JP2018094767A - フェノール樹脂発泡板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フェノール樹脂の発泡層10と、発泡層10の少なくとも一方の表面に直接積層した面材14とを備えるフェノール樹脂発泡板1であって、面材14が、ガラス繊維を含む面材14であり、面材14の少なくとも発泡層10と接する部分に、化合物(1)が存在しており、面材14における化合物(1)の含有量が1〜40g/m2であるフェノール樹脂発泡板1。化合物(1):リン酸構造及びケイ酸構造から選ばれる少なくとも1種の構造(X)と、NH2及びNHのいずれか一方又は両方を含む構造(Y)とを有する化合物。
【選択図】図1
Description
フェノール樹脂の発泡層は、物理的衝撃に対して、比較的脆い。このため、フェノール樹脂の発泡層の片面又は両面に面材を設けることで、フェノール樹脂の発泡層の保護を図っている。
例えば、特定の密度であり、特定の独立気泡率であり、かつ特定の平均気泡径であるフェノール樹脂の発泡層と、その両面に配された面材とを備え、面材は紙を含有し、面材剥離強度が特定の範囲であるフェノール樹脂発泡板が提案されている(例えば、特許文献1)。
そこで本発明は、難燃性に優れ、かつ面材が剥離しにくいフェノール樹脂発泡板を提供することを目的とする。
〔1〕フェノール樹脂の発泡層と、前記発泡層の少なくとも一方の表面に直接積層した面材とを備えるフェノール樹脂発泡板であって、
前記面材が、ガラス繊維を含む面材であり、
前記面材の少なくとも前記発泡層と接する部分に、下記化合物(1)が存在しており、
前記面材における前記化合物(1)の含有量が1g/m2以上40g/m2以下であることを特徴とするフェノール樹脂発泡板。
化合物(1):リン酸構造及びケイ酸構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造(X)と、NH2及びNHのいずれか一方又は両方を含む構造(Y)とを有する化合物。
〔2〕MD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PMと、TD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PTとが、下記(2)式を満たす、〔1〕に記載のフェノール樹脂発泡板。
0.6≦PM/PT≦1.3 ・・・(2)
〔3〕制限酸素指数が30容量%以上である、〔1〕又は〔2〕に記載のフェノール樹脂発泡板。
〔4〕前記面材の総質量に対し、前記ガラス繊維の含有量が10質量%以上である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡板。
〔5〕前記ガラス繊維を含む面材が、ガラス繊維不織布、ガラス繊維織布又はガラス繊維含有水酸化アルミニウム紙である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡板。
以下、図面を参照して、フェノール樹脂発泡板について説明する。
第一の面材12は、発泡層10の一方の面に直接積層している。第二の面材14は、発泡層10の他方の面に直接積層している。
フェノール樹脂発泡板1は、X方向を長手、Y方向を短手とする、平面視矩形である。本実施形態において、X方向はMD(Machine Direction)方向、Y方向はTD(Transverse Direction)方向である。なお、X方向をTD方向、Y方向をMD方向としてもよい。
発泡層10の他方の面の面積(100%)に対して、第二の面材14の覆う面積の割合は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がさらに好ましく、100%が特に好ましい。
発泡層10は、発泡性樹脂組成物を発泡し硬化してなる発泡体である。発泡性樹脂組成物は、フェノール樹脂と発泡剤とを含む。
発泡層10中には、複数の気泡が形成されている。気泡壁には実質的に孔が存在せず、複数の気泡の少なくとも一部は相互に連通していない独立気泡になっている。気泡壁は、フェノール樹脂の硬化物から構成される。
独立気泡中には発泡剤に由来するガスが保持されている。発泡性樹脂組成物が2以上の発泡剤を含む場合、独立気泡中に保持されているガスの組成は、発泡性樹脂組成物中の発泡剤の組成とおおむね同様の比率となる。
レゾール型フェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂である。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシノール及びこれらの変性物等が挙げられる。
アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等が挙げられる。アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、脂肪族アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)等が挙げられる。
ただしフェノール化合物、アルデヒド、アルカリ触媒はそれぞれ上記のものに限定されるものではない。フェノール樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合されて用いられてもよい。
フェノール化合物とアルデヒドとの使用割合は特に限定されない。好ましくは、フェノール化合物:アルデヒドのモル比で、1:1〜1:3であり、より好ましくは1:1.3〜1:2.5である。
炭化水素としては、炭素数が4以上6以下の環状分子構造又は炭素数4以上6以下の鎖状分子構造を有するものが好ましく、例えば、イソブタン、ノルマルブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン等が挙げられる。これらの炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。これらの炭化水素は、低温域(例えば、−80℃程度の冷凍庫用断熱材)から高温域(例えば200℃程度の加熱体用断熱材)までの広い温度範囲で優れた断熱性能を確保でき、比較的安価であり経済的にも有利である。
酸触媒としては、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸、硫酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤としては、特に限定されず、整泡剤等として公知のものを使用できる。例えば、ひまし油アルキレンオキシド付加物、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、気泡径の小さい気泡を形成しやすい点で、ひまし油アルキレンオキシド付加物及びシリコーン系界面活性剤のいずれか一方又は両方を含むことが好ましく、熱伝導率をより低く、難燃性をより高くできる点で、シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましい。
充填剤としては、無機フィラーが好ましい。無機フィラーを用いることで、発泡樹脂積層体の熱伝導率を低減し、かつ難燃性のさらなる向上を図れる。
各成分の混合順序は特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂に界面活性剤、必要に応じて添加剤を加え混合し、得られた混合物に、発泡剤、酸触媒を添加し、この組成物をミキサーに供給して攪拌して、発泡性樹脂組成物を調製することができる。
密度は、JIS A 9511:2009に従い測定される。
平均気泡径は、例えば、以下の測定方法により測定される。
まず、発泡層10の厚さ方向のほぼ中央から試験片を切出す。試験片の厚さ方向の切断面を50倍拡大で撮影する。撮影された画像に、長さ9cmの直線を4本引く。この際、ボイド(2mm2以上の空隙)を避けるように直線を引く。各直線が横切った気泡の数(JIS K6400−1:2004に準じて測定したセル数)を直線毎に計数し、直線1本当たりの平均値を求める。気泡の数の平均値で1800μmを除し、求められた値を平均気泡径とする。
発泡層10の平均気泡径は、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等の組み合わせにより調節される。例えば、2種以上のハロゲン化炭化水素を発泡剤として併用することで平均気泡径を小さくすることができる。
独立気泡率は、JIS K 7138:2006に従い測定される。
発泡層10の独立気泡率は、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等の組み合わせにより調節される。
第一の面材12は、ガラス繊維を含む面材である。また、第一の面材12の少なくとも発泡層10と接する部分には、下記化合物(1)が存在している。
化合物(1):リン酸構造及びケイ酸構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造(X)と、NH2及びNHのいずれか一方又は両方を含む構造(Y)とを有する化合物。
