以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間にチャネル領域を有しており、ドレインとチャネル領域とソースとを介して電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、場合によっては、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「絶縁体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「絶縁体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
(実施の形態1)
本実施の形態においては、本発明の一態様に用いることのできる、μ―PCD測定を用いて酸化物半導体の評価を行う方法について、図1乃至図3を参照して説明する。
<μ―PCD測定>
以下に、μ―PCD測定について説明する。
図1は、μ―PCD測定を行うための装置の一例を示す模式図である。図1に示す装置は、ワイドギャップ半導体の薄膜の評価に好適である。特に、トランジスタの半導体に用いられる、1nm以上1μm以下、2nm以上500nm以下、3nm以上200nm以下または5nm以上100nm以下の膜厚のワイドギャップ半導体の評価に好適である。
図1に示す装置は、パルスレーザ発振器1301と、マイクロ波発振器1302と、方向性結合器1303と、導波管1305と、ミキサー1306と、信号処理装置1307と、試料ステージ1311と、を有する。なお、図1において、導波管1305は、コーナー部が曲率を有する形状を示しているが、これに限定されるものではない。試料ステージ1311上には、試料1320を配置できる。試料1320は、例えば、基板1320bと、基板1320b上の酸化物半導体1320aと、を有する。
試料ステージ1311の上面には、導電体が配置されている。導電体としては、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、インジウム、スズ、タンタル若しくはタングステンを一種以上、又は該金属元素の一種以上及びホウ素、窒素、酸素、フッ素、シリコン若しくはリンの一種以上含む導電体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、ステンレス鋼などの合金や化合物であってもよく、アルミニウムを含む導電体、銅及びチタンを含む導電体、銅及びマンガンを含む導電体、インジウム、スズ及び酸素を含む導電体、チタン及び窒素を含む導電体などを用いてもよい。
なお、試料1320と試料ステージ1311との間にスペーサ1310を配置しても構わない。スペーサ1310は、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウム又はタンタルの一種以上及びアルゴン、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、リン又は塩素の一種以上を含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを用いればよい。なお、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い膜を指し、窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い膜を指す。
スペーサ1310は、例えば、酸化物半導体1320aの上面と、試料ステージ1311の上面と、の距離が基板1320b及びスペーサ1310におけるマイクロ波の波長の1/4程度となるように厚さを選択すればよい。なお、スペーサ1310を配置することにより、試料1320を上下逆さまに配置した場合でも評価が可能となる場合がある。試料1320を上下逆さまに配置することで、例えば、基板1320bと酸化物半導体1320aとの界面の影響を多く含んだ情報が得られる場合がある。
以下に、酸化物半導体1320aのμ―PCD測定による評価方法を示す。
まず、マイクロ波発振器1302より、マイクロ波を放射する。放射されたマイクロ波を特に進行波(入射波ともいう。)と呼ぶ。方向性結合器1303を介して進行波が、導波管1305と位相器1315とに分かれる。導波管1305を通った進行波は、試料1320に入射する。このとき、試料1320の酸化物半導体1320aで反射したマイクロ波(特に反射波と呼ぶ。)が、再び導波管1305を通る。反射波は、ミキサー1306にて、位相器1315を介して分かれた進行波と混合される。混合された信号は、信号処理装置1307において検出される。
このとき、信号処理装置1307で検出される信号の強度は、酸化物半導体1320aにおけるマイクロ波の反射強度によって変化する。例えば、酸化物半導体1320aのキャリア密度が高いほど、酸化物半導体1320aの導電率が高くなる。導電率が高くなると、マイクロ波の反射強度は高くなり、それに伴って信号処理装置1307で検出される信号の強度も強くなる。
また、酸化物半導体1320aは、励起光を吸収することで正孔及び電子を生成する。即ち、励起光を酸化物半導体1320aに照射することで、酸化物半導体1320aのキャリア密度が高くなり、それに伴いマイクロ波の反射強度が高くなる。なお、励起光は、ミラー1313及びレンズ1314を介して酸化物半導体1320aに照射させればよい。
ある程度の時間、酸化物半導体1320aに励起光を当て続けると、マイクロ波の反射強度は、励起光によるキャリアの生成と、再結合などによるキャリアの消失と、のバランスによって一定値をとる。この値が、マイクロ波の反射強度の最も高い値となることから、マイクロ波の反射強度のピーク値と呼ぶことができる。
なお、励起光としては、例えば、パルスレーザ発振器1301から放射されたレーザ光を用いることができる。レーザ光は、酸化物半導体1320aのバンドギャップよりも十分に高いエネルギーの波長を用いると好ましい。また、光学系のコストの上昇を抑えるためには、レーザ光の波長は200nm以上が好ましい。ただし、波長が200nm未満のレーザ光を用いても構わない。なお、光の進入長は、光の強度が1/eに減衰する深さであり、数式1で表すことができる。
ここで、dは光の進入長、λは光の波長、kは減衰係数を示す。
例えば、酸化物半導体1320aのバンドギャップよりも十分に高いエネルギーの波長の励起光を用いない場合、検出感度を高めるために励起光の出力をある程度高くしなくてはならない。そのため、酸化物半導体1320aを変質させてしまう場合がある。酸化物半導体1320aのバンドギャップよりも十分に高いエネルギーの波長の励起光を用いることで、励起光の出力を小さくした場合でも酸化物半導体1320aのキャリア密度を十分に高くできる。したがって、上述したような、酸化物半導体1320aの変質を抑制できる。
また、酸化物半導体1320aへの進入長の浅い励起光を用いることで、基板1320bなど下地の情報が測定結果に反映されることを抑制できる。また、干渉効果により、酸化物半導体1320aの厚さに応じて測定結果にムラが生じることを抑制できる。
基板1320bとして、μ―PCD測定での励起光のエネルギーよりもバンドギャップが小さい基板を用いる場合、励起光照射によって基板にキャリアが多数発生する。このような試料のμ―PCD測定を行うと、基板1320b由来の信号が大きくなり、酸化物半導体1320a由来の信号を打ち消す場合がある。そのため、励起光のエネルギーよりもバンドギャップが大きい基板、例えば、ガラスや石英を用いることが望ましい。
酸化物半導体1320aの上または下に、μ―PCD測定での励起光のエネルギーよりもバンドギャップが大きい膜を有する場合においても、酸化物半導体1320a由来の信号を検出できる。例えばシリコン酸化膜は、励起光よりバンドギャップが大きく、キャリアが発生しづらいことから、μ―PCD測定においてシリコン酸化膜由来の信号は小さくなり、酸化物半導体1320a由来の信号を検出できる。なお、酸化物半導体1320aの上または下に設ける、μ―PCD測定での励起光のエネルギーよりもバンドギャップが大きい膜は、積層構造としてもよい。
酸化物半導体1320aへの励起光の照射を止めると、キャリアの生成が止まり、酸化物半導体1320aのキャリア密度は減衰していく。酸化物半導体において、励起光の照射により生成したキャリアは単純に指数関数的に減衰するのではなく、減衰の途中から減衰が緩やかになる場合がある。つまり、キャリアの減衰は、速やかに減衰する成分と緩やかに減衰する成分の二つから構成される。速やかに減衰する成分はおおよそ指数関数的であり、緩やかに減衰する成分は非指数関数型の傾向となる場合がある。キャリア密度の減衰は、速やかな減衰成分に対する指数関数型モデルと、緩やかな減衰成分に対する拡張指数関数型モデルを組み合わせた数式2で表すことができる。
ここで、tは励起光の照射を停止してからの時間、n(t)は時間tにおけるキャリア密度、n0は励起光照射下でのキャリア密度、τ1は速やかに減衰する成分の時定数、τ2は緩やかに減衰する成分の時定数、βは拡張指数係数を示す。
本明細書では、速やかに減衰する成分の時定数をライフタイムτ1、緩やかに減衰する成分の時定数をライフタイムτ2と呼ぶ。
酸化物半導体1320aに照射されたマイクロ波は、酸化物半導体1320aのキャリア密度で決まる導電率に基づいたマイクロ波の反射強度で反射される。つまり、酸化物半導体1320aのキャリア密度とマイクロ波の反射強度が対応することから、マイクロ波の反射強度の減衰を、数式3で表すことができる。なお、μ―PCD測定によるライフタイムτ1及びライフタイムτ2の算出方法は、S. Yasuno, et al.: Journal of Applied Physics 2012 vol.112, 053715の記載を参照できる。
ここで、tは励起光の照射を停止してからの時間、R(t)は時間tにおけるマイクロ波の反射強度、R0は励起光照射下でのマイクロ波の反射強度、τ1は速やかに減衰する成分のライフタイム、τ2は緩やかに減衰する成分のライフタイム、βは拡張指数関数を示す。
μ―PCD測定で得られる減衰曲線の例を図3(A)に示す。図3(A)は、横軸に励起光の照射を停止してからの時間[nsec]をとり、左の縦軸にマイクロ波の反射強度[mV]をとる。プロットは実測値を示し、実線は数式3を用いたフィッティングから得られた速やかに減衰する成分、破線はフィッティングから得られた緩やかに減衰する成分を示す。このように、得られたマイクロ波の反射強度の減衰曲線から、キャリアのライフタイムτ1及びτ2を算出できる。
マイクロ波の反射強度が非常に低い例を図3(B)に示す。図3(B)は、横軸に励起光の照射を停止してからの時間[nsec]をとり、左の縦軸にマイクロ波の反射強度[mV]をとる。このように、マイクロ波の反射強度が低い試料においては、減衰曲線のノイズの影響が大きくなり、ライフタイムτ1及びτ2を算出できない場合がある。
酸化物半導体の伝導帯が縮退していない範囲においては、酸化物半導体のキャリア密度が高くなるほど、μ―PCD測定で得られる反射強度のピーク値が高くなり、また、ライフタイムが長くなる傾向となる。キャリア密度とピーク値、ライフタイムの相関関係を事前に取得しておくことで、任意の酸化物半導体のμ―PCD測定を行うことにより、該酸化物半導体のキャリア密度を推測できる。
酸化物半導体をトランジスタに用いる場合、良好なトランジスタの電気特性を得るには、酸化物半導体のキャリア密度の制御が重要となる。μ―PCD測定を行うことにより、酸化物半導体のキャリア密度を推測できることから、効率良く、トランジスタの電気特性の向上が可能となる。具体的には、しきい値電圧のマイナスシフトの抑制、オン電流の向上、または電界効果移動度の向上が可能となる。
さらにキャリア密度が高くなり、伝導帯が縮退する範囲になると、キャリア密度が高くなるほど、μ―PCD測定で得られるピーク値は低くなる。また、酸化物半導体の伝導帯が縮退する範囲においては、キャリア密度が高くなるほど、μ―PCD測定で得られるライフタイムが短くなる。さらにキャリア密度が高くなると、ピーク値が低くなることから、図3(B)に示したように、減衰曲線のノイズの影響が大きくなり、ライフタイムを算出できなくなる。ピーク値と合わせて、ライフタイムも用いることにより、酸化物半導体のキャリア密度をより精度良く推測できる。
縮退領域において、キャリア密度が高くなるほどピーク値が低くなる原因として、次の3つが考えられる。一つ目は、キャリア―キャリア散乱による移動度の低下である。二つ目は、キャリア―キャリア散乱による、励起光照射下でのキャリア密度の減少である。三つ目は、バースタイン・モスシフト(Burstein―Moss shift)効果による、励起光照射下でのキャリア密度の減少である。
まず、一つ目及び二つ目の理由について説明する。励起光照射により過剰キャリアが生成し、酸化物半導体の導電率が増加する。励起光照射による導電率の変化量を、数式4で表すことができる。
ここで、Δσは励起光照射による導電率の変化量、qは電気素量、μnは電子の移動度、ndarkは励起光照射前のキャリア密度、nphotoは励起光照射下でのキャリア密度を示す。
キャリア密度が高くなると、キャリア―キャリア散乱により移動度μnが低下することから、励起光照射による導電率の変化量が小さくなることが分かる。また、キャリア密度が高くなると、キャリア―キャリア散乱によりライフタイムが短くなり、励起光照射下でのキャリア密度nphotoが減少することから、励起光照射による導電率の変化量が小さくなることが分かる。よって、μ―PCD測定のピーク値が小さくなると考えられる。
次に、三つ目の理由について説明する。キャリア密度が高くなり、伝導帯が縮退すると、光学バンドギャップが広がることが知られており、これはバースタイン・モスシフト(Burstein―Moss shift)効果と呼ばれる。光学バンドギャップが広がることにより、励起光照射で励起するキャリア密度が減少し、μ―PCD測定のピーク値が小さくなると考えられる。
酸化物半導体のキャリア密度測定方法の一つとして、ホール(Hall)効果測定が挙げられる。しかし、ホール(Hall)効果測定は、測定可能なサンプルサイズが小さい為、基板サイズが大きいと、基板を分断する必要がある。また、サンプルに針を接触させて測定する。ホール効果測定は破壊、接触測定になることから、例えば酸化物半導体を用いたトランジスタ作製工程において、ホール効果測定を工程管理に用いるのは好ましくない。
これに対して、μ―PCD測定は酸化物半導体を形成した後であれば、トランジスタ作製の工程途中に非接触、非破壊、短時間で酸化物半導体のキャリア密度を評価できる。
また、トランジスタを作製する場合、チャネル、ソース、ドレイン、ゲートなどを形成するまで電気特性の測定を行うことができない。しかし、μ―PCD測定は工程途中に非接触、非破壊、短時間で酸化物半導体のキャリア密度を評価し、当該キャリア密度からトランジスタの電気特性を推測することができる。このように、工程途中に適宜μ―PCD測定を行うことにより、工程不良を容易に発見でき、μ−PCD測定結果を効率良く工程管理へフィードバックすることができる。
よって、トランジスタ作製工程途中にμ―PCD測定を行うことにより、時間遅延なく異常工程を確認でき、即座に異常に対応できる。また、異常のあった試料をトランジスタ製造工程から外すことにより、後の工程を流す無駄を排除できる。その為、効率良く、トランジスタを歩留まり高く作製できる。または、トランジスタを生産性高く作製できる。または、効率良く、該トランジスタを有する半導体装置を生産性高く作製できる。
また、試料ステージ1311をX方向及びY方向に動かすことで、酸化物半導体1320aの面内において、複数個所の評価を行うことができる。μ―PCD測定は非接触、非破壊、短時間で試料面内の複数個所の測定が可能である。したがって、トランジスタ作製工程途中で試料面内の複数個所でμ―PCD測定を行うことにより、工程途中で酸化物半導体のキャリア密度の面内分布を評価し、当該キャリア密度からトランジスタの電気特性の面内分布を推測することができる。したがって、試料面内分布に異常が発生した場合でも、速やか工程管理へフィードバックすることができる。
なお、酸化物半導体の膜厚やバンドギャップにより、酸化物半導体のμ―PCD測定での励起光の吸収率は異なる。励起光の吸収率が異なると、酸化物半導体に発生するキャリア密度が異なる為、酸化物半導体の膜厚やバンドギャップにより、マイクロ波の反射強度のピーク値が異なる。トランジスタ作製に用いる酸化物半導体の膜厚やバンドギャップに合わせたサンプルを作製し、事前にホール(Hall)効果測定などによるキャリア密度と、μ―PCD測定によるピーク値及びライフタイムとの相関を取得しておくことで、より精度良く、キャリア密度を推測することができる。
また、図2のように、導波管1305a及び導波管1305bの二つの導波管と、マジックT1304と、有する装置を用いても構わない。なお、導波管1305aと導波管1305bとが、対称性を有すると好ましい。または、導波管1305aと導波管1305bとのマイクロ波の経路長が同じであればよい。なお、図2において、導波管1305a及び導波管1305bは、コーナー部が曲率を有する形状を示しているが、これに限定されるものではない。
図2の場合も、まず、マイクロ波発振器1302より、マイクロ波を放射する。方向性結合器1303を介して進行波が、マジックT1304と位相器1315とに分かれる。マジックT1304において、進行波は、導波管1305a及び導波管1305bに分かれる。導波管1305aを通った進行波は、励起光とともに試料1320に入射する。また、導波管1305bを通った進行波は、そのまま試料1320に入射する。このとき、試料1320の酸化物半導体1320aで反射したマイクロ波が、再び導波管1305a及び導波管1305bを通り、マジックT1304に戻る。導波管1305aと導波管1305bと、を通った反射波は、マジックT1304において再び合流する、そして、マジックT1304はそれらの差信号を出力する。そして、ミキサー1306にて、位相器1315を介して分かれた進行波と混合される。混合された信号は、信号処理装置1307において検出される。
このとき、導波管1305bを通った反射波は、マイクロ波発振器1302に起因したノイズ、及び機械的振動による外乱などを、導波管1305aを通った反射波と同じだけ含む。したがって、その差信号をとることで、ノイズなどの影響を低減させられる。そのため、図2に示す装置は、励起光によるマイクロ波の反射強度の変化を、さらに感度よく検出できる。
(実施の形態2)
本実施の形態においては、本発明の一態様に用いることのできる、酸化物半導体の組成、及び酸化物半導体の構造等について、図4及び図5を参照して説明する。
[酸化物半導体]
以下に、本発明に係る酸化物半導体について説明する。
酸化物半導体は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウム及び亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
ここでは、酸化物半導体が、インジウム、元素M及び亜鉛を有するInMZnOである場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
<構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC−OS(c−axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous−like oxide semiconductor)及び非晶質酸化物半導体などがある。
CAAC−OSは、c軸配向性を有し、かつa−b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、及び七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC−OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC−OSが、a−b面方向において原子配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
また、CAAC−OSは、インジウム、及び酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、及び酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a−like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a−like OSは、nc−OS及びCAAC−OSと比べて、結晶性が低い。
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有していてもよい。
<原子数比>
次に、図4(A)、図4(B)、及び図4(C)を用いて、本発明に係る酸化物半導体が有するインジウム、元素M及び亜鉛の原子数比の好ましい範囲について説明する。なお、図4(A)、図4(B)、及び図4(C)には、酸素の原子数比については記載しない。また、酸化物半導体が有するインジウム、元素M、及び亜鉛の原子数比のそれぞれの項を[In]、[M]、及び[Zn]とする。
図4(A)、図4(B)、及び図4(C)において、破線は、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):1の原子数比(−1≦α≦1)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):2の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):3の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):4の原子数比となるライン、及び[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):5の原子数比となるラインを表す。
また、一点鎖線は、[In]:[M]:[Zn]=5:1:βの原子数比(β≧0)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=2:1:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:1:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:2:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:3:βの原子数比となるライン、及び[In]:[M]:[Zn]=1:4:βの原子数比となるラインを表す。
また、図4(A)、図4(B)、及び図4(C)に示す、[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の原子数比、及びその近傍値の酸化物半導体は、スピネル型の結晶構造をとりやすい。
また、酸化物半導体中に複数の相が共存する場合がある(二相共存、三相共存など)。例えば、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の近傍値である場合、スピネル型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。また、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=1:0:0の近傍値である場合、ビックスバイト型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。酸化物半導体中に複数の相が共存する場合、異なる結晶構造の間において、結晶粒界が形成される場合がある。
図4(A)に示す領域Aは、酸化物半導体が有する、インジウム、元素M、及び亜鉛の原子数比の好ましい範囲の一例について示している。
酸化物半導体は、インジウムの含有率を高くすることで、酸化物半導体のキャリア移動度(電子移動度)を高くすることができる。従って、インジウムの含有率が高い酸化物半導体はインジウムの含有率が低い酸化物半導体と比較してキャリア移動度が高くなる。
一方、酸化物半導体中のインジウム及び亜鉛の含有率が低くなると、キャリア移動度が低くなる。従って、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=0:1:0、及びその近傍値である場合(例えば図4(C)に示す領域C)は、絶縁性が高くなる。
従って、本発明の一態様の酸化物半導体は、キャリア移動度が高く、かつ、結晶粒界が少ない層状構造となりやすい、図4(A)の領域Aで示される原子数比を有することが好ましい。
特に、図4(B)に示す領域Bでは、領域Aの中でも、CAAC−OSとなりやすく、キャリア移動度も高い優れた酸化物半導体が得られる。
CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC−OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC−OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC−OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。
なお、領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=4:2:3から4.1、及びその近傍値を含む。近傍値には、例えば、[In]:[M]:[Zn]=5:3:4が含まれる。また、領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=5:1:6、及びその近傍値、及び[In]:[M]:[Zn]=5:1:7、及びその近傍値を含む。
なお、酸化物半導体が有する性質は、原子数比によって一義的に定まらない。同じ原子数比であっても、形成条件により、酸化物半導体の性質が異なる場合がある。例えば、酸化物半導体をスパッタリング装置にて成膜する場合、ターゲットの原子数比からずれた原子数比の膜が形成される。また、成膜時の基板温度によっては、ターゲットの[Zn]よりも、膜の[Zn]が小さくなる場合がある。従って、図示する領域は、酸化物半導体が特定の特性を有する傾向がある原子数比を示す領域であり、領域A乃至領域Cの境界は厳密ではない。
