本発明の一形態によるフィルムは、ポリイミド樹脂および金属酸化物フィラーを含む。ここで、上記金属酸化物フィラーは、(a)アスペクト比(長径/短径)が100〜3000でありかつ平均直径が1〜10nmであり、(b)前記金属酸化物フィラーの表面にスルホン酸基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)およびホスフェート基(−P(=O)(OH)3−n;n=1または2)からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する化合物を有することを特徴とする。上記構成によると、温湿度環境変動による(特に高温高湿環境下での)特性変化(特に、黄変(ΔYIの上昇)や濁り(Δヘイズの上昇))を抑制できる。ゆえに、本発明のフィルムは、プラスチック本来の有する柔軟性は維持しつつ温湿度が変動する環境(特に高温高湿環境)にあっても高い視認性を発揮するため、タブレットPCやスマートフォン等の前面板に好適に使用できる。本明細書において、本発明のフィルムを「ポリイミドフィルム」または「本発明のポリイミドフィルム」とも称する。また、ポリイミド樹脂を単に「ポリイミド」とも称する。また、金属酸化物フィラーを単に「本発明に係るフィラー」または「フィラー」とも称する。また、スルホン酸基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)およびホスフェート基(−P(=O)(OH)3−n;n=1または2)からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する化合物を、単に「本発明に係る表面修飾剤」または「表面修飾剤」とも称する。
ポリイミド樹脂は、ポリカーボネート樹脂や(メタ)アクリル樹脂等の他の樹脂に比して、折り曲げ特性(可撓性)に優れるという特性を有する。このため、ポリイミド樹脂は、スマートフォン等の表示装置のフレキシブル化にあたって前面板として好適である。一方、ポリイミド樹脂は、一般的に分子間及び分子内で電荷移動(CT)錯体を形成することによって黄色に着色しているが、フッ素原子またはフッ素原子を有する基等の嵩高い基の導入や、脂環式構造の導入により分子間距離を広げて分子同士の相互作用を抑制することで透明化できる。しかしながら、このようなポリイミド樹脂で形成した透明性の高いフィルムを高温高湿下におくと、黄変してしまう。このため、ポリイミド樹脂製のフィルムは、温湿度が変動する環境(特に高温高湿環境)下での使用には適さない。この原因について調べてみると、ポリイミド樹脂フィルムを高温高湿下におくと、樹脂の分子間に水が浸入して、分子の再配列が起こり、電荷移動(CT)錯体が形成され、これにより可視光に吸収をもち、黄変してしまう(YIが上昇してしまう)ことを見出した。また、このような場合には、樹脂の加水分解も起こり、これもフィルムの黄変や濁り発生の原因となりうることを見出した。このため、高温高湿下での黄変や濁りの抑制には、分子鎖の再配列によるCT錯体形成を抑える手段が有効であると考え、当該手段について鋭意検討をさらに行った。その結果、上記(a)が有効であることを見出した。詳細には、金属酸化物フィラー表面にはフィラー由来の(未修飾の)水酸基(−OH)が存在する。ポリイミド樹脂のカルボニル基(−C(=O)−)がこの水酸基との水素結合を介して金属酸化物フィラー表面に固定化される。また、金属酸化物フィラーの表面は上記特定の官能基を有する化合物(表面修飾剤)を有する(金属酸化物フィラーが上記特定の官能基を有する化合物で表面修飾される)(上記(b))。この表面修飾剤の特定の官能基は、ポリイミド樹脂のカルボニル基(−C(=O)−)との双極子−双極子相互作用を介して、金属酸化物フィラー表面に固定化される。ここで、上記(a)で規定したようなアスペクト比を有する金属酸化物フィラーは体積当たりの表面積(比表面積)が大きいため、ポリイミド樹脂のカルボニル基と金属酸化物フィラーの水酸基との結合点(相互作用点)が多く存在する。このため、高温高湿下にあっても、ポリイミド樹脂が十分固定化され、樹脂内の分子の再配列(ゆえにCT錯体形成性)を抑制できる。ここで、アスペクト比が100未満であると、上記結合点(相互作用点)が少なすぎるため、ポリイミド樹脂がフィラーに十分に固定化されず、高温高湿下で黄変してしまう(例えば、下記フィルム7参照)。また、アスペクト比が3000を超えると、フィラーの視認性が極度に上がり、作製直後のフィルム自体が黄色味を帯びたり、濁りを生じたりする(例えば、下記フィルム6参照)。
また、ポリイミド樹脂は、ガラス等に比して、硬度(強靭性)に劣る。ここで、通常、樹脂にフィラーを入れることで機械強度が向上することが知られている。しかしながら、樹脂及びフィラーを用いて形成されたフィルムは透過率(全光線透過率)やヘイズ、特にヘイズが低下してしまう。特にアスペクト比の高いフィラーを添加することにより、機械強度をかなり向上できる一方で、ヘイズが劣化してしまう(例えば、下記フィルム6参照)。しかし、上記(a)で規定したような平均直径(繊維径)を有するフィラーであれば、作製したフィルムは十分低いヘイズ(十分な透明性)を示す。ここで、平均直径が1nm未満であると、フィルムに十分な硬度(強靭性)を付与できない。また、平均直径が10nmを超えると、フィラーが太すぎて視認性が極度に上がり、作製直後のフィルム自体が黄色味を帯びたり、濁りを生じたりする(例えば、下記フィルム5参照)。
したがって、上記(a)及び(b)双方を満足する金属酸化物フィラーをポリイミド樹脂に混合して形成されるフィルムは、温湿度が変動する環境(特に高温高湿環境)下でも黄変やヘイズの低下を抑制し、耐久性に優れる。また、本発明のフィルムは、ポリイミド樹脂を主成分として用いて形成されるため、折り曲げ特性(可撓性)に優れる。したがって、このようなフィルムをタブレットPCやスマートフォン等の表示装置の前面板として使用することによって、これらの表示装置のフレキシブル化を達成できる。
なお、上記メカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら拘泥されるものではない。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
[フィルム(ポリイミドフィルム)]
本発明のフィルム(ポリイミドフィルム)は、ポリイミド樹脂および金属酸化物フィラーを必須に含む。ここで、フィルム(ポリイミドフィルム)の厚さは特に制限されないが、フィルムの厚さ(乾燥膜厚)が、例えば、1〜200μm、特に10〜100μmの範囲内であることが好ましい。このような膜厚のフィルムであれば、フレキシブルプリント基板としても十分な強度及び透明性を発揮できる。
また、本発明のフィルム(ポリイミドフィルム)は、いずれの形態を有していてもよいが、利用可能性が広いという点で、長尺であることが好ましい。具体的には、本発明のフィルム(ポリイミドフィルム)は、100〜10000m程度の範囲内の長さであることが好ましく、ロール状に巻き取られる。また、本発明のポリイミドフィルムの幅は1m以上であることが好ましく、更に好ましくは1.4m以上であり、特に1.4〜4mであることが好ましい。
(ポリイミド樹脂(ポリイミド))
本発明のフィルム(ポリイミドフィルム)は、ポリイミド樹脂(ポリイミド)を必須に含む。ここで、ポリイミド樹脂は、イミド構造を有する樹脂(以下、「ポリイミド」ともいう)であり、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子である。ポリイミドは、ジアミンまたはその誘導体と酸無水物またはその誘導体とから形成されることが好ましい。
具体的には、ポリイミド樹脂は、下記式(A)で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂(以下、「ポリイミド(A)」とも称する)であることが好ましい。下記式(A)において、(−C(=O))2−R−(C(=O)−)2を含む部分が酸無水物またはその誘導体由来の部分であり、=N−A−N=を含む部分がジアミンまたはその誘導体由来の部分である。
上記式(A)中、Rは、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、または炭素数4〜39の脂肪族炭化水素若しくは脂環式炭化水素由来の4価の基またはこれらの組み合わせからなる4価の基を表す。ここで、Rが上記いずれか2つ以上の組み合わせである場合には、これらは、−O−、−SO2−、−CO−、−CH2−、−C(CH3)2−、−OSi(CH3)2−、−C2H4O−、−CF2−、−C(CF3)2−、−OSi(CF3)2−、−C2F4O−及び−S−からなる群から選ばれる少なくとも一つの結合基を介して連結されてもよい。また、Rで表される芳香族炭化水素環、芳香族複素環、炭素数4〜39の脂肪族炭化水素若しくは脂環式炭化水素中の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子、好ましくはフッ素原子)または炭素数1〜8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基など)若しくはこれらのハロゲン化アルキル基(例えば、モノフルオロメチル基(−CFH2)、ジフルオロメチル基(−CF2H)、トリフルオロメチル基(−CF3)、モノフルオロエチル基(−CFH−CH3、−CH2−CFH2)、ジフルオロエチル基(−CF2−CH3、−CFH−CFH2、−CH2−CF2H)など)で置換されてもよい。
Rで表される芳香族炭化水素環としては、例えば、フルオレン環、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。
Rで表される芳香族複素環としては、例えば、シロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、チエノチオフェン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環(カルバゾール環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、ジベンゾシロール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾチオフェン環やジベンゾフラン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わった環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、アクリジン環、ベンゾキノリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、ジベンゾカルバゾール環、インドロカルバゾール環、ジチエノベンゼン環等が挙げられる。
Rで表される炭素数4〜39の4価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ブタン−1,1,4,4−トリイル基、オクタン−1,1,8,8−トリイル基、デカン−1,1,10,10−トリイル基等の基が挙げられる。
Rで表される炭素数4〜39の4価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブタン−1,2,3,4−テトライル基、シクロペンタン−1,2,4,5−テトライル基、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトライル基、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトライル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトライル基、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトライル基、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2,4,5−テトライル基、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2,4,5−テトライル基等の基が挙げられる。
これらのうち、Rは、以下の構造式で表される基が好ましい。
より好ましくは、Rは、以下の構造式で表される基である。
特に好ましくは、Rは、以下の構造式で表される基である。
また、上記式(A)中、Aは、炭素数2〜39の2価の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素若しくは芳香族炭化水素由来の2価の基またはこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。ここで、Aが上記いずれか2以上の組み合わせである場合には、これらは、−O−、−SO2−、−CO−、−CH2−、−C(CH3)2−、−OSi(CH3)2−、−C2H4O−、−CF2−、−C(CF3)2−、−OSi(CF3)2−、−C2F4O−及び−S−からなる群から選ばれる少なくとも一つの結合基を介して連結されてもよい。また、Rで表わされる芳香族炭化水素環、芳香族複素環、炭素数4〜39の脂肪族炭化水素若しくは脂環式炭化水素中の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子、好ましくはフッ素原子)または炭素数1〜8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基など)若しくはこれらのハロゲン化アルキル基(例えば、モノフルオロメチル基(−CFH2)、ジフルオロメチル基(−CF2H)、トリフルオロメチル基(−CF3)、モノフルオロエチル基(−CFH−CH3、−CH2−CFH2)、ジフルオロエチル基(−CF2−CH3、−CFH−CFH2、−CH2−CF2H)など)で置換されてもよい。
Aで表される上記結合基を有するまたは有さない炭素数2〜39の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
上記構造式において、nは、各繰り返し単位の数を表し、好ましくは1〜5の整数、より好ましくは1〜3の整数である。また、Xは、炭素数1〜3のアルカンジイル基(メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基)であり、メチレン基が好ましい。
Aで表される炭素数2〜39の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
Aで表される上記結合基を有するまたは有さない炭素数2〜39の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
Aで表される脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせからなる基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
これらのうち、Aは、以下の構造式で表される基が好ましい。
より好ましくは、Aは、以下の構造式で表される基である。
さらにより好ましくは、Aは、以下の構造式で表される基である。
特に好ましくは、Aは、以下の構造式で表される基である。
これらのうち、ポリイミド樹脂は、フッ素原子および飽和脂環式基の少なくとも一方を有することが好ましい。フッ素や脂環式構造を導入することによって、ポリイミド樹脂を金属酸化物フィラー表面により強固に固定化させて、ポリイミド樹脂のCT錯体形成性を低下できる(ゆえに、高温高湿下での黄変をより効果的に抑制できる)。より好ましくは、ポリイミド樹脂は、フッ素原子を有する。フッ素原子を有するポリイミド樹脂を用いることによって、フッ素原子部分と金属酸化物フィラー表面の水酸基とが双極子−双極子相互作用を介して結合するため、ポリイミド樹脂が金属酸化物フィラー表面にさらにより強固に固定化できる。このため、高温高湿下であっても、ポリイミド樹脂内の分子の再配列(ゆえにCT錯体形成性)をさらにより効果的に抑制できる。ゆえに、ポリイミド樹脂は、下記構造:
を有するRおよび下記構造:
を有するAの少なくとも一方を有することが好ましい。
なお、ポリイミド樹脂がフッ素原子を有する場合(フッ化ポリイミド樹脂)の、フッ素の含有率は、特に制限されないが、フィルム中に、1〜40質量%程度であることが好ましい。このような量であれば、得られるフィルムは、透明性に優れ、また、熱収縮による熱矯正を行いやすい。
上記式(A)のポリイミド樹脂の製造方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてまたは適宜修飾して適用できる。例えば、芳香族、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸またはその誘導体と、ジアミンまたはその誘導体と、を反応させてポリアミド酸を調製し、当該ポリアミド酸をイミド化させることによって、ポリイミド樹脂を製造できる。
脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸の誘導体としては、例えば、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸エステル類、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。なお、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸またはその誘導体のうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
ここで、誘導体とは、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸に変化しうる化合物であり、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物の場合、当該無水物に代えて二つのカルボキシル基を有する化合物、これら二つのカルボキシル基の中の片方または両方がエステル化されたエステル化物である化合物、またはこれら二つのカルボキシル基の中の片方または両方がクロル化された酸クロライド等が好適に用いられる。
このような化合物(アシル化合物)を用いることにより、高い耐熱性と優れた光学特性とを有し、着色(黄変)の少ないポリイミドフィルムを得ることができる。
脂肪族テトラカルボン酸としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が挙げられる。脂環式テトラカルボン酸としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族テトラカルボン酸エステル類としては、例えば、上記脂肪族テトラカルボン酸のモノアルキルエステル、ジアルキルエステル、トリアルキルエステル、テトラアルキルエステルが挙げられる。脂環式テトラカルボン酸エステル類としては、例えば、上記脂環式テトラカルボン酸のモノアルキルエステル、ジアルキルエステル、トリアルキルエステル、テトラアルキルエステルが挙げられる。なお、アルキル基部位は、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましい。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物等が挙げられる。特に好ましくは、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物である。一般に、脂肪族ジアミンを構成成分とするポリイミドは、中間生成物であるポリアミド酸とジアミンとが強固な塩を形成するため、高分子量化するためには塩の溶解性が比較的高い溶媒(例えばクレゾール、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等)を用いることが好ましい。ところが、脂肪族ジアミンを構成成分とするポリイミドでも、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物を構成成分としている場合には、ポリアミド酸とジアミンの塩は比較的弱い結合で結ばれているので、高分子量化が容易で、フレキシブルなフィルムが得られ易い。
