JP6369828B2 - ヒドロキシメチルフルフラールの還元方法 - Google Patents

ヒドロキシメチルフルフラールの還元方法 Download PDF

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Description

本発明は、5−ヒドロキシメチル−2−フルフラール(ヒドロキシメチルフルフラール、以下「HMF」ともいう)の還元方法に関する。詳しくは、バイオマス原料から得られるヒドロキシメチルフルフラールを出発原料として、水素化によりビスヒドロキシメチルフランを効率的に製造する方法に関する。
近年、バイオマス原料であるフルクトースやグルコースからのC6ルートの一つとして容易に得られるヒドロキシメチルフルフラール(HMF)は、様々な物質へと変換することができる重要な化合物として注目されており、既に数多くの化合物への変換技術開発が行われている(非特許文献1)。その中でもビスヒドロキシメチルフルフラール(以下「BHMF」ともいう)は、HMFのアルデヒド基をアルコールに1段階の還元で得られることから、ポリマーや人造繊維の原料としての可能性が示唆されており(非特許文献2)、急速にその開発が進んできている。
化1は、バイオマス原料からバイオマス燃料への合成経路C6を示す。ヒドロキシメチルフルフラールの還元から得られる生成物は、様々な化合物が得られビスヒドロキシメチルフルフランを選択的に得ることは難しい。特に多くの場合は、フラン環が還元され、ヒドロフラン骨格を有する化合物(2,5−ジヒドロキシメチルテトラヒドロフラン:DHMTHF;2−メチルテトラヒドロフラン−5−メタノール:MTHFM;2,5−ジメチルテトラヒドロフラン:DMTHF;2−メチルテトラヒドロフラン:MTHF;テトラヒドロフラン:THF)が得られやすく、またフラン環の還元を抑制することが出来たとしても、2メチルフルフラールや、2,5ジメチルフラン等への還元まで進みやすいことから、BHMFを選択的に得ることは困難であった。
その中で、ヒドロキシメチルフルフラールからビスヒドロキシメチルフランへの変換方法として、幾つかの手法が報告されている。特許文献1では、ヒドロキシメチルフルフラールからビスヒドロキシメチルフランを得る際に、ルテニウム担持シリカ、ルテニウム担持アルミナ、ロジウム担持カーボン(活性炭)、ニッケル担持シリカ等を触媒に用いて、水/エタノールの混合溶媒を用い、水素加圧下で2時間反応させている。転化率は99%と比較的良好な値を示す触媒もあるが、得られる生成物は、全てエトキシメチル基を有するフランが得られており、ポリマー等の原料となるBHMFが得られるとは報告されてない。更に、同様の条件で白金担持カーボンを触媒として、HMFの還元を行い、BHMFをほぼ定量的に得ているが、反応時間は室温で2日と更に75℃で1日、合計3日間と長い。
また、特許文献2では、ラネー合金を触媒として反応を行っている。金属種は、コバルト、銅、ニッケルで、ラネー銅は活性が低く、他の副生成物が得られるものの、ラネーコバルトを用いたときは、60℃、2時間の反応条件で、転化率100%、選択率97%でBHMFを得ている(最高値)。ただし、本手法は、HMF原料を無溶媒で反応させる必要があるが、通常バイオマスから得られるHMFは水溶液として得られるため、無溶媒の反応を行うためには水を除去する必要がある。しかし、HMF水溶液から水を除去することは極めて困難を要することが多く、特に水酸基とアルデヒド基とが反応して、多くの不純物を生成させる致命的な欠点を有する。また、その他の触媒として、パラジウム担持カーボン、白金担持カーボン、ルテニウム担持カーボンを用いた結果も示しているが、収率、選択率は高くなく、更に少量のレブリン酸とギ酸が生成する欠点がある。
同時に、特許文献2では水を媒体に用いた系の例も示している。この場合、ニッケル粉末を触媒として反応を行っているが、反応温度60℃、反応時間2時間で、84%のBHMFが得られるものの、10%のDHMTHFが不純物として得られることから反応が行き過ぎやすいという問題点を抱える。そのため、反応毎に状態をチェックしながら合成を行う必要があり、例えば4時間では、BHMFの収率は77%まで減少する上、100℃で水素圧を上げた条件で行うと、BHMFは3%まで減少することから、実際の合成には精密な制御を必要とする。
一方で特許文献3は、イリジウム錯体(Cp*Ir(TsDPEN)を触媒として、重ジメチルスルホキシド(d6-DMSO)中でHMFからBHMFの反応を行っている。99%の収率ながら、16時間の時間を必要としており、還元剤はギ酸であることから実用的ではない。
