JP2018006605A - 熱電材料、その製造方法および発電装置 - Google Patents

熱電材料、その製造方法および発電装置 Download PDF

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Abstract

【課題】より低温域において高いパワーファクターを実現し、発電量を顕著に増大する、Pドープしたβ−FeSi2相を含む熱電材料、その製造方法およびそれを用いた発電装置を提供すること。【解決手段】本発明のβ−FeSi2相を含む熱電材料は、β−FeSi2相が熱電材料中に90体積%より多く含有されており、β−FeSi2相が少なくともP(リン)を0.1at%より多く0.3at%以下の範囲で含有する。【選択図】図10

Description

本発明は、熱電材料、その製造方法および発電装置に関し、詳細には、P(リン)ドープβ−FeSi相を含む熱電材料、その製造方法および発電装置に関するものである。
従来、金属ケイ化物とSi結晶とを含む熱電材料として鉄ケイ化物のβ−FeSiが知られており、このβ−FeSiへのP(リン)ドープ、Coドープ等によって、ゼーベック係数の値を高め、出力を向上させることが試みられている(例えば、特許文献1、非特許文献1、非特許文献2を参照)。
非特許文献1によれば、Coをβ−FeSiのFe(II)サイトにドープすることにより、n型熱電材料とし、出力を向上することが報告されている。
一方、特許文献1によれば、β‐FeSiとSi結晶とを含み、これにPが添加された熱電半導体材料が開発されている。しかしながら、特許文献1に記載の材料は、金属のケイ化物の結晶とSi結晶との複合組成にすることにより、出力向上を図っているが、その制御は困難といえる。また、特許文献1に記載の材料は薄膜材料であり、バルク体ではない。
非特許文献2によれば、ホットプレスによって製造されたPドープしたβ−FeSiが報告されている。詳細には、非特許文献2では、Fe粉末とSi粉末との混合粉末をアーク溶解して得たα相およびε相からなる粉末を、P粉末と混合し、メカニカルアロイング(MA)、次いで、ホットプレスを行う。非特許文献2は、このようにして得たPドープしたβ−FeSiについて熱電特性を報告している。しかしながら、非特許文献2のPドープしたβ−FeSiであっても、例えば、図6のパワーファクターを参照すれば、さらなる低温化ならびに高出力化が望まれる。
上述したように、鉄ケイ化物であるβ−FeSiへのPのドープにより、熱電材料としての特性の改善が見られたものの、より低温域である例えば700K以下の温度において高いパワーファクターを実現し、発電量を顕著に増大することは難しいという制約があった。
特開平7−48116号公報
M.Itoら,J. Alloys and Compound, 319, 303 (2001) M.Itoら,J.Appl.Phys.91,2138(2002)
以上から、本発明は、より低温域において高いパワーファクターを実現し、発電量を顕著に増大する、Pドープしたβ−FeSi相を含む熱電材料、その製造方法およびそれを用いた発電装置を提供することを課題としている。
本発明者らは、β−FeSi相へのPドープによる熱電材料性能の向上について鋭意検討を進めてきた。この過程において、本発明者らは、鉄ケイ化物における金属相であるε−FeSi相を低減させ、β−FeSi相の割合を90体積%より多くして、SiサイトにPをドープすることによって、低温域での高いレベルのパワーファクターを実現することができた。また、ドーパントとして、FePを用いることで、確実なドープが実現され、少ないPドープ量であっても高い性能実現に有効であることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
本発明によるβ−FeSi相を含む熱電材料によれば、β−FeSi相は、熱電材料中に90体積%より多く含有されており、β−FeSi相は、少なくともP(リン)を0.1at%より多く0.3at%以下の範囲で含有し、これにより上記課題を解決する。
β−FeSi相は、少なくともPを0.15at%以上0.25at%以下の範囲で含有してもよい。
β−FeSi相は、熱電材料中に95体積%以上99体積%以下の範囲で含有されてもよい。
ε−FeSi相をさらに含み、ε−FeSi相は、熱電材料中に1体積%以上5体積%以下の範囲で含有されてもよい。
β−FeSi相は、M(Mは、Co、TiおよびNiからなる群から選択される元素である)をさらに含有してもよい。
β−FeSi相は、上記Mを0.005at%以上1at%以下の範囲で含有してもよい。
400K以上700K以下の温度範囲におけるパワーファクターは、5×10−4W/mK以上であってもよい。
本発明による上記熱電材料を製造する方法は、少なくとも、SiおよびFeを含有する材料とFePとを溶解し、固化体を得るステップと、前記固化体を粉砕するステップと、前記粉砕するステップで得られた固化体の粒子を焼結するステップと、前記焼結するステップで得られた焼結体を熱処理するステップとを包含し、これにより上記課題を解決する。
上記固化体を得るステップにおいて、SiおよびFeを含有する材料と前記FePとは、FeSi2−x(0.005<x≦0.04)を満たすように調製されてもよい。
上記固化体を得るステップにおいて、SiおよびFeを含有する材料とFePとは、FeSi2−x(0.0075≦x≦0.025)を満たすように調製されてもよい。
