JP6692197B2 - 地中連続壁打継部構造 - Google Patents
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Description
先行エレメントと後行エレメントとの打継部では、面内せん断力に対する耐力(一体性)を確保するために、先行エレメントと後行エレメントとの間に跨って接続金物を埋設する場合がある。例えば特許文献1では、接続金物を保持した打継部形成具を端部に設置した状態で先行エレメントを形成し、後行エレメント用掘削溝を形成した後、打ち継部形成具を取り外し、接続金物110を先行エレメント101の端部から露出させた状態で後行エレメント102を形成することで、先行エレメント101と後行エレメント102との打継部に接合金物を配設している(図6参照)。
一方、壁の一部を支持層に根入れする地中連続壁では、図7に示すように、支持層GRに根入れされたエレメントE1と、支持層に根入れされていないエレメントE2との打ち継ぎ部において、大きな面内せん断力が作用する。
このような観点から、本発明は、大きな面内せん断力が作用した場合であっても、エレメント間でせん断力を伝達することが可能な地中連続壁打継部構造を提案することを課題とする。
かかる地中連続壁打継部構造によれば、凸部に接合筋が配筋されているため、接合筋が先行エレメント鉄筋と後行エレメント鉄筋との間に跨って配筋された状態となる。そのため、地中連続壁に無筋部分が形成されることがなく、壁の全長にわたって鉄筋が連続して配筋された状態となる。その結果、先行エレメントと後行エレメントとの間で大きなせん断力が作用した場合であっても、鉄筋を介してせん断力を伝達することができ、ひいては、エレメント同士の打継部においてせん断破壊が生じることを防止することができる。
また、打継部では、先行エレメントの凹部に凸部が入り込んだ状態であるため、凸部のコンクリートが拘束されていて、凸部のコンクリートの耐力が増強される。また、先行エレメントと後行エレメントとの突き合わせ面に凹凸を有しているため、平坦面同士が接合する場合に比べて止水性に優れている。
なお、前記接合筋は、前記後行エレメントの縦断方向に沿って配筋された縦断筋と、前記後行エレメントの横断方向に沿って配筋された横断筋とを備えているのが望ましい。こうすることで、横断筋によって凸部内におけるクラックの発生を防止することができる。
縦断筋として、U字状に加工された鉄筋、あるいは、先行エレメント側の端部に定着部材が形成された鉄筋を使用すれば、コンクリートを縦断筋によって拘束することで、耐力の増強を図ることができる。
本実施形態では、図1に示すように、先行エレメント1の隣に後行エレメント2を連設することにより地中連続壁を構築する場合について説明する。
先行エレメント1および後行エレメント2は、それぞれコンクリート3とコンクリート3に埋め込まれた鉄筋籠4により構成されている。先行エレメント1と後行エレメント2との接合部では、先行エレメント1の端面に凹部1Aが形成されているとともに、後行エレメント2の端面に凹部1Aと係合する凸部2Aが形成されている。
凹部1Aの底部(先行エレメント1の側端面)には、仕切板11が配設されている。仕切板には、複数の接続部材12および止水板13が突設されている。接続部材12は、仕切板11を貫通していて、先行エレメント1と後行エレメント2(凸部2A)とに跨って配設されている。本実施形態では、4本の接続部材12が、前後方向(地中連続壁の壁厚方向)に所定の間隔をあけて並設されている。また、接続部材12は、図2に示すように、深さ方向(図面上下方向)に対して所定の間隔をあけて複数段並設されている。
接続部材12は、図2に示すように、いわゆるスタッドである。接続部材12は、棒状部材からなる軸部121と、軸部121の両端に形成されて軸部121よりも大きな幅(外径)を有した頭部122とを備えている。なお、接続部材12の構成は限定されるものではない。例えば、接続部材12は、異形鉄筋により構成されていてもよい。また、接続部材12は、必ずしも仕切板11を貫通している必要はなく、例えば、仕切板11に溶接されていてもよい。
止水板13は、仕切板11の先行エレメント側の側面および後行エレメント側の側面にそれぞれ立設されている。なお、止水板13を構成する材料は限定されるものではないが、本実施形態では鋼板を仕切板11に溶接することにより構成している。また、止水板13は、仕切板11を貫通させた板状部材により形成してもよいし、仕切板11に形成されたブラケットに固定してもよい。また、止水板13は必要に応じて配設すればよい。
