以下、本発明を、カードに文字や画像を印刷記録するとともに、カードに磁気的ないし電気的な情報記録を行う印刷装置に適用した実施の形態について説明する。
1.構成
1−1.システム構成
図1および図6に示すように、本実施形態の印刷装置1は印刷システム100の一部を構成している。すなわち、印刷システム100は、大別して、上位装置101(例えば、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータ)と、印刷装置1とで構成されている。
印刷装置1は、図示を省略したインターフェースを介して、上位装置101に接続されており、上位装置101から印刷装置1に印刷データや磁気的ないし電気的記録データ等を送信して、記録動作等を指示することが可能である。なお、印刷装置1は、オペパネ部(操作表示部)5を有しており(図3、図6参照)、上位装置101からの記録動作指示の他、オペパネ部5からの記録動作指示も可能である。
上位装置101には、デジタルカメラやスキャナ等の画像入力装置104、上位装置101に命令やデータを入力するためのキーボードやマウス等の入力装置103、上位装置101によって生成されたデータ等の表示を行なう液晶ディスプレイ等のモニタ102が接続されている。
1−2.印刷装置
1−2−1.機構部
図2に示すように、印刷装置1はハウジング2を有しており、ハウジング2内に情報記録部Aと、印刷部Bと、回動ユニットFと、デカール機構Gとを備えている。また、印刷装置1は、ハウジング2に装着可能な媒体供給部Cと、媒体収容部Dと、媒体収容部Dとは反対側のハウジング2の側面に装着されたリジェクトスタッカ54とを備えている。
(1)情報記録部A
情報記録部Aは、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23と、接触式IC記録部27とで構成されている。これら3つの記録部はオプション構成とされており、ユーザの希望に応じて1つ以上の記録部が取り付けられる。
(2)媒体供給部C
媒体供給部Cは、複数枚のカードCaを立位姿勢(本例では10°傾斜した姿勢)で整列収容するカードカセットで構成されている。本実施形態では、カードCaに横85.6mm、縦53.9mmの標準(規格)サイズのカードが用いられる。図4に示すように、カードカセットのカード供給先端(最前列)側の上部位置にはアイドルコロ16が配置されており、底部位置には分離パッド17が配置されている。分離パッド17には摩擦係数の高いゴム等の板状弾性部材が用いられている。
一方、印刷装置1の本体側には、カードカセットに収容された最前列のカードCaを繰り出すピックアップローラ19(図3も参照)、および、ピックアップローラ19の下方で分離パッド17に対向する位置にアイドルコロ18が配置されている。このため、アイドルコロ18と分離パッド17との間にはカードCaを一枚ずつ分離するための分離開口7が形成されている。ピックアップローラ19は不図示のピックアップモータ(ステッピングモータ)の駆動力で回転する。なお、本実施形態では分離開口7の開口幅がカードの厚さに応じて調整可能であり、オペレータがカードカセットの底部に配された回転部材を回転させることで分離パッド17はアイドルコロ18側に向けて進退可能に構成されている。
図3に示すように、媒体供給部Cはハウジング2のカセット装着エリア68に着脱可能に構成されている。媒体供給部Cを構成するカードカセットの最前列側には矩形状の開口(不図示)が形成されている。この開口を介して印刷装置1の本体側のセンサレバー69が挿入されカードCaに当接しセンサレバー69が押し込まれることでカードCaの有無(媒体供給部Cの装着の有無)を把握することができる。
媒体供給部C(カードカセット)をカセット装着エリア68から取り外すと、媒体供給部Cの下方に位置する開閉部材66が現れる。開閉部材66の上面カバー67は蓋体であり、カセット装着エリア68の隔壁(底面壁)を構成している。開閉部材66は開閉自在にハウジング2に取り付けられており、長手方向の端部が回動自在にハウジング2に支持されている。また、印刷装置1の正面側には開閉自在な正面扉12が設けられている。
なお、媒体供給部Cの詳細構成は例えば特開2012−25511号公報に開示されており、印刷装置1側の開閉部材66等の詳細構成は例えば特開2012−123074号公報に開示されている。
図4に示すように、分離開口7のカード搬送方向下流側には発光素子と受光素子とを有する透過一体型のセンサSN24が配置されており、センサSN24のカード搬送方向下流側には媒体供給部Cから繰り出されたカードCaを清浄するとともにさらに下流側に搬送するクリーニングローラ22が配置されている。クリーニングローラ22はカードCaに付着したゴミや埃等を除去するために粘着性を有しており、クリーニングローラ22には、さらに強い粘着性を有しクリーニングローラ22に付着したゴミや埃等を除去する粘着ローラ26が圧接している。
(3)回動ユニットF
回動ユニットFは、一言すれば、媒体の搬送方向を変更する機能(本実施形態では、カードCaを搬送するとともにカードCaの端部を挟持してカードCaを回動させる機能)を有しているが、具体的には次のとおりに構成されている。すなわち、回動ユニットFは一対の円盤状回動フレーム50を有している(図2では、正面側の回動フレーム50のみが示されている。以下、必要に応じて、図2に示された正面側回動フレーム50と、図2に示されていない背面側回動フレーム50とを区別する。)。一対の回動フレーム50は、両者間の間隔を画定する画定部材(不図示)に固定されることで一体化されている。
(3−1)カード搬送
図4に示すように、回動ユニットFは、駆動ローラと従動ローラとで構成されたローラ対20、21を有している。上述した画定部材は、ローラ対20、21間で搬送中のカードCaの両面(表裏面)側をガイドするガイド部材としても機能する。ローラ対20、21を構成する駆動および従動ローラのローラ軸(合計4本)は一対の回動フレーム50に回転可能に軸支されている。ローラ対20、21の駆動ローラのローラ軸には、背面側回動フレーム50側の端部にそれぞれ第1のギヤ(不図示)が嵌着している。これら第1のギヤには、第1のギヤより大径の第2のギヤ(不図示)がそれぞれ噛合している。第2のギヤのギヤ軸は背面側回動フレーム50にそれぞれ回転可能に軸支されている。
それぞれの第2のギヤは、第2のギヤより小径の単一の第3のギヤ(不図示)に噛合している。第1〜第3のギヤは背面側回動フレーム50の内側(正面側)に背面側回動フレーム50とほぼ平行に配置されている。第3のギヤのギヤ軸の軸芯は回動ユニットFの回動中心O(図4参照)に位置付けられている。第3のギヤのギヤ軸は背面側回動フレーム50を貫通することで背面側回動フレーム50に回転可能に軸支されており、その先端部は、ハウジング2に略垂直方向に固定され背面側回動フレーム50と平行に背面側回動フレーム50のさらに外側(背面側)に位置付けられた板状の背面側フレーム部材(不図示)に回転可能に軸支されている。
第3のギヤのギヤ軸には第3のギヤより大径の第4のギヤ(不図示)が嵌着している。第4のギヤは背面側回動フレーム50と背面側フレーム部材との間の背面側フレーム部材側に位置付けられている。この第4のギヤに第1カード搬送モータ(正逆転可能なステッピングモータ、不図示)のモータ軸に嵌着し第4のギヤより小径の第5のギヤ(不図示)が噛合している。第5のギヤも背面側回動フレーム50と背面側フレーム部材との間の背面側フレーム部材側に位置付けられている。すなわち、第1カード搬送モータは背面側フレーム部材の背面側に取り付けられており、第1カード搬送モータのモータ軸は背面側フレーム部材を貫通しその先端部に第5のギヤが嵌着している。
背面側フレーム部材の正面側(背面側回動フレーム50側)上部には、ローラ対20、21に挟持されたカードCaが回動ユニットF内でジャム状態(回動ユニットFが回動不能な状態)に陥った場合に、オペレータが手動でローラ対20、21を回動させてカードCaを排出する(ジャムを解除する)ためのジャム解除ダイヤル(不図示)が、背面側フレーム部材に回転可能に軸支されている。ジャム解除ダイヤルの軸にはギヤが嵌着しており、オペレータがジャム解除ダイヤルを手動で回すことにより、このギヤに噛合し背面側フレーム部材に軸支された複数のギヤを介して上述した第4のギヤを回転させローラ対20、21を回転させることでカードCaを回動ユニットFの外に排出することができる。
また、第1カード搬送モータはクリーニングローラ22の駆動源としても機能する。すなわち、上述した第4のギヤは複数のギヤを介してクリーニングローラ22のローラ軸に嵌着したギヤに第1カード搬送モータの回転駆動力を供給する。従って、第1カード搬送モータは、クリーニングローラ22およびローラ対20、21を駆動し媒体供給部Cから繰り出されたカードCaを回動ユニットFに搬送する(回動ユニットFが受け入れる)とともに(図4も参照)、回動ユニットFからカードCaを情報記録部A、水平媒体搬送経路P1、リジェクトスタッカ54のいずれかに向けて送り出す駆動源となる。
