JP2018009388A - 先行エレメントの端部構造および地中連続壁の施工方法 - Google Patents
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Abstract
Description
地中連続壁は、地下構造物を構築する際の土留壁(仮設構造)として使用するのが一般的である。ところが、近年では、構造の合理化を目的として、本設構造物として利用可能な地中連続壁が求められている。このような地中連続壁における先行エレメントと後行エレメントとの接合部には、止水性に加えて、断面力伝達性能の向上も求められている。
この接合構造では、鉄筋の張り出し部分の防護と移動防止を目的として、反力材、砕石、コンクリート防護板、インターロッキングプレート等を介設しておき、先行エレメントの構築後に引き抜きまたは除去するのが一般的であるが、このような作業には手間がかかる。
この先行エレメントの端部構造によれば、後行エレメントを構築する際に端面カバーおよびスペーサを切削して接続部材と止水板とを露出させることで、接続部材および止水板を巻き込んだ状態で後行エレメントを構築することができ、ひいては、止水性および断面力伝達性能を確保した地中連続壁を簡易に構築することができる。
端面カバーの強度を高めると、後行エレメントの施工時の掘削作業に手間がかかるとともに、材料費が高価になる。
このような観点から、本発明は、断面力伝達性能を備えた地中連続壁を簡易かつ安価に構築することを可能とした、先行エレメントの端部構造および地中連続壁の施工方法を提案することを課題とする。
空間形成部材と仕切板との間に形成された空間には、粒状体が充填されているため、打設コンクリートや掘削時の安定液等により作用する圧力によって空間形成部材に破損が生じることがない。また、粒状体は、空間形成部材の切削とともに崩れるため、後行エレメント用の掘削溝の掘削を妨げることもない。なお、粒状体には、例えば砂や砕石などを使用すればよい。
また、空間形成部材と仕切板との間に形成された空間には、密実部材が充填されているため、打設コンクリートや掘削時の安定液等により作用する圧力によって空間形成部材に破損が生じることがない。また、密実部材は、空間形成部材とともに地盤掘削機によって切削されるため、後行エレメント用の掘削溝の掘削を妨げることもない。
先行エレメント1および後行エレメント2は、それぞれコンクリート3とコンクリート3に埋め込まれた鉄筋籠4により構成されている。先行エレメント1と後行エレメント2との接合部では、先行エレメント1側に凹部1Aが形成されているとともに、後行エレメント2側に凹部1Aと係合する凸部2Aが形成されている。
止水板13は、仕切板11の先行エレメント側面および後行エレメント側面にそれぞれ立設されている。なお、止水板13を構成する材料は限定されるものではないが、本実施形態では鋼板を仕切り板11に溶接することにより構成している。また、止水板13は、仕切板11を貫通させた板状部材により形成してもよいし、仕切板11に形成されたブラケットに固定してもよい。また、止水板13は必要に応じて配設すればよい。
また、本実施形態では、凸部2A内の接合部材12に隣接した位置に、接合筋21と交差する割裂補強筋22が配筋されている。なお、割裂補強筋22は、必要に応じて配筋すればよい。
エレメントフレーム14は、鋼材を組み合わせることにより形成されている。本実施形態のエレメントフレーム14は、鉄筋籠4の内側空間に配設されていて、高さ方向に複数段配設されている。
エレメントフレーム14は、前面側と後面側(図1において上側と下側)にそれぞれ配設された横材141と、前後の横材141を連結する縦材142と、斜材143とを備えている。なお、エレメントフレーム14の構成は限定されるものではない。
横材141は、先行エレメントを構築する際に掘削された掘削溝の壁面に沿って配設される。
本実施形態では、4本の縦材142が、2本の横材141の間に横架されていることで、平面視はしご状を呈している。なお、縦材142を構成する材料は限定されないが、本実施形態ではL型鋼を使用する。また、エレメントフレーム14の中央部において隣り合う縦材142同士の間には、トレミー管Pを配管するためのスペース(間隔)が確保されている。