その他、非特許文献3では、水中でHMFの選択的水素化を行っており、イリジウム―酸化レニウム合金担持シリカを触媒に用いることで、反応温度30℃だが、6時間で99%以上の収率と選択率でBHMFを得ることを報告している。ただし、触媒は1度使用した後は、水で3回洗浄し、110℃で12時間乾燥した後に、500℃で1時間焼成しないと触媒が再生しない。この場合、酸化レニウムが重要な助触媒としての働きをしており、水素化還元によってレニウムに還元されてしまうため、焼成により酸化レニウムを再生させないと、触媒能が復活しない欠点を持つ。
非特許文献4では、エタノール中で、各種白金担持触媒を用いた報告例を行っているが、いずれもBHMFの収率は最大で85%と決して高い訳では無い上、媒体がエタノールであることから、得られるHMF水溶液の水を置換する必要があり、利用可能な手法にはなり得ない。
非特許文献5は、1,4ジオキサン中で行われており、非特許文献6は、水を添加しているとは言え、ブタノール中での反応であり、非特許文献7はイオン液体中で行われているため、先と同様の問題から利用可能な手法にはなり得ない。
このため、ポリマーや人造繊維の原料として多量な需要の可能性があるビスヒドロキシメチルフランの工業的に利用可能で、かつクリーンで省エネルギーな製造技術の確立が望まれている。
国際公開第2009/030509号 米国特許出願公開第2007/287845明細書 米国特許出願公開第2011/263880明細書
J. Lewkowski, ARKIVOC, 2001 (i), 17-54. X. Tong, Y. Ma, Y. Li, 2010, Vol. 385, pp.1-13. Y. Nakagawa, M. Tamura, K. Tokonami, K. Kensuke, Chemical Communications, 2013, Vol. 49, pp.7034-7036. M. Balakrishnan, A. T. Bell, E. R. Sacia, Green Chemistry, 2012 , Vol. 14, pp. 1626-1634. G. C. A. Luijkx, N. P. M. Huck, H. Van Bekkum, L. Maat, F. Van Rantwijk, Heterocycles, 2009, Vol. 77, pp. 1037-1044. R. Alamillo,M. Chia, J. Dumesic, Y. Pagan-Torres, M. Tucker, Green Chemistry, 2012, Vol. 14, pp. 1413-1419. A. T. Bell, M. Chidambaram, Green Chemistry, 2010, Vol. 12, pp. 1253-1262.
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ビスヒドロキシメチルフラン(BHMF)の合成方法を、従来法の様な触媒や各種有機溶媒を用いることなく、また反応後の廃液処理の問題なく簡便に製造することができ、クリーンで省エネルギーな製造方法を提供することを目的とする。
そこで、本発明者らは、水を含む各種溶媒を反応媒体とした水素還元反応を検討し、溶媒極性と反応選択性、収率の関係を見いだした。更に、触媒の検討を行った結果メソポーラス材料を触媒に使うことで、選択性が大きく変化することを見出し、その結果をもって本発明に至った。即ち、HMFからBHMFへの水素化還元において、溶媒パラメーター(δ値)が負のものが有効で、特にδ値が最も低い水を用いた場合に最も選択性が高くなる。
本発明では、固体触媒の存在下において、反応溶媒の水によって、オレフィンの水素付加型還元が抑えられ、アルデヒド基のみの還元を進行させやすくすることで、オーバーリアクションを抑えつつ、ビスヒドロキシメチルフランを選択的に得ることが可能となった。その上、金属ナノ粒子を担持したメソポーラス材料を触媒とすることで、35℃という低温で反応を行う事が可能となり、オーバーリアクションも抑えられると同時に、加熱エネルギーも抑えられ、かつ反応時間も短い省エネタイプの反応方法である。
即ち、本発明は、以下の内容に関する。
[1] 2,5−ビスヒドロキシメチルフランの製造方法であって、担持金属としての遷移金属をメソポーラスシリカに担持させた固体触媒の存在下、ガッターマンのドナー数とアクセプター数の差(δ値)が負である溶媒を反応溶媒として用いて、出発原料のヒドロキシメチルフルフラールと還元剤の水素を反応させる、ことを特徴とする2,5−ビスヒドロキシメチルフランの製造方法。
[2] 反応溶媒が水であり、担持金属が白金である[1]に記載の2,5−ビスヒドロキシメチルフランの製造方法。