芳香族テトラカルボン酸としては、例えば、4,4’−ビフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(ピグメントレッド224)、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−フェニル]フルオレン無水物等が挙げられる。
他にも、例えば、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[6.4.0.02,7]ドデカン−1,8:2,7−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等を用いることができる。
また、フルオレン骨格を有する酸無水物またはその誘導体を用いてもよい。ポリイミド特有の着色を改善する効果を有する。フルオレン骨格を有する酸無水物としては、例えば、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン酸二無水物等を用いることができる。
芳香族、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸またはその誘導体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、ポリイミドの溶剤可溶性、ポリイミドフィルムのフレキシビリティ、熱圧着性、透明性を損なわない範囲で、他のテトラカルボン酸またはその誘導体(特に二無水物)を併用してもよい。
かかる他のテトラカルボン酸またはその誘導体としては、例えば、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン等の芳香族系テトラカルボン酸及びこれらの誘導体(特に二無水物);エチレンテトラカルボン酸等の炭素数1〜3の脂肪族テトラカルボン酸及びこれらの誘導体(特に二無水物)等が挙げられる。
酸二無水物としては、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物であることが、透明性に優れる点、及び熱収縮による熱矯正をしやすい観点で好ましい。また、温湿度が変動する環境(特に高温高湿環境)下での黄変や濁りのさらなる抑制効果の観点からは、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリドがさらに好ましい。
上記式(A)中の(−C(=O))2−R−(C(=O)−)2を含む部分(酸無水物またはその誘導体由来の部分)は任意に混合して用いてもよいが、上記好ましい酸二無水物由来の部分の含有量が、全体の50〜100モル%となることが好ましく、80〜100モル%となることがより好ましい。
ジアミンまたはその誘導体としては、例えば、芳香族ジアミンまたはイソシアン酸エステル等が好ましく、芳香族ジアミンが好ましい。
本発明に用いられるジアミンまたはその誘導体としては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミンまたはこれらの混合物のいずれでも良く、芳香族ジアミンであることがポリイミドフィルムの白化を抑制できる観点から、好ましい。
なお、本発明において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香族環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、その他の置換基(例えば、ハロゲン原子、スルホニル基、カルボニル基、酸素原子等)を含んでいてもよい。「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香族炭化水素基、その他の置換基(例えば、ハロゲン原子、スルホニル基、カルボニル基、酸素原子等)を含んでいてもよい。
芳香族ジアミンの例としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、オクタフルオロベンジジン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,6−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2−メチル−4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−メチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(3−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(3−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)4−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)ノルボルナン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)ノルボルナン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)ノルボルナン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)アダマンタン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)アダマンタン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)アダマンタン、1,4−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3−アミノベンジルアミン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,3−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、ビス(2−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−エチレンジアニリン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,5−ジエチル−4,6−ジメチルベンゼン−1,3−ジアミン、4,4’−[イソプロピリデンビス[(4,1−フェニレン)オキシ]]ビスアニリン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−イソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−アミノ−イソプロピル)ベンゼン、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミン、シロキサンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,3−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,2−ビス(4,4’−ジアミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4’−ジアミノメチルシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
また、ポリイミド特有の着色を改善する目的でフルオレン骨格を有するジアミンまたはその誘導体を用いてもよい。例えば、9,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−エチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレンなどを用いることができる。
また、下記構造を有するトリアジン母核を有するジアミン化合物を用いてもよい。
トリアジン母核を有する上記式のジアミン化合物において、R1は水素原子または炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基またはアリール基を表し、R2は炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基またはアリール基を表し、R1とR2とは異なっていても良く、同じであってもよい。
R1とR2としての炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基としては、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、フェニル、ベンジル、ナフチル、メチルフェニル、ビフェニルなどが挙げられる。
トリアジンの二つのNH基に接続するアミノアニリノ基は、4−アミノアニリノまたは3−アミノアニリノであり、同じであっても異なっていてもよいが、4−アミノアニリノが好ましい。
トリアジン母核を有する上記式で表されるジアミン化合物としては、具体的には、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ビフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ジフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−N−メチルアニリノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−N−メチルナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−メチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−メチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−エチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−エチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジエチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−アミノ−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
ジアミン誘導体であるイソシアン酸エステルとしては、例えば、上記芳香族または脂肪族ジアミンとホスゲンを反応させて得られるジイソシアネートが挙げられる。
また、他のジアミン誘導体としては、ジアミノジシラン類も挙げられ、例えば上記芳香族または脂肪族ジアミンとクロロトリメチルシランを反応させて得られるトリメチルシリル化した芳香族または脂肪族ジアミンが挙げられる。
ジアミンとしては、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,5−ジエチル−4,6−ジメチルベンゼン−1,3−ジアミン、4,4’−[イソプロピリデンビス[(4,1−フェニレン)オキシ]]ビスアニリン、ビス(アミノメチル)ノルボルナンであることが好ましい。また、温湿度が変動する環境(特に高温高湿環境)下での黄変や濁りのさらなる抑制効果の観点からは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)ノルボルナンがより好ましく、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルが特に好ましい。
上記式(A)中の=N−A−N=を含む部分(ジアミンまたはその誘導体由来の部分)は任意に混合して用いてもよいが、上記好ましいジアミン由来の部分の含有量が、全体の20〜80モル%となることが好ましく、40〜60モル%となることがより好ましい。
前記式(A)で表される繰り返し単位は、全ての繰り返し単位に対して、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、更に好ましくは80〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%である。また、ポリイミド(A)1分子中の式(A)の繰り返し単位の個数は、10〜2000、好ましくは20〜200であり、この範囲において、更にガラス転移温度が230〜350℃であることが好ましく、250〜330℃であることがより好ましい。
上記テトラカルボン酸またはその誘導体と、ジアミンまたはその誘導体と、を反応させてポリアミド酸を調製する。詳細には、ポリアミド酸は、適当な溶剤中で、前記テトラカルボン酸類の少なくとも1種類と、前記ジアミン類の少なくとも1種類とを重合反応させることにより得られる。
また、ポリアミド酸エステルは、前記テトラカルボン酸二無水物を、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコールを用いて開環することによりジエステル化し、得られたジエステルを適当な溶剤中で前記ジアミン化合物と反応させることにより得ることができる。更に、ポリアミド酸エステルは、上記のように得られたポリアミド酸のカルボン酸基を、上記のようなアルコールと反応させることによりエステル化することによっても得ることができる。
前記テトラカルボン酸二無水物と、前記ジアミン化合物との反応は、従来知られている条件で行うことができる。テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の添加順序や添加方法には特に限定はない。例えば、溶剤にテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを順に投入し、適切な温度で撹拌することにより、ポリアミド酸を得ることができる。
ジアミン化合物の量は、特に制限されず、上記好ましいポリイミドの組成となるような量であることが好ましい。具体的には、ジアミン化合物の量は、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、通常0.8モル以上、好ましくは1モル以上である。一方、通常1.2モル以下、好ましくは1.1モル以下である。ジアミン化合物の量をこのような範囲とすることにより、得られるポリアミド酸の収率が向上し得る。
この反応で用いられる重合溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン等の炭化水素系溶剤;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びフルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン及びメトキシベンゼン等のエーテル系溶剤;アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド及びN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン系極性溶剤;ピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン及びイソキノリン等の複素環系溶剤;フェノール及びクレゾールのようなフェノール系溶剤、等が挙げられるが、特に限定されるものではない。重合溶剤としては、1種のみを用いることもできるし、2種類以上の溶剤を混合して用いることもできる。
溶剤中のテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の濃度は、反応条件やポリアミド酸溶液の粘度に応じて適宜設定する。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との合計の質量は、特段の制限はないが、全溶液量に対し、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上であり、一方、通常70質量%以下、好ましくは35質量%以下である。反応基質の量をこのような範囲とすることにより、低コストで収率良くポリアミド酸を得ることができる。
反応温度は、特段の制限はないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、一方、通常100℃以下、好ましくは80℃以下である。反応時間は、特段の制限はないが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上であり、一方、通常100時間以下、好ましくは24時間以下である。このような条件で反応を行うことにより、低コストで収率良くポリアミド酸を得ることができる。
ポリアミド酸の末端基は、重合反応時のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物のいずれか一方を過剰に用いることによって、酸無水物基とアミノ基を任意に選ぶことができる。
末端基を酸無水物末端とした場合には、その後の処理を行わず酸無水物末端のままでも良く、加水分解させてジカルボン酸としてもよい。また、炭素数が4以下のアルコールを用いてエステルとしてもよい。更に、単官能のアミン化合物またはイソシアネート化合物を用いて末端を封止してもよい。ここで用いるアミン化合物またはイソシアネート化合物としては、単官能の第一級アミン化合物またはイソシアネート化合物であれば、特に制限はなく用いることができる。例えば、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、トリメチルアニリン、エチルアニリン、ジエチルアニリン、トリエチルアニリン、アミノフェノール、メトキシアニリン、アミノ安息香酸、ビフェニルアミン、ナフチルアミン、シクロヘキシルアミン、フェニルイソシアナート、キシリレンイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、メチルフェニルイソシアネート、トリフルオロメチルフェニルイソシアネート等を挙げることができる。
また、末端基をアミン末端とした場合には、単官能の酸無水物によって、末端アミノ基を封止することで、アミノ基が末端に残ることを回避できる。ここで用いる酸無水物としては、加水分解した際にジカルボン酸またはトリカルボン酸となる単官能の酸無水物であれば、特に制限なく用いることができる。例えば、マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物、コハク酸無水物、ノルボルネンジカルボン酸無水物、4−(フェニルエチニル)フタル酸無水物、4−エチニルフタル酸無水物、フタル酸無水物、メチルフタル酸無水物、ジメチルフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ナフタレンジカルボン酸無水物、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、4−オキサトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカン−3,5−ジオン、オクタヒドロ−1,3−ジオキソイソベンゾフラン−5−カルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ジメチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等を挙げることができる。
次に、上記にて得られたポリアミド酸(好ましくは溶液形態)を加熱してポリアミド酸をイミド化させる方法(熱イミド化法)、または、ポリアミド酸溶液に閉環触媒(イミド化触媒)を添加してポリアミド酸をイミド化させる方法(化学イミド化法)により、ポリイミド樹脂を得ることができる。
また、ポリアミド酸溶液を加熱してポリアミド酸をイミド化させる方法(熱イミド化法)、または、ポリアミド酸溶液に閉環触媒(イミド化触媒)を添加してポリアミド酸をイミド化させる方法(化学イミド化法)については、酸無水物とジアミンからポリアミド酸を重合する反応釜をそのまま継続して反応釜中でイミド化させてもよい。
反応釜中での熱イミド化法においては、上記重合溶剤中のポリアミド酸を、例えば80〜300℃の温度範囲で0.1〜200時間(好ましくは1〜100時間、より好ましくは3〜50時間)加熱処理してイミド化を進行させる。また、上記温度範囲を150〜200℃とすることが好ましく、150℃以上とすることにより、イミド化を確実に進行させて完了させることができ、一方、200℃以下とすることにより、溶剤や未反応原材料の酸化、溶剤の揮発による樹脂濃度の上昇を防止することができる。
