JP2018024802A - セルロースアシレート、樹脂組成物、樹脂成形体、及びセルロースアシレートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
近年では、熱可塑性樹脂として植物由来の樹脂が利用されており、従来から知られている植物由来の樹脂の一つにセルロースアシレートがある。
硫酸イオンの含有量Aと塩素イオンの含有量Bとの質量比(A/B)が1以上4以下であるセルロースアシレート。
重合度が100以上350以下である請求項1に記載のセルロースアシレート。
置換度が2.1以上2.6以下である請求項1又は請求項2に記載のセルロースアシレート。
アセチル基を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のセルロースアシレート。
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のセルロースアシレートを含む樹脂組成物。
請求項5に記載の樹脂組成物を含有する樹脂成形体。
前記樹脂成形体が射出成形体である請求項6に記載の樹脂成形体。
セルロースに対する質量比が2質量%以上20質量%以下の硫酸の存在下で、セルロースをアシル化する第一工程と、
前記アシル化したセルロースに対する質量比が0.1質量%以上5質量%以下の塩酸の存在下で、前記アシル化したセルロースを脱アシル化及び解重合する第二工程と、
を有するセルロースアシレートの製造方法。
前記第一工程及び前記第二工程を同じ容器内で連続して実施する請求項8に記載のセルロースアシレートの製造方法。
請求項2に係る発明によれば、重合度が350超える場合に比べ、セルロースアシレートを含む樹脂組成物を高温で成形したときに生じる、樹脂成形体の着色を抑制するセルロースアシレートが提供される。
請求項3に係る発明によれば、置換度が2.1未満又は2.6超える場合に比べ、セルロースアシレートを含む樹脂組成物を高温で成形したときに生じる、樹脂成形体の着色を抑制するセルロースアシレートが提供される。
請求項4に係る発明によれば、硫酸イオンの含有量Aと塩素イオンの含有量Bとの質量比(A/B)が1未満又は4超える場合に比べ、セルロースアシレートとしてセルロースアセテートを含む樹脂組成物を高温で成形したときに生じる、樹脂成形体の着色を抑制するセルロースアシレートが提供される。
請求項7に係る発明によれば、硫酸イオンの含有量Aと塩素イオンの含有量Bとの質量比(A/B)が1未満又は4超えるセルロースアシレートを適用した場合に比べ、セルロースアシレートを含む樹脂組成物を射出成形で成形したときに生じる、着色が抑制された樹脂成形体が提供される。
本実施形態に係るセルロースアシレートは、硫酸イオンの含有量Aと塩素イオンの含有量Bとの質量比(A/B)が1以上4以下である。なお、「ppm」は質量基準である。
このように、セルロースアシレートを含む樹脂組成物を高温(セルロースアシレートの融解温度(融点)近い温度以上)で成形(例えば、射出成形等)したときでも、樹脂成形体の着色を抑制することが望まれている。
通常、セルロースのアシル化には硫酸を触媒として用いるが、その場合、一部の硫酸がセルロースアシレートの水酸基又はアシル基と交換反応を起こし、硫酸エステルを形成することが報告されている。硫酸エステルは、洗浄しても除去しにくく、この硫酸エステル量が多くなると、通常のアシル基よりも分解が速いことから、高温での成形(射出成形等)時の温度上昇により、硫酸エステルの分解による樹脂成形体の着色が促進されるものと考えられる。
一方で、セルロースアシレート内に、硫酸(つまり、硫酸イオン(SO4 2−))と共に塩素イオン(Cl−))を存在させると、塩素イオンがアシル基に配位すると考えられる。そして、塩素イオンがアシル基に配位すると、セルロースアシレートの製造及び洗浄での硫酸エステルの形成を抑制するのではなかと考えられる。そのため、塩素イオンによって樹脂成形体の着色の要因となる硫酸エステルの形成が低減されることにより、セルロースアシレートを含む樹脂組成物を高温(セルロースアシレートの融解温度(融点)近い温度以上)で成形(例えば、射出成形等)したときでも、樹脂成形体の着色が抑制されると考えられる。
塩素イオンの含有量Aは、反応速度と加熱時着色抑制の観点から、セルロースアシレートに対する質量比で0.002質量%以上0.01質量%以下が好ましく、0.003質量%以上0.007質量%以下がより好ましい。
なお、硫酸イオン及び塩素イオンの含有量は、硫酸イオン、塩素イオン、その他不純物等を含むセルロースアシレート全体に対する質量比である。
具体的な測定条件は、吸収液:内部標準として25mg/l、PO4 3−を含む1.0mg/l H2O2水溶液、加熱範囲:25℃以上600℃以下の範囲、加熱速度:10℃/minである。
なお、R1、R2、及びR3で表されるアシル基は、炭素数1以上6以下のアシル基が好ましい。
nを40以上にすると、樹脂成形体の強度が高まりやすくなる。nを300以下にすると、樹脂成形体の柔軟性の低下が抑制されやすくなる。
したがって、一般式(1)で表されるセルロースアシレート中にn個あるR1は、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。同様に、n個あるR2、及びn個あるR3も、それぞれ、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。そして、これらのうちの少なくとも一部がアシル基を表す。