[3] 反応は、反応温度が4℃以上100℃以下であり、かつ反応時間が1分以上24時間以内の範囲で行われる[1]または[2]に記載の2,5−ジビスヒドロキシメチルフランの製造方法。
[4] 反応は、水素を0.2MPa以上2MPa以下の圧力で反応系に添加して行われる[1]〜[3]のいずれか1つに記載の2,5−ビスヒドロキシメチルフランの製造方法。
[5] ヒドロキシメチルフルラールの反応溶媒に対する濃度は、1ミリモル/リットル以上、10モル/リットル以下の範囲である[1]〜[4]のいずれか1つに記載の2,5−ビスヒドロキシメチルフランの製造方法。
[6] 固体触媒が、ニッケル、パラジウム、白金、金、ルテニウム、ロジウム、イリジウムからなる群から選択される担持金属をメソポーラスシリカに担持させた固体触媒である[1]、[3]〜[5]のいずれか1つに記載の2,5−ビスヒドロキシメチルフランの製造方法。
[7] 反応溶媒として、水、メタノール、エタノール、クロロホルムからなる群から選択される少なくとも1つ以上の溶媒を用いる[1]に記載の2,5−ジビスヒドロキシメチルフランの製造方法。
本発明は、ビスヒドロキシメチルフラン(BHMF)の合成方法を、無溶媒条件で行うことなく、更に強酸や強塩基を用いることなく、また反応後の廃液処理の問題なく簡便に製造することができ、クリーンで省エネルギーな合成方法を提供できる。また、超臨界二酸化炭素を使うことで、反応時間も短く、反応温度を大幅に低くすることができ、更に、生成物の分離精製も容易で、かつ転化率・収率も高くできる。
標品(ビスヒドロキシメチルフラン:図1上段、ヒドロキシメチルフルフラール:図1中段)と、白金担持メソポーラスシリカを触媒としたときの生成物(図1下段)のガスクロマトグラフチャートである。 転化率(%)と、BHMFの選択率(%)と、副生成物であるMFの選択率(%)との関係図である。 デルタ値(δ値)と転化率の関係図である。 反応時間と収率の関係図である。 転化率と選択率の関係図である。 固体触媒と原料の割合いと、転化率と、選択率の関係図である。 転化率と選択率の関係図である。
本発明は、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を出発原料として、水などを媒体とし、固体触媒の存在下において、フラン環の水素付加型還元を抑えつつ、更に脱水型の還元も押さえることで、ビスヒドロキシメチルフラン(BHMF)を選択的に得るものである。出発原料から最終生成物への反応は、次の式のとおりである。
本発明において原料として用いるヒドロキシメチルフルフラールは、いかなる由来、方法により製造されたものでも用いることができる。なかでもバイオマス原料であるフルクトースやグルコース等から製造されたものを出発原料とすることが好ましい。
本発明は、反応媒体として水、エタノール、メタノール等の溶媒極性を表すδ値が負のものを用いることができる。δ値は、ガッターマンのドナー数とアクセプター数の差を表し、δ値=ドナー数-アクセプター数で表される。なお、各種溶媒のδ値を表1A,1Bに示した。この表に示されたδ値が負の溶媒が、利用できる可能性がある。
δ値が負の溶媒であるとき、ヒドロキシメチルフルフラールの転化率やビスヒドロキシメチルフランの選択率が優れている。特にδ値が-18以下のとき、特に転化率が優れる。
上述の溶媒の中でも、水、メタノール、エタノール、クロロホルムからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒または2つ以上を混合させた溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。後述実施例2の欄で説明するように、転化率が良好になるからである。
反応溶媒としては、水を用いることがより好ましい。転化率が最も良好になるからである。なお、その際に用いられる固体触媒の担持金属としては白金を用い要ることが好ましい。
上述の反応は、反応温度が4℃以上100℃以下であり、かつ反応時間が1分以上24時間以内の範囲で行われることが好ましい。反応温度が上記下限値よりも低くなるか、もしくは上記上限値を超えると、ヒドロキシメチルメチルフラン(HMMF)等の不純物が生成し、選択率が低下するおそれがあるからである。
また反応時間が上記下限値よりも短くなるか、もしくは上記上限値よりも長くなると、前述と同様に不純物が増え、選択率が低下するおそれがあるからである。ただし、反応時間に関しては、原料の量や状態によって変化するため、適宜設定することが必要である。