斜材143の一端は、横材141に固定されていて、斜材143の他端は、仕切板11または端部の縦材142に固定されている。
なお、鉄筋籠4を構成する縦筋42および横筋43の鉄筋径や配筋ピッチ等は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
仕切板11は、先行エレメント1と後行エレメント2との境界部に配設される板材であって、後行エレメント2側に配設された縦材142および斜材143の他端に固定されている。仕切板11は、高さ方向(図1において紙面垂直方向)に延在している。
接続部材12は、図2に示すように、棒状部材からなる軸部121と、軸部121の両端に形成されて軸部121よりも大きな幅(外径)を有した頭部122とを備えたいわゆるスタッドである。なお、接続部材12の構成は限定されるものではない。例えば、接続部材12は、異形鉄筋により構成されていてもよい。また、接続部材12は、必ずしも仕切板11を貫通している必要はなく、例えば、仕切板11に溶接されていてもよい。
エレメントフレーム23は、鋼材を組み合わせることにより形成されている。本実施形態のエレメントフレーム23は、鉄筋籠4の内側空間に配設されていて、高さ方向に複数段配設されている。
横材231および縦材232の詳細は、先行エレメント1の横材141および縦材142と同様なため、詳細な説明は省略する。
斜材233の一端は横材231に固定されていて、斜材233の他端は縦材142に固定されている。
なお、鉄筋籠4を構成する縦筋および横筋の鉄筋径や配筋ピッチ等は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
接合筋21は、エレメントフレーム23の縦材232に固定されている。本実施形態では、2本の縦材232に横架させた状態で、接合筋21を両縦材232に固定している。
先行準備工程S1は、鉄筋ユニット10を形成する工程である。
先行準備工程S1は、図3(b)に示すように、組付け作業S11および空間形成部材設置作業S12を備えている。本実施形態では、先行準備工程1を先行掘削工程S2の前に実施する。なお、先行準備工程S1は、先行掘削工程S2の後に実施してもよいし、先行掘削工程S2と並行して実施してもよい。
組付け作業S11では、エレメントフレーム14に鉄筋籠4および仕切板11を組み付けて鉄筋ユニット10を形成する。
空間形成部材15は、その両端(両フランジ部151)をそれぞれ取付部材16に添設した状態で、貫通孔153にボルトを螺合することにより、エレメントフレーム14に取り付ける。なお、空間形成部材15の固定方法は限定されない。
先行形成工程S3は、先行掘削溝D1に先行エレメント1を形成する工程である。本実施形態の先行形成工程S3は、図3(c)に示すように、建込作業S31と、充填作業S32と、打設作業S33とを備えている。
鉄筋ユニット10を先行掘削溝D1に設置したら、鉄筋ユニット10の中央(中央側の縦材142同士の間)にトレミー管Pを配管する。トレミー管Pは、先行掘削溝D1の底部近傍に達するまで挿入する。
仕切板11と接続部材12と空間形成部材15と粒状体17とにより端部構造1Bが形成される。
なお、充填作業S32では、図4(b)に示すように、仕切板11および空間形成部材15によって囲まれた空間に対して、粒状体17に代えて、地盤掘削機により切削可能な密実部材18を充填してもよい。密実部材18は、予め所定の形状に形成された部材により構成されていてもよいし、空間に流し込まれた発泡ウレタンや発泡モルタル等の硬化体や、流動化処理土等であってもよい。
フレッシュコンクリート30は、トレミー管Pを利用して、先行掘削溝D1の底面から打設する。トレミー管Pは、フレッシュコンクリート30の上面の上昇に伴って上昇させる。このとき端部構造1Bは、仕切板11と空間形成部材15により囲まれているため、コンクリートが内部に打設されない。
本実施形態では、充填作業S32において、所定の深さ(例えば1m程度)分の粒状体17(または密実部材18)を充填した後、打設作業S33において同等の深さ(例えば1m程度)分のフレッシュコンクリート30を打設する。同様に充填作業32と打設作業33とを繰り返すことにより、先行掘削孔D1内にコンクリートを所定の高さまで打設する。こうすることで、フレッシュコンクリート30の側圧等によって空間形成部材15が変形することを防止する。なお、粒状体17(または密実部材18)の最終的な高さは、空間形成部材15の内外の圧力のバランスを確保することを目的として、コンクリートの打設面よりも高い位置とするのが望ましい。
