相設備(200)も含めたビル等全体における電流である。この例では、電流センサ(6125)は、分電盤(60)内に設けられている。すなわち、電流センサ(6125)は、空気調和システム(100)の外部に設けられている。電流センサ(6125)は、分電盤(60)の入力側であって、且つ、調相設備(200)よりも交流電源(3)寄りで電流値(系統電流(Is))を検出する。系統電流(Is)も三相であるが、電流センサ(6125)は、三相のうちの二相分の系統電流(ir2,it2)を検出している。電流センサ(6125)の検出値(系統電流(Is))は、dq変換器(6128)に対して無線方式により送信されている。勿論、電流センサ(6125)の検出値を有線方式でdq変換器(6128)に送信するように構成することも可能である。
なお、負荷電流(I1)、系統電流(Is)、及び補償電流(Ic)は、三相のうちの二相の電流値を検出しておけば、残りの一相の電流値は容易に算出することができるので、各電流センサ(6123,6124,6125)は、二相分の電流を検出する構成でよい。また、これらの電流センサ(6123,6124,6125)には種々の構成の電流センサを採用できる。これらの電流センサ(6123,6124,6125)の一例としては、カレントトランスが挙げられる。
dq変換器(6126)は、電流センサ(6123)の検出値から求めた負荷電流(I1)(三相)に対して三相/二相変換(dq軸変換)を行う。ここで、d軸及びq軸は、位相演算部(6122)で求められた位相(ωt)と同期して回転する回転座標系である。変換結果として得られたd軸成分は、空気調和装置(11)における有効電流である。dq変換器(6126)は、d軸成分をハイパスフィルタ(6129)に出力する。なお、dq変換器(6126)の変換結果として得られたq軸成分は、空気調和装置(11)における無効電流であるが、本実施形態ではこのq軸成分は制御には用いられていない。
dq変換器(6127)は、電流センサ(6124)の検出値から求めた補償電流(Ic)に対して三相/二相変換を行って、有効電流であるd軸成分(以下、d軸電流(id)と呼ぶ)と、無効電流であるq軸成分とを求める。d軸電流(id)は、減算器(6135)に出力される。なお、本実施形態では、dq変換器(6127)が求めたq軸電流は、制御に使用されていない。
また、dq変換器(6128)は、電流センサ(6125)の検出値から求めた系統電流(Is)(三相)に対して三相/二相変換を行って、q軸成分(以下、q軸電流(iq))を求める。q軸電流(iq)は、受電した電力における無効電流である。換言すると、アクティブフィルタ装置(4)が設置されているビル等における無効電流の合計値と考えてよい。すなわち、このq軸電流(iq)は、補償電流(Ic)として流すべき電流のq軸成分と考えてよい。dq変換器(6128)が求めたq軸電流(iq)は、減算器(6131)に出力されている。なお、本実施形態では、dq変換器(6128)が求めたd軸電流は、制御に使用されていない。
ハイパスフィルタ(6129)は、dq変換器(6126)が出力した負荷電流(I1)のd軸成分から直流成分を除去して、加算器(6132)に出力する。dq変換器(6126)の出力は、負荷電流(I1)に高調波成分が無ければ直流となる。これは、負荷電流(I1)のうちで交流電源(3)の位相と同期する成分が直流として現れるからである。すなわち、ハイパスフィルタ(6129)は、負荷電流(I1)のd軸成分に含まれる高調波成分のみを加算器(6132)に出力する。
補償電流(Ic)におけるd軸成分及びq軸成分のそれぞれが、負荷電流(I1)の高調波成分とそれぞれ一致するように、補償電流(Ic)を流したとすれば、負荷電流(I1)の高調波成分を打ち消すことができる(以下、このように、所定の成分が打ち消されるように電流を流すことを補償と呼ぶ)。すなわち、ハイパスフィルタ(6129)の出力は、補償電流(Ic)のd軸成分(d軸電流(id))の指令値(d軸電流指令値(id*))の生成に用いることができる。
なお、この例では、d軸電流指令値(id*)として、ハイパスフィルタ(6129)の出力をそのまま用いるのではなく、コンデンサ(6113)の端子間電圧(以下、直流電圧(Vdc))の変動に対応するための修正が行われている。具体的に力率制御器(6120)では、まず、減算器(6133)によって、コンデンサ(6113)の直流電圧(Vdc)とその指令値(Vdc*)との偏差が求められる。電圧制御器(6134)は、減算器(6133)によって求められた偏差に基づいて比例積分制御を行って修正値を求める。この修正値は、加算器(6132)においてハイパスフィルタ(6129)の出力と加算され、加算結果がd軸電流指令値(id*)として出力される。これにより、直流電圧(Vdc)の変動の影響が低減される。
減算器(6135)は、d軸電流(id)をd軸電流指令値(id*)から差し引いた偏差(Δid)を求め、偏差(Δid)を電流制御器(6136)に出力する。また、減算器(6131)には、固定値(具体的にはゼロ)がq軸電流指令値(iq*)として入力されている。減算器(6131)からは、q軸電流指令値(iq*)からq軸電流(iq)を減算した値(以下、偏差(Δiq)と呼ぶ)が出力される。偏差(Δid)は、電流制御器(6137)に入力されている。
