JP2018020442A - 積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】生産性向上の点から、高速剥離、低速剥離のいずれでも非常に低い剥離力と、高い残留接着率とを両立する積層フィルムを提供する。【解決手段】支持基材の少なくとも一方の面に樹脂層を有し、かつ下記の条件1および条件2を満たすことを特徴とする積層フィルム。条件1. 原子間力顕微鏡により、樹脂層表面側から測定した弾性率が10MPa以下条件2. 樹脂層表面におけるヒドロキシルプロピルアクリレートの後退接触角が30°以上【選択図】なし

Description

本発明は、積層フィルムに関するものである。
シリコーン系樹脂の表面層を持つ離型フィルムは、液晶偏光板や位相差板等の光学用途フィルム製造時に用いる粘着層形成時のベースフィルムや、上記光学フィルムが貼合されるまでの粘着層保護フィルムとして機能する。
光学フィルムの粘着層は、離型フィルムから剥離されて所定の被着体に貼合されることでその機能を発揮する。そのため離型フィルムの基本機能は、粘着層−離型フィルム間や粘着層−被着体間の剥離力が、粘着層に離型層が貼りあわされた状態で様々な環境や期間によって変化しないこと(以降「加熱時の粘着層間の剥離力変化」、「粘着層の残留接着率」とする)である。
さらに、前述の基本機能に加えて、離型フィルムの付加機能は、粘着層の貼合工程の作業負荷や作業時間を短くする観点から、剥離力が十分に低いことや(以降「軽剥離性」とする)、剥離力の剥離速度依存性が小さいこと(以降「剥離速度依存性」とする)である。
一方で、上記の要求をすべて満たすことは技術的に容易ではなく、これまで様々な検討がなされてきた。特許文献1では「基材フィルムの少なくとも片面にシリコーン系樹脂皮膜からなる離型層を有し、該シリコーン系樹脂皮膜が、水酸基を有するシリコーンオイルとイソシアネート化合物を反応させて得られるシリコーン化合物を含有してなる離型フィルム」を提案している。
特許文献2では「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリビニルアルコールを含有する塗布層を有し、一方の面に離型層と粘着層とを順次有する積層フィルムであり、前記離型層が、少なくとも1種類以上のアルケニル基およびアルキル基を官能基として有するシリコーン樹脂を含有し、少なくとも1種類以上の分子量1000以下のシロキサンを3.0〜15.0重量%含有する積層フィルム」を提案している。
特許文献3では「アルケニル基およびアルキル基を官能基として有するシリコーン樹脂、分子量が1000以下の低分子量シリコーン化合物、および白金系触媒を含有するシリコーン系離型層を有するポリエステルフィルムであり、当該離型層の、300mm/分速度域での低速剥離力が10〜20mN/cmの範囲であり、かつ、10000mm/分速度域での高速剥離力が前記低速剥離力の2.5倍以下であり、離型フィルムのMOR値が1.5〜3.0である偏光板用離型ポリエステルフィルム」を提案している。
特開2005−313601号公報 特開2014−226922号公報 特開2012−137568号公報
本発明は、加熱時の剥離力変化、離型層剥離後の粘着層の残留接着率、軽剥離性、剥離速度依存性に優れた積層フィルムに関する。
本発明が解決しようとする課題は、1.加熱時の剥離力変化が小さいこと、2.粘着層の残留接着率が大きいこと、3.軽剥離性が良好なこと、4.剥離速度依存性が小さいことである。これに対し、前述の公知技術は次の状況にある。
まず、特許文献1の技術について本発明者らが確認したところ、前述3の軽剥離性と、4の剥離速度依存性が良好なことを確認できたが、1の加熱時の剥離力変化が大きく、離型層と粘着層を剥離するときの剥離力上昇が著しかった。
特許文献2、3の技術について、前記3の軽剥離性と、4の剥離速度依存性が良好なことを確認できたが、1の加熱時の剥離力が低下し、2の残留接着率が小さいものであった。
上記課題を解決するため本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
1.支持基材の少なくとも一方の面に樹脂層を有し、かつ下記の条件1および条件2を満たすことを特徴とする積層フィルム。
条件1.原子間力顕微鏡により、樹脂層表面側から測定した弾性率が15MPa以下
条件2.樹脂層表面におけるヒドロキシプロピルアクリレートの後退接触角が30°以上
2.前記樹脂層がポリオルガノシロキサンを含み、該ポリオルガノシロキサンがジメチルシロキサンセグメント、アルキレン−メチルシロキサンセグメントおよびフルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントを含むことを特徴とする1.に記載の積層フィルム。
3.前記樹脂層のフッ素原子/ケイ素原子の比が0.005以上0.1未満であることを特徴とする2.に記載の積層フィルム。
本発明によれば、加熱時の剥離力変化、樹脂層剥離後の粘着層の残留接着率、軽剥離性、剥離速度依存性に優れた、積層フィルムを得ることができる。
樹脂層表面におけるヒドロキシプロピルアクリレートの後退接触角の測定概念図である。 樹脂層表面におけるヒドロキシプロピルアクリレートの後退接触角の測定概念図である。 後退接触角の測定で得られる液吸引量と接触角との関係を表すグラフの一例である。 樹脂層表面におけるヒドロキシプロピルアクリレートの後退接触角の測定概念図である。 後退接触角の測定で得られる液吸引量と接触角との関係を表すグラフの一例である。
本発明を実施するための形態を説明する前に、本発明者の視点で従来技術の問題点について考察すると共に本発明のメカニズムについて説明する。
まず、特許文献1に記載の積層フィルムの、加熱時の剥離力変化が大きい理由は、剥離力を低下させるため、水酸基を有するシリコーンオイルをイソシアネート化合物と架橋反応させることで樹脂層内に固定化しているため、固定化により高い残留接着率は得られるが、加熱保管時に水酸基を有するシリコーンオイルの架橋反応が進行して、樹脂層の弾性率が上昇し、加熱保管後の剥離力が上昇したと考えている。
また、特許文献2、3に記載の積層フィルムが1の加熱時の剥離力変化が大きく、2の残留接着率が小さい理由は、当該発明が、アルケニル基およびアルキル基を官能基として有するシリコーン樹脂に、分子量が1,000以下の低分子量シロキサンとを混合しているため、低分子量シロキサンが粘着層と樹脂層の界面に移行した結果、加熱時の剥離力低下と残留接着率低下を引き起こしたと考えている。
これらの従来技術を概観すると、軽剥離性や剥離速度依存性などの積層フィルムとしての付加機能を高めようとすると、加熱時の剥離力変化、樹脂層剥離後の粘着層の残留接着率などの積層フィルムとしての基本機能が低下し、トレードオフの関係になっている。
そこで本発明者らは、一旦、樹脂層と粘着剤の剥離過程に立ち戻り、詳細に観察した結果、剥離力に対応する剥離エネルギーの大小が、2つの現象に支配されていることを見いだした。
1つは、樹脂層−粘着層間の剥離過程前期におこる粘着層の大変形を、樹脂層の変形によって緩和する効果であり、樹脂層が小さい力で変形しやすいほど粘着層の変形が小さくでき、これにより剥離エネルギーが小さくなることで剥離力を低下させるものである。
もう1つは、剥離過程後期に起こる樹脂層表面での剥離点の移動のしやすさである。これは、剥離過程後期には、粘着層の変形が完了して2層の界面に力が伝わるようになり、粘着層−樹脂層間の剥離点が移動しながら剥離が進行する。そのため樹脂層表面を粘着層の剥離端部の動き易さが剥離力に影響し、動きやすいほど剥離力が低下するというものである。
本発明者らは、この新たに得られた剥離過程における知見を元に、加熱時の剥離力変化、樹脂層剥離後の粘着層の残留接着率の悪化などの積層フィルムとしての基本機能を維持しつつ、付加機能を向上させる手法を考案した。
