以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
(実施形態1)
図1は実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す説明図である。図1では装置正面からその内部を見ている。
この画像形成装置は、たとえば電子写真方式の画像形成装置である。電子写真方式の画像形成装置は、像担持体(感光体ドラム)上に静電的に形成されたトナー像を、循環移動する中間転写ベルトに1次転写する1次転写手段と、中間転写ベルト上に形成される中間トナー像を画像支持体に2次転写する2次転写手段と、これら各部へ用紙を搬送する搬送経路を備える。
この画像形成装置100は、電子写真方式の作像プロセスを用いてカラー画像を記録媒体(たとえば用紙)上に形成する。画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置とも称され、4組の画像形成部によりカラー画像を形成する。4組の画像形成部は、イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Y、マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10M、シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10C、ブラック(K)色の画像を形成する画像形成部10Kである。
画像形成部10Yは、像担持体としての感光体ドラム1Yと、その周囲に配置された帯電部2Y、光書込部3Y、現像装置4Yおよび感光体ドラムクリーニング装置5Yとを有する。同様に、画像形成部10Mは、像担持体としての感光体ドラム1Mと、その周囲に配置された帯電部2M、光書込部3M、現像装置4Mおよび感光体ドラムクリーニング装置5Mとを有する。画像形成部10Cは、像担持体としての感光体ドラム1Cと、その周囲に配置された帯電部2C、光書込部3C、現像装置4Cおよび感光体ドラムクリーニング装置5Cとを有する。画像形成部10Kは、像担持体としての感光体ドラム1Kと、その周囲に配置された帯電部2K、光書込部3K、現像装置4Kおよび感光体ドラムクリーニング装置5Kとを有する。なお、画像形成部10Y、10M、10Cおよび10Kのそれぞれの感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K、帯電部2Y、2M、2Cおよび2K、光書込部3Y、3M、3Cおよび3K、ならびに感光体ドラムクリーニング装置5Y、5M、5Cおよび5Kは、それぞれ同様の機能を有する構成である。
中間転写ベルト11は複数の支持ローラー16により走行可能に架設されている。
画像形成部10Y、10M、10Cおよび10Kに形成された各色のトナー像は、1次転写部7Y、7M、7Cおよび7Kにより走行する中間転写ベルト11上に逐次転写される。これにより中間転写ベルト11上には、各色(Y、M、C、K)の層が重畳したカラー画像(トナー像)が1次転写される。
中間転写ベルト11に当接して2次転写ローラー12が配設されている。2次転写ローラー12は、中間転写ベルト11の動きに合わせて従動する。2次転写ローラー12の中間転写ベルト11を介して対向する位置には、複数の支持ローラー16の1つが配設されている。2次転写ローラー12と中間転写ベルト11とによって2次転写ニップ部18が形成されている。
搬送部60は、複数の用紙トレイ291に収容されている用紙Pを搬送する。用紙トレイ291に収容された用紙Pは、給紙部290によって取り込まれ、搬送部60へと送り出される。用紙Pは、搬送部60を通ってループローラー対25およびレジストローラー対26を経て、2次転写ニップ部18に搬送される。
2次転写ニップ部18において中間転写ベルト11上に形成されたカラー画像が用紙P上に2次転写される。
カラー画像が転写された用紙Pは、定着部50の定着ニップ部55において熱と圧力とが加えられることにより、用紙P上のトナー像が溶融定着される。
定着部50は、一対の定着ローラー51および52(図2参照)を備える。一対の定着ローラー51および52は互いに圧接して配置されることにより用紙Pを圧接する。定着部50は、定着ローラー52を加熱する加熱手段(不図示)を備えている。加熱手段としては、たとえば、ハロゲンランプなどのヒーターを用いる。定着部50は、用紙Pを搬送するとともに、一対の定着ローラー51および52による圧力および加熱によって熱定着を行うことで、用紙Pに画像を定着させる。
定着処理が施された用紙Pは、定着ニップ部55の下流側に設けられている定着排紙ローラー対27および排紙搬送ローラー対28を経て排紙トレイ300に排紙される。
画像形成装置100の上記各部は、制御部90と接続されており、制御部90により適宜制御される。制御部90の一部として構成されるCPU(不図示)は、画像形成された画像のピクセル数をカウントして積算する処理、または画像形成処理された用紙Pの枚数をカウントして積算する処理等を実行する。これらの処理の詳細については後述する。なお、これらの処理に対応するプログラムは、制御部90に含まれる記憶部(不図示)等に格納される。画像形成装置100の各部の各機能は、CPUが対応するプログラムを実行することにより発揮される。
なお、画像形成装置100は、それぞれ上述した構成要素以外の構成要素を含んでいてもよく、あるいは、上述した構成要素のうちの一部が含まれていなくてもよい。
次に、画像形成装置100により用紙に画像形成する電子写真プロセスについて説明する。
画像形成装置100による電子写真プロセスは周知のものと同様であるのでここでは概略を説明する。
コピー機としての画像形成は以下のとおりである。まず、スリットSLを頂部に備える原稿台に原稿が載置される。載置された原稿は、画像読取り装置SCの走査露光装置の光学系により画像が走査露光され、原稿からの反射光がミラーを介してラインイメージセンサーによって読み込まれ光電変換される。光電変換されて生成された色毎の画像情報信号は、画像処理部(不図示)によりアナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が施された後、対応する色の画像形成部10Y、10M、10Cおよび10Kの光書込部3Y、3M、3Cおよび3Kにそれぞれ入力される。
画像形成部10Y、10M、10Cおよび10Kの光書込部3Y、3M、3Cおよび3Kは、画像情報信号を感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1Kに書き込み、感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K上に画像情報信号に基づく潜像を形成する。具体的には、感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1Kは、有機光導電体(Organic Photo Conductor:OPC)を含むポリカーボネート等の樹脂からなる感光層を金属基体上に有している。感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1Kの表面は、スコロトロンタイプ等のコロナ放電極からなる帯電部2Y、2M、2Cおよび2Kにより生成されるイオンにより帯電され、光書込部3Y、3M、3Cおよび3Kは画像情報信号に基づいて感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K上を走査露光する。帯電された感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1Kの露光された部分は電位が低下し、画像情報信号に対応する静電潜像が感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K上に形成される。現像装置4Y、4M、4Cおよび4Kは、静電力を利用して感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K上に形成された静電潜像をトナーで現像し、各色に対応するトナー像が形成される。
現像するためのトナーは、感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1Kと同じ極性に帯電している。たとえば、感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1Kは負極に帯電している。負極に帯電された感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K上の領域のうち、光書込部3Y、3M、3Cおよび3Kにより電位が低下した潜像部分にだけ、負極に帯電したトナーが付着され、感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K上に静電潜像を形成できる。感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K上の静電潜像は、中間転写ベルト11上に1次転写され、中間転写ベルト11上にトナー像を形成できる。このとき、中間転写ベルト11を正極にすることによって、負極に帯電したトナーの中間転写ベルト11への転写を促すことができる。なお、中間転写ベルト11上には、印刷濃度や、色または画像形成位置の補正等のために、用紙Pに転写させないパッチが形成される。パッチを形成するためのトナーは、静電潜像を形成するためのトナー同様、負極に帯電している。それから、中間転写ベルト11上に形成されたトナー像は、2次転写ニップ部18において、用紙P上に2次転写される。このとき、用紙Pを負極に帯電することによって、中間転写ベルト11により正極に帯電されたトナー像の、用紙Pへの転写を促すことができる。
