JP6153236B2 - 植生基材吹付工の基礎工法 - Google Patents
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Description
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
そして、上述したような補強材の頭部に取り付ける受圧板は、格子状の交点位置において、法枠の一部を構成するものとなる。受圧板は、補強材の引き抜き方向の荷重を法面から十分に受ける形状や大きさであると共に、例えば多孔構造等のような、植物の生育を妨げないような構造であることが好ましい。この受圧板の設置により、補強材の緊張力が周辺地盤に伝達されるため、法面の変形が効果的に抑制される。従って、本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、植物の根茎による緊縛支持に加えて、補強材と受圧板とにより法面の変形を抑制するため、より強固に法面を保護するものとなる。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、連結工程において、複数のワイヤの各々を矩形波状に引き回すものである。すなわち、複数のワイヤの各々の中途部を、補強材の各頭部において約90°引張方向を変更するように掛け、この際、例えば、右回りに90°の引張方向の変更と、左回りに90°の引張方向の変更とを、2回ずつ交互に繰り返して矩形波状に引き回すものである。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、連結工程において、複数のワイヤの各々を複数の補強材の頭部に下記のように連結する。すなわち、ワイヤの一端を始点となる補強材の頭部に固定した後、ワイヤの中途部を複数の補強材の頭部に掛けながら引張する。この際、ワイヤの中途部は、複数の補強材の各頭部において、補強材の頭部に巻き付けや固定をせずに、補強材の頭部に引掛けるようにして引張方向を変更する。そして、複数の補強材の頭部を介して引張した状態のワイヤの他端を、終点となる補強材の頭部に固定する。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、受圧板設置工程において挿入する複数の補強材を、水平方向と平行及び直交する格子線を有する矩形格子状の交点位置に挿入する。そして、連結工程において連結する複数のワイヤの各々を、水平方向と直交する方向に進む矩形波状、或いは、水平方向と平行な方向に進む矩形波状に引き回すことで、上記(2)項と同様の作用を奏するものである。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、複数のワイヤの各々を、水平方向と直交する方向に進む矩形波状、或いは、水平方向と平行な方向に進む矩形波状に引き回す際に、隣り合うワイヤ同士の矩形波状の位相が同じになるように引き回すものである。これにより、ワイヤを矩形波状に引き回す場合であっても、ワイヤ連結をする範囲の最も外側に位置する補強材の頭部を除き、複数の補強材の各頭部に、2本のワイヤの中途部が互いに反対方向から掛かることとなり、強固に補強材の頭部を連結するものとなる。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、受圧板設置工程において挿入する複数の補強材を、千鳥格子状の交点位置に挿入する。そして、連結工程において連結する複数のワイヤの各々を、水平方向と直交する方向に進む鋸波状、或いは、水平方向と平行な方向に進む鋸波状に引き回すものである。すなわち、複数のワイヤの各々の中途部を、補強材の各頭部において約90°引張方向を変更するように掛け、この際、例えば、右回りに90°の引張方向の変更と、左回りに90°の引張方向の変更とを繰り返して、鋸波状に引き回すものである。
上述の如き連結順序により、1本のワイヤで連結する補強材の頭部は、格子状の交点位置に挿入されている複数の補強材の頭部のうち、ジグザグな方向に隣り合う補強材の頭部となる。この鋸波状の方向等は、ワイヤの連結強度や作業効率等を考慮して決定する。このように、ワイヤの各々を鋸波状に引き回して連結することにより、ワイヤ連結をする範囲の複数の補強材の頭部を効率よく網羅し、強固に連結することとなる。なお、ワイヤ連結をする際に、鋸波状に引き回したワイヤと他の形状に引き回したワイヤとを混在させて、複数の補強材の頭部を連結してもよい。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、複数のワイヤの各々を、水平方向と直交する方向に進む鋸波状、或いは、水平方向と平行な方向に進む鋸波状に引き回す際に、隣り合うワイヤ同士の鋸波状の位相が反転するように引き回すものである。