JP2018031094A - 繊維構造体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】吸放湿性と初期吸湿速度に優れ、好ましくは湿潤時剛性にも優れる繊維構造体およびその製造方法を提供する。【解決手段】温度20℃、湿度40%RHにおける吸湿率R1(%)と、温度20℃、湿度90%RHにおける吸湿率R2(%)との差(R2−R1)が40%以上でありかつ蒸留水の吸収倍率が10倍以上である吸湿性ポリマーと、ハロゲン化金属塩を繊維構造体に固着させた後、必要に応じて湿度交換用吸着体とする。【選択図】図1

Description

本発明は、吸放湿性と初期吸湿速度に優れ、好ましくは湿潤時剛性にも優れる繊維構造体およびその製造方法に関する。
従来、空気中の湿気を除去する手段として、吸湿量が多く、また吸湿速度も速い塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、五酸化リン等の吸湿剤が用いられてきた。
しかしながら、これらの吸湿剤は、潮解性があるため、吸湿後液状化して他を汚染し、金属などを腐食する、吸湿性が強すぎて放湿性に劣り、繰り返し使用できないといった欠点があった。また、シリカゲル、ゼオライト、硫酸ナトリウム、活性アルミナ、活性炭等の多孔質吸湿剤は、吸湿性に併せ、放湿性を有することにより繰り返し使用ができ解決されているが、再生に高温を要する、吸放湿の繰返しにより破砕・粉末化が起こり易いといった問題があった。
これら無機系に対し、近年、有機系吸放湿性材料、高分子型収着剤を用いることが提案されており、低温乾燥性や繰返し使用時の破砕による能力低下において改善が見られる(例えば特許文献1)。
しかしながら、かかる有機系吸放湿性材料では初期吸湿速度が遅いという問題や湿潤時の剛性が十分ではないという問題があった。
特開2008−195078号公報
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、吸放湿性と初期吸湿速度に優れ、好ましくは湿潤時剛性にも優れる繊維構造体およびその製造方法を提供することにある。
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、繊維構造体に吸湿性ポリマーとハロゲン化金属塩とを含ませることにより、吸放湿性と初期吸湿速度に優れた繊維構造体が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば「温度20℃、湿度40%RHにおける吸湿率R1(%)と、温度20℃、湿度90%RHにおける吸湿率R2(%)との差(R2−R1)が40%以上でありかつ蒸留水の吸収倍率が10倍以上である吸湿性ポリマーと、ハロゲン化金属塩とを含むことを特徴とする繊維構造体。」が提供される。
その際、前記吸湿性ポリマーが架橋ポリアクリル酸金属塩であることが好ましい。また、前記ハロゲン化金属塩が、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および塩化マグネシウムからなる群より選択されるいずれかであることが好ましい。また、前記吸湿性ポリマーとハロゲン化金属塩との重量比率が10:90〜90:10の範囲内であることが好ましい。また、繊維構造体が繊維シートであることが好ましい。その際、目付けが40〜1000g/mの範囲内であることが好ましい。また、前記吸湿性ポリマーとハロゲン化金属塩との合計付着量が5〜100g/mの範囲内であることが好ましい。また、繊維構造体が無機繊維を含むことが好ましい。その際、前記無機繊維が、ガラス繊維または炭素繊維またはアルミナ繊維または金属繊維であることが好ましい。また、前記無機繊維において、単繊維径が30μm以下であることが好ましい。また、繊維構造体がバインダー繊維を含むことが好ましい。
本発明の繊維構造体において、30℃、90%RH下における初期吸湿量が13g/m・1min以上であることが好ましい。また、30℃90%RH 10分放置後の湿潤強度が150mgf(1.47mN)以上であることが好ましい。また、繊維構造体が湿度交換用であることが好ましい。