化合物(1)の構造(X)は、ガラス繊維表面のSi−O結合と親和性が高く、構造(Y)は、発泡層10との親和性が高い。具体的には、発泡層10表面のホルムアルデヒド−フェノール反応物に由来するPh−CH2−(C=O)−CH2−OHと水素結合やアミド結合を形成しやすい(Phはフェノール骨格のベンゼン環を示す。)。この化合物(1)を第一の面材12の少なくとも発泡層10と接する部分に存在させることで、ガラス繊維と発泡層10との接着性が高まり、第一の面材12が発泡層10から剥離しにくくなる。
ガラス繊維混抄紙、ガラス繊維含有水酸化アルミニウム紙は、ガラス繊維とガラス繊維以外の他の繊維とを含む。他の繊維としては、例えばセルロース繊維等が挙げられる。
ガラス繊維を含む面材の目付は、特に限定されないが、ガラス繊維混抄紙、ガラス繊維含有水酸化アルミニウム紙等の紙類を用いる場合には、50g/m2以上300g/m2以下であることが好ましく、70g/m2以上250g/m2以下であることがより好ましく、80g/m2以上230g/m2以下であることがさらに好ましく、90g/m2以上210g/m2以下であることが特に好ましく、100g/m2以上200g/m2以下であることが最も好ましい。
ガラス繊維不織布又はガラス繊維織布を用いる場合には、ガラス繊維を含む面材の目付は、30g/m2以上600g/m2以下であることが好ましく、30g/m2以上500g/m2以下であることがより好ましく、30g/m2以上400g/m2以下であることがさらに好ましく、30g/m2以上350g/m2以下であることが特に好ましく、30g/m2以上300g/m2以下であることが最も好ましい。
ガラス繊維を含む面材の目付が上記下限値以上であれば、吐出したフェノール樹脂が第一の面材12から染み出すのを防止できる。ガラス繊維を含む面材の目付が上記上限値以下であれば、発泡層10と第一の面材12との接着性を高められる。これにより、第一の面材12が発泡層10から剥がれにくくなり表面をより美麗にできる。加えて、後述する製造方法において、コンベア等の搬送機器の表面の凹凸に追従させやすくなり、フェノール樹脂発泡板1の生産性を高めやすい。
分子内にNH2基又はNH基を有する化合物としては、入手し易さや価格等から、分子内にアミノ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、イミノ基を有する化合物、ヒドラジド基を有する化合物のいずれか1以上が好ましい。
アミド基を含有する化合物としては、二重結合を有するアミドの重合体及びその誘導体、二重結合を有するアミドの共重合体及びその誘導体、尿素及び尿素誘導体、ジシアノジアミド及びジシアノジアミド誘導体、カルバメート誘導体、セミカルバジド及びセミカルバジド誘導体、バルビツル酸等が挙げられる。
イミド基を有する化合物としては、二重結合を有するイミド化合物の重合体及びその誘導体、二重結合を有するイミド化合物の共重合体及びその誘導体、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミド等が挙げられる。
イミノ基を有する化合物としては、二重結合を有するイミン化合物の重合体及びその誘導体、二重結合を有するイミン化合物の共重合体及びその誘導体、イミダゾール及びイミダゾール誘導体、ピラゾール及びピラゾール誘導体、テトラゾール及びテトラゾール誘導体等が挙げられる。
ヒドラジド基を有する化合物としては、ヒドラジン塩化合物、アルキルヒドラジン、フェニルヒドラジン、フェニルヒドラジン誘導体、カルボン酸ヒドラジド(サリチル酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド等)が挙げられる。
構造(Y)を有する化合物としては、前記で挙げた分子内にNH2基又はNH基を有する化合物のなかから適宜選択でき、例えばアンモニア、ヒドラジン、トリアジン、グアニジン誘導体、カルバミン酸誘導体(カルバメート)等が挙げられる。
化合物(1)の具体例としては、リン酸グアニジン、リン酸カルバメート、リン酸アンモニウム等が挙げられる。これらの中でも、入手のしやすさや取扱いのしやすさの点で、リン酸グアニジン、リン酸カルバメートが好ましい。
ガラス繊維を含む面材が、ガラス繊維を含む繊維で構成された面材である場合、通常、少なくとも発泡層10と接する表面に露出している繊維の表面が化合物(1)で覆われている。面材全体において繊維の表面が化合物(1)で覆われていてもよい。
なお、面材の剥離強度を均一にするため、化合物(1)は第一の面材12の面内方向に均一に存在していることが好ましい。