この場合、反応温度は10℃以上50℃以下あるいは20℃以上40℃以下の範囲であることがより好ましい。前述と同様に、不純物が生成し、選択率が低下するためである。また反応時間は5分以上3時間以下あるいは30分以上3時間以下の範囲であることがより好ましい。ただし、反応時間に関しては、原料の量や状態によって変化するため、適宜設定することが必要であり、不純物の生成を限りなく抑えた条件で行うことが望ましい。
上述の反応は、還元剤としての水素を0.2MPa以上2MPa以下の圧力で反応系に添加して行うことが好ましい。HMMF等が副生し、選択率が低下するためである。
ヒドロキシメチルフルラールの反応溶媒に対する濃度は、反応状態に応じて適宜選択することが可能であるが、不純物の生成を抑制することが容易な濃度の1ミリモル/リットル以上、10モル/リットル以下の範囲であることが好ましい。
この場合、より不純物の副生を抑制することが容易なヒドロキシメチルフルラールの反応溶媒に対する濃度は、50ミリモル/リットル以上、5モル/リットル以下、または100ミリモル/リットル以上、2モル/リットル以下の範囲であることがより好ましい。
本発明において用いる固体触媒は、触媒活性成分の一つである担持金属として遷移金属を用い、該金属は無機担体、なかでもメソポーラスシリカ(MCM−41)、アルミニウムまたはガリウム含有メソポーラスシリカ(Al−MCM41、Ga−MCM−41)の担体を用いるのが好ましい。触媒活性成分の一つである担持金属種は、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金が挙げられるが、好適には、ニッケル、パラジウム、白金、金、イリジウムが用いられ、より好ましくは、ニッケル、パラジウム、白金、金が用いられる。
上記固体触媒の形状は特に限定されないが、ペレット状、球状、リング状、顆粒状、粉末状等を用いることができ、触媒の粒径は、反応管の内径等によって最適な値を選べばよく、特に制限を受けない。又、触媒の使用量には特に制限はなく、反応速度、除熱、触媒コストなどを考慮して定めることができるが、触媒活性に有効な量であってできるだけ少量であることが望ましい。
本発明においては、固体触媒を用いているので、反応系から触媒を分離する後処理が容易である。即ち、固体触媒であるため濾過により容易に回収でき、また触媒活性の低下が少なく再使用が可能である。本固体触媒には有害な金属等を用いておらず、安全で安価で高選択性を有する触媒系である。
本発明における反応装置は、回分式反応装置または連続式反応装置を用いることができる。連続式では、例えば固定床流通式反応装置、流動床式反応装置などを用いることができる。
本発明において、反応生成物の2,5−ビスヒドロキシメチルフランは反応系からの分離精製として、従来から存在している分離技術を用いて簡単に分離することができる。例えば、沸点の差を利用する蒸留法を用い分離することができる。
以下、実施例によって、本発明を具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
<分析手段(GC/MS)>
ブルカーダルトニクス社製ガスクロマトグラフ/質量分析装置GC/MS(GC3800−Saturn2200)、アジレント社製ガスクロマトグラフ/水素炎イオン化検出器GC/FID(6890N)により生成物の定性、定量分析を行なった。カラムはアジレントJ&W社製キャピラリGCカラムHP−5を用い、分析を行った。目的生成物と思われるピークの保持時間と標準物質のものとが一致することを確かめたのち、当該ピーク部分をマススペクトルで分析し、主たる部分の分子量および分解物のパターンが、標準物質のものと一致することで定性分析を行った。
「転化率」は、出発原料の仕込み量に対して、反応して消費された出発原料の量の割合とし、「選択率」は、全生成物量に対して、目的とする生成物量の割合とした。それぞれの計算式を以下に示す。
転化率%(mol%)=原料の消費量(mol)/原料の使用量(mol)×100
選択率%(mol%)=生成物量(mol)/全生成物量(mol)×100
[実施例1]
50mLのステンレス製オートクレーブに後述の固体触媒0.03gとヒドロキシメチルフルフラール(HMF:アルドリッチ社製)0.15gを入れ、更に水2mLを入れた後、容器を温度35℃まで加熱した。約10分程度経過し35℃に十分達してから、水素を所定の圧力(0.8MPa)の圧力まで導入し、スターラーで撹拌させ反応開始させた。所定の反応時間が経過した後、反応容器を氷冷し、水素を除去して常圧に戻した。その後、オートクレーブ内に残った化合物をアセトンまたはクロロホルムで抽出し、触媒をろ過してから、GC−MSで定性分析を、GCで定量分析を行った。
