以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
(第1実施形態)
本実施形態について、図1〜図14を参照して説明する。本実施形態では、図1に示す蒸気圧縮式の冷凍サイクル1の圧縮機2に対して、動力伝達装置10を適用した例について説明する。
冷凍サイクル1は、車室内の空調を行う車両用空調装置において車室内へ送風する空気の温度を調整する装置として機能する。冷凍サイクル1は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機2、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱させる放熱器3、放熱器3から流出した冷媒を減圧する膨張弁4、膨張弁4で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器5が環状に接続された閉回路で構成されている。
圧縮機2には、動力伝達装置10を介してエンジン6から出力される回転駆動力が伝達される。本実施形態では、エンジン6が回転駆動力を出力する駆動源を構成し、圧縮機2が駆動対象装置を構成している。
圧縮機2としては、例えば、斜板式可変容量型の圧縮機を採用することができる。なお、圧縮機2としては、回転駆動力の伝達により冷凍サイクル1の冷媒を圧縮して吐出するものであれば、他の形式の可変容量型の圧縮機や、スクロール型、ベーン型などの固定容量型の圧縮機が採用されていてもよい。
本実施形態の圧縮機2は、シャフト20の一端側が、図示しないハウジングの外側に露出している。そして、動力伝達装置10は、シャフト20における外側に露出した部位に取り付けられている。シャフト20は、圧縮機2の外殻を構成する図示しないハウジングとの間に、ハウジングの内部の冷媒がシャフト20とハウジングとの隙間から漏れないように、リップシール等のシール部材が介在されている。シール部材は、シャフト20とハウジングとの間において高いシール性が得られるように材料、形状等が最適化されている。
続いて、動力伝達装置10は、車両走行用の駆動源であるエンジン6から出力される回転駆動力を駆動対象装置である圧縮機2へ断続的に伝達する装置である。動力伝達装置10は、Vベルト7を介してエンジン6の回転出力部6aに接続されている。
図2は、動力伝達装置10を圧縮機2のシャフト20の軸方向に沿って切断した際の断面図である。なお、図2に示すDRaxは、シャフト20の軸線CLに沿って延びるシャフト20の軸方向を示している。また、図2に示すDRrは、軸方向DRaxと直交するシャフト20の径方向を示している。なお、これらのことは、図2以外の図面においても同様である。
図2および図3に示すように、動力伝達装置10は、ロータ11、ロータ11に連結されることによって圧縮機2のシャフト20と共に回転する従動側回転体13、従動側回転体13とロータ11とを連結させる電磁吸引力を発生させる電磁石12を有する。
ロータ11は、エンジン6から出力される回転駆動力によって回転する駆動側回転体を構成する。本実施形態のロータ11は、図2に示すように、外側円筒部111、内側円筒部112、および端面部113を有する。
外側円筒部111は、円筒形状に構成されており、シャフト20に対して同軸上に配置されている。内側円筒部112は、円筒形状に構成されており、外側円筒部111の内周側に配置されると共に、シャフト20に対して同軸上に配置されている。
端面部113は、外側円筒部111と内側円筒部112の軸方向DRaxの一端側同士を結ぶ連結部である。端面部113は、円盤形状に構成されている。すなわち、端面部113は、シャフト20の径方向DRrに広がると共に、その中央部に表裏を貫通する円形状の貫通穴が形成されている。
本実施形態のロータ11は、シャフト20の軸方向DRaxの断面がC字形状となっている。そして、外側円筒部111と内側円筒部112との間には、端面部113を底面部とする円環状の空間が形成されている。
外側円筒部111と内側円筒部112との間に形成される空間は、シャフト20に対して同軸上となっている。外側円筒部111と内側円筒部112との間に形成される空間には、電磁石12が配置されている。
ここで、電磁石12は、ステータ121、およびステータ121の内部に配置されたコイル122等を有する。ステータ121は、鉄等の強磁性材料で環状に形成されている。コイル122は、エポキシ樹脂等の絶縁性の樹脂材料でモールディングされた状態でステータ121に固定されている。なお、電磁石12への通電は、図示しない制御装置から出力される制御電圧によって行われる。
外側円筒部111、内側円筒部112、および端面部113は、鉄等の強磁性材料で一体的に形成されている。外側円筒部111、内側円筒部112、および端面部113は、電磁石12に通電することによって生じる磁気回路の一部を構成する。
外側円筒部111の外周側には、複数のV字状の溝が形成された樹脂製のV溝部114が形成されている。V溝部114には、エンジン6から出力される回転駆動力を伝達するVベルト7が掛け渡されている。
内側円筒部112の内周側には、ボールベアリング19の外周側が固定されている。そして、ボールベアリング19の内周側には、圧縮機2の外殻を構成するハウジングから動力伝達装置10側へ向けて突出した円筒状のボス部21が固定されている。これにより、ロータ11は、圧縮機2のハウジングに対して回転自在に固定されている。なお、ボス部21は、シャフト20におけるハウジングの外側に露出した根元部分を覆っている。
また、端面部113における軸方向DRaxの一端側の外側面は、ロータ11と後述する従動側回転体13のアーマチュア14とが連結された際に、アーマチュア14と接触する摩擦面を形成している。
本実施形態では、図示しないが、端面部113の表面の一部に、端面部113の摩擦係数を増加させるための摩擦部材を配置している。この摩擦部材は、非磁性材料で形成される。摩擦部材としては、アルミナを樹脂で固めたものや、アルミニウム等の金属粉末の焼結体等を採用することができる。
続いて、従動側回転体13は、アーマチュア14およびハブ15を含んで構成されている。アーマチュア14は、径方向DRrに広がると共に、その中央部に表裏を貫通する貫通穴が形成された円環状の板部材である。アーマチュア14は、鉄等の強磁性材料で形成されている。アーマチュア14は、ロータ11と共に、電磁石12に通電された際に生じる磁気回路の一部を構成する。
アーマチュア14は、所定の微小間隙(例えば、0.5mm程度)を隔ててロータ11の端面部113に対向配置されている。アーマチュア14のうち、ロータ11の端面部113に対向する平坦部は、ロータ11とアーマチュア14とが連結された際に、端面部113と接触する摩擦面を形成している。
また、本実施形態のアーマチュア14には、径方向DRrの中間部分に磁気遮断用の溝部141が形成されている。この溝部141は、アーマチュア14の円周方向に沿って延びる円弧状の形状であり、アーマチュア14に対して複数個形成されている。本実施形態のアーマチュア14は、溝部141の外周側に位置する外周部142と、溝部141の内周側に位置する内周部143とに区分される。アーマチュア14の外周部142は、リベット等の締結部材144によりハブ15に接続されている。
ハブ15は、アーマチュア14を圧縮機2のシャフト20に連結する連結部材を構成している。換言すれば、アーマチュア14およびシャフト20は、ハブ15を介して連結されている。
図4、図5に示すように、本実施形態のハブ15は、アウタハブ16、インナハブ17、および弾性部材18を含んで構成されている。なお、図4に示す二点鎖線は、弾性部材18の外周縁部を示している。
アウタハブ16は、締結部材144によってアーマチュア14の外周部142に連結されている。アウタハブ16は、図5、図6に示すように、アーマチュア14に連結される板状のアウタ側連結部161、アウタ側連結部161の内周側からシャフト20の軸方向DRaxに沿って延びるアウタ側フランジ部162、アウタ側受部163を含んで構成されている。本実施形態のアウタハブ16は、アウタ側連結部161、アウタ側フランジ部162、アウタ側受部163が一体成形物として構成されている。
アウタ側連結部161は、外周側がアーマチュア14の外形状に対応する形状となっている。また、アウタ側連結部161は、アーマチュア14に連結される部位の内側にクロス状(すなわち、X字状)の開口が設けられている。
アウタ側フランジ部162は、アウタ側連結部161の内周側からアーマチュア14から離れる方向に延びている。アウタ側フランジ部162は、シャフト20の回転方向RDにおいて後述するインナハブ17の延出部171と重なり合うと共に、当該延出部171を囲む形状となっている。