電流制御器(6136)は、偏差(Δid)に基づいてフィードバック制御(例えば、いわゆるPID制御)等のアルゴリズムを利用することによって、二相の電圧指令値のうちの1つであるd軸電圧指令値(Vid)を出力する。また、電流制御器(6137)は、偏差(Δiq)に基づいてフィードバック制御(例えば、いわゆるPID制御)等のアルゴリズムを利用することによって、二相の電圧指令値のうちの1つであるq軸電圧指令値(Viq)を出力する。
−PWM制御器(6140)−
PWM制御器(6140)は、d軸電圧指令値(Vid)及びq軸電圧指令値(Viq)に基づいて電流源(6110)を駆動するスイッチング指令値(駆動信号(G))を生成する。具体的に、PWM制御器(6140)は、いわゆるPWM(pulse width modulation)制御を行って、電流源(6110)に補償電流(Ic)の入出力を行わせる。PWM制御器(6140)は、マイクロコンピュータと、それを動作させるためのソフトウエアが格納されたメモリディバイスを用いて構成することができる。
〈アクティブフィルタ装置の動作〉
アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和システム(100)に組み込まれているので、アクティブフィルタ装置(4)を稼働させるには、空気調和システム(100)に通電させる。そうすると、力率制御器(6120)では、電流センサ(6125)の検出値に基づいて、dq変換器(6128)によって、系統電流(Is)のq軸電流(iq)が求められる。また、減算器(6131)によって、q軸電流(iq)からq軸電流指令値(iq*)が減算されて、偏差(Δiq)が算出される。更に、力率制御器(6120)では、dq変換器(6126)等の動作によってd軸電流指令値(id*)が生成される。また、減算器(6135)によって、d軸電流指令値(id*)から、dq変換器(6127)が求めたd軸電流(id)が減算されて、偏差(Δid)が算出される。
偏差(Δid)が定まると、電流制御器(6136)からd軸電圧指令値(Vid)が出力される。また、偏差(Δiq)が定まると、電流制御器(6137)からq軸電圧指令値(Viq)が出力される。それにより、d軸電圧指令値(Vid)及びq軸電圧指令値(Viq)に見合った駆動信号(G)がPWM制御器(6140)からインバータ回路(6111)に出力される。
例えば、アクティブフィルタ装置(4)が設けられなかったとすれば、空気調和装置(11)の負荷が小さい場合には、進相コンデンサ電流(Isc)によって系統電流(Is)は、進み位相となる。しかしながら、本実施形態では、系統電流(Is)におけるq軸成分(q軸電流(iq))がゼロ(=q軸電流指令値(iq*))となるようにq軸電圧指令値(Viq)が生成される。それに応じて、電流源(6110)からは、q軸電流(iq)に相当する成分を有した補償電流(Ic)が流れる。その結果、本実施形態では、進み位相となっている進相コンデンサ電流(Isc)が補償され、受電した電力における基本波力率が改善される。
なお、空気調和装置(11)に関しては、負荷電流(I1)の高調波成分を補償するように、補償電流(Ic)のd軸成分が調整される。そのため、空気調和装置(11)に係る有効電流の高調波成分も補償される。すなわち、アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和装置(11)の高調波電流の低減も可能である。
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態では、調相設備(200)も含めたビル等の全体についての無効電流を把握し、その無効電流を補償するようにした。そのため、本実施形態では、調相設備を有したビル等における力率を改善することが可能になる。
《発明の実施形態7》
図11は、実施形態7に係る電源力率制御システム(7000)の構成を示すブロック図である。電源力率制御システム(7000)は、調相設備(200)と、空気調和システム(100)とを備える。
空気調和システム(100)は、ビルや戸建て住宅(以下、ビル等)に設置され、室内の空気調和(冷房や暖房)を行う。上記ビル等には、交流電源(3)を含む電力系統から電力が供給されている。この例では、交流電源(3)は、三相の交流電源(例えば三相の商用電源)であり、高調波発生負荷器である空気調和システム(100)に電力を供給する。空気調和システム(100)は、交流電源(3)から供給された交流電力によって稼働する。
調相設備(200)は、ビル等である建物全体の力率を改善するために、当該ビル等に取り付けられているものである。
〈空気調和システムの構成〉
空気調和システム(100)は、空気調和装置(11)及びアクティブフィルタ装置(4)を備える。空気調和装置(11)は、圧縮機を有した冷媒回路(図示せず)と、電力変換装置(1)とを備えている。
空気調和装置(11)の冷媒回路は、圧縮機、室外側熱交換器、膨張機構、室内側熱交換器が冷媒配管によって接続されることで構成される。冷媒回路内には冷媒が充填されており、冷媒が冷媒回路内を循環することによって、室内は冷却または暖められる。
