JP2018012901A - 繊維処理剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】W&W性と繊維のしなやかさとが両立したセルロース系繊維製品の提供。【解決手段】式(1)で表される化合物及びアルキレングリコール−グリシジル−グリセリルエーテル類を含んでなり、これら2つの化合物の質量比が99:1〜80:20である繊維処理剤。(R1は、水酸基を2又は3個有する水溶性多価アルコールから水酸基を除いた残基;aは2又は3)【選択図】なし

Description

本発明は、シャツ、スラックス、ブラウス等の衣料品、帽子、ハンカチ等繊維雑貨品等の繊維製品、特にセルロース系繊維を含有する繊維製品の加工に使用する繊維処理剤に関する。
従来より、セルロース系繊維は、合成繊維に比べて、良好な吸湿性及び風合いを示すので、衣料用素材として広く使用されている。しかし、セルロース系繊維を含有する繊維製品は、合成繊維製品と比べて、風合いに優れ、また、吸湿性等が優れているものの、しわになりやすいといった性質があり、古くからこれを解消するための加工方法が数多く提案されてきた。
セルロース系繊維を含有する繊維製品(以下、「セルロース系繊維製品」とも略称する)に、防しわ性、すなわち、W&W(ウォッシュ・アンド・ウェア)性を賦与するための方法としては、例えば、特許文献1には、繊維製品の存在下、触媒として水分と二酸化硫黄ガスを併用して、高温下でホルムアルデヒド蒸気から硫酸を生成させる反応を進める加工法が開示されている。しかし、この方法では、生成する硫酸の影響やホルムアルデヒドによるセルロース分子の架橋固定化によって、セルロース系繊維の引裂強力が極端に低下する欠点があるため、ポリエステル繊維等の合成繊維をセルロース系繊維に混繊又は交編織することによって繊維製品の強力の低下を抑えている。
非特許文献1には、セルロース系繊維製品を、ルイス酸触媒存在下、多価アルコールのグリシジルポリエーテルと反応させる加工方法が提案されている。この方法は、ホルムアルデヒドを使用していないため、セルロース系繊維製品の加工後にホルムアルデヒドがセルロース系繊維製品に残留せず、W&W性は優れる。しかしながら、加工後のセルロース系繊維製品のしなやかさが充分でなかった。
特公昭49−18517号公報
「繊維学会」誌、(Vol. 25, No.11, 1969年、p.502−513)
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その解決しようとする課題は、ホルムアルデヒトの残留がなく、W&W性と繊維のしなやかさとが両立したセルロース系繊維製品を得ることを可能にする繊維処理剤及び該処理剤で加工されたセルロース系繊維製品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記の一般式(1)で表される化合物及び下記の一般式(2)で表される化合物をこれらの質量比((1):(2))が99:1〜80:20の特定範囲で含有する組成物は、上記の課題を解決し得る繊維処理剤となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1] 下記一般式(1)で表される化合物(以下、「式(1)の化合物」とも略称する)及び下記一般式(2)で表される化合物(以下、「式(2)の化合物」とも略称する)を含んでなり、これら2つの化合物の質量比((1):(2))が99:1〜80:20であることを特徴とする、繊維処理剤。
[2] 上記[1]記載の繊維処理剤で処理されたセルロース系繊維製品。
(式中、Rは、水酸基を2または3個有する水溶性多価アルコールから水酸基を除いた残基を表し、aは、2または3である。)
(式中、Rは、水酸基を2または3個有する水溶性多価アルコールから水酸基を除いた残基を表し、bとcはそれぞれ1以上の整数で、bとcの和が2または3である。)
本発明の繊維処理剤は、セルロース系繊維製品に、実用上十分なW&W性と繊維のしなやかさを付与することができる。従って、本発明によれば、実用上十分なW&W性と繊維のしなやかさを備えたセルロース系繊維製品を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の繊維処理剤は、前記の式(1)の化合物及び式(2)の化合物を含む。