化合物(1)の含有量は、第一の面材12をフェノール樹脂発泡板1から剥離して任意の面積に切り取った後、切り取った面材から水やメタノール等の溶媒で化合物(1)を抽出し、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)や液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)といった分析機器や、キノリン重量法やキノリン容量法といった定量分析方法により定量できる。
剥離強度PMの上限値は特に制限されないが、1000g/50mmを超える場合には第一の面材12の目付が低く、フェノール樹脂の染み出しが発生している可能性が高い。そのため、剥離強度PMは1000g/50mm以下が好ましい。
TD方向における第一の面材12と発泡層10との剥離強度PTは、剥離強度PMと同様である。
0.6≦PM/PT≦1.3 ・・・(2)
PM/PT(剥離強度比)は、0.7以上1.2以下がより好ましく、0.8以上1.1以下がさらに好ましい。PM/PTが上記範囲内であれば、第一の面材12が発泡層10から剥離しにくくなる。PM/PTが1に近づくほど(即ち、剥離強度PMと剥離強度PTとが近似するほど)、第一の面材12を発泡層10から引き離そうとする力の掛かり具合が、MD方向とTD方向とで同等となる。このため、第一の面材12を発泡層10から引き離そうとする力が分散されて、第一の面材12は、発泡層10から剥離しにくくなる。
PM/PTが上記下限値未満又は上限値を超える場合、面材の剥離強度に差があるため、搬送中や施工中において、矩形状のフェノール樹脂発泡板1の角部から対角線に向かい、面材が剥離したときに、剥離強度の低い長手方向又は短手方向への剥離が進行して剥がれ幅が増える。このため、剥離強度の高い方向も剥離しやすくなってしまい、その結果として使用に耐えなくなるおそれがある。
PM、PTの値がそれぞれ400g/50mm以上であり、かつ式(2)を満たすことが好ましい。
第二の面材14は、第一の面材12と同様、ガラス繊維を含む面材である。第二の面材14の種類と、第一の面材12の種類とは、同じでもよいし、異なってもよい。第一の面材12と第二の面材14との種類が異なると、両面材の伸縮量の差によってフェノール樹脂発泡体1が反りやすくなるため、第一の面材12と第二の面材14との種類は同じであることが好ましい。
第二の面材14の少なくとも発泡層10と接する部分には、化合物(1)が存在している。化合物(1)は、第一の面材12における化合物(1)と同様である。第二の面材14における化合物(1)と第一の面材12における化合物(1)とは、同じでもよいし、異なってもよい。
第二の面材14の化合物(1)の好ましい含有量は、第一の面材12の化合物(1)の含有量と同様である。第二の面材14の化合物(1)の含有量と第一の面材12の化合物(1)の含有量とは同じでもよいし、異なってもよい。
第二の面材14と発泡層10との好ましい剥離強度は、第一の面材12と発泡層10との剥離強度と同様である。第二の面材14と発泡層10との剥離強度と、第一の面材12と発泡層10との剥離強度とは、同じでもよいし、異なってもよい。
第二の面材14における好ましいPM/PTは、第一の面材12におけるPM/PTと同様である。第二の面材14におけるPM/PTと、第一の面材12におけるPM/PTとは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
フェノール樹脂発泡板1の制限酸素指数(Limited Oxygen Index;以下「LOI」ともいう。)は、28容量%以上が好ましく、30容量%以上がより好ましく、32容量%以上がさらに好ましい。LOIが上記下限値以上であれば、フェノール樹脂発泡板1の難燃性のさらなる向上を図れる。
LOIは、JIS K 7201−2:2007に従い測定される。
フェノール樹脂発泡板1のLOIは、発泡層10のLOI、面材におけるガラス繊維の含有量等により調節される。例えば面材におけるガラス繊維の含有量を増やすことで、LOIを高くすることができる。発泡層10のLOIは、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類、難燃剤の種類又は組成とその量等の組み合わせにより調節される。例えば、発泡剤中の可燃性の発泡剤の含有量が少ない(ハロゲン化炭化水素の含有量が多い)ほど、発泡層10のLOIが高い。また、界面活性剤がシリコーン系界面活性剤、特に末端が−OHであるポリエーテル鎖を有するものであれば、他の界面活性剤を用いる場合に比べて、発泡層10のLOIが高い傾向がある。さらに、発泡層10にリン系難燃剤等を含有させることで発泡層10のLOIを高くすることができる。
