JP7078388B2 - フェノール樹脂発泡板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
フェノール樹脂の発泡層は、物理的衝撃に対して、比較的脆い。このため、フェノール樹脂の発泡層の片面又は両面に面材を設けることで、フェノール樹脂の発泡層の保護を図っている。
例えば、特定の密度であり、特定の独立気泡率であり、かつ特定の平均気泡径であるフェノール樹脂の発泡層と、その両面に配された面材とを備え、面材は紙を含有し、面材剥離強度が特定の範囲であるフェノール樹脂発泡板が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、例えば、フェノール樹脂の発泡層の両面あるいは片面に、特定の繊維径かつ特定の目付の合成繊維不織布が貼り付けられたフェノール樹脂発泡板が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、従来の技術は、長手方向の面材の剥離強度のみを改善したものであり、面材の剥離を十分に防止できるとは言えなかった。また、従来の技術では、面材の種類が著しく制限される。
そこで、本発明は、面材がより剥離しにくいフェノール樹脂発泡板を目的とする。
本発明者は、かかる知見に基づき鋭意検討した結果、MD方向における面材の剥離強度と、TD方向における面材の剥離強度との差を小さくすることで、面材が剥離しにくくなることを見出し、本発明に至った。
[1]フェノール樹脂の発泡層と、前記発泡層の少なくとも一方の面に設けられた面材とが備えられ、MD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PMと、TD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PTとは、下記(1)式を満たす、フェノール樹脂発泡板。
PM/PT=0.6以上1.3以下 ・・・(1)
[2]EN1604に準じて測定される70℃におけるMD方向の寸法変化の差ΔDMと、EN1604に準じて測定される70℃におけるTD方向の寸法変化の際ΔDTとは、下記(2)式を満たす、[1]に記載のフェノール樹脂発泡板。
ΔDM/ΔDT=0.6以上1.3以下 ・・・(2)
[3]前記発泡層に形成された気泡は、MD方向の長さRMと、TD方向の長さRTとが下記(3)式の関係を満たす、[1]又は[2]に記載のフェノール樹脂発泡板。
RM/RT=0.7以上1.3以下 ・・・(3)
[4][1]~[3]のいずれかに記載のフェノール樹脂発泡板の製造方法であって、
任意の速度で走行する前記面材上に、フェノール樹脂と発泡剤と架橋剤とを含有する発泡性樹脂組成物を吐出する第一の工程と、
前記面材上に吐出された前記発泡性樹脂組成物を加熱して、発泡し硬化する第二の工程と、
を有する、フェノール樹脂発泡板の製造方法。
[5]前記第一の工程は、TD方向に並ぶ2以上のノズルから前記発泡性樹脂組成物を前記面材上に吐出し、
前記ノズルの軸線と、前記面材とのなす角度は、60℃以上90°未満である、[4]に記載のフェノール樹脂発泡板の製造方法。
以下、図面を参照して、フェノール樹脂発泡板について説明する。
フェノール樹脂発泡板1は、X方向を長手、Y方向を短手とする、平面視矩形である。
実施形態において、X方向はMD(Machine Direction)方向、Y方向はTD(Transverse Direction)方向である。この場合、MD方向から見た断面には、MD方向と平行に伸び、かつ厚さ方向にわたるウェルドラインが視認される。ウェルドラインは、後述する製造方法において、各ノズルから吐出された発泡性樹脂組成物同士が合流した痕跡である。ウェルドラインは、第一の面材12及び第二の面材14に対して概ね垂直に伸び、その周囲に比べて密度が高く、平均気泡径が小さく、色調が濃い。
なお、他の実施形態として、X方向(長手)がTD方向、Y方向(短手)がMD方向となるように、フェノール樹脂発泡板1が製造されてもよい。この場合、ウェルドラインはY方向(短手方向)に延びて形成されている。