また、本発明によれば、繊維構造体に、温度20℃、湿度40%RHにおける吸湿率R1(%)と、温度20℃、湿度90%RHにおける吸湿率R2(%)との差(R2−R1)が40%以上でありかつ蒸留水の吸収倍率が10倍以上100倍以下である吸湿性ポリマーを付与し、次いでハロゲン化金属塩を付与することを特徴とする繊維構造体の製造方法が提供される。
本発明によれば、吸放湿性と初期吸湿速度に優れ、好ましくは湿潤時剛性にも優れる繊維構造体およびその製造方法が得られる。
波状の形状を有する繊維シートと平らな箇所を有する繊維シートとを接合させる工程を模式的に示す図である。 波状の形状を有する繊維シートと平らな箇所を有する繊維シートを接合してなる繊維シートの複合体の縦断面を模式的示す図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の繊維構造体は、吸湿性ポリマーとハロゲン化金属塩とを含む。
ハロゲン金属塩は極めて潮解性が高く、吸湿性及び水分の保持性に特に優れており、また吸湿性ポリマーも、保有する極性基が周囲の水分子を水素結合により引き寄せ吸収するため、両者を使用すると繊維構造体に吸収される水分の量がより一層増大する。
また、その相乗効果は吸収される水分量だけでなく、ハロゲン金属塩の潮解液の保持でも有効である。すなわち、ハロゲン化金属塩は空気中の水分と衝突すると水分の吸収と共にその固体の一部が水分に溶解し、潮解液となって流出する。この潮解液の流出は、例えば湿度交換用に用いた際の除湿能力の低下と周辺金属等の腐食を促すが、吸湿性ポリマーを併用することで流出を防止することができる。さらには、その相乗効果は湿潤時の繊維構造体の剛性、強度を保持する点でも有用である。
前記吸湿性ポリマーにおいて、20℃、湿度40%RHにおける吸湿率R1(%)と、温度20℃、湿度90%RHにおける吸湿率R2(%)との差(R2−R1)が40%以上(好ましくは70〜200%)であることが肝要である。吸湿率の差(R2−R1)が40%未満の場合、有効吸湿量が小さくなり所定の除湿を行うために必要な所用量が多くなり好ましくない。
なお、上記「吸湿率」とは、各条件下で24時間放置して吸湿させた時の重量とその絶乾重量との差を求め、絶乾重量で除したときの値を百分率(%表示)で表示したものである。また、「RH」とは「相対湿度」の意味である。
また、前記吸湿性ポリマーにおいて、蒸留水の吸収倍率が10倍以上(より好ましくは10〜100倍、特に好ましくは40〜90倍)であることが肝要である。蒸留水の吸水倍率が10倍未満の場合、ハロゲン金属塩の吸湿に伴う潮解液を系外への流失を防ぎ素早く吸収するための能力が不足し、仮にそれを補うために吸湿性ポリマーを大量に使用した場合、水分が移動するための繊維構造体内の空隙が減り、ハロゲン金属塩が保有する吸湿速度が低下するほか繊維構造体の剛性が低下するおそれがある。また吸水倍率100倍より大きい場合、吸湿性ポリマーの吸水膨潤による体積変化が大きくなり、吸湿速度の低下を伴うおそれがある。
前記吸湿性ポリマーの例としては、架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩系繊維や樹脂などがあげられる。架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩系繊維の例としては、特開昭63−159405号公報にカルボン酸基を持つビニルモノマーとカルボン酸基と反応してエステル架橋結合を形成し得るヒドロキシル基を持つビニルモノマーの共重合体からなり、カルボン酸基の一部がナトリウム塩を形成しているポリマーからなる繊維が例示される。本発明の繊維構造体に含まれる吸湿性ポリマーは、極性基及び架橋構造を有するものが好ましいまた、繊維を微粉砕した粒状物や繊維形成する前段階の樹脂を利用し、他の繊維にコーティングなどした状態で使用してもよい。コーティング使用の例として、エチレン系不飽和カルボキシルモノマーと共重合性エチレン系不飽和モノマーのコポリマーを含む水溶液を作成し、そこに繊維構造体(シート)を含浸させた後、乾燥後、加熱架橋反応を行うなどしたもので使用しても良い。