電力変換装置(1)は、調相設備(200)を介して交流電源(3)に接続されており、コンバータ回路とインバータ回路とを有する。電力変換装置(1)は、交流電源(3)から交流電力を供給されると、これを所望周波数及び所望電圧を有した交流電力に変換し、変換後の電力を圧縮機(より詳しくは圧縮機が備える電動機)に供給する。それにより、圧縮機が稼働して冷媒回路が機能し、その結果、室内の空気調和が行われる。
空気調和装置(11)において、電力変換装置(1)や圧縮機の電動機が稼働すると、高調波電流が発生する場合がある。この高調波電流は、電力変換装置(1)に電力を供給する電流経路を介して、交流電源(3)に流出する可能性がある。このような高調波電流は、一般的には交流電源(3)側への流出レベルが規制されている。
そのため、空気調和システム(100)内には、アクティブフィルタ装置(4)が組み込まれている。アクティブフィルタ装置(4)は、電力変換装置(1)にて発生する高調波電流の低減を行う。
更に、設備容量や省エネルギーの観点などから、配電・受電端の基本波力率の改善が求められているところ、アクティブフィルタ装置(4)は、基本波力率の改善機能も備えている。基本波力率の改善がアクティブフィルタ装置(4)にて行われることにより、電源力率の改善が図られる。
以下、アクティブフィルタ装置(4)の構成について説明する。
〈アクティブフィルタ装置の構成〉
アクティブフィルタ装置(4)は、交流電源(3)に対し、高調波電流の発生源となる電力変換装置(1)と並列に接続されており、該電力変換装置(1)から流出し交流電源(3)からの受電経路に現れる高調波電流を打ち消す機能を有する。即ち、アクティブフィルタ装置(4)は、交流電源(3)の電流経路(以下、受電経路(12))における電流が正弦波に近づくように補償電流を流す。より具体的には、アクティブフィルタ装置(4)は、受電経路(12)に現れている高調波電流とは逆位相の補償電流を生成し、受電経路(12)に供給する。
そして、アクティブフィルタ装置(4)は、上述した補償電流を流すことにより、基本波力率を改善する力率改善の機能も有する。この例では、基本波の無効成分も補償する補償電流を流すようにアクティブフィルタ装置(4)を構成することで、基本波力率の改善を行う。
上記機能を実現するため、本実施形態に係るアクティブフィルタ装置(4)は、図11に示すように、電流源(730)、フィルタ側電流検出器(745a,745b)、フィルタ側電圧検出器(746)、及びアクティブフィルタ制御器(743)を有する。
なお、電力変換装置(1)において発生する高調波電流が最も大きくなるのは、空気調和装置(11)の負荷がもっとも大きな場合(例えば冷房の最大出力時)と考えられる。そのため、アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和装置(11)の負荷最大時における高調波電流を想定して、能力(生成可能な電流または電力の大きさ)、即ち容量が設定されている。この容量を、出力最大容量と言う。但し、一般的に、空気調和装置(11)は、最大負荷の状態で使用されることよりも小さい負荷(例えば中間の負荷)で使用される場合の方が多い。すると、このように出力最大能力が設定されたアクティブフィルタ装置(4)は、稼働中の殆どの期間において、能力が余剰となることが多いと考えられる。
−電流源−
電流源(730)は、高調波電流の低減及び基本波力率改善を行うための補償電流を生成する。電流源(730)の出力端子は、電力変換装置(1)に接続されており、生成した補償電流は受電経路(12)に出力される。
図示していないが、本実施形態の電流源(730)は、いわゆるインバータ回路を用いて構成されている(アクティブフィルタインバータ部)。電流源(730)には、アクティブフィルタ制御器(743)から後述するスイッチング指令値(G)が入力される。電流源(730)は、スイッチング指令値(G)に応じてスイッチングすることによって、補償電流を生成する。
−フィルタ側電流検出器−
フィルタ側電流検出器(745a,745b)は、アクティブフィルタ装置(4)の電流源(730)に入力される電流値(Ir2a,It2a)を検出する。
この例では、フィルタ側電流検出器(745a,745b)は、1つのアクティブフィルタ装置(4)において2つ設けられている。フィルタ側電流検出器(745a)は、交流電源(3)から電流源(730)に入力されるR相の電流値(Ir2a)を検出し、フィルタ側電流検出器(745b)は、交流電源(3)から電流源(730)に入力されるT相の電流値(It2a)を検出する。フィルタ側電流検出器(745a,745b)によって検出された電流値(Ir2a,It2a)は、アクティブフィルタ制御器(743)に送信される。
フィルタ側電流検出器(745a,745b)の構成には、特に限定はないが、例えばカレントトランスを採用することなどが考えられる。
また、フィルタ側電流検出器(745a,745b)は、検出結果をアクティブフィルタ制御器(743)に有線方式で送信する構成であってもよいし、無線方式で送信する構成であってもよい。
なお、本実施形態では、フィルタ側電流検出器(745a,745b)が交流電源(3)の2相分の出力電流値(Ir2a,It2a)を検出する場合を例示しているが、フィルタ側電流検出部は、交流電源(3)の3相分の出力電流値を検出する構成であってもよい。
