JP2018000372A - バルーンカテーテル - Google Patents

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Takahito Ishikawa
孝仁 石川
兼政 賢一
Kenichi Kanemasa
賢一 兼政
藤田 康弘
Yasuhiro Fujita
康弘 藤田
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Abstract

【課題】ガイドワイヤー式の手技を行う場合に、ガイドワイヤーの先端が狭窄部等に衝突して大きな負荷を与えることを防止しうるとともにバルーンを良好に拡張することが可能なバルーンカテーテルを提供する。
【解決手段】バルーン80は管状本体10の遠位部DEに設けられており内側チューブ11と外側チューブ12との間に形成された空隙部と連通している。注液ポート78は管状本体10の近位側に設けられており空隙部を通じてバルーン80の内部に流体Fを注入する。主管腔には造影剤またはガイドワイヤーGWが挿通され、副管腔には操作線が摺動可能に挿通されている。操作部本体50には操作線の基端部が接続されており、操作部本体50を操作することにより管状本体10の遠位部DEにおける少なくともバルーン80よりも遠位側が屈曲する。
【選択図】図1

Description

本発明は、バルーンカテーテルに関する。
バルーンカテーテルは、生体管腔内に生じた狭窄部や閉塞部、癒着部(以下、「狭窄部等」という場合がある。)などに挿入して用いられる。バルーンカテーテルは、カテーテルシャフトやシースなどと呼ばれる長尺で可撓性の管状本体の遠位部に、拡張可能なバルーンが装着されて構成されている。管状本体のルーメンを通じてバルーンの内部に液体などの流体を注入することで、バルーンを生体管腔内で膨張させることができる。このため、収縮した初期状態のバルーンを狭窄部等に留置した状態で膨張させることで、狭窄部等を内側から押し広げて拡張することができる。
バルーンカテーテルが用いられる生体管腔は、腸管などの消化管のほか、血管や気管、輸卵管など多岐に亘る。
特許文献1にはバルーンカテーテルの一例が記載されている。このバルーンカテーテルは、ポリエステルなどで作成された内側層とポリアミドで作成された外側層とでバルーンが二層化されたものである。二層化されたバルーンはカテーテルシャフトの遠位部に装着され、収縮状態で生体管腔に挿入される。また、特許文献1は、バルーンの表面にステントを配置することを開示している。生体管腔の狭窄部等でバルーンを膨張させることで、バルーンに伴ってステントが拡張されて狭窄部等に内張りされる。このようにバルーンカテーテルはステントデリバリーカテーテルとしても用いられている。
特表2009−519778号公報
バルーンカテーテルは、バルーンを備えない一般的なカテーテルと比較して、バルーンの嵩張りにより生体管腔に挿入する作業が難しい。このため、バルーンカテーテルはガイドワイヤーに沿わせて生体管腔に挿入する。
ガイドワイヤーを用いた手技は、オーバーザワイヤー式とモノレール式とに大別される。オーバーザワイヤー式は、カテーテルシャフトの基端から先端までの全長に亘ってガイドワイヤーを挿通させる手技であり、モノレール式はカテーテルシャフトの遠位部に対してのみガイドワイヤーを挿通させる手技である。以下、ガイドワイヤーを用いてオーバーザワイヤー式またはモノレール式でバルーンカテーテルを生体管腔に挿入する手技をガイドワイヤー式と総称する。
ガイドワイヤー式の手技では、まずガイドワイヤーを生体管腔に先行して挿入して所定の箇所に留置する。その次にバルーンカテーテルの全長または遠位部に形成されたルーメンにガイドワイヤーを基端側から挿入することによりバルーンカテーテルをガイドワイヤーに被せながら生体管腔に挿入していく。バルーンカテーテルが十分に深く挿入されたところで、必要によりガイドワイヤーをいったん抜去して先端の屈曲角度を調整したうえで改めてバルーンカテーテルのルーメンを通じて生体管腔に更に深く挿入していく。このようにガイドワイヤーとバルーンカテーテルを少しずつ交互に挿入していくことで、生体管腔の分岐を所望に選択して被験者の狭窄部等までバルーンを到達させることができる。
狭窄部等の形成位置にバルーンを位置合わせするためには、狭窄部等よりもガイドワイヤーを更に先行させ、このガイドワイヤーに沿ってバルーンを押し込んでの深さ位置を微調整する。このとき、狭窄部等は生体管腔の管壁から内向きに立ち上がるように突出形成されているため、管壁に沿って前進するガイドワイヤーの先端が狭窄部等の立ち上がり部分に衝突して大きな負荷を与えるおそれがある。
また、血管などの生体管腔には大きな曲率で屈曲している部位が存在し、かかる屈曲部位はガイドワイヤーの先端の屈曲角度の調整のみでは通過することが困難な場合がある。すなわち、狭窄部等の発生位置によっては、従来のバルーンカテーテルではバルーンを到達および留置させることが困難であった。さらに、大きな曲率で屈曲している屈曲部位に対して、先端を大きく屈曲させたガイドワイヤーを仮に前進させることができたとしても、このように屈曲したガイドワイヤーに沿わせて生体管腔内で後続のバルーンを挿入することは困難である。なぜならば、バルーンはガイドワイヤーよりも太径で曲げ剛性が高いため、大きく屈曲したガイドワイヤーに沿ってバルーンを押し込もうとすると、ガイドワイヤーに追随してバルーンが屈曲するのではなく、ガイドワイヤーの屈曲を減少させてバルーンは直進しようとするためである。
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、ガイドワイヤー式の手技を行う場合に、ガイドワイヤーの先端が狭窄部等に衝突して大きな負荷を与えることを防止しうるとともにバルーンを良好に拡張することが可能なバルーンカテーテルを提供するものである。