2次転写ニップ部18を通過してトナー像が転写されている用紙Pは、定着部50へ搬送されて画像の定着が行われ、排紙トレイ300に排紙される。
次に、用紙搬送について説明する。
図2は用紙の搬送経路を説明するための説明図である。この図は、図1と同様に装置正面からその内部を見た図である。
2次転写ニップ部18、定着部50へ用紙を搬送する搬送部60は、2次転写ニップ部18より上流側に、レジストローラー対26、ループローラー対25が配置されている。レジストローラー対26はモーターRMによって駆動される。また、レジストローラー対26の上流側近傍には、用紙検知センサー71が設けられている。用紙検知センサー71は、搬送されてきた用紙の先端がレジストローラー対26に突き当たる位置にまで来たことを検知する。
ループローラー対25は、たとえば、用紙搬送方向に対して交差する方向(通常は搬送方向に直交する方向)に少なくとも2個のローラー対が配置されている。これら2個のローラー対は独立して動作する。このため2個のローラー対はそれぞれ独立したモーターLM1および2によって駆動される。
なお、モーターRM、LM1および2は、いずれも高い回転精度と制御精度を必要とすることからステッピングモーターを使用することが好ましい。
ループローラー対25の上流側には給紙搬送経路61として、用紙トレイ291から給紙された用紙Pを搬送するための第1中間搬送ローラー対23および第2中間搬送ローラー対24を備える。用紙トレイ291側から第1中間搬送ローラー対23、第2中間搬送ローラー対24の順に配置されている。第1中間搬送ローラー対23および第2中間搬送ローラー対24はそれぞれ独立したモーターMM1および2によって駆動される。
各モーターMM1および2は、モーターRM、LM1および2などと同様に、ステッピングモーターを使用することが好ましい。
用紙トレイ291から給紙された用紙Pは、第1中間搬送ローラー対23および第2中間搬送ローラー対24を経由した後、ループローラー対25により搬送されて、回転停止状態のレジストローラー対26に突き当たる。レジストローラー対26に用紙Pが突き当たった後も、レジストローラー対26よりも上流側のローラー対による用紙Pの搬送は継続される。したがって、レジストローラー対26によって先端が停止させられた用紙Pは、第1中間搬送ローラー対23、第2中間搬送ローラー対24、およびループローラー対25によって搬送され続ける。これにより、レジストローラー対26とループローラー対25との間で用紙Pにループが形成される。
このような一連のループ形成動作により形成されるループは、図示しないガイド部材によってガイドされて適正な形状かつ十分な量で形成される。用紙Pにループが形成されると、レジストローラー対26よりも上流側に位置している第1中間搬送ローラー対23、第2中間搬送ローラー対24、およびループローラー対25の回転が停止され、用紙Pの搬送が停止される。各ローラー対が回転を停止している状態において各モーターRM、LM1および2、MM1、MM2は、いずれも通電されて励磁されている。これにより各モーターRM、LM1および2、MM1、MM2には静止トルクが発生し、各ローラー対が用紙を押さえた状態になっている。
次に、用紙Pを再スタート(レジスト再起動という)するために、レジストローラー対26、ループローラー対25、第1中間搬送ローラー対23および第2中間搬送ローラー対24を同調させて回転を開始する。これにより、レジストローラー対26に突き当たって停止していた用紙Pはスキュー補正が行われて、正確なタイミングで搬送され、2次転写ニップ部18へと送り出される。その後は、既に説明した取り、定着部50よる定着動作が行われ排紙される。定着動作後に用紙を排紙する定着排紙ローラー対27および排紙搬送ローラー対28も、用紙Pを搬送する搬送部60を構成する。
用紙Pの裏面にも画像形成を行う場合、定着排紙ローラー対27と排紙搬送ローラー対28との間に配置された切替ゲート45が切り替えられる。用紙表面に対する画像形成を終えた用紙Pは、切替ゲート45の切り替えに伴い、反転搬送経路62へと送り出される。
両面印刷のための搬送経路としては、反転搬送経路62と両面搬送経路63がある。反転搬送経路62には、デカーラーローラー対31、第1反転搬送ローラー対32、第2反転搬送ローラー対33、反転ローラー対34、および支持ローラー対35が配置されている。これらのローラー対31〜35は、用紙搬送方向の上流側から下流側にかけてこの順番で配置されている。デカーラーローラー対31、第1反転搬送ローラー対32、第2反転搬送ローラー対33、および反転ローラー対34も、用紙Pを搬送する搬送部60を構成する。これらのローラー対31〜34によって搬送された用紙Pは、その後端が反転ローラー対34に到達する位置まで搬送されると、反転ローラー対34の反転動作によってスイッチバックされる。そして、用紙Pは、両面搬送経路63へと送り出される。なお、支持ローラー対35は、反転ローラー対34より先に到達した用紙Pの動きに合わせて空回りして用紙Pを支持する。
両面搬送経路63には、7つの両面搬送ローラー対37〜43が配置されており、これらのローラー対は、用紙搬送方向の上流側から下流側にかけてこの順番で配置されている。7つの両面搬送ローラー対37〜43も用紙Pを搬送する搬送部60を構成する。
これらの両面搬送ローラー対37〜43によって搬送された用紙Pは、ループローラー対25と第2中間搬送ローラー対24との間に設定された合流点からループローラー対25方向へ回帰する。
第1両面搬送ローラー対37はモーターDM1によって駆動される。第2両面搬送ローラー対38および第3両面搬送ローラー対39は連動しており、1つのモーターDM2によって駆動される。第4両面搬送ローラー対40、第5両面搬送ローラー対41および第6両面搬送ローラー対42は連動しており、1つのモーターDM3によって駆動される。第7両面搬送ローラー対43はモーターDM4によって駆動される。各モーターDM1〜4は、他のモーター同様にステッピングモーターを使用することが好ましい。図示していないが、反転搬送経路62のデカーラーローラー対31、第1反転搬送ローラー対32、第2反転搬送ローラー対33、反転ローラー対34についても、それぞれを駆動するモーター(これらもステッピングモーターが使用される)が接続されている。
両面搬送経路63から搬送された用紙Pは、ループローラー対25により搬送されて、回転停止状態のレジストローラー対26に突き当たる。レジストローラー対26に用紙Pが突き当たった後も、レジストローラー対26よりも上流側のループローラー対25と、両面搬送ローラー対37〜43による用紙Pの搬送は継続される。したがって、レジストローラー対26によって先端が停止させられた用紙Pは、ループローラー対25、両面搬送ローラー対37〜43によって搬送され続ける。これにより、レジストローラー対26とループローラー対25との間で用紙Pにループが形成される。
このような一連のループ形成動作により形成されるループは、図示しないガイド部材によってガイドされて適正な形状かつ十分な量で形成される。用紙Pにループが形成されると、レジストローラー対26よりも上流側のループローラー対25、両面搬送ローラー対37〜43の回転が停止され、用紙Pの搬送が停止される。このとき各ローラー対が回転を停止している状態において各モーターRM、LM1および2、DM1〜4は、いずれも励磁電流が流されている。これにより各モーターRM、LM1および2、DM1〜4には静止トルクが発生し、各ローラー対が用紙を押さえた状態になっている。
なお、図においては、各ローラー対23〜28、31〜34、36〜43と各モーターRM、LM1および2、MM1および2、DM1〜4との接続関係を点線により示したが、このような接続関係は装置構成によって異なる。たとえば、ローラー対の一方のローラーとモーターの軸がギヤまたはベルトアンドプーリーなどの接続手段を介して接続されているものである。このような機械構成は従来周知の構成と同様である。またこのような接続関係は図示する場合に限定されるものではない。
次に、用紙Pを再スタートするために、レジストローラー対26、ループローラー対25、両面搬送ローラー対37〜43を同調させて回転を開始する。これにより、レジストローラー対26に突き当たって停止していた用紙Pは、スキュー補正が行われながら正確なタイミングで搬送され、2次転写ニップ部18へと送り出される。
両面搬送経路63には、屈曲した経路形状が採用されている。屈曲の程度は、全体として両面搬送ローラー対37〜43からループローラー対25まで用紙Pは180°屈曲することになる(先端と後端が向かい合う位置となる)。第6両面搬送ローラー対42から第7両面搬送ローラー対43まで、および第7両面搬送ローラー対43からループローラー対25までは、おおむね90°程度用紙Pを屈曲させて搬送することになる。これは、用紙Pの搬送に必要な経路長を確保しつつも、画像形成装置本体の小型化の要請に応える必要があるからである。
最下流側に位置する第7両面搬送ローラー対43は、両面搬送経路63のうち屈曲した経路に配置されている。また、この第7両面搬送ローラー対43の上流側に位置する第4〜6両面搬送ローラー対40〜42、さらにその上流側に位置する第1〜第3両面搬送ローラー対37,38,39は、屈曲した経路に用紙Pを送り込む位置に配置されている。このよう位置に配置される第1〜第7両面搬送ローラー対37〜43は、厚紙など剛性の高い用紙Pであっても屈曲経路を通紙する必要があることから、高い搬送力が設定されている。
