JP2018052441A - 車両の乗員保護装置 - Google Patents
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そして、たとえばこのように車両の限界性能の近くで走行が制御されている状況下で、実際には衝突を回避できない場合、運転手の操舵の下で衝突を回避していた場合と比べて、現在の自動車とは異なる状況下で衝突が生じてしまう可能性がある。
たとえば自動運転で急減速している状況下では、シートに着座した乗員の上体は仮に衝突の際に三点式シートベルトにより支持され得たとしても、シートの着座位置より前へ移動している可能性がある。そして、このように衝突前にシートの着座位置より前へ上体が移動していた状況下で衝突が生じると、乗員の上体は、シートの着座位置から大きく前へ移動してしまうことになる。また、衝突によりフロントエアバッグが展開し始めたとしても、衝突前から上体がシートの着座位置より前へ移動していることに起因して、衝突の衝撃により更に前へ倒れてゆく上体を好適に支えることができない可能性がある。たとえば通常の着座位置に上体が位置していることを前提として展開するフロントエアバッグの場合、フロントエアバッグが適切に展開し終わる前に上体がフロントエアバッグにめり込んでしまう。
この他にもたとえば、衝突以外のことに気を取られていて衝突に備えていない乗員にあっては、衝突時に、その上体が通常想定される移動範囲を超えて大きく前へ移動してしまう可能性がある。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の乗員保護装置10を適用可能な自動車1の説明図である。
図1には、上から見た自動車1が図示されている。自動車1は、車両の一例である。
図1の自動車1は、車体2を有する。車体2の乗員室3内には、乗員が着座する複数のシート4が配置される。右前のシート4の前には、ハンドル5、図示外のアクセルペダル、ブレーキペダルが配置される。シート4に着座した乗員がハンドル5などを操作することにより、自動車1は前進、停止、後退、右折、左折をする。
また、自動運転では、乗員などの保護のために併せて、たとえば、乗員室3に前向きに配置された前撮像センサ31、乗員室3に後向きに配置された後撮像センサ31、車体2の左右両側に配置された右撮像センサ31および左撮像センサ31を用い、これらのセンサの撮像画像に基づいて、走行する自動車1の周囲環境を観測し、他の自動車1などが接近する場合には衝突を回避する乗員保護制御を実施することが重要である。
しかしながら、たとえば自動運転中の自動車1では、運転手といった乗員の意思と無関係に自動車1の走行状態が制御される。この場合、たとえば衝突を自動的に回避する場合などにおいて、運転手が自動車1を操作する場合と比べて、車両の限界性能の近くで走行するように制御が実施される可能性がある。たとえば衝突直前に、衝突を回避するために、限界性能ぎりぎりの操舵制御を実施して、衝突を回避しようとする可能性がある。
たとえば図2(B)に示すように、自動運転で急減速している状況下では、シート4に着座した乗員の上体の肩部は、シート4の着座位置より前へ大きく移動してしまう可能性がある。そして、通常想定される範囲より前へ上体の肩部が移動している状態でフロントエアバッグ15が展開されると、展開し切っていないフロントエアバッグ15に上体が当たってしまう。この場合、フロントエアバッグ15により、上体を好適に支持できなくなる可能性がある。
この他にもたとえば図2(C)に示すように、上体の一方の肩が衝突前に三点式のシートベルト18により支持されていたとしても、シートベルト18により支えられていない他方の肩(図では車幅方向中央側の内側の肩)が、大きく前へ移動してしまう可能性がある。この場合でも、展開し切っていないフロントエアバッグ15に上体の肩部が当たってしまい、フロントエアバッグ15により上体を好適に支持できなくなる可能性がある。
このように衝突前にシート4の着座位置より前へ上体が移動していた状況下で衝突が生じると、衝突によりフロントエアバッグ15が展開し始めたとしても、衝突前から上体の肩部がシート4の着座位置より前へ移動していることに起因して、衝突の衝撃により更に前へ倒れてゆく上体を好適に支えることができない可能性がある。通常の着座位置に上体の肩部が位置していることを前提として展開するフロントエアバッグ15の場合、フロントエアバッグ15が適切に展開し終わる前に上体がフロントエアバッグ15にめり込んでしまう。
なお、この他にもたとえば、衝突以外のことに気を取られていて衝突に備えていない乗員にあっては、衝突時に、その上体が通常想定される移動範囲を超えて大きく前へ移動してしまう可能性もある。
このように自動車1といった車両では、たとえば自動運転中において現在の自動車1とは異なる乗員保護機能を持たせる必要性があると予想される。
操舵アクチュエータ33は、ハンドル5の替わりに、自動車1を操舵する。ブレーキアクチュエータ34は、ブレーキペダルの替わりに、自動車1を制動する。動力源35は、たとえばガソリンエンジン、電気モータである。自動運転制御部32は、たとえば目的地までの走行経路に従って、操舵アクチュエータ33、ブレーキアクチュエータ34、および動力源35を制御する。また、車外撮像センサ31の画像に基づいて接近物を特定し、接近物との衝突が予想される場合には、それを回避するように操舵アクチュエータ33、ブレーキアクチュエータ34、および動力源35を制御する。