本発明によれば、長尺で可撓性を有し内部に少なくとも第一および第二のルーメンが通孔形成された内側チューブ、および前記内側チューブの周囲に設けられた外側チューブを備える管状本体と、前記管状本体の遠位部に設けられ、前記内側チューブと前記外側チューブとの間に形成された空隙部と連通している拡張可能なバルーンと、前記管状本体の近位側に設けられ、前記空隙部を通じて前記バルーンの内部に流体を注入する注液ポートと、前記管状本体の近位側に設けられた操作部本体と、を備え、前記第一のルーメンには、造影剤またはガイドワイヤーが挿通され、前記第二のルーメンには、先端部が前記管状本体の遠位部に接続された操作線が摺動可能に挿通されており、前記操作部本体には前記操作線の基端部が接続されており、前記操作部本体を操作することにより前記管状本体の前記遠位部における少なくとも前記バルーンよりも遠位側が屈曲することを特徴とするバルーンカテーテルが提供される。
上記発明によれば、内側チューブと外側チューブとの間に形成された空隙部を通じてバルーンに流体を注入することが可能なバルーンカテーテルにおける管状本体の遠位部を、第二のルーメンに挿通された操作線を牽引操作することによって屈曲させることができる。このため、第一のルーメンにガイドワイヤーを挿通して手技を行う場合には、狭窄部等の手前でカテーテルの屈曲操作を行うことで、ガイドワイヤーの先端の進行方向を所望の方向に調整することができる。これにより、狭窄部等の中心の空洞部分に指向させてガイドワイヤーを前進させることができる。また、本発明のバルーンカテーテルは遠位部を屈曲操作することができるため、ガイドワイヤーを用いずに生体管腔の分岐を選択して前進させることもできる。このため、第一のルーメンにガイドワイヤーを挿通させることなく、すなわち非ガイドワイヤー式の手技でバルーンカテーテルを狭窄部等に到達および留置させることができる。この場合、第一のルーメンには造影剤を注入することができ、すなわちX線などの放射線撮影下でバルーンカテーテルを挿入していく場合に、バルーンの位置や屈曲形状などを確認しながら生体管腔内を前進させることができる。また、上記発明のように内側チューブと外側チューブとの間に形成された空隙部を通じてバルーンに流体を注入する態様とすることで、空隙部を内側チューブの肉厚内に形成する必要がなく、また空隙部の流路断面積を大きく確保することが可能である。
本発明のバルーンカテーテルによれば、ガイドワイヤー式の手技を行う場合に、ガイドワイヤーの先端が狭窄部等に衝突して管壁に大きな負荷を与えることを防止することができる。また、本発明のバルーンカテーテルを非ガイドワイヤー式の手技に用いる場合には、造影剤を吐出させてバルーンの位置や屈曲形状などを確認しながら生体管腔の分岐を選択して前進させることができる。そして、本発明のバルーンカテーテルによれば、製造安定性に優れるとともに、空隙部を通じてバルーンに安定して流体を注入してバルーンを拡張することが可能である。
図1(a)はバルーンカテーテルを示す平面図である。図1(b)はバルーンを屈曲操作する様子を示す平面図である。 図2は図1(a)のII−II線断面図である。 図3は図2のIII−III線断面図である。 図4はコネクタ部の縦断面図である。 図5は操作部本体の内部構造を示す平面図である。 図6(a)はバルーンカテーテルにおけるバルーンを膨張させた状態を示す平面図である。図6(b)は膨張したバルーンを屈曲操作する様子を示す平面図である。図6(c)はバルーンを収縮させた状態を示す平面図である。 図7(a)は狭窄部が形成された生体管腔を示す模式図である。図7(b)は狭窄部の手前側の位置でバルーンカテーテルを屈曲させる状態を示す模式図である。図7(c)はバルーンを膨張させて狭窄部が拡張された状態を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
はじめに、本実施形態のバルーンカテーテル100の概要を説明する。図1(a)は本実施形態のバルーンカテーテル100の全体構成を示す平面図であり、図1(b)は操作部本体50の屈曲操作部60を操作してバルーン80を屈曲操作する様子を示す平面図である。図2は図1(a)のII−II線断面図である。図3はバルーンカテーテル100の遠位部の縦断面図であり、図2のIII−III線断面図である。図4はコネクタ部72の縦断面図である。図5は操作部本体50の内部構造を示す平面図である。なお、図示する各要素における縦横の寸法比は便宜的に設定したものであり、バルーンカテーテル100の実施製品における実際の寸法とは必ずしも整合しない。
本実施形態のバルーンカテーテル100は、管状本体10、拡張可能なバルーン80、注液ポート78および操作部本体50を備えている。
管状本体10は、内側チューブ11と外側チューブ12を備えている。内側チューブ11は、長尺で可撓性を有し、内部に少なくとも第一のルーメン(主管腔)20および第二のルーメン(副管腔)32が通孔形成されている。外側チューブ12は、この内側チューブ11の周囲に設けられている。バルーン80は、管状本体10の遠位部DEに設けられており、内側チューブ11と外側チューブ12との間に形成された空隙部44と連通している。注液ポート78は管状本体10の近位側に設けられており、空隙部44を通じてバルーン80の内部に流体Fを注入する手段である。操作部本体50は、管状本体10の近位側に設けられている。第一のルーメン(主管腔)20には、造影剤またはガイドワイヤーGWが挿通される。第二のルーメン(副管腔)32には、先端部が管状本体10の遠位部DEに接続された操作線30a・30bが摺動可能に挿通されている。操作部本体50には操作線30a・30bの基端部が接続されている。操作部本体50を操作することにより、管状本体10の遠位部DEにおける少なくともバルーン80よりも遠位側が屈曲する。
次に、本実施形態について詳細に説明する。本実施形態のバルーンカテーテル100は、管状本体10を血管内に挿通させて用いられる血管内カテーテルであり、操作部本体50の操作により管状本体10の遠位部DEが屈曲して所望の方向に指向させることが可能な偏向カテーテルである。
操作部本体50は、管状本体10の近位側に設けられて管状本体10の前進、抜去およびトルク回転操作、ならびに屈曲操作部60の回動による管状本体10の屈曲操作などを行う部位の総称であり、複数の部品で構成されている。