−フィルタ側電圧検出器−
フィルタ側電圧検出器(746)は、交流電源(3)のR相及びS相に接続され、T相には接続されていない。フィルタ側電圧検出器(746)は、交流電源(3)の線間電圧(Vrs)のみを検出してアクティブフィルタ制御器(743)に入力する。
なお、本実施形態では、フィルタ側電圧検出器(746)が交流電源(3)の2相分の出力に接続された場合を例示しているが、フィルタ側電圧検出器(746)は、交流電源(3)の3相分の出力に接続される構成であってもよい。
−アクティブフィルタ制御器−
アクティブフィルタ制御器(743)は、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリディバイスとを用いて構成される。図11に示すように、アクティブフィルタ制御器(743)は、電流源(730)、フィルタ側電流検出器(745a,745b)、フィルタ側電圧検出器(746)、及び後述する調相設備(200)内の調相設備制御器(233)に接続されている。アクティブフィルタ制御器(743)は、各検出器(745a,745b,746)の検出結果と、調相設備制御器(233)を介して送られる交流電源(3)の電流値(Irs,Its)とに基づいて、アクティブフィルタインバータ部である電流源(730)の出力電流(即ち補償電流)を制御する。
〈調相設備の構成〉
図11に示すように、調相設備(200)は、受電経路(12)上において、交流電源(3)の出力と電力変換装置(1)及びアクティブフィルタ装置(4)の各入力との間に接続されている。調相設備(200)は、2つの調相機器(231,232)と、電力計(236)と、調相設備制御器(233)とを有する。電力計(236)は、負荷情報検出部の一例である。
−調相機器−
調相機器(231,232)は、交流電源(3)に対し、電力変換装置(1)及びアクティブフィルタ装置(4)と並列に接続されている。調相機器(231,232)は、電力変換装置(1)に供給される電力のうち無効電力を制御する。この例では、調相機器(231)は、20kVarの無効電力を吸収できる装置であり、調相機器(232)は、50kVarの無効電力を吸収できる装置である。
調相機器(231,232)は、いずれも、3つの進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)と、3つの進相リアクトル(La,Lb,Lc)と、2つの切替器(2311,2321)(切替部に相当)とで構成される。調相機器(231,232)が進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)のみならず進相リアクトル(La,Lb,Lc)を含む構成である理由は、仮に進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)が短絡故障した際に調相機器(231,232)に流れる電流の大きさを、進相リアクトル(La,Lb,Lc)によって絞ることができるためである。
切替器(2311,2321)は、調相設備制御器(233)の切替信号に基づいて調相機器(231,232)の投入及び開放を行う。即ち、各切替器(2311,2321)は、対応する調相機器(231,232)と交流電源(3)とを、接続または非接続の状態に切り換えるためのものである。
−電力計(負荷情報検出部)等−
交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部である電力計(236)は、受電経路(12)上において、交流電源(3)の出力と調相機器(231,232)の入力との間に接続されている。電力計(236)は、2つの電源側電流検出器(234a,234b)と1つの電源側電圧検出器(235)とを有する。
電源側電流検出器(234a,234b)は、受電経路(12)上において、各調相機器(231,232)及び空気調和システム(100)へと電流が分岐して流れる前の、交流電源(3)の出力電流を検出する。この例では、電源側電流検出器(234a,234b)は2つ設けられている。具体的に、電源側電流検出器(234a)は、交流電源(3)におけるR相の電流値(Irs)を検出する。電源側電流検出器(234b)は、交流電源(3)におけるT相の電流値(Its)を検出する。
電源側電圧検出器(235)は、交流電源(3)の各相の出力端子に接続され、交流電源(3)の出力電圧である交流電源(3)の線間電圧(Vrs,Vst,Vtr)を検出する。
このような交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部である電力計(236)は、ビル等の建物に既設の電力計またはスマートメータであることができる。電流及び電圧を計測するセンサや検出回路を、電力計及びスマートメータとは別途設けずに済むためである。
なお、電源側電流検出器(234a,234b)の構成は、特に限定はないが、例えばカレントトランスを採用することができる。