[酸化物半導体を有するトランジスタ]
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
なお、上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、結晶粒界におけるキャリア散乱等を減少させることができるため、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
また、トランジスタには、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア密度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
<バンド図>
続いて、該酸化物半導体を2層構造、または3層構造とした場合について述べる。酸化物半導体S1、酸化物半導体S2、及び酸化物半導体S3の積層構造、及び積層構造に接する絶縁体のバンド図と、酸化物半導体S2及び酸化物半導体S3の積層構造、及び積層構造に接する絶縁体のバンド図と、酸化物半導体S1及び酸化物半導体S2の積層構造、及び積層構造に接する絶縁体のバンド図と、について、図5を用いて説明する。
図5(A)は、絶縁体I1、酸化物半導体S1、酸化物半導体S2、酸化物半導体S3、及び絶縁体I2を有する積層構造の膜厚方向のバンド図の一例である。また、図5(B)は、絶縁体I1、酸化物半導体S2、酸化物半導体S3、及び絶縁体I2を有する積層構造の膜厚方向のバンド図の一例である。また、図5(C)は、絶縁体I1、酸化物半導体S1、酸化物半導体S2、及び絶縁体I2を有する積層構造の膜厚方向のバンド図の一例である。なお、バンド図は、理解を容易にするため絶縁体I1、酸化物半導体S1、酸化物半導体S2、酸化物半導体S3、及び絶縁体I2の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec)を示す。
酸化物半導体S1、酸化物半導体S3は、酸化物半導体S2よりも伝導帯下端のエネルギー準位が真空準位に近く、代表的には、酸化物半導体S2の伝導帯下端のエネルギー準位と、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3の伝導帯下端のエネルギー準位との差が、0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以下、または1eV以下であることが好ましい。すなわち、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3の電子親和力と、酸化物半導体S2の電子親和力との差が、0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以下、または1eV以下であることが好ましい。
図5(A)、図5(B)、及び図5(C)に示すように、酸化物半導体S1、酸化物半導体S2、酸化物半導体S3において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようなバンド図を有するためには、酸化物半導体S1と酸化物半導体S2との界面、または酸化物半導体S2と酸化物半導体S3との界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
具体的には、酸化物半導体S1と酸化物半導体S2、酸化物半導体S2と酸化物半導体S3が、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物半導体S2がIn−Ga−Zn酸化物半導体の場合、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3として、In−Ga−Zn酸化物半導体、Ga−Zn酸化物半導体、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物半導体S2となる。酸化物半導体S1と酸化物半導体S2との界面、及び酸化物半導体S2と酸化物半導体S3との界面における欠陥準位密度を低くすることができるため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さく、高いオン電流が得られる。
トラップ準位に電子が捕獲されることで、捕獲された電子は固定電荷のように振る舞うため、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。酸化物半導体S1、酸化物半導体S3を設けることにより、トラップ準位を酸化物半導体S2より遠ざけることができる。当該構成とすることで、トランジスタのしきい値電圧がプラス方向にシフトすることを防止することができる。
酸化物半導体S1、及び酸化物半導体S3は、酸化物半導体S2と比較して、導電率が十分に低い材料を用いる。このとき、酸化物半導体S2、酸化物半導体S2と酸化物半導体S1との界面、及び酸化物半導体S2と酸化物半導体S3との界面が、主にチャネル領域として機能する。例えば、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3には、図4(C)において、絶縁性が高くなる領域Cで示す原子数比の酸化物半導体を用いればよい。なお、図4(C)に示す領域Cは、[In]:[M]:[Zn]=0:1:0、及びその近傍値、[In]:[M]:[Zn]=1:3:2及びその近傍値、及び[In]:[M]:[Zn]=1:3:4、及びその近傍値である原子数比を示している。
特に、酸化物半導体S2に領域Aで示される原子数比の酸化物半導体を用いる場合、酸化物半導体S1及び酸化物半導体S3には、[M]/[In]が1以上、好ましくは2以上である酸化物半導体を用いることが好ましい。また、酸化物半導体S3として、十分に高い絶縁性を得ることができる[M]/([Zn]+[In])が1以上である酸化物半導体を用いることが好適である。
<CAC−OSの構成>
また、本発明の一態様に用いることのできる、CAC(Cloud Aligned Complementary)−OSの構成について説明する。
CAC−OSとは、例えば、酸化物半導体を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、酸化物半導体において、一つあるいはそれ以上の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
なお、酸化物半導体は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウム及び亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
例えば、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OS(CAC−OSの中でもIn−Ga−Zn酸化物を、特にCAC−IGZOと呼称してもよい。)とは、インジウム酸化物(以下、InOX1(X1は0よりも大きい実数)とする。)、またはインジウム亜鉛酸化物(以下、InX2ZnY2OZ2(X2、Y2、及びZ2は0よりも大きい実数)とする。)と、ガリウム酸化物(以下、GaOX3(X3は0よりも大きい実数)とする。)、またはガリウム亜鉛酸化物(以下、GaX4ZnY4OZ4(X4、Y4、及びZ4は0よりも大きい実数)とする。)などと、に材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状のInOX1、またはInX2ZnY2OZ2が、膜中に均一に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。
つまり、CAC−OSは、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域とが、混合している構成を有する複合酸化物半導体である。なお、本明細書において、例えば、第1の領域の元素Mに対するInの原子数比が、第2の領域の元素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、第1の領域は、第2の領域と比較して、Inの濃度が高いとする。
なお、IGZOは通称であり、In、Ga、Zn、及びOによる1つの化合物をいう場合がある。代表例として、InGaO3(ZnO)m1(m1は自然数)、またはIn(1+x0)Ga(1−x0)O3(ZnO)m0(−1≦x0≦1、m0は任意数)で表される結晶性の化合物が挙げられる。
上記結晶性の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、または前述のCAAC構造を有する。なお、CAAC構造とは、複数のIGZOのナノ結晶がc軸配向を有し、かつa−b面においては配向せずに連結した結晶構造である。
一方、CAC−OSは、酸化物半導体の材料構成に関する。CAC−OSとは、In、Ga、Zn、及びOを含む材料構成において、一部にGaを主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。従って、CAC−OSにおいて、結晶構造は副次的な要素である。
なお、CAC−OSは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含まないものとする。例えば、Inを主成分とする膜と、Gaを主成分とする膜との2層からなる構造は、含まない。
なお、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
なお、ガリウムの代わりに、アルミニウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれている場合、CAC−OSは、一部に該金属元素を主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。
CAC−OSは、例えば基板を加熱しない条件で、スパッタリング法により形成することができる。また、CAC−OSをスパッタリング法で形成する場合、成膜ガスとして、不活性ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、及び窒素ガスの中から選ばれたいずれか一つまたは複数を用いればよい。また、成膜時の成膜ガスの総流量に対する酸素ガスの流量比は低いほど好ましく、例えば酸素ガスの流量比を0%以上30%未満、好ましくは0%以上10%以下とすることが好ましい。
CAC−OSは、X線回折(XRD:X−ray diffraction)測定法のひとつであるOut−of−plane法によるθ/2θスキャンを用いて測定したときに、明確なピークが観察されないという特徴を有する。すなわち、X線回折から、測定領域のa−b面方向、及びc軸方向の配向は見られないことが分かる。
またCAC−OSは、プローブ径が1nmの電子線(ナノビーム電子線ともいう。)を照射することで得られる電子線回折パターンにおいて、リング状に輝度の高い領域と、該リング領域に複数の輝点が観測される。従って、電子線回折パターンから、CAC−OSの結晶構造が、平面方向、及び断面方向において、配向性を有さないnc(nano−crystal)構造を有することがわかる。
また例えば、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X−ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
CAC−OSは、金属元素が均一に分布したIGZO化合物とは異なる構造であり、IGZO化合物と異なる性質を有する。つまり、CAC−OSは、GaOX3などが主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域と、に互いに相分離し、各元素を主成分とする領域がモザイク状である構造を有する。
ここで、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域は、GaOX3などが主成分である領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域を、キャリアが流れることにより、酸化物半導体としての導電性が発現する。従って、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域が、酸化物半導体中にクラウド状に分布することで、高い電界効果移動度(μ)が実現できる。
一方、GaOX3などが主成分である領域は、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、GaOX3などが主成分である領域が、酸化物半導体中に分布することで、リーク電流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できる。
従って、CAC−OSを半導体素子に用いた場合、GaOX3などに起因する絶縁性と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1に起因する導電性とが、相補的に作用することにより、高いオン電流(Ion)、及び高い電界効果移動度(μ)を実現することができる。
また、CAC−OSを用いた半導体素子は、信頼性が高い。従って、CAC−OSは、ディスプレイをはじめとするさまざまな半導体装置に最適である。
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い表現での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductorまたは単にOSともいう)などに分類される。例えば、トランジスタに金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、金属酸化物が増幅作用、整流作用、及びスイッチング作用の少なくとも1つを有する場合、当該金属酸化物を、金属酸化物半導体(metal oxide semiconductor)、略してOSと呼ぶことができる。また、OS FETと記載する場合においては、金属酸化物または酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
また、本明細書等において、CAAC(c−axis aligned crystal)、及びCAC(cloud aligned complementary)と記載する場合がある。なお、CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能、または材料の構成の一例を表す。
また、本明細書等において、CAC−OSまたはCAC−metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC−OSまたはCAC−metal oxideを、トランジスタの半導体層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC−OSまたはCAC−metal oxideに付与することができる。CAC−OSまたはCAC−metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
また、本明細書等において、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
また、CAC−OSまたはCAC−metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
また、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC−OSまたはCAC−metal oxideをトランジスタのチャネル領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
すなわち、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
トランジスタのオン電流の向上、またはトランジスタの電界効果移動度の向上を目的とする場合においては、酸化物半導体膜のキャリア密度を高くする方が好ましい。酸化物半導体膜のキャリア密度を高くする場合においては、酸化物半導体膜の不純物濃度をわずかに高める、または酸化物半導体膜の欠陥準位密度をわずかに高めればよい。あるいは、酸化物半導体膜のバンドギャップをより小さくするとよい。例えば、トランジスタのId−Vg特性のオン/オフ比が取れる範囲において、不純物濃度がわずかに高い、または欠陥準位密度がわずかに高い酸化物半導体膜は、実質的に真性とみなせる。また、電子親和力が大きく、それにともなってバンドギャップが小さくなり、その結果、熱励起された電子(キャリア)の密度が増加した酸化物半導体膜は、実質的に真性とみなせる。なお、より電子親和力が大きな酸化物半導体膜を用いた場合には、トランジスタのしきい値電圧がより低くなる。
上述のキャリア密度が高められた酸化物半導体膜は、わずかにn型化している。
実質的に真性の酸化物半導体膜のキャリア密度は、1×105cm−3以上1×1018cm−3未満が好ましく、1×107cm−3以上1×1017cm−3以下がより好ましく、1×109cm−3以上5×1016cm−3以下がさらに好ましく、1×1010cm−3以上1×1016cm−3以下がさらに好ましく、1×1011cm−3以上1×1015cm−3以下がさらに好ましい。
実施の形態1に示す方法でμ―PCD測定を行うことにより、酸化物半導体のキャリア密度を評価できる。バンドギャップが3.17eV以上3.58eV以下、かつ膜厚が27.6nm以上32.5nm以下の酸化物半導体において、ピーク値が1042mV以下かつライフタイムτ1が50nsec以上である酸化物半導体は、キャリア密度が1×1016cm−3未満で少ないと推測でき、好ましい。よって、該酸化物半導体を用いたトランジスタはしきい値電圧のマイナスシフトの抑制、オン電流の向上、または電界効果移動度の向上が可能となる。
なお、本実施の形態は、上述のバンドギャップ及び膜厚の範囲内の酸化物半導体に限られない。上述のバンドギャップ及び膜厚の範囲外の酸化物半導体においても、該酸化物半導体のキャリア密度を評価でき、また該酸化物半導体をトランジスタに使用できる。
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施できる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、先の実施の形態にした、酸化物半導体を有するトランジスタを用いる半導体装置の一形態について、図6乃至図26を用いて説明する。
<半導体装置1000の構成例>
図6(A)乃至図6(E)は、半導体装置1000を示す上面図及び断面図である。半導体装置1000はトランジスタ200及びトランジスタ400を有する。基板310の上に形成されたトランジスタ200及びトランジスタ400は、異なる構成を有する。例えば、トランジスタ400は、トランジスタ200と比較して、バックゲート電圧及びトップゲート電圧が0Vのときのドレイン電流(以下、Icutと呼ぶ。)が小さい構成とすればよい。トランジスタ400をスイッチング素子として、トランジスタ200のバックゲートの電位を制御できる構成とする。これにより、トランジスタ200のバックゲートと接続するノードを所望の電位にした後、トランジスタ400をオフ状態にすることで、トランジスタ200のバックゲートと接続するノードの電荷が消失することを抑制できる。
ここで、図6(A)は半導体装置1000の上面図である。図6(B)は、図6(A)中の一点鎖線L1−L2に対応しており、トランジスタ200及びトランジスタ400のチャネル長方向の断面図である。また、図6(C)は、図6(A)中の一点鎖線W1−W2に対応しており、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図である。また、図6(D)は、図6(A)中の一点鎖線W3−W4に対応するトランジスタ200の断面図である。また、図6(E)は、図6(A)中の一点鎖線W5−W6に対応しており、トランジスタ400のチャネル幅方向の断面図である。
以下、トランジスタ200とトランジスタ400の構成についてそれぞれ図4(A)乃至図4(E)を用いて説明する。なお、トランジスタ200とトランジスタ400の構成材料の詳細については<構成材料について>で詳細に説明する。
〔トランジスタ200〕
図6(A)乃至図6(D)に示すように、トランジスタ200は、基板310の上に配置された絶縁体212と、絶縁体212の上に配置された絶縁体214と、絶縁体214の上に配置された導電体205(導電体205a、及び導電体205b)と、導電体205の上に配置された絶縁体220、絶縁体222、及び絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物半導体230(酸化物半導体230a、酸化物半導体230b、及び酸化物半導体230c)と、酸化物半導体230bの上に配置された導電体240a、及び導電体240b(以下、導電体240aと導電体240bをまとめて導電体240という場合がある。)と、導電体240の上に配置された層245a、及び層245b(以下、層245aと層245bをまとめて層245という場合がある。)と、酸化物半導体230cの上に配置された絶縁体250と、絶縁体250の上に配置された導電体260(導電体260a、導電体260b、及び導電体260c)と、導電体260cの上に配置された層270と、層270の上に配置された絶縁体272と、絶縁体272の上に配置された絶縁体274と、を有する。
絶縁体212及び絶縁体214は、下層から水または水素などの不純物がトランジスタ200などに混入するのを防ぐバリア絶縁膜として機能できる。絶縁体212及び絶縁体214は、水または水素などの不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることが好ましく、例えば、酸化アルミニウムなどを用いることが好ましい。これにより、基板310から水素、水などの不純物が絶縁体212及び絶縁体214より上層に拡散するのを抑制できる。なお、絶縁体212及び絶縁体214は、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の少なくとも一が透過しにくいことが好ましい。また、以下において、不純物が透過しにくい絶縁性材料について記載する場合も同様である。
また、例えば、絶縁体212は原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法を用いて成膜することが好ましい。これにより、絶縁体212を良好な被覆性で成膜し、クラックやピンホールなどが形成されることを抑制できる。また、例えば、絶縁体214はスパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。これにより、絶縁体212より速い成膜速度で成膜でき、絶縁体212より生産性よく膜厚を大きくできる。このような絶縁体212と絶縁体214の積層にすることで、水素、水などの不純物に対するバリア性を向上させることができる。なお、絶縁体212は、絶縁体214の下に設ける構成としてもよい。また、絶縁体214が不純物に対して十分なバリア性を持つ場合、絶縁体212を設けない構成としてもよい。
また、絶縁体212及び絶縁体214は、酸素(例えば、酸素原子または酸素分子など)が透過しにくい絶縁性材料を用いることが好ましい。これにより、絶縁体224などに含まれる酸素が下方拡散するのを抑制できる。これにより、酸化物半導体230bに効果的に酸素を供給できる。
ここで、絶縁体214及び絶縁体216は開口が形成されており、これらの開口の内壁はつながって一つの開口を形成している。
絶縁体214及び絶縁体216の開口の内壁に接して導電体205aが形成され、さらに内側に導電体205bが形成されている。ここで、導電体205a及び導電体205bの上面の高さと、絶縁体216の上面の高さは同程度にできる。導電体205は、ゲート電極の一方として機能できる。
ここで、導電体205aは、水または水素などの不純物が透過しにくい導電性材料を用いることが好ましい。また、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましく、単層または積層とすればよい。これにより、基板310から水素、水などの不純物が導電体205を通じて上層に拡散するのを抑制できる。なお、導電体205aは、水素原子、水素分子、水分子、酸素原子、酸素分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一が透過しにくいことが好ましい。また、以下において、不純物が透過しにくい導電性材料について記載する場合も同様である。
また、導電体205bに、銅など酸化シリコン中を拡散しやすい金属を用いる場合、絶縁体220として、窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどの銅が透過しにくい絶縁性材料を用いることにより、銅などの不純物が絶縁体220より上に拡散することを防ぐことができる。このとき、導電体205aも銅が透過しにくい絶縁性材料を用いて、銅などの不純物が導電体205a、導電体205bの外に銅などの不純物が拡散しないようにすることが好ましい。
また、絶縁体222は、水または水素などの不純物、及び酸素が透過しにくい絶縁性材料を用いることが好ましく、例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。これにより、基板310から水素、水などの不純物が絶縁体212及び絶縁体214より上層に拡散するのを抑制できる。さらに、絶縁体224などに含まれる酸素が下方拡散するのを抑制できる。
絶縁体224は、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。具体的には、昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)にて、酸素原子に換算した酸素の脱離量が1.0×1018atoms・cm−3以上、好ましくは3.0×1020atoms・cm−3以上である絶縁体を用いることが好ましい。なお、加熱により放出される酸素を「過剰酸素」ともいう。このような絶縁体224を酸化物半導体230に接して設けることにより、酸化物半導体230bに効果的に酸素を供給できる。
