JP2018025714A - 電子写真感光体 - Google Patents

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純 大平
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一成 大山
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高典 上野
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Abstract

【課題】水素化アモルファスシリコンからなる光導電層、水素化アモルファスシリコンカーバイドまたは水素化アモルファスカーボンからなる表面層をこの順に積層した電子写真感光体において、表面層および表面層の下層の酸化抑制と、比較的低抵抗の現像剤を用いた場合の電位低下抑制との両立が困難であった。【解決手段】表面層のケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比率C/(Si+C)を0.80以上、水素原子の原子数(H)とケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する水素原子の原子数(H)の比率H/(Si+C+H)を0.30以上0.40以下、炭素元素のsp3結合数(sp3)と炭素元素のsp2結合数(sp2)の和に対する炭素元素のsp3結合数(sp3)の比率sp3/(sp3+sp2)を0.30以上、イオン化ポテンシャルを5.50eV以上とする。【選択図】図1

Description

本発明は導電性支持体上に水素化アモルファスシリコン(以下、「a−Si:H」とも記す)で構成されている光導電層と、水素化アモルファスシリコンカーバイド(以下、「a−SiC:H」とも記す)または水素化アモルファスカーボン(以下、「a−C:H」とも記す)で構成されている表面層をこの順に積層した電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも記す)に関する。
近年、デジタル化された電子写真装置の高速化およびフルカラー化が着実に進んでおり、商業印刷の市場への進出が本格化している。商業印刷では、出力画像が商品として扱われるため、今まで以上に高画質、高安定、高信頼性等が求められる。
高画質の観点では、電子写真方式ではトナー粒径と画質に密接な関係があり、トナー粒径の微細化が有利である。現在、取り扱いのし易さから乾式現像が主流であるが、近年、トナー粒径の微細化に有利な液体現像が見直されつつある。
一般的に液体現像では電気絶縁性液体として炭化水素有機溶媒やシリコーンオイルなどが使用されている。トナー像を記録媒体に転写した後、記録媒体に電気絶縁性液体が残存すると、著しい画像品位の劣化を招いてしまうため、電気絶縁性液体を除去する必要がある。記録媒体からの電気絶縁性液体除去は、熱エネルギーを加えて電気絶縁性液体を揮発除去する方法が一般的に用いられているが、多大なエネルギーが必要となっている。
そこで、記録媒体から電気絶縁性液体を熱エネルギーで除去するのではなく、電気絶縁性液体を光重合により硬化させる方法が提案されている。光硬化型の液体現像剤としては、電気絶縁性液体として反応性官能基を持ったモノマー或いはオリゴマーを使用し、更に光重合開始剤を溶解させたものを用いる。尚、この光硬化型の液体現像剤は、紫外線などの光を照射して反応性官能基を反応させて硬化するもので、高速対応も可能である。この様な光硬化型の液体現像剤が、特許文献1で提案されている。
一方、液体現像剤と接触する部材、例えば電子写真感光体等は使用する電気絶縁性液体に対して耐性があることが好ましい。電子写真感光体の場合であれば、有機材料からなる電子写真感光体よりも無機材料からなる電子写真感光体を用いた方が良い。液体現像と無機材料からなる電子写真感光体を用いた画像形成装置としては無機材料からなる感光体として光導電層がアモルファスシリコンで形成された電子写真感光体を用いた画像形成装置が特許文献2で提案されている。
また、アモルファスシリコンで形成された電子写真感光体を乾式2成分現像方式の電子写真装置に適応させるために、現像工程での電荷注入を抑える磁性キャリアとして、5×10V/m印加時における体積抵抗が1.0×1010〜1.0×1013Ωcm、2×10V/m印加時における体積抵抗が1.0×1013〜1.0×1016Ωcmの範囲とした磁性キャリアが特許文献3で提案されている。
また、デジタル化された電子写真装置では、一様に帯電した感光体にレーザー等により露光を行い、露光部にトナーを付着させて画像を形成する反転現像が主流になっている。反転現像は、感光体の低電位部にトナーを付着させるので、感光体の帯電極性とトナーの帯電極性は同極性に設定される。近年の電子写真装置で用いられているトナーは、用いられる結着樹脂等の特性から負帯電が主流になっており、反転現像と負帯電トナーを組み合わせたシステムでは、電子写真感光体は負帯電にすることが求められる。
特開2003−57883号公報 特許第5303166号公報 特開2007−206481号公報
導電性支持体上にa−Si:Hで構成されている光導電層と、a−SiC:Hまたはa−C:Hで構成されている表面層をこの順に積層した電子写真感光体を負帯電で用いる場合、電子写真感光体側が陽極になるため、表面層自体が酸化したり、表面層の下層が酸化したりする場合があった。また、比較的低抵抗の現像剤で現像した際に、感光体の帯電電位が低下する場合があった。従来の電子写真感光体では、上記2つの課題を同時に解決することが困難であった。
導電性支持体上にa−Si:Hで構成されている光導電層と、a−SiC:Hまたはa−C:Hで構成されている表面層をこの順に積層した電子写真感光体において、
表面層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比率C/(Si+C)を0.80以上とし、表面層における水素原子の原子数(H)とケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する水素原子の原子数(H)の比率H/(Si+C+H)を0.30以上0.40以下とし、炭素元素のsp結合数(sp)と炭素元素のsp結合数(sp)の和に対する炭素元素のsp結合数(sp)の比率sp/(sp+sp)を0.30以上とし、表面層のイオン化ポテンシャルを5.50eV以上とする。
