JP2018065764A - ジオール化合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】不飽和環状エーテル化合物の水素化水和でジオール化合物を製造するにあたり、高い選択性でジオール化合物を生成させ、かつ生成物の分離や触媒の再使用を容易にするとともに、安定的に不飽和環状エーテル化合物を転化せしめて、高効率にジオール化合物を製造する方法を提供する。【解決手段】不飽和環状エーテル化合物原料を、触媒と、水素及び水の存在下に水素化水和反応させてジオール化合物を製造する方法において、該触媒として、Ni及びCoから選ばれる少なくとも1種の金属元素を固体酸に固定化した触媒を用いる、ジオール化合物の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、不飽和環状エーテル化合物の水素化水和によりジオール化合物を製造する方法に関するものである。
ジオール化合物は重縮合ポリマーの製造原料に用いることができる有用な化学品であり、その製造方法は多岐にわたる。化学的な製造方法として、ジカルボン酸、ジエステルやヒドロキシカルボン酸の水素化や、酸化的エステル化によって得られたジエステルの加水分解が知られているが、いずれも水素を多量に消費するのに加え、熱力学的な平衡が存在する場合が多く、エネルギー多消費なプロセスとなっている。また、ジオール化合物は一般的に沸点が高いのに加え、特に水溶液として得られた場合には、ジオール化合物を分離回収するために水を蒸留する必要があり、エネルギーをさらに消費する原因となっている。
一方で、飽和の環状エーテルや環状カーボネート化合物を加水分解あるいは水和開環してジオール化合物を製造する方法も知られている。水和による開環は、末端に水酸基を有するジオール化合物を製造しやすいという特徴がある。しかしながら、この方法の場合、不安定なエボキシドやオキセタン環化合物であれば、開環が起こりやすいが、5員環や6員環の飽和の環状エーテル化合物は安定性が非常に高く、熱力学的にも平衡は閉環側に偏っており、水和による開環は事実上困難である。
これに対して、5員環の不飽和環状エーテル化合物を一段で水和しながら水素化する方法がある。この方法では、原料の不飽和環状エーテル化合物としてフランを用い、中間体であるビニルエーテルの高い反応性を利用して、水によってヘミアセタール化と加水分解を促進し、さらに水素化することによって、ジオール化合物が得られるものと推測される。しかしながら、この方法では、ビニルエーテルの2重結合の水素化も同時に進行する。つまり、飽和の環状エーテル化合物への水素化と、ジオール化合物への水和(引き続く水素化)とが競合反応となる。結果として、飽和環状エーテル化合物とジオール化合物とが同時に生成することとなり、ジオール化合物を選択的に得ることは容易ではない。
そこで、特許文献1−3では、RuやNiからなる担持型、あるいは非担持型の固体触媒を用い、反応系に水溶性の反応助剤としてカルボン酸等を添加し、中間体の水和を促進してジオール化合物の生成量を増やす方法が提案されている。しかしながら、水に溶解する酸を併用すると、不飽和環状エーテル化合物の水素化水和反応において、反応器の腐食や水素化の活性成分となる金属の溶解などの問題が生じる。また、酸の作用が強い状況では、ビニルエーテルのヘミアセタール化、加水分解で生成する中間体(不飽和ジオール)は、さらなる水素化を受ける前に互変異性化によってアルデヒド体になって縮合・重合し、これがジオール化合物の選択性を落とす原因になる。
さらには、水溶性の酸などの反応助剤を共存させて反応を行った場合、目的のジオール化合物と水を含む混合物にこれらが残存すると、ジオール化合物と水との分離等の後工程において、ジオール化合物が酸により脱水環化してしまう問題もある。この問題の回避のためには、反応後、これら水溶性の酸などの反応助剤を中和するか、或いは分離除去する工程が必要となり、製造工程が複雑、煩雑化するデメリットもある。
このような反応助剤(水溶性の酸)添加の問題を回避すべく、固体触媒の改良でジオール化合物の収率を向上させる試みも行われており、特許文献4には、Ru、Re、Niからなる活性炭担持触媒を中心とした金属元素の組み合わせが提案されている。しかし、本発明者が、特許文献4に例示された触媒を製造して同様な反応を行ったところ、例示された触媒は水和反応の触媒活性に乏しく、飽和環状エーテル化合物が生成するのに加え、モノアルコールへの水素化分解が併発して望まないブタノールが生成し、効率的にジオール化合物を得ることはできなかった。
なお、この特許文献4には、担体としてゼオライト(ZSM−5,ZSM−10)の例示があるが、担体として固体酸(酸性ゼオライト)を使うことの重要性には言及が無く、固体酸を担体に用いた例も無い。通常、水中では固体酸の酸触媒的作用は弱く、熱水中ではその構造的安定性にも乏しい。特許文献4には、有利な担体材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化珪素、二酸化ジルコニウム及び活性炭であると記載され、触媒の例示における担体は活性炭と二酸化珪素、酸化アルミニウムのみである。また、特許文献4の実施例で具体的に使用されている触媒は、Re/Ru/活性炭、Ru/活性炭、Co/Re/活性炭、Ru/Cu/活性炭、Re/Ni/活性炭、Rh/Re/活性炭、Ni/Cu/活性炭、Ru/Ni/活性炭、Ru/Cu/Re/活性炭のみである。加えて、この特許文献4では、フラン/水モル比=1:1〜10(水/フランモル比=1〜10)が好ましいと記載されているが、実施例では、水/フランモル比は12〜15と水使用量が多い。さらにはこの特許文献4には飽和環状エーテルとジオール化合物の生成割合の制御や優先的に水素化水和反応を進行させてジオール化合物を得る触媒、特に触媒担体についての言及に乏しい。
非特許文献1、2には、フランやフラン環を有する化合物の水素化触媒、水素化分解触媒として、Ni、Ru、Rh、Pt、Pd触媒が挙げられているが、水素化水和反応の触媒作用についての記載はない。
USP4,475,004 USP4,476,332 USP4,146,741 特表平11−502811
「接触水素化反応:有機合成への応用」西村 重雄,高木 弦著(東京化学同人,1987年)第284頁〜第290頁 "Handbook of heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Synthesis"Shigeo Nishimura(John Wiley&Sons,Inc.2001)第547頁〜第555頁
触媒の存在下で、5員環や6員環の不飽和環状エーテル化合物から水素化水和同時反応によって一段でジオール化合物を製造する従来法の問題点は、殆どの触媒において、望ましくない水素化分解が併発してモノオール(モノアルコール)が副生するのに加え、触媒の水和反応の促進効果が小さいとジオール化合物ではなく飽和環状エーテル化合物が選択的に生成してしまうことにある。特に、水和のために反応系に導入する水の量が十分でない条件では、ジオール化合物よりも飽和環状エーテル化合物の生成比率が高まる。熱力学的な制約により、飽和環状エーテル化合物をジオール化合物に水和開環することは困難であるため、水素化水和反応によるジオール化合物の製造を目的とする場合には、飽和環状エーテル化合物の生成比率を下げるために水を多量に用いる必要がある。しかし、水を多量に用いると、生成したジオール化合物と水との分離に多大なエネルギーが必要となる問題がある。このため、反応系に導入する水の量を減らした条件で、5員環や6員環の不飽和環状エーテル化合物からジオール化合物を高い選択率で製造する方法の開発が望まれる。
また、前述の通り、水溶性の酸などの反応助剤を共存させて水和を促進する方法では、反応器の腐食、活性金属成分の溶出、更には、反応助剤の中和ないし除去といった問題があるため、これらの反応助剤を用いることなく、ジオール化合物を高収率で製造する方法が望まれる。
よって、本発明は、不飽和環状エーテル化合物の水素化水和反応により一段でジオール化合物を製造するにあたり、高い選択性でジオール化合物を生成させ、かつ生成物の分離や触媒の再使用を容易にするとともに、安定的に不飽和環状エーテル化合物を転化せしめて、高効率にジオール化合物を製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、不飽和環状エーテル化合物の水素化水和反応を進行させ、一段でジオール化合物を製造するための触媒について鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、5員環、6員環構造の不飽和環状エーテルの水素化水和反応においては、特定の固体酸にNi、Coから選ばれる少なくとも1種の金属元素を固定化した触媒を用いることによってジオール化合物の選択率が増し、高効率かつ安定的にジオール化合物を得ることができることを見出した。特に、水素化を担う金属種や水和を担う固体酸の種類の選択が重要であり、水素化活性点と酸点を固体触媒表面上に適切に配置することにより水和と水素化のバランスが図られ、選択的にジオール化合物を得ることができることを見出した。また、表面上に水素化活性点と酸点を有する触媒は、反応後は濾過等で容易に分離することが可能で、得られたジオール化合物を水と分離する工程等において、ジオール化合物が環化してしまうことを回避できる。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 不飽和環状エーテル化合物原料を、触媒と、水素及び水の存在下に水素化水和反応させてジオール化合物を製造する方法において、該触媒として、Ni及びCoから選ばれる少なくとも1種の金属元素を固体酸に固定化した触媒を用いる、ジオール化合物の製造方法。
[2] 前記固体酸が、3次元の孔構造を有し、8員環の孔径を有さず10員環以上の孔径を有する酸性のハイシリカゼオライトであって、該ゼオライトのSi/Al比が10以上1000以下であることを特徴とする[1]に記載のジオール化合物の製造方法。
[3] 前記固体酸が、ニオブを含む酸化物、ニオブを含む含水酸化物、リン酸塩、及びSiOを含む複合酸化物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]に記載のジオール化合物の製造方法。
[4] 前記触媒が前記固体酸に少なくともNiを担持したNi担持触媒であり、Niの担持量が触媒全体の質量に対して0.5質量%以上10質量%以下であることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載のジオール化合物の製造方法。
[5] 前記触媒が前記固体酸にNi及び/又はCoと、修飾助剤としてMn、Re及びWの1種又は2種以上を担持した担持触媒であり、該修飾助剤の担持量がNi及び/又はCoの質量に対して100質量%以下であることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載のジオール化合物の製造方法。
[6] 反応に供される水と不飽和環状エーテル化合物のモル比(水/不飽和環状エーテル化合物)が0.5以上8以下であることを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかに記載のジオール化合物の製造方法。
[7] 前記水素化水和反応における水素圧力が1MPa以上5MPa以下であることを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかに記載のジオール化合物の製造方法。