式(1)及び式(2)において、式中のR及びRは、それぞれ、水酸基を2または3個有する水溶性多価アルコールから水酸基を除いた残基である。ここで、「残基」とは、多価アルコールが有する全水酸基を除いた残基を意味する。かかる水溶性多価アルコールの残基において、2価アルコールとしては、炭素数が2〜8の直鎖状または分岐鎖状の飽和脂肪族2価アルコールが好ましく、より好ましくは炭素数が2〜4の直鎖状または分岐鎖状の飽和脂肪族2価アルコールであり、更に好ましくは炭素数が2〜4の直鎖状の飽和脂肪族2価アルコールである。具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等が挙げられる。また、3価アルコールとしては、炭素数が3〜12の直鎖状または分岐鎖状の飽和脂肪族3価アルコールが好ましく、より好ましくは炭素数が3〜6の直鎖状または分岐鎖状の飽和脂肪族3価アルコールであり、更に好ましくは炭素数が3〜6の直鎖状の飽和脂肪族3価アルコールである。具体例としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。本発明において、水酸基を2または3個有する水溶性多価アルコールは、中でも、炭素数が2〜4の直鎖状の飽和脂肪族2価アルコールが特に好ましく、エチレングリコールが最も好ましい。
また、式(1)中のaは2または3であり、好ましくは2であり、式(2)中のbとcは、それぞれが1以上の整数で、その和が2または3であり、好ましくはその和が2である。なお、式(2)中のbとcの和が3である場合、bが2、cが1であっても、bが1、cが2であってもよい。
式(1)の化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3−ブチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、及びトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
式(1)の化合物は、1種または2種以上を使用することができる。
式(1)の化合物の調製は、特に制限はないが、多価アルコールとエピクロルヒドリンを酸触媒存在下開環反応させ、その後、アルカリで閉環を行う方法や、多価アルコールとエピクロルヒドリンをアルカリ存在下、開環と閉環を同時に行う方法、多価アルコールのアリルエーテルを過酢酸などで処理する方法などが挙げられる。なお、式(1)の化合物は、市販品を用いることもできる。
式(2)の化合物としては、例えば、エチレングリコール−グリシジル−グリセリルエーテル、プロピレングリコール−グリシジル−グリセリルエーテル、ネオペンチルグリコール−グリシジル−グリセリルエーテル、1,3−ブチレングリコール−グリシジル−グリセリルエーテル、1,4−ブチレングリコール−グリシジル−グリセリルエーテル、グリセリン−モノグリシジル−ジグリセリルエーテル、グリセリン−ジグリシジル−モノグリセリルエーテル、トリメチロールプロパン−ジグリシジル−モノグリセリルエーテル、トリメチロールプロパン−モノグリシジル−ジグリセリルエーテル等が挙げられる。
式(2)の化合物は1種または2種以上を使用することができる。
式(2)の化合物は、式(1)の化合物を部分的に加水分解することで調製が可能である。加水分解する方法としては、特に制限されない。加水分解を促進するために触媒を用いることも可能であり、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、テトラエチルアンモニウムクロライドのような四級アンモニウム塩、ホウ弗化亜鉛等のホウ弗化化合物、塩化マグネシウムなどの中性金属塩触媒、燐酸、硫酸、次亜硫酸のなどの無機酸等が挙げられる。かかる触媒のうち、ホウ弗化化合物、中性金属塩触媒及び無機酸は、そのまま後述の架橋触媒として利用され得る。
なお、本発明の繊維処理剤において、式(1)の化合物中のRと式(2)の化合物中のRとは同一の水溶性多価アルコールの残基であっても、異なる水溶性多価アルコールの残基であってもよいが、同一の水溶性多価アルコールの残基であることが好ましい。
本発明の繊維処理剤における、式(1)の化合物と式(2)の化合物の質量比((1):(2))は、99:1〜80:20の範囲であり、好ましくは、97:3〜85:15の範囲であり、更に好ましくは、95:5〜87:13の範囲である。式(1)の化合物の割合が99:1〜80:20の範囲を超えて多いと、処理された繊維製品のしなやかさがなくなり、一方、式(2)の化合物の割合が99:1〜80:20の範囲を超えて多いと、十分なW&W性を付与することができない。