更に、熱イミド化法においては、イミド化反応により生成する水を効率良く除去するために、上記重合溶剤に共沸溶剤を加えることができる。共沸溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素や、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等を用いることができる。共沸溶剤を使用する場合は、その添加量は、全有機溶剤量中の1〜30質量%程度、好ましくは5〜20質量%である。
一方、化学イミド化法においては、上記重合溶剤中のポリアミド酸に対し、公知の閉環触媒を添加してイミド化を進行させる。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン等の脂肪族第3級アミン及びイソキノリン、ピリジン、ピコリン等の複素環式第3級アミン等が挙げられるが、これ以外にも例えば、置換若しくは非置換の含窒素複素環化合物、含窒素複素環化合物のN−オキシド化合物、置換若しくは非置換のアミノ酸化合物、ヒドロキシ基を有する芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環状化合物が挙げられ、特に1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、5−メチルベンズイミダゾール等の低級アルキルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、イソキノリン、3,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、4−n−プロピルピリジン等の置換ピリジン、p−トルエンスルホン酸等を好適に使用することができる。閉環触媒の添加量は、ポリアミド酸のアミド酸単位に対して0.01〜2倍当量、特に0.02〜1倍当量程度であることが好ましい。閉環触媒を使用することによって、得られるポリイミドの物性、特に伸びや破断抵抗が向上する場合がある。
また、上記熱イミド化法または化学イミド化法においては、ポリアミド酸溶液中に脱水剤を添加しても良く、そのような脱水剤としては、例えば、無水酢酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸無水物等の芳香族酸無水物等が挙げられ、これらを単独または混合して使用することができる。また、脱水剤を用いると、低温で反応を進めることができ好ましい。なお、ポリアミド酸溶液に対し脱水剤を添加するのみでもポリアミド酸をイミド化させることが可能ではあるが、反応速度が遅いため、上記したように加熱または閉環触媒の添加によりイミド化させることが好ましい。
このように反応釜中でイミド化させたポリイミド溶液は、ポリイミド溶液と比較して経時による加水分解による分子量低下が起き難いので有利である。また、あらかじめイミド化反応が進んでいるため例えば、イミド化率100%のポリイミドの場合は、ウェブ上でのイミド化が不要となり乾燥温度を下げることができる。
また、閉環したポリイミドを、メタノール等の貧溶剤などを用いて再沈殿、精製して固体にしてから溶剤に溶解し流延乾燥して製膜を行ってもよい。
この方法によれば、重合溶剤と流延する溶剤とを異なる種類とすることが可能となり、それぞれに最適な溶剤を選択することで、ポリイミドフィルムの性能をより引き出すことが可能になる。
例えば、ポリアミド酸を高分子量化させるためにジメチルアセドアミドを用いて重合、閉環し、メタノールを用いて固体化、乾燥したのちにジクロロメタンで添加剤を入れた溶液化してから流延、乾燥することで、高分子量化と低温乾燥が可能となる。
また、溶剤としてジクロロメタンを使う場合、他の溶剤と組み合わせて使用することができる。テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、エタノール、メタノール、ブタノール、イソプロパノールなど、適宜補助溶剤を使用することもできる。
上記したポリイミドの他に、リン、ケイ素、イオウなどの原子を含むポリイミドを用いることもできる。
例えば、リンを含むポリイミドとしては、特開2011−74209号公報の段落[0010]−[0021]及び特開2011−074177号公報の段落[0011]−[0025]にそれぞれ記載のポリイミドを用いることができる。
ケイ素を含むポリイミドとしては、特開2013−028796号公報の段落[0030]−[0045]に記載の、ポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドを用いることができる。
イオウを含むポリイミドとしては、特開2010−189322号公報の段落[0009]−[0025]、特開2008−274234号公報の段落[0012]−[0025]及び特開2008−274229号公報の段落[0012]−[0023]にそれぞれ記載の、ポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドを用いることができる。
その他にも、特開2009−256590号公報の段落[0008]−[0012]、特開2009−256589号公報の段落[0008]−[0012]に記載の脂環式ポリイミドなどを好ましく用いることができる。
上記したポリイミドの他に、ポリアミドイミド樹脂(単に「ポリアミドイミド」とも称する)を用いることもできる。用いられるポリアミドイミドは、酸成分として、トリカルボン酸またはテトラカルボン酸、ジカルボン酸、アミン成分としてジアミンを構成単位として含むポリアミドイミドである。
用いられるポリアミドイミドは、酸成分として、下記a)〜c)がある:
a)トリカルボン酸;トリメリット酸、ジフェニルエーテル−3,3’,4’−トリカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,3’,4’−トリカルボン酸、ベンゾフェノン−3,3’,4’−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸などのトリカルボン酸等の一無水物、エステル化物などの単独、または2種以上の混合物;
b)テトラカルボン酸;3,3,4’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3,4’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸一無水物、二無水物、エステル化物などの単独、または2種以上の混合物;および
c)ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサン−4,4’−ジカルボン酸のジカルボン酸、及びこれらの一無水物やエステル化物。
また、アミン成分としては、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,6−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサン−1,4−ジアミン、ジアミノシロキサン、1,5−ナフタレンジアミンまたはこれらに対応するジイソシアネート単独、または2種以上の混合物などが挙げられる。
特に、酸成分として、無水トリメリット酸(TMA)、3,3,4’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、及び3,3,4’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、イソシアネート成分として1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、を含む原料で重合されたポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。
ポリアミドイミドのイミド結合とアミド結合とのモル比(イミド結合/アミド結合(モル比))は、99/1〜60/40が好ましく、より好ましくは99/1〜75/25であり、さらにより好ましくは90/10〜80/20である。イミド結合とアミド結合とのモル比が、60/40以上では、耐熱性、耐湿信頼性、耐熱信頼性が向上する。また、99/1以下であると、弾性率が低くなり、耐折特性、屈曲特性が向上する傾向にある。
上記したポリイミドの他に、下記式(2)で表される構造を必須成分とし、更に、式(3)、式(4)及び式(5)で表される群より選ばれる少なくとも1種の構造を、繰り返し単位として分子鎖中に含有するポリアミドイミド樹脂を用いることもできる。
ここで、式(3)中、Xが、SO2もしくは単結合(ビフェニル結合)であること、または、n=0であることが好ましい。更に好ましくは、Xが結合(ビフェニル結合)であること、またはn=0であることである。式(4)中、Yは、ベンゾフェノン型(Y=CO)または単結合型(ビフェニル結合型、Y=結合子)が好ましい。
一つの好ましい実施態様では、式(2)が無水トリメリット酸と1,5−ナフタレンジイソシアネートからの繰り返し単位、式(3)がテレフタル酸と1,5−ナフタレンジイソシアネートからの繰り返し単位、式(4)がビフェニルテトラカルボン酸二無水物、または、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と1,5−ナフタレンジイソシアネートからの繰り返し単位で、その含有比が式(2)/{式(3)+式(4)+式(5)}=1/99〜40/60モル比で、かつ、式(3)/式(4)=10/90〜90/10モル比が好ましい。
イミド化率は高いほど好ましく上限は100%である。上記ポリアミドイミド樹脂は、通常の方法で合成することができる。例えば、イソシアネート法、アミン法(酸クロリド法、低温溶液重合法、室温溶液重合法等)などであるが、本発明で用いるポリアミドイミド樹脂は有機溶剤に可溶なものが好ましく、前記のとおり、ピール強度(接着強度)の信頼性確保などの理由から、イソシアネート法による製造が好ましい。また、工業的にも、重合時の溶液がそのまま塗布できるため好ましい。
上記したポリイミドの他に、下記式(6)を構成単位として含むポリアミドイミド樹脂を用いることもできる。
上記ポリアミドイミド樹脂が含み得るジアミン成分としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,6−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4−メチル−1,3−フェニレンジアミン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン(トランス/シス混合物)、1,3−ジアミノシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン(トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、イソホロンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルシクロヘキシルアミン)、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミンなどの単独、若しくは、2種以上の混合物、または、これらに対応するジイソシアネートなどの単独、若しくは、2種以上の混合物をジアミン成分として用いることができる。
好ましくは、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、ジシクロへキシルメタン−4,4’−ジアミン(トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、4−メチル−1,3−フェニレンジアミンなどの単独、若しくは、2種以上の混合物、または、これらに対応するジイソシアネートなどの単独、若しくは、2種以上の混合物をジアミン成分として用いることができる。
より好ましくは、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、ジシクロへキシルメタン−4,4’−ジアミン(トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4−メチル−1,3−フェニレンジアミンなどの単独、若しくは、2種以上の混合物、または、これらに対応するジイソシアネートなどの単独、若しくは、2種以上の混合物をジアミン成分として用いることができる。
さらに好ましくは、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、ジシクロへキシルメタン−4,4’−ジアミン(トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、4−メチル−1,3−フェニレンジアミンなどの単独、若しくは、2種以上の混合物、または、これらに対応するジイソシアネートなどの単独、若しくは、2種以上の混合物をジアミン成分として用いることができる。
上記酸成分、ジアミン成分の中でも、フィルム化するプロセスでの耐熱性、耐溶剤性、及び耐久性、並びに、製造されるポリアミドイミドフィルムの耐熱性、表面平滑性、及び透明性から、以下の成分が好ましく用いられる。
酸成分として、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物を用いることができる。
ジアミン成分として、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル及び4−メチル−1,3−フェニレンジアミンからなる群より選ばれた少なくとも1種または2種の化合物、または、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル(o−トリジンジイソシアネート)、及び4−メチル−1,3−フェニレンジイソシアネート(トリレンジイソシアネート)からなる群より選ばれた少なくとも1種または2種の化合物を用いることができる。
また、好ましいポリアミドイミド樹脂として、下記式(7)で表される構造を構成単位として含む化合物を用いることができる。
なお、全酸成分を100モル%とした場合、例示した酸成分は50モル%以上100%以下含まれるのがよく、より好ましくは70モル%以上100%以下含まれるのがよい。また、全ジアミン成分を100モル%とした場合、例示したジアミン成分は50モル%以上100%以下含まれるのがよく、より好ましくは70モル%以上100%以下含まれるがよい。これらの範囲であれば、フィルム化するプロセスでの耐熱性、耐久性がよく、得られるポリアミドイミドフィルムの耐熱性、表面平滑性、及び透明性が特に良くなる。
用いられるポリアミドイミド樹脂の分子量は、N−メチル−2−ピロリドン中(ポリマー濃度0.5g/cm3)、30℃での対数粘度にして0.3cm3/g以上2.5cm3/g以下に相当する分子量を有するものが好ましく、より好ましくは0.5cm3/g以上2.0cm3/g以下に相当する分子量を有するものである。対数粘度が0.3cm3/g以上であればフィルム等の成型物にしたとき、機械的特性が十分となる。また、2.5cm3/g以下であると溶液粘度が高くなり過ぎず、成形加工が容易となる。
上記したポリイミドの他に、ポリエーテルイミドを用いることもできる。ここで、ポリエーテルイミドは、その構造単位に芳香核結合及びイミド結合を含む熱可塑性樹脂であり、特に制限されるものでなく、具体的には、下記式(8)または下記式(9)で表される構造の繰り返し単位を有するポリエーテルイミドであることが好ましい。
上記式(8)で表される構造の繰り返し単位を有するポリエーテルイミドは、ゼネラルエレクトリック社製の商品名「Ultem 1000」(ガラス転移温度:216℃)、「Ultem 1010」(ガラス転移温度:216℃)、上記式(9)で表される構造の繰り返し単位を有するポリエーテルイミドは、「Ultem CRS5001」(ガラス転移温度Tg226℃)、が挙げられ、そのほかの具体例として、三井化学株式会社製の商品名「オーラム(登録商標)PL500AM」(ガラス転移温度258℃)などが挙げられる。
当該ポリエーテルイミドの製造方法は特に限定されるものではないが、通常、上記式(8)で表される構造を有する非晶性ポリエーテルイミドは、4,4’−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物とm−フェニレンジアミンとの重縮合物として、また上記構造式(9)で表される構造を有するポリエーテルイミドは、4,4’−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物とp−フェニレンジアミンとの重縮合物として公知の方法によって合成される。
また、ポリエーテルイミドには、本発明の主旨を超えない範囲でアミド基、エステル基、スルホニル基など共重合可能なほかの単量体単位を含むものであってもよい。なお、ポリエーテルイミドは、1種類を単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
上記したポリイミドの他に、ポリエステルイミド樹脂を用いることもできる。ここで、ポリエステルイミド樹脂は、特に制限されないが、透明性および耐熱性の観点から、下記式(10)で表されるポリエステルイミド構造を構成単位中に含有することが好ましい。
上記式(10)中、R1は、式(11)、式(12)または式(13)で表される構造を有する2価の基を表すことが好ましい。
上記式(11)中、Rは、それぞれ独立して、2価の、鎖式脂肪族基、環式脂肪族基または芳香族基を表し、複数個のRは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。これらの鎖式脂肪族基、環式脂肪族基または芳香族基を、単独、または2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
mは1以上の正の整数であり、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。また、mの上限は特に限定されないが、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。25を超える場合では耐熱性が低下する傾向にある。
前記鎖式脂肪族基、環式脂肪族基または芳香族基は、「2価のヒドロキシ基を有する鎖式脂肪族化合物」、「2価のヒドロキシ基を有する環式脂肪族化合物」または「2価のヒドロキシ基を有する芳香族化合物」等のジオールから誘導される残基であることが望ましい。また、前記ジオールと炭酸エステル類やホスゲン等から重合され得る「ポリカーボネートジオール」から誘導される残基であってもよい。
「2価のヒドロキシ基を有する鎖式脂肪族化合物」としては、二つのヒドロキシ基を有する分岐状、または直鎖状のジオールを用いることができる。例えば、アルキレンジオール、ポリオキシアルキレンジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。「2価のヒドロキシ基を有する鎖式脂肪族化合物」として使用できる二つのヒドロキシ基を有する分岐状または直鎖状のジオールを以下に挙げる。
アルキレンジオールとして、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンジオールとして、例えば、ジメチロールプロピオン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸)、ジメチロールブタン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、テトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとのランダム共重合体等が挙げられる。好ましくは、ポリオキシテトラメチレングリコールがよい。
ポリエステルジオールとしては、例えば、以下に例示される多価アルコールと多塩基酸とを反応させて得られる、ポリエステルジオール等が挙げられる。