[8] 前記水素化水和反応で生成するジオール化合物の、副生する飽和環状エーテル化合物に対するモル比が0.4以上であることを特徴とする[1]ないし[7]のいずれかに記載のジオール化合物の製造方法。
[9] 前記触媒を前記水素化水和反応に供するに先立ち、320℃以上の温度で還元性ガスと接触させる還元処理を行うことを特徴とする[1]ないし[8]のいずれかに記載のジオール化合物の製造方法。
[10] 前記不飽和環状エーテル化合物が、ジヒドロフラン環化合物又はジヒドロピラン環化合物であることを特徴とする[1]ないし[9]のいずれかに記載のジオール化合物の製造方法。
本発明では、固体酸にNi、Coから選ばれる少なくとも1種の金属元素を固定化した触媒を使用して不飽和環状エーテル化合物の水素化水和反応を行うことにより、高い選択率でジオール化合物を得ることができるため、水の使用量を減じた条件下においても高効率にジオール化合物を製造することが可能となる。また、水溶性の酸などの反応助剤を使用することなく、十分な選択性が得られるので、生成物や触媒の分離が容易となり、触媒の入れ替えや再生も行いやすい。
以下、本発明のジオール化合物の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
本発明のジオール化合物の製造方法は、不飽和環状エーテル化合物原料の水素化水和反応によりジオール化合物を製造する際に、特定の水素化水和反応触媒の存在下で水素化水和反応を行うものである。
[原料・目的物]
まず、原料となる不飽和環状エーテル化合物と目的物であるジオール化合物について説明する。
<不飽和環状エーテル化合物>
本発明のジオール化合物の製造方法で使用される原料の不飽和環状エーテル化合物としては、特に制限されず、公知の不飽和環状エーテル化合物を使用することができる。不飽和環状エーテル化合物としては、例えば下記一般式(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5)で表される5員環又は6員環の不飽和環状エーテル化合物が挙げられる。
Figure 2018065764
上記一般式(1)〜(5)において、R、R、R、R、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、例えば、水素原子、官能基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、官能基を有していてもよい芳香族炭化水素基、アルデヒド基等の種々の官能基が挙げられ、具体的には、−H、−OH、−CHOH、−CH、−CHO等が挙げられる。
一般式(1)で表される不飽和環状エーテル化合物の具体例としては、フルフリルアルコール、2−メチルフラン、3−メチルフラン、フルアルデヒド、フランが好ましい例として挙げられ、中でも特にフランが好適である。
一般式(2)で表される不飽和環状エーテル化合物の具体例としては、2−ヒドロキシメチル−2,3−ジヒドロフラン、2−メチル−2,3−ジヒドロフラン、3−メチル−2,3−ジヒドロフラン、2,3−ジヒドロフランが好ましい例として挙げられ、中でも特に2,3−ジヒドロフランが好適である。
一般式(3)で表される不飽和環状エーテル化合物の具体例としては、2−ヒドロキシメチル−2,5−ジヒドロフラン、2−メチル−2,5−ジヒドロフラン、3−メチル−2,5−ジヒドロフラン、2,5−ジヒドロフランが好ましい例として挙げられ、中でも特に2,5−ジヒドロフランが好適である。
一般式(4)で表される不飽和環状エーテル化合物の具体例としては、2−ヒドロキシメチル−3,4−2H−ジヒドロピラン、2−メチル−3,4−2H−ジヒドロピラン、3−メチル−3,4−2H−ジヒドロピラン、4−メチル−3,4−2H−ジヒドロピラン、3,4−2H−ジヒドロピランが好ましい例として挙げられ、中でも特に3,4−2H−ジヒドロピランが好適である。
一般式(5)で表される不飽和環状エーテル化合物の具体例としては、2−ヒドロキシメチル−3,6−2H−ジヒドロピラン、2−メチル−3,6−2H−ジヒドロピラン、3−メチル−3,6−2H−ジヒドロピラン、4−メチル−3,6−2H−ジヒドロピラン、3,6−2H−ジヒドロピランが好ましい例として挙げられ、中でも特に3,6−2H−ジヒドロピランが好適である。
これらの不飽和環状エーテル化合物は2種以上を用いることも可能であるが、通常は1種のみが用いられる。
<ジオール化合物>
本発明のジオール化合物の製造方法で得られるジオール化合物は、特に制限されず、前述の不飽和環状エーテル化合物の水素化水和反応で得られるジオール化合物であり、例えば、下記一般式(6)又は(7)で表されるジオール化合物が挙げられる。
Figure 2018065764
上記一般式(6),(7)において、R、R、R、R、Rは、前記一般式(1)〜(5)におけると同義である。
一般式(6)で表されるジオール化合物は、前記一般式(1)〜(3)で表される不飽和環状エーテル化合物の水素化水和で得られるジオール化合物であり、その具体例としては、2−メチル1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,4−ブタンジオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,4−ブタンジオールが挙げられ、特に1,4−ブタンジオールが好適である。
一般式(7)で表されるジオール化合物は、前記一般式(4),(5)で表される不飽和環状エーテル化合物の水素化水和で得られるジオール化合物であり、その具体例としては、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,5−ペンタンジオールが挙げられ、特に1,5−ペンタンジオールが好適である
<不飽和環状エーテル化合物原料>
本発明では、不飽和環状エーテル化合物原料を、特定の触媒の存在下で水素化水和反応させる。ここで、不飽和環状エーテル化合物原料とは、原料全体を基準(100質量%)として、不飽和環状エーテル化合物が、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、特に好ましくは99質量%以上含まれているものをいう。
本発明で用いる不飽和環状エーテル化合物原料の製造法は特に限定されないが、植物由来原料の水熱処理や酸による加水分解、フルフラール化合物の脱カルボニル化反応、ブタンジエンやエポキシブテンの部分酸化、テトラヒドロフルフリルアルコールの脱水転位(異性化)反応等の他、α,β−不飽和アルデヒドのディールス・アルダー反応等による方法が挙げられる。
不飽和環状エーテル化合物原料中の不飽和環状エーテル化合物の純度(含有量)は、上述の通りであるが、不飽和環状エーテル化合物原料に含まれる不純物を除去することによって、本発明で用いる水素化水和反応触媒の経時的な活性低下をさらに抑制し、より安定かつ高効率にジオール化合物を製造することができるようになる。特に、不飽和環状エーテル化合物原料に含まれる不純物のうち、硫黄もしくは硫黄化合物、窒素化合物、および各種の酸を低減すると高い効果が得られる。
不飽和環状エーテル化合物原料に含まれる硫黄もしくは硫黄化合物の形態は特に限定されないが、価数としてはS、S2−あるいはS6+(SO)の硫黄成分が挙げられる。より具体的には、チオール基、スルフヒドリル基、スルフィド基、ジスルフィド基を有する化合物、Sを骨格に持つ芳香族化合物、硫酸、スルホン酸およびそれらの塩、亜硫酸および亜硫酸塩、あるいは錯塩が挙げられる。不飽和環状エーテル化合物原料に含まれるこれらの硫黄成分の量は、硫黄元素換算の濃度として、通常50ppm以下、好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下、より好ましくは10ppm以下、特に好ましくは6.0ppm以下である。硫黄成分の含有量が硫黄元素換算の濃度として50ppm以下に制御された不飽和環状エーテル化合物原料を水素化水和反応工程に供することによって、本発明で用いる水素化水和反応触媒の触媒効果がより一層有効に発揮される。不飽和環状エーテル化合物原料中に含まれる硫黄成分量の分析法は、特に限定されないが、例えば、燃焼−吸収−イオンクロマト法により硫黄元素濃度として定量できる。
不飽和環状エーテル化合物原料に含まれる窒素化合物の形態は特に限定されないが、価数としては、N3−あるいはN5+、N3+の窒素成分が挙げられる。より具体的にはアンモニア、アミン類およびその塩類、Nを骨格に持つ芳香族化合物、硝酸および硝酸塩、亜硝酸および亜硝酸塩、あるいは錯塩である。不飽和環状エーテル化合物原料に含まれる窒素成分の量は、窒素元素換算の濃度として、通常50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、特に好ましくは4.0ppm以下である。窒素成分の含有量が窒素元素換算の濃度として50ppm以下に制御された不飽和環状エーテル化合物原料を水素化水和反応工程に供することによって、本発明で用いる水素化水和反応触媒の触媒効果がより一層有効に発揮される。不飽和環状エーテル化合物原料中に含まれる窒素成分量の分析法は、特に限定されないが、例えば、燃焼分解−化学発光法によって窒素元素濃度として定量できる。
不飽和環状エーテル化合物原料に含まれる酸成分の形態は特に限定されないが、硫酸、スルホン酸、硝酸等の無機酸、および、スルホン基、カルボキシル基を有する有機酸、例えば、フランスルホン酸、フランカルボン酸やギ酸、酢酸が挙げられる。不飽和環状エーテル化合物原料に含まれる酸成分の量は酸価として、通常2mgKOH/g以下、好ましくは1mgKOH/g以下、より好ましくは0.50mgKOH/g以下、さらに好ましくは0.25mgKOH/g以下、特に好ましくは0.10mgKOH/g以下である。これらの酸成分量が酸価として2mgKOH/g以下に制御された不飽和環状エーテル化合物原料を水素化水和反応工程に供することによって、本発明で用いる水素化水和反応触媒の経時的な活性低下をさらに小さくすることができる。酸価の測定法は、特に限定されないが、中和滴定法を用いることができる。具体的には、不飽和環状エーテル化合物原料をエタノールで希釈した後に0.01Nの水酸化カリウム水溶液を用いて滴定することによって、酸価を測定することができる。
本発明で用いる不飽和環状エーテル化合物は通常無色透明である。したがって、不飽和環状エーテル化合物原料の色調は、APHI(American Public Healty Association)標準色溶液のYI(Yellowness Index:黄色度)値を基準とした番号で算出した値で、通常500以下、好ましくは300以下、さらに好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。不飽和環状エーテル化合物原料の色調は色差計を用いた透過測定等によって分析、算出することができる。
不飽和環状エーテル化合物原料から不純物を取り除く方法には特に制限はないが、蒸留精製や不純物の吸着除去等による方法が挙げられる。
吸着によって不純物を分離除去する際に用いる吸着剤としては、特に限定されないが、活性炭やイオン交換樹脂、イオン交換ゼオライトやシリカ等の多孔性物質、あるいは金属、貴金属、または該金属、貴金属をシリカ、アルミナ、ゼオライトあるいは活性炭といった担体に担持したものが好適に用いられる。吸着剤は、複数を同時に用いてもよい。吸着除去の方法としては、不飽和環状エーテル化合物原料に吸着剤を投入して、一定の処理時間の後に濾過等で吸着剤を分離する方法でもよいし、吸着剤を充填したカラム等に不飽和環状エーテル化合物原料を流通させる方法でもよい。