本実施形態の操作部本体50は、筐体70および屈曲操作部60に加えて、注液ポート78およびハブコネクタ52を備えている。本実施形態のハブコネクタ52は筐体70の後端部に配置され、管状本体10の基端部PEに接続されて互いに連通している。ハブコネクタ52には、図示のようにガイドワイヤーGWを挿通してもよく、またはシリンジ(図示せず)を装着して造影剤や薬液などの液体を注入してもよい。ハブコネクタ52は第一のルーメン(主管腔)20と連通しており、ガイドワイヤーGWや造影剤等を管状本体10の遠位端から生体管腔110(図6(a)〜図6(c)参照)の内部へ供給することができる。
筐体70は、使用者が手で把持するハウジングである。屈曲操作部60は筐体70に対して回動可能に軸固定されている。なお、本明細書において「回動」と「回転」とは区別しない。管状本体10の基端部PEは、筐体70の内部に導入されている。
<管状本体10について>
図2および図3に示すように、管状本体10は内側チューブ11と外側チューブ12による二重管構造をなしている。そして管状本体10は合計4個のルーメンを有している。ただし、ルーメンの数量はこれに限定されるものではなく、例えば5個以上のルーメンを形成してもよく、または第二のルーメン(副管腔)32を1個とすることで合計3個のルーメンを形成してもよい。
空隙部44は内側チューブ11と外側チューブ12との間に形成された間隙であり、バルーン80の内部に流体Fを注入するための注液ルーメンとして用いられる。以下、注液ルーメン44と呼称する場合がある。空隙部(注液ルーメン)44は、後述するコネクタ部72の内部で枝管76と連通している。枝管76は主管腔20から分離して側方に引き出され、基端が注液ポート78と連通している。空隙部(注液ルーメン)44の先端はバルーン80の内部と連通している。
本実施形態の内側チューブ11は第二のルーメン(副管腔)32を複数備えている。第二のルーメン(副管腔)32は操作線30a・30bが挿通されたルーメンである。これら複数の第二のルーメン(副管腔)32は、第一のルーメン(主管腔)20の周囲に分散配置されている。
第一のルーメン(主管腔)20は、第二のルーメン(副管腔32)よりも大きな開口径を有し、管状本体10の遠位端と操作部本体50の近位端とに両端が開口している。この第一のルーメン(主管腔)20の近位側はハブコネクタ52と連通しており、造影剤またはガイドワイヤーGWを挿入することが可能である。
内側チューブ11は、主管腔20の周囲に補強ワイヤ24を巻回してなる内側補強層26と、この内側補強層26の外側に配置され主管腔20よりも小径の副管腔32を画定する樹脂製の樹脂管28と、内側補強層26および樹脂管28を内包する樹脂製の外層38と、を備えている。
すなわち、管状本体10の内側チューブ11は積層構造を有している。主管腔20を中心に、内径側から順に内層22、第一外層34および第二外層36が積層されて内側チューブ11は構成されている。
内層22、第一外層34および第二外層36は可撓性の樹脂材料からなり、それぞれ円環状で略均一の厚みを有している。第一外層34および第二外層36を併せて外層38と呼称する場合がある。
内層22は内側チューブ11の最内層であり、その内壁面により主管腔20を画定する。主管腔20の横断面形状は特に限定されないが、本実施形態では円形である。横断面円形の主管腔20の場合、その直径は、内側チューブ11の長手方向に亘って均一でもよく、または長手方向の位置により相違してもよい。たとえば、内側チューブ11の一部または全部の長さ領域において、先端から基端に向かって主管腔20の直径が連続的に拡大するテーパー状としてもよい。
内層22の材料は、例えば、フッ素系の熱可塑性ポリマー材料を挙げることができる。このフッ素系の熱可塑性ポリマー材料としては、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)およびペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)を挙げることができる。内層22をこのようなフッ素系ポリマー材料で構成することにより、主管腔20にガイドワイヤーGWを挿通する場合に、ガイドワイヤーGWの摺動抵抗が低減される。また、主管腔20を通じて造影剤を注入する際のデリバリー性が良好となる。
外層38の内側層にあたる第一外層34の内部には、内径側から順に内側補強層26および樹脂管28が設けられている。外層38の外側層にあたる第二外層36の内部には外側補強層40が設けられている。外側補強層40は、第一外層34の外表面に接している。内側補強層26と外側補強層40は、内側チューブ11と同軸に配置されている。外側補強層40は内側補強層26および樹脂管28の周囲を取り囲むように、これらと離間して配置されている。
外層38の材料としては熱可塑性ポリマー材料を用いることができる。この熱可塑性ポリマー材料としては、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリアミドエラストマー(PAE)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)などのナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)を挙げることができる。
外層38には無機フィラーを混合してもよい。無機フィラーとしては、硫酸バリウムや次炭酸ビスマスなどの造影剤を例示することができる。外層38に造影剤を混合することで、体腔内における管状本体10のX線造影性を向上することができる。
第一外層34と第二外層36とは、同種または異種の樹脂材料で作成されている。図2では第一外層34と第二外層36との境界面を明示してあるが、本発明はこれに限られない。第一外層34と第二外層36とを同種の樹脂材料で構成した場合、両層の境界面は渾然一体に融合していてもよい。すなわち、本実施形態の外層38は、第一外層34と第二外層36とが互いに区別可能な多層で構成されていてもよく、または第一外層34と第二外層36とが一体となった単一層として構成されていてもよい。
外側チューブ12は、内側チューブ11に対する更なる外層にあたる管状部材である。内側チューブ11の外周の一部または全周には、外側チューブ12との間に空隙部44が形成されてバルーン80と連通している。このうち本実施形態では、空隙部44は、内側チューブ11の外周の全周に亘ってバルーン80と連通している。これにより、内側チューブ11の外周全面に沿って流体Fを流動させてバルーン80に注入することができるため、バルーン80を安定して、かつ迅速に拡張することができる。本実施形態においては、外側チューブ12は内側チューブ11と別部材として用意され、接着剤および任意で他の部材を介在して外側チューブ12と内側チューブ11とは間接的に固定されている。
