JP6692175B2 - 先行エレメントの端部構造および地中連続壁の施工方法 - Google Patents
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Description
地中連続壁は、地下構造物を構築する際の土留壁(仮設構造)として使用するのが一般的である。ところが、近年では、構造の合理化を目的として、本設構造物として利用可能な地中連続壁が求められている。このような地中連続壁における先行エレメントと後行エレメントとの接合部には、止水性に加えて、断面力伝達性能の向上も求められている。
この接合構造では、鉄筋の張り出し部分の防護と移動防止を目的として、反力材、砕石、コンクリート防護板、インターロッキングプレート等を介設しておき、先行エレメントの構築後に引き抜きまたは除去するのが一般的であるが、このような作業には手間がかかる。
この先行エレメントの端部構造によれば、後行エレメントを構築する際に端面カバーおよびスペーサを切削して接続部材と止水板とを露出させることで、接続部材および止水板を巻き込んだ状態で後行エレメントを構築することができ、ひいては、止水性および断面力伝達性能を確保した地中連続壁を簡易に構築することができる。
端面カバーの強度を高めると、後行エレメントの施工時の掘削作業に手間がかかるとともに、材料費が高価になる。
このような観点から、本発明は、断面力伝達性能を備えた地中連続壁を簡易かつ安価に構築することを可能とした、先行エレメントの端部構造および地中連続壁の施工方法を提案することを課題とする。
前記形状保持部には、複数の凹凸が形成された板材、または、密実部材が使用できる。板材は、地盤掘削機により切削可能或いは地盤掘削機による掘削時に変形可能な材料により構成する。また、密実部材は、地盤掘削機により切削可能な材料により構成する。
前記接続部材と前記空間形成部材との間に、前記仕切板に着脱可能に連結された防護板を介設し、前記形状保持部を前記防護板に当接させるとよい。このようにすると、後行エレメント用の掘削溝を掘削する際に、接続部材を保護することができる。
空間形成部材は、形状保持部を有しているため、壁厚が大きい地中連続壁を形成する場合であっても、カバー部の支点間距離が大きくなることがない。
なお、前記挿入作業において前記形状保持材とともに防護板を備えた支持材を挿入することで、後行掘削時に接合部材を保護することができる。また、前記カバー設置作業において形状保持材をカバー材とともにエレメントフレームの端部に設置し、挿入作業では、支持材のみを空間内に挿入してもよい。支持材は、前記後行形成工程において、前記空間から抜き出す。
先行エレメント1および後行エレメント2は、それぞれコンクリート3とコンクリート3に埋め込まれた鉄筋籠4により構成されている。先行エレメント1と後行エレメント2との接合部では、先行エレメント1側に凹部1Aが形成されているとともに、後行エレメント2側に凹部1Aと係合する凸部2Aが形成されている。
止水板13は、仕切板11の先行エレメント側面および後行エレメント側面にそれぞれ立設されている。なお、止水板13を構成する材料は限定されるものではないが、本実施形態では鋼板を仕切り板11に溶接することにより構成している。また、止水板13は、仕切板11を貫通させた板状部材により形成してもよいし、仕切板11に形成されたブラケットに固定してもよい。また、止水板13は必要に応じて配設すればよい。
また、本実施形態では、凸部2A内の接合部材12に隣接した位置に、接合筋21と交差する割裂補強筋22が配筋されている。なお、割裂補強筋22は、必要に応じて配筋すればよい。
エレメントフレーム14は、鋼材を組み合わせることにより形成されている。本実施形態のエレメントフレーム14は、鉄筋籠4の内側空間に配設されていて、高さ方向に複数段配設されている。
エレメントフレーム14は、前面側と後面側(図1において上側と下側)にそれぞれ配設された横材141と、前後の横材141を連結する縦材142と、斜材143とを備えている。なお、エレメントフレーム14の構成は限定されるものではない。
横材141は、先行エレメントを構築する際に掘削された掘削溝の壁面に沿って配設される。
本実施形態では、4本の縦材142が、2本の横材141の間に横架されていることで、平面視はしご状を呈している。なお、縦材142を構成する材料は限定されないが、本実施形態ではL型鋼を使用する。また、エレメントフレーム14の中央部において隣り合う縦材142同士の間には、トレミー管Pを配管するためのスペース(間隔)が確保されている。
