JP2018065764A - ジオール化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
さらには、水溶性の酸などの反応助剤を共存させて反応を行った場合、目的のジオール化合物と水を含む混合物にこれらが残存すると、ジオール化合物と水との分離等の後工程において、ジオール化合物が酸により脱水環化してしまう問題もある。この問題の回避のためには、反応後、これら水溶性の酸などの反応助剤を中和するか、或いは分離除去する工程が必要となり、製造工程が複雑、煩雑化するデメリットもある。
なお、この特許文献4には、担体としてゼオライト(ZSM−5,ZSM−10)の例示があるが、担体として固体酸(酸性ゼオライト)を使うことの重要性には言及が無く、固体酸を担体に用いた例も無い。通常、水中では固体酸の酸触媒的作用は弱く、熱水中ではその構造的安定性にも乏しい。特許文献4には、有利な担体材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化珪素、二酸化ジルコニウム及び活性炭であると記載され、触媒の例示における担体は活性炭と二酸化珪素、酸化アルミニウムのみである。また、特許文献4の実施例で具体的に使用されている触媒は、Re/Ru/活性炭、Ru/活性炭、Co/Re/活性炭、Ru/Cu/活性炭、Re/Ni/活性炭、Rh/Re/活性炭、Ni/Cu/活性炭、Ru/Ni/活性炭、Ru/Cu/Re/活性炭のみである。加えて、この特許文献4では、フラン/水モル比=1:1〜10(水/フランモル比=1〜10)が好ましいと記載されているが、実施例では、水/フランモル比は12〜15と水使用量が多い。さらにはこの特許文献4には飽和環状エーテルとジオール化合物の生成割合の制御や優先的に水素化水和反応を進行させてジオール化合物を得る触媒、特に触媒担体についての言及に乏しい。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
まず、原料となる不飽和環状エーテル化合物と目的物であるジオール化合物について説明する。
本発明のジオール化合物の製造方法で使用される原料の不飽和環状エーテル化合物としては、特に制限されず、公知の不飽和環状エーテル化合物を使用することができる。不飽和環状エーテル化合物としては、例えば下記一般式(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5)で表される5員環又は6員環の不飽和環状エーテル化合物が挙げられる。
一般式(2)で表される不飽和環状エーテル化合物の具体例としては、2−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロフラン、2−メチル−2,3−ジヒドロフラン、3−メチル−2,3−ジヒドロフラン、2,3−ジヒドロフランが好ましい例として挙げられ、中でも特に2,3−ジヒドロフランが好適である。
一般式(3)で表される不飽和環状エーテル化合物の具体例としては、2−ヒドロキシメチル−2,5−ジヒドロフラン、2−メチル−2,5−ジヒドロフラン、3−メチル−2,5−ジヒドロフラン、2,5−ジヒドロフランが好ましい例として挙げられ、中でも特に2,5−ジヒドロフランが好適である。
一般式(4)で表される不飽和環状エーテル化合物の具体例としては、2−ヒドロキシメチル−3,4−2H−ジヒドロピラン、2−メチル−3,4−2H−ジヒドロピラン、3−メチル−3,4−2H−ジヒドロピラン、4−メチル−3,4−2H−ジヒドロピラン、3,4−2H−ジヒドロピランが好ましい例として挙げられ、中でも特に3,4−2H−ジヒドロピランが好適である。
一般式(5)で表される不飽和環状エーテル化合物の具体例としては、2−ヒドロキシメチル−3,6−2H−ジヒドロピラン、2−メチル−3,6−2H−ジヒドロピラン、3−メチル−3,6−2H−ジヒドロピラン、4−メチル−3,6−2H−ジヒドロピラン、3,6−2H−ジヒドロピランが好ましい例として挙げられ、中でも特に3,6−2H−ジヒドロピランが好適である。
本発明のジオール化合物の製造方法で得られるジオール化合物は、特に制限されず、前述の不飽和環状エーテル化合物の水素化水和反応で得られるジオール化合物であり、例えば、下記一般式(6)又は(7)で表されるジオール化合物が挙げられる。
一般式(7)で表されるジオール化合物は、前記一般式(4),(5)で表される不飽和環状エーテル化合物の水素化水和で得られるジオール化合物であり、その具体例としては、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,5−ペンタンジオールが挙げられ、特に1,5−ペンタンジオールが好適である
本発明では、不飽和環状エーテル化合物原料を、特定の触媒の存在下で水素化水和反応させる。ここで、不飽和環状エーテル化合物原料とは、原料全体を基準(100質量%)として、不飽和環状エーテル化合物が、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、特に好ましくは99質量%以上含まれているものをいう。
場合によっては安定剤を加えて保存することも好適である。安定剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やt−ブチルカテコール(TBC)などの酸化防止剤、重合禁止剤が好適に用いられる。
次に、本発明で用いる水素化水和反応触媒(以下、「本発明の触媒」と称す場合がある。)について説明する。
また、同様の理由により、これらの化合物が重合する等の望ましくない反応の進行も回避することができるため、触媒表面に重合物が蓄積する事態を防ぐことができる。結果として、不飽和環状エーテル化合物の水素化水和反応に対して有効な触媒活性点が長時間にわたって作用し続ける。
Ni、Coを触媒活性金属元素として用いることによって、高い選択性で不飽和環状エーテル化合物をジオール化合物に転化することが可能となり、効率的にジオール化合物を製造することができるようになる。
例えば、Ni、Coを含む触媒を用いた場合、不飽和環状エーテル化合物の水素化水和反応で生成するジオール化合物とそれが脱水環化して生成する飽和環状エーテル化合物の合量の選択性は通常90%以上であり、ジオール化合物の収率は最大限に高められる。
Ni、Coの担体として用いる固体酸は、特に限定されないが、リン酸塩、硫酸塩や水酸化物、含水酸化物、酸化物、複合酸化物が好適である。リン酸塩、硫酸塩としては、AlxPyOn、Zr3(PO4)4、ZrP2O7、Zr(SO4)2・4H2O、リン酸ニオブ等が挙げられる。水酸化物、含水酸化物、酸化物としては、ZrO(OH)2、ZrO2、SiO2、Nb2O5・nH2O(nは通常3.5〜4.5)が挙げられる。その他、ZrSiO4、ZrO2−SiO2、ZrO2−TiO2、ZrO2−Al2O3、SiO2−Al2O3、MgO−SiO2、MgO−Al2O3等の複合酸化物が挙げられる。このうち、好ましくは、AlxPyOn、リン酸ニオブ等のリン酸塩、ZrSiO4等の複酸化物、ZrO2−SiO2、ZrO2−TiO2、ZrO2−Al2O3、SiO2−Al2O3、MgO−SiO2、MgO−Al2O3等のアモルファスの複合酸化物およびNb2O5・nH2Oが挙げられる。より好ましくは、ニオブを含む酸化物や含水酸化物、AlxPyOn等のアモルファスのリン酸塩、SiO2を含むアモルファスの複合酸化物が好ましく、特に好ましくは、アモルファスのSiO2−Al2O3、Nb2O5・nH2Oが挙げられる。
さらには、アモルファスのSiO2−Al2O3においては、Si/Al比は通常1以上50以下、好ましくは2以上25以下、より好ましくは3以上12以下、特に好ましくは4以上8以下の組成のものが好ましい。
本発明においては、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の金属元素として、Niのみを用いてもよく、Coのみを用いてもよく、NiとCoを用いてもよいが、好ましくはNiが用いられる。その理由は、Niが目的生成物であるジオール化合物の分解反応に対して不活性であるのみならず、原料や中間体の不飽和環状エーテル化合物からブタノール等のモノオール化合物への水素化分解などの副反応が起こしにくいためである。