ポリエステルジオールに用いる「多価アルコール成分」としては、任意の各種多価アルコールが使用可能である。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルヒドロキシピパリン酸エステル、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、1,9−ノナンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,10−ドデカンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール等を使用できる。
ポリエステルジオールに用いる「多塩基酸成分」としては、任意の各種多塩基酸を使用することができる。例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタル酸、2,6−ナフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などの脂肪族や脂環族二塩基酸が使用できる。
ポリエステルジオールの市販品として、具体的には、ODX−688(DIC(株)製脂肪族ポリエステルジオール:アジピン酸/ネオペンチルグリコール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約2000)、Vylon(登録商標)220(東洋紡(株)製ポリエステルジオール、数平均分子量約2000)などを挙げることができる。
ポリカプロラクトンジオールとして、例えば、γ−ブチルラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類を開環付加反応させて得られるポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
上述の「2価のヒドロキシ基を有する鎖式脂肪族化合物」を、単独、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
「2価のヒドロキシ基を有する環式脂肪族化合物」または「2価のヒドロキシ基を有する芳香族化合物」としては、「芳香環やシクロヘキサン環に二つのヒドロキシ基を有する化合物」、「2個のフェノール若しくは脂環式アルコールが2価の官能基で結合された化合物」、「ビフェニル構造の両方の核にヒドロキシ基を一つずつ有する化合物」、「ナフタレン骨格に二つのヒドロキシ基を有する化合物」などが用いられる。
「芳香環やシクロヘキサン環に二つのヒドロキシ基を有する化合物」として、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、2−フェニルヒドロキノン、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,3−アダマンタンジオール、ジシクロペンタジエンの2水和物、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸等のカルボキシル基含有ジオール等が使用できる。
「2個のフェノール」、または、「脂環式アルコールが2価の官能基で結合された化合物」の例としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジシクロヘキシルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジシクロヘキシルスルホン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等が使用できる。
また、「ビフェニル構造の両方の核にヒドロキシ基を一つずつ有する化合物」の例として、4,4’−ビフェノール、3,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールなどが使用できる。
「ナフタレン骨格に二つのヒドロキシ基を有する化合物」の例としては2,6−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、1,8−ナフタレンジオール等が使用できる。
前記ジオールの数平均分子量は、100以上30000以下であることが好ましく、より好ましくは150以上20000以下であり、さらに好ましくは200以上10000以下である。数平均分子量が上記範囲であれば、吸湿性、柔軟性、機械的特性、無色透明性を十分発揮できる。なお、数平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)によって測定される値である。
ポリカーボネートジオールとしては、その骨格中複数種のアルキレン基を有するポリカーボネートジオール(共重合ポリカーボネートジオール)であってもよい。例えば、2−メチル−1,8−オクタンジオールと1,9−ノナンジオールの組み合わせ、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールの組み合わせ、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールの組み合わせなどにより合成され得る共重合ポリカーボネートジオールなどを挙げることができる。好ましくは、2−メチル−1,8−オクタンジオールと1,9−ノナンジオールの組み合わせより合成され得る共重合ポリカーボネートジオールである。これらのポリカーボネートジオールを2種以上併用することもできる。
使用できるポリカーボネートジオールの市販品として(株)クラレ製クラレポリオールCシリーズ、旭化成ケミカルズ(株)デュラノールシリーズなどが挙げられる。例えば、クラレポリオールC−1015N、クラレポリオールC−1065N((株)クラレ製カーボネートジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール、数平均分子量約1000)、クラレポリオールC−2015N、クラレポリオールC2065N((株)クラレ製カーボネートジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール、数平均分子量約2000)、クラレポリオールC−1050、クラレポリオールC−1090((株)クラレ製カーボネートジオール:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約1000)、クラレポリオールC−2050、クラレポリオールC−2090((株)クラレ製カーボネートジオール:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約2000)、デュラノールT5650E(旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール:1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約500)、デュラノールT5651(旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール:1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約1000)、デュラノールT5652(旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール:1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約2000)などを挙げることができる。好ましくは、クラレポリオールC−1015N等が挙げられる。
ポリカーボネートジオールの製造方法としては、原料ジオールと炭酸エステル類とのエステル交換、原料ジオールとホスゲンとの脱塩化水素反応を挙げることができる。原料である炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート;ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート;及びエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートが挙げられる。
次に、以下では、式(12)で表される構造を有する2価の基について説明する。
上記式(12)中、R3は、直接結合(結合子)、アルキレン基(−CnH2n−)、パーフルオロアルキレン基(−CnF2n−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−S(=O)2−)、スルフィニル基(−SO−)、スルフェニル基(−S−)、カーボネート基(−OCOO−)、またはフルオレニリデン基を表す。nは1以上の正の整数である。nの上限は特に限定されないが、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。X1〜X8は、それぞれが同じであっても、異なっていても良く、それぞれ水素、ハロゲンまたはアルキル基を表す。
式(12)で表される構造を有する2価の基の具体例としては、特に限定されないが、ジフェニルエーテル骨格、ジフェニルスルホン骨格、9−フルオレニリデンジフェノール骨格、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物骨格またはビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格等が挙げられる。
前記骨格は、式(12)の両方のベンゼン環に各1個のヒドロキシ基を有する化合物から誘導される残基であることが好ましい。式(12)で表される構造を有する2価の基の原料としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、4,4’−ビフェノール、3,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、2,6−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオールまたは1,8−ナフタレンジオール等が使用できる。
好ましくは、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェノールまたはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物がよい。さらに好ましくは、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルまたはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物である。
これらの化合物を単独、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの原料を用いることで、式(10)のR1位に、前記ジフェニルエーテル骨格等を導入することができる。
次に、以下では、式(13)で表される構造を有する2価の基について説明する。
上記式(13)中、R4は、直接結合(結合子)、アルキレン基(−CnH2n−)、パーフルオロアルキレン基(−CnF2n−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−S(=O)2−)、スルフィニル基(−SO−)、スルフェニル基(−S−)、カーボネート基(−OCOO−)、またはフルオレニリデン基を表す。nは1以上の正の整数である。nの上限は特に限定されないが、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。X1’〜X8’は、それぞれが同じであっても、異なっていても良く、それぞれ水素、ハロゲンまたはアルキル基を表す。
式(13)で表される構造を有する2価の基の具体例としては、特に限定されないが、ジシクロヘキシルエーテル骨格、ジシクロヘキシルスルホン骨格、水添ビスフェノールA骨格、水添ビスフェノールF骨格、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物骨格または水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物骨格等が挙げられる。
前記骨格は、式(13)の両方のシクロヘキサン環に各1個のヒドロキシ基を有する化合物から誘導される残基であることが好ましい。式(13)で表される構造を有する2価の基の原料としては、4,4’−ジヒドロキシジシクロヘキシルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジシクロヘキシルスルホン、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物または水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等が使用できる。
好ましくは、4,4’−ジヒドロキシジシクロヘキシルエーテルまたは4,4’−ジヒドロキシジシクロヘキシルスルホンがよい。
これらの化合物を単独、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの原料を用いることで、式(10)のR1位に、前記ジシクロヘキシルエーテル骨格等を導入することができる。
式(10)の構造は、一例を挙げるならば、シクロヘキサントリカルボン酸無水物のハロゲン化物とジオール類とを反応させエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を得、次いで、そのエステル基含有テトラカルボン酸二無水物とジアミンまたはジイソシアネート等とを縮合反応(ポリイミド化)させて得ることができる。
本形態におけるポリエステルイミド樹脂は、さらに、式(14)で表される構造を構成単位中に含有してもよい。
式(10)のR2及び式(14)のR2’について説明する。R2及びR2’はそれぞれ独立して、2価の鎖式脂肪族基、2価の環式脂肪族基または2価の芳香族基であれば特に限定されない。これらの「2価の鎖式脂肪族基」、「2価の環式脂肪族基」、「2価の芳香族基」を、単独、または2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
好ましくは、R2は下記式(15)で表される構造を有する2価の基であり、R2’は下記式(16)で表される構造を有する2価の基である。
また、上記式(10)におけるR2としては、耐熱性、柔軟性、低吸湿性のバランス等の観点から、下記式(15)で表される構造を有する2価の基であることが好ましい。
上記式(15)中、R5は、直接結合(結合子)、アルキレン基(−CnH2n−)、パーフルオロアルキレン基(−CnF2n−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−S(=O)2−)、スルフィニル基(−SO−)またはスルフェニル基(−S−)を表す。nは1以上10以下の正の整数であることが好ましく、より好ましくは1以上5以下、さらに好ましくは1以上3以下である。X9〜X16は、同じであっても、異なっていても良く、それぞれ水素、ハロゲンまたはアルキル基を表す。
上記式(14)におけるR2’としては、耐熱性、柔軟性、低吸湿性のバランス等の観点から、下記式(16)で表される構造を有する2価の基であることが好ましい。
上記式(16)中、R5’は、直接結合(結合子)、アルキレン基(−CnH2n−)、パーフルオロアルキレン基(−CnF2n−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−S(=O)2−)、スルフィニル基(−SO−)またはスルフェニル基(−S−)を表す。nは1以上10以下の正の整数であることが好ましく、より好ましくは1以上5以下、さらに好ましくは1以上3以下である。X9’〜X16’は、同じであっても、異なっていても良く、それぞれ水素、ハロゲンまたはアルキル基を表す。
式(10)及び式(14)において、「2価の鎖式脂肪族基」、「2価の環式脂肪族基」または「2価の芳香族基」を式(10)のR2位及び式(14)のR2’位に導入するためには、それぞれ対応するジアミン成分またはジイソシアネート成分を用いることが好ましい。すなわち、「芳香族ジアミンまたはそれに対応する芳香族ジイソシアネート」、「環式脂肪族ジアミンまたはそれに対応する環式脂肪族ジイソシアネート」、「鎖式脂肪族ジアミンまたはそれに対応する鎖式脂肪族ジイソシアネート」を適宜選択することによって、耐熱性、柔軟性、低吸湿性に優れたポリエステルイミド樹脂を得ることができる。
式(10)のR2及び式(14)のR2’のジアミン成分またはそれに対応するジイソシアネート成分は同一であっても異なっていてもよい。後述する好ましい製造方法に基づくならば、同一であるのが好ましい。
R2及びR2’を基本骨格とするジアミン成分またはそれに対応するジイソシアネート成分について説明する。
「芳香族ジアミンまたはそれに対応する芳香族ジイソシアネート」としては、具体的には、ジアミン化合物として例示すると、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、P−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、ベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、o−トリジン、m−トリジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ジアミノターフェニル等が挙げられる。また、これらは、2種類以上併用することもできる。
また、「環式脂肪族ジアミンまたはそれに対応する環式脂肪族ジイソシアネート」としては、ジアミン化合物として例示すると、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン(トランス/シス混合物)、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン) (トランス体、シス体、トランス/シス混合物)、イソホロンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルシクロヘキシルアミン)、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。また、これらは、2種類以上併用することもできる。
「鎖式脂肪族ジアミンまたはそれに対応する鎖式脂肪族ジイソシアネート」としては、ジアミン化合物として例示すると、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。また、これらは、2種類以上併用することもできる。
耐熱性、柔軟性、低吸湿性のバランス等から、式(10)中のR2及び式(14)中のR2’のジアミン成分またはそれに対応するジイソシアネート成分として好ましい成分は、ジアミン化合物として例示すると、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ナフタレンジアミン、o−トリジン、ジアミノターフェニル、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン等から誘導される残基である。より好ましくは、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ナフタレンジアミン、o−トリジンであり、さらに好ましいのは、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、o−トリジンである。最も好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、o−トリジンから誘導される残基である。
(金属酸化物フィラー)
本発明のフィルム(ポリイミドフィルム)は、ポリイミド樹脂に加えて、金属酸化物フィラーを必須に含む。これにより、ポリイミド樹脂は、自身のカルボニル基(−C(=O)−)と金属酸化物フィラー表面に存在する官能基との水素結合または双極子−双極子相互作用を介して金属酸化物フィラー表面に固定化され、樹脂内の分子の再配列(ゆえにCT錯体形成性)が抑制できる。ゆえに、金属酸化物フィラーをポリイミド樹脂に混合して形成されるフィルムは、温湿度が変動する環境(特に高温高湿環境)下でも黄変やヘイズの低下を抑制し、耐久性に優れる。金属酸化物フィラーの含有量は、特に制限されないが、ポリイミド樹脂に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが特に好ましい。ポリイミド樹脂及び金属酸化物フィラーをこのような割合で含むフィルムは、高温高湿度の環境下での黄変及び濁りをさらに有効に抑制でき、このような厳しい条件下であっても高い視認性を発揮できる。