RACで表される炭化水素基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状であることがより好ましい。
また、炭化水素基は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよいが、飽和炭化水素基であることがより好ましい。
また、炭化水素基は、炭素及び水素以外の他の原子(例えば酸素、窒素等)を有していてもよいが、炭素及び水素のみからなる炭化水素基であることがより好ましい。
アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基(ブタノイル基)、プロペノイル基、ヘキサノイル基等が挙げられる。
これらの中でもアシル基としては、樹脂組成物の成形性の向上の観点から、炭素数2以上4以下のアシル基がより好ましく、炭素数2以上3以下のアシル基がさらに好ましく、炭素数2のアシル基(アセチル基)が特に好ましい。つまり、セルロースアシレートは、アセチル基を有することが好ましい。
まず、セルロースアシレートの重量平均分子量を、ジメチルアセトアミド/塩化リチウム=90/10溶液を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ装置(GPC装置:東ソー社製、HLC−8320GPC、カラム:TSKgelα−M)にてポリスチレン換算で測定する。
次いで、セルロースアシレートの構成単位分子量で割ることで、セルロースアシレートの重合度を求める。なお、例えば、セルロースアシレートの置換基がアセチル基の場合、構成単位分子量は、置換度が2.4のとき263、置換度が2.9のとき287となる
そして、置換度は、H1−NMR(JMN−ECA/JEOL RESONANCE社製)にて、セルロース由来水素とアシル基由来ピークの積分比から測定する。
本実施形態に係るセルロースアシレートの製造方法は、特に制限はないが、セルロースに対する質量比が2質量%以上20質量%以下の硫酸の存在下で、セルロースをアシル化する第一工程(以下「アシル化工程」とも称する)と、アシル化したセルロースに対する質量比が0.1質量%以上5質量%以下の塩酸の存在下で、アシル化したセルロースを脱アシル化及び解重合する第二工程(以下「脱アシル化工程」とも称する)と、を有するセルロースアシレートの製造方法であることが好ましい。
また、硫酸量及び塩酸量を上記範囲に調整した上で、塩酸を脱アシル化触媒及び解重合触媒として、脱アシル化と共に解重合を進行させることで、セルロースアシレートから硫酸エステルの離脱及びアシル基への塩素イオンの配位が促進されると考えられる。
そのため、本実施形態に係るセルロースアシレートの製造方法では、セルロースアシレートを含む樹脂組成物を高温で成形したときに生じる、樹脂成形体の着色がより抑制される。
アシル化工程では、アシル化触媒(硫酸)の存在下で、セルロースをアシル化する。
具体的には、アシル化工程では、例えば、アシル化触媒、アシル化剤、及びアシル化溶媒を含む溶液にセルロースを浸漬又は分散させた状態で、攪拌しながら、セルロースをアシル化する。なお、アシル化触媒(又はアシル化触媒水溶液)、アシル化剤、及びアシル化溶媒を含む溶液にセルロースを浸漬又は分散させてもよいし、アシル化溶媒にセルロースを浸漬又は分散させた溶液に、アシル化触媒(又はアシル化触媒水溶液)及びアシル化剤を添加してもよい。
なお、アシル化の対象となるセルロースには、通常、原料(パルプ)を由来とするヘミセルロース等の異成分も含むことがある。このため、本願明細書では、用語「セルロース」は、ヘミセルロース等の異成分を含むことも意味する。
活性化処理の時間(2回処理するときは合計の時間)は、例えば、0.1時間以上20時間以下(好ましくは1時間以上15時間以下)である。
アシル化剤としては、アシル化で得たいセルロースアシレートの種類に応じて選択される。例えば、セルロースアセテートを得る場合は、アシル化剤として無水酢酸を適用する。また、セルロースアセテートプロピオネートを得る場合は、アシル化剤として、無水酢酸および無水プロピオン酸の2種を適用する。
なお、アシル化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
これらの中でも、樹脂成形体の着色抑制の観点から、アシル化溶媒としては、ギ酸、酢酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。
なお、アシル化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
温度:例えば、10℃以上80℃以下(好ましくは15℃以上40℃以下)
時間:例えば、1時間以上12時間以下(好ましくは2時間以上8時間以下)である。
脱アシル化工程では、塩酸の存在下で、アシル化したセルロース(以下「一次セルロースアシレート」とも称する)を脱アシル化及び解重合する。脱アシル化工程は、脱アシル化(加水分解又はケン化)により、一次セルロースアシレートの置換度を調整すると共に、解重合により一次セルロースアシレートの低分子量化を行い、目的とする置換度及び重合度のセルロースアシレート(以下「二次セルロースアシレート」とも称する)を得る工程である。
中和剤は、アルカリ金属化合物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸塩など)、アルカリ土類金属化合物(水酸化カルシウム等の水酸化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;酢酸カルシウム等の有機酸塩など)などの塩基が挙げられる。