フェノール樹脂発泡板1の熱伝導率は、発泡層10における平均気泡径、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類等の組み合わせにより調節される。例えば、平均気泡径が小さいほど、フェノール樹脂発泡板1の熱伝導率が低い傾向となる。界面活性剤がシリコーン系界面活性剤、特に末端が−OHであるポリエーテル鎖を有するものである場合、他の界面活性剤を用いる場合に比べて、熱伝導率が低い傾向がある。
熱伝導率は、23℃における値であり、JIS A 1412−2:1999に従い測定される。
本実施形態のフェノール樹脂発泡板1は、従来公知のフェノール樹脂発泡板の製造方法に準じて製造される。
例えば、フェノール樹脂発泡板1の製造方法は、以下の工程(i)〜(iii)を有する。第一の面材12及び第二の面材14に相当するものが市販品等として入手可能である場合には、工程(i)及び工程(ii)を省略してもよい。
(i)必要に応じて、ガラス繊維を含む面材の少なくとも発泡性樹脂組成物と接する部分に化合物(1)を存在させて第一の面材12を作製する工程。
(ii)必要に応じて、ガラス繊維を含む面材の少なくとも発泡性樹脂組成物と接する部分に化合物(1)を存在させて第二の面材14を作製する工程。
(iii)発泡性樹脂組成物を、第一の面材12と第二の面材14との間に配置し、発泡し、硬化する工程。
第一の面材12の作製方法としては、例えば、ガラス繊維を含む面材の少なくとも発泡層10側の表面に、化合物(1)の溶液を塗布し、乾燥する方法、ガラス繊維を含む面材を、化合物(1)の溶液に浸漬し、乾燥する方法等が挙げられる。
化合物(1)の溶液は、化合物(1)及び溶媒以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分としては、例えば尿素等のホルムアルデヒドキャッチャー剤、ラテックス、ポリビニルアルコールの水溶液等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。ラテックスとしては、例えば、天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックス、アクリル系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス、塩化ビニリデンラテックス等が挙げられる。
化合物(1)の溶液は、通常一般的に用いられている方法で塗布することができる。例えば、はけ塗布、ローラーブラシ塗布、スプレー塗布、ロール塗布、含浸塗布、カーテンフロー塗布等の通常一般的に用いられている方法である。塗工液の粘度、各成分の濃度や塗布量、塗工速度により適正な塗布方式を選択して塗布し、その後、加熱乾燥工程で水分を蒸発させ、面材に付着させる。等が挙げられる。
第二の面材14の作製方法は、第一の面材12の作製方法と同様である。
工程(iii)は、公知の発泡成形法を利用して行うことができる。以下に一例を挙げる。
吐出装置は、フェノール樹脂等の原料を混合する混合部と、混合された原料(発泡性フェノール樹脂組成物)を吐出するための、MD方向(流れ方向)と直交する方向に沿って配置された複数のノズルとを備える。
発泡成形装置は、フレーム部および加熱手段を備える。フレーム部は、フェノール樹脂発泡板の断面形状に対応した空間が形成されるように上下左右に配置されたコンベア(下部コンベア、上部コンベア、左側コンベア、右側コンベア)を備える。下部コンベアおよび上部コンベアによって、上下方向の発泡が規制され、左側コンベアおよび右側コンベアによって、左右方向の発泡が規制される。加熱手段によって、フレーム部を通過する発泡性フェノール樹脂組成物が加熱され、発泡、硬化される。かかる発泡成形装置としては、例えば、特開2000−218635号公報に記載のものが挙げられる。
フェノール樹脂発泡板1において、第一の面材12と発泡層10とは、接着層を介さずに、発泡性樹脂組成物が第一の面材12表面で熱硬化する際の固着力によって貼り合わせられている。同様に、第二の面材14と発泡層10とは、接着層を介さずに、発泡性樹脂組成物が第二の面材14表面で熱硬化する際の固着力によって貼り合わせられている。
この例において、発泡層10には、MD方向に延び、かつ厚さ方向にわたるウェルドラインが形成される。ウェルドラインは、複数のノズルから吐出された発泡性樹脂組成物同士のつなぎ目である。