これにより、ワイヤを鋸波状に引き回す場合であっても、ワイヤ連結をする範囲の最も外側に位置する補強材の頭部を除き、複数の補強材の各頭部に、2本のワイヤの中途部が互いに反対方向から掛かることとなり、強固に補強材の頭部を連結するものとなる。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、上記(3)項と同様の作用を奏するものである。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、連結工程において、法面の上側から下側へ向かって、複数のワイヤの各々を引き回すことで、連結工程の作業者が、横方向よりも容易な縦方向の移動を行い作業することとなるため、効率よく施工することとなる。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、受圧板設置工程において、前記格子状の交点位置に挿入する補強材を、直接法面に挿入せずに、グラウト材の充填孔に挿入するものである。すなわち、法面の前記格子状の交点位置を削孔した後、削孔した孔内にグラウト材を注入し、法面にグラウト材の充填孔を形成する。そして、形成した充填孔に補強材を挿入し、補強材をグラウト定着させるものである。この際、グラウト材にはセメントミルク等を用い、補強材には、グラウト定着させずに直接法面に挿入する場合の補強材と同等、或いは、それ以上の径や長さを有する異形棒鋼等を用いる。そして、補強材を挿入した後、補強材の頭部に受圧板を取り付ける。これにより、グラウト定着させずに直接法面に補強材を挿入する場合と比較して、法面に対する引き抜き抵抗力が増加し、法面の変形を更に抑制することとなるため、より強固に法面を保護するものとなる。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、法枠を形成する複数の基盤支持枠が、生分解性の材料で形成されているものである。そして、このような基盤支持枠により法枠が形成された法面に対し、植生基材を吹き付けることにより、施工直後の植物の生育状態が十分でない時期には、基盤支持枠で形成した法枠により植生基材を支持する。そして、十分な植物生育が見込まれる、例えば5〜10年後には、微生物により基盤支持枠が分解軟化されるため、基盤支持枠が植物の生育を妨げることなく、法面が全体的に緑化される。従って、法面の全体に連続的に生育した植物の根茎により、法面の表層全体を緊縛支持することとなるため、より強固に法面を保護するものとなる。更に、植生基材を支持する法枠の形成に、養生待ちの時間が必要となるモルタル等を使用しないため、施工期間を短縮するものとなる。
又、本基礎工法で用いる基盤支持枠は、平行な2つの凹条部と、その間に形成された突条部とを有している。そして、2つの凹条部を構成している底面の各々は平坦であり、2つの凹条部の各々には、突条部とは反対側の位置に、植生基材の吹き付け高さと等しい高さの壁部が形成されている。これら2つの壁部は、例えば、凹条部の底面に対して直角に設けられている。すなわち、この基盤支持枠は、凹条部や突条部の延在方向での断面形状が山型を成している。そして、このような基盤支持枠を用いて形成した法枠に、壁部の高さを目安にして植生基材の吹き付けを行うことで、正確な高さで迅速に植生基盤を吹き付けることとなる。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、基盤支持枠の突条部の底部に、突条部の頂部と平行な溝が形成されているものである。このため、例えば、補強のために法面に挿入された補強材の頭部をワイヤで連結した場合等に、補強材の各頭部間で引張されているワイヤに、突条部の底部の溝を被せるようにして本基盤支持枠を設置することにより、ワイヤの引張を妨げないように、ワイヤの引張方向に合わせた法枠を形成するものである。
(13)上記(11)(12)項において、前記複数の基盤支持枠の各々が、補強繊維を混入した生分解性プラスチックで形成されている植生基材吹付工の基礎工法。
本項に記載の植生基材吹付工の基礎工法は、複数の基盤支持枠の各々が、例えば竹繊維等の補強繊維を混入した生分解性プラスチックで形成されていることで、補強繊維により強度が向上されながらも、環境への負荷を少なくするものである。
