JP6094636B2 - フィルムのヒートシール方法及び包装袋の製造方法 - Google Patents

フィルムのヒートシール方法及び包装袋の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ヒートシール性が付与された2軸配向ポリエステルフィルム及びこれを用いた包装袋に関する。
2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム等の2軸配向ポリエステルフィルムは、強度、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性、保香性等に優れることから、各種の包装用素材として有用である。そこで、このようなフィルムどうしをヒートシールして形成したフレキシブルパウチ等の包装袋が期待されている。
しかしながら、配向性を有するフィルムは、ヒートシール性に乏しい。そこで例えば、特許文献1には、電磁波を2軸配向ポリエステルフィルムの表面に短パルス照射し、表面を改質することによりヒートシール性を付与する方法が開示されている。
特公平4−26339号公報
特許文献1が開示する短パルス照射方法は、2軸配向ポリエステルフィルムの内部配向性を損なわないようにするため、キセノンガスランプ等を用いて高出力の短パルスを発生させる必要がある。このような高出力な装置はエネルギー効率が低く、また、安全性の確保が困難である。このため、2軸配向ポリエステルフィルムにヒートシール性を付与する方法は実用化に向けての取り組みがなされていなかった。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、高効率で安全性の高い方法によりヒートシール性を付与されたフィルム及びこれを用いた包装袋を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の一局面は、2軸延伸ポリエステルの層単体または2軸延伸ポリエステルの層を表面に含む積層体からなり、2軸延伸ポリエステルの層の少なくとも一部の領域に赤外線レーザー光を照射してヒートシール性を付与したシール部を含むフィルムを、2軸延伸ポリエステルの層のシール部のエンタルピー緩和量ΔHrが0J/g以上50J/g以下の状態でヒートシールする、フィルムのヒートシール方法である。
また、本発明の他の局面は、上述のフィルムのヒートシール方法によってシール部どうしヒートシールする工程を含む包装袋の製造方法である。
本発明により、高効率で安全性の高い方法によりヒートシール性を付与されたフィルム及びこれを用いた包装袋を提供することができる
本発明の一実施形態に係るフィルムの平面図および断面図 フィルムの製造方法を示す平面図および断面図 本発明の一実施形態に係る積層体フィルムの平面図および断面図 示差走査熱量分析結果の模式図 本発明の一実施形態に係る包装袋の平面図、側面図および包装袋の製造に用いられるフィルムの平面図
(フィルム)
図1に、一実施形態に係るフィルム10の平面図およびそのA−A’線に沿った断面図を示す。フィルム10は、2軸配向ポリエステル層30単体からなる。フィルム10の所定の領域20には、結晶度を低下させることによりヒートシール性の付与されたシール部40が形成されている。
図2に、フィルム10の製造方法を示す。領域20にシール部40を形成するために、レーザー光を走査しながら連続的に照射する。図2に示す例では、レーザー光の照射スポットSが、所定の間隔の複数の平行な直線状の軌跡を描くように照射される。レーザー光は、エネルギーが効率的に2軸配向ポリエステル層30に吸収されやすい赤外線波長を有する炭酸ガスレーザー光を用いることが好ましい。赤外線波長を有するレーザー光であれば、他のレーザー光を用いることもできる。
2軸配向ポリエステル層30のレーザー光が照射された領域20は、レーザー光の照射によってガラス転移温度以上に加熱され、照射後にガラス転移温度以下の温度に冷却されることによって、結晶度が低下し、ヒートシール性が発現する。レーザー光が走査照射された後の領域20は結晶度が低下していればよく、図1の断面図に示すように、レーザー光の照射により複数の線状の凸条が所定の間隔で平行に形成された微細構造が形成されてもよいし、形成されなくてもよい。また、レーザー光の照射スポットの形状や、走査軌跡は、任意のものから適宜選択できる。
このように、レーザー光の照射によりヒートシール性を付与する方法は、高出力の電磁波を短パルスで照射してヒートシール性を付与する方法に比べて、エネルギー効率を高くすることができ、また、安全性の確保が可能である。
(積層体フィルム)
2軸配向ポリエステルを表面に含む積層体フィルムにレーザー光を照射してヒートシール性を付与することもできる。図3に、積層体フィルム11の平面図およびそのB−B’線に沿った断面図を示す。積層体フィルム11は、2軸配向ポリエステル層31と、他の層50、32とを含む積層体である。積層体フィルム11の所定の領域21には、2軸配向ポリエステル層31にレーザー光を照射して結晶度を低下させることによりヒートシール性の付与されたシール部40が形成されている。他の層50、32は、例えば、それぞれアルミニウム層、2軸配向ポリエステル層を用いることができるが、これに限定されず、材質、層数は特に限定されない。
(エンタルピー緩和)