また、蒸留精製の際に原料と吸着剤とを蒸留釜に装填し、不純物を吸着除去しつつ蒸留によって精製する方法も好ましい方法として挙げられる。その際の吸着剤としては、上記に挙げた物質のほか、酸成分の除去に効果的なNaOH等のアルカリ水酸化物、NaCO等のアルカリ炭酸塩等も好適に用いられる。
さらには、吸着剤を用いて不純物を除去した後にさらに蒸留精製を行って、吸着によって取り除けなかった不純物や、吸着剤由来の不純物を除去することも好適に行われる。また、蒸留精製の後に、吸着除去を行ってもよい。
精製等によって不純物量が低減された不飽和環状エーテル化合物原料を保存する場合の条件は、特に限定されないが、酸素や光を遮断した30℃以下の雰囲気で保存するのが好ましい。保存雰囲気中の酸素の濃度は、通常20%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは1%以下である。
場合によっては安定剤を加えて保存することも好適である。安定剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やt−ブチルカテコール(TBC)などの酸化防止剤、重合禁止剤が好適に用いられる。
[水素化水和反応触媒]
次に、本発明で用いる水素化水和反応触媒(以下、「本発明の触媒」と称す場合がある。)について説明する。
本発明においては、水素化水和反応触媒として、固体酸にNi、Coから選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Ni、Co」と記載する場合がある。)を固定化した触媒を用いる。
本発明においては、不飽和環状エーテル化合物原料の水素化水和によりジオール化合物を製造する際に、このような特定の水素化水和反応触媒を用いることによって、水の少ない条件下においても、安定かつ高効率にジオール化合物を製造することが可能となる。
即ち、Ni、Coを含む物質は、カルボニル基の水素化能力を有するため、不飽和環状エーテル化合物の水和と互変異性化によって生じるアルデヒド基を有する中間体も速やかに水素化することができる。したがって、アルデヒド基を有する中間体が関与した縮合などの望ましくない副反応の進行が回避される。
また、同様の理由により、これらの化合物が重合する等の望ましくない反応の進行も回避することができるため、触媒表面に重合物が蓄積する事態を防ぐことができる。結果として、不飽和環状エーテル化合物の水素化水和反応に対して有効な触媒活性点が長時間にわたって作用し続ける。
Ni、Coを触媒活性金属元素として用いることによって、高い選択性で不飽和環状エーテル化合物をジオール化合物に転化することが可能となり、効率的にジオール化合物を製造することができるようになる。
例えば、Ni、Coを含む触媒を用いた場合、不飽和環状エーテル化合物の水素化水和反応で生成するジオール化合物とそれが脱水環化して生成する飽和環状エーテル化合物の合量の選択性は通常90%以上であり、ジオール化合物の収率は最大限に高められる。
Ni、Coは、好ましくは、特定の酸化物からなる固体酸が少なくとも一部を構成する担体に添加あるいは担持されて固定化される。好ましくは、Ni、Coは、固体酸を含む担体に担持されることによって担持金属触媒として用いられる。
<担体>
Ni、Coの担体として用いる固体酸は、特に限定されないが、リン酸塩、硫酸塩や水酸化物、含水酸化物、酸化物、複合酸化物が好適である。リン酸塩、硫酸塩としては、Aly、Zr(PO、ZrP、Zr(SO・4HO、リン酸ニオブ等が挙げられる。水酸化物、含水酸化物、酸化物としては、ZrO(OH)、ZrO、SiO、Nb・nHO(nは通常3.5〜4.5)が挙げられる。その他、ZrSiO、ZrO−SiO、ZrO−TiO、ZrO−Al、SiO−Al、MgO−SiO、MgO−Al等の複合酸化物が挙げられる。このうち、好ましくは、Aly、リン酸ニオブ等のリン酸塩、ZrSiO等の複酸化物、ZrO−SiO、ZrO−TiO、ZrO−Al、SiO−Al、MgO−SiO、MgO−Al等のアモルファスの複合酸化物およびNb・nHOが挙げられる。より好ましくは、ニオブを含む酸化物や含水酸化物、Aly等のアモルファスのリン酸塩、SiOを含むアモルファスの複合酸化物が好ましく、特に好ましくは、アモルファスのSiO−Al、Nb・nHOが挙げられる。
さらには、アモルファスのSiO−Alにおいては、Si/Al比は通常1以上50以下、好ましくは2以上25以下、より好ましくは3以上12以下、特に好ましくは4以上8以下の組成のものが好ましい。
Ni、Coの担体としては、上記のリン酸塩、硫酸塩や水酸化物、含水酸化物、酸化物、複合酸化物のほか、酸性粘土鉱物、酸性ゼオライト等の多孔性酸化物、メソ細孔を有する酸化物を用いることもできる。このうち、好ましくは、酸性ゼオライト等の多孔性酸化物である。
酸性ゼオライトの種類としては、3次元の孔構造を有するものが好ましく、8員環の孔径を有さずに10員環以上の孔径を有する構造を有するものがさらに好ましい。酸性ゼオライトが8員環の孔径を有すると、それに金属を担持した触媒の活性やジオール選択性が低下するためである。3次元の孔構造を有し、8員環の孔径を有さず、10員環以上、特に12員環以上の孔径を有するものであれば、それに金属を担持した触媒において細孔内の拡散が水素化水和に適した状態になり、触媒の活性やジオール選択性が増大する。酸性ゼオライトとしては、具体的には、2次元の孔構造で8員環の孔径を有するMOR型や3次元の孔構造で8員環の孔径を有するA型より、3次元の孔構造で8員環の孔径を有さず、10員環以上の孔径を有するZSM5等のMFI型、BEA型、MWW型、USY等のFAU型が好ましく、特に好ましくはZSM5等のMFI型、USY等のFAU型である。
酸性ゼオライトとしてはプロトン型ゼオライトか2価以上のカチオンでイオン交換したゼオライトが好ましいが、プロトン型ゼオライトがより好ましい。この場合、例えばNiなどの還元可能な金属のイオンで予めイオン交換しておいて、金属イオンの還元によりプロトン型とすることも好適に行われる。また、アンモニウム型ゼオライトを焼成等の処理によってプロトン型にすることも通常行われる。
一般に、酸性ゼオライトのSi/Al比は、低いと酸性が弱くなり高いと酸点の数が少なくなるが、本発明の触媒においてNi、Coの担体として用いる酸性ゼオライトは、Si/Al比の高いハイシリカタイプが好ましい。Si/Al比が低すぎると、不飽和環状エーテルの水素化水和反応条件下において、ゼオライト構造の崩壊や、固定化したNi、Coのイオン化によるゼオライトからの脱離が起こりやすくなるためである。
ハイシリカの酸性ゼオライトのSi/Al比に依存する酸点の性質や数は水素化水和反応の水素化と水和のバランスに影響を及ぼす。酸性質が不足すると水和より水素化が優先して進行するために飽和環状エーテル化合物が生成しやすくなり、目的のジオール化合物を得にくくなる。ハイシリカの酸性ゼオライトのSi/Al比は通常5以上10000以下、好ましくは10以上2000以下、より好ましくは15以上1500以下、特に好ましくは20以上1000以下である。Si/Al比が水素化と水和とのバランスに与える影響を利用し、Ni、Coの担持量とハイシリカの酸性ゼオライトのSi/Al比を制御することによって、水素化水和反応における目的物であるジオール化合物と副生物である飽和環状エーテル化合物の生成比をコントロールすることが可能である。
本発明の触媒においては、担体として用いるハイシリカの酸性ゼオライトに残存するNa等のアルカリの量も水素化水和反応に影響する。残存するアルカリ(M)の量は、その酸化物(MO)換算の質量割合(質量%)として通常0.2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下である。また、担体として用いるハイシリカの酸性ゼオライトの酸点の数は、通常0.001mmol/g以上2.0mmol/g以下、好ましくは0.002/g以上1.0mmol/g以下、さらに好ましくは0.004mmol/g以上0.5mmol/g以下、特に好ましくは0.005mmol/g以上0.1mmol/g以下である。これらの酸点の数は、吸着NHのTPD(プログラム昇温脱離)分析における脱離NH量等によって定量することができる。
担体の比表面積は、特に限定されないが、通常1m/g以上1000m/g以下、好ましくは5m/g以上600m/g以下、さらに好ましくは10m/g以上500m/g以下である。担体の細孔容積は、特に限定されないが、通常0.1ml/g以上1ml/g以下、好ましくは0.2ml/g以上0.5ml/g以下である。担体の比表面積や細孔容積が小さいと不飽和環状エーテル化合物が十分に転化せず、未反応の不飽和環状エーテル化合物の回収等が必要になるため効率的でないが、比表面積や細孔容積が大き過ぎると望ましくない重合体が生成しやすくなる傾向がある。ここで、担体の比表面積は窒素などのガス吸着法により求められる。また、担体の細孔容積は窒素などのガス吸着法あるいは水銀圧入法により求められる。
これらの固体酸は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<担持金属元素>
本発明においては、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種の金属元素として、Niのみを用いてもよく、Coのみを用いてもよく、NiとCoを用いてもよいが、好ましくはNiが用いられる。その理由は、Niが目的生成物であるジオール化合物の分解反応に対して不活性であるのみならず、原料や中間体の不飽和環状エーテル化合物からブタノール等のモノオール化合物への水素化分解などの副反応が起こしにくいためである。
<担持量(触媒中の含有量)>
触媒中のNi、Coの含有量(担体への担持量)は、金属種や担体となる固体酸の種類にもよるので一概にはいえないが、触媒全体の質量を基準(100質量%)として、通常0.05質量%以上30質量%以下、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以上10質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。Ni、Coの含有量が少ないと、不飽和環状エーテル化合物が十分に転化せず、未反応の不飽和環状エーテル化合物の回収等が必要になるため効率的でないのみならず、使用済の触媒から金属元素を回収する際の回収効率が低下する。一方、Ni、Coの含有量が多すぎると、不飽和環状エーテル化合物の反応において水和より水素化の速度が増すとともに水素化分解等の望ましくない反応が起こり易くなる。結果として、飽和環状エーテル化合物等の副生物の生成割合が増加し、ジオール化合物を効率的に製造できなくなるため好ましくない。
特に、本発明の触媒としてNi担持触媒を用いる場合、Niの担持量は、触媒全体の質量を基準(100質量%)として0.5質量%以上20質量%以下とすることが好ましく、1.0質量%以上10質量%以下とすることがより好ましい。
<修飾助剤>