ここで、金属酸化物フィラーは、(a)アスペクト比(長径/短径)が100〜3000でありかつ平均直径が1〜10nmであり、かつ(b)前記金属酸化物フィラーの表面にスルホン酸基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)およびホスフェート基(−P(=O)(OH)3−n;n=1または2)からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する化合物を有する(スルホン酸基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)およびホスフェート基(−P(=O)(OH)3−n;n=1または2)からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する化合物で表面修飾されている)。なお、本明細書では、「金属酸化物フィラーの表面にスルホン酸基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)およびホスフェート基(−P(=O)(OH)3−n;n=1または2)からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する化合物を有する」ことを、「金属酸化物フィラーが、スルホン酸基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)およびホスフェート基(−P(=O)(OH)3−n;n=1または2)からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する化合物で表面修飾される」または「金属酸化物フィラーが、表面修飾剤で表面修飾される」とも称する。
上記(a)では、金属酸化物フィラーは、アスペクト比(長径/短径)が100〜3000である。ここで、アスペクト比が100未満であると、ポリイミド樹脂のカルボニル基(−C(=O)−)と金属酸化物フィラー表面の水酸基(−OH)との結合点(相互作用点)が少なすぎるため、ポリイミド樹脂がフィラーに十分固定化できず、高温高湿下で黄変してしまう(例えば、下記フィルム7参照)。また、アスペクト比が3000を超えると、フィラーの視認性が極度に上がり、作製直後のフィルム自体が黄色味を帯びたり、濁りを生じたりする(例えば、下記フィルム6参照)。高温高湿下での特性(例えば、黄変、ヘイズ)低下の抑制およびフィルムの視認性とのより良好なバランスを考慮すると、金属酸化物フィラーのアスペクト比(長径/短径)は、好ましくは110〜2000、より好ましくは120〜1000である。
本明細書において、金属酸化物フィラーおよび後述する金属酸化物フィラー前駆体のアスペクト比は、下記方法に従って測定された値である。すなわち、少なくとも100個の金属酸化物フィラー(サンプル)を無作為に選択し、これらを走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影し、得られた画像(SEM像)から長径(x)および短径(y)をそれぞれ測定し、長径(x)を短径(y)で除した値(x/y)を算出し、これらの平均値を、「アスペクト比」とする。なお、各フィラーについて外接する長方形(外接長方形)を描いたときの、外接長方形の短辺と長辺のうち、短辺の長さを短径とし、長辺の長さを長径とする。通常、金属酸化物フィラーの長径(x)および短径(y)は、それぞれ、平均長さおよび平均直径に相当する。
また、金属酸化物フィラーは、平均直径が1〜10nmである。ここで、平均直径が1nm未満であると、フィルムに十分な硬度(強靭性)を付与できない。また、直径が10nmを超えると、フィラーが太すぎて視認性が極度に上がり、作製直後のフィルム自体が黄色味を帯びたり、濁りを生じたりする(例えば、下記フィルム5参照)。フィルムの硬度(強靭性)とフィルムの視認性とのより良好なバランスを考慮すると、金属酸化物フィラーの平均直径は、好ましくは1nmを超え10nm未満、より好ましくは4〜8nmである。なお、上記平均直径は、上記「アスペクト比」における短径(y)である。
なお、作製後のフィルムが上記(a)を満たすか否かは、公知の方法によって評価できる。例えば、フィルムの断面について上記と同様の方法で評価することによって確認できる。
また、上記(b)に関しては、前記金属酸化物フィラーの表面にスルホン酸基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)およびホスフェート基(−P(=O)(OH)3−n;n=1または2)からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する化合物を有する(スルホン酸基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)およびホスフェート基(−P(=O)(OH)3−n;n=1または2)からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する化合物で表面修飾されている)。好ましくは、表面修飾剤は、スルホン酸基、カルボキシル基またはホスフェート基のいずれかを有する。ここで、金属酸化物フィラーの表面が上記特定の官能基を持たない化合物を有する(上記特定の官能基を持たない化合物で表面修飾した)場合には、当該官能基とポリイミド樹脂のカルボニル基(−C(=O)−)との間に双極子−双極子相互作用が生じないため、ポリイミド樹脂が金属酸化物フィラー表面に十分固定化されない。このため、初期にはフィルムに黄色味や濁りは生じないものの、高温高湿下では、ポリイミド樹脂内の分子の再配列(ゆえにCT錯体形成性)が生じ、黄色味を帯びたり、濁りを生じたりする(例えば、下記フィルム9参照)。
なお、作製後のフィルムが上記(b)を満たすか否かは、公知の方法によって評価できる。例えば、フィルムを薄片化し、透過電子顕微鏡(TEM)によって断面の元素分析を行うことで、粒子の表面にスルホン酸基、カルボキシル基及びホスフェート基が存在することを確認できる。
以下では、本発明に係る表面修飾剤の好ましい形態を説明するが、本発明は下記形態に限定されない。
スルホン酸基(−SO3H)を有する化合物は、スルホン酸基を有するものであれば特に制限されないが、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、これらのスルホン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、ならびにこれらのスルホン酸と低級アルコールとのエステルなどが挙げられる。
カルボキシル基(−COOH)を有する化合物は、カルボキシル基を有するものであれば特に制限されないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸、安息香酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸、ならびにこれらの塩などが挙げられる。
ホスフェート基(−P(=O)(OH)3−n;n=1または2)を有する化合物は、ホスフェート基を有するものであれば特に制限されないが、例えば、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート((C4H9OC2H4O)n−P(=O)(OH)3−n;n=1、2)、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ベンジルアシッドホスフェート、n−オクチルアシッドホスフェート、(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、ビス(2−エチルへキシル)ホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、エチレングリコールモノエチルエーテルアシッドホスフェート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアシッドホスフェート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
これらのうち、表面修飾剤は、アリール基を有することが好ましい。当該形態によると、ポリイミド樹脂の芳香族基(アリール基)と表面修飾剤のアリール基とのπ−π相互作用が形成され、樹脂内の分子の再配列(ゆえにCT錯体形成性)をさらに抑制できる。このため、フィルムの温湿度環境変動による(特に高温高湿環境下での)特性変化(特に、濁り(Δヘイズの上昇))を抑制できる(例えば、下記フィルム1とフィルム11との比較参照)。すなわち、本発明の好ましい形態によると、スルホン酸基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)およびホスフェート基(−P(=O)(OH)3−n;n=1または2)からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する化合物(表面修飾剤)は、アリール基を有する。具体的には、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、これらのスルホン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、ならびにこれらのスルホン酸と低級アルコールとのエステル;安息香酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸、ならびにこれらの塩が好ましい。
金属酸化物フィラーを構成する金属酸化物は、特に制限されない。例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、ベーマイト、擬ベーマイト、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン及び酸化バナジウムなどが挙げられる。なお、金属酸化物は、1種を単独で使用してもまたは2種以上の混合物で使用してもよい。これらのうち、ポリイミド樹脂のカルボニル基との水素結合性などを考慮すると、アルミナ、ベーマイト、擬ベーマイト、シリカ、ジルコニアが好ましく、アルミナ、ベーマイトがより好ましく、アルミナが特に好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態によると、金属酸化物は、アルミナ、ベーマイト、擬ベーマイト、シリカ、ジルコニアからなる群より選択される少なくとも1種である。また、本発明のより好ましい形態によると、金属酸化物は、アルミナまたはベーマイトである。また、本発明の特に好ましい形態によると、金属酸化物は、アルミナである。
金属酸化物フィラーの製造方法は、特に制限されず、特開2016−44114号公報などの公知の方法を同様にしてまたは適宜修飾して適用できる。例えば、金属酸化物原料を酸水溶液中で加水分解してアルミナ水和物とし、生成したアルコールを留去した後、解膠して金属酸化物フィラー前駆体(水系金属酸化物ゾル)を得、これを表面修飾剤で処理(脱水処理)する方法などが使用できる。以下、上記方法について説明する。なお、本発明は下記形態に限定されるものではない。
まず、金属酸化物原料を酸水溶液中で加水分解して、アルミナ水和物を得る。ここで、金属酸化物原料は、特に制限されないが、上記金属酸化物を構成する金属のアルコキシド、オリゴマー、アセトアセタトなどが使用できる。具体的には、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、ジルコニウムアルコキシド等の金属アルコキシド;環状アルミニウムオリゴマー、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセタト)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセタト)アルミニウムなどが挙げられる。これらの金属酸化物原料は、1種を単独で使用してもまたは2種以上の混合物で使用してもよい。これらの金属酸化物原料のうち、アルミニウム、ケイ素またはジルコニウムのアルコキシドが好ましく使用され、アルミニウム、ケイ素またはジルコニウムの炭素数2〜4のアルコキシドがより好ましい。
また、加水分解に使用する酸は、特に制限されないが、例えば、塩酸、硝酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などが使用できる。これらのうち、取扱い容易性などの観点から、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸が好ましく、酢酸がより好ましい。酸の使用量は、特に制限されないが、金属酸化物原料 1モルに対し、好ましくは0.2〜2.0モルであり、より好ましくは0.3〜1.8モルである。このような量であれば、金属酸化物原料を効率よく加水分解し、所望の形状(アスペクト比、直径)を有するフィラーを製造できる。なお、酸は水溶液の形態で使用されてもよく、この際の酸の濃度は、特に制限されないが、例えば、10〜50質量%、好ましくは15〜30質量%程度である。
加水分解条件は、金属酸化物原料を加水分解できる条件であれば特に制限されず、金属酸化物原料の種類や酸の使用量などによって適切に選択できる。例えば、加水分解温度は、好ましくは50〜100℃程度である。また、加水分解時間は、好ましくは10分〜3時間程度である。このような条件であれば、金属酸化物原料を効率よく加水分解し、所望の形状(アスペクト比、直径)を有するフィラーを製造できる。
このようにして得られたアルミナ水和物を、生成したアルコールを留去しながら、解膠して、水系金属酸化物ゾルを得る。ここで、アルミナ水和物は、溶液(例えば、水溶液)の形態であるが、この際のアルミナ水和物濃度(固形分濃度)は、特に制限されないが、例えば、好ましくは2〜15質量%、より好ましくは3〜10質量%である。このような濃度であれば効率よく解膠できる。
解膠条件は、アルミナ水和物を解膠できる条件であれば特に制限されない。例えば、解膠温度は、好ましくは100〜200℃、より好ましくは110〜180℃である。また、解膠時間は、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜15時間である。このような条件であれば、アルミナ水和物を効率よく解膠して、所望の形状(アスペクト比、直径)を有するフィラーを製造できる。
上記により、金属酸化物フィラー前駆体(水系金属酸化物ゾル)が得られる。ここで、金属酸化物フィラー前駆体の形状は、特に制限されないが、最終産物である金属酸化物フィラーと実質的に同様である。すなわち、金属酸化物フィラー前駆体の平均直径は、1〜10nmであり、好ましくは1nmを超え10nm未満、より好ましくは4〜8nmである。同様にして、金属酸化物フィラー前駆体のアスペクト比は、100〜3000であり、好ましくは110〜2000、より好ましくは120〜1000である。
次に、金属酸化物フィラー前駆体(水系金属酸化物ゾル)を表面修飾剤で処理する。
具体的には、上記で得られた金属酸化物フィラー前駆体(水系金属酸化物ゾル)に、有機溶媒及び表面被覆剤を添加、混合した後、溶媒置換を行う。溶媒置換の方法は、特に制限されないが、例えば、限外濾過膜を使用する方法、水と有機溶媒の沸点差を利用した脱水方法などが使用できる。なお、表面修飾剤は、上記したのと同様であるため、ここでは説明を省略する。
表面修飾剤の使用量は、金属酸化物フィラー前駆体を表面修飾できる(金属酸化物フィラーの表面に表面修飾剤が配置される)量であれば特に制限されない。具体的には、表面修飾剤の使用量は、金属酸化物フィラー前駆体に対して、好ましくは1〜100質量%、より好ましくは10〜20質量%である。このような量であれば、金属酸化物フィラー前駆体を所望の程度にまで表面修飾できる(金属酸化物フィラーの表面に、所望の程度の表面修飾剤が配置できる)。
表面修飾に使用できる有機溶媒としては、特に制限されず、金属酸化物フィラー前駆体や表面修飾剤の種類によって適切に選択できる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、酢酸ブチル、酢酸アミル、およびメチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で使用してもまたは2種以上の混合物の形態で使用してもよい。また、溶媒の量もまた特に制限されないが、金属酸化物フィラー前駆体及び表面修飾剤の合計濃度が、例えば1〜20質量、好ましくは2〜10質量%程度である。
表面修飾(脱水処理)条件は、金属酸化物フィラー前駆体を表面修飾剤で所望の程度にまで表面修飾できる条件であれば特に制限されない。このような条件であれば、金属酸化物フィラー前駆体を表面修飾剤で処理して、所望の形状(アスペクト比、直径)を有するフィラーを製造できる。
本発明のフィルム(ポリイミドフィルム)は、ポリイミドおよび金属酸化物フィラーを必須に含むが、これらに加えて、他の添加剤を含んでもよい。他の添加剤としては、特に制限されず、従来と同様の添加剤が使用できる。具体的には、マット剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、位相差制御剤、剥離促進剤などが挙げられる。
これらのうち、マット剤を使用することにより、取扱性を向上できる。具体的には、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などが挙げられる。これらのうち、フィルムのヘイズ低下などの観点から、二酸化ケイ素が好ましい。上記マット剤は、1種を単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。また、マット剤が微粒子である場合の、微粒子の1次平均粒子径は、特に制限されないが、好ましくは1〜20nm、より好ましくは5〜16nm、特に好ましくは5〜12nmである。また、この際、微粒子は0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成してポリイミドに含まれることが好ましく、好ましい平均粒子径は0.1〜2μmであり、更に好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることができる。本明細書において、微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、1次平均粒子径とする。
紫外線吸収剤を使用することにより、耐光性を向上できる。紫外線吸収剤は波長400nm以下の紫外線を吸収することで、耐光性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が、0.1〜30%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜20%の範囲、更に好ましくは2〜10%の範囲である。本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤である。例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン(登録商標)109、チヌビン(登録商標)171、チヌビン(登録商標)234、チヌビン(登録商標)326、チヌビン(登録商標)327、チヌビン(登録商標)328、チヌビン(登録商標)928等のチヌビン(登録商標)類があり、これらはいずれもBASFジャパン(株)製の市販品であり好ましく使用できる。この中ではハロゲンフリーのものが好ましい。このほか、1,3,5−トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。具体的には、BASFジャパン(株)製のチヌビン(登録商標)400、チヌビン(登録商標)405や、(株)ADEKA製のLA−46等を挙げることができる。上記紫外線吸収剤は、1種を単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。また、紫外線吸収剤は、ハロゲン基を有していないことが好ましい。紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒またはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶媒に溶解しないものは、有機溶媒とポリイミドフィルム中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、ポリイミドフィルムの乾燥膜厚が15〜50μmの場合は、ポリイミド樹脂に対して0.5〜10質量%の範囲が好ましく、0.6〜4質量%の範囲が更に好ましい。