(3−2)回動
正面側回動フレーム50は、ハウジング2に略垂直方向に固定され正面側回動フレーム50と平行に正面側回動フレーム50のさらに正面側(図2の紙面手前側)に位置付けられた板状の正面側フレーム部材(不図示、図2では、正面側回動フレーム50が隠れることから、この正面側フレーム部材を捨象している。)に回動可能に軸支されている。すなわち、正面側フレーム部材の背面側には正面側回動フレーム50に向けて支持軸が突設されており、正面側回動フレーム50の正面側中央部には正面側フレーム部材から突出した支持軸を受ける円筒状の軸受が形成されている。
この支持軸の軸芯は、回動ユニットFの回動中心O(図4参照)に位置付けられており、上述した第3のギヤのギヤ軸の軸芯と同軸となるように配されている。このため、回動ユニットFは、一体化された一対の回動フレーム50が、この支持軸により正面側フレーム部材に軸支され、背面側では第3のギヤのギヤ軸が背面側フレーム部材に軸支されることで、回動可能に構成されている。
正面側回動フレーム50および背面側回動フレーム50の外周中央部にはそれぞれギヤが形成されている。これらのギヤには、これらのギヤより小径の第6のギヤがそれぞれ噛合している。これら第6のギヤは正面側回動フレーム50および背面側回動フレーム50より下方に配された単一のギヤ軸に嵌着しており、第6のギヤのギヤ軸は正面側フレーム部材および背面側フレーム部材に回転可能に軸支されている。
背面側回動フレーム50の外周に形成されたギヤに噛合する一方の第6のギヤには、回動モータ(正逆転可能なステッピングモータ、不図示)のモータ軸に嵌着し第6のギヤより小径の第7のギヤ(不図示)が噛合している。回動モータは、背面側フレーム部材の背面側の、上述した第1カード搬送モータの取り付け位置の下方に取り付けられており、回動モータのモータ軸は背面側フレーム部材を貫通しその先端部に第7のギヤが嵌着している。このため、回動モータを駆動することで、回動ユニットF内のローラ対20、21に両端部を挟持されたカードCaは回動中心Oを中心として回動する(図5も参照)。
なお、回動モータの駆動力で回動ユニットFを回動させると、ローラ対20、21を構成する駆動および従動ローラのローラ軸は一対の回動フレーム50に回転可能に軸支されているため、これらのローラ軸も一対の回動フレーム50の回動に応じて連れ回り(共廻りともいう。)する現象が生じる。このため、本実施形態では、回動ユニットF内のローラ対20、21に両端部を挟持されたカードCaを回動させる際には、回動ユニットFを回動させた(角度)分、駆動ローラのローラ軸が回動ユニットFの回動方向とは逆方向に回動するように第1カード搬送モータを同時に駆動させることで、連れ回りを防止する。
正面側回動フレーム50には、正面側に突出するように第1および第2の円筒状部材が形成されている。第1の円筒状部材は正面側回動フレーム50の外周位置から正面側に突出しており、第2の円筒状部材は(回動中心Oに対して)第1の円筒状部材と同心円状で第1の円筒状部材より小径となる位置から正面側に突出している。第1および第2の円筒状部材にはそれぞれ切り欠きが形成されており、それらの切り欠きを検出することで回動ユニットF(回動フレーム50)の位相を検出する第1および第2の位相センサ(不図示)がそれぞれ配設されている。
第1の円筒状部材の切り欠きは第2の円筒状部材の切り欠きの位置(方向)および回動ユニットFの周囲に配された各センサの方向に対応して形成されており、第2の円筒状部材の切り欠きはローラ対20、21(のローラ軸)の位置に対応して形成されている。第1の位相センサは回動モータで回動ユニットFを回動させる際のエンコーダとして機能し、第2の位相センサは回動ユニットF(ローラ対20、21)を初期位置方向に位置付ける際のエンコーダとして機能する。
(3−3)センサとの関係
回動ユニットFの周囲には複数のセンサが配置されている。図4に示すように、クリーニングローラ22とローラ対20との間には、媒体供給部Cから繰り出され搬送中のカードCaの後端を検出するセンサSN2が配置されており、ローラ対21のカード搬送方向下流側には、搬送中のカードCaの先端を検出するセンサSN26が配置されている。
また、上述したように、回動ユニットFの外周には、情報記録部Aを構成する磁気記録部24、非接触式IC記録部23、接触式IC記録部27が配置されている(図2参照)。図4に示すように、磁気記録部24および接触式IC記録部27の方向には、カードCaの端を検出するセンサSN4および上述したセンサSN26がそれぞれ配置されている。さらに、リジェクトスタッカ54の方向(エラー排出方向)にはセンサSN23が配置されており、印刷部B(転写部B2)の方向(水平媒体搬送経路P1上)にはセンサSN3が配置されている。上記センサには、センサSN24と同様に、発光素子と受光素子とを有する透過一体型のセンサが用いられている。
本実施形態では、図4に実線で示す垂直線を基準(0°)としたときに、回動中心OとセンサSN2およびセンサSN24のセンシング位置(図4では小さな丸で表示)とを結ぶ線の角度は10°、回動中心OとセンサSN23のセンシング位置とを結ぶ線の角度は125°、回動中心OとセンサSN4のセンシング位置とを結ぶ線の角度は173°、回動中心OとセンサSN26のセンシング位置とを結ぶ線の角度は190°、回動中心OとセンサSN3のセンシング位置とを結ぶ線の角度は270°にそれぞれ設定されている。なお、非接触式IC記録部23とセンサSN23とは回動中心Oを通る直線上に配されている。
従って、回動ユニットF(ローラ対20、21)は、これらのいずれかの方向に向けてカードCaを搬送するための媒体搬送路65(図2参照)を形成する機能、すなわち、方向変更機能を有している。図4は、回動ユニットFがカード受入位置方向に位置付けられた状態を示したものであり、ローラ対20、21は、この状態でセンサSN24、クリーニングローラ22、センサSN2、SN26(のセンシング位置)とともに、(図4に実線で示す垂直線に対し10°傾斜した)略直線状の傾斜媒体搬送経路P0上に位置付けられ、媒体搬送路65は傾斜媒体搬送経路P0の一部を構成する。なお、回動ユニットFの外周には、環境温度(外気温)を検出するサーミスタ等の温度センサThが配置されており(図2参照)、この温度センサThで検出された環境温度を基に印刷部Bに設けられたサーマルヘッドやヒートローラ等(後述)の加熱要素の温度補正が行われる。
(3−4)回動中心と各センサ間の距離
図5は、本実施形態において、回動ユニットFの回動中心Oから各センサまでの距離を模式的に示したものである。なお、図5では、把握を容易とするために、1枚の規格サイズのカードCaが回動ユニットF内に正常に搬入され、カードCaの中央が回動中心Oに位置してその端部がローラ対20、21に挟持された状態を示している。
上述したように、カードCaの規格長さは85.6mmのため、回動中心Oから第1の軌跡Lc1(カード端の回動軌跡)まではその半分の42.8mm、第1の軌跡Lc1と第2の軌跡Lc2(回動中心Oを中心とするセンサSN26のセンサ枠に接する円)との距離Daは7.0mm、第1の軌跡Lc1と第3の軌跡Lc3(回動中心Oを中心とするセンサSN2、SN3、SN23のセンサ枠に接する円)との距離Dbは8.0mm、第1の軌跡Lc1とセンサSN4との距離は20.0mmに設定されている。回動中心Oからみると、センサSN2、SN3、SN26のセンシング位置まではそれぞれさらに0.7mm外側となる。
従って、カードCaの後端を検出するセンサSN2のセンシング位置とカードCaの先端を検出するセンサSN26のセンシング位置とは、傾斜媒体搬送経路P0上の直線距離で、カードCaの長さ(85.6mm)+{距離Db(8mm)+センサSN2のセンサ枠からセンシング位置までの距離(0.7mm)}+{距離Da(7.0mm)+センサSN26のセンサ枠からセンシング位置までの距離(0.7mm)}=102mm離間している。
なお、センサSN23のセンシング位置は第1の軌跡Lc1から9.7mmの位置にあり、センサSN4のセンシング位置は第1の軌跡Lc1から20.7mm(第3の軌跡Lc3から12.7mm)の位置にある。このため、センサSN26は、回動中心O(回動ユニットF)からの距離がセンサSN23、SN4、SN3(およびセンサSN2)より近い位置に配されている。
(4)印刷部B
印刷部Bは、カードCaの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成するもので、図2に示すように、媒体搬送路65の延長上にカードCaを搬送するための水平媒体搬送経路P1が設けられている。また、水平媒体搬送経路P1にはカードCaを搬送する搬送ローラ対29、30が配置されており、搬送ローラ対29、30は不図示のギヤ等を介して図示しない第2カード搬送モータ(正逆転可能なステッピングモータ)に連結されている。
