JP2018016920A - 炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、比較的安価に炭素繊維を製造できる炭素繊維の製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明の炭素繊維の製造方法は、石炭の溶剤抽出処理により無灰炭を得る工程と、上記無灰炭を熱処理する工程と、上記熱処理した無灰炭を溶融紡糸する工程とを備え、上記石炭の揮発分が30質量%以上53質量%以下である。上記石炭の炭素含有量に対する酸素含有量のモル比(O/C)としては、0.07以上0.23以下が好ましい。上記溶剤抽出処理を300℃以上450℃以下で行うとよい。上記熱処理を150℃以上350℃以下で行うとよい。【選択図】図1
Description
本発明は、炭素繊維の製造方法に関する。
炭素繊維は、例えば樹脂、コンクリート、セラミック等の構造材料のための強化材として広く利用されている。また、他にも炭素繊維は、例えば断熱材、活性炭原料、導電材料、伝熱材料等としても利用される。
炭素繊維は、一般に、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂や、石油又は石炭から得られるピッチを紡糸により繊維状に成形し、この糸を不融化(空気酸化)及び炭素化することにより製造される。上記原料のうち、石炭ピッチは、石炭を乾留してコークスを製造する際に副生する液状物質であるコールタールから蒸留によりナフタレン等の揮発性の成分を取り出した後の残渣であり、粘稠な黒色物質である。このような石炭ピッチは、ベンゼン環をその骨格に多数含んだ芳香族化合物を多く含む多数の化合物の混合物である。
また、石炭の抽出物を溶融紡糸する方法も考案されている。この方法では、軟化溶融性を保持するために、抽出物を溶剤と共に溶融紡糸する。このような溶融紡糸において、発明者らは安価な石炭を原料とし、さらに溶剤の回収効率も向上させるべく、石炭からの抽出物である無灰炭からさらに抽出を行い、低分子量成分を除去してから紡糸する炭素繊維の製造方法を提案している(特願2015−53477号参照)。
しかしながら、上記製造方法では、2段階の抽出工程が必要となるため、製造時間や製造コストの増大が避けられない。
上記不都合に鑑みて、本発明は、比較的安価に炭素繊維を製造できる炭素繊維の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、石炭の溶剤抽出処理により無灰炭を得る工程と、上記無灰炭を熱処理する工程と、上記熱処理した無灰炭を溶融紡糸する工程とを備え、上記石炭の揮発分が、30質量%以上53質量%以下である炭素繊維の製造方法である。
当該炭素繊維の製造方法では、原料として揮発分(VM)が上記範囲の比較的安価な石炭を用い、この石炭から抽出される無灰炭を紡糸前に熱処理する。そのため、当該炭素繊維の製造方法は、一度の抽出工程のみで紡糸阻害成分の少ない紡糸用ピッチ(無灰炭)を効率よく得ることができる。その結果、当該炭素繊維の製造方法は、比較的安価に炭素繊維を製造することができる。
上記石炭の炭素含有量に対する酸素含有量のモル比(O/C)としては、0.07以上0.23以下が好ましい。上記モル比(O/C)を上記範囲とすることで、炭素繊維の収率と、無灰炭中の紡糸阻害成分の低減とをより確実に担保できる。
上記溶剤抽出処理を300℃以上450℃以下で行うとよい。溶剤抽出処理の温度を上記範囲とすることで、無灰炭の抽出コストを低減することができる。
上記熱処理を150℃以上350℃以下で行うとよい。熱処理の温度を上記範囲とすることで、コストを低減しつつ炭素繊維の紡糸性を高めることができる。
ここで、「揮発分」とは、気乾ベースでの質量割合を意味し、具体的にはJIS−M8812(2004)に準拠して測定される値を意味する。「含有量」とは、無水無灰ベース(daf)での原子の質量割合を意味する。また、「酸素含有量」とは、酸素分子だけでなく他の原子と結合している原子を含む酸素原子の含有量を意味し、具体的にはJIS−M8813(2004)に準拠して測定される値を意味する。
以上のように、本発明の炭素繊維の製造方法は、比較的安価に炭素繊維を製造できる。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