具体的には、アウタ側フランジ部162は、インナハブ17の外形状に対応するクロス状(すなわち、X字状)の筒状部で構成されている。アウタ側フランジ部162の内周側とインナハブ17の外周側との間には、弾性部材18を介在させることが可能なように所定の隙間が形成されている。本実施形態では、アウタ側フランジ部162が、シャフト20の回転方向RDにおいて後述するインナハブ17の延出部171と重なり合うと共に、当該延出部171を囲む内周側壁部を構成している。
アウタ側受部163は、弾性部材18がシャフト20の軸方向DRaxに移動することを防止するために設けられている。アウタ側受部163は、シャフト20の軸方向DRaxにおいて弾性部材18におけるアーマチュア14と反対側の部位と対向するように、アウタ側フランジ部162からシャフト20の軸線CLに向かって近付くように延びている。アウタ側受部163は、内側にクロス状の開口が形成されている。
続いて、インナハブ17は、図5に示すように、圧縮機2のシャフト20に対して連結されている。インナハブ17は、図5、図7に示すように、インナ側板状部170、シャフト20に連結されるボス部172、インナ側板状部170の外周側からシャフト20の軸方向DRaxに沿って延びるインナ側フランジ部173、インナ側受部174を含んでいる。本実施形態のインナハブ17は、インナ側板状部170、ボス部172、インナ側フランジ部173、インナ側受部174が一体成形物として構成されている。
インナ側板状部170は、シャフト20の径方向DRrに拡がる部位である。インナ側板状部170は、アーマチュア14に対向する部位がアーマチュア14に当接している。インナ側板状部170の外周側には、シャフト20の径方向DRrの外側に向かって延びる4つの延出部171が設けられている。4つの延出部171は、シャフト20の回転方向RDにおいて等間隔となるようにインナ側板状部170に設けられている。これにより、インナハブ17は、その外形状が、クロス状の形状(すなわち、X字形状)となっている。
ボス部172は、インナ側板状部170における中央部分に設けられている。ボス部172は、圧縮機2側に向かって突き出た筒状部で構成されている。ボス部172の内周側には、シャフト20の外周側に形成された雄ネジに螺合する雌ネジが形成されている。インナハブ17は、ボス部172に形成された雌ネジとシャフト20の雄ネジとの螺合によってシャフト20に対して連結されている。
インナ側フランジ部173は、インナ側板状部170の外周側からアーマチュア14から離れる方向に延びている。インナ側フランジ部173は、アウタ側フランジ部162と対向するように、シャフト20の軸方向DRaxに沿って延びている。
具体的には、インナ側フランジ部173は、クロス状(すなわち、X字状)の筒状部で構成されている。インナ側フランジ部173の外周側とアウタハブ16の内周側との間には、弾性部材18を介在させることが可能なように所定の隙間が形成されている。
インナ側受部174は、弾性部材18がシャフト20の軸方向DRaxに移動することを防止するために設けられている。インナ側受部174は、シャフト20の軸方向DRaxにおいて弾性部材18のアーマチュア14側の部位と対向するように、インナ側板状部170からシャフト20の径方向DRrの外側に向かって延びている。
続いて、弾性部材18は、その弾性力によってインナハブ17に対してアウタハブ16をシャフト20の軸方向DRaxに移動可能に保持すると共に、アウタハブ16の回転力をインナハブ17に対して緩衝的に伝達する部材である。
この弾性部材18によって、アーマチュア14には、ロータ11から離れる方向に付勢力が作用する。電磁石12が非通電状態となっていて電磁吸引力が生じていないときには、弾性部材18の付勢力によって、アーマチュア14の平坦部とロータ11の端面部113との間に隙間が生ずる。
弾性部材18は、図5に示すように、アウタハブ16のアウタ側フランジ部162とインナハブ17のインナ側フランジ部173との間に配設されている。本実施形態の弾性部材18は、図5、図8に示すように、アウタ側フランジ部162の内周側とインナ側フランジ部173の外周側との間に形成される隙間形状に対応する形状を有している。なお、図8では、識別を容易にするために、弾性部材18に対してドット柄のハッチングを施している。このことは、後述する図13、図14、図15、図16、図20、図23、図25においても同様である。
本実施形態の弾性部材18は、アウタ側フランジ部162の内周側およびインナ側フランジ部173の外周側との間において、アウタハブ16およびインナハブ17の双方に非接着状態で配設されている。すなわち、本実施形態の弾性部材18は、アウタハブ16の内周側およびインナハブ17の外周側の双方に対して接着剤によって接着されていない。
本実施形態の弾性部材18は、アウタハブ16の内周側とインナハブ17の外周側との間において、シャフト20の回転方向RDに圧縮された状態で配設されている。すなわち、本実施形態の弾性部材18は、アウタハブ16の内周側とインナハブ17の外周側との間において、シャフト20の回転方向RDに圧縮荷重が作用するように、アウタハブ16の内周側とインナハブ17の外周側との間に圧入されている。
ここで、本実施形態の弾性部材18は、インナハブ17およびアウタハブ16と非接着状態となっている部位が摩擦によって摩耗し易くなってしまう。このことは、弾性部材18の寿命を縮める要因となることから好ましくない。
そこで、本実施形態では、弾性部材18を耐摩耗性に優れたEPDM(すなわち、エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、NBR(すなわち、ニトリルゴム)、H−NBR(すなわち、水素添加ニトリルゴム)のいずれかのゴム材料で構成している。すなわち、本実施形態の弾性部材18は、接着剤等との相性(すなわち、耐薬品性)に優れたCl−IIR(すなわち、塩素化ブチルゴム)よりも耐摩耗性に優れたEPDM、NBR、H−NBRのいずれかのゴム材料で構成されている。
弾性部材18は、シャフト20の回転方向RDにてアウタハブ16とインナハブ17とが重なり合う重合部位に介在する重合介在部181を有している。具体的には、重合介在部181は、弾性部材18のうち、シャフト20の回転方向RDにてアウタ側フランジ部162の内周面とインナ側フランジ部173との外周面とが対向する第1対向部位に介在する部位である。なお、第1対向部位は、アウタ側フランジ部162の内周面とインナ側フランジ部173との外周面とが対向する対向部位のうち、シャフト20の回転方向RDにて互いに対向する部位である。本実施形態の弾性部材18には、重合介在部181が8箇所存在している。
重合介在部181は、弾性部材18において、アウタハブ16の内周側とインナハブ17の外周側との間に圧入される部位である。具体的には、重合介在部181は、アウタハブ16の内周側とインナハブ17の外周側との間に介在させる前のシャフト20の径方向DRrに直交する方向における寸法が、アウタハブ16の内周側とインナハブ17の外周側との隙間寸法よりも大きくなっている。
本実施形態の弾性部材18は、重合介在部181における圧縮代が所定の範囲(例えば、4%〜15%程度)となるように、シャフト20の径方向DRrに直交する方向の寸法が設定されている。
また、弾性部材18は、シャフト20の回転方向RDにてアウタハブ16とインナハブ17とが重なり合わない非重合部位に介在する非重合介在部182、183を有している。具体的には、非重合介在部182、183は、弾性部材18のうち、シャフト20の回転方向RDにてアウタ側フランジ部162の内周面とインナ側フランジ部173との外周面とが対向しない第2対向部位に介在する部位である。なお、第2対向部位は、アウタ側フランジ部162の内周面とインナ側フランジ部173との外周面とが対向する対向部位のうち、シャフト20の回転方向RDにて互いに対向しない部位である。本実施形態の非重合介在部182、183は、弾性部材18のうち、インナハブ17の延出部171の先端側に近接する部位182、およびインナハブ17の延出部171の根元側に近接する部位183で構成されている。以下では、インナハブ17の延出部171の先端側に近接する部位182を第1非重合介在部と呼んだり、インナハブ17の延出部171の根元側に近接する部位183を第2非重合介在部と呼んだりすることがある。
重合介在部181と異なり、非重合介在部182、183には、アウタハブ16が回転したとしても回転方向RDの荷重が殆ど作用しない。すなわち、弾性部材18における非重合介在部182、183は、エンジン6側から圧縮機2側への動力伝達に殆ど寄与しない部位となる。