上述の実施形態では、発泡層と第一の面材と第二の面材との3層構造とされているが、本発明はこれに限定されない。
例えば、第一の面材及び第二の面材のいずれか一方を備えなくてもよい。
第一の面材上に、さらに他の層を備えてもよい。他の層としては、化粧層、防水フィルム層等が挙げられる。
第二の面材上に、さらに他の層を備えてもよい。第二の面材上の他の層は、第一の面材上の他の層と同様である。
後述の実施例及び比較例で用いた測定・評価方法を以下に示す。
発泡層の密度は、JIS A 9511:2009に従い測定した。
発泡層の平均気泡径は、以下の方法で求めた。
フェノール樹脂発泡体の厚さ方向のほぼ中央から試験片を切出した。試験片の厚さ方向の切断面を50倍拡大で撮影した。撮影された画像に、長さ9cmの直線を4本引いた。この際、ボイド(2mm2以上の空隙)を避けるように直線を引いた。各直線が横切った気泡の数(JIS K6400−1:2004に準じて測定したセル数)を直線毎に計数し、直線1本当たりの平均値を求めた。気泡の数の平均値で1800μmを除し、求められた値を平均気泡径とした。
発泡層の独立気泡率は、JIS K 7138:2006に従い測定した。
フェノール樹脂発泡板の熱伝導率は、JIS A 1412−2:1999に従い測定した。測定は、同じ試料について2回実施した。
フェノール樹脂発泡板のLOIは、JIS K 7201−2:2007に従い測定した。
図2〜3を参照して、面材剥離強度の測定方法を説明する。
図2に示すように、各例のフェノール樹脂発泡板のY方向(TD方向)中央部の2箇所から、X方向(MD方向)に50mm、Y方向に120mmの矩形に切り出し、2つの試験片STを得た。
一方の試験片STの一方の面材を剥離して、切片STaを得た。この切片STaを厚さ方向に切断して、片面に面材(以下、面材(a)ともいう。)を備え、幅50mm、長さ120mm、厚さ25mmの評価用試料Taとした。
次に、厚さ25mmの評価用試料Taの長さ方向の一端から20mmの位置で、面材を有さない面から厚み方向に深さ20mmの切り込みを入れた。その切込み位置にて、発泡層を厚み方向に分割した(図3中の符号100)。この際、面材(a)が発泡層から剥がれないようにした。
評価用試料Taにおける発泡層の長さが長い部位102をクランプ107で保持した。この際、部位102が水平方向に対し45°の角度になるように保持した。発泡層の長さが短い部位103をクランプ104で保持した。クランプ104の下方に、金属ワイヤ105で容器106を吊り下げた。
その後、ポンプ(図示せず)を用いて、100g/分の投入速度で、容器106内に水を連続的に投入した。面材(a)101が、評価用試料Taの長さ方向に切り込み位置から50mm剥離した時点で、容器106への水の投入を停止した。容器106内の水の質量を測定した。同様の操作を2回行い、クランプ104、金属ワイヤ105、容器106及び容器106内の水の質量の合計の平均値を面材剥離強度(a)とした。
更に別途、前記と同様にして2つの試験片STを作製し、他方の面材(=面材(a))を剥離して、切片STbを得た。この切片STbを厚さ方向に切断して、片面に面材(以下、面材(b)ともいう。)を備え、幅50mm、長さ120mm、厚さ25mmの評価用試料Tbとした。評価用試料Tbについて、評価用試料Taと同様にして水の質量の合計の平均値を求め、その値を面材剥離強度(b)とした。
面材剥離強度(a)及び面材剥離強度(b)のうち、低い方の値を、TD方向の面材剥離強度PT(g/50mm)とした。
求めたPM及びPTから、剥離強度比(PM/PT)を算出した。
下記の手順で面材aを作製した。
下記原反(1)からガラス繊維不織布を巻き出し、下記塗工液に30秒間浸漬した。このガラス繊維不織布を塗工液中から取り出し、熱風乾燥させたあとロール状に巻き取った。
原反(1):ガラス繊維不織布(ガラス繊維含有量100質量%、目付70g/m2)のロール。
塗工液:リン酸グアジニン誘導体47質量%水溶液(大京化学社、商品名「ビコール No.415」)を精製水で、塗工液100質量部中にリン酸グアニジン誘導体が0.2質量部となるように希釈した溶液。
得られた混合物108質量部に、表1に示す発泡剤15質量部を加え、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸との混合物16質量部を加え、攪拌し、混合して発泡性樹脂組成物を調製した。
