JP2018028016A - リン酸エステル化リグノフェノール、樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

リン酸エステル化リグノフェノール、樹脂組成物及び成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂に添加することで、剛性や難燃性に優れた成形品を製造可能なバイオマス材料であるリン酸エステル化リグノフェノールの提供。
【解決手段】式(2)で表される構造を有するリグノフェノールをリン酸エステル化してなる、リン酸エステル化リグノフェノール。好ましくは、クロロリン酸エステルとリグノフェノールとを反応してなるリン酸化エステル化リグノフェノール。

【選択図】なし

Description

本発明は、リン酸エステル化リグノフェノール、該リン酸エステル化リグノフェノールを含有する樹脂組成物、及び該樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
近年、環境保護の観点からバイオマス材料が注目されており、代表的なバイオマス材料としては、生分解性ポリエステルであるポリ乳酸が挙げられる。しかし、バイオマス材料は、一般的に石油系の汎用プラスチックに比べて機械的強度が低く、また耐熱性も劣るため、その用途は非常に狭い範囲に制限され、例えば、ポリ乳酸に芳香族ポリカーボネート樹脂等の石油系ポリマーを配合したポリマーアロイとして使用しても、機能を付与することは困難であった。
一方、先に本発明者らは、バイオマス材料として、木質系リグニンから誘導されるリグノフェノールに注目し、ポリカーボネート樹脂又はポリ乳酸を配合したポリカーボネート樹脂に、特定構造を有するリグノフェノールを配合することにより、環境性能に優れるとともに、高い流動性及び高い耐衝撃性を有し、難燃性及び耐熱性に優れるポリカーボネート樹脂組成物を見出している(例えば、特許文献1又は2参照)。
また、特許文献3では、熱可塑性樹脂にリグノフェノールとリン酸エステルのようなリン系難燃剤を配合し、成形時の着色を抑制するとともに流動性、成形外観、耐湿熱性に優れ、且つ難燃性に極めて優れた熱可塑性樹脂組成物を見出している。
更に、特許文献4には、リグニンにリン酸を付加したリン酸化リグニンの難燃性樹脂組成物が開示されている
特開2010−150424号公報 特開2010−202712号公報 特開2013−6911号公報 特開2012−193337号公報
特許文献1及び2に記載された発明では、リグノフェノールを配合することにより、上記高機能化は図れるが、熱安定性が低く、高温での加工には不具合があり、褐色に着色してしまう問題点があった。更に、高温の耐湿熱特性が低く、家電製品や事務機器の筐体及び部品に要求される特性を十分満足することができず用途が限られてしまう問題点があった。
特許文献3に記載された発明では、十分な剛性が得られず、また、適用できる樹脂が限定されていた。
また、特許文献4に記載された発明では、強い酸性を示すため、成形品の着色が大きく、また、ポリカーボネートのような樹脂に使用すると分子量低下を引き起こし、機械的物性が低下するという問題があった。更に、加工時、金型などの金属を腐食してしまうという問題もあった。
本発明が解決しようとする課題は、樹脂に添加することで、剛性や難燃性に優れた成形品を製造可能なバイオマス材料であるリン酸エステル化リグノフェノールを提供することである。更に、前記バイオマス材料を含有する樹脂組成物、及び、該樹脂組成物を成形してなる成形体を提供することである。
本発明者らは鋭意検討した結果、リグノフェノールをリン酸エステル化したリン酸エステル化リグノフェノールにより、上記課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
<1> 下記式(1)で表される構造を有するリグノフェノールをリン酸エステル化してなる、リン酸エステル化リグノフェノール。

〔式中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリールオキシ基を示し、Rは、ヒドロキシアリール基又はアルキル置換ヒドロキシアリール基を示し、Rは、ヒドロキシアルキル基、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基又は−OR(Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を示す)を示し、水素原子以外のR〜Rはそれぞれ置換基を有していてもよく、p及びqは、0〜4の整数を示す。但し、pが2以上である場合、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、また、qが2以上である場合、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。〕
<2> 前記リグノフェノールが下記式(2)で表される構造を有する、<1>に記載のリン酸エステル化リグノフェノール。
<3> 前記リン酸エステル化リグノフェノールが、クロロリン酸エステルとリグノフェノールとを反応してなる、<1>又は<2>に記載のリン酸エステル化リグノフェノール。
<4> 前記リン酸エステル化リグノフェノールが、クロロリン酸ジフェニルとリグノフェノールとを反応してなる、<1>又は<2>に記載のリン酸エステル化リグノフェノール。
<5> (A)熱可塑性樹脂99〜60質量%、及び(B)下記式(1)で表される構造を有するリグノフェノールをリン酸エステル化してなるリン酸エステル化リグノフェノール1〜40質量%(ただし、前記(A)及び前記(B)の合計量を100質量%とする)を含有することを特徴とする樹脂組成物。

〔式中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリールオキシ基を示し、Rは、ヒドロキシアリール基又はアルキル置換ヒドロキシアリール基を示し、Rは、ヒドロキシアルキル基、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基又は−OR(Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を示す)を示し、水素原子以外のR〜Rはそれぞれ置換基を有していてもよく、p及びqは、0〜4の整数を示す。但し、pが2以上である場合、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、また、qが2以上である場合、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。〕
<6> 前記リグノフェノールが下記式(2)で表される構造を有する、<5>に記載の樹脂組成物。
<7> 前記(B)リン酸エステル化リグノフェノールが、クロロリン酸エステルとリグノフェノールとを反応してなる、<5>又は<6>に記載の樹脂組成物。
<8> 前記(B)リン酸エステル化リグノフェノールが、クロロリン酸ジフェニルとリグノフェノールとを反応してなる、<5>又は<6>に記載の樹脂組成物。
<9> 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリカーボネート樹脂よりなる群から選択される少なくとも1つを含む、<5>〜<8>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<10> 前記(A)熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である、<5>〜<8>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<11> 前記(A)熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂である、<5>〜<8>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<12> <5>〜<11>のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