印刷部Bはフィルム搬送機構10を有しており、このフィルム搬送機構10により搬送される転写フィルム46の画像形成領域に対して、サーマルヘッド40でインクリボン41の各色画像を重ねて形成する画像形成部B1と、続いてヒートローラ33により水平媒体搬送経路P1上のカードCaの表面に転写フィルム46に形成された画像を転写する転写部B2とを備えている。
次に、図2を参照して、印刷部Bの詳細について説明する。転写フィルム46は、カードCaの幅方向より若干大きな幅を有する帯状を呈しており、インクリボン41のインクを受容するインク受容層、インク受容層の表面を保護する透明の保護層、加熱によりインク受容層および保護層を一体に剥離を促進するための剥離層、基材(ベースフィルム)の順で積層形成されている。
本実施形態で使用される転写フィルム46には、印刷方向(サーマルヘッド40の副走査方向)と交差する幅方向(サーマルヘッド40の主走査方向)を横断するように形成され画像形成開始位置を設定するためのマークが一定間隔で形成されており、これらのマーク間が画像形成領域とされている。
転写フィルム46は、モータMr2、Mr4の駆動により転写フィルムカセット内の供給ロール47と巻取ロール48にそれぞれ巻き取りないし繰り出される。すなわち、転写フィルムカセット内には、供給ロール47の中心に供給スプール47A、巻取ロール48の中心に巻取スプール48Aが配されており、供給スプール47Aには図示しないギヤを介してモータMr2の回転駆動力が伝達され、巻取スプール48Aには図示しないギヤを介してモータMr4の回転駆動力が伝達される。モータMr2およびモータMr4には正逆転可能なDCモータが用いられている。
なお、本実施形態では、転写処理前の転写フィルム46が供給スプール47Aに巻回されており、使用済み(転写部B2で転写処理された部分)の転写フィルム46が巻取スプール48Aに巻回されている。このため、転写フィルム46に対して画像形成処理および転写処理を行う際は、供給スプール47Aから転写フィルム46を巻き取スプール48A側に一旦繰出し、供給スプール47Aで転写フィルム46を巻き取りながら画像形成処理および転写処理を行う。
フィルム搬送ローラ49は、転写フィルム46を搬送する主要な駆動ローラであり、このフィルム搬送ローラ49の駆動を制御することで転写フィルム46の搬送量および搬送停止位置が定まる。フィルム搬送ローラ49は正逆転可能なフィルム搬送モータMr5(ステッピングモータ)に連結されている。フィルム搬送ローラ49の駆動時にモータMr2、Mr4も駆動するが、供給ロール47、巻取ロール48のいずれか一方から繰り出された転写フィルム46をいずれか他方で巻き取り、搬送される転写フィルム46にテンションを付与するためのものでフィルム搬送の補助的機能を果たす。
フィルム搬送ローラ49の周面には、ピンチローラ32aとピンチローラ32bとが配置されている。ピンチローラ32a、32bは、フィルム搬送ローラ49に対して進退可能に構成されており、図2では、ピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49側に進出して、転写フィルム46がフィルム搬送ローラ49に巻き付けられた状態が示されている。これにより、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49の回転数に応じた距離の正確な搬送が行われる。
従って、フィルム搬送機構10は、画像形成部B1と転写部B2との間に配された主要駆動ローラのフィルム搬送ローラ49を駆動させることにより、転写フィルム46を供給ロール47、画像形成部B1、転写部B2および巻取ロール48間で正逆搬送するとともに、画像形成部B1および転写部B2において転写フィルム46の画像形成領域および画像形成領域に形成された画像を適正位置に位置付ける(頭出し)機能を有している。また、巻取ロール48と画像形成部B1(サーマルヘッド40、プラテンローラ45)との間には、発光素子と受光素子とを有し上述した転写フィルム46に形成されたマークを検出するセンサSe1が配置されている。
一方、インクリボン41はインクリボンカセット42に収納されており、このカセット42にインクリボン41を供給する供給ロール43とインクリボン41を巻き取る巻取ロール44との間で張架された状態で収容されている。巻取ロール44の中心には巻取スプール44A、供給ロール43の中心には供給スプール43Aが配されており、巻取スプール44AはモータMr1の駆動力で回転し、供給スプール43AはモータMr3の駆動力で回転する。モータMr1およびモータMr3には正逆転可能なDCモータが用いられている。
インクリボン41は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)のカラーリボンパネルとBk(ブラック)リボンパネルとを長手方向に面順次に繰り返すことで構成されている。また、供給ロール43と画像形成部B1(サーマルヘッド40、プラテンローラ45)との間には、発光素子側からの光がBkリボンパネルにより受光素子側で遮光されることでインクリボン41の位置検出を行い画像形成部B1へのインクリボン41の頭出しを行うためのセンサSe2が配置されている。
プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは画像形成部B1を構成しており、プラテンローラ45に対向する位置にサーマルヘッド40が配置されている。画像形成時には、転写フィルム46およびインクリボン41を介してプラテンローラ45をサーマルヘッド40に圧接する。サーマルヘッド40は主走査方向に列設された複数の加熱素子を有しており、これらの加熱素子はヘッドコントロール用IC(不図示)により印刷データに基づいて選択的に加熱制御され、インクリボン41を介して転写フィルム46に画像を形成する。なお、冷却ファン39はサーマルヘッド40を冷却するためのものである。
転写フィルム46への画像形成が終了したインクリボン41は、剥離コロ25と剥離部材28とで転写フィルム46から引き剥がされる。剥離部材28はインクリボンカセット42に固設されており、剥離コロ25は画像形成時に剥離部材28に当接して両者で転写フィルム46とインクリボン41とを挟持することで剥離が行われる。そして、剥離されたインクリボン41はモータMr1の駆動力で巻取ロール44に巻き取られ、転写フィルム46はフィルム搬送機構10により、プラテンローラ31とヒートローラ33とを有する転写部B2まで搬送される。
フィルム搬送ローラ49の下流側には、転写フィルム46に形成されたマークを検出ためのセンサSe3が配置されている。このマーク検出を契機に、水平媒体搬送経路P1上の搬送ローラ対29、30に挟持され搬送停止(待機)中のカードCaを転写部B2に向けて搬送を開始することで、転写フィルム46の画像形成領域とカードCaとは同時に転写部B2に到達する。なお、センサSe3には透過一体型のセンサが用いられている。
転写部B2では、転写フィルム46はカードCaとともにヒートローラ33およびプラテンローラ31とで挟持されて、転写フィルム46の画像形成領域に形成された画像がカードCa表面に転写される。すなわち、転写時には、カードCaおよび転写フィルム46(の画像形成領域)を介してヒートローラ33をプラテンローラ31に圧接し、カードCaと転写フィルム46とを同速で同方向に搬送する。なお、ヒートローラ33は、転写フィルム46を介してプラテンローラ31に圧接・離間するように昇降機構(不図示)に取り付けられている。
画像転写後の転写フィルム46は、ヒートローラ33と搬送ローラ対37を構成する従動ローラ(図2の下側のローラ)との間に配置された剥離ピン79でカードCaから分離(剥離)され供給ロール47側に搬送される。一方、画像が転写されたカードCaは水平媒体搬送経路P2上を下流側のデカール機構Gに向けて搬送される。
なお、上記では、Y、M、C、Bkリボンパネルを面順次に繰り返したカラー印刷用のインクリボン41を例示したが、本実施形態の印刷装置1は、Bkリボンパネルのみの単色インクリボンも使用可能であり、その場合にはカードCaには単色印刷がなされる。
(5)デカール機構G
図2に示すように、転写部B2の下流側には、水平媒体搬送経路P1の延長線上に、収容スタッカ60に印刷後のカードCaを搬送するための水平媒体搬送経路P2が設けられている。水平媒体搬送経路P2にはカードCaを搬送する搬送ローラ対37、38が配置されており、搬送ローラ対37、38は不図示のギヤ等を介して上述した第2カード搬送モータに連結されている。なお、水平媒体搬送経路P1、P2上に配設された搬送ローラ対29から搬送ローラ対38までの各ローラ対(プラテンローラ31を含む。)は、第2カード搬送モータの駆動力で回転駆動される。