本発明によれば、電子写真感光体の表面層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比率C/(Si+C)を0.80以上とすることによって、負帯電によって表面層に形成される酸化膜SiOの成長を抑制できる。
また、電子写真感光体の表面層における水素原子の原子数(H)とケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する水素原子の原子数(H)の比率H/(Si+C+H)を0.40以下とし、かつ、炭素元素のsp結合数(sp)と炭素元素のsp結合数(sp)の和に対する炭素元素のsp結合数(sp)の比率sp/(sp+sp)を0.30以上とすることによって、負帯電によって感光体に飛来する負イオンが表面層を透過することを抑制し、表面層よりも下層が酸化することを防止できる。
さらに、電子写真感光体の表面層における水素原子の原子数(H)とケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する水素原子の原子数(H)の比率H/(Si+C+H)を0.30以上とし、電子写真感光体の表面層のイオン化ポテンシャルを5.50eV以上とすることによって、比較的低抵抗の現像剤で現像した場合でも帯電電位の低下を抑制することができる。
以上のように、本発明で特定した構成を採用することにより、本発明の電子写真感光体は負帯電による表面層および下層の酸化と、比較的低抵抗の現像剤を用いた現像工程における帯電電位の低下を同時に抑制することができる。
本発明の電子写真感光体の模式断面図 本発明の電子写真感光体を搭載可能な電子写真装置の模式断面図 本発明の電子写真感光体の製造装置の模式断面図
[本発明の電子写真感光体]
本発明の感光体は、導電性支持体上に水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)で構成されている光導電層と、水素化アモルファスシリコンカーバイド(a−SiC:H)または水素化アモルファスカーボン(a−C:H)で構成されている表面層をこの順に積層した構成を有し、表面層に特徴がある。
図1に本発明の感光体の層構成の一例を示す。この例によれば、本発明の感光体は、導電性支持体としての基体101の上に、下部電荷注入阻止層(第一中間層)102、光導電層103、上部電荷注入阻止層(第二中間層)104、および表面層105をこの順に有する。
以下に各層の特徴について説明する。
[表面層]
本発明の感光体では、表面層をa−SiC:Hまたはa−C:Hで構成する。表面層を構成するケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比率C/(Si+C)を0.80以上とする。本発明の感光体を負帯電で用いると、負帯電で感光体表面に飛来する酸素原子を含む負イオンによって陽極酸化を生じ酸化膜SiOが形成される。表面層の構成原子であるケイ素原子の含有量が多くなると酸化膜SiOの成長速度が速くなり、実際の使用環境下でも顕在化しやすくなるため、酸化を抑制する観点ではC/(Si+C)は低い方が好ましい。検討の結果、C/(Si+C)を0.80以上とすることで、実際の使用環境下でも顕在化しにくいことを見出した。
また、表面層における水素原子の原子数(H)とケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する水素原子の原子数(H)の比率H/(Si+C+H)を0.40以下とし、かつ、炭素元素のsp結合数(sp)と炭素元素のsp結合数(sp)の和に対する炭素元素のsp結合数(sp)の比率sp/(sp+sp)を0.30以上とする。H/(Si+C+H)が0.40を超える場合、表面層を構成するケイ素原子と炭素原子の密度が低くなるため、負帯電によって飛来する負イオンが表面層を透過して下層に影響を与える場合があった。また、sp/(sp+sp)が低く過ぎる場合も同様の理由で、負帯電によって飛来する負イオンが表面層を透過して下層に影響を与える可能性が考えられる。
以後、負イオンが表面層を透過しない場合をバリア性があるとも記し、負イオンが表面層を透過してしまう場合をバリア性がないとも記す。
検討の結果、炭素元素のsp結合数(sp)と炭素元素のsp結合数(sp)の和に対する炭素元素のsp結合数(sp)の比率sp/(sp+sp)を0.30以上に維持した状態で、H/(Si+C+H)を0.40以下とすることで、バリア性が得られることを見出した。
さらに、本発明の感光体は表面層における水素原子の原子数(H)とケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する水素原子の原子数(H)の比率H/(Si+C+H)を0.30以上とし、かつ、表面層のイオン化ポテンシャルを5.50eV以上とする。まず、H/(Si+C+H)が0.30未満の場合、表面層の抵抗が著しく低くなる場合があり、感光体として特性が得るために、H/(Si+C+H)を0.30以上とする必要がある。また、イオン化ポテンシャルは電子放出のし易さの指標であり、イオン化ポテンシャルが高い程、電子放出がし難くなる。よって、表面層のイオン化ポテンシャルが高いほど、電子は放出され難くなり負に帯電しやすくなると考えられる。その結果、感光体を負帯電プロセスで用いる場合には、帯電電位を保持しやすくなると考えられる。本発明の感光体を負帯電および比較的低抵抗の現像システムで用いる場合、帯電電荷を保持しやすく、現像工程において電位の低下を抑制できると考えられる。検討の結果、帯電電位を維持する上でイオン化ポテンシャルは5.50eV以上とする必要があることを見出した。したがって、本発明の感光体の表面層における水素原子の原子数(H)とケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する水素原子の原子数(H)の比率H/(Si+C+H)が、0.30以上0.40以下であることが好ましい。