上記固化体を得るステップにおいて、SiおよびFeを含有する材料とFePとは、FeSi2−x(0.01≦x≦0.02)を満たすように調製されてもよい。
上記SiおよびFeを含有する材料は、SiとFeとの混合物および/またはα−FeSiであってもよい。
上記固化体を得るステップにおいて、SiおよびFeを含有する材料とFePとに加えて、M(Mは、Co、TiおよびNiからなる群から選択される元素である)を含有する材料を溶解してもよい。
上記固化体を得るステップにおいて、SiおよびFeを含有する材料と前記FePとMを含有する材料とは、Fe1−ySi2−x(0.005<x≦0.04、0<y<0.1、MはCo、TiおよびNiからなる群から選択される元素である)を満たすように調製されてもよい。
上記固化体を得るステップにおいて、さらにCuを混合、溶解してもよい。
上記焼結するステップは、ホットプレス(HP)または放電プラズマ焼結(SPS)を用いてもよい。
上記焼結するステップは、固化体の粒子を、1260K以上1485K以下の温度範囲で、5分以上60分以下の間、不活性ガス雰囲気中、焼結してもよい。
上記熱処理するステップは、焼結体を、1023K以上1228K以下の温度範囲で、10分以上200時間の間、不活性ガス雰囲気中、熱処理してもよい。
本発明によるn型熱電材料とp型熱電材料とを備えた発電装置は、前記n型熱電材料が、上記熱電材料であり、これにより上記課題を解決する。
前記p型熱電材料は、Mn、AlおよびCrからなる群から選択される金属を含有するβ−FeSi相を含んでもよい。
本発明の熱電材料は、β−FeSi相を90体積%より多く含有するので、第二相であるε−FeSi相は少なくとも10体積%未満に低減されている。この結果、本発明の熱電材料のゼーベック係数および電気伝導度の低温域における挙動を安定化させることができる。また、本発明の熱電材料は、ε−FeSi相が所定量に制限されることにより、β−FeSi相が0.1at%より多く0.3at%以下の少ないPを含みさえすれば、電子のキャリアが増大し、バンド伝導を有効に機能させることができる。その結果、低温域における電気伝導度が上昇することにより、パワーファクターのピークが低温化し、最大ピークのブロード(プラトー領域の増大)化を達成できる。このような熱電材料を発電装置に用いれば、発電量の顕著な増大を可能にする。
本発明の熱電材料の製造方法は、出発原料として少なくとも、SiおよびFeを含有する材料とFePとを用い、これを溶解し、固化体を得るステップを包含する。β−FeSi相に含有(ドープ)されるべきPの出発原料としてFePを用いることにより、ε−FeSi相さらにはε−FeSi相中へのPの添加を抑制し、所定量のPを確実にβ−FeSi相に添加させることができる。
本発明の熱電材料の製造工程を示すフローチャート 本発明による発電装置を示す模式図 実施例1による焼結および熱処理の温度プロファイルを示す図 実施例/比較例1、2、4および5の焼結体のSEM像を示す図 実施例/比較例1、2および4〜6の焼結体のXRDパターンを示す図 実施例/比較例1、2および4〜6の焼結体におけるβ−FeSi相の含有量を示す図 実施例/比較例1〜6の焼結体のEPMAによるβ−FeSi相およびε−FeSi相中のPの含有量の変化を示す図 実施例/比較例1〜7の焼結体の電気伝導度の温度依存性を示す図 実施例/比較例1〜7の焼結体のゼーベック係数の温度依存性を示す図 実施例/比較例1〜7の焼結体のパワーファクターの温度依存性を示す図 実施例8および比較例9の焼結体の電気伝導度の温度依存性を示す図 実施例8および比較例9の焼結体のゼーベック係数の温度依存性を示す図 実施例8および比較例9の焼結体のパワーファクターの温度依存性を示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明の熱電材料およびその製造方法について概略を説明する。
本発明の熱電材料は、β−FeSi相を主成分として含むn型熱電材料である。詳細には、本発明の熱電材料は、少なくともP(リン)を0.1at%より多く0.3at%以下の範囲で含有したβ−FeSi相を90体積%より多く含有する。
本発明の熱電材料によれば、β−FeSi相を90体積%より多く含有するので、第二相であるε−FeSiは少なくとも10体積%未満に低減されている。この結果、本発明の熱電材料のゼーベック係数および電気伝導度の低温域における挙動を安定化させることができる。
また、本発明の熱電材料は、ε−FeSi相が所定量に制限されることにより、β−FeSi相が0.1at%より多く0.3at%以下の少ないPを含みさえすれば、PがSiサイトにドープされ、電子のキャリアが増大し、バンド伝導が有効に機能する。その結果、低温域における電気伝導度が上昇し、パワーファクターのピークが低温化する。加えて、ゼーベック係数と電気伝導度との低温域における挙動が安定化するため、パワーファクターの最大ピークのブロード(プラトー領域の増大)化を達成できる。
上述したように、本発明者らは、β−FeSi相を主成分として含むn型熱電材料において、β−FeSi相(主相とも呼ぶ)とε−FeSi相との関係に着目し、β−FeSi相の主成分とする量を制御し、許容されるべきε−FeSi相の量を見出し、かつ、β−FeSi相にPをわずか0.1at%より多く0.3at%以下とドープするだけで、少なくとも400K以上700K以下の比較的低温かつ広い温度域におけるパワーファクターの増大を達成できることを見出した。これにより、β−FeSi相単相で製造するための高精度な制御などは必要なく、また少ないドープ量で済むので、実用上有利かつ経済的となる。