搬送ローラ対37、38はデカール機構Gの一部を構成している。デカール機構Gは、搬送ローラ対37、38で両端部が挟持(ニップ)されたカードCaの中央部を下方に凸状のデカールユニット34で押圧して位置固定された凹状のデカールユニット35との間でカードCaを挟むことにより、ヒートローラ33による熱転写でカードCaに生じた反りを矯正する。デカール機構Gは偏心カム36を含む構成によりデカールユニット34が図2に示す上下方向で進退可能に構成されている。
(6)媒体収容部D
媒体収容部Dは、デカール機構G側から搬送されてきたカードCaを収容スタッカ60に収容するように構成されている。すなわち、収容スタッカ60は、昇降機構61により図2で下方に移動するように構成されている。
1−2−2.制御部および電源部
次に、印刷装置1の制御部および電源部について説明する。図6に示すように、印刷装置1は、印刷装置1全体の動作制御を行う制御部70と、商用交流電力から各機構部および制御部等を駆動/作動可能な直流電力に変換する電源部80とを有している。
(1)制御部
図6に示すように、制御部70は、印刷装置1の全体の制御処理を行うマイクロコンピュータユニット72(以下、MCU72と略称する。)を有している。MCU72は、中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、印刷装置1のプログラムやプログラムデータが記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAM、およびこれらを接続する内部バスで構成されている。
MCU72には外部バスが接続されている。外部バスには、通信ICを有し上位装置101との通信を行う通信部71、カードCaに画像を形成すべき印刷データやカードCaの磁気ストライプや収容ICに磁気的ないし電気的に記録すべき記録データ等を一時的に格納するメモリ77が接続されている。
また、外部バスには、上述した各種センサからの信号を処理する信号処理部73、各モータに駆動パルスや駆動電力を供給するモータドライバ等を含むアクチュエータ制御部74、サーマルヘッド40を構成する加熱素子への熱エネルギを制御するためのサーマルヘッド制御部75、オペパネ部5を制御するための操作表示制御部76、カードCaの重送時等にブザー5を作動させるためのブザー作動回路78および上述した情報記録部Aが接続されている。
(2)電源部
電源部80は、制御部70、サーマルヘッド40、ヒートローラ33、オペパネ部5および情報記録部A等に作動/駆動電力を供給する。
2.動作
次に、本実施形態の印刷装置1の全体動作について、MCU72のCPU(以下、単にCPUという。)を主体として説明する。
印刷装置1に電源が投入されると、印刷装置1を構成する各部材をホーム(初期)位置に位置付け(例えば、図2に示す状態)、ROMに格納されたプログラムおよびプログラムデータをRAMに展開する初期設定処理が行われる。
CPUは、オペパネ部5(操作表示制御部76)または通信部71を介して印刷命令を受信すると、図7に示すカード発行ルーチンを実行する。なお、説明を簡単にするために、以下では、上位装置101から印刷データ等を受信済みのものとして、すなわち、CPUは、上位装置101から、一面側(片面印刷の場合)または一面および他面側(両面印刷の場合)の印刷データ(Bkの印刷データ、Y、M、Cの色成分印刷データ)並びに記録すべき記録部の指定およびその磁気的ないし電気的記録データを受信しメモリ77に格納しているものとして説明する。また、印刷部B(画像形成部B1、転写部B2)の動作については既に説明したので、重複を避けるために簡単に説明する。
2−1.カードの一面側への印刷動作
図7に示すように、カード発行ルーチンでは、ステップ(以下、「S」と略称する。)202において、画像形成部B1で、転写フィルム46に一面(例えば表面)側の画像(鏡像)を形成する一次転写処理(画像形成処理)を行う。すなわち、メモリ77に格納されたY、M、Cの色成分印刷データおよびBkの印刷データに基づいて画像形成部B1のサーマルヘッド40を制御することで、転写フィルム46の画像形成領域にインクリボン41のY、M、CおよびBkインクによる画像を重ねて形成する。
S202での一次転写処理と並行して、S204において、CPUは、カード供給処理を実行する。このカード供給処理には、(1)媒体供給部CからカードCaを繰り出し主として情報記録部Aに搬送するための供給処理、(2)情報記録部Aのいずれかまたは複数でカードCaに磁気的ないし電気的記録データを記録するための記録処理、(3)記録処理後のカードCaまたは記録処理がなされなかったカードCaを水平媒体搬送経路P1(搬送ローラ対29、30)に向けて搬送するための第2カード搬送処理が含まれる。
(1)供給処理
(1−1)カード受入位置方向への回動
図8は、(1)供給処理の詳細を示す供給処理サブルーチンのフローチャートである。供給処理サブルーチンでは、まず、S302において、センサSN24がオン状態(カード検出状態)にあるか否かを判断する。図4に示すように、カードCaは媒体供給部Cに立位姿勢で整列収容されているが、例えば、操作に慣れないオペレータが誤って媒体供給部Cの最前列のカードCaを上方から印刷装置1の本体側に押し込む場合がある。このような場合を含め、センサSN24がオン状態の場合には、センサSN24内に何らかの物体が存在していることを示している。
S302で肯定判断のときはS348に進み、S302で否定判断のときは、次のS304において、上述した第2の位相センサの出力を参照しつつアクチュエータ制御部74を介して回動モータを駆動させ、回動ユニットFを構成するローラ対20、21が初期位置方向に位置付けられるように制御する。なお、本実施形態では、この初期位置方向は、ローラ対20、21が水平に位置付けられる方向(図2に示す状態)に設定されている。
続いて、S306では、回動モータを駆動させ、回動ユニットFを構成するローラ対20、21がカード受入位置方向に位置付けられるように制御する。このカード受入位置方向は、図4に示すように、図4の垂直線(実線)を基準に回動中心Oから10°回動した方向に設定されている。従って、S306では、S304で図4の垂直線を基準として90°の初期位置方向にあるローラ対20、21を、反時計廻り方向(CCW)に80°回動させる。
(1−2)カード繰り出し
次のS308では、アクチュエータ制御部74を介してピックアップモータおよび第1カード搬送モータを駆動させる。これにより、媒体供給部Cの最前列のカードCaはピックアップローラ19が回転することで媒体供給部Cから繰り出され、クリーニングローラ22を介して回動ユニットFに向けて搬送される。なお、ピックアップモータはセンサSN24がカードCaの後端を検出した後に駆動を停止するが、第1カード搬送モータはカードCaを回動ユニットFに搬送するためにピックアップモータの停止後も駆動が続行される(クリーニングローラ22、ローラ対20、21は回転し続ける。)。
次のS310では、傾斜媒体搬送経路P0上に配されたセンサSN2が搬送中のカードCaの後端を検出したか否かを判断する。否定判断のときは、S312において、センサSN2がカードCaの先端を検出してからオン状態が所定時間以上継続しているか否か(カードCaが所定長さ以上搬送されたか否か)を判断する。このような判断は、例えば、センサSN2がカードCaの先端を検出した時点から、アクチュエータ制御部74から第1カード搬送モータに出力した駆動パルス数をカウントし、カウントされた駆動パルス数が所定パルス数となったか否かを判断することで行うことができる。
本実施形態では、CPUは、センサSN2がカードCaの先端を検出した時点から、カードCaが{85.6mm(カードCaの規格長さ)+28.0mm(重送閾値)}=113.6mm搬送される分の駆動パルス数がカウントされときに、カードCaが重送されたものとみなしてS312で肯定判断し、この場合にはS348に進む。S312で否定判断のときは、カードCaの搬送を続行するために、S310に戻る。
(1−3)回動可否判断
一方、S310で肯定判断のときは、S314において、センサSN2がカードCaの後端を検出した時点からカードCaを所定距離Dp1搬送して第1カード搬送モータの駆動を停止させる。本実施形態ではこの所定距離Dp1が8.7mmに設定されている。これにより(カードCaが正常に搬送された場合には)、カードCaはその中央が回動ユニットFの回動中心Oに位置し両端部がローラ対20、21で挟持されて停止した状態となる(図5に示す状態)。所定距離Dp1は必ずしも8.7mmである必要はなく、カードCaの後端がセンサSN2のセンサ枠を脱する距離の0.7mmを超えていればよい。なお、本実施形態で所定距離Dp1が8.7mmに設定されている理由については後述する(S320)。