本発明の電子写真感光体は特に液体現像剤を用いた電子写真装置に適している。前述したように比較的低抵抗の現像剤との組み合わせにも適しており、体積抵抗率が5×10(Ω・cm)以上1×1011(Ω・cm)以下の液体現像剤を用いた電子写真装置に適することを見出した。
[上部電荷注入阻止層(第二中間層)]
本発明の感光体は、負帯電プロセスに適応しているため、表面層と光導電層との間に上部電荷注入阻止層(以下、単に「上部阻止層」とも記す)を設けることが好ましい。本発明の感光体は、表面層をa−C:Hまたはa−SiC:Hで構成し、光導電層をa−Si:Hで構成しているので、上部阻止層はa−SiC:Hで構成することが好ましい。電荷注入阻止能を向上させるためには、a−SiC:H上部阻止層に周期表第13族に属する原子を含有させることが有効である。周期表第13族に属する原子の中でも、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子が好ましい。
[光導電層]
本発明の感光体では、光導電層をa−Si:Hで構成する。水素原子(H)の含有量は、ケイ素原子(Si)と水素原子(H)との和(Si+H)に対して10原子%以上であることが好ましく、15原子%以上であることがより好ましい。一方、水素原子(H)の含有量は、ケイ素原子(Si)と水素原子(H)との和(Si+H)に対して30原子%以下であることが好ましく、25原子%以下であることがより好ましい。
本発明において、光導電層には、必要に応じて、伝導性を制御するための原子を含有させることが好ましい。伝導性を制御するための原子は、光導電層中にまんべんなく均一に分布した状態で含有されていても良いし、また、膜厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。
伝導性を制御するための原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができる。すなわち、p型伝導性を与える周期表第13族に属する原子またはn型伝導性を与える周期表第15族に属する原子を用いることができる。周期表第13族に属する原子の中でも、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子が好ましい。周期表第15族に属する原子の中でも、リン原子、ヒ素原子が好ましい。
光導電層に含有される伝導性を制御するための原子の含有量は、ケイ素原子(Si)に対して1×10−2原子ppm以上であることが好ましく、1×10原子ppm以下であることが好ましい。
本発明において、光導電層の膜厚は、電子写真特性やコストなどの点から、15μm以上60μm以下であることが好ましい。光導電層の膜厚が15μm以上であれば、帯電部材への通過電流量が増大しにくく、劣化しにくくなる。
光導電層の膜厚が60μm以下であれば、a−Siの異常成長部位(例えば、水平方向で50μm以上150μm以下、高さ方向で5μm以上20μm以下の部位。)が大きくなりにくく、表面を摺擦する部材へのダメージが抑えられ、画像欠陥の発生が抑えられる。
なお、光導電層は、単一の層で構成されてもよいし、複数の層(例えば、電荷発生層および電荷輸送層)で構成されてもよい。
[下部電荷注入阻止層(第一中間層)]
本発明においては、導電性支持体(基体)と光導電層との間に、基体側からの電荷注入を阻止する働きを有する下部電荷注入阻止層(以下、単に「下部阻止層」とも記す)を設けることが好ましい。下部阻止層は、感光体の表面が一定極性の帯電処理を受けた際、基体から光導電層への電荷の注入を阻止する機能を有する層である。このような機能を付与するために、下部阻止層は、光導電層を構成する材料をベースとしたうえで、伝導性を制御するための原子を光導電層に比べて比較的多く含有させる。
伝導性を制御するために下部阻止層に含有させる原子は、下部阻止層中にまんべんなく均一に分布した状態で含有されていても良いし、また、膜厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。分布濃度が不均一な場合には、基体側に多く分布するように含有させるのが好適である。いずれの場合においても、伝導性を制御するための原子が基体の表面に対して平行面内方向に均一な分布で下部阻止層に含有されることが、特性の均一化を図るうえからも好ましい。
伝導性を制御するために下部阻止層に含有させる原子としては、周期表第15族に属する原子を用いることができる。周期表第15族に属する原子の中でも、リン原子、ヒ素原子が好ましい。
さらに、下部阻止層には、炭素原子、窒素原子および酸素原子のうち、少なくとも1種の原子を含有させることにより、下部阻止層と基体との間の密着性を向上させることができる。
下部阻止層に含有される炭素原子、窒素原子および酸素原子のうちの少なくとも1種の原子は、下部阻止層中にまんべんなく均一に分布した状態で含有されていてもよい。また、膜厚方向には均一に含有されてはいるが、不均一に分布する状態で含有している部分があってもよい。いずれの場合にも、伝導性を制御するための原子が基体の表面に対して平行面内方向に均一な分布で電荷注入阻止層に含有されることが、特性の均一化を図る上からも好ましい。
下部阻止層の膜厚は、電子写真特性やコストの点から、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.3μm以上5μm以下であることがより好ましい。膜厚を0.1μm以上にすることにより、基体からの電荷注入阻止能を十分に有することができ、好ましい帯電能を得ることができる。一方、10μm以下にすることにより、下部阻止層の形成時間の延長に起因する製造コストの増加を抑えることができる。
[円筒状基体(導電性支持体)]
導電性支持体としての円筒状基体(以下、単に「基体」とも記す)は導電性を有し、表面に形成される光導電層および表面層を保持しうるものであれば特に制限はない。基体の材質としては、例えば、アルミニウム、鉄などの金属や、これらの合金などが挙げられる。
[電子写真感光体の製造装置および製造方法]