本発明の繊維処理剤を用いて、セルロース系繊維製品を処理する場合、繊維処理剤とセルロースとの反応活性を高め、架橋反応を迅速に行うために触媒を添加することもできる。この触媒としては、通常、エポキシドの開環反応に用いられる触媒であれば特に制限されず、例えば、ホウ弗化アンモニウム、ホウ弗化ナトリウム、ホウ弗化カリウム、ホウ弗化亜鉛等のホウ弗化化合物、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等の中性金属塩触媒、燐酸、塩酸、硫酸、亜硫酸、次亜硫酸、ホウ酸等の無機酸等が挙げられる。これらの触媒には、必要に応じて助触媒としてクエン酸、酒石酸、林檎酸、マレイン酸等の有機酸等を併用することもできる。
上記架橋触媒の使用量は、繊維処理剤(式(1)の化合物及び式(2)の化合物の合計量)に対して、0.2〜50質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。触媒の使用量が少なすぎると架橋反応が進行しない場合があり、多すぎると生地の劣化が生じる場合がある。
本発明の繊維処理剤の形態は、特に限定されないが、一般的には、式(1)の化合物及び式(2)の化合物、或いは、これらの化合物と触媒等を含む水溶液または水分散液の形態である。該水溶液または水分散液を繊維製品に含浸、塗布、噴霧などの方法で付着させた後に乾燥することで繊維製品の加工が成されるが、これらの方法に限定されるものではない。好ましい処理方法としては、式(1)の化合物及び式(2)の化合物、或いは、これらの化合物と必要に応じて使用される触媒等を含む水溶液または水分散液にセルロース系繊維製品を浸漬後、繊維製品から、水溶液を搾り取り、加熱乾燥する方法が挙げられる。なお、水溶液または水分散液における式(1)の化合物及び式(2)の化合物の合計濃度は0.5〜30質量%程度が好ましい。また、加熱乾燥は水分除去と繊維処理剤とセルロースとを反応させるために為され、温度は特に限定はされないが、110〜220℃が好ましい。また、2段階で加熱し、1回目の加熱で主に水分を除去し、2回目の加熱で主に処理剤とセルロースとの反応を進行させる態様が好ましく、例えば、40〜120℃(好ましくは40〜110℃)で1〜10分程度加熱し、その後、温度を110〜220℃(好ましくは120℃超、200℃以下)に上げて、0.5〜10分程度加熱する態様が好ましい。
本発明の繊維処理剤の処理対象である「セルロース系繊維製品」は、少なくともセルロース系繊維を含む繊維を薄く広い板状に加工したもの(すなわち、布)を指す。布は織物、編物、不織布等を含む。セルロース系繊維としては、例えば、木綿、麻、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン(キュプラ)、テンセル(精製セルロース)、ポリノジック、アセテート等の天然、再生又は半再生セルロース繊維が挙げられる。布は1種又は2種以上のセルロース系繊維で構成されるもの、また、1種又は2種以上のセルロース系繊維にポリエステル、ナイロン、アクリル及びポリウレタン等から選ばれる1種または2種以上の合成繊維を混紡、交織、交編等して作られた布も含む。かかる合成繊維を含む布の場合、布(繊維製品)中のセルロース系繊維の占める割合は、吸水性、吸湿性、風合い等の点から30質量%以上が好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、本発明において、セルロース系繊維には、木綿(綿繊維)が特に好適に使用される。
本発明の繊維処理剤で処理されたセルロース系繊維製品は、水で洗浄後、必要に応じて染色、起毛、柔軟仕上げ加工等を行うことができる。なお、本発明の繊維処理剤で処理されたセルロース系繊維製品には、水洗浄後のもの、染色、起毛、柔軟仕上げ加工等を施したものも包含される。
本発明の繊維処理剤で処理されたセルロース系繊維製品は、実用上十分なW&W性と繊維のしなやかさを備えており、シャツ、スラックス、ブラウス等の衣料品、帽子、ハンカチ等繊維雑貨品等の様々な繊維製品として幅広く用いることができる。
以下、実施例と比較例を示して本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の記載中、「%」は質量%を意味する。
(実施例1)