次にS316において、傾斜媒体搬送経路P0上に配されたセンサSN26がカードCaの先端を検出しているか否かを判断する。図13(B)に示すように、2枚のカードが重送された場合は、規格長さの1枚のカードCaより重送カードの先端および後端間の長さが大きくなり、その先端は1枚のカードCaが正常に搬送される場合より早くセンサSN26に到達する。図13(B)に示す状態の場合に回動ユニットFを回動させようとすると、重送カードの先端がセンサSN26のセンサ枠と干渉する。一方、図13(A)に示すように、カードが重送された場合でも、センサSN26がカードCaの先端を検出していない場合には、回動ユニットFを回動させても、重送カードの先端はセンサSN26のセンサ枠とは干渉しない。つまり、センサSN26がカードCaの先端を検出しているか否かの判断結果により、回動ユニットFを回動させる際に(重送)カードの先端がセンサSN26のセンサ枠と干渉するか否かを判断することができる。
(1−4)重送判断
S316で肯定判断(カード先端検出)のときはS348に進み、否定判断(カード先端非検出)のときはS320においてカード搬送長算出処理を実行する。図9は、S320でのカード搬送長算出処理の詳細を示すカード搬送長算出処理サブルーチンのフローチャートである。
図9に示すように、このカード搬送長算出処理サブルーチンでは、まず、S402において情報記録部Aによる記録処理が指定されているか否かを判断する。否定判断のときは、S404で第1カード搬送モータを逆転駆動しカードCaを所定距離Dp2(本例では0.7mm)回動ユニットF側に逆送して第1カード搬送モータの駆動を停止させる(図11(A)参照)。本実施形態でカードCaを所定距離Dp2逆送する理由は、センサSN26に透過一体型センサが用いられているため、カード先端がセンサSN26のセンシング位置には到達していないがセンサSN26のセンサ枠内に到達している場合に、カードCaを挟持した状態で回動ユニットFを回動させると、カード先端とセンサSN26のセンサ枠との干渉が生じるおそれがあるためである。なお、センサSN26に例えば反射一体型センサを用いる場合には、センサ枠との干渉の問題を解消できるため、S404での処理は不要となる。
次のS406では、カードCaをローラ対20、21で挟持した状態でカードCaが水平媒体搬送経路P1上に配されたセンサSN3の方向を向くように(カードCaが水平媒体搬送経路P1に向けて搬送方向が変更されるように)回動ユニットFを(時計廻り方向で80°)回動させる(図11(B)参照)。なお、図8のS314で所定距離Dp1が8.7mmに設定されている理由は、カードCaをローラ対20、21で挟持した状態で回動ユニットFの回動させる際に上述したように連れ回りを防止する必要があることからカードCaの両端部がローラ対20、21に挟持されていることが望ましいこと、および回動ユニットFの回動後にカードCaをローラ対20、21側のそれぞれのカード端を先端として搬送する際に搬送に要する処理時間をほぼ同じとするためである。
次にS408では、第1カード搬送モータを駆動してセンサSN3側へのカードCaの搬送を開始(再開)するとともに、アクチュエータ制御部74から第1カード搬送モータに出力する駆動パルス数のカウントを開始する。
次のS410では、センサSN3が搬送中のカードCaの先端を検出したか否かを判断する。否定判断のときは、S412でアクチュエータ制御部74から第1カード搬送モータに出力する駆動パルス数のカウントを続行してS410に戻り、肯定判断のときは、次のS414において、第1カード搬送モータの駆動を停止し駆動パルス数のカウントも終了してカード搬送長Ldを算出し、カード搬送長算出処理サブルーチンを終了する。図11(C)は、センサSN3が重送カードの先端を検出した状態を示している。
図15は、水平媒体搬送経路P1上でカードCaの先端を検出するセンサSN3の出力と、アクチュエータ制御部74から第1カード搬送モータに出力する駆動パルスとの関係を示したものである。S414で駆動パルス数のカウントが終了した時点でのパルス数はNpとなる。第1カード搬送モータはステッピングモータ(パルスモータ)であり、1パルスで搬送されるカードCaのカード搬送長(搬送距離)は予め設定されている。従って、パルス数Npを把握することで、カードCaのカード搬送長Ldを把握することができる。
S404でカードCaを所定距離Dp2(0.7mm)逆送したため、規格長さの1枚のカードCaが正常に搬送された(重送されなかった)場合は、S408でカードCaの搬送を開始した時点からS410でセンサSN3がカード先端を検出する時点の間で、カードCaは、{距離Db(8mm)+所定距離Dp2(0.7mm)+センサSN3のセンサ枠からセンシング位置までの距離(0.7mm)}=9.4mm搬送される(図5も参照)。
図11(C)に示すように、2枚の重送カードの場合は、規格長さの1枚のカードCaより、重送カードの先端および後端間の長さが大きくなる。従って、その先端が1枚のカードCaが正常に搬送される場合より早くセンサSN3に到達するため、S408でカードCaの搬送を開始した後S410でセンサSN3により先端が検出されるまでの重送カードのカード搬送長Ldは小さくなる。このため、図15に示すように、パルス数Npに対し、規格長さの1枚のカードCaの場合の基準パルス数(カードCaを9.4mm搬送する際の第1カード搬送モータの駆動パルス数)を予め設定しておけば、基準パルス数に対して何パルス数少ないかで重送カードのカード搬送長Ldを把握することができる。
一方、S402で肯定判断のとき(情報記録部Aによる記録処理が指定されているとき)は、S416において、指定された情報記録部Aが接触式IC記録部27か否かを判断する。S416で否定判断のときは、S418において、指定された情報記録部Aが磁気記録部24か否かを判断する。S418で否定判断のとき(非接触式IC記録部23での記録処理が指定されているとき)はS420〜S430において原則的に上述したS404〜414と同様の処理を行い、カード搬送長算出処理サブルーチンを終了する。
S420〜S430での処理とS404〜414での処理との相違は次の3点である。(a)S406でカードCaがセンサSN3の方向を向くように回動ユニットFを回動させるのに対し、S422ではカードCaがセンサSN23の方向を向くように回動ユニットFを(反時計廻り方向で65°)回動させる。(b)S410でセンサSN3が搬送中のカードCaの先端を検出したか否かを判断するのに対し、S426ではセンサSN23が搬送中のカードCaの先端を検出したか否かを判断する。(c)規格長さの1枚のカードCaが正常に搬送された場合に、S408でカードCaの搬送を開始した時点からS410でセンサSN3がカード先端を検出する時点の間でカードCaが9.4mm搬送されるのに対し、S424でカードCaの搬送を開始した時点からS426でセンサSN23がカード先端を検出する時点の間でカードCaは{第1の軌跡Lc1とセンサSN23のセンシング位置との距離(9.7mm)+所定距離Dp2(0.7mm)}=10.4mm搬送される。
S418で肯定判断のとき(磁気記録部24での記録処理が指定されているとき)はS432〜S442において原則的にS404〜414と同様の処理を行い、カード搬送長算出処理サブルーチンを終了する。S432〜S442での処理とS404〜414での処理との相違は次の3点である。(a)S406でカードCaがセンサSN3の方向を向くように回動ユニットFを回動させるのに対し、S434ではカードCaがセンサSN4の方向を向くように回動ユニットFを(反時計廻り方向で17°)回動させる。(b)S410でセンサSN3が搬送中のカードCaの先端を検出したか否かを判断するのに対し、S438ではセンサSN4が搬送中のカードCaの先端を検出したか否かを判断する。(c)規格長さの1枚のカードCaが正常に搬送された場合に、S408からS410での肯定判断までの間でカードCaが9.4mm搬送されるのに対し、S436でカードCaの搬送を開始した時点からS438でセンサSN4がカード先端を検出する時点の間でカードCaは{第1の軌跡Lc1とセンサSN4のセンシング位置との距離(20.7mm)+所定距離Dp2(0.7mm)}=21.4mm搬送される。
S416で肯定判断のとき(接触式IC記録部27での記録処理が指定されているとき)はS444〜S450において原則的にS404〜414と同様の処理を行い、カード搬送長算出処理サブルーチンを終了する。S444〜S450での処理とS404〜414での処理との相違は次の3点である。(a)接触式IC記録部27は傾斜媒体搬送経路P0の延長線上に配置されているため回動ユニットFを回動させる必要がないことからS404、S406に相当する処理がない。(b)S410でセンサSN3が搬送中のカードCaの先端を検出したか否かを判断するのに対し、S446ではセンサSN26が搬送中のカードCaの先端を検出したか否かを判断する。(c)規格長さの1枚のカードCaが正常に搬送された場合に、S408からS410での肯定判断までの間でカードCaが9.4mm搬送されるのに対し、S444でカードCaの搬送を開始した時点からS446でセンサSN26がカード先端を検出する時点の間でカードCaは8.7mm(第1の軌跡Lc1とセンサSN26のセンシング位置との距離)搬送される。