また、絶縁体224中の水、水素または窒素酸化物などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。例えば、絶縁体224の水素の脱離量は、TDSにおいて、50℃から500℃の範囲において、水素分子に換算した脱離量が、絶縁体224の面積当たりに換算して、2×1015molecules・cm−2以下、好ましくは1×1015molecules・cm−2以下、より好ましくは5×1014molecules・cm−2以下であればよい。
絶縁体220、絶縁体222、及び絶縁体224は、ゲート絶縁膜として機能できる。
酸化物半導体230aは、例えば、酸素雰囲気下で成膜した酸化物を用いることが好ましい。これにより、酸化物半導体230aの形状の安定を図ることができる。なお、酸化物半導体230a乃至酸化物半導体230cの構成の詳細については後述する。
トランジスタ200に安定した電気特性及び、良好な信頼性を付与するには、酸化物半導体230bが、酸化物中の不純物及び酸素欠損が低減され、高純度真性または実質的に高純度真性であることが好ましい。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
また、酸化物のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となり、信頼性が低下する場合がある。
従って、トランジスタの電気特性を安定させ、信頼性を向上させるためには、酸化物中の酸素欠損及び不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。
また、酸化物半導体230bは、酸化物半導体230a及び酸化物半導体230cよりも電子親和力の大きい酸化物を用いる。例えば、酸化物半導体230bとして、酸化物半導体230a及び酸化物半導体230cよりも電子親和力が0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.1eV以上0.4eV以下大きい酸化物を用いる。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
また、酸化物半導体230bは、第1の領域、第2の領域、及び第3の領域を有する。第3の領域は、上面図において第1の領域と第2の領域に挟まれる。トランジスタ200は、酸化物半導体230bの第1の領域上に接して導電体240aを有する。また、トランジスタ200は、酸化物半導体230bの第2の領域上に接して導電体240bを有する。導電体240aは、ソース電極またはドレイン電極の一方として機能し、導電体240bは、ソース電極またはドレイン電極の他方として機能できる。よって、酸化物半導体230bの第1の領域または第2の領域の一方は、ソース領域として機能でき、他方はドレイン領域として機能できる。また、酸化物半導体230bの第3の領域はチャネル形成領域として機能できる。
なお、酸化物半導体230bに含まれる酸素欠損の量は、例えば、一定電流測定法(CPM:Constant Photocurrent Method)などを用いて評価すればよい。CPMを用いることで、試料中の酸素欠損に起因する深い欠陥準位について評価を行うことができる。また、酸化物半導体230bに含まれる酸素欠損に捕獲された水素の量は、例えば、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)分析などを用いて評価すればよい。ESRを用いることで、試料中の酸素欠損に捕獲された水素に起因する伝導電子について評価を行うことができる。
ここで、導電体240a、導電体240bの酸化物半導体230cと接する側の側面が90°未満のテーパー角を有することが好ましい。導電体240a、導電体240bの酸化物半導体230cと接する側の側面と底面のなす角が45°以上75°以下であることが好ましい。このように導電体240a、導電体240bを形成することにより、酸化物半導体230cを導電体240が形成する段差部にも被覆性良く成膜できる。これにより、酸化物半導体230cが段切れなどを起こして、酸化物半導体230bと絶縁体250などが接するのを防ぐことができる。
また、導電体240a上に層245aが形成され、導電体240b上に層245bが形成される。ここで、層245a及び層245bは、酸素が透過しにくい材料を用いることが好ましく、例えば酸化アルミニウムなどを用いることができる。これにより、導電体240a及び導電体240bの酸化によって周囲の過剰酸素が消費されることを防ぐことができる。
酸化物半導体230cは、層245a、層245b、導電体240a、導電体240b、酸化物半導体230b、及び酸化物半導体230a上に形成される。ここで、酸化物半導体230cは、酸化物半導体230bの上面と、酸化物半導体230bのチャネル幅方向の側面と、酸化物半導体230aのチャネル幅方向の側面と、絶縁体224の上面と接する。酸化物半導体230cは、酸化物半導体230bに酸素を供給する機能を有する場合がある。また、酸化物半導体230cの上に絶縁体250を形成することにより、絶縁体250から水または水素などの不純物が酸化物半導体230bに直接浸入することを防ぐことができる。また、例えば、酸素雰囲気下で成膜した酸化物を用いることが好ましい。これにより、酸化物半導体230cの形状の安定を図ることができる。
絶縁体250はゲート絶縁膜として機能できる。絶縁体250は、絶縁体224と同様に、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。このような絶縁体250を酸化物半導体230に接して設けることにより、酸化物半導体230bに効果的に酸素を供給できる。また、絶縁体224と同様に、絶縁体250中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
絶縁体250上に導電体260aを有し、導電体260a上に導電体260bを有し、導電体260b上に導電体260cを有する。絶縁体250及び導電体260は、第3の領域と重なる領域を有する。また、絶縁体250、導電体260a、導電体260b及び導電体260cの端部は概略一致する。
なお、導電体205または導電体260の一方はゲート電極として機能でき、他方はバックゲート電極として機能できる。ゲート電極とバックゲート電極で半導体のチャネル形成領域を挟むように配置される。バックゲート電極の電位は、ゲート電極と同電位としてもよいし、接地電位や、任意の電位としてもよい。また、バックゲート電極の電位をゲート電極と連動させず独立して変化させることで、トランジスタのしきい値電圧を変化させることができる。
導電体260aは、酸化物で導電性を有するものが好ましい。例えば、酸化物半導体230として用いることができるIn−Ga−Zn系酸化物のうち、導電性が高い、金属の原子数比が[In]:[Ga]:[Zn]=4:2:3から4.1、及びその近傍値のものを用いることが好ましい。
導電体260bは、導電体260aに窒素などの不純物を添加して導電体260aの導電性を向上できる導電体が好ましい。例えば導電体260bは、窒化チタンなどを用いることが好ましい。
また、導電体260上に層270が形成されている。ここで、層270は、酸素が透過しにくい材料を用いることが好ましく、例えば酸化アルミニウムなどを用いることができる。これにより、導電体260の酸化によって周囲の過剰酸素が消費されることを防ぐことができる。このように、層270はゲートを保護するゲートキャップとしての機能を有する。層270及び酸化物半導体230cは、導電体260の端部を越えて延伸し、当該延伸部分で重畳する領域を有し、層270の端部と酸化物半導体230cの端部は概略一致している。
絶縁体272は、酸化物半導体230、導電体240、層245、絶縁体250、導電体260、及び層270を覆って設けられている。さらに絶縁体272は、酸化物半導体230bの側面、及び絶縁体224の上面と接して設けられている。さらに、絶縁体272の上に絶縁体274が設けられている。絶縁体272及び絶縁体274は、上層から水または水素などの不純物がトランジスタ200などに混入するのを防ぐバリア絶縁膜として機能できる。
ここで、絶縁体272は、スパッタリング法を用いて成膜された酸化物絶縁体を用いることが好ましく、例えば酸化アルミニウムを用いることが好ましい。このような絶縁体272を用いることにより、絶縁体224及び酸化物半導体230bの絶縁体272と接する面に酸素を添加して、酸素過剰な状態にできる。
また、絶縁体272及び絶縁体274は、加熱処理を行うことにより、酸化物半導体230及び絶縁体224中の水素をゲッタリングして、外方拡散させる機能を持つことが好ましく、例えば、酸化アルミニウムを用いることが好ましい。これにより、絶縁体224及び酸化物半導体230b中の水または水素などの不純物を低減させることができる。
また、絶縁体272及び絶縁体274は、水または水素などの不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることが好ましく、例えば、酸化アルミニウムなどを用いることが好ましい。このような絶縁体272を用いることにより、絶縁体274より上層から水素、水などの不純物が絶縁体272より下層に拡散するのを抑制できる。
さらに、絶縁体274はALD法を用いて成膜された酸化物絶縁体を用いることが好ましく、例えば酸化アルミニウムを用いることが好ましい。ALD法を用いて成膜された絶縁体274は、良好な被覆性を有し、クラックやピンホールなどの形成が抑制された膜となる。絶縁体272及び絶縁体274は凹凸を有する形状の上に設けられるが、ALD法で成膜された絶縁体274を用いることにより、段切れ、クラック、ピンホールなどが形成されることなく、トランジスタ200を絶縁体274で覆うことができる。これにより、絶縁体272に段切れなどが発生しても、絶縁体274で覆うことができるので、絶縁体272と絶縁体274の積層膜の、水素、水などの不純物に対するバリア性をより顕著に向上させることができる。
また、絶縁体272をスパッタリング法で成膜し、絶縁体274をALD法で成膜した場合、導電体260cの上面が被形成面となる部分の膜厚(以下、第1の膜厚とよぶ。)と、酸化物半導体230a、酸化物半導体230b、及び導電体240の側面が被形成面となる部分の膜厚(以下、第2の膜厚とよぶ。)と、で絶縁体272及び絶縁体274で膜厚の比が異なる場合がある。絶縁体272では、第1の膜厚と、第2の膜厚とを同程度の大きさとすることができる。これに対して、絶縁体274では、第1の膜厚が第2の膜厚より大きくなる場合が多く、例えば、第1の膜厚が第2の膜厚の2倍程度になる場合がある。
また、絶縁体272及び絶縁体274は、酸素が透過しにくい絶縁性材料を用いることが好ましい。これにより、絶縁体224、絶縁体250などに含まれる酸素が上方拡散するのを抑制できる。
このように、トランジスタ200は、絶縁体274、絶縁体272、絶縁体214、及び絶縁体212に挟まれる構造とすることによって、酸素を外方拡散させず、絶縁体224、酸化物半導体230、及び絶縁体250中に多くの酸素を含有させることができる。さらに、絶縁体274の上方及び絶縁体212の下方から水素、または水などの不純物が混入するのを防ぎ、絶縁体224、酸化物半導体230、及び絶縁体250中の不純物濃度を低減させることができる。
このようにして、トランジスタ200の半導体層として機能する酸化物半導体230b中の酸素欠損を低減し、水素または水などの不純物を低減することで、トランジスタ200の電気特性を安定させ、信頼性を向上させることができる。
絶縁体274の上には、絶縁体280が設けられている。絶縁体280は、絶縁体224などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
さらに、絶縁体280の上に絶縁体282が設けられ、絶縁体282の上に絶縁体284が設けられている。絶縁体282及び絶縁体284は、上層から水または水素などの不純物がトランジスタ200などに混入するのを防ぐバリア絶縁膜として機能できる。絶縁体282及び絶縁体284は、絶縁体272及び絶縁体274と同様に、水、水素などの不純物、及び酸素が透過しにくい絶縁性材料、例えば酸化アルミニウムを用いることが好ましい。
絶縁体282及び絶縁体284は、絶縁体272及び絶縁体274と同様に、加熱処理を行うことにより、絶縁体280中の水素をゲッタリングする性質をもつことが好ましく、例えば、酸化アルミニウムを用いることが好ましい。このような絶縁体282及び絶縁体284を設けることで、絶縁体280の膜中の水または水素などの不純物濃度を低減できる。
また、絶縁体284は、絶縁体274と同様に、ALD法を用いて成膜された酸化物絶縁体を用いることが好ましく、例えば酸化アルミニウムを用いることが好ましい。このような絶縁体274を用いることにより、絶縁体284より上層から水素、水などの不純物が絶縁体282より下層に拡散するのを抑制できる。
ここで、絶縁体216、絶縁体220、絶縁体222、絶縁体224、絶縁体272、絶縁体274及び絶縁体280には、絶縁体214に達する開口480が形成されている。絶縁体282は、開口480の内側にも成膜されており、絶縁体214の上面と接している。なお、図6(A)では、W1−W2方向に伸長された開口480の一部だけが示されているが、開口480はトランジスタ200及びトランジスタ400を囲むように形成され、少なくとも酸化物半導体230より外側を囲むように開口480が形成される。また、開口480は閉じており、開口480より内側の領域と開口480より外側の領域を分断していることが好ましい。開口480において、絶縁体214の上面と絶縁体282の下面が接しており、開口480で囲まれる領域は、絶縁体214と絶縁体282で囲まれる領域ということができる。
このような構造とすることにより、トランジスタ200を基板の上下方向だけでなく、側面方向からも絶縁体282及び絶縁体284で囲んで封止できる。これにより、絶縁体284の外側から水、または水素などの不純物がトランジスタ200及びトランジスタ400に拡散するのを防ぐことができる。さらに、絶縁体282をALD法で成膜することにより、開口480においても段切れなどを起こさずに、成膜できる。これにより、絶縁体282に段切れなどが発生しても、絶縁体284で覆うことができるので、絶縁体282と絶縁体284の積層膜の、不純物に対するバリア性を向上させることができる。
また、開口480は、半導体装置1000を切り出すダイシングラインまたはスクライブラインの内側に位置するように設けることが好ましい。これにより、半導体装置1000を切り出した時も、絶縁体280、絶縁体224、絶縁体216などの側面が絶縁体282及び絶縁体284で封止されたままなので、これらの絶縁体から、水素または水などの不純物が浸入してトランジスタ200及びトランジスタ400に拡散するのを防ぐことができる。なお、ダイシングラインまたはスクライブラインの内側に開口480で囲まれる領域を複数設け、複数の半導体装置を個別に、絶縁体282及び絶縁体284で封止する構造としてもよい。
〔トランジスタ400〕
図6(A)、図6(B)及び図6(E)に示すように、トランジスタ400は、基板310の上に配置された絶縁体212と、絶縁体212の上に配置された絶縁体214と、絶縁体214の上に配置された導電体403(導電体403a、及び導電体403b)、導電体405(導電体405a、及び導電体405b)、導電体407(導電体407a、及び導電体407b)と、導電体403、導電体405、及び導電体407の上に配置された絶縁体220、絶縁体222、及び絶縁体224と、絶縁体224、導電体405b、及び導電体407bの上に配置された酸化物半導体430と、酸化物半導体430の上に配置された絶縁体450と、絶縁体450の上に配置された導電体460(導電体460a、導電体460b、及び導電体460c)と、導電体460cの上に配置された層470と、層470の上に配置された絶縁体272と、絶縁体272の上に配置された絶縁体274と、を有する。以下、トランジスタ200で説明した構成については省略する。
絶縁体216の開口に導電体403、導電体405、及び導電体407が設けられる。導電体403、導電体405、及び導電体407は導電体205と同様の構成にすることが好ましい。絶縁体216の開口の内側に接して導電体403aが形成され、さらに内側に導電体403bが形成されている。導電体405及び導電体407も、導電体403と同様の構成である。導電体405または導電体407の一方は、ソース電極またはドレイン電極の一方として機能でき、他方は、ソース電極またはドレイン電極の他方として機能できる。
酸化物半導体430は、酸化物半導体230cと同様の構成とすることが好ましい。また、酸化物半導体430は、第1の領域、第2の領域、及び第3の領域を有する。第3の領域は、上面図において第1の領域と第2の領域に挟まれる。トランジスタ400は、酸化物半導体430の第1の領域の下に導電体405bを有し、酸化物半導体430の第2の領域上に導電体407bを有する。よって、酸化物半導体430cの第1の領域または第2の領域の一方は、ソース領域として機能でき、他方はドレイン領域として機能できる。また、酸化物半導体430cの第3の領域はチャネル形成領域として機能できる。
なお、トランジスタ200では、酸化物半導体230bにチャネルが形成されるが、トランジスタ400では酸化物半導体430にチャネルが形成される。酸化物半導体230bと酸化物半導体430は、電気的性質の異なる半導体材料を用いることが好ましい。酸化物半導体230bと酸化物半導体430に電気的性質の異なる半導体材料を用いることで、トランジスタ200とトランジスタ400の電気特性を異ならせることができる。
また、例えば、酸化物半導体430に、酸化物半導体230bよりも電子親和力が小さい半導体を用いることで、トランジスタ400のしきい値電圧をトランジスタ200よりも大きくできる。具体的には、酸化物半導体430及び酸化物半導体230bがIn−M−Zn酸化物(Inと元素MとZnを含む酸化物)であるとき、酸化物半導体430をIn:M:Zn=x1:y1:z1[原子数比]、酸化物半導体230bをIn:M:Zn=x2:y2:z2[原子数比]とすると、y1/x1がy2/x2よりも大きくなる酸化物半導体430、及び酸化物半導体230bを用いればよい。酸化物半導体230bは、例えば、ターゲットの原子数比が、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:1.5、In:M:Zn=2:1:2.3、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=5:1:7等を用いて成膜したものが好ましい。また、酸化物半導体430は、例えば、ターゲットの原子数比が、In:M:Zn=1:2:4、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=1:3:6、In:M:Zn=1:3:8、In:M:Zn=1:4:3、In:M:Zn=1:4:4、In:M:Zn=1:4:5、In:M:Zn=1:4:6、In:M:Zn=1:6:3、In:M:Zn=1:6:4、In:M:Zn=1:6:5、In:M:Zn=1:6:6、In:M:Zn=1:6:7、In:M:Zn=1:6:8、In:M:Zn=1:6:9、In:M:Zn=1:10:1等を用いて成膜したものが好ましい。ただし、これに限られることなく、上記の式を満たす範囲で酸化物半導体430及び酸化物半導体230bの原子数比を適宜設定すればよい。このようなIn−M−Zn酸化物を用いることで、トランジスタ400のVthをトランジスタ200よりも大きくできる。
また、トランジスタ400では酸化物半導体230のチャネルが形成される領域が絶縁体224と絶縁体450に直接接しているため、界面散乱やトラップ準位の影響を受けやすい。これにより、トランジスタ400の電界効果移動度及びキャリア密度を小さくできる。また、トランジスタ400のしきい値電圧をトランジスタ200よりも大きくできる。
酸化物半導体430は、過剰酸素を多く含むことが好ましく、例えば、酸素雰囲気下で成膜した酸化物を用いることが好ましい。このような酸化物半導体430を半導体層として用いることにより、トランジスタ400のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減し、Icutを非常に小さくできる。
絶縁体450は、絶縁体250と同様の構成とすることが好ましく、ゲート絶縁膜として機能できる。このような絶縁体450を酸化物半導体430に接して設けることにより、酸化物半導体430に効果的に酸素を供給できる。また、絶縁体224と同様に、絶縁体450中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
導電体460は、導電体260と同様の構成とすることが好ましい。絶縁体450上に導電体460aを有し、導電体460a上に導電体460bを有し、導電体460b上に導電体460cを有する。絶縁体450及び導電体460は、第3の領域と重なる領域を有する。また、絶縁体450、導電体460a、導電体460b及び導電体460cの端部は概略一致する。なお、導電体403または導電体460の一方はゲート電極として機能でき、他方はバックゲート電極として機能できる。
層470は、層270と同様の構成とすることが好ましい。導電体460上に層470が形成されている。これにより、導電体460の酸化によって周囲の過剰酸素が消費されることを防ぐことができる。層470及び酸化物半導体430cは、導電体460の端部を越えて延伸し、当該延伸部分で重畳する領域を有し、層470の端部と酸化物半導体430の端部は概略一致している。
トランジスタ400も、トランジスタ200と同様に、絶縁体274、絶縁体272、絶縁体214、及び絶縁体212に挟まれる構造とすることによって、酸素を外方拡散させず、絶縁体224、酸化物半導体430、及び絶縁体450中に多くの酸素を含有させることができる。さらに、絶縁体274の上方及び絶縁体212の下方から水素、または水などの不純物が混入するのを防ぎ、絶縁体224、酸化物半導体230、及び絶縁体250中の不純物濃度を低減させることができる。
このようにして、トランジスタ400の半導体層として機能する酸化物半導体430中の酸素欠損を低減し、水素または水などの不純物を低減することで、トランジスタ400のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減し、Icutを非常に小さくできる。さらに、トランジスタ400の電気特性を安定させ、信頼性を向上させることができる。
このようなトランジスタ400をスイッチング素子としてトランジスタ200のバックゲートの電位を保持できる構成とすることにより、トランジスタ200のオフ状態を長く維持できる。
<構成材料について>
〔基板〕
半導体装置を作製するのに用いる基板に大きな制限はないが、少なくとも後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、基板としてシリコンや炭化シリコンなどを材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどを材料とした化合物半導体基板等を用いることができる。また、SOI基板や、半導体基板上に歪トランジスタやFIN型トランジスタなどの半導体素子が設けられたものなどを用いることもできる。または、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)に適用可能なヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、ヒ化インジウムガリウム、窒化ガリウム、リン化インジウム、シリコンゲルマニウムなどを用いてもよい。すなわち、基板は、単なる支持基板に限らず、他のトランジスタなどのデバイスが形成された基板であってもよい。この場合、トランジスタ200、またはトランジスタ400のゲート、ソース、またはドレインの少なくとも一つは、上記他のデバイスと電気的に接続されていてもよい。
また、基板として、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることもできる。なお、基板として、可撓性基板(フレキシブル基板)を用いてもよい。可撓性基板を用いる場合、可撓性基板上に、トランジスタや容量素子などを直接作製してもよいし、他の作製基板上にトランジスタや容量素子などを作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板とトランジスタや容量素子などとの間に剥離層を設けるとよい。
可撓性基板としては、例えば、金属、合金、樹脂もしくはガラス、またはそれらの繊維などを用いることができる。基板に用いる可撓性基板は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。基板に用いる可撓性基板は、例えば、線膨張率が1×10−3/K以下、5×10−5/K以下、または1×10−5/K以下である材質を用いればよい。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリルなどがある。特に、アラミドは、線膨張率が低いため、可撓性基板として好適である。
〔絶縁体〕
絶縁体216、絶縁体220、絶縁体224、絶縁体250、絶縁体450、及び絶縁体280は、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁材料を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、アルミニウムシリケートなどから選ばれた材料を、単層でまたは積層して用いる。また、酸化物材料、窒化物材料、酸化窒化物材料、窒化酸化物材料のうち、複数の材料を混合した材料を用いてもよい。
なお、本明細書中において、窒化酸化物とは、酸素よりも窒素の含有量が多い化合物をいう。また、酸化窒化物とは、窒素よりも酸素の含有量が多い化合物をいう。なお、各元素の含有量は、例えば、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)等を用いて測定できる。