[炭素繊維の製造方法]
当該炭素繊維の製造方法は、図1に示すように、石炭の溶剤抽出処理により無灰炭を得る無灰炭取得工程S1と、上記無灰炭を熱処理する熱処理工程S2と、上記熱処理した無灰炭を溶融紡糸する溶融紡糸工程S3とを備える。また、当該炭素繊維の製造方法は、上記溶融紡糸で得た糸状体を不融化する不融化工程S4と、上記不融化した糸状体を炭素化する炭素化工程S5とを備えるとよい。
当該炭素繊維の製造方法は、図1に示すように、石炭の溶剤抽出処理により無灰炭を得る無灰炭取得工程S1と、上記無灰炭を熱処理する熱処理工程S2と、上記熱処理した無灰炭を溶融紡糸する溶融紡糸工程S3とを備える。また、当該炭素繊維の製造方法は、上記溶融紡糸で得た糸状体を不融化する不融化工程S4と、上記不融化した糸状体を炭素化する炭素化工程S5とを備えるとよい。
<無灰炭取得工程>
無灰炭取得工程S1では、原料石炭と溶剤とを混合したスラリーを原料石炭の熱分解温度以上に加熱して、熱分解した原料石炭の可溶成分を溶剤に抽出する。さらに、このスラリーから原料石炭の熱分解温度における不溶成分を分離することによって無灰炭を得る。なお、「無灰炭」とは、石炭を改質した改質炭であり、灰分含有量が5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下であるものをいう。なお、「灰分」とは、JIS−M8812(2004)に準拠して測定される値を意味する。
無灰炭取得工程S1では、原料石炭と溶剤とを混合したスラリーを原料石炭の熱分解温度以上に加熱して、熱分解した原料石炭の可溶成分を溶剤に抽出する。さらに、このスラリーから原料石炭の熱分解温度における不溶成分を分離することによって無灰炭を得る。なお、「無灰炭」とは、石炭を改質した改質炭であり、灰分含有量が5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下であるものをいう。なお、「灰分」とは、JIS−M8812(2004)に準拠して測定される値を意味する。
無灰炭の原料とされる石炭としては、石炭化度が高い順に、無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭等が挙げられ、中でも中程度の石炭化度を有する瀝青炭又は亜瀝青炭が好ましい。
原料石炭の揮発分の下限としては、30質量%であり、32質量%がより好ましく、36質量%がさらに好ましい。一方、原料石炭の揮発分の上限としては、53質量%であり、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。
また、原料石炭の炭素含有量に対する酸素含有量のモル比(O/C)の下限としては、0.07が好ましく、0.10がより好ましい。一方、上記モル比(O/C)の上限としては、0.23が好ましく、0.21がより好ましく、0.15がさらに好ましい。
原料石炭の揮発分又は上記モル比(O/C)が上記下限より小さいと、得られる無灰炭中における紡糸阻害成分である高分子量成分の含有量が増加し、紡糸が困難となるおそれがある。逆に、原料石炭の揮発分又は上記モル比(O/C)が上記上限を超えると、石炭の溶剤への抽出性が低下し、無灰炭の収率が低下するおそれがある。また、無灰炭中の低分子量成分及び酸素の割合が高くなるため、後述の熱処理において過度の熱分解が生じて紡糸用ピッチの収率が低下するおそれがある。従って、原料石炭の揮発分を上記範囲とすることで、比較的安価な石炭を用いつつ、一度の抽出工程のみで炭素繊維を容易かつ確実に製造することができる。また、上記モル比(O/C)を上記範囲とすることで、炭素繊維の収率と、無灰炭中の紡糸阻害成分の低減とをより確実に担保できる。
上記溶剤としては、原料石炭を溶解する性質を有するものであれば特に限定されず、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の単環芳香族化合物、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン等の2環芳香族化合物、アントラセン等の3環芳香族化合物などを用いることができる。なお、上記2環芳香族化合物には、脂肪族鎖を有するナフタレン類や長鎖脂肪族鎖を有するビフェニル類が含まれる。
