JP2018053210A - 複層体およびその製造方法、並びに複合体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1] 熱可塑性樹脂を主体とする基材の少なくとも一方の表面に、以下の(1)〜(3)を満たすように高さ1nm以上の粗大突起を形成する突起形成処理を行い、前記突起形成処理を行った側の前記基材の面に被覆層を積層する、複層体の製造方法。
(1)前記粗大突起の平均密度を60〜200個/μm2とする。
(2)前記粗大突起の平均間隔を60〜120nmとする。
(3)前記粗大突起の平均半値幅を10〜60nmとする。
[2] 前記突起形成処理が、コロナ放電処理および/または大気圧プラズマ処理である、[1]に記載の複層体の製造方法。
[3] 前記コロナ放電処理または前記大気圧プラズマ処理の放電密度を50〜250W・min/m2とする、[2]に記載の複層体の製造方法。
[4] 前記熱可塑性樹脂がメタクリル酸メチル単位を主体とするメタクリル系樹脂である、[1]〜[3]のいずれかに記載の複層体の製造方法。
[5] 前記被覆層は、エポキシ変性ケイ素化合物およびカルボン酸変性樹脂を含む水分散液を塗布して乾燥する工程により得る、[1]〜[4]のいずれかに記載の複層体の製造方法。
[6] 前記基材が厚さ10〜300μmのフィルムである[1]〜[5]のいずれかに記載の複層体の製造方法。
[7] 基材上に被覆層が積層された[1]〜[6]のいずれかに記載の複層体の前記被覆層上に、接着層、被着体をこの順に積層する、複合体の製造方法。
[8] 前記接着層は、ポリビニルアルコール系接着剤組成物を用いて形成する、[7]に記載の複合体の製造方法。
[9] 前記被着体が偏光子である、[7]または[8]に記載の複合体の製造方法。
[10] 少なくとも一方の表面に、以下の(1)〜(3)を満たす高さ1nm以上の粗大突起を有する、熱可塑性樹脂を主体とする基材と、前記基材の前記粗大突起を有する面に積層された被覆層と、を備える複層体。
(1)前記粗大突起の平均密度が60〜200個/μm2である。
(2)前記粗大突起の平均間隔が60〜120nmである。
(3)前記粗大突起の平均半値幅が10〜60nmである。
[11] 前記基材が厚さ10〜300μmのフィルムである、[10]に記載の複層体。
[12] 基材上に被覆層が積層された[10]または[11]に記載の前記複層体の被覆層上に、接着層、被着体がこの順に積層された、複合体。
[13] 前記接着層がポリビニルアルコール系接着剤組成物である、[12]に記載の複合体。
[14] 前記被着体が偏光子である、[12]または[13]に記載の複合体。
複層体1の製造方法は、基材2を作製する工程と、基材2の少なくとも一方の主面に突起形成処理を行う工程と、前記突起形成処理を行った基材2a面に被覆層3を形成する工程を含む。
本発明の基材は、溶液キャスト法、溶融流延法、押出成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法などによって製造することができる。これらのうち、透明性に優れ、改善された靭性を持ち、取扱い性に優れ、靭性と表面硬度および剛性とのバランスに優れた基材を得ることができるという観点から、押出成形法が好ましい。押出機から吐出される熱可塑性樹脂の温度は好ましくは160〜270℃、より好ましくは220〜260℃に設定する。
また、鏡面ロールまたは鏡面ベルトの表面温度は共に130℃以下であることが好ましい。また、一対の鏡面ロール若しくは鏡面ベルトは、少なくとも一方の表面温度が60℃以上であることが好ましい。このような表面温度に設定すると、押出機から吐出される熱可塑性樹脂組成物を自然放冷よりも速い速度で冷却することができ、表面平滑性に優れ且つヘイズの低い基材を製造し易い。押出成形で得られる未延伸基材は、厚さ10〜300μmのフィルムであることが好ましい。係る厚さはより好ましくは20〜200μmであり、さらに好ましくは40〜150μmである。基材のヘイズは、通常1.0%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下である。
未延伸の基材(原反基材)の製造方法は特に制限なく、押出機を用いて溶融混錬した熱可塑性樹脂を基材成形する押出成形等が好ましい。未延伸の基材(原反基材)成形とこの二軸延伸とは、連続的に実施してもよいし、非連続的に実施してもよい。
工程(I)では、未延伸の基材を貯蔵弾性率曲線におけるゴム状平坦領域内の温度に予熱する。工程(II)では、予熱された熱可塑性樹脂基材をゴム状平坦領域内の温度に加熱しながら二軸延伸する。二軸延伸を実施することで、基材の靭性向上およびこれによる取扱い性の向上効果が得られる。
基材2の少なくとも一方の表面に、以下の(1)〜(3)を満たす高さ1nm以上の粗大突起(不図示)を形成するように突起形成処理を行う。ここで、本明細書において「粗大突起」とは、基準となる面(以下、基準面という)に対して1nm以上の高さを有する突起をいう。すなわち、1nm未満の高さの突起は、本明細書においては粗大突起としてカウントしないものとする。基準面は、基材2の表面を構成する面のうち最も面積の大きい高さの面をいう。
(1)粗大突起の平均密度は60〜200個/μm2とする。
(2)粗大突起の平均間隔を60〜120nmとする。
(3)粗大突起の平均半値幅は10〜60nmとする。
粗大突起の平均間隔は、図2の基材の模式的部分拡大上面図に示すように、各粗大突起の最も高い点を基準面に対して二次元投影したときの当該点間の最短距離dの平均をいう。また、粗大突起の平均半値幅は、基準面から粗大突起部の最も高い位置までの高さの1/2の高さにおける基準面と平行な断面における粗大突起の最大幅の平均をいう。
被覆層3を形成するための塗布液を用意する。塗布液の好ましい組成については、後述する。そして、突起形成処理を行った基材の表面に塗布液を塗布・乾燥・熱処理を行うことにより被覆層3を形成する。塗布方法は、例えばバーコート、グラビア、キスリバース、ダイコート、スプレーコートなどの公知の方法を用いることができる。塗布速度は通常15〜15m/minであり、好ましくは50〜100m/minである。乾燥は通常80〜200℃で行い、アニール処理は通常100℃以下の温度で2時間以内に行う。
被覆層の厚さは、通常30〜1000nm、好ましくは50〜800nm、更に好ましくは100〜500nmである。