本発明の熱電材料によれば、上述の特徴により、400K以上700K以下の温度範囲におけるパワーファクターは、4.5×10−4W/mK以上を達成する。このような熱電材料を発電装置に用いれば、広い温度域において発電量を増大できるので好ましい。
本発明の熱電材料によれば、好ましくは、β−FeSi相が、Pを0.15at%以上0.25at%以下の範囲で含有する。これにより、400K以上700K以下の温度範囲におけるパワーファクターは、5×10−4W/mK以上を達成できる。より好ましくは、β−FeSi相が、Pを0.18at%以上0.22at%以下の範囲で含有する。これにより、少ないドープ量で高いパワーファクターを確実とする。なお、パワーファクターの上限は、特に制限がないが、現実的には、400K以上700K以下の温度範囲において、8×10−4W/mK以下と考えればよい。
本発明の熱電材料は、好ましくは、95体積%以上99体積%以下の範囲でβ−FeSi相を含有する。ここで、第二相として、1体積%以上5体積%以下の範囲でε−FeSi相を含有してもよい。このような主相であるβ相の制御により、複雑な製造プロセスを経ることなく、低温域(例えば、室温〜700K)におけるゼーベック係数の絶対値が確実に向上した熱電材料を提供できる。
また、本発明の熱電材料によれば、第二相であるε−FeSi相は、0.2at%より多く0.8at%以下の範囲でPを含有しても、その熱電性能に影響はないので問題ない。より好ましくは、第二相であるε−FeSi相は、0.25at%以上多く0.55at%以下の範囲でPを含有する。この範囲であれば、本発明の熱電材料の熱電性能の低下は生じず、製造時の複雑な制御も要らない。
さらに、本発明の熱電材料によれば、β−FeSi相が、さらに、M(Mは、Co、TiおよびNiからなる群から選択される元素である)を含有してもよい。Pに加えてMを含有することにより、熱電特性を向上させることができる。例えば、MがCoである場合、CoはFe(II)サイトにドープされ、n型ドーパントとして機能し、バンド伝導およびスモールポーラロンに寄与する。その結果、400K以上700K以下の温度範囲におけるパワーファクターを、6×10−4W/mK以上に向上させることができる。
β−FeSi相は、好ましくは、Mを0.005at%以上1at%以下の範囲で含有する。上記範囲であれば、パワーファクターの向上が期待できる。より好ましくは、β−FeSi相は、Mを0.1at%以上0.8at%以下の範囲で含有する。これにより、上述のパワーファクターを達成できる。
なお、本発明の熱電材料は、第二相として、所定量以下に制御したε−FeSi相を含んでもよいが、熱電性能を低下させない範囲で、Si、Fe、α−FeSi等の未反応の原料、原料中に含有される不可避の不純物、あるいは、Co、Ti、Ni等の金属の化合物をさらに含んでもよい。化合物は、代表的には、CoSi、TiSi、NiSi等のケイ化物、CoFe、TiFe、NiFe等の鉄合金である。
次に、本発明の熱電材料の製造方法について説明する。
図1は、本発明の熱電材料の製造工程を示すフローチャートである。
ステップS110:少なくとも、Si(ケイ素)およびFe(鉄)を含有する材料とFePとを溶解し、固化体を得る。本発明者らは、β−FeSi相にドープされるべきPの出発原料としてFePを用いることにより、ε−FeSi相中へのPの添加を抑制し、所定量のPを確実にβ−FeSi相に添加させることができることを見出した。
SiおよびFeを含有する材料は、SiおよびFeを含有していれば、特に制限はないが、好ましくは、SiとFeとの混合物、および/または、α−FeSiである。これらの材料を使用すれば、後述するステップにより、本発明の熱電材料を製造できる。SiとFeとの混合物とは、例示的には、Siのバルク体とFeのバルク体との混合物が挙げられる。
ここで、SiおよびFeを含有する材料とFePとは、好ましくは、FeSi2−x(0.005<x≦0.04)を満たすように調製される。これにより、Pを0.1at%より多く0.3at%以下の範囲で含有したβ−FeSi相を90体積%より多く含有する熱電材料を製造できる。
より好ましくは、SiおよびFeを含有する材料とFePとは、FeSi2−x(0.0075≦x≦0.025)を満たすように調製される。これにより、Pを0.15at%以上0.25at%以下の範囲で含有したβ−FeSi相を90体積%より多く含有する熱電材料を製造できる。
さらに好ましくは、SiおよびFeを含有する材料とFePとは、FeSi2−x(0.01≦x≦0.02)を満たすように調製される。これにより、Pを0.15at%以上0.25at%以下の範囲で含有したβ−FeSi相を95体積%以上99体積%以下含有し、ε−FeSi相を1体積%以上5体積%以下含有する熱電材料を製造できる。
SiおよびFeを含有する材料とFePとに加えて、M(Mは、Co、TiおよびNiからなる群から選択される元素である)を含有する材料をさらに溶解し、固化体を得てもよい。Pに加えてMをドープすることにより、熱電性能を向上させることができる。
Mを含有する材料は、具体的には、Co金属、Ti金属、Ni金属、Coのケイ化物(CoSi)、Tiのケイ化物(TiSi)、Niのケイ化物(NiSi)、Coの鉄合金(CoFe)、Tiの鉄合金(TiFe)、Niの鉄合金(NiFe)、あるいは、これらの混合物等である。