図8に戻り、S330では、カード搬送長Ldが予め設定された長さL1より小さいか否かを判断する。この長さL1は、上述した規格長さの1枚のカードCaが正常に搬送された場合の搬送長に従って、センサSN3でカード先端を検出した場合(S410)は9.4mm、センサSN23でカード先端を検出した場合(S426)は10.4mm、センサSN4でカード先端を検出した場合(S438)は21.4mm、センサSN26でカード先端を検出した場合(S446)は8.7mmにそれぞれ設定されている。つまり、カード搬送長Ldが長さL1より大きければ、規格長さのカードCaが重送されることなく1枚で正常に搬送されたと判断できる。このとき、各センサの取り付け誤差や雰囲気温度によるカードCaの伸縮等を考慮して長さL1に対して誤差範囲(アローワンス)を設けるようにしてもよい。
S330において、下限側(例えば、センサSN3でカード先端を検出した場合の9.4mm)のみで判断している理由は、カードCaに対してローラ対20、21が滑る場合があるためであるが、上限側(例えば、センサSN3でカード先端を検出した場合に長さL1の誤差範囲内の最大値としての11.4mm)でも判断するようにしてもよい。その際、必ずしもエラーとして供給処理サブルーチンを終了する必要はなく、例えば、オペパネ部5に搬送ローラ対20、21のクリーニングを促す表示をするようにしてもよい。
なお、CPUは、図9のS414、S430、S442およびS450で必ずしもカード搬送長Ldを算出する必要はなく(これらのステップでは理解を促進するためにカード搬送長Ldの概念を導入したものである。S330での判断でも同じ。)、上述した基準パルス数および1パルスでの搬送距離のデータをROMに有していれば、図15に示したパルス数Npから直接、S330での判断を行うことができる。
S330で否定判断のときは、S332で主としてカードCaを情報記録部Aに搬送するための第1カード搬送処理を実行する。図10は、S332での第1カード搬送処理の詳細を示す第1カード搬送処理サブルーチンのフローチャートである。
図10に示すように、第1カード搬送処理サブルーチンでは、情報記録部Aによる記録処理が指定されていないとき(S502で否定判断のとき)は、第1カード搬送処理サブルーチンおよび供給処理サブルーチンを終了して第2カード搬送処理に進む。
非接触式IC記録部23での記録処理が指定されているとき(S504で否定判断かつS506で否定判断のとき)は、S508において第1カード搬送モータを逆転駆動しカードCaを非接触式IC記録部23に搬送して(図16(B)も参照)、第1カード搬送処理サブルーチンおよび供給処理サブルーチンを終了し記録処理へ進む。磁気記録部24での記録処理が指定されているとき(S504で否定判断かつS506で肯定判断のとき)は、S510において第1カード搬送モータを(正転)駆動しカードCaを磁気記録部24に搬送して、第1カード搬送処理サブルーチンおよび供給処理サブルーチンを終了し記録処理へ進む。接触式IC記録部27での記録処理が指定されているとき(S504で肯定判断のとき)は、S512において第1カード搬送モータを(正転)駆動しカードCaを接触式IC記録部27に搬送して、第1カード搬送処理サブルーチンおよび供給処理サブルーチンを終了し記録処理へ進む。
(1−5)重送時のエラー排出
一方、S330で肯定判断のときは、カードが重送された(または規格外のカードが混入された)ものとみなされるが、その際、オペレータによるジャム解除の煩雑さをできるだけ少なくする(ジャム解除時の操作性(ジャム解除性)を高める)処理がなされる(S302、S312、S316で肯定判断のときも同じ。)。本実施形態では、重送カードの主なエラー排出方向がリジェクトスタッカ54の方向(回動中心OとセンサSN23のセンシング位置とを結ぶ線の方向)に設定されている。
S330で肯定判断のときは、S340で重送カードの中央を回動中心Oに位置付け(図12(A)は図11(C)からの連続性を示すものであり、図9のS406においてカードをセンサSN3の方向に回動した場合の例である。以下、図12(B)、(C)においても同じ。)、次のS342において、回動ユニットFが回動可能なことがS316で既に判明していることから、重送カードをリジェクトスタッカ54の方向に回動させ(図12(B)参照)、S344でローラ対20、21を回転させてリジェクトスタッカ54に重送カードを排出して(図12(C)参照)、S346に進む。なお、CPUは、センサSN23が後端を検出することで重送カードがリジェクトスタッカ54に排出されたことを確認する。
(1−6)回動不能の場合の重送カード排出
本実施形態の印刷装置1では、ローラ対20、21で重送カードを挟持して回動ユニットFを回動させると周囲に配されたセンサと干渉する回動不能の場合に備え、回動フレームFを回動させずに重送カードを媒体供給部C側(上流側)に送り戻すモードが、オペレータによりオペパネ部5(または上位装置101)を介して選択可能とされている。
S302、S312、S316のそれぞれで肯定判断のときは、S348において、回動フレームFを回動させずに重送カードを媒体供給部C側に送り戻す送り戻しモードが選択されているかを判断し、否定判断のときはS358に進む。一方、S348で肯定判断のときは、次のS350において、信号処理部73を介してセンサレバー69(図3参照)の出力を参照して媒体供給部C(カードカセット)がカセット装着エリア68から取り外されているか、すなわち、カードが非検出の状態にあるか否かを判断する。
S350で否定判断のときは、S352において、操作表示制御部76を介してオペパネ部5(通信部71を介して上位装置101に接続されたモニタ102)にカードカセットを取り外すように要求する表示を行ってS350に戻り(S350での否定判断およびS352でのループでは所定時間ブザー作動回路78を作動させブザー6による警告音でオペレータに注意を喚起する。)、S350で肯定判断のときは、S354で第1カード搬送モータを逆転駆動して重送カードを媒体供給部C側に送り戻し、S356に進む。なお、図14は、S354で重送カードを媒体供給部C側に送り戻している状態を示したものである。
(1−7)ジャム解除性
S346、S356、S358では、いずれでも、CPUは、オペパネ部5(モニタ102)にエラー表示を行い、オペレータは、その表示等に従って対応を図るが、そのときの煩雑さの程度は以下のように異なっている。
(a)S358では、所定時間ブザー6を作動させ、オペパネ部5にエラー表示(重送エラーが生じていることおよびジャム解除の要求表示)を行って供給処理サブルーチン(およびカード発行ルーチン)を(異常)終了する。
オペレータは、カセット装着エリア68から媒体供給部Cを取り外し、正面扉12や開閉部材66を開いた後、ジャム解除ダイヤルを手動で回すことにより重送カードによるジャムを解除する(従来のジャム解除を行う。)。正面扉12を開くときには、オペレータの安全性を確保するために、原則的に電源部80への商用交流電力の供給が停止される。ジャムを解除すると、オペレータは、正面扉12を閉め、開閉部材66を閉じ再度媒体供給部Cを装着して印刷装置1を元の状態に戻した後、印刷装置1に電力を再投入する。そして、上述した初期設定処理の後、改めて印刷データや磁気的ないし電気的記録データを上位装置101から印刷装置1(メモリ77)に送信する。従って、S358に対応したジャム解除後には、初期設定処理からのやり直しとなる。
(b)S356では、S352での警告音とは異なる(案内)音となるようにブザー6を作動させ、オペパネ部5(モニタ102)に重送エラーが生じたことおよび重送カードの送り戻しが完了したことを表示して、供給処理サブルーチン(およびカード発行ルーチン)を(異常)終了する。オペレータは、カセット装着エリア68から媒体供給部Cを取り外した後、S354で送り戻された重送カードを印刷装置1の上部側から取り除くことでジャムを解除し、再度、開閉部材66を閉じ媒体供給部Cを装着する。
(c)S346では、オペパネ部5(モニタ102)に重送エラーが生じたことおよび重送カードがリジェクトスタッカ54に排出されたことを表示して(ブザー6は作動させない。)、供給処理サブルーチン(およびカード発行ルーチン)を(異常)終了する。すなわち、重送カードは既にリジェクトスタッカ54に排出されているので、オペレータはジャム解除を行う必要はない。
従って、S346、S356、S358で要求されたジャム解除性を比較すると、S346、S356、S358の順で軽減されオペレータによるジャム解除に対する煩雑さを少なくすることができる。