本発明の電子写真感光体の製造方法は、前述した規定を満足する層を形成できるものであればいずれの方法であってもよい。具体的には、プラズマCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。これらの中でも、原料供給の容易さなどの点で、プラズマCVD法が好ましい。
以下に、プラズマCVD法を用いた電子写真感光体の製造装置および製造方法について説明する。
図3は、本発明のa−Si感光体を作製するための高周波電源を用いたRFプラズマCVD法による感光体の堆積装置の一例を模式的に示した図である。
この堆積装置は、大別すると、反応容器3110を有する堆積装置3100、原料ガス供給装置3200、および、反応容器3110内を減圧するための排気装置(図示せず)から構成されている。
堆積装置3100中の反応容器3110内にはアースに接続された基体3112、基体加熱用ヒーター3113、および、原料ガス導入管3114が設置されている。さらにカソード電極3111には高周波マッチングボックス3115を介して高周波電源3120が接続されている。
原料ガス供給装置3200は、原料ガスボンベ3221〜3227、バルブ3231〜3237、圧力調整器3261〜3267、流入バルブ3241〜3247、流出バルブ3251〜3257およびマスフローコントローラー3211〜3217から構成されている。各原料ガスを封入したガスのボンベは、補助バルブ3260を介して反応容器3110内の原料ガス導入管3114に接続されている。3116はガス配管であり、3117はリークバルブであり、3121は絶縁材料である。
次に、この装置を使った堆積膜の形成方法について説明する。まず、あらかじめ脱脂洗浄した基体3112を反応容器3110に受け台3123を介して設置する。次に、排気装置(図示せず)を運転し、反応容器3110内を排気する。真空計3119の表示を見ながら、反応容器3110内の圧力が例えば1Pa以下の所定の圧力になったところで、基体加熱用ヒーター3113に電力を供給し、基体3112を例えば50℃以上350℃以下の所定の温度に加熱する。このとき、ガス供給装置3200より、Ar、Heなどの不活性ガスを反応容器3110に供給して、不活性ガス雰囲気中で加熱を行うこともできる。
次に、ガス供給装置3200より堆積膜形成に用いるガスを反応容器3110に供給する。すなわち、必要に応じてバルブ3231〜3237、流入バルブ3241〜3247、流出バルブ3251〜3257を開き、マスフローコントローラー3211〜3217に流量設定を行う。各マスフローコントローラーの流量が安定したところで、真空計3119の表示を見ながらメインバルブ3118を操作し、反応容器3110内の圧力が所望の圧力になるように調整する。
所望の圧力が得られたところで高周波電源3120より高周波電力を印加すると同時に高周波マッチングボックス3115を操作し、反応容器3110内にプラズマ放電を生起する。その後、速やかに高周波電力を所望の電力に調整し、堆積膜の形成を行う。
所定の堆積膜の形成が終わったところで、高周波電力の印加を停止し、バルブ3231〜3237、流入バルブ3241〜3247、流出バルブ3251〜3257、および、補助バルブ3260を閉じ、原料ガスの供給を終える。同時に、メインバルブ3118を全開にし、反応容器3110内を例えば1Pa以下の圧力まで排気する。
以上で、堆積膜の形成を終えるが、複数の堆積膜を形成する場合、再び上記の手順を繰り返してそれぞれの層を形成すればよい。原料ガスの流量や、圧力などを光導電層形成時の条件に向けて一定の時間で変化させて、接合領域の形成を行うこともできる。
すべての堆積膜形成が終わった後、メインバルブ3118を閉じ、反応容器3110内に不活性ガスを導入し、大気圧に戻した後、基体3112を取り出す。
[各層の形成条件]
[表面層]
本発明の電子写真感光体に適した表面層の特性を得るための形成条件について説明する。本発明では表面層をa−SiC:Hまたはa−C:Hで形成する。ケイ素原子供給用の原料ガスとしては、例えば、シラン(SiH)、ジシラン(Si)などのシラン類が好適に使用できる。また、炭素原子供給用の原料ガスとしては、例えば、メタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、ブタン(C10)、エチレン(C6)、アセチレン(C)などのガスが好適に使用できる。それらの原料ガスの混合比を調整することによって、a−SiCの(C/(Si+C))を調整できる。
表面層のH/(H+Si+C)比率は、前述の原料ガスの種類で変更でき、原料ガスに含まれる水素原子の比率が少ないガスを用いる程、H/(H+Si+C)比率を下げることができる。また、原料ガスの種類以外の成膜パラメーターに関しては、基体温度、印加高周波電力、印加直流バイアス、希釈ガスの添加、成膜圧力、成膜速度が挙げられる。基体温度を高く設定する程、H/(H+Si+C)比率を低くできる。印加高周波電力および印加直流バイアスを高く設定する程、H/(H+Si+C)比率を低くできる。希釈ガスとしては、H、He、Arなどが挙げられ、希釈ガスを供給することによって、H/(H+Si+C)比率を低くでき、Hが最も効果的であった。
次に、表面層のsp/(sp+sp)比率も、原料ガスの種類、基体温度、印加高周波電力、印加直流バイアス、希釈ガスの添加、成膜速度で調整できる。
原料ガスの種類は、原料ガスにsp結合数のみを有するガスを使用することで、sp/(sp+sp)比率を高めることができる。基体温度を低めに設定することで、sp/(sp+sp)比率を高めることができる。印加高周波電力および印加直流バイアスを低めに設定することで、sp/(sp+sp)比率を高めることができる。希釈ガスとしては、H、He、Arなどが挙げられ、希釈ガスを供給することによってsp/(sp+sp)比率を下げることができる。成膜圧力は従来に比べて低めに設定することで、sp/(sp+sp)比率を高めることができる。具体的には、30Pa以下が好ましい範囲であった。成膜速度も従来に比べて低めに設定することで、sp/(sp+sp)比率を高めることができる。具体的には、原料ガスの供給を低めに設定し、0.1nm/s以下にするとより効果的であった。
