JP5305827B2 - アクロレイン及びアクリル酸の製造方法 - Google Patents

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本発明は、固体触媒を用いるグリセリンからアクロレインを生成する気相脱水反応において、揮発性有機酸化合物とグリセリンとを、該固体酸触媒に接触させることを特徴とするグリセリンからのアクロレイン及びアクリル酸の製造方法に関するものである。
植物油から製造されるバイオディーゼルは、化石燃料の代替燃料としてだけではなく、二酸化炭素の排出量が少ない点でも注目され、需要の増大が見込まれている。このバイオディーゼルを製造するとグリセリンが副生するため、その有効利用を図る必要がある。グ
リセリンの利用の一態様としては、グリセリンをアクロレインの原料に使用することが挙げられる。
またアクロレインは、アクリル酸や1,3−プロパンジオール、メチオニン等の各種アクロレイン誘導体の原料として用いられている。
グリセリンから脱水反応によりアクロレインを製造するに際して、固体触媒を用いることは古くから知られている。酸強度関数Hが+2以下の燐酸を酸化アルミニウム担体に担持した固体酸触媒を用いて、グリセリンを脱水しアクロレインを製造することが開示されている(特許文献1参考)。
また、酸強度関数Hが−9以下の固体酸触媒を用いて、グリセリンを脱水しアクロレインを製造すること、およびコーキングにより活性低下した触媒に分子状酸素を含む気体を用いてコークを燃焼除去することにより、触媒の再生を行うことが開示されている(特許文献2参考)。
グリセリンの脱水反応から得られたアクロレインを用いたアクロレインの誘導体の製造方法として、アクロレイン及びヒドロキシアセトンを接触水素添加して1,3−及び1,2−プロパンジオールを製造することが開示されている(特許文献3参考)。また、グリセリンの気相脱水反応生成物に気相酸化を施すことにより、アクリル酸を製造することが開示されている(特許文献4参考)。
グリセリンからのアクロレインの製造方法において、該反応に用いられる固体触媒を有機化合物での前処理を行うと、反応初期のアクロレインの収率が改善されて、安定して高収率でアクロレインが得られることが開示されている(特許文献5参考)。
更に、グリセリンからアクリル酸を製造するにあたり、グリセリンに脱水反応を施して得られたアクロレインを含む組成物において、フェノールと1−ヒドロキシアセトンが多量に含まれていると、引き続き行うアクロレインの酸化反応に悪影響を及ぼすことから、該化合物を除去する工程を設けたグリセリンからのアクリル酸の製造方法が開示されている(特許文献6参考)。
通常、複数の反応を経て目的化合物を製造する場合に、後に行う反応において存在すると好ましくない副生物があるときには、前の反応と後の反応との間で精製工程が増えるため、最終的な目的化合物の収率が低下したり、あるいは精製に要する費用が掛かる等の問題がある。このため、副生物そのものの発生量を削減することが望まれており、前記グリセリンから得られたアクロレインの誘導体の製造方法においても例外ではない。
特開平06−211724号公報 国際公開WO2006−087083号公報 特開平06−192147号公報 特開2005−213225号公報 特開2008−137952号公報 特開2008−115103号公報
本発明は、上記事情に鑑み、グリセリンの脱水反応において、アクロレインの収率を向上させる製造方法を提供することを目的とし、更に該反応により得られたアクロレイン組成物の気相酸化反応によるアクリル酸の製造方法において悪影響を及ぼす不純物を削減するアクロレインの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、グリセリンの脱水反応によるアクロレインの製造方法を鋭意検討した結果、揮発性有機酸化合物の存在下でグリセリンの固体酸触媒による脱水反応を行うとアクロレインの収率が向上し、更にアクロレインの気相酸化反応によりアクリル酸を製造する際に悪影響を及ぼすフェノールと1−ヒドロキシアセトンの発生量が低減できることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、前記課題を解決する手段として、下記方法を発明した。
(1)固体酸触媒を用いるグリセリンからアクロレインを製造する気相脱水反応において、揮発性有機酸化合物の存在下でグリセリンを該固体酸触媒に接触させることを特徴とするグリセリンからのアクロレインの製造方法。
