JP2018058973A - フィルム及びフィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ヒートシール強度を制御可能な2軸延伸ポリエステルの層単体、または、2軸延伸ポリエステルの層を表面に含む積層体からなるフィルム及びこの製造方法を提供する【解決手段】フィルムは、2軸延伸ポリエステルの層単体、または、2軸延伸ポリエステルの層を表面に含む積層体からなるフィルムであって、2軸延伸ポリエステルの層の少なくとも一部の領域に、非晶化された線状パターンを複数平行に並べた第1の線状パターン群と、複数の線状パターンに対して所定角度をもって交差する、非晶化された線状パターンを複数平行に並べた第2の線状パターン群とが形成され、当該領域がヒートシール性を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、ヒートシール強度を制御可能なフィルム及びその製造方法に関するものである。
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等の2軸延伸ポリエステルフィルムは、強度、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性、保香性等に優れることから、各種の包装用素材として有用である。そこで、このようなフィルムどうしをヒートシールして形成した包装容器や包装袋が期待されている。
しかしながら、延伸性を有するフィルムはヒートシール性に乏しい。そこで例えば、特許文献1には、電磁波を2軸延伸ポリエステルフィルムの表面に短パルス照射し、表面を改質することによりヒートシール性を付与する方法が開示されている。
特開昭63−308042号公報
しかしながら、特許文献1に開示の方法は、フィルム表面全体に高いエネルギーを短期間に与えることにより改質するため、ヒートシール強度の細かい制御ができなかった。このため、例えば、ヒートシール強度を所定の範囲に設定したイージーピール性(易剥離性)を備えるフィルムの製造等が困難であるという課題があった。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ヒートシール強度を制御可能な2軸延伸ポリエステルの層単体、または、2軸延伸ポリエステルの層を表面に含む積層体からなるフィルム及びこの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の一局面は、2軸延伸ポリエステルの層単体、または、2軸延伸ポリエステルの層を表面に含む積層体からなるフィルムであって、2軸延伸ポリエステルの層の少なくとも一部の領域に、非晶化された線状パターンを複数平行に並べた第1の線状パターン群と、複数の線状パターンに対して所定角度をもって交差する、非晶化された線状パターンを複数平行に並べた第2の線状パターン群とが形成され、当該領域がヒートシール性を有する、フィルムである。
また、本発明の他の局面は、2軸延伸ポリエステルの層単体、または、2軸延伸ポリエステルの層を表面に含む積層体の前記2軸延伸ポリエステルの層の少なくとも一部に、線状のレーザー光パターンを照射して、非晶化された線状パターンが複数平行に並んだ第1の線状パターン群を形成する工程と、2軸延伸ポリエステルの層の少なくとも一部に、複数の線状パターンに対して所定角度をもって交差するように線状のレーザー光パターンを照射して、非晶化された線状パターンが複数平行に並んだ第2の線状パターン群を形成する工程と、を含むヒートシール性を有するフィルムの製造方法である。
本発明によれば、ヒートシール強度を制御可能な2軸延伸ポリエステルの層単体、または、2軸延伸ポリエステルの層を表面に含む積層体からなるフィルム及びこの製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るフィルムの平面図及び部分拡大図 本発明の一実施形態に係るフィルムを蓋材として用いた包装容器 ヒートシール領域と素材との界面の断面図 本発明の一実施形態に係るフィルムの製造方法 本発明の一実施形態に係るフィルムの製造方法
(フィルム)
図1に、本発明の一実施形態に係るフィルム10の平面図及び部分拡大図を示す。フィルム10は、矩形状の2軸延伸ポリエステルフィルム30であって、一方の面の周縁に、ヒートシール性を有する幅Dのヒートシール領域31を備える。
図1の部分拡大図に示すように、ヒートシール領域31は、非晶化された複数の線状パターンが格子状に並んで構成される。線状パターンは、所定の間隔aで平行に並んだ複数の第1の線状パターン40と、所定の間隔aで平行に並び、第1の線状パターン40に対して90°で交差する第2の線状パターン50とを含む。また、第1及び第2の線状パターン40、50は、2軸延伸ポリエステルフィルム30の端部となす鋭角の角度が45°となるように形成されている。第1及び第2の線状パターン40、50を構成する各線状パターンが非晶化されヒートシール性を備えるため、ヒートシール領域31もヒートシール性を有する。