高湿高温の状態に電子デバイスなどが置かれた場合には、ポリイミドフィルムの劣化が起こる場合があるが、酸化防止剤を使用することにより、劣化を防止できる。酸化防止剤は、例えば、ポリイミドフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりポリイミドフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、本発明のポリイミドフィルム中に含有させるのが好ましい。このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。上記酸化防止剤は、1種を単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。酸化防止剤の添加量は、特に制限されないが、ポリイミド樹脂に対して1質量ppm〜1.0質量%の範囲が好ましく、10〜1000質量ppmの範囲が更に好ましい。
位相差制御剤を使用することにより、液晶表示装置等の画像表示装置の表示品質の向上できる。または、配向膜を形成して液晶層を設け、偏光板保護フィルムと液晶層由来の位相差を複合化することにより、ポリイミドフィルムに光学補償能を付与することができる。位相差制御剤としては、欧州特許第911656A2号明細書に記載されているような、2以上の芳香族環を有する芳香族化合物、特開2006−2025号公報に記載の棒状化合物等が挙げられる。また、2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。この芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む芳香族性ヘテロ環であることが好ましい。芳香族性ヘテロ環は、一般に不飽和ヘテロ環である。なかでも、特開2006−2026号公報に記載の1,3,5−トリアジン環が好ましい。位相差制御剤の添加量は、ポリイミド樹脂に対して、0.5〜20質量%の範囲内であることが好ましく、1〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。
剥離促進剤を用いることにより、ポリイミドフィルムの剥離抵抗を小さくできる。剥離促進剤として界面活性剤を使用すると効果が顕著であるため、好ましい。好ましい剥離剤としてはリン酸エステル系の界面活性剤、カルボン酸またはカルボン酸塩系の界面活性剤、スルホン酸またはスルホン酸塩系の界面活性剤、硫酸エステル系の界面活性剤が効果的である。また上記界面活性剤の炭化水素鎖に結合している水素原子の一部をフッ素原子に置換したフッ素系界面活性剤も有効である。以下に剥離剤を例示する。また、剥離促進剤の添加量は、ポリイミド樹脂に対して、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%が更に好ましく、0.1〜0.5質量%が最も好ましい。
なお、本発明のポリイミドフィルムに含有される他の添加剤は、上記に限られるものではなく、フィルムに一般的に添加される成分を同様にして添加してよいことはいうまでもない。
[ポリイミドフィルムの製造]
以下では、ポリイミドフィルムの製造方法の具体例を説明する。なお、下記形態は好ましい形態であり、本発明は下記形態に限定されない。
ポリイミドフィルムの製造方法は、ポリイミドおよび金属酸化物フィラーを、溶媒に溶解してドープを調製する工程(ドープ調製工程)、前記ドープを支持体上に流延して流延膜を形成する工程(流延工程)、支持体上で流延膜から溶媒を蒸発させる工程(溶媒蒸発工程)、流延膜を支持体から剥離する工程(剥離工程)、得られたフィルムを乾燥させる工程(第1乾燥工程)、フィルムを延伸する工程(延伸工程)、延伸後のフィルムを更に乾燥させる工程(第2乾燥工程)、得られたポリイミドフィルムを巻き取る工程(巻取り工程)を含む。なお、ポリイミドの代わりにポリアミド酸を使用する場合には、上記延伸後のフィルムを加熱処理してイミド化させる工程(加熱工程)等をさらに有することが好ましい。
(ドープ調製工程)
本工程では、ポリイミド、金属酸化物フィラーおよび溶媒、ならびに必要であれば他の添加剤を混合してドープ(主ドープ)を調製する。ここで、ポリイミド、金属酸化物フィラーおよび必要であれば使用してもよい他の添加剤は上述したのと同様であるため、ここでは説明を省略する。
溶媒は、ポリイミドおよび(必要であれば)他の添加剤を溶解できるものであれば特に制限されず、これらの種類によって適宜選択できる。例えば、塩素系溶媒としては、ジクロロメタン、非塩素系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができる。上記溶媒は、1種を単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。これらのうち、沸点が80℃以下の溶媒を使用することが好ましい。具体的には、ジクロロメタン(40℃)、酢酸エチル(77℃)、メチルエチルケトン(79℃)、テトラヒドロフラン(66℃)、アセトン(56.5℃)、及び1,3−ジオキソラン(75℃)が好ましい(なお、括弧内はそれぞれ沸点を表す)。
また、上記溶媒は、他の溶媒(混合溶媒)と併用されてもよい。ここで、混合溶媒としては、ポリイミドおよび(必要であれば)他の添加剤を溶解し得るものであれば、本発明の効果を阻害しない範囲で用いることができる。上記したもの以外の溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、ジメチルスルホキシド、m−クレゾール、フェノール、p−クロルフェノール、2−クロル−4−ヒドロキシトルエン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、γ−ブチロラクトン、シクロペンタノン、イプシロンカプロラクタム、クロロホルム等が使用可能であり、2種以上を併用してもよい。また、これらの溶媒と併せて、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の貧溶媒を、本発明に係るポリイミド及び(添加した場合には)他の添加剤が析出しない程度に使用してもよい。上記混合溶媒は、1種を単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。
また、アルコール系溶媒を用いることもできる。当該アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール及びブタノールから選択されることが、剥離性を改善し、高速度流延を可能にする観点から好ましい。中でもメタノールまたはエタノールを用いることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になる。
溶媒の使用量は、特に制限されない。次工程での流延のしやすさなどを考慮すると、ドープ(主ドープ)中の固形分濃度(金属酸化物フィラーおよび溶媒ならびに(添加すれば)他の添加剤の合計量)が、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは3〜10質量%程度となるような量である。
ポリイミド及び(添加した場合には)他の添加剤の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報に記載の冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の高圧で行う方法等、種々の溶解方法を用いることができる。
調製したドープは、送液ポンプ等により濾過器に導いて濾過しても良い。濾過に用いる濾材としては、金属焼成フィルタ、金属不織布フィルタ、綿布フィルタ、紙フィルタ等を適宜用いることができる。また、ドープと金属酸化物フィラーを添加する前に別々に濾過しても良いし、添加した後に濾過しても良い。また、濾過時の温度については、例えば、ドープの主たる溶媒がジクロロメタンの場合、当該ジクロロメタンの1気圧における沸点+5℃以上の温度で当該ドープを濾過することにより、ドープ中のゲル状異物を取り除くことができる。好ましい温度範囲は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃の範囲内であることが更に好ましい。
また、多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%の範囲内程度含まれることがある。返材とは、何らかの理由で原料として再利用される部分のことをいい、例えばポリイミドフィルムを細かく粉砕した物で、ポリイミドフィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでフィルムの規定値を越えたポリイミドフィルム原反等が使用される。
また、ドープ調製に用いられる樹脂の原料としては、あらかじめポリイミド及びその他の化合物などをペレット化したものを用いることもできる。
(流延膜形成工程)
本工程では、上記(ドープ調製工程)で調製したドープ(主ドープ)を支持体上に流延して流延膜を形成する。例えば、ドープを送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通してダイスに送液し、無限に移送する無端の支持体、例えば、ステンレスベルトまたは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置(例えば、無端ベルト流延装置)に、ダイスからドープを流延する。
流延(キャスト)における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、支持体としては、ステンレススティールベルトまたは鋳物で表面をめっき仕上げしたドラム、またはステンレスベルト若しくはステンレス鋼ベルト等の金属支持体が好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mの範囲、好ましくは1.5〜3mの範囲、更に好ましくは2〜2.8mの範囲とすることができる。なお、支持体は、金属製でなくとも良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ナイロン6フィルム、ナイロン6,6フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレン等のベルト等を用いることができる。フレキシブル基板としてポリイミドを用いる場合、ポリイミドを流延した金属支持体ごとポリイミドを巻き取ってもよい。
金属支持体の走行速度は特に制限されないが、通常は5m/分以上であり、好ましくは10〜180m/分、特に好ましくは80〜150m/分の範囲内である。金属支持体の走行速度は、高速であるほど、同伴ガスが発生しやすくなり、外乱による膜厚ムラの発生が顕著になる。なお、金属支持体の走行速度は、金属支持体外表面の移動速度である。
金属支持体の表面温度は、温度が高い方が流延膜の乾燥速度を速くできるため好ましいが、余り高すぎると流延膜が発泡したり、平面性が劣化したりする場合があるため使用する溶媒の沸点に対して−50〜−10℃の温度の範囲内で行うことが好ましい。
ダイスは、幅方向に対する垂直断面において、吐出口に向かうに従い次第に細くなる形状を有している。ダイスは通常、具体的には、下部の走行方向で下流側と上流側とにテーパー面を有し、当該テーパー面の間に吐出口がスリット形状で形成されている。ダイスは金属からなるものが好ましく使用され、具体例として、例えば、ステンレス、チタン等が挙げられる。本発明において、厚さが異なるフィルムを製造するとき、スリット間隙の異なるダイスに変更する必要はない。
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイを用いることが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。厚さが異なるフィルムを連続的に製造する場合であっても、ダイスの吐出量は略一定の値に維持されるので、加圧ダイを用いる場合、押し出し圧力、せん断速度等の条件もまた略一定の値に維持される。また、製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して積層してもよい。
(溶媒蒸発工程)
本工程では、支持体上で流延膜から溶媒を蒸発させる。すなわち、溶媒蒸発工程は、金属支持体上で行われ、流延膜を金属支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる予備乾燥工程である。
溶媒を蒸発させるには、例えば、乾燥機により流延膜側及び金属支持体裏側から加熱風を吹き付ける方法、金属支持体の裏面から加熱液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等を挙げることができる。それらを適宜選択して組み合わせる方法も好ましい。金属支持体の表面温度は全体が同じであってもよいし、位置によって異なっていてもよい。加熱風の温度は10〜220℃の範囲内が好ましい。
溶媒蒸発工程においては、流延膜の剥離性及び剥離後の搬送性の観点から、残留溶媒量が10〜150質量%の範囲内になるまで、流延膜を乾燥することが好ましい。本明細書において、残留溶媒量は下記式で表される。
(剥離工程)
本工程では、上記(溶媒蒸発工程)で金属支持体上で溶媒が蒸発した流延膜を剥離位置で支持体から剥離する。
金属支持体と流延膜とを剥離する際の剥離張力は、通常、60〜400N/mの範囲内であるが、剥離の際に皺が入りやすい場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましい。
金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜60℃の範囲内とするのが好ましく、10〜40℃の範囲内がより好ましく、15〜40℃の範囲内とするのが最も好ましい。
剥離されたフィルムは、延伸工程に直接送られてもよいし、所望の残留溶媒量を達成するように第1乾燥工程に送られた後に延伸工程に送られてもよい。本発明においては、延伸工程での安定搬送の観点から、剥離工程後、フィルムは、第1乾燥工程及び延伸工程に順次送られることが好ましい。
(第1乾燥工程)
第1乾燥工程は、フィルムを加熱し、溶媒を更に蒸発させる乾燥工程である。乾燥手段は特に制限されず、例えば、熱風、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等を用いることができる。簡便さの観点からは、千鳥状に配置したローラーでフィルムを搬送しながら、熱風等で乾燥を行うことが好ましい。乾燥温度は、残留溶媒量及び搬送における伸縮率等を考慮して、30〜200℃の範囲が好ましい。
(延伸工程)
本工程では、フィルムを延伸する。このように金属支持体から剥離されたフィルムを延伸することで、フィルムの膜厚や平坦性、配向性等を制御することができる。
本形態に係る製造方法において、長手方向及び/または幅手方向に延伸する。延伸操作は多段階に分割して実施してもよい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
すなわち、例えば、次のような延伸ステップも可能である:
・長手方向に延伸→幅手方向に延伸→長手方向に延伸→長手方向に延伸
・幅手方向に延伸→幅手方向に延伸→長手方向に延伸→長手方向に延伸
また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮する場合も含まれる。
延伸開始時の残留溶媒量は0.1〜200質量%の範囲内であることが好ましい。当該残留溶媒量が上記範囲であれば、延伸による平面性向上の効果が得られ、十分なフィルム強度が得られる。
本形態に係る製造方法においては、延伸後の膜厚が所望の範囲になるように長手方向及び/または幅手方向に、好ましくは幅手方向に延伸してもよい。フィルムのガラス転移温度(Tg)に対して、(Tg−200)〜(Tg+100)℃の温度範囲で延伸することが好ましい。上記温度範囲で延伸すると、延伸応力を低下できるのでヘイズが低くなる。また、破断の発生を抑制し、平面性、フィルム自身の着色性に優れたポリイミドフィルムが得られる。延伸温度は、(Tg−150)〜(Tg+50)℃の範囲で行うことがより好ましい。なお、本工程は、上記(第1乾燥工程)と同一工程で(同時に)行ってもよい。
本形態に係る製造方法では、支持体から剥離された自己支持性を有するフィルムを、延伸ローラーで走行速度を規制することにより長手方向に延伸することができる。
幅手方向に延伸するには、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全処理または一部の処理を幅方向にクリップまたはピンでフィルムの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる。)、中でも、クリップを用いるテンター方式が好ましく用いられる。長手方向に延伸されたフィルムまたは未延伸のフィルムは、クリップに幅方向両端部を把持された状態にてテンターへ導入され、クリップ式テンターとともに走行しながら、幅方向へ延伸されることが好ましい。幅手方向への延伸に際し、フィルム幅手方向に50〜1000%/minの範囲内の延伸速度で延伸することが、フィルムの平面性を向上する観点から、好ましい。延伸速度は50%/min以上であれば、平面性が向上し、またフィルムを高速で処理することができるため、生産適性の観点で好ましく、1000%/min以内であれば、フィルムが破断することなく処理することができ、好ましい。より好ましい延伸速度は、100〜500%/minの範囲内である。なお、延伸速度は下記式によって定義される。
延伸工程では、通常、延伸した後、保持・緩和が行われる。すなわち、本工程は、フィルムを延伸する延伸段階、フィルムを延伸状態で保持する保持段階及びフィルムを延伸した方向に緩和する緩和段階をこれらの順序で行うことが好ましい。保持段階では、延伸段階で達成された延伸倍率での延伸を、延伸段階における延伸温度で保持する。緩和段階では、延伸段階における延伸を保持段階で保持した後、延伸のための張力を解除することによって、延伸を緩和する。緩和段階は、延伸段階における延伸温度以下で行えばよい。
(第2乾燥工程)
本工程では、上記延伸後のフィルムを更に加熱して乾燥させる。熱風等によりフィルムを加熱する場合、使用済みの熱風(溶媒を含んだエアーや濡れ込みエアー)を排気できるノズルを設置して、使用済み熱風の混入を防ぐ手段も好ましく用いられる。熱風温度は、40〜350℃の範囲がより好ましい。また、乾燥時間は5秒〜30分程度が好ましく、10秒〜15分がより好ましい。
また、加熱乾燥手段は熱風に制限されず、例えば、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等を用いることができる。簡便さの観点からは、千鳥状に配置したローラーでフィルムを搬送しながら、熱風等で乾燥を行うことが好ましい。乾燥温度は残留溶媒量、搬送における伸縮率等を考慮して、40〜350℃の範囲がより好ましい。
第2乾燥工程においては、残留溶媒量が0.5質量%以下になるまで、フィルムを乾燥することが好ましい。
(巻取り工程)
本工程では、上記にて得られたフィルムを巻き取る。好ましくは、巻取り工程では、得られたフィルムを巻き取った後、室温まで冷却する。巻取り機は、一般的に使用されているもので良く、例えば、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻取り方法で巻き取ることができる。
ここで、得られるフィルムの厚さは特に制限されず、例えば、1〜200μm、特に10〜100μmの範囲内であることが好ましい。
巻取り工程においては、延伸搬送したときにクリップ式テンター(テンタークリップ)等で挟み込んだフィルムの両端をスリット加工してもよい。スリットしたフィルム端部は、1〜30mm幅の範囲内に細かく断裁された後、溶媒に溶解させて返材として再利用することが好ましい。