吸湿性ポリマーの市販品としては、例えば帝人ファイバー(株)製、商品名「ベルオアシスがあげられる。「ベルオアシス(登録商標)」は架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩系繊維であり、20℃、40%RHにおける吸湿率R1が16%、20℃、90%RHにおける吸湿率R2が100%であり、その差(R2−R1)が84%であり、蒸留水の吸水倍率も80倍であり、飽和吸湿特性の面、潮解液吸収の面で十分に対応することができ好ましい。
一方、ハロゲン化金属塩としては、吸湿性を有するものであれば特に限定されないが、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属などが挙げられる。
なお、ハロゲン化金属塩は水に溶けやすいため、繊維構造体に担持させる一法としてハロゲン化金属塩を含む水溶液に繊維基材を含浸させた後に、乾燥させるだけで簡便に製造するできるメリットを有する。この時ハロゲン化金属塩に塩化カルシウムや塩化マグネシウム等を用いた場合、その金属イオンが高分子収着材内部に含まれる親水性極性基とイオン結合し吸湿性ポリマーの吸水・吸湿能力を低下させるおそれがあるため、塩化リチウムや塩化カリウム等を用いるのが好ましい。
前記吸湿性ポリマーとハロゲン化金属塩の含有比率は、湿潤時の寸法安定性と剛性を保持する上で、(前者/後者)10/90〜90/10(好ましくは40/60〜70/30)の範囲であることが好ましい。吸湿性ポリマーの重量比率が該範囲よりも大きいと初期(短時間)吸湿量が低下するおそれがある。逆に吸湿性ポリマーの重量比率が該範囲よりも小さいと繊維構造体の湿潤時剛性が低下するとともに潮解液流出のおそれがある。
この理由は以下の様に推定している。吸湿性ポリマーは保有する親水基が水分子を捉えるが、その親水基は表面と内部に存在しており、先に表面の親水基と水分子が結合する。その表面に結合した水分子の周囲にはさらに水蒸気が集まり、その水蒸気は徐々に高分子収着材の内部に取り込まれるが、この内部への水分子の移動速度は表面に付着する水分子の移動に比べて比較的遅いと考えている。
一方、ハロゲン化金属塩はその吸湿作用により水分を吸収するが、その表面に水分が衝突すると直ちに水分の吸収とともにその固体の一部が水分に溶解し、潮解液となる。
従って、繊維構造体中のハロゲン金属塩に対して吸湿性ポリマーの含有率が大きすぎると、繊維構造体に存在するハロゲン金属塩が低吸湿速度の吸湿膨潤する吸湿性ポリマーに覆われる確率が高くなり、ハロゲン金属塩への水分の吸着は覆われた吸湿性ポリマーを介して行われることになるため、吸湿性ポリマーを含まない同量のハロゲン金属塩が担持している物に比べて初期吸湿量が低下すると考えられる。一方、繊維構造体中のハロゲン金属塩に対して吸湿性ポリマーの含有率を小さくすぎると、ハロゲン金属塩によって初期吸湿量は確保されるが、吸湿量が増すと共に比例して発生する潮解液を素早く吸収するための吸湿性ポリマーがハロゲン金属塩の付近に存在しないことに繋がり、吸湿性ポリマーを含まない同量のハロゲン金属塩が担持している物と同様に繊維構造体の湿潤時の剛性が十分に保てないと考えている。
本発明の繊維構造体において、形状は限定されないが繊維シートであることが好ましい。その際、目付けは40〜1000g/mであることが好ましい。40g/m未満であると吸湿性ポリマーやハロゲン金属塩の担持量が小さくなり繊維構造体の吸湿能力が低くなりすぎるおそれがある。一方、目付けが1000g/mを超えると吸湿素材の担持、特に厚み方向の均一担持が困難となるおそれがある。
また、前記繊維構造体の表面積当たりの吸湿性ポリマーとハロゲン化金属塩との合計付着量は5〜100g/mであることが好ましい。付着量が上記範囲内にあれば、基材表面に保持しやすくまた吸湿速度、特に吸湿性ポリマーの膨潤による初期吸湿速度の低下が少ない点、繰り返し使用しても脱落が生じない点で有用である。
本発明の繊維構造体は無機繊維を含むことが好ましい。無機繊維は、吸放湿や加熱などによる寸法変化を小さく、寸法安定性を向上させるうえで極めて有効である。かかる無機繊維の種類は特に限定されず、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、金属繊維などが例示される。なかでもガラス繊維が好ましい。
かかる無機繊維において、表面積を大きくして優れた吸放湿性を得る上で単繊維径が30μm以下(好ましくは1〜15μm)であることが好ましい。