図1は、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法により形成する法枠2を模式的に示している。図示のように、法枠2は、互いに平行或いは直角となる向きで法面12に配置された、複数の基盤支持枠20により、水平方向と平行及び直交する格子線Lを有する矩形格子状に形成されている。複数の基盤支持枠20の各々は、格子線Lの交点位置や、交点位置間の略中間位置の格子線L上に配置されているが、図1の例のように、交点位置間の略中間位置の一部に、基盤支持枠20が配置されていなくてもよい。そして、複数の基盤支持枠20の各々は、図2に示すように、2本のアンカーピン22により法面12に固定されている。なお、図2は、後述する説明の便宜上、法枠2に植生基材14を吹き付けた状態を示している。
図7に示す例において、ワイヤ60による連結順序や引き回しについて、符号60Aで示すワイヤを用いて具体的に説明すると、まず、ワイヤ60Aの一端を、ワイヤ連結の始点となる補強材の頭部42Aに固定する。この際、ワイヤ60Aの補強材の頭部42Aへの固定は、例えば、図8に示すように、ワイヤクリップ62等を用いて行う。
S10(準備工):本工事を実施する前の準備として準備工を行う。具体的には、例えば、施工対象の法面の調査、必要となる図面や計画書等の作成、施工時に使用する各種材料や機材の準備等を行う。
S20(法面清掃):後に吹き付ける植生基材と法面地山との密着を図るため、法面清掃を行う。具体的には、浮石、浮土砂、ゴミ等を法面から除去する。この際、法面に植物が残存している場合は、後の施工や植生基材による植物生育の妨げにならない限り、刈り払い程度で済ませてもよい。
S40(芯出し):仕様書等に基づいて、法面12に対し施工の際の基準となる基準位置の位置出しを行う。格子状の法枠を形成する場合には、例えば、図1等に示す複数の格子線Lの位置にロープを張る等をすればよい。図15(a)の例では、芯出しの結果から得たグラウト材の充填孔の形成位置を、白矢印で示している。
S60(フレーム設置工):上記S50において、法枠の形成に補強材を使用しない工法であると判別した場合(NO)は、フレーム設置工を実施する。すなわち、図1及び図2に示したように、法面12に複数の基盤支持枠20を配置し、各々をアンカーピン22により固定して、法面12に格子状の法枠2を形成する。
S80(補強材打ち込み):上記S70において、補強材をグラウト定着させない工法であると判別した場合(NO)は、補強材を打ち込む。すなわち、図4及び図5に示したように、法面12の格子線Lの交点位置に、補強材40を打ち込む。
S100(注入工):図15(b)の法面12の中ほどに図示しているように、削孔した孔70にグラウト材72を注入する注入工を行う。グラウト材72の注入は、注入ホース82等を孔70の内部に挿入して行う。グラウト材72には、例えば、セメントミルクを用いる。
S110(補強材挿入):図15(b)の法面12の上方に図示しているように、孔70にグラウト材72を充填した充填孔74に、補強材50を挿入する。この際、補強材50の頭部52は、少なくとも後述するワイヤによる連結や受圧板の取り付けに必要な長さ分が、法面12から突出した状態にする。このようにして、法面12に、すべり面Fよりも深い深度に達する、補強材50を挿入した充填孔74を形成する。なお、図15(b)の例では、上記S90〜S110までの工程を、法面12の上方の施工位置から順次行っている。
S140(受圧板設置工):図5に示すように、補強材の頭部42を挿通するように受圧板46を設置する。或いは、図16(b)や図11に示すように、補強材の頭部52を挿通するように受圧板56を設置する。
S150(頭部定着工):ナットによる締め付け等を行うことで、補強材の頭部42又は52を、受圧板46又は56に定着させる。
S170(フレーム設置工):図17に示すように、受圧板56の間に基盤支持枠20を配置し、アンカーピン22により法面12に固定する。ここまでの工程により、図4及び図5に示した法枠4、図10及び図11に示した法枠6、図12及び図13に示した法枠8等の、いずれかの法枠が法面12に形成される。
S200(植生基材吹付):本工程は、本発明の実施の形態に係る植生基材吹付工の基礎工法の後に実施する、植生基材吹付工であるため、参考として記述する。上記S60までの工程で形成した法枠2や、上記S170までの工程で形成した法枠4、6、8の各々に、図2、図5、図6、図11、図13に示すように、基盤支持枠20の壁部28の高さを目安にして植生基材14を吹き付ける。
なお、図18及び図19のように、千鳥格子状の法枠を形成する場合において、受圧板46又は56は、補強材の頭部42又は52の各々から引張されているワイヤ60の引張方向に合わせて、補強材の頭部42又は52を中心とする回転方向に適切な角度だけ回転させて設置する。又、複数の基盤支持枠20は、複数の受圧板46又は56の間で引張されているワイヤ60に被せるようにして、格子線Lの方向に合わせて設置する。