絶縁体212、絶縁体214、絶縁体222、絶縁体272、絶縁体274、絶縁体282、及び絶縁体284は、絶縁体224、絶縁体250、絶縁体450、及び絶縁体280より、水または水素などの不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いて形成することが好ましい。例えば、不純物が透過しにくい絶縁性材料として、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、窒化シリコンなどを挙げることができる。これらを単層で、または積層で用いればよい。
絶縁体212、絶縁体214、及び絶縁体222に不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることで、基板側からトランジスタへの不純物の拡散を抑制し、トランジスタの信頼性を高めることができる。絶縁体272、絶縁体274、絶縁体282、及び絶縁体284に不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることで、絶縁体280よりも上層からトランジスタへの不純物の拡散を抑制し、トランジスタの信頼性を高めることができる。
なお、絶縁体212、絶縁体214、絶縁体272、絶縁体282、及び絶縁体284として、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層して用いてもよい。また、絶縁体212、絶縁体214のどちらか一方を省略してもよい。また、絶縁体282、絶縁体284のどちらか一方を省略してもよい。
ここで、不純物が透過しにくい絶縁性材料とは、水素または水に代表される不純物の拡散を抑制する機能を有し、耐酸化性が高く、酸素の拡散を抑制する機能を有する。
例えば、酸化シリコンに対し、酸化アルミニウムは、350℃または400℃の雰囲気下において、一時間当たりの酸素または水素の拡散距離が非常に小さい。従って、酸化アルミニウムは不純物が透過しにくい材料であるといえる。
また、不純物が透過しにくい絶縁性材料の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ200等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、該半導体素子の特性が低下する場合がある。従って、トランジスタ200は、水素の拡散を抑制する膜で封止されていることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
水素の脱離量は、例えば、TDSなどを用いて分析できる。例えば、絶縁体212の水素の脱離量は、TDSにおいて、50℃から500℃の範囲において、水素分子に換算した脱離量が、絶縁体212の面積当たりに換算して、2×1015molecules・cm−2以下、好ましくは1×1015molecules・cm−2以下、より好ましくは5×1014molecules・cm−2以下であればよい。
また、特に、絶縁体216、絶縁体224、及び絶縁体280は、誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体216、絶縁体224、及び絶縁体280の比誘電率は、3未満、好ましくは2.4未満、さらに好ましくは1.8未満であることが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減できる。不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いて形成することが好ましい。
また、酸化物半導体230として酸化物半導体を用いる場合は、酸化物半導体230中の水素濃度の増加を防ぐために、絶縁体中の水素濃度を低減することが好ましい。具体的には、絶縁体中の水素濃度を、(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において2×1020atoms・cm−3以下、好ましくは5×1019atoms・cm−3以下、より好ましくは1×1019atoms・cm−3以下、さらに好ましくは5×1018atoms・cm−3以下とする。特に、絶縁体216、絶縁体224、絶縁体250、絶縁体450、及び絶縁体280の水素濃度を低減することが好ましい。少なくとも、酸化物半導体230、または酸化物半導体430と接する絶縁体224、絶縁体250、及び絶縁体450の水素濃度を低減することが好ましい。
また、酸化物半導体230中の窒素濃度の増加を防ぐために、絶縁体中の窒素濃度を低減することが好ましい。具体的には、絶縁体中の窒素濃度を、SIMSにおいて5×1019atoms・cm−3以下、好ましくは5×1018atoms・cm−3以下、より好ましくは1×1018atoms・cm−3以下、さらに好ましくは5×1017atoms・cm−3以下とする。
また、絶縁体224の少なくとも酸化物半導体230と接する領域と、絶縁体250の少なくとも酸化物半導体230と接する領域は、欠陥が少ないことが好ましく、代表的には、電子スピン共鳴法(ESR:Electron Spin Resonance)で観察されるシグナルが少ない方が好ましい。例えば、上述のシグナルとしては、g値が2.001に観察されるE’センターが挙げられる。なお、E’センターは、シリコンのダングリングボンドに起因する。絶縁体224及び絶縁体250として酸化シリコン層または酸化窒化シリコン層を用いる場合は、E’センター起因のスピン密度が、3×1017spins・cm−3以下、好ましくは5×1016spins・cm−3以下である酸化シリコン層、または酸化窒化シリコン層を用いればよい。
また、上述のシグナル以外に二酸化窒素(NO2)に起因するシグナルが観察される場合がある。当該シグナルは、Nの核スピンにより3つのシグナルに分裂しており、それぞれのg値が2.037以上2.039以下(第1のシグナルとする)、g値が2.001以上2.003以下(第2のシグナルとする)、及びg値が1.964以上1.966以下(第3のシグナルとする)に観察される。
例えば、絶縁体224及び絶縁体250として、二酸化窒素(NO2)起因のスピン密度が、1×1017spins・cm−3以上1×1018spins・cm−3未満である絶縁層を用いると好適である。
なお、二酸化窒素(NO2)を含む窒素酸化物(NOx)は、絶縁層中に準位を形成する。当該準位は、酸化物半導体のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物(NOx)が、絶縁層と酸化物半導体の界面に拡散すると、当該準位が絶縁層側において電子をトラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が、絶縁層と酸化物半導体の界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフトさせてしまう。したがって、絶縁体224及び絶縁体250として窒素酸化物の含有量が少ない膜を用いると、トランジスタのしきい値電圧のシフトを低減できる。
窒素酸化物(NOx)の放出量が少ない絶縁層としては、例えば、酸化窒化シリコン層を用いることができる。当該酸化窒化シリコン層は、TDSにおいて、窒素酸化物(NOx)の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放出量が1×1018molecules・cm−3以上5×1019molecules・cm−3以下である。なお、上記のアンモニアの放出量は、TDSにおける加熱処理の温度が50℃以上650℃以下、または50℃以上550℃以下の範囲での総量である。
窒素酸化物(NOx)は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応するため、アンモニアの放出量が多い絶縁層を用いることで窒素酸化物(NOx)が低減される。
また、絶縁体216、絶縁体224、絶縁体250、及び絶縁体450の少なくとも1つは、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。具体的には、TDSにて、酸素原子に換算した酸素の脱離量が1.0×1018atoms・cm−3以上、好ましくは3.0×1020atoms・cm−3以上である絶縁体を用いることが好ましい。
また、過剰酸素を含む絶縁層は、絶縁層に酸素を添加する処理を行って形成することもできる。酸素を添加する処理は、酸素雰囲気下による加熱処理や、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、またはプラズマ処理などを用いて行うことができる。また、酸素を含むプラズマ処理は、例えばマイクロ波を用いた高密度プラズマを発生させる電源を有する装置を用いることが好ましい。または、基板側にRF(Radio Frequency)を印加する電源を有してもよい。高密度プラズマを用いることより高密度の酸素ラジカルを生成することができ、基板側にRFを印加することで高密度プラズマによって生成された酸素ラジカルを効率よく対象となる膜内に導くことができる。または、この装置を用いて不活性ガスを含むプラズマ処理を行った後に脱離した酸素を補うために酸素を含むプラズマ処理を行ってもよい。なお、酸素を添加するためのガスとしては、16O2もしくは18O2などの酸素ガス、亜酸化窒素ガスまたはオゾンガスなどを用いることができる。なお、本明細書では酸素を添加する処理を「酸素ドープ処理」ともいう。
また、酸素ドープ処理によって、半導体の結晶性を高めることや、水素や水などの不純物を除去することなどができる場合がある。つまり、「酸素ドープ処理」は、「不純物除去処理」ともいえる。特に、酸素ドープ処理として、減圧状態で酸素を含むプラズマ処理を行うことで、対象となる絶縁体、または酸化物中の水素、及び水に関する結合が切断されることにより、水素、及び水が脱離しやすい状態に変化する。従って、加熱しながらのプラズマ処理、または、プラズマ処理後に加熱処理を行うことが好ましい。また、加熱処理後に、プラズマ処理を行い、さらに加熱処理を行うことで、対象となる膜中の不純物濃度を低減できる。
絶縁体の形成方法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法など)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷など)などを用いればよい。
また、層245a、層245b、層270、及び層470として上記の絶縁層を用いてもよい。層245a、層245b、層270、及び層470に絶縁層を用いる場合は、酸素が放出されにくい、及び/または吸収されにくい絶縁層を用いることが好ましい。
酸化物半導体230及び酸化物半導体430として、実施の形態2で示した酸化物半導体を使用できる。なお、本実施の形態ではトランジスタ200の酸化物半導体230を上述の3層構造としているが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、酸化物半導体230を、酸化物半導体230aまたは酸化物半導体230cの一方がない2層構造としても構わない。もしくは、酸化物半導体230a、酸化物半導体230b、または酸化物半導体230cのいずれか一を用いた単層構造としても構わない。または、酸化物半導体230aの上もしくは下、または酸化物半導体230cの上もしくは下に、前述した半導体のいずれか一を有する4層構造としても構わない。または、酸化物半導体230aの上、酸化物半導体230aの下、酸化物半導体230cの上、酸化物半導体230cの下のいずれか二箇所以上に、酸化物半導体230a、酸化物半導体230b及び酸化物半導体230cとして例示した半導体のいずれか一を有するn層構造(nは5以上の整数)としても構わない。
また、本明細書等において、チャネルが形成される半導体に酸化物半導体を用いたトランジスタを「OSトランジスタ」ともいう。また、本明細書等において、チャネルが形成される半導体に結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタを「結晶性Siトランジスタ」ともいう。
結晶性Siトランジスタは、OSトランジスタよりも比較的高い移動度を得やすい。一方で、結晶性Siトランジスタは、OSトランジスタのように極めて少ないオフ電流の実現が困難である。よって、半導体に用いる半導体材料は、目的や用途に応じて適宜使い分けることが肝要である。例えば、目的や用途に応じて、OSトランジスタと結晶性Siトランジスタなどを組み合わせて用いてもよい。
なお、インジウムガリウム酸化物は、小さい電子親和力と、高い酸素ブロック性を有する。そのため、酸化物半導体230cがインジウムガリウム酸化物を含むと好ましい。ガリウム原子割合[Ga/(In+Ga)]は、例えば、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上とする。
ただし、酸化物半導体230a、及び酸化物半導体230cが、酸化ガリウムであっても構わない。例えば、酸化物半導体230cとして、酸化ガリウムを用いると導電体205と酸化物半導体230との間に生じるリーク電流を低減できる。即ち、トランジスタ200のオフ電流を小さくできる。
このとき、ゲート電圧を印加すると、酸化物半導体230a、酸化物半導体230b、酸化物半導体230cのうち、電子親和力の大きい酸化物半導体230bにチャネルが形成される。
酸化物半導体を用いたトランジスタに安定した電気特性と良好な信頼性を付与するためには、酸化物半導体中の不純物及び酸素欠損を低減して高純度真性化し、少なくとも酸化物半導体230bを真性または実質的に真性と見なせる酸化物半導体とすることが好ましい。また、少なくとも酸化物半導体230b中のチャネル形成領域が真性または実質的に真性と見なせる半導体とすることが好ましい。
また、層245a、層245b、層270、及び層470を酸化物半導体230、または酸化物半導体430と同様の材料及び方法で形成してもよい。層245a、層245b、層270、及び層470に酸化物半導体を用いる場合は、酸素が放出されにくい、または吸収されにくい酸化物半導体を用いることが好ましい。
〔導電体〕
導電体205、導電体403、導電体405、導電体407、導電体240、導電体260及び導電体460を形成するための導電性材料としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
また、前述した金属元素及び酸素を含む導電性材料を用いてもよい。また、前述した金属元素及び窒素を含む導電性材料を用いてもよい。例えば、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒素を含む導電性材料を用いてもよい。また、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、タングステンを含むインジウム酸化物、タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、チタンを含むインジウム酸化物、チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。
また、上記の材料で形成される導電層を複数積層して用いてもよい。例えば、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。
なお、導電体205b、導電体403b、導電体405b、及び導電体407bとしては、例えば、タングステン、ポリシリコン等の導電性材料を用いればよい。また、絶縁体212及び絶縁体214と接する、導電体205a、導電体403a、導電体405a、及び導電体407aとして、チタン層、窒化チタン層、窒化タンタル層などのバリア層(拡散防止層)を積層または単層で用いることができる。
絶縁体212及び絶縁体214に不純物が透過しにくい絶縁性材料を用い、絶縁体212及び絶縁体214と接する、導電体205a、導電体403a、導電体405a、及び導電体407aに不純物が透過しにくい導電性材料を用いることで、トランジスタ200及びトランジスタ400への不純物の拡散をさらに抑制できる。よって、トランジスタ200及びトランジスタ400の信頼性をさらに高めることができる。
また、層245a、層245b、層270、及び層470として上記の導電性材料を用いてもよい。層245a、層245b、層270、及び層470に導電性材料を用いる場合は、酸素が放出されにくい、及び/または吸収されにくい導電性材料を用いることが好ましい。
<半導体装置1000の作製方法例>
半導体装置1000の作製方法例について図7乃至図26を用いて説明する。ここで、図7乃至図26は、図6と対応している。図7(A)乃至図26(A)は半導体装置1000の上面図である。図7(B)乃至図26(B)は、図7(A)乃至図26(A)中の一点鎖線L1−L2に対応しており、トランジスタ200及びトランジスタ400のチャネル長方向の断面図である。また、図7(C)乃至図26(C)は、図7(A)乃至図26(A)中の一点鎖線W1−W2に対応しており、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図である。また、図7(D)乃至図26(D)は、図7(A)乃至図26(A)中の一点鎖線W3−W4に対応するトランジスタ200の断面図である。また、図7(E)乃至図26(E)は、図7(A)乃至図26(A)中の一点鎖線W5−W6に対応しており、トランジスタ400のチャネル幅方向の断面図である。
なお、以下において、絶縁体を形成するための絶縁性材料、導電体を形成するための導電性材料、または半導体を形成するための半導体材料は、スパッタリング法、スピンコート法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(熱CVD法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、PECVD(Plasma Enhanced CVD)法、高密度プラズマCVD(High density plasma CVD)法、LPCVD法(low pressure CVD)、APCVD法(atmospheric pressure CVD)等を含む)、ALD法、または、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、または、PLD(Pulsed Laser Deposition)法を適宜用いて形成できる。
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。MOCVD法、ALD法、または熱CVD法などの、成膜時にプラズマを用いない成膜方法を用いると、被形成面にダメージが生じにくく、また、欠陥の少ない膜が得られる。
なお、ALD法により成膜する場合は、材料ガスとして塩素を含まないガスを用いることが好ましい。
まず、基板310の上に絶縁体212、絶縁体214、及び絶縁体216を順に成膜する。
実施の形態1で示したように、μ―PCD測定で用いる励起光のエネルギーより、バンドギャップが小さい基板を用いる場合、基板に多数のキャリアが発生する。これにより、μ―PCD測定で得られる情報に基板由来の情報が多く含まれることになり、酸化物半導体を評価しづらくなる場合がある。バンドギャップの小さい基板で半導体装置を作製する場合は、別途ガラス基板や石英基板などのバンドギャップが大きい基板を用意し、モニタ基板としてガラス基板や石英基板などで半導体装置を作製し、トランジスタ作製工程途中で適宜μ―PCD測定を行うことで、酸化物半導体のキャリア密度の評価が可能となる。
本実施の形態では、絶縁体212として、ALD法により酸化アルミニウムを形成する。ALD法を用いて絶縁層を形成することで、緻密な、クラックやピンホールなどの欠陥が低減された、または均一な厚さを備える絶縁層を形成できる。
本実施の形態では、絶縁体214として、スパッタリング法により酸化アルミニウムを形成する。また、前述した通り、絶縁体224は過剰酸素を含む絶縁体であることが好ましい。また、絶縁体216の形成後に酸素ドープ処理を行ってもよい。
次に、絶縁体216上にレジストマスクを形成して絶縁体216に、導電体205、導電体405、導電体403、及び導電体407に対応する開口を形成する。レジストマスクの形成は、フォトリソグラフィ法、印刷法、インクジェット法等を適宜用いて行うことができる。レジストマスクを印刷法やインクジェット法などで形成すると、フォトマスクを使用しないため製造コストを低減できる。
フォトリソグラフィ法によるレジストマスクの形成は、感光性レジストにフォトマスクを介して光を照射し、現像液を用いて感光した部分(または感光していない部分)のレジストを除去して行なうことができる。感光性レジストに照射する光は、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、EUV(Extreme Ultraviolet)光などがある。また、基板と投影レンズとの間に液体(例えば水)を満たして露光する液浸技術を用いてもよい。また、前述した光に代えて、電子ビームやイオンビームを用いてもよい。なお、電子ビームやイオンビームを用いる場合には、フォトマスクは不要となる。なお、レジストマスクの除去は、アッシングなどのドライエッチング法または専用の剥離液などを用いたウェットエッチング法で行うことができる。ドライエッチング法とウェットエッチング法の両方を用いてもよい。
なお、開口の形成時に、絶縁体214の一部も除去される場合がある。絶縁体214、及び絶縁体216のエッチングは、ドライエッチング法や、ウェットエッチング法などを用いて行なうことができる。ドライエッチング法とウェットエッチング法の両方を用いてもよい。開口を形成後、レジストマスクを除去する。
次に、絶縁体214及び絶縁体216上に、導電体205a、導電体403a、導電体405a、及び導電体407aとなる導電膜、及び導電体205b、導電体403b、導電体405b、及び導電体407bとなる導電膜を成膜する。本実施の形態では、導電体205a、導電体403a、導電体405a、及び導電体407aとなる導電膜としてスパッタリング法により窒化タンタルと窒化チタンの積層膜を形成する。また、導電体205b、導電体403b、導電体405b、及び導電体407bとなる導電膜としてスパッタリング法によりタングステンを形成する。
次に、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理(「CMP処理」ともいう。)を行なって、導電体205a、導電体205b、導電体403a、導電体403b、導電体405a、導電体405b、導電体407a、及び導電体407bを形成する(図8(A)乃至図8(E)参照)。CMP処理によって、導電膜の一部が除去される。この時、絶縁体216の表面の一部も除去される場合がある。CMP処理を行うことで試料表面の凹凸が低減し、この後形成される絶縁層や導電層の被覆性を高めることができる。
なお、導電体205、導電体405、導電体403、及び導電体407と、はデュアルダマシン法を用いることで、同時に作製できる。このようにして、導電体205、導電体403、導電体405、及び導電体407を形成する。
絶縁体216、導電体205、導電体403、導電体405、及び導電体407上に、絶縁体220、絶縁体222、及び絶縁体224を順に成膜する(図9(A)乃至図9(E)参照)。本実施の形態では、絶縁体220としてALD法により、酸化ハフニウムを成膜し、絶縁体224としてCVD法により、酸化シリコンを成膜する。
ここで、絶縁体224は、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。このため、窒素や希ガスなどを含む不活性ガス雰囲気下で加熱処理を行って、水または水素などの不純物を外方拡散させることが好ましい。加熱処理の詳細については、後述する。また、絶縁体224は過剰酸素を含む絶縁層であることが好ましい。このため、絶縁体224の形成後に酸素ドープ処理を行ってもよい。
次に、酸化物半導体230A、酸化物半導体230B、導電膜240A、膜245A、及び導電膜247Aを順に成膜する(図10(A)乃至図10(E)参照)。
酸化物半導体230及び酸化物半導体430を形成する酸化物半導体230A及び酸化物半導体230Bは、スパッタリング法で形成することが好ましい。スパッタリング法で形成すると酸化物半導体230及び酸化物半導体430の密度を高められるため、好適である。スパッタリングガスには、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、または、希ガス及び酸素の混合ガスを用いればよい。また、基板を加熱しながら成膜を行ってもよい。
また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとして用いる酸素ガスや希ガスは、露点が−60℃以下、好ましくは−100℃以下にまで高純度化したガスを用いる。高純度化されたスパッタリングガスを用いて成膜することで、酸化物半導体230及び酸化物半導体430に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
また、スパッタリング法で酸化物半導体230A及び酸化物半導体230Bを成膜する場合、スパッタリング装置が有する成膜室内の水分を可能な限り除去することが好ましい。例えば、クライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて、成膜室内を高真空(5×10−7Paから1×10−4Pa程度まで)に排気することが好ましい。特に、スパッタリング装置の待機時における、成膜室内のH2Oに相当するガス分子(m/z=18に相当するガス分子)の分圧を1×10−4Pa以下、好ましく5×10−5Pa以下とすることが好ましい。
本実施の形態では、酸化物半導体230Aをスパッタリング法で形成する。また、スパッタリングガスとして酸素、または、酸素と希ガスの混合ガスを用いる。スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を高めることで、成膜される酸化膜中の過剰酸素を増やすことができる。