200mlのビーカーに、デナコール EX−810(ナガセケミテック社製、エチレングリコールジグリシジルエーテル)を20g、水を78g、ホウフッ化亜鉛(45%水溶液、森田化学工業社製)を2g加えて、式(1)の化合物がエチレングリコールジグリシジルエーテルからなる、式(1)化合物水溶液を調製した。一方、500mlビーカーに、デナコール EX−810を20g、水を78g、ホウフッ化亜鉛(45%水溶液、森田化学工業製)を2g入れ、50℃で、1時間反応させることにより調製し、式(1)の化合物がエチレングリコールジグリシジルエーテルからなり、式(2)の化合物がエチレングリコール−グリシジル−グリセリルエーテルからなる、式(1)の化合物と式(2)の化合物を70:30の質量比で含む、式(1)及び式(2)化合物水溶液を得た。
500mlのビーカーに、式(1)化合物水溶液90g、式(1)及び式(2)化合物水溶液10gを入れ、式(1)の化合物と式(2)の化合物を97:3の質量比で含む、繊維処理液を調整した。この繊維処理液に、縦20cm、横20cmの正方形状に切りとられた木綿製の布からなる試験布を入れ、5分間浸漬した。布を取り出し、充分処理液を絞り、120℃で、5分間乾燥し、さらに150℃で5分間加熱処理した。次に、試験布を水洗いし、乾燥させることにより、試験片を得た。
(実施例2)
500mlのビーカーに、式(1)化合物水溶液83g、式(1)化合物及び式(2)化合物水溶液17gを入れて、式(1)の化合物と式(2)の化合物を95:5の質量比で含む繊維処理液を調製した以外は、実施例1と同様に行った。
(実施例3)
500mlのビーカーに、式(1)の化合物水溶液66g、式(1)及び式(2)化合物水溶液33gを入れて、式(1)の化合物と式(2)の化合物を90:10の質量比で含む繊維処理液を調製した以外は、実施例1と同様に行った。
(実施例4)
500mlのビーカーに、式(1)化合物水溶液50g、式(1)及び式(2)化合物水溶液50gを入れて、式(1)の化合物と式(2)の化合物を85:15の質量比で含む繊維処理液を調製した以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例1)
500mlのビーカーに、式(1)化合物水溶液100gを入れ、これをそのまま繊維処理液として使用した以外は、実施例1と同様に行った。
(比較例2)
500mlのビーカーに、式(1)及び式(2)化合物水溶液100gを入れ、これをそのまま繊維処理液として使用した以外は、実施例1と同様に行った。
実施例1〜4及び比較例1、2で得られた試験片を以下のW&W性としなやかさの評価試験に供した。その結果を下記表1に示す。なお、表1中の式(1)の化合物と式(2)の化合物の組成における数字は質量比である。
<WW性>:JIS L−1096 A−1法に基づき、3枚の試験片(20×20cm)について、洗濯を行ったのち、ドリップ乾燥をした。得られた試験片と判定用標準とを対比し、1、2、3、3.5、4、5級の6段階の等級を付けて評価を行った。3人の評価者によって行いその平均値を求めた。等級が大きいほどシワの残り具合が少ないことを示し、3.0以上を合格とした。
<しなやかさ>:安田精機製作所のハンドルオメーターを用いて、スロット幅6.35mmで測定した。縦方向と横方向でそれぞれ2点測定し、その平均値(mN)を曲げ剛性とした。この数値が低い程しなやかさがあり、300以下を合格とした。
上記表の実施例1〜4で示されるように、式(1)の化合物(エチレングリコールジグリシジルエーテル)と式(2)の化合物(エチレングリコール−グリシジル−グリセリルエーテル)とを適切な量比で含有する繊維処理剤(処理液)で処理されたセルロース系繊維製品は、W&W性と繊維のしなやかさとが両立したセルロース系繊維製品に改質されていることが分かる。

Claims (2)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物を含んでなり、これら2つの化合物の質量比((1):(2))が99:1〜80:20であることを特徴とする、繊維処理剤。

    (式中、Rは、水酸基を2または3個有する水溶性多価アルコールから水酸基を除いた残基を表し、aは、2または3である。)

    (式中、Rは、水酸基を2または3個有する水溶性多価アルコールから水酸基を除いた残基を表し、bとcはそれぞれ1以上の整数で、bとcの和が2または3である。)
  2. 請求項1記載の繊維処理剤で処理されたセルロース系繊維製品。
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