(2)前記揮発性有機酸化合物が炭素数が3以下のカルボン酸化合物であることを特徴とする(1)記載のアクロレインの製造方法。
(3)前記揮発性有機酸化合物が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする(1)又は(2)記載のアクロレインの製造方法。
(4)前記揮発性有機酸化合物が、アクロレインの気相酸化反応で得られた揮発性有機酸化合物であることを特徴とする(1)〜(3)記載のアクロレインの製造方法。
(5)アクロレインの気相酸化反応によりアクリル酸を製造する方法であって、(1)〜(4)記載のアクロレインの製造方法で得られたアクロレインを用いることを特徴とするアクリル酸の製造方法。
本発明によれば、グリセリンの脱水反応において、アクロレインの収率が向上し、更に該反応により得られたアクロレイン組成物を用いた気相酸化反応によるアクリル酸の製造方法において悪影響を及ぼす不純物が削減されるので、グリセリンから高収率でアクリル酸が得られる。
本発明に用いられる揮発性有機酸化合物とは、グリセリンの気相脱水反応反応条件において気体状態で存在できる有機酸化合物であればよい。前記揮発性有機酸化合物としては、炭素数が3以下のカルボン酸化合物であることが好ましく、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸から選ばれる一種又は二種以上であることがより好ましい。
前記有機酸化合物は、純粋な化合物を用いても良いが、前記気相脱水反応において得られたアクロレインを気相酸化反応によりアクリル酸を製造する工程で生成した酢酸やアクリル酸等の一部を用いても良く、特に該気相酸化反応で得られた生成ガスからアクリル酸を捕集した後のオフガスや、アクリル酸の捕集液を精製した後の廃棄物中に含まれる酢酸やアクリル酸を利用すると、安価にアクリル酸が製造できるので好ましい。
通常、前記揮発性有機酸化合物の量は、前記気相脱水反応に供されるグリセリンの0.01モル倍以上で5モル倍以下が好ましく、0.05モル倍以上1モル倍以下がより好ましく、0.05モル倍以上0.5モル倍以下が更に好ましい。少なすぎると十分な効果が得られず、多すぎても添加に見合う量が得られないだけでなく、目的生成物の精製などに影響するため好ましくない。
前記脱水反応で用いられる前記揮発性有機酸化合物の量は、目的化合物がアクリル酸であり、かつ用いられる該揮発性有機酸化合物がアクリル酸であれば、前記脱水反応及び前記気相酸化反応に影響を与えない範囲において用いることが出来る。前記気相酸化反応で得られた生成物の捕集工程及び/又は精製工程で排出される量でバランスさせるのが好ましいが、該工程で排出される量が少なすぎる場合には、精製後のアクリル酸の一部を追加しても良い。
また、前記脱水反応により得られたアクロレインを用いてアクリル酸を製造する場合には、プロピオン酸とアクリル酸の分離が困難なので、プロピオン酸は用いない方が好ましい。
前記気相脱水反応に用いられる原料グリセリンは、精製品でも、粗製品でも、水溶液でもかまわない。前記原料グリセリンの気化ガスを含む反応原料ガスにおいて、該ガス中のグリセリン濃度を調整するためにグリセリン脱水反応に不活性なガスを含んでいても良い。不活性ガスには、水蒸気や窒素ガス、空気を例示することができ、特に水蒸気を含んでいると触媒の寿命やアクロレインの収率に対して有利な効果が見られ、好適である。
この反応原料ガス中におけるグリセリン濃度は、0.1〜100モル%であれば良く、好ましくは1モル%以上であり、アクロレインの製造を経済的かつ高効率で行うためには、10モル%以上がより好ましい。
反応性ガスの流量は、単位触媒容積あたりの反応ガス流量(GHSV)で表すと100〜10000hr−1であると良い。好ましくは、5000hr−1以下であり、アクロレインの製造を経済的かつ高効率で、行うためには、3000hr−1以下がより好ましい。
反応温度は、200〜500℃であると良く、好ましくは、250〜450℃、更に好ましくは、300〜400℃である。
反応圧力は、グリセリンが凝縮しない範囲の圧力であれば特に限定されない。通常、0.001MPa〜1MPaであると良く、好ましくは、0.005MPa〜0.5MPaである。