また、酸化物半導体230Bの形成時に、スパッタリングガスに含まれる酸素の一部が絶縁体224、絶縁体222、及び216に供給される場合がある。スパッタリングガスに含まれる酸素が多いほど、絶縁体224、絶縁体222、及び216に供給される酸素も増加する。従って、絶縁体224、絶縁体222、絶縁体216に過剰酸素を有する領域を形成できる。また、絶縁体224、絶縁体222、及び216に供給された酸素の一部は、絶縁体224、絶縁体222、及び216中に残存する水素と反応して水となり、後の加熱処理によって絶縁体224、絶縁体222、及び216から放出される。このようにして、絶縁体224、絶縁体222、及び216中の水素濃度を低減できる。
従って、スパッタリングガスに含まれる酸素の割合は、70%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましく、100%がより好ましい。酸化物半導体230Aに過剰酸素を含む酸化物を用いることで、後の加熱処理によって酸化物半導体230bに酸素を供給できる。
続いて、酸化物半導体230Bをスパッタリング法で形成する。この時、スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を1%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下として成膜すると、酸素欠乏型の酸化物半導体が形成される。酸素欠乏型の酸化物半導体を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られる。
次に実施の形態1に示す方法でμ―PCD測定を行い、得られたピーク値及びライフタイムτ1から、酸化物半導体230A及び酸化物半導体230Bのキャリア密度を評価する。これにより、酸化物半導体230A及び酸化物半導体230Bの成膜工程に異常がないか、効率良く、確認できる。異常がある場合は、即座に製造工程にフィードバックし、成膜工程の確認を行うことができる。トランジスタ作製工程途中にμ―PCD測定を行うことにより、時間遅延なく異常工程を発見でき、即座に異常に対応できる。また、異常のあった試料をトランジスタ製造工程から外すことにより、後の工程を流す無駄を排除できる。
トランジスタ作製工程途中のμ―PCD測定について一例を示したが、μ―PCD測定を行う工程はこれに限られない。他の工程で、適宜μ―PCD測定を行っても良い。
なお、酸化物半導体230Bに酸素欠乏型の酸化物半導体を用いる場合は、酸化物半導体230Aに過剰酸素を含む酸化膜を用いることが好ましい。また、酸化物半導体230Bの形成後に酸素ドープ処理を行ってもよい。
なお、酸化物半導体230A及び酸化物半導体230Bの成膜後に、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理条件の詳細については、後述する。本実施の形態では、酸素ガス雰囲気中で400℃1時間の加熱処理行う。これにより、酸化物半導体230A、及び酸化物半導体230B中に酸素が導入される。より好ましくは、酸素ガス雰囲気の加熱処理の前に、窒素ガス雰囲気中で400℃、1時間の加熱処理を行なう。始めに窒素ガス雰囲気中で加熱処理を行うことにより、酸化物半導体230A、及び酸化物半導体230Bに含まれる水分または水素などの不純物が放出されて、酸化物半導体230A、及び酸化物半導体230B中の不純物濃度を低減できる。
次に実施の形態1に示す方法でμ―PCD測定を行い、得られたピーク値及びライフタイムτ1から、酸化物半導体230A及び酸化物半導体230Bのキャリア密度を評価する。これにより、酸化物半導体230A及び酸化物半導体230Bに異常がないか、効率良く、確認できる。
トランジスタ作製工程途中のμ―PCD測定について一例を示したが、μ―PCD測定を行う工程はこれに限られない。他の工程で、適宜μ―PCD測定を行っても良い。
次に、導電膜240Aを成膜する。本実施の形態では、導電膜240Aとして、窒化タンタルをスパッタリング法で形成する。窒化タンタルは、耐酸化性が高いため、後工程において加熱処理を行う場合に好ましい。
次に、膜245Aを成膜する。本実施の形態では、膜245Aとして、ALD法により酸化アルミニウムを形成する。ALD法を用いて形成することで、緻密な、クラックやピンホールなどの欠陥が低減された、または均一な厚さを備える膜を形成できる。
導電膜247Aは、後の工程で導電体240a及び導電体240bを形成するためのハードマスクとなる。本実施の形態では、導電膜247Aとして窒化タンタルを用いる。
次に、フォトリソグラフィ法を用いて、膜245A及び導電膜247Aを加工して、膜245B及び導電膜247Bを形成する(図11(A)乃至図11(E)参照)。膜245B及び導電膜247Bは開口を有する。
なお、開口を形成する際に、膜245B及び導電膜247Bの開口側の側面は、酸化物半導体230bの上面に対して、角度を有することが好ましい。なお、角度は、30度以上90度以下、好ましくは45度以上80度以下とする。また、本レジストマスクによる開口の形成は、最小加工寸法を用いて行うことが好ましい。つまり、膜245Bは、幅が最小加工寸法の開口部を有する。
次に、膜245B及び導電膜247B上に、フォトリソグラフィ法により、レジストマスク290を形成する(図12(A)乃至図12(E)参照)。
次に、レジストマスク290をマスクとして用いて、導電膜240A、膜245B、及び導電膜247Bの一部を選択的に除去し、島状に加工する(図13(A)乃至図13(E)参照)。このようにして、導電膜240Aから島状の導電膜240Bが、膜245Bから、層245a、及び層245bが、導電膜247Bから導電体247a、及び導電体247bが、形成される。なお、膜245Bの開口を最小加工寸法とした場合、層245a、及び層245bの間の距離は、最小加工寸法となる。
なお、導電膜240A、膜245A、及び導電膜247Aの除去は、ドライエッチング法や、ウェットエッチング法などを用いて行なうことができる。ドライエッチング法とウェットエッチング法の両方を用いてもよい。
続いて、導電膜240Bをマスクとして酸化物半導体230A、及び酸化物半導体230Bの一部を選択的に除去する(図14(A)乃至図14(E)参照)。このとき、同時に絶縁体224の一部も除去される場合がある。その後レジストマスクを除去することにより、島状の酸化物半導体230a、及び島状の酸化物半導体230bを形成できる。
なお、酸化物半導体230A及び酸化物半導体230Bの除去は、ドライエッチング法や、ウェットエッチング法などを用いて行なうことができる。ドライエッチング法とウェットエッチング法の両方を用いてもよい。
続いて、層245a、層245b、導電体247a及び導電体247bをマスクとして、ドライエッチング法を用いることで、及び導電膜240Bの一部を選択的に除去する。該エッチング工程により、導電膜240Bを導電体240aと導電体240bに分離する(図15(A)乃至図15(E)参照)。
ドライエッチングに使用するガスは、例えば、C4F6ガス、C2F6ガス、C4F8ガス、CF4ガス、SF6ガスまたはCHF3ガスなどを単独または2以上のガスを混合して用いることができる。または、上記ガスに酸素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスまたは水素ガスなどを適宜添加できる。特に、プラズマによって有機物を生成できるガスを用いることが好ましい。例えば、C4F6ガス、C4F8ガス、またはCHF3ガスのいずれか一に、ヘリウムガス、アルゴンガスまたは水素ガスなどを適宜添加したものを使用することが好ましい。
ここで、導電体247a及び導電体247bはハードマスクとして機能し、エッチングの進行に伴って導電体247a及び導電体247bも除去される。
有機物を生成できるガスを用いて、層245a、層245b、導電体247a及び導電体247bの側面に有機物を付着させながら、導電膜240Bをエッチングすることで、導電体240a及び導電体240bの酸化物半導体230cと接する側の側面にテーパー形状を形成できる。
導電体240a及び導電体240bは、トランジスタ200のソース電極及びドレイン電極としての機能を有するので、導電体240a及び導電体240bのお互いに向かい合う間隔の長さは、本トランジスタのチャネル長と呼ぶことができる。つまり、膜245Bの開口を最小加工寸法とした場合、層245a、及び層245bの間の距離は、最小加工寸法であるため、最小加工寸法より小さなゲート線幅及びチャネル長を形成できる。
なお、膜245Bの開口の側面が有する角度は、導電膜240Bのエッチング速度と、層245a、及び層245bの側面に堆積する有機物の堆積速度の比に応じて制御できる。例えば、該エッチング速度と有機物の堆積速度の比が1であれば角度は45度とすればよい。
エッチング速度と有機物の堆積速度の比は、エッチングに使用するガスに応じて、適宜エッチング条件を設定すればよい。例えば、エッチングガスとして、C4F8ガスとアルゴンガスの混合ガスを使用して、エッチング装置の高周波電力とエッチング圧力を制御することでエッチング速度と有機物の堆積速度の比を制御できる。
また、ドライエッチング法により導電体240a及び導電体240bを形成した場合は、露出した酸化物半導体230bにエッチングガスの残留成分などの不純物元素が付着する場合がある。例えば、エッチングガスとして塩素系ガスを用いると、塩素などが付着する場合がある。また、エッチングガスとして炭化水素系ガスを用いると、炭素や水素などが付着する場合がある。このため、酸化物半導体230bの露出した表面に付着した不純物元素を低減することが好ましい。当該不純物の低減は、例えば、フッ化水素酸などを用いた洗浄処理、オゾンなどを用いた洗浄処理、または紫外線などを用いた洗浄処理で行なえばよい。なお、複数の洗浄処理を組み合わせてもよい。
また、酸化性ガスを用いたプラズマ処理を行ってもよい。例えば、亜酸化窒素ガスを用いたプラズマ処理を行う。当該プラズマ処理を行うことで、酸化物半導体230b中のフッ素濃度を低減できる。また、試料表面の有機物を除去する効果も得られる。
また、露出した酸化物半導体230bに対して、酸素ドープ処理を行ってもよい。また、後述する加熱処理を行ってもよい。
また、例えば、層245a、及び層245bをマスクとして加工を行うことで、導電膜240Bと、絶縁体224との選択比が比較的高いエッチングガスを用いることができる。従って、絶縁体224の合計膜厚が薄い構造においても、下方にある配線層まで、オーバーエッチングされることを防止できる。また、絶縁体224の合計膜厚が薄くすることで導電体205からの電圧が効率的にかかる為、消費電力が低いトランジスタを提供できる。
次に、酸化物半導体230a、及び酸化物半導体230bに含まれる水分または水素などの不純物をさらに低減して、酸化物半導体230a、及び酸化物半導体230bを高純度化するために、加熱処理を行うことが好ましい。
また、加熱処理の前に、酸化性ガスを用いたプラズマ処理を行ってもよい。例えば、亜酸化窒素ガスを用いたプラズマ処理を行う。当該プラズマ処理を行うことで、露出した絶縁層中のフッ素濃度を低減できる。また、試料表面の有機物を除去する効果も得られる。
加熱処理は、例えば、窒素や希ガスなどを含む不活性ガス雰囲気下、酸化性ガス雰囲気下、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で行なう。なお、「酸化性ガス雰囲気」とは、酸素、オゾンまたは窒化酸素などの酸化性ガスを10ppm以上含有する雰囲気をいう。また、「不活性ガス雰囲気」とは、前述の酸化性ガスが10ppm未満であり、その他、窒素または希ガスで充填された雰囲気をいう。加熱処理中の圧力に特段の制約はないが、加熱処理は減圧下で行なうことが好ましい。
また、加熱処理を行うことにより、不純物の放出と同時に絶縁体224に含まれる酸素を酸化物半導体230a、及び酸化物半導体230b中に拡散させ、該酸化物に含まれる酸素欠損を低減できる。なお、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。なお、加熱処理は酸化物半導体230a、及び酸化物半導体230bの形成後であればいつ行ってもよい。
加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。処理時間は24時間以内とする。24時間を超える加熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。また、導電体としてCuなどの加熱により拡散しやすい金属を用いている場合、加熱処理温度を410℃以下、好ましくは400℃以下とすればよい。
本実施の形態では、窒素ガス雰囲気中で400℃、1時間の加熱処理を行った後、窒素ガスを酸素ガスに換えて、さらに400℃、1時間の加熱処理を行なう。始めに窒素ガス雰囲気中で加熱処理を行うことにより、酸化物半導体230a、及び酸化物半導体230bに含まれる水分または水素などの不純物が放出されて、酸化物半導体230a、及び酸化物半導体230b中の不純物濃度が低減される。続いて酸素ガス雰囲気中で加熱処理を行うことにより、酸化物半導体230a、及び酸化物半導体230b中に酸素が導入される。
また、加熱処理時、導電膜240Bの上面の一部は、層245a、及び層245bに覆われているため、上面からの酸化を防ぐことができる。
次に、フォトリソグラフィ法を用いて、絶縁体220、絶縁体222、及び絶縁体224に開口を形成する。なお、開口は導電体405b、及び導電体407b上に設ける(図16(A)乃至図16(E)参照。)。
次に、後に酸化物半導体230c、及び酸化物半導体430となる酸化物半導体230Cを形成する。本実施の形態では、酸化物半導体230Cは、酸化物半導体230Aと同様に、過剰酸素を多く含む酸化物を用いる。酸化物半導体230Cに過剰酸素を含む半導体を用いることで、後の加熱処理によって酸化物半導体230bに酸素を供給できる。
また、酸化物半導体230aと同様に、酸化物半導体230cの形成時に、スパッタリングガスに含まれる酸素の一部が絶縁体224、絶縁体222、及び絶縁体216に供給され、過剰酸素領域を形成する場合がある。また、絶縁体224、絶縁体222、及び絶縁体216中に供給された酸素の一部は、絶縁体224、絶縁体222、及び絶縁体216中に残存する水素と反応して水となり、後の加熱処理によって絶縁体224、絶縁体222、及び絶縁体216から放出される。よって、絶縁体224、絶縁体222、及び絶縁体216中の水素濃度を低減できる。
なお、酸化物半導体230Cを形成後に、酸素ドープ処理、または加熱処理の一方、あるいは両方を行ってもよい。加熱処理を行うことで、酸化物半導体230a及び酸化物半導体230cに含まれる酸素を酸化物半導体230bに供給できる。酸化物半導体230bに酸素を供給することで、酸化物半導体230b中の酸素欠損を低減できる。よって、酸化物半導体230bに酸素欠乏型の酸化物半導体を用いる場合は、酸化物半導体230cに過剰酸素を含む半導体を用いることが好ましい。
酸化物半導体230cの一部は、酸化物半導体230bのチャネル形成領域と接する。また、酸化物半導体230bのチャネルが形成される領域の上面及び側面は、酸化物半導体230cによって覆われる。このようにして、酸化物半導体230bを、酸化物半導体230aと酸化物半導体230cで取り囲むことができる。酸化物半導体230bを、酸化物半導体230aと酸化物半導体230cで取り囲むことで、後の工程において生じる不純物の酸化物半導体230bへの拡散を抑制できる。
次に、酸化物半導体230C上に絶縁膜250Aを形成する(図17(A)乃至図17(E)参照)。本実施の形態では、絶縁膜250AとしてCVD法により酸化窒化シリコンを形成する。なお、絶縁膜250Aは過剰酸素を含む絶縁層であることが好ましい。また、絶縁膜250Aに酸素ドープ処理を行ってもよい。また、絶縁膜250A形成後に、加熱処理を行ってもよい。
次に、導電膜260A、導電膜260B、導電膜260Cの順に成膜する(図18(A)乃至図18(E)参照。)。本実施の形態では、導電膜260Aとしてスパッタリング法で成膜した金属酸化物を用い、導電膜260Bとして窒化チタンを用い、導電膜260Cとしてタングステンを用いる。導電膜260Aはスパッタリング法を用いて成膜することにより、絶縁体250に酸素を添加して、酸素過剰な状態にできる。よって、絶縁体250から酸化物半導体230bに効果的に酸素を供給できる。
次に、フォトリソグラフィ法を用いて、絶縁膜250A、導電膜260A、導電膜260B、及び導電膜260Cの一部を選択的に除去して、絶縁体250、絶縁体450、導電体260a、導電体260b、導電体260c、導電体460a、導電体460b、及び導電体460cを形成する(図19(A)乃至図19(E)参照)。
なお、μ―PCD測定で用いる励起光のエネルギーより、導電体205、導電体403、導電体405、導電体407、導電体240、導電体260及び導電体460のバンドギャップが小さい場合、導電体205、導電体403、導電体405、導電体407、導電体240、導電体260及び導電体460に多数のキャリアが発生する。これにより、μ―PCD測定で得られる情報に導電体205、導電体403、導電体405、導電体407、導電体240、導電体260及び導電体460由来の情報が多く含まれることになり、酸化物半導体を評価しづらくなる場合がある。別途ガラス基板や石英基板などのバンドギャップが大きい基板を用意し、モニタ基板としてガラス基板や石英基板などで導電体205、導電体403、導電体405、導電体407、導電体240、導電体260及び導電体460を設けずに半導体装置を作製し、μ―PCD測定を行うことで、酸化物半導体のキャリア密度の評価が可能となる。
次に、後の工程で層270及び層470に加工される膜270Aを成膜する(図20(A)乃至図20(E)参照)。膜270Aは、ゲートキャップとして機能し、本実施の形態ではALD法で成膜した酸化アルミニウムを用いる。
上述の通り、トランジスタ200及びトランジスタ400に安定な電気特性と良好な信頼性を付与するにあたって、絶縁体212、絶縁体214、絶縁体272、絶縁体274、絶縁体282、及び絶縁体284によって、内部の酸素を外方拡散させずに酸化物半導体230及び酸化物半導体430に供給し、外部の水素又は水などの不純物をトランジスタ200及びトランジスタ400に混入させないことが重要である。
次に、フォトリソグラフィ法を用いて、膜270Aの一部を選択的に除去して、層270及び層470を形成する。このように、導電体260上に層270を形成することにより、導電体260の酸化によって周囲の過剰酸素が消費されることを防ぐことができる。
層270及び層470のエッチングは、ドライエッチング法や、ウェットエッチング法などを用いて行なうことができる。本実施の形態では、ドライエッチング法を用いて層270及び層470を形成する。このとき、酸化物半導体230Cの一部を除去できる場合があるが、酸化物半導体230a及び酸化物半導体230bの側面などに酸化物半導体230Cの残渣が形成されやすい。
次に、層270及び層470をマスクとして、酸化物半導体230Cをエッチングする(図21(A)乃至図21(E)参照)。当該工程のエッチング処理は、ウェットエッチングなどで行えばよく、本実施の形態では、リン酸を用いてウェットエッチングを行う。これにより、島状の酸化物半導体230c及び島状の酸化物半導体430が形成される。酸化物半導体230Cの一部が残渣として残っていた場合でも、これを除去し、酸化物半導体230a、酸化物半導体230bの側面を露出させることができる。
次に、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は上記の記載を参酌できる。本実施の形態では、窒素ガス雰囲気中で400℃、1時間の加熱処理を行った後、窒素ガスを酸素ガスに換えて、さらに400℃、1時間の加熱処理を行なう。始めに窒素ガス雰囲気中で加熱処理を行うことにより、酸化物半導体230に含まれる水分または水素などの不純物が放出されて、酸化物半導体230中の不純物濃度が低減される。続いて酸素ガス雰囲気中で加熱処理を行うことにより、酸化物半導体230中に酸素が導入される。
次に、複数のチャンバーを有する成膜装置に基板を搬入し、当該成膜装置のチャンバーで加熱処理を行う。当該加熱処理は、加熱雰囲気などは上記の加熱処理の条件を参酌できる。例えば、酸素雰囲気中で行うことが好ましく、チャンバーの圧力を1.0×10−8Pa以上1000Pa以下、好ましくは1.0×10−8Pa以上100Pa以下、より好ましくは1.0×10−8Pa以上10Pa以下、さらに好ましくは1.0×10−8Pa以上1Pa以下にする。加熱温度は、100℃以上500℃以下、好ましくは、200℃以上450℃以下とすればよい。また、導電体としてCuなどの加熱により拡散しやすい金属を用いている場合は、好ましくは410℃以下、より好ましくは400℃以下とすればよい。ただし、加熱温度は後述する絶縁体272の成膜時の基板温度よりも高くすることが好ましい。
本実施の形態では、酸素ガス雰囲気中で基板温度を400℃として、5分程度の加熱処理を行う。これにより、絶縁体272の成膜前に吸着水などの水分を除去できる。特に、酸素ガス雰囲気で加熱処理を行うことにより、酸化物半導体230に酸素欠損を形成することなく、加熱処理を行うことができる。
次に、上記成膜装置の加熱処理を行ったチャンバーとは異なるチャンバーで、スパッタリング法を用いて絶縁体272を成膜する(図22(A)乃至図22(E)参照)。絶縁体272の成膜は、上記加熱処理から外気に曝すことなく、連続して行われる。本実施の形態では、絶縁体272の膜厚を、5nm以上100nm以下、好ましくは5nm以上20nm以下、より好ましくは5nm以上10nm以下程度に成膜する。
絶縁体272は、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。本実施の形態では、絶縁体272として、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法を用いて酸化アルミニウム膜を成膜する。これにより、絶縁体272と接する表面(酸化物半導体230aの側面、酸化物半導体230bの側面、絶縁体224の上面など)の近傍に酸素を添加して、酸素過剰な状態にできる。ここで、酸素は、例えば、酸素ラジカルとして添加されるが、酸素が添加されるときの状態はこれに限定されない。酸素は、酸素原子、又は酸素イオンなどの状態で添加されてもよい。後の工程の熱処理によって、酸素を拡散させて酸化物半導体230bに効果的に酸素を供給できる。
なお、絶縁体272を成膜する際に、基板加熱を行うことが好ましい。基板加熱は、100℃よりも高く、200℃以下であることが好ましい。より、好ましくは120℃以上150℃以下で行えばよい。基板温度を、100℃よりも高くすることで、酸化物半導体230中の水を除去できる。また、形成した膜上に、表面吸着水が付着することを防止できる。また、基板加熱はできるだけ低い温度で行うことが好ましい。低温で成膜することにより、後の加熱処理において、低温で成膜した膜に接する膜中の不純物をゲッタリングする機能が向上する。例えば、絶縁体272を130℃前後で成膜することにより、絶縁体224、酸化物半導体230a、及び酸化物半導体230bなどに含まれる水素を、絶縁体272にゲッタリングできる。
上記加熱処理で水などの不純物を除去しても、成膜前に外気に曝してしまうと、再び水素または水などの不純物が酸化物半導体230などに混入するおそれがある。しかし、本実施の形態に示すように、上記加熱処理から大気に暴露することなく、同一成膜装置で連続して成膜を行うことによって、水などの不純物を混入させずに、絶縁体272でトランジスタ200及びトランジスタ400を覆うことができる。また、上記加熱処理で水などの不純物が脱離することで形成されたサイトに酸素を添加することで、より多くの酸素を含有できる。また、マルチチャンバー方式の成膜装置で加熱処理と成膜処理を異なるチャンバーで行うことにより、加熱処理で脱離した水などの不純物の影響を受けずに絶縁体272の成膜を行うことができる。
また、絶縁体272は、水または水素などの不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることが好ましく、本実施の形態では、酸化アルミニウムを用いる。また、スパッタリング法を用いて絶縁体272を成膜することで、絶縁体274より速い成膜速度で成膜でき、絶縁体272と絶縁体274の積層膜の膜厚を生産性よく大きくできる。このようにして、水素、水などの不純物に対するバリア性を、生産性よく、向上させることができる。
次に、絶縁体272の上に、ALD法を用いて絶縁体274を成膜する(図23(A)乃至図23(E)参照)。本実施の形態では、絶縁体274の膜厚を5nm以上20nm以下、好ましくは5nm以上10nm以下、より好ましくは5nm以上7nm以下程度に成膜する。
絶縁体274は、水または水素などの不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることが好ましく、例えば、酸化アルミニウムなどを用いることが好ましい。さらに、絶縁体274はALD法を用いて成膜することで、クラックやピンホールなどが形成されることを抑制し、被覆性良く成膜できる。絶縁体272及び絶縁体274は凹凸を有する形状の上に成膜されるが、絶縁体274をALD法で成膜することにより、段切れ、クラック、ピンホールなどが形成されることなく、トランジスタ200及びトランジスタ400を絶縁体274で覆うことができる。これにより、水素、水などの不純物に対するバリア性をより顕著に向上させることができる。
このように、トランジスタ200及びトランジスタ400を、絶縁体274、絶縁体272、絶縁体214、及び絶縁体212に挟まれる構造とすることによって、酸素を外方拡散させず、絶縁体224、酸化物半導体230、及び絶縁体250中に多くの酸素を含有させることができる。さらに、絶縁体274の上方及び絶縁体212の下方から水素、または水などの不純物が混入するのを防ぎ、絶縁体224、酸化物半導体230、及び絶縁体250中の不純物濃度を低減させることができる。
次に、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は上記の記載を参酌できる。本実施の形態では、窒素ガス雰囲気中で400℃、1時間の加熱処理を行う。
当該加熱処理により、トランジスタ200において、絶縁体224、絶縁体250などに含まれる酸素を拡散させることができる。これにより、酸化物半導体230a、酸化物半導体230b及び酸化物半導体230cの酸素欠損を低減できる。また、トランジスタ400においても、絶縁体224、絶縁体450などに含まれる酸素を拡散させ、酸化物半導体430、特に酸化物半導体430のチャネル形成領域に供給できる。ここで、絶縁体212、絶縁体214、絶縁体222、絶縁体272によって、酸素がトランジスタ200及びトランジスタ400の上方及び下方に拡散することを防ぐことができ、酸化物半導体230b及び酸化物半導体430に効果的に酸素を供給できる。