ヒートシール領域31の幅Dは、フィルム10の機能に応じて任意に設定可能であるが、必要なヒートシール強度を確保するためには2.0mm以上であることが好ましい。各線状パターン間のフィルム10の端部における間隔aは、0.2mm以上、幅D以下の範囲で任意に設定できる。後述するように、間隔aによりフィルム10ヒートシール強度を制御することができる。第1線状パターン40と第2の線状パターン50とのなす角度は、互いに平行でなければ任意の角度を設定できるが、加工のし易さを考慮すると90°程度が好ましい。また、第1及び第2の線状パターン40、50と2軸延伸ポリエステルフィルム30の端部とのなす鋭角の角度も任意に設定できるが、加工のし易さを考慮すると45°程度が好ましい。
(包装容器)
図2に、フィルム10を用いた包装容器60を示す。包装容器60は、フィルム10のヒートシール領域31にヒートシールすることができる層を表面に含む素材70と、素材70にヒートシールされたフィルム10とを含む。素材70の表面に用いる材質は、具体的には、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、非晶質ポリエチレンテレフタレート(A−PET)またはヒートシール性を有する2軸延伸ポリエステル等を用いることができる。
包装容器60は、フィルム10を素材70にヒートシールすることにより密封することができる。包装容器50の密封は、素材70の表面とフィルム10のヒートシール領域31とを対向させて重ね、両者をヒートシールすることにより行う。
(効果)
フィルム10のヒートシール領域31は、格子状に交差する複数の第1及び第2の線状パターン40、50で構成されている。このため、素材70の表面とフィルム10のヒートシール領域31とを対向させて加熱及び加圧すると、素材70の表面は、ヒートシール領域31の全面とヒートシールすることなく、ヒートシール性を有する第1及び第2の線状パターン40、50とヒートシールされた状態となる。図3に、図2のA−A’線で切断した、フィルム10のヒートシール領域31と素材70との界面の断面図を示す。
図3に示すように、フィルム10にヒートシールされた素材70上には、線状のシール領域81と、シール領域81に囲まれた矩形の非シール領域82とができる。ここで、非シール領域82の面積は、第1及び第2の線状パターン40、50の間隔aを変えることにより任意に設定できる。フィルム10のヒートシール強度はシール領域81の面積によって変化するため、間隔aによってフィルム10のヒートシール強度を制御することができる。したがって、間隔aを適切に設定することにより、フィルム10を、素材70から容易に剥離することができるイージーピール性を備えたフィルムとすることができる。また、後述するように、ヒートシール強度の調整は、間隔aを設定する方法によるほうが、レーザー光の照射条件を変更する等の他の方法によるよりも容易である。
(フィルムの製造方法)
次に、フィルム10の製造方法、すなわち、2軸延伸ポリエステルフィルム30へのヒートシール領域31の形成方法の一実施形態について説明する。図4A、4Bに、一実施形態に係るフィルム10の製造方法説明する平面図を示す。
ヒートシール領域31は、一例として、2軸延伸ポリエステルフィルム30の周縁に線状のレーザー光スポットSを走査することにより形成することができる。スポットSは、図示しないレーザー発振器からパルス出力されたレーザー光を、回折光学素子、シリンドリカルレンズ等の光学素子により整形することにより得られる。
本製造方法では、初めに、図4Aに示すように、フィルム10の端部に対して45°傾けたスポットSを2軸延伸ポリエステルフィルム30の周縁に走査する。レーザー光はパルス出力されているため、パルス出力の繰り返し周波数を適切に設定することにより、所定の間隔で並ぶ第1の線状パターン40が形成される。その後、スポットSが2軸延伸ポリエステルフィルム30の周縁を1周した段階で、一旦走査を止める。
次に、図4Bに示すように、スポットSを90°回転させて、第1の線状パターンを形成した時と同様に、2軸延伸ポリエステルフィルム30の周縁を走査する。この結果、2軸延伸ポリエステルフィルム30の周縁に、第1の線状パターン40と、90°の角度で交差する第2の線状パターン40とが形成されたヒートシール領域31が形成される。