本発明における基材は、熱可塑性樹脂を主体とする樹脂組成物(以下、熱可塑性樹脂組成物ともいう)から形成される層である。透明性が求められる用途においては、透明樹脂を主成分とする透明樹脂組成物から形成する。基材は、単層もしくは2層種以上の複層から構成される。複層とする場合の熱可塑性樹脂組成物は、各層を同一組成物または異なる組成物から形成できる。
本発明の基材に用いる熱可塑性樹脂は特に制約はないが、例えばトリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、オレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスルホン系樹脂およびフェノキシ樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種もしくは2種以上の混合物が用いられる。
[メタクリル系樹脂(I)]
メタクリル系樹脂(I)は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が45%以上、58%未満のものをいい、好ましくは49〜55%のものである。かかるシンジオタクティシティ(rr)を45%以上とすることで熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が高くなる傾向があり、58%以下とすることで熱可塑性樹脂組成物の成形加工性が向上する傾向がある。
メタクリル系樹脂(I)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られるクロマトグラムに基づいて算出されるポリスチレン換算の数平均分子量Mn2に対する重量平均分子量Mw2の多分散度である比Mw2/Mn2が、好ましくは1.7〜2.6、より好ましくは1.7〜2.3、さらに好ましくは1.7〜2.0である。比Mw2/Mn2がこのような範囲内にあるメタクリル系樹脂(I)を用いると、力学強度に優れた成形体を得易くなる。Mw2およびMn2は、メタクリル系樹脂(I)の製造の際に使用する重合開始剤や連鎖移動剤の種類、量、添加時期などを調整することによって制御できる。
メタクリル系樹脂(I)は、上記したメタクリル酸エステルに由来する構造単位のうち、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、よりさらに好ましくは99質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
メタクリル系樹脂(II)は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が58%以上のものをいう。好ましくは65%以上、より好ましくは70〜90%、さらに好ましくは72〜85%である。かかるシンジオタクティシティを58%以上とすることで、本発明のメタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度を高くすることができ、表面硬度の大きい成形体を得やすい。
メタクリル系樹脂(II)はゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られるクロマトグラムに基づいて算出されるポリスチレン換算の分子量の内、15,000未満の低分子量成分の割合が、10質量%以下であると強度が高いため好ましい。より好ましくは、15,000未満の低分子量成分の割合が5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。
メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルニルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステルを挙げることができる。これらのうち、メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルが最も好ましい。
これらの中で、生産性が高く、耐熱分解性が高く、異物が少なく、メタクリル酸エステルの二量体や三量体が少なく、成形体の外観が優れるという観点から、アニオン重合法において、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量、重合開始剤の種類や量などを調整することによって、製造されたものが好ましい。
メタクリル系樹脂(II)の製造のためのアニオン重合法においては、重合開始剤としてn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等のアルキルリチウムを用いることが好ましい。また、生産性の観点から有機アルミニウム化合物を共存させることが好ましい。
メタクリル系樹脂(III)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位と環構造を主鎖に有する構造単位を有する樹脂である。環構造を主体とする構造単位としては、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位が挙げられる。
ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位とは、それぞれラクトン環、無水グルタル酸、グルタルイミドに由来する構造単位である。メタクリル酸メチルに由来する構造単位(M)は、以下において単にメタクリル酸メチル単位(M)と表記する場合がある。
ラクトン環単位としては特に制限されず、公知のものを1種または2種以上用いることができる。
製造容易性、製造収率、および構造安定性等の点で、ラクトン環は好ましくは4〜8員環、より好ましくは5〜6員環、特に好ましくは6員環である。
6員環のラクトン環単位としては、下記式(1)で表される構造、および特開2004−168882号公報に記載の構造等が挙げられる。中でも、下記式(1)で表される構造が特に好ましい。
上記有機残基は炭素数が1〜20の範囲内であれば特には限定されず、例えば、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基および−CN基等が挙げられる。有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
本明細書において、「Ac」はアセチル基を示す。
R11〜R13が有機残基である場合、その炭素数は好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5である。