ここで、弾性部材18における非重合介在部182、183が、アウタハブ16およびインナハブ17の双方に接触していると、接触による摩擦によって、弾性部材18のシャフト20の軸方向DRaxにおけるバネ定数が大きくなってしまう。弾性部材18におけるシャフト20の軸方向DRaxのバネ定数が大きくなることは、電磁石12への通電のオンオフに伴うロータ11とアーマチュア14との連結や切り離しの応答性が悪化する要因となることから好ましくない。
このことを考慮して、本実施形態では、弾性部材18における非重合介在部182、183をアウタハブ16またはインナハブ17から離間させる構成としている。すなわち、本実施形態では、弾性部材18における非重合介在部182、183のシャフト20の径方向DRrの寸法を、非重合部位におけるアウタハブ16とインナハブ17との隙間寸法よりも小さくしている。
具体的には、図5に示すように、インナハブ17の延出部171の先端側に近接する非重合介在部182については、その径方向DRrの寸法Lgaを非重合部位におけるアウタハブ16とインナハブ17との隙間寸法Lcaよりも小さくしている。
また、インナハブ17の延出部171の根元側に近接する非重合介在部183については、その径方向DRrの寸法Lgbを非重合部位におけるアウタハブ16とインナハブ17との隙間寸法Lcbよりも小さくしている。
さらに、本実施形態では、非重合介在部182、183におけるシャフト20の軸方向DRaxの厚み寸法を、重合介在部181におけるシャフト20の軸方向DRaxの厚み寸法よりも小さくしている。
本実施形態の弾性部材18は、シャフト20の軸方向DRaxにおいてアウタ側受部163とインナ側受部174との間に配設されている。本実施形態の弾性部材18は、アウタ側受部163およびインナ側受部174によって、シャフト20の軸方向DRaxに移動することが防止されている。
具体的には、本実施形態の弾性部材18は、シャフト20の軸方向DRaxにおいて、アーマチュア14側の部位がインナ側受部174に対向し、アーマチュア14と反対側の部位がアウタ側受部163に対向している。
ところで、アウタ側受部163とインナ側受部174との間に弾性部材18を配設すると、アーマチュア14とロータ11とが連結された際に、アウタ側受部163によって、弾性部材18がアーマチュア14側に圧縮されてしまうことが懸念される。弾性部材18がシャフト20の軸方向DRaxに圧縮されることは、弾性部材18におけるシャフト20の軸方向DRaxのバネ定数が増える要因となることから好ましくない。
そこで、本実施形態の弾性部材18は、アーマチュア14とロータ11との連結が遮断されている場合における形状が、外側から内側に向かってシャフト20の径方向DRrに対して傾斜した形状となっている。具体的には、図9に示すように、弾性部材18は、アウタ側受部163に対向する端面が、外側から内側に向かうにつれてアーマチュア14側に近づくように傾斜した形状となっている。
本実施形態の従動側回転体13は、アーマチュア14とロータ11との連結が遮断されている場合、弾性部材18とアウタ側受部163との間に隙間が形成される。また、本実施形態の従動側回転体13は、アーマチュア14とロータ11とが連結されると、図10に示すように、弾性部材18におけるアウタ側受部163に対向する端面がシャフト20の径方向DRrに沿う形状に近づくように変形する。
このため、本実施形態の従動側回転体13は、アーマチュア14とロータ11とが連結された際に、アウタ側受部163によって、弾性部材18がアーマチュア14側に圧縮され難くなる。すなわち、本実施形態の従動側回転体13では、アーマチュア14とロータ11とが連結された際の弾性部材18におけるシャフト20の軸方向DRaxのバネ定数の増加が抑制される。
ところで、弾性部材18は、図11に示すように、アーマチュア14とロータ11とが連結された際に、シャフト20の回転方向RDに作用する圧縮荷重によって、シャフト20の軸方向DRaxに膨出することがある。
図12に示すように、弾性部材18におけるシャフト20の軸方向DRaxに膨出する膨出部位が、アウタ側受部163およびインナ側受部174の先端のエッジ部分に対向していると、当該エッジ部分との接触により弾性部材18に亀裂が生じ易くなる。
なお、図12は、本実施形態のハブ15の第1比較例となるハブHB1の模式的な断面図である。図12に示すハブHB1は、アウタ側受部163およびインナ側受部174それぞれのシャフト20の径方向DRrの長さが、本実施形態のハブ15のアウタ側受部163およびインナ側受部174よりも短くなっている点が本実施形態のハブ15と相違している。
このことを鑑みて、本実施形態では、図11に示すように、弾性部材18におけるシャフト20の軸方向DRaxに膨出する膨出部位をアウタ側受部163およびインナ側受部174の平坦状の部位で覆う構成としている。すなわち、本実施形態のアウタ側受部163は、弾性部材18に圧縮荷重が作用した際にシャフト20の軸方向DRaxに膨出する膨出部位を覆う平坦状の部位を有している。また、本実施形態のインナ側受部174は、弾性部材18に圧縮荷重が作用した際にシャフト20の軸方向DRaxに膨出する膨出部位を覆う平坦状の部位を有している。
次に、本実施形態の動力伝達装置10の作動を説明する。電磁石12が非通電状態になっている場合には、電磁石12の電磁吸引力が生じない。このため、アーマチュア14は、弾性部材18の付勢力によってロータ11の端面部113から所定間隔離れた位置に保持される。
これにより、エンジン6からの回転駆動力はVベルト7を介してロータ11に伝達されるだけで、アーマチュア14およびハブ15へは伝達されず、ロータ11だけがボールベアリング19上で空転する。このため、駆動対象装置である圧縮機2は停止した状態となる。
これに対して、電磁石12が通電状態になっている場合には、電磁石12の電磁吸引力が発生する。この電磁吸引力によって、アーマチュア14が弾性部材18の付勢力に抗してロータ11の端面部113側に吸引されることで、アーマチュア14がロータ11に吸着される。これにより、ロータ11の回転が従動側回転体13を介して圧縮機2のシャフト20に伝達されることで、圧縮機2が作動する。すなわち、エンジン6から出力された回転駆動力が、動力伝達装置10を介して圧縮機2に伝達されることで、圧縮機2が作動する。
本実施形態の従動側回転体13は、シャフト20の回転方向RDにおいて弾性部材18に圧縮荷重が作用するように、アウタハブ16の内周側とインナハブ17の外周側との間に弾性部材18を介在させている。
これによれば、ロータ11とアーマチュア14とが連結された際に、弾性部材18に対してシャフト20の回転方向RDに圧縮荷重が作用することで、捩じり変形による弾性部材18に作用するせん断力を抑えることができる。弾性部材18は、ゴム材料の特性によって、せん断強度よりも圧縮強度の方が確保し易い。このため、弾性部材18に対するせん断力を抑えるために圧縮荷重を作用させることは、弾性部材18の耐久性向上に大きく寄与する。
ここで、図13は、本実施形態のハブ15の第2比較例となるハブHB2の模式的な正面図である。また、図14は、図13の矢印XIVで示す部位の拡大図である。図13に示すハブHB2は、弾性部材EMがアウタハブAHおよびインナハブIHの双方に接着剤によって接着されている点、アウタ側受部163およびインナ側受部174が設けられていない点が、本実施形態のハブ15と相違している。
図13に示すハブHB2は、アウタハブAHが回転した際、回転方向RDにおいて弾性部材EMに対して圧縮荷重に加えて引張荷重が作用する。具体的には、図14に示すように、弾性部材EMには、アウタハブAHが回転した際に、回転方向RDの後方側にアウタハブAHの内周側が位置すると共に、回転方向RDの前方側にインナハブIHの外周側が位置する部位に圧縮荷重が作用する。また、弾性部材EMには、アウタハブAHが回転した際に、回転方向RDの前方側にアウタハブAHの内周側が位置すると共に、回転方向RDの後方側にインナハブIHの外周側が位置する部位に引張荷重が作用する。
これに対して、本実施形態の弾性部材18は、アウタ側フランジ部162の内周側およびインナ側フランジ部173の外周側との間において、アウタハブ16およびインナハブ17の双方に非接着状態で配設されている。
これにより、本実施形態の弾性部材18には、アウタハブ16が回転した際に、圧縮荷重が作用するものの、引張荷重が作用しない。すなわち、弾性部材18の重合介在部181には、回転方向RDの後方側にアウタハブ16の内周側が位置すると共に、回転方向RDの前方側にインナハブ17の外周側が位置する部位181a、181b、181c、181dに圧縮荷重が作用する。そして、弾性部材18の重合介在部181には、回転方向RDの前方側にアウタハブ16の内周側が位置すると共に、回転方向RDの後方側にインナハブ17の外周側が位置する部位181e、181f、181g、181hに引張荷重が作用しない。