Ni、Coを固体酸に固定化した本発明の触媒は、触媒の性能や安定性を向上させるために、修飾助剤を含有することができる。修飾助剤としては、周期表第6−11族金属やそれらのイオンが挙げられる。好ましくはMn、Re、Wおよびそれらのイオン、さらに好ましくはMn、Reおよびそれらのイオン、特に好ましくはReおよびそのイオンである。これらの金属やイオンは、複数を組み合わせて用いてもかまわない。これらの修飾助剤を触媒に含有させることによってジオール化合物の選択性がさらに向上し、また、経時による触媒の活性低下が抑制され、より効率的にジオール化合物を製造することが可能になる場合がある。
これらの修飾助剤の本発明の触媒中の形態は、特に限定されないが、金属メタル、塩化物、カルボン酸塩、炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、水酸化物、酸化物、複合酸化物、およびそれらの混合物が挙げられ、好ましくは金属メタル、塩化物、カルボン酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩、水酸化物、酸化物、複合酸化物、およびそれらの混合物が挙げられる。これらの修飾助剤は、あらかじめ前述の固体酸担体に加えて複合化してもよく、Ni、Coを固体酸担体に担持した後に加えてもよい。また、Ni、Coと複合化、あるいは合金化するなどして用いても良い。好ましくは、前述の固体酸担体にNi、Coを固定化する際に、同時にこれらの修飾助剤を添加して複合化する。
本発明の触媒がこれらの修飾助剤を含有する場合、その含有量は、Ni、Coの金属元素や担体の種類にもよるので一概にはいえないが、触媒全体の質量を基準(100質量%)として、通常0.01質量%以上20質量%以下、好ましくは0.05質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以上2質量%以下である。
また、これらの修飾助剤のNi、Coに対する含有量比は、金属元素や担体の種類にもよるので一概にはいえないが、Ni、Coの含有量より少ないほうが好ましく、Ni、Coの質量を基準(100質量%)として、通常0質量%以上100質量%以下、好ましくは1質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上70質量%以下、特に好ましくは5質量%以上50質量%以下である。
本発明の触媒中の修飾助剤の含有量が少なすぎると、修飾助剤を用いたことによるジオール化合物の選択性の向上効果、触媒の経時的な活性低下の抑制効果を十分に得ることができない。一方、修飾助剤の含有量が多すぎると触媒の活性が低下するとともに不飽和環状エーテル化合物の副反応が併発し、ジオール化合物の選択率が低下するので効率的でない。
<固定化方法>
Ni、Coを固体酸に固定化する方法としては、Ni、Coの化合物が溶解した液を上記の固体酸に添加する方法が好適に用いられる。また、上記の固体酸が担持された物質に、Ni、Coが含まれる物質を添加あるいは担持する方法を採用することもでき、物理混合等の手段により目的とする触媒を得てもよい。
Ni、Coの固定化に用いるNi、Coの化合物としては、Ni、Coの硝酸塩、塩化物、アンミン錯体、ニトロアンミン化合物などの錯化合物が挙げられ、好ましくはアンミン錯体、ニトロアンミン化合物、硝酸塩などの硫黄やハロゲン元素を含まない水溶性原料が挙げられ、特に好ましくは硝酸塩が挙げられる。固体酸担体にNi、Coの化合物を添加した後は、それに引き続き、水分や液成分の除去、乾燥や酸素を含むガス中での焼成を行ってもよい。
Ni、Coと修飾助剤を含む触媒を製造する場合には、Ni、Coの化合物と共に、修飾助剤の化合物が溶解した液を用いて、上記と同様に行えばよい。
以下、Ni、Co、必要に応じて用いられる修飾助剤の担持方法について説明する。
Ni、Coを固体酸担体に担持する方法は特に限定されないが、イオン交換法や含浸担持法、ポアフィリング法、incipient−wetness法、スプレー担持法等が挙げられる。ここで、担持に用いるNi、Co化合物や修飾助剤として用いる化合物の水溶液の濃度やpHを調整することにより、担持量を制御することができる。
Ni、Coを担持する固体酸担体はあらかじめ酸素を含むガス雰囲気下で焼成してもよい。この場合の焼成温度は、通常200℃以上800℃以下、好ましくは300℃以上600℃以下、さらに好ましくは350℃以上550℃以下、特に好ましくは400℃以上500℃以下である。
イオン交換法や含浸担持法によってNi、Co、必要に応じて用いられる修飾助剤を固体酸担体に担持した後、濾過や遠心脱液、乾燥により水分や液分を除去する。その後、空気中等で焼成することも好適に行われる。この際の焼成温度は、通常200℃以上800℃以下、好ましくは300℃以上600℃以下、さらに好ましくは350℃以上550℃以下、特に好ましくは400℃以上500℃以下である。担持後の固体酸担体を管に装填して酸素を含むガスを流通させながら焼成することも好適に行われる。
さらに、触媒を液相中で還元剤と反応させる、あるいは触媒を管に装填して水素やアルコールを含むガスを流通させ還元性ガス気流下で処理することにより、Ni、Coを還元し、触媒を活性化することができる。液相での還元に用いる還元剤としては、ホルマリン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアセトン、エタノール、ギ酸、シュウ酸、水素が挙げられ、好ましくはホルマリン、ヒドラジンが挙げられる。還元性ガスとしては、水素、アンモニア、一酸化炭素、一酸化窒素が挙げられ、好ましくは水素が挙げられる。還元性ガスで処理する際の温度は、通常200℃以上900℃以下、好ましくは300℃以上600℃以下、特に好ましくは320℃以上550℃以下である。このような還元処理は、不飽和環状エーテル化合物原料の水素化水和反応に供する直前に行ってもかまわない。また、不飽和環状エーテル化合物原料の水素化水和反応を行う反応器と同一の反応器で行ってもかまわない。
[水素化水和反応]
本発明における水素化水和反応の反応方式は、特に限定されるものではなく、回分反応、連続流通反応のいずれでも実施することができるが、工業的には連続流通反応方式を用いるのが好ましい。また、水素化水和反応の反応形式は液相反応、気相反応のいずれにおいても実施できるが、効率の高い液相反応により不飽和環状エーテル化合物原料と本発明の触媒等とを接触させて反応を実施するのが好ましい。
連続流通反応方式の場合、通常、触媒を装填した管型反応器、あるいは触媒が懸濁した反応器に不飽和環状エーテル化合物原料を含む混合原料を連続的に供給し、反応器内の触媒に接触させることによって反応を進行させてジオール化合物を得る。
本発明の触媒を用いた不飽和環状エーテル化合物の水素化水和反応においては、水素化のための水素を供給する。供給する水素の量は特にこだわらないが、不飽和環状エーテル化合物原料中の不飽和環状エーテル化合物に対するモル比(水素/不飽和環状エーテル化合物)として、通常0.1以上50以下、好ましくは0.2以上25以下、さらに好ましくは0.5以上10以下、特に好ましくは1以上5以下である。水素の量が少ないと不飽和環状エーテル化合物が十分に転化せず、未反応の不飽和環状エーテル化合物の回収等が必要になるため効率的でない。水素の量が多すぎると不飽和環状エーテル化合物の水素化分解生成物量が増大し、ジオール化合物の収率が低下するため好ましくない。なお、用いる水素ガスの純度は、通常99%以上、好ましくは99.9%以上、さらに好ましくは99.99%以上、特に好ましくは99.999%以上である。
また、水素化水和反応を進行させるためには水を供給する必要がある。供給する水の量は特にこだわらないが、不飽和環状エーテル化合物原料中の不飽和環状エーテル化合物に対するモル比(水/不飽和環状エーテル化合物)として、通常0.5以上100以下、好ましくは1以上50以下、さらに好ましくは2以上20以下、特に好ましくは3以上10以下、最も好ましくは4以上8以下である。水の量が少ないと水和反応が進行しにくくなり、環状エーテル化合物が主生成物となりジオール化合物の収率が低下する。水の量が多すぎると、生成したジオール化合物と水との分離において多大なエネルギーが必要となるため好ましくない。
また、供給する水と不飽和環状エーテル化合物原料の量(水/不飽和環状エーテル化合物モル比)を制御することにより、水素化水和反応における目的物であるジオール化合物と副生物である飽和環状エーテル化合物の生成比をコントロールすることが可能である。
管型反応器の場合、触媒層の滞留時間は通常0.001秒以上10秒以下、好ましくは0.01秒以上5秒以下、さらに好ましくは0.05秒以上2秒以下、特に好ましくは0.1秒以上1秒以下である。回分式反応器の場合、反応時間は通常20分以上10時間以下、好ましくは40分以上8時間以下、さらに好ましくは1時間以上6時間以下、特に好ましくは2時間以上4時間以下である。不飽和環状エーテル化合物原料の供給量に対する触媒金属量(Ni、Co)や触媒量が少なすぎる場合や、滞留時間あるいは反応時間が短すぎる場合には不飽和環状エーテル化合物が十分に転化せず、未反応の不飽和環状エーテル化合物の回収等が必要になるため効率的でない。また、不飽和環状エーテル化合物原料の供給量に対する触媒金属量(Ni、Co)や触媒量が多すぎる場合や滞留時間あるいは反応時間が長すぎる場合には、生成したジオール化合物が逐次的な反応を引き起こし、結果としてジオール化合物の収率が低下することがある。ただし、長時間に及ぶ連続反応を行う場合、触媒の活性低下を予測してあらかじめ過剰量の触媒を装填することが行われることもある。
本発明の水素化水和反応の反応温度は、通常100℃以上240℃以下、好ましくは120℃以上220℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下、特に好ましくは140℃以上180℃以下である。反応温度が低いと不飽和環状エーテル化合物が十分に転化せず、未反応の不飽和環状エーテル化合物の回収等が必要になるため効率的でない。また、反応温度が低すぎると水和反応が進まないため、結果として飽和環状エーテル化合物が選択的に生成し、目的とするジオール化合物の生成割合が減るために効率的でない。一方で、反応温度が高すぎると、望まない水素化分解が進行してモノオール化合物が副生し、結果としてジオール化合物の収率が低下するため好ましくない。
反応系の水素圧力(分圧)は、絶対圧表記で、通常0.5MPa以上6MPa以下、好ましくは1MPa以上5MPa以下、さらに好ましくは2MPa以上4MPa以下である。水素分圧が高すぎると水素化が進行しやすくなり、水素化水和反応における水素化と水和のバランスが水素化に傾き、飽和環状エーテル化合物が主生成物になりやすい。また水素圧力が高すぎると水素化分解が進行しやすくなり、ジオール化合物の収率が低下する。一方、水素圧力が低すぎると、水和反応で生成する中間体(互変異性によってアルデヒドになることもある)の水素化が進まなくなる恐れがあり、その場合にはそれらの縮合や重合などの副反応が顕著になってジオール化合物の選択率が低下する。
液相反応の場合には溶媒を使用することができる。用いる溶媒は特にこだわらないが、生成物との分離等を考慮すると、生成物となるジオール化合物や主要な副生物である飽和環状エーテル化合物あるいは水素化条件下で安定なシクロヘキサンなどの有機化合物を用いるのが好ましい。具体的には、原料である不飽和環状エーテル化合物がフランやジヒドロフランの場合は、溶媒として生成物である1,4−ブタンジオールやTHF(テトラヒドロフラン)を用いることができる。また、原料である不飽和環状エーテル化合物がジヒドロピランの場合は、溶媒として生成物である1,5−ペンタンジオールやTHP(テトラヒドロピラン)を用いることができる。生成物の一部を循環させて溶媒として用いることも好適に行われる。