図2に示すように、発泡層10には、2以上の気泡20が形成されている。気泡20の内、少なくとも一部は独立気泡である。なお、図2は、図1のフェノール樹脂発泡板1を仮想線Qで厚さ方向に二等分し、その断面を平面視で観察した際の部分断面図である。
レゾール型フェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂である。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシノール及びこれらの変性物等が挙げられる。
アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等が挙げられる。アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、脂肪族アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)等が挙げられる。
ただしフェノール化合物、アルデヒド、アルカリ触媒はそれぞれ上記のものに限定されるものではない。フェノール樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合されて用いられてもよい。
フェノール化合物とアルデヒドとの使用割合は特に限定されない。好ましくは、フェノール化合物:アルデヒドのモル比で、1:1~1:3であり、より好ましくは1:1.3~1:2.5である。
炭化水素としては、炭素数が4以上6以下の環状分子構造又は炭素数4以上6以下の鎖状分子構造を有するものが好ましく、例えば、イソブタン、ノルマルブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン等が挙げられる。
これらの炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。これらの炭化水素は、低温域(例えば、-80℃程度の冷凍庫用断熱材)から高温域(例えば200℃程度の加熱体用断熱材)までの広い温度範囲で優れた断熱性能を確保でき、比較的安価であり経済的にも有利である。
これらのハロゲン化炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
酸触媒としては、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸、硫酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤としては、特に限定されず、整泡剤等として公知のものを使用できる。例えば、ひまし油アルキレンオキシド付加物、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、気泡径の小さい気泡を形成しやすい点で、ひまし油アルキレンオキシド付加物及びシリコーン系界面活性剤のいずれか一方または両方を含むことが好ましく、熱伝導率をより低く、難燃性をより高くできる点で、シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましい。
充填剤としては、無機フィラーが好ましい。無機フィラーを用いることで、発泡樹脂積層体の熱伝導率を低減し、かつ難燃性のさらなる向上を図れる。
発泡層10の密度は、JIS A 9511:2009に準じて測定される値である。
平均気泡径は、例えば、以下の測定方法により測定される。
まず、発泡層10の厚さ方向のほぼ中央から試験片を切出す。試験片の厚さ方向の切断面を50倍拡大で撮影する。撮影された画像に、長さ9cmの直線を4本引く。この際、ボイド(2mm2以上の空隙)を避けるように直線を引く。各直線が横切った気泡の数(JIS K6400-1:2004に準じて測定したセル数)を直線毎に計数し、直線1本当たりの平均値を求める。気泡の数の平均値で1800μmを除し、求められた値を平均気泡径とする。
発泡層10の平均気泡径は、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等の組み合わせにより調節される。
独立気泡率は、JIS K 7138:2006に準拠して測定される。