本発明の繊維構造体において、無機繊維が繊維シート重量対比50重量%以上含まれることが好ましい。
また、繊維構造体には有機繊維が含まれていてもよい。かかる有機繊維としては特に限定はなく、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維などの合成繊維などを採用することもできる。該有機繊維は骨格繊維としてだけでなく、より高い寸法安定性が望まれる場合には、同繊維の軟化温度以上に熱処理することでバインダー繊維として使用することも可能である。
繊維構造体にバインダー繊維が含まれていることが特に好ましい。かかるバインダー繊維としては、単一成分からなる繊維でもよいが、低融点の熱融着成分が少なくとも繊維表面の一部に配された短繊維であり、加熱により少なくともその表面の一部が溶融しうる熱接着性複合短繊維であることが好ましい。
ここで、熱融着成分として配されるポリマーとしては、ポリウレタン系エラストマー(1)、ポリエステル系エラストマー(2)、共重合ポリエステル系ポリマー(3)、ポリオレフィン系ポリマー(4)、ポリオレフィン系ポリマーの共重合物、ポリビニルアルコ−ル系ポリマー等を挙げることができる。
ポリウレタン系エラストマー(1)として、分子量が500〜6000程度の低融点ポリオールと、分子量500以下の有機ジイソシアネートと、分子量500以下の鎖伸長剤との反応により得られるポリマーが挙げられる。分子量が500〜6000程度の低融点ポリオールとして、ジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステル、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリエステルアミド等が挙げられる。分子量500以下の有機ジイソシアネートとして、p,p’−ジフェニールメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート水素化ジフェニールメタンイソシアネート、キシリレンイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。分子量500以下の鎖伸長剤として、グリコールアミノアルコールあるいはトリオールが挙げられる。
またポリエステル系エラストマー(2)としては、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体が挙げられる。より具体的にはジカルボン酸の少なくとも一種と、ジオール成分の少なくとも一種と、ポリ(アルキレンオキサイド)グリコールのうち少なくとも一種から構成される三元共重合体を挙げることができる。
ジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
ジオール成分として、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオールあるいは1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンメタノール等の脂環式ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
ポリ(アルキレンオキサイド)グリコールとして、平均分子量が約400〜5000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−ポリプロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキサイド)グリコールが挙げられる。
特に、接着性や温度特性、強度の面からすればポリブチレン系テレフタレートをハード成分とし、ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルエステルが好ましい。この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分がブチレングリコール成分であるポリブチレンテレフタレートである。むろん、この酸成分の一部(通常30モル%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていてもよく、同様にグリコール成分の一部(通常30モル%以下)はブチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置換されていても良い。また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル部分はブチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルであってよい。