水素化水和反応中には、必要に応じて副生成物のパージ除去や、触媒の添加や入れ替えを行うことができる。また、連続的に不飽和環状エーテル化合物原料を供給することも好適に用いられる。過剰の水素を用いる場合は反応器から抜け出た水素を循環して使用することができる。
不飽和環状エーテル化合物原料を連続的に水素化水和反応工程に供給する場合、水素化水和反応工程の前に不飽和環状エーテル化合物を製造する工程を連結させることができる。不飽和環状エーテル化合物の製造方法の例としては、前述の通り、フルフラール化合物の脱カルボニル化、ブタジエンやエポキシブテンの部分酸化によるフランあるいはジヒドロフランの製造や、テトラヒドロフルフリルアルコールの脱水異性化によるジヒドロピランの製造が挙げられる。
このような前段の製造工程において得られた不飽和環状エーテル化合物原料に、蒸留あるいは不純物の吸着除去による精製を施した後、連続的に水素化水和反応工程に供給することが好適に行われる。蒸留精製の場合には、高沸点の不純物を排除するだけではなく、低沸点の不純物も除去して水素化水和反応工程に供給することが効果的である。
前段工程や精製工程と水素化水和反応工程との連結の仕方や、水素化水和反応工程における生成物や使用する溶媒のリサイクルの条件によっては、原料となる不飽和環状エーテル化合物に、目的とするジオール化合物や副生する飽和環状エーテル化合物が含まれたり同伴したりすることがある。しかしながら、反応速度の低下などの問題がない限り、このような化合物を含んだ原料を用いてもかまわない。
本発明によるジオール化合物の製造方法においては、水和(ジオール化合物の生成)を促進するために、酸性質を補強する目的で反応助剤を用いることができる。反応助剤としては、硫酸やパラトルエンスルホン酸などの酸のほか、硫酸アルミニウムや硫酸亜鉛などの酸性硫酸塩が水に溶かした状態で用いられる。ただし、これらの反応助剤が残存したままの状態で生成したジオール化合物を水と分離において熱したりすれば、せっかく生成したジオール化合物が酸により脱水環化して環状飽和エーテル化合物になってしまうなどの不都合が生じる。したがって、この場合には、反応終了後にこれらの反応助剤を中和するなりして除去する必要がある。一方で、本発明の触媒によれば、十分な転化率、選択率及び収率で水素化水和反応を行えるため、本発明のジオール化合物の製造方法では、これらの反応助剤を用いないことで、このような後処理工程を省略することができ、好ましい。
本発明の方法によれば、水素化水和反応を効率的に進行させることができるのみならず、水素化分解を抑制することができる。例えば、不飽和環状エーテル化合物としてフランを例に挙げれば、水素化分解によって副生するブタノールの選択率は5%以下である。また、NiやCoはカルボニルの水素化も十分に進行させることができるため、中間体の水和と互変異性によって生じるアルデヒド体の水素化が円滑に進行し、アルデヒドの縮合や重合による副生物も少ないという特徴がある。また、水と水素の共存下の反応であるため、ヘミアセタールの生成も少ない。
得られたジオール化合物は、溶媒や水、および飽和環状エーテル化合物、その他の副生物と分離されて製品となる。ジオール化合物の分離方法は特にこだわらないが、通常、蒸留精製が好ましく用いられる。場合によってはさらに精製工程を設けることにより、高純度のジオール化合物が得られる。製品となるジオール化合物の純度は、通常95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%である。
本発明の触媒を用いることにより極めて効率よく不純物の含有量が少ないジオール化合物を得ることができる。得られるジオール化合物の純度は通常95%以上である。本発明の触媒では、触媒表面における重合反応等が回避されるため、得られるジオール化合物に含まれる重合反応等による副生成物の割合も極めて低くなる。
本発明により得られるジオール化合物は無色透明であり、APHI(American Public Healty Association)標準色溶液のYI(Yellowness Index:黄色度)値を基準とした番号で算出すれば50以下である。
本発明によって得られるジオール化合物は極めて不純物含有量が少ないため、各種のポリマー原料や溶剤として有用である。また、同様な理由により誘導品合成の中間体として有用であり、ジオール化合物を原料とする合成反応を効率よく実施することができる。
また、本発明の方法により、ジオール化合物と共に飽和環状エーテル化合物を併産することが可能である。特に、原料の不飽和環状エーテル化合物と導入する水との量比をコントロールすること、あるいは、反応温度や水素圧力を調整することによって、ジオール化合物と飽和環状エーテル化合物の生成比をコントロールしながら両者を製造することができる。
本発明の方法によりジオール化合物を目的物として製造する場合、水素化水和反応で生成するジオール化合物の、副生する飽和環状エーテル化合物に対するモル比(ジオール化合物/飽和環状エーテル化合物モル比)は0.4以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.8以上であることが特に好ましい。
本発明の触媒を用いることによって、不飽和環状エーテル化合物からジオール化合物を製造するにあたり、副生物の生成量を低減し、また、水素化水和反応中に触媒に付着する成分を低減させて、長期間連続して触媒を使用することが可能となるため、触媒の入れ替えや再生の頻度を低減することができる。
触媒が失活した場合の触媒の再生法や再生処理は特に限定されない。例えば、触媒を反応器から抜き出し、乾燥させた後、別の反応器で窒素や水素を含むガスによる高温での処理を施し、触媒表面に付着した成分を除去する方法、あるいは、酸素を含むガスによる高温での処理を施し、触媒表面に付着した成分を焼き飛ばす方法により触媒性能を回復させることが可能である。
また、アルコール等の有機溶媒による洗浄で触媒表面に付着した不純物やコークを除去、乾燥することにより触媒性能を回復させることもできる。
付着成分を除去した後、再び不飽和環状エーテル化合物の水素化水和反応に供される前に、触媒調製時と同様な還元処理を施すことも行われる。すなわち液相中で還元剤と反応させたり、管に装填して水素やアルコールを含むガスを流通させ還元性ガス気流中下で処理したりすることにより、触媒活性を担う金属を還元することが好適に行われる。
これらの一連の再生処理は、水素化水和反応を行う反応器に触媒を装填したまま行ってもかまわない。この場合、あらかじめ水素化水和反応を行う反応器を複数設けることが好ましい。このようにすることで、一つの反応器に装填された触媒を再生する間は別の反応器に装填された触媒で不飽和環状エーテル化合物の水素化水和反応を行うことによって、連続的にジオール化合物を製造することが可能となる。
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、不飽和環状エーテル化合物原料の不飽和環状エーテル化合物の純度はガスクロマトグラフィーのピーク面積割合から見積もり、不純物の硫黄元素換算濃度、窒素元素換算濃度の測定は、それぞれ、燃焼−吸収−イオンクロマト法(燃焼装置:三菱化学(株)製 試料燃焼装置 QF−02、分析装置:日本ダイオネクス(株)製 イオンクロマトDX−500)、燃焼分解−化学発光法で行った(三菱化学(株)製 微量窒素分析装置 TN−10)。
また、以下において、触媒の表記における「%」は「質量%」を示す。
〔フランの水素化水和反応〕
[実施例1:ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=75、比表面積=410m/g、NaO含有量0.05質量%)紛体を約100ml/minの空気気流下、500℃で4時間焼成した。この焼成したゼオライト5.0gに、硝酸NiとReを溶解した混合水溶液を用いて、incipient−wetness法によりNiとReを含浸させた。湯浴で水分を除去した後、約100ml/minの空気気流下120℃で12時間乾燥し、その後500℃で4時間焼成した。さらに、75ml/minの水素気流下で450℃、2時間還元し、ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒(2質量%Ni、0.5質量%Re、残部ZSM5(Si/Al=75))を得た。
水素化水和反応の不飽和環状エーテル化合物原料として、市販試薬のフランを特に精製せずに使用した。このフランの純度は99質量%以上であり、不純物含有量は、硫黄元素換算濃度2ppm以下、窒素元素換算濃度5ppm以下であった。
氷水をはったバットに200mLの誘導撹拌機構を備えたオートクレーブを浸して冷却し、水を48g投入し、続いて上述の方法で得たZSM5担持2%Ni−0.5%Re触媒を2g投入。さらに上述のフランを34g仕込んだ。このとき、水とフランのモル比は5.33であった。オートクレーブを閉じ、氷水で冷やしながら、内部ガスを水素(一般工業用水素ガス 純度99.99vol%以上)に置換した。オートクレーブに漏れがないかをチェックした後、誘導撹拌方式で撹拌(300rpm)しながらオートクレーブを昇温し、内温が150℃に到達する直前で、撹拌速度を1000rpmに上げるとともに水素圧力を反応器圧力が4MPaになるように調節し、内温150℃で水素化水和反応を開始した。
所定時間経過後、反応器を空冷し、内温が50℃以下になったら、氷水を張ったバットにつけてさらに冷却した。内温が6℃になったら、パージバルブを開けて常圧に戻し、
その後オートクレーブの蓋を開けて、内容物をすばやく採取した。内容物をエタノールで希釈し、内部標準としてジエチレングリコールジメチルエーテルを加えて、FID−GCで定量的に分析した。以下の式より不飽和環状エーテル転化率とジオールの選択率を求めた。
フラン転化率(%)=
[1−{反応後不飽和環状エーテル残量(mol)
/不飽和環状エーテル供給量(mol)}]×100
ジオール選択率(%)=
{ジオール収率(%)/不飽和環状エーテル転化率(%)}×100
=[{ジオール生成量(mol)/不飽和環状エーテル仕込み量(mol)}
×100(%)/不飽和環状エーテル転化率(%)]×100
同様に飽和環状エーテルなどの副生物の選択率も求め、ジオールと飽和環状エーテルの合計の選択率、モノオールの選択率、飽和環状エーテルに対するジオールの生成比を算出した。
これらの結果を表1に示す。
表1に示されるように、ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒を用いた場合は、300分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は98%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は43%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は54%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.80であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