ただし本実施形態に代えて、内側チューブ11の外周の一部領域にのみ、外側チューブ12との間に空隙部44が形成されていてもよい。この場合、外側チューブ12は内側チューブ11と部分的に融着して一体形成されていてもよい。
外側チューブ12の材料としては、内側チューブ11の外層38の材料として挙げた上記の熱可塑性ポリマー材料を用いることができる。外側チューブ12は、内側チューブ11の外層38と同じ材料で作成してもよく、または異なる材料で作成してもよい。
外側チューブ12の肉厚は、内側チューブ11の外層38の肉厚よりも小さくすることができる。これにより管状本体10の全体の径を抑制することができる。外側チューブ12の内面、すなわち内側チューブ11の外層38と外側チューブ12との間には、内側チューブ11の内層22と同様にフッ素系の熱可塑性ポリマー材料による内層(図示せず)を形成してもよい。かかる内層は、外層38とともに注液ルーメン44を画成する。かかる内層を形成することで、流体Fの流動性が良好となる。
外側チューブ12の外表面には親水層(図示せず)が形成されている。親水層はバルーンカテーテル100の最外層を構成する。親水層は、外側チューブ12の全長に形成されていてもよく、または外側チューブ12の先端側の一部長さ領域のみに形成されていてもよい。
同様に、内側チューブ11の第二外層36のうち、少なくともバルーン80が設けられる遠位側の一部長さ領域における外表面にも親水層が形成されている。上記の一部長さ領域よりも基端側の他の長さ領域における第二外層36の表面には親水層を非形成としてもよく、または第二外層36の全長に亘って表面に親水層を形成してもよい。
親水層は、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)などの無水マレイン酸系ポリマーやその共重合体、ポリビニルピロリドンなどの親水性の樹脂材料で作成することができる。
内側チューブ11の内部構造について更に詳細に説明する。内側チューブ11の壁内には、金属線をそれぞれ編組または巻回した内側補強層26および外側補強層40が埋設されている。外側補強層40は内側補強層26と同軸かつ内側補強層26の外側に配置されている。第一のルーメン(主管腔)20は、内側補強層26の内側に形成されており、第二のルーメン(副管腔)32は内側補強層26と外側補強層40との間に形成されている。
内側補強層26は、内側チューブ11のうち操作線30a・30bよりも内径側に設けられて内層22を保護する保護層である。操作線30a・30bの内径側に内側補強層26が存在することで、操作線30a・30bが第一外層34および内層22を破断させて主管腔20に露出することを防止する。内側補強層26は補強ワイヤ24を巻回してなる。補強ワイヤ24の材料には、タングステン(W)、ステンレス鋼(SUS)、ニッケルチタン系合金、鋼、チタン、銅、チタン合金または銅合金などの金属材料のほか、内層22および第一外層34よりも剪断強度が高いポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)またはポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂材料を用いることができる。本実施形態では、補強ワイヤ24としてステンレス鋼の細線を挙げる。内側補強層26は、補強ワイヤ24をコイル状に巻回またはメッシュ状に編組してなる。補強ワイヤ24の条数や、コイルピッチ、メッシュ数は特に限定されない。本実施形態の内側補強層26は、多条の補強ワイヤ24をメッシュ状に編組したブレード層である。
操作線30a・30bが挿通された第二のルーメン(副管腔)32の内壁面には、管状本体10よりも低摩擦の樹脂材料で作成された樹脂管28が貼り付けられている。
樹脂管28は副管腔32を画成する中空管状の部材である。樹脂管28は第一外層34の内部に埋設されている。樹脂管28は、たとえば熱可塑性ポリマー材料により構成することができる。その熱可塑性ポリマー材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、または四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)など、管状本体10よりも低摩擦の樹脂材料が挙げられる。樹脂管28は、外層38よりも曲げ剛性率および引張弾性率が高い材料で構成されている。
操作線30a・30bは、樹脂管28に対して摺動可能に遊挿されている。操作線30a・30bの先端部は管状本体10の遠位部DEに固定されている。操作線30a・30bを基端側に牽引することで、管状本体10の軸心に対して偏心した位置に引張力が付与されるため管状本体10は屈曲する。本実施形態の操作線30a・30bは極めて細く可撓性が高いため、操作線30a・30bを遠位側に押し込んでも、管状本体10の遠位部DEには実質的に押込力は付与されない。
操作線30a・30bは、管状本体10(内側チューブ11)の遠位部DEのうち、バルーン80の形成領域またはそれよりも遠位側に固定されている。操作線30a・30bを牽引することで、内側チューブ11の遠位部DEにおける少なくともバルーン80よりも遠位側が屈曲する。操作線30a・30bの各先端部は、バルーン80の形成領域の内部に固定されていてもよく、またはバルーン80より遠位側に固定されていてもよい。
より具体的には、本実施形態の操作線30a・30bの先端部は、バルーン80の遠位端の近傍または当該遠位端よりも更に遠位側に接続されている。これにより、操作線30a・30bを牽引することで、管状本体10の遠位部DEのうちバルーン80よりも遠位側に延出する先端チップ部19が屈曲する。