また、乗員保護制御部13は、車外撮像センサ31の画像に基づいて、接近物の有無を判断し、さらに接近物との衝突可能性を判断する。
また、乗員保護制御部13は、Gセンサ12の検出加速度に基づいて、自動車1が急減速しているか否かを判断する。
また、乗員保護制御部13は、乗員位置センサ11の検出値、または自動運転制御部32からの自動運転制御状況の情報に基づいて、乗員の上体が着座位置から前へ大きく移動しているか否かを判断、又は推定する。なお、乗員保護制御部13は、図2(A)の通常想定される範囲を超えているか否かに基づいて、この移動を判断すればよい。
そして、自動走行制御中に衝突する可能性がある場合、または急減速中に衝突する可能性がある場合、さらに衝突前に上体が前へ大きく移動している時には、乗員保護制御部13は、図4(A)に示すように、フロントエアバッグ15を展開させる。
この場合、フロントエアバッグ15は、上体に当たる接触面についての車幅方向中央側に、肩受凹部15Dを形成する。
また、残りの接触面には、肩受凹部15Dから連続する傾斜面15Sが形成される。傾斜面15Sは、車幅方向の外方へ向けて、他方側より一方側が後となるように傾斜している。傾斜面Sは、着座位置より前へ移動している上体の両肩部を結ぶ線と略平行な面となる。
ここでは、三点式のシートベルト18により上体の一方の肩が支持されているので、衝突前の上体は、図5(A)に示すように、車幅方向中央側の他方の肩が前となる傾いた姿勢で、着座位置より大きく前へ移動している。
また、フロントエアバッグ15は、車幅方向中央側に肩受凹部15Dを形成するように展開する。
そして、実際に車体2の前部に前後方向に沿って接近物が衝突すると、展開したフロントエアバッグ15は、図5(B)に示すように、衝突前にシート4の着座位置より前へ移動していた上体の肩部を受けて支える。着座位置より前へ移動していた上体の他方の肩は、更に前へ移動することにより、肩受凹部15Dに入り込む。上体は、他方の肩において支持され、衝撃が吸収される。
ここでは、衝突前の上体は、図6(A)に示すように、車幅方向中央側の他方の肩が前となる傾いた姿勢で、着座位置より大きく前へ移動している。
そして、実際に車体2の前部に斜め方向から接近物が衝突すると、展開したフロントエアバッグ15は、図6(B)に示すように、衝突前にシート4の着座位置より前へ移動していた上体を受けて支える。着座位置より前へ移動していた上体は、更に斜め前へ移動することにより、両肩部と略平行な面である傾斜面15Sに全体的に当たる。上体は、傾斜面15Sにより全体的に支持され、衝撃が吸収される。
また、このように肩受凹部15Dから車幅方向の一方へ向けて他方側より一方側が後となる傾斜面15Sを形成することにより、他方の肩を前にして斜めの姿勢で前へ移動する上体全体を、フロントエアバッグ15の傾斜面15Sにより受けて支えることができる。他方の肩を前にして斜めの姿勢で前へ移動する上体全体を安定した状態に支え、その状態で衝撃を吸収することができる。
また、肩受凹部15Dが他方の肩を受けつつ、衝撃入力方向が左右いずれかの斜め前方の場合、他方側斜め前方からの衝撃入力であれば、前へ移動する場合と同じく、乗員上体の中でも強度のある肩部を肩受凹部15Dが受けて支えることで傷害値を低減させることができる。
これに対し、一方側斜め前方からの衝撃入力の場合、入力が乗員上体前方側からになるが、この場合は傾斜面15Sが、乗員上体前面を全体的に支えることになり、傷害値を低減させることができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る車両の乗員保護装置10について説明する。以下、同様の構成については第1実施形態と同一の符号を使用し、主に第1実施形態との相違点について説明する。
第一袋体41は、車幅方向外側において展開される袋体である。展開した第一袋体41は、車幅方向内側より外側が後方へ突出するように傾斜した後面(接触面)を形成する。
第二袋体42は、第一袋体41についての車幅方向中央側に並べて設けられる袋体である。展開した第二袋体42は、第一袋体41についての車幅方向中央側の端部より後方へ突出する。また、展開した第二袋体42の後端面は、肩受凹部15Dにより凹曲面形状に形成される。
このように本実施形態のフロントエアバッグ15は、第一袋体41および第二袋体42による2つの気室を有する。
そして、第一袋体41および第二袋体42は、車幅方向に並べて設けられる。
次に、本発明の第3実施形態に係る車両の乗員保護装置10について説明する。以下、同様の構成については第2実施形態と同一の符号を使用し、主に第2実施形態との相違点について説明する。
また、第一袋体41および第二袋体42は、各々と外気とを連通するベントホール51と、第一袋体41と第二袋体42とを連通するベントホール51とを有する。
ベントホール51は、所定の設定圧力が作用するまでは閉じており、該設定圧力以上の圧力が作用し始めると開く。