前記気相脱水反応において、活性が低下した触媒と酸素などの酸化性のガスを含む気体を、高温で接触させる再生処理を施す事により活性を回復させることができる。接触させる形態は特に問わず、触媒を反応器から取出して行っても良いし、脱水反応と同じ反応器内で流通させるガスを切換えることで行っても構わない。脱水反応を固定床で行っている場合には、触媒の抜出し・再充填などの手間がかからない後者の方が簡便であり、推奨される。
前記再生処理で使用する酸化性ガスとして酸素を用いる場合は空気中の酸素を用いるのが安価であり、更に窒素や二酸化炭素、水蒸気等の不活性ガスを同伴させても良い。特に、空気を接触させる事で急激な発熱が懸念される場合には、酸素濃度を調整するために不活性ガスを用いる事が推奨され、前記再生処理を施した触媒は、反応原料ガスと接触させる事で、再度アクロレイン合成用触媒として用いる事ができる。
反応器内への原料ガス供給の開始直後に、アクロレイン収率が低い若しくは安定しない場合がある(以下、このアクロレイン収率が低く安定しない期間を、「誘導期」と称することがある。)。この誘導期を短縮する為に、有機化合物を含むガスで前処理を行ってもよい。
前記前処理を施す工程は、(I)未使用触媒を使用する前、(II)脱水反応工程後に再生処理を行った後で、反応原料ガスと接触させて脱水反応を行う前、のいずれでも良く、両方とも実施するのがより好ましい。
前記前処理の方法は、脱水反応器外で実施してもよく、脱水反応器内に充填した状態で実施しても良い。前記(I)未使用触媒の場合には予め前処理を行った触媒を脱水反応器に充填してもよく、また脱水反応器に充填して該反応器内で前処理を実施した後、グリセリンを供給して脱水反応を行ってもよい。前記(II)再生処理工程を脱水反応器内で行う場合には触媒の抜出し・再充填の手間がない該反応器内で行うのが簡便であり、推奨される。また、これらを組み合わせて、予め脱水反応器外で前処理を施した未使用触媒を用いて脱水反応を行い、再生処理後は反応器内で行う等の方法で行うこともできる。
前記前処理終了後から脱水反応開始前までの間に、窒素等の不活性ガスでパージしても良い。例えば、脱水反応器外の前処理器で前処理を行った場合には該前処理器およびまたは脱水反応器に該触媒を充填した状態で、脱水反応器内で前処理を行った場合には該脱水反応器内において、系内に残存する余分な有機物や触媒充填時に混入した酸素などを除去する目的で、窒素等でパージしても良い。
前記前処理に用いられるグリセリン以外の有機化合物とは、構成する元素に少なくとも炭素と水素を含む化合物であればよく、グリセリンよりも安価であると、経済的に好ましい。本発明で用いられる揮発性有機酸化合物と同じ化合物を用いても良く、この場合には前記前処理のために別途有機化合物を用意する必要がなく、プロセスも単純化されるので、より好ましい。
前記前処理に用いる有機化合物は、気体、液体、混合ガス、溶液いずれでもかまわず、非有機化合物との混合物でも構わない。非有機化合物としては、例えば、気体であれば窒素、酸素、二酸化炭素、水蒸気、希ガス等、液体であれば水が例示される。
前記前処理に用いられる有機化合物あるいは有機化合物との混合物(以下、両者をまとめて処理剤と称する事がある)と接触させる方法は、連続流通式、回分式、半回分式等、特に問わない。未使用触媒であれば、触媒調製の最終工程に前処理工程を行うこともできる。
連続流通式では、所定の温度で処理剤を流通させて触媒と接触させる方法であり、処理剤中の有機化合物濃度が低い場合やガス状の処理剤を用いる場合、操作が簡便であり、推奨される。また、固体触媒を液状の処理剤に浸漬させて、固体触媒に処理剤を含ませた後、処理剤を排出あるいは固体触媒を処理剤から抜出して、処理剤を含んだ固体触媒を別途加熱しても良い。
前記前処理において、固体触媒と処理剤とを接触させた状態で、100〜500℃、好ましくは150℃〜450℃の温度にすると良く、脱水反応器内で実施する場合は、脱水反応と同じ温度で実施するのが簡便である。接触させる処理剤が非有機化合物との混合物である場合、含有される有機化合物の濃度は特に問わないが、低すぎる場合には十分な効果を得るための処理時間がかかるので、通常、処理剤の全重量に対する全有機化合物の合計した重量の比であらわすと、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上の濃度で行うことが推奨される。