ここで、Mを含有する材料をさらに溶解させる場合、SiおよびFeを含有する材料とFePとMを含有する材料とは、Fe1−ySi2−x(0.005<x≦0.04、0<y<0.1、MはCo、TiおよびNiからなる群から選択される元素である)を満たすように調製される。これにより、Pを0.1at%より多く0.3at%以下、Mを0.005at%以上1at%以下の範囲で含有するβ−FeSi相を主成分とする熱電材料が得られる。
より好ましくは、SiおよびFeを含有する材料とFePとMを含有する材料とは、Fe1−ySi2−x(0.0075≦x≦0.025、0.0075≦y≦0.07、MはCo、TiおよびNiからなる群から選択される元素である)を満たすように調製される。これにより、Pを0.1at%より多く0.3at%以下、Mを0.1at%以上0.8at%以下の範囲で含有するβ−FeSi相を主成分とする熱電材料が得られる。
ここで、原料として用いるSiおよびFeを含有する材料とFePとMを含有する材料との形態は特に問わないが、取扱いの簡便さ、溶解後の均一混合の容易さの観点から、ドープ材であるFePやMを含有する材料は、粉末あるいは粒が好ましい。また、SiおよびFeを含有する材料とFePとMを含有する材料との純度は、いずれも、99.9%以上が好ましい。これにより、最終的に得られる熱電材料中の不純物あるいは原料の未反応による第二相を低減できる。特に、SiおよびFeを含有する材料としてSi、Fe、および/または、α−FeSiを用いる場合には、99.99%以上の純度が好ましい。これにより不純物あるいは第二相をさらに低減できる。
さらに、原料として用いるSiおよびFeを含有する材料とFePと(さらには、Mを含有する材料と)に加えて、Cuをさらに、混合、溶解し、固化体を得てもよい。Cuは、後述する熱処理ステップにおいて、β−FeSi相の生成(β化とも呼ぶ)を促進し、熱処理時間を短縮できるので好ましい。この場合も、Cuの形態は特に問わないが、粉末が好ましい。また、原料中へのCuの添加割合は、0at%より多く0.2at%以下の範囲が好ましい。添加割合が0.2at%を超えると、Cuがβ−FeSi相やε−FeSi相へ固溶し、熱電特性を低下させる場合がある。
ステップS110において、溶解は原料が溶解する限り手段は特に問わないが、具体的には、高周波溶解またはアーク溶解を用いることが有利である。溶解の温度は、鉄の融点(1811K)以上であればよいが、高周波溶解およびアーク溶解を用いることにより、確実に原料を溶解できる。
例示的な溶解の条件は以下である。
温度:1811K以上
時間:5分以上30分以下
不活性雰囲気:窒素あるいはAr(アルゴン)、He(ヘリウム)等の希ガス
温度の上限は特に設定しないが、高周波溶解またはアーク溶解を用いる場合には、装置の制限上、1923K以下となる。
溶解した原料は冷却して固化体とされる。例えば、溶解した原料を鋳込んで急冷させることが好ましい。
ステップS120:ステップS110で得られた固化体を粉砕する。固化体は、粒子径(d50)が50μm以下となる粒子となるまで粉砕される。これにより、後述する焼結を促進できる。好ましくは、固化体は、粒子径が40μm以下となる粒子となるまで粉砕される。これにより、焼結および熱処理を促進し、処理時間を短縮できる。粉砕は、ボールミル、自動乳鉢、振動ミル等の公知の方法によって行われる。
ステップS130:ステップS120で得られた固化体の粒子を焼結する。このような焼結により、粒成長が進み、緻密な焼結体となる。例示的な焼結の条件は以下である。
温度:1260K以上1485K以下、好ましくは、1323K以上1460K以下
時間:5分以上60分以下
不活性雰囲気:窒素あるいはAr(アルゴン)、He(ヘリウム)等の希ガス(好ましくは、Ar)
加圧力:40MPa以上75MPa以下
このような焼結は、ホットプレス(HP)焼結、放電プラズマ焼結(SPS)によって行われる。
ステップS140:ステップS130で得られた焼結体を熱処理する。ステップS130の焼結温度よりも低い温度での熱処理によって、焼結体中でβ−FeSi相の生成を促進し、ε−FeSi相の生成を抑制する。
例示的な熱処理の条件を以下である。
温度:1023K以上1228K以下、好ましくは、1076K以上1173K以下
時間:10分以上200時間以下
不活性雰囲気:窒素あるいはAr(アルゴン)、He(ヘリウム)等の希ガス(好ましくは、Ar)
ここで、ステップS110においてCuを用いる場合には、熱処理時間は、好ましくは、10分以上20時間以下、より好ましくは10分以上10時間以下である。Cuを用いない場合には、100時間以上200時間以下の時間熱処理すればよい。
なお、ステップS130に続いて、室温以上1223K以下の温度に焼結体を冷却し、次いで熱処理することが好ましい。これにより、ステップS140におけるβ相の析出を促進できる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明の熱電材料を用いた発電装置について概略を説明する。
図2は、本発明による発電装置を示す模式図である。
本発明による発電装置200は、一対のn型熱電材料210およびp型熱電材料220、ならびに、これらのそれぞれの端部に電極230、240を含む。電極230、240により、n型熱電材料210およびp型熱電材料220は、電気的に直列に接続される。
ここで、n型熱電材料210は、実施の形態1で説明した本発明の熱電材料である。p型熱電材料220は、公知のp型熱電材料であり得るが、例示的には、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)およびCr(クロム)からなる群から選択される金属を含有したβ−FeSi相を含む材料であってもよい。電極230、240は、通常の電極材料であり得るが、例示的には、Al、Ni等である。