なお、アシル化工程と脱アシル化工程とを同じ容器内で連続して実施する場合は、仕込んだセルロースが全て置換度3のトリアシレートになっていると仮定して一次セルロースアシレートの質量を算出する。
温度:例えば、40℃以上100℃以下(好ましくは50℃以上90℃以下)
時間:例えば、1時間以上15時間以下(好ましくは2時間以上12時間以下)である。
この場合、脱アシル化工程では、塩酸、及び脱アシル化溶媒(アシル化溶媒と同じ溶媒、具体的には、アルキルカルボン酸、又はアルキルカルボン酸及び水の混合溶媒)を含む溶液に粉末状の一次セルロースアシレートを溶解させた状態で、一次セルロースアシレートを脱アシル化及び解重合する。なお、塩酸及び溶媒を含む溶液に粉末状の一次セルロースアシレートを溶解させてもよいし、溶媒に粉末状の一次セルロースアシレートを溶解させた溶液に、塩酸水溶液を添加してもよい。
ここで、中和処理は、例えば、アルキルカルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸等の直鎖状又は分岐鎖状で炭素数1以上6以下のアルキルカルボン酸)の金属塩(Na等の周期律表族元素、Ca等の周期律表第2族元素等の金属塩)を用いて実施することがよい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、本実施形態に係るセルロースアシレートを含む。本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、可塑剤、その他の成分等を含んでもよい。
可塑剤としては、例えば、アジピン酸エステル含有化合物、ポリエーテルエステル化合物、セバシン酸エステル化合物、グリコールエステル化合物、酢酸エステル、二塩基酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、フタル酸エステル化合物、樟脳、クエン酸エステル、ステアリン酸エステル、金属石鹸、ポリオール、ポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも、アジピン酸エステル含有化合物、ポリエーテルエステル化合物が好ましく、アジピン酸エステル含有化合物がより好ましい。
アジピン酸エステル含有化合物(アジピン酸エステルを含む化合物)とは、アジピン酸エステル単独の化合物、又は、アジピン酸エステルとアジピン酸エステル以外の成分(アジピン酸エステルとは異なる化合物)との混合物であることを示す。但し、アジピン酸エステル含有化合物は、アジピン酸エステルを全成分に対して50質量%以上で含むことがよい。
RAE3は、アルキレン基を表す。
m1は、1以上20以下の整数を表す。
m2は、1以上10以下の整数を表す。
一般式(AE−1)及び(AE−2)中、RAE1及びRAE2が表すポリオキシアルキル基[−(CxH2X−O)y−RA1]において、RA1が表すアルキル基は、炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより好ましい。RA1が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状、分岐状が好ましい。
ポリエーテルエステル化合物として具体的には、例えば、一般式(EE)で表されるポリエーテルエステル化合物が挙げられる。
REE1が表すアルキレン基の炭素数を3以上にすると、樹脂組成物の流動性の低下が抑制され、熱可塑性が発現しやすくなる。REE1が表すアルキレン基の炭素数を10以下又はREE1が表すアルキレン基を直鎖状にすると、セルロースアシレートとの親和性が高まりやすくなる。このため、REE1が表すアルキレン基を直鎖状とし、且つ炭素数を上記範囲とすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
これら観点から、特に、REE1が表すアルキレン基は、n−ヘキシレン基(−(CH2)6−)が好ましい。つまり、ポリエーテルエステル化合物は、REE1としてn−ヘキシレン基(−(CH2)6−)を表す化合物であることが好ましい。
REE2が表すアルキレン基の炭素数を3以上にすると、樹脂組成物の流動性の低下が抑制され、熱可塑性が発現しやすくなる。REE2が表すアルキレン基の炭素数を10以下又はREE2が表すアルキレン基を直鎖状にすると、セルロースアシレートとの親和性が高まりやすくなる。このため、REE2が表すアルキレン基を直鎖状とし、且つ炭素数を上記範囲とすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
これら観点から、特に、REE2が表すアルキレン基は、n−ブチレン基(−(CH2)4−)が好ましい。つまり、ポリエーテルエステル化合物は、REE2としてn−ブチレン基(−(CH2)4−)を表す化合物であることが好ましい。
AEE1、及びAEE2が表すアリール基は、炭素数6以上12以下のアリール基であり、フェニル基、ナフチル基等の無置換アリール基、又はt−ブチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基等の置換フェニル基が挙げられる。