斜材143の一端は、横材141に固定されていて、斜材143の他端は、仕切板11または端部の縦材142に固定されている。
なお、鉄筋籠4を構成する縦筋42および横筋43の鉄筋径や配筋ピッチ等は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
仕切板11は、先行エレメント1と後行エレメント2との境界部に配設される板材であって、後行エレメント2側に配設された縦材142および斜材143の他端に固定されている。仕切板11は、高さ方向(図1において紙面垂直方向)に延在している。
接続部材12は、図2に示すように、棒状部材からなる軸部121と、軸部121の両端に形成されて軸部121よりも大きな幅(外径)を有した頭部122とを備えたいわゆるスタッドである。なお、接続部材12の構成は限定されるものではない。例えば、接続部材12は、異形鉄筋により構成されていてもよい。また、接続部材12は、必ずしも仕切板11を貫通している必要はなく、例えば、仕切板11に溶接されていてもよい。
エレメントフレーム23は、鋼材を組み合わせることにより形成されている。本実施形態のエレメントフレーム23は、鉄筋籠4の内側空間に配設されていて、高さ方向に複数段配設されている。
横材231および縦材232の詳細は、先行エレメント1の横材141および縦材142と同様なため、詳細な説明は省略する。
斜材233の一端は横材231に固定されていて、斜材233の他端は縦材142に固定されている。
なお、鉄筋籠4を構成する縦筋および横筋の鉄筋径や配筋ピッチ等は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
接合筋21は、エレメントフレーム23の縦材232に固定されている。本実施形態では、2本の縦材232に横架させた状態で、接合筋21を両縦材232に固定している。
先行掘削工程S1は、図4(a)に示すように、先行掘削溝D1を掘削する工程である。
先行掘削溝D1は、トレンチカッタ等の地盤掘削機(図示せず)により掘削する。なお、先行掘削溝D1の掘削方法は限定されない。
本実施形態の先行形成工程S2は、図3(b)に示すように、組付け作業S21と、カバー設置作業S22と、建込作業S23と、挿入作業S24と、打設作業S25とを備えている。
組付け作業S21では、エレメントフレーム14に鉄筋籠4および仕切板11を組み付けて鉄筋ユニット10を形成する。なお、組付け作業S21は、先行掘削工程S1の前、または、先行掘削工程S1の後に実施してもよいし、先行掘削工程S1と並行して実施してもよい。
カバー材151は、その両端(両フランジ部151a)をそれぞれ取付部材16に添設した状態で、貫通孔にボルトを螺合することにより、エレメントフレーム14に取り付ける。なお、カバー材151の固定方法は限定されない。また、カバー設置作業S22では、カバー材151とともに形状保持材152をエレメントフレーム14に固定してもよい。
なお、カバー設置作業S22は、先行掘削工程S1の前、または、先行掘削工程S1の後に実施してもよいし、先行掘削工程S21と並行して実施してもよい。
このとき、鉄筋ユニット10と先行掘削溝D1の内壁面との間にスペーサー(図示せず)を介設する。なお、スペーサーの材質、形状および配置は限定されない。
鉄筋ユニット10を先行掘削溝D1に設置したら、鉄筋ユニット10の中央(中央側の縦材142同士の間)にトレミー管Pを配管する。トレミー管Pは、先行掘削溝D1の底部近傍に達するまで挿入する。
端部構造1Bは、仕切板11と接続部材12と空間形成部材15とにより形成された部分である。ここで、空間形成部材15は、接続部材12の周囲に空間を形成するための部材であって、カバー材(カバー部)151と形状保持材(形状保持部)152とからなる。
防護板171は、連結用鋼材172を介して仕切板11に着脱可能に連結されているとともに、接続部材12の先端面を覆っている。防護板171の後行エレメント2側には、形状保持材152が取り付けられている。
本実施形態の防護板171は、連結用鋼材172とともに、空間形成部材15(形状保持材152)の支持材17を構成している。なお、支持材17の構成は限定されない。また、形状保持材152は、必ずしも防護板171に取り付ける必要はない。また、形状保持材152と防護板171との間には隙間が形成されていてもよい。