共重合ポリエステル系ポリマー(3)としては、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類および/またはヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環式ジカルボン酸類と、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、パラキシレングリコールなどの脂肪族や脂環式ジオール類とを所定数含有し、所望に応じてパラヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類を添加した共重合エステル等を挙げることができ、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとにおいてイソフタル酸および1,6−ヘキサンジオールを添加共重合させたポリエステル等が使用できる。
また、ポリオレフィンポリマー(4)としては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等をあげることができる。
なお、上述のポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消し剤、着色剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていてもよい。
バインダー繊維は、熱融着成分とポリエステル(非低融点成分)とが、サイドバイサイド型、芯鞘型であるのが好ましく、より好ましくは芯鞘型である。この芯鞘型の熱接着性複合短繊維では、ポリエステルが芯部となり、熱融着成分が鞘部となるが、この芯部は同心円状または偏心状にあってもよい。重量割合は、熱融着成分とポリエステル(非低融点成分)が、複合比率で30/70〜70/30の範囲にあるのが好ましい。
かかるバインダー繊維において、その単繊維繊度は0.5〜10dtex(より好ましくは1〜3dtex)であることが好ましい。また、バインダー繊維において、繊維長は5mm以上が好ましく、より好ましくは30〜100mmである。繊維長が5mmよりも小さいと十分な剛性が得られないおそれがある。逆に繊維長が100mmよりも大きいと、工程安定性が損なわれるおそれがある。
本発明の繊維構造体にはパルプ繊維が含まれていてもよい。かかるパルプ繊維としては、特に限定はなく、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプ、麻パルプ、コットンパルプ、ケナフパルプなどの非木材パルプ、レーヨン、ビニロン、アクリルなどの合成繊維をフィブリル化したものなどを採用することができる。なかでも、アクリルパルプを採用した場合には、セルロース系のパルプに比べて耐水性が増し、含水時の強度が高い紙を得ることができるため、吸湿放湿を繰り返すような耐久性を求められる用途に好適である。
本発明の繊維構造体において、前記のように構造は限定されないが繊維シートが好ましい。その際、布帛組織は特に限定されず、織物、編物、不織布いずれでもよいが、繊維表面積を大きくして優れた吸放湿性を得る上で不織布が好ましい。特に湿式不織布が好ましい。
本発明の繊維構造体において、吸湿性ポリマーとハロゲン化金属塩とを含むこと必須としているが、特に優れた初期吸湿量を得るために、繊維構造体を構成する繊維の最表層面にハロゲン金属塩が担持されていることが好ましい。繊維構造体を構成する繊維の表面を吸湿性ポリマーが被膜し、さらにその上にハロゲン化金属塩が付着していることである。ハロゲン金属塩のみを含む繊維構造体と同量のハロゲン化金属塩を含む繊維構造体に吸湿性ポリマーを後固着したものの吸湿特性を比較すると、初期吸湿量は前者「ハロゲン金属塩のみを含む繊維構造体」が、飽和吸湿量は後者が大きい。従って初期吸湿量を確保するためにはできるだけ繊維表層にハロゲン化金属塩が担持されていることが好ましく、その製法の一例として下記を挙げることができる。
