JP6661463B2 - 積層体およびその製造方法、成形体、偏光子保護フィルム、並びに偏光板 - Google Patents

積層体およびその製造方法、成形体、偏光子保護フィルム、並びに偏光板 Download PDF

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本発明は、積層体およびその製造方法に関する。また、前記積層体を有する成形体、偏光子保護フィルムおよび偏光板に関する。
意匠性を高めたり、耐久性を高めたりする等の目的で、被着体の表面に非結晶性樹脂からなる基材を積層し成形体を得る方法が知られている。このような成形体は、通常、粘接着剤を介して基材と被着体とを接合し、続いて打ち抜き加工により所望の形状に加工することによって得られる。非結晶性樹脂としては、例えば、透明性、耐候性、表面硬度および耐候性に優れるメタクリル系樹脂が用いられる。
しかし、上記打ち抜き加工の際に、被着体と基材の間に剥がれが生じたり、割れや欠けが生じたりし、これらに起因する異物が生産工程を汚す場合があった。このため、生産性低下を防止するべく、被着体と基材を接合する粘接着剤の靭性を向上させる方法や、接着力向上について精力的な検討がなされてきた。
粘接着剤の靭性を向上させる方法として、粘接着剤のガラス転移温度を制御する方法(特許文献1)などが知られているが、耐熱性低下の問題および打ち抜き加工の際にバリが生じやすくなる問題がある。また、基材と被着体との接着性を向上させるために基材(偏光子フィルム)と粘接着助層を具備する積層体(偏光子保護フィルム)を用いる方法が知られている(特許文献2)が、粘接着助層は耐湿熱性が充分ではなく耐久性が低いという問題がある。係る耐久性の問題を改善するため、粘接着助層に架橋構造を有する樹脂を用いる方法があるが、架橋構造により粘接着助層に対する粘接着剤のアンカー効果が低下して積層体と被着体との接着性が低下する問題や、成形体の打ち抜き加工性が低下する問題がある。
特開2010−282161号公報 特開2002−328223号公報
上述したように、耐久性、打ち抜き加工性および接着性を両立した粘接着助層、並びに該粘接着助層および基材を備える積層体を提供することは技術的に難しかった。
本発明は上記問題点に鑑みて成されたものであり、透明性に優れ、且つ被着体と積層体を接合した際の接着力および耐久性に優れ、更に打ち抜き加工性に優れる積層体およびその製造方法、並びに該積層体を有する成形体、偏光子保護フィルムおよび偏光板を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1] 非結晶性樹脂を主成分とする基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に積層された粘接着助層とを備え、
前記粘接着助層は、エポキシ基を有するシランカップリング剤(A)およびカルボキシ基を有するカルボン酸変性樹脂(B)を含む樹脂組成物(P)の塗布膜を加熱処理して得た層であり、
前記加熱処理前の前記樹脂組成物(P)における前記エポキシ基の物質量aと前記カルボキシ基の物質量bの比a/bが0.5〜5.0の範囲であり、
前記粘接着助層が、前記エポキシ基と前記カルボキシ基に由来する結合を有する積層体。
[2] 前記シランカップリング剤(A)が加水分解性官能基を有する、[1]に記載の積層体。
[3] 前記加水分解性官能基がアルコキシ基である[2]に記載の積層体。
[4] 前記粘接着助層と前記基材の界面において、前記非結晶性樹脂と前記シランカップリング剤(A)の少なくとも一部がシリルオキシ基を介して結合されている、[1]〜[3]のいずれかに記載の積層体。
[5] 前記非結晶性樹脂が、メタクリル系樹脂を含むメタクリル樹脂組成物(C)である、[1]〜[4]のいずれかに記載の積層体。
[6] 前記メタクリル系樹脂が、(i)メタクリル酸エステルに由来する構造単位を80質量%以上有する樹脂、および(ii)メタクリル酸エステルに由来する構造単位および環構造を有する構造単位を含有する樹脂のいずれか一方を満たす、[5]に記載の積層体。
[7] 前記メタクリル系樹脂のシンジオタクティシティ(rr)が58%以上である[5]または[6]に記載の積層体。
[8] 前記基材の厚さが10〜80μmである[1]〜[7]のいずれかに記載の積層体。
[9] 被着体に、[1]〜[8]のいずれかに記載の積層体が接合されてなる成形体。
[10] [1]〜[8]のいずれかに記載の積層体からなる偏光子保護フィルム。
[11] 偏光子および[1]〜[8]のいずれかに記載の積層体を有する偏光板。
[12] 前記偏光子と前記積層体の前記粘接着助層とがポリビニルアルコール系粘接着剤層を介して貼り合されている、[11]に記載の偏光板。
[13] エポキシ基を有するシランカップリング剤(A)およびカルボキシ基を有するカルボン酸変性樹脂(B)を含む樹脂組成物(P)を調製する工程と、
非結晶性樹脂を主成分とする基材の少なくとも一方の面に、前記樹脂組成物(P)を塗布して塗布膜を得る工程と、
前記塗布膜を加熱する加熱処理工程とを備え、
前記樹脂組成物(P)は、前記加熱処理工程の前に、前記エポキシ基の物質量aと前記カルボキシ基の物質量bとの比a/bを0.5〜5.0とし、
前記加熱処理工程により、前記エポキシ基と前記カルボキシ基を付加反応させて化学的結合を形成する積層体の製造方法。
[14] 前記粘接着助層と前記基材の界面において、前記非結晶性樹脂と前記シランカップリング剤(A)の少なくとも一部にシリルオキシ基を形成させる、[13]に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、透明性に優れ、且つ被着体と積層体を接合した際の接着力および耐久性に優れ、更に打ち抜き加工性に優れる積層体およびその製造方法、並びに該積層体を有する成形体を提供できるという優れた効果を有する。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。
本発明の積層体は、非結晶性樹脂を主成分とする基材と、基材の少なくとも一方の面に積層された粘接着助層を少なくとも有する。ここで「粘接着助層」とは、いわゆる易接着層であり、粘接着剤を用いて被着体と基材を接合する際に粘接着性を改善する層である。
粘接着助層はエポキシ基を有するシランカップリング剤(A)およびカルボキシ基を有するカルボン酸変性樹脂(B)を含む樹脂組成物(P)の塗布膜を加熱処理して得た層である。なお、本明細書において「主成分」とは、構成成分の70質量%以上を占める成分をいう。従って、基材の構成成分の70質量%以上は、非結晶性樹脂からなる。
加熱処理前の樹脂組成物(P)におけるシランカップリング剤(A)のエポキシ基の物質量をa、カルボン酸変性樹脂(B)のカルボキシ基の物質量をbとしたときに、これらの比a/bを0.5〜5.0の範囲とする。係る比は0.9〜4.0の範囲が好ましく、1.0〜3.0の範囲がより好ましい。0.5〜5.0の範囲とすることにより多種類の被着体との積層を可能とし、且つ打ち抜き加工性に優れた積層体を提供できる。
粘接着助層は、シランカップリング剤(A)のエポキシ基とカルボン酸変性樹脂(B)のカルボキシ基に由来する結合を有する。係る結合は、例えばエポキシ基を構成する炭素原子に結合する基が、シランカップリング剤の残基を除いて水素原子である場合、一般式(1)で表される構造を有する。一般式(1)中の水酸基は、他のシランカップリング剤と更にカップリング反応していてもよい。エポキシ基を構成する炭素原子に結合する基は、水素原子の場合に限定されず、アルキル基等の置換基とすることができる。
Figure 0006661463
なお、樹脂組成物(P)のシランカップリング剤(A)のエポキシ基と、カルボン酸変性樹脂(B)のカルボキシ基との結合の形成を妨げない観点から、樹脂組成物(P)において、エポキシ基はシランカップリング剤(A)以外の化合物に含まれていないことが好ましい。同様に、樹脂組成物(P)において、カルボキシ基はカルボン酸変性樹脂(B)以外の化合物に含まれていないことが好ましい。但し、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、他の化合物にエポキシ基および/またはカルボキシ基が含まれていてもよい。
基材と粘接着助層の界面において、非結晶性樹脂とシランカップリング剤(A)の少なくとも一部がシリルオキシ基(−Si−O−基)を介して結合していることが好ましい。シリルオキシ基を有することで、基材と粘接着助層の接合をより強固にできる。シリルオキシ基を容易に形成するために、シランカップリング剤(A)を構成するケイ素原子に、加水分解性官能基が直結していることが好ましい。これにより、容易に非結晶性樹脂との間でシリルオキシ基を形成できる。このような加水分解性官能基としては、アルコキシ基、アセトキシ基、ハロゲン基等が例示できる。
基材および粘接着助層界面のシリルオキシ基の形成を促進させる観点から、非結晶性樹脂は、シランカップリング剤(A)のケイ素原子に結合した加水分解性官能基と反応する官能基を有することが好ましい。係る非結晶性樹脂および官能基については後述する。
粘接着助層と基材の界面における結合の一例を以下の式(2)に示す。
Figure 0006661463
但し、Rは独立に基材由来の有機基、Rは独立に水素原子、シランカップリング剤(A)由来の有機基または他のシランカップリング剤(A)(他のシランカップリング剤は、更に別のシランカップリング剤(A)と結合していてもよい)であり、Rは水素原子、ケイ素原子または有機基であり、Rはカルボン酸変性樹脂(B)の残基であり、Zはシランカップリング剤(A)由来のメチレン基またはポリメチレン基である。また、nは、0,1,2,3のいずれかである。
の有機基の好ましい例として、アルコキシ基、置換アミノ基、エステル結合等を例示できる。Rの有機基の好ましい例として、直結する酸素原子を含めてアルコキシ基、エステル結合、ヒドロキシ基等を例示できる。Zの好ましい例として、炭素数1〜10のアルキレン基、より好ましい例として炭素数2〜5のアルキレン基等を例示できる。
<シランカップリング剤(A)>
シランカップリング剤(A)は、エポキシ基を有していればよく特に限定されないが、接着性を高める観点から、ケイ素原子に直結した加水分解性官能基を有することが好ましい。加水分解性官能基としては、アルコキシ基、アセトキシ基、ハロゲン基等を例示できる。中でも、反応性の観点からアルコキシ基が好ましい。ケイ素原子に直結した加水分解性官能基としてアルコキシ基を有するシランカップリング剤(A)の一例として、下記一般式(3)で表される化合物が例示できる。
Figure 0006661463
但し、RおよびZは、上記一般式(2)で説明した通りである。なお、ROのアルコキシ基に代えて、一部がアルキル基であったり、他の有機基であったりしてもよい。置換基Xはエポキシ基を有し、下記式(4)、(5)または(6)で表される構造であることが好ましく、反応性の点から式(4)または式(5)で表される構造であることがより好ましい。
Figure 0006661463
Figure 0006661463
Figure 0006661463
シランカップリング剤(A)の例としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、反応性の観点から、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
シランカップリング剤(A)は市販品を用いてもよく、例えば、KBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−402、KBE−403(いずれも信越化学工業株式会社製、商品名);SH6040、Z−6040、Z−6042、Z−6043、Z−6044(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名);A−186、A−187、A−1871(いずれもモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名)等が挙げられる。シランカップリング剤(A)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