このようにして、トランジスタ200の半導体層として機能する酸化物半導体230b中の酸素欠損を低減し、水素または水などの不純物を低減することで、トランジスタ200の電気特性を安定させ、信頼性を向上させることができる。
次に実施の形態1に示す方法でμ―PCD測定を行い、得られたピーク値及びライフタイムτ1から、酸化物半導体230A及び酸化物半導体230Bのキャリア密度を評価する。酸化物半導体230A及び酸化物半導体230Bの酸素欠損が十分に補充され、キャリア密度が低くなっていると、トランジスタ200の電気特性が良好と判断できる。一方、酸化物半導体230A及び酸化物半導体230Bの酸素欠損の補充が不十分で、キャリア密度が高い場合は、トランジスタ200の電気特性が不良となると判断できる。以上に示したように、μ―PCD測定により、トランジスタ作製工程途中に、酸化物半導体230A及び酸化物半導体230Bのキャリア密度を評価できる。
トランジスタ作製工程途中のμ―PCD測定について一例を示したが、μ―PCD測定を行う工程はこれに限られない。他の工程で、適宜μ―PCD測定を行っても良い。
なお、上記加熱処理は、絶縁体272を成膜した後で行ってもよい。また、基板加熱しながら絶縁体272を成膜した場合、上記加熱処理を省略できる場合もある。
次に、絶縁体274の上に絶縁体280を成膜する。本実施の形態では、絶縁体280として、プラズマCVD法を用いて成膜された酸化シリコンを用いる。
次に、絶縁体280にCMP処理を行い、膜表面の凹凸を低減する(図24(A)乃至図24(E)参照)。
次に、絶縁体216、絶縁体220、絶縁体222、絶縁体224、絶縁体272、絶縁体274及び絶縁体280に、絶縁体214に達する開口480を形成する(図25(A)乃至図25(E)参照)。当該工程は図28に示すフローチャートのステップS13に対応する。なお、図26(A)では、W1−W2方向に伸長された開口480の一部だけが示されているが、開口480はトランジスタ200及びトランジスタ400を囲むように形成される。
ここで、開口480は、半導体装置1000を切り出すダイシングラインまたはスクライブラインの内側に形成することが好ましい。これにより、半導体装置1000を切り出した時も、絶縁体280、絶縁体224、絶縁体216などの側面が、後の工程で形成される絶縁体282及び絶縁体284で封止されたままなので、これらの絶縁体から、水素または水などの不純物が浸入してトランジスタ200及びトランジスタ400に拡散するのを防ぐことができる。なお、ダイシングラインまたはスクライブラインの内側に開口480で囲まれる領域を複数設け、複数の半導体装置を個別に、絶縁体282及び絶縁体284で封止する構造としてもよい。
次に、複数のチャンバーを有する成膜装置に基板を搬入し、当該成膜装置のチャンバーで加熱処理を行う。これにより、絶縁体282の成膜前に基板に吸着した水分などの不純物を除去できる。
次に、上記成膜装置の加熱処理を行ったチャンバーとは異なるチャンバーで、スパッタリング法を用いて絶縁体282を成膜する。絶縁体282の成膜は、上記加熱処理から外気に曝すことなく、連続して行われる。
絶縁体282は、開口480において、絶縁体214の上面と接するように形成される。よって、トランジスタ200及びトランジスタ400を、基板の上下だけでなく、側面方向からも絶縁体282で囲んで封止できる。これにより、絶縁体282の外側から水、または水素などの不純物がトランジスタ200及びトランジスタ400に拡散するのを防ぐことができる。
本実施の形態に示すように、上記加熱処理から外気に曝すことなく、同一成膜装置で連続して成膜を行うことによって、水などの不純物を混入させずに、絶縁体282でトランジスタ200及びトランジスタ400を覆うことができる。また、上記加熱処理で水などの不純物が脱離することで形成されたサイトに酸素を添加することで、より多くの酸素を含有させることができる。また、マルチチャンバー方式の成膜装置で加熱処理と成膜処理を異なるチャンバーで行うことにより、加熱処理で脱離した水などの不純物の影響を受けずに絶縁体282の成膜を行うことができる。
次に、絶縁体282の上に、ALD法を用いて絶縁体284を成膜する(図26(A)乃至図26(E)参照)。
絶縁体284は、水または水素などの不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることが好ましく、例えば、酸化アルミニウムなどを用いることが好ましい。さらに、絶縁体284はALD法を用いて成膜することで、クラックやピンホールなどが形成されることを抑制し、被覆性良く成膜できる。絶縁体282をALD法で成膜することにより、開口480においても段切れなどを起こさずに、成膜できるので、より、不純物に対するバリア性を向上させることができる。
次に、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理を行うことによって、絶縁体280などに含まれる水素を絶縁体282及び絶縁体284にゲッタリングし、絶縁体284の上方から水として外方拡散させることができる。このようにして、絶縁体280に含まれる水素などの不純物を低減させることができる。なお、上記加熱処理は、絶縁体284を成膜した後で行ってもよい。また、基板加熱しながら絶縁体284を成膜した場合、上記加熱処理を省略することもできる。
以上の工程により、トランジスタ200、トランジスタ400、及び半導体装置1000が形成される。上記の作製方法によって、構造が異なるトランジスタ200とトランジスタ400を、同一基板上にほぼ同じ工程で設けることができる。上記の作製方法によれば、例えば、トランジスタ200を作製した後にトランジスタ400を作製する必要がないため、半導体装置の生産性を高めることができる。
トランジスタ200は酸化物半導体230aと酸化物半導体230cに接する酸化物半導体230bにチャネルが形成される。トランジスタ400は絶縁体224と絶縁体450に接する酸化物半導体230cにチャネルが形成される。このため、トランジスタ400はトランジスタ200よりも界面散乱の影響を受けやすい。また、本実施の形態に示す酸化物半導体230cの電子親和力は、酸化物半導体230bの電子親和力よりも小さい。よって、トランジスタ400のVthはトランジスタ200のVthよりも大きくすることができ、トランジスタ400のIcutを小さくできる。
以上に示したように、μ―PCD測定により、トランジスタ作製工程途中に、酸化物半導体230A及び酸化物半導体230Bのキャリア密度を評価できる。したがって、トランジスタを生産性高く作製できる。または、該トランジスタを有する半導体装置を生産性高く作製できる。
また、実施の形態1に示したように、μ―PCD測定は短時間で基板面内の多点測定が可能である。トランジスタ作製工程途中に、基板面内を多点測定することにより、基板面内の酸化物半導体のキャリア密度を評価できる。つまり、トランジスタ作製工程途中に、基板面内のトランジスタ電気特性を推測することが可能となる。したがって、トランジスタを生産性高く作製できる。または、該トランジスタを有する半導体装置を生産性高く作製できる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、半導体装置の一形態を、図27及び図28を用いて説明する。
[記憶装置]
本発明の一態様である半導体装置を使用した、記憶装置の一例を図27及び図28に示す。
図27及び図28に示す記憶装置は、トランジスタ400、トランジスタ300、トランジスタ200、及び容量素子100を有している。ここで、トランジスタ200とトランジスタ400は実施の形態3に記載したものと同様のトランジスタである。
トランジスタ200は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである。トランジスタ200は、オフ電流が小さいため、これを記憶装置に用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、あるいは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ないため、記憶装置の消費電力を十分に低減できる。
さらにトランジスタ200のバックゲートに負の電位を印加することで、トランジスタ200のオフ電流をより小さくできる。この場合、トランジスタ200のバックゲート電圧を維持できる構成とすることにより、電源の供給なしで長期間の記憶保持が可能となる。
トランジスタ200のバックゲート電圧を、トランジスタ400によって制御する。例えば、トランジスタ400のトップゲート及びバックゲートをソースとダイオード接続し、トランジスタ400のソースとトランジスタ200のバックゲートを接続する構成とする。この構成でトランジスタ200のバックゲートの負電位を保持するとき、トランジスタ400のトップゲートーソース間の電圧及び、バックゲートーソース間の電圧は、0Vになる。先の実施の形態に示すように、トランジスタ400のIcutは非常に小さい。よって、この構成とすることにより、トランジスタ200及びトランジスタ400に電源供給をしなくてもトランジスタ200のバックゲートの負電位を長時間維持できる。これにより、トランジスタ200及びトランジスタ400を有する記憶装置は、長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。
図27及び図28において、配線3001はトランジスタ300のソースと電気的に接続され、配線3002はトランジスタ300のドレインと電気的に接続されている。また、配線3003はトランジスタ200のソース及びドレインの一方と電気的に接続され、配線3004はトランジスタ200のゲートと電気的に接続され、配線3006はトランジスタ200のバックゲートと電気的に接続されている。そして、トランジスタ300のゲート、及びトランジスタ200のソース及びドレインの他方は、容量素子100の電極の一方と電気的に接続され、配線3005は容量素子100の電極の他方と電気的に接続されている。配線3007はトランジスタ400のソースと電気的に接続され、配線3008はトランジスタ400のゲートと電気的に接続され、配線3009はトランジスタ400のバックゲートと電気的に接続され、配線3010はトランジスタ400のドレインと電気的に接続されている。ここで、配線3006、配線3007、配線3008、及び配線3009が電気的に接続されている。
<記憶装置の構成1>
図27及び図28に示す記憶装置は、トランジスタ300のゲートの電位が保持可能という特性を有することで、以下に示すように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
情報の書き込み及び保持について説明する。まず、配線3004の電位を、トランジスタ200が導通状態となる電位にして、トランジスタ200を導通状態とする。これにより、配線3003の電位が、トランジスタ300のゲート、及び容量素子100の電極の一方と電気的に接続するノードFGに与えられる。即ち、トランジスタ300のゲートには、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という。)のどちらかが与えられるものとする。その後、配線3004の電位を、トランジスタ200が非導通状態となる電位にして、トランジスタ200を非導通状態とすることにより、ノードFGに電荷が保持される(保持)。
トランジスタ200のオフ電流が小さい場合、ノードFGの電荷は長期間にわたって保持される。
次に情報の読み出しについて説明する。配線3001に所定の電位(定電位)を与えた状態で、配線3005に適切な電位(読み出し電位)を与えると、配線3002は、ノードFGに保持された電荷量に応じた電位をとる。これは、トランジスタ300をnチャネル型とすると、トランジスタ300のゲートにHighレベル電荷が与えられている場合の見かけ上のしきい値電圧Vth_Hは、トランジスタ300のゲートにLowレベル電荷が与えられている場合の見かけ上のしきい値電圧Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけ上のしきい値電圧とは、トランジスタ300を「導通状態」とするために必要な配線3005の電位をいうものとする。したがって、配線3005の電位をVth_HとVth_Lの間の電位V0とすることにより、ノードFGに与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、ノードFGにHighレベル電荷が与えられていた場合には、配線3005の電位がV0(>Vth_H)となれば、トランジスタ300は「導通状態」となる。一方、ノードFGにLowレベル電荷が与えられていた場合には、配線3005の電位がV0(<Vth_L)となっても、トランジスタ300は「非導通状態」のままである。このため、配線3002の電位を判別することで、ノードFGに保持されている情報を読み出すことができる。
また、図27及び図28に示す記憶装置をマトリクス状に配置することで、メモリセルアレイを構成することができる。
なお、メモリセルをアレイ状に配置する場合、読み出し時には、所望のメモリセルの情報を読み出さなくてはならない。例えば、トランジスタ300をpチャネル型とした場合、メモリセルはNOR型の構成となる。従って、情報を読み出さないメモリセルにおいては、ノードFGに与えられた電荷によらずトランジスタ300が「非導通状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより低い電位を配線3005に与えることで所望のメモリセルの情報のみを読み出すことができる。または、トランジスタ300をnチャネル型とした場合、メモリセルはNAND型の構成となる。従って、情報を読み出さないメモリセルにおいては、ノードFGに与えられた電荷によらずトランジスタ300が「導通状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより高い電位を配線3005に与えることで所望のメモリセルの情報のみを読み出すことができる。
<記憶装置の構成2>
図27及び図28に示す記憶装置は、トランジスタ300を有さない構成としてもよい。トランジスタ300を有さない場合も、先に述べた記憶装置と同様の動作により情報の書き込み及び保持動作が可能である。
例えば、トランジスタ300を有さない場合における、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ200が導通状態になると、浮遊状態である配線3003と容量素子100とが導通し、配線3003と容量素子100の間で電荷が再分配される。その結果、配線3003の電位が変化する。配線3003の電位の変化量は、容量素子100の電極の一方の電位(または容量素子100に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
例えば、容量素子100の電極の一方の電位をV、容量素子100の容量をC、配線3003が有する容量成分をCB、電荷が再分配される前の配線3003の電位をVB0とすると、電荷が再分配された後の配線3003の電位は、(CB×VB0+CV)/(CB+C)となる。したがって、メモリセルの状態として、容量素子100の電極の一方の電位がV1とV0(V1>V0)の2つの状態をとるとすると、電位V1を保持している場合の配線3003の電位(=(CB×VB0+CV1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合の配線3003の電位(=(CB×VB0+CV0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
そして、配線3003の電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる。
本構成とする場合、例えば、メモリセルを駆動させるための駆動回路にシリコンが適用されたトランジスタを用い、トランジスタ200として、酸化物半導体が適用されたトランジスタを駆動回路上に積層して配置する構成とすればよい。
以上に示した記憶装置は、酸化物半導体を用いたオフ電流の小さいトランジスタを適用することで、長期にわたって記憶内容を保持することが可能となる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、またはリフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力の低い記憶装置を実現できる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが好ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
また、該記憶装置は、情報の書き込みに高い電圧が不要であるため、素子の劣化が起こりにくい。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行わないため、絶縁体の劣化といった問題が生じない。即ち、本発明の一態様に係る記憶装置は、従来の不揮発性メモリとは異なり書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上した記憶装置である。さらに、トランジスタの導通状態、非導通状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作が可能となる。
<記憶装置の構造1>
本発明の一態様の記憶装置の一例を、図27に示す。記憶装置は、トランジスタ400、トランジスタ300、トランジスタ200、容量素子100を有する。トランジスタ200はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子100はトランジスタ300、及びトランジスタ200の上方に設けられている。
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、導電体316、絶縁体314、基板311の一部からなる半導体領域312、及びソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域318a、及び低抵抗領域318bを有する。
基板311として、シリコンなどを材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどを材料とした化合物半導体基板等を用いることができる。
なお、実施の形態1で示したように、μ―PCD測定で用いる励起光のエネルギーより、バンドギャップが小さい基板を用いる場合、基板に多数のキャリアが発生する。これにより、μ―PCD測定で得られる情報に基板由来の情報が多く含まれることになり、酸化物半導体を評価しづらくなる場合がある。例えば、シリコン単結晶半導体基板で半導体装置を作製する場合は、別途ガラス基板や石英基板などのバンドギャップが大きい基板を用意し、モニタ基板としてガラス基板や石英基板などで半導体装置を作製し、トランジスタ作製工程途中で適宜μ―PCD測定を行うことで、酸化物半導体のキャリア密度の評価が可能となる。
また、μ―PCD測定で用いる励起光のエネルギーより、バンドギャップが小さい導電体を使用する場合、導電体に多数のキャリアが発生する。これにより、μ―PCD測定で得られる情報に導電体由来の情報が多く含まれることになり、酸化物半導体を評価しづらくなる場合がある。別途ガラス基板や石英基板などのバンドギャップが大きい基板を用意し、モニタ基板としてガラス基板や石英基板などで導電体を設けずに半導体装置を作製し、μ―PCD測定を行うことで、酸化物半導体のキャリア密度の評価が可能となる。
トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
半導体領域312のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、またはドレイン領域となる低抵抗領域318a、及び低抵抗領域318bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。または、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。またはGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ300をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
低抵抗領域318a、及び低抵抗領域318bは、半導体領域312に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、またはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。
なお、導電体の材料により、仕事関数を定めることで、しきい値電圧を調整できる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウムなどの金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
なお、図27に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。また、<記憶装置の構成2>に示す構成とする場合、トランジスタ300を設けなくともよい。
トランジスタ300を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326が順に積層して設けられている。
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜として機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるためにCMP法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
また、絶縁体324には、基板311、またはトランジスタ300などから、トランジスタ200及びトランジスタ400が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。ここで、バリア性とは、水素、及び水に代表される不純物の拡散を抑制する機能とする。例えば、350℃または400℃の雰囲気下において、バリア性を有する膜中の一時間当たりの水素の拡散距離が50nm以下であればよい。好ましくは、350℃または400℃の雰囲気下において、バリア性を有する膜中における一時間当たりの水素の拡散距離が30nm以下、さらに好ましくは20nm以下であるとよい。
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ200等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、該半導体素子の特性が低下する場合がある。従って、トランジスタ200及びトランジスタ400と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
水素の脱離量は、例えば、TDSなどを用いて分析できる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、50℃から500℃の範囲において、水素分子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、2×1015molecules・cm−2以下、好ましくは1×1015molecules・cm−2以下、より好ましくは5×1014molecules・cm−2以下であればよい。
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体324の比誘電率は、絶縁体326の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減できる。
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326には容量素子100、またはトランジスタ200と電気的に接続する導電体328、及び導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、及び導電体330はプラグ、または配線として機能を有する。また、後述するが、プラグまたは配線として機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と電気的に接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、及び導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
各プラグ、及び配線(導電体328、及び導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くできる。
絶縁体326、及び導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、図27において、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、プラグ、または配線として機能を有する。なお導電体356は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ200及びトランジスタ400とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ200及びトランジスタ400への水素の拡散を抑制できる。
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制できる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
絶縁体354上には、絶縁体358、絶縁体210、絶縁体212、絶縁体214、及び絶縁体216が、順に積層して設けられている。絶縁体358、絶縁体210、絶縁体212、絶縁体214、及び絶縁体216のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