以上説明した本実施形態の動力伝達装置10は、弾性部材18に対して圧縮荷重が作用するものの、引張荷重が作用しない構成となっている。このため、エンジン6からの回転駆動力の伝達に伴って弾性部材18に対する繰り返し作用する荷重への強度の向上を図ることができる。この結果、動力伝達装置10における弾性部材18の疲労破壊が抑制されるので、動力伝達装置10の耐久性を向上させることができる。すなわち、本実施形態の動力伝達装置10は、トルク変動が大きい駆動源に対して適用したとしても、耐久性を充分に確保することができる。
また、本実施形態の動力伝達装置10は、弾性部材18の抜け防止のために、アウタハブ16にアウタ側受部163を設けると共に、インナハブ17にインナ側受部174を設けている。
これによれば、弾性部材18がアウタハブ16およびインナハブ17に接着されていない構成において、弾性部材18に対してシャフト20の軸方向DRaxに何らかの力が作用しても、弾性部材18が抜け難い構造となる。
加えて、本実施形態のアウタ側受部163およびインナ側受部174それぞれには、弾性部材18に圧縮荷重が作用した際にシャフト20の軸方向DRaxに膨出する膨出部位を覆う平坦状の部位が設けられている。
このように、アウタ側受部163およびインナ側受部174の平坦状の部位によって弾性部材18における膨出部位を覆う構成とすれば、弾性部材18における膨出部位が周囲の部品のエッジ部分と接触して破損してしまうことを防止することが可能となる。
また、本実施形態の動力伝達装置10は、弾性部材18がインナハブ17の外周側とアウタハブ16の内周側との間において、シャフト20の回転方向RDに圧縮された状態で配設されている。
このように、インナハブ17の外周側とアウタハブ16の内周側との間において弾性部材18を圧縮した状態で配設する構成とすれば、弾性部材18の成形時に残留する引張り歪を除去するための絞り加工が不要となる。このため、動力伝達装置10の生産性の向上を図ることができる。
さらに、本実施形態の動力伝達装置10は、弾性部材18の非重合介在部182、183におけるシャフト20の径方向DRrの寸法が、非重合部位におけるアウタハブ16とインナハブ17との隙間寸法よりも小さくなっている。なお、非重合部位は、シャフト20の回転方向RDにおいて、アウタハブ16の内周側とインナハブ17の外周側とが重なり合わない部位である。
これにより、非重合部位では、弾性部材18がアウタハブ16およびインナハブ17から離れ易くなることで、弾性部材18におけるシャフト20の軸方向DRaxのバネ定数を低下させることができる。この結果、電磁石12への通電のオンオフに伴うロータ11とアーマチュア14との連結や切り離しの応答性の向上を図ることができる。
さらにまた、本実施形態では、弾性部材18を耐摩耗性に優れたEPDM、NBR、H−NBRのいずれかのゴム材料で構成している。これによれば、弾性部材18におけるインナハブ17およびアウタハブ16と接する部位の摩擦による摩耗を抑えることができる。この結果、弾性部材18における長寿命化を図ることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図15を参照して説明する。本実施形態では、ハブ15Aを構成するアウタハブ16A、インナハブ17A、弾性部材18Aの形状が第1実施形態と相違している。
図15に示すように、本実施形態のインナハブ17Aは、その外周側にシャフト20の径方向DRrの外側に向かって延びる3つの延出部171Aが設けられている。3つの延出部171Aは、シャフト20の回転方向RDにおいて等間隔となるように設けられている。これにより、インナハブ17は、その外形状が三つ又状の形状(すなわち、Y字形状)となっている。
また、本実施形態のアウタハブ16Aは、その内周側がシャフト20の回転方向RDにおいて3つの延出部171Aと重なり合うと共に、複数の延出部171Aを囲む形状となっている。
さらに、本実施形態の弾性部材18Aは、アウタハブ16Aのアウタ側フランジ部162Aとインナハブ17Aのインナ側フランジ部173Aとの間に配設されている。本実施形態の弾性部材18Aは、アウタ側フランジ部162Aの内周側とインナ側フランジ部173Aの外周側との間に形成される隙間形状に対応する形状を有している。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の動力伝達装置10は、第1実施形態で説明した作用効果を、第1実施形態の動力伝達装置10と同様に得ることができる。
ここで、本実施形態では、インナハブ17Aに3つの延出部171Aを設けた例について説明したが、インナハブ17Aの延出部171Aの数は3つに限らず、5つ以上設けられていてもよい。
(第3実施形態)
上述の第1実施形態で説明したように、弾性部材18は、アーマチュア14に対してロータ11側から離れる方向に付勢力を作用させる付勢部材としての機能、およびアウタハブ16の回転力をインナハブ17に緩衝的に伝達する緩衝部材としての機能を有する。上述の第1実施形態では、弾性部材18における非重合介在部182、183がアウタハブ16およびインナハブ17から離間する構造になっている。このため、第1実施形態では、弾性部材18における重合介在部181が、付勢部材および緩衝部材として機能することになる。
ここで、本発明者らは、弾性部材18における捩じり変形に対する耐久性等を確保するために、弾性部材18の重合介在部181における回転方向RDのバネ定数を高くすることを検討している。
ところが、弾性部材18の重合介在部181は、付勢部材および緩衝部材として機能するため、回転方向RDのバネ定数を高くすると、それに伴い軸方向DRaxのバネ定数が高くなってしまう。このことは、電磁石12への通電のオンオフに伴うロータ11とアーマチュア14との連結およびロータ11とアーマチュア14との切り離しの応答性が低下する要因となることから好ましくない。
これらを考慮して、本実施形態の動力伝達装置10では、弾性部材18の非重合介在部182を付勢部材として機能させつつ、弾性部材18の重合介在部181における付勢部材としての機能を低下させる構造を採用している。
以下、第3実施形態について図16〜図22を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる箇所について主に説明し、第1実施形態と同様の箇所については説明を省略することがある。
図16は、第1実施形態の図4に対応する図面であり、シャフト20の軸方向DRaxから見たハブ15の正面図である。また、図17は、第1実施形態の図5に対応する図面である。
図16および図17に示すように、本実施形態のハブ15は、第1実施形態と同様に、アウタハブ16、インナハブ17、弾性部材18を含んで構成されている。なお、図16に示す二点鎖線は、弾性部材18の外周縁部を示している。
図18に示すように、本実施形態のアウタハブ16は、第1実施形態と同様に、アウタ側連結部161、アウタ側フランジ部162、アウタ側受部163を含んで構成されている。なお、図18に示す二点鎖線は、アウタ側フランジ部162の内周面を示している。
アウタ側フランジ部162は、アウタハブ16におけるインナハブ17に対向する内周側(すなわち、内周面)を構成する部位である。アウタ側フランジ部162は、シャフト20の回転方向RDにてインナ側フランジ部173と重なり合う第1内周面162a、シャフト20の回転方向RDにてインナ側フランジ部173と重なり合わない第2内周面162b、第3内周面162cを有している。
アウタ側フランジ部162の第2内周面162bは、第1内周面162aよりもシャフト20の径方向DRrの外側に形成される部位である。また、アウタ側フランジ部162の第3内周面162cは、第1内周面162aよりもシャフト20の径方向DRrの内側に形成される部位である。
図19に示すように、本実施形態のインナハブ17は、第1実施形態と同様に、4つの延出部171を有するインナ側板状部170、ボス部172、インナ側フランジ部173、インナ側受部174を含んで構成されている。
インナ側フランジ部173は、インナハブ17におけるアウタハブ16に対向する外周側(すなわち、外周面)を構成する部位である。インナ側フランジ部173は、シャフト20の回転方向RDにてアウタ側フランジ部162と重なり合う第1外周面173a、シャフト20の回転方向RDにてアウタ側フランジ部162と重なり合わない第2外周面173b、第3外周面173cを有している。
インナ側フランジ部173の第2外周面173bは、第1外周面173aよりもシャフト20の径方向DRrの外側に形成される部位である。また、インナ側フランジ部173の第3外周面173cは、第1外周面173aよりもシャフト20の径方向DRrの内側に形成される部位である。