成形されたフィルムのうち返材として再利用される部分の比は、10〜90質量%が好ましく、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%の範囲内である。
製膜工程の途中または最終的に発生する返材の量により投入量は若干変わるが、通常、ドープ中の全固形分に対する返材の混合率は10〜50質量%程度であり、好ましくは、15〜40質量%程度の範囲内である。返材の混合率は、できるだけ一定量とすることが生産安定上好ましい。
上述した溶媒蒸発工程から巻取り工程までの各工程は、空気雰囲気下で行ってもよいし、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。また、各工程、特に乾燥工程や延伸工程は、雰囲気における溶媒の爆発限界濃度を考慮して行うことが好ましい。
(加熱工程)
上述したように、ポリイミドの代わりにポリアミド酸を使用する場合には、上記延伸後のフィルムを加熱処理してイミド化することが好ましい。具体的には、上記巻取り工程後に、ポリマー鎖分子内及びポリマー鎖分子間でのイミド化を進行させて機械的特性を向上させるべく、上記第2乾燥工程で乾燥したフィルムを更に熱処理する加熱工程を行う。
また、ポリイミド(イミド化率100%)を用いてドープを調製した場合や、上記第2乾燥工程を行うことによりフィルムのイミド化率が100%となった場合であっても、フィルムの残留応力を緩和させる目的で、加熱工程を行う。なお、上記第2乾燥工程が、加熱工程を兼ねるものであってもよい。
加熱手段は、例えば、熱風、電気ヒーター、マイクロ波等の公知の手段を用いて行われる。電気ヒーターとしては、上記した赤外線ヒーターを用いることができる。
加熱処理条件は、200〜450℃の温度範囲内で、30秒〜1時間の範囲で適宜行うのが好ましい。これにより、ポリイミドフィルムの寸法安定性を向上させることができる。加熱工程において、フィルムを急激に加熱すると表面欠点が増加する等の不具合が生じるため、加熱方法は適宜選択することが好ましい。また、加熱工程は、低酸素雰囲気下で行うことが好ましい。
第二乾燥工程及び加熱工程における加熱温度は450℃を超えると、加熱に必要なエネルギーが非常に大きくなることから製造コストが高くなり、更に、環境負荷が増大するため、当該加熱温度は450℃以下にすることが好適である。
なお、巻取り工程後であって、加熱工程の前または後に、ポリイミドフィルムの幅方向端部をスリットする工程や、ポリイミドフィルムが帯電していた場合にはこれを除電する工程等を更に行うものとしてもよい。
上記したようにして、本発明のフィルム(ポリイミドフィルム)が得られる。本発明のポリイミドフィルムは、透明性に優れ(全光線透過率が高く)、黄色味が少なく(初期黄色度、初期YIが低く)、濁りが少ない(初期ヘイズが低い)。具体的には、ポリイミドフィルムの全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、84%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましい。全光線透過率を80%以上とすることにより、光学用途のフィルムとして、種々な電子デバイスに適用の幅が広がるという利点がある。なお、上記「フィルムの全光線透過率」は、下記実施例に記載の方法に従って測定された値である。また、ポリイミドフィルムのヘイズ(全ヘイズ、初期ヘイズ)は、3%以下であることが好ましく、3.0%未満であることがより好ましく、2%以下であることが特に好ましい。このようなヘイズのフィルムであれば、視認性に優れる。ポリイミドフィルムの黄色度(初期黄色度、初期YI)は、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることが特に好ましい。このような黄色度のフィルムであれば、視認性に優れる。すなわち、本発明の好ましい形態によると、本発明のフィルム(ポリイミドフィルム)は、全光線透過率が80%以上であり、初期黄色度(初期YI)および初期ヘイズの少なくとも一方が3%以下である。また、本発明のポリイミドフィルムは、温湿度環境変動による特性変化(特に、黄色味やヘイズの上昇)を抑制でき、耐久性に優れる(ΔYI及びΔヘイズが小さい)。なお、上記フィルムの「黄色度(初期黄色度、初期YI)」および「ヘイズ(全ヘイズ、初期ヘイズ)は、下記実施例に記載の方法に従って測定された値である。また、フィルムの耐久性(ΔYI及びΔヘイズ)は、下記実施例に記載の方法に従って評価できる。
ゆえに、本発明のフィルムは、タブレットPCやスマートフォン等の前面板に好適に使用できる。すなわち、本発明は、本発明のフィルムを前面板として有する表示装置をも提供する。
上述したように、本発明のフィルムは、電子デバイスと積層した場合に温湿度環境変動によっても黄変したり濁ったりしない。このため、以下に制限されないが、例えば、有機ELデバイス、液晶表示デバイス(LCD)、有機光電変換デバイス、プリント基板、薄膜トランジスター、タッチパネル(例えば、カーナビゲーション用タッチパネルやスマートフォンやタブレットと呼ばれる携帯用画像表示機器)、偏光板、位相差フィルム等の電子デバイスに好適に使用できる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、フレキシブルプリント基板、LED照明装置及びフレキシブルディスプレイ用前面部材に好ましく用いられる。
フレキシブルプリント基板は、本発明のポリイミドフィルムをベースフィルムとし、これに接着剤を介して金属箔を圧着することによって得られる。ここで用いられる接着剤としては、例えば、アクリル系、ポリイミド系及びエポキシ系接着剤等が挙げられる。また、接着剤を介してポリイミドフィルムと熱圧着される金属箔は、コスト低減の観点から銅箔であることが好ましいが、アルミニウム、金、銀、ニッケル、スズ等、他の金属箔でもよい。
LED照明装置としては、本発明のポリイミドフィルムを用いたLED用基板をもちいていれば、特に制限されるものではなく、例えば、両面基板やアルミ板との複合基板が挙げられる。LEDの高輝度化に伴い、より放熱性が要求される場合には、アルミ板と複合化することにより放熱性を向上させることが可能である。有機材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス照明装置に適用することもできる。
フレキシブルディスプレイ用前面部材は、本発明のポリイミドフィルムを用いてなるものであれば、特に制限されるものではない。本発明のフレキシブルディスプレイ用前面部材が搭載されるフレキシブルディスプレイとしては、例えば、基板上に発光層等の有機機能層が積層されてなる有機ELデバイス、ガスバリアーフィルム、フィルムカラーフィルター、片面または両面に偏光板保護フィルムを備える偏光板、フィルム型タッチセンサー等がこの順に積層されて構成される。本発明のフレキシブルディスプレイ用前面部材は、例えば、上記のように構成されるフレキシブルディスプレイのフィルム型タッチセンサー上に積層される。なお、本発明のポリイミドフィルムは、上記フレキシブルディスプレイを構成する有機ELデバイスの基板に用いられてもよいし、上記フレキシブルディスプレイを構成する偏光板の偏光板保護フィルムに用いられてもよい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
製造例1:フィラー1の調製
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水130g及び酢酸8.8g(0.146mol)を仕込み、得られた混合物を、撹拌しながら、30℃(液温)になるように加熱した。これに、アルミニウムイソプロポキシド27g(0.132mol)を、30分かけて滴下し、イソプロピルアルコールを留去しながら、95℃(液温)になるように加熱して、同温度で30分間加水分解を行った。次に、この混合物を、オートクレーブで、撹拌しながら、150℃で6時間、反応を行った。所定時間反応を行った後、反応液を室温(25℃)に冷却して、アルミナフィラー前駆体1を含む溶液(固形分濃度:約5質量%)を得た。ここで、アルミナフィラー前駆体1の平均直径及び平均長さは、それぞれ、4nm及び3000nm(アスペクト比=750)であった。
次に、このようにして得られたアルミナフィラー前駆体1を含む溶液50g、メチルイソブチルケトン50g及びドデシルベンゼンスルホン酸0.4gを混合し、ディーンスターク装置を用いて脱水処理を行うことで、アルミナフィラー前駆体1をドデシルベンゼンスルホン酸で表面修飾したもののメチルイソブチルケトン分散液を得た。このようにして得られたアルミナフィラーをフィラー1と称する。得られたフィラー1の短径(y)及び長径(x)は、それぞれ、4nm及び3,000nm(アスペクト比(x/y)=750)であった。なお、本例では、フィラー1の短径および長径は、それぞれ、平均直径および平均長さに相当するものであった。
製造例2:フィラー2の調製
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水130g及び酢酸6.8g(0.112mol)を仕込み、得られた混合物を、撹拌しながら、30℃(液温)になるように加熱した。これに、アルミニウムイソプロポキシド27g(0.132mol)を、30分かけて滴下し、イソプロピルアルコールを留去しながら、95℃(液温)になるように加熱して、同温度で30分加水分解を行った。次に、この混合物を、オートクレーブで、撹拌しながら、160℃で6時間、反応を行った。所定時間反応を行った後、反応液を室温(25℃)に冷却して、アルミナフィラー前駆体2を含む溶液(固形分濃度:約5質量%)を得た。ここで、アルミナフィラー前駆体2の平均直径及び平均長さは、それぞれ、4nm及び500nm(アスペクト比=125)であった。
次に、このようにして得られたアルミナフィラー前駆体2を含む溶液50g、メチルイソブチルケトン50g及びドデシルベンゼンスルホン酸0.4gを混合し、ディーンスターク装置を用いて脱水処理を行うことで、アルミナフィラー前駆体2をドデシルベンゼンスルホン酸で表面修飾したもののメチルイソブチルケトン分散液を得た。このようにして得られたアルミナフィラーをフィラー2と称する。得られたフィラー2の短径(y)及び長径(x)は、それぞれ、4nm及び500nm(アスペクト比(x/y)=125)であった。なお、本例では、フィラー2の短径および長径は、それぞれ、平均直径および平均長さに相当するものであった。
製造例3:フィラー3の調製
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水130g及び酢酸15.6g(0.257mol)を仕込み、得られた混合物を、撹拌しながら、30℃(液温)になるように加熱した。これに、アルミニウムイソプロポキシド35g(0.171mol)を、30分かけて滴下し、イソプロピルアルコールを留去しながら、95℃(液温)になるように加熱して、同温度で30分加水分解を行った。次に、この混合物を、オートクレーブで、撹拌しながら、160℃で6時間、反応を行った。所定時間反応を行った後、反応液を室温(25℃)に冷却して、アルミナフィラー前駆体3を含む溶液(固形分濃度:約5質量%)を得た。ここで、アルミナフィラー前駆体3の平均直径及び平均長さは、それぞれ、4nm及び10000nm(アスペクト比=2500)であった。
次に、このようにして得られたアルミナフィラー前駆体3を含む溶液50g、メチルイソブチルケトン50g及びドデシルベンゼンスルホン酸0.4gを混合し、ディーンスターク装置を用いて脱水処理を行うことで、アルミナフィラー前駆体3をドデシルベンゼンスルホン酸で表面修飾したもののメチルイソブチルケトン分散液を得た。このようにして得られたアルミナフィラーをフィラー3と称する。得られたフィラー3の短径(y)及び長径(x)は、それぞれ、4nm及び10000nm(アスペクト比(x/y)=2500)であった。なお、本例では、フィラー3の短径および長径は、それぞれ、平均直径および平均長さに相当するものであった。
製造例4:フィラー4の調製
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水130g及び酢酸1.1g(0.158mol)を仕込み、得られた混合物を、撹拌しながら、30℃(液温)になるように加熱した。これに、アルミニウムイソプロポキシド27g(0.132mol)を、30分かけて滴下し、イソプロピルアルコールを留去しながら、95℃(液温)になるように加熱して、同温度で30分加水分解を行った。次に、この混合物を、オートクレーブで、撹拌しながら、150℃で10時間、反応を行った。所定時間反応を行った後、反応液を室温(25℃)に冷却して、アルミナフィラー前駆体4を含む溶液(固形分濃度:約5質量%)を得た。ここで、アルミナフィラー前駆体4の平均直径及び平均長さは、それぞれ、10nm及び5000nm(アスペクト比=500)であった。
次に、このようにして得られたアルミナフィラー前駆体4を含む溶液50g、メチルイソブチルケトン50g及びドデシルベンゼンスルホン酸0.4gを混合し、ディーンスターク装置を用いて脱水処理を行うことで、アルミナフィラー前駆体4をドデシルベンゼンスルホン酸で表面修飾したもののメチルイソブチルケントン分散液を得た。このようにして得られたアルミナフィラーをフィラー4と称する。得られたフィラー4の短径(y)及び長径(x)は、それぞれ、10nm及び5,000nm(アスペクト比(x/y)=500)であった。なお、本例では、フィラー4の短径および長径は、それぞれ、平均直径および平均長さに相当するものであった。
製造例5:フィラー5の調製
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水130g及び酢酸15.6g(0.257mol)を仕込み、得られた混合物を、撹拌しながら、30℃(液温)になるように加熱した。これに、アルミニウムイソプロポキシド35g(0.171mol)を、30分かけて滴下し、イソプロピルアルコールを留去しながら、95℃(液温)になるように加熱して、同温度で30分加水分解を行った。次に、この混合物を、オートクレーブで、撹拌しながら、160℃で12時間、反応を行った。所定時間反応を行った後、反応液を室温(25℃)に冷却して、アルミナフィラー前駆体5を含む溶液(固形分濃度:約5質量%)を得た。ここで、アルミナフィラー前駆体5の平均直径及び平均長さは、それぞれ、30nm及び10,000nm(アスペクト比=333)であった。
次に、このようにして得られたアルミナフィラー前駆体5を含む溶液50g、メチルイソブチルケトン50g及びドデシルベンゼンスルホン酸0.4gを混合し、ディーンスターク装置を用いて脱水処理を行うことで、アルミナフィラー前駆体5をドデシルベンゼンスルホン酸で表面修飾したもののメチルイソブチルケトン分散液を得た。このようにして得られたアルミナフィラーをフィラー5と称する。得られたフィラー5の短径(y)及び長径(x)は、それぞれ、30nm及び10,000nm(アスペクト比(x/y)=333)であった。なお、本例では、フィラー5の短径および長径は、それぞれ、平均直径および平均長さに相当するものであった。
製造例6:フィラー6の調製
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水130g及び酢酸17.7g(0.293mol)を仕込み、得られた混合物を、撹拌しながら、30℃(液温)になるように加熱した。これに、アルミニウムイソプロポキシド40g(0.195mol)を、30分かけて滴下し、イソプロピルアルコールを留去しながら、95℃(液温)になるように加熱して、同温度で30分加水分解を行った。次に、この混合物を、オートクレーブで、撹拌しながら、160℃で6時間、反応を行った。所定時間反応を行った後、反応液を室温(25℃)に冷却して、アルミナフィラー前駆体6を含む溶液(固形分濃度:約5質量%)を得た。ここで、アルミナフィラー前駆体6の平均直径及び平均長さは、それぞれ、4nm及び15,000nm(アスペクト比=3750)であった。
次に、このようにして得られたアルミナフィラー前駆体6を含む溶液50g、メチルイソブチルケトン50g及びドデシルベンゼンスルホン酸0.4gを混合し、ディーンスターク装置を用いて脱水処理を行うことで、アルミナフィラー前駆体6をドデシルベンゼンスルホン酸で表面修飾したもののメチルイソブチルケトン分散液を得た。このようにして得られたアルミナフィラーをフィラー6と称する。得られたフィラー6の短径(y)及び長径(x)は、それぞれ、4nm及び15,000nm(アスペクト比(x/y)=3750)であった。なお、本例では、フィラー6の短径および長径は、それぞれ、平均直径および平均長さに相当するものであった。
製造例7:フィラー7の調製
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水130g及び酢酸6.8g(0.112mol)を仕込み、得られた混合物を、撹拌しながら、30℃(液温)になるように加熱した。これに、アルミニウムイソプロポキシド27g(0.132mol)を、30分かけて滴下し、イソプロピルアルコールを留去しながら、95℃(液温)になるように加熱して、同温度で30分加水分解を行った。次に、この混合物を、オートクレーブで、撹拌しながら、160℃で10時間、反応を行った。所定時間反応を行った後、反応液を室温(25℃)に冷却して、アルミナフィラー前駆体7を含む溶液(固形分濃度:約5質量%)を得た。ここで、アルミナフィラー前駆体7の平均直径及び平均長さは、それぞれ、10nm及び250nm(アスペクト比=25)であった。
次に、このようにして得られたアルミナフィラー前駆体7を含む溶液50g、メチルイソブチルケトン50g及びドデシルベンゼンスルホン酸0.4gを混合し、ディーンスターク装置を用いて脱水処理を行うことで、アルミナフィラー前駆体7をドデシルベンゼンスルホン酸で表面修飾したもののメチルイソブチルケトン分散液を得た。このようにして得られたアルミナフィラーをフィラー7と称する。得られたフィラー7の短径(y)及び長径(x)は、それぞれ、10nm及び250nm(アスペクト比(x/y)=25)であった。なお、本例では、フィラー2の短径および長径は、それぞれ、平均直径および平均長さに相当するものであった。
製造例8:フィラー8の調製
上記製造例1と同様にして、アルミナフィラー前駆体1を作製し、このようにして得られたアルミナフィラーをフィラー8と称する。得られたフィラー8の短径(y)及び長径(x)は、それぞれ、4nm及び3,000nm(アスペクト比(x/y)=750)であった。なお、本例では、フィラー8の短径および長径は、それぞれ、平均直径および平均長さに相当するものであった。
製造例9:フィラー9の調製
上記製造例1と同様にして、アルミナフィラー前駆体1を作製した。
次に、このようにして得られたアルミナフィラー前駆体1を50g、メチルイソブチルケトン50g、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランをエタノールに添加することにより調製された19質量%の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランエタノール溶液13gを混合し、50℃で3時間加熱および攪拌することにより、アルミナフィラー前駆体1を3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランで表面修飾したもののメチルイソブチルケトン分散液を得た。このようにして得られたアルミナフィラーをフィラー9と称する。得られたフィラー9の短径(y)及び長径(x)は、それぞれ、4nm及び3,000nm(アスペクト比(x/y)=750)であった。なお、本例では、フィラー9の短径および長径は、それぞれ、平均直径および平均長さに相当するものであった。
製造例10:フィラー10の調製
上記製造例1と同様にして、アルミナフィラー前駆体1を作製した。