本実施形態において、第二袋体42と外気とを連通するベントホール51は、第1袋体と外気とを連通するベントホール51より高い設定圧力とされる。
これにより、肩受凹部15Dが形成される第二袋体42は、その残りの部分である第一袋体41より硬くなり、肩受凹部15Dに集中的に荷重が作用した状態でも肩受凹部15Dの位置や形状を維持でき、衝撃を吸収することができる。
これにより、第二袋体42が第一袋体41より高い圧力で展開した状態になった後、第二袋体42の高い内圧を維持しながら、第二袋体42より大容量の第一袋体41を効率よく展開させることができる。
次に、本発明の第4実施形態に係る車両の乗員保護装置10について説明する。以下、同様の構成については第1実施形態と同一の符号を使用し、主に第1実施形態との相違点について説明する。
テザー62は、肩受凹部15Dを形成するために、単一袋体61についての車幅方向中央側に寄せた位置で、単一袋体61の後面と前面との間に渡される。
これにより、テザー62は、展開したフロントエアバッグ15の他方側の側面に沿って延在する。よって、テザー62とフロントエアバッグ15の他方側の側面とによる構造体を形成でき、肩受凹部15Dに集中的に荷重が作用した状態でも肩受凹部15Dの位置や形状を維持でき、衝撃を吸収することができる。
2…車体
3…乗員室
4…シート
5…ハンドル
10…乗員保護装置
11…乗員位置センサ
12…Gセンサ
13…乗員保護制御部
14…フロントエアバッグ装置
15…フロントエアバッグ
15D…肩受凹部
15S…傾斜面
16…インフレータ
17…三点式シートベルト装置
18…シートベルト
30…自動運転制御装置
31…撮像センサ
32…自動運転制御部
33…操舵アクチュエータ
34…ブレーキアクチュエータ
35…動力源
41…第一袋体
42…第二袋体
51…ベントホール
61…単一袋体
62…テザー
Claims (9)
- 車両内で乗員が着座するシートと、
前記シートに着座した乗員の上体の前に展開するフロントエアバッグを有するエアバッグ装置と、
を有し、
前記フロントエアバッグは、
前記シートの着座位置より前へ移動していた上体を受けるように展開し、
展開した状態で、着座位置より前へ移動していた上体の肩が当接する部位において前記肩が入り込むことができる肩受凹部を形成する、
車両の乗員保護装置。 - 前記シートに着座した乗員についての前記車両の車幅方向の一方の肩を抑えて上体を着座位置に拘束するように作動する三点式シートベルト装置を有し、
展開した前記フロントエアバッグは、
前記肩受凹部が、前記車幅方向の他方側であって乗員の他方の肩の前に位置し、
前記肩受凹部から前記車幅方向の一方へ向けて、他方側より一方側が後となる傾斜面を形成する、
請求項1記載の車両の乗員保護装置。 - 前記傾斜面は、着座位置より前へ移動していた上体の両肩部を結ぶ線と略平行な面に形成される、
請求項2記載の車両の乗員保護装置。 - 前記フロントエアバッグは、
前記肩受凹部が形成される部分がその他の部分より硬くなるように展開して、前記着座位置より前へ移動していた上体の肩を支持する、
請求項1から3のいずれか一項記載の車両の乗員保護装置。 - 前記フロントエアバッグは、
前記車両の車幅方向において仕切られた複数の気室を有し、
前記肩受凹部が形成される気室または前記肩受凹部より他方側の気室は、残りの気室より高い圧力で展開する、
請求項4記載の車両の乗員保護装置。 - 前記フロントエアバッグは、
前記車両の車幅方向において仕切られた複数の気室と、
複数の前記気室の各々に設けられた複数のベントホールと、を有し、
前記肩受凹部が形成される気室または前記肩受凹部より他方側の気室のベントホールは、残りの気室のベントホールより高い圧力において開き始める、
請求項4記載の車両の乗員保護装置。 - 前記フロントエアバッグは、
前記肩受凹部を形成するように設けられたテザーを有し、
前記テザーが、前記フロントエアバッグの他方側の側面に沿って延在し、
前記車両の前から後へ沿って展開する、
請求項4記載の車両の乗員保護装置。 - 前記車両の走行状態に応じて前記エアバッグ装置の作動を制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記車両についての運転支援を含む自動走行制御中の衝突または急減速中の衝突の可能性がある場合には、前記肩受凹部を形成するように前記フロントエアバッグを展開させ、
それ以外の場合には、前記肩受凹部が形成されないように前記フロントエアバッグを展開させて前記着座位置にいた上体を全体的に支持する、
請求項1から7のいずれか一項記載の車両の乗員保護装置。 - 前記シートに着座した乗員の上体の位置を検出する検出部を有し、
前記制御部は、
前記車両についての運転支援を含む自動走行制御中または急減速中における前記検出部の検出に基づいて上体の位置を判断し、
前記上体が前記着座位置より前へ移動していた場合には、前記肩受凹部を形成するように前記フロントエアバッグを展開させ、
前記上体が前記着座位置にある場合には、前記肩受凹部を形成しないように前記フロントエアバッグを展開させる、
請求項8記載の車両の乗員保護装置。
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