触媒中のNi、Coの含有量(担体への担持量)は、金属種や担体となる固体酸の種類にもよるので一概にはいえないが、触媒全体の質量を基準(100質量%)として、通常0.05質量%以上30質量%以下、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以上10質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。Ni、Coの含有量が少ないと、不飽和環状エーテル化合物が十分に転化せず、未反応の不飽和環状エーテル化合物の回収等が必要になるため効率的でないのみならず、使用済の触媒から金属元素を回収する際の回収効率が低下する。一方、Ni、Coの含有量が多すぎると、不飽和環状エーテル化合物の反応において水和より水素化の速度が増すとともに水素化分解等の望ましくない反応が起こり易くなる。結果として、飽和環状エーテル化合物等の副生物の生成割合が増加し、ジオール化合物を効率的に製造できなくなるため好ましくない。
Ni、Coを固体酸に固定化した本発明の触媒は、触媒の性能や安定性を向上させるために、修飾助剤を含有することができる。修飾助剤としては、周期表第6−11族金属やそれらのイオンが挙げられる。好ましくはMn、Re、Wおよびそれらのイオン、さらに好ましくはMn、Reおよびそれらのイオン、特に好ましくはReおよびそのイオンである。これらの金属やイオンは、複数を組み合わせて用いてもかまわない。これらの修飾助剤を触媒に含有させることによってジオール化合物の選択性がさらに向上し、また、経時による触媒の活性低下が抑制され、より効率的にジオール化合物を製造することが可能になる場合がある。
また、これらの修飾助剤のNi、Coに対する含有量比は、金属元素や担体の種類にもよるので一概にはいえないが、Ni、Coの含有量より少ないほうが好ましく、Ni、Coの質量を基準(100質量%)として、通常0質量%以上100質量%以下、好ましくは1質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上70質量%以下、特に好ましくは5質量%以上50質量%以下である。
Ni、Coを固体酸に固定化する方法としては、Ni、Coの化合物が溶解した液を上記の固体酸に添加する方法が好適に用いられる。また、上記の固体酸が担持された物質に、Ni、Coが含まれる物質を添加あるいは担持する方法を採用することもでき、物理混合等の手段により目的とする触媒を得てもよい。
Ni、Coと修飾助剤を含む触媒を製造する場合には、Ni、Coの化合物と共に、修飾助剤の化合物が溶解した液を用いて、上記と同様に行えばよい。
Ni、Coを固体酸担体に担持する方法は特に限定されないが、イオン交換法や含浸担持法、ポアフィリング法、incipient−wetness法、スプレー担持法等が挙げられる。ここで、担持に用いるNi、Co化合物や修飾助剤として用いる化合物の水溶液の濃度やpHを調整することにより、担持量を制御することができる。
本発明における水素化水和反応の反応方式は、特に限定されるものではなく、回分反応、連続流通反応のいずれでも実施することができるが、工業的には連続流通反応方式を用いるのが好ましい。また、水素化水和反応の反応形式は液相反応、気相反応のいずれにおいても実施できるが、効率の高い液相反応により不飽和環状エーテル化合物原料と本発明の触媒等とを接触させて反応を実施するのが好ましい。
また、供給する水と不飽和環状エーテル化合物原料の量(水/不飽和環状エーテル化合物モル比)を制御することにより、水素化水和反応における目的物であるジオール化合物と副生物である飽和環状エーテル化合物の生成比をコントロールすることが可能である。
また、アルコール等の有機溶媒による洗浄で触媒表面に付着した不純物やコークを除去、乾燥することにより触媒性能を回復させることもできる。
また、以下において、触媒の表記における「%」は「質量%」を示す。
[実施例1:ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=75、比表面積=410m2/g、Na2O含有量0.05質量%)紛体を約100ml/minの空気気流下、500℃で4時間焼成した。この焼成したゼオライト5.0gに、硝酸NiとRe2O7を溶解した混合水溶液を用いて、incipient−wetness法によりNiとReを含浸させた。湯浴で水分を除去した後、約100ml/minの空気気流下120℃で12時間乾燥し、その後500℃で4時間焼成した。さらに、75ml/minの水素気流下で450℃、2時間還元し、ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒(2質量%Ni、0.5質量%Re、残部ZSM5(Si/Al=75))を得た。
その後オートクレーブの蓋を開けて、内容物をすばやく採取した。内容物をエタノールで希釈し、内部標準としてジエチレングリコールジメチルエーテルを加えて、FID−GCで定量的に分析した。以下の式より不飽和環状エーテル転化率とジオールの選択率を求めた。
[1−{反応後不飽和環状エーテル残量(mol)
/不飽和環状エーテル供給量(mol)}]×100
{ジオール収率(%)/不飽和環状エーテル転化率(%)}×100
=[{ジオール生成量(mol)/不飽和環状エーテル仕込み量(mol)}
×100(%)/不飽和環状エーテル転化率(%)]×100
同様に飽和環状エーテルなどの副生物の選択率も求め、ジオールと飽和環状エーテルの合計の選択率、モノオールの選択率、飽和環状エーテルに対するジオールの生成比を算出した。
これらの結果を表1に示す。
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=800、比表面積=360m2/g、Na2O含有量0.05質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=800)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、120分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は99%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は30%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は68%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.44であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
担体として市販のプロトン型FAUゼオライト(USY、Si/Al=23、比表面積=720m2/g、Na2O含有量0.03質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、USY(Si/Al=23)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は94%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は50%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は42%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.19であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=75、比表面積=500m2/g、Na2O含有量0.03質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、210分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は100%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は48%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は50%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.96であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=75、比表面積=500m2/g、Na2O含有量0.03質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−2%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、120分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は99%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は45%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は44%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.02であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=75、比表面積=410m2/g、Na2O含有量0.05質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=75)担持1%Ni−0.5%Re触媒を調製した。