エレメントフレーム14は、鋼材を組み合わせることにより形成されている。本実施形態のエレメントフレーム14は、前後の網状鉄筋41,41の間の空間に配設されていて、高さ方向に複数段配設されている。
エレメントフレーム14は、前面側と後面側(図1において上側と下側)にそれぞれ配設された横材141と、前後の横材141を連結する縦材142と、斜材143とを備えている。なお、エレメントフレーム14の構成は限定されるものではない。
横材141は、先行エレメントを構築する際に掘削された掘削溝の壁面に沿って配設される。
本実施形態では、4本の縦材142が、2本の横材141の間に横架されていることで、平面視はしご状を呈している。なお、縦材142を構成する材料は限定されないが、本実施形態ではL型鋼を使用する。また、エレメントフレーム14の中央部において隣り合う縦材142同士の間には、トレミー管Pを配管するためのスペース(間隔)が確保されている。
斜材143の一端は、横材141に固定されていて、斜材143の他端は、仕切板11または端部の縦材142に固定されている。
隣り合う縦断筋22,22は、接続部材12を挟むように配筋されている。縦断筋22は、図2に示すように、鉄筋を側面視でU字状に折り曲げることにより形成されていて、深さ方向に対して、接続部材12の2倍のピッチで配筋されている。なお、縦断筋22の形状や配筋ピッチ等は限定されるものではない。
横断筋23は、凸部2A内の接続部材12に隣接した位置に配筋されている。本実施形態の横断筋23は、接続部材12の先端(後行エレメント2側の端面)と、先行エレメント1と後行エレメント2との突き合わせ面(溝壁1Bの端面)との間に配筋されている。なお、横断筋23の配置は限定されるものではなく、例えば、U字状(コ字状)の縦断筋22の角部に配筋してもよい。また、横断筋23は、必要に応じて配筋すればよい。
エレメントフレーム24は、鋼材を組み合わせることにより形成されている。本実施形態のエレメントフレーム24は、網状鉄筋41,41の内側空間に配設されていて、高さ方向に複数段配設されている。
横材241および縦材242の詳細は、先行エレメント1の横材141および縦材142と同様なため、詳細な説明は省略する。
斜材243の一端は横材241に固定されていて、斜材243の他端は縦材142に固定されている。
接合筋21は、エレメントフレーム24の縦材242に固定されている。本実施形態では、2本の縦材242に横架させた状態で、接合筋21を両縦材242に固定している。
先行掘削工程は、図3(a)に示すように、先行掘削溝D1を掘削する工程である。
先行掘削溝D1は、トレンチカッタ等の地盤掘削機(図示せず)により掘削する。なお、先行掘削溝D1の掘削方法は限定されない。
先行形成工程では、まず、図3(b)に示すように、先行掘削溝D1内に、鉄筋ユニット10を挿入する。このとき、鉄筋ユニット10と先行掘削溝D1の内壁面との間にスペーサー(図示せず)を介設する。なお、スペーサーの材質、形状および配置は限定されない。鉄筋ユニット10を先行掘削溝D1に設置したら、鉄筋ユニット10の中央(中央側の縦材142同士の間)にトレミー管Pを配管する。トレミー管Pは、先行掘削溝D1の底部近傍に達するまで挿入する。
このとき、鉄筋ユニット10の端部には、図4に示すように、カバー材151を固定しておく。カバー材151は、地盤掘削機により切削可能な材料からなり、平断面視コ字状を呈している。カバー材151は、エレメントフレーム14の高さ方向に延在していて、仕切板11に突設された接続部材12を覆うように設置される。カバー材151は、仕切板11の前縁および後縁に予め固定された取付部材16に固定する。なお、カバー材151を構成する材料や形状は限定されるものではなく、例えば、半円筒状のものであってもよい。また、カバー材151の固定方法は限定されるものではない。
また、本実施形態では、仕切板11およびカバー材151によって囲まれた空間内に形状保持材152と支持材17とを挿入する。形状保持材152および支持材17は、接続部材12の先端とカバー材151との間に介設する。なお、形状保持材152と支持材17は、別々に挿入してもよいし、形状保持材152と支持材17とがユニット化されたものを挿入してもよい。また、形状保持材152が予めカバー材151とともにエレメントフレーム14に取り付けられている場合には、支持材17のみを挿入すればよい。
防護板171は、連結用鋼材172を介して仕切板11に着脱可能に連結されているとともに、接続部材12の先端面を覆っている。防護板171の後行エレメント2側には、形状保持材152が取り付けられている。