具体的には、前述の2つの現象を支配する積層フィルムの物性指標について本発明者らが鋭意検討した結果、前者に対しては、原子間力顕微鏡により樹脂層表面側から測定した弾性率を特定の範囲にすることが有効なことを見いだした。この手法を用いることの意義は、樹脂層の厚みや基材の硬さの影響を含んだ見かけの弾性率を、高精度で測定することができ、より剥離過程初期の剥離エネルギーに影響しやすい特徴を持ち、従来技術のナノインデンター等で測定された回復過程の弾性率では評価することが困難である。
後者に対しては、粘着層に含まれる代表的なアクリルモノマー(ヒドロキシルプロピルアクリレート)に対する樹脂層の後退接触角を特定の範囲にすることが有効であることを見いだした。
後退接触角とは、一般に接触角と呼ばれる静的接触角とは異なり、動的接触角と呼ばれるものである。動的接触角とは、液体が面に沿って移動する際の形状を特徴付けるもので、液体が拡張するときの接触角を前進接触角、収縮するときの接触角を後退接触角と呼ぶ。後退接触角は樹脂層と粘着層の親和性のみならず、樹脂層表面の形状、樹脂層表面の組成均一性を統合した指標になるため、剥離過程末期の剥離エネルギーに対応する。そのため、樹脂層表面の静的接触角が高くても、後退接触角が低ければ剥離エネルギーの低減効果は得られない。
後退接触角の測定条件の詳細は後述する。後退接触角の値には、いくつかの測定方法があるが、転落角法のように原理的に液滴質量の影響を受ける方法は、避けるべきである。ここでは、拡張−収縮法による測定を図1から図5を用いて説明する。図1は後退接触角測定の初期状態を示す。樹脂層表面1上にシリンジ針2を通して測定液を供給し、液適3を形成する。このときの接触角4は静的接触角に相当する。
図2は、後退接触角が高い樹脂層表面の測定状態を示す。シリンジ針6を通して液適から測定液を吸引すると、樹脂層表面5の上にある液適は縮小していくが、接触角が高いため、測定液の広がっている面積が小さくなっていく。このときの接触角の変化を図3に示す。横軸に測定時間もしくは吸引した測定液の量を、縦軸に各時点での接触角をプロットしている。測定開始直後に接触角が少し低下するが、それ以降は比較的高い値で一定になる。この一定になった値を後退接触角という。
図4は、後退接触角が低い樹脂層表面の測定状態を示す。測定液を吸引すると液適は縮小するが、液適の端部があまり動かず、液適の高さが下がって行く。このときの接触角の変化を図5に示す。測定開始から接触角が大きく低下し、下がったところで一定になる。また、サンプルによっては一定にならない場合もあり、この場合には後退接触角は0°となる。
拡張収縮法における接触角の測定は、例えば、Drop Master (協和界面科学株式会社製)を用いて測定することができる。
これらの手法は、樹脂層の粘弾性や表面物性を特定の範囲にすれば達成することができるため、従来技術のように樹脂層内に異なる反応系を持ち込んだり、粘着層側への移行性が高い材料を使用したりせずとも、軽剥離性や剥離速度依存性などの付加機能を向上することができる特徴がある。
以下、本発明を実施するための形態について具体的に述べる。
上記課題、すなわち1.加熱時の剥離力変化が小さいこと、2.粘着層の残留接着率が大きいこと、3.軽剥離性が良好なこと、4.剥離速度依存性が小さいことのすべてを満たすために、本発明の積層フィルムは、支持基材の少なくとも一方の面に樹脂層を有する積層フィルムであって、下記の条件1および条件2を満たすことが好ましい。
条件1.原子間力顕微鏡により樹脂層表面側から測定した弾性率が15MPa以下
条件2.樹脂層表面におけるヒドロキシプロピルアクリレートの後退接触角が30°以上。
剥離力の絶対値を下げる観点から、原子間力顕微鏡による樹脂層表面側から測定した弾性率は15MPa以下であることが好ましく、より好ましくは10MPa以下、特に好ましくは5MPa以下である。樹脂層表面側から測定した弾性率を15MPaよりも大きくなると、剥離力が高くなる場合がある。樹脂層表面側から測定した弾性率は低い分には問題ないが、例えば0.1MPa以下のように著しく低くなると樹脂層の凝集力が低下するため、粘着層の剥離時に樹脂層が破壊され、残留接着率が低下する可能性がある。
この原子間力顕微鏡による樹脂層表面側から測定した弾性率は、樹脂層自身の組成や硬化条件の他に、樹脂層自身の粘弾性、樹脂層の厚み、支持基材の硬さの影響を受けるため、これらを用いて制御することもできる。
剥離力の剥離速度依存性を低減させる観点から、樹脂層表面におけるヒドロキプロピルアクリレートの後退接触角は30°以上が好ましく、より好ましくは40°以上である。樹脂層表面のヒドロキシプロピルアクリレートの後退接触角が30°よりも低くなると、剥離速度依存性が大きくなる場合がある。樹脂層表面のヒドロキシプロピルアクリレートの後退接触角は高い分には問題ないが、現実的には60°程度が限界になる。
さらに、前記樹脂層はポリオルガノシロキサンを含むことが好ましく、該ポリオルガノシロキサンが、ジメチルシロキサンセグメント、アルキレン−メチルシロキサンセグメントおよびフルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントを含むことが好ましい。ここで、ジメチルシロキサンセグメントは化学式1、アルキレン−メチルシロキサンセグメントは化学式2、フルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントは化学式3に例示されるものである。
ジメチルシロキサンセグメントは、樹脂層に含まれるポリオルガノシロキサンの柔軟性に影響するセグメントである。ジメチルシロキサンセグメントの割合が多いほど、原子間力顕微鏡による樹脂層表面側から測定した弾性率を低下させることができるが、一方でこのセグメントのみでは、十分な凝集力が得られず、樹脂層を形成することができない場合がある。
アルキレン−メチルシロキサンセグメントは、樹脂層に含まれるポリオルガノシロキサンの3次元架橋に影響しているセグメントであり、樹脂層の弾性率や凝集力の調整を担う。化学式2においてnが大きいほど、ポリオルガノシロキサン形成時に化学式4で例示されるアルケニル−メチルシロキサンセグメントと、化学式5にて例示されるハイドロジェンシリルセグメントのヒドロシリル化反応の反応性が向上し、未反応架橋成分の粘着層への移行が少なくなる。
化学式2においてnは2以上が好ましく6以上がより好ましく、化学式4においてnは0でもよいが2以上が好ましく3以上がより好ましい。樹脂層内のアルキレン−メチルシロキサンセグメントの割合には好ましい範囲があり、ジメチルシロキサンセグメントフルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントの合計100質量%に対し、その10〜25質量%程度が適量であり、高すぎると架橋密度が高くなりすぎ、その結果、樹脂層の弾性率が高くなりすぎる場合がある。一方、低すぎると塗膜の凝集力不足になる場合がある。
フルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントは、樹脂層表面のヒドロキシルプロピルアクリレートの後退接触角を高くする機能を担い、化学式3においてnは3以上8以下が好ましい。化学式3においてnが大きいほど、フルオロアルキル鎖長が長いことを示し、樹脂層表面のヒドロキシルプロピルアクリレートの後退接触角を高くすることができる一方、nが大きくなりすぎると、樹脂層用樹脂前駆体の樹脂層用塗料組成物への溶解性が低下したり、塗膜表面での微細なスケールでの均一性が低下したりし、後退接触角の低下を引き起こす場合がある。
樹脂層内での上記セグメントの存在、および定量分析については、樹脂層に対するTOF−SIMS法により確認することができる。
さらに、樹脂層内での上記セグメントの存在状態は、フルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントの占める割合が、内部側よりも表面側の方が多くなっていることが好ましく、フルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントが最表面のみにごく薄く偏析している方がより好ましい。フルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントが表面側に偏析することにより、表面をフルオロアルキル鎖で均一に被覆できるため、後退接触角を高めることができると共に、表面より基材側で柔軟なジメチルシロキサンセグメントが層厚みの多くを占めることにより、樹脂層全体の弾性率を下げることが可能になる。上記の厚み方向のセグメントの分布を形成する方法は、後述する。