なお、カード発行ルーチンにおいて、カード供給処理(S204)は一次転写処理(S202)と並行して実行されるため(図7参照)、CPUは、重送エラーを一次転写処理中に把握することになる。CPUは、重送エラーを把握した時点で、画像形成部B1での画像形成領域への画像形成を直ちに止め、カード発行ルーチンを終了する。そして、カード発行ルーチンが再度(最初から)実施される際には、当該画像形成領域は使用済のものとして取り扱う。例外的に、S302で肯定判断されたときは、プラテンローラ45がサーマルヘッド40に圧接する前の転写フィルム46の搬送中(頭出し中)、すなわち、画像形成領域への画像形成前となるため、カード発行ルーチンが再度実施される際には、当該画像形成領域は未使用のものとして取り扱う。
(2)記録処理
CPUは、(1)供給処理が正常に終了すると、(2)記録処理を実行する。この記録処理では、所望された情報記録部Aに記録すべき磁気的ないし電気的記録データを出力し、カードCaにデータを記録させる。この記録の後、第1カード搬送モータを駆動してカードCaの中央が回動中心Oに位置付けられるように(カードCaの中央からローラ対20、21のカード挟持位置までの距離が等しくなるように)搬送し、次に所望の情報記録部Aがあるか否かを判断する。肯定判断のときは、回動ユニットFをその情報記録部の方向に回動させ、最初に所望された情報記録部Aと同様の処理を行い、否定判断のときは、記録処理を終了する。
なお、情報記録部Aにおいて、カードCaに記録されたデータを読み取り、記録すべきデータとの比較、すなわち、ベリファイが行われるが、本実施形態では続けて3回ベリファイできない場合にカードCaに何らかの記録阻害要因があるとみなして当該カードをリジェクトスタッカ54にエラー排出する。その際、カード供給処理(S204)は一次転写処理(S202)と並行して実行されるため、CPUは、重送エラーの場合と同様に、画像形成部B1での画像形成領域への画像形成を直ちに止め、カード発行ルーチンを終了する。そして、カード発行ルーチンが再度実施される際には、当該画像形成領域は使用済のものとして取り扱う。
(3)第2カード搬送処理
CPUは、(2)記録処理が終了すると、または情報記録部Aによる記録処理が指定されなかったとき(図10のS502で否定判断のとき)は、(3)第2カード搬送処理を実行する。第2カード搬送処理では、(a)情報記録部Aによる記録処理がなされた場合には、最後に記録処理を行った情報記録部AからカードCaを受け取り、第1カード搬送モータを駆動してカードCaの中央が回動中心Oに位置付けられるように搬送した後、回動モータを駆動してカードCaが水平媒体搬送経路P1方向に位置付けられるように回動ユニットFを回動させ、第1および第2カード搬送モータを駆動させてカードCaを搬送ローラ対29、30に向けて搬送する。一方、(b)情報記録部Aによる記録処理が指定されなかった場合には、カードCaの先端はセンサSN3のセンシング位置にある(媒体搬送路65は水平媒体搬送経路P1の延長線上にある)ため、第1および第2カード搬送モータを駆動させてカードCaを搬送ローラ対29、30に向けて搬送する。
CPUは、センサSN3がカードCaの後端を検出すると、第1カード搬送モータの駆動を停止させ、センサSN3がカードCaの後端を検出した後第2カード搬送モータをなおも所定パルス数駆動させて第2カード搬送モータの駆動を停止させる。これにより、カードCaはその両端部が搬送ローラ対29、30に挟持された状態となる。CPUは、カードCaと転写フィルム46の画像形成領域に形成された画像とが同期して転写部B2に到着するように、センサSe3が転写フィルム46に形成されたマークを検出するまでカードCaを搬送ローラ対29、30に挟持状態で待機させ、センサSe3がマークを検出すると、第2カード搬送モータを再度駆動してカードCaを転写部B2に向けて搬送する。
図7に戻り、S206では、転写部B2において、転写フィルム46の転写面に形成された画像をカードCaの一面に転写する二次転写処理を行う。なお、CPUは、この二次転写処理に先だって、ヒートローラ33を構成するヒータの温度が所定温度に到達しているように制御する。
二次転写処理後の転写フィルム46は、ヒートローラ33と搬送ローラ対37との間に配置された剥離ピン79でカードCaから分離(剥離)され供給ロール47側に搬送される。一方、画像が転写されたカードCaは水平媒体搬送経路P2上を下流側のデカール機構Gに向けて搬送される。CPUは、第2カード搬送モータをなおも駆動させカードCaの後端が剥離ピン79(図2参照)を通過した後に第2カード搬送モータの駆動を停止させる。これにより、カードCaは両端部が搬送ローラ対37、38に挟持された状態となる。
次のS208では、偏心カム36を回動させデカールユニット34をデカールユニット35に向けて押し下げカードCaをデカールユニット34、35で挟むことでカードCaに生じた反りを矯正するデカール処理を実行してS210に進む。
2−2.カードの他面側への印刷動作
次にS210において、両面印刷か否かを判断し、否定判断のときはS220に進み、肯定判断のときは、S212において、画像形成部B1で、転写フィルム46の次の画像形成領域に、S202と同様に、他面(例えば裏面)側の画像(鏡像)を形成する一次転写処理を行ってS216に進む。
CPUは、S212での一次転写処理と並行して、S214において、搬送ローラ対37、38に挟持されデカール機構Gに位置付けられているカードCaを水平媒体搬送経路P2、P1を経由して回動ユニットFに搬送し、両端部をローラ対20、21で挟持されたカードCaを180°回動(表裏面を反転)させた後、搬送ローラ対29、30に向けて搬送する。次のS216では、S206と同様に、転写部B2において、転写フィルム46の次の画像形成領域に形成された画像をカードCaの他面に転写する二次転写処理を行う。
次いで、S218では、S208と同様に、カードCaに生じた反りを矯正するデカール処理を実行する。そして、次のS220において、収容スタッカ60に向けてカードCaを排出してカード発行ルーチンを終了する。
3.効果等
次に、本実施形態の印刷装置1の効果等について説明する。
3−1.効果
本実施形態の印刷装置1では、CPUが、カードCaを回動ユニットF内に搬入するように第1カード搬送モータを制御し(S314)センサSN26がカードCaを検出するか否かを判断することで、搬入されたカードCaをローラ対20、21で挟持した回動ユニットFの回動が可能かを判断する(S316)。従って、カードCaをセンサSN26まで搬送しなくても回動可否の判断ができるため、カード搬送に伴う処理時間の短縮を図ることができる。付言すれば、近年、サーマルヘッド40を構成する各発熱素子に対する単位時間あたりの発熱量やそれに伴う転写フィルム46の改良が進んだことで図7のS202の一次転写処理の時間が短くなってきており、本実施形態ではこの一次転写処理とカード供給処理とが並行処理されるため、カード供給処理の処理時間を短縮させることで装置全体の処理時間の短縮を図ることができる。
また、本実施形態の印刷装置1では、センサSN26のカード検出結果によりカードCaを挟持した回動ユニットFの回動可否判断を先に行って、指定された情報記録部Aの方向に回動ユニットFを回動させ次いで重送判断および情報記録部AへのカードCaの搬送を行っている(回動可否判断(S316)と重送判断(S330)とを別々に行っている。)。すなわち、センサSN26によるカード検出結果に応じてカードCaを挟持した回動ユニットFが回動できる状態であればとりあえず回動してしまい、次処理のための搬送時に重送を検知するようにしたので処理効率を高めることができる(重送判断後に回動ユニットFを回動させることなく情報記録部Aでの記録を続けて行えるため処理時間を短縮できる。)。そして、重送判断で重送を検知しても、回動ユニットFを回動できることが既に判明しているので、カードCaを回動ユニットF側に送り戻してリジェクトスタッカ54に向けてエラー排出することができる。
さらに、本実施形態の印刷装置1では、カードCaを回動ユニットF内に搬入し(S314)、カードCaをセンサSN3、SN23、SN4、SN26の方向に向けて搬送して該搬送開始時点からセンサによるカードCaの検出時点までのカード搬送長Ldを検知する。このため、カードCaを回動ユニットF内に搬入し搬送方向を変更した後にセンサSN3等によるカード搬送長Ldの検知が行われるので、クリーニングローラ22からローラ対20にカードCaが受け渡される際に搬送誤差が生じても、カード搬送長Ldの検知誤差をなくすことができる。従って、本実施形態の印刷装置1によれば、カード搬送長Ldを正確に検知する(重送判断を正確に行う)ことができる。
また、本実施形態の印刷装置1では、センサSN26は回動ユニットFからの距離がセンサSN3等より短い位置に配されているため、カードCaが回動ユニットF内に搬入された時点でセンサSN26によってその先端が検出されていない場合は回動ユニットFのローラ対20、21で挟持されたカードCaを回動可能と判断することができる。従って、本実施形態の印刷装置1によれば、クリーニングローラ22からローラ対20にカードCaが受け渡される際の搬送誤差に拘わらず、かつ、カード搬送長Ldを検知する前に、センサSN26の検出結果のみで回動ユニットFが回動可能かを正確に判断できる。