発泡層10の独立気泡率は、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等の組み合わせにより調節される。
RM/RT=0.7以上1.3以下 ・・・(3)
RM/RTは、0.8以上1.2以下がより好ましく、0.9以上1.1以下がさらに好ましい。RM/RTが上記範囲内であれば、発泡層10と第一の面材12又は第二の面材14との剥離強度のさらなる向上が図れる。
LOIは、JIS K 7201-2:2007に準じて測定される値である。
発泡層10のLOIは、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類、難燃剤の種類又は組成とその量等の組み合わせにより調節される。例えば、発泡剤中の可燃性の発泡剤の含有量が少ない(ハロゲン化炭化水素の含有量が多い)ほど、LOIが高い。また、界面活性剤がシリコーン系界面活性剤、特に末端が-OHであるポリエーテル鎖を有するものであれば、他の界面活性剤を用いる場合に比べて、LOIが高い傾向がある。さらに、リン系難燃剤等を添加することでLOIを高くすることができる。
なお、紙を含む面材は、紙のセルロース繊維とフェノール樹脂とが接合しやすいため、面材と発泡層10との接着強度を高められる。ただし、本実施形態のフェノール樹脂発泡板1は、面材として合成繊維不織布やガラス繊維不織布等、セルロース繊維を含まないものであっても、発泡層10と面材との剥離強度を十分に高められる。
第一の面材12の目付は、特に限定されないが、合成繊維不織布を用いる場合には、は15g/m2以上200g/m2以下であることが好ましく、15g/m2以上150g/m2以下であることがより好ましく、15g/m2以上100g/m2以下であることがさらに好ましく、15g/m2以上80g/m2以下であることが特に好ましく、15g/m2以上60g/m2以下であることが最も好ましい。
ガラス繊維混抄紙を用いる場合には、目付は30g/m2以上300g/m2以下であることが好ましく、50g/m2以上250g/m2以下であることがより好ましく、60g/m2以上200g/m2以下であることがさらに好ましく、70g/m2以上150g/m2以下であることが特に好ましい。
ガラス繊維不織布を用いる場合には、目付は15g/m2以上300g/m2以下であることが好ましく、20g/m2以上200g/m2以下であることがより好ましく、30g/m2以上150g/m2以下であることがさらに好ましい。
目付が上記下限値以上であれば、発泡性樹脂組成物が第一の面材12の表面に染み出しにくい。目付が上記上限値以下であれば、発泡層10と第一の面材12との接着性を高められる。これにより、第一の面材12が発泡層10から剥がれにくくなり表面をより美麗にできる。加えて、後述する製造方法において、コンベア等の搬送機器の表面の凹凸に追従させやすくなり、フェノール樹脂発泡板1の生産性を高めやすい。
なお、ガラス繊維混抄紙の残りの主成分はセルロース繊維であり、その他に結合剤、無機充填剤、着色剤等を含んでいてもよい。
エンボスのパターン(柄)としては、特に限定されないが、例えば、マイナス柄、ポイント柄、織り目柄等が挙げられる。エンボスによる凹凸形状が大きく、発泡層10との接着性をより高められる点から織り目柄又はマイナス柄が好ましい。
合成繊維不織布にエンボス加工を施すには、例えば、公知のスパンボンド法で、紡口直下の冷却条件により発現させた捲縮長繊維ウェブを熱エンボスロールで部分熱圧着させる方法が挙げられる。また、例えば、潜在捲縮長繊維ウェブを熱処理により捲縮させて熱エンボスロールで部分熱圧着させる方法が挙げられる。
なお、熱圧着固定部分は一般的に目視又は光学顕微鏡等により簡単に見つけることができる。個々の熱圧着固定部分の面積は、以下の方法により測定することができる。
不織布の表面を光学顕微鏡で10倍に拡大した画像を得る。画像処理ソフトウェア(商品名「Photoshop(登録商標)」、アドビシステムズインコーポレーテッド社製)を用いて、不織布表面の縦100mm、横100mmの正方形(単位面積)に含まれる、熱圧着固定部分の合計面積を測定する。
熱圧着固定部分密度(個/cm2)=[熱圧着固定部分の数(個)]/」[面材の表面積(cm2)]・・・(s)