さらに、前記樹脂層のフッ素原子/ケイ素原子の比には、好ましい範囲があり0.005以上0.1未満が好ましく、より好ましくは0.01以上0.05未満である。
フッ素原子/ケイ素原子の比が0.1以上であると、ヒドロキシルプロピルアクリレートの後退接触角は上昇するが、樹脂層表面の弾性率が上昇する場合がある。
なお、樹脂層のフッ素原子/ケイ素原子の比とは樹脂層におけるフッ素原子/ケイ素原子の原子数の比であり、前記樹脂層のフッ素原子/ケイ素原子の原子数の比はXPSにより定量することが可能である。
[積層フィルム、および樹脂層]
本発明の積層フィルムは、支持基材の少なくとも一方の側の面に、前述の条件を満たす樹脂層を有するものであればよく、支持基材の両方の面に樹脂層を有してもよいし、樹脂層の支持基材への密着性、帯電防止性、耐溶剤性等を付与するため支持基材と樹脂層の間に1層以上の中間層を設けてもよい。
前述の樹脂層の厚みは、10〜500nmであることが好ましく、20〜200nmであることがより好ましい。樹脂層を上記範囲とすることで、生産性を低下させにくく安定した積層フィルムとしての基本機能と付加機能を実現させることができる。
本発明の積層フィルムの樹脂層は、前述の条件を満たすことができれば特に限定されないが、後述する樹脂層用樹脂組成物により形成されていることが好ましく、後述する積層フィルムの製造方法により、支持基材上に後述する樹脂層用塗料組成物を塗布、乾燥、硬化することにより形成することが好ましい。
ここで本発明における「層」とは、前記積層フィルムの表面から厚み方向に向かい、隣接する部位との構成元素の組成、粒子等の含有物の形状、厚み方向の物理特性が不連続な境界面を有することで区別される有限の厚さを有する部位を指す。より具体的には、前記積層フィルムを表面から厚み方向に各種組成/元素分析装置(FT−IR、XPS、XRF、EDAX、SIMS、EPMA、EELS等)、電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、前記不連続な境界面により区別され、有限の厚さを有する部位を指す。
樹脂層の厚み方向において、表面側の方が内部側に比べてフルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントが多くなった構造がより好ましい構造であることについては前述したが、その構造は、1.後述する樹脂層用塗料組成物内の樹脂前駆体間の相溶性差を用い、乾燥工程にて層構造を自発的に形成させる、2.逐次塗布により、基材側にフルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントを含まない層を、表面側にはフルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントを含む層を形成する、3.同時塗布により基材側にはフルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントを含まない層を表面側にはフルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントを含む層を形成するなどの方法を用いることで形成することができ、逐次塗布による方法や同時塗布による方法が好ましい。製造方法の詳細については後述する。
[樹脂層用樹脂組成物]
前述の樹脂層用樹脂組成物は、前述の本発明の積層フィルムの樹脂層に好ましい樹脂組成物を指す。樹脂層、または樹脂層用樹脂組成物として前述の条件を満たすことができればその組成は特に限定されないが、アルキッド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、長鎖アルキル基含有樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、有機系とシリコーン系の混合もしくは共重合樹脂などが好ましく、優れた離型性や耐熱性からシリコーン系樹脂がより好ましく、特に硬化型シリコーン系樹脂が好ましい。
硬化型シリコーン樹脂には、オルガノハイドロジェンポリロキサンとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを白金触媒のもとに加熱硬化させた「付加反応型」、オルガノハイドロジェンポリロキサンと末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサンとを有機錫触媒を用いて加熱硬化させた「縮重合反応型」、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとメルカプト基を含有するオルガノポリシロキサンとを光重合触媒を用いて硬化させる「ラジカル付加型」、エポキシ基をオニウム塩開始剤にて光開環させて硬化させる「カチオン重合型」があり、いずれを用いてもよいが、生産性、剥離力の観点から、オルガノハイドロジェンポリロキサンとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを、白金触媒のもとに加熱硬化させた付加反応型が好ましい。
本発明における樹脂層用樹脂組成物は、好ましくは後述する樹脂層用塗料組成物を必要に応じて乾燥工程で溶媒を除去の上、硬化することにより形成することができる。
[樹脂層用塗料組成物、樹脂層用樹脂前駆体]
前述の樹脂層用塗料組成物は、前述の積層フィルムの樹脂層、もしくは前述の樹脂層用樹脂組成物を形成することができる室温にて液体の性状を示す混合物であり、少なくとも後述する積層フィルムの製造方法によって、樹脂層用樹脂組成物を形成可能な材料(以降これを樹脂前駆体と呼ぶ)と、重合開始剤、硬化剤、硬化触媒を含み、さらに溶媒、粒子、帯電防止剤などの各種添加剤を含んでもよい。
樹脂層用塗料組成物は、前述の条件を満たすことができればその組成は特に限定されないが
前述のように離型性や耐熱性の観点から、シリコーン系樹脂、特に硬化型シリコーン系樹脂を形成可能な樹脂前駆体が好ましく、「付加反応型」、「縮重合反応型」、「ラジカル付加型」、「カチオン重合型」の樹脂前駆体、および重合開始剤、硬化剤、硬化触媒を含む塗料組成物がより好ましく、「付加反応型」が最も好ましい。
また、本発明における樹脂層用塗料組成物は、後述の樹脂前駆体Aと樹脂前駆体Bを含むことが好ましい。前記樹脂層がポリオルガノシロキサンを含み、該ポリオルガノシロキサンがジメチルシロキサンセグメント、アルキレン−メチルシロキサンセグメント、およびフルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントを含む場合には、樹脂層用塗料組成物は後述の樹脂前駆体Aと樹脂前駆体Bに加えて、樹脂前駆体Cとを含むことが好ましい。
後述する積層フィルムの製造方法では、1種類の樹脂層用塗料組成物のみを使用してもよいし、複数の樹脂層用塗料組成物を使用し、逐次塗布や同時塗布により樹脂層を形成してもよい。そのため1種類の樹脂層用塗料組成物は、樹脂前駆体A、樹脂前駆体B、樹脂前駆体Cのすべてを含んでもよいし含まなくてもよく、積層フィルムの製造方法や使用する樹脂層用樹脂前駆体に依存する。
樹脂前駆体Aは、オルガノハイドロジェンポリシロキサンαとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンβとを含むことが好ましい。また、樹脂前駆体Aは、樹脂前駆体Aが固形分濃度30質量%で含まれるトルエン溶液の状態で、10,000(mPa・s)以上の粘度を有するものであることが好ましい。