一対のn型熱電材料210およびp型熱電材料220、ならびに、これらのそれぞれの端部に形成された電極230、240は、発電モジュール250とも呼ばれる。発電装置200は、少なくとも1つの発電モジュール250を含めばよいが、大きな電圧を得るために、複数の発電モジュール250を備えてもよい。図2では、例示のため、発電装置200が3つの発電モジュール250を含むが、これに限らない。
発電装置200では、発電モジュール250の対向する電極230、240の間に温度差が生じると、ゼーベック効果により起電力が発生し、電力が得られる。本発明では、n型熱電材料210として実施の形態1で説明した本発明の熱電材料を用いるので、広い温度域において発電量の大きな発電装置200を実現できる。
そこで以下に実施例を説明する。もちろん、本発明は以下の例によって限定されることはない。
[実施例1]
実施例1では、SiおよびFeを含有する材料としてSiとFeとの混合物と、FePとを原料に用いて、FeSi2−x(x=0.01)を満たすように調製し、熱電材料を製造し、その熱電特性を評価した。
詳細には、Si(バルク体、純度99.9999999%以上)、Fe(バルク体、純度99.99%以上)およびFeP(粉末、純度99.9%以上)を、FeSi2−x(x=0.01)を満たすように調製した。なお、β化の促進のため、Cuを0.006mol%用いた。表1に各原料のモル比を示す。
調製された原料を高周波溶解により溶解し、固化体を得た(図1のステップS110)。原料を鉄の融点まで昇温・加熱し、15分間保持し、溶解した。溶解した原料を鋳込んで急冷させ、固化体を得た。
固化体を、自動乳鉢を用いて粉砕した(図1のステップS120)。粉砕後の固化体の粒子をメッシュ(目開き38μm)により篩分けし、メッシュを通過した粒径38μm以下の粒子のみ取り出した。
固化体の粒子をホットプレス(HP)により焼結し(図1のステップS130)、得られた焼結体を773Kまで冷却した後、熱処理した(図1のステップS140)。
図3は、実施例1による焼結および熱処理の温度プロファイルを示す図である。
焼結処理は、Ar雰囲気中、50MPa、1423Kで30分間の条件で行った。熱処理は、Ar雰囲気中、1123Kで10分および10時間の2つの条件で行った。
このようにして得られた焼結体は、約24mm×12mm×5mmのサイズを有するペレット状であった。焼結体についてエネルギー分散型X線マイクロ分析装置(EDS)付走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6500F、日本電子株式会社)により組織観察した。結果を図4に示す。焼結体の組成をX線回折(RINT2500、株式会社リガク)、電子線マイクロアナライザ(EPMA、JXA−8900F,日本電子株式会社)を用いて分析した。結果を図5〜図7、表2および表3に示す。
焼結体から約4mm×4mm×20mmのサイズを有する小片を切り出し、これを熱電特性測定用の試料とした。試料の電気伝導度およびゼーベック係数を、熱電特性評価装置(ZEM−3、アドバンス理工株式会社)を用いて測定した。雰囲気ガスはHeであった。結果を図8および図9に示す。次いで、得られた電気伝導度およびゼーベック係数からパワーファクターを算出した。結果を図10に示す。
[実施例2]
実施例2では、原料にSiとFeとFePとを用いて、FeSi2−x(x=0.02)を満たすように調製し、熱電材料を製造し、その熱電特性を評価した。xの値を変えた以外、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
実施例1と同様に、得られた焼結体についてSEM観察し、X線回折、EPMAを用いて組成分析を行った。結果を図4〜図7、表2および表3に示す。実施例1と同様に、得られた焼結体の熱電特性(電気伝導度、ゼーベック係数およびパワーファクター)を評価した。結果を図8〜図10に示す。
[比較例3]
比較例3では、原料にSiとFeとFePとを用いて、FeSi2−x(x=0.005)を満たすように調製し、熱電材料を製造し、その熱電特性を評価した。xの値を変えた以外、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
実施例1と同様に、得られた焼結体についてSEM観察し、X線回折、EPMAを用いて組成分析を行った。結果を図5〜図7、表2および表3に示す。実施例1と同様に、得られた焼結体の熱電特性(電気伝導度、ゼーベック係数およびパワーファクター)を評価した。結果を図8〜図10に示す。
[実施例4]
実施例4では、原料にSiとFeとFePとを用いて、FeSi2−x(x=0.04)を満たすように調製し、熱電材料を製造し、その熱電特性を評価した。xの値を変えた以外、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
実施例1と同様に、得られた焼結体についてSEM観察し、X線回折、EPMAを用いて組成分析を行った。結果を図4〜図7、表2および表3に示す。実施例1と同様に、得られた焼結体の熱電特性(電気伝導度、ゼーベック係数およびパワーファクター)を評価した。結果を図8〜図10に示す。
[比較例5]
比較例5では、原料にSiとFeとFePとを用いて、FeSi2−x(x=0.06)を満たすように調製し、熱電材料を製造し、その熱電特性を評価した。xの値を変えた以外、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