本実施形態の防護板171は、連結用鋼材172とともに、空間形成部材15(形状保持材152)の支持材17を構成している。なお、支持材17の構成は限定されない。また、形状保持材152は、必ずしも防護板171に取り付ける必要はない。
連結用鋼材172は、チャンネル材により構成されていて、高さ方向に延在している。連結用鋼材172のウェブの長さ(高さ)は、接続部材12の長さ(仕切板11からの突出長)よりも大きい。連結用鋼材172の一方のフランジは防護板171に固定されており、他方のフランジは仕切板11に係止されている。本実施形態では、仕切板11の接続部材12同士の間に、平面視L字状の係止部材111が配置されている。支持材17は、連結用鋼材172の他方のフランジを係止部材に係止する(すべり込ませる)ことにより、仕切板11に取り付けられている。なお、連結用鋼材172を構成する材料は限定されるものではなく、例えばH形鋼やL形鋼であってもよい。
フレッシュコンクリート30は、トレミー管Pを利用して、先行掘削溝D1の底面から打設する。トレミー管Pは、フレッシュコンクリート30の上面の上昇に伴って上昇させる。このとき鉄筋ユニット10の端部の仕切板11とカバー材151により囲まれている空間(接続部材の周囲)にはコンクリートが内部に打設されない。
後行掘削工程は、先行掘削溝D1に打設したコンクリート(先行エレメント1)に所定の強度が発現してから行う。
後行掘削溝D2の掘削は、先行エレメント1の端部を切削しながら行う。なお、後行掘削溝D2の掘削は、先行掘削溝D1と同様に地盤掘削機(図示せず)により行う。後行掘削溝D2の掘削により、先行エレメント1の端部に設けられたカバー材151および形状保持材152が切削される。カバー材151が切削されることで、先行エレメント1の端部に凹部1Aが形成される。なお、後行掘削溝D2の掘削は、先行エレメント1(溝壁1B,1B)の端面に地盤掘削機の方向制御プレートを当接させた状態で掘削する。
後行エレメント2の形成は、まず、鉄筋ユニット20を後行掘削溝D2内に挿入する。
このとき、鉄筋ユニット20と後行掘削溝D2の内壁面との間にスペーサー(図示せず)を介設する。なお、スペーサーの材質、形状および配置は限定されない。鉄筋ユニット20の後行掘削溝D2への挿入に先立ち、支持材17および形状保持材152の残部を凹部1Aから抜き出す。
鉄筋ユニット20を後行掘削溝D2に設置したら、鉄筋ユニット10の中央(中央側の縦材242同士の間)にトレミー管Pを配管する。トレミー管Pは、先端(下端)が、後行掘削溝D2の底部近傍に達するまで挿入する。
コンクリート30は、トレミー管を利用して、後行掘削溝D2の底面から打設する。トレミー管は、打設コンクリートの上面の上昇に伴って上昇させる。コンクリート30は、凹部1A内にも入り込むことで凸部2Aを形成し、接続部材12および止水板13を巻き込んだ状態で硬化する(図1参照)。
また、打継部では、先行エレメント1の端部に形成された溝壁1B,1Bによって凸部2Aが前後(表裏)から挟持されているため、凸部2Aのコンクリートが拘束されていて、凸部2Aのコンクリートの耐力が増強される。また、先行エレメント1と後行エレメント2との突き合わせ面に凹凸を有しているため、平坦面同士が接合する場合に比べて止水性に優れている。
また、接合筋21として横断筋23を備えているため、凸部2A内におけるクラックの発生を防止することができる。図7に示すように隣り合うエレメント同士の間で上下ずれる力が作用することで、接続部材12の周囲にクラックが生じた場合であっても、横断筋が当該クラックと交差する位置に配筋されているため、クラックの進行を防止する。
また、縦断筋22として、U字状に加工された鉄筋を使用しているため、コンクリートを縦断筋によって拘束することで、耐力の増強を図ることができる。
先行エレメント1と後行エレメント2は、凹部1Aと凸部2Aにより係合されているため、接合性に優れている。また、先行エレメント1と後行エレメント2との接合面(凹部1Aおよび凸部2A)が屈曲しているため、接合面を浸透する漏水の通水延長が長くなり、その結果、止水性が高まる。
後行掘削溝D2の掘削を、先行エレメント1の溝壁1Bの端面に地盤掘削機の方向制御プレートを当接させた状態で行うため、掘削方向がぶれることがなく、高品質に施工することができる。また、溝壁1Bに方向制御プレートを当接させているため、凹部1A内に地盤掘削機のカッタが入り込むことがなく、仕切板11や接続部材12等が保護されている。
本実施形態では、図5(a)に示すように、先行エレメント1の隣に後行エレメント2を連設することにより地中連続壁を構築する場合について説明する。