熱圧着固定部分密度が上記下限値以上であれば、発泡性樹脂組成物の滲み出しを良好に抑制できる。熱圧着固定部分密度が上記上限値以下であれば、発泡層10と面材との接着性をより向上させることができ、吸水量を低くすることができる。また、熱圧着固定部分密度が上記上限値以下であれば、通気度を高くでき、養生時間を短縮できる。また、より長期にわたって低い熱伝導率を維持できる。
起毛度は以下の方法により測定することができる。
起毛度は、第一の面材12における発泡層10と接していない面で、かつ、印刷による模様が形成されていない箇所について測定する。
まず、縦200mm×200mmのフェノール樹脂発泡板1から第一の面材12を剥がし、200mm×200mmの測定片とする。図7(a)に示すように、測定片の起毛した面において、複数個の熱融着部を通る方向に延びる折り返し線Bにて山折りして測定サンプル204を形成する。次に、この測定サンプル204を、A4サイズの黒い台紙211aの上に載せる。図7(b)に示すように、測定サンプル204の上に、縦1cm×横1cmの穴207をあけたA4サイズの黒い台紙211bを載せる。このとき、図7(b)に示すように、測定サンプル204の折り目205が、上側の黒い台紙211bの穴207から見えるように、黒い台紙211bを配置する。両台紙には、例えば、富士共和製紙株式会社の「ケンラン(黒)連量265g」を用いる。その後、上側の台紙211bの穴207の両側それぞれから、折り目205に沿って外方に5cm離れた位置に、50gのおもり212をそれぞれ載せ、測定サンプル204を折りたたまれた状態とする。次に、図7(c)に示すように、マイクロスコープ(KEYENCE社製VHX-900)を用いて、30倍の倍率で、黒い台紙211bの穴207内を観察する。測定サンプル204の折り目205から0.2mm上方に平行移動した位置に形成される仮想線208よりも上方に突出した繊維の数を計測し、これを1cm当たりの起毛した繊維の本数とする。9箇所計測し、平均値(少数第二位を四捨五入)を起毛している繊維の量を起毛度とする。
起毛度が1本/cm未満である場合、熱圧着固定部分密度が高すぎるか、熱圧着固定部分の面積が大きすぎることを意味し、第一の面材12と発泡層10との接着性が低下し、面材が剥離しやすくなる。
一方、起毛度が60本/cmを超える場合、熱圧着固定部分密度が著しく低いか、隣接する熱圧着固定部分同士を連結する繊維が少ないことを意味し、面材自体の引張強度等の機械的強度が低下する。また、面材を剥離した後に発泡層10の表面に残留する起毛繊維量が増大するため、発泡層10を粉砕し発泡性樹脂組成物と混合してリサイクルする際、混入した起毛繊維によって粘度を調整しにくくなる。このため、粉砕したフェノール樹脂発泡体粉を含む発泡層10の独立気泡率が低下するおそれがある。
発泡層10の表面に残留する起毛繊維量は、例えば50mm×50mmの範囲で面材を剥離した発泡層10表面を顕微鏡で観察する方法等で測定できる。
また、第一の面材12は、発泡成形された発泡層10に接着剤で貼着されてもよい。
TD方向における第一の面材12と発泡層10との剥離強度PTは、剥離強度PMと同様である。
PM/PT=0.6以上1.3以下 ・・・(1)
PM/PT(剥離強度比)は、0.7以上1.2以下がより好ましく、0.8以上1.1以下がさらに好ましい。PM/PTが上記範囲内であれば、第一の面材12が発泡層10から剥離しにくくなる。PM/PTが1に近づくほど(即ち、剥離強度PMと剥離強度PTとが近似するほど)、第一の面材12を発泡層10から引き離そうとする力の掛かり具合が、MD方向とTD方向とで同等となる。このため、第一の面材12を発泡層10から引き離そうとする力が分散されて、第一の面材12は、発泡層10から剥離しにくくなる。
PM/PTが上記下限値未満又は上限値を超える場合、面材の剥離強度に差があるため、搬送中や施工中において、矩形状のフェノール樹脂発泡板1の角部から対角線に向かい、面材が剥離したときに、剥離強度の低い長手方向又は短手方向への剥離が進行して剥がれ幅が増える。このため、剥離強度の高い方向も剥離しやすくなってしまい、その結果として使用に耐えない。