先端チップ部19は、内側チューブ11の最遠位端に形成された長さ領域である。先端チップ部19の内部には内層22および内側補強層26が延出して形成されている。先端チップ部19の内部まで内側補強層26が延出していることで、先端チップ部19が径方向に拡大する変位を抑制することができる。このため、バルーンカテーテル100を屈曲操作した際に、先端チップ部19がガイドワイヤーGWに対して大きな力を付与してこれを屈曲させることができる。
先端チップ部19は、外層38と同一の樹脂材料で作成してもよく、または外層38と同種かつ硬度が低い樹脂材料で作成してもよい。または、先端チップ部19は、ウレタン樹脂やシリコーンゴムなど、外層38よりも軟質の樹脂材料で作成してもよい。これにより、生体管腔110や狭窄部112(図6(a)〜図6(c)参照)を損傷することなくバルーンカテーテル100を挿入することができる。便宜上、図3では先端チップ部19と外層38に共通のハッチングを付す。
バルーン80の近位端および遠位端のそれぞれ近傍には放射線不透過の環状のマーカー14・16が設けられている。操作線30a・30bの先端部は、遠位側のマーカー14に固定されている。操作線30a・30bをマーカー14に固定する態様は特に限定されず、ハンダ接合、熱融着、接着剤による接着、機械的掛止(かしめ)などを挙げることができる。
より具体的には、図3に示すように、遠位側のマーカー14はバルーン80の遠位端よりも更に遠位側に装着されている。マーカー14は先端チップ部19の内部に埋設されている。一方、バルーン80の近位端は近位側のマーカー16と重複する位置に形成されている。これにより、操作線30a・30bを牽引操作することで先端チップ部19が好適に屈曲する。
本実施形態のバルーンカテーテル100においては、操作線30a・30bを屈曲操作することにより、先端チップ部19のみならずバルーン80の一部または全部の長さ領域が屈曲してもよい。特に、後述するようにバルーン80に易屈曲部84(図3参照)を形成してバルーン80の曲げ剛性を低減することにより、先端チップ部19とともにバルーン80が良好に屈曲するように構成することができる。この場合、操作線30a・30bを屈曲操作した場合の先端チップ部19の平均の曲率が、バルーン80の平均の曲率よりも大きいことが好ましい。これにより、生体管腔110における大きな曲率で屈曲している屈曲部位に対応して、管状本体10の遠位端の指向方向すなわちガイドワイヤーGWの前進方向を偏向させることができる。
また、バルーン80の近位端をマーカー16と重複する位置に形成することで、バルーン80の近位端の近傍において管状本体10の曲げ剛性の不連続が低減する。これにより、操作線30a・30bを牽引した際に管状本体10がバルーン80の近位側でキンクすることが抑制される。
マーカー14・16は、白金やタングステンなど、X線等の放射線が不透過の材料で作成されたリング状の部材である。2つのマーカー14・16の位置を指標とすることにより、放射線(X線)観察下において生体管腔110(図6(a)〜図6(c)参照)内におけるバルーン80の位置を的確に視認することができる。これにより、バルーンカテーテル100の屈曲操作を行うのに最適なタイミングを容易に判断することができる。操作線30a・30bを牽引することで、マーカー14よりも近位側の長さ領域、すなわち先端チップ部19、または、先端チップ部19およびバルーン80が屈曲する。
操作線30a・30bは、単一の線材により構成されていてもよいが、複数本の細線を互いに撚りあわせることにより構成された撚り線であってもよい。操作線30a・30bの一本の撚り線を構成する細線の本数は特に限定されないが、3本以上であることが好ましい。細線の本数の好適な例は、7本または3本である。
操作線30a・30bとしては、低炭素鋼(ピアノ線)、ステンレス鋼(SUS)、耐腐食性被覆した鋼鉄線、チタンもしくはチタン合金、またはタングステンなどの金属線を用いることができる。このほか、操作線30a・30bとしては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)(PBO)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはボロン繊維などの高分子ファイバーを用いることができる。
外側補強層40は、管状本体10のうち操作線30a・30bよりも外周側に設けられて第二外層36を保護する保護層である。操作線30a・30bの外周側に外側補強層40が存在することで、操作線30a・30bが第二外層36および親水層(図示せず)を破断させて管状本体10の外部に露出することを防止する。
外側補強層40は第二補強ワイヤ42をコイル巻回またはメッシュ状に編組してなる。第二補強ワイヤ42には、内側補強層26の補強ワイヤ24として例示した上記の材料を用いることができる。第二補強ワイヤ42と補強ワイヤ24とは同種の材料でもよく、または異種の材料でもよい。本実施形態では、第二補強ワイヤ42として、補強ワイヤ24と同種の材料(ステンレス鋼)で作成された細線をメッシュ状に編組したブレード層を例示する。第二補強ワイヤ42と補強ワイヤ24との線径および条数は、互いに同一でもよく、または異なってもよい。
<バルーン80について>
バルーン80は、軟質の樹脂材料でシート状に作成された伸縮性の部材である。具体的な樹脂材料は特に限定されないが、一例として、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂、ポリエステルなどの軟質樹脂材料のほか、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、シリコーンゴムまたはラテックスゴムなどのゴム材料を用いることができる。
薄膜状のバルーン80は、単層または二層以上の樹脂シートで構成されている。バルーン80は帯状などに成形されたシート状に作成され、管状本体10の遠位部DEの周囲を周回状に取り囲んだ状態で液密に装着されている。バルーン80の遠位側および近位側の両端には固着部82が設けられ、管状本体10に対して液密かつ周回状に固着されている。固着部82では、任意で接着剤および緊縛帯を併用してバルーン80を管状本体10に固定することができる。本実施形態では、図3に示すように、バルーン80の近位側の固着部82が外側チューブ12の外周面上に固定されている。すなわち、外側チューブ12および内側チューブ11はバルーン80の近位側の固着部82の下層に潜り込むようにして設けられている。固着部82は外側チューブ12の外周面に固着され、外側チューブ12の内面と内側チューブ11の外層38の外面との間に空隙部(注液ルーメン)44が形成されている。