<13> 前記成形体が、電線、ケーブルの被覆材、保護カバー、及び支持体よりなる群から選択される、<12>に記載の成形体。
本発明によれば、樹脂に添加することで、剛性や難燃性に優れた成形品を製造可能なバイオマス材料であるリン酸エステル化リグノフェノールを提供することができる。更に、前記バイオマス材料を含有する樹脂組成物、及び、該樹脂組成物を成形してなる成形体を提供することができる。
以下に、本発明を説明する。なお、本明細書において、数値の記載に関する「〜」という用語は、端点を含む数値範囲を表す。また、質量%、質量部は、それぞれ重量%、重量部と同義である。本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
[リン酸エステル化リグノフェノール]
本発明のリン酸エステル化リグノフェノールは、下記式(1)で表される構造を有するリグノフェノールをリン酸エステル化してなる。

〔式中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリールオキシ基を示し、Rは、ヒドロキシアリール基又はアルキル置換ヒドロキシアリール基を示し、Rは、ヒドロキシアルキル基、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基又は−OR(Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を示す)を示し、水素原子以外のR〜Rはそれぞれ置換基を有していてもよく、p及びqは、0〜4の整数を示す。但し、pが2以上である場合、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、また、qが2以上である場合、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。〕
<リグノフェノール>
本発明において、リグノフェノールは上記式(1)で表される構造を有する。なお、リグノフェノールは、上記式(1)で表される構造をその一部に含んでいればよく、更に他の構造を有していてもよい。
リグノフェノールとは、材木や紙(例えば新聞紙)等に含まれるリグニンから誘導される化合物であり、リグニンは、例えば木の細胞骨格を形成する炭水化物の隙間に充填されている、細胞間の接着物質として働くものである。リグニンの構造は非常に複雑であり、そのまま使用することは困難であるため、リグノフェノールに変換して用いることが有用である。
該リグノフェノールは、原料であるリグノセルロースをフェノール、p−クレゾール等のフェノール類を用いてフェノール置換体とした後に、酸で加水分解することにより抽出することができる。なお、原料であるリグノセルロースは、リグニン及びセルロースを含有する。すなわち、本発明において、「リグノフェノール」は、リグノセルロースをフェノール類で置換して抽出した置換体を意味する。
上記式(1)中、R及びRが示すアルキル基は、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。R及びRが示すアリール基は、好ましくは炭素数6〜10のアリール基であり、具体的にはフェニル基等が挙げられる。R及びRが示すアルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基であり、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。R及びRが示すアラルキル基は、好ましくは炭素数7〜20のアラルキル基であり、具体的にはベンジル基等が挙げられる。R及びRが示すアリールオキシ基は、好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基であり、具体的にはフェノキシ基が挙げられる。
上記式(1)中、Rが示すヒドロキシアリール基は、好ましくは炭素数6〜14のヒドロキシアリール基であり、具体的には2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基等が挙げられる。Rが示すアルキル置換ヒドロキシアリール基は、好ましくは炭素数7〜18のアルキル置換ヒドロキシアリール基であり、具体的には2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基、3−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基、4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基等が挙げられる。
また、上記式(1)中、Rが示すヒドロキシアルキル基は、好ましくは炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基であり、具体的にはヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等が挙げられる。Rが示すアルキル基は、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。Rが示すアリール基は、好ましくは炭素数6〜10のアリール基であり、具体的にはフェニル基等が挙げられる。Rが示すアルキル置換アリール基は、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基で置換されたアリール基であり、具体的にはトリル基、キシリル基等が挙げられる。
上記式(1)中、−OR中のRが示すアルキル基は、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。−OR中のRが示すアリール基は、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基である。−ORとしては、例えば、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
水素原子以外のR〜Rは、それぞれ更に置換基を有していてもよい。
p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0又は1、更に好ましくは1である。なお、pが2以上である場合、複数のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また、qが2以上である場合、複数のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
本発明において上記式(1)で表される構造は、天然物由来、特に樹木に由来する構造であることが好ましい。
天然物由来の構造である場合、上記式(1)中のR及びRは樹種によって決まり、R及びRで示される置換基はメトキシ基であって、p及びqがそれぞれ1又は2の構造、あるいはR及びRで示される置換基の一方又は両方を有さない構造が存在する。
例えば、一般に針葉樹はメトキシ基が1つの3−置換体であり、広葉樹・草本類はメトキシ基が1つの3−置換体と、メトキシ基が2つの3,5−置換体とが1:1で存在する。また、いずれの樹種も幼樹の場合、メトキシ基である上記置換基を一部有さない構造が含まれることがある。
は、天然物由来構造においてヒドロキシメチル基である。
は、原料となるリグノセルロースがフェノール類で置換された基を示しており、ヒドロキシアリール基(好ましくは炭素数6〜14のヒドロキシアリール基であり、具体的には2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基等)又はアルキル置換ヒドロキシアリール基(好ましくは炭素数7〜18のアルキル置換ヒドロキシアリール基であり、具体的には2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基、3−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基、4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基等)を示す。
本発明において、Rの構造を制御することにより、(B)成分としてのバリエーションを増やすことができる。