インナ側フランジ部173の第1外周面173aは、シャフト20の回転方向RDにて、アウタ側フランジ部162の第1内周面162aに対向する部位である。インナ側フランジ部173の第2外周面173bは、シャフト20の径方向DRrにて、アウタ側フランジ部162の第2内周面162bに対向する部位である。インナ側フランジ部173の第3外周面173cは、シャフト20の径方向DRrにて、アウタ側フランジ部162の第3内周面162cに対向する部位である。
本実施形態では、アウタ側フランジ部162のうち第1内周面162aを構成する部位とインナ側フランジ部173のうち第1外周面173aを構成する部位とが、第1対向部位を構成している。また、本実施形態では、アウタ側フランジ部162のうち第2内周面162bおよび第3内周面162cを構成する部位とインナ側フランジ部173のうち第2外周面173bおよび第3外周面173cを構成する部位とが、第2対向部位を構成している。
本実施形態のインナ側受部174は、インナ側板状部170のうちインナ側フランジ部173の第2外周面173bおよび第3外周面173cに連なる部位からシャフト20の径方向DRrの外側に向かって延びている。なお、本実施形態のインナ側受部174は、インナ側板状部170のうちインナ側フランジ部173の第1外周面173aに連なる部位に設けられていない。
図20に示すように、弾性部材18は、重合介在部181、第1非重合介在部182、および第2非重合介在部183を有している。重合介在部181は、弾性部材18のうちアウタ側フランジ部162の第1内周面162aとインナ側フランジ部173の第1外周面173aとの間に介在する部位である。第1非重合介在部182は、弾性部材18のうちアウタ側フランジ部162の第2内周面162bとインナ側フランジ部173の第2外周面173bとの間に介在する部位である。第2非重合介在部183は、弾性部材18のうちアウタ側フランジ部162の第3内周面162cとインナ側フランジ部173の第3外周面173cとの間に介在する部位である。重合介在部181、第1非重合介在部182、および第2非重合介在部183は、同一の材料で一体に成形された一体成形物として構成されている。
本実施形態の重合介在部181は、第1実施形態と異なり、その一部が、アウタハブ16の内周面およびインナハブ17の外周面の少なくとも一方との間に隙間が形成される構造になっている。
本実施形態の重合介在部181は、シャフト20の径方向DRrの内側に位置する内側部位181i、および内側部位181iよりもシャフト20の径方向DRrの外側に位置する外側部位181jを有している。そして、重合介在部181は、アウタ側フランジ部162の第1内周面162aおよびインナ側フランジ部173の第1外周面173aに対して、外側部位181jが接触し、内側部位181iが離間する形状になっている。
具体的には、重合介在部181の内側部位181iは、図21に示すように、シャフト20の径方向DRrに直交する方向の寸法Lgが、第1内周面162aと第1外周面173aとの間の隙間寸法Lcよりも小さくなっている。
一方、重合介在部181の外側部位181jは、図示しないが、シャフト20の径方向DRrに直交する方向の寸法が、第1内周面162aと第1外周面173aとの間の隙間寸法と同様の大きさとなっている。重合介在部181の外側部位181jは、弾性部材18において、シャフト20の回転方向RDの位置を規定する位置決め部材として機能する。
本実施形態の重合介在部181は、内側部位181iが第1内周面162aおよび第1外周面173aから離間するので、第1実施形態に比べて、付勢部材としての機能を低下させることができる。
ここで、重合介在部181における付勢部材としての機能を低下させることで、シャフト20の回転方向RDのバネ定数を高くすることが可能となるが、その一方で、弾性部材18全体における付勢部材としての機能が不足してしまう。
そこで、本実施形態の弾性部材18は、第1非重合介在部182および第2非重合介在部183のうち第1非重合介在部182が、アウタ側フランジ部162およびインナ側フランジ部173それぞれに接触するように構成されている。
本実施形態の第1非重合介在部182は、図17に示すように、シャフト20の径方向DRrの寸法Lgaが、アウタ側フランジ部162の第2内周面162bとインナ側フランジ部173の第2外周面173bとの間の隙間寸法Lca以上となっている。これにより、第1非重合介在部182は、アウタ側フランジ部162の第2内周面162bおよびインナ側フランジ部173の第2外周面173bそれぞれに接触する。
具体的には、第1非重合介在部182は、シャフト20の径方向DRrの寸法Lgaが、第2内周面162bと第2外周面173bとの間の隙間寸法Lcaより大きくなっている。すなわち、第1非重合介在部182は、アウタハブ16の内周側とインナハブ17の外周側との間に圧入されている。
また、第2非重合介在部183は、アウタ側フランジ部162およびインナ側フランジ部173それぞれに非接触となるように、シャフト20の径方向DRrの寸法が設定されている。すなわち、第2非重合介在部183は、シャフト20の径方向DRrの寸法が、第3内周面162cと第3外周面173cとの間の隙間寸法より小さくなっている。
ここで、第1非重合介在部182をアウタハブ16の内周側とインナハブ17の外周側との間に圧入する構成とすると、弾性部材18の組付性が悪化してしまうことが懸念される。
そこで、本実施形態では、アウタ側フランジ部162の第2内周面162bおよびインナ側フランジ部173の第2外周面173bが、第1非重合介在部182を圧入し易い形状になっている。具体的には、図22に示すように、アウタ側フランジ部162の第2内周面162bは、弾性部材18の圧入代が弾性部材18の圧入方向の手前側から奥側に向かって大きくなるようにテーパ形状になっている。また、インナ側フランジ部173の第2外周面173bは、弾性部材18の圧入代が弾性部材18の圧入方向の手前側から奥側に向かって大きくなるようにテーパ形状になっている。換言すれば、本実施形態のアウタ側フランジ部162の第2内周面162bおよびインナ側フランジ部173の第2外周面173bは、アーマチュア14から離れるに伴って縮径されている。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の動力伝達装置10は、第1実施形態と共通の構成から奏される作用効果を、第1実施形態の動力伝達装置10と同様に得ることができる。
特に、本実施形態の動力伝達装置10は、弾性部材18の非重合介在部182を付勢部材として機能させつつ、弾性部材18の重合介在部181における付勢部材としての機能を低下させる構造になっている。
これによると、弾性部材18の重合介在部181におけるシャフト20の回転方向RDのバネ定数を変更したとしても、それに伴うシャフト20の軸方向DRaxにおけるバネ定数への影響を小さくすることができる。
したがって、弾性部材18におけるシャフト20の回転方向RDに対する耐久性の向上を図りつつ、電磁石12への通電のオンオフに伴うロータ11とアーマチュア14との連結およびロータ11とアーマチュア14との切り離しの応答性を確保することができる。
また、本実施形態の動力伝達装置10は、アウタ側フランジ部162の第2内周面162bおよびインナ側フランジ部173の第2外周面173bが、第1非重合介在部182を圧入し易い形状になっている。このため、弾性部材18の組付性を向上させることが可能となる
(第3実施形態の変形例)
上述の第3実施形態では、アウタ側フランジ部162の第1内周面162aおよびインナ側フランジ部173の第1外周面173aに対して、重合介在部181の外側部位181jが接触するものを例示したが、これに限定されない。弾性部材18は、例えば、重合介在部181の外側部位181jがアウタ側フランジ部162の第1内周面162aおよびインナ側フランジ部173の第1外周面173aに対して離間する形状になっていてもよい。
上述の第3実施形態では、重合介在部181の内側部位181iが第1内周面162aおよび第1外周面173aそれぞれから離間しているものを例示したが、これに限定されない。重合介在部181は、内側部位181iが第1内周面162aおよび第1外周面173aの少なくとも一方から離間する形状になっていてもよい。