実施例1と同様に、得られた焼結体についてSEM観察し、X線回折、EPMAを用いて組成分析を行った。結果を図4〜図7、表2および表3に示す。実施例1と同様に、得られた焼結体の熱電特性(電気伝導度、ゼーベック係数およびパワーファクター)を評価した。結果を図8〜図10に示す。
[比較例6]
比較例6では、原料にFePを用いない以外は、実施例1と同様であった。実施例1と同様に、得られた焼結体についてSEM観察し、X線回折、EPMAを用いて組成分析を行った。結果を図5〜図7、表2および表3に示す。実施例1と同様に、得られた焼結体の熱電特性(電気伝導度、ゼーベック係数およびパワーファクター)を評価した。結果を図8〜図10に示す。
[比較例7]
比較例7として、非特許文献2で開示されるPドープしたβ−FeSi試料のX線回折パターンおよび熱電特性を参照した。
以上の結果をまとめて示す。表1に簡単のため、実施例/比較例1〜6の熱電材料の原料のモル比を示す。
図4は、実施例/比較例1、2、4および5の焼結体のSEM像を示す図である。
図4(A)〜(D)は、それぞれ、実施例1、実施例2、実施例4および比較例5の焼結体(熱処理時間:10時間)のSEM像である。設計時のFeSi2−xにおけるxの値が大きくなる、すなわち、Pの添加量が多くなるにつれて、空孔(図中の黒く示される部分)などが増える傾向が見られたが、いずれも緻密な焼結体であることを確認した。なお、図示しないが、熱処理時間の異なる焼結体ならびに比較例3の焼結体も同様に緻密な焼結体であることを確認した。
図5は、実施例/比較例1、2および4〜6の焼結体のXRDパターンを示す図である。
図5は、いずれも、10時間熱処理した焼結体のXRDパターンを示す。いずれのXRDパターンも、その主要な回折ピーク(図中黒丸で示すピーク)は、β−FeSi相を示す回折ピーク(JCPDS番号71−0642)に一致した。このことから、焼結体の主相は、β−FeSi相であることを確認した。β−FeSi相以外を示す回折ピーク(図中白丸で示すピーク)が、2θ(°)=28、35および45に見られた。これらのピークは、第二相のε−FeSi相であることを確認した。なお、β−FeSi相およびε−FeSi相以外を示す回折ピークは見られなかった。このことから、焼結体中に未反応の原料や固溶していないPは実質的にないことを確認した。なお、図示しないが、比較例3の焼結体ならびに熱処理時間の異なる焼結体も同様にβ−FeSi相を主相としており、ε−FeSi相以外の第二相は見られないことを確認した。
図6は、実施例/比較例1、2および4〜6の焼結体におけるβ−FeSi相の含有量を示す図である。
図6におけるβ−FeSi相の含有量は、図5のXRDパターンにおいて、β−FeSi相の最大強度のピークと、ε−FeSi相の最大強度のピークとの比から算出した。図6には、比較例7として、非特許文献2に記載の図1から同様に算出したβ−FeSi相の含有量をあわせて示す。図6の横軸は、設計時のFeSi2−xにおけるxの値である。算出された値は±3%の誤差を含むが、傾向を理解するには十分である。
図6によれば、本発明の原料にFePを用いた製造方法は、原料にP粉末を用いた比較例7の製造方法に比べて、β−FeSi相の生成を効率的に促進し、ε−FeSi相の生成を抑制していることが分かる。このことから、Pをドープしたβ−FeSi相を主相する焼結体を得るには、原料にFePを用いることが好ましいことが示された。
表2は、実施例/比較例1〜5の焼結体(熱処理時間:10時間)のEPMAによるβ−FeSi相およびε−FeSi相の含有量を示す。表3は、実施例/比較例1〜5の焼結体(熱処理時間:10時間)のEPMAによるβ−FeSi相およびε−FeSi相中のPの含有量を示す。表には示さないが、熱処理時間が10分の焼結体についても、実質的に同じ結果が得られたことを確認した。
図7は、実施例/比較例1〜6の焼結体のEPMAによるβ−FeSi相およびε−FeSi相中のPの含有量の変化を示す図である。
表2、表3および図7を参照すれば、FeSi2−xにおいて、xを0.005<x≦0.04を満たすように原料を調製すれば、β−FeSi相を90体積%より多く含み、かつ、β−FeSi相が0.1at%より多く0.3at%以下の範囲でPを含有した焼結体が得られることが分かった。これらの傾向に基づけば、実施上の誤差も考慮すれば、FeSi2−xにおいて、xを0.0075≦x≦0.025を満たすように原料を調製すれば、0.15at%以上0.25at%以下の範囲でPを含有したβ−FeSi相を95体積%以上99体積%以下含み、かつ、ε−FeSi相を1体積%以上5体積%以下含む焼結体が得られることが示唆される。
図8は、実施例/比較例1〜7の焼結体の電気伝導度の温度依存性を示す図である。
図9は、実施例/比較例1〜7の焼結体のゼーベック係数の温度依存性を示す図である。
図8および図9は、いずれも、10時間熱処理した焼結体の電気伝導度およびゼーベック係数の温度依存性を示す。図8および図9中の比較例7の値は、非特許文献2の図3および図4に基づく。図8によれば、いずれの焼結体も温度の上昇に伴い電気伝導度が上昇し、半導体的なふるまいをした。図9によれば、Pを添加した焼結体は、いずれも1023K以下の温度範囲において負のゼーベック係数を有しており、n型熱電材料であることが分かった。