無水グルタル酸単位としては特に制限されず、公知のものを1種または2種以上用いることができる。無水グルタル酸単位としては、下記式(3)で表される構造が好ましい。
R31およびR32が有機残基である場合、その炭素数は好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5である。
無水グルタル酸単位を与える不飽和カルボン酸単量体と不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体とを共重合体とした後、この共重合体を必要に応じて触媒の存在下で加熱し、脱アルコールおよび/または脱水による分子内環化反応を行う方法が好ましい。
グルタルイミド単位としては特に制限されず、公知のものを1種または2種以上用いることができる。グルタルイミド単位としては、下記式(4)で表される構造が好ましい。
グルタルイミド単位としては、原料入手性、コスト、および耐熱性等の点から、R41およびR42がそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R43が水素原子、メチル基、n−ブチル基、シクロヘキシル基、またはベンジル基であることが好ましい。R41がメチル基であり、R42が水素原子であり、R43がメチル基、n−ブチル基、またはシクロヘキシル基であることが特に好ましい。
上記の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の樹脂を配合することができる。透明性が要求される用途において好適な他の樹脂の例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
メタクリル系樹脂を用いる場合へのゴム成分の含有量は、40〜1質量%が好ましく、耐熱性と靭性を両立させるためには、30〜3質量%がより好ましく、更に好ましくは20〜5質量%である。ゴム成分が40質量%を超えると耐熱性が低下するおそれがあり、一方、1質量%より少ないと靭性が損なわれる傾向にある。
ベンゾトリアゾール類は紫外線被照による着色などの光学特性低下を抑制する効果が高いので、熱可塑性樹脂組成物をかかる特性が要求される用途に適用する場合に用いる紫外線吸収剤として好ましい。ベンゾトリアゾール類としては、例えば2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN234)などが好ましい。
尚、紫外線吸収剤のモル吸光係数の最大値εmaxは、次のようにして測定する。シクロヘキサン1Lに紫外線吸収剤10.00mgを添加し、目視による観察で未溶解物がないように溶解させる。この溶液を1cm×1cm×3cmの石英ガラスセルに注入し、日立製作所社製U−3410型分光光度計を用いて、波長380〜450nmでの吸光度を測定する。紫外線吸収剤の分子量(MUV)と、測定された吸光度の最大値(Amax)とから次式により計算し、モル吸光係数の最大値εmaxを算出する。
εmax=[Amax/(10×10−3)]×MUV
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、硬化油などが挙げられる。
離型剤としては、例えばセチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどが挙げられる。
光拡散剤や艶消し剤としては、例えばガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
蛍光体としては、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物に含有し得る、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、および蛍光体の合計量は、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
被覆層は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で限定されないが、好適な例としてエポキシ変性ケイ素化合物(A)およびカルボン酸変性樹脂(B)を含む水分散液を塗布して乾燥、熱処理することにより得られる層が例示できる。エポキシ変性ケイ素化合物(A)とカルボン酸変性樹脂(B)とのモル比(A)/(B)は、0.5〜5の範囲とすることが好ましい。また、エポキシ変性ケイ素化合物は、加水分解性官能基を有する化合物であることが好ましい。加水分解性官能基の好適例としては、アルコキシ基が例示できる。
被覆層においてエポキシ変性ケイ素化合物(A)とカルボン酸変性樹脂(B)との比率は、それぞれに含まれるエポキシ基(AE)とカルボキシ基(BC)とのモル比(AE)/(BC)を特定の範囲とすることが好ましい。
エポキシ系変性ケイ素化合物(A)とカルボン酸変性樹脂(B)との反応は、エポキシ変性ケイ素化合物のエポキシ基がカルボン酸変性樹脂中のカルボキシ基と、更には前記表面処理された基材に生成すると考えられるカルボキシ基と反応することで、これらが化学結合するとともに、水酸基が形成される。更に、エポキシ変性ケイ素化合物中に含まれるシラノール基同士が縮合反応して化学結合を形成する。これらの反応により架橋構造を形成し、且つ強固に基材と結合するとともに、残りの親水基により極めて広い範囲の素材に対して接着性に優れ、更には、複合体の打ち抜き加工性に優れた特性を示す被覆層が形成できると考えられる。
以下、被覆層を構成するエポキシ変性ケイ素化合物について説明する。
エポキシ変性ケイ素化合物は下記一般式(I)の構造を有し、置換基Xが下記式(III)、(IV)または(V)で表されるエポキシ基含有有機ケイ素化合物が好ましい。下記一般式(I)における置換基Xが式(III)および式(IV)で表されるエポキシ系変性ケイ素化合物がより好ましく用いられる。
エポキシ系変性ケイ素化合物の市販品としては、KBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−402、KBE−403(以上、信越化学社製、いずれも商品名)、SH6040、Z−6040、Z−6042、Z−6043、Z−6044(以上、東レ・ダウコーニング社製、いずれも商品名)、A−186、A−187、A−1871(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、いずれも商品名)等が挙げられる。エポキシ系変性ケイ素化合物は、1種単独でまたは2種以上を併用して用いられる。
次に、被覆層を構成するカルボン酸変性樹脂について説明する。