また、電源側電流検出器(234a,234b)は、検出結果を調相設備制御器(233)に有線方式で送信する構成であってもよいし、無線方式で送信する構成であってもよい。なお、交流電源(3)とアクティブフィルタ装置(4)との距離は、20〜30メートル離れることがある。そのため、電源側電流検出器(234a,234b)からアクティブフィルタ装置(4)までを配線で接続すると、この配線を長く引き回すこととなり、また、電源側電流検出器(234a,234b)とアクティブフィルタ装置(4)との接続作業自体にかなりの手間がかかってしまう。これに対し、電源側電流検出器(234a,234b)の検出結果が無線方式で送信する構成とすることにより、上記配線自体が不要となり、配線を引き回す作業を行わずに済む。既存の送信設備が近くに存在する場合には、最寄の接続点までを無線化する等、既存の送信設備を途中に介して送信しても良い。
また、電源側電流検出器(234a,234b)に流れる電流により電源側電流検出器(234a,234b)を貫く磁束が時間に対して変化する現象を電磁誘導というが、その電磁誘導によって生じる起電力である誘導起電力を、電源側電流検出器(234a,234b)を駆動させる電源(例えば通信のための電源)として利用してもよい。そのことにより、電源側電流検出器(234a,234b)は、無電源方式で動作(すなわち電源側電流検出器(234a,234b)の外部から電源を接続せずに動作)でき、電源側電流検出器(234a,234b)を外部の電源と接続する作業が不要となる。
また、本実施形態では、交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部である電力計(236)が調相設備(200)の内部に設けられているが、交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部である電力計(236)が調相設備(200)の外部に設けられていてもよい。なお、本実施形態のように、電力計(236)が調相設備(200)の内部に設けられている場合、電力計(236)が雨や風に晒されることが無くなるため、電力計(236)の信頼性が高まり且つ寿命を延ばすことができる。
また、電源側電流検出器(234a,234b)は、交流電源(3)の2相分に限定されず、交流電源(3)の3相各相それぞれに対応して設けられても良い。
−調相設備制御器−
調相設備制御器(233)は、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリディバイスとを用いて構成される。図11に示すように、調相設備制御器(233)は、電力計(236)と、調相機器(231,232)の各切替器(2311,2321)と、アクティブフィルタ装置(4)におけるアクティブフィルタ制御器(743)に接続されている。調相設備制御器(233)は、電力計(236)からの信号に基づいて、無効電力Pβ及び電源力率θαβそのものの演算または無効電力Pβ及び電源力率θαβを把握するための情報の算出を行う。また、調相設備制御器(233)は、各切替器(2311,2321)の切替制御、電源側電流検出器(234a,234b)の検出結果のアクティブフィルタ制御器(743)への出力を行う。
〈調相設備制御器による各切替器の切替制御動作〉
図12に示すように、上記調相設備制御器(233)は、電源力率演算部(2331)及び切替制御部(2332)を有する。
−電源力率演算部−
電源力率演算部(2331)には、電力計(236)における電源側電圧検出器(235)が検出した線間電圧(Vrs,Vst,Vtr)及び電源側電流検出器(234a,234b)の検出結果(Irs,Its)が入力される。電源力率演算部(2331)は、入力されたこれらの信号を下式(7の1)及び下式(7の2)に当てはめて、回転2軸(αβ軸)の電圧Vα,Vβ及びiα,iβを演算する。
次いで、電源力率演算部(2331)は、上式(7の1)及び上式(7の2)で求めた回転2軸(αβ軸)の電圧Vα,Vβ及び電流iα,iβを、下式(7の3)及び下式(7の4)に当てはめて、有効電力Pα及び無効電力Pβを演算する。
上記有効電力Pα及び無効電力Pβそれぞれを下式(7の5)に当てはめることにより、交流電源(3)の電源力率θαβが得られる。
上式(7の5)は、無効電力Pβが大きい程、電源力率θαβが低下し、逆に無効電力Pβが小さい程電源力率θαβは上昇して力率が向上(改善)することを示している。本実施形態では、無効電力Pβを調相機器(231,232)の切替信号の生成に使用するが、更に電源力率θαβ、または無効電力Pβ及び電源力率θαβの双方が演算されて、調相機器(231,232)の切替信号の生成に利用されてもよい。
−切替制御部−
切替制御部(2332)には、電源力率演算部(2331)が演算した無効電力Pβが入力される。切替制御部(2332)は、無効電力Pβに応じて、交流電源(3)と各調相機器(231,232)との接続状態の組合せが変更するように、各調相機器(231,232)における切替器(2311,2321)の切替制御を行う。具体的には、切替制御部(2332)は、無効電力Pβを、図13に係る各調相機器(231,232)の切替組合せテーブル(2332a)に当てはめて、各調相機器(231,232)の投入・開放の論理判断を行う。切替制御部(2332)は、この論理判断に応じた切替信号を、各調相機器(231,232)における切替器(2311,2321)に出力する。