ループ形成動作について詳しく説明する。
ループ形成動作は、用紙トレイ291から搬送された用紙Pについて行うケースと、両面搬送経路63から搬送された用紙Pについて行うケースとがあるが、ここでは後者のケースを例に説明する。
図3は搬送経路の要部説明図であり、ループ形成時における各ローラーの回転停止時の状態を示す図である。また、図3において実線は用紙Pの実態的な形状を示し、点線は理想的な形状を示している。
ループ形成時には、ループローラー対25およびこれよりも上流側のローラー対によって同一の用紙Pが挟持されている。図3においては、A3長さの用紙Pの場合を示しており、ループ形成時にはループローラー対25および第4〜7両面搬送ローラー対40〜43によって同一の用紙Pが挟持される。ループ形成動作ではこれらのループローラー対25およびそれより上流側の第4〜7両面搬送ローラー対40〜43を同調(同期)させて回転させる。もちろんA3より長い、たとえばA3の長手方向の長さを超える用紙の場合は、さらに上流側の第1〜3両面搬送ローラー対37〜39についても同期させて回転させる。
ループ形成動作は既に説明したとおり、両面搬送経路63から送り出された用紙Pが、ループローラー対25、第7両面搬送ローラー対43、第6両面搬送ローラー対42、第5両面搬送ローラー対41、および第4両面搬送ローラー対40により搬送されて、回転停止状態のレジストローラー対26に突き当てることで、レジストローラー対26とループローラー対25との間に用紙Pにループを形成する。このとき用紙Pはレジストローラー対26に突き当てられてスキュー補正されるのであるが、ループローラー対25との摩擦が強すぎるとスキュー補正に伴いループが変形してしまうおそれがある。このためループローラー対25はそれより上流側の各両面搬送ローラー対よりも用紙Pに対する摩擦が弱くなるように構成されている。これによりループ形成中または形成後は、ループローラー対25と用紙Pが適度にすべることで、スキュー補正が行われるようにループが形成されるとともに必要以上に用紙Pに力が加わらないようにしている。
ところで、ループが形成され始めると、用紙Pの剛性によってループを解消しようとする力(用紙Pの「復元力」という)が蓄えられてくる。この用紙Pの復元力は、ループローラー対25が用紙Pを送り出そうとする力に逆らう方向の力である。このためループローラー対25と用紙Pとの間でスリップが生じ、ループローラー対25によって用紙Pを適切に送り出すことができない可能性がある。一方で、第4〜7両面搬送ローラー対40〜43は、屈曲した経路に配置されるローラー対、または屈曲した経路に用紙Pを送り込むローラー対であることから高い搬送力に設定されている。このため、第4〜7両面搬送ローラー対40〜43では用紙Pがスリップすることはほとんどない。このため、図3の実線で示したように、ループローラー対25と第7両面搬送ローラー対43、さらに上流側の第7両面搬送ローラー対43と第6両面搬送ローラー対42との間等にも用紙Pにループが形成されてしまうことがある。このようなレジストローラー対26とループローラー対25の間以外にできるループを副次的ループという。
一方、ループ形成動作が終了すると、レジストローラー対26よりも上流側のローラー対の回転が停止される。そうするとこの停止時点で、用紙Pの剛性に起因して副次的ループが元も戻ろうとする力(これも用紙Pの復元力である)が第4〜第7両面搬送ローラー対40〜43に作用する。このため、これら第4〜第7両面搬送ローラー対40〜43を駆動するモーターDM3およびM4は、高い負荷が作用した状態になる。特に、モーターDM4は、ループローラー対25と第7両面搬送ローラー対43との間にできた副次的ループと、第7両面搬送ローラー対43と第6両面搬送ローラー対42の間にできた副次的ループの両方の復元力を受けて高い負荷が作用する。
このような高負荷状態で用紙Pの再スタートを行った場合、モーターDM3およびDM4の回転を開始する際や加速する際に脱調することがある。このため、用紙Pの搬送を適切に行えない可能性がある。特に、この現象は、用紙Pの剛度が高い厚紙などの搬送において顕著となる。
用紙の剛度は、紙の「こわさ」といわれるものであり、坪量や厚さが大きいほど高くなる。たとえば、厚さの2〜3乗に比例する。剛度は、厚さが一定であれば、密度(緊度)に正比例する。このため用紙Pの厚さが厚いものほど、同じ厚さであれば剛度が高いものほど再スタート時に脱調してしまう可能性が高いものとなる。
そこで、本実施形態では、用紙Pのループ形成動作が終了して用紙Pを停止させた後、すなわち、各ローラー対が停止した後、ループローラー対25よりも上流側の第4〜7両面搬送ローラー対40〜43を駆動するモーターDM3、DM4の静止トルクを開放することとした。しかも、この静止トルクの開放はモーターDM3を先に開放し、後からモーターDM4を開放するようにした。これにより、第4〜7両面搬送ローラー対40〜43の反転(逆回転)を許容し、用紙Pの復元力を吸収する。しかも、モーターDM3、モーターDM4の静止トルクを別々に開放するため、用紙Pの復元力が一度に開放されてループローラー対25に大きな力が加わることもない。
さらに具体的に説明する。図4は図3の状態から第4〜6両面搬送ローラー対40〜42を駆動するモーターDM3の静止トルクを開放した状態を示す図であり、図5は図4の状態から第7両面搬送ローラー対43を駆動するモーターDM4の静止トルクを開放した状態を示す図である。
モーターの静止トルクを開放するためには、モーターへの通電を切って励磁電流を切ればよい。
図3に示したループ形成後に各ローラーが停止した状態は、各モーターDM3、DM4へ静止のための励磁電流が供給されている状態である(他のモーターも同様である)。これにより各モーターDM3およびDM4は静止トルクが発生している。
この状態から、図4に示すように、モーターDM3に対する励磁電流を切る。これによりモーターDM3の出力軸がフリーで回転するようになって静止トルクが開放される。これにより用紙Pの復元力を受けて第4〜6両面搬送ローラー対40〜42が逆回転し、経路形状に沿って第7両面搬送ローラー対43より上流側において用紙所要の状態に用紙Pが復元する。さらにこの後、図5に示すように、モーターDM4に対する励磁電流を切る。これによりモーターDM4の出力軸が自由に回転するようになって静止トルクが開放される。これにより用紙Pの復元力を受けて第7両面搬送ローラー対43が逆回転し、経路形状に沿ってループローラー対25より上流側において用紙所要の状態に用紙Pが復元する。
このように、順番に励磁電流を切ることで、モーターDM3、DM4に高い負荷が作用するといった状態を回避することができる。しかも、一度に、用紙Pを搬送しているモーターDM3、DM4の励磁電流を切るのではなく、異なるタイミングで上流側から順番に切ったことで、用紙Pの副次的ループに起因する復元力が、上流側から徐々に開放されることになる。
この励磁電流を切るタイミングをモーターごとに異なるようにした理由を説明する。励磁電流を切るタイミングとしては、たとえばすべてのモーターの励磁電流を一度に切ることが考えられる。そうすると複数の副次的ループによる用紙Pの復元力がループローラー対25から上流側の部分で一度に開放される。そうすると、その復元力が開放されるときの力で、用紙Pが爆ぜるように後退する可能性がある。そうするとループローラー対25の挟持力だけではその復元力開放時の力を抑えきれなくて、レジストローラー対26とループローラー対25の間の正常なループが消えてしまったり、紙曲りが発生したりしてしまう可能性がある。
本実施形態では、既に説明したように、励磁電流を切るタイミングをモーターごとに異なるようにしたことで、複数の副次的ループが一度に開放されることで正常なループが消えたり紙曲がりが発生したりするのを防止または抑制している。
このようにすることでモーターDM3、DM4の高負荷状態が解消されているため、再スタート時の脱調の発生が抑制または防止されるので、用紙Pの搬送を適切に行うことができる。
なお、ここでは、用紙PとしてA3サイズを例に説明した。このため用紙Pの搬送方向前端がレジストローラー対26に到達した時点で、その後端は第4両面搬送ローラー対40までである。このため、励磁電流はモーターDM3およびDM4以外のモーターDM1およびDM2はそのまま励磁状態を継続しておいてもよい。一方、A3より長い用紙が使用されている場合は、後端が第3両面搬送ローラー対39から第2両面搬送ローラー対38にまで残っており、さらに長い場合は第1両面搬送ローラー対37にまで残っていることがある。このような場合には、まずモーターDM1の励磁電流を切り、次にモーターDM2の励磁電流を切り、次にモーターDM3の励磁電流を切り、最後にモーターDM4の励磁電流を切る。このようにすることで、長尺の用紙であっても、上流側(後端側)から順に用紙Pの復元力が開放されるようになる。
次に、用紙Pの再スタートについて説明する。用紙Pの再スタートは、まず、モーターDM3およびDM4について励磁電流を流して(励磁オン)、停止した状態で静止トルクを発生させる。その後、所定の励磁期間が経過するのを待って、モーターDM3およびDM4に回転のためのパルス信号を供給して回転させる。この再スタートのときはレジストローラー対26、ループローラー対25を駆動しているモーターRMおよびLMもモーターDM3およびDM4と同調させてスタートさせる。これに印刷のための搬送が開始される。