後行掘削溝D2の掘削により、先行エレメント1の端部に設けられた空間形成部材15が切削される。空間形成部材15が切削されることで、先行エレメント1の端部に凹部1Aが形成される。このとき、空間形成部材15を切削すると、粒状体17が後行掘削溝D2側に崩れるため、仕切板11、接続部材12および止水板13が露出する。なお、粒状体17は、後行掘削溝D2の掘削により発生した土砂とともに回収する。
建込作業S61では、鉄筋ユニット20を後行掘削溝D2に挿入する。このとき、鉄筋ユニット20と後行掘削溝D2の内壁面との間にスペーサ(図示せず)を介設する。なお、スペーサの材質、形状および配置は限定されない。鉄筋ユニット20を後行掘削溝D2に設置したら、鉄筋ユニット10の中央(中央側の縦材232同士の間)にトレミー管Pを配管する。トレミー管Pは、先端(下端)が、後行掘削溝D2の底部近傍に達するまで挿入する。
接続部材12は、凹部1A内に配設されているため、後行掘削溝D2の掘削時に地盤掘削機が接触することがない。
また、仕切板11と空間形成部材15とにより形成された空間に粒状体17を充填することにより、壁厚が大きい地中連続壁を形成する場合であっても、空間形成部材15の支点間距離が大きくなることがない。
先行エレメント1と後行エレメント2は、凹部1Aと凸部2Aにより係合されているため、接合性に優れている。また、先行エレメント1と後行エレメント2は、接続部材12および接続筋21を介して断面力を伝達する連続した構造体となる。また、先行エレメント1と後行エレメント2との接合面(凹部1Aおよび凸部2A)が屈曲しているため、接合面を浸透する漏水の通水延長を長くすることで止水性が向上されている。
1B 端部構造(先行エレメントの端部構造)
10 鉄筋ユニット
11 仕切板
12 接合部材
15 空間形成部材
17 粒状体
18 密実部材
2 後行エレメント
3 コンクリート
4 鉄筋籠
D1 先行掘削溝
D2 後行掘削溝
Claims (3)
- 先行エレメントと後行エレメントとの境界部に配設される仕切板と、
前記仕切板の後行エレメント側の側面に突設された接続部材と、
前記接続部材の周囲に空間を形成する空間形成部材と、
前記仕切板と前記空間形成部材との間に形成された空間内に充填された粒状体と、を備える先行エレメントの端部構造であって、
前記空間形成部材は、地盤掘削機により切削可能であることを特徴とする、先行エレメントの端部構造。 - 先行エレメントと後行エレメントとの境界部に配設される仕切板と、
前記仕切板の後行エレメント側の側面に突設された接続部材と、
前記接続部材の周囲に空間を形成する空間形成部材と、
前記仕切板と前記空間形成部材との間に形成された空間内に充填された密実部材と、を備える先行エレメントの端部構造であって、
前記空間形成部材および前記密実部材は、地盤掘削機により切削可能であることを特徴とする、先行エレメントの端部構造。 - 先行エレメント用の鉄筋ユニットを形成する先行準備工程と、
先行掘削溝を掘削する先行掘削工程と、
前記先行掘削溝に先行エレメントを形成する先行形成工程と、
前記先行掘削溝に連続する後行掘削溝を掘削する後行掘削工程と、
前記後行掘削溝に前記先行エレメントに連続する後行エレメントを形成する後行形成工程と、を備える地中連続壁の施工方法であって、
前記先行準備工程は、
エレメントフレームに鉄筋籠および仕切板を組み付けて前記鉄筋ユニットを形成する組付け作業と、
前記鉄筋ユニットの端部に地盤掘削機により切削可能な空間形成部材を設置し、前記仕切板に突設された接続部材を前記空間形成部材で覆う空間形成部材設置作業と、を有し、
前記先行形成工程は、
前記鉄筋ユニットおよび前記空間形成部材を前記先行掘削溝に挿入する建込作業と、
前記仕切板および前記空間形成部材によって囲まれた空間内に粒状体を充填する充填作業と、
前記先行掘削溝内にコンクリートを打設する打設作業と、を備えていることを特徴とする、地中連続壁の施工方法。
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