空隙部(注液ルーメン)44の先端は、バルーン80の内部に開口している。注液ルーメン44を通じて生理食塩水などの液体(流体F)を所定の圧力で注入することでバルーン80は膨張する(図6(a)参照)。
なお、本実施形態に代えて、外側チューブ12の遠位端がバルーン80の近位側の固着部82の外周面に被さるように積層して、バルーン80の近位側の固着部82を外側チューブ12の遠位端の内面に対して固定してもよい。かかる態様によっても、バルーン80と内側チューブ11との間に空隙部(注液ルーメン)44を形成することができる。
本実施形態のバルーン80は、その少なくとも中間部に、当該バルーン80の曲げ剛性を低減するための易屈曲部84が設けられている。本実施形態の易屈曲部84は、バルーン80の肉厚の一部厚さを削成してなるハーフカット溝である。易屈曲部84はバルーン80に対して周回状または螺旋状に形成されている。易屈曲部84は、バルーン80に対して先基端方向の全体に形成してもよく、または中間部よりも先端側にのみ形成してもよい。易屈曲部84をバルーン80に形成することで、操作線30a・30bの牽引操作時に、バルーン80の遠位側が近位側に比して大きな曲率で屈曲することができる。言い換えると、管状本体10およびバルーン80を、比較的小さな牽引力で十分に屈曲させることができる。
このほか、易屈曲部84としては、バルーン80の肉厚を局所的に減少させた薄肉部でもよく、またはシート状のバルーン80の材質を遠位側に向かって連続的または段階的に低剛性(低ヤング率)に変化させることによって形成してもよい。
<コネクタ部72について>
図1(a)に示すように、バルーンカテーテル100の基端部PEには操作部本体50が設けられている。操作部本体50の屈曲操作部60を操作することで遠位部DEが屈曲する。操作部本体50の遠位側にはコネクタ部72が装着され、コネクタ部72の更に遠位側には保護筒71(図4においては図示省略)が装着されている。
管状本体10を構成する内側チューブ11の基端部は操作部本体50よりも近位側まで延在し、ハブコネクタ52に挿入されて終端している。一方、外側チューブ12の基端部13は、コネクタ部72の第一空孔73の内部で終端している(図4参照)。保護筒71は、コネクタ部72から突出する管状本体10がキンクすることを防止するための保護部材であり、軟質のエラストマー材料で作成することができる。
操作部本体50よりも遠位側に設けられたコネクタ部72には枝管76が接続され、枝管76の基端に注液ポート78が設けられている。これにより、注液ポート78は操作部本体50よりも遠位側に設けられている。なお、ここで注液ポート78が操作部本体50よりも遠位側に設けられているとは、枝管76の長さや注液ポート78と操作部本体50との物理的な位置関係によらず、管状本体10に対して注液ポート78が連通する位置が操作部本体50の先端よりも遠位側にあることをいう。
コネクタ部72は硬質の樹脂材料の射出成形で作成することができるが、これに限られない。たとえば、軟質のエラストマー材料で作成してもよく、金属材料で作成してもよい。
操作部本体50の先端に設けられたコネクタ部72は、図4に示すように第一空孔73と第二空孔74とを有している。第一空孔73は、操作部本体50の先基端方向に貫通形成されており、内側チューブ11および外側チューブ12が挿通されている。第二空孔74は、第一空孔73に対して交差方向に連通して形成されている。第二空孔74は空隙部44および注液ポート78(図1参照)に対して共に連通している。
第一空孔73は、コネクタ部72の先端側に通孔形成された小径部73aと、この小径部73aの基端側に連設されており小径部73aよりも太径の大径部73bと、で構成されている。小径部73aと大径部73bとは同軸に形成されている。第二空孔74は、本実施形態では第一空孔73の軸心に対して直交する方向を深さ方向とする側孔である。第二空孔74には枝管76が挿入されて接着固定されている。枝管76は注液ポート78と第一空孔73とを連通している。
第一空孔73の小径部73aには、内側チューブ11および外側チューブ12が挿入されている。外側チューブ12は小径部73aの周面に対して接着固定されている。
外側チューブ12の基端部13は、第一空孔73に遊挿され、かつ第二空孔74よりも遠位側で終端している。外側チューブ12の外径は、小径部73aと略同径で、かつ大径部73bよりも小径である。大径部73bの内部において外側チューブ12の基端部13はコネクタ部72に対して非固着である。このように外側チューブ12の基端部13が小径部73aの内部に突き出していることで、小径部73aの周面と外側チューブ12との間に塗布された接着剤が外側チューブ12の基端開口まで到達してこれを埋めてしまう不具合が防止される。また、外側チューブ12の基端部13が小径部73aの内部に遊挿されて拡開可能であるため、外側チューブ12と内側チューブ11との間の空隙部44に流体Fが良好に流入する。
コネクタ部72の近位側には操作部本体50の筐体70の先端部が挿入されている。本実施形態のバルーンカテーテル100は、第二空孔74よりも近位側に設けられて第二空孔74と操作部本体50との間隙を封止するシール部79を備えている。シール部79は、第二空孔74よりも近位側に形成された側孔からコネクタ部72の内部に接着剤を注入することにより形成されている。シール部79を形成することで、第一空孔73の大径部73bと筐体70の先端部との間に接着剤が含浸し、筐体70とコネクタ部72とが液密に固着される。これにより、枝管76を通じて注液ポート78から供給される流体Fがコネクタ部72の近位側に漏れ出すことがない。
管状本体10を構成する内側チューブ11は、第一空孔73を貫通して操作部本体50に導入されている。内側チューブ11には操作線30a・30b(図2、図3参照)が埋設されている。
<操作部本体50について>
