JP6424152B2 - 炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法に関する。
炭素繊維は、例えば樹脂、コンクリート、セラミック等の構造材料のための強化材として広く利用されている。また、他にも炭素繊維は、例えば断熱材、活性炭原料、導電材料、伝熱材料等としても利用される。
炭素繊維は、一般に、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂や、石油又は石炭から得られるピッチを紡糸により繊維状に成形し、この糸を不融化(空気酸化)及び炭素化することにより製造される。上記原料のうち、石炭ピッチは、石炭を乾留してコークスを製造する際に副生する液状物質であるコールタールから蒸留によりナフタレン等の揮発性の成分を取り出した後の残渣であり、粘稠な黒色物質である。このような石炭ピッチは、ベンゼン環をその骨格に多数含んだ芳香族化合物を多く含む多数の化合物の混合物である。
より詳しく説明すると、石炭ピッチは、コークス製造時に1000℃程度まで加熱されるため、環縮合度の高い多環芳香族化合物が主成分であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル側鎖や、例えばエーテル結合、フェノール基等の酸素を含有する構造の含有率が極めて小さい。これらの構造の含有率の指標としては、酸素含有率を用いることができるが、石炭ピッチの酸素含有率は、一般的には1質量%以下、多くの場合には0.5質量%以下である。また、上記多環芳香族化合物は、上記加熱処理により熱分解されるため一般に350amu.以下の分子量を有する短鎖芳香族分子として存在する。
このような石炭ピッチは、加熱すると液相熱分解及び縮重合によって分子量が700amu.程度まで高分子化され、加熱溶融して粘稠な液体となるので、これをノズルから押し出すことにより紡糸することができる。しかしながら、上述のように、石炭ピッチは、コークス製造時の副生成物であって、残渣として回収されるものであるため、例えば金属不純物や固形炭素分等の紡糸並びにその後の不融化及び炭素化を阻害する様々な成分を含んでいる。また、液相熱分解及び縮重合による高分子化のためには、300℃から450℃程度の加熱処理が必要である。このため、石炭ピッチから安定して効率よく炭素繊維を製造することは難しい。また、これらの不純物及び熱処理は、製造される炭素繊維の欠陥の原因となり得るため、得られる炭素繊維の引張強度を低下させる。
また、炭素繊維の製造に用いる石炭ピッチは、紡糸時に一定の温度で均一に溶融することが好ましい。
この炭素繊維の引張強度の向上及び紡糸時の石炭ピッチの溶融の均一性確保のため、例えば石炭の溶剤抽出処理により得られたピッチを固体酸と接触処理させて鉄分を除去し、次いで得られたピッチを上記固体酸から分離する方法が提案されている(特公平7−15099号公報参照)。
しかしながら、上記のような石炭ピッチの処理は、炭素繊維の製造コストを押し上げる要因となる。
特公平7−15099号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、引張強度に優れる炭素繊維を比較的安価に製造できる原料ピッチの製造方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、石炭の熱分解生成物を介することなく、石炭から溶剤抽出により紡糸可能な成分を取り出すことで、安価に炭素繊維製造用原料ピッチが得られることを見出した。さらに、本発明者らは、強度の高い原料ピッチを得るには、ビトリニットの平均最大反射率Roの異なる2種類の原料石炭の混合が有効であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記課題を解決するためになされた発明は、溶融紡糸により炭素繊維を製造するための原料ピッチの製造方法であって、ビトリニットの平均最大反射率Roが1以上である第1の石炭、ビトリニットの平均最大反射率Roが1未満である第2の石炭、及び芳香族溶媒を混合する工程と、上記混合物から第1の石炭及び第2の石炭の可溶成分を加熱抽出する工程とを備え、上記第1の石炭の石炭全体に対する配合率が30質量%以上70質量%以下である原料ピッチの製造方法である。