前処理における処理剤の量及び処理時間は、用いられる処理剤中の有機化合物の種類とその含有量および固体触媒の種類および量により異なるため、予めテストを行い適当な量および時間を求めておくのが好ましいが、固体触媒に対する処理に用いた処理剤中の固体触媒に接触した全有機化合物の重量の比であらわせば、0.0001倍〜100倍であると好ましく、0.001倍〜10倍であるとより好ましく、0.01倍〜5倍であると更に好ましい。固体触媒と処理剤とを接触させて所定温度範囲内で保持する時間は、1分間〜24時間であると好ましく、10分間〜12時間であるとより好ましい。
前記気相脱水反応に用いられる固体酸触媒は、グリセリンからアクロレインを気相脱水反応で合成することが公知であるものであれば、いかなる触媒でもかまわない。
例えば、〈1〉結晶性メタロシリケート、〈2〉金属酸化物、〈3〉粘土鉱物、〈4〉鉱酸をα−アルミナやシリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機担体に担持したもの、〈5〉リン酸や硫酸の金属塩およびそれらをα−アルミナやシリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機担体に担持したもの、等が上げられる。
前記〈1〉結晶性メタロシリケートとしては、Al、B、Fe、Ga等から選ばれる1種または2種以上の元素をT原子とし、その結晶構造としては、LTA、CHA、FER、MFI、MOR、BEA、MTW等があり、前記〈2〉金属酸化物としては、Al2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、V2O5、などの単独金属酸化物以外に、SiO2−Al2O3、SiO2−TiO2、TiO2−WO3、WO3−ZrO2等の複合酸化物があり、前記〈3〉粘土鉱物としては、ベントナイト、カオリン、モンモリロナイトなどがあり、前記〈4〉鉱酸を無機担体に担持したものとして、リン酸や硫酸をアルミナやシリカ、ジルコニアなどに担持したもの等があり、前記〈5〉リン酸や硫酸の金属塩としては、国際公開WO2007/119528号公報に開示されているアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、アルミニウム、ジルコニウム等の塩が例示される。
また、国際公開WO2006/087083号公報およびWO2006/087084号公報に開示されている触媒(リン酸、硫酸または酸化タングステンを担持している酸化ジルコニウムなど)を使用することも出来る。
本発明のアクロレインの気相酸化反応によるアクリル酸製造方法に用いられる触媒は、モリブデンとバナジウムを必須とするモリブデン−バナジウム系の固体触媒であり、アクロレインの気相酸化反応によるアクリル酸の製造方法に用いられている公知の触媒であれば特に制限は無い。
例えば、モリブデン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、硝酸銅、パラタングステン酸アンモニウムおよび酸化ジルコニウムからなる溶液を蒸発乾固して得られた固形物を粉砕・成形した後、乾燥・焼成して得られる特開平3−218334号公報の実施例1記載の、あるいはパラモリブデン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、三酸化バナジウム、硝酸銅、酸化第一銅、および三酸化アンチモンからなる溶液をα−アルミナからなる担体に付着させた後、焼成して得られる特開平8−206504号公報の実施例1記載のモリブデン−バナジウム系触媒が例示される。
触媒の形状は、限定されるものではなく、球状、柱状、リング状、または、鞍状であるとよく、その大きさは直径相当で通常、0.1mm〜10mm程度であると良い。
前記アクロレインの製造方法により得られたアクロレインを含む組成物は、そのままアクリル酸製造用原料として用いても良いが、該組成物中において、アクロレインの酸化反応に対して過剰の水蒸気や該酸化反応に好ましくない影響を及ぼすフェノールや1−ヒドロキシアセトンが大量に含まれている場合には、該組成物に精製工程を施してから、アクリル酸製造用原料に供するのが好ましい。