レーザー光が照射された2軸延伸ポリエステルフィルム30は、レーザー光の照射によってガラス転移温度以上に加熱される。その後、ガラス転位温度以下に冷却されることによって結晶化度が低下し、第1及び第2の線状パターン40、50にヒートシール性が発現する。レーザー光が走査照射された後の第1及び第2の線状パターン40、50は結晶化度が低下していればよく、レーザー光の照射により複数の線状の凸条が所定の間隔で平行に形成された微細構造が形成されてもよいし、形成されなくてもよい。
本製造方法によれば、所定の角度を維持しながらスポットSを周縁領域上で移動させることができるため、効率的にヒートシール領域31を形成することができる。
なお、ヒートシール領域31の形成方法は、本方法に限定されない。例えば、微小な円形のレーザー光スポットを2軸延伸ポリエステルフィルム30上で走査することにより、第1及び第2の線状パターン群を形成してもよい。また、スポットSの代わりに、光学素子によりX字状のレーザー光スポットを形成して、このスポットを2軸延伸ポリエステルフィルム30上で走査してもよい。また、ヒートシール領域31の形状も、本実施形態で示した額縁形状に限定されず、任意の形状を採用できる。
レーザー光は、エネルギーが効率的に2軸延伸ポリエステル層30に吸収されやすい赤外線波長を有する炭酸ガスレーザー光を用いることが好ましい。赤外線波長を有するレーザー光であれば、他のレーザー光を用いることもできる。
(変形例)
フィルム10は、2軸延伸ポリエステルフィルムの単層体でなくてもよく、2軸延伸ポリエステルを表面に含む各種積層体からなるフィルムを用いることもできる。
また、フィルム10の用途も、カップ状容器の蓋材に限定されず、例えば、1枚のフィルムを2つ折りにして、合わせた周縁部をヒートシールして形成される三方シール袋や、2枚のフィルムの間に2つ折りにしたフィルムを挟み、周縁部をヒートシールして形成される自立性を有するフレキシブル包装袋等のフィルムを用いた各種包装袋に用いることができる。この際、フィルムの形状やヒートシール領域の形状は、包装袋の用途に合わせた形態とすることができる。
実施例及び比較例に係る、積層体にヒートシール領域を付与したフィルムを製造してヒートシール強度の評価を行った。
積層体は、表面から、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、PET)(12μm)/アルミニウム(9μm)/ポリエチレン(30μm)/2軸延伸PET(12μm)を積層し、15mm×15mmの大きさとした。
ヒートシール領域の形成には、キーエンス社製の炭酸ガスレーザー装置ML−Z9510(出力30W)を用いた。フィルム裏面の2軸延伸PET層に、レーザー光を照射することでヒートシール領域を形成した。ヒートシール領域は、積層体の中央に10mm×15mmの大きさで形成した。
シール対象には、同じ層構成の積層体であって、裏面の2軸延伸PET層全面にレーザー光を照射してヒートシール性を有する非晶化領域を形成したフィルムを用いた。
(実施例1)
線状パターンの間隔aを変えた実施例1−1〜実施例1−7に係るフィルムを、10枚ずつ作製してヒートシール強度を測定した。
炭酸ガスレーザー装置の出力は75%とし、走査速度は3000mm/秒とした。第1及び第2の線状パターンのフィルム端部となす鋭角の角度は45°とした。線状パターンの間隔は、0mm、0.2mm、0.3mm、1mm、2mm、3mm、4mmとした。ヒートシール条件は、時間1.0秒、温度160℃、圧力0.2MPaとした。評価結果を表1に示す。なお、測定されたシール強度は、平均値、最小値、最大値、最大値と最小値との差を示す。
Figure 2018058973
表1に示すように、得られたフィルムの平均シール強度は線状パターンの間隔が0.2mm以下の場合は一定であったが、線状パターンの間隔が0.2mmを超えると間隔が大きくなるにしたがって低下することが確認できた。このことから、線状パターンの間隔が一定以上大きければ、線状パターンの間隔によりヒートシール強度を制御できることが確認できた。
(実施例2)
第1及び第2の線状パターンのフィルム端部からの角度を変えた実施例2−1〜実施例2−6に係るフィルムを、10枚ずつ作製してヒートシール強度を測定した。
第1及び第2の線状パターンのフィルム端部となす鋭角の角度は、45°、0°、10°、30°、80°、90°とした。線状パターン間の間隔は、1mmとした。その他の条件は、実施例1と同じとした。評価結果を表2に示す。
Figure 2018058973
表2に示すように、線状パターンの間隔が同じであれば、線状パターンの角度を変えてもシール強度差に変化は見られなかった。なお、角度が0°及び90°の場合は、間欠的な剥離が連続するパルス剥離が発生したり、ヒートシールをしても線状パターン間から液体の内容物が漏れ出たりする問題があるため使用不可能であると判断し、評価の対象外としてシール強度の測定は行わなかった。
(実施例3)
シール対象のフィルム変えた実施例3−1〜実施例3−3に係るフィルムを、10枚ずつ作製してヒートシール強度を測定した。
