配列表の説明
配列番号1は、シグナル配列を含む野生型大腸菌(E. coli)CsgGのアミノ酸配列(Uniprot寄託番号P0AEA2)を示す。
配列番号2は、シグナル配列を含む野生型大腸菌(E. coli)CsgGのポリヌクレオチド配列(Gene ID:12932538)を示す。
配列番号3は、配列番号2の53〜77位の野生型大腸菌(E. coli)CsgGのアミノ酸配列を示す。これは、成熟野生型大腸菌(E. coli)CsgGモノマー(すなわち、シグナル配列を欠いている)の38〜63位のアミノ酸配列に対応する。
配列番号4〜388は、シグナル配列を欠いているCsgGの修飾モノマーの38〜63位のアミノ酸配列を示す。
配列番号389は、大腸菌K−12株MC4100亜株(Escherchia coli Str. K-12 substr. MC4100)からの野生型CsgGモノマーをコードする、コドン最適化ポリヌクレオチド配列を示す。このモノマーは、シグナル配列を欠いている。
配列番号390は、大腸菌K−12株MC4100亜株(Escherchia coli Str. K-12 substr. MC4100)からの野生型CsgGモノマーの成熟形態のアミノ酸配列を示す。このモノマーは、シグナル配列を欠いている。このCsgGに使用される略語=CsgG−Eco。
配列番号391は、YP_001453594.1:仮想タンパク質CKO_02032[シトロバクター・コセリ([Citrobacter koseri)ATCC BAA−895]の1〜248のアミノ酸配列を示し、これは配列番号390と99%同一である。
配列番号392は、WP_001787128.1:部分的、curli産生集合体(curli production assembly)/輸送成分CsgG[サルモネラ菌(Salmonella enterica)]の16〜238のアミノ酸配列を示し、これは配列番号390と98%同一である。
配列番号393は、KEY44978.1|:curli産生集合体/輸送タンパク質CsgG[シトロバクター・アマロナティカス(Citrobacter amalonaticus)]の16〜277のアミノ酸配列を示し、これは配列番号390と98%同一である。
配列番号394は、YP_003364699.1:curli産生集合体/輸送成分[シトロバクター・ローデンチウム(Citrobacter rodentium)ICC168]の16〜277のアミノ酸配列を示し、これは配列番号390と97%同一である。
配列番号395は、YP_004828099.1:curli産生集合体/輸送成分[エンテロバクター・アズブリア(Enterobacter asburiae)LF7a]の16〜277のアミノ酸配列を示し、これは配列番号390と94%同一である。
配列番号396は、Phi29 DNAポリメラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号397は、Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号398は、大腸菌(E. coli)からのsbcB遺伝子に由来するコドン最適化ポリヌクレオチド配列を示す。これは、大腸菌(E. coli)からのエキソヌクレアーゼI酵素(EcoExo I)をコードする。
配列番号399は、大腸菌(E. coli)からのエキソヌクレアーゼI酵素(EcoExo I)のアミノ酸配列を示す。
配列番号400は、大腸菌(E. coli)からのxthA遺伝子に由来するコドン最適化ポリヌクレオチド配列を示す。これは、大腸菌(E. coli)からのエキソヌクレアーゼIII酵素をコードする。
配列番号401は、大腸菌(E. coli)からのエキソヌクレアーゼIII酵素のアミノ酸配列を示す。この酵素は、二本鎖DNA(dsDNA)の一方の鎖からの5’一リン酸ヌクレオシドの3’−5’方向での分配性消化を行う。鎖上の酵素開始は、おおよそ4ヌクレオチドの5’オーバーハングを必要とする。
配列番号402は、高度好熱菌(T. thermophilus)からのrecJ遺伝子に由来するコドン最適化ポリヌクレオチド配列を示す。これは、高度好熱菌(T. thermophilus)からのRecJ酵素(TthRecJ−cd)をコードする。
配列番号403は、高度好熱菌(T. thermophilus)からのRecJ酵素(TthRecJ−cd)のアミノ酸配列を示す。この酵素は、ssDNAからの5’一リン酸ヌクレオシドの5’−3’方向での前進性消化を行う。鎖上の酵素開始は、少なくとも4ヌクレオチドを必要とする。
配列番号404は、バクテリオファージラムダエキソ(redX)遺伝子に由来するコドン最適化ポリヌクレオチド配列を示す。これは、バクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼをコードする。
配列番号405は、バクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。この配列は、集合してトリマーを構築する3つの同一のサブユニットの1つである。この酵素は、dsDNAの一方の鎖からのヌクレオチドの5’−3’方向での高前進性消化を行う(http://www.neb.com/nebecomm/products/productM0262.asp)。鎖上の酵素開始は、5’リン酸を有するおおよそ4ヌクレオチドの5’オーバーハングを優先的に必要とする。
配列番号406は、Hel308 Mbuのアミノ酸配列を示す。
配列番号407は、Hel308 Csyのアミノ酸配列を示す。
配列番号408は、Hel308 Tgaのアミノ酸配列を示す。
配列番号409は、Hel308 Mhuのアミノ酸配列を示す。
配列番号410は、Tral Ecoのアミノ酸配列を示す。
配列番号411は、XPD Mbuのアミノ酸配列を示す。
配列番号412は、Dda 1993のアミノ酸配列を示す。
配列番号413は、Trwc Cbaのアミノ酸配列を示す。
配列番号414は、WP_006819418.1:輸送体[ヨケネラ・レンゲスブルゲイ(Yokenella regensburgei)]の19〜280のアミノ酸配列を示し、これは配列番号390と91%同一である。
配列番号415は、WP_024556654.1:curli産生集合体/輸送タンパク質CsgG[クロノバクター・プルベリス(Cronobacter pulveris)]の16〜277のアミノ酸配列を示し、これは配列番号390と89%同一である。
配列番号416は、YP_005400916.1:curli産生集合体/輸送タンパク質CsgG[ラーネラ・アクアティリス(Rahnella aquatilis)HX2]の16〜277のアミノ酸配列を示し、これは配列番号390と84%同一である。
配列番号417は、KFC99297.1:CsgGファミリーcurli産生集合体/輸送成分[クライベラ・アスコルバータ(Kluyvera ascorbata)ATCC33433]の20〜278のアミノ酸配列を示し、これは配列番号390と82%同一である。
配列番号418は、KFC86716.1|:CsgGファミリーcurli産生集合体/輸送成分[ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)ATCC13337]の16〜274のアミノ酸配列を示し、これは配列番号390と81%同一である。
配列番号419は、YP_007340845.1|:curliポリマーの形成に関与する特徴づけされていないタンパク質[腸内細菌科(Enterobacteriaceae)細菌株FGI 57]の16〜270のアミノ酸配列を示し、これは配列番号390と76%同一である。
配列番号420は、WP_010861740.1:curli産生集合体/輸送タンパク質CsgG[プレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)]の17〜274のアミノ酸配列を示し、これは、配列番号390と70%同一である。
配列番号421は、YP_205788.1:curli産生集合体/輸送外膜リポタンパク質成分CsgG[ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)ES114]の23〜270のアミノ酸配列を示し、これは、配列番号390と60%同一である。
配列番号422は、WP_017023479.1:curli産生集合体タンパク質CsgG[アリイビブリオ・ロゲイ(Aliivibrio logei)]の23〜270のアミノ酸配列を示し、これは、配列番号390と59%同一である。
配列番号423は、WP_007470398.1:Curli産生集合体/輸送成分CsgG[フォトバクテリウム属種(Photobacterium sp.)AK15]の22〜275のアミノ酸配列を示し、これは、配列番号390と57%同一である。
配列番号424は、WP_021231638.1:curli産生集合体タンパク質CsgG[エロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)]の17〜277のアミノ酸配列を示し、これは、配列番号390と56%同一である。
配列番号425は、WP_033538267.1:curli産生集合体/輸送タンパク質CsgG[シュワネラ属種(Shewanella sp.)ECSMB14101]の27〜265のアミノ酸配列を示し、これは、配列番号390と56%同一である。
配列番号426は、WP_003247972.1:curli産生集合体タンパク質CsgG[プチダ菌(Pseudomonas putida)]の30〜262のアミノ酸配列を示し、これは、配列番号390と54%同一である。
配列番号427は、YP_003557438.1:curli産生集合体/輸送成分CsgG[シュワネラ・ビオラセア(Shewanella violacea)DSS12]の1〜234のアミノ酸配列を示し、これは、配列番号390と53%同一である。
配列番号428は、WP_027859066.1:curli産生集合体/輸送タンパク質CsgG[マリノバクテリウム・ジャナスキイ(Marinobacterium jannaschii)]の36〜280のアミノ酸配列を示し、これは、配列番号390と53%同一である。
配列番号429は、CEJ70222.1:Curli産生集合体/輸送成分CsgG[クリセオバクテリウム・オラニメンセ(Chryseobacterium oranimense)G311]の29〜262のアミノ酸配列を示し、これは、配列番号390と50%同一である。
配列番号430は、実施例18で使用するポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号431は、実施例18で使用するポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号432は、実施例18で使用するポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号433は、実施例18で使用するポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号434は、実施例18で使用するポリヌクレオチド配列を示す。配列番号434の3’末端に結合されているのは、6つのiSp18スペーサー(反対側の末端が2つのチミンに結合されている)および3’コレステロールTEGである。
配列番号435は、StrepII(C)のアミノ酸配列を示す。
配列番号436は、Proのアミノ酸配列を示す。
配列番号437〜440は、実施例1からのプライマーを示す。
配列番号441は、実施例21からのヘアピンを示す。
配列番号442〜448は、図4からの配列を示す。
配列番号449および450は、図43からの配列を示す。
発明の詳細な説明
別段の指示がない限り、本発明の実施は、当業者の能力の範囲内である化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術および化学的方法の従来の技法を利用する。そのような技法は、文献、例えば、M. R. Green, J. Sambrook, 2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Fourth Edition, Books 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY;Ausubel, F. M. et al., (1995 and periodic supplements、Current Protocols in Molecular Biology, ch. 9, 13, and 16, John Wiley & Sons, New York, N. Y.);B. Roe, J. Crabtree, and A. Kahn, 1996, DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons;J. M. Polak and James O'D. McGee, 1990, In Situ Hybridisation: Principles and Practice, Oxford University Press;M. J. Gait (Editor), 1984, Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press;およびD. M. J. Lilley and J. E. Dahlberg, 1992, Methods of Enzymology: DNA Structure Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology, Academic Pressでも説明されている。これらの一般テキストの各々が参照により本明細書に組み入れられている。