モーターDM3およびDM4は、励磁電流を切った状態から流す状態(オフからオン)に切り替えると、励磁電流が流れることでモーターの出力軸が、フリーの状態からトルクを発生する。このとき出力軸が微小振動を起こす。またこのときに出力軸に接続されているギヤなどがかみ合う状態へと移行する。しかしこの微小振動が起きている間にモーターを回転すると、モーターごとに振動状態が異なるため、脱調してしまうおそれがある。そこで、励磁電流を流してからわずかの期間、静止させておいて、振動が収まってからモーターを回転駆動させる。この励磁電流オンから回転開始までの時間を「前励磁時間」という。前励磁時間は、モーターDM3およびDM4の特性に応じた値が、実験やシミュレーションを通じてあらかじめ決められている。
ここで、励磁電流を切るタイミングと再スタートのタイミングをタイムチャートを用いて説明する。図6は、実施形態1のモーターDM3およびDM4の動作のタイミングを示すタイムチャートである。図6においては、モーターDM3のタイムチャートとモーターDM4のタイムチャートを上下に並べて両者のタイミングがわかるようにしている。また、各タイムチャートは、それぞれ上段に励磁電流のオン、オフ、下段にモーター回転速度の概略を示している。また、横軸は時間軸である。なお、時間軸において、「t数字」は経過時間を表し、数字は大きいほど時間が経過していることを示す。また後述する他の図においても「t数字」の数値が同じものは同じ時間であることを示す。
図6を参照して、時間t0の段階でレジストローラー対26に用紙Pの先端が到達して減速に入る。モーターDM3とモーターDM4は同じタイミングで同じ減速割合で減速する。そして時間t1で停止する。この時間t0からt1の間で減速して用紙Pが搬送される間に、レジストローラー対26とループローラー対25の間でループが形成されて、時間t1の時点でループ形成が完了する。また、時間t1で減速が終わりモーターDM3とモーターDM4は停止する。そして、モーターDM3が停止すると同時にモーターDM3の励磁電流を切る。これにより静止トルクが開放され、第4〜6両面搬送ローラー対40〜42が自由に回転する。この時点ではループローラー対25に近い方のモーターDM4は励磁電流が流されていて静止トルクが効いている状態である。その後、時間t2の時点でモーターDM4の励磁電流を切る。これによりモーターDM4の静止トルクが開放され、第7両面搬送ローラー対43が自由に回転する。その後、時間t3の時点でモーターDM3およびDM4の励磁電流を入れる。このときモーターDM3およびDM4の回転は停止させたままである。その後、時間t4の時点でモーターDM3およびDM4の回転をスタートさせる(モーターRMおよびLMも同調させてスタートさせる)。時間t3〜t4の間隔が前励磁時間となる。前励磁時間は既に説明したようにモーター固有の時間となるため、実際にはモーターDM3とDM4でわずかに異なることもあるが、ここでは同じとして示した。その後はモーターDM3およびDM4がともに増速して行き時間t5で印刷のためのプロセス速度となる。
このように本実施形態1では、搬送停止から再スタートまでは時間t1〜t4の時間がかかることになる。
このような搬送ローラー対に対する制御は両面搬送経路63だけでなく、給紙搬送経路61に対しても同様に行うことが好ましい。すなわち、給紙されてきた用紙Pがレジストローラー対26に突き当てられてループが形成された後、まず、第1中間搬送ローラー対23を駆動しているモーターMM1の励磁を切る。その後、第2中間搬送ローラー対24を駆動しているモーターMM2の励磁を切る。これにより給紙搬送経路61においても、用紙Pにループが形成されることで生じた復元力が上流側から開放されることになる。
図7は、モーターMM1および2の第1の制御形態の動作のタイミングを示すタイムチャートである。
第1の制御形態では、給紙搬送経路61においても、その制御は両面搬送経路63の場合とほとんど同じである。図7を参照して、時間t0の段階でレジストローラー対26に用紙Pの先端が到達して減速に入る。モーターMM1とモーターMM2は同じタイミングで同じ減速割合で減速する。そして時間t1で停止する。この時間t0からt1の間で減速して用紙Pが搬送される間に、レジストローラー対26とループローラー対25の間でループが形成される。時間t1の時点で減速が終わりモーターMM1とモーターMM2は停止する。モーターMM1が停止すると同時にモーターMM1の励磁電流を切る。これによりモーターMM1の静止トルクが開放され、第1中間搬送ローラー対23が自由に回転する。この時点ではループローラー対25に近い方のモーターMM2は励磁電流が流されていて静止トルクが効いている状態である。その後、時間t2の時点でモーターMM2の励磁電流を切る。これによりモーターMM2の静止トルクが開放され、第2中間搬送ローラー対24が自由に回転する。その後、時間t3の時点でモーターMM1および2の励磁電流を入れる。このときモーターMM1および2の回転は停止させたままである。その後、時間t4の時点でモーターMM1および2の回転を開始させる。時間t3とt4の時間間隔が前励磁時間となる。前励磁時間は既に説明したようにモーター固有の時間となるため、実際にはモーターMM1および2でわずかに異なることもあるが、ここでは同じとして示した。その後はモーターMM1および2がともに増速して行き時間t5で印刷のためのプロセス速度となる。
このように本実施形態1では、給紙搬送経路61においても、停止からモーターを回転させる再スタートまでに時間t1〜t4までかかることになる。
ところで、給紙搬送経路61は、両面搬送経路63ほど用紙を屈曲させる構成とはなっていない。したがってそこを通る用紙の屈曲も少ないため、用紙Pに蓄えられる復元力も少ない。このためモーターMM1および2かかる負荷は両面搬送経路63のモーターDM3およびDM4ほど高くない。そこで、レジスト後の搬送停止から再スタートまでにかかる時間を低減するために、搬送の再スタート前のモーターMM1および2の励磁開始のタイミングを変えることが可能である。
図8は、モーターMM1および2の第2の制御形態の動作のタイミングを示すタイムチャートである。
図8を参照して、時間t0の段階でレジストローラー対26に用紙Pの先端が到達して減速に入る。モーターMM1とモーターMM2は同じタイミングで同じ減速割合で減速する。そして時間t1で停止する。この時間t0からt1の間で減速して用紙Pが搬送される間に、レジストローラー対26とループローラー対25の間でループが形成される。その後、時間t1の時点で減速が終わりモーターMM1とモーターMM2は停止する。モーターMM1が停止すると同時にモーターMM1の励磁電流を切る。これによりモーターMM1の静止トルクが開放され、第1中間搬送ローラー対23が自由に回転する。この時点ではループローラー対25に近い方のモーターMM2は励磁電流が流されていて静止トルクが効いている状態である。ここまでは図7で説明した第1の制御形態と同じである。
その後、第2の制御形態では、時間t1.5の時点でモーターMM2の励磁電流を切る。これによりモーターMM2の静止トルクが開放され、第2中間搬送ローラー対24が自由に回転する。その後、時間t2の時点でモーターMM1の励磁電流を入れ、時間t2.5の時点でモーターMM2の励磁電流を入れる。このときモーターMM1および2の回転は停止させたままである。その後、時間t2.8の時点でモーターMM1および2の回転をスタートさせる(モーターRMおよびLMも同調させてスタートさせる)。その後はモーターMM1および2がともに増速して行き時間t3で印刷のためのプロセス速度となる。
このように第2の制御形態では、給紙搬送経路61においては、レジストでの停止から再スタートまでの時間が時間t1〜t3となって、図7の第1の制御形態より短くすることができる。これは、用紙Pの屈曲の割合が少ないため、給紙搬送経路61で停止している用紙Pに蓄えられた復元力も小さいので、上流側(レジストローラー対26から遠い方)の方の復元力が逃げ切る前に、モーターMM1の励磁電流をオンしてもよい。このためその分速くレジスト後のループ形成から用紙搬送の再スタートまでの停止時間を少なくすることができる。
次に、本実施形態1に係る制御手順について説明する。図9は、実施形態1に係る画像形成装置の制御手順を示すフローチャートである。
この制御手順は、制御部90により実行される。まず、制御部90は、現在搬送中の用紙Pが厚紙か否かを判断する(S101)。厚紙か否かは、坪量によって判断する。坪量は、周知のとおり、1m2当たりの重量である。したがって、紙質(密度)が同じであれば、坪量の大きい方が厚い用紙ということになる。紙質が異なる場合は、同じ厚さでも坪量が高い紙は密度が高いので剛度が高いと判断できる。この判断基準としては、たとえば坪量200gsm以上を厚紙とする。このように厚紙と判断された用紙の剛度は、紙質により若干異なるものの、約400mN・m以上である。なお、この厚紙か否かの判断基準は、紙質によって変えてもよい。また、坪量に代えて、厚さや剛度の値から直接判断するようにしてもよい。
このような用紙の坪量(または厚さや剛度)は、使用している用紙Pの仕様として提供されている。坪量(または厚さや剛度)は用紙トレイ291へ用紙Pがセットされた段階で自動判別されるかまたはユーザーから入力されるので、それらの値から判断する。