上記式(1)で表される構造を有するリグノフェノールの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で1,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜100,000である。そして、上記式(1)で示される構造を有するリグノフェノールの両末端基はフェノール性水酸基であることが好ましい。
本発明において、式(1)で表される構造を有するリグノフェノールとして、下記式(2)で表される構造を有するリグノフェノールが好適に例示される。
〔リグノフェノールの製造方法〕
リグノフェノールは、リグニンとセルロースが絡み合ったリグノセルロースに、フェノール類を添加してフェノール類となじませた後、濃酸との界面反応でフェノール化して、リグノフェノールと炭水化物とに分離することにより得ることができる。
リグノセルロースとしては、木質化した材料、主として木材である各種材料、例えば、木粉、チップ、廃材及び端材等、並びに新聞紙及びボール紙等を挙げることができる。また、用いる木材としては、針葉樹や広葉樹等任意の種類のものを使用することができる。更に、各種草本植物、それに関連する試料、例えば、農産廃棄物等も使用できる。
これらの材料を用いてリグノフェノールを分離する際、分離過程において加熱及び加圧しないで得られたものが好ましく用いられる。
フェノール類としては、1価のフェノール、2価のフェノール、3価のフェノール、及びこれらの誘導体等を用いることができる。1価のフェノールの具体例としては、フェノール、ナフトール、アントロール等が挙げられる。2価のフェノールの具体例としては、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン等が挙げられる。3価のフェノールの具体例としては、ピロガロール等が挙げられる。フェノール誘導体としては、1以上の置換基を有する上記フェノールが挙げられる。
上記フェノール誘導体が有していてもよい置換基の種類は特に限定されず、任意の置換基を有していてもよいが、好ましくは電子吸引性の基(ハロゲン原子等)以外の基であり、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、及びアリール基(フェニル基等)等が挙げられる。また、フェノール誘導体上のフェノール性水酸基の2つあるオルト位のうちの少なくとも片方は無置換であることが好ましい。フェノール誘導体の特に好ましい例は、クレゾール、特にm−クレゾール又はp−クレゾールである。
酸としては、セルロースに対する膨潤性を有する酸が好ましい。酸の具体例としては、例えば濃度65質量%以上の硫酸(好ましくは、72質量%の硫酸)、85質量%以上のリン酸、38質量%以上の塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、及びギ酸等を挙げることができる。
上記のようにして得られたリグノフェノールの抽出分離方法としては、例えば、次の2種類の方法が挙げられる。
第1の方法は、特許第2895087号公報に記載されている方法である。具体的には、木粉等のリグノセルロースに液状のフェノール類を浸透させることによりリグニンをフェノール類になじませ、次に濃酸を添加してリグノセルロースを溶解させる。このとき、リグニン基本構成単位の側鎖α位のカチオンが、フェノール類により攻撃され、ベンジル位にフェノール類が導入されたリグノフェノールがフェノール類相に移行する。そして、フェノール類相からリグノフェノールを抽出する方法である。
フェノール類相からのリグノフェノールの抽出法としては、フェノール類相を、大過剰のエチルエーテルに加えて得た沈殿物を集めて、アセトンに溶解する方法が挙げられる。更に、アセトン不溶部を遠心分離により除去し、アセトン可溶部を濃縮する。このアセトン可溶部を、大過剰のエチルエーテルに滴下し、沈殿区分を集める。この沈殿区分から溶媒を留去した後、乾燥処理し、乾燥物としてリグノフェノールが得られる。なお、粗リグノフェノールは、フェノール類相を単に減圧蒸留により除去することで得られる。また、アセトン可溶部を、そのままリグノフェノール溶液として、誘導体化処理(アルカリ処理)に用いることもできる。
第2の方法は、特開2001−64494号公報に記載されている方法である。具体的には、リグノセルロースに、固体状又は液体状のフェノール類を溶解した溶媒を浸透させた後、溶媒を留去する(フェノール類の収着工程)。次に、このリグノセルロースに濃酸を添加してセルロース成分を溶解させ、第1の方法と同様にリグノフェノールがフェノール類相に移行し、リグノフェノールを抽出する方法である。
リグノフェノールの抽出は、第1の方法と同様にして行うことができる。また、他の抽出方法として、濃酸処理後の全反応液を過剰の水中に投入し、不溶区分を遠心分離にて集め、脱酸後、乾燥する。この乾燥物にアセトン又はアルコールを加えてリグノフェノールを抽出し、更に、この可溶区分を第1の方法と同様に、過剰のエチルエーテル等に滴下して、リグノフェノールを不溶区分として得る方法が例示される。
これら第1又は第2の2種類の方法においては、第2の方法がフェノール類の使用量が少なくて済むため経済的にも好ましく、中でも特に後者の抽出方法、すなわち、リグノフェノールをアセトン又はアルコールにて抽出分離する方法が好適である。また、この方法が、少量のフェノール類で、多くのリグノセルロースを処理できるため、リグノフェノールの大量合成に適している。
上記方法で得られたリグノフェノールは、一般的には以下のような特徴を有する。ただし、本発明で用いるリグノフェノールの特徴は以下のものに限定されることはない。
(1)重量平均分子量は約1,000〜200,000程度である。
(2)分子内に共役系をほとんど有さず、その色調は極めて淡色である。
(3)針葉樹由来のもので約170℃、広葉樹由来のもので約130℃に軟化点を有する。
(4)側鎖α位へのフェノール誘導体の選択的グラフティングの結果、フェノール性水酸基量が非常に多く、高いフェノール特性が付与されたリグニン誘導体である。
(5)リグニン構成単位の芳香核と側鎖α位にグラフティングされたフェノール誘導体の芳香核とでジフェニルメタン型構造を形成し、自己縮合は抑制されている。
(6)メタノール、エタノール、アセトン、ジオキサン、ピリジン、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)等の各種溶媒に容易に溶解する。
また、本発明において、上記方法で得られたリグノフェノールは、更にアルカリ処理することにより誘導体化してから、後述するリン酸エステル化反応を施し、リン酸エステル化リグノフェノールとして用いることもできる。
リグノセルロースより相分離プロセスによって得られたリグノフェノールは、その活性炭素のα位がフェノール類でブロックされているので、総体として安定である。しかし、アルカリ性条件下ではそのフェノール性水酸基は容易に解離し、生じたフェノキシドイオンは立体的に可能な場合には隣接炭素のβ位を攻撃する。これによりβ位のアリールエーテル結合は開裂し、リグノフェノールは低分子化され、更に導入フェノール核にあったフェノール性水酸基がリグニン母体へと移動する。従って、アルカリ処理されたリグノフェノールはアルカリ処理する前のリグノフェノールよりも疎水性が向上することが期待される。
このときγ位の炭素に存在するアルコキシドイオンあるいはリグニン芳香核のカルバニオンがβ位を攻撃することも期待されるが、これはフェノキシドイオンに比べはるかに高いエネルギーを必要とする。従って、緩和なアルカリ性条件下では導入フェノール核のフェノール性水酸基の隣接基効果が優先的に発現し、より厳しい条件下では更なる反応が起こり、一旦エーテル化されたクレゾール核のフェノール性水酸基が再生し、これによりリグノフェノールは更に低分子化されるとともに水酸基が増えることにより親水性が上がることが期待される。
<リン酸エステル化>
リグノフェノールのリン酸エステル化の方法としては、上記のように得られたリグノフェノールをメタノール、エタノール、アセトン、ジオキサン、ピリジン、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)等の各種溶媒に溶かし、オキシ塩化リン、クロロリン酸化エステルなどを加え反応させる方法が例示される。