図1(a)に示すように、操作部本体50は、管状本体10の基端部PEに装着される筐体70と屈曲操作部60とを備えている。屈曲操作部60は、操作線30a・30bの基端部の固定部66(図5参照)を有しており、牽引操作により複数本の操作線30a・30bに個別に牽引力を付与する。
図5に示すように、操作線30a・30bの基端部は、注液ポート78(図4参照)よりも近位側に位置する操作部本体50の筐体70の内部で、内側チューブ11から側方に引き出されて操作部本体50に接続されている。操作線30a・30bの基端部は、内側チューブ11の外層38に形成された側孔を通じて外層38から外部側方に引き出されている。
操作線30a・30bは、屈曲操作部60の周囲に巻回されたうえで、スリット64から引き出されて固定部66に絡げて固定されている。屈曲操作部60を一方向に回動操作すると第一の操作線30aが緊張して第二の操作線30bが弛緩し、逆に屈曲操作部60を他方向に回動操作すると第二の操作線30bが緊張して第一の操作線30aが弛緩する。牽引された操作線30a・30bは、バルーンカテーテル100の遠位部DEを屈曲させる。これにより、管状本体10(内側チューブ11)とともにバルーン80が屈曲する。なお、バルーンカテーテル100が屈曲するとは、遠位部DEが略V字状に折れ曲がる態様と、弓なりに湾曲する態様とを含む。
操作部本体50は、牽引操作された状態で操作線30a・30bを保持する保持機構88を有している。保持機構88を作動させることでバルーンカテーテル100の屈曲操作が規制される。これにより、バルーンカテーテル100の形状が、図1(a)に示す伸長状態または図1(b)に示す屈曲状態で保持される。
保持機構88は、使用者の手指の操作により作動して、屈曲操作部60に対して接離可能に摺動して係合する。これにより、図1(b)に示すバルーンカテーテル100の屈曲状態で屈曲操作部60の回転を規制することができる。
図6(a)は本実施形態のバルーンカテーテル100におけるバルーン80を膨張させた状態を示す平面図である。図6(b)は膨張したバルーン80を屈曲操作する様子を示す平面図である。図6(c)はバルーン80を収縮させた状態を示す平面図である。図7(a)は、狭窄部112が形成された生体管腔110を示す模式図である。図7(b)は狭窄部112の手前側の位置でバルーンカテーテル100を屈曲させる状態を示す模式図である。図7(c)はバルーン80を膨張させて狭窄部112が拡張された状態を示す模式図である。
注液ポート78に生理食塩水などの液体(流体F)を供給することで、枝管76および注液ルーメン44(図3参照)を通じて当該液体がバルーン80に注入される。これにより、図6(a)に示すようにバルーン80は膨張する。当該液体には造影剤を混合してもよい。これにより、放射線(X線)観察下においてバルーン80が所望の直径に膨張したことを目視的に確認することができる。
バルーン80が膨張した状態で、注液ポート78を閉鎖して液体の出入りを禁止することで、バルーン80の膨張状態は維持される。そして、注液ポート78を開放して液体を排出することで、バルーン80は再び収縮する。
本実施形態のバルーンカテーテル100は、図1(a)および図1(b)に示すようにバルーン80が収縮した初期状態で屈曲操作部60を回動操作することにより管状本体10の遠位部DEおよびバルーン80を屈曲させることができるほか、図6(a)および図6(b)に示すように、バルーン80が膨張した状態でも同様に屈曲操作をすることが可能である。
保持機構88を作動させることで、流体F(液体)が注入されて拡張したバルーン80が屈曲状態で保持される。言い換えると、本実施形態のバルーンカテーテル100は、管状本体10およびバルーン80が屈曲した状態でバルーン80を膨張させることができる。
図7(a)に示すように、生体管腔110の屈曲部分に狭窄部112が形成されている場合、狭窄部112の立ち上がり部114にガイドワイヤーGWが干渉しないように、図7(b)に示すように狭窄部112の手前までバルーン80を前進させたところで屈曲操作部60を回動操作する。これにより、ガイドワイヤーGWの前進方向を、狭窄部112の中央部に向けて指向させることができる。
そして、図7(c)に示すように狭窄部112の屈曲形状に応じて屈曲させたバルーン80の形状を、保持機構88を作動させて保持することにより、狭窄部112への負荷を軽減した状態でバルーン80により狭窄部112を拡張することができる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
たとえば本実施形態のバルーンカテーテル100は、バルーン80の外表面に、折り畳まれた状態のステント95またはステントグラフトが装着して用いてもよい。バルーン80の表面にステント95またはステントグラフトなどの留置具を装着することで、バルーン80をこれらの留置具の拡張器具として用いることができる。ステント95は、非自己拡開型であり、金属線を網目状に織って形成された筒状をなしている。
本実施形態のバルーンカテーテル100のように、屈曲操作部60を回動操作して管状本体10の遠位部DEが屈曲可能であることにより、バルーン80およびステント95を屈曲状態に維持したまま、生体管腔110の狭窄部112などに留置することができる。
なお、本発明のバルーンカテーテル100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)長尺で可撓性を有し内部に少なくとも第一および第二のルーメンが通孔形成された内側チューブ、および前記内側チューブの周囲に設けられた外側チューブを備える管状本体と、前記管状本体の遠位部に設けられ、前記内側チューブと前記外側チューブとの間に形成された空隙部と連通している拡張可能なバルーンと、前記管状本体の近位側に設けられ、前記空隙部を通じて前記バルーンの内部に流体を注入する注液ポートと、前記管状本体の近位側に設けられた操作部本体と、を備え、前記第一のルーメンには、造影剤またはガイドワイヤーが挿通され、前記第二のルーメンには、先端部が前記管状本体の遠位部に接続された操作線が摺動可能に挿通されており、前記操作部本体には前記操作線の基端部が接続されており、前記操作部本体を操作することにより前記管状本体の前記遠位部における少なくとも前記バルーンよりも遠位側が屈曲することを特徴とするバルーンカテーテル。