AEE1、及びAEE2が表すアラルキル基としては、−RA−Phで示される基である。RAは、直鎖状又は分岐状の炭素数1以上6以下(好ましくは炭素数2以上4以下)のアルキレン基を表す。Phは、無置換フェニル基、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1以上6以下(好ましくは炭素数2以上6以下)のアルキル基で置換された置換フェニル基を表す。アラルキル基として具体的には、例えば、ベンジル基、フェニルメチル基(フェネチル基)、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等の無置換アラルキル基、又はメチルベンジル基、ジメチルベンジル基、メチルフェネチル基等の置換アラルキル基が挙げられる。
重量平均分子量(Mw)を450以上にすると、ブリード(析出する現象)し難くなる。重量平均分子量(Mw)を650以下にすると、セルロースアシレートとの親和性が高まりやすくなる。このため、重量平均分子量(Mw)を上記範囲にすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
なお、ポリエーテルエステル化合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定される値である。具体的には、GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー社製、HPLC1100を用い、東ソー製カラム・TSKgel GMHHR−M+TSKgel GMHHR−M(7.8mmI.D.30cm)を使用し、クロロホルム溶媒で行う。そして、重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
粘度を35mPa・s以上にすると、セルロースアシレートへの分散性が向上しやすくなる。粘度を50mPa・s以下にすると、ポリエーテルエステル化合物の分散の異方性が出現し難くなる。このため、粘度を上記範囲にすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
なお、粘度は、E型粘度計により測定される値である。
溶解度パラメータ(SP値)を9.5以上9.9以下にすると、セルロースアシレートへの分散性が向上しやすくなる。
溶解度パラメータ(SP値)は、Fedorの方法により算出された値である、具体的には、溶解度パラメータ(SP値)は、例えば、Polym.Eng.Sci.,vol.14,p.147(1974)の記載に準拠し、下記式によりSP値を算出する。
式:SP値=√(Ev/v)=√(ΣΔei/ΣΔvi)
(式中、Ev:蒸発エネルギー(cal/mol)、v:モル体積(cm3/mol)、Δei:それぞれの原子又は原子団の蒸発エネルギー、Δvi:それぞれの原子又は原子団のモル体積)
なお、溶解度パラメータ(SP値)は、単位として(cal/cm3)1/2を採用するが、慣行に従い単位を省略し、無次元で表記する。
その他の成分としては、例えば、難燃剤、相溶化剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)などが挙げられる。これらの成分の含有量は、樹脂組成物全体に対してそれぞれ、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記セルロースアシレート以外の他の樹脂を含有していてもよい。但し、他の樹脂は、樹脂組成物全体に占めるセルロースアシレートの比率が前述の範囲となる量とすることが好ましい。
他の樹脂としては、例えば、従来公知の熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、ポリカーボネート樹脂;ポリプロピレン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリーレン樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリケトン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリアリールケトン樹脂;ポリエーテルニトリル樹脂;液晶樹脂;ポリベンズイミダゾール樹脂;ポリパラバン酸樹脂;芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、及びシアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を、重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体樹脂;ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;シアン化ビニル−ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;芳香族アルケニル化合物−ジエン−シアン化ビニル−N−フェニルマレイミド共重合体樹脂;シアン化ビニル−(エチレン−ジエン−プロピレン(EPDM))−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;塩化ビニル樹脂;塩素化塩化ビニル樹脂;などが挙げられる。これら樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、セルロースアシレートと、必要に応じて、可塑剤、その他の成分等と、を少なくとも含む混合物を溶融混練することにより製造される。ほかに、本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、上記成分を溶剤に溶解することによっても製造される。