第二の面材14の厚さは、第一の面材12の厚さと同様である。第二の面材14の厚さと第一の面材12の厚さとは、同じでもよいし、異なってもよい。ただし、第一の面材12と第二の面材14との厚さが異なると、両面材の伸縮量の差によってフェノール樹脂発泡体1が反りやすくなる。このため、第一の面材12と第二の面材14との厚さは同じであることが好ましい。
第二の面材14の目付は、第一の面材12の目付と同様である。第二の面材14の目付と第一の面材12の目付とは、同じでもよいし、異なってもよい。ただし、第一の面材12と第二の面材14との目付が異なると、両面材の伸縮量の差によってフェノール樹脂発泡体1が反りやすくなる。このため、第一の面材12と第二の面材14との目付は同じであることが好ましい。
第二の面材14と発泡層10との剥離強度は、第一の面材12と発泡層10との剥離強度と同様である。第二の面材14と発泡層10との剥離強度と、第一の面材12と発泡層10との剥離強度とは、同じでもよいし、異なってもよい。
第二の面材14におけるPM/PTは、第一の面材12におけるPM/PTと同様である。第二の面材14におけるPM/PTと、第一の面材12におけるPM/PTとは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
ΔDM/ΔDT=0.6以上1.3以下 ・・・(2)
ΔDM/ΔDT(寸法変化比)は、0.7以上1.2以下がより好ましく、0.8以上1.1以下がさらに好ましい。ΔDM/ΔDTが範囲内であれば、MD方向とTD方向との寸法変化の差が小さくなり、均一に収縮するため、面材が発泡層10からより剥離しにくくなる。ΔDM/ΔDTが上記下限値未満、又は上限値を超える場合、収縮時にTD方向とMD方向の収縮量に差があるため、第一の面材12と発泡層10との接合部、又は第二の面材14と発泡層10との接合部に不均一に力が掛かり、TD方向とMD方向の剥離強度に差が生じやすい。
フェノール樹脂発泡板1の熱伝導率は、発泡層10における平均気泡径、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類等の組み合わせにより調節される。例えば、平均気泡径が小さいほど、フェノール樹脂発泡板1の熱伝導率が低い傾向となる。界面活性剤がシリコーン系界面活性剤、特に末端が-OHであるポリエーテル鎖を有するものである場合、他の界面活性剤を用いる場合に比べて、熱伝導率が低い傾向がある。
熱伝導率は、JIS A 1412-2に準拠して測定される値である。
例えば、フェノール樹脂発泡板1の製造方法は、発泡性樹脂組成物を発泡し、硬化する工程を有する。
以下、吐出装置と、吐出装置の下流に位置する発泡成形装置とを備える製造システムを用いた、フェノール樹脂発泡の製造方法を例に挙げて説明する。
吐出装置60は、フェノール樹脂等の原料を混合する混合部62と、混合された原料(発泡性樹脂組成物)を吐出するための複数のノズル64とを備える。2以上のノズル64は、発泡性樹脂組成物80の流れ方向と直交する方向に並んでいる。なお、スリットダイのような単一の吐出口であって、TD方向に幅広のノズルは、ノズル内で均一な流速又は圧力とならず、中央部と端部で吐出量が異なるため好ましくない。
加熱手段としては、例えば、フレーム部71を囲む加熱炉や、下部コンベア72又は上部コンベア74の無端ベルトに接して設けられたヒータ等が挙げられる。
なお、発泡成形装置70としては、無端ベルトを有するコンベアに代えて、特開2000-218635号公報に記載のスラットコンベアを有する装置でもよい。
ノズル角度を上記範囲にすると、面材が発泡層10から剥離しにくくなる理由について、図4を参照して説明する。
図4は、製造システム40の一部を模式的に表した部分平面図である。図4は、ノズル64から発泡性樹脂組成物が吐出された状態を模式的に示す。なお、説明の便宜上、混合部62等の図示を省略した。
図4に示す通り、隣り合うノズル64同士は、任意の間隔を空けて並べられている。ノズル角度θを60°未満にする(ノズル64を面材に対して寝かせる)と、走行する第一の面材12の速度に合わせて発泡性樹脂組成物80が吐出される。第一の面材12上に吐出された発泡性樹脂組成物80は、W1方向に進行するに従い、第一の面材12の幅方向(即ち、発泡層10のTD方向)に広がりつつ、発泡剤が徐々に発泡する。この際、発泡性樹脂組成物80中の発泡剤が発泡して生じた気泡20aは、TD方向に長くなりつつ膨らむ。特に、ハロゲン化炭化水素を発泡剤として用いた場合には、発泡性樹脂組成物80の粘度が低くなり、吐出された発泡性樹脂組成物80がTD方向に広がりやすい。