検討の結果、原料ガスにsp結合数のみを有するガスを使用すること、基体温度を低めに設定すること、印加高周波電力および印加直流バイアスを低めに設定すること、希釈ガスは用いないこと、成膜速度を遅く設定すること、が本発明の感光体を作製する際のより好ましい条件であった。
[上部電荷注入阻止層(第二中間層)]
上部電荷注入阻止層の形成は、表面層を形成する場合と同様の方法を採用することができる。そして、反応容器に供給する原料ガスなどの量、高周波電力、反応圧力、基体の温度などの条件を、必要に応じて設定することで形成される。なお、上部阻止層に電荷注入阻止能を付与するには、帯電極性に応じて周期表第13族または第15族に属する原子を含有する原料ガスを添加して形成すれば良いが、本発明の感光体は負帯電用として用いることが前提であるので、周期表第13族に属する原子を含有する原料ガスを添加して形成する。周期表第13族に属する原子を含有する原料ガスとしては、ジボラン(B)が挙げられる。
[光導電層]
光導電層の形成においては、ケイ素原子供給用の原料ガスとして、例えば、シラン(SiH)、ジシラン(Si)などのシラン類が好適に使用できる。また、水素原子供給用の原料ガスとしては、上記シラン類に加えて、例えば、水素(H)も好適に使用できる。
また、上述のハロゲン原子、伝導性を制御するための原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子などを光導電層に含有させる場合には、それぞれの原子を含むガス状または容易にガス化しうる物質を材料として適宜使用すればよい。
[電子写真装置]
本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置の一例を図2に示す。この電子写真装置を使用した画像形成方法を以下説明する。
図2に示す電子写真装置は、フィルム状の誘電体ベルトからなる中間転写ベルト206を用いて転写を行う電子写真プロセスを利用したカラー電子写真装置(複写機またはレーザービームプリンタ)の一例である。
この電子写真装置は、上述の基体上に光導電層と表面層とが順次積層され、回転機構(図示せず)により回転される電子写真感光体201が備えられ、感光体201の周りには、感光体の表面を所定の極性・電位に一様に帯電させるスコロトロン帯電器202と、帯電された感光体201の表面に画像露光203を行って静電潜像を形成する、不図示の画像露光装置とが配置されている。画像露光装置には、カラー原稿画像の色分解・結像露光光学系や、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービームを出力するレーザースキャナによる走査露光系などが備えられる。更に、感光体201の周りには、形成された静電潜像上にトナーを付着させて現像する現像器204が配置されている。さらに、中間転写ベルト206にトナー像を転写した後、感光体201上をクリーニングするクリーニングユニット207、及び、感光体201の除電を行う除電手段208が設けられている。なお、スコロトロン帯電器の他に、コロントロン帯電器も使用でき、さらにその他の帯電器も使用できる。
中間転写ベルト206は、感光体201に当接ニップ部を介して駆動するように配置されており、内側には感光体201上に形成されたトナー像を中間転写ベルト206に転写するための一次転写ローラ205が配備されている。一次転写ローラ205には、感光体201上のトナー像を中間転写ベルト206に転写するための一次転写バイアスを印加するバイアス電源(不図示)が接続されている。中間転写ベルト206の周りには、中間転写ベルト206に転写されたトナー像を記録材210にさらに転写するための二次転写ローラ209が、中間転写ベルト206の下面部に接触するように設けられている。二次転写ローラ209には、中間転写ベルト206上のトナー像を記録材210に転写するための二次転写バイアスを印加するバイアス電源が接続されている。なお、中間転写ベルト206上のトナー像を記録材210に転写した後、中間転写ベルト206の表面上に残留した転写残トナーをクリーニングするための中間転写ベルトクリーナを必要に応じて設けてもよい。
また、この電子写真装置は、画像が形成される複数の記録材210を保持する給紙カセットと、記録材210を給紙カセットから中間転写ベルト206と二次転写ローラ209との当接ニップ部を介して搬送する搬送機構とが設けられている。記録材210の搬送経路上には、記録材210上に転写されたトナー像を記録材210上に定着させる定着器211が配置されている。
次に、この電子写真装置の動作について説明する。
まず、図2に矢印で示すように、感光体201が、反時計方向(X)に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動され、中間転写ベルト206が、時計方向に、感光体201と同じ周速度で回転駆動される。
感光体201は、回転過程で、スコロトロン帯電器202により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで、画像露光203を受け、これにより感光体201の表面上には、目的のカラー画像の第1の色成分像(例えばマゼンタ成分像)に対応した静電潜像が形成される。次いで、第2現像器が回転し、マゼンタトナーMを付着させる現像器が所定の位置にセットされ、その静電潜像が第1色であるマゼンタトナーMにより現像される。このとき、第1現像器は、作動オフになっていて感光体201には作用せず、第1色のマゼンタトナー像に影響を与えることはない。
このようにして、感光体201上に形成担持された第1色のマゼンタトナー像は、感光体201と中間転写ベルト206とのニップ部を通過する過程で、一次転写バイアスがバイアス電源(不図示)から一次転写ローラ205に印加されることによって形成される電界により、中間転写ベルト206の外周面に順次中間転写される。