溶融混練の手段としては公知の手段が挙げられ、具体的には例えば、二軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
なお、混練の際の温度は、使用するセルロースアシレートの溶融温度に応じて決定すればよいが、熱分解と流動性の点から、例えば、140℃以上240℃以下が好ましく、160℃以上200℃以下がより好ましい。
以下、本実施形態に係る樹脂組成物を使用した樹脂成形体(以下「本実施形態に係る樹脂成形体」とも称する)について説明する。
具体的には、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を成形して得られる。成形方法は、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
射出成形のシリンダ温度は、例えば140℃以上240℃以下であり、好ましくは150℃以上220℃以下であり、より好ましくは160℃以上200℃以下である。射出成形の金型温度は、例えば30℃以上120℃以下であり、40℃以上80℃以下がより好ましい。射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX500、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX70000、東芝機械製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
(セルロースアセテート(CA1)の合成)
−アシル化工程−
セルロース粉末(日本製紙ケミカル社製、KCフロックW50、重合度=1020)3kg、濃硫酸156g(硫酸量=150g)、酢酸30kg、無水酢酸6kgを50L反応容器に入れ、20℃で4時間攪拌した。これにより、セルローストリアセテートを生成した。
得られたセルローストリアセテートを含む溶液に、攪拌終了後ただちに3kgの酢酸と1.2Lの純水を加え、20℃で30分間攪拌後、0.2M塩酸水溶液20L(塩酸量=0.3kg)を加え、75℃に加熱して、5時間攪拌した。これにより、セルローストリアセテートの脱アシル化と共に解重合を進行させた。
次に、攪拌後の溶液を、200Lの純水に2時間かけて滴下し、20時間静置した後、孔径6μmのフィルターを通してろ過し、4kgの白色粉末(セルロースジアセテート)を得た。
得られた白色粉末(セルロースジアセテート)を、フィルタープレス(栗田機械社製、SF(PP))を用い、純水にて電導度が50μS以下になるまで洗浄後、乾燥した。
乾燥後の白色粉末3kgに200gの酢酸カルシウムと30Lの純水を加え、25℃で2時間攪拌した後、ろ過し、得られた粉末を60℃で72時間乾燥し、セルロースアセテート(CA1)を2.5kg得た。
アシル化工程に用いる硫酸量150gを290gとした以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA2)を得た。
アシル化工程に用いる硫酸量150gを70gとした以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA3)を得た。
脱アシル化工程において5時間攪拌したところを7時間に変えた以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA4)を得た。
脱アシル化工程において5時間攪拌したところを4時間30分に変えた以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA5)を得た。
アシル化工程で得られた溶液を室温で10時間放置した後、脱アシル化工程を行った以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA6)を得た。
脱アシル化工程において75℃で5時間攪拌するところを、65℃で7時間攪拌した以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA7)を得た。
脱アシル化工程において75℃で5時間攪拌するところを、80℃で4時間攪拌した以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA8)を得た。
アシル化工程に無水酢酸6kgを用いたところを、無水プロピオン酸12.5kg用いた以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースプロピオネート(CP1)を得た。
アシル化工程に用いる硫酸量150gを320gとした以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA9)を得た。
アシル化工程に用いる硫酸量150gを50gとした以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA10)を得た。
市販のセルロースアセテート(ダイセル社製、L50)をセルロースアセテート(CA11)として準備した。
特開2009−161701の実施例1および実施例7に記載の合成方法で、それぞれセルロースアセテート(CA12)〜(CA13)を合成した。
脱アシル化工程で加える0.2M塩酸水溶液20Lをそれぞれ0.8L、34L、0.6L、40Lに変えた以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA14)〜(CA17)を得た