上記溶剤の中でも、石炭乾留生成物から精製した石炭誘導体である2環芳香族化合物が好ましい。石炭誘導体の2環芳香族化合物は、加熱状態でも安定しており、石炭との親和性に優れている。そのため、溶剤としてこのような2環芳香族化合物を用いることで、溶剤に抽出される石炭成分の割合を高めることができると共に、蒸留等の方法で容易に溶剤を回収し循環使用することができる。
スラリーの加熱温度(溶剤抽出処理温度)の下限としては、300℃が好ましく、350℃がより好ましく、370℃がさらに好ましい。一方、スラリーの加熱温度の上限としては、450℃が好ましく、420℃がより好ましい。スラリーの加熱温度が上記下限に満たない場合、石炭を構成する分子間の結合を十分に弱めることができないため、例えば原料石炭として低品位炭を使用した場合に、抽出される無灰炭の再固化温度を高めることができないおそれや、収率が低くなり不経済となるおそれがある。逆に、スラリーの加熱温度が上記上限を超える場合、石炭の熱分解反応が非常に活発になるため、生成した熱分解ラジカルの再結合が起こることで無灰炭の抽出率が低下するおそれがある。
スラリーの加熱時間(上記加熱温度に保持する時間)は、例えば30分以上2時間以下とすることができる。また、溶剤抽出は、不活性ガスの存在下、例えば窒素雰囲気下で0.1MPa以上1MPa以下の圧力で行うとよい。
溶剤抽出処理後のスラリーを例えば濾過により濾液と固形分濃縮液とに分離し、この濾液から溶剤を蒸留等により分離することで、スラリーから不溶成分が分離される。このとき分離中又は分離後のスラリーを冷却することで、固形の無灰炭を得ることができる。
無灰炭取得工程S1での石炭からの抽出率(無灰炭の収率)としては、原料となる石炭の品質にもよるが、石炭基準及び気乾ベースで、例えば20質量%以上60質量%以下とされる。
<熱処理工程>
熱処理工程S2では、無灰炭取得工程S1で得られた無灰炭を熱処理して低分子量成分を揮発させると共に、低温で熱分解する成分を予め分解して除去する。このように、溶融紡糸を阻害することがある揮発性成分及び分解性成分を予め除去することによって、溶融紡糸がさらに容易となり、比較的安価に引張強さに優れる炭素繊維を製造可能にする。
熱処理工程S2では、無灰炭取得工程S1で得られた無灰炭を熱処理して低分子量成分を揮発させると共に、低温で熱分解する成分を予め分解して除去する。このように、溶融紡糸を阻害することがある揮発性成分及び分解性成分を予め除去することによって、溶融紡糸がさらに容易となり、比較的安価に引張強さに優れる炭素繊維を製造可能にする。
上記熱処理は、非酸化性ガス雰囲気中で加熱することが好ましい。このように、非酸化性ガス雰囲気中で加熱して酸化架橋を防止することで、軟化温度の上昇等の不都合を防止できる。上記非酸化性ガスとしては、無灰炭の酸化を抑制できるものであれば特に限定されないが、経済的観点から窒素ガスがより好ましい。
また、上記熱処理は、減圧状態で行うことが好ましい。このように減圧状態で熱処理することによって、揮発性成分の蒸気及び熱分解物のガスを無灰炭から効率よく除去することができる。
熱処理工程S2での熱処理温度の下限としては、150℃が好ましく、170℃がより好ましく、200℃がさらに好ましい。一方、上記熱処理温度の上限としては、350℃が好ましく、320℃がより好ましく、300℃がさらに好ましい。上記熱処理温度が上記下限に満たない場合、不溶成分中の揮発性成分を十分に除去することができず、熱処理後の無灰炭(紡糸用ピッチ)の曳糸性が不十分となり、紡糸効率が低下するおそれがある。逆に、上記熱処理温度が上記上限を超える場合、不必要にエネルギーコストが増大するおそれや、有用な成分が熱分解されて炭素繊維の製造効率が低下するおそれや、さらに炭素化が進んで紡糸性が低下するおそれがある。
また、熱処理工程S2での熱処理温度は、後述の溶融紡糸工程の紡糸温度よりも高いことがより好ましい。このように、熱処理温度を紡糸温度よりも高くすることによって、溶融紡糸時に熱分解し得る成分をこの熱処理工程において予め熱分解して除去することができる。これにより、紡糸時に生成される熱分解物が糸状体を断線することや、これらの熱分解物が最終的に得られる炭素繊維中に欠陥を形成することを防止できる。