線状パターン間の間隔は、1mmとした。その他の条件は、実施例1と同じとした。
シール対象として、次の3つのフィルムを準備した。実施例3−1には、他の実施例の評価に使用したものと同じフィルムを用いた。
実施例3−2に用いたフィルムは、表面から、2軸延伸PET(12μm)/PETG(30μm)を積層した積層体を用いた。
実施例3−3に用いたフィルムは、表面から、2軸延伸PET(12μm)/A−PET(30μm)を積層した積層体を用いた。評価結果を表3に示す。
Figure 2018058973
表3に示すように、線状パターンの間隔が同じであれば、シール対象を変えてもシール強度差に変化は見られなかった。
(比較例1)
炭酸ガスレーザー装置の出力によるヒートシール強度の制御の可否を検討するため、炭酸ガスレーザー装置の出力を変えた比較例1−1〜比較例1−5に係るフィルムを、10枚ずつ作製してヒートシール強度を測定した。
炭酸ガスレーザー装置の出力は75%、65%、55%、45%、35%とし、走査速度は3000mm/秒とした。第1及び第2の線状パターン間の間隔を0mmとして、フィルム表面に隙間なく線状パターンを形成した。ヒートシール条件は、実施例1と同じとした。評価結果を表4に示す。
Figure 2018058973
表4に示すように、炭酸ガスレーザー装置の出力を変えると、シール強度の差(バラつき)が大きくなることから、シール強度の制御が困難であることが確認された。
(比較例2)
レーザー光の走査速度によるヒートシール強度の制御の可否を検討するため、比較例2−1〜比較例2−5に係るフィルムを、10枚ずつ作製してヒートシール強度を測定した。
炭酸ガスレーザー装置の出力は75%とし、走査速度は3000mm/秒、4000mm/秒、5000mm/秒、6000mm/秒、7000mm/秒とした。その他の条件は、比較例1と同じとした。評価結果を表5に示す。
Figure 2018058973
表5に示すように、走査速度を変えると、平均シール強度が急激に変化することから、シール強度の制御が困難であることが確認された。
(比較例3)
ヒートシール温度によるヒートシール強度の制御の可否を検討するため、比較例3−1〜比較例3−6に係るフィルムを、10枚ずつ作製してヒートシール強度を測定した。
炭酸ガスレーザー装置の出力は75%とし、ヒートシール温度を160℃、150℃、140℃、130℃、120℃、110℃とした。その他の条件は、比較例1と同じとした。評価結果を表6に示す。
Figure 2018058973
表6に示すように、ヒートシール温度を変えると、140℃以下でシール強度の差(バラつき)が大きくなることから、シール強度の制御が困難であることが確認された。
以上のように、線状パターンの間隔を変えることによりヒートシール強度を制御した場合は、線状パターンの角度や、ヒートシール対象が変わることによりヒートシール強度のバラつきが少なく、ヒートシール強度の急激な変化がなく、所望のヒートシール強度に設定しやすいことが確認できた。
本発明は、イージーピール性を備える各種包装容器や包装袋に有用である。
10 フィルム
30 2軸延伸ポリエステルフィルム
31 ヒートシール領域
40 第1の線状パターン
50 第2の線状パターン
60 包装容器
70 素材
81 シール領域
82 非シール領域
S スポット

Claims (3)

  1. 2軸延伸ポリエステルの層単体、または、2軸延伸ポリエステルの層を表面に含む積層体からなるフィルムであって、
    前記2軸延伸ポリエステルの層の少なくとも一部の領域に、
    非晶化された線状パターンを複数平行に並べた第1の線状パターン群と、
    前記複数の線状パターンに対して所定角度をもって交差する、非晶化された線状パターンを複数平行に並べた第2の線状パターン群とが形成され、
    前記領域がヒートシール性を有する、フィルム。
  2. 前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである、請求項1に記載のフィルム。
  3. 2軸延伸ポリエステルの層単体、または、2軸延伸ポリエステルの層を表面に含む積層体の前記2軸延伸ポリエステルの層の少なくとも一部に、線状のレーザー光パターンを照射して、非晶化された線状パターンが複数平行に並んだ第1の線状パターン群を形成する工程と、
    前記2軸延伸ポリエステルの層の少なくとも一部に、前記複数の線状パターンに対して所定角度をもって交差するように線状のレーザー光パターンを照射して、非晶化された線状パターンが複数平行に並んだ第2の線状パターン群を形成する工程と、を含むヒートシール性を有するフィルムの製造方法。
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