上述の第3実施形態では、第1非重合介在部182および第2非重合介在部183のうち第1非重合介在部182が、アウタ側フランジ部162およびインナ側フランジ部173それぞれに接触するものを例示したが、これに限定されない。弾性部材18は、例えば、第1非重合介在部182および第2非重合介在部183それぞれが、アウタ側フランジ部162およびインナ側フランジ部173それぞれに接触する形状になっていてもよい。また、弾性部材18は、第1非重合介在部182および第2非重合介在部183のうち第2非重合介在部183が、アウタ側フランジ部162およびインナ側フランジ部173それぞれに接触する形状になっていてもよい。
上述の第3実施形態では、アウタ側フランジ部162の第2内周面162bおよびインナ側フランジ部173の第2外周面173bが第1非重合介在部182を圧入し易い形状になっているものを例示したが、これに限定されない。弾性部材18は、例えば、アウタ側フランジ部162の第2内周面162bおよびインナ側フランジ部173の第2外周面173bがシャフト20の軸方向DRaxに沿って延びる形状になっていてもよい。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図23、図24を参照して説明する。本実施形態では、弾性部材18の重合介在部181の少なくとも一部に、アウタハブ16の内周面およびインナハブ17の内周面の少なくとも一方との間に生ずる摩擦抵抗を低減する抵抗低減部が設けられている点が第3実施形態と相違している。
図23および図24に示すように、本実施形態の重合介在部181は、アウタ側フランジ部162の第1内周面162aおよびインナ側フランジ部173の第1外周面173aに対して接触する形状になっている。
本実施形態の重合介在部181は、第1内周面162aに対向する第1対向面181kおよび第1外周面173aに対向する第2対向面181lそれぞれに、摩擦抵抗を低減するための表面処理が施されている。摩擦抵抗を低減するための表面処理としては、例えば、潤滑性を有する材料を表面に塗装する処理等が挙げられる。本実施形態では、重合介在部181における第1対向面181kおよび第2対向面181lが抵抗低減部を構成している。
その他の構成は、第3実施形態と同様である。本実施形態では、重合介在部181に対して摩擦抵抗を低減するための表面処理が施されているので、弾性部材18の重合介在部181における付勢部材としての機能を低下させることができる。したがって、本実施形態の動力伝達装置10は、第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(第4実施形態の変形例)
上述の第4実施形態では、重合介在部181の第1対向面181kおよび第2対向面181lそれぞれに、摩擦抵抗を低減するための表面処理が施されているものを例示したが、これに限定されない。弾性部材18は、例えば、重合介在部181の第1対向面181kおよび第2対向面181lの一方に、摩擦抵抗を低減するための表面処理が施された構成になっていてもよい。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について図25を参照して説明する。本実施形態では、弾性部材18の重合介在部181の少なくとも一部に、アウタハブ16の内周面およびインナハブ17の内周面の少なくとも一方との間に生ずる摩擦抵抗を低減する抵抗低減部が設けられている点が第3実施形態と相違している。
図25に示すように、本実施形態の重合介在部181は、第1内周面162aに対向する第1対向部位181mに、第1内周面162aに向かって突き出る複数の突出部181n、および第2内周面162bから離間する離間部181oが設けられている。複数の突出部181nは、第1内周面162aに接するように、その突出長さが設定されている。
本実施形態の重合介在部181は、第1対向部位181mに複数の突出部181nおよび離間部181oが設けられることで、アウタハブ16の内周面との接触面積が小さくなっている。
また、本実施形態の重合介在部181は、第1外周面173aに対向する第2対向部位181pに、第1外周面173aに向かって突き出る複数の突出部181q、および第2外周面173bから離間する離間部181rが設けられている。複数の突出部181qは、第1外周面173aに接するように、その突出長さが設定されている。
本実施形態の重合介在部181は、第2対向部位181pに複数の突出部181qおよび離間部181rが設けられることで、インナハブ17の外周面との接触面積が小さくなっている。なお、本実施形態では、重合介在部181における複数の突出部181nおよび離間部181oが設けられた第1対向部位181mと、複数の突出部181qおよび離間部181rが設けられた第2対向部位181pとが抵抗低減部を構成している。
その他の構成は、第3実施形態と同様である。本実施形態では、重合介在部181が各ハブ16、17との接触面積が小さくなる構造を有しているので、弾性部材18の重合介在部181における付勢部材としての機能を低下させることができる。したがって、本実施形態の動力伝達装置10は、第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(第5実施形態の変形例)
上述の第5実施形態では、重合介在部181の第1対向部位181mおよび第2対向部位181pそれぞれを凸凹形状にするものを例示したが、これに限定されない。弾性部材18は、重合介在部181の第1対向部位181mおよび第2対向部位181pの一方が凸凹形状になっていてもよい。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について図26を参照して説明する。本実施形態では、アウタ側フランジ部162およびインナ側フランジ部173の一部に弾性部材18との間に生ずる摩擦抵抗を低減する抵抗低減部が設けられている点が第3実施形態と相違している。
図26に示すように、本実施形態のインナ側フランジ部173は、第1外周面173aが弾性部材18の重合介在部181に接触する形状になっている。そして、インナ側フランジ部173は、第1外周面173aに、摩擦抵抗を低減するための表面処理が施されている。摩擦抵抗を低減するための表面処理としては、例えば、潤滑性を有する材料を表面に塗装する処理や、潤滑性を有する材料で表面を被覆する処理等が挙げられる。
また、図示しないが、アウタ側フランジ部162は、第1内周面162aが弾性部材18の重合介在部181に接触する形状になっている。そして、アウタ側フランジ部162は、第1内周面162aに、摩擦抵抗を低減するための表面処理が施されている。摩擦抵抗を低減するための表面処理としては、例えば、潤滑性を有する材料を表面に塗装する処理や、潤滑性を有する材料で表面を被覆する処理等が挙げられる。
本実施形態では、アウタ側フランジ部162の第1内周面162aおよびインナ側フランジ部173の第1外周面173aが、弾性部材18との間に生ずる摩擦抵抗を低減するための抵抗低減部を構成している。
その他の構成は、第3実施形態と同様である。本実施形態では、アウタ側フランジ部162の第1内周面162aおよびインナ側フランジ部173の第1外周面173aに摩擦抵抗を低減するための表面処理が施されている。このため、弾性部材18の重合介在部181における付勢部材としての機能を低下させることができる。したがって、本実施形態の動力伝達装置10は、第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(第6実施形態の変形例)
上述の第6実施形態では、アウタ側フランジ部162の第1内周面162aおよびインナ側フランジ部173の第1外周面173aそれぞれに摩擦抵抗を低減するための表面処理が施されているものを例示したが、これに限定されない。ハブ15は、例えば、アウタ側フランジ部162の第1内周面162aおよびインナ側フランジ部173の第1外周面173aのうち、一方に摩擦抵抗を低減するための表面処理が施された構成になっていてもよい。
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について図27を参照して説明する。本実施形態では、アウタ側フランジ部162およびインナ側フランジ部173の一部に弾性部材18との間に生ずる摩擦抵抗を低減する抵抗低減部が設けられている点が第3実施形態と相違している。
図27に示すように、本実施形態のインナ側フランジ部173は、第1外周面173aに、弾性部材18の重合介在部181に向かって突き出る複数の突出部173d、および重合介在部181から離間する離間部173eが設けられている。複数の突出部173dは、弾性部材18の重合介在部181に接するように、その突出長さが設定されている。
本実施形態のインナ側フランジ部173は、第1外周面173aに複数の突出部173dおよび離間部173eが設けられることで、弾性部材18との接触面積が小さくなっている。