カルボン酸変性樹脂は、カルボン酸を用いて変性された樹脂であれば特に制約はない。カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等を用いることができる。これらのポリカルボン酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
中でもカルボキシ基を有するウレタン樹脂が好ましく用いられる。カルボキシ基を有するウレタン樹脂は、カルボキシ基を有するポリオール(a−1)、その他のポリオール(a−2)およびポリイソシアネート(a−3)を反応させることによって製造することができる。
また、上記の水の一部をアルコール類で置き換えることも可能である。この際、水とアルコールの合計を100質量%とした場合に、アルコール類が60質量%未満であることが必要である。60%を超えると接着性や打ち抜き加工性が極端に低下し好ましくない。使用可能なアルコール類としては、特に制約はないが、具体例としてメタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14Aに、カラムとしてGL Sciences Inc.製 InertCap 1(df=0.4μm、0.25mmI.D.×60m)を繋ぎ、インジェクション温度を180℃に、検出器温度を180℃に、カラム温度を60℃(5分間保持)から昇温速度10℃/分で200℃まで昇温して、10分間保持する条件にて測定を行い、この結果に基づいて重合転化率を算出した。
試験対象の樹脂材料4mgをテトラヒドロフラン5mLに溶解させて、さらに0.1μmのフィルターでろ過して試験対象溶液を調製した。
東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM-Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだカラムが取り付けられ、且つ検出部が示差屈折率検出器であるGPC装置(東ソー株式会社製、HLC−8320)に試験対象溶液20μLを注入して、クロマトグラムを測定した。溶離剤としてテトラヒドロフランを流量:0.35mL/分で流し、カラム温度を40℃に設定した。
検量線は標準ポリスチレン10点のデータを用いて作成した。分子量400〜5,000,000の範囲の標準ポリスチレンをゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定し、リテンションタイムと分子量との関係を示す検量線を作成した。クロマトグラムの高分子量側の傾きがゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとした。クロマトグラムが複数のピークを示す場合は、最も高分子量側のピークの傾きがゼロからプラスに変化する点と、最も低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとした。分子量は、重量平均分子量とし、分子量分布は、重量平均分子量/数平均分子量とした。
樹脂試料について1H−NMR測定を実施した。TMSを0ppmとした際の0.60〜0.95ppmの領域の面積(X)、0.60〜1.35ppmの領域の面積(Y)とを計測し、式:(X/Y)×100にて算出した値を三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(%)とした。
装置:核磁気共鳴装置(Bruker社製 ULTRA SHIELD 400 PLUS)
溶媒 :重クロロホルム
測定核種:1H
測定温度:25℃
積算回数:64回
DSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度をガラス転移温度として定義した。DSC曲線は、測定対象樹脂を、JIS K7121に準拠して、島津製作所製 示差走査熱量計DSC−50を用いて、150℃まで10℃/分で昇温し(1回目)、次いで25℃まで冷却し、その後、25℃から200℃まで10℃/分で昇温させる(2回目)。2回目の測定で得たデータからガラス転移温度を求めた。
JIS K7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重、10分間の条件で測定した。
JIS K7136に準拠して、村上色彩研究所製 ヘイズ・透過率計 HM−150を用いてヘイズを測定した。
JIS K7361−1に準拠して、村上色彩研究所製 ヘイズ・透過率計 HM−150を用いて全光線透過率を測定した。
粗大突起の観察は、日立ハイテクサイエンス社製 走査型プローブ顕微鏡(SPM) 環境制御型ユニット E−sweepにて下記条件にて観察した。
試験片サイズ:10mm×10mm
測定環境 :大気圧、22±1℃−40%RH
測定モード:ダイナミック・フォース・モード(DFM)
使用カンチレバー:SI−DF20
X−Yデータ数:512/256
測定領域:1μm×1μm
得られた高さ測定結果から粗大突起の半値幅(nm)、高さ(nm)を、また画像から、粗大突起間の間隔(nm)および個数(個/1μm2)を測定した。この操作を基材中央部10か所にて行ってその値を平均し、それぞれ平均半値幅(nm)、平均高さ(nm)、平均間隔(nm)および平均密度(個/1μm2)を求めた。
JIS K 7236に準拠して、エポキシ当量EE(g/当量)を算出し、次式により化合物1g中に含まれるエポキシ基のモル数を求めた。
エポキシ基モル数(mmol/g)=1000/EE
カルボン酸変性樹脂の水分散液を乾燥させてキャップ剤であるアミンを除去した試料の1.0gを、メチルエチルケトン10gで溶解させ、トルエンとメタノールの混合溶媒(トルエン:メタノール=7:3)溶液40mL中に加えて溶解した後、0.1規定水酸化カリウムのメタノール溶液でフェノールフタレインを指示薬として用いて中和滴定を行って定量し、酸価(mgKOH/g)を求めたのち、次式で、樹脂1g中に含まれるカルボキシ基のモル数を求めた。
カルボキシ基モル数(mmol/g)=酸価(mgKOH/g)/56.1
エポキシ基とカルボキシ基のモル比は、上記の方法で定量したエポキシ基モル数(mmol/g)をカルボキシ基モル数(mmol/g)で割って算出した。
基材に塗布液を塗布して被覆層を製膜する際の製膜性を以下で評価した。
○:塗布液が均一に広がり、塗布膜が形成された。
×:塗布液が広がらず、塗布膜が形成できなかった。