熱処理工程S2での熱処理時間(上記熱処理温度に保持する時間)の下限としては、10分が好ましく、15分がより好ましい。一方、上記熱処理時間の上限としては、120分が好ましく、90分がより好ましい。上記熱処理時間が上記下限に満たない場合、低分子量成分を十分に除去できないおそれがある。逆に、上記熱処理時間が上記上限を超える場合、不必要に処理コストが増大するおそれがある。
熱処理後の無灰炭(紡糸用ピッチ)の軟化温度の下限としては、150℃が好ましく、170℃がより好ましい。一方、熱処理後の無灰炭の軟化温度の上限としては、280℃が好ましく、250℃がより好ましい。熱処理後の無灰炭の軟化温度が上記下限に満たない場合、不融化処理温度を高くすることができず、不融化処理が非効率となるおそれがある。逆に、熱処理後の無灰炭の軟化温度が上記上限を超える場合、溶融紡糸温度を高くする必要があり、紡糸が不安定となるおそれや、コストが増大するおそれがある。なお、「軟化温度」とは、ASTM−D36に準拠したリングアンドボール法によって測定される値である。
熱処理後の無灰炭の石炭からの収率としては、石炭基準及び気乾ベースで、例えば20質量%以上50質量%以下が好ましい。
<溶融紡糸工程>
溶融紡糸工程S3では、熱処理工程S2で熱処理した無灰炭を紡糸用ピッチとして、公知の紡糸装置を用いて溶融紡糸する。つまり、溶融状態の無灰炭をノズル(口金)に通過させることにより糸状に成形し、冷却により無灰炭の形状を糸状に固定する。
溶融紡糸工程S3では、熱処理工程S2で熱処理した無灰炭を紡糸用ピッチとして、公知の紡糸装置を用いて溶融紡糸する。つまり、溶融状態の無灰炭をノズル(口金)に通過させることにより糸状に成形し、冷却により無灰炭の形状を糸状に固定する。
なお、軟化点低下防止の観点から、固形の紡糸用ピッチ(無灰炭)に溶剤を混合せずに溶融紡糸を行うことが好ましい。
この溶融紡糸に用いるノズルとしては、公知のものを使用すればよく、例えば直径0.1mm以上0.5mm以下、長さ0.2mm以上1mm以下のものを使用することができる。無灰炭を溶融紡糸した糸状体は、例えば直径50mm以上300mm以下程度のドラムによって巻き取られる。
溶融紡糸温度の下限としては、180℃が好ましく、200℃がより好ましく、220℃がさらに好ましい。一方、溶融紡糸温度の上限としては、350℃が好ましく、300℃がより好ましく、280℃がさらに好ましい。溶融紡糸温度が上記下限に満たない場合、無灰炭の溶融が不十分となり安定した紡糸ができないおそれがある。逆に、溶融紡糸温度が上記上限を超える場合、無灰炭の成分が熱分解して紡糸した糸状体が断線するおそれがある。
溶融紡糸の線速の下限としては、特に限定されないが、100m/minが好ましく、150m/minがより好ましい。一方、溶融紡糸の線速の上限としては、500m/minが好ましく、400m/minがより好ましい。溶融紡糸の線速が上記下限に満たない場合、製造効率が低く、炭素繊維が高価となるおそれがある。逆に、溶融紡糸の線速が上記上限を超える場合、紡糸が不安定になることにより却って製造効率が低下し、炭素繊維がやはり高価となるおそれがある。
溶融紡糸において紡糸する糸状体の平均径の下限としては、5μmが好ましく、7μmがより好ましい。一方、溶融紡糸において紡糸する糸状体の平均径の上限としては、20μmが好ましく、15μmがより好ましい。糸状体の平均径が上記下限に満たない場合、安定して紡糸できないおそれがある。逆に、糸状体の平均径が上記上限を超える場合、糸状体の可撓性が不十分となるおそれがある。
<不融化工程>
不融化工程S4では、溶融紡糸工程S3で得られる糸状体を酸素を含む雰囲気中で加熱することにより、糸状体を架橋して不融化する。酸素を含む雰囲気としては、一般に大気が用いられる。
不融化工程S4では、溶融紡糸工程S3で得られる糸状体を酸素を含む雰囲気中で加熱することにより、糸状体を架橋して不融化する。酸素を含む雰囲気としては、一般に大気が用いられる。