シール部40は、エンタルピー緩和が進行すると、ガラス転移点をわずかに越えた温度でより急速に結晶化が進行するように性質が変わる場合がある。そのため、ヒートシール処理の際、シール部40どうしが接着されるより前に結晶化が終了し、ヒートシール性が低下または消滅するおそれがある。
充分なヒートシール性を得るため、シール部40のエンタルピー緩和量ΔHrは0J/g以上50J/g以下であることが好ましい。エンタルピー緩和量ΔHrが50J/gを超えると、シール部40どうしが接着されるより前に結晶化が終了し、通常の温度域でのヒートシールが困難になるか、ヒートシールができても十分なシール強度が発現しないためである。
図4に、フィルム10の示差走査熱量分析(以下、DSCという)結果の模式図を示す。図4の(a)はシール部40の吸熱ピークp近辺のDSCの結果を示す。図4の(b)は、シール部40で吸熱ピークpの発生する温度範囲における、同じフィルム10の非シール部のDSCの結果を示す。図4の(c)はこれらから求めたシール部40のエンタルピー緩和量ΔHrを示す。エンタルピー緩和量ΔHrは、図4の(c)に示すように、ガラス転移点の高温側に現れる吸熱ピークpの吸熱ピーク面積から算出される。吸熱ピーク面積、すなわち、エンタルピー緩和量ΔHrの算出は、シール部40の吸熱ピークpの発生する温度範囲における、シール部40の熱量と非シール部の吸熱量とを比較して求めることができる。具体的には、吸熱ピーク面積は、シール部40の吸熱ピークpの発生する温度範囲における、シール部40の吸熱量と非シール部の吸熱量とをそれぞれ測定し、これらの差分(図4の(a)および(b)の各ハッチング部の面積の差分)を算出することにより求めることができる。
(包装袋)
図5に、一実施形態に係る包装袋100の平面図、側面図および包装袋100の製造に用いられるフィルム12の平面図を示す。包装袋100は、2枚のフィルム12を後述する領域22が向かい合うように重ねて、周縁部にヒートシール処理を行うことで製造される四方シール袋である。フィルム12の周縁部のハッチングで示した領域22は、上述の方法によりヒートシール性を付与されている。フィルム12は、フィルム10のような単層体フィルムであっても、フィルム11のような積層体フィルムであってもよい。
包装袋100の形状は、四方シール袋に限定されず任意の形状を採用できる。例えば、1枚のフィルム12を2つ折りにして、合わせた周縁部をヒートシールして形成される三方シール袋や、2枚のフィルム12の間に2つ折りにした1枚のフィルム12を挟み、周縁部をシールして形成される自立性を有するフレキシブル包装袋等が採用可能である。
実施例1〜15及び比較例1に係るエンタルピー緩和量ΔHr、厚さの異なる2軸配向ポリエチレンテレフタレート層からなるフィルムを作成し、シール強度の測定を行った。
フィルムの表面周縁部に炭酸ガスレーザー光を照射してシール部を形成したフィルムを作成した。その後、フィルムを60℃の恒温槽にて保管して、フィルムのエンタルピー緩和量ΔHrを適宜調整した。。エンタルピー緩和量ΔHrはDSCにより、12g分の各フィルムを昇温速度10℃/minの条件で測定した。
作成した各積層体フィルムに140℃、0.2MPaの熱及び荷重を2秒間加えてヒートシール加工を行った後、ヒートシールのできた積層体フィルムについては引張試験機でシール強度を測定した。
表1に各フィルムの膜厚(μm)、エンタルピー緩和量ΔHr(J/g)、シール強度(N/15mm)及びシール性評価を示す。シール性評価の項目には、シール強度が2N/15mm以上である場合には必要なシール強度を有するものとして「○」を記載し、シール強度が2N/15mm未満である場合には必要なシール強度を有さないものとして「×」を記載した。
エンタルピー緩和量ΔHrが0J/g以上50J/g以下の範囲にある実施例1〜15に係るフィルムはシール強度が2N/15mm以上あり、十分な強度を備えることが確認された。これに対して、エンタルピー緩和量ΔHrが50J/gより大きい比較例1に係るフィルムには十分なヒートシール性が発現しなかった。
本発明は、フィルムをヒートシールして製造される包装袋等に有用である。
10、12 フィルム
11 積層体フィルム
20、21、22 領域
30、31、32 2軸配向ポリエステル層
40 シール部
50 アルミニウム層
100 包装袋
S スポット
p 吸熱ピーク

Claims (3)

  1. 2軸延伸ポリエステルの層単体または前記2軸延伸ポリエステルの層を表面に含む積層体からなり、前記2軸延伸ポリエステルの層の少なくとも一部の領域に赤外線レーザー光を照射してヒートシール性を付与したシール部を含むフィルムを
    前記2軸延伸ポリエステルの層の前記シール部のエンタルピー緩和量ΔHrが0J/g以上50J/g以下の状態でヒートシールする、フィルムのヒートシール方法
  2. 前記フィルムは、ヒートシール性が付与されない非シール部を含み、
    前記エンタルピー緩和量ΔHrは、
    前記シール部のエンタルピー緩和による吸熱ピークの発生する温度範囲における、前記2軸延伸ポリエステルの層の前記シール部の吸熱量と前記非シール部の吸熱量とを比較して求められる、請求項1に記載のフィルムのヒートシール方法
  3. 求項1または2に記載のフィルムのヒートシール方法によって、前記フィルムの前記シール部どうしヒートシールする工程を含む、包装袋の製造方法
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