[実施例2:ZSM5(Si/Al=800)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=800、比表面積=360m/g、NaO含有量0.05質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=800)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、120分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は99%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は30%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は68%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.44であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
[実施例3:USY(Si/Al=23)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型FAUゼオライト(USY、Si/Al=23、比表面積=720m/g、NaO含有量0.03質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、USY(Si/Al=23)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は94%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は50%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は42%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.19であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
[実施例4:BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=75、比表面積=500m/g、NaO含有量0.03質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、210分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は100%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は48%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は50%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.96であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
[実施例5:BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−2%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=75、比表面積=500m/g、NaO含有量0.03質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−2%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、120分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は99%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は45%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は44%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.02であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
[実施例6:ZSM5(Si/Al=75)担持1%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=75、比表面積=410m/g、NaO含有量0.05質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=75)担持1%Ni−0.5%Re触媒を調製した。この触媒を4g用い、反応温度を165℃とした以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、270分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は99%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は60%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は35%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.71であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は3%であった。
[実施例7:ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=75、比表面積=410m/g、NaO含有量0.05質量%)紛体と硝酸Ni水溶液を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni触媒を調製し、反応器水素圧力を5MPaに調節した以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、180分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は88%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は34%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は65%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.52であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
[実施例8:USY(Si/Al=100)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型FAUゼオライト(USY、Si/Al=100、比表面積=630m/g、NaO含有量0.05質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、USY(Si/Al=100)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、150分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は94%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は29%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は68%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.43であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
[実施例9:BEA(Si/Al=20)担持4%Ni−1%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=20、比表面積=500m/g、NaO含有量0.05質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=20)担持4%Ni−1%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、120分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は100%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は51%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は43%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.19であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
[実施例10:ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=75、比表面積=410m/g、NaO含有量0.05質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製した。この触媒を0.5g用い、反応器水素圧力を3MPaに調節した以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、330分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は59%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は50%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は41%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.22であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
[比較例1:MOR(Si/Al=112)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MOR(モルデナイト)ゼオライト(Si/Al=112、比表面積=450m/g、NaO含有量0.05質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、MOR(Si/Al=112)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は45%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は8%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は52%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.15であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