この発泡性フェノール樹脂組成物を、TD方向に等間隔に16本配置されたノズルから、連続的に走行させている第一の面材上に吐出させ、その上に第二の面材を重ねて、第一、第二の面材で挟み込むようにスラット型ダブルコンベアで厚さ45mmとなるように抑え、これを70℃で300秒間加熱して発泡成形した。第一の面材、第二の面材はそれぞれ、面材aを使用した。
発泡成形の後、80℃で5時間乾燥し、フェノール樹脂発泡板を得た。得られたフェノール樹脂発泡板を幅910mm、長さ1820mmに切断し、厚さ45mmのフェノール樹脂発泡板を作製した。
第一の面材、第二の面材をそれぞれ前記原反(1)に変更した以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。次いで、該フェノール樹脂発泡板の第一の面材、第二の面材それぞれに対し、面材aの作製で使用した塗工液をスプレーで塗布して乾燥し、これを2回繰り返して、実施例2のフェノール樹脂発泡板を得た。
以下、実施例2のフェノール樹脂発泡板の面材を面材bともいう。
第一の面材、第二の面材をそれぞれ、表1に示す面材に変更した以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡板を作製した。
発泡剤A・・・HCFO−1233zd:シクロペンタン=80:20(質量比)の混合物。
発泡剤B・・・HCFO−1233zd:シクロペンタン=60:40(質量比)の混合物。
発泡剤C・・・HCFO−1233zd:イソプロピルクロライド=60:40(質量比)の混合物。
発泡剤D・・・HCFO−1233zd:イソプロピルクロライド=80:20(質量比)の混合物。
面材c:前記原反(1)を下記原反(2)に変更した以外は面材aと同様の手順で作製した。
原反(2):ガラス繊維混抄紙(ガラス繊維含有量35質量%、目付100g/m2)のロール。
原反(3):ガラス繊維混抄紙(ガラス繊維含有量65質量%、目付140g/m2)のロール。
面材f:塗工液として、リン酸グアジニン誘導体47質量%水溶液をリン酸カルバメート40質量%水溶液(大京化学社、商品名「ビコール TP」)に変更し、塗工液100質量部中のリン酸カルバメートが0.2質量部となるように精製水で希釈した溶液を用いたこと以外は面材aと同様の手順で作製した。
面材g:塗工液100質量部中にリン酸カルバメートが0.8質量部となるようにした以外は面材fと同様の手順で作製した。
面材h:塗工液として、リン酸グアニジン誘導体誘導体47質量%水溶液をケイ酸グアニジンに変更し、塗工液100質量部中のケイ酸グアニジンが0.2質量部となるように精製水で希釈した溶液を用いた以外は面材aと同様の手順で作製した。
面材j:塗工液100質量部中にリン酸グアニジン誘導体が0.01質量部となるようにした以外は面材aと同様の手順で作製した。
面材k:塗工液100質量部中にリン酸グアニジン誘導体が20質量部となるようにした以外は面材aと同様の手順で作製した。
Claims (5)
- フェノール樹脂の発泡層と、前記発泡層の少なくとも一方の表面に直接積層した面材とを備えるフェノール樹脂発泡板であって、
前記面材が、ガラス繊維を含む面材であり、
前記面材の少なくとも前記発泡層と接する部分に、下記化合物(1)が存在しており、
前記面材における前記化合物(1)の含有量が1g/m2以上40g/m2以下であることを特徴とするフェノール樹脂発泡板。
化合物(1):リン酸構造及びケイ酸構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造(X)と、NH2及びNHのいずれか一方又は両方を含む構造(Y)とを有する化合物。 - MD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PMと、TD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PTとが、下記(2)式を満たす、請求項1に記載のフェノール樹脂発泡板。
0.6≦PM/PT≦1.3 ・・・(2) - 制限酸素指数が30容量%以上である、請求項1又は2に記載のフェノール樹脂発泡板。
- 前記面材の総質量に対し、前記ガラス繊維の含有量が10質量%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフェノール樹脂発泡板。
- 前記ガラス繊維を含む面材が、ガラス繊維不織布、ガラス繊維織布又はガラス繊維含有水酸化アルミニウム紙である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフェノール樹脂発泡板。
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