本発明を説明する前に、本発明の理解を助けることになる多数の定義を提供する。本明細書において言及するすべての参考文献は、それら全体が参照により本明細書に組み入れられている。別段の定義がない限り、本明細書で用いるすべての専門および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。
本明細書で使用する場合、用語「〜を含む(comprising)」は、言及する要素のいずれかを必ず含み(include)、場合により、他の要素も含む(include)ことがあることを意味する。「〜から本質的になる」は、言及するあらゆる要素を必ず含み、列挙する要素の基本的および新規の特徴に実質的な影響を及ぼすことになる要素を除外し、場合により、他の要素を含むことがあることを意味する。「〜からなる」は、列挙するもの以外のすべての要素を除外することを意味する。これらの用語の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
本明細書で使用する場合の用語「核酸」は、各ヌクレオチドの3’および5’末端がホスホジエステル結合によって連結されている、ヌクレオチドの一本鎖または二本鎖共有結合配列である。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド塩基で構成されていることもあり、またはリボヌクレオチド塩基で構成されていることもある。核酸としてはDNAおよびRNAを挙げることができる。核酸は、in vitroで合成的に製造されることもあり、または天然源から単離されることもある。核酸としては、修飾DNAまたはRNA、例えば、メチル化されたDNAもしくはRNA、または翻訳後修飾、例えば、7−メチルグアノシンでの5’キャッピング、切断およびポリアデニル化などの3’プロセシング、ならびにスプライシングに付されたRNAをさらに挙げることができる。核酸としては、合成核酸(XNA)、例えば、ヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキセン核酸(CeNA)、トレオース核酸(TNA)、グリセロール核酸(GNA)、ロックド核酸(LNA)およびペプチド核酸(PNA)も挙げることができる。本明細書では「ポリヌクレオチド」とも呼ばれる核酸のサイズは、通常は、二本鎖ポリヌクレオチドについては塩基対(bp)の数として、または一本鎖ポリヌクレオチドの場合はヌクレオチド(nt)の数として表される。1000bpまたはntは、キロベース(kb)に等しい。長さ約40ヌクレオチド未満のポリヌクレオチドは、通常は「オリゴヌクレオチド」と呼ばれ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるものなどのDNAの操作に使用するためのプライマーを含むこともある。
本発明に関して、用語「アミノ酸」は、その最も広い意味で使用しており、天然に存在するL α−アミノ鎖または残基を含むことを意図したものである。天然に存在するアミノ酸について一般に使用される1および3文字略号を本明細書でも使用する:A=Ala、C=Cys、D=Asp、E=Glu、F=Phe、G=Gly、H=His、l=lle、K=Lys、L=Leu、M=Met、N=Asn、P=Pro、Q=Gln、R=Arg、S=Ser、T=Thr、V=Val、W=Trp、およびY=Tyr(Lehninger, A. L, (1975) Biochemistry, 2d ed., pp. 71-92, Worth Publishers, New York)。一般用語「アミノ酸」は、さらに、D−アミノ酸、レトロ−インベルソアミノ酸はもちろん、化学的に修飾されたアミノ酸、例えばアミノ酸類似体、タンパク質に通常は組み込まれていない天然に存在するアミノ酸、例えばノルロイシン、およびアミノ酸に特有であることが当技術分野において公知の特性を有する化学的に合成された化合物、例えばβ−アミノ酸も含む。例えば、ペプチド化合物に対する天然PheまたはProと同じ配座制限を可能にする、フェニルアラニンまたはプロリンの類似体または模倣物は、アミノ酸の定義に含まれる。そのような類似体および模倣物を本明細書ではそれぞれのアミノ酸の「機能的等価物」と呼ぶ。アミノ酸の他の例は、Roberts and Vellaccio, The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology, Gross and Meiehofer, eds., Vol. 5 p. 341, Academic Press, Inc., N. Y. 1983に収載されており、この参考文献は、参照により本明細書に組み入れられている。
「ポリペプチド」は、天然に産生されるか、合成手段によってin vitroで産生されるかを問わず、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基のポリマーである。長さ約12アミノ酸残基未満のポリペプチドは、通常は「ペプチド」と呼ばれ、長さ約12〜約30アミノ酸残基のものは、「オリゴペプチド」と呼ばれることがある。用語「ポリペプチド」は、本明細書で使用する場合、天然に存在するポリペプチド、前駆形態またはプロタンパク質の生成物を示す。ポリペプチドは、変異または翻訳後修飾プロセスを経ることもでき、そのようなプロセスとしては、これらに限定されるものではないが、グリコシル化、タンパク質切断、脂質化、シグナルペプチド切断、プロペプチド切断、リン酸化などを挙げることができる。用語「タンパク質」は、1本または複数のポリペプチド鎖を含む高分子を指すために本明細書では使用する。
「生体ポア」は、膜の一方の側から他方への分子およびイオンの移行を可能にするチャネルまたは穴を規定する膜貫通タンパク質構造である。このポアを通るイオン化学種の移行は、そのポアの両側に印加される電気的電位の差によって駆動されうる。「ナノポア」は、分子またはイオンが通過するチャネルの最小直径がナノメートル(10−9メートル)程度である生体ポアである。
本発明のすべての態様および実施形態について、ポリヌクレオチドは、配列番号2で示される野生型大腸菌(E. coli)CsgGとの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%完全配列同一性を有するポリヌクレオチドを含むことができる。同様に、ポリペプチドは、配列番号1で示される野生型大腸菌(E. coli)CsgGとの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%完全配列同一性を有するポリペプチドを含むことができる。ポリペプチドは、CsgG様タンパク質の特徴であるPFAMドメインPF03783を含有するポリペプチドを含むことができる。現在公知のCsgG相同体およびCsgG構造のリストは、http://pfam.xfam.Org//family/PF03783で見つけることができる。例えば、配列同一性は、完全長ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの断片または一部分との配列同一性であることもある。したがって、配列は、本発明の配列との50%全配列同一性しか有さないことがあっても、特定の領域、ドメインまたはサブユニットは、本発明の配列と80%、90%、または99%ほどもの配列同一性を共有することがありうる。本発明によると、配列番号2の核酸配列との相同性は、単に配列同一性に限定されない。多くの核酸配列は、一見低い配列同一性を有するにもかかわらず互いに生物学的に有意な相同性を示すことができる。本発明では、相同核酸配列は、低ストリンジェンシー条件下で互いにハイブリダイズすることになるものであると考える(M. R. Green, J. Sambrook, 2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Fourth Edition, Books 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)。
用語「ベクター」は、適切なサイズの別の核酸(通常はDNA)配列断片を組み込むことができる、直鎖状または環状であるDNA分子を示すように使用される。そのようなDNA断片は、そのDNA配列断片によってコードされた遺伝子の転写をもたらす、さらなるセグメントを含むことができる。さらなるセグメントは、プロモーター、転写ターミネーター、エンハンサー、配列内リボソーム進入部位、非翻訳領域、ポリアデニル化シグナル、選択マーカー、複製起点などを含むことができるが、これらに限定されない。原核生物宿主のための様々な好適なプロモーター(例えば、大腸菌(E. coli)のための、[ベータ]−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、lac、tac、T3、T7プロモーター)および真核生物宿主のための様々な好適なプロモーター(例えば、シミアンウイルス40初期または後期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、EG−1aプロモーター)が利用可能である。発現ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルスベクターおよび酵母人工染色体に由来することが多く、ベクターは、いくつかの源からのDNA配列を含有する組換え分子であることが多い。本発明の特異的実施形態は、本明細書に記載の野生型または修飾CsgGポリペプチドをコードする発現ベクターを提供する。用語「作動可能に連結された」は、DNA配列、例えば、上述のものなどの核酸ベクターにおけるDNA配列に適用される場合、該配列が、それらの所期の目的を果たす(すなわち、プロモーター配列が、関連コード配列を通って終結配列のところまで進む転写を開始させる)ために、協同的に機能するように配置されていることを示す。
生体ポアの膜貫通タンパク質構造は、実際はモノマー状またはオリゴマー状でありうる。通常は、ポアは、複数のポリペプチドサブユニットであって、中心軸の周りに配置されており、その結果、ナノポア残基が存在する膜に略垂直に伸びる、タンパク質で裏打ちされたチャネルを形成している、ポリペプチドサブユニットを含む。ポリペプチドサブユニットの数は限定されない。通常は、サブユニットの数は5から30まであり、好適には、サブユニットの数は6〜10である。あるいは、サブユニットの数は、パーフリンゴリジンまたは関連大型膜ポアの場合のように、定義されない。タンパク質で裏打ちさたチャネルを形成する、ナノポア内のタンパク質サブユニットの部分は、1つまたは複数の膜貫通β−バレル、および/またはα−ヘリックス部分を含むことがある、二次構造を通常は含む。
開示する生成物および方法の様々な適用が当技術分野における具体的な要求に合わせて調整されうることは、理解されるはずである。本明細書において使用する用語法が本発明の特定の実施形態の説明を目的にしたものに過ぎず、限定を意図したものでないことも、理解されるはずである。
加えて、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈による別段の明白な指図がない限り、複数の言及対象も含む。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド(a polynucleotide)」への言及は、2つ以上のポリヌクレオチドを含み、「ポリヌクレオチド結合タンパク質(a polynucleotide binding protein)」への言及は、2つ以上のそのようなタンパク質を含み、「ヘリカーゼ(a helicase)」への言及は、2つ以上のヘリカーゼを含み、「モノマー(a monomer)」への言及は、2つ以上のモノマーを含み、「ポア(a pore)」への言及は、2つ以上のポアを含むなど。
上文または下文を問わず、本明細書の中で引用するすべての出版物、特許および特許出願は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれている。
本発明は、一部は、細菌アミロイド分泌チャネル(CsgG)、その製造方法、および核酸シークエンシング用途および分子センシングにおけるその使用に関する。
CsgGは、大腸菌(E. coli)の外膜に存在する膜リポタンパク質(Uniprot寄託番号P0AEA2;Gene ID:12932538)である。この外側脂質膜の中で、CsgGは、9つのCsgGモノマーサブユニットのオリゴマー複合体を含むナノポアを形成する。II型(リポタンパク質)シグナル配列のために、CsgGタンパク質前駆体は、SECトランスロコンを介して移行され、その後、成熟CsgG(すなわち、II型シグナル配列が切断されたCsgG)のN末端Cys残基においてトリアセチル化される。トリアセチル化された、または「脂質化された」CsgGは、グラム陰性宿主の外膜に輸送され、そこでノナマーポアとしてその二重層に入る。脂質化されていない形態のCsgG、例えばCsgGC1S、は、プレポア立体構造で可溶性タンパク質としてペリプラズムに存在する(図42)。
野生型CsgGナノポアのX線構造(Goyal et al., Nature, 2014, 516(7530), 250-3)は、それが120Åの幅および85Åの高さを有することを示す(本明細書では以降、ナノポアの「幅」という用語は、膜表面と平行のその寸法に関するものとし、ナノポアの「高さ」という用語は、膜に対して垂直なその寸法に関するものとする)。CsgGポア複合体は、36本鎖β−バレルによって膜を貫通して内径40Åのチャネルをもたらす(図1)。CsgGチャネルの集合モノマー各々が、保存された12残基ループ(Cループ、「CL」、図2)を有し、このループが協同してチャネル内におおよそ9.0Åの直径への狭窄を作り出す(図1および2)。野生型CsgGナノポアの狭窄は、CsgGオリゴマー中に存在する各々のCsgGモノマーのアミノ酸残基Tyr51、Asn55およびPhe56の側鎖によって形成される3つの積み重なった同心環で作られる(図3)。残基のこのナンバリングは、N末端のネイティブ15アミノの酸シグナル配列を欠いている成熟タンパク質に基づく。したがって、成熟タンパク質は、配列番号1の残基16〜277に対応する。Tyr51は、配列番号1の66位にあり、Asnは、配列番号1の70位にあり、Phe56は、配列番号1の71位にある。