得られた各セルロースアシレートの物性(重合度、置換度、硫酸イオンの含有量、塩酸イオンの含有量)について、既述の方法に従って測定した。その結果を表1に示す。
市販のアジピン酸エステル含有化合物(大八化学工業社製、Daifatty101)を化合物AE1として準備した。
表2に示す仕込み組成比で、シリンダ温度を調整し、2軸混練装置(東芝機械社製、TEX41SS)にて混練を実施し、樹脂組成物(ペレット)を得た。
得られたペレットについて、射出成形機(日精樹脂工業社製、NEX140III)を用い、射出ピーク圧力が180MPaを越えないシリンダ温度で、D1及びD2試験片(測定部寸法:幅60×60mm/厚さ1mmのD1試験片および幅60×60mm/厚さ2mmのD2試験片)を成形した。シリンダ温度については表2に示した。
得られたD1及びD2試験片の全光線透過率を分光ヘイズメーター(日本電色工業社製、SH7000)にて測定し、着色を定量評価した。結果を表2に示す。
なお、表1において、アシル化工程の欄の硫酸量は「セルロースに対する硫酸の質量比(質量%)」を示し、仕込んだ硫酸量をセルロース量で割ったものである。脱アシル化工程の欄の塩酸量は「アシル化したセルロース(セルロースアシレート)に対する塩酸の質量比(質量%)」を示す。なお、アシル化したセルロースの量は、既述の方法に従って算出した。
硫酸イオンの含有量Aと塩素イオンの含有量Bとの質量比(A/B)が1以上4以下であり、
重合度が100以上350以下であり、
置換度が2.05以上2.65以下であるセルロースアシレート。
置換度が2.1以上2.6以下である請求項1に記載のセルロースアシレート。
アセチル基を有する請求項1又は請求項2に記載のセルロースアシレート。
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートを含む樹脂組成物。
請求項4に記載の樹脂組成物を含有する樹脂成形体。
前記樹脂成形体が射出成形体である請求項5に記載の樹脂成形体。
セルロースに対する質量比が2質量%以上20質量%以下の硫酸の存在下で、セルロースをアシル化する第一工程と、
前記アシル化したセルロースに対する質量比が0.1質量%以上5質量%以下の塩酸の存在下で、前記アシル化したセルロースを脱アシル化及び解重合する第二工程と、
を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートの製造方法。
前記第一工程及び前記第二工程を同じ容器内で連続して実施する請求項7に記載のセルロースアシレートの製造方法。
請求項1に係る発明によれば、重合度が350超える場合に比べ、セルロースアシレートを含む樹脂組成物を高温で成形したときに生じる、樹脂成形体の着色を抑制するセルロースアシレートが提供される。
請求項2に係る発明によれば、置換度が2.1未満又は2.6超える場合に比べ、セルロースアシレートを含む樹脂組成物を高温で成形したときに生じる、樹脂成形体の着色を抑制するセルロースアシレートが提供される。
請求項3に係る発明によれば、硫酸イオンの含有量Aと塩素イオンの含有量Bとの質量比(A/B)が1未満又は4超える場合に比べ、セルロースアシレートとしてセルロースアセテートを含む樹脂組成物を高温で成形したときに生じる、樹脂成形体の着色を抑制するセルロースアシレートが提供される。
請求項6に係る発明によれば、硫酸イオンの含有量Aと塩素イオンの含有量Bとの質量比(A/B)が1未満又は4超えるセルロースアシレートを適用した場合に比べ、セルロースアシレートを含む樹脂組成物を射出成形で成形したときに生じる、着色が抑制された樹脂成形体が提供される。
アシル化工程に用いる硫酸量150gを621gとした以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA9)を得た。
硫酸イオンの含有量Aと塩素イオンの含有量Bとの質量比(A/B)が1以上4以下であり、
硫酸イオンの含有量が0.0044質量%以上0.2質量%以下であり、
塩酸イオンの含有量が0.002質量%以上0.12質量%以下であり、
重合度が100以上350以下であり、
置換度が2.05以上2.65以下であるセルロースアシレート。
Claims (9)
- 硫酸イオンの含有量Aと塩素イオンの含有量Bとの質量比(A/B)が1以上4以下であるセルロースアシレート。
- 重合度が100以上350以下である請求項1に記載のセルロースアシレート。
- 置換度が2.1以上2.6以下である請求項1又は請求項2に記載のセルロースアシレート。
- アセチル基を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のセルロースアシレート。
- 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のセルロースアシレートを含む樹脂組成物。
- 請求項5に記載の樹脂組成物を含有する樹脂成形体。
- 前記樹脂成形体が射出成形体である請求項6に記載の樹脂成形体。
- セルロースに対する質量比が2質量%以上20質量%以下の硫酸の存在下で、セルロースをアシル化する第一工程と、
前記アシル化したセルロースに対する質量比が0.1質量%以上5質量%以下の塩酸の存在下で、前記アシル化したセルロースを脱アシル化及び解重合する第二工程と、
を有するセルロースアシレートの製造方法。 - 前記第一工程及び前記第二工程を同じ容器内で連続して実施する請求項8に記載のセルロースアシレートの製造方法。
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