ダンベル社製 SD型レバー式試料裁断器 SDL-200に両歯40mm×40mmのトムソン刃(型番:SSK-1000-D)を取り付け、100mm×100mmの試験片で打ち抜き試験を行って、破断面の観察を行い、以下の評価とした。
○:良好(欠け、割れ、剥がれがない)。
△:欠け、割れ、剥がれが極わずかに発生。
×:明らかに、欠け、割れ、剥がれが発生。
複合体を150mm×25mmに切り出し、島津製作所製 小型卓上試験機EZ−SX、ロードセル100N、引張速度300mm/minの速度で90°剥離を行った。測定開始後,最初の25mmの長さの測定値は無視し,その後,試験板から引きはがされた50mmの長さの応力を平均し,接着力(gf/25mm)とした。
複合体を100mm×100mmに切り出し、エスペック社製 小型環境試験機SH−241を用いて85℃、85%RHの環境下に500時間放置後の外観観察を行い評価した。
○:剥離等の発生もなく、良好。
×:端部に剥離が発生し、不良。
攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0054質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.203質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。かかる原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、平均滞留時間150分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、温度140℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレット状の、Mwが101,000で、分子量分布が1.87で、シンジオタクティシティ(rr)が52%で、ガラス転移温度が120℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル系樹脂〔A−1〕を得た(表1参照)。
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)を0.0074質量部、およびn−オクチルメルカプタンを0.28質量部用いた以外は製造例1と同様の方法によりメタクリル系樹脂(A−2)を製造した。ペレット状の、Mwが82,000で、分子量分布が1.92で、シンジオタクティシティ(rr)が51%で、ガラス転移温度が120℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル系樹脂〔A−2〕を得た(表1参照)。
撹拌翼と三方コックが取り付けられた5Lのガラス製反応容器内を窒素で置換した。これに、25℃で、トルエン1600g、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン2.49g(10.8mmol)、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液53.5g(30.9mmol)、および濃度1.3Mのsec−ブチルリチウムの溶液(溶媒:シクロヘキサン95%、n−ヘキサン5%)6.17g(10.3mmol)を仕込んだ。撹拌しながら、これに、20℃にて、蒸留精製したメタクリル酸メチル550gを30分かけて滴下した。滴下終了後、20℃で90分間撹拌した。
得られた溶液にトルエン1500gを加えて希釈した。次いで、希釈液をメタノール100kgに注ぎ入れ、沈澱物を得た。得られた沈殿物を80℃、140Paにて24時間乾燥して、Mwが81400で、分子量分布が1.08で、シンジオタクティシティ(rr)が73%で、ガラス転移温度が131℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル系樹脂〔A−3’〕を得た。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、平均滞留時間150分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、温度140℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレット状の、Mwが103600で、分子量分布が1.81で、シンジオタクティシティ(rr)が52%で、ガラス転移温度が120℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル系樹脂〔A−3’’〕を得た。
メタクリル系樹脂〔A−3’〕57質量部およびメタクリル系樹脂〔A−3’’〕43質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機(テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)で250℃にて混練押出してメタクリル系樹脂[A−3]を製造した(表1参照)。
スクリュー回転数120rpm、温度250℃に設定された二軸押出機(テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)に、メタクリル系樹脂〔A−4〕を2kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた。ノズルから樹脂100質量部に対して2質量部のモノメチルアミン(イミド化剤:三菱ガス化学株式会社製)を注入した。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のモノメチルアミンを20Torrに減圧されたベント口から排出した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却し、次いでペレタイザーでペレット化することにより、メタクリル系樹脂〔A−4’〕を得た。
次いで、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数100rpmに設定された二軸押出機(テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)に、ホッパーからメタクリル系樹脂〔A−4’〕を1kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた。ノズルから樹脂100質量部に対して0.8質量部の炭酸ジメチルと0.2質量部のトリエチルアミンの混合液を注入し樹脂中のカルボキシ基の低減を行った。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルを20Torrに減圧されたベント口から排出した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却し、次いでペレタイザーでペレット化し、酸価を低減したメタクリル系樹脂〔A−4”〕を得た。