中間転写ベルト206に第1色のマゼンタトナー像を転写し終えた感光体201の表面は、クリーニングユニット207によりクリーニングされる。次に、感光体201の清掃された表面上に、第1色のトナー像の形成と同様に、第2色のトナー像(例えばシアントナー像)が形成され、この第2色のトナー像が、第1色のトナー像が転写された中間転写ベルト206の表面上に重畳転写される。以下同様に、第3色のトナー像(例えばイエロートナー像)、第4色のトナー像(例えばブラックトナー像)が中間転写ベルト206上に順次重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー像が形成される。
次に、給紙カセットから中間転写ベルト206と二次転写ローラ209との当接ニップ部に所定のタイミングで記録材210が給送され、二次転写ローラ209が中間転写ベルト206に当接されると共に、二次転写バイアスがバイアス電源から二次転写ローラ209に印加されることにより、中間転写ベルト206上に重畳転写された合成カラートナー像が、第2の画像担持体である記録材210に転写される。記録材210へのトナー像の転写終了後、中間転写ベルト206上の転写残トナーは中間転写ベルトクリーニング手段によりクリーニングされてもよい。トナー像が転写された記録材210は定着器211に導かれ、ここで記録材210上にトナー像が加熱定着される。
本電子写真装置の動作において、感光体201から中間転写ベルト206への第1〜第4色のトナー像の順次転写実行時には、二次転写ローラ209および必要に応じて設けても良い中間転写ベルトクリーニング手段は中間転写ベルト206から離間させるようにしてもよい。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
〔実施例1−1、1−2および比較例1−1〜1−5〕
本実施例および比較例では、図3に示したプラズマCVD装置を用い、基体として直径84mm、長さ370mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー上に、図1に示した層構成の電子写真感光体を各2本作製した。下部阻止層、光導電層、上部阻止層は表1の条件として堆積膜を作製し、表面層は表2の条件で堆積膜を作製した。本実施例および比較例1−1,1−2では表面層形成時の原料ガスであるCHの供給量を種々変更した。比較例1−3は比較例1−2に対して反応圧力を変更した。比較例1−4、1−5は比較例1−2に対して水素による希釈ガス流量を変更した。
Figure 2018025714
Figure 2018025714
作製した感光体について、表面層の物性と感光体の特性を以下の具体的方法で評価した。評価結果を表3にまとめて示す。
[表面層物性]
表面層物性として、C/(Si+C)、H/(H+Si+C)、sp/(sp+sp)、イオン化ポテンシャル、の4項目について評価した。
(C/(Si+C)、H/(H+Si+C)の測定)
C/(Si+C)、H/(H+Si+C)はRBS(ラザフォード後方散乱法)およびHFS(水素前方散乱法)により測定した。作製した感光体を測定可能な大きさに切りだし、RBS、HFS測定装置(National Electrostatics Corporation製 Pelletron 3SDH)に設置した。そして、RBSの測定面積における炭素原子とケイ素原子の原子数を測定した。RBSと同時にHFSの測定を行い、HFSの測定面積における水素原子の原子数を測定した。そして、測定した炭素原子、ケイ素原子、および、水素原子の原子数から、H/(H+Si+C)を求めた。
RBSおよびHFSの具体的な測定条件は、入射イオン:He++、入射エネルギー:2.3MeV、入射角:75°、試料電流:22nA、入射ビーム経:2mmである。また、RBSの検出器は、散乱角:160°、アパーチャ径:8mm、HFSの検出器は、反跳角:30°、アパーチャ径:8mm+Slitで測定を行った。
(sp/(sp+sp)の測定)
sp/(sp+sp)はX線光電子分光法(XPS)で測定される炭素原子の結合エネルギーに対応したピークの波形分離から求めた。
作製した感光体から評価サンプルとして、10mm×10mmの大きさに切り出す。このサンプルを、XPS装置(アルバックファイ製VersaProbeII)内の測定ポジションに導入する。その後、X線を照射し、それに伴って放出される励起電子を、検出器で受け取り、受け取られた単位時間あたりの励起電子数の、結合エネルギースペクトルから、表面層に含有される炭素原子の電子の軌道状態の比率を算出する。
具体的には炭素原子の1s軌道からの励起電子がとりうる結合エネルギー範囲278eV以上298eV以下に限定して結合エネルギースペクトルを測定する。そうすることで現実的な測定時間内で、分解能の高いスペクトルデータを得ることができる。
このとき、sp結合数をとる炭素原子は、1s軌道からの励起電子が結合エネルギー284.5eVにピークをとる一方で、sp結合数をとる炭素原子は、1s軌道からの励起電子が結合エネルギー285.4eVにピークをとる。このことから、結合エネルギー284.5eVおよび285.4eVでピークを有する分布関数の重ね合わせによって、実際に測定された炭素原子1s軌道からの励起電子の結合エネルギースペクトルをフィッティング(波形分離)する。それぞれの分布関数は、ローレンツ分布関数とガウス分布関数とをコンボリューションした分布関数を用いた。そして、フィッティングされたsp結合数およびsp結合数に対応する分布関数の各々の、結合エネルギーに対する積分値(面積)から、sp比率(sp/(sp+sp))を算出した。
さらに、アルゴンスパッタを行うことで、表面層をすこしずつ削り、上述の測定を繰り返す。これを表面層が全て削られて無くなるまで繰り返し、膜厚方向のsp比率(sp/(sp+sp))の分布、および膜厚方向の平均値をとる。
これは、X線によって励起される電子が、数nmといった極最表層の領域からしか放出されないため、表面層全体のsp比率(sp/(sp+sp))を求めるために行うものである。
(表面層のイオン化ポテンシャルの測定)
イオン化ポテンシャルは、大気中光電子分光法で測定した。作製した感光体を20mm×20mmの大きさに切りだし、大気中光電子分光法装置(理研計器社製 AC−3)で測定した。測定のエネルギー範囲は4.0〜7.0eVとし、測定ステップは0.1eVとした。照射光エネルギーに対する光電子放出数の0.3乗をプロットし、光電子放出が生じていない低エネルギー側でベースラインを定義し、光電子放出が生じる高エネルギー側のデーターを直線近似して、ベースラインとの交点からイオン化ポテンシャルを求めた。