その際、活性触媒として、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどを加えてもよい。
本発明において、リン酸エステル化リグノフェノールは、リグノフェノールとクロロリン酸エステルとを反応させて得られたものであることが好ましく、クロロリン酸エステルとしては、2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン、クロロリン酸ジメチル、クロロリン酸ジエチル、クロロリン酸ジプロピル、2−クロロ−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシド、o−フェニレンホスホロクロリデート、クロロリン酸ジフェニル、クロロリン酸ビス(2−メチルフェニル)、クロロリン酸ビス(4−メチルフェニル)、クロロリン酸ビス(3,5−ジメチルフェニル)、クロロリン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)、クロロリン酸ビス(2,4−ジクロロフェニル)、及びクロロリン酸ビス[2−(4−ニトロフェニル)エチル]が例示される。これらの中でも、クロロリン酸ジフェニル、クロロリン酸ジアルキル、2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホランなどが好適に例示される。クロロリン酸ジアルキルとしては、クロロリン酸ジメチル、クロロリン酸ジエチル、クロロリン酸ジプロピルなどが挙げられる。
また、オキシ塩化リンと反応させたリグノフェノールは更にフェノール類やアルコールと反応させてエステル化すればよい。適当なフェノール類としては、1価のフェノール、2価のフェノール、3価のフェノール及びそれらの誘導体等を用いることができる。1価のフェノールの具体例としては、フェノール、ナフトール、アントロール等が挙げられ、2価のフェノールの具体例としては、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン等が挙げられ、3価のフェノールの具体例としては、ピロガロール等が挙げられる。フェノール誘導体としては、1以上の置換基を有する上記フェノールが挙げられる。好ましいフェノール類としては、フェノール、クレゾールなどが挙げられる。
適当なアルコールとしては、第1級アルコール、第2級アルコール、第3級アルコールのいずれを使用してもよく、1価アルコール、2価アルコール、3価アルコール、又はそれ以上の多価アルコールのいずれを使用してもよい。好ましいアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ステアリルアルコールなどが挙げられる。
反応物は、溶剤を濃縮し、水に分散後、析出した固形物をろ過し、水にて洗浄後、乾燥することで精製できる。
本発明において、リン酸エステル化リグノフェノールが有するリン酸エステル基は、下記式(3)で表されることが好ましい。

(式(3)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、1価の有機基を示し、*はリグノフェノールの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。
式(3)中、R11及びR12が示す1価の有機基としては、アルキル基、アリール基が例示され、R11及びR12は互いに結合して環構造を形成していてもよい。
11及びR12が示すアルキル基は、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜18がより好ましく、炭素数1〜12が更に好ましく、炭素数1〜6が更に好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、アリール基が例示され、該アリール基は炭素数6〜20が好ましく、炭素数6〜14がより好ましく、炭素数6〜10が更に好ましい。前記アリール基は、更に置換基としてアルキル基を有していてもよい。
11及びR12が示すアリール基は、炭素数6〜20が好ましく、炭素数6〜14がより好ましく、炭素数6〜10が更に好ましい。アリール基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基が例示される。
11及びR12が環を形成している場合、式(3)で表される基は、下記式(3’)で表される。
式(3’)中、Qは置換基を有していてもよいアルキレン基又はアリーレン基を表す。
具体的には、エチレン基、プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、フェニレン基等が例示される。
なお、本発明のリン酸エステル化リグノフェノールは、式(1)で表される構造を有するリグノフェノールの有するヒドロキシ基の一部又は全部がリン酸エステル化されていることが好ましい。具体的には、式(1)中のRで示されるヒドロキシアリール基や、アルキル置換ヒドロキシアリール基が有するヒドロキシ基がリン酸エステル化されていてもよく、また、Rがヒドロキシアルキル基である場合や、ヒドロキシ基である場合には、Rが有するヒドロキシ基がリン酸エステル化されてもよい。リグノフェノールは、天然に由来するため、構造が特定化しにくく、リン酸エステル化リグノフェノールの構造を特定することは困難である。
また、本発明において、リグノフェノールがリン酸エステル化されていることは、公知の各種の検出方法で確認すればよく、例えば、IRスペクトルにおいてリグノフェノールが有する水酸基のピークが減少していることにより確認される。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂99〜60質量%、及び(B)上述した本発明のリン酸エステル化リグノフェノール1〜40質量%(ただし、前記(A)及び前記(B)の合計量を100質量%とする)を含有することを特徴とする。リン酸エステル化リグノフェノールの含有量が上記の範囲であれば、剛性や難燃性に優れる成形品が得られる。
本発明者らは、熱可塑性樹脂に対して、リン酸エステル化リグノフェノールを配合することにより、剛性に優れると共に、難燃性にも優れた成形品が得られる樹脂組成物が提供できることを見出した。
また、特許文献3に記載されているように、リン酸エステル化合物と、リグノフェノール化合物とを個別に加えた場合に比して、より高い剛性が得られ、また、着色及びブリードも抑制されることを見出した。
更に、リン酸化クラフトリグニンを使用した場合に比して、リン酸エステル化リグノフェノールは熱可塑性樹脂中での分散性に優れ、また、より高い剛性が得られ、着色や金型の腐食が抑制されることを見出した。
これらの効果が得られる詳細な機構は不明であるが、リン酸エステル化リグノフェノールのリン酸エステル基により、難燃性が発揮されるが、リグノフェノールに結合しているためにブリードが抑制されるとともにリン酸エステルとリグノフェノールの相乗効果により燃焼残渣が増大したためと推定される。また、リグノフェノールの有するヒドロキシ基の少なくとも一部がリン酸エステル化されたことにより、成形品の着色が抑制されたものと推定される。また、リン酸基のように酸性及び親水性を示すことがなく、金型の腐食が抑制されるとともに、熱可塑性樹脂中での良好な分散性を示したものと推定される。
本発明の樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂及び(B)本発明のリン酸エステル化リグノフェノールの合計量を100質量%としたとき、(A)熱可塑性樹脂97〜65質量%及び(B)リン酸エステル化リグノフェノール3〜35質量%を含有することが好ましく、(A)熱可塑性樹脂93〜75質量%及び(B)リン酸エステル化リグノフェノール7〜25質量%を含有することがより好ましく、(A)熱可塑性樹脂85〜75質量%及び(B)リン酸エステル化リグノフェノール15〜25質量%を含有することが更に好ましい。