先行エレメント1および後行エレメント2は、それぞれコンクリート3とコンクリート3に埋め込まれた鉄筋籠4により構成されている。先行エレメント1と後行エレメント2との接合部では、先行エレメント1の端面に凹部1Aが形成されているとともに、後行エレメント2の端面に凹部1Aと係合する凸部2Aが形成されている。
凹部1Aの底部(先行エレメント1の側端面)には、仕切板11が配設されている。仕切板11は、先行エレメント1と後行エレメント2との境界部に配設される板材である。また、仕切板11は、図5(b)に示すように、高さ方向(図1において紙面垂直方向)に延在している。仕切板11は、断面視波形の鋼板により構成されている。なお、仕切板11の構成は限定されるものではなく、例えば、複数の錐台状の凹凸が連設されており、平断面視および縦断面視で波型(たまごパック状)を呈した板材であってもよい。
図5(a)に示すように、先行エレメント1に配設された仕切板11および網状鉄筋41,41は、エレメントフレーム14に組み付けられている。エレメントフレーム14の詳細は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
図5(a)に示すように、後行エレメント2に配設された接合筋21および網状鉄筋41,41は、エレメントフレーム24に組み付けられている。エレメントフレーム24の詳細は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
この他の第二の実施形態の地中連続壁打継構造の作用効果は、第一の実施形態の地中連続壁打継構造と同様なため、詳細な説明は省略する。
1A 凹部
10 鉄筋ユニット
11 仕切板
12 接続部材
13 止水板
14 エレメントフレーム
15 空間形成部材
151 カバー材(カバー部)
152 形状保持材(形状保持部)
17 支持材
171 防護板
2 後行エレメント
2A 凸部
21 接合筋
22 縦断筋
23 横断筋
3 コンクリート
4 鉄筋籠
41 網状鉄筋(先行エレメント鉄筋、後行エレメント鉄筋)
D1 先行掘削溝
D2 後行掘削溝
Claims (5)
- 先行エレメントの端面に形成された凹部と、
後行エレメントの端面に形成されて前記凹部と係合された凸部と、
前記凸部を挟むように前記先行エレメントの表面側および裏面側にそれぞれ配筋された先行エレメント鉄筋と、
前記後行エレメントの表面側および裏面側にそれぞれ配筋された後行エレメント鉄筋と、
前記後行エレメント内に配筋された接合筋と、を備える地中連続壁打継部構造であって、
前記接合筋は、前記後行エレメントの縦断方向に沿って配筋された縦断筋と、前記後行エレメントの横断方向に沿って配筋された横断筋と、を備えており、前記縦断筋の前記先行エレメント側の端部および前記横断筋が前記凸部内に位置するように配筋されていることを特徴とする、地中連続壁打継部構造。 - 前記凹部の底面に接続部材が突設されていることを特徴とする、請求項1に記載の地中連続壁打継部構造。
- 前記凹部の底面に複数の凹凸が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の地中連続壁打継部構造。
- 先行エレメントの端面に形成された凹部と、
後行エレメントの端面に形成されて前記凹部と係合された凸部と、
前記凸部を挟むように前記先行エレメントの表面側および裏面側にそれぞれ配筋された先行エレメント鉄筋と、
前記後行エレメントの表面側および裏面側にそれぞれ配筋された後行エレメント鉄筋と、
前記後行エレメント内に配筋された接合筋と、を備える地中連続壁打継部構造であって、
前記接合筋は、前記後行エレメントの縦断方向に沿って配筋された縦断筋と、前記後行エレメントの横断方向に沿って配筋された横断筋と、を備えており、前記先行エレメント側の端部が前記凸部内に位置するように配筋されていることを特徴とする、地中連続壁打継部構造。 - 先行エレメントの端面に形成された凹部と、
後行エレメントの端面に形成されて前記凹部と係合された凸部と、
前記凸部を挟むように前記先行エレメントの表面側および裏面側にそれぞれ配筋された先行エレメント鉄筋と、
前記後行エレメントの表面側および裏面側にそれぞれ配筋された後行エレメント鉄筋と、
前記後行エレメント内に配筋された接合筋と、を備える地中連続壁打継部構造であって、
前記接合筋は、U字状に加工された縦断筋、あるいは、先行エレメント側の端部に定着部材が形成された縦断筋を備えており、前記先行エレメント側の端部が前記凸部内に位置するように配筋されていることを特徴とする、地中連続壁打継部構造。
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