連結用鋼材172は、チャンネル材により構成されていて、高さ方向に延在している。連結用鋼材172のウェブの長さ(高さ)は、接続部材12の長さ(仕切板11からの突出長)よりも大きい。連結用鋼材172の一方のフランジは防護板171に固定されており、他方のフランジは仕切板11の係止されている。本実施形態では、仕切板11の接続部材12同士の間に、平面視L字状の係止部材111が配置されている。支持材17は、連結用鋼材172の他方のフランジを係止部材に係止する(すべり込ませる)ことにより、仕切板11に取り付けられている。なお、連結用鋼材172を構成する材料は限定されるものではなく、例えばH形鋼やL形鋼であってもよい。
このように、本実施形態では、鉄筋ユニット10の端部において、接続部材12と、形状保持材152と、支持材17とをカバー材151により覆うことで、端部構造1Bを形成する。
フレッシュコンクリート30は、トレミー管Pを利用して、先行掘削溝D1の底面から打設する。トレミー管Pは、フレッシュコンクリート30の上面の上昇に伴って上昇させる。このとき端部構造1Bは、仕切板11とカバー材151により囲まれているため、コンクリートが内部に打設されない。
後行掘削工程は、先行掘削溝D1に打設したコンクリート(先行エレメント1)に所定の強度が発現してから行う。
後行掘削溝D2の掘削は、先行エレメント1の端部を切削しながら行う。なお、後行掘削溝D2の掘削は、先行掘削溝D1と同様に地盤掘削機(図示せず)により行う。
後行掘削溝D2の掘削により、先行エレメント1の端部に設けられたカバー材151および形状保持材152が切削される。カバー材151が切削されることで、先行エレメント1の端部に凹部1Aが形成される。
本実施形態の後行形成工程S4は、図3(c)に示すように、組付け作業S41と、建込作業S42と、打設作業S43とを備えている。
組付け作業S41では、エレメントフレーム23に鉄筋籠4を組み付けて鉄筋ユニット20を形成する。なお、組付け作業S41は、後行掘削工程S3の後に実施してもよいし、後行掘削工程S3の前または並行して実施してもよい。
このとき、鉄筋ユニット20と後行掘削溝D2の内壁面との間にスペーサー(図示せず)を介設する。なお、スペーサーの材質、形状および配置は限定されない。鉄筋ユニット20の後行掘削溝D2への挿入に先立ち、支持材17および形状保持材152の残部を凹部1Aから抜き出す。
鉄筋ユニット20を後行掘削溝D2に設置したら、鉄筋ユニット10の中央(中央側の縦材232同士の間)にトレミー管Pを配管する。トレミー管Pは、先端(下端)が、後行掘削溝D2の底部近傍に達するまで挿入する。
コンクリート30は、トレミー管Pを利用して、後行掘削溝D2の底面から打設する。トレミー管Pは、打設コンクリートの上面の上昇に伴って上昇させる。コンクリート30は、凹部1A内にも入り込むことで凸部2Aを形成し、接続部材12および止水板13を巻き込んだ状態で硬化する(図1参照)。
接続部材12は、凹部1A内に配設されているため、後行掘削溝D2の掘削時に地盤掘削機が接触することがない。また、挿入作業において形状保持材152とともに支持材17を挿入しているため、後行掘削時に接合部材12を保護することができる。
また、形状保持材152を挿入することにより、壁厚が大きい地中連続壁を形成する場合であっても、カバー材151の支点間距離が大きくなることがない。
例えば、前記実施形態では、形状保持材152が切削可能な板材により構成されている場合について説明したが、形状保持材152は地盤掘削機による掘削時に変形可能な板材であってもよい。すなわち、打設作業時にはコンクリート圧に抵抗することでカバー材151の変形を防止し、地盤掘削機による掘削時にはたわむあるいは潰れることで、後行掘削溝D2の形成時の邪魔にならない素材であってもよい。なお、形状保持材152として、変形可能な材料を使用する場合には、後行形成工程において、支持材17とともに形状保持材152を凹部から抜き出す。
また、前記実施形態では、形状保持材152を挿入工程において設置する場合について説明したが、形状保持材152は、予めカバー材151に固定しておくことで、先行形成工程においてカバー材151とともにエレメントフレーム14に取り付けてもよい。
形状保持材152は、図8(a)に示すように、切削可能な密実部材であってもよい。
また、形状保持材152は、図8(b)に示すように、接続部材12の頭部に係止可能に構成された部材であってもよい。例えば、平断面視C字状の係止部152aと凸字状の凸部152bとを備えた部材であってもよい。このような形状保持材152であれば、支持材17を省略することができる。