ここで、図13の切替組合せテーブル(2332a)は、論理判断の基準として用いられるものであって、ここでは、20kVarの調相機器(232)と50kVarの調相機器(231)との投入可能な組合せは、0kVar、20kVar、50kVar、70kVarの4パターンとなっている。
図13では、無効電力Pβで示される負荷の範囲(無効電力負荷範囲)を例えば“0kVar〜3kVar”“3kVar〜20kVar”“20kVar〜50kVar”“50kVar〜70kVar”の4つのパターンに定義し、各調相機器(231,232)の受電経路(12)への接続状態を、パターン毎に表している。このような図13は、電源力率制御システム(7000)が現場に構築される前等から予め決定されている。図13では、調相機器(231,232)が受電経路(12)に接続される場合を“投入”、調相機器(231,232)が受電経路(12)に接続されない場合を“開放”と記している。つまり、“開放”と記されている調相機器(231,232)に対応する切替器(2311,2321)は、当該調相機器(231,232)と受電経路(12)とを非接続の状態にし、“投入”と記されている調相機器(231,232)に対応する切替器(2311,2321)は、当該調相機器(231,232)と受電経路(12)とを接続の状態にする。
例えば、図11及び図13において、無効電力Pβが0kVarから徐々に70kVarまで増加する場合、各切替器(2311,2321)による切替動作は、以下の(1)〜(4)の順番に従って行われる。
(1)いずれの調相機器(231,232)も受電経路(12)から開放する。
(2)50kVarの調相機器(231)が受電経路(12)から開放された状態を維持しつつ、20kVarの調相機器(232)を受電経路(12)に投入する。
(3)20kVarの調相機器(232)を受電経路(12)から開放し、50kVarの調相機器(231)を受電経路(12)に投入する。
(4)50kVarの調相機器(231)が受電経路(12)に投入された状態を維持しつつ、20kVarの調相機器(232)を受電経路(12)に再投入する(計70kVar)。
また、切替制御部(2332)は、無効電力Pβが、事前に設定された遮断点(図13の無効電力負荷範囲を定義する閾値)より進み方向(つまり進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)による無効電力Pβの補償が過剰になっている状態)となった時点で、調相機器(231,232)(具体的には進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc))の投入量を減らす。この場合も、切替制御部(2332)は、負荷となる無効電力Pβを補償するのに必要十分な調相機器(231,232)の組合せを選択し、選択した調相機器(231,232)を投入し、且つ、それ以外の調相機器(231,232)を開放する制御を行う。
このような調相設備制御器(233)による無効電力Pβの制御のみによれば、図14の細い実線にて示すように、交流電源(3)の電源力率θαβは、無効電力Pβが0kVarから70kVarである範囲において、各調相機器(231,232)の接続状態が切り換えられたタイミングにて目標力率よりも一旦進み位相となるが、その後徐々に目標力率に近づいていく態様を、各調相機器(231,232)の接続状態が切り換えられる毎に繰り返す。
〈アクティブフィルタ制御器による力率改善制御〉
これに対し、アクティブフィルタ制御器(743)は、上述した調相設備制御器(233)における無効電力Pβの制御による進み力率が、交流電源(3)の無効電力Pβに基づいて改善するように、アクティブフィルタ装置(4)の電流源(730)による補償電流の生成動作を制御する。即ち、電流源(730)による補償電流の生成動作の制御により、交流電源(3)の電源力率θαβはより改善され、目標力率に瞬時に収束するようになる。
このようなアクティブフィルタ制御器(743)は、図15に示すように、位相検出部(7436)、第1電流演算部(7435)、第2電流演算部(7434)、負荷電流演算部(7433)、電流指令演算部(7432)、及びゲートパルス発生器(7431)を有する。
位相検出部(7436)には、フィルタ側電圧検出器(746)が検出した交流電源(3)の線間電圧(Vrs)が入力される。位相検出部(7436)は、入力された線間電圧(Vrs)を用いて受電経路(12)における電源電圧の位相を検出し、検出した位相を第1電流演算部(7435)及び第2電流演算部(7434)に出力する。
第1電流演算部(7435)には、位相検出部(7436)によって検出された電源電圧の位相、及び、電源側電流検出器(234a,234b)によって検出された交流電源(3)の電流値(Irs,Its)が入力される。第1電流演算部(7435)は、入力されたこれらの信号に基づいて、受電経路(12)における高調波電流の補償(高調波電流の低減)と基本波の無効成分の補償(基本波の力率改善)の双方を行うために必要な電流値(以下、第1電流値(i1))を求める。第1電流演算部(7435)は、求めた第1電流値(i1)を、負荷電流演算部(7433)に出力する。