また、ノズル角度θを90°以上にする(ノズル64を面材に対して立たせる)と、第一の面材12の搬送方向と反対外にも樹脂が吐出され、ノズルの吐出口周囲に硬化した樹脂が堆積してノズルが詰まりやすい。
これに対し、ノズル角度θを60°以上90°未満とすると、第一の面材12上に吐出された発泡性樹脂組成物80は、ノズル64からの吐出圧力によって第一の面材12に押し付けられて、MD方向及びTD方向に広がる。このため、吐出された発泡性樹脂組成物80で生じた気泡20aは、MD方向及びTD方向に延びる。
このため、形成される気泡20の気泡アスペクト比(RM/RT)が1に近づき、剥離強度比(PM/PT)がより1に近づきやすくなる。
なお、ノズル64の吐出口と、樹脂が吐出される第一の面材12とは接近しているほど、発泡性樹脂組成物をTD方向に広げやすいものの、吐出口が詰まりやすくなる。吐出口と第一の面材12とが離れすぎていると、発泡性樹脂組成物をTD方向に広げにくくなるものの、第一の面材12の走行速度や樹脂の粘度によって調整可能である。
また、下部コンベア72及び上部コンベア74自体を走行方向に向かって登るように傾けてもよい。コンベアの傾斜角度と、ノズル角度θとを組み合わせることで、発泡性樹脂組成物を広げやすくなる。
次いで、フェノール樹脂発泡板1を切断装置で任意の長さに切断する。
フェノール樹脂発泡板1の形状は、特に限定されないが、例えば、MD方向を長手とし、TD方向を短手とする平面視矩形の板が挙げられる。
また、フェノール樹脂発泡板1の大きさは、特に限定されないが、長さ500mm以上2000mm以下×幅500mm以上1000mm以下×厚さ5mm以上200mm以下のものが挙げられる。
上述の実施形態では、発泡層と第一の面材と第二の面材との3層構造とされているが、本発明はこれに限定されない。
例えば、第一の面材上に、さらに他の層を備えてもよい。他の層としては、化粧層、防水フィルム層、石膏ボード、アルミニウム箔等が挙げられる。これらの層は、第一の面材と接着層を介して接合される。本発明は、第一の面材と発泡層とが強固に接合しているため、上記の他の層は、第一の面材を介して発泡層と強固に接合できる。
また、例えば、第二の面材上に、さらに他の層を備えてもよい。第二の面材上の他の層は、第一の面材上の他の層と同様である。
表1に記載の組成に従い、液状レゾール型フェノール樹脂(旭有機材工業株式会社製、商品名:PF-339)、界面活性剤(ひまし油エチレンオキサイド付加物(付加モル数30))、ホルムアルデヒドキャッチャー剤(尿素)を加え、混合し、20℃で8時間放置した。この混合物に、発泡剤と、酸触媒(パラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸との混合物)とを加え、攪拌し、混合して発泡性樹脂組成物を調製した。
図3に示す製造システム40と同様の製造システムを用い、発泡層の両面に面材を備えるフェノール樹脂発泡板を得た。フェノール樹脂発泡板は、長さ(MD方向)1820mm×幅TD方向(910mm)×厚さ45mmの平面視矩形の板体であった。
このフェノール樹脂発泡板の製造に用いた製造システムは、18本のノズルがTD方向に等間隔で配置された吐出装置を備える。各例のフェノール樹脂発泡板を製造した際のノズル角度θは、表1記載の通りである。
18本のノズルから発泡性樹脂組成物を表1記載の面材上に吐出し、吐出された発泡性樹脂組成物の上に新たに面材を載せた。上下の面材の距離を45mmとし、70℃で300秒間加熱して、フェノール樹脂発砲板を得た。
得られたフェノール樹脂発泡板を幅910mm、長さ1820mmに切断した。次いで、切断されたフェノール樹脂発泡板を85℃で5時間放置して、各例のフェノール発泡板とした。
各例のフェノール樹脂発泡板について、発泡層の密度、平均気泡径、独立気泡率、熱伝導率、気泡のアスペクト比、面材の剥離強度、寸法変化の差を測定し、その結果を表中に示す。