さらに、スクリュー回転数100rpm、温度230℃に設定された二軸押出機(テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)にメタクリル系樹脂〔A−4”〕を供給量1kg/hrの条件で投入した。ベント口の圧力を20Torrに減圧して未反応の副原料などを含む揮発分を除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却し、次いでペレタイザーでペレット化することにより、メタクリル系樹脂〔A−4〕を得た。
メタクリル系樹脂〔A−4〕は、イミド化率が3.6モル%、Mwが82,000、Mw/Mnが1.95、ガラス転移温度が124℃、酸価が0.27mmol/gであった(表1参照)。
WO 2014−021264 Aの実施例に記載の共重合体(A−1)の製造方法と同じ方法でメタクリル系樹脂〔A−5〕を得た。
13C−NMR分析によれば、メタクリル系樹脂〔A−5〕は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を26質量%、環状構造を有する無水マレイン酸に由来する構造単位を18質量%、スチレンに由来する構造単位を56質量%含有するものであった。
メタクリル系樹脂〔A−5〕は、Mwが169,000、Mw/Mnが2.47、Tgが137℃であった(表1参照)。
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、イオン交換水1050質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム1.0質量部および炭酸ナトリウム0.7質量部を仕込み、反応器内を窒素ガスで充分に置換した。次いで内温を80℃にした。そこに、過硫酸カリウム0.25質量部を投入し、5分間攪拌した。これに、メタクリル酸メチル95.4質量%、アクリル酸メチル4.4質量%およびメタクリル酸アリル0.2質量%からなる単量体混合物445質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに30分間重合反応を行った。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.32質量部を投入して5分間攪拌した。その後、アクリル酸ブチル80.5質量%、スチレン17.5質量%およびメタクリル酸アリル2質量%からなる単量体混合物115質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに30分間重合反応を行った。
次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.14質量部を投入して5分間攪拌した。その後、メタクリル酸メチル95.2質量%、アクリル酸メチル4.4質量%およびn−オクチルメルカプタン0.4質量%からなる単量体混合物140質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに60分間重合反応を行った。以上の操作によって、架橋ゴム粒子〔B−1’〕を含むラテックスを得た。架橋ゴム粒子〔B−1’〕を含むラテックスを凍結して凝固させた。次いで水洗・乾燥してコアシェル型グラフト重合体〔B−1〕を得た。当該グラフト重合体の平均粒子径は0.09μmであった。尚、このコアシェル型グラフト共重合体におけるアクリル酸エステルの含有量は17%である(表1参照)。
C−1:アデカ社製、商品名「アデカスタブLA−31」
C−2:アデカ社製、商品名「アデカスタブLA−F70」
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、25℃で乾燥トルエン735kgと、1,2−ジメトキシエタン36.75kgと、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20molを含有するトルエン溶液39.4kgとを入れた。これにsec−ブチルリチウム1.17molを加えた。さらにこれにメタクリル酸メチル39.0kgを加え、25℃で1時間反応させてメタクリル酸メチル重合体〔c11〕を得た。反応液に含まれるメタクリル酸メチル重合体〔d11〕の重量平均分子量Mw〔d11〕は45,800であった。
次いで、反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル29.0kgとアクリル酸ベンジル10.0kgとの混合液を0.5時間かけて滴下して、メタクリル酸メチル重合体〔d11〕の末端から重合反応を継続させて、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔d11〕とアクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕とからなるジブロック共重合体〔D1−1〕を得た。反応液に含まれるブロック共重合体〔D1−1〕は、重量平均分子量Mw(D1−1)が92,000、重量平均分子量Mw(D1−1)/数平均分子量Mn(D1−1)が1.06であった。メタクリル酸メチル重合体〔d11〕の重量平均分子量が45,800であったので、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルからなるアクリル酸エステル重合体〔d2〕の重量平均分子量を46200と決定した。アクリル酸エステル重合体〔d2〕に含まれるアクリル酸ベンジルの割合は25.6質量%であった。
続いて、反応液にメタノール4kgを添加して重合を停止させた。その後、反応液を大量のメタノールに注ぎジブロック共重合体〔D1−1〕を析出させ、該析出物を濾し取り、80℃、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥させた。アクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕の質量に対するメタクリル酸エステル重合体ブロック〔d11〕の質量の比は50/50であった(表2参照)。