樹脂前駆体Bは、オルガノハイドロジェンポリシロキサンXとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンYとを含むことが好ましい。また、樹脂前駆体Bは、樹脂前駆体Bが固形分濃度30質量%で含まれるトルエン溶液の状態で、5,000(mPa・s)以下の粘度を有するものであることが好ましい。
樹脂前駆体Cは、オルガノハイドロジェンポリシロキサン1とアルケニル基とフルオロアルキル基を含有するフルオロアルキル変性オルガノポリシロキサンとを含むことが好ましい。
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンα、X、および1の具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体が挙げられる。
本発明に用いられるオルガノハイドロジェンポリシロキサンα、オルガノハイドロジェンポリシロキサンXは、同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
前記アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンβ、Yの具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位96モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位4モル%)、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位97モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位3モル%)、分子鎖両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位95モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位5モル%)が挙げられる。
本発明に用いられるアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンβ、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンYは、異なるものであることが好ましい。
また、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンβと、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンYは、固形分濃度30質量%で含まれるトルエン溶液の状態で粘度差があることが好ましく、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンβの粘度は10,000(mPa・s)以上、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンYの粘度は5,000(mPa・s)以下、であることが好ましい。
前記アルケニル基とフルオロアルキル基を含有するフルオロアルキル変性オルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、かつ1分子中に少なくとも1個のフロロアルキル基を有する。フルオロアルキル変性オルガノポリシロキサンに含まれるアルケニル基含有量は0.02〜0.20mol/100gが好ましく、さらに好ましくは、0.03〜0.15mol/100gである。フロロアルキル変性ポリジメチルシロキサンに含まれるアルケニル含有量が約0.02mol/100g以下の場合には、架橋度合いが不十分になり硬化不具合が生じる可能性がある。アルケニル含有量が約0.20mol/100g以上の場合には、この硬化物の剥離特性が損なわれる場合がある。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを含むものとしては、信越化学工業(株)社製のKS−3650、KS843、KS847、KS847H、KS847T、X62−2829、KS838、東レ・ダウコーニング(株)社製のSD7333、SRX357、SRX345、LTC310、LTC303E、LTC300B、LTC350G、LTC750A、LTC851、LTC759、LTC755、LTC761、LTC856などが挙げられる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、フルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンとを含むものとしては、東レ・ダウコーニング(株)社製のBY24−900、BY24−903、SYL−OFF3062、信越化学工業(株)社製のX−41−3035などが挙げられる。
また、本発明における樹脂層用塗料組成物は樹脂前駆体Aと樹脂前駆体Bを含むことが好ましく、さらに樹脂前駆体Cを含むことがより好ましい。樹脂前駆体Aの具体例としては、LTC750A、LTC851、LTC759、LTC755、LTC761、LTC856、樹脂前駆体Bの具体例としては、LTC310、LTC303E、LTC300B、LTC350G、樹脂前駆体Cの具体例としては、SYL−OFF3062、X−41−3035などが挙げられる。
本発明における樹脂層用塗料組成物の固形分濃度は、特にこれに限定されるものではないが、樹脂層用塗料組成物が溶媒を含む場合には、通常10質量%以下であり、更には0.5〜5質量%であることが好ましい。0.5質量%未満であると、支持基材もしくは後述する中間層上でハジキが発生しやすく、他方10質量%を超えると表面が粗くなる場合がある。
[中間層]
本発明の積層フィルムでは、支持基材と樹脂層間の層間密着性向上や、積層フィルムの帯電防止、樹脂層の耐溶剤性や、支持基材からの低分子量成分の表面移行を抑制する(以降、オリゴマーブロック性とする)目的から、支持基材と樹脂層の間に1層以上の中間層を設けてもよい。
中間層の形成方法は、上記の目的を達する中間層が形成できれば、その形成方法は特に限定されない。支持基材の製膜途中で後述する中間層用塗料組成物を塗布したフィルムを作成後、別の工程で樹脂層を塗布してもよく、支持基材の製膜後、中間層用塗料組成物を支持基材に塗布−乾燥−巻き取りを行い、次いで樹脂層を塗布−乾燥−巻き取り(逐次塗布)を行ってもよいが、好ましくは、中間層用塗料組成物を塗布、溶媒除去後、直ちに樹脂層を塗布することが、支持基材と樹脂層間の密着性、塗膜品位の面から好ましい。
中間層の乾燥塗布厚みは、好ましくは10〜500nm、より好ましくは20〜200nm、さらに好ましくは20〜100nmである。塗布厚みが10nm〜500nmであると、樹脂層の本来の目的である離型性能が安定し、かつ中間層によって付与したい機能、即ち支持基材と樹脂層間の密着性向上、オリゴマーブロック性、帯電防止性、耐溶剤性と優れた塗膜品位を得ることができる。
[中間層用塗料組成物]
中間層用塗料組成物は、特に限定されないが、前述の支持基材と樹脂層の密着性を付与する目的からは、有機ケイ素化合物、及びまたは有機ケイ素化合物加水分解物の縮合体を含有することが好ましい。
前記有機ケイ素化合物としては、エチルシリケート、メチルシリケートなどのアルコキシシラン化合物、およびγ−メタクリロキシ基含有オルガノアルコキシシラン、エポキシ基含有オルガノアルコキシシラン、ビニル基含有オルガノアルコキシシラン、ビニル基含有アセトキシシランなどのシランカップリング剤、およびこれらの混合物が好ましい。
前記有機ケイ素化合物加水分解物の縮合体としては,前述のアルコキシシラン、もしくはシランカップリング材の加水分解物の2量体以上の縮合体で、いわゆるシリコーンオリゴマー、シリコーンレジン、シロキサンポリマーなどを指す。
中間層用塗料組成物は上記有機ケイ素化合物に加えて、樹脂層の密着性向上や耐溶剤性付与の観点から有機金属化合物を含有してもよい。有機金属化合物としては、アルミニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウム、鉄、インジウムなどの金属の有機酸塩、キレート化合物、アルコキシド、およびそのオリゴマーが好ましく、特に有機アルミニウム化合物が好ましい。