なお、本発明の樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂及び(B)リン酸エステル化リグノフェノールを上記の比率で含有していればよく、(A)熱可塑性樹脂及び(B)リン酸エステル化リグノフェノール以外のその他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分としては、後述する各種添加剤が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂及び(B)リン酸エステル化リグノフェノールを合計して、樹脂組成物全体の10質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上含有することがより好ましく、50質量%以上含有することが更に好ましく、70質量%以上含有することがより更に好ましい。なお、上限は特に限定されず、100質量%以下であればよい。
<熱可塑性樹脂>
本発明において(A)熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂(PET、PBT等)、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を含む共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリフェニレンオキサイド樹脂(PPO)、ポリケトン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリアミドエラストマー等、及びこれらと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。(A)熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリカーボネート樹脂よりなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、及びポリカーボネート樹脂よりなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましく、ポリオレフィン系樹脂であることが更に好ましく、ポリプロピレン樹脂であることがより更に好ましい。
以下、それぞれの熱可塑性樹脂について更に詳述する。
(1)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂としては、主として以下のものが挙げられる。
(1−1)ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、及びプロピレンを主成分とする共重合体等から選ばれる1種又は2種以上で構成することができる。
プロピレンの単独重合体としては、特に制限はないが、軽量且つ成形性に優れさせる観点から、230℃でのメルトマスフローレートが0.1〜200g/10分であるプロピレン単独重合体が好ましい。更に樹脂組成物の剛性や耐衝撃性の観点から230℃でのメルトマスフローレートが0.2〜60g/10分であることがより好ましい。
プロピレンを主成分とする共重合体としては、特に制限はないが、例えば、プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンとプロピレン以外の1種又は2種以上のα−オレフィンとのランダム共重合体、及びプロピレンとプロピレン以外の1種又は2種以上のα−オレフィンとのブロック共重合体等が挙げられる。プロピレンを主成分とする共重合体のなかでも、軽量且つ成形性に優れる樹脂組成物を得るという観点から、230℃でのメルトマスフローレート0.1〜200g/10分であるプロピレン共重合体が好ましい。更に樹脂組成物の剛性や耐衝撃性の観点から230℃でのメルトマスフローレートが0.2〜60g/10分であることがより好ましい。
プロピレン以外のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、及び1−エイコセン等が挙げられる。
(1−2)ポリエチレン系樹脂
ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体、及びエチレンを主成分とする共重合体等から選ばれる1種又は2種以上で構成することができる。
エチレンの単独重合体としては、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられるが、軽量且つ成形性に優れさせる観点から、密度0.910〜0.965g/cm、190℃でのメルトマスフローレート0.01〜200g/10分であるエチレン単独重合体が好ましい。190℃でのメルトマスフローレートが範囲内であれば、樹脂組成物の流動性及び成形体の表面外観に不具合を生じるおそれがなく、0.01〜60g/10分であることがより好ましい。
エチレンを主成分とする共重合体としては、例えば、エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとのランダム共重合体、及びエチレンとエチレン以外のα−オレフィンとのブロック共重合体が挙げられる。エチレンを主成分とする共重合体のなかでも、軽量且つ成形性に優れる樹脂組成物を得るという観点から、190℃でのメルトマスフローレート0.01〜200g/10分であるエチレン共重合体が好ましい。また、190℃でのメルトマスフローレートが範囲内であれば、樹脂組成物の流動性及び成形体の表面外観に不具合を生じるおそれがなく、0.01〜60g/10分であることがより好ましい。
エチレン以外のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、及び1−エイコセン等が挙げられる。
市販のポリオレフィン系樹脂としては、プライムポリマー(株)製のポリプロピレン系樹脂「プライムポリプロ」、「ポリファイン」、「プライムTPO」の各シリーズ等、例えば、品番:J-700GP、出光興産(株)製のポリプロピレン系樹脂(品番:J-966HP)やプライムポリマー(株)製の各種ポリエチレン樹脂「ハイゼックス」、「ネオゼックス」、「ウルトゼックス」、「モアテック」、「エボリュー」の各シリーズ(例えば、高密度ポリエチレン樹脂、品番:2200J)、及び東ソー(株)製の低密度ポリエチレン(例えば、品番:ペトロセン190)等が挙げられる。
(2)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂は、例えば、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−tert−ブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン及びこれらの構造単位を含む共重合体等が挙げられる。これらポリスチレン系樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、非晶質スチレン系樹脂としてはゴム状重合体で強化されたゴム変性スチレン系樹脂が好ましく利用できる。このゴム変性スチレン系樹脂としては、例えば、ポリブタジエン等のゴムにスチレンが重合した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリブタジエンにアクリロニトリルとスチレンとが重合したアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリブタジエンにメタクリル酸メチルとスチレンが重合したメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)等があり、ゴム変性スチレン系樹脂は、2種以上を併用することができると共に、前記のゴム未変性である非晶質スチレン系樹脂との混合物としても使用できる。
ゴム変性スチレン系樹脂中のゴムの含有量は、例えば、2〜50質量%、好ましくは、5〜30質量%、特に好ましくは5〜15質量%である。ゴムの割合が2質量%未満であると、耐衝撃性が不十分となり、また、50質量%を超えると熱安定性が低下したり、溶融流動性の低下、ゲルの発生、着色等の問題が生じる場合がある。