不融化処理温度の下限としては、150℃が好ましく、200℃がより好ましい。一方、不融化処理温度の上限としては、300℃が好ましく、280℃がより好ましい。不融化処理温度が上記下限に満たない場合、不融化が不十分となるおそれや、不融化処理時間が長くなり、非効率となるおそれがある。逆に、不融化処理温度が上記上限を超える場合、酸素架橋される前に糸状体が溶融するおそれがある。
不融化処理時間の下限としては、10分が好ましく、20分がより好ましい。一方、不融化処理時間の上限としては、120分が好ましく、90分がより好ましい。不融化処理時間が上記下限に満たない場合、不融化が不十分となるおそれがある。逆に、不融化処理時間が上記上限を超える場合、不必要に炭素繊維の製造コストが増大するおそれがある。
<炭素化工程>
炭素化工程S5では、不融化工程S4で不融化した糸状体を加熱して炭素化することによって、糸状体を炭素化し、炭素繊維を得る。
炭素化工程S5では、不融化工程S4で不融化した糸状体を加熱して炭素化することによって、糸状体を炭素化し、炭素繊維を得る。
具体的には、不融化後の糸状体を電気炉等の任意の加熱装置へ装入し、内部を非酸化性ガスで置換した後、この加熱装置内へ非酸化性ガスを吹き込みながら加熱する。
炭素化工程S5における加熱温度は、炭素繊維に求める特性により適宜設定すればよく、特に制限されないが、加熱温度の下限としては、700℃が好ましく、800℃がより好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、3000℃が好ましく、2800℃がより好ましい。上記加熱温度が上記下限に満たない場合、炭素化が不十分となるおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超える場合、設備の耐熱性向上や燃料消費量の観点から製造コストが上昇するおそれがある。
炭素化工程S5における加熱時間も炭素繊維に求める特性により適宜設定すればよく、特に制限されないが、加熱時間としては、15分以上10時間以下が好ましい。上記加熱時間が上記下限に満たない場合、炭素化が不十分となるおそれがある。逆に、上記加熱時間が上記上限を超える場合、炭素繊維の生産効率が低下するおそれがある。
上記非酸化性ガスとしては、炭素繊維の酸化を抑えられるものであれば特に限定されないが、経済的観点から窒素ガスが好ましい。
<利点>
当該炭素繊維の製造方法では、原料として揮発分(VM)が上記範囲の比較的安価な石炭を用い、この石炭から抽出される無灰炭を紡糸前に熱処理する。そのため、当該炭素繊維の製造方法は、一度の抽出工程のみで紡糸阻害成分の少ない紡糸用ピッチ(無灰炭)を効率よく得ることができる。その結果、当該炭素繊維の製造方法は、比較的安価に炭素繊維を製造することができる。
当該炭素繊維の製造方法では、原料として揮発分(VM)が上記範囲の比較的安価な石炭を用い、この石炭から抽出される無灰炭を紡糸前に熱処理する。そのため、当該炭素繊維の製造方法は、一度の抽出工程のみで紡糸阻害成分の少ない紡糸用ピッチ(無灰炭)を効率よく得ることができる。その結果、当該炭素繊維の製造方法は、比較的安価に炭素繊維を製造することができる。
[その他の実施形態]
当該炭素繊維の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。
当該炭素繊維の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。
当該炭素繊維の製造方法は、必要に応じて上述以外の工程を備えてもよい。具体的には、各工程に悪影響を与えない範囲において、各工程間又は前後に、例えば原料石炭を粉砕する工程、異物等を除去する工程等の工程があってもよい。
なお、当該炭素繊維の製造方法は、紡糸用ピッチである無灰炭の紡糸阻害成分を除去する工程を備えてもよいが、上述のように当該炭素繊維の製造方法は無灰炭の紡糸阻害成分を低減できるので、製造コスト低減の観点から紡糸阻害成分を除去する工程を備えないことが好ましい。
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
<炭素繊維の製造>