すなわち、繊維構造体の基材として、有機繊維、無機繊維、繊維状の吸湿性ポリマーをイオン交換水中に分散させ混合撹拌した後、抄紙機を用いて抄紙し、その後、ドライヤーを用いて乾燥させ高分子収着材混シートを得る。得られたシートの上に水で希釈溶解させたハロゲン金属塩を薄く塗布することで、繊維の最表層面にハロゲン金属塩が担持されたものを得ることができる。
また、有機繊維、無機繊維、繊維状の吸湿ポリマーを混綿した後、ローラーカードを通して、クロスラッパーで積層した後、熱処理を施して構造体を得た後、ハロゲン金属塩を塗布して繊維の最表層面にハロゲン金属塩が担持されたものを得る方法を用いるなどしてもよい。
また、その他の方法の一例として更に下記を挙げることができる。すなわち、湿度交換用繊維構造体の基材として、有機繊維、無機繊維を用いて水中に分散させ混合撹拌した後、抄紙機を用いて抄紙し、その後、ドライヤーを用いて乾燥させることで繊維シートを得る。その繊維シートは、エチレン系不飽和カルボキシルモノマーと共重合性エチレン系不飽和モノマーのコポリマーを含む水溶液に浸漬し、100℃で除水した後、200℃で5分以上ポリマーの架橋反応を促すことで湿度交換用繊維構造体を構成する繊維に吸湿性ポリマーが被膜固着したシートを得ることができる。また別の方法として前述の繊維シートに、粉砕して得た粉状の高分子収着材と水とを混ぜてスラリーを作成しそのスラリーを塗工することで湿度交換用繊維構造体を構成する繊維に高分子収着材が被膜固着したシートを得ることができる。この様にして得たシートに前述同様にハロゲン金属塩を塗布することで繊維構造体を構成する繊維の表面を吸湿性ポリマーが被膜し、更にその上にハロゲン化金属塩が付着している繊維構造体を得ることができる。これらは特に初期吸湿速量を得たい時など有用である。
かくして得られた繊維構造体は飽和吸湿量が高く、かつ初期吸湿特性が良好であるため除加湿器、エアコン、熱交換機等のフィルタ素子、クローゼット等の家庭用除湿材、冷凍車架台、冷蔵庫などの結露防止材など、吸放湿性は求められる様々な工業製品に適用可能である。また当湿度交換用繊維構造体は多数の小透孔を有するプラスチックフォームや、フィルム、樹脂などと複合することも有用である。
かくして得られた繊維構造体は、吸放湿性と初期吸湿速度に優れ、さらには湿潤時剛性にも優れる。
ここで、初期吸湿量が13g/m以上(より好ましくは13〜30g/m)であることが好ましい。ただし、初期吸湿量は以下の方法で測定する。
熱風乾燥機により70℃で1時間乾燥させた後、重量を測定する(W4)温度30℃、相対湿度90%RHに調整した恒温恒湿槽に1分間静置して吸湿重量を測定する(W3)。
初期吸湿量(g/m)=W3−W4/評価基材の面積(m
また、吸湿後の剛性が150mgf(1.47mN)以上(より好ましくは170mgf(1.67mN)以上)であることが好ましい。ただし、飽和吸湿後の剛性は、30℃90%RH下で10分後の吸湿評価後の各基材の剛性をJISL1913ガーレ法にて剛軟度(mgf)で求める。
本発明の繊維構造体は、除加湿器、エアコン、熱交換機等のフィルタ素子、クローゼット等の家庭用除湿材、冷凍車架台、冷蔵庫などの結露防止材など、吸放湿性が求められる様々な工業製品に適用可能である。繊維シートは多数の小透孔を有するプラスチックフォームや、不織布、フィルム、樹脂などと組み合わせてもよい。本発明の繊維構造体は、湿度交換用吸着体として特に好ましく使用される。
ここで、例えば、シート状繊維構造体を2枚用意し、図1のようにコルゲート加工(波状加工)し当該コルゲート加工されたシートと平らなシートとを互いに接着させた後(図2)、巻回し成形して得たハニカムローターに、吸湿性ポリマーおよびハロゲン化金属塩を付与してもよい。
また、波状の形状を有する繊維シートと平らな繊維シートが接合してなる繊維シートの複合体を積層してもよい。
なお、繊維シートに吸湿性ポリマーおよびハロゲン化金属塩を付与するのは、繊維シートの複合体を巻回または積層する前の工程で行ってもよいし後の工程で行ってもよい。
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。