[比較例2:BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−4%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=75、比表面積=500m/g、NaO含有量0.03質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−4%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は43%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は22%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は33%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.67であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
[比較例3:BEA(Si/Al=75)担持2%Re触媒による水素化水和反応>
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=75、比表面積=500m/g、NaO含有量0.03質量%以下)紛体とRe水溶液を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=75)担持2%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は8%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は20%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は28%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.71であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
[比較例4:ZSM5(Si/Al=800)担持20%Ni触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=800、比表面積=360m/g、NaO含有量0.05質量%以下)紛体と硝酸Ni水溶液を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=800)担持20%Ni触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、60分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は99%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は12%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は85%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.14であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
Figure 2018065764
実施例1−6と比較例1から、ZSM5(MFI)、USY(FAU)、BEAといった10員環以上の孔径と3次元の孔構造を有するプロトン型(酸性)ハイシリカゼオライトに固定化したNi触媒が、不飽和環状エーテルの水素化水和反応において高い選択率でジオール化合物を与えることがわかる。実施例4,5と比較例2,3から、活性な触媒金属であるNiと修飾助剤であるReの量比に関して、NiよりもReの量が少ないほうが、不飽和環状エーテルの水素化水和反応において、活性、選択性ともに優れていることがわかる。さらに、実施例1,6,7と比較例4から、活性な触媒金属であるNiの触媒全体に対する量が20%より少ないほうが、不飽和環状エーテルの水素化水和反応において高い選択率でジオール化合物を与えることがわかる。
[実施例11:アモルファスSiO−Al担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のアモルファスSiO−Al(比表面積=560m/g、細孔容積=0.73ml/g、Si/Al=4.5)紛体を用いて、実施例1と同様にSiO−Al担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製した。得られた触媒を用いて、反応器水素圧力を3MPaとした以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、360分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は74%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は57%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は37%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.54であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
[実施例12:アモルファスAl1.5PO担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
硝酸アルミニウムとリン酸の混合水溶液に28%NH水をゆっくり滴下して沈殿を生じさせ、一晩熟成した後に濾過、水洗した。得られたケーキを120℃のオーブンで12時間乾燥し、さらに400℃で4時間焼成した後に乳鉢で粉砕してアモルファスAl1.5PO紛体を得た。
得られたAl1.5PO紛体を担体として用いて、実施例1と同様にAl1.5PO担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製した。この触媒を用いて、反応器水素圧力を5MPaとした以外は実施例1と同様にして、フランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、180分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は71%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は42%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は55%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.76であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
[実施例13:ニオブ酸担持4%Ni触媒による水素化水和反応]
CBMM社の含水酸化ニオブ紛体(HY340、比表面積150m/g)を300℃で2時間焼成して脱水した。硝酸Ni水溶液を用いて、得られたニオブ酸(含水酸化ニオブ)にincipient−wetness法によりNiを含浸させた。湯浴で水分を飛ばした後、120℃で6時間乾燥し、さらに300℃で3時間、空気中で焼成した後に、水素気流下、320℃で2時間還元して、ニオブ酸担持4%Ni触媒を得た。得られた触媒を用い、反応器水素圧力を5MPaとした以外は実施例1と同様にして、フランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、300分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は70%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は43%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は50%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.86であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
[実施例14:ニオブ酸担持8%Ni触媒による水素化水和反応]
実施例13と同様にしてニオブ酸担持8%Ni触媒を得た。得られた触媒を用いて実施例13と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、105分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は77%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は28%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は69%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.41であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
[比較例5:ニオブ酸担持20%Ni触媒による水素化水和反応]
実施例13と同様にしてニオブ酸担持20%Ni触媒を得た。得られた触媒を用いて実施例13と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、45分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は77%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は17%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は79%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.22であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
[比較例6:ジルコニア担持1%Ni触媒による水素化水和反応]
新日本金属社の水酸化ジルコニウム粉末(Z999)を500℃で3時間焼成して脱水した。得られたジルコニア粉末(比表面積90m/g)にincipient−wetness法によりNiを含浸させた。湯浴で水分を飛ばした後、120℃で6時間乾燥し、さらに500℃で3時間空気中で焼成した後に、水素気流下、300℃で2時間還元して、ジルコニア担持1%Ni触媒を得た。得られた触媒を用い、反応器水素圧力を5MPaとした以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、180分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は74%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は14%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は83%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.17であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は3%であった。