<カルボン酸変性樹脂(B)>
カルボン酸変性樹脂(B)は、カルボキシ基を有する樹脂またはカルボン酸を用いて変性された樹脂であれば特に限定されない。カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等を用いることができる。これらのカルボン酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、カルボン酸で変性される樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂やウレタン系樹脂等を挙げられる。これらのうち、粘接着助層の強度の点から、ウレタン系樹脂が好ましい。中でもカルボキシ基を有するウレタン樹脂が好ましく用いられる。カルボキシ基を有するウレタン樹脂は、カルボキシ基を有するポリオール(a−1)、その他のポリオール(a−2)及びポリイソシアネート(a−3)を反応させることによって製造することができる。
カルボキシ基を有するポリオール(a−1)としては、例えば、2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等が挙げられる。これらのポリオールは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも取扱い性の観点から、2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸が好ましい。
その他のポリオール(a−2)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、低分子量ポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエステルポリオールを用いることが好ましい。
その他のポリオール(a−2)の数平均分子量は、取扱い性の観点から、500〜50,000の範囲が好ましく、800〜2,000の範囲がより好ましい。
カルボキシ基を有するポリオール(a−1)の使用量としては、打ち抜き加工性をより一層向上できる観点から、前記ポリオール(a−1)と前記その他のポリオール(a−2)との合計100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲が好ましく、2.1〜6質量部の範囲がより好ましく、2.5〜5質量部の範囲が更に好ましい。
カルボン酸変性樹脂(B)の重量平均分子量は1,000〜1,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは5,000〜50,000の範囲である。重量平均分子量が1,000未満では打ち抜き加工の際にバリを生じやすくなり、1,000,000を超えると強直となり打ち抜き加工性が低下する傾向となる。
カルボン酸変性樹脂(B)の酸価は10〜55mgKOH/gの範囲が好ましく、より好ましくは12〜42mgKOH/gの範囲であり、更に好ましくは14〜35mgKOH/gの範囲である。酸価が10〜55mgKOH/gの範囲であれば、樹脂組成物(P)においてカルボン酸変性樹脂(B)の分散性が良好となり、かつ基材に対する塗布膜の密着性が向上するため好ましい。
カルボン酸変性樹脂(B)は、取扱い性および環境性の点から、水を含有する分散媒およびカルボン酸変性樹脂(B)からなる分散液として用いられることが好ましい。この際、分散媒への分散性や分散液の貯蔵安定性を向上させるため、分散液にトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン等のアミン類を加えることが好ましい。分散液が含有するアミン類の物質量は、分散液が含有する成分のカルボキシ基の物質量1に対して好ましくは0.5〜2となるよう配合する。また、係る分散液の水素イオン指数(pH)は好ましくは6〜8の範囲であり、より好ましくは6.5〜7.5の範囲である。pHが6〜8の範囲を外れるとカルボン酸変性樹脂(B)の分散性が低下し、かつ樹脂組成物(P)のゲル化が進行して好ましくない。
分散液がアルコール類を含有する場合、アルコール類の割合は、水とアルコール類の合計100質量%に対して好ましくは60質量%未満である。60質量%以上だと接着性や打ち抜き加工性が低下する傾向となる。係るアルコール類は特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。
市販の分散液としては、例えばスーパーフレックス210、スーパーフレックス460およびスーパーフレックス870(いずれも第一工業製薬株式会社製、商品名)などが挙げられる。
<基材>
本発明の基材は非結晶性樹脂を主成分とし、単層および複層のいずれであってもよい。非結晶性樹脂は特に限定されず、例えばセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。中でも、透明性に優れるメタクリル系樹脂および環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)が好ましく、メタクリル系樹脂を含むメタクリル樹脂組成物(C)がより好ましい。非結晶性樹脂は、単独または2種以上の混合物で用いられる。
基材は、シランカップリング剤(A)のケイ素原子に結合した加水分解性官能基と反応する官能基を基材表面に有することが好ましい。これにより、シランカップリング剤(A)のケイ素原子に結合した加水分解性官能基が非結晶性樹脂表面の官能基と反応して化学結合し、粘接着助層と基材の結合が強固になる。前記基材表面の官能基は、ケイ素原子に結合した加水分解性官能基と反応して化学結合を形成できれば特に限定されないが、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基などを好ましく例示できる。また、前記基材表面の官能基は非結晶性樹脂が本来有するものであってもよいし、基材にコロナ処理やプラズマ処理等を行って形成してもよい。
基材にコロナ放電処理やプラズマ処理等を施す場合、放電電圧(W)を処理速度(m/min)で割った値(放電量)が好ましくは50〜300W/(m/min)の範囲であり、より好ましくは100〜250W/(m/min)の範囲であり、更に好ましくは150〜250W/(m/min)の範囲である。放電量が50W/(m/min)未満では基材表面に官能基が十分に形成されず、300W/(m/min)を超えると基材表面が劣化して粘接着助層との密着性が低下する。
非結晶性樹脂の好適な例として挙げたメタクリル系樹脂は、(i)メタクリル酸エステルに由来する構造単位を80質量%以上含む樹脂、および(ii)メタクリル酸エステルに由来する構造単位および環構造を有する構造単位を含有する樹脂のいずれか一方であることが好ましく、後述するメタクリル系樹脂(I)、メタクリル系樹脂(II)もしくはメタクリル系樹脂(ii)の一種またはこれらの混合物からなることがより好ましい。
[メタクリル系樹脂(i)]
[メタクリル系樹脂(I)]
メタクリル系樹脂(I)は三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が45〜58%の範囲であり、好ましくは49〜55%の範囲である。シンジオタクティシティ(rr)が45%以上であるとメタクリル系樹脂のガラス転移温度が高くなる傾向となり、シンジオタクティシティ(rr)が58%以下であるとメタクリル系樹脂の成形加工性が向上する傾向となる。なお、シンジオタクティシティ(rr)はH−NMRを用いて後述する方法で測定した値である。
メタクリル系樹脂(I)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが好ましくは40,000〜180,000の範囲であり、より好ましくは50,000〜120,000の範囲である。Mwが40,000以上であると耐衝撃性や靭性が向上する傾向となり、180,000以下であると流動性および成形加工性が向上する。
メタクリル系樹脂(I)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mnが好ましくは1.7〜2.6の範囲であり、より好ましくは1.7〜2.0の範囲である。Mw/Mnが1.7〜2.6の範囲にあるメタクリル系樹脂(I)を用いると、力学強度に優れた成形体を得易くなる。MwおよびMnは、メタクリル系樹脂(I)を製造する際に用いる重合開始剤や連鎖移動剤の種類、量、添加するタイミングなどを調節することで制御できる。
メタクリル系樹脂(I)のガラス転移温度は100〜120℃の範囲が好ましく、117〜120℃の範囲がより好ましい。ガラス転移温度はメタクリル系樹脂(I)の分子量やシンジオタクティシティ(rr)などを調節することで制御できる。メタクリル系樹脂(I)のガラス転移温度が100〜120℃の範囲にあると、耐熱性が高くなり、熱収縮などの変形が起き難い基材が得られる。
メタクリル系樹脂(I)は、透明性、耐熱性、力学強度の観点から、メタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは100質量%である。係るメタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルニルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル;などを挙げることができ、これらを単独でまたは組み合わせて用いる。これらの中でも、メタクリル酸メチルを単独で用いることが最も好ましい。
メタクリル系樹脂(I)に含有し得る、メタクリル酸エステルに由来する構造単位以外の構造単位としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシルなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェニルなどのアクリル酸アリールエステル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルニルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド;メタクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;などの、一分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を一つだけ有するビニル系単量体に由来する構造単位を挙げることができる。
メタクリル系樹脂(I)の製造方法は特に限定されないが、生産性の観点からラジカル重合法が好適である。
[メタクリル系樹脂(II)]
メタクリル系樹脂(II)は三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が58〜90%の範囲であり、より好ましくは72〜85%の範囲である。係るシンジオタクティシティが58%以上だと、メタクリル樹脂(II)のガラス転移温度を高くすることができ、表面硬度が大きい基材が得られる。
メタクリル系樹脂(II)はゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mnが、好ましくは1.01〜1.80の範囲であり、より好ましくは1.06〜1.20の範囲である。Mw/Mnがこのような範囲内にあるメタクリル系樹脂(II)を用いると、力学強度に優れた基材が得られる。MwおよびMnは、メタクリル系樹脂(II)の製造時に使用する重合開始剤や連鎖移動剤などの種類、量、添加するタイミングなどを調節することで制御できる。
メタクリル系樹脂(II)は、力学強度の観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られるクロマトグラムに基いて算出されるポリスチレン換算の分子量が15,000未満である低分子量成分の割合が10質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
メタクリル系樹脂(II)は、ガラス転移温度が好ましくは124〜140℃の範囲であり、より好ましくは128〜140℃の範囲である。ガラス転移温度は分子量やシンジオタクティシティ(rr)などを調節することで制御できる。メタクリル系樹脂(II)のガラス転移温度が高くなると熱収縮などの変形が起こり難い基材が得られる。