当該原料ピッチの製造方法は、多環芳香族分子の含有率が高い第1の石炭を用いるので、原料ピッチの紡糸過程での多環芳香族分子の配向により弾性率が高い原料ピッチが得られる。また、当該原料ピッチの製造方法は、アルキル基や含酸素官能基の含有率が高い第2の石炭を一定量用いるので、第2の石炭に由来する分子が、第1の石炭に由来する分子に対して可塑剤の役割を果たし、原料ピッチの紡糸過程での欠陥の発生による炭素繊維の引張強度低下を防止することができる。従って、当該原料ピッチの製造方法を用いることで、引張強度に優れる炭素繊維を製造できる原料ピッチが得られる。また、当該原料ピッチの製造方法は、石炭の熱分解生成物を介することなく石炭から溶剤抽出により紡糸可能な成分を取り出すので、安価に炭素繊維製造用原料ピッチを製造できる。従って、当該原料ピッチの製造方法により得られる原料ピッチを用いることで、引張強度に優れる炭素繊維を比較的安価に製造できる。
上記加熱抽出工程における上記混合物の加熱温度としては、350℃以上が好ましい。このように上記加熱抽出工程における上記混合物の加熱温度を上記下限以上とすることで、石炭を構成する分子間の結合力を弱められるため、原料ピッチの収率を高めることができる。
上記第1の石炭の平均最大反射率Roと上記第2の石炭の平均最大反射率Roとの差としては、0.1以上0.6以下が好ましい。このように第1の石炭の平均最大反射率Roと上記第2の石炭の平均最大反射率Roとの差を上記範囲内とすることで、原料ピッチの紡糸過程での欠陥発生による炭素繊維の引張強度低下の防止効果が高まる。
上記第1の石炭の配合量と上記第2の石炭の配合量とが等しいとよい。このように上記第1の石炭の配合量と上記第2の石炭の配合量とを等しくすることで、第1の石炭と第2の石炭との量的なバランスがさらに良くなり、原料ピッチの紡糸過程での欠陥発生による炭素繊維の引張強度低下の防止効果をさらに高めることができる。
ここで、平均最大反射率Roは、JIS−M8816:1992に準拠して測定した値であり、石炭の種類及び産地ごとに決まる。また、「第1の石炭の配合量と上記第2の石炭の配合量とが等しい」とは、第1の石炭の配合量及び第2の石炭の配合量の差が、石炭全体の10質量%以下であることを意味する。
以上説明したように、本発明の炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法を用いることで、引張強度に優れる炭素繊維を比較的安価に製造できる原料ピッチが得られる。
本発明の一実施形態の炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法の手順を示す流れ図である。
以下、本発明に係る炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
[炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法]
図1に示す当該炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法は、ビトリニットの平均最大反射率Roが1以上である第1の石炭、ビトリニットの平均最大反射率Roが1未満である第2の石炭、及び芳香族溶媒を混合する工程と、上記混合物から第1の石炭及び第2の石炭の可溶成分を加熱抽出する工程と、上記抽出後の混合物から溶媒抽出される比較的低分子量の可溶成分及び溶媒抽出されない不溶成分に分離する工程と、分離した上記可溶成分を熱処理する工程とを主に備える。
(石炭)
炭素繊維製造用原料ピッチの原料とされる石炭は、ビトリニットの平均最大反射率Roが1以上である第1の石炭と、ビトリニットの平均最大反射率Roが1未満である第2の石炭とを含む。
石炭のビトリニットの平均最大反射率Roは、石炭の種類や銘柄(産地)により異なることが知られている。例えば、無煙炭はRoが1.7以上であり、製鉄コークスの原料として用いられる強粘結炭はRoが1.1以上1.6以下である。また、準強粘結炭は0.8以上1.1以下であり、ボイラー用一般炭は1以下であることが多い。第1の石炭及び第2の石炭は、これらの石炭の中からそのRo値により選択することができる。なお、これらの石炭は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、複数の第1の石炭又は/及び複数の第2の石炭を用い、後述する混合工程でこれらを混合してもよい。
ここで、ビトリニットの平均最大反射率Roが1以上である第1の石炭と、ビトリニットの平均最大反射率Roが1未満である第2の石炭とを用いることで、引張強度に優れる炭素繊維を製造できる原料ピッチが得られる理由について説明する。
平均最大反射率Roは、石炭の石炭化度を示す指標であり、この数値が大きいほど一般に炭素含有率が高く、酸素含有率が低い。分子構造としては、縮合度の高い多環芳香族分子の含有率が高く、アルキル基や含酸素官能基の含有率が低いと考えられる。逆に、Roが小さい石炭では、一般に炭素含有率が低く、酸素含有率が高い。分子構造としては、縮合度の低い多環芳香族分子の含有率が高く、アルキル基や含酸素官能基の含有率が高いと考えられる。