触媒を表2のとおり変えて行い、それぞれ実施例1−1、参考例1−1から参考例1−6とした。結果を表2に示す。
本実施例では、固体触媒として表2に示す、各種金属(ニッケル、パラジウム、白金、金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム)を担持したMCM−41(産総研:発明者が調整、以下「発明者が調整」とする)を用いた。この場合、転化率は2.6%から100%までの値を得ることができ、更に2,5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHMF)の選択率は、0%から98.9%の範囲で得ることができた。特に、Pt/MCM41を触媒とした場合は、転化率100%で、選択率が98.9%と最も良い値を示す事が分かった。なお、図1に、標品(ビスヒドロキシメチルフラン:図1上段、ヒドロキシメチルフルフラール:図1中段)と、白金担持メソポーラスシリカを触媒とした時の生成物(図1下段)のガスクロマトグラフチャートを示す。標品(ビスヒドロキシメチルフラン)と生成物が一致していること、また別途マススペクトルからも、生成物がビスヒドロキシメチルフランの標品と一致したことから、目的物が生成していることを確認した。
なお、本反応では、5−メチルフルフラール(MF)、2−ヒドロキシメチル−5−メチルフラン(HMMF)、BHMFが更に水素化された化合物であって、更に水素化分解反応によってフラン環が開環したアルコール類(ROP:1,2ヘキサンジオール、1,6ヘキサンジオールなど)、更に反応が進んだ構造不明の化合物(UK)が得られ、これらが生成する場合は、BHMFに対して不純物となってしまうが、分離精製することで、BHMFのみを分離することができる。
[比較例1]
実施例1−1において、2−ヒドロキシメチル−5−フルフラール(HMF)の代わりに、2、5−ビスヒドロキシメチルフラン(BHMF)を用いた以外は、実施例1−1と同じ条件で行ったものを比較例1とした。その時の転化率、選択率を表3に示す。BHMFを用いた場合は、更なる水素化が進行することは殆ど見られなく、微量のヒドロキシメチルメチルフラン(HMMF)のみが生成し、他の化合物の生成はなかった。
[比較例2]
実施例1−1において、2−ヒドロキシメチル−5−フルフラール(HMF)の代わりに、メチルフルフラールとする以外は、実施例1−1と同じ条件で行ったものを比較例2とした。その時の転化率、選択率を表4に示す。メチルフルフラールを用いた場合は、アルデヒド基のみが水素化還元されヒドロキシメチルフランのみが生成し、他の化合物の生成はほとんどなかった。
[実施例2]
触媒の繰り返し実験を行った。実施例1−1の実験条件と同様に、50mLのステンレス製オートクレーブに触媒Pt/MCM−41を0.03gとヒドロキシメチルフルフラール(HMF:アルドリッチ社製)0.15gを入れ、更に水2mLを入れた後、容器を温度35℃まで加熱した。約10分程度経過し35℃に十分達してから、水素を所定の圧力(0.8MPa)の圧力まで導入し、スターラーで撹拌させ反応開始させた。所定の反応時間が経過した後、反応容器を氷冷し、水素を除去して常圧に戻した。その後、オートクレーブ内に残った化合物をアセトンまたはクロロホルムで抽出し、触媒をろ過してから、GC−MSで定性分析を、GCで定量分析を行った。反応後、ろ別した触媒を蒸留水で洗浄し、60℃空気中で乾燥させた。その後、回収した触媒を、実施例1−1と同様の条件で反応を繰り返して使用した。その時の転化率(%)と、BHMFの選択率(%)と、副生成物であるMFの選択率(%)とを図2に示す。その結果、同じ触媒を使って7回繰り返し実験を行ったが、活性は殆ど変化せず、一定の高い転化率と選択率を得た。
[実施例3]
溶媒の実験を行った。実施例1−1の実験条件と同様に、50mLのステンレス製オートクレーブに触媒Pt/MCM−41を0.03gとヒドロキシメチルフルフラール(HMF:アルドリッチ社製)0.15gを入れ、更に溶媒2mLを入れた後、容器を温度35℃まで加熱した。約10分程度経過し35℃に十分達してから、水素を所定の圧力(0.8MPa)の圧力まで導入し、スターラーで撹拌させ反応開始させた。所定の反応時間が経過した後、反応容器を氷冷し、水素を除去して常圧に戻した。その後、オートクレーブ内に残った化合物をアセトンまたはクロロホルムで抽出し、触媒をろ過してから、GC−MSで定性分析を、GCで定量分析を行った。
溶媒を表5のとおり変えて行い、それぞれ実施例3−1から実施例3−6、参考例3-1から参考例3-3とした。結果を表5に示す。
