JP6094647B2 - 包装用フィルム及び包装袋 - Google Patents

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本発明は、ヒートシール性が付与された2軸延伸ポリエステルフィルム及びこれを用いた包装袋に関する。
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等の2軸延伸ポリエステルフィルムは、強度、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性、保香性等に優れることから、各種の包装用素材として有用である。そこで、このようなフィルムどうしをヒートシールして形成したフレキシブルパウチ等の包装袋が期待されている。
しかしながら、延伸性を有するフィルムは、ヒートシール性に乏しい。そこで例えば、特許文献1には、電磁波を2軸延伸ポリエステルフィルムの表面に短パルス照射し、表面を改質することによりヒートシール性を付与する方法が開示されている。
特公平4−26339号公報
特許文献1が開示する短パルス照射方法は、2軸延伸ポリエステルフィルムの内部配向性を損なわないようにするため、キセノンガスランプ等を用いて高出力の短パルスを発生させる必要がある。このような高出力な装置はエネルギー効率が低く、また、安全性の確保が困難である。このため、2軸延伸ポリエステルフィルムにヒートシール性を付与する方法は実用化に向けての取り組みがなされていなかった。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、高効率で安全性の高い方法によりヒートシール性を付与されたフィルム及びこれを用いた包装袋を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の一局面は、2軸延伸ポリエステルの層単体または2軸延伸ポリエステルの層を表面に含む積層体からなり、2軸延伸ポリエステルの層は、ヒートシール性を有するシール部と、ヒートシール性を有しない非シール部とを含み、シール部は非シール部より結晶化度が低く、波数1300cm−1以上1400cm−1以下の範囲における2軸延伸ポリエステルの層の非シール部の吸光度ピークにおける吸光度をIとし、そのピーク波数におけるシール部の吸光度をIとしたとき、IがIの5%以上80%以下である、包装用フィルムである。
また、本発明の他の局面は、1以上の上述の包装用フィルムを含み、シール部どうしがヒートシールされている包装袋である。
本発明により、高効率で安全性の高い方法によりヒートシール性を付与されたフィルム及びこれを用いた包装袋を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るフィルムの平面図および断面図 フィルムの製造方法を示す平面図および断面図 本発明の一実施形態に係る積層体フィルムの平面図および断面図 2軸延伸ポリエステル層の赤外吸収スペクトル 本発明の一実施形態に係る包装袋の平面図、側面図および包装袋の製造に用いられるフィルムの平面図
(フィルム)
図1に、一実施形態に係るフィルム10の平面図およびそのA−A’線に沿った断面図を示す。フィルム10は、2軸延伸ポリエステル層30単体からなる。フィルム10の所定の領域20には、結晶度を低下させることによりヒートシール性の付与されたシール部40が形成されている。
図2に、フィルム10の製造方法を示す。領域20にシール部40を形成するために、レーザー光を走査しながら連続的に照射する。図2に示す例では、レーザー光の照射スポットSが、所定の間隔の複数の平行な直線状の軌跡を描くように照射される。レーザー光は、エネルギーが効率的に2軸延伸ポリエステル層30に吸収されやすい赤外線波長を有する炭酸ガスレーザー光を用いることが好ましい。赤外線波長を有するレーザー光であれば、他のレーザー光を用いることもできる。
2軸延伸ポリエステル層30のレーザー光が照射された領域20は、レーザー光の照射によってガラス転移温度以上に加熱され、照射後にガラス転位温度以下に冷却されることによって、結晶化度が低下し、ヒートシール性が発現する。レーザー光が走査照射された後の領域20は結晶化度が低下していればよく、図1の断面図に示すように、レーザー光の照射により複数の線状の凸条が所定の間隔で平行に形成された微細構造が形成されてもよいし、形成されなくてもよい。また、レーザー光の照射スポットの形状や、走査軌跡は、任意のものから適宜選択できる。
このように、レーザー光の照射によりヒートシール性を付与する方法は、高出力の電磁波を短パルスで照射してヒートシール性を付与する方法に比べて、エネルギー効率を高くすることができ、また、安全性の確保が可能である。
(積層体フィルム)
2軸延伸ポリエステルを表面に含む積層体フィルムにレーザー光を照射してヒートシール性を付与することもできる。図3に、積層体フィルム11の平面図およびそのB−B’線に沿った断面図を示す。積層体フィルム11は、2軸延伸ポリエステル層31と、他の層50、32とを含む積層体である。積層体フィルム11の所定の領域21には、2軸延伸ポリエステル層31にレーザー光を照射して結晶度を低下させることによりヒートシール性の付与されたシール部40が形成されている。他の層50、32は、例えば、それぞれアルミニウム層、2軸延伸ポリエステル層を用いることができるが、これに限定されず、材質、層数は特に限定されない。
(結晶化度)