狭窄は、イオンおよび他の分子のCsgGチャネル通過を制限するように作用する。平面リン脂質二重層内に再構成されたCsgGの単一チャネル電流記録は、標準電解質条件および+50mVまたは−50mVの電位を使用して、それぞれ、43.1±4.5pA(n=33)または−45.1±4.0pA(n=13)の定常電流となった(図5)。
CsgGチャネルを通る電流の流れは、化学量論量のペリプラズム因子CsgE(Uniprot受託番号POAE95)の付加によって有効に遮断することができる(実施例10〜12)。理論によって拘束されることを望むものではないが、電流の痕跡は、CsgEがCsgGポアと複合体を形成してチャネルの一方の末端をキャップするように作用する機序を強く示唆する。CsgGチャネルを通るイオンの流れの有意な低減を、標準単一チャネル記録技術を使用して測定することができる(実施例12および13、図6)。本発明者らは、電流の流れについての測定パラメータ(最大電流、および電流変動をモニターする能力)が、ナノポアを本発明の一実施形態による核酸シークエンシングおよび分子センシングでの使用に好適なものにすることを見出した。
したがって、本発明は、一部は、ナノポアを通って流れる電流の電気的測定値の変動に基づく核酸シークエンシングの方法およびそのような核酸シークエンシングにおけるCsgGナノポアタンパク質複合体の使用に関する。
核酸は、ナノポアシークエンシングに特に好適である。DNAおよびRNA中に天然に存在する核酸塩基を、それらの物理的サイズによって区別することができる。核酸分子または個々の塩基がナノポアのチャネルを通過すると、それらの塩基間のサイズ差に起因して、チャネルを通るイオン流の直接相関する低減が生ずる。イオン流の変動を記録することができる。イオン流変動を記録する好適な電気的測定技術は、例えば、国際公開第2000/28312号パンフレットおよびD. Stoddart et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 2010, 106, pp 7702-7(単一チャネル記録機器)に、ならびに例えば国際公開第2009/077734号パンフレット(多チャネル記録技術)に記載されている。適切な較正により、イオン流の特徴的低減を使用して、チャネルを横断する特定のヌクレオチドおよび関連塩基をリアルタイムで同定することができる。
膜貫通チャネルの最も狭い狭窄のサイズは、概して、核酸シークエンシング用途に対するナノポアの適合性を判定する上で重要な因子である。狭窄が小さすぎると、シークエンシングされる分子は通過できないことになる。しかし、チャネルを通るイオン流に対する最大効果を達成するには、その最も狭い位置で(すなわち、狭窄箇所で)チャネルが大きすぎてはならない。理想的には、いずれの狭窄も直径が通過する塩基のサイズに可能な限り近くあるべきである。核酸および核酸塩基のシークエンシングに好適な狭窄の直径は、ナノメートル範囲(10−9メートル範囲)である。好適には、直径は、ほぼ0.5〜1.5nmであるべきであり、通常は、直径は、ほぼ0.7〜1.2nmである。野生型大腸菌(E. coli)CsgG内の狭窄は、おおよそ9Å(0.9nm)の直径を有する。本発明者らは、CsgGチャネル内の狭窄のサイズおよび立体配置が核酸シークエンシングに好適であると演繹した。
核酸シークエンシングに関する用途のためのCsgGナノポアは、野生型形態で使用されることもあり、または使用中のナノポアの所望の特性をさらに向上させるように、例えば特定のアミノ酸残基の定方向突然変異誘発によって、さらに修飾されることもある。例えば、本発明の実施形態では、変異は、チャネル内の狭窄の数、サイズ、形状、配置または配向を変更することを企図したものである。修飾変異体CsgGナノポア複合体は、ポリペプチド配列内の特異的標的アミノ酸残基の挿入、置換および/または欠失をもたらす公知遺伝子工学技術によって調製することができる。オリゴマーCsgGナノポアの場合、変異をモノマーのポリペプチドサブユニット各々において生じさることもあり、またはモノマーのいずれか1つにおいて生じさせることもあり、またはモノマーのすべてにおいて生じさせることもある。好適には、本発明の一実施形態では、記載の変異をオリゴマータンパク質構造内のモノマーのポリペプチドすべてに生じさせる。
本発明の実施形態によると、ポア内のチャネル狭窄数が低減されている修飾変異体CsgGナノポアを提供する。
野生型大腸菌(E. coli)CsgGポアは、2カ所のチャネル狭窄を含む(図1を参照されたい)。これらは、54位からの53位への追加のアミノ酸を含むより広い構造の一部としての(i)アミノ酸残基Phe56およびAsn55と(ii)アミノ酸残基Tyr51、ならびにCループモチーフによって形成される(図2および3)。
典型的ナノポア核酸シークエンシングでは、目的の核酸配列の個々のヌクレオチドがナノポアのチャネルを逐次的に通過すると、ヌクレオチドによるチャネルの部分的閉塞のため、開口チャネルイオン流が低減される。上に記載した好適な記録技術を使用してイオン流のこの低減が測定される。イオン流の低減を、チャネルを通る既知ヌクレオチドについて測定されるイオン流の低減に対応させてもよく、これは、結果的に、どのヌクレオチドがチャネルを通過しているのかを判定する手段、したがって、逐次的に行った場合にはナノポアを通過する核酸のヌクレオチド配列を判定する方法となる。個々のヌクレオチドの正確な判定のために、チャネルを通るイオン流の低減を、単一の狭窄(すなわち「読み取りヘッド」)を通過する個々のヌクレオチドのサイズに直接相関させる必要があることが一般的になっている。ポアを例えば関連ポリメラーゼの作用によって「通り抜け」させるインタクト核酸ポリマーに関してシークエンシングを行うことができるということは理解されるであろう。あるいは、ポアに近接している標的核酸から逐次的に除去されたヌクレオチド三リン酸塩基の通過によって配列を判定することができる(例えば国際公開2014/187924パンフレットを参照されたい)。
2カ所以上の狭窄が存在し、相互に隔たっている場合、各狭窄は相互作用することがあり、または核酸鎖内の別々のヌクレオチドを同時に「読み取る」ことがある。この状況で、チャネルを通るイオン流の低減は、ヌクレオチドを含有するすべての狭窄箇所の流れの総合制限の結果である。したがって、場合によっては、二重狭窄が1つの複合電流シグナルをもたらすこともある。ある特定の状況では、1カ所の狭窄、すなわち1つの「読み取りヘッド」、の電流読み出しを、2つのそのような読み取りヘッドが存在する場合、個別に判定することができないことがある。
CsgGの野生型ポア構造は、組換え遺伝子技術によって2カ所の狭窄の一方を広げるように、変更するように、または除去するように再操作して、チャネル内に単一箇所の狭窄を残し、かくして単一の読み取りヘッドを規定することができる。CsgGオリゴマーポア内の狭窄モチーフは、モノマー野生型大腸菌(E. coli)CsgGのポリペプチド内の38〜63位のアミノ酸残基に位置する。この領域の野生型アミノ酸配列を配列番号3として提供する。この領域を考慮する上で、アミノ酸残基位置50〜53、54〜56および58〜59のいずれかにおける変異が本発明の権限の範囲内に企図されると考えられる。CsgG相同体との配列類似性(図4)に基づいて、アミノ酸残基位置38〜49、53、57、および61〜63は、高度に保存されると考えられ、したがって、置換または他の修飾にあまり適していない。野生型CsgG構造のチャネル内のTyr51、Asn55およびPhe56の側鎖の重要な位置設定のため、これらの位置における変異は、読み取りヘッドの特徴を修飾または変更するのに有利でありうる。
CsgGタンパク質モノマーの所与の位置における変異は、その位置の野生型アミノ酸の他のいずれかの天然または非天然アミノ酸での置換をもたらすことがある。本発明の一実施形態では、狭窄を広げるまたは除去することが望ましく、好適には、修飾CsgGタンパク質中のアミノ酸側鎖は、それが置換する野生型構造内のアミノ酸側鎖より立体的妨害が少なくなるように選択されることになる。所与の位置の置換アミノ酸残基は、同様の静電特性を有することもあり、または異なる静電特性を有することもある。好適には、置換アミノ酸側鎖は、チャネルの二次構造または特性に対する破壊を最小にするために、それが置換する野生型構造内のアミノ酸側鎖と同様の静電電荷を有することになる。
置換アミノ酸の選択は、大規模多重配列アラインメントに基づいてアミノ酸が別のアミノ酸を置換する尤度を算出するための標準方法論を提供する、BLOSUM62行列に基づくこともある。BLOSUM62行列の例を当業者はインターネット上で自由に入手できる。例えば、米国国立生物学情報センター(National Center for Biotechnology Information)のウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Class/Structure/aa/aa_explorer.cgi)を参照されたい。
CsgGチャネル内の第1の狭窄を形成するように作用する野生型CsgG構造内のTyr51に対して、任意のアミノ酸での置換が施される。特に、本発明のある特定の実施形態では、Tyr51は、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、グルタミンおよびフェニルアラニンで置換されることがある(配列番号39〜318)。本発明の実施形態では、アラニンまたはグリシンでのTyr51の置換が特に好適である(配列番号39〜108)。実施形態では、残基50〜53(野生型配列中のPYPA)は、グリシン−グリシン(GG)で置換されることがある(配列番号354〜388)。
CsgGチャネル内の第2の狭窄に寄与するAsn55に対して、任意のアミノ酸での置換が施される。特に、本発明のある特定の実施形態では、Asn55は、アラニン、グリシン、バリン、セリンまたはトレオニンで置換されることがある(配列番号9〜33、44〜68、79〜103、114〜138、149〜173、184〜208、219〜243、254〜278、289〜313および324〜348)。
CsgGチャネル内の第2の狭窄の一部を形成するPhe56に対して、任意のアミノ酸での置換が施される。特に、本発明のある特定の実施形態では、Phe56は、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギンおよびグルタミンで置換されることがある(配列番号5〜13、15〜18、20〜23、25〜28、30〜33、40〜43、45〜48、50〜53、55〜58、60〜63、65〜68、75〜78、80〜83、85〜88、90〜93、95〜98、100〜103、110〜113、115〜118、120〜123、125〜128、130〜133、135〜138、145〜148、150〜153、155〜158、160〜163、165〜168、170〜173、180〜183、185〜188、190〜193、195〜198、200〜203、205〜208、215〜218、220〜223、225〜228、230〜233、235〜238、240〜243、250〜253、255〜258、260〜263、265〜268、270〜273、275〜578、285〜288、290〜293、295〜298、300〜303、305〜308、310〜313、320〜323、325〜328、330〜333、335〜338、340〜343および345〜348)。本発明の実施形態では、アラニンおよびグリシンでのPhe56の置換が特に好適である(配列番号5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、6、11、16、21、26、31、36、41、46、51、56、61、66、71、76、81、86、91、96、101、106、111、116、121、126、131、136、141、146、151、156、161、166、171、176、181、186、191、196、201、206、211、216、221、226、231、236、241、246、251、256、261、266、271、276、281、286、291、296、301、306、311、316、321、326、331、336、341 346、351、356、361、366、371、376、381および386)。
所与の変異体CsgGタンパク質において、Tyr51の置換は、55および56位のどちらか一方と同時に行われることもあり(配列番号44、49、54、59、64、79、84、89、94、99、114、119、124、129、134、149、154、159、164、169、184、189、194、199、204、219、224、229、234、239、254、259、264、269、274、289、294、299、304、309、359、364、369、374、379、40、41、42、75、76 77、110、111、112、145、146、147、180、181、182、215、216、217、250、251、252、285、286および287)、この場合、チャネル内の好適な寸法の少なくとも1カ所の狭窄が維持される。あるいは、Tyr51の置換は、位置Asn55およびPhe56の両方における置換に対して相互排他的である(配列番号39、74、109、144、179、214、249、284、354、10、11、12、15、16、17、20、21、22、25、26、27、30、31および32)。