S101で厚紙ではないと判断されたなら(S101:NO)、通常動作(S900)に移行してこの処理を終了する。通常動作ではレジストローラー対26に用紙Pを突き当てて停止している間に各搬送ローラーのモーターの励磁電流を切らない(オフにしない)。
一方、S101で厚紙であると判断されたなら(S101:YES)、続いて、制御部90は、用紙Pの先端がレジストローラー対26に到達したか否かを判断する(S102)。この判断は、用紙検知センサー71が用紙Pの先端を検知することで、用紙Pの先端がレジストローラー対26に到達したものとする。ここで、用紙Pの先端がレジストローラー対26の手前に到達していなければ(S102:NO)、到達したと判断されるまで待つことになる。
一方、用紙Pの先端がレジストローラー対26に到達すると(S102:YES)、制御部90は続いて、レジストローラー対26に到達した用紙Pは両面搬送経路63から来た用紙であるか否かを判断する(S103)。ここで両面印刷経路からの用紙であるか否かは、両面印刷経路中の各搬送ローラー対が駆動されているか否かにより判断すればよい。
ここで両面搬送経路63からの用紙Pであれば(S103:YES)、制御部90は、両面搬送経路63のモーターLM1および2、およびDM1〜4に減速開始を指令する(S104)。
続いて制御部90は、減速が終了したか否かを判断する(S105)。減速が終了していなければ(S105:NO)、終了するまで待つ。この減速終了までの間に、ループローラー対25および両面搬送ローラー対37〜43の回転によって、用紙Pは、停止しているレジストローラー対26に突き当てられた状態でさらに押されて、レジストローラー対26とループローラー対25との間で用紙Pにループが形成される。このとき既に説明したように、レジストローラー対26とループローラー対25との間以外に、副次的ループができてしまう。
S105において制御部90は、減速終了と判断した場合は(S105:YES)、続いて、用紙Pの長さ(紙長)が所定値Aを超えている(Aを含まず)か否かを判断する(S106)。この所定値Aは、ここではレジストローラー対26に用紙Pの先端が当たっている状態で後端が第6両面搬送ローラー対42に至らない長さである。具体的には、たとえばA4用紙の短辺の長さである(以下同様)。この判断は、制御部90が現在印刷しているジョブのジョブチケット(印刷内容)などから用紙Pのサイズを取得することで判断すればよい。
S106において制御部90は、紙長が所定値Aを超えていないと判断した場合は(S106:NO)、S109へ移行してモーターDM4の励磁電流を切る(励磁オフ)(S109)。このときモーターDM4よりも上流側の励磁電流は流したままということになる。これにより他のモーターの励磁電流をオフにした場合より再スタートを速くできる。
一方、S106において制御部90は、紙長が所定値Aを超えていると判断した場合は(S106:YES)、モーターDM3の励磁電流を切る(S107)。続いて、励磁オフ時間ta分の時間経過を待つ(S108)。このS108における励磁オフ時間taは、第7両面搬送ローラー対43と第6両面搬送ローラー対42との間の副次的ループによる復元力の解消を待つための時間である。ここで励磁オフ時間ta分経過していなければ(S108:NO)、経過するのを待つことになる。一方、モーターDM3の励磁電流オフ開始から励磁オフ時間taが経過したなら(S108:YES)、続いて制御部90は、モーターDM4の励磁電流を切る(S109)。
続いて、制御部90は、励磁オフ時間ta分の時間経過を待つ(S110)。このS110における励磁オフ時間taは、ループローラー対25と第7両面搬送ローラー対43との間の副次的ループによる復元力の解消を待つための時間である。ここではS108の励磁オフ時間taとS110の励磁オフ時間taは同じとしている。
続いて制御部90は、モーターDM3およびDM4の励磁電流を流す(励磁オン)(S111)。このとき、S106からS109に入った場合、モーターDM3の励磁電流は通電状態(励磁オン状態)が継続される。
続いて制御部90は、モーターDM3およびDM4の前励磁時間tbを待つ(S112)。ここで時間tb分経過していなければ(S110:NO)、経過するのを待つことになる。ここでも厳密には、モーターDM3とDM4のそれぞれの前励磁時間はモーター種類や装置の振動具合などによって微妙に異なる。しかしその差は少ない。このためここでは前励磁時間tbが一番長いモーターの前励磁時間tb分だけ待つことにしている。なお、その差分を厳密に制御する場合は、S106からS109に入って、その後S112に来た場合はモーターDM4の前励磁時間tb分だけ待つ。一方、S106からS107およびS108を経て、その後S112に来た場合はモーターDM3とDM4両方の前励磁時間tb分待つことになる。
続いて制御部90は、各モーターの励磁電流オンからの経過時間が前励磁時間tbが経過したなら(S112:YES)、各モーターRM、LM、DM3およびDM4の回転を開始する(S113)。これで処理は終了する。処理終了後は次の用紙Pへ印刷のためにS101からの制御が開始される(他の手順においても処理終了後は同様である)。
なお、用紙Pの紙長が所定値A以下(S106:NO)の場合、その旨を示すフラグを立てておいて、以降、DM3に対する制御を行わないようにしてもよい。たとえばS106がNOであったことを示すフラグが立っている場合は、S113においてモーターDM4のみ回転開始する(DM3は回転させない)。なぜならS106がNOであったということは、第6両面搬送ローラー対42の部分に用紙Pがないので、モーターDM3を回転させる必要がないからである。
ここまでの処理で両面搬送経路63を経て厚紙が印刷される際に、副次的ループができた場合にその復元力による用紙ずれなどの発生を防止または抑制することができる。
次に、S103において給紙搬送経路61からの搬送であった場合(S103:NO)を説明する。制御対象となるモーターが異なるだけで、処理内容は両面搬送経路63の場合と同様である。このため一部の説明を省略する。
S103において給紙搬送経路61からの搬送であった場合(S103:NO)、制御部90は、給紙搬送経路61のモーターLM1および2、MM1および2に減速開始を指令する(S124)。
続いて制御部90は、減速が終了したか否かを判断し、減速終了と判断されたなら(S125:YES)、続いて用紙Pの長さ(紙長)が所定値Aを超えている(Aを含まず)か否かを判断する(S126)。この所定値Aは、ここではレジストローラー対26に用紙Pの先端が当たっている状態で後端が第1中間搬送ローラー対23に至らない長さである。
制御部90は、紙長が所定値Aを超えていないと判断した場合は(S126:NO)、S129へ移行してモーターMM2の励磁電流を切る(S129)。このときモーターMM1の励磁電流はオンのままということになる。
一方、S126において制御部90は、紙長が所定値Aを超えていると判断した場合は(S126:YES)、モーターMM1の励磁電流を切る(S127)。続いて、紙の復元力が消えるのにかかる励磁オフ時間ta分の時間経過を待つ(S128)。ここで励磁オフ時間taは前述したS108、S110と同じでよい。モーターMM1の励磁電流オフ開始から励磁オフ時間taが経過したなら(S128:YES)、続いて制御部90は、モーターMM2の励磁電流を切る(S129)。
続いて、制御部90は、紙の復元力が消えるのにかかる励磁オフ時間ta分の時間経過を待つ(S130)。このS130における励磁オフ時間taもS128の励磁オフ時間taと同じでよい(以下同様)。
続いて制御部90は、モーターMM1および2の励磁電流を流す(S131)。このとき、S126からS129に入った場合、モーターMM1の励磁電流はオンの状態が継続される。
続いて制御部90は、モーターMM1および2の前励磁時間tbを待つ(S132)。各モーターの励磁電流オンからの経過時間が前励磁時間tbが経過していれば(S132:YES)、各モーターRM、LM、MM1および2の回転を開始する(S133)。これで処理は終了する。
なお、ここでも用紙Pの紙長が所定値A以下(S126:NO)の場合、その旨を示すフラグを立てておいて、以降、MM1に対する制御を行わないようにしてもよい。たとえばS126がNOの場合に、S133においてモーターMM2のみ回転開始する(MM1は回転させない)。
ここまでの処理で給紙搬送経路61を経て厚紙が印刷される際に、副次的ループができた場合にその復元力による用紙ずれなどの発生を防止または抑制することができる。
以上、本実施形態1によれば以下の効果を奏する。
本実施形態1では、用紙Pをレジストローラー対26に突き当ててループを形成し、用紙搬送を停止した後、ループローラー対25より上流側の複数の搬送ローラー対をそれぞれ駆動するモーターの励磁電流を切ることとした。このとき少なくとも一つのモーターの励磁電流を切るタイミングを他のモーターと異なるようにした。これにより、モーターに係る負荷を開放することができるので、用紙Pの再スタート時の脱調が抑制され、または防止されるので、用紙の搬送を適切に行うことができる。しかも、少なくとも一つのモーターの励磁電流を異なるタイミングで切ることにしたので、用紙の復元力が徐々に開放されるようになり、復元力が開放されるときの力で用紙がずれてしまうことがない。