メタクリル系樹脂(II)は、透明性、耐熱性、力学強度の観点から、メタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは100質量%である。
係るメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルニルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル;などを挙げることができ、これらを単独でまたは組み合わせて用いる。これらの中でも、透明性、耐熱性、力学強度の観点から、メタクリル酸メチルを単独で用いることが好ましい。
メタクリル系樹脂(II)に含有し得るメタクリル酸エステルに由来する構造単位以外の構造単位としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシルなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェニルなどのアクリル酸アリールエステル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルニルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド;メタクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;などの、一分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を一つだけ有するビニル系単量体に由来する構造単位を挙げることができる。
メタクリル系樹脂(II)は制御ラジカル重合、アニオン重合、グループトランスファー重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などなど公知の制御重合法で得られる。これらの中でも、耐熱性が高く、異物が少なく、メタクリル酸エステルの二量体や三量体が少なく、メタクリル系樹脂(II)を高い生産性で得られるという観点から、アニオン重合が好ましい。
アニオン重合としては、例えば有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法(特公平7−25859号参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い、有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法(特開平11−335432号参照)、有機希土類金属錯体を重合開始剤としてアニオン重合する方法(特開平6−93060号参照)などを挙げることができる。
アニオン重合では、生産性が高く、耐熱性が高く、異物が少なく、メタクリル酸エステルの二量体や三量体が少ないという観点から、重合開始剤としてn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等のアルキルリチウムを用いることが好ましい。また、生産性の観点から有機アルミニウム化合物を共存させることが好ましい。
[メタクリル系樹脂(ii)]
メタクリル系樹脂(ii)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位および環構造を有する構造単位を主鎖に有する樹脂である。環構造を有する構造単位としては、例えばラクトン環単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位が挙げられる。ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位とはそれぞれラクトン環、無水グルタル酸、グルタルイミドに類似する構造単位である。メタクリル酸メチルに由来する構造単位を以下において単にメタクリル酸メチル単位(M)と称する場合がある。
(ラクトン環単位)
ラクトン環単位の構造は特に限定されず、公知のものを1種または2種以上用いることができるが、製造容易性、製造収率および構造安定性等の点から、係るラクトン環単位の環員数は好ましくは4〜8の範囲であり、より好ましくは5〜6の範囲であり、更に好ましくは6である。
6員環のラクトン環単位としては例えば下記式(7)で表される構造および特開2004−168882号公報に記載の構造等が挙げられる。中でも、原料入手性、コストおよび耐熱性等の点から、下記式(7)で表される構造が好ましく、下記式(8)で表される構造がより好ましい。
Figure 0006661463
式(7)中R11〜R13はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基であり、好ましくは水素原子または炭素数1〜5の範囲の有機残基である。
係る有機残基は炭素数が1〜20の範囲内であれば特に限定されず、例えば、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、アセチル基、およびシアノ基等が挙げられる。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
また、本明細書において「Ac」はアセチル基を示す。
Figure 0006661463
式中のMeはメチル基である。
ラクトン環単位を有するメタクリル系樹脂の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができるが、原料入手性、コストおよび耐熱性等の点から、分子鎖中にヒドロキシ基およびエステル基を有するメタクリル系樹脂を加熱処理する方法が好ましい。
(無水グルタル酸単位)
無水グルタル酸単位の構造は特に限定されず、公知のものを1種または2種以上用いることができるが、原料入手性、コストおよび耐熱性等の点から、下記式(9)で表される構造が好ましく、下記式(10)で表される構造がより好ましい。
Figure 0006661463
式(9)中のR31およびR32はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基であり、好ましくは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。
係る有機残基は炭素数が1〜20の範囲内であれば特に限定されず、例えば、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、アセチル基、およびシアノ基等が挙げられる。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
Figure 0006661463
無水グルタル酸単位を有するメタクリル系樹脂の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができるが、原料入手性、コストおよび耐熱性等の点から、不飽和カルボン酸単量体と不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の共重合体を、脱アルコールおよび/または脱水する方法が好ましい。
(グルタルイミド単位)
グルタルイミド単位の構造は特に限定されず、公知のものを1種または2種以上用いることができるが、原料入手性、コストおよび耐熱性等の点から、下記式(11)で表される構造が好ましく、下記式(12)で表される構造がより好ましい。
Figure 0006661463
式(11)中R41およびR42はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、R43は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。原料入手性、コストおよび耐熱性等の点から、R41およびR42はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であることが好ましく、R41がメチル基であり且つR42が水素原子であることがより好ましい。また、同じ理由でR43は水素原子、メチル基、n−ブチル基、シクロヘキシル基またはベンジル基であることが好ましく、メチル基、n−ブチル基、またはシクロヘキシル基であることがより好ましい。
Figure 0006661463
グルタルイミド単位を有するメタクリル系樹脂の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
<その他の配合>
非結晶性樹脂には他の非結晶性樹脂を配合できる。他の非結晶性樹脂の例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上の組み合わせでもよい。
非結晶性樹脂はゴム成分、フィラー、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、蛍光体、充填剤などの添加剤を含有してもよい。
ゴム成分は特に限定されず、例えばジエン系ゴム、非ジエン系ゴム、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。中でも熱可塑性エラストマー、特にコアシェル型グラフト共重合体、並びにソフトブロックおよびハードブロックからなるブロック共重合体が他の物性を損なわずに耐衝撃性や靭性を賦与できる点で好ましい。
非結晶性樹脂におけるゴム成分の含有量は、耐熱性と靭性を両立させる観点から1〜30質量%の範囲が好ましく、5〜20質量%の範囲がより好ましい。ゴム成分が30質量%を超えると耐熱性が低下し、1質量%より少ないと靭性が低下する傾向となる。
フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。非結晶性樹脂におけるフィラーの含有量は好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である。
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものであり、例えばリン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも着色による光学特性の低下を防止する観点から、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤の併用がより好ましい。リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤を併用する場合、リン系酸化防止剤の使用量:ヒンダードフェノール系酸化防止剤の使用量は質量比で1:5〜2:1の範囲が好ましく、1:2〜1:1の範囲がより好ましい。
熱劣化防止剤は、非結晶性樹脂が実質上無酸素の状態で高熱になったときに生じるポリマーラジカルを捕捉することで非結晶性樹脂の熱劣化を防止できるものであり、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学株式会社製;商品名スミライザーGM)、2,4−ジ−tert−アミル−6−(3’,5’−ジ−tert−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学株式会社製;商品名スミライザーGS)などが好ましい。
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物であり、例えばベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でもベンゾトリアゾール類、トリアジン類または波長380〜450nmの範囲におけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾトリアゾール類は、紫外線による非結晶性樹脂の着色などの光学特性低下を抑制する効果が高く、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(BASFジャパン株式会社製;商品名TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(BASFジャパン株式会社製;商品名TINUVIN234)などが好ましい。