そして、上述したような補強材40の頭部42に取り付ける受圧板46は、格子線Lの交点位置において、法枠4の一部を構成するものとなる。受圧板46には、補強材40の引き抜き方向の荷重を法面12から十分に受ける形状や大きさであると共に、例えば多孔構造等のような、植物の生育を妨げないような構造であるものを使用する。この受圧板46の設置により、補強材40の緊張力が周辺地盤に伝達されるため、法面12の変形を効果的に抑制できる。従って、本植生基材吹付工の基礎工法は、植物の根茎による緊縛支持に加えて、補強材40と受圧板46とにより法面12の変形を抑制するため、より強固に法面12を保護することが可能となる。
ここで、本願発明において、基盤支持枠20の壁部28の高さが、植生基材14の吹き付け高さと等しいということは、壁部28の上端位置を、吹き付けるべき植生基材14の高さの目安として利用することができる範囲で、壁部28の高さと植生基材14の吹き付け高さとが等しいことを示しており、このような機能が担保できる範囲において、両者間に実質的な差がある場合も含まれることは、理解されるであろう。
Claims (7)
- 法面への植生基材吹付工の基礎工法であって、
複数の基盤支持枠を互いに平行或いは直角となる向きで法面に格子状に配置し、各基盤支持枠をアンカーピンにより固定する法枠形成工程と、前記格子状の交点となる位置に補強材を挿入し、該補強材の頭部に受圧板を取り付ける受圧板設置工程と、複数のワイヤの各々により、複数の前記補強材の頭部を連結する連結工程と、を含み、
該連結工程において、ワイヤ連結をする範囲の最も外側に位置する補強材の頭部を除き、複数の補強材の各頭部に、少なくとも2本のワイヤの中途部が互いに異なる方向から掛かるように、複数のワイヤを連結し、この際、前記複数のワイヤの各々を矩形波状に引き回すことを特徴とする植生基材吹付工の基礎工法。 - 前記連結工程において、前記ワイヤの一端を始点となる前記補強材の頭部に固定した後、前記ワイヤの中途部を複数の前記補強材の頭部に掛けながら引張し、この際、前記補強材の頭部に掛ける度に引張方向を変更し、前記ワイヤの他端を終点となる前記補強材の頭部に固定することを特徴とする請求項1記載の植生基材吹付工の基礎工法。
- 前記受圧板設置工程において、複数の前記補強材を、水平方向と平行及び直交する格子線を有する矩形格子状の交点位置に挿入し、
前記連結工程において、前記複数のワイヤの各々を、水平方向と直交する方向に進む矩形波状、或いは、水平方向と平行な方向に進む矩形波状に引き回すことを特徴とする請求項1又は2記載の植生基材吹付工の基礎工法。 - 前記連結工程において、隣り合うワイヤ同士の矩形波状の位相が同じになるように、複数のワイヤの各々を引き回すことを特徴とする請求項3記載の植生基材吹付工の基礎工法。
- 法面への植生基材吹付工の基礎工法であって、
複数の基盤支持枠を互いに平行或いは直角となる向きで法面に格子状に配置し、各基盤支持枠をアンカーピンにより固定する法枠形成工程と、前記格子状の交点となる位置に補強材を挿入し、該補強材の頭部に受圧板を取り付ける受圧板設置工程と、複数のワイヤの各々により、複数の前記補強材の頭部を連結する連結工程と、を含み、
該連結工程において、ワイヤ連結をする範囲の最も外側に位置する補強材の頭部を除き、複数の補強材の各頭部に、少なくとも2本のワイヤの中途部が互いに異なる方向から掛かるように、複数のワイヤを連結し、
前記受圧板設置工程において、複数の前記補強材を千鳥格子状の交点位置に挿入し、
前記連結工程において、前記複数のワイヤの各々を、水平方向と直交する方向に進む鋸波状、或いは、水平方向と平行な方向に進む鋸波状に引き回し、この際、隣り合うワイヤ同士の鋸波状の位相が反転するように、複数のワイヤの各々を引き回すことを特徴とする植生基材吹付工の基礎工法。 - 前記連結工程において、前記ワイヤの一端を始点となる前記補強材の頭部に固定した後、前記ワイヤの中途部を複数の前記補強材の頭部に掛けながら引張し、この際、前記補強材の頭部に掛ける度に引張方向を変更し、前記ワイヤの他端を終点となる前記補強材の頭部に固定することを特徴とする請求項5記載の植生基材吹付工の基礎工法。
- 前記連結工程において、法面の上側から下側へ向かって、複数のワイヤの各々を引き回すことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の植生基材吹付工の基礎工法。
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