図4に、2軸延伸ポリエステル層の一例として2軸延伸ポリエチレンテレフタレート層の赤外吸収スペクトルを示す。図4に示すように、赤外吸収スペクトルの波数1300cm−1以上1400cm−1以下の範囲において、吸光度のピークpが見られる。この波数範囲は2軸延伸ポリエステル層中の結晶質に由来するCH鎖のトランス配座吸収帯であるため、吸光度のピークpは2軸延伸ポリエステル層における結晶化度の目安となる。
したがって、レーザー光の照射を行っていない非シール部の波数1300cm−1以上1400cm−1以下の範囲でのピーク波数における吸光度と、そのピーク波数におけるシール部40の吸光度との比を、シール部40のヒートシール性発現の尺度とすることができる。
レーザー光の照射を行っていない非シール部の波数1300cm−1以上1400cm−1以下の範囲での吸光度ピークにおける吸光度をIとし、そのピーク波数におけるシール部40の吸光度をIとしたとき、IがIの0%以上80%以下、すなわち、0≦(I/I)×100≦80であることが好ましい。IがIの80%より大きい場合、シール部40は結晶度の低下量が少なく、十分なシール強度を発現することができない。シール部40の吸光度のピーク値をこの範囲にすることで、シール部40の結晶化度を十分に低下させることができ、フィルム10に適度なヒートシール性を付与することができる。
(包装袋)
図5に、一実施形態に係る包装袋100の平面図、側面図および包装袋100の製造に用いられるフィルム12の平面図を示す。包装袋100は、2枚のフィルム12を後述する領域22が向かい合うように重ねて、周縁部にヒートシール処理を行うことで製造される四方シール袋である。フィルム12の周縁部のハッチングで示した領域22は、上述の方法によりヒートシール性を付与されている。フィルム12は、フィルム10のような単層体フィルムであっても、フィルム11のような積層体フィルムであってもよい。
包装袋100の形状は、四方シール袋に限定されず任意の形状を採用できる。例えば、1枚のフィルム12を2つ折りにして、合わせた周縁部をヒートシールして形成される三方シール袋や、2枚のフィルム12の間に2つ折りにした1枚のフィルム12を挟み、周縁部をシールして形成される自立性を有するフレキシブル包装袋等が採用可能である。
実施例1〜6、参考例1及び比較例1、2に係る積層体フィルムを作成し、結晶化度、シール強度、及び、積層体フィルムで包装体を内容の残存率の測定を行った。
表面からポリエチレンテレフタレート(12μm)/アルミニウム(7μm)/ポリエチレンテレフタレート(12μm)が積層された積層体の一表面周縁部に炭酸ガスレーザー光を照射して、一表面のポリエチレンテレフタレート層において結晶化度の相異なるシール部を備えた実施例1〜6、参考例1及び比較例1、2に係る積層体フィルムを形成した。その後、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて、一表面のポリエチレンテレフタレート層の、非シール部の波数1300cm−1以上1400cm−1以下の範囲での吸光度ピークにおける吸光度Iと、そのピーク波数におけるシール部の吸光度Iとを測定し、IのIに対する比を算出した。FT−IRはATR法で、1回反射のゲルマニウム(Ge)プリズムを用いて測定した。
作成した各積層体フィルムに140℃、0.2MPaの熱及び荷重を2秒間加えてヒートシール加工を行った後、ヒートシールのできた積層体フィルムについては引張試験機でヒートシール加工を行った領域のシール強度を測定した。
また、ヒートシールのできた積層体フィルムを用い、ポリエステルに吸着されやすい内容物の例としてツロブテロールを内包した包装袋を作成し、40℃で6ヶ月保存した後、内層のポリエチレンテレフタレート層からメタノール抽出および高速液体クロマトグラフィーによって内容物の吸着度を測定し、内容物の残存率を算出した。
表1に以上の結果を示す。シール性評価の項目には、シール強度が2N/15mm以上である場合には必要なシール強度を有するものとして「○」を記載し、シール強度が2N/15mm未満である場合には必要なシール強度を有さないものとして「×」を記載した。
Figure 0006094647
実施例1〜6、参考例1に係る積層体フィルムは十分な強度を備えることが確認された。これに対して、比較例1、2に係る積層体フィルムはヒートシール性が発現しなかった。以上のことから、IがIの0%以上80%以下である場合に適度なシール強度が発現されることが確認でき、本発明の効果を確認できた。なお、IがIの5%以上であれば、吸着されやすい内容物であっても、80%以上の残存率が確認できた。
本発明は、フィルムをヒートシールして製造される包装袋等に有用である。
10、12 フィルム
11 積層体フィルム
20、21、22 領域
30、31、32 2軸延伸ポリエステル層
40 シール部
50 アルミニウム層
100 包装袋
S スポット
p 吸光度のピーク

Claims (2)

  1. 2軸延伸ポリエステルの層単体または前記2軸延伸ポリエステルの層を表面に含む積層体からなり、前記2軸延伸ポリエステルの層は、ヒートシール性を有するシール部と、ヒートシール性を有しない非シール部とを含み、
    前記シール部は前記非シール部より結晶化度が低く、
    波数1300cm−1以上1400cm−1以下の範囲における前記2軸延伸ポリエステルの層の前記非シール部の吸光度ピークにおける吸光度をIとし、そのピーク波数における前記シール部の吸光度をIとしたとき、IがIの5%以上80%以下である、包装用フィルム。
  2. 1以上の、請求項1に記載の包装用フィルムを含み、前記シール部どうしがヒートシールされている包装袋。
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