また、本実施形態の印刷装置1では、カード搬送長Ldが長さL1より小さい場合に(S330で肯定判断)、カードCaが取り出し可能な位置に位置付けられるように回動ユニットFを回動させローラ対20、21を駆動するので、ジャム発生時の操作性(ジャム解除性)を向上させることができる。
さらに、本実施形態の印刷装置1では、ローラ対20、21に挟持された(重送)カードの中央が回動ユニットFの回動中心Oを中心に回動させるので、回動可能な範囲を広げることができる。
また、本実施形態の印刷装置1では、カードを挟持した回動ユニットFが回動可能な場合にリジェクトスタッカ54の方向に、回動不能の場合に媒体供給部C側に重送カードを搬送する。従って、従来のジャム解除ダイヤルによるジャム解除よりオペレータのジャム解除性を高めることができる。
3−2.変形例
なお、本実施形態では、第3のセンサとしてセンサSN2を例示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、カードCaを回動ユニットF内に搬入する際に、センサSN24がカードCaの搬送端を検出した後所定距離搬送するようにしてもよい。その際、カードCaの後端を検出した後所定距離搬送すれば、クリーニングローラ22からローラ対20へのカードCaの受け渡しの際に生じる搬送誤差をなくすことができ、センサSN2でカードCaの後端を検出する場合と同様に回動可否判断の精度を高めることができる。
また、本実施形態では、センサSN26の位置を回動ユニットFからの距離がセンサSN3等より短い位置に配置した例を示したが、本発明はこれに限らず、例えば、センサSN26の位置を回動ユニットFからの距離がセンサSN3等と等距離の位置に配置するようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、非接触式IC記録部23にカードCaを搬送する前にカードCaの重送をセンサSN23で行う例を示したが(S420〜S430およびS330)、本発明はこれに制約されるものではない。例えば、接触式IC記録部27に対応してセンサSN26、磁気記録部24に対応してセンサSN4が回動ユニットFの周囲に配されているように、非接触式IC記録部23に対応してセンサを配置するようにしてもよい。このような構成を採れば、カードCaをセンサSN23側から回動中心Oを越えて逆送(第1カード搬送モータを逆転駆動)する必要はないため(第1カード搬送モータを正転駆動)搬送時間を短縮することができる。
また、本実施形態では、カードCaの取り出し可能な方向として、リジェクトスタッカ54の方向、媒体供給部C側の方向を例示したが、本発明はこれに制限されるものではない。また、必ずしも取り出し可能な位置からリジェクトスタッカ54に排出する必要もない。
例えば、図16(A)に示すように、重送カードをリジェクトスタッカ54に排出しなくても、センサSN23の近くに位置付けられたローラ対20または21で重送カードを挟持しておくようにしてもよい。この状態で止めておけば、オペレータは重送カードをローラ対20または21から引き抜くだけでよいためジャム解除性が向上するとともに、リジェクトスタッカ54内でエラーカード(情報記録部Aで記録阻害要因があるとみなされたカード)と(再使用可能な)重送カードとが混在することを防止することができる。
また、混在防止という観点からは、リジェクトスタッカ54の上方に重送カードを受ける別のスタッカをハウンジグ2に装着し、図2に示すローラ対20側から水平方向に重送カードを当該別のスタッカに排出するようにしてもよい。この場合に、重送カードの後端を検出し別のスタッカに排出されたことを確認するセンサを設けるようにしてもよく、埃等のハウジング2内への侵入を防止するために、ハウジング2に形成した排出口を塞ぐ板状部材等を、例えば、電磁ソレノイドやミニモータで駆動し排出口を開閉可能に構成するようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、情報記録部Aを構成する3つの記録部をオプション構成としたことから、非接触式IC記録部23が取り付けられない場合には、図16(B)に示すように、重送カードをローラ対20または21で片持ち状態で挟持するようにしてもよい。この場合には、開閉部材66の上面カバー67を開けることで上方からジャム解除を容易に行うことができる。なお、非接触式IC記録部23が開閉部材66に内蔵されている構成では、非接触IC記録部23が取り付けられていても上面カバー67を開けることで上方からジャム解除を容易に行うことができる。
また、図16(C)に示すように、重送カードを搬送ローラ対29、30に挟持した状態で止めておくようにしてもオペレータが重送カードにアクセスしやすいため、回動ユニットF内に止めておくよりジャム解除性は向上する。さらに、媒体収容部Dまで搬送するようにしてもよい。
また、本実施形態では、カードCaの搬送方向を変更する方向変更手段として回動ユニットFを例示したが、本発明は、特許文献3のように回動角度が180°未満の方向変更手段にも適用可能であることはいうまでもない。
さらに、本実施形態では、情報記録部Aを構成する各記録部をオプションとする例を示したが、例えば、回動ユニットFの周囲に配されたセンサSN4もオプションとするようにしてもよい。すなわち、工場出荷段階では各記録部やセンサSN4は印刷装置1に取り付けられておらず、販売店等でユーザの希望に応じて取り付けるようにしてもよい。
さらにまた、本実施形態では、間接印刷方式の印刷装置(画像形成装置)を例示したが、本発明はこれに制約されず、直接印刷方式の印刷装置にも適用可能である。また、本実施形態では、画像形成部B1においてプラテンローラ45をサーマルヘッド40に圧接させる例を示したが、サーマルヘッド40をプラテンローラ45に圧接させるようにしてもよい。その際、プラテンは例示したローラである必要もないが、転写フィルム46やインクリボン41の搬送に影響を与えないものが好ましい。さらに、本実施形態では、転写部B2においてヒートローラ33をプラテンローラ31に圧接させる例を示したが、プラテンローラ31をヒートローラ33に圧接させるようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、画像形成部B1において転写フィルム46の画像形成領域にカードCaの一面側の画像を形成し(S202)、転写部B2においてカードCaの一面に画像を転写(S206)した後に、画像形成部B1において転写フィルム46の次の画像形成領域への他面側の画像形成(S212)と並行して、カードCaを回動ユニットF側に搬送してカードCaを180°回転させ(S214)、転写部B2においてカードCaの他面に他面側の画像を転写する(S216)例を示したが、画像形成部B1において転写フィルム46の画像形成領域にカードCaの一面側の画像を形成した後、転写フィルム46の次の画像形成領域に他面側の画像を形成し、転写部B2において、カードCaの一面に画像を転写した後、カードCaを回動ユニットF側に搬送してカードCaを180°回転させ、カードCaの他面に他面側の画像を転写するようにしてもよい。
そして、本実施形態では、上位機器101から印刷データや磁気的ないし電気的記録データを受信する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、印刷装置1がローカルネットワークの一員を構成している場合には上位機器101以外のローカルネットワークに接続されたコンピュータから入力するようにしてもよい。また、磁気的ないし電気的記録データについてはオペパネ部5から入力してもよい。さらに、印刷装置1がUSBやメモリカード等の外部記憶装置と接続可能な構成の場合には外部記憶装置に格納された情報を読み取ることで印刷データや磁気的ないし電気的記録データを取得することができる。また、印刷データ(Bkの印刷データ、Y、M、Cの色成分印刷データ)に代えて画像データ(Bkの画像データ、R、G、Bの色成分画像データ)を上位装置101から受信するようにしてもよい。この場合には、印刷装置1側で受信した画像データから印刷データに変換すればよい。
また、本実施形態では、重送判断を1回のみ行っているが、センサSN26、SN3、SN4およびSN23を通過するごとに重送判断を行っても良い。例えば、カードCaは重送しているが、端部が同じ位置でぴったり重なっている場合は重送を判断できない。しかし、このような重送カード(1回目の重送判断で重送を検知できなかったカード)に対して記録処理を行ったときに重送したカードがずれる可能性があるため、その後の処理のためにカードCaを搬送するとき(例えば、転写処理の場合はセンサSN3に向けてカードCaを搬送するとき)に重送判断をするようにしてもよい。