この原料石炭のRoが原料ピッチの紡糸性や炭素繊維の物性に与える影響として、本発明者らは、以下のことを見出した。まず、炭素繊維の引張弾性率は、原料石炭のRoが大きいほど原料ピッチの紡糸過程で縮合度の高い多環芳香族分子の配向により向上する。ところが、Roが大きい石炭のみを原料とすると、アルキル基や含酸素官能基の含有率が低いため、原料ピッチの紡糸性が低下し易く、その結果原料ピッチの紡糸過程で欠陥が生じ、炭素繊維が応力集中により破断し易くなる。このため、Roが大きい石炭のみを原料とする場合、炭素繊維の引張強度を十分に高めることができない。一方、Roが小さい石炭のみを原料として用いると、アルキル基や含酸素官能基の含有率が高いため、原料ピッチの紡糸過程での欠陥は生じ難いものの、炭素繊維の弾性率や引張強度は低くなる。
さらに、本発明者らは、原料石炭として、Roが大きい石炭とRoが小さい石炭とを混合することで、引張強度に優れる炭素繊維を製造できる原料ピッチが得られることを見出した。これは、Roの小さい石炭に由来する分子が、Roの大きい石炭に由来する分子に対して可塑剤の役割を果たし、原料ピッチの紡糸過程での欠陥の発生による炭素繊維の引張強度の低下を防止できるためであると考えられる。つまり、Roの小さい石炭に由来する分子が原料ピッチの紡糸過程での欠陥発生による炭素繊維の引張強度低下を防止することで、本来Roの大きい石炭に由来する分子が有する強度が発現するため、引張強度に優れる炭素繊維を製造できる原料ピッチが得られると考えられる。
第1の石炭の平均最大反射率Roの下限としては、1であり、1.1がより好ましい。第1の石炭の平均最大反射率Roが上記下限未満である場合、得られる炭素繊維の弾性率が不足し、十分な引張強度が得られないおそれがある。一方、第1の石炭の平均最大反射率Roの上限としては、特に限定されないが、例えば石炭の入手容易性の観点から1.5とできる。
第2の石炭の平均最大反射率Roとしては、1未満であり、0.9未満がより好ましい。第1の石炭の平均最大反射率Roが上記上限以上である場合、原料ピッチの紡糸過程での欠陥発生による炭素繊維の引張強度低下の防止効果が十分に得られないおそれがある。一方、第2の石炭の平均最大反射率Roの下限としては、特に限定されないが、例えば石炭の入手容易性の観点から0.6とできる。
上記第1の石炭の平均最大反射率Roと上記第2の石炭の平均最大反射率Roとの差の下限としては、0.1が好ましく、0.2がより好ましい。一方、上記平均最大反射率Roの差の上限としては、0.6が好ましく、0.5がより好ましい。上記平均最大反射率Roの差が上記下限未満である場合、原料ピッチの紡糸過程での欠陥発生による炭素繊維の引張強度低下の防止効果が十分に得られないおそれがある。逆に、上記平均最大反射率Roの差が上記上限を超える場合、第1の石炭の平均最大反射率Roが高くなり過ぎ原料ピッチの紡糸過程で欠陥発生が多くなり過ぎるおそれや、第2の石炭の平均最大反射率Roが低くなり過ぎ可塑剤としての効果が十分に得られないおそれがある。
上記第1の石炭の石炭全体に対する配合率の下限としては、30質量%であり、40質量%がより好ましい。一方、上記第1の石炭の石炭全体に対する配合率の上限としては、70質量%であり、60質量%がより好ましい。上記第1の石炭の石炭全体に対する配合率が上記下限未満である場合、本来Roの大きい石炭に由来する分子が有する強度が十分に発現しないため、炭素繊維の引張強度が低下するおそれがある。逆に、上記第1の石炭の石炭全体に対する配合率が上記上限を超える場合、第2の石炭の配合量が不十分となり、原料ピッチの紡糸過程での欠陥発生による炭素繊維の引張強度低下の防止効果が十分に得られないおそれがある。
上記第2の石炭の石炭全体に対する配合率の下限としては、30質量%であり、40質量%がより好ましい。一方、上記第2の石炭の石炭全体に対する配合率の上限としては、70質量%であり、60質量%がより好ましい。上記第2の石炭の石炭全体に対する配合率が上記下限未満である場合、原料ピッチの紡糸過程での欠陥発生による炭素繊維の引張強度低下の防止効果が十分に得られないおそれがある。逆に、上記第2の石炭の石炭全体に対する配合率が上記上限を超える場合、第1の石炭の配合量が不十分となり本来Roの大きい石炭に由来する分子が有する強度が十分に発現しないため、炭素繊維の引張強度が低下するおそれがある。