例えば、絶縁体358、絶縁体212、及び絶縁体214には、例えば、基板311、またはトランジスタ300を設ける領域などから、トランジスタ200及びトランジスタ400を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。従って、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
また、水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ200等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、該半導体素子の特性が低下する場合がある。従って、トランジスタ200及びトランジスタ400と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体212、及び絶縁体214には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
特に、酸化アルミニウムは、酸素、及びトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ200及びトランジスタ400への混入を防止できる。また、トランジスタ200を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制できる。そのため、トランジスタ200及びトランジスタ400に対する保護膜として用いることに適している。
また、例えば、絶縁体210、及び絶縁体216には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、当該絶縁膜に、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減できる。例えば、絶縁体216として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
また、絶縁体358、絶縁体210、絶縁体212、絶縁体214、及び絶縁体216には、導電体218、及びトランジスタ200及びトランジスタ400を構成する導電体(導電体205、導電体405、導電体403、及び導電体407)等が埋め込まれている。なお、導電体218は、容量素子100、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体218は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
特に、絶縁体358、絶縁体212、及び絶縁体214と接する領域の導電体218は、酸素、水素、及び水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ200とは、酸素、水素、及び水に対するバリア性を有する層で、完全により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ200及びトランジスタ400への水素の拡散を抑制できる。
絶縁体216の上方には、トランジスタ200及びトランジスタ400が設けられている。なお、トランジスタ200及びトランジスタ400は、実施の形態1で説明したトランジスタ200及びトランジスタ400を用いることが好ましい。
トランジスタ200及びトランジスタ400の上方には、絶縁体110を設ける。絶縁体110は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、当該絶縁膜に、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減できる。例えば、絶縁体110として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
また、絶縁体220、絶縁体222、絶縁体224、絶縁体272、絶縁体274、及び絶縁体110には、導電体285等が埋め込まれている。
導電体285は、容量素子100、トランジスタ200、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線として機能を有する。導電体285は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
例えば、導電体285を積層構造として設ける場合、酸化しにくい(耐酸化性が高い)導電体を含むことが好ましい。特に、過剰酸素領域を有する絶縁体224と接する領域に、耐酸化性が高い導電体を設けることが好ましい。当該構成により、絶縁体224から過剰な酸素を、導電体285が吸収することを抑制できる。また、導電体285は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、過剰酸素領域を有する絶縁体224と接する領域に、水素などの不純物に対するバリア性を有する導電体を設けることで、導電体285中の不純物、及び導電体285の一部の拡散や、外部からの不純物の拡散経路となることを抑制できる。
また、絶縁体110、及び導電体285上に、導電体287、及び容量素子100などを設ける。なお、容量素子100は、導電体112と、絶縁体130、絶縁体132、絶縁体134、及び導電体116とを有する。導電体112、及び導電体116は、容量素子100の電極として機能を有し、絶縁体130、絶縁体132、及び絶縁体134は容量素子100の誘電体として機能を有する。
導電体287は、容量素子100、トランジスタ200、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線として機能を有する。また、導電体112は、容量素子100の電極の一方として機能を有する。なお、導電体287、及び導電体112は、同時に形成できる。
導電体287、及び導電体112には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。又は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
絶縁体130、絶縁体132及び絶縁体134は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化酸化ハフニウム、窒化ハフニウムなどを用いればよく、積層または単層で設けることができる。
例えば、絶縁体132に、酸化アルミニウムなどの高誘電率(high−k)材料を用いた場合、容量素子100は、単位面積当たりの容量を大きくできる。また、絶縁体130、及び絶縁体134には、酸化窒化シリコンなどの絶縁耐力が大きい材料を用いるとよい。絶縁耐力が大きい絶縁体により、高誘電体を挟むことで、容量素子100の静電破壊を抑制し、かつ容量の大きな容量素子とすることができる。
また、導電体116は、絶縁体130、絶縁体132及び絶縁体134を介して、導電体112の側面、及び上面を覆うように設ける。当該構成により、導電体112の側面は、絶縁体を介して、導電体116に包まれる。当該構成とすることで、導電体112の側面でも容量が形成されるため、容量素子の投影面積当たりの容量を増加させることができる。従って、記憶装置の小面積化、高集積化、及び微細化が可能となる。
なお、導電体116は、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
導電体116、及び絶縁体134上には、絶縁体150が設けられている。絶縁体150は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体150は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
以上が構成例についての説明である。本構成を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた記憶装置において、電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。または、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを提供できる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを提供できる。または、消費電力が低減された記憶装置を提供できる。
<変形例1>
記憶装置の変形例の一例を、図28に示す。図28は、図27と、トランジスタ300の構成、及び絶縁体272、及び絶縁体274の形状などが異なる。
図28に示すトランジスタ300はチャネルが形成される半導体領域312(基板311の一部)が凸形状を有する。また、半導体領域312の側面及び上面を、絶縁体314を介して、導電体316が覆うように設けられている。なお、導電体316は仕事関数を調整する材料を用いてもよい。このようなトランジスタ300は半導体基板の凸部を利用していることからFIN型トランジスタとも呼ばれる。なお、凸部の上部に接して、凸部を形成するためのマスクとして機能する絶縁体を有していてもよい。また、ここでは半導体基板の一部を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体膜を形成してもよい。
当該構成のトランジスタ300と、トランジスタ200を組み合わせて用いることで、小面積化、高集積化、微細化が可能となる。
また、図28に示すように、絶縁体220、及び絶縁体222は、必ずしも設けなくともよい。当該構成とすることで、生産性を高くできる。
また、図28に示すように、絶縁体216及び絶縁体224に形成された開口において、絶縁体272の下面と絶縁体214の上面が接する構成とする構成としてもよい。
以上が変形例についての説明である。本構成を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた記憶装置において、電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。または、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを提供できる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを提供できる。または、消費電力が低減された記憶装置を提供できる。
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施できる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、先の実施の形態に示す酸化物半導体を半導体層として用いた半導体装置の一形態について、図29乃至図30を用いて説明する。
<半導体ウエハ、チップ>
図29(A)は、ダイシング処理が行なわれる前の基板711の上面図を示している。基板711としては、例えば、半導体基板(「半導体ウエハ」ともいう。)を用いることができる。基板711上には、複数の回路領域712が設けられている。回路領域712には、本発明の一態様に係る半導体装置などを設けることができる。
複数の回路領域712は、それぞれが分離領域713に囲まれている。分離領域713と重なる位置に分離線(「ダイシングライン」ともいう。)714が設定される。分離線714に沿って基板711を切断することで、回路領域712を含むチップ715を基板711から切り出すことができる。図29(B)にチップ715の拡大図を示す。
また、分離領域713に導電層、半導体層などを設けてもよい。分離領域713に導電層、半導体層などを設けることで、ダイシング工程時に生じうるESDを緩和し、ダイシング工程に起因する歩留まりの低下を防ぐことができる。また、一般にダイシング工程は、基板の冷却、削りくずの除去、帯電防止などを目的として、炭酸ガスなどを溶解させて比抵抗を下げた純水を切削部に供給しながら行なう。分離領域713に導電層、半導体層などを設けることで、当該純水の使用量を削減することができる。よって、半導体装置の生産コストを低減することができる。また、半導体装置の生産性を高めることができる。
<電子部品>
チップ715を用いた電子部品の一例について、図30(A)及び図30(B)を用いて説明する。なお、電子部品は、半導体パッケージ、またはIC用パッケージともいう。電子部品は、端子取り出し方向、端子の形状などに応じて、複数の規格、名称などが存在する。
電子部品は、組み立て工程(後工程)において、上記実施の形態に示した半導体装置と該半導体装置以外の部品が組み合わされて完成する。
図30(A)に示すフローチャートを用いて、後工程について説明する。前工程において基板711に本発明の一態様に係る半導体装置などを形成した後、基板711の裏面(半導体装置などが形成されていない面)を研削する「裏面研削工程」を行なう(ステップS721)。研削により基板711を薄くすることで、電子部品の小型化を図ることができる。
次に、基板711を複数のチップ715に分離する「ダイシング工程」を行う(ステップS722)。そして、分離したチップ715を個々のリードフレーム上に接合する「ダイボンディング工程」を行う(ステップS723)。ダイボンディング工程におけるチップ715とリードフレームとの接合は、樹脂による接合、またはテープによる接合など、適宜製品に応じて適した方法を選択する。なお、リードフレームに代えてインターポーザ基板上にチップ715を接合してもよい。
次いで、リードフレームのリードとチップ715上の電極とを、金属の細線(ワイヤー)で電気的に接続する「ワイヤーボンディング工程」を行う(ステップS724)。金属の細線には、銀線、金線などを用いることができる。また、ワイヤーボンディングは、例えば、ボールボンディング、またはウェッジボンディングを用いることができる。
ワイヤーボンディングされたチップ715は、エポキシ樹脂などで封止される「封止工程(モールド工程)」が施される(ステップS725)。封止工程を行うことで電子部品の内部が樹脂で充填され、チップ715とリードを接続するワイヤーを機械的な外力から保護することができ、また水分、埃などによる特性の劣化(信頼性の低下)を低減することができる。
次いで、リードフレームのリードをめっき処理する「リードめっき工程」を行なう(ステップS726)。めっき処理によりリードの錆を防止し、後にプリント基板に実装する際のはんだ付けをより確実に行うことができる。次いで、リードを切断及び成形加工する「成形工程」を行なう(ステップS727)。
次いで、パッケージの表面に印字処理(マーキング)を施す「マーキング工程」を行なう(ステップS728)。そして外観形状の良否、動作不良の有無などを調べる「検査工程」(ステップS729)を経て、電子部品が完成する。
また、完成した電子部品の斜視模式図を図30(B)に示す。図30(B)では、電子部品の一例として、QFP(Quad Flat Package)の斜視模式図を示している。図30(B)に示す電子部品750は、リード755及びチップ715を有する。電子部品750は、チップ715を複数有していてもよい。
図30(B)に示す電子部品750は、例えばプリント基板752に実装される。このような電子部品750が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板752上で電気的に接続されることで電子部品が実装された基板(実装基板754)が完成する。完成した実装基板754は、電子機器などに用いられる。
(実施の形態6)
<電子機器>
本発明の一態様に係る半導体装置は、様々な電子機器に用いることができる。図31に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた電子機器の具体例を示す。
図31(A)に示す携帯型ゲーム機2900は、筐体2901、筐体2902、表示部2903、表示部2904、マイクロホン2905、スピーカ2906、操作スイッチ2907等を有する。また、携帯型ゲーム機2900は、筐体2901の内側にアンテナ、バッテリなどを備える。なお、図31(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部2903と表示部2904とを有しているが、表示部の数は、これに限定されない。表示部2903は、入力装置としてタッチスクリーンが設けられており、スタイラス2908等により操作可能となっている。
図31(B)に示す情報端末2910は、筐体2911に、表示部2912、マイク2917、スピーカ部2914、カメラ2913、外部接続部2916、及び操作スイッチ2915等を有する。表示部2912には、可撓性基板が用いられた表示パネル及びタッチスクリーンを備える。また、情報端末2910は、筐体2911の内側にアンテナ、バッテリなどを備える。情報端末2910は、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット型情報端末、タブレット型パーソナルコンピュータ、電子書籍端末等として用いることができる。
図31(C)に示すノート型パーソナルコンピュータ2920は、筐体2921、表示部2922、キーボード2923、及びポインティングデバイス2924等を有する。また、ノート型パーソナルコンピュータ2920は、筐体2921の内側にアンテナ、バッテリなどを備える。
図31(D)に示すビデオカメラ2940は、筐体2941、筐体2942、表示部2943、操作スイッチ2944、レンズ2945、及び接続部2946等を有する。操作スイッチ2944及びレンズ2945は筐体2941に設けられており、表示部2943は筐体2942に設けられている。また、ビデオカメラ2940は、筐体2941の内側にアンテナ、バッテリなどを備える。そして、筐体2941と筐体2942は、接続部2946により接続されており、筐体2941と筐体2942の間の角度は、接続部2946により変えることが可能な構造となっている。筐体2941に対する筐体2942の角度によって、表示部2943に表示される画像の向きの変更や、画像の表示/非表示の切り換えを行うことができる。
図31(E)にバングル型の情報端末の一例を示す。情報端末2950は、筐体2951、及び表示部2952等を有する。また、情報端末2950、筐体2951の内側にアンテナ、バッテリなどを備える。表示部2952は、曲面を有する筐体2951に支持されている。表示部2952には、可撓性基板を用いた表示パネルを備えているため、フレキシブルかつ軽くて使い勝手の良い情報端末2950を提供することができる。
図31(F)に腕時計型の情報端末の一例を示す。情報端末2960は、筐体2961、表示部2962、バンド2963、バックル2964、操作スイッチ2965、入出力端子2966などを備える。また、情報端末2960、筐体2961の内側にアンテナ、バッテリなどを備える。情報端末2960は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
表示部2962の表示面は湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部2962はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部2962に表示されたアイコン2967に触れることで、アプリケーションを起動することができる。操作スイッチ2965は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、情報端末2960に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作スイッチ2965の機能を設定することもできる。
また、情報端末2960は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、情報端末2960は入出力端子2966を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子2966を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子2966を介さずに無線給電により行ってもよい。
図31(G)は、自動車の一例を示す外観図である。自動車2980は、車体2981、車輪2982、ダッシュボード2983、及びライト2984等を有する。また、自動車2980は、アンテナ、バッテリなどを備える。
例えば、本発明の一態様の半導体装置を用いた記憶装置は、上述した電子機器の制御情報や、制御プログラムなどを長期間保持することができる。本発明の一態様に係る半導体装置を用いることで、信頼性の高い電子機器を実現することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態や実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
本実施例では、基板上に酸化物半導体を有する試料に対し、μ―PCD測定、及びホール(Hall)効果測定による評価を行った例を示す。
まず、基板として、厚さが0.7mmの石英基板を準備した。
次に、酸化物半導体を35nm成膜した。酸化物半導体は、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が33%となるようにアルゴン及び酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、キャノンアネルバ製ミニチュアゲージMG−2によって0.7Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて0.5kWとした。基板温度は300℃とした。
次に、窒素雰囲気において450℃で1時間の加熱処理を行った。次に、酸素雰囲気において450℃で1時間の加熱処理を行った。
次に、水素雰囲気において1時間の加熱処理を行い、試料A1乃至試料A17を作製した。なお、水素雰囲気による加熱処理は、試料A1が加熱処理無し、試料A2が100℃、試料A3が125℃、試料A4が150℃、試料A5が160℃、試料A6が170℃、試料A7が180℃、試料A8が190℃、試料A9が200℃、試料A10が225℃、試料A11が250℃、試料A12が275℃、試料A13が300℃、試料A14が325℃、試料A15が350℃、試料A16が375℃、試料A17が400℃とした。
次に、試料A1乃至試料A17のμ―PCD測定を行った。励起光としては、ネオジムを添加したフッ化イットリウムリチウムをレーザ媒質に用いたレーザの3倍高調波(YLF−3HG、波長349nm)を用いた。なお、μ―PCD測定による評価は、株式会社コベルコ科研製低温ポリシリコン・SiC評価装置LTA−1800SPを用いた。
次に、試料A1乃至試料A17のホール効果測定を行い、キャリア密度、シート抵抗を算出した。ここで、ホール効果測定とは、電流の流れているものに垂直に磁場をかけることによって、電流と磁場の双方に垂直な方向に起電力が現れるホール効果を利用して、キャリア密度、移動度及び抵抗率などの電気特性を測定する方法である。本実施例では、Van der Pauw法を用いたホール効果測定を行った。なお、ホール効果測定には、株式会社東陽テクニカ製ResiTest8400シリーズを用いた。
試料A1乃至試料A17におけるμ―PCD測定結果と、ホール効果測定と、バンドギャップ測定結果を表1に示す。なお、試料A13乃至試料A17は、μ―PCD測定で得られたマイクロ波のピーク値が非常に低くなった。これらは減衰曲線のノイズの影響が大きくなり、ライフタイムτ1を算出出来ないため、ライフタイムτ1は表記していない。
次に、試料A1乃至試料A17のバンドギャップ(Eg)及び膜厚を、分光エリプソメータを用いて測定した。バンドギャップ(Eg)とは伝導帯下端Ecと価電子帯上端Evとのエネルギー差を示す。なお、分光エリプソメータとして、株式会社堀場製作所製全自動超薄膜計測システム UT−300を用いた。
試料A1乃至試料A17におけるバンドギャップ(Eg)及び膜厚測定結果を表2に示す。
キャリア密度と、μ―PCD測定によるピーク値、シート抵抗との関係を図32(A)に示す。図32(A)は、横軸にキャリア密度[cm−3]をとり、左の縦軸にピーク値[mV]、右の縦軸にシート抵抗[Ω/□]をとる。キャリア密度の増加に伴い、μ―PCD測定によるピーク値は増加するが、キャリア密度が1.0×1018cm−3付近より高くなると、ピーク値は減少する傾向となった。一方、シート抵抗はキャリア密度が増加するほど低下する傾向となった。
キャリア密度に対応するフェルミレベルの変化を、数式5で表すことができる。
ここで、nはキャリア密度、Ncは伝導帯の有効状態密度、Ecは伝導帯下端のエネルギー、Efはフェルミレベル、kはボルツマン定数、Tは温度を示す。
キャリア密度とフェルミレベルの関係を図32(B)に示す。図32(B)は、横軸にキャリア密度[cm−3]をとり、左の縦軸にピーク値[mV]、右の縦軸にフェルミレベル[eV]をとる。ホール効果測定で得られるキャリア密度と、そのキャリア密度から算出されるフェルミレベルと対応することが分かった。また、μ―PCD測定によるピーク値が減少し始めるキャリア密度(1.0×1018cm−3付近)は、本実施例で使用した酸化物半導体のバンドギャップ(約3.37eV)に近く、この酸化物半導体の伝導帯の縮退が始まるキャリア密度とほぼ一致することが分かった。また、伝導帯が縮退しない状態では、キャリア密度が増加するほど、ピーク値が増加することが分かった。このように、μ―PCD測定によるピーク値と、ホール効果測定によるキャリア密度に関係があることから、μ―PCD測定によりキャリア密度を推定できることが分かった。
伝導帯が縮退していないキャリア密度である1×1018cm−3以下の試料A1乃至試料A9のデータを用い、キャリア密度とピーク値の相関関係を算出した。キャリア密度とピーク値の相関を図33(A)に示す。図33(A)は、横軸にキャリア密度[cm−3]をとり、縦軸にピーク値[mV]をとる。キャリア密度とピーク値の近似式を、数式6で表せることが分かった。図33(A)中の実線は、数式6に示す近似線を表している。近似線の決定係数R2(相関係数Rの二乗)は0.9378となり、キャリア密度の対数と、ピーク値は強い線形関係にあることが分かった。また、数式6に示す式を用いることにより、任意のキャリア密度に対応する、ピーク値を算出できることが分かった。