表1に示す性状の原料石炭1.5kgを1mm以下の径に粉砕し、メチルナフタレン6.0kgに混合してオートクレーブに装填し、初気圧0.2MPaの窒素雰囲気とした。次に、昇温速度10℃/minで380℃まで昇温し、380℃で1時間保持後、直ちに濾過により濾液と残渣とに分離した。得られた濾液を10mmHg、160℃の条件で蒸留し、固形分(無灰炭)を回収した。この無灰炭を窒素雰囲気下で表2に示す温度で熱処理し、紡糸用ピッチを得た。なお、表1における揮発分(VM)は気乾ベースであり、各原子の含有量は無水無灰ベース(daf)である。また、H/Cは、炭素含有量に対する水素含有量のモル比である。
表1に示す性状の原料石炭1.5kgを1mm以下の径に粉砕し、メチルナフタレン6.0kgに混合してオートクレーブに装填し、初気圧0.2MPaの窒素雰囲気とした。次に、昇温速度10℃/minで380℃まで昇温し、380℃で1時間保持後、直ちに濾過により濾液と残渣とに分離した。得られた濾液を10mmHg、160℃の条件で蒸留し、固形分(無灰炭)を回収した。この無灰炭を窒素雰囲気下で表2に示す温度で熱処理し、紡糸用ピッチを得た。なお、表1における揮発分(VM)は気乾ベースであり、各原子の含有量は無水無灰ベース(daf)である。また、H/Cは、炭素含有量に対する水素含有量のモル比である。
得られた紡糸用ピッチを直径0.2mm、長さ0.4mmのノズルを有する紡糸器に充填し、窒素で加圧しながら、250℃で溶融紡糸を行った。このとき得られる糸状体を600rpmで回転する直径100mmのドラムに巻き取った。巻き取った糸状体を250℃で1時間空気中で加熱することで不融化した後、800℃で炭素化処理を行い、実施例1〜8及び比較例3、4の炭素繊維を得た。なお、比較例1、2は、紡糸用ピッチ中に紡糸阻害成分が多く含まれ、350℃まで加熱しても溶融紡糸を行うことができなかった。
<評価>
得られた炭素繊維について、引張強度をJIS−L1013(2010)に準拠して測定した。この結果を表2に示す。なお、比較例1、2は炭素繊維が得られなかったので引張強度の測定はしていない。また、紡糸用ピッチ(熱処理後の無灰炭)の収率(石炭基準、気乾ベース)も表2に合わせて示す。
得られた炭素繊維について、引張強度をJIS−L1013(2010)に準拠して測定した。この結果を表2に示す。なお、比較例1、2は炭素繊維が得られなかったので引張強度の測定はしていない。また、紡糸用ピッチ(熱処理後の無灰炭)の収率(石炭基準、気乾ベース)も表2に合わせて示す。
表2から、揮発分が30質量%以上53質量%以下の石炭(b炭〜e炭)を原料として用いた無灰炭を溶融紡糸することで、紡糸阻害成分を除去する工程を要することなく、一定の品質の炭素繊維が得られることがわかる。
また、上記原料石炭の中でもb炭を用いることで、引張強度に優れる炭素繊維を高い収率で製造することができることがわかる。
一方、揮発分が30質量%未満のa炭を用いた比較例1、2では、無灰炭に紡糸阻害成分が多く含まれ、上述のようにそのままでは溶融紡糸ができなかった。また、揮発分が53質量%超のf炭を用いた比較例3、4では、炭素繊維を得ることはできたが、ピッチ収率が著しく低く、操業に適さない。これは、f炭から得られた無灰炭中に含まれる揮発性の高い成分が熱処理で過度に熱分解し、ピッチ収率が低下したことによる。
本発明の炭素繊維の製造方法は、比較的安価に炭素繊維を製造できるので、炭素繊維を原料とする製品に好適に利用できる。
S1 無灰炭取得工程
S2 熱処理工程
S3 溶融紡糸工程
S4 不融化工程
S5 炭素化工程
S2 熱処理工程
S3 溶融紡糸工程
S4 不融化工程
S5 炭素化工程
Claims (4)
- 石炭の溶剤抽出処理により無灰炭を得る工程と、
上記無灰炭を熱処理する工程と、
上記熱処理した無灰炭を溶融紡糸する工程と
を備え、
上記石炭の揮発分が30質量%以上53質量%以下である炭素繊維の製造方法。 - 上記石炭の炭素含有量に対する酸素含有量のモル比(O/C)が0.07以上0.23以下である請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
- 上記溶剤抽出処理を300℃以上450℃以下で行う請求項1又は請求項2に記載の炭素繊維の製造方法。
- 上記熱処理を150℃以上350℃以下で行う請求項1、請求項2又は請求項3に記載の炭素繊維の製造方法。
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