また、上記第1の石炭の配合量と上記第2の石炭の配合量とが等しいとよい。このように上記第1の石炭の配合量と上記第2の石炭の配合量とを等しくすることで、第1の石炭と第2の石炭との量的なバランスがさらに良くなり、原料ピッチの紡糸過程での欠陥発生による炭素繊維の引張強度低下の防止効果が高まる。
次に、当該炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法の各工程について、以下に説明する。
<混合工程>
混合工程S1では、第1の石炭と、第2の石炭と、芳香族溶媒とを混合し、スラリーを調製する。混合工程S1は公知の設備、例えば公知の撹拌機構付タンクを用いて行うことができる。
上記芳香族溶媒としては、原料石炭を溶解する性質を有するものであれば特に限定されず、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の単環芳香族化合物、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン等の2環芳香族化合物、アントラセン等の3環芳香族化合物などを用いることができる。なお、上記2環芳香族化合物には、脂肪族鎖を有するナフタレン類や長鎖脂肪族鎖を有するビフェニル類が含まれる。
上記芳香族溶媒の中でも、石炭乾留生成物から精製した石炭誘導体である2環乃至3環芳香族化合物が好ましい。石炭誘導体の2環芳香族化合物は、加熱状態でも安定しており、石炭との親和性に優れている。そのため、溶剤としてこのような2環芳香族化合物を用いることで、芳香族溶媒に抽出される石炭成分の割合を高めることができると共に、蒸留等の方法で容易に芳香族溶媒を回収し循環使用することができる。
原料石炭に対する上記芳香族溶媒の質量比としては、原料石炭が溶解する限り特に限定されないが、例えば3倍以上10倍以下とできる。
また、第1の石炭及び第2の石炭は、抽出効率の観点から、微細に粉砕された粒子状とすることが好ましい。上記石炭を粒子状とする場合、質量累計90%の粒子径の上限としては、2mmが好ましく、1mmがより好ましい。なお、「石炭の質量累計90%の粒子径」とは、全粒子をJIS−Z8801−1:2006に規定される金属製網篩で篩分けした際に、石炭全体の90質量%の粒子が篩を通過できる篩の目開きの値を意味する。
<加熱抽出工程>
加熱抽出工程S2では、混合工程S1で調製したスラリーを加熱することで、熱分解した原料石炭の可溶成分を芳香族溶媒に抽出する。
スラリーの加熱温度(混合物の加熱温度)の下限としては、350℃が好ましく、380℃がより好ましい。一方、スラリーの加熱温度の上限としては、450℃が好ましく、420℃がより好ましい。スラリーの加熱温度が上記下限未満である場合、特に平均最大反射率Roが1未満である第2の石炭を構成する分子間の結合力を十分に弱めることができないため、原料ピッチの紡糸過程での欠陥発生による炭素繊維の引張強度低下の防止効果が十分に得られないおそれや、収率が低く不経済となるおそれがある。逆に、スラリーの加熱温度が上記上限を超える場合、石炭の熱分解反応が非常に活発になるため、原料ピッチの酸素含有率が不十分となるおそれや、生成した熱分解ラジカルの再結合が起こることで原料ピッチの抽出率が低下するおそれがある。
上記スラリーの加熱は、不活性ガス雰囲気中で加圧して行うとよい。このようにスラリーの加熱を不活性ガス雰囲気中で行うことで、石炭が酸化することを防止できる。また、スラリーの加熱を加圧して行うことで、芳香族溶媒の揮発を抑止し、効率よく可溶成分を抽出できる。上記不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば窒素を用いることができる。また、加圧する圧力としては、加熱抽出の際の温度や用いる芳香族溶剤の蒸気圧にもよるが、例えば3kg/cm以上20kg/cmとすることができる。
スラリーの加熱時間としては、特に限定されないが、抽出効率の観点から例えば10分以上2時間以下の範囲とできる。このスラリーの加熱による石炭からの可溶成分の抽出率は、石炭の種類にも依存するが、例えば20質量%以上60質量%以下である。
<分離工程>
分離工程S3では、抽出後のスラリーを室温まで冷却した後、さらに上記芳香族溶媒を加え、溶剤抽出処理することで、溶媒抽出される比較的低分子量の可溶成分と溶媒抽出されない不溶成分とに分離する。