注目すべきは、比較例7の焼結体の電気伝導度およびゼーベック係数は、温度の上昇に伴い漸次増加する傾向を示したが、FePを用いた製造方法によって製造された焼結体(実施例/比較例1〜5)のそれらは、いずれも、少なくとも400K以上700K以下の比較的低い温度範囲において一定した値を維持し、800Kを超えると増加した。このことから、原料にFePを用いることにより、Pが効果的にSiサイトにドープされ、バンド伝導が有利に働くことが示唆される。なお、図示しないが、熱処理時間が10分の焼結体についても、実質的に同じ結果が得られたことを確認した。
図10は、実施例/比較例1〜7の焼結体のパワーファクターの温度依存性を示す図である。
パワーファクター(PF)は、電気伝導度(σ)とゼーベック係数(α)とを用いて以下の式により算出される。
PF=α×σ
図10は、図8および図9で得られた電気伝導度およびゼーベック係数の値を用いて、上記式から算出したパワーファクターを温度に対してプロットした。
図10によれば、比較例7の焼結体のパワーファクターは、600Kにピークを有しており、せいぜい3×10−4W/mK程度であったが、FePを用いた製造方法によって製造された焼結体(実施例/比較例1〜5)のそれは、ピークが全体的に600Kよりも低温側にシフトしており、プラトー領域が増大するだけでなく、4×10−4W/mKを超えるパワーファクターであった。このことからも、原料にFePを用いることにより、Pが効果的にSiサイトにドープされ、バンド伝導に有効に寄与していることが示唆される。
詳細には、実施例1、2および4の焼結体は、400K以上700K以下の比較的低い広い温度範囲において、4.5×10−4W/mK以上のパワーファクターを達成する熱電材料であった。このことから、β−FeSi相を主相として90体積%より多く、Pを0.1at%より多く0.3at%以下の範囲で含有する熱電材料が好ましいことが示された。
驚くべきことに、実施例1および2の焼結体は、400K以上700K以下の比較的低い広い温度範囲において、5×10−4W/mK以上の高いパワーファクターを達成する熱電材料であった。このことから、β−FeSi相を主相として95体積%以上99体積%以下の範囲で含み、Pを0.15at%以上0.25at%以下の範囲で含有する熱電材料がさらに好ましいことが示された。
[実施例8]
実施例8では、原料にSiとFeとFePとに加えてMとしてCoを用いて、Fe1−ySi2−x(x=0.01、y=0.01)を満たすように調製(表4)し、熱電材料を製造し、その熱電特性を評価した。Mを用い、熱処理時間を10時間とした以外は、実施例1と同様のため、説明を省略する。
得られた焼結体についてSEM観察し、X線回折、および、エネルギー分散型X線分析(EDS)装置を用いた組成分析を行い、熱電特性(電気伝導度、ゼーベック係数およびパワーファクター)を評価した。結果を図11〜図13および表5に示す。
[比較例9]
比較例9では、FePを用いない以外は、実施例8と同様であった。得られた焼結体についてSEM観察し、X線回折、EPMAおよびEDSを用いて組成分析を行い、熱電特性(電気伝導度、ゼーベック係数およびパワーファクター)を評価した。結果を図11〜図13および表5に示す。
以上の結果をまとめて示す。表4に簡単のため、実施例8および比較例9の熱電材料の原料のモル比を示す。
図示しないが、SEMおよびXRDパターンから、実施例8および比較例9の焼結体も図4と同様の緻密な焼結体であり、β−FeSi相を主相としており、ε−FeSi相以外の第二相は見られないことを確認した。
表5は、実施例8および比較例9の焼結体のEDSによるβ−FeSi相およびε−FeSi相中のPおよびCoの含有量を示す。図示しないが、実施例8の焼結体は、β−FeSi相を90体積%より多く含んでいることを確認した。
表5を参照すれば、Fe1−ySi2−xにおいて、xを0.005<x≦0.04およびyを0<y<0.1を満たすように原料を調製すれば、β−FeSi相を90体積%より多く含み、かつ、β−FeSi相がPを0.1at%より多く0.3at%以下の範囲で、Mを0.005at%以上1at%以下の範囲で含有した焼結体が得られることが分かった。
図11は、実施例8および比較例9の焼結体の電気伝導度の温度依存性を示す図である。
図12は、実施例8および比較例9の焼結体のゼーベック係数の温度依存性を示す図である。
図13は、実施例8および比較例9の焼結体のパワーファクターの温度依存性を示す図である。
図11〜図13には、参考のため、実施例1の焼結体の電気伝導度、ゼーベック係数およびパワーファクターの温度依存性も併せて示す。図11および図12によれば、実施例8および比較例9の焼結体は、いずれも、n型熱電材料であることを示す。図11によれば、実施例8の焼結体の電気伝導度は、全温度範囲において実施例1および比較例9のそれよりも大きくなった。図12によれば、実施例8の焼結体のゼーベック係数は、実施例1および比較例9の焼結体のそれよりも、300K以上800K以下の範囲の広い温度範囲において、一定した値を維持した。
図13によれば、実施例8の焼結体のパワーファクターのピーク(約550K)は、比較例9のそれ(約650K)よりも低温側にシフトしており、広いプラトー領域が得られることが分かった。さらには、実施例8の焼結体は、400K以上700K以下の範囲の温度範囲で6×10−4W/mK以上のパワーファクターを達成した。この値は、Pのみが添加された実施例1の焼結体あるいはCoのみが添加された比較例9の焼結体のパワーファクターを超える値であった。このことから、原料にFePおよびn型熱電材料のドーパントであるMを用いることにより、Pが効果的にSiサイトにドープされるだけでなく、MがFe(II)サイトにドープされ、バンド伝導およびスモールポーラロンが有利に働き、熱電性能を向上させることが示唆される。