上記ゴムの具体例としては、ポリブタジエン、アクリレート及び/又はメタクリレートを含有するゴム質重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム(SBS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエン−アクリルゴム、イソプレンゴム、イソプレン−スチレンゴム、イソプレン−アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム等が挙げられる。このうち、特に好ましいものは、ポリブタジエンである。ここで用いるポリブタジエンは、低シスポリブタジエン(例えば、1,2−ビニル結合を1〜30モル%、1,4−シス結合を30〜42モル%含有するもの)、高シスポリブタジエン(例えば、1,2−ビニル結合を20モル%以下、1,4−シス結合を78モル%以上含有するもの)のいずれを用いてもよく、また、これらの混合物であってもよい。
また、結晶性スチレン系樹脂としては、シンジオタクチック構造、アイソタクチック構造を有するスチレン系(共)重合体が挙げられるが、本発明では流動性をより改善する目的から、非晶質スチレン系樹脂を用いることが好ましい。更に非晶質スチレン系樹脂の中でも、200℃、5kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.5〜100、より好ましくは2〜80、更に好ましくは2〜50のものが用いられる。メルトフローレート(MFR)が5以上であれば十分な流動性となり、100以下であれば、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性が良好になる。
更に非晶質スチレン系樹脂の中でも、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、アクリロニトリル−アクリル酸メチル−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−(エチレン/プロピレン/ジエン共重合体)−スチレン共重合体(AES樹脂)が好ましく、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)が特に好ましい。
これらの特に好ましいものを例示すれば、AS樹脂としては、290FF(テクノポリマー(株)製)、S100N(ユーエムジー・エービーエス(株)製)、S101(ユーエムジー・エービーエス(株)製)、PN−117C(奇美実業社製)を挙げることができ、ABS樹脂としては、サンタックAT−05、SXH−330(以上、日本エイアンドエル(株)製)、トヨラック500、700(東レ(株)製)、PA−756(奇美実業社製)を挙げることができる。また、市販のポリスチレン系樹脂としては、PSジャパン(株)製、PSJ−ポリスチレンシリーズ(例えば、品番:H8672)、東洋スチレン(株)製、トーヨースチロールシリーズ等が挙げられる。
(3)ポリエステル樹脂
ポリエステル樹脂としては、ポリオール−ポリカルボン酸型ポリエステル樹脂、ヒドロキシカルボン酸型ポリエステル樹脂が例示される。
ポリオール−ポリカルボン酸型ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸と1,3−プロパンジオール又は1,4−ブタンジオールとの共重合体が例示され、ヒドロキシカルボン酸型ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸樹脂及び/又はポリ乳酸を含む共重合樹脂等が挙げられる。これらポリエステル樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリ乳酸樹脂及び/又はポリ乳酸を含む共重合樹脂は、乳酸又は乳酸とそれ以外のヒドロキシカルボン酸を加熱脱水重合すると低分子量のポリ乳酸又はその共重合体が得られ、これを更に減圧下に加熱分解することにより、乳酸又はその共重合体の環状二量体であるラクチドが得られ、次いでラクチドを金属塩等の触媒存在下で重合してポリ乳酸樹脂及び/又はポリ乳酸を含む共重合樹脂が得られる。
市販のポリオール−ポリカルボン酸型ポリエステル樹脂としては、三井化学(株)製、三井PETTMシリーズ(例えば、品番:三井J125)や東洋紡(株)製、バイロンシリーズ等が挙げられる。
市販のポリ乳酸樹脂及び/又はポリ乳酸を含む共重合樹脂としては、浙江海正生物材料股分有限公司製の結晶性ポリ乳酸樹脂〔品番:レヴォダシリーズ、L体/D体比=100/0〜85/5〕や三井化学(株)製のポリ乳酸樹脂(植物澱粉を乳酸発酵して製造)であるレイシアシリーズ等が挙げられる。
(4)ポリアミド樹脂
ポリアミド樹脂は、例えば、ラクタムの開環重合体、ジアミンと二塩基酸との重縮合体、ω−アミノ酸の重縮合体等が挙げられる。これらポリアミド樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
市販のポリアミド樹脂としては、東レ(株)製のナイロン6やナイロン66であるアミランシリーズ、旭化成(株)製のポリアミド66樹脂であるレオナシリーズ及び帝人(株)のn−ナイロンやn,m−ナイロンシリーズ等が挙げられる。
(5)ポリカーボネート樹脂
成分(A)としてのポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂であっても脂肪族ポリカーボネート樹脂であってもよいが、成分(B)との親和性の観点及び耐衝撃性と耐熱性の観点から芳香族ポリカーボネート樹脂を用いることがより好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、通常、二価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネート樹脂を用いることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂は、他の熱可塑性樹脂に比べて、耐熱性、難燃性及び耐衝撃性が良好であるため樹脂組成物の主成分とすることができる。
また、芳香族ポリカーボネート樹脂として、芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体であるか又は芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含む樹脂を用いる場合、難燃性及び低温における耐衝撃性を更に向上することができる。該共重合体を構成するポリオルガノシロキサンは、ポリジメチルシロキサンであることが難燃性の点からより好ましい。
市販の芳香族ポリカーボネート樹脂としては、出光興産(株)製のタフロンシリーズや帝人(株)製のパンライトシリーズ等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は相溶性のあるものは適宜混合して用いてもよい。例えば、一般に流動性が悪いと考えられている芳香族ポリカーボネート樹脂にポリエステル樹脂を適量混合すれば、流動性が改善される。
また、前記(1)〜(5)に記載した熱可塑性樹脂以外に、それらと相溶性のある他の熱可塑性樹脂、例えば、AS樹脂や(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体等を適量混合してもよい。
<各種添加剤>
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、各種添加剤を必要により含有させることができる。そのような添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、結晶核剤、軟化剤、帯電防止剤、金属不活性化剤、抗菌・抗カビ剤、顔料等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯電防止性能付与)等が挙げられる。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。これらは1種以上を組み合わせて用いてもよい。
滑剤としては、特に限定されないが、脂肪酸アミド系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、脂肪酸系滑剤、脂肪酸金属塩系滑剤等が挙げられる。これらは1種以上を組み合わせて用いてもよい。
結晶核剤としては、特に限定されないが、ソルビトール類、リン系核剤、ロジン類、石
油樹脂類等が挙げられる。