[比較例7:チタニア担持2%Ni触媒による水素化水和反応]
担体として塩化チタン原料から製造した、主としてアナタース型の結晶構造を有するチタニア(比表面積50m/g)を粉砕した粉末を用いて、比較例6と同様にしてチタニア担持2%Ni触媒を得た。得られた触媒を用い、反応器水素圧力を5MPaとした以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、60分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は73%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は1%以下であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は96%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.01以下であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は4%であった。
[比較例8:アルミナ担持1%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のγ−Al(比表面積166m/g、細孔容積0.37ml/g)を粉砕した紛体を用いて、実施例6と同様にしてアルミナ担持1%Ni−0.5%Re触媒を得た。この触媒を4g用い、反応器水素圧力を3MPaとした以外は、実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、60分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は62%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は1%以下であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は93%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.01以下であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は6%であった。
Figure 2018065764
実施例11−14と比較例6−8から、アモルファスSiO−Al、アモルファスAl1.5PO、ニオブ酸(含水酸化ニオブ)に固定化したNi触媒が、不飽和環状エーテルの水素化水和反応において高い選択率でジオール化合物を与えることがわかる。実施例13,14と比較例5から、活性な触媒金属であるNiの触媒全体に対する量が20%より少ないほうが、不飽和環状エーテルの水素化水和反応において高い選択率でジオール化合物を与えることがわかる。
〔その他の不飽和環状エーテルの水素化水和反応〕
[実施例16:ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒による2,3−DHFの水素化水和反応]
水素化水和反応の原料として、市販試薬の2,3−DHF(ジヒドロフラン)を特に精製せずに使用した。この2,3−DHFの純度は98%以上であった。
実施例1で調製したZSM5担持2%Ni−0.5%Re触媒を用い、2,3−DHFの仕込み量を35gとし、反応器水素圧力を3MPaに調節した以外は実施例1と同様にして、2,3−DHFの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表3に示した。
表3に示されるように、150分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(2,3−DHF)転化率は100%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は91%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は7%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は13.00であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
[実施例17:ZSM5(Si/Al=75)担持2%Co−0.5%Re触媒による2,3−DHFの水素化水和反応]
硝酸Niの代りに硝酸Coを用いて、実施例1と同様にしてZSM5(Si/Al=75)担持2%Co−0.5%Re触媒を得た。得られた触媒を用い、実施例16と同様にして2,3−DHFの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表3に示した。
表3に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(2,3−DHF)転化率は37%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は49%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は44%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.11であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は6%であった。
[実施例18:ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒による2,5−DHFの水素化水和反応]
水素化水和反応の原料として、市販試薬の2,5−DHF(ジヒドロフラン)を特に精製せずに使用した。この2,5−DHFの純度は98%以上であった。
実施例1で調製したZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒を用いて、実施例16と同様にして、2,5−DHFの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表3に示した。
表3に示されるように、150分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(2,3−DHF)転化率は100%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は66%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は32%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は2.06であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
[実施例19:ZSM5(Si/Al=800)担持2%Ni−0.5%Re触媒による3,4−2H−DHPの水素化水和反応]
水素化水和反応の原料として、市販試薬の3,4−2H−DHP(ジヒドロピラン)を特に精製せずに使用した。この3,4−2H−DHPの純度は96%以上であった。
実施例2で調製したZSM5(Si/Al=800)担持2%Ni−0.5%Re触媒を用いて、3,4−2H−DHPの仕込み量を42gとした以外は実施例16と同様にして、3,4−2H−DHPの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表3に示した。
表3に示されるように、150分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(3,4−2H−DHP)転化率は100%であり、ジオール(1,5−ペンタンジオール)選択率は97%であった。同様に飽和環状エーテル(THP:テトラヒドロピラン)選択率は2%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は48.50であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ペンタノール)の選択率は1%以下であった。
Figure 2018065764
実施例16−19から、Ni、Coを固体酸に固定化した触媒が、各種の不飽和環状エーテルの水素化水和反応において高い選択率でジオール化合物を与えることがわかる。

Claims (10)

  1. 不飽和環状エーテル化合物原料を、触媒と、水素及び水の存在下に水素化水和反応させてジオール化合物を製造する方法において、
    該触媒として、Ni及びCoから選ばれる少なくとも1種の金属元素を固体酸に固定化した触媒を用いる、ジオール化合物の製造方法。
  2. 前記固体酸が、3次元の孔構造を有し、8員環の孔径を有さず10員環以上の孔径を有する酸性のハイシリカゼオライトであって、該ゼオライトのSi/Al比が10以上1000以下であることを特徴とする請求項1に記載のジオール化合物の製造方法。
  3. 前記固体酸が、ニオブを含む酸化物、ニオブを含む含水酸化物、リン酸塩、及びSiOを含む複合酸化物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のジオール化合物の製造方法。
  4. 前記触媒が前記固体酸に少なくともNiを担持したNi担持触媒であり、Niの担持量が触媒全体の質量に対して0.5質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のジオール化合物の製造方法。
  5. 前記触媒が前記固体酸にNi及び/又はCoと、修飾助剤としてMn、Re及びWの1種又は2種以上を担持した担持触媒であり、該修飾助剤の担持量がNi及び/又はCoの質量に対して100質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のジオール化合物の製造方法。
  6. 反応に供される水と不飽和環状エーテル化合物のモル比(水/不飽和環状エーテル化合物)が0.5以上8以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のジオール化合物の製造方法。
  7. 前記水素化水和反応における水素圧力が1MPa以上5MPa以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のジオール化合物の製造方法。
  8. 前記水素化水和反応で生成するジオール化合物の、副生する飽和環状エーテル化合物に対するモル比が0.4以上であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のジオール化合物の製造方法。
  9. 前記触媒を前記水素化水和反応に供するに先立ち、320℃以上の温度で還元性ガスと接触させる還元処理を行うことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のジオール化合物の製造方法。
  10. 前記不飽和環状エーテル化合物が、ジヒドロフラン環化合物又はジヒドロピラン環化合物であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のジオール化合物の製造方法。
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