次に、このようにして得られたアルミナフィラー前駆体1を、アルミナフィラー前駆体1を50g、メチルイソブチルケトン50g、および安息香酸0.4gと混合し、蒸留装置を使用して脱水処理を行うことで、アルミナフィラー前駆体1を安息香酸で表面修飾したもののメチルイソブチルケトン分散液を得た。このようにして得られたアルミナフィラーをフィラー10と称する。得られたフィラー10の短径(y)及び長径(x)は、それぞれ、4nm及び3,000nm(アスペクト比(x/y)=750)であった。なお、本例では、フィラー10の短径および長径は、それぞれ、平均直径および平均長さに相当するものであった。
製造例11:フィラー11の調製
上記製造例1と同様にして、アルミナフィラー前駆体1を作製した。
次に、このようにして得られたアルミナフィラー前駆体1を、アルミナフィラー前駆体1を50g、シクロヘキサノン50g、および城北化学工業社製JP−506H0.4gと混合し、ディーンスターク装置を使用して脱水処理を行うことで、アルミナフィラー前駆体1をブトキシエチルアシッドホスフェート[城北化学工業株式会社製、商品名:JP−506H、構造式:(C4H9OCH2CH2O)n−P(=O)−(OH)3−n;n=1、2]で表面修飾したもののシクロエキサノン分散液を得た。このようにして得られたアルミナフィラーをフィラー11と称する。得られたフィラー11の短径(y)及び長径(x)は、それぞれ、4nm及び3,000nm(アスペクト比(x/y)=750)であった。なお、本例では、フィラー11の短径および長径は、それぞれ、平均直径および平均長さに相当するものであった。
製造例12:フィラー12の調製
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水130g及び酢酸8.8g(0.146mol)を仕込み、得られた混合物を、撹拌しながら、30℃(液温)になるように加熱した。これに、オルトケイ酸テトラエチル30g(0.142mol)を、30分かけて滴下し、イソプロピルアルコールを留去しながら、95℃(液温)になるように加熱して、同温度で30分加水分解を行った。次に、この混合物を、オートクレーブで、撹拌しながら、150℃で6時間、反応を行った。所定時間反応を行った後、反応液を室温(25℃)に冷却して、シリカフィラー前駆体を含む溶液(固形分濃度:約5質量%)を得た。ここで、シリカフィラー前駆体の平均直径及び平均長さは、それぞれ、8nm及び3,000nm(アスペクト比=375)であった。
次に、このようにして得られたシリカフィラー前駆体を含む溶液50g、メチルイソブチルケトン50g及びドデシルベンゼンスルホン酸0.4gを混合し、ディーンスターク装置を用いて脱水処理を行うことで、シリカフィラー前駆体をドデシルベンゼンスルホン酸で表面修飾したもののメチルイソブチルケトン分散液を得た。このようにして得られたシリカフィラーをフィラー12と称する。得られたフィラー12の短径(y)及び長径(x)は、それぞれ、8nm及び3,000nm(アスペクト比(x/y)=375)であった。なお、本例では、フィラー12の短径および長径は、それぞれ、平均直径および平均長さに相当するものであった。
製造例13:フィラー13の調製
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水130g及び酢酸8.8g(0.146mol)を仕込み、得られた混合物を、撹拌しながら、30℃(液温)になるように加熱した。これに、テトラプロポキシジルコニウム(IV)45g(0.138mol)を、30分かけて滴下し、イソプロピルアルコールを留去しながら、95℃(液温)になるように加熱して、同温度で30分加水分解を行った。次に、この混合物を、オートクレーブで、撹拌しながら、150℃で6時間、反応を行った。所定時間反応を行った後、反応液を室温(25℃)に冷却して、ジルコニアフィラー前駆体を含む溶液(固形分濃度:約5質量%)を得た。ここで、ジルコニアフィラー前駆体の平均直径及び平均長さは、それぞれ、8nm及び3,000nm(アスペクト比=375)であった。
次に、このようにして得られたジルコニアフィラー前駆体を含む溶液50g、メチルイソブチルケトン50g及びドデシルベンゼンスルホン酸0.4gを混合し、ディーンスターク装置を用いて脱水処理を行うことで、ジルコニアフィラー前駆体をドデシルベンゼンスルホン酸で表面修飾したもののメチルイソブチルケトン分散液を得た。このようにして得られたジルコニアフィラーをフィラー13と称する。得られたフィラー13の短径(y)及び長径(x)は、それぞれ、8nm及び3,000nm(アスペクト比(x/y)=375)であった。なお、本例では、フィラー13の短径および長径は、それぞれ、平均直径および平均長さに相当するものであった。
製造例14:フィラー14
アルミナ粒子(平均粒子径(直径):31nm、粒子形状:球状、シーアイ化成株式会社製、製品名:NanoTek(登録商標)Al2O3)をフィラー14と称する。
製造例15:フィラー15
シリカ粒子(平均粒子径(直径):7nm、粒子形状:球状、Evonik Industries製、製品名:AEROSIL(登録商標)R812)をフィラー15と称する。
下記表1に、上記フィラー1〜15の構成を要約する。
製造例A:ポリイミドAの調製
3000Lの反応釜中で、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物(酸無水物A)(ダイキン工業社製)0.43tをN,N−ジメチルアセトアミド(1.68t)に加え、窒素気流下、室温で撹拌した。
それに4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(ジアミンA)(ダイキン工業社製)0.32tを加え、80℃で6時間加熱撹拌した。その後、外温を190℃まで加熱して、イミド化に伴って発生する水を共沸留去した。6時間加熱、還流、撹拌を続けたところ、水の発生は認められなくなった。反応終了後にメタノールを投入して再沈殿し、ポリイミドAの粉体を得た。
製造例B〜D:ポリイミドB〜Dの調製
製造例Aにおいて、酸無水物AおよびジアミンAの代わりに、それぞれ、下記表2に示される酸無水物およびジアミンを使用した以外は、製造例Aと同様にして、ポリイミドB〜D溶液をそれぞれ調製した。なお、本例において、酸無水物およびジアミンは、それぞれ、酸無水物AおよびジアミンAと等モルとなるような量で用いた。
実施例1:ポリイミドフィルム1の作製
加圧溶解タンクに、ジクロロメタン(沸点:40℃)1200質量部を添加した。この加圧溶解タンクに、製造例Aにて調製したポリイミドA 100質量部(ポリイミドAとしての添加量(固形分換算))および製造例1にて作製したフィラー1のメチルイソブチルケトン分散液 5質量部(フィラー1としての添加量(固形分換算))を撹拌しながら投入した。この混合物を加熱し、撹拌しながら、ポリイミドAを完全に溶解し、主ドープ(固形分濃度=約7質量%)を調製した(ドープ調製工程)。
次いで、このようにして調製された主ドープを、無端ベルト流延装置を用いて、30℃の温度で、1500mm幅でステンレスベルト支持体上にダイスを介して均一に流延した(流延膜形成工程)。なお、ステンレスベルト支持体の温度は30℃に制御した。
さらに、ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75質量%になるまで溶媒を蒸発させた(溶媒蒸発工程)後、剥離張力180N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離して、フィルムを得た(剥離工程)。
この剥離したフィルムを、200℃の熱をかけながらクリップ式テンターを用いて幅方向に1.50倍延伸した(第1乾燥工程および延伸工程)。なお、延伸開始時の残留溶媒量は20質量%であった。
延伸したフィルムを、搬送張力100N/m、乾燥時間15分間として、残留溶媒量が0.1質量%未満となる乾燥温度で乾燥させ(第2乾燥工程)、乾燥膜厚62μmのフィルムを得た。得られたフィルムを巻き取って(巻取り工程)、ポリイミドフィルム1を得た。
実施例2〜18、比較例1〜8:ポリイミドフィルム2〜26の作製
実施例1において、ポリイミドおよびフィラーの種類ならびにフィラーの添加量を下記表3に記載されるように変更した以外は同様にして、ポリイミドフィルム2〜26を作製した。
上記のようにして得られたポリイミドフィルム1〜26について、下記方法に従って、全光線透過率(%)、黄色度(%)(初期YIおよびΔYI)、ならびにヘイズ(%)(初期ヘイズおよびΔヘイズ)を測定し、その結果を下記表3に示す。
[全光線透過率(%)の測定]
各ポリイミドフィルムの全光線透過率は、23℃、55%RHの空調室で24時間調湿したフィルム(試料)1枚(大きさ:5cm×5cm)を、JIS K7375:2008に従って、(株)日立ハイテクノロジーズの分光光度計U−3300を用いて可視光領域(400〜700nmの範囲)の透過率を測定し、平均値(%)を求め、これを全光線透過率(%)とした。
[ヘイズの評価]
各ポリイミドフィルムのヘイズ(全ヘイズ)(%)を、JIS K7136:2000に準拠して、ヘーズメーターNDH−2000(日本電色工業株式会社製)にて測定した。ヘーズメーターの光源は、5V9Wのハロゲン球とし、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)とした。ヘイズ(%)の測定は、23℃、55%RHの条件下にて行った。このようにして測定されたヘイズ(%)を、下記表では、「初期ヘイズ(%)」と称する。
また、各ポリイミドフィルムを、90℃、90%RHで5000時間放置した。これらのポリイミドフィルムについて、上記と同様にしてヘイズ(%)を測定した。このようにして測定されたヘイズと、上記にて測定された初期ヘイズ(%)と、の差(Δヘイズ)を測定し、この値(Δヘイズ)を以下の基準に従って評価した。
[黄色度の評価]
各ポリイミドフィルムの黄色度(%)(イエローインデックス、YI)は、JIS K7373:2006に定められているフィルムのYI(イエローインデックス:黄色味の指数)に従って求めることができる。詳細には、黄色度(%)の測定方法としては、各フィルムサンプルを作製し、(株)日立ハイテクノロジーズの分光光度計U−3300と附属の彩度計算プログラム等を用いて、JIS Z8701:1999に定められている光源色の三刺激値X、Y、Zを求め、下式の定義に従って黄色度(%)を求める。このようにして測定された黄色度(%)を、下記表では、「初期YI(%)」と称する。
また、各ポリイミドフィルムを、90℃、90%RHで5000時間放置した。これらのポリイミドフィルムについて、上記と同様にして黄色度(%)を測定した。このようにして測定された黄色度(%)と、上記にて測定された初期YI(%)と、の差(ΔYI)を測定し、この値(ΔYI)を以下の基準に従って評価した。
表3から、本発明のフィルム1〜4、10〜13および15〜24は、フィラーのアスペクト比、平均直径または表面修飾を満たさないフィルム5〜9、14および25〜26に比して、ΔYI及びΔヘイズが低く抑えられ、耐久性に優れることが分かる。
実施例19〜33、比較例9〜16
以下の方法に従って、実施例1〜8および13〜18ならびに比較例1〜8にて作製した各ポリイミドフィルムを用いて、それぞれ、有機EL表示装置1〜14、18〜26を作製し、評価した。
(1)ハードコート層付きポリイミドフィルムの作製
各ポリイミドフィルムの片面上に、下記ハードコート層を設けてハードコート層付きポリイミドフィルムを作製した。
(ハードコート層の形成)
下記材料を撹拌、混合して、ハードコート層組成物を調製した。
このようにして調製されたハードコート層組成物を、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層形成用塗布液を調製した。このハードコート層形成用塗布液を、ダイコーターによりポリイミドフィルム上に塗布し、70℃で乾燥し、ポリイミドフィルム上に塗布層を形成した。次いで、処理空間内の酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用いて照度300mW/cm2、照射量0.3J/cm2の条件下で、塗布層を硬化させた。さらに、加熱処理ゾーンにおいて、130℃で5分間、搬送力300N/mで加熱処理し、乾燥膜厚が7μmのハードコート層をポリイミドフィルム上に形成した。
(フッ素−シロキサングラフトポリマーIの調製)
以下、フッ素−シロキサングラフトポリマーIの調製に用いた素材の市販品名を示す。
ラジカル重合性フッ素樹脂(FA):セフラルコート(登録商標)CF−803(ヒドロキシ(水酸基)価60、数平均分子量15000;セントラル硝子(株)製)
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B):サイラプレーン(登録商標)FM−0721(数平均分子量5000;JNC(株)製)
ラジカル重合開始剤:パーブチル(登録商標)O(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート;日本油脂(株)製)
硬化剤:スミジュール(登録商標)N3200(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型プレポリマー;住化バイエルウレタン(株)製)
まず、次のようにしてラジカル重合性フッ素樹脂(FA)を調製した。機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、セフラルコート(登録商標)CF−803(1554質量部)、キシレン(233質量部)、及び2−イソシアナトエチルメタクリレート(6.3質量部)を入れ、乾燥窒素雰囲気下で80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、ウレタン結合を介して50質量%のラジカル重合性フッ素樹脂(FA)を得た。
次いで、機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記合成したラジカル重合性フッ素樹脂(FA)(26.1質量部)、キシレン(19.5質量部)、酢酸n−ブチル(16.3質量部)、メチルメタクリレート(2.4質量部)、n−ブチルメタクリレート(1.8質量部)、ラウリルメタクリレート(1.8質量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.8質量部)、サイラプレーン(登録商標)FM−0721(5.2質量部)、及びパーブチル(登録商標)O(0.1質量部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチル(登録商標)O(0.1質量部)を追加し、更に90℃で5時間保持することによって、重量平均分子量が171000である35質量%フッ素−シロキサングラフトポリマーIの溶液を得た。
(2)円偏光板の作製
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥して偏光子を得た。
次いで、特開2013−101229号公報の段落[0277]−[0287]に記載の方法と同様にして、λ/4位相差フィルムを作製した。
次いで、下記工程1〜5に従って、偏光子とλ/4位相差フィルムと保護フィルム(コニカミノルタタック KC4UY(コニカミノルタ(株)製))とをロールtoロール方式で貼り合わせて、円偏光板を作製した。なお、保護フィルムが偏光子の裏面側(視認側)に配置されるように貼り合わせた。
工程1:λ/4位相差フィルム及び延伸した保護フィルムを、60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬した後、水洗して乾燥し、それぞれ偏光子と貼合する側の面をケン化した。
工程2:上記作製した偏光子を、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き取り、これを工程1で処理したλ/4位相差フィルムの上に載せて配置した。
工程4:工程3で積層したλ/4位相差フィルム及び偏光子と、保護フィルムとを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中で工程4で作製した偏光子とλ/4位相差フィルムと保護フィルムとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、円偏光板を作製した。
(3)有機EL表示デバイスの作製
透明基板として上記実施例及び比較例で作製したポリイミドフィルム1〜14、18〜26を用い、その上にクロムからなる反射電極を形成し、更に当該反射電極上にITO(スズドープ酸化インジウム)からなる陽極を形成した。
陽極上にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)を用いてスパッタリング法で厚さ80nmの正孔輸送層を形成した。次いで、シャドーマスクを用いて、正孔輸送層上にそれぞれ層厚100nmの赤色発光層R、緑色発光層G及び青色発光層Bを形成した。赤色発光層Rは、ホストとしてトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)と、発光性化合物として4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran(DCM)とを共蒸着(質量比99:1)して形成した。緑色発光層Gは、ホストとしてAlq3と、発光性化合物としてクマリン6(3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン)とを共蒸着(質量比99:1)して形成した。青色発光層Bとしては、ホストとしてBAlqと、発光性化合物としてPeryleneとを共蒸着(質量比90:10)して形成した。このようにして、正孔輸送層、赤色発光層R、緑色発光層G及び青色発光層Bからなる有機発光層を形成した。
更に、有機発光層上に、真空蒸着法によりカルシウムを4nmの厚さで成膜して第1の陰極を形成した。次に、第1の陰極上に、アルミニウムを2nmの厚さで成膜して第2の陰極を形成した。第2の陰極に用いたアルミニウムは、その上に形成される透明導電膜をスパッタリング法により成膜する際に、第1の陰極であるカルシウムが化学的変質をすることを防ぐ役割がある。
次に、第1及び第2の陰極上に、スパッタリング法によりITOを80nmの厚さで成膜し透明電極を形成した。更に、透明電極上にCVD法によって窒化ケイ素を200nmの厚さで成膜して絶縁膜を形成した。このようにして有機EL素子を作製した。
次に、厚さ20μmのガスバリアー層付きポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、熱硬化型の液状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ25μmで付与して、封止ユニットを作製した。
次に、90℃で0.1MPaの減圧条件下で、透明基板〜絶縁膜まで形成した有機EL素子と封止ユニットとを重ねて押圧し、5分間保持した。続いて、その積層体を大気圧環境にて90℃で30分間加熱して接着剤を硬化させ、有機EL表示デバイスを作製した。
上記作製した有機EL表示デバイスの発光面積は1296mm×784mmであった。また、この有機EL表示デバイスに6Vの直流電圧を印加した際の正面輝度は1200cd/m2であった。正面輝度の測定は、コニカミノルタ(株)製分光放射輝度計CS−1000を用いて、2度視野角正面輝度を、発光面からの法線に分光放射輝度計の光軸が一致するようにして、可視光波長430〜480nmの範囲を測定し、積分強度をとった。
(4)有機EL表示装置の作製
作製した有機EL表示デバイスに、上記作製した円偏光板を積層し、更にその上に前面部材として、上記作製したハードコート層付きポリイミドフィルムをハードコート層が最表層となるように接着層を介して積層し、有機EL表示装置1〜26を作製した。
(5)有機EL表示装置の評価
作製した有機EL表示装置について、白の発色および黒の発色に関する画質の官能評価を行った。官能評価は下記基準で行った。結果を下記表4に示す。なお、白の発色は○及び◎であれば許容される。また、黒の発色は○及び◎であれば許容される。
表4から、本発明のフィルム1〜4、10〜13および18〜24を用いた有機EL表示装置は、フィラーのアスペクト比、平均直径または表面修飾を満たさないフィルム5〜9、14および25〜26を用いた有機EL表示装置に比して、黄色味を帯びず(白の発色)、濁りがなく透明性に優れ(黒の発色)、本発明のフィルムは視認性に優れることが分かる。