有機アルミニウム化合物としては、(MeO)Al、(EtO)Al、(n−Pro)Alなどのアルミニウムアルコラート、ナフテン酸、ステアリン酸、オクチル酸、安息香酸などのアルミニウム塩、アルミニウムアルコラートにアセト酢酸エステルまたはジアルキルマロネートを反応させて得られるアルミニウムキレート、アルミニウムオキサイドの有機酸塩、アルミニウムアセチルアセトネートなどが挙げられる。さらに有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムキレート化合物が好ましい。具体的には、有機アルミニウム化合物として、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートヒス(エチルアセトアセテート)が挙げられる。
本発明における中間層用塗料組成物の固形分濃度は、特にこれに限定されるものではないが、中間層用塗料組成物が溶媒を含む場合には、通常10質量%以下であり、更には0.5〜5質量%であることが好ましい。0.5質量%未満であると、基材フィルム上でハジキが発生しやすくなる場合があり、他方10質量%を超えると表面が粗面化する場合がある。
[その他の塗料組成物添加剤]
前述の樹脂層用塗料組成物と中間層用塗料組成物は溶媒を含んでもよく、製造適性の面から溶媒を含むことが好ましい。ここで溶媒とは塗布後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な常温、常圧で液体である物質を指す。本発明の積層フィルムに適した塗料組成物は、溶媒を含んでもよい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下である。
溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2−プロパノールと、n−プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
さらに、積層フィルムに帯電防止性を付与する目的から、樹脂層、中間層は各種帯電防止材料を含有してもよい。帯電防止剤としてはアンモニウム基含有化合物に代表されるカチオン系帯電防止剤、ポリエーテル化合物、シロキサン化合物に代表されるノニオン系化合物、フッ素系化合物、スルホン酸化合物に代表されるアニオン系化合物、ベタイン化合物に代表される両性化合物等のイオン導電性高分子化合物や、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリイソチアナフテン、ポリチオフェンなどのπ電子共役系の高分子化合物、イオン性液体などが挙げられる。
[支持基材]
本発明における支持基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等が挙げられるが、特に積層フィルムに使用される支持基材としては、機械的強度、耐熱性、熱寸法安定性および耐薬品性に優れ、且つ経済的である2軸延伸ポリエステルフィルムが好ましい
支持基材の表面には、前記樹脂層を形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例としては、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が挙げられる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
[積層フィルムの製造方法]
本発明の積層フィルムの表面に存在する前記樹脂層は、塗料組成物を支持基材、または中間層を設けた支持基材上に塗布することにより形成する方法が好ましい。また、樹脂層と支持基材と樹脂層の間に中間層を設ける場合も同様に、支持基材上に中間層用塗料組成物塗布することにより形成する方法が好ましい。
支持基材上への塗料組成物の塗布方法は特に限定されないが、塗料組成物をディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより支持基材等に塗布することにより層を形成することが好ましい。さらに、これらの塗布方式のうち、グラビアコート法またはダイコート法が塗布方法としてより好ましい。
樹脂層の厚み方向で、表面側と内部側の組成が異なる場合、例えば樹脂層がフルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントを含み、かつフルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントが内部側に比べて表面側が多い構造を形成する場合、逐次塗布や同時塗布により形成することが好ましい。逐次塗布により形成する場合は、グラビアコート法やダイコート法により1層ずつ、異なる塗料組成物を塗布して複数の層を形成する。同時塗布により形成する場合には異なる塗料組成物を複数のスリットをもつコーティングダイなどを用いて形成する。
次いで、支持基材等の上に塗布された液膜を乾燥する。得られる積層フィルム中から完全に溶媒を除去することに加え、塗膜の硬化を促進する観点からも、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。
乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
さらに、熱またはエネルギー線を照射することによるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。
また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)であることが好ましい。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100〜3,000(mW/cm)、好ましくは200〜2,000(mW/cm)、さらに好ましくは300〜1,500(mW/cm)、となる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が、100〜3,000(mJ/cm)、好ましくは200〜2,000(mJ/cm)、さらに好ましくは300〜1,500(mJ/cm)となる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
[用途]
本発明の積層フィルムは離型フィルムとして好適に用いることができる。特に液晶偏光板、位相差板等の光学用途フィルム製造時に用いる粘着剤保護用の離型フィルムとして好適に用いることができる
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。なお、同一の化合物については特記しない限り同一の製品を用いた。
[塗料組成物の作成]
[中間層用塗料組成物1]
以下の材料を混合し、2プロパノール/トルエン混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度4質量%の中間層用塗料組成物1を得た。
・エポキシ基含有有機ケイ素化合物
(BY24−846B:東レ・ダウコーニング株式会社製) 5質量部
・メタクリル基含有有機ケイ素化合物
(OFS−6030:東レ・ダウコーニング株式会社製) 5質量部
・アルミニウムキレート化合物