また、図示しないが、本実施形態のアウタ側フランジ部162は、第1内周面162aに、弾性部材18の重合介在部181に向かって突き出る複数の突出部162d、および重合介在部181から離間する離間部162eが設けられている。複数の突出部162dは、弾性部材18の重合介在部181に接するように、その突出長さが設定されている。
本実施形態のアウタ側フランジ部162は、第1内周面162aに複数の突出部162dおよび離間部162eが設けられることで、弾性部材18との接触面積が小さくなっている。
本実施形態では、インナ側フランジ部173にて突出部173dおよび離間部173eが設けられた第1外周面173aと、アウタ側フランジ部162にて突出部162dおよび離間部162eが設けられた第1内周面162aとが、抵抗低減部を構成している。
その他の構成は、第3実施形態と同様である。本実施形態では、重合介在部181が各ハブ16、17との接触面積が小さくなる構造を有しているので、弾性部材18の重合介在部181における付勢部材としての機能を低下させることができる。したがって、本実施形態の動力伝達装置10は、第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(第7実施形態の変形例)
上述の第5実施形態では、インナ側フランジ部173の第1外周面173aおよびアウタ側フランジ部162の第1内周面162aそれぞれを凸凹形状にするものを例示したが、これに限定されない。ハブ15は、例えば、インナ側フランジ部173の第1外周面173aおよびアウタ側フランジ部162の第1内周面162aの一方が凸凹形状になっていてもよい。
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
上述の各実施形態では、弾性部材18に引張荷重が作用しないように、弾性部材18がアウタハブ16およびインナハブ17の双方に接着されない構成となっている例について説明したが、これに限定されない。弾性部材18は、アウタハブ16およびインナハブ17の一方に接着され、他方に対して接着されていない構成となっていてもよい。
弾性部材18の耐久性を考慮すると、弾性部材18は、インナハブ17の内周側に接着され、アウタハブ16に対して接着されていない構成となっていることが望ましい。弾性部材18をインナハブ17の内周側に接着する方が、弾性部材18をアウタハブ16の内周側に接着するよりも弾性部材18に作用する力が小さくなるからである。
上述の各実施形態の如く、動力伝達装置10は、弾性部材18の抜け防止のために、アウタハブ16にアウタ側受部163を設けると共に、インナハブ17にインナ側受部174を設ける構成とすることが望ましいが、これに限定されない。
動力伝達装置10は、例えば、アウタ側受部163およびインナ側受部174の一方が省略された構成、または、アウタ側受部163およびインナ側受部174の双方が省略された構成となっていてもよい。
上述の各実施形態の如く、動力伝達装置10は、アウタ側受部163およびインナ側受部174の平坦状の部位によって弾性部材18における膨出部位を覆う構成とすることが望ましいが、これに限定されない。
動力伝達装置10は、例えば、図12に示すように、アウタ側受部163およびインナ側受部174の先端部位が弾性部材18における膨出部位に対向する構成となっていてもよい。
上述の各実施形態の如く、動力伝達装置10は、インナハブ17の外周側とアウタハブ16の内周側との間において弾性部材18が圧縮した状態で配設される構成とすることが望ましいが、これに限定されない。動力伝達装置10は、例えば、インナハブ17の外周側とアウタハブ16の内周側との間において弾性部材18が圧縮されていない状態で配設される構成となっていてもよい。
上述の各実施形態の如く、動力伝達装置10は、弾性部材18の非重合介在部182、183における寸法が、非重合部位におけるアウタハブ16とインナハブ17との隙間寸法よりも小さくなっていることが望ましいが、これに限定されない。
動力伝達装置10は、例えば、弾性部材18の非重合介在部182、183における寸法が、非重合部位におけるアウタハブ16とインナハブ17との隙間寸法以上となっていてもよい。
上述の各実施形態の如く、動力伝達装置10は、弾性部材18を耐摩耗性に優れたEPDM、NBR、H−NBRのいずれかのゴム材料で構成することが望ましいが、これに限定されない。動力伝達装置10は、弾性部材18がEPDM、NBR、H−NBR以外の材料(例えば、Cl−IIR)で構成されていてもよい。
上述の各実施形態の如く、動力伝達装置10は、弾性部材18におけるアウタ側受部163に対向する端面が、外側から内側に向かうにつれてアーマチュア14側に近づくように傾斜した形状となっていることが望ましいが、これに限定されない。動力伝達装置10は、弾性部材18におけるアウタ側受部163に対向する端面が、例えば、シャフト20の径方向DRrに沿って延びる形状となっていてもよい。なお、弾性部材18は、シャフト20の軸方向DRaxの厚み寸法が不均一となっていてもよい。
上述の各実施形態では、弾性部材18が重合介在部181、非重合介在部182、183を一体成形した一体成形物で構成される例について説明したが、これに限定されない。弾性部材18は、例えば、重合介在部181および非重合介在部182、183が別個に構成されていてもよい。
上述の各実施形態では、本開示の動力伝達装置10をエンジン6から圧縮機2への回転駆動力の断続に適用した例について説明したが、これに限定されない。本開示の動力伝達装置10は、例えば、エンジン6や電動モータ等の駆動源が出力する回転駆動力を発電機等に対して伝達する装置にも適用可能である。
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
(まとめ)
上述の実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、動力伝達装置は、電磁石、ロータ、アーマチュア、およびハブを備える。ハブは、アーマチュアに連結されるアウタハブ、シャフトに連結されるインナハブ、および各ハブの間に介在される弾性部材を含んで構成されている。インナハブの外周側には、シャフトの径方向の外側に向かって延びる複数の延出部が設けられている。アウタハブの内周側には、複数の延出部を囲む内周側壁部が設けられている。そして、弾性部材は、インナハブの外周側とアウタハブの内周側との間において、インナハブおよびアウタハブの少なくとも一方に非接着状態で配設されている。
第2の観点によれば、動力伝達装置は、アウタハブに、シャフトの軸方向において弾性部材と対向し、弾性部材がシャフトの軸方向に移動することを防止するアウタ側受部が設けられている。そして、インナハブには、シャフトの軸方向において弾性部材と対向し、弾性部材がシャフトの軸方向に移動することを防止するインナ側受部が設けられている。
これによると、インナハブおよびアウタハブの少なくとも一方と弾性部材とが非接着状態となっている構成において、弾性部材にシャフトの軸方向に何らかの力が作用しても、弾性部材が抜け難い構造となる。
第3の観点によれば、動力伝達装置は、アウタ側受部が、弾性部材に圧縮荷重が作用した際にシャフトの軸方向に膨出する膨出部位を覆う平坦状の部位を有している。また、インナ側受部は、弾性部材に圧縮荷重が作用した際にシャフトの軸方向に膨出する膨出部位を覆う平坦状の部位を有している。
このように、アウタ側受部およびインナ側受部の平坦状の部位によって弾性部材における膨出部位を覆う構成とすれば、弾性部材における膨出部位が周囲の部品のエッジ部分と接触して破損してしまうことを防止することが可能となる。
第4の観点によれば、動力伝達装置は、弾性部材が、インナハブの外周側とアウタハブの内周側との間において、シャフトの回転方向に圧縮された状態で配設されている。このように、インナハブの外周側とアウタハブの内周側との間において弾性部材を圧縮した状態で配設する構成とすれば、弾性部材の成形時に残留する引張り歪を除去するための絞り加工が不要となるので、動力伝達装置の生産性の向上を図ることができる。
第5の観点によれば、動力伝達装置は、アウタハブおよびインナハブのうち、シャフトの回転方向においてアウタハブの内周側とインナハブの外周側とが重なり合わない非重合部位を有している。そして、弾性部材は、非重合部位に介在する部位のシャフトの径方向の寸法が、非重合部位におけるアウタハブとインナハブとの隙間寸法よりも小さくなっている。これにより、非重合部位では、弾性部材がアウタハブおよびインナハブから離間し易くなることで、弾性部材におけるシャフトの軸方向のバネ定数を低下させることができる。この結果、電磁石への通電のオンオフに伴うロータとアーマチュアとの連結およびロータとアーマチュアとの切り離しの応答性の向上を図ることができる。