上記溶剤抽出処理は必要に応じて加熱して行う。上記溶剤抽出処理時の温度は、溶媒の種類により最適値が異なるが、一般的に、溶媒抽出時の温度の上限としては、300℃が好ましく、200℃がより好ましく、150℃がさらに好ましい。一方、溶媒抽出時の温度の下限としては、特に限定されないが、加熱を行わず常温、例えば20℃とすることができる。溶媒抽出時の温度が上記上限を超える場合、抽出される可溶成分の分子量が大きくなることにより原料ピッチの軟化温度が高くなり過ぎ、溶融紡糸時に紡糸効率が低下するおそれがある。逆に、溶媒抽出時の温度が上記下限未満である場合、抽出処理のための冷却が必要となり、不必要に原料ピッチの製造コストが上昇するおそれがある。
なお、加える芳香族溶媒の原料石炭に対する質量比は、混合工程S1における芳香族溶媒の原料石炭に対する質量比と同様とできる。また、溶媒抽出処理時間は、上記スラリーの加熱時間と同様とできる。上記スラリー加熱処理により得られる可溶成分に対する溶媒抽出処理後の可溶成分の抽出率は、処理温度や処理時間にもよるが、例えば10質量%以上90質量%以下である。
可溶成分が溶出した芳香族溶媒と不溶成分との分離方法としては、特に限定されず、濾過法、遠心分離法、重力沈降法等の公知の分離方法、あるいはこれらのうちの2以上の組合せを採用できる。これらの中でも、流体の連続操作が可能であり、低コストで大量の処理にも適しており、かつ不溶成分を確実に除去できる遠心分離法と濾過法との組合せが好ましい。
<熱処理工程>
熱処理工程S4では、上記分離工程S3で得られる可溶成分を加熱して低分子量成分を揮発させると共に、低温で熱分解する成分を分解して除去することにより、炭素繊維製造用原料ピッチを得る。このように、溶融紡糸を阻害することがある揮発性成分及び分解性成分を除去することによって、炭素繊維製造用原料ピッチは、溶融紡糸が容易となり、引張強度に優れる炭素繊維を比較的安価に製造可能とする。
上記熱処理は、不活性ガス雰囲気中で加熱することが好ましい。このように、不活性ガス雰囲気中で加熱して酸化架橋を防止することで、軟化温度の上昇等の不都合を防止できる。上記不活性ガスとしては、原料ピッチの酸化を抑制できるものであれば特に限定されないが、経済的観点から窒素がより好ましい。
また、上記熱処理は、減圧状態で行うことが好ましい。このように減圧状態で熱処理することによって、揮発性成分の蒸気及び熱分解物のガスをピッチから効率よく除去することができる。
上記熱処理温度の下限としては、150℃が好ましく、170℃がより好ましく、200℃がさらに好ましい。一方、上記熱処理温度の上限としては、350℃が好ましく、320℃がより好ましく、280℃がさらに好ましい。上記熱処理温度が上記下限未満である場合、可溶成分中の揮発性成分を十分に除去することができず、炭素繊維製造用原料ピッチの曳糸性が不十分となり、紡糸効率が低下するおそれがある。逆に、上記熱処理温度が上記上限を超える場合、不必要にエネルギーコストが増大するおそれや、有用な成分が熱分解されて炭素繊維の製造効率が低下するおそれや、さらに炭素化が進んで紡糸性が低下するおそれがある。
また、上記熱処理温度は、上記溶剤抽出処理温度よりも高いことが好ましい。このように、熱処理温度を溶剤抽出処理温度よりも高くすることで、沸点が溶剤抽出処理温度よりも高い揮発性成分を原料ピッチから除去することができる。この揮発性成分の除去により、紡糸時に気孔が形成されることや糸状体が断線することを防止できる。
また、上記熱処理温度は、溶融紡糸温度よりも高いことがより好ましい。このように、熱処理温度を溶融紡糸温度よりも高くすることで、溶融紡糸時に熱分解し得る成分をこの熱処理において予め熱分解して除去することができる。これにより、紡糸時に生成される熱分解物がピッチを紡糸した糸状体を断線することや、これらの熱分解物が最終的に得られる炭素繊維中に欠陥を形成することを防止できる。
熱処理時間としては、特に限定されないが、熱処理効率の観点から例えば10分以上2時間以下の範囲とできる。また、上記溶媒抽出処理により得られる可溶成分からの炭素繊維製造用原料ピッチの収率は、処理温度や処理時間等にもよるが、例えば80質量%以上98質量%以下である。
[炭素繊維製造用原料ピッチ]
当該炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法により得られる炭素繊維製造用原料ピッチは、溶融紡糸により炭素繊維を製造するための原料ピッチである。
上記炭素繊維製造用原料ピッチは、石炭の芳香族溶媒中での溶剤抽出により紡糸可能な成分を取り出すことで得られるものである。石炭は、比較的高温で処理されている石炭タールや石油製造残渣に比べて、アルキル側鎖等の酸素を含有する構造を多く含み、かつトルエン可溶分を多く含む。