トリアジン類は、波長380nm付近の波長の光に対して吸光度が高く、例えば2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(ADEKA株式会社製;商品名LA−F70)、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチルオキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(BASFジャパン株式会社製;商品名TINUVIN460またはTINUVIN479)などが挙げられる。
波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1,200dm3mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤は、得られる積層体の黄色味を抑制でき、例えば2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド(クラリアントジャパン株式会社製;商品名サンデュボアVSU)などが挙げられる。
更に380nm〜400nmの波長の光を特に吸収したい場合は、例えばWO2011−089794号公報、WO2012−124395号公報、特開2012−012476号公報、特開2013−023461号公報、特開2013−112790号公報、特開2013−194037号公報、特開2014−062223号公報、特開2014−088542号公報、特開2014−088543号公報等に記載の特定構造の複素複合環を含有する金属錯体を紫外線吸収剤として用いることが好ましい。特定構造の複素複合環としては、例えば2,2’−イミノビスベンゾチアゾール、2−(2−ベンゾチアゾリルアミノ)ベンゾオキサゾール、2−(2−ベンゾチアゾリルアミノ)ベンゾイミダゾール、(2−ベンゾチアゾリル)(2−ベンゾイミダゾリル)メタン、ビス(2−ベンゾオキサゾリル)メタン、ビス(2−ベンゾチアゾリル)メタン、ビス[2−(N−置換)ベンゾイミダゾリル]メタン等およびそれらの誘導体が挙げられる。このような金属錯体の中心金属としては、例えば銅、ニッケル、コバルト、亜鉛等が好ましく用いられる。
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有する化合物であり、例えば2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類が挙げられる。
滑剤としては、例えばステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、硬化油などが挙げられる。
離型剤としては、例えば1−ヘキサデカノール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリルなどのグリセリンと高級脂肪酸からなるグリセリン脂肪酸エステル;などが挙げられ、高級アルコール類およびグリセリン脂肪酸モノエステルを併用することが好ましい。高級アルコール類およびグリセリン脂肪酸モノエステルを併用する場合、その割合は特に限定されないが、離型性とブリードアウトの観点から、高級アルコール類の使用量:グリセリン脂肪酸モノエステルの使用量は質量比で2.5:1〜3.5:1の範囲が好ましく、2.8:1〜3.2:1の範囲がより好ましい。
高分子加工助剤は、単一組成および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよいが、内層に極限粘度が5未満である重合体からなる層を有し、外層に極限粘度が5〜10dL/gである重合体からなる層を有する2層構造の粒子が好ましい。また、高分子加工助剤の極限粘度は3〜6dL/gの範囲であることが好ましい。極限粘度が小さいと基材の成形加工性の改善効果が低くなる傾向となり、極限粘度が大きいと非結晶性樹脂の成形加工性が低下する傾向となる。市販品としては、例えばパラロイド125またはパラロイド125P(いずれもダウ・ケミカル株式会社製、商品名);メタブレンP−530AまたはP−550A(いずれも三菱レイヨン株式会社製、商品名);カネエースPA20またはPA30(いずれも株式会社カネカ製、商品名)などが挙げられる。
有機色素としては紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物が好ましく用いられる。
光拡散剤や艶消し剤としては、例えばガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
蛍光体としては、例えば蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などが挙げられる。
ゴム成分を除く添加剤の配合量は、基材の物性を損なわないよう、好ましくは7質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。
<基材の製造方法>
基材は溶液キャスト法、溶融流延法、押出成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法などによって製造することができる。これらのうち、透明性、靭性、取扱い性、表面硬度、剛性のバランスに優れた基材を得るため、押出成形法が好ましい。押出機から吐出される非結晶性樹脂の温度は好ましくは160〜270℃の範囲であり、より好ましくは220〜260℃の範囲である。
押出成形法は、良好な表面平滑性および鏡面光沢を有し低ヘーズの基材を得る観点から、非結晶性樹脂を溶融状態でフィルターに通して異物を除去し、Tダイから押出し、次いでそれを二つ以上の鏡面ロールもしくは鏡面ベルトまたはそれらの組み合わせで挟持して成形する方法であることがより好ましい。
鏡面ロールは金属剛体ロールまたは外筒に鏡面の金属薄膜を備えた金属弾性ロールであることが好ましい。一対の鏡面ロールまたは鏡面ベルトの間の線圧は好ましくは10〜100N/mmの範囲であり、より好ましくは20〜60N/mmの範囲であり、更に好ましくは25〜45N/mmの範囲である。10N/mm未満では基材の鏡面光沢が低下する傾向となり、100N/mmを超えると基材に残留する歪が大きく、基材が加熱された場合に収縮しやすくなる。
一対の鏡面ロールまたは鏡面ベルトの表面温度は、共に130℃以下であり且つ少なくとも一方の表面温度が60℃以上であることが好ましい。このような表面温度に設定すると、表面平滑性に優れかつ低ヘーズの基材を製造できる。基材のヘーズは好ましくは1.0%以下であり、より好ましくは0.5%以下であり、更に好ましくは0.3%以下である。
基材の厚さは、取扱い性や水蒸気等に対するガスバリア性の観点から、10〜300μmの範囲であることが好ましく、10〜80μmの範囲であることがより好ましく、20〜60μmの範囲であることがさらに好ましい。
基材は延伸処理が施されたものであってもよい。延伸処理によって靭性が高まり、割れ難い基材を得られる。延伸方法は特に限定されず、例えば同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法などが挙げられる。これらの中でも、均一に延伸でき高い強度の基材が得られるという観点から、二軸延伸法が好ましく、同時二軸延伸法がより好ましい。
延伸時の基材の温度は非結晶性樹脂のガラス転移温度より10℃高い温度から非結晶性樹脂のガラス転移温度より40℃高い温度までの範囲であることが好ましい。また、延伸は100〜5000%/分の範囲で行われることが好ましい。延伸後、熱固定を行うことで熱収縮の少ない基材を得られる。延伸後の基材の厚さは、取扱い性や水蒸気等に対するガスバリア性および靭性の観点から、10〜200μmの範囲であることが好ましい。
二軸延伸は、未延伸の基材を予熱する予熱工程;上記基材を加熱しながら二軸延伸する延伸工程;二軸延伸後の上記基材を降温する降温工程;および二軸延伸された上記基材を弛緩する弛緩工程;をこの順番に有することが好ましい。予熱工程では、未延伸の基材が非極性樹脂の貯蔵弾性率曲線におけるゴム状平坦領域の温度になるまで予熱する。延伸工程では、予熱された基材をゴム状平坦領域の温度で二軸延伸する。
<樹脂組成物(P)の調製>
シランカップリング剤(A)は水溶液として用いることが好ましく、水溶液におけるシランカップリング剤(A)/水の重量比は好ましくは0.5/99.5〜5/95の範囲であり、より好ましくは1/99〜3/97の範囲であり、更に好ましくは1.5/98.5〜2/98の範囲である。シランカップリング剤(A)が0.5よりも少ないと粘接着性が低下する傾向となり、5よりも多いと取扱い性が低下する傾向となる。
係る水溶液はアルコール類を含んでもよいが、この場合、水とアルコールの合計を100質量%とした場合に、アルコール類の割合は好ましくは60質量%未満である。60質量%以上だと粘接着性や打ち抜き加工性が低下する傾向となる。使用可能なアルコール類は特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。
係る水溶液は、10〜40℃の温度条件で1〜5時間撹拌させた後、カルボン酸変性樹脂(B)の分散液と混合することが好ましい。
樹脂組成物(P)は、20℃で撹拌して作製することが好ましい。また、樹脂組成物(P)における固形分濃度は好ましくは1〜30質量%の範囲であり、より好ましくは2〜20質量%の範囲であり、更に好ましくは3〜10質量%の範囲である。1質量%未満では粘接着助層が薄くなり、30質量%を超えると粘接着助層の表面性が低下する傾向となる。なお、固形分は、樹脂組成物(P)中の水および加水分解で発生したアルコール類以外の成分を意味し、シランカップリング剤(A)、カルボン酸変性樹脂(B)および添加剤等の合計を意味する。
<粘接着助層の形成>
樹脂組成物(P)の基材への塗布方法は限定されないが、例えばバーコート、グラビア、ダイコート、スプレーコートなど公知の方法が例示できる。塗布速度は15〜150m/minの範囲が好ましく、50〜100m/minの範囲がより好ましい。
基材に塗布された樹脂組成物(P)は、シランカップリング剤(A)のエポキシ基とカルボン酸変性樹脂(B)のカルボキシ基を反応させるため、および樹脂組成物(P)を乾燥させるために加熱処理する。加熱処理の温度は、基材と粘接着助層との接着性の点から、80〜200℃の範囲であることが好ましく、80〜100℃の範囲であることがより好ましい。
樹脂組成物(P)の塗布、乾燥および加熱処理は、それぞれ別に行うほか、二軸延伸をする場合にその生産工程に組み込むこともできる。この場合、樹脂組成物(P)の塗布は二軸延伸の予熱工程よりも前に行い、乾燥は予熱工程〜延伸工程で行い、加熱処理は延伸工程〜弛緩工程で行うことが好ましい。
粘接着助層の厚さは特に限定されず、積層させる被着体の表面性や目的に応じ適宜決められるが、取扱い性の点から好ましくは30〜10,000nmの範囲であり、より好ましくは50〜5,000nmの範囲であり、更に好ましくは100〜1,000nmの範囲である。
本発明の積層体の水蒸気透過率は、70℃、90%RHの条件下で好ましくは150〜400g/m・dayの範囲であり、より好ましくは200〜350g/m・dayの範囲である。150g/m・day未満ではポリビニルアルコール系粘接着剤やエマルジョン系粘接着剤などの水系粘接着剤と貼り合わせた場合に粘接着剤が乾燥しにくく好ましくない。一方、400g/m・dayを超えると被着体の保護性能の点から好ましくない。なお、ここでいう「粘接着剤」とは、粘着性または/および接着性を有する、粘着剤、接着剤を包含する広義の接着剤を意味する。
<成形体>
本発明の成形体は、本発明の積層体が被着体に接合されてなる。被着体としては、例えば合成樹脂、木材、金属、セラミックスが挙げられる。合成樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂が挙げられる。これらの中でも、透明性および粘接着性の点から、メタクリル系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂およびセルロース系樹脂が好ましい。
<粘接着剤>