この触媒を4g用い、反応温度を165℃とした以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、270分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は99%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は60%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は35%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.71であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は3%であった。
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=75、比表面積=410m2/g、Na2O含有量0.05質量%)紛体と硝酸Ni水溶液を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni触媒を調製し、反応器水素圧力を5MPaに調節した以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、180分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は88%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は34%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は65%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.52であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
担体として市販のプロトン型FAUゼオライト(USY、Si/Al=100、比表面積=630m2/g、Na2O含有量0.05質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、USY(Si/Al=100)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、150分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は94%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は29%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は68%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.43であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=20、比表面積=500m2/g、Na2O含有量0.05質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=20)担持4%Ni−1%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、120分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は100%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は51%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は43%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.19であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=75、比表面積=410m2/g、Na2O含有量0.05質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製した。この触媒を0.5g用い、反応器水素圧力を3MPaに調節した以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、330分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は59%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は50%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は41%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.22であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
担体として市販のプロトン型MOR(モルデナイト)ゼオライト(Si/Al=112、比表面積=450m2/g、Na2O含有量0.05質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、MOR(Si/Al=112)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は45%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は8%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は52%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.15であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=75、比表面積=500m2/g、Na2O含有量0.03質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−4%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は43%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は22%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は33%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.67であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=75、比表面積=500m2/g、Na2O含有量0.03質量%以下)紛体とRe2O7水溶液を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=75)担持2%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は8%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は20%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は28%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.71であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=800、比表面積=360m2/g、Na2O含有量0.05質量%以下)紛体と硝酸Ni水溶液を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=800)担持20%Ni触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、60分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は99%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は12%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は85%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.14であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