さらには、より上流側に位置する搬送ローラー対を駆動するモーターから順に励磁電流を切ることで、ループローラー対25より上流側の複数の搬送ローラー対の間にできた副次的ループが徐々に解消されるようになり、最終的にすべての副次的ループが解消される。このため副次的ループの復元力によって搬送ローラー対のモーターにかかる負荷を低減または解消することができる。したがって、厚紙で剛度の高い紙であっても、レジスト後の再起動時に脱調するのを防止することができる。また上流側から順に励磁電流を切ることとしているため、用紙の後端側から徐々に復元力が開放されるので、特に、用紙が厚い場合でも、復元力が開放されるときの力で用紙がずれてしまうことがない。
(実施形態2)
実施形態2は、実施形態1と制御形態が異なるのみで、画像形成装置の構成は実施形態1と同じであるので、装置構成についての説明は省略する。
実施形態2では、用紙の厚さおよび剛度に応じて励磁電流を切るモーターの順番を変更する形態である。
図10は、実施形態2に係る画像形成装置の制御手順を示すフローチャートである。
この制御手順は、制御部90により実行される。一部の処理は実施形態1と同様であるので、それらの説明は一部省略する。
本実施形態2では、まず、制御部90は、現在搬送中の用紙Pの厚さが所定値D未満(厚さ<D)であるか否かを判断する(S200)。この紙厚の所定値Dは、0.3mmとする。
ここで用紙Pの厚さが所定値D未満でなければ(S200:NO)、実施形態1の制御(図9)を実行する。つまり、この場合は、用紙Pの厚さが厚く、搬送系に高い負荷がかかる可能性があるので実施形態1の制御を行うのである。
一方、S200において、制御部90は用紙Pの厚さが所定値D未満であると判断すると(S200:YES)、さらに用紙Pの剛度が所定値S未満か否かを判断する(S201)。このS201の判断により、厚さは比較的薄いけれども、剛度の高い用紙か否かを判断できる。剛度の所定値Sは、たとえば400mN・mである。ここで、用紙Pの剛度が所定値S未満でなければ(S201:NO)、実施形態1の制御(図9)を実行する(S100)。つまり、この場合は、用紙Pの剛度が高く、搬送系に高い負荷がかかる可能性があるので実施形態1の制御を行うのである。
一方、S201において、制御部90は用紙Pの剛度が所定値S未満であると判断すると(S201:YES)S202以降の処理に入る。つまり、S201がYESと判断されたということは、用紙Pの厚さが薄くかつ剛度も比較的低いということである。たとえば、厚さ0.2mm、剛度300mN・m等の用紙Pが該当する。
S202以降の処理では、S202からS205までは、実施形態1におけるS102からS105までと同じ処理である。すなわち、用紙Pの先端がレジストローラー対26に到達したか否かの判断(S202)、用紙Pは両面搬送経路63から来た用紙Pであるか否かの判断(S203)、減速開始(S204)、減速終了か否かの判断(S205)を行う。
そして、S205において、減速終了と判断されたなら(S205:YES)、本実施形態2では、制御部90は、モーターDM4の励磁電流を切る(S207)。続いて、実施形態1同様に、励磁オフ時間ta分の時間経過を待つ(S208)。ここで励磁オフ時間ta分経過していなければ(S208:NO)、経過するのを待つことになる。
励磁オフ時間ta分経過したなら(S208:YES)、制御部90は、用紙Pの長さ(紙長)が所定値Aを超えている(Aを含まず)か否かを判断する(S216)。
S216において制御部90は、紙長が所定値Aを超えていないと判断した場合は(S216:NO)、S211へ移行してモーターDM3、モーターDM4の励磁電流を流す(S211)。
一方、S216において制御部90は、紙長が所定値Aを超えていると判断した場合は(S216:YES)、モーターDM3の励磁電流を切る(S209)。つまり、紙長が所定値Aより長い場合は、モーターDM3の励磁電流を切る。
続いて、制御部90は、励磁オフ時間ta分の時間経過を待つ(S210)。
続いて制御部90は、モーターDM3およびDM4の励磁電流を流す(S211)。
その後、制御部90は、実施形態1同様に、モーターDM3およびDM4の前励磁時間tbを待って(S212)、各モーターRM、LM、DM3およびDM4の回転を開始する(S213)。これで処理は終了する。
次に、S203において給紙搬送経路61からの搬送であった場合(S203:NO)を説明する。制御対象となるモーターが異なるだけで、処理内容は両面搬送経路63の場合と同様である。
S203において給紙搬送経路61からの搬送であった場合(S203:NO)、制御部90は、給紙搬送経路61のモーターMM1および2の減速を開始し(S224)、その後、減速終了(S225:YES)後は、モーターMM2の励磁電流を切る(S227)。
続いて、励磁オフ時間ta分の時間経過を待つ(S228)。励磁オフ時間taが経過したなら(S228:YES)、続いて制御部90は、用紙Pの長さ(紙長)が所定値Aを超えている(Aを含まず)か否かを判断する(S236)。
制御部90は、紙長が所定値Aを超えていないと判断した場合は(S236:NO)、S231へ移行してモーターMM1および2の励磁電流を流す(S231)。
一方、用紙Pの長さ(紙長)が所定値Aを超えている場合は(S236:YES)、モーターMM1の励磁電流を切る(S229)。
続いて、制御部90は、励磁オフ時間ta分の時間経過を待つ(S230)。続いて制御部90は、モーターMM1および2の励磁電流を流す(S231)。
続いて制御部90は、モーターMM1および2の前励磁時間tbを待つ(S232)。前励磁時間tbが経過していれば(S232:YES)、各モーターRM、LM、MM1および2の回転を開始する(S233)。
なお、用紙Pの紙長が所定値Aを超えているか否かの判断(S216またはS236)は、モーターDM3またはMM1の励磁電流を切るステップの前であれば、後のステップ位置にあってもよい。たとえば、用紙Pの紙長が所定値A以下であることを示すフラグを立てておいて、以降、モーターDM3やMM1に対する制御を行わないようにしてもよい。
このよう本実施形態2では、厚紙ではない場合でも、搬送ローラー対を駆動するモーターの励磁電流を切ることにした。これにより、比較的薄い用紙の場合でも、搬送ローラー対にかかる負荷を低減することができる。しかし本実施形態2では、実施形態1とは異なり、どのモーターから励磁電流を切ってもよい。本実施形態2では、ループローラー対25に近い側から切ることとした。これにより再起動時には、ループローラー対25から近い側(下流側)のモーターから励磁電流を流すことが可能になるので、その分、回転開始のタイミングを速くすることができる。
また、本実施形態2では、厚さと剛度を個別に判断しているので、坪量が同じであっても、紙質によって厚さが厚かったり剛度が高かったりする用紙でも実施形態1の制御を行うことができる。たとえば、用紙として用いられるコート紙や樹脂フィルムなど(印刷媒体)は、坪量は普通紙と同じになっても、厚さや剛度が違っていたりする。本実施形態2のように坪量以外で判断することで、様々な種類の用紙(印刷媒体)において、レジストローラー対突き当て後の再起動の際に各搬送ローラー対に係る負荷を低減して、再起動時の脱調を防止することができる。
なお、本実施形態2では、2つの搬送ローラー対に至る用紙の場合を例に説明したが、さらに紙長が長く、用紙が3つ以上の搬送ローラー対に至る場合で、かつ3つ以上の搬送ローラー対を駆動するモーターがそれぞれ独立している場合は、励磁電流を切るモーターの順番はどのような順であってもよい。たとえば、3つのモーターの内、下流側と上流側の間にあるモーターの励磁電流を最初に切って、他の2つのモーターの励磁電流をその後に切るようにしてもよい。これは、厚紙であってもそのなかでは比較低い薄い用紙の場合、副次的ループの復元力も厚紙のなかでは低いものとなる。このためどのモーターの励磁電流から切っていっても副次的ループは徐々に開放されることになる。そうすると一度にすべてのモーターの励磁電流を切ってすべての副次的ループによる復元力が開放される場合と比べれば、その力は少なくなる。
また、厚さ(S200)と剛度(S201)の判断基準は、任意に設定してよく、搬送系(主に搬送ローラー対23〜24、37〜43)に高い負荷がかかると予想される厚さや剛度とすればよい。
(実施形態3)
実施形態3は、実施形態1と制御形態が異なるのみで、画像形成装置の構成は実施形態1と同じであるので、装置構成についての説明は省略する。
近年、画層形成プロセスの高速化が図られており、ループ形成のための停止時間もより短くすることが求められている。実施形態3は、副次的ループを解消しつつ、より速く回転を開始できるようにした形態である。
図11は、実施形態3のモーターDM3およびDM4の動作のタイミングを示すタイムチャートである。
本実施形態3では、レジストローラー対26に用紙Pの先端が到達して減速に入る(t0)と、モーターDM3とモーターDM4は同じタイミングで同じ減速割合で減速する。そして減速途中の時間t0.5の時点でモーターDM3に対する励磁電流を切る。このときモーターDM3は停止するとともに静止トルクが開放されて回転自由な状態となる。その後、時間t1で減速が終了してモーターDM4が停止する。この時間t0.5以降再励磁するまで、モーターDM3の静止トルクはなくなる。このため第6両面搬送ローラー対42では用紙Pに対する搬送力は失われることになる。一方、第7両面搬送ローラー対43およびループローラー対25によって搬送は継続されるため、レジストローラー対26とループローラー対25の間でループが形成される。これにより第6両面搬送ローラー対42と第7両面搬送ローラー対43の間に副次的ループは形成されない。