上記炭素繊維製造用原料ピッチにおける酸素の含有率の下限としては、1.0質量%が好ましく、1.5質量%がより好ましく、1.7質量%がさらに好ましい。一方、上記酸素の含有率の上限としては、5.0質量%が好ましく、4.0質量%がより好ましく、3.0質量%がさらに好ましい。上記酸素の含有率が上記下限に満たない場合、炭素化時の結晶発達を十分に抑制することができず、得られる炭素繊維が応力集中により破断し易くなるおそれがある。逆に、上記酸素の含有率が上記上限を超える場合、炭素化時の質量減少率が大きく、炭素繊維の収率が低下することにより炭素繊維の製造コストが上昇するおそれがある。
炭素繊維製造用原料ピッチにおけるトルエン可溶成分の含有率の下限としては、20質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、35質量%がさらに好ましい。一方、トルエン可溶成分の含有率の上限としては、80質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。トルエン可溶成分の含有率が上記下限に満たない場合、溶融紡糸時の溶融性や紡糸性が不十分となるおそれがある。逆に、トルエン可溶成分の含有率が上記上限を超える場合、炭素繊維の収率が低下することにより炭素繊維の製造コストが上昇するおそれがある。
上記炭素繊維製造用原料ピッチの軟化温度の下限としては、150℃が好ましく、170℃がより好ましい。一方、上記炭素繊維製造用原料ピッチの軟化温度の上限としては、280℃が好ましく、250℃がより好ましい。上記炭素繊維製造用原料ピッチの軟化温度が上記下限未満である場合、不融化処理温度を高くすることができず、不融化処理が非効率となるおそれがある。逆に、上記炭素繊維製造用原料ピッチの軟化温度が上記上限を超える場合、溶融紡糸温度を高くする必要があり、紡糸が不安定となるおそれや、炭素繊維の製造コストが増大するおそれがある。なお、「軟化温度」とは、ASTM−D36に準拠したリングアンドボール法によって測定される値である。
[炭素繊維の製造方法]
さらに、上記炭素繊維製造用原料ピッチを用いて炭素繊維を製造する方法について説明する。
上記炭素繊維製造用原料ピッチを使用する炭素繊維の製造方法は、上記炭素繊維製造用原料ピッチを溶融紡糸する工程と、この溶融紡糸により得られる糸状体を不融化する工程と、不融化した糸状体を炭素化する工程とを備える。
<溶融紡糸工程>
溶融紡糸工程では、炭素繊維製造用原料ピッチを公知の紡糸装置を用いて溶融紡糸する。つまり、溶融状態の原料ピッチをノズル(口金)を通過させることにより糸状に成形し、冷却により原料ピッチの形状を糸状に固定する。
この溶融紡糸に用いるノズルとしては、公知のものを使用すればよく、例えば直径0.1mm以上0.5mm以下、長さ0.2mm以上1mm以下のものを使用することができる。原料ピッチを溶融紡糸した糸状体は、例えば直径100mm以上300mm以下のドラムによって巻き取られる。
溶融紡糸温度の下限としては、180℃が好ましく、200℃がより好ましい。一方、溶融紡糸温度の上限としては、350℃が好ましく、300℃がより好ましい。溶融紡糸温度が上記下限未満である場合、原料ピッチの溶融が不十分となり安定した紡糸ができないおそれがある。逆に、溶融紡糸温度が上記上限を超える場合、原料ピッチ中の成分が熱分解して紡糸した糸状体が断線するおそれがある。
溶融紡糸の線速の下限としては、特に限定されないが、100m/minが好ましく、150m/minがより好ましい。一方、溶融紡糸の線速の上限としては、500m/minが好ましく、400m/minがより好ましい。溶融紡糸の線速が上記下限未満である場合、製造効率が低く、炭素繊維が高価となるおそれがある。逆に、溶融紡糸の線速が上記上限を超える場合、紡糸が不安定になることにより却って製造効率が低下し、炭素繊維がやはり高価となるおそれがある。
溶融紡糸において紡糸する糸状体の平均径の下限としては、5μmが好ましく、7μmがより好ましい。一方、溶融紡糸において紡糸する糸状体の平均径の上限としては、20μmが好ましく、15μmがより好ましい。糸状体の平均径が上記下限未満である場合、安定して紡糸できないおそれがある。逆に、糸状体の平均径が上記上限を超える場合、糸状体の可撓性が不十分となるおそれがある。
<不融化工程>
不融化工程では、溶融紡糸工程で得られる糸状体を酸素を含む雰囲気中で加熱することにより架橋して不融化する。酸素を含む雰囲気としては、一般に空気が用いられる。
不融化処理温度の下限としては、150℃が好ましく、200℃がより好ましい。一方、不融化処理温度の上限としては、300℃が好ましく、280℃がより好ましい。不融化処理温度が上記下限未満である場合、不融化が不十分となるおそれや、不融化処理時間が長くなり、非効率となるおそれがある。逆に、不融化処理温度が上記上限を超える場合、酸素架橋される前に糸状体が溶融するおそれがある。