軟化剤としては、特に限定されないが、流動パラフィン、鉱物油系軟化剤(プロセスオイル)、非芳香族系ゴム用鉱物油系軟化剤(プロセスオイル)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
帯電防止剤としては、特に限定されないが、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤、両性系帯電防止剤、グリセリン脂肪酸モノエステル等の脂肪酸部分エステル類が挙げられる。
金属不活性化剤としては、特に限定されないが、ヒドラジン系金属不活性化剤、窒素化合物系金属不活性化剤、亜リン酸エステル系金属不活性化剤等が挙げられる。これらは1種以上を組み合わせて用いてもよい。
抗菌・抗カビ剤としては、特に限定されないが、有機化合物系抗菌・抗カビ剤、天然物有機系抗菌抗カビ剤、無機物系抗菌・抗カビ剤等が挙げられる。
顔料としては、特に限定されないが、無機顔料、有機顔料等が挙げられる。
無機顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、アゾ顔料、酸性染料レーキ、塩基性染料レーキ、縮合多環顔料等が挙げられる。
これらの顔料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。添加剤成分の配合量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の特性が損なわれない範囲であれば特に制限はない。
[樹脂組成物の製造方法、及び成形体]
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂とリン酸エステル化リグノフェノールを前記割合で、更に必要に応じて添加される各種添加剤を配合し、混合することによって得られ、熱溶融混合することが好ましく、熱溶融混練することがより好ましい。このときの配合及び混合は、通常用いられている機器、例えばリボンブレンダー、ドラムタンブラー等で予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。
混合の際の加熱温度は、熱可塑性樹脂の種類により通常160〜350℃の範囲で適宜選択されるが、熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を用いる場合は160〜250℃の範囲、ポリスチレン系樹脂を用いる場合は170〜280℃の範囲、ポリエステル樹脂を用いる場合は230〜280℃の範囲で選択される。
また、ポリアミド樹脂を用いる場合は240〜290℃の範囲、ポリカーボネート樹脂を用いる場合は270〜350℃の範囲、ポリ乳酸樹脂を用いる場合は190〜250℃の範囲で選択される。
本発明の樹脂組成物は、上記の混合(好ましくは溶融混練)、及びペレット化によって得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法、及び発泡成形法等により各種成形体を製造することができる。すなわち、本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を成形してなる。特に、上記溶融混練方法により、ペレット状の成形原料を製造し、次いでこのペレットを用いて、射出成形あるいは射出圧縮成形による射出成形体の製造、及び押出成形による押出成形体の製造に好適に用いることができる。また、押出成形にて押出シートにした後に加圧・熱成形して成形体としてもよい。
なお、本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物以外の樹脂組成物を使用して、多層構造としたり、一部を本発明の樹脂組成物で成形し、他の部分を本発明に入らないような樹脂組成物で成形してもよく、少なくとも成形体の一部が本発明の樹脂組成物を成形してなるものであれば、特に限定されない。
[用途]
本発明の樹脂組成物、及び、前記樹脂組成物より得られた成形体は、OA材料、電気・電子材料、自動車材料、産業資材、電線被覆材料、フィルム、繊維等に好適に用いることができる。
本発明の樹脂組成物を成形してなる成形体は、電線、ケーブルの被覆材、保護カバー及び支持体よりなる群から選択されることが好ましい。すなわち、本発明の樹脂組成物を成形してなる成形体は、電線やケーブルの被覆材、電線やケーブルの保護カバー、及び電線やケーブルを固定するための支持体として使用されることが好ましい。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
[リン酸エステル化リグノフェノール]
リン酸エステル化リグノフェノールの製造工程を下記[製造例1]に示す。なお、リグノフェノール抽出工程及びアルカリ処理工程について、より具体的には特開2001−64494号公報の実施例1〜2と同様に行った。
<製造例1>
〔リグノフェノール抽出工程〕
ブナの木粉をp−クレゾールを含むアセトン溶液に浸漬して、木粉にp−クレゾールを収着させた。収着後の木粉に72質量%の硫酸を添加し激しく撹拌した。撹拌停止後浄水を加え放置し、上澄みをデカンテーションする操作を6回繰り返して酸と過剰のp−クレゾールを取り除いた。容器内の沈殿物を乾燥し、これにアセトンを加え、前述の式(2)で表される構造を有するリグノフェノールを抽出した後、アセトンを留去した。
〔アルカリ処理工程〕
上記リグノフェノールを0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた後、加温して1時間反応させた。その後、冷却、酸性化して析出した沈殿物を遠心分離機によって回収し、脱イオン水で洗浄、乾燥することにより、アルカリ処理を行ったリグノフェノールを得た。アルカリ処理したリグノフェノールの水酸基価をJIS K 0070−1992に準拠し測定した。
〔リン酸エステル化工程〕
アルカリ処理したリグノフェノール5gを用い、DMF(ジメチルホルムアミド、50ml)で溶解後、トリエチルアミン(3.33ml=23.78mmol)加えた後、クロロリン酸ジフェニル(Diphenyl Chlorophosphate、6.38g=23.78mmol)をゆっくり加え、反応を試みた。更に2時間後、トリエチルアミン(3.33ml=23.78mmol)加え、クロロリン酸ジフェニル(6.38g=23.78mmol)を、再度、ゆっくり加えた。一夜、反応を行い、翌日、80〜85℃で2時間反応を行い終了とした。続いて、DMFを約半分濃縮し、水(200ml)に分散後、析出した固形物をろ過し、固形物を得た。得られた固形物をアセトン−DMF混液に溶解し、水(200ml)に分散させて、水溶液のpHを約9に炭酸カリウムで調整し、固形物をろ過し、水にて洗浄後、乾燥し、5.54gの固形物が得られた。リグノフェノールとの反応はIR分析により、3,390cm−1の水酸基に依存するピークの減少などから、反応を確認した。
<製造例2>
リグノフェノール抽出工程とアルカリ処理工程は製造例1と同様に行った。
〔リン酸エステル化工程〕
アルカリ処理したリグノフェノール14.85gを用い、DMF(160ml)で溶解後、トリエチルアミン(9.48ml=67.76mmol)加えた後、2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン(2-Chloro-2-oxo-1,3,2-dioxaphospholane、9.45g=66.32mmol)をゆっくり加え、反応を試みた。一夜、反応を行い、翌日、80〜85℃で2時間反応を行い終了とした。続いて、DMFを約半分濃縮し、水(150ml)に分散後、析出した固形物をろ過し、固形物を得た。得られた固形物をアセトン−DMF混液に溶解し、水(200ml)に分散させて、水溶液のpHを約9に炭酸カリウムで調整し、固形物をろ過し、水にて洗浄後、乾燥し、13gの固形物が得られた。リグノフェノールとの反応はIR分析により、3390cm−1の水酸基に依存するピークの減少などから、反応を確認した。
<製造例3(比較例)>
特開2012−193337号公報に準拠してリン酸化クラフトリグニンを作製した。
[実施例1〜7、比較例1〜4]
表1及び表2に示す割合で各成分を配合し、押出機(機種名:PCM−30、(株)池貝製)に供給し、PP(ポリプロピレン)は210℃で、PC(ポリカーボネート)は260℃で溶融混練し、ペレット化した。なお、全ての実施例及び比較例において、酸化防止剤としてイルガノックス1010(BASF社製)0.2質量部及びアデカスタブ2112(ADEKA製)0.1質量部をそれぞれ配合した。