第6の観点によれば、動力伝達装置は、アウタハブの内周側およびインナハブの外周側における互いに対向する対向部位として、シャフトの回転方向において対向する第1対向部位、およびシャフトの回転方向において対向しない第2対向部位を有している。弾性部材は、第2対向部位に介在する部位の少なくとも一部がアウタハブの内周面およびインナハブの外周面それぞれに接触するように構成されている。弾性部材は、第1対向部位に介在する部位の少なくとも一部がアウタハブの内周面およびインナハブの外周面の少なくとも一方との間に隙間が形成される構造になっている。
このように、弾性部材の第2対向部位に介在する部位の少なくとも一部をアウタハブの内周面およびインナハブの外周面それぞれに接触させる構造とすれば、弾性部材の第2対向部位に介在する部位を弾性部材における付勢部材として機能させることができる。すなわち、弾性部材における付勢部材としての機能を維持することができる。
また、弾性部材の第1対向部位に介在する部位の少なくとも一部をアウタハブの内周面およびインナハブの外周面の少なくとも一方から離間させる構造とすれば、弾性部材の第1対向部位に介在する部位における付勢部材としての機能を低下させることができる。
これにより、弾性部材の第1対向部位に介在する部位におけるシャフトの回転方向のバネ定数を変更したとしても、それに伴うシャフトの軸方向におけるバネ定数への影響を小さくすることができる。したがって、弾性部材におけるシャフトの回転方向に対する耐久性の向上を図りつつ、電磁石への通電のオンオフに伴うロータとアーマチュアとの連結およびロータとアーマチュアとの切り離しの応答性を確保することができる。
第7の観点によれば、動力伝達装置は、弾性部材のうち第2対向部位に介在する部位の少なくとも一部におけるシャフトの径方向の寸法が、第2対向部位におけるアウタハブとインナハブとの隙間寸法以上になっている。弾性部材のうち第1対向部位に介在する部位の少なくとも一部は、シャフトの径方向に直交する方向の寸法が、第1対向部位におけるアウタハブとインナハブとの隙間寸法よりも小さくなっている。これによると、弾性部材の第2対向部位に介在する部位を弾性部材における付勢部材として機能させることで、弾性部材の第1対向部位に介在する部位における付勢部材としての機能を低下させることができる。
第8の観点によれば、動力伝達装置は、アウタハブの内周側およびインナハブの外周側における互いに対向する対向部位として、シャフトの回転方向において対向する第1対向部位、およびシャフトの回転方向において対向しない第2対向部位を有している。
弾性部材は、第2対向部位に介在する部位の少なくとも一部がアウタハブの内周面およびインナハブの外周面それぞれに接触するように構成されている。弾性部材は、第1対向部位に介在する部位の少なくとも一部に、アウタハブの内周面およびインナハブの外周面の少なくとも一方との間に生ずる摩擦抵抗を低減するための抵抗低減部が設けられている。
このように、弾性部材の第2対向部位に介在する部位の少なくとも一部をアウタハブの内周面およびインナハブの外周面それぞれに接触させる構造とすれば、弾性部材の第2対向部位に介在する部位を弾性部材における付勢部材として機能させることができる。すなわち、弾性部材における付勢部材としての機能を維持することができる。
また、弾性部材の第1対向部位に介在する部位の少なくとも一部に摩擦抵抗を低減するための抵抗低減部を設ける構造とすれば、弾性部材の第1対向部位に介在する部位における付勢部材としての機能を低下させることができる。
これにより、弾性部材の第1対向部位に介在する部位におけるシャフトの回転方向のバネ定数を変更したとしても、それに伴うシャフトの軸方向におけるバネ定数への影響を小さくすることができる。したがって、弾性部材におけるシャフトの回転方向に対する耐久性の向上を図りつつ、電磁石への通電のオンオフに伴うロータとアーマチュアとの連結およびロータとアーマチュアとの切り離しの応答性を確保することができる。
第9の観点によれば、動力伝達装置の抵抗低減部は、摩擦抵抗を低減するための表面処理が施された部位で構成されている。これによると、弾性部材と各ハブとの間に隙間を設けることなく、弾性部材の第1対向部位に介在する部位における付勢部材としての機能を低下させることができる。
第10の観点によれば、動力伝達装置の抵抗低減部は、アウタハブの内周側およびインナハブの外周側の少なくとも一方に向かって突き出る突出部、アウタハブの内周側およびインナハブの外周側の少なくとも一方から離間する離間部を有する部位で構成されている。これによると、弾性部材の第1対向部位に介在する部位における各ハブとの接触面積が小さくなることで、弾性部材の第1対向部位に介在する部位における付勢部材としての機能を低下させることができる。
第11の観点によれば、動力伝達装置は、アウタハブの内周側およびインナハブの外周側における互いに対向する対向部位として、シャフトの回転方向において対向する第1対向部位、およびシャフトの回転方向において対向しない第2対向部位を有している。弾性部材は、第2対向部位に介在する部位の少なくとも一部がアウタハブの内周側およびインナハブの外周側それぞれに当接するように構成されている。弾性部材は、第1対向部位の少なくとも一部に弾性部材との間に生ずる摩擦抵抗を低減するための抵抗低減部が設けられている。
このように、弾性部材の第2対向部位に介在する部位の少なくとも一部をアウタハブの内周面およびインナハブの外周面それぞれに接触させる構造とすれば、弾性部材の第2対向部位に介在する部位を弾性部材における付勢部材として機能させることができる。すなわち、弾性部材における付勢部材としての機能を維持することができる。
また、第1対向部位の少なくとも一部に摩擦抵抗を低減するための抵抗低減部を設ける構造とすれば、弾性部材の第1対向部位に介在する部位における付勢部材としての機能を低下させることができる。
これにより、弾性部材の第1対向部位に介在する部位におけるシャフトの回転方向のバネ定数を変更したとしても、それに伴うシャフトの軸方向におけるバネ定数への影響を小さくすることができる。したがって、弾性部材におけるシャフトの回転方向に対する耐久性の向上を図りつつ、電磁石への通電のオンオフに伴うロータとアーマチュアとの連結およびロータとアーマチュアとの切り離しの応答性を確保することができる。
第12の観点によれば、動力伝達装置の抵抗低減部は、アウタハブの内周側およびインナハブの外周側の少なくとも一方において、摩擦抵抗を低減するための表面処理が施された部位で構成されている。これによると、弾性部材と各ハブとの間に隙間を設けることなく、弾性部材の第1対向部位に介在する部位における付勢部材としての機能を低下させることができる。
第13の観点によれば、動力伝達装置の抵抗低減部は、アウタハブの内周側およびインナハブの外周側の少なくとも一方において、第1対向部位における弾性部材に向かって突き出る突出部、弾性部材から離間する離間部を有する部位で構成されている。これによると、弾性部材の第1対向部位に介在する部位と各ハブとの接触面積が小さくなることで、弾性部材の第1対向部位に介在する部位における付勢部材としての機能を低下させることができる。
第14の観点によれば、動力伝達装置の弾性部材は、第2対向部位に介在する部位の少なくとも一部がアウタハブの内周側およびインナハブの外周側との間に圧入されている。アウタハブの内周側のうち弾性部材が圧入される部位は、弾性部材の圧入代が弾性部材の圧入方向の手前側から奥側に向かって大きくなるようにテーパ形状になっている。
これによると、弾性部材の第2対向部位を付勢部材として機能させる構造において、アウタハブと弾性部材との組付性を確保することができる。なお、この場合の圧入代は、アウタハブの内周側における弾性部材が圧入される部位の内径から弾性部材の外径を減じた内外径差である。
第15の観点によれば、動力伝達装置におけるインナハブの外周側のうち弾性部材が圧入される部位は、弾性部材の圧入代が弾性部材の圧入方向の手前側から奥側に向かって大きくなるようにテーパ形状になっている。これによると、弾性部材の第2対向部位を付勢部材として機能させる構造において、インナハブと弾性部材との組付性を確保することができる。なお、この場合の圧入代は、インナハブの外周側における弾性部材が圧入される部位の外径を弾性部材の内径から減じた内外径差である。
第16の観点によれば、動力伝達装置は、弾性部材が、EPDM、NBR、H−NBRのいずれかのゴム材料で構成されている。これによると、耐摩耗性に優れたEPDM、NBR、H−NBRのいずれかのゴム材料で弾性部材を構成しているので、弾性部材におけるインナハブおよびアウタハブと非接着状態となっている部位の摩擦による摩耗を抑えることができる。この結果、弾性部材における長寿命化を図ることができる。