表中の発泡剤の組成は、以下の通りである。
・発泡剤A・・・・HCFO-1233zd:シクロペンタン=80:20(質量比)の混合物。
・発泡剤B・・・・HCFO-1233zd:イソプロピルクロライド=80:20(質量比)の混合物。
・発泡剤C・・・・HFO-1336mzz:シクロペンタン=60:40(質量比)の混合物。
・発泡剤D・・・・HFO-1336mzz:イソプロピルクロライド=60:40(質量比)の混合物。
・発泡剤E・・・・HCFO-1233zd:シクロペンタン=60:40(質量比)の混合物。
・発泡剤F・・・・HCFO-1233zd:イソペンタン=60:40(質量比)の混合物。
・発泡剤G・・・・HCFO-1233zd:シクロペンタン=40:60(質量比)の混合物。
・発泡剤H・・・・HCFO-1233zd:イソプロピルクロライド=40:60(質量比)の混合物。
・発泡剤I・・・・シクロペンタン。
表中の面材の組成は、以下の通りである。
・面材I・・・・ガラス繊維不織布(目付:70g/m2、ガラス繊維含有量:50質量%)。
・面材II・・・ポリエステル不織布(目付:20g/m2、熱圧着固定部分密度:8個/cm2、起毛度:30本/cm)。
・面材III・・・ポリエステル不織布(目付:30g/m2、熱圧着固定部分密度:100個/cm2、起毛度:5本/cm)。
<気泡アスペクト比>
各例のフェノール樹脂発泡板について、厚み方向に二等分し、その断面を電子顕微鏡で50倍に拡大した写真を撮影した。撮影された画像に、発泡層のMD方向に2本の直線(長さ1800μm相当)を描き、発泡層のTD方向に2本の直線(長さ1800μm相当)を描いた。MD方向の直線が横切った気泡の直線上の径を測定し、その結果から平均値を算出してMD方向における気泡径(RM)とした。また、TD方向の直線が横切った気泡の直線上の径を測定し、その結果から平均値を算出してTD方向における気泡径(RT)とした。
求めたRM及びRTから、気泡アスペクト比を算出した。
図5~6を参照して、面材剥離強度の測定方法を説明する。
図5に示すように、各例のフェノール樹脂発泡板のY方向(TD方向)中央部から、X方向(MD方向)に50mm、Y方向に120mmの矩形に切り出し、一方の面材を剥離して、切片STを得た。この切片STを厚さ方向に切断して、片面に面材を備え、幅50mm、長さ120mm、厚さ25mmの評価用試料Tとした。
次に、厚さ25mmの評価用試料Tの長さ方向の一端から20mmの位置で、面材を有さない面から厚み方向に深さ20mmの切り込みを入れた。その切込み位置にて、発泡層を厚み方向に分割した(図6中の符号100)。この際、面材が発泡層から剥がれないようにした。
評価用試料Tにおける発泡層の長さが長い部位102をクランプ107で保持した。この際、部位102が水平方向に対し45°の角度になるように保持した。発泡層の長さが短い部位103をクランプ104で保持した。クランプ104の下方に、金属ワイヤ105で容器106を吊り下げた。
その後、ポンプ(図示せず)を用いて、100g/分の投入速度で、容器106内に水を連続的に投入した。面材101が、評価用試料Tの長さ方向に切り込み位置から50mm剥離した時点で、容器106への水の投入を停止した。容器106内の水の質量を測定した。同様の操作を2回行い、クランプ104、金属ワイヤ105、容器106及び容器106内の水の質量の合計の平均値をTD方向の面材剥離強度PTとした。
求めたPM及びPTから、剥離強度比を算出した。
各例のフェノール樹脂発泡板におけるTD方向の中央部から、MD方向200mm、TD方向200mmの平面視矩形の切片を切り出し、これを評価用試料とした。この評価用試料について、EN1604の試験方法に準じ、以下の手順でMD方向の寸法変化の差ΔDM(mm)及びTD方向の寸法変化の差ΔDT(mm)を求めた。
まず、200mm×200mmに切り出し、これをEN1604に従い養生して、評価用試料とした。評価用試料のMD方向の長さDM0(mm)と、TD方向の長さDT0を測定した。
次に、評価用試料を70℃で、48時間放置した直後に、評価用試料におけるMD方向の長さDM(mm)及びTD方向の長さDT(mm)を測定した。下記式により、MD方向の寸法変化の差ΔDM及びTD方向の寸法変化の差ΔDTを算出した。