積層体を被着体に接着させる方法は、粘接着剤を用いる方法、即ち、粘接着剤層を介して接合する方法がある。また、積層体と被着体を重ね合せた後に、これらを加熱融着して接合する方法などの公知の方法が例示できる。粘接着性の点から、粘接着剤を用いる方法が好ましく用いられる。
被着体との接合に用いられる粘接着剤は、例えばエマルジョン系粘接着剤や溶剤系粘接着剤、無溶剤系粘接着剤等を挙げられる。エマルジョン系粘接着剤または溶剤系粘接着剤は有機化合物または水を溶媒とする合成樹脂の溶液、分散液または乳化液などが挙げられる。合成樹脂は、熱可塑性樹脂または/および熱硬化性樹脂が好適である。無溶剤系粘接着剤としては、例えば熱硬化性粘接着剤や活性エネルギー線硬化性粘接着剤を挙げられる。環境負荷の点から水系溶媒を用いる粘接着剤または無溶剤系粘接着剤が好ましい。被着体の種類に応じて適宜、接合方法を選定する。
水系溶媒を用いた粘接着剤の好ましい例としてPVA系樹脂を含む粘接着剤について説明する。
PVA系樹脂は、例えば、ポリ酢酸ビニルのけん化物およびその誘導体;酢酸ビニルと他の単量体との共重合体のけん化物;PVAをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化またはリン酸エステル化した変性PVA等を挙げられる。上記他の単量体は、例えば、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸およびそのエステル;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体である。本発明の成形体において、非結晶性樹脂がメタクリル系樹脂であり、且つ被着体がポリビニルアルコール系樹脂である場合、被着体と積層体との密着性が向上し、偏光板の耐久性が向上する点から、PVA系樹脂は、アセトアセチル基含有PVAを含むことが好ましい。
係るPVA系樹脂の平均重合度は、粘接着剤組成物の粘接着性の観点から、100〜5,000程度が好ましく、1,000〜4,000がより好ましい。PVA系樹脂の平均けん化度は、粘接着剤組成物の粘接着性の観点から、85〜100モル%程度が好ましく、90〜100モル%がより好ましい。
アセトアセチル基含有PVAは、例えば、PVAとジケテンとを任意の方法で反応させて得られる。具体例は、PVAを酢酸などの溶媒中に分散させた分散体に、ジケテンを添加する方法;PVAをジメチルホルムアミドまたはジオキサンなどの溶媒に溶解させた溶液に、ジケテンを添加する方法;PVAにジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法である。
アセトアセチル基含有PVAにおけるアセトアセチル基変性度は、典型的には、0.1モル%以上であり、好ましくは0.1〜40モル%、より好ましくは1〜20モル%、更に好ましくは2〜7モル%である。0.1モル%未満の変性度では、変性による効果(例えば、耐水性の向上)が不十分となることがある。変性度が40モル%を超えると、それ以上、耐水性が向上しない。PVAのアセトアセチル基変性度は、例えばNMRにより測定できる
粘接着剤組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤は限定されないが、PVA系樹脂に対する反応性を示す官能基を少なくとも2つ有する化合物である。架橋剤は、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど、アルキレン基と2つのアミノ基とを有するアルキレンジアミン;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物、などのイソシアネート;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどのエポキシ;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドなどのモノアルデヒド;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒドなどのジアルデヒド;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロールメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物などのアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケルなど、一価から三価の金属の塩および酸化物である。中でも、架橋剤は、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂およびジアルデヒドが好ましい。アミノ−ホルムアルデヒド樹脂は、メチロール基を有することが好ましく、メチロールメラミンが好適である。ジアルデヒドは、グリオキザールが好適である。
粘接着剤組成物における架橋剤の配合量は、PVA系樹脂の種類に応じて、適宜、設定できる。典型的には、PVA系樹脂100重量部に対して10〜60重量部程度であり、20〜50重量部が好ましい。この範囲において、良好な接着性が得られる。架橋剤の配合量が過度に多くなると、架橋剤を介した反応が短時間で進行するため、粘接着剤組成物がゲル化する傾向がある。このため、粘接着剤組成物としての可使時間(ポットライフ)が極端に短くなり、工業的な使用が困難になることがある
無溶剤系粘接着剤の好ましい例として活性エネルギー線硬化性粘接着剤について説明する。
活性エネルギー線硬化性粘接着剤の主成分は活性エネルギー線硬化性化合物である。係る化合物としては、例えば光ラジカル重合性化合物及び光カチオン重合性化合物が挙げられる。光ラジカル重合性化合物は、活性エネルギー線によりラジカル重合を起こして硬化する。係る化合物の例は、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基等の官能基を有する化合物である。光カチオン重合性化合物は、活性エネルギー線により光カチオン反応を起こして硬化する。係る化合物の例は、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、ビニルエーテル基、エピスルフィド基、エチレンイミン基等の官能基を有する化合物である。
光ラジカル重合性化合物として、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアリールアクリレート;2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸等のアクリル変性カルボン酸;トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート等のポリエチレングリコールジアクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のポリプロピレングリコールジアクリレート;その他、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジアクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレート;エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ネオペンチルグリコールのアクリル酸安息香酸混合エステル等その他のアクリレート;これらのメタクリレート体;等が挙げられる。
光カチオン重合性化合物として、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂に分類される化合物;脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、異節環状型エポキシ樹脂、多官能性エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のアルコール型エポキシ樹脂に分類される化合物;臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン化エポキシ樹脂;ゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エポキシ基含有ポリエステル樹脂、エポキシ基含有ポリウレタン樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂等のエポキシ基を有する化合物;フェノキシメチルオキセタン、3,3−ビス(メトキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン等のオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。
光ラジカル重合性化合物であるとともに光カチオン重合性化合物である化合物はラジカル・カチオン両性モノマーともいう。係る両性モノマーとして例えば(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルアクリレート等が挙げられる。これらの活性エネルギー線硬化性化合物は、それぞれ単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
活性エネルギー線硬化性粘接着剤に重合開始剤を配合することで、該粘接着剤の硬化反応効率を高めることができる。重合開始剤は、使用する活性エネルギー線の種類に合わせて選択される。重合開始剤としては、例えばアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、ベンゾインアルキルエーテル系等の光ラジカル重合開始剤;芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等の光カチオン重合開始剤;等が挙げられる。これらは一種単独で若しくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−tert−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
ベンゾインアルキルエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
光カチオン重合開始剤は、光カチオン重合性化合物の光カチオン重合を効果的に開始及び進行させることができる。このため、光カチオン重合開始剤は、波長300nm以上の光で活性化されることが好ましい。光カチオン重合開始剤は、イオン性の光酸発生剤(Photo Acid Generator)でもよく、非イオン性の光酸発生剤でもよい。
イオン性の光酸発生剤は、特に限定されるものではない。係る光酸発生剤として例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩類;鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体等の有機金属錯体類;テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の嵩高い対アニオンを有する剤が挙げられる。これらのイオン性の剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
上記イオン性の光酸発生剤としては、例えば、旭電化工業社製の商品名「アデカオプトマーSP150」、「アデカオプトマーSP170」等の「アデカオプトマー」シリーズや、ゼネラルエレクトロニクス社の商品名「UVE−1014」、サートマー社製の商品名「CD−1012」、ローディア社製の商品名「Photoinitiator 2074」等を用いてもよい。
非イオン性の光酸発生剤は、特に限定されるものではない。例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドホスホナート等が挙げられる。これらの非イオン性の光酸発生剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤の好ましい配合量は、活性エネルギー線硬化性化合物100質量部に対して、重合開始剤0.5〜20質量部である。係る配合量は好ましくは1質量部以上、また好ましくは10質量部以下である。活性エネルギー線硬化性化合物がエポキシ樹脂である場合、係る配合量が0.5質量部以上であることで粘接着剤を十分に硬化させることができる。このため、積層体の機械強度や、積層体と被着体との間の粘接着性を高めることができる。また、重合開始剤がイオン性である場合、係る配合量が20質量部以下であることで、硬化後の粘接着剤において、イオン性物質の含有量が増加し、粘接着剤の耐久性の低下が抑制できる。