あるいは、野生型CsgGタンパク質中のTyr51、Asn55またはPhe56の1つまたは複数が欠失されることもある(配列番号319〜353、34〜38、69〜73、104〜108、139〜143、174〜178、209〜213、244〜248、279〜283、314〜318、384〜388、8、13、18、23、28、33、43、48、53、58、63、68、78、83、88、93、98、103、113、118、123、128、133、138、148、153、158、163、168、173、183、188、193、198、203、208、218、223、228、233、238、243、253、258、263、268、273、278、288、293、298、303、308および313)。チャネル内の少なくとも1カ所の狭窄を維持するために、所与の実施形態では、アミノ酸残基Tyr51の欠失は、アミノ酸残基Asn55およびPhe56両方の欠失に対して相互排他的である(配列番号319〜322、324〜327、329〜332、334〜337、339〜342、344〜347、38、73、108、143、178、213、248、283および318)。53位と54位および48位と49位におけるある特定の隣接アミノ酸残基も欠失されることがある。
本発明は、上記修飾が孤立して行われることもあり、あらゆる組合せで行われることもある実施形態を提供するものであることは、理解されるはずである。
Tyr51における狭窄またはAsn55/Tyr56における狭窄のどちらか一方の除去の結果、CsgGチャネル内の狭窄は単一箇所になる。理論によって拘束されることを望むものではないが、Asn55/Tyr56における狭窄は、望ましいこともあるTyr51における狭窄より高い配座安定性を有することになると想定される。しかし、Asn55/Tyr56狭窄がヌクレオチドと比較して(中心ポア軸に沿って測定して)高すぎることもある。これは、移行中のDNA鎖内の個々の塩基対の分解能不良につながることがある。
反対のことがTyr51狭窄について言える可能性が高い。Asn55/Tyr56狭窄の除去後、そのオリゴマー中のTyr51残基の残存する環は、ネイティブ構造の場合より配座安定性が低いことがある。しかし、Tyr51狭窄のほうが、(中心ポア軸に沿って測定して)短く、個々の塩基を区別しうる狭窄をチャネル内に設けることができる可能性が高い。
どちらの実施形態においても、(中心軸に沿って測定して)単一箇所の狭い狭窄の存在は、ポアを核酸シークエンシング用途に利用するときに電流読み取りの複雑さを低減させる可能性が高い。したがって、ポアを通って核酸が移行している間に発生する観測電流の変調は、別個のヌクレオチドの単一の狭窄、すなわち「読み取りヘッド」、の通過をもっぱら反映することになる。
1カ所の狭窄の有効な除去は、そのポアバリアントの開口チャネル電流も増加させることができる。開口チャネル電流の増加は、より高いバックグラウンドコンダクタンスとして有利であり、異なる核酸塩基対シグナルについての電流遮断レベルのより良好な分解につながる。このように、読み取りヘッドに対する修飾は、核酸シークエンシングおよび他の分子センシング用途の両方に対する生体ポアの適合性を向上させることができる。
代替実施形態として、または上記の配列修飾に加えて、Asn55/Phe56狭窄が(中心ポア軸に沿って測定したときの)その高さの調整にさらに適応されうることも条件とする。Asn55/Phe56狭窄のそのようなさらなる適応形態は、CsgGチャネル内のTyr51もしくは他の位置の変異を伴うこともあり、または伴わないこともある。好適には、Asn55/Phe56狭窄のさらなる適応形態は、Tyr51残基によって形成される狭窄を広げるまたは除去する変異の一部として企図される。
野生型形態の場合、Asn55/Phe56チャネル狭窄は、互いに垂直に方向に隣接して位置する2つのアミノ酸環で作られる。結果として、狭窄は、1nmより長い長さを有する。1nm長の狭窄は、イオン流から発生する電気シグナルを移行中の核酸鎖内の別個の塩基に分解することを可能とすることができない。通常は、核酸シークエンシングに使用される公知ナノポアの狭窄は、1nm未満の長さを概して有する。例えば、DNAシークエンシングに使用されるMspAナノポアは、(中心ポア軸に沿って測定して)0.6nmの狭窄高を有する(Manrao et al., Nature Biotechnology, 2012, 30(4), 349-353)。
Asn55/Phe56狭窄の(中心ポア軸に沿って測定したときの)高さを低減させるために、2つの残基のどちらか一方を置換してまたは欠失させて狭窄の頂部または底部を広げてもよい。
CsgGチャネル内の第2の狭窄の一部を形成するAsn55に対して、任意のアミノ酸での置換が企図される。特に、アラニン、グリシン、バリン、セリンまたはトレオニンでの置換(配列番号9〜33、44〜68、79〜103、114〜138、149〜173、184〜208、219〜243、254〜278、289〜313および324〜348)。
CsgGチャネル内の第2の狭窄の一部を形成するPhe56に対して、任意のアミノ酸での置換が企図される。特に、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギンおよびグルタミンでの置換(配列番号5〜13、15〜18、20〜23、25〜28、30〜33、40〜43、45〜48、50〜53、55〜58、60〜63、65〜68、75〜78、80〜83、85〜88、90〜93、95〜98、100〜103、110〜113、115〜118、120〜123、125〜128、130〜133、135〜138、145〜148、150〜153、155〜158、160〜163、165〜168、170〜173、180〜183、185〜188、190〜193、195〜198、200〜203、205〜208、215〜218、220〜223、225〜228、230〜233、235〜238、240〜243、250〜253、255〜258、260〜263、265〜268、270〜273、275〜578、285〜288、290〜293、295〜298、300〜303、305〜308、310〜313、320〜323、325〜328、330〜333、335〜338、340〜343および345〜348)。本発明の実施形態では、アラニンおよびグリシンでのPhe56の置換が特に好適である(配列番号5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、6、11、16、21、26、31、36、41、46、51、56、61、66、71、76、81、86、91、96、101、106、111、116、121、126、131、136、141、146、151、156、161、166、171、176、181、186、191、196、201、206、211、216、221、226、231、236、241、246、251、256、261、266、271、276、281、286、291、296、301、306、311、316、321、326、331、336、341 346、351、356、361、366、371、376、381および386)。
野生型CsgGポアの狭窄の最小直径を調整するための修飾も企図される。CsgGポア内の両方の狭窄の最小直径は、おおよそ0.9nm(9Å)であり、これは、DNAシークエンシングに対する有用性を示す公知MspAナノポア内の狭窄についての直径1.2nm(Manrao et al., Nature Biotechnology, 2012, 30(4), 349-353)より小さい。0.5〜1.5nmの最小直径を有する修飾CsgGポア内の残存狭窄をもたらす上記のいずれかの変異が好適であるであろう。
上に列挙した修飾のいずれかは、狭窄箇所のアミノ酸の親水性および電荷分布を有益に変更して、移行中の核酸鎖に関して通過および非共有結合性相互作用を向上させて電流読み出しを向上させることができる。上に列挙した変異のいずれかは、チャネル狭窄近くの親水性および電荷分布を有益に変更して、その狭窄を通る電解質イオンの流れを最適化すること、および移行中の核酸鎖の通過中のヌクレオチド間のより良好な識別を果たすこともできる。
チャネル内腔内の表面電荷分布を変化させる結果となりうるCsgGタンパク質のさらなる修飾が企図される。本発明の一実施形態では、これらの修飾は、移行中の核酸のチャネル壁への望ましくない静電吸着を回避するために施される。核酸は負電荷を有し、CsgGチャネル内腔は多少の正電荷を有する(図1)ので、静電相互作用が核酸シークエンシング中に通り抜けまたは移行に干渉しうると想定される。好適には、正電荷を有するアミノ酸残基、例えばリシン、ヒスチジンおよびアルギニンを中性または負電荷を有する側鎖で置換して、ポアを通る核酸移行の効率およびしたがって電流読み出しの明確さをさらに向上させることができる。
核酸鎖(または個々のヌクレオチド)のポア狭窄内の移行または通り抜けを助長するための、野生型大腸菌(E. coli)CsgGまたは変異体CsgGのチャネル内腔の修飾も、本発明の実施形態によって提供する。内部狭窄を有するCsgGの膜貫通部分は、中心の穴を特徴とする蓋を伴うバレルに似ている。バレルと蓋に最も近いポア内腔に追加のループを加えることによって通り抜けを助長することができる。
本発明の特異的実施形態は、CsgGポアが、共有結合している1つまたは複数のモノマー、ダイマーまたはオリゴマーからなりうることを条件とする。非限定的な例として、モノマーは、任意の立体配置で、例えばそれらの末端アミノ酸によって、遺伝子的に融合されていることがある。この場合、1つのモノマーのアミノ末端が別のモノマーのカルボキシ末端に融合されていることもある。
本発明の実施形態によると、CsgGポアが、分子のそのポアの通過に有益な特性を有しうるさらなるアクセサリータンパク質に順応するように適合されうることも条件とする。ポアへの適合は、核酸プロセシング酵素の固定化を助長することができる。核酸プロセシング酵素としては、DNAまたはRNAポリメラーゼ、イソメラーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレース、テロメラーゼ、およびヘリカーゼを挙げることができる。これらの酵素の1つまたは複数をナノポアと会合させることで、核酸によるポアの通り抜け増進に関して、および核酸鎖がポアによって翻訳される速度を制御する点で恩恵にあずかることができる(Manrao et al., Nature Biotechnology, 2012, 30(4), 349-353)。ポアを通る核酸鎖の移行速度の制御には、イオン流の電流測定に関して、読み出しにより好適であり、より均一である、向上した応答をもたらすという利点がある。
本発明の実施形態では、ナノポアの膜外領域における修飾は、1つまたは複数の結合/固定化部位を設けることによってチャネルの内腔の内部にまたは内腔に隣接してDNAポリメラーゼなどの好適な核酸プロセシング酵素をドッキングさせることを助長するのに役立つことができると予想される。好適な固定化部位は、酵素の静電結合のための静電パッチ、共有結合性カップリングを可能にするための1つもしくは複数のシステイン残基、および/または立体アンカーを設けるための膜貫通チャネル部分の内部幅変更を含むことがある。
下でより詳細に述べる特異的実施形態では、本発明は、核酸シークエンシングで使用するためのCsgG野生型ポアのさらなる適応形態を提供する。
本発明の実施形態では、CsgGポアの膜外領域(図1に示す下の部分)は、チャネル内腔の反対側に核酸鎖の退出を助長するために短縮または除去されることがある。膜外領域の短縮または除去は、チャネルのイオン流からの電気シグナルの電流分解能を向上させることもできる。後者の利点は、膜外領域によるイオン流に対して生じた抵抗を低下することによってもたらされる。本CsgGポアの場合、膜貫通チャネル、内部狭窄およびキャップ領域が、直列に存在する3つの抵抗領域に相当する。これらのうちの1つの寄与を除去することまたは低下させることは、開口チャネル電流を増加させることになり、したがって、電流分解能を向上させることになる。そのような変更は、α−ヘリックス2(α2)、C末端a−ヘリックス(αC)(図1)および/またはこれらの組合せの欠失を含むことができる。
本発明のさらなる実施形態では、野生型大腸菌(E. coli)CsgGポアの外面の膜対向アミノ酸は、その膜へのポアの挿入を助長するように修飾することができる。ある特定の実施形態では、単一アミノ酸置換によって野生型残基がより疎水性の高い好適な類似体で置換されうることを条件とする。例えば、残基Ser136、Gly138、Gly140、Ala148、Ala188またはGly202の1つまたは複数をAla、Val、LeuまたはIleに変化させることができる。加えて、チロシンまたはトリプトファンなどの芳香族残基は、疎水性膜と親水性溶媒の界面に位置するように適切な野生型アミノ酸を置換することができる。例えば、残基Leu154またはLeu182の1つまたは複数をTyr、PheまたはTrpによって置換することができる。
本発明の実施形態では、タンパク質ポアの熱安定性を増加させることができる。この結果、シークエンシングデバイス内でのナノポアの有効期限が有利に増されることになる。実施形態では、タンパク質ポアの熱安定性の増加は、ベータ・ターン配列の修飾によってまたはタンパク質表面での静電相互作用の向上によって達成される。一実施形態では、膜貫通領域のβ−ヘアピンを、隣接β−ヘアピン内または間の2本の隣接β鎖にわたる共有結合性ジスルフィドの形成によって安定させることができる。そのような交差鎖システイン対の例は、Val139−Asp203、Gly139−Gly205、Lys135−Thr207、Glu201−Ala141、Gly147−Gly189、Asp149−Gln187、Gln151−Glu185、Thr207−Glu185、Gly205−Gln187、Asp203−Gly189、Ala153−Lys135、Gly137−Gln151、Val139−Asp149またはAla141−Gly147でありうる。