第2電流演算部(7434)には、位相検出部(7436)によって検出された電源電圧の位相、及び、フィルタ側電流検出器(745a,745b)によって検出された電流源(730)に入力される電流値(Ir2a,It2a)が入力される。第2電流演算部(7434)は、入力されたこれらの信号に基づいて、現時点での高調波電流の補償(高調波電流の低減)及び基本波の無効成分の補償(基本波の力率改善)の双方を行っているアクティブフィルタ装置(4)に流れ込んでいる電流(以下、第2電流値(i2))を求める。第2電流演算部(7434)は、求めた第2電流値(i2)を、負荷電流演算部(7433)に出力する。
交流電源(3)の電流値(Irs,Its)からアクティブフィルタ装置(4)の電流源(730)に入力される電流値(Ir2a,It2a)を減算することにより、高調波の発生源となる電力変換装置(1)及び調相設備(200)の各調相機器(231,232)に流れる電流の合計値が求められる。これを利用して、本実施形態では、電力変換装置(1)の基本波力率及び調相設備(200)による進み力率の改善を実現することにより、交流電源(3)付近の配電・受電端の基本波力率の改善、及び高調波電流の低減を実現している。即ち、本実施形態に係るアクティブフィルタ装置(4)は、調相設備(200)の進み力率を補正するための負荷として機能していると言える。
具体的に、負荷電流演算部(7433)は、電力変換装置(1)及び調相設備(200)の各調相機器(231,232)に流れる電流の合計値を、第1電流演算部(7435)の第1電流値(i1)から第2電流演算部(7434)の第2電流値(i2)を減算することによって求め、求めた演算結果を電流指令演算部(7432)に出力する。
電流指令演算部(7432)は、負荷電流演算部(7433)の演算結果の逆位相の電流値を演算して、その値を電流指令値(Iref)としてゲートパルス発生器(7431)に出力する。
ゲートパルス発生器(7431)は、電流源(730)を構成するインバータ回路(アクティブフィルタインバータ部)におけるスイッチングを指示するためのスイッチング指令値(G)、を生成する。詳しくは、ゲートパルス発生器(7431)は、電流源(730)が出力する電流値と上記電流指令値(Iref)との偏差に基づいてスイッチング指令値(G)を生成する動作を繰り返す、いわゆるフィードバック制御を行う。これにより、電流源(730)からは、電流指令値(Iref)に相当する電流(補償電流)が受電経路(12)に供給される。
より詳しくは、ゲートパルス発生器(7431)では、第2電流演算部(7434)で求めた第2電流値(i2)が電流指令値(Iref)に一致するようなスイッチング指令値(G)を生成して電流源(730)に出力する。そのことにより、電力変換装置(1)に流れる電流に含まれている高調波成分とアクティブフィルタ装置(4)が出力する電流とは相殺され、交流電源(3)の出力電流(Irs,Itr,Its)は、高調波電流が除去された正弦波となり、力率が改善される。
本実施形態では、上述の通り、アクティブフィルタ制御器(743)には、電流源(730)に入力される電流値(Ir2a,It2a)のみならず、交流電源(3)の電流値(Irs,Its)が入力される。そのため、アクティブフィルタ制御器(743)は、各調相機器(231,232)に流れる電流と電力変換装置(1)に流れる電流との合計値を算出することができ、その算出結果に応じて、電流源(730)の補償電流を調整することができる。従って、上述したアクティブフィルタ制御器(743)による一連の制御により、アクティブフィルタ制御器(743)は、電力変換装置(1)のみならず調相機器(231,232)の影響を受けた実際の電源力率θαβを、目標力率に合わせ込む制御を行っている。
特に、アクティブフィルタ装置(4)の電流源(730)は、稼働することにより電源力率θαβを目標力率よりも遅れ力率にする性質を有する。アクティブフィルタ制御器(743)は、調相機器(231,232)による進み力率がアクティブフィルタ装置(4)による遅れ力率によって相殺されて交流電源(3)の電源力率θαβが目標力率に収束するように、アクティブフィルタ装置(4)の電流源(730)を動作させる制御を行う。
図14は、調相設備(200)が上述した調相設備制御器(233)の制御に基づき稼働しているがアクティブフィルタ装置(4)は稼働していない状態時の電源力率θαβを細い実線で表し、目標力率を破線で表している。調相設備制御器(233)により各調相機器(231,232)の接続状態が切り換えられる毎に、電源力率θαβは目標力率に対し一旦進み力率となりその後徐々に目標力率に近づいていくため、図14には、細い実線と破線とにより囲まれた領域にて現れるように、アクティブフィルタ装置(4)が補償するべき電源力率θαβの領域が現れる。
図14では、更にアクティブフィルタ装置(4)が上述したアクティブフィルタ制御器(743)の制御に基づき稼働した状態時の電源力率θαβを、太い実線で表している。この図14の太い実線で示された電源力率θαβは、調相機器(231,232)の切替時に目標力率に対して一瞬のみ進み力率になることを除けば、調相設備(200)による進み力率分がアクティブフィルタ装置(4)による遅れ力率によって概ね相殺されたことにより、細い実線に比べて瞬時に目標力率に収束している。即ち、アクティブフィルタ装置(4)が補償するべき電源力率θαβの領域が、上述したアクティブフィルタ制御器(743)の制御によるアクティブフィルタ装置(4)の稼働によって補償されたことを表す。