被着体は、フィルムやシート等の機能層、平面または曲面を有する任意の構造の立体物である。機能層としては、例えばハードコート、防眩層、反射防止層及びこれらを組み合わせた層が挙げられる。機能層の製造方法は限定されないが、例えば、熱または電離放射線により硬化させて層を形成させる方法、金属または金属酸化物などを蒸着、スパッタリングさせる方法などの公知の方法により製造できる。
<偏光子保護フィルム、偏光板>
本発明の成形体の好適な例として、偏光板がある。この場合の積層体は、偏光子保護フィルムであり、偏光子が被着体である。被着体の好適な例として、偏光子を具備する前面板や位相差フィルムなど表示装置関連部材も好適である。更に、積層体は、例えば加飾フィルム、金属調加飾フィルム、ハードコートフィルムまたは防眩フィルムなどにも好適である。本発明の成形体の好適な例として、サッシ、玄関ドア、キッチンドア、車両の内装および外装パネル、太陽光パネルが挙げられる。
本発明の積層体によれば、易接着層として機能する粘接着助層において、カルボキシ基とエポキシ基により架橋構造を構築することにより、積層体の耐久性を高め、被着体と接合する際の優れた粘接着性と、優れた打ち抜き加工性を実現できる積層体を提供できる。また、基材層と粘接着助層をシリルオキシ基により結合せしめることにより、粘接着助層と基材の接着力を効果的に高め、積層体の耐久性を更に高めることができる。
更に、粘接着助層に架橋構造を形成させ、且つ基材との結合を形成することで、粘接着助層に対する被着体とのアンカー効果低下を抑制できる。その結果、積層体と被着体との接着力を高め、成形体の打ち抜き加工性を向上させることができる。すなわち、本発明の積層体を用いることにより、耐久性、打ち抜き加工性および接着性を両立した積層体を提供できる。
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、物性値等の測定は以下の方法によって実施した。
実施例で使用した化合物を以下に示す。
紫外線吸収剤〔U−1〕:株式会社ADEKA製;商品名LA−31
紫外線吸収剤〔U−2〕:株式会社ADEKA製;商品名LA−F70
ポリカーボネート樹脂:住化スタイロンポリカーボネート株式会社製;商品名カリバー301−40(温度300℃、荷重1.2kgにおけるMVRが40cm/10分)
フェノキシ樹脂:新日鉄住金化学株式会社製;商品名YP−50S
高分子加工助剤:ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製;パラロイドK125P
シランカップリング剤〔A−1〕:東レ・ダウコーニング株式会社製;商品名Z−6040(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
シランカップリング剤〔A−2〕:東レ・ダウコーニング株式会社製;商品名Z−6044(3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン)
シランカップリング剤〔A−3〕:東レ・ダウコーニング株式会社製;商品名Z−6043(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)
シランカップリング剤〔A−4〕:東レ・ダウコーニング株式会社製;商品名Z−6030(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)
カルボン酸変性樹脂〔B−1〕:第一工業製薬株式会社製;商品名スーパーフレックス210(不揮発分35%水分散液)
カルボン酸変性樹脂〔B−2〕:第一工業製薬株式会社製;商品名スーパーフレックス460(不揮発分38%水分散液)
カルボン酸変性樹脂〔B−3〕:第一工業製薬株式会社製;商品名スーパーフレックス870(不揮発分30%水分散液)
(重合転化率)
ガスクロマトグラフ(株式会社島津製作所社製;GC−14A)にカラム(GL ScIences Inc.製;InertCap 1(df=0.4μm、0.25mmI.D.×60m))を繋ぎ、インジェクション温度を180℃に、検出器温度を180℃に、カラム温度を60℃(5分間保持)から昇温速度10℃/分で200℃まで昇温して10分間保持する条件で測定を行い、この結果に基づいて重合転化率を算出した。
(GPCによるクロマトグラム測定およびクロマトグラムに基づく分子量分布などの決定)
試験対象の樹脂材料4mgを含有する5mLのテトラヒドロフラン溶液を0.1μmのフィルターでろ過して試験対象溶液を調製した。
検出部が示差屈折率検出器であるGPC装置(東ソー株式会社製;HLC−8320)にカラム(東ソー株式会社製;TSKgel SuperMultIpore HZM−M)2本とカラム(東ソー株式会社製;SuperHZ4000)1本を直列に繋ぎ、溶離液としてテトラヒドロフランを流量0.35mL/分で流し、カラム温度を40℃に設定し、試験対象溶液20μLを注入して、クロマトグラムを測定した。
検量線は標準ポリスチレン10点のデータを用いて作成した。分子量400〜5,000,000の範囲の標準ポリスチレンをゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定し、リテンションタイムと分子量との関係を示す検量線を作成した。クロマトグラムの高分子量側の傾きがゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとした。クロマトグラムが複数のピークを示す場合は、最も高分子量側のピークの傾きがゼロからプラスに変化する点と、最も低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとした。
分子量は重量平均分子量とし、重量平均分子量/数平均分子量を分子量分布とした。
(三連子表示のシンジオタクティシティ(rr))
樹脂試料についてH−NMR測定を実施した。TMSを0ppmとした際の0.60〜0.95ppmの領域の面積(X)および0.60〜1.35ppmの領域の面積(Y)を計測し、式:(X/Y)×100にて算出した値を三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(%)とした。
装置:核磁気共鳴装置(Bruker社製 ULTRA SHIELD 400 PLUS)
溶媒 :重クロロホルム
測定核種:
測定温度:20℃
積算回数:64回
(ガラス転移温度(Tg))
JIS K7121に準拠して、試験対象の樹脂材料を、示差走査熱量計(株式会社島津製作所製;DSC−50)を用いて、150℃まで10℃/分で昇温し(1回目)、次いで20℃まで冷却し、その後、20℃から200℃まで10℃/分で昇温させて(2回目)得たDSC曲線において、2回目の昇温結果から求められる中間点ガラス転移温度をガラス転移温度として定義した。
(グラフト共重合体の平均粒子径)
樹脂材料を水で500倍に希釈し、ガラスのプレパラート上にスポイトで滴下した後、水を蒸発させた。係るプレパラートに白金パラジウム蒸着した後、反射型電子顕微鏡(日本電子株式会社製;JSM−7600F)を用いて観察し、グラフト共重合体10個の粒子径の平均を平均粒子径とした。
(ヘーズ)
JIS K7136に準拠して、ヘーズ・透過率計(株式会社村上色彩研究所製;HM−150)を用いてヘーズを測定した。
(全光線透過率)
JIS K7361−1に準拠して、ヘーズ・透過率計(株式会社村上色彩研究所製;HM−150)を用いて全光線透過率を測定した。
(シランカップリング剤(A)の単位エポキシ基物質量)
JIS K7236に準拠してエポキシ当量EE(g/当量)を算出し、次式によりシランカップリング剤(A)1gに含まれるエポキシ基の物質量(単位エポキシ基物質量)を求めた。
単位エポキシ基物質量(mmol/g)=1000/EE
(カルボン酸変性樹脂(B)の単位カルボキシ基物質量)
カルボン酸変性樹脂(B)の分散液を乾燥させてキャップ剤であるアミンを除去し、得られた試料の1.0gをメチルエチルケトン10gに溶解させ、トルエンとメタノールの混合溶媒(トルエン:メタノール=7:3)40mLに加えた後、0.1mol/L規定水酸化カリウムのメタノール溶液およびフェノールフタレインを用いて中和滴定を行い、酸価(mgKOH/g)を求めた後、下記数式(a)でカルボン酸変性樹脂(B)1gに含まれるカルボキシ基の物質量(単位カルボキシ基物質量)を求めた。
単位カルボキシ基物質量=酸価/56.1
但し、単位カルボキシ基物質量の単位はmmol/gであり、酸化の単位はmgKOH/gである。
(樹脂組成物(P)におけるエポキシ基とカルボキシ基の物質量の比)
樹脂組成物(P)におけるエポキシ基とカルボキシ基の物質量比は、樹脂組成物(P)中のシランカップリング剤(A)およびカルボン酸変性樹脂(B)の配合量に、それぞれ単位エポキシ基物質量(mmol/g)または単位カルボキシ基物質量(mmol/g)を乗じて、エポキシ基物質量(a(mmol))およびカルボキシ基物質量(b(mmol))を算出し、aとbの比a/bを求めた。
(粘接着助層成膜性)
基材に樹脂組成物(P)を塗布した際の成膜性を以下の通り評価した。
:樹脂組成物(P)が均一に広がり、塗布膜が形成された。
B:樹脂組成物(P)が広がらず、塗布膜が形成できなかった。
(打ち抜き加工性)
SD型レバー式試料裁断器(株式会社ダンベル製;SDL−200)に両歯40mm×40mmのトムソン刃(株式会社ダンベル製;SSK−1000−D)を取り付け、100mm×100mmの成形体で打ち抜き試験を行って、破断面の観察を行い、以下の通り評価した。
:良好(欠け、割れおよび剥がれがない)。
A:欠け、割れまたは剥がれが極わずかに発生。
B:明らかな欠け、割れまたは剥がれが発生。
(粘接着力)
成形体を150mm×25mmの大きさに切り出し、成形体中の粘接着剤部分にわずかに切れ込みを入れ、成形体中の基材をステンレス製の試験板に両面テープで貼り付けた。小型卓上試験機(株式会社島津製作所製;EZ−SX)に係る試験板を固定し、切れ込みを入れた成形体の被着体側をフィルムチャックで挟み、ロードセル100N、引張速度300mm/minの条件で成形体の積層体と被着体を剥離して、積層体と被着体の間の90°剥離試験を行った。測定開始後、最初の25mmが剥離するまで測定値は考慮せず、その後更に25mmが剥離する間の応力を平均し、粘接着力(単位は、gf/25mm)とした。
なお、粘接着力が強く、積層体または被着体が破壊され、正確な応力を測定できなかった場合は「材破」と記載した。この場合の接着力は1,000gf/25mm以上だった。
(耐久性)
成形体を100mm×100mmの大きさに切り出し、小型環境試験機(エスペック株式会社製;SH−241)を用いて85℃、85%RHの環境下に500時間放置した後取り出して外観観察を行い、以下の通り評価した。
:剥離等の発生もなく、良好。
B:端部に剥離が発生し、不良。
(製造例1)(メタクリル系樹脂〔M−1〕の製造)
攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製したメタクリル酸メチル100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0054質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.203質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。係る原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55%になったところで、平均滞留時間150分となる流量で原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で反応液を槽型反応器から抜き出して、温度を140℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は48%であった。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、Mwが101,000、分子量分布が1.87、シンジオタクティシティ(rr)が52%、ガラス転移温度が120℃、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル系樹脂〔M−1〕のペレットを得た。