(BY24−846E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A1]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A1を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 9質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC303E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 1質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A2]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A2を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 8質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC303E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 2質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A3]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A3を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 7質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC303E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 3質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A3−2]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A3−2を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 7質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC303E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 3質量部
・シリコーン樹脂前駆体C
(SYL−OFF3062 Coating:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.5質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A3−3]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A3−3を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 7質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC303E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 3質量部
・シリコーン樹脂前駆体C
(X−41−3035: 信越化学工業株式会社製) 0.5質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A3−4]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A3−4を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 7質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC303E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 3質量部
・シリコーン樹脂前駆体C
(SYL−OFF3062 Coating:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A3−5]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A3−5を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 7質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC303E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 3質量部
・シリコーン樹脂前駆体C
(SYL−OFF3062 Coating:東レ・ダウコーニング株式会社製) 10質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A4]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A4を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 6質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC303E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 4質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A5]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A5を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC759:東レ・ダウコーニング株式会社製) 7質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC303E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 3質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A6]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A6を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC759:東レ・ダウコーニング株式会社製) 9質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC303E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 1質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A7]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A7を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 7質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC300B:東レ・ダウコーニング株式会社製) 3質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A8]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A8を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC856:東レ・ダウコーニング株式会社製) 7質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC303E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 3質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A9]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A9を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 