[感光体特性]
本発明の効果確認として、表面層の酸化、表面層のバリア性、現像工程による電位低下、の3項目について評価した。
(表面層の酸化、および、表面層のバリア性評価)
(評価サンプル準備)
感光体の表面に向けてコロトロン帯電器(帯電幅50mm)と光源を設置し、光を当てながらコロトロン帯電器の帯電ワイヤーに一定電流(−50μA)を供給して、コロナ放電に曝露する。コロナ放電による曝露を5時間行った後、感光体の曝露箇所からサンプルを切りだす。
(表面層の酸化評価)
このサンプルを、XPS(X線光電子分光法)(アルバックファイ製VersaProbeII)内の測定ポジションに導入する。その後、X線を照射し、それに伴って放出される励起電子を、検出器で受け取り、受け取られた単位時間あたりの励起電子数の、結合エネルギースペクトルから、感光体に含有される原子数比率を算出する。
具体的には、感光体に含有されると想定される原子からの励起電子がとりうる結合エネルギー範囲に限定して、結合エネルギースペクトル測定する。そうすることで現実的な測定時間内で、分解能の高いスペクトルデータを得ることができる。すなわち、炭素原子の1s軌道(278eV以上298eV以下)、酸素原子の1s軌道(523eV以上543eV以下)、珪素原子の2p軌道(94eV以上114eV以下)に限定して測定する。
そして、各原子それぞれについて、励起電子の単位時間あたりの検出数の、結合エネルギーに対する積分値(面積)から、含有酸素比率を算出する。
算出された酸素含有率からケイ素原子に対する酸素原子の量が1.0倍未満の場合をAとし、1.0以上1.80未満の場合をB、1.80以上の場合をCとして評価した。
(表面層のバリア性評価)
ついで、アルゴンスパッタを行うことで、感光体の表面層から、その下地層である上部阻止層(第二中間層)の一部までをすこしずつ削りながら、上述の測定を繰り返すことで、含有酸素比率O/(C+O+Si)の膜厚方向分布が得られる。
表面層のバリア性がない場合、前述のコロナ放電による曝露によって、酸素を含む放電生成物が表面層を透過し、その下地層である上部阻止層に到達し、上部阻止層の主成分である珪素が酸化される。それによって、含有酸素比率O/(C+O+Si)の膜厚方向分布において、上部阻止層の界面近傍から、含有酸素比率O/(C+O+Si)が増大する。つまり、この上部阻止層の界面近傍からの含有酸素比率O/(C+O+Si)の増大があったとき、表面層のバリア性がないと判定できる。
上記判定により、バリア性がある場合をAとし、バリア性がない場合をCとして評価した。
(現像工程における電位低下の評価1)
感光体を図2に示す装置に設置し、現像器の下流に表面電位計を設置し、現像ローラを離間した状態で、感光体表面を−500Vに帯電した。続いて、現像ローラの心金に−300Vのバイアスを印加しながら、現像ローラを感光体に接触させ、その時の電位絶対値の低下を測定した。電位の絶対値の低下が15V未満の場合をA、15V以上30V未満の場合をB、30V以上の場合をCとした。なお、以下で作製した液体現像剤を用いた。
(液体現像剤の作製)
(トナー粒子の作製)
セパラブルフラスコ中に、ニュクレルN1525(エチレン−メタクリル酸樹脂/三井デュポンポリケミカル株式会社製)25質量部とドデシルビニルエーテル75質量部を投入した。そして、スリーワンモーターを用いて200rpmで撹拌しながら、オイルバス中で130℃まで1時間かけて昇温した。130℃で1時間保持した後、1時間あたり−15℃の速度で徐冷し、トナー粒子前駆体を作成した。得られたトナー粒子前駆体は、白色のペースト状であった。当該トナー粒子前駆体を59.40質量部、顔料としてピグメントブルー15:3を4.95質量部、荷電補助剤としてトリステアリン酸アルミニウムを0.2質量部、及びドデシルビニルエーテル35.45質量部を、直径0.5mmのジルコニアビーズとともに遊星式ビーズミル(クラシックラインP−6/フリッチュ社)に充填した。そして、室温で200rpmにて4時間粉砕して、トナー粒子分散体(固形分20質量%)を得た。得られたトナー粒子分散体に含有されるトナー粒子は個数平均粒径が0.70μmであった(日機装株式会社製ナノトラック150にて測定した)。
(液体現像剤の調製)
前述のトナー粒子分散体10.0質量部に、重合性液状モノマーとしてジプロピレングリコールジビニルエーテル(例示化合物B−19)を89.7質量部、光重合開始剤として例示化合物A−3を0.2質量部加え、帯電制御剤として水素添加レシチン(レシノールS−10/日光ケミカルズ株式会社製)を用い、入れ量を調整して液体現像剤の抵抗率を1×1010Ωcmに調整した。
(現像工程における電位低下の評価2)
感光体をキヤノン製imageRUNNER ADVANCE C7270の改造機に設置した。改造機は、一次帯電器の一次電流とグリット電圧を外部制御可能にした点である。この改造機を用いて、現像器の下流に表面電位計を設置し、現像器を取り外した状態で、全面白画像を出力し、感光体表面が−500Vになるように一次電流とグリット電圧を調整した。続いて、現像器を取り付けた状態で現像ローラの芯金に現像バイアスを印加した際の感光体の表面電位を測定した。現像器を設置した時の電位絶対値の低下を測定した。電位の絶対値の低下が15V未満の場合をA、15V以上30V未満の場合をB、30V以上の場合をCとした。なお、上記で作製した液体現像剤を用いた。
なお、imageRUNNER ADVANCE C7270の現像剤に用いられる磁性キャリアの2×10V/m印加時における体積抵抗は5.0×10〜1.0×10Ωcmの範囲であった
以上、感光体特性の3項目の結果の全てがB以上の時に本発明の効果が得られていると判定した。
Figure 2018025714
評価の結果、表面層形成時の原料ガスであるCHの流量を低めに設定することでイオン化ポテンシャルを5.50以上に維持しつつ、H/(H+C+Si)を低くすることができることが分かった。一方、反応圧力を高く設定すると、H/(H+C+Si)が微増する傾向があった。また、水素ガスによる希釈を行うとH/(H+C+Si)を効率的に低下できるものの、イオン化ポテンシャルの低下が顕著となった。