担体として市販のアモルファスSiO2−Al2O3(比表面積=560m2/g、細孔容積=0.73ml/g、Si/Al=4.5)紛体を用いて、実施例1と同様にSiO2−Al2O3担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製した。得られた触媒を用いて、反応器水素圧力を3MPaとした以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、360分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は74%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は57%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は37%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.54であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
硝酸アルミニウムとリン酸の混合水溶液に28%NH3水をゆっくり滴下して沈殿を生じさせ、一晩熟成した後に濾過、水洗した。得られたケーキを120℃のオーブンで12時間乾燥し、さらに400℃で4時間焼成した後に乳鉢で粉砕してアモルファスAl1.5POn紛体を得た。
得られたAl1.5POn紛体を担体として用いて、実施例1と同様にAl1.5POn担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製した。この触媒を用いて、反応器水素圧力を5MPaとした以外は実施例1と同様にして、フランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、180分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は71%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は42%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は55%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.76であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
CBMM社の含水酸化ニオブ紛体(HY340、比表面積150m2/g)を300℃で2時間焼成して脱水した。硝酸Ni水溶液を用いて、得られたニオブ酸(含水酸化ニオブ)にincipient−wetness法によりNiを含浸させた。湯浴で水分を飛ばした後、120℃で6時間乾燥し、さらに300℃で3時間、空気中で焼成した後に、水素気流下、320℃で2時間還元して、ニオブ酸担持4%Ni触媒を得た。得られた触媒を用い、反応器水素圧力を5MPaとした以外は実施例1と同様にして、フランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、300分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は70%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は43%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は50%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.86であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
実施例13と同様にしてニオブ酸担持8%Ni触媒を得た。得られた触媒を用いて実施例13と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、105分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は77%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は28%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は69%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.41であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
実施例13と同様にしてニオブ酸担持20%Ni触媒を得た。得られた触媒を用いて実施例13と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、45分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は77%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は17%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は79%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.22であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
新日本金属社の水酸化ジルコニウム粉末(Z999)を500℃で3時間焼成して脱水した。得られたジルコニア粉末(比表面積90m2/g)にincipient−wetness法によりNiを含浸させた。湯浴で水分を飛ばした後、120℃で6時間乾燥し、さらに500℃で3時間空気中で焼成した後に、水素気流下、300℃で2時間還元して、ジルコニア担持1%Ni触媒を得た。得られた触媒を用い、反応器水素圧力を5MPaとした以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、180分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は74%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は14%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は83%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.17であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は3%であった。
担体として塩化チタン原料から製造した、主としてアナタース型の結晶構造を有するチタニア(比表面積50m2/g)を粉砕した粉末を用いて、比較例6と同様にしてチタニア担持2%Ni触媒を得た。得られた触媒を用い、反応器水素圧力を5MPaとした以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、60分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は73%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は1%以下であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は96%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.01以下であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は4%であった。