そして本実施形態3では、時間t1の時点で第6両面搬送ローラー対42はフリー回転する状態であるので(モーターDM3への励磁電流が切られているため)、副次的ループによる復元力の解消を待つ必要がしていない。このためモーターDM4の励磁電流もt2よりも速いt1.5の時点で切ることができる。後は、実施形態1同様に、ループローラー対25と第7両面搬送ローラー対43との間の副次的ループが解消される時間だけ待って、時間t2.5の時点でモーターDM3およびDM4の回転をスタートさせる(モーターRMおよびLMも同調させてスタートさせる)。その後、時間t2.5〜t2.8の間隔が前励磁時間となる。その後はt2.8の時点からモーターDM3およびDM4をともに増速させて行き時間t3で印刷のためのプロセス速度となる。
このように本実施形態3では、より上流側にあるモーターDM3励磁を原則域の途中で切ることで、2つのモーターの励磁再開をt3の時点まで速くすることができる。
なお、本実施形態3は両面搬送経路63だけでなく、給紙搬送経路61に対しても適用することができる。給紙搬送経路61に適用した場合の各モーターMM1および2の励磁電流をオン、オフするタイミングは図11に示したタイムチャートと同様であるので説明は省略する。
次に、本実施形態3に係る制御手順について説明する。図12は、実施形態3に係る画像形成装置の制御手順を示すフローチャートである。
この制御手順は、制御部90により実行される。本実施形態3における制御手順は、実施形態1と同じ手順となる部分があるので、そのような部分については、実施形態1と同じステップ番号を付して説明は省略する。
S101〜S103までは実施形態1と同じ処理である。S103において、両面搬送経路63からの印刷であれば(S103:YES)、制御部90は、両面搬送経路63の用紙搬送速度が最大搬送速度(詳細後述)となっているか否かを判断する(S301)。ここで最大搬送速度でなければ(S301:NO)、実施形態1のS104へ移行して(S311)、それ以降の処理を行う。これは、用紙の搬送速度が最大でない場合、減速途中で上流側のモーターDM3の励磁電流を切ると、用紙の後端部が十分に搬送されないおそれがある(ループができないおそれがある)。このため実施形態1のS104以降の処理を実行するようにして、減速が終了するまではモーターDM3およびDM4を駆動しておく(励磁オンの状態を継続しておく)。一方、搬送速度が最大搬送速度であれば(S301:YES)、減速途中で上流側の搬送ローラー対40〜42を駆動しているモーターDM3の励磁電流を切っても、用紙は十分な速度を保っているため、後端部もループ形成に必要なだけ搬送される。また、最大搬送速度であっても、厚紙であるため、後端側は、前端が突き当たっているので紙の復元力がはたらきブレーキがかかり必要以上に前へ進むこともない。また、最下流側のループローラー対25で位置制御するため、紙先端精度は劣化しない。なお、ここでは最大搬送速度か否かを判定することとしたが、これに代えて、たとえば、最大搬送速度の50%以上であれば、減速途中で上流側モーターの励磁電流を切るなどとしてもよい。
制御部90は搬送速度が最大搬送速度であれば(S301:YES)、続いて、両面搬送経路63のモーターDM3およびDM4の減速が開始されたか否かを判断する(S302)。各モーターDM3およびDM4の減速が開始されていなければ、開始されるのを待つ(S302:NO)。
モーターDM3およびDM4の減速が開始されたなら(S302:YES)、制御部90は、用紙Pの長さ(紙長)が所定値Aを超えている(Aを含まず)か否かを判断する(S303)。
制御部90は、紙長が所定値Aを超えていないと判断した場合は(S303:NO)、S305へ移行する。
一方、S303において制御部90は、紙長が所定値Aを超えていると判断した場合は(S303:YES)、上流側のモーターDM3の励磁電流を切る(S304)。すなわち、減速途中でモーターDM3の励磁電流が切られることになる。
続いて制御部90は、減速が終了したか否かを判断する(S305)。減速が終了していなければ(S305:NO)、終了するまで待つ。この減速終了までの間に、レジストローラー対26とループローラー対25との間で用紙Pにループが形成される。
S305において、減速終了と判断されたなら(S305:YES)、続いて、制御部90は、モーターDM4の励磁電流を切る(S109)。以降S110〜S113まで実施形態1と同じ処理を実行する。
S103において給紙搬送経路61からの搬送であった場合(S103:NO)も、両面搬送経路63と同様であり、搬送速度が最大搬送速度か否かを判断して(S321)、最大搬送速度でなければ、実施形態1のS224へ移行して(S331)、それ以降の処理を行う。最大線速であれば(S321:YES)、モーターLM1および2、MM1および2の減速開始後(S322)後、用紙Pの紙長が所定値Aを超えていなければ(S323:NO)、S325へ移行する。一方、用紙Pの紙長が所定値Aを超えていれば(S323:YES)、制御部90は上流側のモーターMM1の励磁電流を切る(S324)。
続いて制御部90は、減速が終了したか否かを判断し、減速終了と判断されたなら(S325:YES)、モーターMM2の励磁電流を切る(S129)。以降実施形態1と同じようにS129〜133の処理を実行する。
以上のように、本実施形態3では、減速途中から、上流側にあるモーターの励磁電流を切ることとしたので、その分、下流側にあるモーターの励磁電流を切るタイミングも速くすることができ、結果的にモーターの回転開始のタイミグを速くすることができる。したがって、副次的ループを解消しつつ、再起動後のモーターの回転をより速く開始できる。
(実施形態4)
実施形態4は、実施形態1と制御形態が異なるのみで、画像形成装置の構成は実施形態1と同じであるので、装置構成についての説明は省略する。
実施形態4も、副次的ループを解消しつつ、より速く回転を開始できるようにした形態である。
搬送ローラー対を駆動するモーターの励磁電流を切ると、既に説明したように静止トルクが開放されていてモーターは自由に回転するようになっている。このとき搬送ローラー対位は副次的ループが開放される際に用紙の一部が上流側方向へ動くので、ローラー対が回転し、それにつれてモーターも回転する、このとき逆起電力が発生する。そこで、この逆起電力を監視してモーターの励磁電流の制御を行うこととした。逆起電力の監視は、たとえば、各モーターへ電力を供給している共通電源部の出力電圧を測定することにより行う。出力電圧は、逆起電力が発生すると上昇する。そのほか、たとえばモーターを駆動しているドライバICなどからの情報を基に、各モーターの逆起電力(またはモーターの電圧変動)を個別に検知して使用してもよい。この場合、少なくとも1つのモーターの逆起電力がいったん上昇してから下降したことを検視して、その時点で他のモーターの励磁電流を切ることになる。
図13は、実施形態4のモーターDM3およびDM4の動作のタイミングを示すタイムチャートである。上段中段は図6と同様に上流側モーター、下流側モーターの励磁電流のオン、オフと、速度を示し、下段にモーターへ電力を供給している共通電源部の電圧を示した。
まず、時間t0の段階でレジストローラー対26に用紙Pの先端が到達して減速に入る。モーターDM3とモーターDM4は同じタイミングで同じ減速割合で減速する。そして時間t1で停止する。この時間t0からt1の間で減速して用紙Pが搬送される間に、レジストローラー対26とループローラー対25の間でループが形成される。時間t1の時点で減速が終わりモーターDM3とモーターDM4は停止する。モーターDM3が停止すると同時にモーターDM3の励磁電流を切る。これによりモーターDM3の静止トルクが開放されるので第4〜6両面搬送ローラー対40〜42は自由に回転する。この時点ではループローラー対25に近い方のモーターDM4は励磁電流が流されていて静止トルクが効いている状態である。この時点(t1)までは共通電源部の電圧はモーターへ供給されている電力の電圧がそのまま出るので、たとえば24Vである。
その後、モーターDM3は用紙Pの復元力によって逆回転して逆起電力が発生する。このため共通電源部の電圧は逆起電力が上乗せされて、たとえば30V程度まで上昇する(t1.2)。その後は用紙の復元力が開放されると、逆回転もなくなるので、24Vに戻る。
そして、逆起電力がなくなった時間t1.8の時点でモーターDM4の励磁電流を切る。これによりモーターDM4の静止トルクが開放され、第7両面搬送ローラー対43が自由に回転する。このときも同様に逆起電力によって共通電源部の電圧が上昇する。その後、時間t2.8の時点で逆起電力が消えるので、副次的ループが十分に解消されたものとしてモーターDM3およびDM4の励磁電流を入れる。
その後は、時間t4の時点でモーターDM3およびDM4の回転をスタートさせる(モーターRMおよびLMも同調させてスタートさせる)。そしてモーターDM3およびDM4がともに増速して行き時間t4で印刷のためのプロセス速度となる。
なお、本実施形態4は両面搬送経路63だけでなく、給紙搬送経路61に対しても適用することができる。給紙搬送経路61に適用した場合の各モーターMM1および2の励磁電流をオン、オフするタイミングは図13に示したタイムチャートと同様であるので説明は省略する。
次に、本実施形態4に係る制御手順について説明する。図14は、実施形態4に係る画像形成装置の制御手順を示すフローチャートである。
この制御手順は、制御部90により実行される。本実施形態4の制御手順では、実施形態1におけるS108、S110、S128、S130が本実施形態4特有の処理となっており、その他の処理は、実施形態1と同じ処理である。実施形態1と同じステップ番号を付して説明は省略する。