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、25℃で乾燥トルエン2003kgと、1,2−ジメトキシエタン100.15kgと、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20molを含有するトルエン溶液51.5kgとを入れた。これにsec−ブチルリチウム1.13molを加えた。さらにこれにメタクリル酸メチル34.3kgを加え、25℃で1時間反応させてメタクリル酸メチル重合体〔d11〕を得た。反応液に含まれるメタクリル酸メチル重合体〔d11〕の重量平均分子量Mw(d11)は6,000であった。
次いで、反応液を−30℃にし、アクリル酸n−ブチル266.3kgを0.5時間かけて滴下することによって、メタクリル酸メチル重合体〔d11〕の末端から重合反応を継続させて、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔d11〕とアクリル酸n−ブチルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕とからなるジブロック共重合体を得た。反応液に含まれるジブロック重合体の重量平均分子量は53,000であった。メタクリル酸メチル重合体ブロック〔d11〕の重量平均分子量が6,000であったので、アクリル酸n−ブチルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕の重量平均分子量を47,000と決定した。
続いて、メタクリル酸メチル297.3kgを添加して、反応液を25℃に戻し、8時間攪拌することによって、アクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕の末端から重合反応を継続させて、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔d11〕とアクリル酸n−ブチルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕とメタクリル酸メチル重合体ブロック〔d12〕とからなるトリブロック共重合体〔D1−2〕を得た。
その後、反応液にメタノール4kgを添加して重合を停止させた。その後、反応液を大量のメタノールに注ぎトリブロック共重合体〔D1−2〕を析出させ、該析出物を濾し取り、80℃、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥させた。トリブロック共重合体〔D1−2〕は重量平均分子量Mw(D1−2)が105,000、Mw(D1−2)/Mn(D1−2)が1.08であった。ジブロック共重合体の重量平均分子量が53,000であったので、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔d12〕の重量平均分子量を52,000と決定した。アクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕の質量に対するメタクリル酸エステル重合体ブロック〔d11〕と〔d12〕の合計質量の比は45/55であった(表2参照)。
PC:住化スタイロンポリカーボネート社製、カリバー 301−40(品番)、MVR(300℃、1.2kg)=40cm3/10分
使用したフェノキシ樹脂を以下に記載した。
フェノキシ樹脂:新日鉄住金化学社製、YP-50S(品番)
使用した加工助剤を以下に記載した。
加工助剤:三菱レイヨン社製、メタブレンP550A(品番)
メタクリル系樹脂〔A−1〕76質量部、紫外線吸収剤〔C−1〕1.8質量部、コアシェル型グラフト共重合体〔B−1〕24質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機(テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)で250℃にて混練押出してメタクリル系樹脂組成物〔1〕を製造した。
メタクリル系樹脂組成物〔1〕を熱プレス成形して50mm×50mm×3.2mmの板状成形体を成形し、全光線透過率、ヘイズおよびガラス転移温度を測定した。メタクリル系樹脂組成物〔1〕の物性を表3に示す。
メタクリル系樹脂組成物〔1〕を、80℃で12時間乾燥させた。20mmφ単軸押出機(OCS社製)を用いて、樹脂温度260℃にて、メタクリル系樹脂組成物〔1〕を150mm幅のTダイから押し出し、それを表面温度85℃のロールにて引き取り、幅110mm、厚さ60μmの未延伸基材〔F−1〕を得た。
表3に示す配合とする以外は製造例9と同じ方法でメタクリル系樹脂組成物〔2〕を製造し、実施例1と同じ方法で評価した。評価結果を表3に示す
メタクリル系樹脂組成物〔1〕の代わりにメタクリル系樹脂組成物〔2〕を用いた以外は実施例1と同じ方法で未延伸基材〔F−2〕を得た。
メタクリル系樹脂〔A−3〕100質量部、紫外線吸収剤〔C−2〕0.9質量部、ブロック共重合体〔D1−1〕5質量部および加工助剤2質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW−45MG−NH−600)で250℃にて混練押出してメタクリル系樹脂組成物〔3〕を製造した。
メタクリル系樹脂組成物〔3〕を熱プレス成形して50mm×50mm×3.2mmの板状成形体を成形し、全光線透過率、ヘイズおよびガラス転移温度を測定した。メタクリル系樹脂組成物〔3〕の物性を表3に示す。
メタクリル系樹脂組成物〔3〕を、80℃で12時間乾燥させた。20mmφ単軸押出機(OCS社製)を用いて、樹脂温度260℃にて、メタクリル系樹脂組成物〔2〕を150mm幅のTダイから押し出し、それを表面温度85℃のロールにて引き取り、幅110mm、厚さ160μmの未延伸基材を得た。
前記の手法にて得られた厚さ160μmの未延伸基材を、二辺が押出方向と平行となるように100mm×100mmの小片に切り出し、パンタグラフ式二軸延伸試験機(東洋精機社製)により、ガラス転移温度+10℃の延伸温度、一方向150%/分の延伸速度、一方向2倍の延伸倍率で押出方向と平行な方向を先に、次いでその垂直方向という順に逐次二軸延伸し(面積比で4倍)、10秒間保持の条件で延伸し、次いで25℃で急冷して、厚さ40μmの二軸延伸基材を得た。得られた二軸延伸基材についての表面平滑性、全光線透過率、波長380nm光透過率、ヘイズおよび延伸性の測定結果を表3に示す。