10質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A10]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A10を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC303E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 10質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A11]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A11を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 5質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC303E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 5質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A12]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A12を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 9.5質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC303E:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.5質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A13]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A13を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 7質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC759:東レ・ダウコーニング株式会社製) 3質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A14]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A14を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 7質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(LTC750A:東レ・ダウコーニング株式会社製) 3質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A15]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A15を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC750A:東レ・ダウコーニング株式会社製) 10質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A16]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A16を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(LTC761:東レ・ダウコーニング株式会社製) 9質量部
・シリコーン樹脂前駆体B
(BY24−850:東レ・ダウコーニング株式会社製) 1質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物A17]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の樹脂層用塗料組成物A17を得た。
・シリコーン樹脂前駆体A
(KS847H:信越化学工業株式会社製) 9質量部
・添加剤
(X92−183:信越化学工業株式会社製) 1質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.1質量部。
[樹脂層用塗料組成物B1]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度0.1質量%の樹脂層用塗料組成物B1を得た。
・シリコーン樹脂前駆体C
(SYL−OFF3062 Coating:東レ・ダウコーニング株式会社製) 10質量部
・架橋剤
(3062C CROSSLINKER:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.08質量部
・白金触媒
(SRX212:東レ・ダウコーニング株式会社製) 0.05質量部。
[積層フィルムの作成]
[積層フィルムの作成方法1]
厚み38(μm)のポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R60)に、中間層用塗料組成物を、乾燥・硬化後の塗布厚みが0.1(μm)となるように、グラビアコーターでグラビアロールの周速やグラビア線数を調整して塗布し、100℃で3秒乾燥硬化した。5分以内に樹脂層用塗料組成物Aを、乾燥後の塗布厚みが指定の厚みとなるようにグラビアコーターでグラビアロールの周速やグラビア線数を調整して塗布し、120℃で30秒乾燥硬化して積層フィルムを得た。
[積層フィルムの作成方法2]
厚さ38(μm)のポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R60)に、樹脂層用塗料組成物Aを、乾燥後の塗布厚みが指定厚みとなるようにグラビアコーターでグラビアロールの周速やグラビア線数を調整して塗布し、120℃で30秒乾燥硬化して積層フィルムを得た。
[積層フィルムの作成方法3]
厚み38(μm)のポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R60)に、樹脂層用塗料組成物Aを、乾燥後の塗布厚みが指定厚みとなるようにグラビアコーターでグラビアロールの周速やグラビア線数を調整して塗布し、120℃で30秒乾燥硬化した。次いで、塗膜を表面にコロナ処理を施し、樹脂層用塗料組成物Aを、乾燥後の塗布厚みが指定厚みとなるようにグラビアコーターでグラビアロールの周速やグラビア線数を調整して塗布し、120℃で30秒乾燥硬化し積層フィルムを得た。
[積層フィルムの作成方法4]
厚み38(μm)のポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R60)に、2層ダイコーターを用い、樹脂層用塗料組成物Aを下層、樹脂層用塗料組成物Bを上層に、乾燥後の塗布厚みが指定の厚みとなるように2層ダイコーターで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化して積層フィルムを得た。
[積層フィルムの作成方法5]
厚さ38(μm)のポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R60)に、樹脂層用塗料組成物Bを、乾燥後の塗布厚みが指定厚みとなるようにグラビアコーターでグラビアロールの周速やグラビア線数を調整して塗布し、120℃で30秒乾燥硬化して積層フィルムを得た。
各実施例・比較例に対応する上記積層フィルムの作成方法、使用する中間層用塗料組成物、樹脂層用塗料組成物A、Bを表1に示した。
以上の方法により実施例1〜19、比較例1〜10の積層フィルムを作成した。
[積層フィルムの評価]