担体として市販のγ−Al2O3(比表面積166m2/g、細孔容積0.37ml/g)を粉砕した紛体を用いて、実施例6と同様にしてアルミナ担持1%Ni−0.5%Re触媒を得た。この触媒を4g用い、反応器水素圧力を3MPaとした以外は、実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、60分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は62%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は1%以下であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は93%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.01以下であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は6%であった。
[実施例16:ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒による2,3−DHFの水素化水和反応]
水素化水和反応の原料として、市販試薬の2,3−DHF(ジヒドロフラン)を特に精製せずに使用した。この2,3−DHFの純度は98%以上であった。
実施例1で調製したZSM5担持2%Ni−0.5%Re触媒を用い、2,3−DHFの仕込み量を35gとし、反応器水素圧力を3MPaに調節した以外は実施例1と同様にして、2,3−DHFの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表3に示した。
表3に示されるように、150分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(2,3−DHF)転化率は100%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は91%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は7%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は13.00であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
硝酸Niの代りに硝酸Coを用いて、実施例1と同様にしてZSM5(Si/Al=75)担持2%Co−0.5%Re触媒を得た。得られた触媒を用い、実施例16と同様にして2,3−DHFの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表3に示した。
表3に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(2,3−DHF)転化率は37%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は49%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は44%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.11であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は6%であった。
水素化水和反応の原料として、市販試薬の2,5−DHF(ジヒドロフラン)を特に精製せずに使用した。この2,5−DHFの純度は98%以上であった。
実施例1で調製したZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒を用いて、実施例16と同様にして、2,5−DHFの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表3に示した。
表3に示されるように、150分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(2,3−DHF)転化率は100%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は66%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は32%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は2.06であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
水素化水和反応の原料として、市販試薬の3,4−2H−DHP(ジヒドロピラン)を特に精製せずに使用した。この3,4−2H−DHPの純度は96%以上であった。
実施例2で調製したZSM5(Si/Al=800)担持2%Ni−0.5%Re触媒を用いて、3,4−2H−DHPの仕込み量を42gとした以外は実施例16と同様にして、3,4−2H−DHPの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表3に示した。
表3に示されるように、150分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(3,4−2H−DHP)転化率は100%であり、ジオール(1,5−ペンタンジオール)選択率は97%であった。同様に飽和環状エーテル(THP:テトラヒドロピラン)選択率は2%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は48.50であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ペンタノール)の選択率は1%以下であった。
Claims (10)
- 不飽和環状エーテル化合物原料を、触媒と、水素及び水の存在下に水素化水和反応させてジオール化合物を製造する方法において、
該触媒として、Ni及びCoから選ばれる少なくとも1種の金属元素を固体酸に固定化した触媒を用いる、ジオール化合物の製造方法。 - 前記固体酸が、3次元の孔構造を有し、8員環の孔径を有さず10員環以上の孔径を有する酸性のハイシリカゼオライトであって、該ゼオライトのSi/Al比が10以上1000以下であることを特徴とする請求項1に記載のジオール化合物の製造方法。
- 前記固体酸が、ニオブを含む酸化物、ニオブを含む含水酸化物、リン酸塩、及びSiO2を含む複合酸化物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のジオール化合物の製造方法。
- 前記触媒が前記固体酸に少なくともNiを担持したNi担持触媒であり、Niの担持量が触媒全体の質量に対して0.5質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のジオール化合物の製造方法。
- 前記触媒が前記固体酸にNi及び/又はCoと、修飾助剤としてMn、Re及びWの1種又は2種以上を担持した担持触媒であり、該修飾助剤の担持量がNi及び/又はCoの質量に対して100質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のジオール化合物の製造方法。
- 反応に供される水と不飽和環状エーテル化合物のモル比(水/不飽和環状エーテル化合物)が0.5以上8以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のジオール化合物の製造方法。
- 前記水素化水和反応における水素圧力が1MPa以上5MPa以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のジオール化合物の製造方法。
- 前記水素化水和反応で生成するジオール化合物の、副生する飽和環状エーテル化合物に対するモル比が0.4以上であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のジオール化合物の製造方法。
- 前記触媒を前記水素化水和反応に供するに先立ち、320℃以上の温度で還元性ガスと接触させる還元処理を行うことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のジオール化合物の製造方法。
- 前記不飽和環状エーテル化合物が、ジヒドロフラン環化合物又はジヒドロピラン環化合物であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のジオール化合物の製造方法。
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