本実施形態4では制御部90は共通電源部の電圧を監視している。そして、両面搬送経路63においては、S107でモーターDM3の励磁電流を切ったのち、共通電源部の電圧がいったん上昇して下降したか否かを判断する(S408)。ここで共通電源部の電圧がいったん上昇して下降していなければ(S408:NO)、それを待つことになる。一方、共通電源部の電圧がいったん上昇して下降したなら、モーターDM4の励磁電流を切る(S109)。
さらに続けて、S410で、共通電源部の電圧がいったん上昇して下降したか否かを判断する(S410)。そして共通電源部の電圧がいったん上昇して下降したなら、モーターDM3およびDM4の励磁電流を流す(S111)。
給紙搬送経路61においてもS428およびS430で同様の処理を行っている。
以上のように、本実施形態4では、副次的ループが解消されたか否かを共通電源部に係る電圧から判断して、モーターへの励磁電流の切り、入りを行うことにした。したがって、搬送停止から再スタートまでの時間t1〜t3までで済む。これは、実施形態1のように、副次的ループが確実に解消されるための時間(実施形態1のta)として、余裕を加味する必要がないので、その分、各搬送モーターの回転の再スタートを速くすることができる。
(実施形態5)
1つのモーターにおける、搬送速度と加減速に必要な時間について説明する。
図15は、1つのモーターにおける、搬送速度と、加減速、停止および再起動に必要な時間を示すタイムチャートである。図15において、上段はモーターの回転速度のグラフであり、縦軸は回転速度を示す。下段はモーターへの励磁電流のオン、オフを示すグラフである。両グラフとも横軸が時間である。
1つの搬送モーターの動作は、図15に示すように、停止状態(T0、V0。ここでT数字は時間、V数字は速度を示す)から用紙搬送指示があると(T1:搬送再起動)、最大搬送速度(V10)まで加速して搬送速度(V10〜V9)で搬送する。この間の搬送速度(V10〜V9)は、初めは最大搬送速度(V10)であるが、ある程度進んだ位置で、後にレジストローラー対26に用紙を突き当てて止めることを考慮して搬送速度を減速(V9)して搬送している。レジストローラー対26に用紙先端が突き当てられると、ループ形成のために減速を開始する(T2:ループ減速開始)。ループ減速開始(T2)から減速して速度が0になるループ形成完了(T3、V0)までの間で、レジストローラー対26に突き当てられた用紙にループが形成される。また、この図ではループ形成完了(T3)と同時にモーターへの励磁電流をオフにしている。
その後、モーターへの励磁電流の停止を一定時間継続する。この励磁が停止されている時間が励磁オフ時間taである。励磁オフ時間taの間に用紙の復元力が解消する。その後、再スタートのために励磁電流を流す(T4:レジスト再起動という)。励磁電流オンの後回転を停止した状態を継続する(tb)。この時間tbが前励磁時間tbである。前励磁時間tb経過後、モーターの回転を再スタートする(T5:レジスト再起動)。そして所定速度(V8:先端増速速度)まで速度を上げてから(T6)、プロセス速度(V7)になるように減速する(T7:プロセス速度減速開始)。このレジスト再起動後の動作はレジストローラー対26、ループローラー対25も同調させて回転を開始する。プロセス速度減速開始(T7)は画像形成部の画像形成状態によって変動する。プロセス速度(V7)とは画像形成部10Y、10M、10Cおよび10Kによる画像形成速度に同調させた速さである。プロセス速度(V7)に到達したなら(T8)、その後、プロセス(画像形成)が終わるまでプロセス速度(V7)を維持し、画像形成終了と同時に(T9)、最大搬送速度(V10)となるまで加速して、最大搬送速度で用紙を搬送する。その後は(T10以降)は用紙搬送が主漏するまでその速度が維持されて、この用紙への印刷動作は終了することになる。
ここで励磁オフ時間taと前励磁時間tbを足した時間の間は、レジストローラー対26とループローラー対25の間で形成されたループを維持している時間である。このことから励磁オフ時間taと前励磁時間tbを足した時間をループ停止時間tcとする。ループ停止時間tcは生産性の観点からは下記(1)式により求める。
tc=tppm−α−β−td−tm …(1)
式中、
tppm(プリントサイクル時間)=60/(紙長さ×係数/搬送速度)、ただし搬送速度は用紙の搬送速度である。線速ともいう、
α=前紙のレジスト再起動から現在搬送中紙の搬送再起動までの時間、
β=搬送再起動からループ形成完了までの時間、
td=ソフトウェアによる制御バラツキ+生産性バラツキ、
tm=マージン、である。
ここで、tppmは上記のとおり用紙長さと速度から決まる値であり、また、tdおよびtmも装置に導入されているソフトウェアや装置構成によって決まる値である。したがって、これらの値は変更できない。
ここで図15から、tc=ta+tb …(2)の関係がある。
tbは既に説明したように、モーターがステッピングモーターの場合、再励磁オン時のモーター振動が収束するまでに必要な時間であり、モーターや装置構成に固有の値である。したがって、tbも変更することができない。
そうするとtaは変更可能であり、taを短くできれば、tcを短くすることができる。つまり、ta≦tc−tbである。
このtaを減らすことは、既に説明した実施形態3および4によって達成できる。図16は、実施形態1と実施形態3でレジスト再起動(モーターの回転開始)までの時間の違いを説明するためのグラフである。ここでは両面搬送経路63の3つのモーターDM2〜4の場合を例に説明する。つまり、レジストローラー対26に用紙を突き当てた時点で、モーターDM2〜4が駆動する第2両面搬送ローラー対38から第7両面搬送ローラー対43にまでかかる長い用紙を扱う場合である。
実施形態1の場合は、ループ形成完了後から順番に各モーターの励磁電流を切ることになる。このため、それぞれのモーターごとにtaが加わって、最後にtbが加わる。したがってループ形成完了を起点としたtcは、tc=ta1+ta2+ta3+tbとなる。
一方、実施形態3では、減速開始後から、上流側のモーターから順に励磁電流を切っている。ループ形成完了を起点としたtcは、tc=ta3+tbとなっている。このため、レジスト再起動までにかかる時間がΔt分実施形態3の方が速くなる。
このように、taを減らすことで、用紙を再スタートさせるまでの時間を短縮することができる。
本実施形態5では、これらta短縮だけでなく、さらに先端増速速度を上げるかまたはプロセス速度減速開始を遅らせることで、プロセス開始までの時間をさらに短縮することができるようにした。先端増速速度を上げると、用紙先端が画像形成部へ到達する速さが速くなる。プロセス速度減速開始を遅らせると速い速度で搬送されている区間(時間)が長い分、用紙先端が画像形成部へ速く到達する。
図17は、実施形態5の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は制御部90よって行われる。
本実施形態5の制御手順では、制御部90は、まず、搬送速度と紙長を読み出す(S501)。搬送速度は制御部90内の記憶装置にあらかじめ記憶されている。紙長は給紙部に用紙Pがセットされたときに自動的に認識されるかまたはユーザーから入力されて記憶されている。
続いて制御部90は、ループ停止時間tcを算出する(S502)。ループ停止時間tcの算出は、上記(1)式により行う。
続いて制御部90は、各モーターの前励磁時間tbを読み出す(S503)。前励磁時間tbはモーターごとに制御部90内の記憶装置にあらかじめ記憶されている。
続いて制御部90は、算出したtcと読み出したtbを比較する(S504)。ここでtc≦tbでなければ(S504:NO)、実施形態1の制御を実行する(S100)。
一方、ここでtc≦tbであれば(S504:YES)、続いて制御部90は、taとループ減速開始から停止までの時間teを比較する(S505)。taは上記(2)式から算出する。ここで、ta≧teでなければ(S505:NO)、先端増速速度を増速またはプロセス速度減速開始を遅延させる(S506)。その後、実施形態3の制御を実行する(S300)。
一方、ta≧teであれば(S505:YES)、そのまま実施形態3の制御を実行する(S300)。
以上のように本実施形態5によれば、搬送速度および紙長によって変わる生産性に対して、モーターの励磁電流を切るタイミングを制御(実施形態1とするか3とするか)し、また再スタート後の搬送速度を変更することとした。これにより用紙の長さに適した処理を行うことができるようになり、ループ形成後の再スタートにおいて、適切な速さでかつ可能な限り速く用紙先端を画像形成部へ搬送することができる。
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。たとえば、実施形態では、厚さの厚い用紙を対象としたが、これに限らず、厚さにかかわらず、すべての種類の用紙に対して、複数の搬送ローラー対を駆動するモーターの励磁電流を異なるタイミングで切るようにしてもよい。また、3つ以上モーターがある場合は、いずれか一つだけ、異なるタイミング(したがって、他の2つは同じタイミング)となるようにしてもよい。1つのモーターの励磁電流を異なるタイミグできるだけでも、用紙全体の復元力が一度の開放されなくなるので、励磁電流を切ることで用紙ずれが発生することを防ぐことができる。
そのほか、本発明は特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。