作成した積層フィルムについて、次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表2に示す。特に断らない場合を除き、測定は各実施例・比較例において、1つのサンプルにつき場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
[樹脂層表面から測定した弾性率]
積層フィルムの樹脂層表面について、AFM(Burker Corporation製 DimensionIcon)を用い、PeakForceQNMモードにて測定を実施し、得られたフォースカーブから付属の解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」を用いて、JKR接触理論に基づいた解析を行い、弾性率分布を求めた。
具体的にはPeakForceQNMモードのマニュアルに従い、カンチレバーの反り感度、バネ定数、先端曲率の構成を行った後、下記の条件にて測定を実施し、得られたDMT Modulusチャンネルのデータを表面の弾性率として採用した。なお、バネ定数および先端曲率は個々のカンチレバーによってバラつきを有するが、測定に影響しない範囲として、バネ定数0.3(N/m)以上0.5(N/m)以下、先端曲率半径15(nm)以下の条件を満たすカンチレバーを採用し、測定に使用した。
測定条件は下記に示す。
測定装置 : Burker Corporation製原子間力顕微鏡(AFM)
測定モード : PeakForceQNM(フォースカーブ法)
カンチレバー: ブルカーAXS社製SCANASYST−AIR
(材質:Si、バネ定数K:0.4(N/m)、先端曲率半径R:2(nm))
測定雰囲気 : 23℃・大気中
測定範囲 : 3(μm)四方
分解能 : 512×512
カンチレバー移動速度: 10(μm/s)
最大押し込み荷重 : 10(nN)。
次いで得られたDMT Modulusチャンネルのデータを解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」にて解析し、Roughnessにて処理することにより得られた、ResultsタブのImage Raw Meanの値を、樹脂層表面側から測定した弾性率とした。樹脂層表面の弾性率は有効数字2桁にまとめた。
[樹脂層表面の後退接触角の測定]
後退接触角の測定は拡張−収縮法により測定を行い、協和界面科学製接触角計Drop Master DM−501を用いて、同装置の拡張−収縮法測定マニュアルに従った。
後退接触角は、樹脂層表面に初期液滴量50μLのヒドロキシルプロピルアクリレートの液滴を一旦作成し、次いで、液滴にシリンジ針先端を指したままの状態で液吐出速度8.5μL/sで連続的に吸引し、同液滴の縮小過程の形状を100ミリ秒毎に連続的に撮影しその過程のそれぞれの接触角を求めた。
液滴の収縮過程の接触角は最初、収縮につれて変化し、次いで一定になる挙動を示し、そのときの接触角を後退接触角とした。接触角が一定になったことを判断する方法は、液滴の収縮していく方向に接触角を並べ、その順に連続した5点を選択したとき、連続した5点の標準偏差が最初に1°以下になったときの平均値をその測定の後退接触角とした。
この測定を1サンプルについて5回行い、その平均値を試料の後退接触角とした。なお、サンプルによっては液滴の収縮過程の接触角が一定にならず、連続的に低下し続けるものもあるが、これについては後退接触角を0°とした。
[積層フィルムの剥離力]
積層フィルムの樹脂層表面に粘着テープ(日東電工(株)製ポリエステルテープ 商品名31B:以下31Bテープ)を、5kgのゴムローラーを1往復させて圧着し、23℃65%RH環境下にて24時間放置後、引張り試験機を用いて300(mm/分)、および、100,000(mm/分)の速度で180度剥離した時の抵抗値を測定した。300(mm/分)の速度で剥離した時の抵抗値を低速剥離力とし、100,000(mm/分)の速度で剥離した時の抵抗値を高速剥離力とした。
[加熱後の剥離力増加率]
積層フィルムの樹脂層表面に粘着テープ(日東電工(株)製ポリエステルテープ 商品名31B:以下31Bテープ)を、5kgのゴムローラーを1往復させて圧着し、23℃65%RH環境下にて24時間放置後、引張り試験機を用いて300(mm/分)の速度で180度剥離した時の抵抗値を、加熱前の剥離力とした。
次に、積層フィルムの樹脂層表面に粘着テープ(日東電工(株)製ポリエステルテープ 商品名31B:以下31Bテープ)を、5kgのゴムローラーを1往復させて圧着し、70℃65%RH環境下にて24時間放置後、引張り試験機を用いて300(mm/分)の速度で180度剥離した時の抵抗値を、加熱後の剥離力とし、以下の式を用いて加熱後の剥離力増加率を求めた。加熱後の剥離力増加率150%以下を合格とした。
加熱後の剥離力増加率(%)=A/B×100
A:加熱後の剥離力
B:加熱前の剥離力。
[残留接着率]
ポリエステル粘着テープ(31Bテープ)を樹脂層表面に5kgのゴムローラーを1往復させて圧着し、70℃、20g/cmの環境下で20時間静置した。その後室温で1時間冷却した後31Bテープを丁寧にはがし、これを再度銅板に貼り合わせて更に1時間静置した後、300m/分の速度で180度剥離した時の抵抗値を測定した。この値を(f)とする。同様の手順を4フッ化エチレン樹脂(東レフィルム加工(株)製“トヨフロン”(登録商標))に貼り合わせて剥離抵抗値を測定しこの値をブランク値(fo)とした。この結果を以下の数式に当てはめて残留接着率を計算した。計算値が90%以上であれば良好といえる。
残留接着率(%)=(f)/(fo)×100。
[フッ素原子/ケイ素原子比測定]
X線光電子分光分析法(XPS)にて下記の条件にて測定した。
測定装置 :アルバック・ファイ社製PHI5000 VersaProbe)
X線源 :mono−Al
出力 :24.2W
X線ビーム径 :100μm
取り出し角 :45°
パスエネルギー:23.50eV
各原子の組成比は、高分解能スペクトルからピーク面積を測定し、JIS0167:2011に記載の方法で設定した相対感度係数を使用し、解析には付属のソフトウェアを使用した。
具体的には、積層フィルムの最表面から上記条件でXPSによる測定を行い、最表面から5nm以降15nmまでの範囲に存在する測定点において、最表面から5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、11nm、12nm、13nm、14nm、15nmに最も近い測定点をそれぞれ選択し、それら11点のフッ素原子強度とケイ素原子強度それぞれを平均化し、フッ素原子/ケイ素原子の比を求めた。なお、最表面から特定の距離にある点に最も近い測定点が2点存在する場合は当該2点の平均値を用いることとする。
1、5、10 : 樹脂層表面
2、6、11 : シリンジ針
3、7、12 : 液滴
4、8、13 : 接触角
9、14 : 接触角と液吸引量の関係
本発明の積層フィルムは、加熱時の剥離力変化、樹脂層剥離後の粘着層の残留接着率、軽剥離性、剥離速度依存性の向上を活かし、液晶偏光板、位相差板等の光学用途フィルム製造時に用いる粘着剤保護用として、好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 支持基材の少なくとも一方の面に樹脂層を有し、かつ下記の条件1および条件2を満たすことを特徴とする積層フィルム。
    条件1.原子間力顕微鏡により、樹脂層表面側から測定した弾性率が15MPa以下
    条件2.樹脂層表面におけるヒドロキシプロピルアクリレートの後退接触角が30°以上
  2. 前記樹脂層がポリオルガノシロキサンを含み、該ポリオルガノシロキサンがジメチルシロキサンセグメント、アルキレン−メチルシロキサンセグメントおよびフルオロアルキル−メチルシロキサンセグメントを含むことを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記樹脂層のフッ素原子/ケイ素原子の比が0.005以上0.1未満であることを特徴とする請求項2に記載の積層フィルム。
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