(2)前記操作線の前記先端部が、前記バルーンの遠位端の近傍または当該遠位端よりも更に遠位側に接続されている上記(1)に記載のバルーンカテーテル。
(3)前記第二のルーメンを複数備え、複数の前記第二のルーメンが前記第一のルーメンの周囲に分散配置されている上記(1)または(2)に記載のバルーンカテーテル。
(4)前記空隙部が、前記内側チューブの外周の全周に亘って前記バルーンと連通している上記(1)から(3)のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
(5)前記注液ポートが前記操作部本体よりも遠位側に設けられている上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
(6)前記操作線の基端部が、前記注液ポートよりも近位側で前記内側チューブから側方に引き出されて前記操作部本体に接続されている上記(5)に記載のバルーンカテーテル。
(7)前記操作部本体の先端にコネクタ部が設けられており、前記コネクタ部は、前記操作部本体の先基端方向に貫通形成されて前記内側チューブおよび前記外側チューブが挿通された第一空孔と、前記第一空孔に対して交差方向に連通して形成された第二空孔と、を有し、前記第二空孔は前記空隙部および前記注液ポートに対して共に連通している上記(5)または(6)に記載のバルーンカテーテル。
(8)前記外側チューブの基端部は、前記第一空孔に遊挿され、かつ前記第二空孔よりも遠位側で終端している上記(7)に記載のバルーンカテーテル。
(9)前記第二空孔よりも近位側に設けられて前記第二空孔と前記操作部本体との間隙を封止するシール部を備える上記(7)または(8)に記載のバルーンカテーテル。
(10)前記バルーンの近位端および遠位端のそれぞれ近傍に放射線不透過の環状のマーカーが設けられており、前記操作線の前記先端部が、遠位側の前記マーカーに固定されている上記(1)から(9)のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
10 管状本体
11 内側チューブ
12 外側チューブ
13 基端部
14・16 マーカー
19 先端チップ部
20 主管腔
22 内層
24 補強ワイヤ
26 内側補強層
28 樹脂管
30a・30b 操作線
32 副管腔
34 第一外層
36 第二外層
38 外層
40 外側補強層
42 第二補強ワイヤ
44 空隙部
50 操作部本体
52 ハブコネクタ
60 屈曲操作部
64 スリット
66 固定部
70 筐体
71 保護筒
72 コネクタ部
73 第一空孔
73a 小径部
73b 大径部
74 第二空孔
76 枝管
78 注液ポート
79 シール部
80 バルーン
82 固着部
84 易屈曲部
88 保持機構
95 ステント
100 バルーンカテーテル
110 生体管腔
112 狭窄部
114 立ち上がり部
DE 遠位部
F 流体
GW ガイドワイヤー
PE 基端部

Claims (10)

  1. 長尺で可撓性を有し内部に少なくとも第一および第二のルーメンが通孔形成された内側チューブ、および前記内側チューブの周囲に設けられた外側チューブを備える管状本体と、
    前記管状本体の遠位部に設けられ、前記内側チューブと前記外側チューブとの間に形成された空隙部と連通している拡張可能なバルーンと、
    前記管状本体の近位側に設けられ、前記空隙部を通じて前記バルーンの内部に流体を注入する注液ポートと、
    前記管状本体の近位側に設けられた操作部本体と、を備え、
    前記第一のルーメンには、造影剤またはガイドワイヤーが挿通され、
    前記第二のルーメンには、先端部が前記管状本体の遠位部に接続された操作線が摺動可能に挿通されており、
    前記操作部本体には前記操作線の基端部が接続されており、前記操作部本体を操作することにより前記管状本体の前記遠位部における少なくとも前記バルーンよりも遠位側が屈曲することを特徴とするバルーンカテーテル。
  2. 前記操作線の前記先端部が、前記バルーンの遠位端の近傍または当該遠位端よりも更に遠位側に接続されている請求項1に記載のバルーンカテーテル。
  3. 前記第二のルーメンを複数備え、複数の前記第二のルーメンが前記第一のルーメンの周囲に分散配置されている請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。
  4. 前記空隙部が、前記内側チューブの外周の全周に亘って前記バルーンと連通している請求項1から3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
  5. 前記注液ポートが前記操作部本体よりも遠位側に設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
  6. 前記操作線の基端部が、前記注液ポートよりも近位側で前記内側チューブから側方に引き出されて前記操作部本体に接続されている請求項5に記載のバルーンカテーテル。
  7. 前記操作部本体の先端にコネクタ部が設けられており、
    前記コネクタ部は、前記操作部本体の先基端方向に貫通形成されて前記内側チューブおよび前記外側チューブが挿通された第一空孔と、前記第一空孔に対して交差方向に連通して形成された第二空孔と、を有し、前記第二空孔は前記空隙部および前記注液ポートに対して共に連通している請求項5または6に記載のバルーンカテーテル。
  8. 前記外側チューブの基端部は、前記第一空孔に遊挿され、かつ前記第二空孔よりも遠位側で終端している請求項7に記載のバルーンカテーテル。
  9. 前記第二空孔よりも近位側に設けられて前記第二空孔と前記操作部本体との間隙を封止するシール部を備える請求項7または8に記載のバルーンカテーテル。
  10. 前記バルーンの近位端および遠位端のそれぞれ近傍に放射線不透過の環状のマーカーが設けられており、前記操作線の前記先端部が、遠位側の前記マーカーに固定されている請求項1から9のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
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