また、支持材17は、図9(b)に示すように、防護板171の仕切板11側の面に形成された係合部材173を接続部材12の頭部に係止させてもよい。
後行形成工程S4において抜き出した支持材17は、他の先行エレメントに転用することができる。
1A 凹部
1B 端部構造(先行エレメントの端部構造)
10 鉄筋ユニット
11 仕切板
12 接合部材
13 止水板
14 エレメントフレーム
15 空間形成部材
151 カバー材(カバー部)
152 形状保持材(形状保持部)
17 支持材
171 防護板
2 後行エレメント
2A 凸部
3 コンクリート
4 鉄筋籠
D1 先行掘削溝
D2 後行掘削溝
Claims (8)
- 先行エレメントと後行エレメントとの境界部に配設される仕切板と、
前記仕切板の後行エレメント側の側面に突設された接続部材と、
前記接続部材の周囲に空間を形成する空間形成部材と、を備える先行エレメントの端部構造であって、
前記空間形成部材は、前記接続部材の先端に添設された形状保持部と、前記接続部材および前記形状保持部を覆うカバー部と、を有しており、
少なくとも前記カバー部が地盤掘削機により切削可能であることを特徴とする、先行エレメントの端部構造。 - 前記形状保持部が、複数の凹凸が形成された板材を備えており、
前記板材は、地盤掘削機により切削可能或いは地盤掘削機による掘削時に変形可能であることを特徴とする、請求項1に記載の先行エレメントの端部構造。 - 前記形状保持部が、地盤掘削機により切削可能な密実部材であることを特徴とする、請求項1に記載の先行エレメントの端部構造。
- 前記接続部材と前記空間形成部材との間に、前記仕切板に着脱可能に連結された防護板が介設されていて、
前記形状保持部が、前記防護板に当接していることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の先行エレメントの端部構造。 - 先行掘削溝を掘削する先行掘削工程と、
前記先行掘削溝に先行エレメントを形成する先行形成工程と、
前記先行掘削溝に連続する後行掘削溝を掘削する後行掘削工程と、
前記後行掘削溝に前記先行エレメントに連続する後行エレメントを形成する後行形成工程と、を備える地中連続壁の施工方法であって、
前記先行形成工程は、
エレメントフレームに鉄筋籠および仕切板を組み付けて鉄筋ユニットを形成する組付け作業と、
前記鉄筋ユニットの端部に地盤掘削機により切削可能なカバー材を設置し、前記仕切板に突設された接続部材を前記カバー材で覆うカバー設置作業と、
前記鉄筋ユニットおよび前記カバー材を前記先行掘削溝に挿入する建込作業と、
前記仕切板および前記カバー材によって囲まれた空間内に形状保持材を挿入する挿入作業と、
前記先行掘削溝内にコンクリートを打設する打設作業と、を備え、
前記挿入作業では、前記接続部材の先端と前記カバー材との間に前記形状保持材を介設することを特徴とする、地中連続壁の施工方法。 - 前記挿入作業では、前記形状保持材とともに、前記形状保持材と前記接続部材との間に支持材を挿入することを特徴とする、請求項5に記載の地中連続壁の施工方法。
- 先行掘削溝を掘削する先行掘削工程と、
前記先行掘削溝に先行エレメントを形成する先行形成工程と、
前記先行掘削溝に連続する後行掘削溝を掘削する後行掘削工程と、
前記後行掘削溝に前記先行エレメントに連続する後行エレメントを形成する後行形成工程と、を備える地中連続壁の施工方法であって、
前記先行形成工程は、
エレメントフレームに鉄筋籠および仕切板を組み付けて鉄筋ユニットを形成する組付け作業と、
前記鉄筋ユニットの端部に地盤掘削機により切削可能な空間形成部材を設置し、前記仕切板に突設された接続部材を前記空間形成部材で覆うカバー設置作業と、
前記鉄筋ユニットおよび前記空間形成部材を前記先行掘削溝に挿入する建込作業と、
前記仕切板および前記空間形成部材によって囲まれた空間内に支持材を挿入する挿入作業と、
前記先行掘削溝内にコンクリートを打設する打設作業と、を備え、
前記挿入作業では、前記接続部材と前記空間形成部材との間に前記支持材を介設することを特徴とする、地中連続壁の施工方法。 - 前記後行形成工程において、前記支持材を前記空間から抜き出すことを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の地中連続壁の施工方法。
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