(1)3Hr後吸湿量の評価
熱風乾燥機により120℃で2時間乾燥させ重量を測定する(W1)。
次に温度30℃、相対湿度90%RHに調整した恒温恒湿槽に3時間静置して重量を測定する(W2)。吸湿量は以下の式で求めた。
3Hr後吸湿量(g/m)=(W2−W1)/評価基材の面積(m
3Hr後吸湿量が100g/mを超えると極めて高い吸湿特性であると判断する。
(2)初期吸湿量の評価
熱風乾燥機により120℃で2時間乾燥させた後、重量を測定する(W1)温度30℃、相対湿度90%RHに調整した恒温恒湿槽に1分間静置して吸湿重量を測定する(W3)。
初期吸湿量は以下の式で求めた。
初期吸湿量(g/m)=(W3−W1)/評価基材の面積(m
初期吸湿量が5g/m・min以上であると良好な吸湿特性であると判断する。
(3)3Hr後放湿量の評価
温度30℃、相対湿度90%RHに調整した恒温恒湿槽に3時間静置して重量を測定する(W2)。その後温度50℃、相対湿度20%RH下に調整した恒温恒湿槽に3時間静置して重量を測定する(W4)。3Hr後放湿量は以下の式で求めた。
3Hr後放湿量(g/m)=(W4−W2)/評価基材の面積(m
3Hr後放湿量が3Hr後放湿量の90%以上であると、良好な放湿特性であると判断する。
(4)初期放湿量の評価
温度30℃、相対湿度90%RHに調整した恒温恒湿槽に3Hr静置して重量を測定する(W2)。その後温度50℃、相対湿度20%RH下に調整した恒温恒湿槽に1分間静置して重量を測定する(W5)。初期放湿量は以下の式で求めた。
初期放湿量(g/m)=(W5−W2)/評価基材の面積(m
初期吸湿量が20g/m・min以上であると良好な脱湿特性であると判断する。
(5)3Hr吸湿時の蒸れ感
30℃90%RH下で3時間吸湿評価後の各基材の蒸れ感(べたつき、吸脱湿剤の潮解など)を目視、触手で確認した。吸湿処理後もべたつきや吸脱湿剤の潮解が観察されない場合繰返耐久性の観点で安定な成形物であると判断して++++、かなりのべたつきや吸脱湿剤の潮解が観察された場合耐久性に大きな問題が生じるとして+とし、++++、+++、++、+の4段階で表中に示した。
(6)10分吸湿後の剛性
30℃90%RH下で10分吸湿後の各基材の剛性をJIS L1913−2010ガーレ法にて剛軟度(mgf)で求めた。湿潤時剛軟度が150mgf(1.47mN)以上であると、成形物の湿潤による変形が起こり難いと判断する。
[実施例1]
繊維径10μm、繊維長10mmのガラス繊維60重量%、単繊維繊度2dtex、繊維長5mmの芯鞘PET繊維(芯成分:ポリエチレンテレフタレート、鞘成分:共重合ポリエステル)40重量%をあらかじめ溶解した分散剤(花王製、商品名「エマノーン3199」)を原料に対し0.5%となるよう添加し水中に分散させ、混合撹拌した後、湿式抄紙法でウエブを作製し、加熱加圧した後、アクリル樹脂エマルジョン(昭和高分子製、「AG−100」)を含浸法で添加し、加熱乾燥して0.15mm厚のガラス繊維シートを得た。
一方、温度20℃、湿度40%RHにおける吸湿率R1(%)と温度20℃、湿度90%RHにおける吸湿率R2(%)との差(R2−R1)が84%、蒸留水の吸収倍率が80倍である帝人ファイバー(株)製吸湿性繊維「ベルオアシス」(登録商標、10dtex、5mm)を、粉砕機(フロイントターボ製のターボミル)で粉砕処理し粒径30μmの高分子収着材を得た。得られた高分子収着材は、10%水溶液になる様に蒸留水を加えて良く撹拌し高分子収着材混入スラリーを得た。
次に、前記ガラス繊維シートに高分子収着材混合スラリーを乾燥重量で単位平方メートルあたり10g担持する様に塗布し、100℃で乾燥を行った。更に得られた吸湿性ポリマー担持ガラス繊維シートに、水に溶かした塩化リチウムが乾燥重量で15g担持する様に塗布し、同様に100℃で乾燥させ、湿度交換用繊維構造体を得た。評価結果を表1に示す。
[実施例2]
吸湿性ポリマーと塩化リチウムとの担持比率を(前者/後者)45/55、総担持量を50g/mになる様にした以外は実施例1と同様にして湿度交換用繊維構造体を得た。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