その結果、原料ガスの流量を低下させて作製した実施例のa−C:Hからなる表面層の各物性(H/(H+C+Si)、sp/(sp+sp)、イオン化ポテンシャル)が規定内にでき、全て感光体特性がA評価となり、本発明の効果が確認された。一方、H/(H+Si+C)が0.40以上となった比較例では表面層のバリア性がC評価となった。また、イオン化ポテンシャルが5.50以下となった比較例では電位低下がC評価となった。
〔実施例2−1、2−2および比較例2−1、2−2〕
本実施例および比較例では、図3に示したプラズマCVD装置を用い、表面層を表4の条件で堆積膜を形成した以外は実施例1−1と同様の方法で、図1に示した層構成の電子写真感光体を各2本作製した。本実施例および比較例では表面層形成時の基体温度を種々変更した。
なお、実施例1−1と同様の表面層物性、感光体特性について評価を行った。評価結果を表5にまとめて示す。
Figure 2018025714
Figure 2018025714
評価の結果、基体温度を低く設定すると、表面層のH/(H+C+Si)、sp/(sp+sp)、および、イオン化ポテンシャルが高くなる傾向がみられた。表面層の各物性が規定内である実施例の感光体では全て評価項目がB評価以上となり、本発明の効果が得られた。一方、イオン化ポテンシャルが5.50以下となった比較例2−1では電位低下がC評価となった。また、H/(H+C+Si)が0.40以上となった比較例2−2ではバリア性がC評価となった。
〔実施例3−1〜3−3および比較例3〕
本実施例および比較例では、図3に示したプラズマCVD装置を用い、表面層を表6の条件で堆積膜を形成した以外は実施例1−1と同様の方法で、図1に示した層構成の電子写真感光体を各2本作製した。本実施例および比較例では表面層形成時の原料ガスCHとSiHの比率を種々変更した。
なお、実施例1−1と同様の表面層物性、感光体特性について評価を行った。評価結果を表7にまとめて示す。
Figure 2018025714
Figure 2018025714
評価の結果、原料ガスの混合比を調整し、表面層のC/(C+Si)が0.80以上である実施例の感光体では表面層の酸化が抑制され、全ての評価項目がB評価以上となり、本発明の効果が確認された。一方、表面層のC/(C+Si)が0.80未満となった比較例3の感光体では表面層の酸化がC評価となった。
〔実施例4−1〜4−3および比較例4〕
本実施例および比較例では、図3に示したプラズマCVD装置を用い、表面層を表8の条件で堆積膜を形成した以外は実施例1−1と同様の方法で、図1に示した層構成の電子写真感光体を各2本作製した。本実施例および比較例では表面層形成時の基体温度を種々変更した。
なお、実施例1−1と同様の表面層物性、感光体特性について評価を行った。評価結果を表9にまとめて示す。
Figure 2018025714
Figure 2018025714
評価の結果、基体温度を低く設定すると、表面層のH/(H+C+Si)、sp/(sp+sp)、および、イオン化ポテンシャルが高くなる傾向が見られた。基体温度が適正化され、表面層物性が規定内となった実施例の感光体の感光体特性がB評価以上となり、本発明の効果が得られていることが確認された。一方、表面層のイオン化ポテンシャルが5.50以下となった比較例4では電位低下がC評価となった。
[実施例5−1〜5−3]
本実施例では実施例1−1で作製した感光体を用いた。現像剤の調整において、帯電制御剤として水素添加レシチン(レシノールS−10/日光ケミカルズ株式会社製)の入れ量を調整して液体現像剤の抵抗率を5×10〜1×1011Ωcmに調整し、感光体特性として電位低下について評価(現像工程における電位低下の評価1)を行った。評価結果を表10に示す。
Figure 2018025714
評価の結果、現像剤抵抗が5×10〜1×1011(Ω・cm)の広い範囲で電位低下がB評価以上となり、本発明の効果が確認された。
101‥‥基体
102‥‥下部電荷注入阻止層(第一中間層)
103‥‥光導電層
104‥‥上部電荷注入阻止層(第二中間層)
105‥‥表面層
201‥‥電子写真感光体
202‥‥スコロトロン帯電器
203‥‥画像露光光
204‥‥現像器
205‥‥一次転写ローラ
206‥‥中間転写ベルト
207‥‥クリーニングユニット
208‥‥除電手段
209‥‥二次転写ローラ
210‥‥記録材
211‥‥定着器

Claims (3)

  1. 導電性支持体上に水素化アモルファスシリコンで構成されている光導電層と、水素化アモルファスシリコンカーバイドまたは水素化アモルファスカーボンで構成されている表面層をこの順に積層した電子写真感光体において、
    前記表面層におけるケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する炭素原子の原子数(C)の比率C/(Si+C)が、0.80以上であり、
    前記表面層における水素原子の原子数(H)とケイ素原子の原子数(Si)と炭素原子の原子数(C)との和に対する水素原子の原子数(H)の比率H/(Si+C+H)が、0.30以上0.40以下であり、
    炭素元素のsp結合数(sp)と炭素元素のsp結合数(sp)の和に対する炭素元素のsp結合数(sp)の比率sp/(sp+sp)が0.30以上であり、
    前記表面層のイオン化ポテンシャルが5.50eV以上である
    ことを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記電子写真感光体が、さらに、前記表面層と前記光導電層との間に、上部電荷注入阻止層を有する、請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記上部電荷注入阻止層が、周期表第13族に属する原子を含む水素化アモルファスシリコンカーバイドで構成されている、請求項2に記載の電子写真感光体。
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