不融化処理時間の下限としては、10分が好ましく、20分がより好ましい。一方、不融化処理時間の上限としては、120分が好ましく、90分がより好ましい。不融化処理時間が上記下限未満である場合、不融化が不十分となるおそれがある。逆に、不融化処理時間が上記上限を超える場合、不必要に炭素繊維の製造コストが増大するおそれがある。
<炭素化工程>
炭素化工程では、不融化工程で不融化した糸状体を加熱して炭素化することによって、炭素繊維を得る。
具体的には、糸状体を電気炉等の任意の加熱装置へ装入し、内部を不活性ガスで置換した後、この加熱装置内へ不活性ガスを吹き込みながら加熱する。
炭素化工程における熱処理温度の下限としては、700℃が好ましく、800℃がより好ましい。一方、熱処理温度の上限としては、3000℃が好ましく、2800℃がより好ましい。熱処理温度が上記下限未満である場合、炭素化が不十分となるおそれがある。逆に、熱処理温度が上記上限を超える場合、設備の耐熱性向上や燃料消費量の観点から製造コストが上昇するおそれがある。
炭素化工程における加熱時間も炭素繊維に求める特性により適宜設定すればよく、特に制限されないが、加熱時間としては、15分以上10時間以下が好ましい。加熱時間が上記下限に満たない場合、炭素化が不十分となるおそれがある。逆に、加熱時間が上記上限を超える場合、炭素繊維の生産効率が低下するおそれがある。
上記不活性ガスとしては、炭素繊維の酸化を抑えられるものであれば特に限定されないが、経済的観点から窒素が好ましい。
〔利点〕
当該原料ピッチの製造方法は、多環芳香族分子の含有率が高い第1の石炭を用いるので、原料ピッチの紡糸過程での多環芳香族分子の配向により弾性率が高い原料ピッチが得られる。また、当該原料ピッチの製造方法は、アルキル基や含酸素官能基の含有率が高い第2の石炭を一定量用いるので、第2の石炭に由来する分子が、第1の石炭に由来する分子に対して可塑剤の役割を果たし、原料ピッチの紡糸過程での欠陥の発生による炭素繊維の引張強度低下を防止することができる。従って、当該原料ピッチの製造方法を用いることで、引張強度に優れる炭素繊維を製造できる原料ピッチが得られる。また、当該原料ピッチの製造方法は、石炭の熱分解生成物を介することなく石炭から溶剤抽出により紡糸可能な成分を取り出すので、安価に炭素繊維製造用原料ピッチを製造できる。従って、当該原料ピッチの製造方法により得られる原料ピッチを用いることで、引張強度に優れる炭素繊維を比較的安価に製造できる。
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
上記実施形態の炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法において、加熱抽出工程で抽出後のスラリーをそのまま低温溶媒抽出処理する方法を説明したが、抽出後のスラリー中の灰分等と無灰炭とを分離し、この灰分等の可溶成分を低温溶媒抽出処理してもよい。
また、上記実施形態の炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法において、熱処理工程は省略してもよい。
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
<炭素繊維製造用原料ピッチ>
オーストラリア産出の平均最大反射率Roが異なる3種類の瀝青炭A、B、Cを用意した。平均最大反射率Roは、それぞれ石炭Aが1.2、石炭Bが1.0、石炭Cが0.8である。なお、平均最大反射率Roは、JIS−M8816:1992に準拠して測定した。
この瀝青炭を表1に示す割合で混合した石炭1kgを粒子径1mm以下の石炭の割合が90質量%以上となるように粉砕し、芳香族溶媒としてメチルナフタレン5kgを混合してスラリーを調製した。このスラリーをオートクレープに装填し、窒素初気圧5kg/cm、温度400℃で1時間の加熱を行い、熱分解した原料石炭の可溶成分を芳香族溶媒に抽出した。上記抽出後のスラリーを室温まで冷却した後、さらにメチルナフタレン5kgを加えて、抽出温度80℃で1時間撹拌することで低温溶剤抽出処理を行い、可溶成分を抽出してから濾過を行った。得られた濾液を減圧蒸留することで可溶成分を分離し、さらに窒素雰囲気、温度230℃で1時間の加熱処理を行うことで、実施例1〜5及び比較例1〜5の炭素繊維製造用原料ピッチを得た。
<炭素繊維>