吸湿性ポリマーと塩化リチウムとの担持比率を(前者/後者)53/47、総担持量を39g/mになる様にした以外は実施例1と同様にして湿度交換用繊維構造体を得た。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
吸湿性ポリマーと塩化リチウムとの担持比率を(前者/後者)71/29、総担持量を60g/mになる様にした以外は実施例1と同様にして湿度交換用繊維構造体を得た。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
塩化リチウムだけを実施例1で用いたガラスシートに担持量18g/mになる様に塗布、乾燥させ、湿度交換用繊維構造体を得た。評価結果を表1に示す。
[比較例2]
帝人ファイバー(株)製吸湿性繊維「ベルオアシス」(登録商標、10dtex、5mm)だけを実施例1で用いたガラスシートに担持量40g/mになる様に塗布、乾燥させ、湿度交換用繊維構造体を得た。評価結果を表1に示す。
Figure 2018031094
本発明によれば、吸放湿性と初期吸湿速度に優れ、好ましくは湿潤時剛性にも優れる繊維構造体およびその製造方法が提供され、その工業的価値は極めて大である。
1 平らな繊維シート
2 波形状を有する繊維シート

Claims (15)

  1. 温度20℃、湿度40%RHにおける吸湿率R1(%)と、温度20℃、湿度90%RHにおける吸湿率R2(%)との差(R2−R1)が40%以上でありかつ蒸留水の吸収倍率が10倍以上である吸湿性ポリマーと、ハロゲン化金属塩とを含むことを特徴とする繊維構造体。
  2. 前記吸湿性ポリマーが架橋ポリアクリル酸金属塩である、請求項1に記載の繊維構造体。
  3. 前記ハロゲン化金属塩が、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および塩化マグネシウムからなる群より選択されるいずれかである、請求項1または請求項2に記載の繊維構造体。
  4. 前記吸湿性ポリマーとハロゲン化金属塩との重量比率が10:90〜90:10の範囲内である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造体。
  5. 繊維構造体が繊維シートである、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維構造体。
  6. 目付けが40〜1000g/mの範囲内である、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維構造体。
  7. 前記吸湿性ポリマーとハロゲン化金属塩との合計付着量が5〜100g/mの範囲内である、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維構造体。
  8. 繊維構造体が無機繊維を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の繊維構造体。
  9. 前記無機繊維が、ガラス繊維または炭素繊維またはアルミナ繊維または金属繊維である、請求項8に記載の繊維構造体。
  10. 前記無機繊維において、単繊維径が30μm以下である、請求項8または請求項9に記載の繊維構造体。
  11. 繊維構造体がバインダー繊維を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の繊維構造体。
  12. 繊維構造体において、30℃、90%RH下における初期吸湿量が13g/m・1min以上である、請求項1〜11のいずれかに記載の繊維構造体。
  13. 30℃90%RH下10分放置後の湿潤強度が150mgf(1.47mN)以上である、請求項1〜12のいずれかに記載の繊維構造体。
  14. 繊維構造体が湿度交換用である、請求項1〜13のいずれかに記載の繊維構造体。
  15. 繊維構造体に、温度20℃、湿度40%RHにおける吸湿率R1(%)と、温度20℃、湿度90%RHにおける吸湿率R2(%)との差(R2−R1)が40%以上である吸湿性ポリマーを付与し、次いでハロゲン化金属塩を付与することを特徴とする繊維構造体の製造方法。
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