本発明のさらなる実施形態では、ポリペプチド配列のコドン使用頻度を、Biotechnol. J., 2011, 6(6), 650-659に記載されている方法に従って、CsgGタンパク質の高レベルかつ低エラー率での発現を可能にするように修飾することができる。この修飾は、mRNAのあらゆる二次構造も標的にすることができる。
本発明は、タンパク質配列の、そのプロテアーゼ安定性を向上させるための変更も、提供する。これは、可撓性ループ領域の除去、例えば、α−ヘリックス2(α2)、C末端a−ヘリックス(αC)(図1)および/またはこれらの組合せの欠失によって果たすことができる。
本発明の実施形態では、CsgGポリペプチド配列/発現系は、起こりうるタンパク質凝集を回避するように変更される。
本発明は、タンパク質のフォールディング効率を向上させるためのポリペプチド配列の変更も提供する。好適な技術は、Biotechnol. J., 2011, 6(6), 650-659に提供されている。
本発明の一実施形態は、CsgGタンパク質の精製を助長するためのバイオアフィニティータグの置換または付加をさらに提供する。発表されているCsgGポア構造は、StrepIIタグを含有する(Goyal et al., Nature, 2014, 516(7530), 250-3)。本発明の実施形態は、金属キレートアフィニティークロマトグラフィーによる精製を助長するためのヒスチジンタグなどの、他のバイオアフィニティータグを含む。本発明の代替実施形態では、タグは、FLAGタグまたはエピトープタグ、例えばMycタグもしくはHAタグを含むことがある。本発明のさらなる実施形態では、ナノポアをビオチンまたはその類似体(例えばデスチオビオチン)でのビオチン化によって修飾することにより、ストレプトアビジンとの相互作用によって精製を助長することもある。
本発明の実施形態では、ポリペプチドの正味電荷を増加させ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動の際のタンパク質の泳動を助長するために、タンパク質末端に負電荷を付加させることがある。これは、CsgGのヘテロオリゴマーの、これらの化学種が目的の化学種である場合、分離向上をもたらすことができる(Howorka et al., Proc. Nat. Acad. Sci., 2001, 98(23), 12996-13001を参照されたい)。ヘテロオリゴマーは、ポア1つにつき1つだけのシステイン残基の導入に有用でありえ、この導入は、上記のDNA−ポリメラーゼなどの好適な核酸プロセシング酵素の結合を助長するのに有利でありうる。
本発明は、一部は、ナノポアを通って流れる電流の電気的測定値の変動に基づく分子センシング用途における野生型または修飾CsgGナノポアの使用に関する。
CsgGポアのチャネル内でのまたはチャネルのどちらか一方の開口部付近での分子の結合は、ポアを通る開口チャネルイオン流に対して影響を及ぼすことになる。上に記載した核酸シークエンシング用途と同様に、好適な測定技術を使用して電流の変化によって開口チャネルイオン流の変動を測定することができる(例えば、国際公開第2000/28312号パンフレットおよびD. Stoddart et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 2010, 106, 7702-7、または国際公開第2009/077734号パンフレット)。電流の低減によって測定されるようなイオン流の低減の程度は、ポア内のまたはポアの付近の妨害の大きさに関係づけられる。したがって、ポア内のまたはポア付近の目的の分子(分析物とも呼ぶ)の結合は、検出可能かつ測定可能な事象をもたらすことによって、生体センサーの基礎を成す。ナノポアセンシングに好適な分子としては、核酸、タンパク質、ペプチド、および小分子、例えば医薬、毒素またはサイトカインが挙げられる。
生体分子の存在の検出は、個別化創薬、医学、診断学、生命科学研究、環境モニタリングに、ならびに警備および/または防衛産業に応用される。
本発明の実施形態では、本明細書において開示する野生型もしくは修飾大腸菌(E. coli)CsgGナノポアまたはその相同体は、分子センサーとして役立つことができる。分析物検出の手順は、Howorka et al., Nature Biotechnology (2012) Jun 7; 30(6):506-7に記載されている。検出されることになる分析物分子は、チャネルのどちらかの面に結合することもあり、チャネル自体の内腔内に結合することもある。結合位置は、センシングされる分子のサイズによって決まりうる。野生型CsgGポアは、センサーとして作用することがあり、または本発明の実施形態では、CsgGポアは、組換え法もしくは化学的方法によって、センシングされる分子の結合の強度、結合の位置もしくは結合特異性を増加させるように修飾される。典型的な修飾としては、センシングされる分子の構造に相補的な特異的結合部分の付加が挙げられる。分析物分子が核酸を含む場合、この結合部分は、シクロデキストリンまたはオリゴヌクレオチドを含むことがあり;小分子については、これは、公知相補性結合領域、例えば、抗体のもしくは非抗体分子の抗原結合部分(一本鎖可変断片(scFv)領域、もしくはT細胞受容体(TCR)からの抗原認識ドメインを含む)であることがあり;またはタンパク質については、それは、標的タンパク質の公知リガンドであることがある。このように、野生型または修飾大腸菌(E. coli)CsgGナノポアまたはその相同体を試料中の好適な抗原(エピトープを含む)の存在を検出する分子センサーとして作用できるようすることができ、そのような好適な抗原としては、細胞表面抗原(受容体、固形腫瘍または血液がん細胞(例えばリンパ腫または白血病)のマーカーを含む)、ウイルス抗原、細菌抗原、原生動物抗原、アレルゲン、アレルギー関連分子、アルブミン(例えば、ヒト、齧歯動物またはウシ)、蛍光分子(フルオレセインを含む)、血液型抗原、小分子、薬物、酵素、酵素または酵素基質の触媒部位、および酵素基質の遷移状態類似体を挙げることができる。
修飾は、公知の遺伝子工学および組換えDNA技術を使用して果たすことができる。いずれの適応形態の位置設定も、センシングされる分子の性質、例えば、サイズ、三次元構造およびその生化学的性質に依存することになる。適応させる構造の選択にはコンピュータ構造設計を使用することができる。各々が予定されるセンシング用途に特に適応している一連の特注CsgGナノポアが構想される。タンパク質−タンパク質相互作用またはタンパク質−小分子相互作用の判定および最適化は、表面プラズモン共鳴を使用して分子相互作用を検出するBIAcore(登録商標)(BIAcore, Inc.、Piscataway、NJ;www.biacore.comも参照されたい)などの技術を使用して調査することができる。
実施形態では、CsgGポアは、タンパク質N末端の脂質化を防止するためにN末端Cys残基が代替アミノ酸によって置換されている水溶性オクタマー形態のものであることができる。代替実施形態では、細菌脂質化経路によるプロセシングを回避するためにN末端リーダー配列を除去することによってタンパク質を細胞質において発現させることができる。
CsgGモノマー可溶性タンパク質、オクタマー可溶性タンパク質およびオリゴマー脂質化CsgGポアの製造方法は、参照によって本明細書に組み入れられているGoyal ef al.(Nature, 2014; 516(7530): 250-3)に記載されており、ならびにそのような製造方法を実施例1および2に記載する。
変異体CsgGモノマー
本発明は、変異体CsgGモノマーを提供する。それらの変異体CsgGモノマーを使用して、本発明のポアを形成することができる。変異体CsgGモノマーは、配列が野生型CsgGモノマーのものとは異なるモノマーであって、ポアを形成する能力を保持するモノマーである。ポアを形成する変異体モノマーの能力を確認する方法は当技術分野において周知であり、そのような方法を下でより詳細に論じる。
変異体モノマーは、ポリヌクレオチド読み出し特性が向上している、すなわち、ポリヌクレオチド捕捉およびヌクレオチド識別の向上を示す。詳細には、変異体モノマーから構築されるポアは、野生型より容易にヌクレオチドおよびポリヌクレオチドを捕捉する。加えて、変異体モノマーから構築されるポアは、異なるヌクレオチド間の識別をより容易にする電流範囲の増加、およびシグナル対ノイズ比を増加させる状態変動の低減を示す。加えて、ポリヌクレオチドが変異体から構築されるポアを通って移動するときの電流に寄与するヌクレオチドの数が減少される。これは、ポリヌクレオチドがポアを通って移動しているときに観測される電流とポリヌクレオチド配列との直接的関連の同定をより容易にする。加えて、変異体モノマーから構築されるポアは、スループット増加を示すこともあり、すなわち、ポリヌクレオチドなどの分析物と相互作用する可能性がより高い。これは、ポアを使用する分析物の特徴づけをより容易にする。変異体モノマーから構築されるポアは、より容易に膜に入ることができる。
本発明の変異体モノマーは、配列番号390で示される配列のバリアントを含む。配列番号390は、大腸菌K12株MC4100亜株(Escherichia coli Str. K-12 substr. MC4100)からの野生型CsgGモノマーである。配列番号390のバリアントは、配列番号390のものとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、ポアを形成するその能力を保持するポリペプチドである。ポアを形成するバリアントの能力は、当技術分野において公知の任意の方法を使用してアッセイすることができる。例えば、バリアントを両親媒性層に他の適切なサブユニットとともに挿入してもよく、オリゴマー化してポアを形成するその能力を判定してもよい。両親媒性層などの膜にサブユニットを挿入する方法は、当技術分野において公知である。例えば、サブユニットを精製形態でトリブロックコポリマー膜を含有する溶液に懸濁させてもよく、その結果、サブユニットは膜に分散し、膜と結合することによって膜に挿入され、集合して機能性状態になる。
本明細書での論述のすべてにおいて、アミノ酸の標準1文字表記を使用する。これらは、次の通りである:アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リシン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)およびバリン(V)。標準置換表記法も使用する。すなわちQ42Rは、42位のQがRで置換されていることを意味する。
一実施形態では、本発明の変異体モノマーは、次のうちの1つまたは複数を含む配列390のバリアントを含む:(i)次の位置における1つまたは複数の変異(すなわち、次の位置の1つもしくは複数における変異):N40、D43、E44、S54、S57、Q62、R97、E101、E124、E131、R142、T150およびR192、例えば、次の位置における1つまたは複数の変異(すなわち、次の位置の1つもしくは複数における変異):N40、D43、E44、S54、S57、Q62、E101、E131およびT150、またはN40、D43、E44、E101およびE131、(ii)Y51/N55、Y51/F56、N55/F56またはY51/N55/F56における変異、(iii)Q42RまたはQ42K、(iv)K49R、(v)N102R、N102F、N102YまたはN102W、(vi)D149N、D149QまたはD149R、(vii)E185N、E185QまたはE185R、(viii)D195N、D195QまたはD195R、(ix)E201N、E201QまたはE201R、(x)E203N、E203QまたはE203R、ならびに(xi)次の位置の1つもしくは複数の欠失:F48、K49、P50、Y51、P52、A53、S54、N55、F56およびS57。バリアントは、(i)〜(xi)の任意の組合せを含むことがある。特に、バリアントは、
を含むことがある。
バリアントは、(i)および(iii)〜(xi)のいずれか1つを含む場合、Y51、N55およびF56の1つもしくは複数、例えば、Y51、N55、F56、Y51/N55、Y51/F56、N55/F56またはY51/N55/F56における変異をさらに含むことがある。
(i)において、バリアントは、N40、D43、E44、S54、S57、Q62、R97、E101、E124、E131、R142、T150およびR192のあらゆる数および組合せでの変異を含むことがある。(i)において、バリアントは、好ましくは、次の位置における1つまたは複数の変異(すなわち、次の位置の1つもしくは複数における変異)を含む:N40、D43、E44、S54、S57、Q62、E101、E131およびT150。(i)において、バリアントは、好ましくは、次の位置における1つまたは複数の変異(すなわち、次の位置の1つもしくは複数における変異)を含む:N40、D43、E44、E101およびE131。(i)において、バリアントは、好ましくは、S54および/またはS57における変異を含む。(i)において、バリアントは、より好ましくは、(a)S54および/またはS57ならびに(b)Y51、N55およびF56の1つもしくは複数、例えば、Y51、N55、F56、Y51/N55、Y51/F56、N55/F56またはY51/N55/F56における変異を含む。(xi)でS54および/またはS57が欠失されている場合、それ/それらは(i)における変異を受けることができず、逆もまた同様である。(i)において、バリアントは、好ましくは、T150における変異、例えばT150Iを含む。あるいは、バリアントは、好ましくは、(a)T150ならびに(b)Y51、N55およびF56の1つもしくは複数、例えば、Y51、N55、F56、Y51/N55、Y51/F56、N55/F56またはY51/N55/F56における変異を含む。(i)において、バリアントは、好ましくは、Q62における変異、例えばQ62RまたはQ62Kを含む。あるいは、バリアントは、好ましくは、(a)Q62ならびに(b)Y51、N55およびF56の1つもしくは複数、例えば、Y51、N55、F56、Y51/N55、Y51/F56、N55/F56またはY51/N55/F56における変異を含む。バリアントは、D43、E44、Q62またはこれらの任意の組合せ、例えば、D43、E44、Q62、D43/E44、D43/Q62、E44/Q62またはD43/E44/Q62における変異を含むことがある。あるいは、バリアントは、好ましくは、(a)D43、E44、Q62、D43/E44、D43/Q62、E44/Q62またはD43/E44/Q62ならびに(b)Y51、N55およびF56の1つもしくは複数、例えば、Y51、N55、F56、Y51/N55、Y51/F56、N55/F56またはY51/N55/F56における変異を含む。