(製造例2)(メタクリル系樹脂〔M−2〕の製造)
攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに精製したメタクリル酸メチル100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0074質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.28質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。係る原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55%になったところで、平均滞留時間150分となる流量、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で反応液を槽型反応器から抜き出して、温度を140℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は52%であった。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、Mwが82,000、分子量分布が1.92、シンジオタクティシティ(rr)が51%、ガラス転移温度が120℃、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル系樹脂〔M−2〕のペレットを得た。
(製造例3)(メタクリル系樹脂〔M−3〕の製造)
先ず、撹拌翼と三方コックが取り付けられた5Lのガラス製反応容器内を窒素で置換した。これに、20℃にて、トルエン1600g、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン2.49g(10.8mmol)、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液53.5g(30.9mmol)、および濃度1.3Mのsec−ブチルリチウムの溶液(溶媒:シクロヘキサン95%、n−ヘキサン5%)6.17g(10.3mmol)を仕込んだ。撹拌しながら、20℃にて、これに蒸留精製したメタクリル酸メチル550gを30分かけて滴下した。滴下終了後、20℃で90分間撹拌した。この時点におけるメタクリル酸メチルの重合転化率は100%であった。
得られた溶液にトルエン1,500gを加えて希釈した。次いで、希釈液をメタノール100kgに注ぎ入れ、沈澱物を得た。得られた沈殿物を80℃、140Paにて24時間乾燥して、Mwが81,400、分子量分布が1.08、シンジオタクティシティ(rr)が73%、ガラス転移温度が131℃、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル系樹脂〔M−3’〕を得た。
次に、攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製したメタクリル酸メチル100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0052質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.225質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。係る原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55%になったところで、平均滞留時間150分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、温度を140℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は55%であった。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、Mwが103,600、分子量分布が1.81、シンジオタクティシティ(rr)が52%、ガラス転移温度が120℃、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル系樹脂〔M−3’’〕のペレットを得た。
メタクリル系樹脂〔M−3’〕57質量部およびメタクリル系樹脂〔M−3’’〕43質量部を混合し、二軸押出機(株式会社テクノベル製;KZW20TW−45MG−NH−600)を用いて250℃で混練押出してメタクリル系樹脂[M−3]を製造した。
(製造例4)(メタクリル系樹脂〔M−4〕の製造)
ニーディングブロックおよびリバースフライトを有するスクリュー並びにノズルを備える二軸押出機(株式会社テクノベル製;KZW20TW−45MG−NH−600)を、スクリュー回転数120rpmおよび温度250℃に設定し、係る二軸押出機にホッパーからメタクリル系樹脂〔M−1〕を2kg/hrで供給し、樹脂100質量部に対して2質量部のモノメチルアミン(三菱ガス化学株式会社製)をノズルから注入した。反応後の副生成物および過剰のモノメチルアミンを、20Torrに減圧されたベント口から排出した。押出機出口に設けられたダイスからストランド状に吐出された樹脂を水槽で冷却し、次いでペレタイザーでペレット化することにより、メタクリル系樹脂〔M−4’〕を得た。
次いで、係る二軸押出機と同型の二軸押出機を、スクリュー回転数100rpmおよび温度230℃に設定し、ホッパーからメタクリル系樹脂〔M−4’〕を1kg/hrで供給し、樹脂100質量部に対して0.8質量部の炭酸ジメチルと0.2質量部のトリエチルアミンの混合液をノズルから注入した。反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルを、20Torrに減圧されたベント口から排出した。押出機出口に設けられたダイスからストランド状に吐出された樹脂を水槽で冷却し、次いでペレタイザーでペレット化し、メタクリル系樹脂〔M−4’〕より酸価が小さいメタクリル系樹脂〔M−4”〕を得た。
更に、係る二軸押出機と同型の二軸押出機を、スクリュー回転数100rpmおよび温度230℃に設定し、メタクリル系樹脂〔M−4”〕を1kg/hrで供給し、ベント口の圧力を20Torrに設定して未反応の副原料などを含む揮発分を除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランド状に吐出された樹脂を水槽で冷却し、次いでペレタイザーでペレット化することにより、メタクリル系樹脂〔M−4〕を得た。
メタクリル系樹脂〔M−4〕は、イミド化率が3.6mol%、Mwが82,000、Mw/Mnが1.95、ガラス転移温度が124℃、酸価が0.27mmol/gであった。
(製造例5)(メタクリル系樹脂〔M−5〕の製造)
WO2014/021264号公報の実施例に記載の共重合体(A−1)の製造方法と同じ方法でメタクリル樹脂〔M−5〕を得た。
13C−NMR分析により、メタクリル系樹脂〔M−5〕は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を26質量%、環状構造を有する無水マレイン酸に由来する構造単位を18質量%、スチレンに由来する構造単位を56質量%含有し、Mwが169,000、分子量分布が2.47、Tgが137℃であった。
製造例1〜5により得られたメタクリル系樹脂のメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量、重量平均分子量、分子量分布、シンジオタクティシティ、ガラス転移温度を表1に示す。
Figure 0006661463
(製造例6)(コアシェル型グラフト共重合体〔G−1〕の製造)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内にイオン交換水1,050質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム1.0質量部および炭酸ナトリウム0.7質量部を仕込み、反応器内を窒素ガスで十分に置換した。次いで内温を80℃にした。そこに過硫酸カリウム0.25質量部を投入し、5分間攪拌した。これにメタクリル酸メチル95.4質量%、アクリル酸メチル4.4質量%およびメタクリル酸アリル0.2質量%からなる単量体混合物445質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、更に30分間重合反応を行った。
次いで、同反応器内に過硫酸カリウム0.32質量部を投入して5分間攪拌した。その後、アクリル酸ブチル80.5質量%、スチレン17.5質量%およびメタクリル酸アリル2質量%からなる単量体混合物115質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、更に30分間重合反応を行った。
次に、同反応器内に過硫酸カリウム0.14質量部を投入して5分間攪拌した。その後、メタクリル酸メチル95.2質量%、アクリル酸メチル4.4質量%およびn−オクチルメルカプタン0.4質量%からなる単量体混合物140質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、更に60分間重合反応を行った。以上の操作によって、架橋ゴム粒子〔G−1’〕を含むラテックスを得た。架橋ゴム粒子〔G−1’〕を含むラテックスを凍結して凝固させ、次いでこれを水洗・乾燥してコアシェル型グラフト共重合体〔G−1〕を得た。グラフト共重合体〔G−1〕の平均粒子径は0.09μmであり、アクリル酸エステルの含有量は17%であった。
(製造例7)(ジブロック共重合体〔D−1〕の製造)
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、20℃にて乾燥トルエン735kgと、1,2−ジメトキシエタン36.75kgと、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20molを含有するトルエン溶液39.4kgとを入れた。これにsec−ブチルリチウム1.17molおよびメタクリル酸メチル39.0kgを加え、20℃で1時間反応させてメタクリル酸メチル重合体〔d11〕を得た。反応液に含まれるメタクリル酸メチル重合体〔d11〕の重量平均分子量Mwd11は45,800であった。
次いで、反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル29.0kgとアクリル酸ベンジル10.0kgとの混合液を0.5時間かけて滴下して、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔d11〕とアクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕とからなるジブロック共重合体〔D−1〕を得た。反応液に含まれるジブロック共重合体〔D−1〕は、重量平均分子量MwD−1が92,000、重量平均分子量MwD−1/数平均分子量MnD−1が1.06であったので、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕の重量平均分子量を46,200と決定した。アクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕に含まれるアクリル酸ベンジルの割合は25.6質量%であった。