[数6]
Y=124.34×log(X)−947.65
ここで、Xはキャリア密度[cm−3]、Yはピーク値[mV]を示す。
実施の形態2で述べたように、トランジスタのしきい値電圧のマイナスシフトの抑制、オン電流の向上、または電界効果移動度の向上を目的とする場合においては、酸化物半導体のキャリア密度は、1×105cm−3以上1×1018cm−3未満が好ましく、1×107cm−3以上1×1017cm−3以下がより好ましく、1×109cm−3以上5×1016cm−3以下がさらに好ましく、1×1010cm−3以上1×1016cm−3以下がさらに好ましく、1×1011cm−3以上1×1015cm−3以下がさらに好ましい。これらのキャリア密度に対応するピーク値を数式6から算出すると、ピーク値は1290mV以下が好ましく、1166mV以下がさらに好ましく、1129mV以下がさらに好ましく、1042mV以下がさらに好ましく、917mV以下がさらに好ましいことが分かった。なお、図33(A)に示すように、キャリア密度1×1013cm−3以下は実測データが無い為、ピーク値は算出していない。
また、μ―PCD測定によるピーク値及びライフタイムτ1と、ホール効果測定によるキャリア密度との関係を図33(B)に示す。図33(B)は、横軸にキャリア密度[cm−3]をとり、左の縦軸にピーク値[mV]、右の縦軸にライフタイムτ1[nsec]をとる。キャリア密度の増加に伴い、μ―PCD測定によるピーク値とライフタイムτ1は共に増加する傾向となっている。さらにキャリア密度が増加するとライフタイムは大幅に短くなり、50nsec未満、もしくは算出不能になっている。ライフタイムτ1が50nsec以上であれば、キャリア密度が1×1018cm−3未満で好ましいと言える。ピーク値のみでなく、ライフタイムτ1を用いることにより、キャリア密度の高低を判断しやくなることが分かった。
酸化物半導体を用いてトランジスタを作製する場合、図33(B)に示すようなキャリア密度と、ピーク値、ライフタイムτ1のデータを事前に取得しておく。これにより、トランジスタ作製工程の途中にμ―PCD測定を行うことで、酸化物半導体のキャリア密度を推測できる。さらに、キャリア密度からトランジスタ電気特性の良否を判定できる。工程途中でトランジスタ電気特性の良否を判定できることから、良好な電気特性のトランジスタを効率よく作製できる。特性不良になると推測される基板をロットアウトにすることで、不良基板の工程を進めることによる以後の無駄な処理を回避できる。
ホール効果測定によるキャリア密度と、μ―PCD測定によるピーク値と、バンドギャップの関係を図34に示す。図34は、横軸にキャリア密度[cm−3]をとり、左の縦軸にピーク値[mV]、右の縦軸にバンドギャップ[eV]をとる。伝導帯が縮退していないキャリア密度である1×1018cm−3以下では、バンドギャップに大きな変化は見られず、伝導帯が縮退しているキャリア密度である1×1018cm−3より高くなると、バンドギャップが大きくなる傾向を確認できた。実施の形態1で述べたように、バースタイン・モスシフト(Burstein―Moss shift)効果により、光学バンドギャップが広がることで、励起光照射によるキャリアの生成が減少することが、μ―PCD測定のピーク値が小さくなる原因の一つと考えられる。
ここで、伝導帯が縮退していないキャリア密度である1×1018cm−3以下の試料A1乃至試料A9において、バンドギャップに大きな変化は見られないことから、これらのバンドギャップの値の違いはばらつきであると言える。同様に膜厚の値の違いもばらつきであると言える。バンドギャップ及び膜厚のばらつきが正規分布に従うと仮定する。一般的にデータ(母集団)が正規分布(ガウシアン分布)に従うとすると、平均値を中心に±1σの内に全体の68.3%、±2σの内に95.4%、±3σの内に99.7%、±6σの内に99.999999%が入ることが知られており、平均値±6σの範囲にはほとんどのデータが含まれると言える。標準偏差σは平均値からの分散(ばらつき)を示している。試料A1乃至試料A9において、バンドギャップの算術平均値は3.37eV、標準偏差σは0.03eVであった。同様に試料A1乃至試料A9において、膜厚の算術平均値は30.1nm、標準偏差σは0.4nmであった。伝導帯が縮退していないキャリア密度である1×1018cm−3以下の試料A1乃至試料A9は、平均値±6σの範囲であるバンドギャップが3.17eV以上3.58eV以下、かつ膜厚が27.7nm以上32.5nm以下である酸化物半導体であるとみなせる。
前述したように、図33(A)に示すキャリア密度とピーク値の関係、及び図33(B)に示すキャリア密度とライフタイムτ1の関係から、ピーク値が1042mV以下かつライフタイムτ1が50nsec以上であれば、キャリア密度が1×1016cm−3未満であると推測できる。したがって、バンドギャップが3.17eV以上3.58eV以下、かつ膜厚が27.7nm以上32.5nm以下である酸化物半導体において、ピーク値が1042mV以下かつライフタイムτ1が50nsec以上であれば、キャリア密度が1×1016cm−3未満で少ないと推測でき、好ましいと言える。
本実施例では、基板上の酸化物半導体と絶縁体とを有する試料に対し、μ―PCD測定による評価を行った例を示す。
まず、基板として、厚さが0.7mmの石英基板を準備した。
次に、酸化窒化シリコンを10nm成膜した。酸化窒化シリコンは、PECVD法を用いて成膜した。成膜ガスとしては、モノシランが1に対して亜酸化窒素が800となる体積比で混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、40Paとなるよう調整した。成膜電力は、60MHzの高周波電源を用いて150Wとした。電極間のギャップは28mmとした。基板温度は400℃とした。
次に、酸化ハフニウムを20nm成膜した。酸化ハフニウムは、ALD法を用いて成膜した。プリカーサとしてテトラキスジメチルアミドハフニウム(TDMAH)と、オゾンと、を用いた。基板温度は200℃とした。
次に、酸化窒化シリコンを30nm成膜した。酸化窒化シリコンは、PECVD法を用いて成膜した。成膜ガスとしては、モノシランが1に対して亜酸化窒素が800となる体積比で混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、40Paとなるよう調整した。成膜電力は、60MHzの高周波電源を用いて150Wとした。電極間のギャップは28mmとした。基板温度は400℃とした。
次に、酸素雰囲気において410℃で1時間の加熱処理を行った。
次に、第1の酸化物半導体として、In−Ga−Zn酸化物を5nm成膜した。In−Ga−Zn酸化物は、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:4であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が11%となるようにアルゴン及び酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、キャノンアネルバ製ミニチュアゲージMG−2によって0.7Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて0.5kWとした。基板温度は200℃とした。
次に、第2の酸化物半導体として、In−Ga−Zn酸化物を35nm成膜した。In−Ga−Zn酸化物は、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が33%となるようにアルゴン及び酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、キャノンアネルバ製ミニチュアゲージMG−2によって0.7Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて0.5kWとした。基板温度は300℃とした。なお、第1の酸化物半導体の成膜後、第1の酸化物半導体を大気にさらすことなく連続して第2の酸化物半導体を成膜した。本実施例では、搬送室に複数の成膜室が接続したマルチチャンバー型のスパッタリング装置を用い、成膜後の第1の酸化物半導体を大気にさらすことなく、第2の酸化物半導体の成膜室へ基板を搬送した。
次に、工程B1として、窒素雰囲気において400℃で1時間の加熱処理を行った。次に、酸素雰囲気において400℃で1時間の加熱処理を行った。
次に、μ―PCD測定を行った。試料におけるピーク値の面内分布を図35(A)に示す。励起光としては、ネオジムを添加したフッ化イットリウムリチウムをレーザ媒質に用いたレーザの3倍高調波(YLF−3HG、波長349nm)を用いた。なお、μ―PCD測定による評価は、株式会社コベルコ科研製低温ポリシリコン・SiC評価装置LTA−1800SPを用いた。試料の位置を移動させつつ測定を繰り返すこと(マッピング測定)により、試料面内のピーク値、ライフタイムの情報を得ることができる。今回は、5inch×5inchサイズの基板の100mm×100mm内を1mmピッチでマッピング測定した(面内10,000ポイント)。
また、試料のマッピング測定におけるピーク値の中央値を図39(A)の工程B1に示す。試料のマッピング測定におけるライフタイムτ1の中央値を図39(B)の工程B1に示す。μ―PCD測定で用いた励起光(λ=349nm)が約3.55eVであるのと比較して、酸化窒化シリコンのバンドギャップが約8.7eV、酸化ハフニウムが約5.1eVと大きい為、酸化窒化シリコン、酸化ハフニウムにはキャリアが生成しづらく、μ―PCD測定のピーク値への影響は小さいと言うことができる。第2の酸化物半導体のバンドギャップは約3.37eVであり、μ―PCD測定で用いた励起光で十分に励起できることから、工程B1で得られるμ―PCD測定の情報の多くは、第2の酸化物半導体由来であると言う事ができる。第1の酸化物半導体は膜厚が5nmと薄いことから、キャリアが発生しても非常に少ない為、μ−PCD測定のピーク値への寄与は小さいと考えられる。酸化物半導体が薄膜になるほどピーク値が小さくなるのは、後述の実施例3の図40を参照できる。なお、第1の酸化物半導体のバンドギャップは約3.4eVであった。
次に、工程B2として、第3の酸化物半導体を5nm成膜した。第3の酸化物半導体は、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が33%となるようにアルゴン及び酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、キャノンアネルバ製ミニチュアゲージMG−2によって0.7Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて0.5kWとした。基板温度は200℃とした。
次に、μ―PCD測定を行った。試料におけるピーク値の面内分布を図35(B)に示す。μ―PCD測定は工程B1と同様の方法で行った。
また、試料のマッピング測定におけるピーク値の中央値を図39(A)の工程B2に示す。試料のマッピング測定におけるライフタイムτ1の中央値を図39(B)の工程B2に示す。工程B1と工程B2で大きな変化は見られない。第3の酸化物半導体は膜厚が5nmと薄いことから、キャリアが発生しても非常に少ない為、μ−PCD測定のピーク値への寄与は小さいと考えられる。したがって、工程B1と工程B2で大きな変化は見られなかったと考えられる酸化物半導体が薄膜になるほどピーク値が小さくなるのは、後述の実施例3の図40を参照できる。なお、第3の酸化物半導体のバンドギャップは約3.5eVであった。
次に、工程B3として、酸化窒化シリコンを10nm成膜した。酸化窒化シリコンは、PECVD法を用いて成膜した。成膜ガスとしては、モノシランが1に対して亜酸化窒素が800となる体積比で混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、40Paとなるよう調整した。成膜電力は、60MHzの高周波電源を用いて150Wとした。電極間のギャップは28mmとした。基板温度は400℃とした。
次に、μ―PCD測定を行った。試料におけるピーク値の面内分布を図36(A)に示す。μ―PCD測定は工程B1と同様の方法で行った。
また、試料のマッピング測定におけるピーク値の中央値を図39(A)の工程B3に示す。試料のマッピング測定におけるライフタイムτ1の中央値を図39(B)の工程B3に示す。工程B2と比較して、工程B3はピーク値が非常に低くなった。ピーク値が非常に低いと、減衰曲線のノイズの影響が大きくなることから、ライフタイムτ1を算出できなかった。図39(B)中の※印は、ライフタイムτ1を算出できなかったことを示す。工程B3のPECVD法による酸化窒化シリコン成膜で酸化膜半導体に多数のキャリアが発生し、ピーク値が大幅に低下することが分かった。
次に、工程B4として、酸化窒化シリコンを140nm成膜した。酸化窒化シリコンは、PECVD法を用いて成膜した。成膜ガスとしては、モノシランが1に対して亜酸化窒素が200となる体積比で混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、133.3Paとなるよう調整した。成膜電力は、13.56MHzのRF電源を用いて45Wとした。電極間のギャップは20mmとした。基板温度は325℃とした。
次に、μ―PCD測定を行った。試料におけるピーク値の面内分布を図36(B)に示す。μ―PCD測定は工程B1と同様の方法で行った。
また、試料のマッピング測定におけるピーク値の中央値を図39(A)の工程B4に示す。試料のマッピング測定におけるライフタイムτ1の中央値を図39(B)の工程B4に示す。工程B3と工程B4のピーク値に大きな変化は見られず、ピーク値が非常に低いことから、工程B4においても酸化物半導体に多数のキャリアが存在することが分かった。
次に、工程B5として、酸化アルミニウムを40nm成膜した。酸化アルミニウムは、原子数比がAl:O=2:3であるターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が50%となるようにアルゴン及び酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、B−Aゲージによって0.4Paとなるように調整した。成膜電力は、RF電源を用いて2.5kWとした。基板温度は250℃とした。
次に、μ―PCD測定を行った。試料におけるピーク値の面内分布を図37(A)に示すμ―PCD測定は工程B1と同様の方法で行った。
また、試料のマッピング測定におけるピーク値の中央値を図39(A)の工程B5に示す。試料のマッピング測定におけるライフタイムτ1の中央値を図39(B)の工程B5に示す。工程B4と工程B5のピーク値に大きな変化は見られず、ピーク値が非常に低いことから、工程B5においても酸化物半導体に多数のキャリアが存在することが分かった。
次に、工程B6として、酸素雰囲気において350℃で1時間の加熱処理を行った。
次に、μ―PCD測定を行った。試料におけるピーク値の面内分布を図37(B)に示す。μ―PCD測定は工程B1と同様の方法で行った。
また、試料のマッピング測定におけるピーク値の中央値を図39(A)の工程B6に示す。試料のマッピング測定におけるライフタイムτ1の中央値を図39(B)の工程B6に示す。工程B5と比較して、工程B6はピーク値が大きくなり、酸化物半導体のキャリアが減少していることを確認できた。工程B5で用いた酸化アルミニウムは過剰酸素を含み、加熱により酸素放出が可能である。工程B6の加熱処理により酸化アルミニウムの過剰酸素が酸化物に拡散し、酸化物半導体のキャリアを減少させたと考えられる。なお、酸化窒化シリコンのバンドギャップが約8.7eV、酸化アルミニウムが約8eVであり、励起光(λ=349nm)よりエネルギーが大きい為、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウムにはキャリアが生成しづらく、μ―PCD測定のピーク値への影響は小さいと言うことができる。
次に、工程B7として、酸化窒化シリコンを100nm成膜した。酸化窒化シリコンは、PECVD法を用いて成膜した。成膜ガスとしては、モノシランが1に対して亜酸化窒素が200となる体積比で混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、133.3Paとなるよう調整した。成膜電力は、13.56MHzのRF電源を用いて45Wとした。電極間のギャップは20mmとした。基板温度は325℃とした。
次に、μ―PCD測定を行った。試料におけるピーク値の面内分布を図38に示す。μ―PCD測定は工程B1と同様の方法で行った。
また、試料のマッピング測定におけるピーク値の中央値を図39(A)の工程B7に示す。試料のマッピング測定におけるライフタイムτ1の中央値を図39(B)の工程B7に示す。工程B6と比較して、工程B7はピーク値、ライフタイムτ1ともに大きな変化は見られない。工程B7で酸化物半導体のキャリア密度に大きな変化が無いことが分かった。
図35乃至図39に示すように、酸化物半導体のキャリア密度に対する各々の工程の影響をμ―PCD測定で確認することができ、工程途中に酸化物半導体のキャリア密度を推測できることが分かった。また、μ―PCD測定により、工程途中で酸化物半導体のキャリア密度の基板面内分布を確認できることが分かった。これにより、良好な電気特性のトランジスタを効率よく作製できるが分かった。
本実施例では、基板上に酸化物半導体を有する試料に対し、μ―PCD測定、及び光吸収率の評価を行った例を示す。
まず、基板として、厚さが0.7mmの石英基板を準備した。
次に、酸化物半導体として、In−Ga−Zn酸化物を成膜した。In−Ga−Zn酸化物は、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が33%となるようにアルゴン及び酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、キャノンアネルバ製ミニチュアゲージMG−2によって0.7Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて0.5kWとした。基板温度は300℃とした。なお、試料C1乃至試料C15はそれぞれ成膜時間を変え、酸化物半導体の膜厚が異なるようにした。
次に、試料C1乃至試料C15のIn−Ga−Zn酸化物の膜厚を分光エリプソメータで測定した。なお、分光エリプソメータとして、株式会社堀場製作所製全自動超薄膜計測システム UT−300を用いた。
次に、試料C1乃至試料C15のIn−Ga−Zn酸化物の光吸収率を分光光度計で測定した。なお、光吸収率測定として、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計 U−4100形分光光度計を用いた。
次に、試料C1乃至試料C15のμ―PCD測定による測定を行った。励起光としては、ネオジムを添加したフッ化イットリウムリチウムをレーザ媒質に用いたレーザの3倍高調波(YLF−3HG、波長349nm)を用いた。なお、μ―PCD測定による評価は、株式会社コベルコ科研製低温ポリシリコン・SiC評価装置LTA−1800SPを用いた。
試料C1乃至試料C15における膜厚測定、光吸収率測定、μ―PCD測定の結果を表3に示す。
酸化物半導体の膜厚と、μ―PCD測定によるピーク値、分光光度計による光吸収率の関係を図40に示す。図40は、横軸に膜厚[nm]をとり、左の縦軸にピーク値[mV]、右の縦軸に光吸収率[%]をとる。膜厚が厚くなると、μ―PCD測定によるピーク値が増加している。また、膜厚が厚くなるとλ=349nmでの光吸収率が増加し、ピーク値の傾向と良く一致している。膜厚が厚くなるほど励起光(λ=349nm)の吸収率が増加し、生成するキャリア密度が増加することで、ピーク値が増加することが分かった。
なお、トランジスタ作製に用いる酸化物半導体の膜厚に合わせたサンプルを作製し、事前にホール(Hall)効果測定などによるキャリア密度と、μ―PCD測定によるピーク値及びライフタイムとの相関を取得しておく。そして、実際のトランジスタ作製工程途中でμ―PCD測定を行うことにより、より精度良く、酸化物半導体のキャリア密度を評価でき、また、トランジスタの電気特性の良否判定が可能となる。
本実施例では、基板上に酸化物半導体を有する試料に対し、μ―PCD測定、及びバンドギャップの評価を行った例を示す。
まず、基板として、厚さが0.7mmの石英基板を準備した。
次に、試料D1は、酸化物半導体として、In−Ga−Zn酸化物を100nm成膜した。In−Ga−Zn酸化物は、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が33%となるようにアルゴン及び酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、キャノンアネルバ製ミニチュアゲージMG−2によって0.7Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて0.5kWとした。基板温度は200℃とした。
次に、試料D2は、酸化物半導体として、In−Ga−Zn酸化物を100nm成膜した。In−Ga−Zn酸化物は、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:4.1であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が33%となるようにアルゴン及び酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、キャノンアネルバ製ミニチュアゲージMG−2によって0.7Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて0.5kWとした。基板温度は200℃とした。
次に、試料D3は、酸化物半導体として、In−Ga−Zn酸化物を100nm成膜した。In−Ga−Zn酸化物は、原子数比がIn:Ga:Zn=3:1:2であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が33%となるようにアルゴン及び酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、キャノンアネルバ製ミニチュアゲージMG−2によって0.7Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて0.5kWとした。基板温度は200℃とした。
次に、試料D4は、酸化物半導体として、In−Ga−Zn酸化物を100nm成膜した。In−Ga−Zn酸化物は、原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:6であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が33%となるようにアルゴン及び酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、0.4Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて0.2kWとした。基板温度は300℃とした。
次に、試料D5は、酸化物半導体として、In−Ga−Zn酸化物を100nm成膜した。In−Ga−Zn酸化物は、原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:7であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が33%となるようにアルゴン及び酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、0.4Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて0.2kWとした。基板温度は300℃とした。
次に、試料D6は、酸化物半導体として、In−Ga−Zn酸化物を100nm成膜した。In−Ga−Zn酸化物は、原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:8であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した。成膜ガスとしては、酸素の体積が33%となるようにアルゴン及び酸素を混合したガスを用いた。成膜時の圧力は、0.4Paとなるように調整した。成膜電力は、DC電源を用いて0.2kWとした。基板温度は300℃とした。
次に、試料D1乃至試料D6において、窒素雰囲気において450℃で1時間の加熱処理を行った。次に、酸素雰囲気において450℃で1時間の加熱処理を行った。
次に、試料D1乃至試料D6の伝導帯下端Ecと価電子帯上端Evとのエネルギー差、即ちバンドギャップ(Eg)を測定した。なお、分光エリプソメータとして、株式会社堀場製作所製全自動超薄膜計測システム UT−300を用いた。
次に、試料D1乃至試料D6のμ―PCD測定を行った。励起光としては、ネオジムを添加したフッ化イットリウムリチウムをレーザ媒質に用いたレーザの3倍高調波(YLF−3HG、波長349nm)を用いた。なお、μ―PCD測定による評価は、株式会社コベルコ科研製低温ポリシリコン・SiC評価装置LTA−1800SPを用いた。
試料D1乃至試料D6におけるバンドギャップ測定、μ―PCD測定の結果を表4に示す。
酸化物半導体のバンドギャップと、μ―PCD測定によるピーク値の関係を図41に示す。図41は、横軸にバンドギャップ[eV]をとり、縦軸にピーク値[mV]をとる。バンドギャップが小さくなると、μ―PCD測定によるピーク値が増加している。バンドギャップが小さくなるほど励起光(λ=349nm)によって生成するキャリア密度が増加することで、ピーク値が増加することが分かった。
なお、トランジスタ作製に用いる酸化物半導体の組成及び膜厚に合わせたサンプルを作製し、事前にホール(Hall)効果測定などによるキャリア密度と、μ―PCD測定によるピーク値及びライフタイムとの相関を取得しておく。そして、実際のトランジスタ作製工程途中でμ―PCD測定を行うことにより、より精度良く、酸化物半導体のキャリア密度を評価でき、また、トランジスタの電気特性の良否判定が可能となる。