本出願における(ii)および他の箇所での/という記号は「および」を意味し、したがってY51/N55は、Y51およびN55である。(ii)において、バリアントは、好ましくは、Y51/N55における変異を含む。CsgG内の狭窄は、残基Y51、N55およびF56の側鎖によって形成される3つの積み重なった同心環で作られると提唱されている(Goyal et al., 2014, Nature, 516, 250-253)。したがって、(ii)においてのこれらの残基の変異は、ポリヌクレオチドがポアを通って移動しているときに電流に寄与するヌクレオチドの数を減少させることによって、(ポリヌクレオチドがポアを通って移動しているときの)観測電流とポリヌクレオチドとの直接的関連の同定をより容易にすることができる。本発明の方法に有用なバリアントおよびポアに関して下で論じる方法のいずれかでY56を変異させてもよい。
(v)において、バリアントは、N102R、N102F、N102YまたはN102Wを含むことがある。バリアントは、好ましくは、(a)N102R、N102F、N102YまたはN102W、ならびに(b)Y51、N55およびF56の1つもしくは複数、例えば、Y51、N55、F56、Y51/N55、Y51/F56、N55/F56またはY51/N55/F56における変異を含む。
(xi)において、K49、P50、Y51、P52、A53、S54、N55、F56およびS57のあらゆる数および組合せが、欠失されていることがある。好ましくは、K49、P50、Y51、P52、A53、S54、N55およびS57の1つもしくは複数が、欠失されていることがある。(xi)でY51、N55およびF56のいずれかが欠失されている場合、それ/それらは(ii)における変異を受けることができず、逆もまた同様である。
(i)において、バリアントは、好ましくは、次の置換:N40R、N40K、D43N、D43Q、D43R、D43K、E44N、E44Q、E44R、E44K、S54P、S57P、Q62R、Q62K、R97N、R97G、R97L、E101N、E101Q、E101R、E101K、E101F、E101Y、E101W、E124N、E124Q、E124R、E124K、E124F、E124Y、E124W、E131D、R142E、R142N、T150I、R192EおよびR192Nの1つまたは複数、例えば、N40R、N40K、D43N、D43Q、D43R、D43K、E44N、E44Q、E44R、E44K、S54P、S57P、Q62R、Q62K、E101N、E101Q、E101R、E101K、E101F、E101Y、E101W、E131DおよびT150Iの1つもしくは複数、またはN40R、N40K、D43N、D43Q、D43R、D43K、E44N、E44Q、E44R、E44K、E101N、E101Q、E101R、E101K、E101F、E101Y、E101WおよびE131Dの1つもしくは複数を含む。バリアントは、これらの置換のあらゆる数および組合せを含むことがある。(i)において、バリアントは、好ましくは、S54Pおよび/またはS57Pを含む。(i)において、バリアントは、好ましくは、(a)S54Pおよび/またはS57P、ならびに(b)Y51、N55およびF56の1つもしくは複数、例えば、Y51、N55、F56、Y51/N55、Y51/F56、N55/F56またはY51/N55/F56における変異を含む。Y51、N55およびF56の1つもしくは複数における変異は、下で論じるもののいずれであってもよい。(i)において、バリアントは、好ましくは、F56A/S57PまたはS54P/F56Aを含む。バリアントは、好ましくは、T150Iを含む。あるいは、バリアントは、好ましくは、(a)T150Iならびに(b)Y51、N55およびF56の1つもしくは複数、例えば、Y51、N55、F56、Y51/N55、Y51/F56、N55/F56またはY51/N55/F56における変異を含む。
(i)において、バリアントは、好ましくは、Q62RまたはQ62Kを含む。あるいは、バリアントは、好ましくは、(a)Q62RまたはQ62K、ならびに(b)Y51、N55およびF56の1つもしくは複数、例えば、Y51、N55、F56、Y51/N55、Y51/F56、N55/F56またはY51/N55/F56における変異を含む。バリアントは、D43N、E44N、Q62RもしくはQ62Kまたはこれらのあらゆる組合せ、例えば、D43N、E44N、Q62R、Q62K、D43N/E44N、D43N/Q62R、D43N/Q62K、E44N/Q62R、E44N/Q62K、D43N/E44N/Q62RまたはD43N/E44N/Q62Kを含むことがある。あるいは、バリアントは、好ましくは、(a)D43N、E44N、Q62R、Q62K、D43N/E44N、D43N/Q62R、D43N/Q62K、E44N/Q62R、E44N/Q62K、D43N/E44N/Q62RまたはD43N/E44N/Q62K、ならびに(b)Y51、N55およびF56の1つもしくは複数、例えば、Y51、N55、F56、Y51/N55、Y51/F56、N55/F56またはY51/N55/F56における変異を含む。
(i)において、バリアントは、好ましくは、D43Nを含む。
(i)において、バリアントは、好ましくは、E101R、E101S、E101FまたはE101Nを含む。
(i)において、バリアントは、好ましくは、E124N、E124Q、E124R、E124K、E124F、E124Y、E124WまたはE124D、例えばE124Nを含む。
(i)において、バリアントは、好ましくは、R142EおよびR142Nを含む。
(i)において、バリアントは、好ましくは、R97N、R97GまたはR97Lを含む。
(i)において、バリアントは、好ましくは、R192EおよびR192Nを含む。
(ii)において、バリアントは、好ましくは、
を含む。
(ii)において、バリアントは、好ましくは、Y51R/F56Q、Y51N/F56N、Y51M/F56Q、Y51L/F56Q、Y51I/F56Q、Y51V/F56Q、Y51A/F56Q、Y51P/F56Q、Y51G/F56Q、Y51C/F56Q、Y51Q/F56Q、Y51N/F56Q、Y51S/F56Q、Y51E/F56Q、Y51D/F56Q、Y51K/F56QまたはY51H/F56Qを含む。
(ii)において、バリアントは、好ましくは、Y51T/F56Q、Y51Q/F56QまたはY51A/F56Qを含む。
(ii)において、バリアントは、好ましくは、Y51T/F56F、Y51T/F56M、Y51T/F56L、Y51T/F56I、Y51T/F56V、Y51T/F56A、Y51T/F56P、Y51T/F56G、Y51T/F56C、Y51T/F56Q、Y51T/F56N、Y51T/F56T、Y51T/F56S、Y51T/F56E、Y51T/F56D、Y51T/F56K、Y51T/F56HまたはY51T/F56Rを含む。
(ii)において、バリアントは、好ましくは、Y51T/N55Q、Y51T/N55SまたはY51T/N55Aを含む。
(ii)において、バリアントは、好ましくは、Y51A/F56F、Y51A/F56L、Y51A/F56I、Y51A/F56V、Y51A/F56A、Y51A/F56P、Y51A/F56G、Y51A/F56C、Y51A/F56Q、Y51A/F56N、Y51A/F56T、Y51A/F56S、Y51A/F56E、Y51A/F56D、Y51A/F56K、Y51A/F56HまたはY51A/F56Rを含む。
(ii)において、バリアントは、好ましくは、Y51C/F56A、Y51E/F56A、Y51D/F56A、Y51K/F56A、Y51H/F56A、Y51Q/F56A、Y51N/F56A、Y51S/F56A、Y51P/F56AまたはY51V/F56Aを含む。
(xi)において、バリアントは、好ましくは、Y51/P52の欠失、Y51/P52/A53の欠失、P50〜P52の欠失、P50〜A53の欠失、K49〜Y51の欠失、K49〜A53の欠失および単一のプロリン(P)での置換、K49〜S54の欠失および単一のPでの置換、Y51〜A53の欠失、Y51〜S54の欠失、N55/F56の欠失、N55〜S57の欠失、N55/F56の欠失および単一のPでの置換、N55/F56の欠失および単一のグリシン(G)での置換、N55/F56の欠失および単一のアラニン(A)での置換、N55/F56の欠失および単一のPでの置換およびY51N、N55/F56の欠失および単一のPでの置換およびY51Q、N55/F56の欠失および単一のPでの置換およびY51S、N55/F56の欠失および単一のGでの置換およびY51N、N55/F56の欠失および単一のGでの置換およびY51Q、N55/F56の欠失および単一のGでの置換およびY51S、N55/F56の欠失および単一のAでの置換およびY51N、N55/F56の欠失および単一のAでの置換/Y51Q、もしくはN55/F56の欠失および単一のAでの置換およびY51Sを含む。
バリアントは、より好ましくは、
を含む。
ポリヌクレオチドがポアを通って移動しているときの電流により少ないヌクレオチドが寄与するポアを形成する本発明の好ましいバリアントは、Y51A/F56A、Y51A/F56N、Y51I/F56A、Y51L/F56A、Y51T/F56A、Y51I/F56N、Y51L/F56NもしくはY51T/F56N、またはより好ましくはY51I/F56A、Y51L/F56AもしくはY51T/F56Aを含む。上で論じたように、これは、(ポリヌクレオチドがポアを通って移動しているときに)観測される電流とポリヌクレオチドとの直接的関連の同定をより容易にする。
範囲増加を示すポアを形成する好ましいバリアントは、次の位置における変異を含む:
Y51、F56、D149、E185、E201およびE203、
N55およびF56、
Y51およびF56、
Y51、N55およびF56、または
F56およびN102。
範囲増加を示すポアを形成する好ましいバリアントは、以下を含む:
Y51N、F56A、D149N、E185R、E201NおよびE203N、
N55SおよびF56Q、
Y51AおよびF56A、
Y51AおよびF56N、
Y51IおよびF56A、
Y51LおよびF56A、
Y51TおよびF56A、
Y51IおよびF56N、
Y51LおよびF56N、
Y51TおよびF56N、
Y51TおよびF56Q、
Y51A、N55SおよびF56A、
Y51A、N55SおよびF56N、
Y51T、N55SおよびF56Q、または
F56QおよびN102R。
ポリヌクレオチドがポアを通って移動しているときの電流により少ないヌクレオチドが寄与するポアを形成する好ましいバリアントは、
位置N55およびF56における変異、例えば、N55XおよびF56Q(ここでXは任意のアミノ酸である)、または
位置Y51およびF56における変異、例えば、Y51XおよびF56Q(ここでXは任意のアミノ酸である)
を含む。
スループット増加を示すポアを形成する好ましいバリアントは、次の位置における変異を含む:
D149、E185およびE203、
D149、E185、E201およびE203、または
D149、E185、D195、E201およびE203。
スループット増加を示すポアを形成する好ましいバリアントは、以下を含む:
D149N、E185NおよびE203N、
D149N、E185N、E201NおよびE203N、
D149N、E185R、D195N、E201NおよびE203N、または
D149N、E185R、D195N、E201RおよびE203N。
ポリヌクレオチドの捕捉が増加されるポアを形成する好ましいバリアントは、次の変異を含む:
D43N/Y51T/F56Q、
E44N/Y51T/F56Q、
D43N/E44N/Y51T/F56Q、
Y51T/F56Q/Q62R、
D43N/Y51T/F56Q/Q62R、
E44N/Y51T/F56Q/Q62R、または
D43N/E44N/Y51T/F56Q/Q62R。
好ましいバリアントは、次の変異を含む:
D149R/E185R/E201R/E203RもしくはY51T/F56Q/D149R/E185R/E201R/E203R、
D149N/E185N/E201N/E203NもしくはY51T/F56Q/D149N/E185N/E201N/E203N、
E201R/E203RもしくはY51T/F56Q/E201R/E203R、
E201N/E203RもしくはY51T/F56Q/E201N/E203R、
E203RもしくはY51T/F56Q/E203R、
E203NもしくはY51T/F56Q/E203N、
E201RもしくはY51T/F56Q/E201R、
E201NもしくはY51T/F56Q/E201N、
E185RもしくはY51T/F56Q/E185R、
E185NもしくはY51T/F56Q/E185N、
D149RもしくはY51T/F56Q/D149R、
D149NもしくはY51T/F56Q/D149N、
R142EもしくはY51T/F56Q/R142E、
R142NもしくはY51T/F56Q/R142N、
R192EもしくはY51T/F56Q/R192E、または
R192NもしくはY51T/F56Q/R192N。
好ましいバリアントは、次の変異を含む:
Y51A/F56Q/E101N/N102R、
Y51A/F56Q/R97N/N102G、