続いて、反応液にメタノール4kgを添加して重合を停止させた。その後、反応液を大量のメタノールに注ぎジブロック共重合体〔D−1〕を析出させ、該析出物を濾し取り、80℃、1torr(約133Pa)で12時間乾燥させた。アクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕の質量に対するメタクリル酸エステル重合体ブロック〔d11〕の質量の比は50/50であった。
(製造例8)(トリブロック共重合体〔D−2〕の製造)
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、20℃にて乾燥トルエン2,003kgと、1,2−ジメトキシエタン100.15kgと、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20molを含有するトルエン溶液51.5kgとを入れた。これにsec−ブチルリチウム1.13mol、メタクリル酸メチル34.3kgを加え、20℃で1時間反応させてメタクリル酸メチル重合体ブロック〔d11〕を得た。反応液に含まれるメタクリル酸メチル重合体ブロック〔d11〕の重量平均分子量Mwd11は6,000であった。
次いで、反応液を−30℃にし、アクリル酸n−ブチル266.3kgを0.5時間かけて滴下して、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔d11〕とアクリル酸n−ブチルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕とからなるジブロック共重合体を得た。反応液に含まれるジブロック重合体の重量平均分子量は53,000であったので、アクリル酸n−ブチルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕の重量平均分子量を47,000と決定した。アクリル酸エステル重合体〔d2〕に含まれるアクリル酸ベンジルの割合は0質量%であった。
続いて、メタクリル酸メチル297.3kgを添加して、反応液を20℃に戻し、8時間攪拌することによって、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔d11〕、アクリル酸n−ブチルからなるアクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕およびメタクリル酸メチル重合体ブロック〔d12〕からなるトリブロック共重合体〔D−2〕を得た。
その後、反応液にメタノール4kgを添加して重合を停止させ、大量のメタノールに注ぎトリブロック共重合体〔D−2〕を析出させ、該析出物を濾し取り、80℃、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥させた。トリブロック共重合体〔D−2〕は重量平均分子量MwD−2が105,000、MwD−2/MnD−2が1.08であったので、メタクリル酸メチル重合体ブロック〔d12〕の重量平均分子量を52,000と決定した。アクリル酸エステル重合体ブロック〔d2〕の質量に対するメタクリル酸エステル重合体ブロック〔d11〕および〔d12〕の合計質量の比は45/55であった。
製造例7、8により得られたブロック共重合体の各ブロックの平均分子量等を表2に示す。
Figure 0006661463
(製造例9)(メタクリル樹脂組成物〔C−1〕および基材〔F−1〕の製造)
製造例1で得たメタクリル系樹脂〔M−1〕76質量部、紫外線吸収剤〔U−1〕1.8質量部、製造例6で得たコアシェル型グラフト共重合体〔G−1〕24質量部を混合し、250℃に設定した二軸押出機(株式会社テクノベル製;KZW20TW−45MG−NH−600)で混練押出ししてメタクリル樹脂組成物〔C−1〕を製造した。
メタクリル樹脂組成物〔C−1〕を220℃で熱プレス成形して50mm×50mm×3.2mmの板状の基材を成形し、全光線透過率、ヘーズおよびガラス転移温度を測定した。メタクリル樹脂組成物〔C−1〕の物性を表3に示す。
メタクリル樹脂組成物〔C−1〕を80℃で12時間乾燥させた後、260℃にした20mmφ単軸押出機を用いて、メタクリル樹脂組成物〔C−1〕を150mm幅のTダイから押出し、表面温度を85℃にした金属剛体ロールおよび金属弾性ロールで挟み込み、幅110mm、厚さ60μmの基材〔F−1〕を得た。
(製造例10)(メタクリル樹脂組成物〔C−2〕および基材〔F−2〕の製造)
製造例9において、表3に示す配合とする以外は製造例9と同様にして、メタクリル樹脂組成物〔C−2〕および基材〔F−2〕を得た。
(製造例11)(基材〔F−3〕の製造)
製造例9において、表3に示す配合とする以外は製造例9と同様にして、厚さ160μmの基材〔F−3’〕を得た。
基材〔F−3’〕を、二辺が押出方向と平行となるように100mm×100mmの四角形に切り出し、パンタグラフ式二軸延伸試験機(東洋精機株式会社製)により、ガラス転移温度より10℃高い延伸温度、一方向あたり150%/分の延伸速度、一方向あたり2倍の延伸倍率という延伸条件で、押出方向と平行な方向および押出方向と垂直な方向にこの順番で逐次二軸延伸し(面積比で4倍)、10秒間を置いて、次いで20℃の環境に取り出すことで急冷して、延伸された厚さ40μmの基材〔F−3〕を得た。得られた基材〔F−3〕の全光線透過率、波長380nmの光透過率、ヘーズおよび延伸性の測定結果を表3に示す。
(製造例12〜16)
製造例11において、表3に示す配合とする以外は製造例11と同じ方法でメタクリル樹脂組成物〔C−4〕〜〔C−8〕および基材〔F−4〕〜〔F−8〕を得た。
製造例9〜16の配合組成、配合量、未延伸フィルム評価等の結果を表3に示す。
Figure 0006661463
(製造例17)(粘接着剤の調製)
アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度:1,200、ケン化度:98.5モル%,アセトアセチル基変性度:5モル%)100質量部および4,6−ジアミノ−2−(ヒドロキシメチルアミノ)ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン20質量部を30℃の温度条件下で純水に溶解し、濃度0.5%の粘接着剤を得た。
(実施例1)
(樹脂組成物(P−1)の調製)
フラスコにシランカップリング剤〔A−1〕0.62質量部およびイオン交換水72質量部を入れ、20℃にて4時間攪拌した。ついで、カルボン酸変性樹脂〔B−1〕を加え、20℃で1時間攪拌し、樹脂組成物(P−1)を得た。
(粘接着助層の形成)
製造例9で得た基材〔F−1〕の表面に、コロナ表面処理装置(春日電機社製、セラミック電極、放電距離1mm)を用いて77W/(m/min)の放電量でコロナ放電処理を施し、係る表面に樹脂組成物(P−1)を液厚み18.3μmで塗布した。ついで、樹脂組成物(P−1)を塗布した基材を90℃に設定した熱風オーブンで30秒間加熱し、オーブンから取りだして20℃で15分間放置して積層体〔J−1〕を得た。評価結果を表4に示す。
(成形体の形成)
被着体としてポリビニルアルコールフィルムにヨウ素をドープさせた厚さ60μmの延伸フィルムを用い、その片面に、製造例17で得た粘接着剤を介し、粘接着助層が被着体側に対向するよう積層体を貼り合わせた。被着体のもう一方の面にも製造例17で得た粘接着剤を塗布し、けん化処理したトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製;商品名富士タックUV80)を貼り合わせ、70℃で10分間乾燥し、成形体を得た。得られた成形体は偏光板として使用できた。得られた成形体の打ち抜き加工性および耐久性の評価結果を表4に示す。
(実施例2〜5、比較例1〜8)
表4、5に示す組成の樹脂組成物(P−2)〜(P−14)を調製し、粘接着助層を形成した以外は実施例1と同様にして、積層体〔J−2〕〜〔J−5〕および〔J−13〕〜〔J−20〕並びに成形体を作製した。これらの評価結果を表4、5に示す。
(実施例6〜12)
表4に示す基材を用い、粘接着助層の形成において熱風オーブンの温度を130℃に設定した以外は実施例1と同様にして、積層体〔J−6〕〜〔J−12〕および成形体を作製した。これらの評価結果を表4に示す。
Figure 0006661463
Figure 0006661463
表4、5より、本発明の実施例で調製した樹脂組成物(P)は成膜性に優れ、本発明の積層体は接着性に優れ、また係る積層体を具備する成形体は耐久性および打ち抜き加工性に優れることを実証できた。これに対し、比較例3は樹脂組成物(P)が広がらず、塗布膜を形成できなかった。その他の比較例1、2、4〜8は、成膜性は良好だったが、接着力が実施例に比して劣る結果となった。打ち抜き加工性については、比較例1、2は良好であったが、比較例4〜8は明らかな欠け、割れ、剥がれの少なくとも一つが発生していた。

Claims (14)

  1. 非結晶性樹脂を主成分とする基材と、
    前記基材の少なくとも一方の面に積層された粘接着助層とを備え、
    前記粘接着助層は、エポキシ基を有するシランカップリング剤(A)およびカルボキシ基を有するカルボン酸変性樹脂(B)を含む樹脂組成物(P)の塗布膜を加熱処理して得た層であり、
    前記加熱処理前の前記樹脂組成物(P)における前記エポキシ基の物質量aと前記カルボキシ基の物質量bの比a/bが0.5〜5.0の範囲であり、
    前記粘接着助層が、前記エポキシ基と前記カルボキシ基に由来する結合を有する積層体。
  2. 前記シランカップリング剤(A)が加水分解性官能基を有する、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記加水分解性官能基がアルコキシ基である、請求項2に記載の積層体。
  4. 前記粘接着助層と前記基材の界面において、前記非結晶性樹脂と前記シランカップリング剤(A)の少なくとも一部がシリルオキシ基を介して結合されている、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
  5. 前記非結晶性樹脂が、メタクリル系樹脂を含むメタクリル樹脂組成物(C)である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
  6. 前記メタクリル系樹脂が、(i)メタクリル酸エステルに由来する構造単位を80質量%以上有する樹脂、および(ii)メタクリル酸エステルに由来する構造単位および環構造を有する構造単位を含有する樹脂のいずれか一方を満たす、請求項5に記載の積層体。
  7. 前記メタクリル系樹脂のシンジオタクティシティ(rr)が58%以上である、請求項5または6に記載の積層体。
  8. 前記基材の厚さが10〜80μmの範囲である、請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
  9. 被着体に、請求項1〜8のいずれかに記載の積層体が接合されてなる成形体。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載の積層体を具備する偏光子保護フィルム。
  11. 偏光子および請求項1〜8のいずれかに記載の積層体を具備する偏光板。
  12. 前記偏光子と前記積層体の前記粘接着助層とがポリビニルアルコール系粘接着剤層を介して貼り合されている、請求項11に記載の偏光板。
  13. エポキシ基を有するシランカップリング剤(A)およびカルボキシ基を有するカルボン酸変性樹脂(B)を含む樹脂組成物(P)を調製する工程と、
    非結晶性樹脂を主成分とする基材の少なくとも一方の面に、前記樹脂組成物(P)を塗布して塗布膜を得る工程と、
    前記塗布膜を加熱する加熱処理工程とを備え、
    前記樹脂組成物(P)は、前記加熱処理工程の前に、前記エポキシ基の物質量aと前記カルボキシ基の物質量bとの比a/bを0.5〜5.0とし、
    前記加熱処理工程により、前記エポキシ基と前記カルボキシ基を付加反応させて化学的結合を形成する積層体の製造方法。
  14. 前記粘接着助層と前記基材の界面において、前記非結晶性樹脂と前記シランカップリング剤(A)の少なくとも一部にシリルオキシ基を形成させる、請求項13に記載の積層体の製造方法。
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