従って、本実施形態に係る電源力率制御システム(7000)は、調相設備(200)を起因とする進み力率を、アクティブフィルタ装置(4)の稼働によって改善することができる。
なお、本実施形態では、受電経路(12)に1台の空気調和システム(100)が接続された場合を例示している。この受電経路(12)に、ビル等の建物に設置されている他の装置も接続されていれば、電源力率制御システム(7000)は、調相設備(200)が起因する進み力率を低減して建物全体の基本波力率を改善することが可能になる。
〈効果〉
アクティブフィルタ装置(4)が動作した際、調相機器(231,232)とは対照的に、実際の電源力率θαβは目標力率よりも遅れ力率となる。そこで、本実施形態では、調相機器(231,232)の無効電力Pβの制御によって実際の電源力率θαβが目標力率よりも進み力率となることを、アクティブフィルタ装置(4)の動作を制御することによって改善する。これにより、調相機器(231,232)が起因して実際の電源力率θαβが進み力率となる現象は簡易に改善され、実際の電源力率θαβの適切な補償及び基本波力率の改善を図ることができる。従って、交流電源(3)の電力系統の電力損失の増加、及び、当該系統の電圧の不必要な上昇等の障害の発生の可能性を抑制することができる。
より詳細には、調相機器(231,232)による進み力率がアクティブフィルタ装置(4)による遅れ力率によって相殺されて交流電源(3)の電源力率θαβが目標力率に収束するように、アクティブフィルタ装置(4)の動作が制御される。
本実施形態では、電源力率θαβの制御にて用いられる無効電力Pβの実際の値は、電源側電流検出器(234a,234b)の検出結果及び電源側電圧検出器(235)の検出結果に基づく演算により、簡単に得られる。
ビルや工場等の建物には、電流の実際の値及び電圧の実際の値から電力を測定する電力計(236)が接続されている。電力計(236)は、交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部の一例である。本実施形態では、電源側電流検出器(234a,234b)及び電源側電圧検出器(235)を予め含む電力計(236)である電力計を利用するため、特別に電流及び電圧の検出用センサや検出回路を取り付ける必要がない。従って、別途センサ及び検出回路を取り付けるための工事が不要であり、センサ及び検出回路を設けずに済む分コストを削減できる。
本実施形態では、交流電源(3)の無効電力Pβに応じて切替器(2311,2321)の切替制御がなされ、交流電源(3)と調相機器(231,232)との接続状態の組合せが適宜変更されるようになる。例えば、交流電源(3)への無効電力Pβを制御する調相機器(231,232)の数が少ない程、調相機器(231,232)の制御による進み力率の度合いは抑えられ、アクティブフィルタ装置(4)の補償量もその分小さくなり、アクティブフィルタ装置(4)の容量も小さくて済むようになる。
また、本実施形態では、空気調和システム(100)(具体的には空気調和システム(100)における電力変換装置(1))が高調波発生機器であり、アクティブフィルタ装置(4)は、空気調和システムに組み込まれている。
《その他の実施形態》
なお、アクティブフィルタ装置(4)は、基本波力率改善機能を必ずしも備える必要はない。すなわち、アクティブフィルタ装置(4)は、高調波電流の低減機能のみを有する構成でもよい。また、アクティブフィルタ装置(4)は、基本波力率改善機能のみを有する構成とすることも可能である。
また、1台の空気調和装置(11)に対して、複数台のアクティブフィルタ装置(4)を設ける構成も可能である。この場合には、各アクティブフィルタ装置(4)で、各アクティブフィルタ装置(4)の電流容量に合わせて、補償電流を分担するとよい。
また、交流電源(3)の負荷情報を検出する負荷情報検出部は、第1電流検出部(5)や電流センサ(6125)の代わりに、負荷情報の測定機能を持った機器を用い、電流の基本波成分、力率、無効電力等を計算して送ってもよい。このような機器の一例として、ビル等に設けられて、電力の使用量等の情報を電力会社などに送信する、いわゆるスマートメータが挙げられる。このように、スマートメータ等を用いた場合には、電流検出器のような瞬時の情報ではなく、所定の時間間隔で送られた負荷情報に基づいてアクティブフィルタを動作させるとよい。
また、前記実施形態では、制御器(43)をアクティブフィルタ装置(4)に搭載しているが、アクティブフィルタ内蔵機器の内部であれば、何処に搭載しても構わない。例えば、図示はしないが電力変換装置(1)を制御するための制御器と共用する形で電力変換装置(1)に搭載しても良い。
本発明は、アクティブフィルタ内蔵機器として有用である。
1 電力変換装置(負荷器)
2 負荷器
3 交流電源
4 アクティブフィルタ装置
4a 電流検出器
4b 電流検出器
4c 電流検出器
5 第1電流検出部(負荷情報検出部)
11 空気調和装置
30 電流源
60 分電盤
100 アクティブフィルタ内蔵機器