Y51A/F56Q/R97N/N102R、
Y51A/F56Q/R97N、
Y51A/F56Q/R97G、
Y51A/F56Q/R97L、
Y51A/F56Q/N102R、
Y51A/F56Q/N102F、
Y51A/F56Q/N102G、
Y51A/F56Q/E101R、
Y51A/F56Q/E101F、
Y51A/F56Q/E101N、または
Y51A/F56Q/E101G。
本発明は、配列390で示される配列のバリアントを含む変異体CsgGモノマーであって、バリアントがT150における変異を含む、変異体CsgGモノマーも提供する。挿入増加を示すポアを形成する好ましいバリアントは、T150Iを含む。T150における変異、例えばT150Iは、上で論じた変異または変異の組合せのいずれかと、組み合わせることができる。
本発明は、実施例において開示するバリアント中に存在する変異の組合せを含む配列390で示される配列のバリアントを含む変異体CsgGモノマーも提供する。
天然に存在するアミノ酸を導入または置換する方法は、当技術分野において周知である。例えば、メチオニン(M)は、変異体モノマーをコードするポリヌクレオチド中の適切な位置のメチオニンのコドン(ATG)をアルギニンのコドン(CGT)で置き換えることによって、アルギニン(R)で置換することができる。その後、そのポリヌクレオチドを下で論じるように発現させることができる。
天然に存在しないアミノ酸を導入または置換する方法も当技術分野において周知である。例えば、変異体モノマーを発現させるために使用されるIVTT系に合成アミノアシル−tRNAを含めることによって、天然に存在しないアミノ酸を導入することができる。あるいは、特異的アミノ酸に対して栄養要求性である大腸菌(E. coli)においてそれらの特異的アミノ酸の合成(すなわち天然に存在しない)類似体の存在下で変異体モノマーを発現させることによって、天然に存在しないアミノ酸を導入することができる。部分ペプチド合成を使用して変異体モノマーを導入する場合、ネイキッドライゲーション(naked ligation)によって、天然に存在しないアミノ酸を導入することもできる。
本発明の他のモノマー
別の実施形態では、本発明は、配列番号390で示される配列のバリアントを含む変異体CsgGモノマーであって、バリアントが位置Y51、N55およびF56の1つもしくは複数における変異を含む、変異体CsgGモノマーを提供する。バリアントは、Y51、N55、F56、Y51/N55、Y51/F56、N55/F56、またはY51/N55/F56における変異を含むことがある。バリアントは、好ましくは、Y51、N55またはF56における変異を含む。バリアントは、上で論じた位置Y51、N55およびF56の1つもしくは複数における、およびあらゆる組合せでの、特異的変異のいずれかを含むことがある。Y51、N55およびF56の1つもしくは複数がいずれのアミノ酸で置換されていることもある。Y51は、F、M、L、I、V、A、P、G、C、Q、N、T、S、E、D、K、HまたはR、例えば、A、S、T、NまたはQで置換されていることがある。N55は、F、M、L、I、V、A、P、G、C、Q、T、S、E、D、K、HまたはR、例えば、A、S、TまたはQで置換されていることがある。F56は、M、L、I、V、A、P、G、C、Q、N、T、S、E、D、K、HまたはR、例えば、A、S、T、NまたはQで置換されていることがある。
バリアントは、以下の1つまたは複数をさらに含むことがある:(i)次の位置における1つまたは複数の変異(すなわち、次の位置の1つもしくは複数における変異)(i)N40、D43、E44、S54、S57、Q62、R97、E101、E124、E131、R142、T150およびR192;(iii)Q42RまたはQ42K;(iv)K49R;(v)N102R、N102F、N102YまたはN102W;(vi)D149N、D149QまたはD149R;(vii)E185N、E185QまたはE185R;(viii)D195N、D195QまたはD195R;(ix)E201N、E201QまたはE201R;(x)E203N、E203QまたはE203R;ならびに(xi)次の位置の1つもしくは複数の欠失:F48、K49、P50、Y51、P52、A53、S54、N55、F56およびS57。バリアントは、上で論じた(i)および(iii)〜(xi)の組合せのいずれかを含むことがある。バリアントは、(i)および(iii)〜(xi)について上で論じた実施形態のいずれかを含むことがある。
バリアント
上で論じた特異的変異に加えて、バリアントは、他の変異を含むことがある。配列番号390のアミノ酸配列の全長にわたって、バリアントは、好ましくは、アミノ酸同一性に基づいてその配列と少なくとも50%相同であることになる。より好ましくは、バリアントは、アミノ酸同一性に基づいて、配列全体にわたって配列番号390のアミノ酸配列と少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同であることがある。連続する100以上、例えば125、150、175または200以上、のアミノ酸のストレッチにわたって、少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%または95%アミノ酸同一性(「堅い相同性(hard homology)」)があることもある。
当技術分野における標準的方法を使用して相同性を判定することができる。例えば、UWGCG Packageは、相同性を算出するために使用することができ、例えばそのデフォルト設定で使用される、BESTFITプラグラムを提供している(Devereux et al., (1984) Nucleic Acids Research 12, p387-395)。例えば、Altschul S. F. (1993) J Mol Evol 36:290-300;Altschul, S. F et al., (1990) J Mol Biol 215:403-10に記載されているように、PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを使用して、相同性を算出し、配列を並べる(例えば、等価の残基または対応する配列を(通常はそれらのデフォルト設定で)同定する)ことができる。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、米国国立生物学情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)で公的に入手できる。
配列番号390は、大腸菌K12株MC4100亜株(Escherichia coli Str. K-12 substr. MC4100)からの野生型CsgGモノマーである。配列番号390のバリアントは、別のCsgG相同体中に存在する置換のいずれかを含むことがある。好ましいCsgG相同体は、配列番号391〜395および414〜429で示される。バリアントは、配列番号390と比較して配列番号391〜395および414〜429に存在する置換の1つまたは複数についての組合せを含むことがある。
上で論じたものに加えて、アミノ酸置換、例えば1、2、3、4、5、10、20または30以下の置換が、配列番号390のアミノ酸配列に施されることもある。保存的置換は、アミノ酸を類似の化学構造、類似の化学的特性または類似の側鎖体積の他のアミノ酸で置換する。導入されるアミノ酸は、それらが置換するアミノ酸と同様の極性、親水性、疎水性、塩基性、酸性、中性または電荷を有することができる。あるいは、保存的置換は、既存の芳香族または脂肪族アミノ酸の代わりに、芳香族または脂肪族である別のアミノ酸を導入することもある。保存的アミノ酸変化は当技術分野において周知であり、下の表1において定義するような20の主要アミノ酸の特性に従ってそのような変化を選択することができる。アミノ酸が同様の極性を有する場合、このことも、表2中のアミノ酸側鎖についてのハイドロパシースケールを参照することによって判定することができる。
配列番号390のアミノ酸配列の1つまたは複数のアミノ酸残基が、上記のポリペプチドからさらに欠失されることもある。1、2、3、4、5、10、20または30以上までの残基が欠失されることがある。
バリアントは、配列番号390の断片を含むこともある。そのような断片は、ポア形成活性を保持する。断片は、長さ少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200または少なくとも250アミノ酸であることがある。そのような断片を、ポアを生成するために使用してもよい。断片は、好ましくは、配列番号390の膜貫通ドメイン、すなわち、K135〜Q153およびS183〜S208を含む。
1つまたは複数のアミノ酸が上記のポリペプチドに代替的にまたはさらに付加されることもある。配列番号390のアミノ酸配列またはそのポリペプチドバリアントもしくは断片のアミノ末端またはカルボキシ末端に伸長部が設けられることもある。伸長部は、かなり短いことがあり、例えば、長さ1〜10アミノ酸であることがある。あるいは、伸長部は、より長いこともあり、例えば、50または100アミノ酸以下であることもある。担体タンパク質が本発明によるアミノ酸配列に融合されることもある。他の融合タンパク質は、下でより詳細に論じる。
上で論じたように、バリアントは、配列番号390のものとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、ポアを形成するその能力を保持するポリペプチドである。バリアントは、ポア形成に関与している配列番号390の領域を通常は含有する。β−バレルを含有するCsgGのポア形成能力は、各サブユニット内のβ−シートによってもたらされる。配列番号390のバリアントは、β−シートを形成する配列番号390内の領域、すなわち、K135〜Q153およびS183〜S208を通常は含む。結果として生じるバリアントが、ポアを形成するその能力を保持するのであれば、β−シートを形成する配列番号390の領域に1つまたは複数の修飾を施すことができる。配列番号390のバリアントは、好ましくは、1つまたは複数の修飾、例えば置換、付加または欠失、をそのα−ヘリックスおよび/またはループ領域内に含む。
CsgGに由来するモノマーは、それらの同定または精製を支援するように、例えば、ストレプトアビジンタグの付加によって、または細胞からのそれらの分泌を促進するためのシグナル配列の付加(モノマーがそのような配列を天然に含有しない場合)によって、修飾されることがある。他の好適なタグは、下でより詳細に論じる。モノマーは、顕現標識で標識されることがある。顕現標識は、モノマーを検出できるようにするいずれの好適な標識であってもよい。好適な標識は、下で説明する。
CsgGに由来するモノマーは、D−アミノ酸を使用して産生されることもある。例えば、CsgGに由来するモノマーは、L−アミノ酸とD−アミノ酸の混合物を含むことがある。これは、そのようなタンパク質またはペプチドの産生に関する技術分野では当たり前のことである。
CsgGに由来するモノマーは、ヌクレオチド識別を助長するために1つまたは複数の特異的修飾を有する。CsgGに由来するモノマーは、他の非特異的修飾も、そのような修飾がポア形成に干渉しないのであれば、有することができる。多数の非特異的側鎖修飾が当技術分野において公知であり、そのような修飾をCsgGに由来するモノマーの側鎖に施すことができる。そのような修飾としては、例えば、アルデヒドとの反応、その後のNaBH4での還元による、還元アルキル化、アセトイミド酸メチルでのアミド化、または無水酢酸でのアシル化が挙げられる。
CsgGに由来するモノマーは、当技術分野において公知の標準的方法を使用して産生することができる。CsgGに由来するモノマーは、合成的に作製されることもあり、または組換え手段によって作製されることもある。例えば、モノマーをin vitro翻訳および転写(IVTT)によって合成してもよい。ポアおよびモノマーの好適な産生方法は、国際出願第PCT/GB09/001690号明細書(国際公開第2010/004273号パンフレットとして公開)、同第PCT/GB09/001679号明細書(国際公開第2010/004265号パンフレットとして公開)または同第PCT/GB10/000133号明細書(国際公開第2010/086603号パンフレットとして公開)において論じられている。膜へのポアの挿入方法が論じられている。
一部の実施形態では、変異体モノマーは、化学的に修飾される。変異体モノマーを任意の方法で、任意の部位で、化学的に修飾することができる。変異体モノマーは、好ましくは、1つもしくは複数のシステインへの分子の結合(システイン結合)、1つもしくは複数のリシンへの分子の結合、1つもしくは複数の非天然アミノ酸への分子の結合、エピトープの酵素修飾、または末端の修飾によって化学的に修飾される。そのような修飾の好適な実施方法は、当技術分野において周知である。いずれの分子の結合によって変異体モノマーを化学的に修飾してもよい。例えば、変異体モノマーを色素またはフルオロフォアの結合によって化学的に修飾してもよい。
一部の実施形態では、変異体モノマーは、該モノマーを含むポアと標的ヌクレオチドまたは標的ポリヌクレオチド配列との相互作用を助長する分子アダプターで化学的に修飾される。アダプターの存在は、ポアとヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列とのホスト・ゲストケミストリーを向上させることによって、変異体モノマーから形成されるポアのシークエンシング能力を向上させる。ホスト・ゲストケミストリーの原理は当技術分野において周知である。アダプターは、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列とのその相互作用を向上させるポアの物理的または化学的特性に対して影響を及ぼす。アダプターは、ポアのバレルもしくはチャネルの電荷を変更することによって、またはヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド配列と特異的に相互作用もしくは結合することによって、ポアとのその相互作用を助長することができる。