溶媒極性を表す指標として、ガッターマンのドナー数とアクセプター数がある。δ値として、それぞれの溶媒のドナー数とアクセプター数の差をδ値としたときの(δ値=ドナー数-アクセプター数)、デルタ値(δ値)と転化率との関係を図3に示す。ヘキサン(δ値=0)を境にして、負の溶媒は転化率が向上して行くのに対して、正の溶媒は変化が少ないことが分かる。即ち、δ値が最も大きい水(δ値=−36)の時の転化率が最も良い値を示す事が分かる。これより、δ値が負の溶媒を用いる事が、本反応において有効であることが分かった。その他の溶媒として、1,2−ジクロロエタン、2−メチル−2−プロパノール、2−フェニルエタノール、4−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン、アセトニトリル、ベンジルアルコール、ジクロロメタン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ニトロベンゼン、ニトロメタン、スルホラン、四塩化炭素等を用いる事が可能である事が推定される。
[実施例4]
実施例1−3において、反応時間を15分から18時間と各時間で検討した以外は実施例1−3と同じ条件で行ったものを実施例4とした。得られた結果を図4に示す。反応時間が15分の段階で既にBHMFが得られているが、2時間の反応時間の時に最もBHMFの収率が高くなる事が分かった。
[実施例5]
実施例1−3において、水素の圧力を0.2MPaから4MPaと各圧力条件で検討した以外は実施例1−3と同じ条件で行ったものを実施例5とした。その時の転化率と選択率を図5に示す。
[実施例6]
実施例1−3において、水の量を0mL16mLと変化させた以外の条件は実施例1−3と同じ条件で行ったものを実施例6とした。その時の固体触媒と原料の割合い、転化率、選択率を図6に示す。
[実施例7]
実施例1−3において、水の酸性度を酸性(pH=1.2、1mMの塩酸を加えて調整)、中性(pH=7)、塩基性(pH=10、1mMの水酸化ナトリウムを加えて調整)の3つの条件にした以外は、実施例1−3と同じ条件で行ったものを実施例6とした。その時の転化率、選択率を図7に示す。
バイオマス資源から得られるヒドロキシメチルフルフラールを出発原料して得られるビスヒドロキシメチルフランは、各種ポリマー、人造繊維の原料としてとして注目されている。この化合物の合成方法は、水を媒体として効率的に、また反応後の廃液処理の問題なく簡便に製造することができ、クリーンで省エネルギーな製造方法として有用である。

Claims (5)

  1. 2,5−ビスヒドロキシメチルフランの製造方法であって、
    担持金属として白金をメソポーラスシリカに担持させた固体触媒の存在下、
    ガッターマンのドナー数とアクセプター数の差(δ値)が負である、1,2−ジクロロエタン、2−メチル−2−プロパノール、2−フェニルエタノール、2−プロパノール、4−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン、アセトニトリル、ベンジルアルコール、ブタノール、ジクロロメタン、エタノール、ホルムアミド、メタノール、N−メチルホルムアミド、ニトロベンゼン、ニトロメタン、1−プロパノール、スルホラン、四塩化炭素、クロロホルム、水からなる群から選択される溶媒を含む反応溶媒を用いて、
    出発原料のヒドロキシメチルフルフラールと還元剤の水素を反応させる、ことを特徴とする2,5−ビスヒドロキシメチルフランの製造方法。
  2. 前記反応溶媒として、2−プロパノール、ブタノール、エタノール、メタノール、1−プロパノール、クロロホルム、水からなる群から選択される反応溶媒を用いることを特徴とする請求項1に記載の2,5−ビスヒドロキシメチルフランの製造方法。
  3. 前記反応は、反応温度が4℃以上100℃以下であり、かつ反応時間が1分以上24時間以内の範囲で行われることを特徴とする請求項1または2に記載の2,5−ジビスヒドロキシメチルフランの製造方法。
  4. 前記反応は、前記水素を0.2MPa以上2MPa以下の圧力で反応系に添加して行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の2,5−ビスヒドロキシメチルフランの製造方法。
  5. 前記ヒドロキシメチルフルラールの前記反応溶媒に対する濃度は、1ミリモル/リットル以上、10モル/リットル以下の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の2,5−ビスヒドロキシメチルフランの製造方法。
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