得られたペレットを、80℃で12時間乾燥させ後、射出成形機(東芝機械(株)製、型式:IS100N)シリンダー温度PP210℃、PC240℃、金型温度40℃の条件で射出成形して試験片を得た。得られた試験片を用いて性能を各種試験によって評価し、その結果を表1及び表2に示した。
<評価>
得られた試験片を用いて、以下の評価を行った。
〔IZOD(23℃ノッチ有)〕
厚み1/8インチの試験片を用いて、ASTM D256に準じ、23℃にてノッチ付アイゾッド衝撃試験を行った。
〔引張弾性率〕
3号ダンベル試験片を、72時間、23℃、50%RH雰囲気下で状態調整した後、引張試験機(東洋精機(株)製、STROGRAPH)にて、引張速度50mm/minで引張弾性率(MPa)を測定した。
〔分散性〕
リン酸エステル化リグノフェノール等の分散状態は、成形品を目視にて評価した。
評価基準は、以下のとおりである。
A:粒状物が認められない
B:1mm未満の粒状物が認められる
C:1mm以上の粒状物が認められる
〔YI(イエローインデックス)〕
平板状の試験片(厚さ3mm)を成形し、日本電色工業(株)製の「SZ−Σ90」を用い、JIS K 7373:2006に準拠して、イエローインデックス(YI)値を測定した。この数値が高いほど黄色度が高く、着色していることを示す。
〔LOI:難燃性〕
ASTM規格D−2863に準拠し測定した。LOI(酸素指数)とは、試験片が燃焼を維持するのに必要な最低酸素濃度を空気中の容量%で示した値である。この数値が高いほど難燃性であることを示す。
〔ブリード〕
鉄板の上に試験片(80×80×3.2mm)を載せ、100℃にて300時間暴露した。目視にて試験片及び鉄板を観察し、浸み出しがある場合はブリード有とした。
〔金型腐食〕
鉄板の上に試験片(80×80×3.2mm)を載せ、100℃にて300時間暴露した。目視にて観察し、鉄板に腐食が認められる場合には金型腐食有とした。
表1で使用した各成分は、以下の通りである。
・PP:ポリプロピレン、(株)プライムポリマー製、商品名「E105GM」
・PC:ポリカーボネート、出光興産(株)製、商品名「A1900」
・リン酸エステル:大八化学工業(株)製、商品名「PX200」
・リグノフェノール:製造例1でアルカリ処理したリグノフェノール
本技術のリン酸エステル化リグノフェノールは、高い難燃性と剛性(特にPP)に優れる組成物となり、その効果はリン酸エステルとリグノフェノールを併用した場合より大きく、また、ブリードの発生もない。更にリン酸化クラフトリグニンでは難燃性の向上効果は少なく金属腐食の発生もある。

Claims (13)

  1. 下記式(1)で表される構造を有するリグノフェノールをリン酸エステル化してなる、リン酸エステル化リグノフェノール。

    〔式中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリールオキシ基を示し、Rは、ヒドロキシアリール基又はアルキル置換ヒドロキシアリール基を示し、Rは、ヒドロキシアルキル基、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基又は−OR(Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を示す)を示し、水素原子以外のR〜Rはそれぞれ置換基を有していてもよく、p及びqは、0〜4の整数を示す。但し、pが2以上である場合、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、また、qが2以上である場合、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。〕
  2. 前記リグノフェノールが下記式(2)で表される構造を有する、請求項1に記載のリン酸エステル化リグノフェノール。
  3. 前記リン酸エステル化リグノフェノールが、クロロリン酸エステルとリグノフェノールとを反応してなる、請求項1又は2に記載のリン酸エステル化リグノフェノール。
  4. 前記リン酸エステル化リグノフェノールが、クロロリン酸ジフェニルとリグノフェノールとを反応してなる、請求項1又は2に記載のリン酸エステル化リグノフェノール。
  5. (A)熱可塑性樹脂99〜60質量%、及び
    (B)下記式(1)で表される構造を有するリグノフェノールをリン酸エステル化してなるリン酸エステル化リグノフェノール1〜40質量%(ただし、前記(A)及び前記(B)の合計量を100質量%とする)を含有することを特徴とする樹脂組成物。

    〔式中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はアリールオキシ基を示し、Rは、ヒドロキシアリール基又はアルキル置換ヒドロキシアリール基を示し、Rは、ヒドロキシアルキル基、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基又は−OR(Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を示す)を示し、水素原子以外のR〜Rはそれぞれ置換基を有していてもよく、p及びqは、0〜4の整数を示す。但し、pが2以上である場合、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、また、qが2以上である場合、複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。〕
  6. 前記リグノフェノールが下記式(2)で表される構造を有する、請求項5に記載の樹脂組成物。
  7. 前記(B)リン酸エステル化リグノフェノールが、クロロリン酸エステルとリグノフェノールとを反応してなる、請求項5又は6に記載の樹脂組成物。
  8. 前記(B)リン酸エステル化リグノフェノールが、クロロリン酸ジフェニルとリグノフェノールとを反応してなる、請求項5又は6に記載の樹脂組成物。
  9. 前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリカーボネート樹脂よりなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項5〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
  10. 前記(A)熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である、請求項5〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
  11. 前記(A)熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂である、請求項5〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
  12. 請求項5〜11のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
  13. 前記成形体が、電線、ケーブルの被覆材、保護カバー、及び支持体よりなる群から選択される、請求項12に記載の成形体。
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JP2018172577A (ja) * 2017-03-31 2018-11-08 出光ライオンコンポジット株式会社 リン酸エステル変性フェノール化リグニンの製造方法、リン酸エステル変性フェノール化リグニン、樹脂組成物及び成形体
JP2020176213A (ja) * 2019-04-18 2020-10-29 清水建設株式会社 難燃性樹脂組成物、成形体及び樹脂繊維
JP2021008576A (ja) * 2019-07-02 2021-01-28 清水建設株式会社 難燃性樹脂組成物及び成形体

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