ΔDM=長さDM0-長さDM
ΔDT=長さDT0-長さDT
求めたΔDM及びΔDTから、寸法変化比を算出した。
フェノール樹脂発泡板を連続して生産した際にノズルの吐出口周囲を観察し、ノズルの吐出口の清掃頻度を評価した。
≪評価基準≫
○:フェノール樹脂発泡板を連続して5時間製造した時に、ノズル吐出口周囲に樹脂の付着はほとんど見られなかった(ノズル清掃頻度低)。
△:フェノール樹脂発泡板を連続して5時間製造した時に、ノズル吐出口周囲に少量の樹脂が付着した(ノズル清掃頻度中)。
×:フェノール樹脂発泡板を連続して5時間製造した時に、ノズル吐出口周囲に多量の樹脂が付着した(ノズル清掃頻度大)。又はノズル吐出口に詰まりが発生して生産を中止した。
各例のフェノール樹脂発泡板5枚について、TD方向に切断し、切断面の両端部にある角部を観察して以下の基準で評価した。
≪評価基準≫
○:面材はいずれの角部からも全く剥離していない。
△:面材が角部から0.5cm以上剥離したものが1枚あった。
×:面材が角部から0.5cm以上剥離したものが2枚以上あった。
Claims (2)
- 厚さ35mm以上120mm以下のフェノール樹脂の発泡層と、前記発泡層の両面に設けられた面材とが備えられ、
前記面材は、目付が15g/m 2 以上60g/m 2 以下で、熱圧着固定部分を有する合成繊維不織布であり、
前記面材における前記熱圧着固定部分の密度は、5個/cm 2 以上150個/cm 2 以下であり、
MD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PMと、TD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PTとは、下記(1)式を満たし、
EN1604に準じて測定される70℃におけるMD方向の寸法変化の差ΔDMと、EN1604に準じて測定される70℃におけるTD方向の寸法変化の際ΔDTとは、下記(2)式を満たし、
前記発泡層に形成された気泡は、MD方向の長さRMと、TD方向の長さRTとが下記(3)式の関係を満たす、フェノール樹脂発泡板。
PM/PT=0.6以上1.3以下 ・・・(1)
ΔDM/ΔDT=0.6以上1.3以下 ・・・(2)
RM/RT=0.7以上1.3以下 ・・・(3) - 厚さ35mm以上120mm以下のフェノール樹脂の発泡層と、前記発泡層の両面に面材が設けられ、MD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PMと、TD方向における前記発泡層と前記面材との剥離強度PTとは、下記(1)式を満たし、EN1604に準じて測定される70℃におけるMD方向の寸法変化の差ΔDMと、EN1604に準じて測定される70℃におけるTD方向の寸法変化の際ΔDTとは、下記(2)式を満たし、前記発泡層に形成された気泡は、MD方向の長さRMと、TD方向の長さRTとが下記(3)式の関係を満たすフェノール樹脂発泡板の製造方法であって、
任意の速度で走行する一方の前記面材上に、フェノール樹脂と発泡剤と架橋剤とを含有する発泡性樹脂組成物をTD方向に並ぶ2以上のノズルから吐出し、吐出した前記発泡性樹脂組成物の上に他方の前記面材を載置する第一の工程と、
前記面材同士の間の前記発泡性樹脂組成物を加熱して、発泡し硬化する第二の工程と、
を有し、
前記面材は、目付が15g/m 2 以上60g/m 2 以下で、熱圧着固定部分を有する合成繊維不織布であり、
前記面材における前記熱圧着固定部分の密度は5個/cm 2 以上150個/cm 2 以下であり、
前記第一の工程は、前記ノズルの軸線と前記面材とが前記ノズルに対して前記面材の走行方向後方になす角度を65°以上90°未満とし、前記ノズルから前記発泡性樹脂組成物を前記面材上に吐出する、フェノール樹脂発泡板の製造方法。
PM/PT=0.6以上1.3以下 ・・・(1)
ΔDM/ΔDT=0.6以上1.3以下 ・・・(2)
RM/RT=0.7以上1.3以下 ・・・(3)
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