表3に示す配合とする以外は製造例11と同じ方法でメタクリル系樹脂組成物〔4〕〜〔8〕を製造し、製造例11と同じ方法で評価した。評価結果を表3に示す。
メタクリル系樹脂組成物〔3〕の代わりにメタクリル系樹脂組成物〔4〕〜〔8〕を用いた以外は製造例11と同じ方法で未延伸基材並びに二軸延伸基材を得た。評価結果を表3に示す。
実施例および比較例で使用したエポキシ変性ケイ素化合物を以下に示す。
G−1:東レ・ダウコーニング社製、OFS6040(品番)
G−2:東レ・ダウコーニング社製、Z−6044(品番)
G−3:東レ・ダウコーニング社製、Z−6043(品番)
G−4:東レ・ダウコーニング社製、Z−6030(品番)
実施例および比較例で使用したカルボン酸変性樹脂の水分散液を以下に示す。
H−1:第一工業製薬社製、スーパーフレックス210(品番)固形分35%水分散液
H−2:第一工業製薬社製、スーパーフレックス460(品番)固形分38%水分散液
H−3:第一工業製薬社製、スーパーフレックス870(品番)固形分30%水分散液
(被覆層の塗布液調製)
フラスコに、エポキシ変性ケイ素化合物〔G−1〕0.62質量部、イオン交換水72質量部を入れ、25℃で4時間攪拌した。ついで、カルボン酸変性樹脂〔H−1〕を加え、25℃で1時間攪拌し、塗布液を得た。
アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度:1200、ケン化度:98.5モル%,アセトアセチル基変性度:5モル%)100質量部に対し、メチロールメラミン20質量部を30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度0.5%の水溶液を得た。得られた水溶液を接着剤組成物として、30℃の温度条件下で用いた。
次に、製造例9で作製した基材〔F−1〕にコロナ放電処理(コロナ放電電子照射量:77W・min./m2)を施した表面に得られた塗布液を液厚さ18.3μmで塗布し、塗膜の成膜性を評価した。その結果を表4に示す。ついで、90℃に設定した熱風オーブンで全体を30秒加熱後、基材をオーブンから取りだして25℃で15分放置した後、当該基材〔J1〕の特性を評価した。評価結果を表4に示す。コロナ放電処理後の処理面の観察の結果、平均半値幅が17nmで、平均高さが3.5nmで、平均間隔が75nmの粗大突起が、115個/μm2観察された。尚、上述した図3A〜図3Cが、実施例1のメタクリル系基材のSPM画像である。
偏光子としてポリビニルアルコールフィルムにヨウ素をドープさせた60μmの延伸フィルムを用い、その片面に、被覆層が偏光子側になるようにして、ポリビニルアルコール系接着剤組成物を介して貼り合わせた。同時に、偏光子のもう一方の面には、けん化処理したTAC フィルム(富士写真フィルム社製、商品名:富士タックUV80)を、上記ポリビニルアルコール系接着剤組成物を介して貼り合わせた。貼り合わせ後、70℃で10分間乾燥し、偏光板を得た。
得られた偏光板をトムソン刃にて打ち抜き試験および、85℃、85%RHの環境下に500時間放置した後の評価結果を表4に示す。
被覆層を表4に示す配合で作製した以外は、実施例1と同様の操作で複層体を作製し、偏光子に貼り合わせて偏光板を作製した。評価結果を表4に示す。
被覆層を表4に示す配合で作製した以外は、実施例1と同様の操作で複層体を作製し、偏光子に貼り合わせて偏光板を作製した。評価結果を表4に示す。尚、上述した図4A〜図4Bが比較例1の、図5A,図5Bが比較例2のメタクリル系基材のSPM画像である。
表4に示す基材種および被覆層形成時の乾燥温度を130度とした以外は、実施例1と同様の操作で複層体を作製し、偏光子に貼り合わせて偏光板を作製した。評価結果を表4に示す。
Claims (14)
- 熱可塑性樹脂を主体とする基材の少なくとも一方の表面に、以下の(1)〜(3)を満たすように高さ1nm以上の粗大突起を形成する突起形成処理を行い、
前記突起形成処理を行った側の前記基材の面に被覆層を積層する、複層体の製造方法。
(1)前記粗大突起の平均密度を60〜200個/μm2とする。
(2)前記粗大突起の平均間隔を60〜120nmとする。
(3)前記粗大突起の平均半値幅を10〜60nmとする。 - 前記突起形成処理が、コロナ放電処理および/または大気圧プラズマ処理である、請求項1に記載の複層体の製造方法。
- 前記コロナ放電処理または前記大気圧プラズマ処理の放電密度を50〜250W・min/m2とする、請求項2に記載の複層体の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂がメタクリル酸メチル単位を主体とするメタクリル系樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複層体の製造方法。
- 前記被覆層は、エポキシ変性ケイ素化合物およびカルボン酸変性樹脂を含む水分散液を塗布して乾燥する工程により得る、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複層体の製造方法。
- 前記基材が厚さ10〜300μmのフィルムである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複層体の製造方法。
- 基材上に被覆層が積層された請求項1〜6のいずれか一項に記載の複層体の前記被覆層上に、接着層、被着体をこの順に積層する、複合体の製造方法。
- 前記接着層は、ポリビニルアルコール系接着剤組成物を用いて形成する、請求項7に記載の複合体の製造方法。
- 前記被着体が偏光子である、請求項7または8に記載の複合体の製造方法。
- 少なくとも一方の表面に、以下の(1)〜(3)を満たす高さ1nm以上の粗大突起を有する、熱可塑性樹脂を主体とする基材と、前記基材の前記粗大突起を有する面に積層された被覆層と、を備える複層体。
(1)前記粗大突起の平均密度が60〜200個/μm2である。
(2)前記粗大突起の平均間隔が60〜120nmである。
(3)前記粗大突起の平均半値幅が10〜60nmである。 - 前記基材が厚さ10〜300μmのフィルムである、請求項10に記載の複層体。
- 基材上に被覆層が積層された請求項10または11に記載の複層体の前記被覆層上に、接着層、被着体がこの順に積層された、複合体。
- 前記接着層がポリビニルアルコール系接着剤組成物である、請求項12に記載の複合体。
- 前記被着体が偏光子である、請求項12または13に記載の複合体。
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