本発明の熱電材料は、比較的低い温度域を含む広い温度範囲において高いパワーファクターを達成できるので、各種電気機器に用いられる発電装置に利用される。
200 発電装置
210 n型熱電材料
220 p型熱電材料
230、240 電極
250 発電モジュール

Claims (20)

  1. β−FeSi相を含む熱電材料であって、
    前記β−FeSi相は、前記熱電材料中に90体積%より多く含有されており、
    前記β−FeSi相は、少なくともP(リン)を0.1at%より多く0.3at%以下の範囲で含有する、熱電材料。
  2. 前記β−FeSi相は、少なくともPを0.15at%以上0.25at%以下の範囲で含有する、請求項1に記載の熱電材料。
  3. 前記β−FeSi相は、前記熱電材料中に95体積%以上99体積%以下の範囲で含有される、請求項1または2に記載の熱電材料。
  4. ε−FeSi相をさらに含み、
    前記ε−FeSi相は、前記熱電材料中に1体積%以上5体積%以下の範囲で含有されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電材料。
  5. 前記β−FeSi相は、M(Mは、Co、TiおよびNiからなる群から選択される元素である)をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱電材料。
  6. 前記β−FeSi相は、前記Mを0.005at%以上1at%以下の範囲で含有する、請求項5に記載の熱電材料。
  7. 400K以上700K以下の温度範囲におけるパワーファクターは、5×10−4W/mK以上である、請求項1に記載の熱電材料。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱電材料を製造する方法であって、
    少なくとも、SiおよびFeを含有する材料とFePとを溶解し、固化体を得るステップと、
    前記固化体を粉砕するステップと、
    前記粉砕するステップで得られた固化体の粒子を焼結するステップと、
    前記焼結するステップで得られた焼結体を熱処理するステップと
    を含む、方法。
  9. 前記固化体を得るステップにおいて、前記SiおよびFeを含有する材料と前記FePとは、FeSi2−x(0.005<x≦0.04)を満
    たすように調製される、請求項8に記載の方法。
  10. 前記固化体を得るステップにおいて、前記SiおよびFeを含有する材料と前記FePとは、FeSi2−x(0.0075≦x≦0.025)を満たすように調製される、請求項9に記載の方法。
  11. 前記固化体を得るステップにおいて、前記SiおよびFeを含有する材料と前記FePとは、FeSi2−x(0.01≦x≦0.02)を満たすように調製される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記SiおよびFeを含有する材料は、SiとFeとの混合物および/またはα−FeSiである、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記固化体を得るステップにおいて、前記SiおよびFeを含有する材料と前記FePとに加えて、M(Mは、Co、TiおよびNiからなる群から選択される元素である)を含有する材料を溶解する、請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記固化体を得るステップにおいて、前記SiおよびFeを含有する材料と前記FePと前記Mを含有する材料とは、Fe1−ySi2−x(0.005<x≦0.04、0<y<0.1、MはCo、TiおよびNiからなる群から選択される元素である)を満たすように調製される、請求項13に記載の方法。
  15. 前記固化体を得るステップにおいて、さらにCuを混合、溶解する、請求項8〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記焼結するステップは、ホットプレス(HP)または放電プラズマ焼結(SPS)を用いる、請求項8〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 前記焼結するステップは、前記固化体の粒子を、1260K以上1485K以下の温度範囲で、5分以上60分以下の間、不活性ガス雰囲気中、焼結する、請求項8〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記熱処理するステップは、前記焼結体を、1023K以上1228K以下の温度範囲で、10分以上200時間の間、不活性ガス雰囲気中、熱処理する、請求項8〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. n型熱電材料とp型熱電材料とを備えた発電装置であって、
    前記n型熱電材料は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱電材料である、発電装置。
  20. 前記p型熱電材料は、Mn、AlおよびCrからなる群から選択される金属を含有するβ−FeSi相を含む、請求項19に記載の発電装置。
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