アクロレインを含む組成物を原料とする気相酸化反応条件は、公知のアクロレインからのアクリル酸製造の条件に準ずるものでよく、具体的には、アクロレインを含む組成物および酸素と、ガスの濃度を調整するために本反応に不活性なガスを含んでなる反応原料ガスを用いるのが好ましい。酸素としては純酸素や酸素富化した空気等を用いても構わないが、空気中の酸素を用いるのが経済的に好ましい。不活性ガスには、水蒸気、窒素ガス、二酸化炭素を例示することができ、特に酸化反応組成物捕集後のガス、あるいは該ガス中の残留している有機物を燃焼させた後のガスを用いると、経済的により好ましい。水蒸気は一般的に有機物と酸素により形成される燃焼範囲を減縮させる効果が知られており、不活性ガスとして含まれているのが好ましい。
前記反応原料ガス中におけるアクロレインの濃度は、0.1〜15モル%であり、好ましくは4〜12モル%である。酸素濃度は、0.5〜25モル%であり、好ましくは2〜20モル%である。水蒸気は0〜30モル%、好ましくは3〜25モル%である。残余のガスは、窒素や二酸化炭素、前記脱水反応で用いた揮発性有機化合物などからなる。
反応原料ガスの流量は、単位触媒容積あたりの反応ガス流量(GHSV)で表すと500〜20000hr−1であり、好ましくは、1000〜10000hr−1である。
反応温度は、180〜350℃であると良く、好ましくは、200〜330℃であり、反応圧力は、通常、0.05〜1MPaであると良く、好ましくは、0.1〜0.5MPaである。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下ことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。
(脱水反応用触媒製造例)
硝酸アルミニウム9水和物(和光純薬社製)160gとイオン交換水800gとの溶液に、85質量%リン酸(和光純薬社製)49gを混合した。この混合液に28質量%アンモニア水96.7gを約50分間かけて滴下すると白色沈殿が生じ、滴下終了後、更に1時間攪拌した。次に、吸引ろ過により混合液から分離した白色固形物を、イオン交換水800gと混合した後に1時間攪拌してから吸引ろ過による洗浄を3回繰り返した。前記洗浄後の固形物を、乾燥器を用いて空気気流下、120℃で一晩乾燥した。得られた乾燥物を空気中で1200℃、3時間の条件で焼成した。その後、得られた焼成物を粗粉砕し、目開き0.7mm〜2.0mmの篩を通過した粒状物を触媒とした。
(実験例1)
上記触媒製造例により得られた触媒を用いて固定床反応器を使用した次の方法により、グリセリンを脱水してアクロレインを合成した。
先ず、触媒15mlを充填したステンレス製反応管(内径10mm、長さ500mm)を固定床反応器として準備し、この反応器を360℃の塩浴に浸漬し、その後、80質量%グリセリン水溶液の気化ガスと窒素からなる反応ガス(反応ガス組成:グリセリン27モル%、水34モル%、窒素39モル%)を632hr−1の流量で流通させた。反応器内に反応ガスを流通させてから30〜60分の30分間における流出ガスを冷却液化して捕集した(以下、「捕集した流出ガスの冷却液化物」を「捕集流出物」と称する)。
そして、ガスクロマトグラフィ(GC)により、流出物の定性および定量分析を行った。GCによる定性分析の結果、グリセリン、アクロレインと共に1−ヒドロキシアセトン、フェノールが検出された。また、定量分析結果から、転化率、アクロレイン収率を算出した。ここで、転化率は、(1−(捕集流出物中のグリセリンのモル数)/(30分間で反応器に流入させたグリセリンのモル数))×100、で算出される値である。また、アクロレインの収率は、((捕集流出物中のアクロレインのモル数)/(30分間に反応器に流入させたグリセリンのモル数))×100、で算出される値であり、1−ヒドロキシアセトンの収率は、((捕集流出物中の1−ヒドロキシアセトンのモル数)/(30分間に反応器に流入させたグリセリンのモル数))×100、で算出される値であり、フェノールの収率は((捕集流出物中のフェノールのモル数)/(30分間に反応器に流入させたグリセリンのモル数))×2×100、で算出される値である。
結果を表1に示す。
(実験例2)
実験例1において、反応ガス組成がグリセリン27モル%、酢酸8モル%、水26モル%、窒素39モル%になるように、グリセリン水溶液の代わりにグリセリンと酢酸と水との混合液を用いた以外は、実験例1と同様の操作を行い、グリセリンの転化率、アクロレインの収率、1−ヒドロキシアセトンの収率、フェノールの収率を算出した。
結果を表1に示す。
Figure 0005305827