得られた原料ピッチを用いて炭素繊維を試作した。まず、直径0.2mm、長さ0.4mmのノズルを有する紡糸器に紡糸ピッチを充填し、表1に示す最適紡糸温度で溶融紡糸を行った。このとき、紡糸される糸状体は、600rpmで回転する直径100mmのドラムに巻き取った(線速約190m/min)。続いて、この糸状体を空気中において250℃で1時間加熱することにより不融化した。さらに、この不溶化した繊維を800℃で炭素化した。なお、「最適紡糸温度」とは、原料ピッチが溶融し、安定して吐出される温度をいう。
<評価>
得られた実施例及び比較例の全てについて、原料ピッチの紡糸性試験、炭素繊維の引張強度試験、及び炭素繊維の引張弾性率試験を行った。結果を表1に示す。
(紡糸性試験)
紡糸性試験では、以下の評価基準により紡糸性を判定した。
A:糸切れがほとんどなく、紡糸性に優れる。
B:糸切れが発生し、紡糸性に劣る。
(引張強度試験及び引張弾性率試験)
引張強度試験及び引張弾性率試験では、各炭素繊維の引張強度及び引張弾性率を、JIS−R7607(2000)に準拠して測定した。
Figure 0006424152
表1の結果から、Roが1以上である石炭A及びRoが1未満である石炭Cを用い、Roが1以上である石炭Aの石炭全体に対する配合率が30質量%以上70質量%以下である実施例1〜5は、比較例1〜5に比べて引張強度に優れる。これに対して、比較例1及び比較例2は、Roが1以上である石炭A又は石炭Bのみを用いているため、アルキル基や含酸素官能基の含有率が低い。従って、比較例1及び比較例2は、原料ピッチの紡糸過程で欠陥が生じ、炭素繊維が応力集中により破断し易くなり、炭素繊維の引張強度を十分に高めることができないと考えられる。また、比較例3は、Roが1未満である石炭Cのみを用いているため、アルキル基や含酸素官能基の含有率が高い。従って、比較例3は、炭素繊維の弾性率や引張強度が低いと考えられる。さらに、比較例4は、石炭Aの石炭全体に対する配合率が30質量%未満であるため、本来Roの大きい石炭Aに由来する分子が有する強度が十分に発現せず、引張強度に劣ったと考えられる。また、比較例5は、石炭Aの石炭全体に対する配合率が70質量%超であるため、Roの小さい石炭Cの配合量が不十分となり、原料ピッチの紡糸過程での欠陥発生による炭素繊維の引張強度低下の防止効果が十分に得られず、引張強度に劣ったと考えられる。このことから、Roが1以上である石炭A及びRoが1未満である石炭Cを用い、Roが1以上である石炭Aの石炭全体に対する配合率を30質量%以上70質量%以下とすることで、引張強度に優れる炭素繊維が得られることが分かる。
さらに、実施例1〜5の中では、上記石炭Aの配合量と上記石炭Cの配合量とが等しい実施例1の炭素繊維の引張強度が最も高い。このことから、第1の石炭の配合量と上記第2の石炭の配合量とを等しくすることで、原料ピッチの紡糸過程での欠陥発生による炭素繊維の引張強度低下の防止効果を特に高めることができることが分かる。
以上説明したように、本発明の炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法を用いることで、引張強度に優れる炭素繊維を比較的安価に製造できる原料ピッチが得られる。
S1 混合工程
S2 加熱抽出工程
S3 分離工程
S4 熱処理工程

Claims (4)

  1. 溶融紡糸により炭素繊維を製造するための原料ピッチの製造方法であって、
    ビトリニットの平均最大反射率Roが1以上である第1の石炭、ビトリニットの平均最大反射率Roが1未満である第2の石炭、及び芳香族溶媒を混合する工程と、
    上記混合物から第1の石炭及び第2の石炭の可溶成分を加熱抽出する工程と
    を備え、
    上記第1の石炭の石炭全体に対する配合率が30質量%以上70質量%以下である炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法。
  2. 上記加熱抽出工程において、上記混合物の加熱温度が350℃以上である請求項1に記載の炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法。
  3. 上記第1の石炭の平均最大反射率Roと上記第2の石炭の平均最大反射率Roとの差が0.1以上0.6以下である請求項1又は請求項2に記載の炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法。
  4. 上記第1の石炭の配合量と上記第2の石炭の配合量とが等しい請求項1、請求項2又は請求項3に記載の炭素繊維製造用原料ピッチの製造方法。
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