表1の実験例1と2とを比較すると、揮発性有機酸である酢酸を共存させた実験例2において、アクロレインの収率が向上し、1−ヒドロキシアセトン及びフェノールの収率が低下しているのがわかる。
(実験例3〜5)アクリル酸製造における副生物添加効果
20ccのアクリル酸製造用触媒を充填したステンレス製反応管に反応ガスを流通(GHSV:2000hr−1)させ、反応温度230℃でアクリル酸を生成させた。そして、流通開始から60〜80分の間に反応管から流出したガスを捕集し、この成分をGCで分析した。この実験での反応ガスとしては、水蒸気33.36容量部(実験例3);水蒸気33.18容量部、およびフェノール0.18容量部(実験例4);水蒸気33.00容量部、および1−ヒドロキアセトン0.36容量部(実験例5);と、窒素54.4容量部、酸素10.44およびアクロレイン1.8容量部とを成分に有するガスを使用した。尚、ここで、アクロレイン転化率は、(1−(捕集流出物中のアクロレインのモル数)/(20分間で反応器に流入させたアクロレインのモル数))×100、で算出される値である。また、アクリル酸の収率は、((捕集流出物中のアクリル酸のモル数)/(20分間に反応器に流入させたアクロレインのモル数))×100、で算出される値であり、酢酸の収率は、((捕集流出物中の酢酸のモル数)/(20分間に反応器に流入させたアクロレインのモル数))×100、で算出される値である。
結果を表2に示す。
なお、上記アクリル酸製造用触媒を次の通り調製した。加熱攪拌している水2500mlにパラモリブデン酸アンモニウム350g、メタバナジン酸アンモニウム116gおよびパラタングステン酸アンモニウム44.6gを溶解した後、三酸化バナジウム1.5gを添加した。これとは別に、加熱攪拌している水750mlに硝酸銅87.8gを溶解した後、酸化第一銅1.2gおよび三酸化アンチモン29gを添加した。これら2つの液を混合した後、担体である直径3〜5mmの球状α−アルミナ1000mlを加え、攪拌しながら蒸発乾固させて触媒前駆体を得た。この触媒前駆体を400℃で6時間焼成してアクリル酸製造用触媒を調製した。なお、当該アクリル酸製造用触媒の担持金属組成は、Mo12V6.1W1Cu2.3Sb1.2である。
Figure 0005305827
表2に示す通り、フェノール(実験例4)または1−ヒドロキシアセトン(実験例5)を含むアクロレイン含有組成物を原料に使用した場合、これらの化合物が添加されていないアクロレイン組成物(実験例3)を使用するよりも、アクロレインの転化率、およびアクリル酸の収率の点で悪いことがわかる。
即ち、本発明により、グリセリンから高収率でアクロレインが得られるだけでなく、該クロレインを用いたアクリル酸の製造方法において、アクリル酸の収率低下の原因となるフェノール及び1−ヒドロキシアセトンの生成量が抑えられるので、アクリル酸の製造に好適に用いることが出来ることがわかる。
本発明によれば、グリセリンの脱水反応において、アクロレインの収率が向上し、更に該反応により得られたアクロレイン組成物の気相酸化反応によるアクリル酸の製造方法において悪影響を及ぼす不純物が削減されるので、グリセリンから高収率でアクリル酸が得られる。

Claims (5)

  1. 固体酸触媒を用いるグリセリンからアクロレインを製造する気相脱水反応において、揮発性有機酸化合物の存在下でグリセリンを該固体酸触媒に接触させるに当たり、反応原料ガス中におけるグリセリン濃度を10〜100モル%とし、且つ、グリセリンに対する揮発性有機酸化合物の量を0.01モル倍以上、5モル倍以下にすることを特徴とするグリセリンからのアクロレインの製造方法。
  2. 前記揮発性有機酸化合物が炭素数が3以下のカルボン酸化合物であることを特徴とする請求項1記載のアクロレインの製造方法。
  3. 前記揮発性有機酸化合物が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のアクロレインの製造方法。
  4. 前記揮発性有機酸化合物が、アクロレインの気相酸化反応で得られる揮発性有機酸化合物であることを特徴とする請求項1〜3記載のアクロレインの製造方法。
  5. アクロレインの気相酸化反応によりアクリル酸を製造する方法であって、前記請求項1〜4記載のアクロレインの製造方法で得られたアクロレインを用いることを特徴とするアクリル酸の製造方法。
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