分子アダプターは、好ましくは、環状分子、シクロデキストリン、ハイブリダイゼーションできる化学種、DNA結合剤もしくは挿入剤、ペプチドもしくはペプチド類似体、合成ポリマー、芳香族平面分子、正電荷を有する小分子、または水素結合できる小分子である。
アダプターは、環状であることがある。環状アダプターは、好ましくは、ポアと同じ対称性を有する。CsgGは中心軸の周囲に8または9個のサブユニットを通常は有するので、アダプターは好ましくは8回または9回対称性である。このことは、下でより詳細に論じる。
アダプターは、通常は、ホスト・ゲストケミストリーによってヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列と相互作用する。アダプターは、通常は、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列と相互作用することができる。アダプターは、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列と相互作用することができる1つまたは複数の化学基を含む。1つまたは複数の化学基は、好ましくは、非共有結合性相互作用、例えば、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、π−カチオン相互作用および/または静電力によって、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列と相互作用する。ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列と相互作用することができる1つまたは複数の化学基は、好ましくは、正電荷を有する。ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列と相互作用することができる1つまたは複数の化学基は、より好ましくは、アミノ基を含む。アミノ基を第1級、第2級または第3級炭素原子に結合させることができる。アダプターは、よりいっそう好ましくは、アミノ基の環、例えば、アミノ基6、7または8個の環を含む。アダプターは、最も好ましくは、アミノ基8個の環を含む。プロトン化アミノ基の環は、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列中の負電荷を有するリン酸基と相互作用することができる。
ポア内のアダプターの正しい位置設定を、アダプターと変異体モノマーを含むポアとのホスト・ゲストケミストリーによって助長することができる。アダプターは、好ましくは、ポア内の1つまたは複数のアミノ酸と相互作用することができる1つまたは複数の化学基を含む。アダプターは、好ましくは、非共有結合性相互作用、例えば、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、π−カチオン相互作用および/または静電力によってポア内の1つまたは複数のアミノ酸と相互作用することができる1つまたは複数の化学基を含む。ポア内の1つまたは複数のアミノ酸と相互作用することができる化学基は、通常はヒドロキシルまたはアミンである。ヒドロキシル基を第1級、第2級または第3級炭素原子に結合させることができる。ヒドロキシル基は、ポア内の非荷電アミノ酸と水素結合を形成することができる。ポアとヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列との相互作用を助長するあらゆるアダプターを使用することができる。
好適なアダプターとしては、シクロデキストリン、環状ペプチドおよびククルビツリルが挙げられるが、これらに限定されない。アダプターは、好ましくは、シクロデキストリンまたはその誘導体である。シクロデキストリンまたはその誘導体は、Eliseev, A. V., and Schneider, H-J. (1994) J. Am. Chem. Soc. 116, 6081-6088に開示されているもののいずれかであってもよい。アダプターは、より好ましくは、ヘプタキス−6−アミノ−β−シクロデキストリン(am7−βCD)、6−モノデオキシ−6−モノアミノ−β−シクロデキストリン(am1−βCD)またはヘプタキス−(6−デオキシ−6−グアニジノ)−シクロデキストリン(gu7−βCD)である。gu7−βCD中のグアニジノ基は、am7−βCD中の第1級アミンよりはるかに高いpKaを有し、そのためより大きい正電荷を有する。このgu7−βCDアダプターは、ポア内のヌクレオチドの滞留時間を増加させるために、測定される残留電流の精度を増すために、ならびに高温および低いデータ収集率で塩基検出率を増加させるために使用することができる。
下でより詳細に論じるように3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸スクシンイミジル(SPDP)架橋剤を使用する場合、アダプターは、好ましくは、ヘプタキス(6−デオキシ−6−アミノ)−6−N−モノ(2−ピリジル)ジチオプロパノイル−β−シクロデキストリン(am6amPDP1−βCD)である。
より好適なアダプターとしては、9糖単位を含む(したがって9回対称性を有する)γ−シクロデキストリンが挙げられる。γ−シクロデキストリンは、リンカー分子を含有することがあり、または上で論じたβ−シクロデキストリンの例に使用される修飾糖単位のすべて乃至はそれより多くを含むように修飾されることもある。
分子アダプターは、好ましくは、変異体モノマーに共有結合される。当技術分野において公知の任意の方法を使用してアダプターをポアに共有結合させることができる。アダプターは、通常は化学結合によって結合される。分子アダプターが、システイン結合によって結合される場合、1つまたは複数のシステインが変異体に、例えばバレル内に、置換によって導入されているほうが好ましい。変異体モノマーは、該変異体モノマー中の1つまたは複数のシステインへの分子アダプターの結合によって、化学的に修飾されることがある。1つまたは複数のシステインは、天然に存在することがあり、すなわち、配列番号390の1位および/または215位にあることがある。あるいは、変異体モノマーは、他の位置に導入された1つまたは複数のシステインへの分子の結合によって、化学的に修飾されることもある。215位のシステインは、分子アダプターが1位のシステインまたは別の位置に導入されたシステインではなくその位置に結合しないことを確実にするために、例えば置換によって除去されることがある。
システイン残基の反応性が隣接残基の修飾によって向上されることもある。例えば、隣接するアルギニン、ヒスチジンまたはリシン残基の塩基性基は、システインのチオール基のpKaをより反応性の高いS−基のpKaへと変化させることになる。システイン残基の反応性がdTNBなどのチオール保護基によって保護されることもある。リンカーを結合させる前に変異体モノマーの1つまたは複数のシステイン残基とこれらの保護基を反応させることができる。分子が変異体モノマーに直接結合されることもある。分子は、好ましくは、化学的架橋剤またはペプチドリンカーなどのリンカーを使用して変異体分子に結合される。
好適な化学的架橋剤は、当技術分野において周知である。好ましい架橋剤としては、3−(ピリジン−2−イルジスルファニル)プロパン酸2,5−ジオキソピロリジン−1−イル、4−(ピリジン−2−イルジスルファニル)ブタン酸2,5−ジオキソピロリジン−1−イル、および8−(ピリジン−2−イルジスルファニル)オクタン酸2,5−ジオキソピロリジン−1−イルが挙げられる。最も好ましい架橋剤は、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸スクシンイミジル(SPDP)である。通常は、分子を二官能性架橋剤に共有結合させた後、その分子/架橋剤複合体を変異体モノマーに共有結合させるが、二官能性架橋剤をモノマーに共有結合させた後、その二官能性架橋剤/モノマー複合体を分子に結合させることも可能である。
リンカーは、好ましくは、ジチオトレイトール(DTT)に耐性である。好適なリンカーとしては、ヨードアセトアミド系およびマレイミド系リンカーが挙げられるが、これらに限定されない。
他の実施形態では、モノマーは、ポリヌクレオチド結合タンパク質に結合されることがある。これによって、本発明のシークエンシング方法で使用されうるモジュラーシークエンシングシステムが形成される。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、下で論じる。
ポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくは、変異体モノマーに共有結合される。当技術分野において公知の任意の方法を使用してタンパク質をモノマーに共有結合させることができる。モノマーおよびタンパク質は、化学的に融合されることもあり、または遺伝子的に融合されることもある。構築物全体を単一のポリヌクレオチド配列から発現される場合、モノマーおよびタンパク質を遺伝子的に融合させる。モノマーのポリヌクレオチド結合タンパク質への遺伝子的融合は、国際出願第PCT/GB09/001679号明細書(国際公開第2010/004265号パンフレットとして公開)において論じられている。
ポリヌクレオチド結合タンパク質がシステイン結合によって結合される場合、1つまたは複数のシステインが置換によって変異体に導入されているほうが好ましい。1つまたは複数のシステインは、好ましくは、相同体の中で保存が低度である(これは変異または挿入が許容されうることを示す)ループ領域に導入される。したがって、それらの領域は、ポリヌクレオチド結合タンパク質の結合に好適である。そのような実施形態では、251位に天然に存在するシステインが除去されることがある。システイン残基の反応性は、上記の修飾によって向上させることができる。
ポリヌクレオチド結合タンパク質は、変異体モノマーに直接結合されることもあり、または1つもしくは複数のリンカーを介して結合されることもある。国際出願第PCT/GB10/000132号明細書(国際公開第2010/086602号パンフレットとして公開)に記載されているハイブリダイゼーションリンカーを使用して分子を変異体モノマーに結合させてもよい。あるいは、ペプチドリンカーを使用してもよい。ペプチドリンカーは、アミノ酸配列である。ペプチドリンカーの長さ、可撓性、および親水性は、通常は、そのペプチドリンカーがモノマーおよび分子の機能を妨げないように設計される。好ましい可撓性リンカーは、セリンおよび/またはグリシンアミノ酸2〜20個、例えば4、6、8、10または16個のストレッチである。より好ましい可撓性リンカーとしては、(SG)1、(SG)2、(SG)3、(SG)4、(SG)5および(SG)8が挙げられ、この場合のSはセリンであり、Gはグリシンである。好ましい剛性リンカーは、プロリンアミノ酸2〜30個、例えば4、6、8、16または24個のストレッチである。より好ましい剛性リンカーとしては、(P)12が挙げられ、この場合のPはプロリンである。
変異体モノマーは、分子アダプターおよびポリヌクレオチド結合タンパク質で化学的に修飾されることがある。
分子(モノマーを化学的に修飾する分子)は、モノマーに直接結合されることもあり、または国際出願第PCT/GB09/001690号明細書(国際公開第2010/004273号パンフレットとして公開)、同第PCT/GB09/001679号明細書(国際公開第2010/004265号パンフレットとして公開)もしくは同第PCT/GB10/000133号明細書(国際公開第2010/086603号パンフレットとして公開)に開示されているようなリンカーを介して結合されることもある。
本発明の変異体モノマーおよびポアなどの、本明細書に記載するタンパク質のいずれかは、それらの同定または精製を支援するように、例えば、ヒスチジン残基(hisタグ)、アスパラギン酸残基(aspタグ)、ストレプトアビジンタグ、flagタグ、SUMOタグ、GSTタグもしくはMBPタグの付加によって、または細胞からのそれらの分泌を促進するためのシグナル配列の付加(ポリペプチドがそのような配列を天然に含有しない場合)によって、修飾されることがある。遺伝子タグを導入するための代替法は、タグをタンパク質上のネイティブ位置または工学的に操作された位置に化学反応させる方法である。この方法の例は、タンパク質の外側の工学的に操作されたシステインにゲルシフト試薬を反応させる方法であろう。この方法は、溶血素ヘテロオリゴマーを分離する方法として立証されている(Chem Biol. 1997 Jul;4(7):497-505)。
本発明の変異体モノマーおよびポアなどの、本明細書に記載するタンパク質のいずれかは、顕現標識で標識されることがある。顕現標識は、タンパク質を検出できるようにするいずれの好適な標識であってもよい。好適な標識としては、蛍光分子、放射性同位元素、例えば、125I、35S、酵素、抗体、抗原、ポリヌクレオチドおよびリガンド、例えばビオチンが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のモノマーまたはポアなどの、本明細書に記載するタンパク質のいずれかは、合成的に作製されることがあり、または組換え手段によって作製されることもある。例えば、タンパク質は、in vitro翻訳および転写(IVTT)によって合成されることがある。タンパク質のアミノ酸配列は、天然に存在しないアミノ酸を含むように修飾されることもあり、またはタンパク質の安定性を増すように修飾されることもある。タンパク質が合成手段によって産生される場合、そのようなアミノ酸を産生中に導入することができる。タンパク質は、合成的産生または組み換え産生のどちらか一方の後に改変されることもある。
タンパク質は、D−アミノ酸を使用して産生されることもある。例えば、タンパク質は、L−アミノ酸とD−アミノ酸の混合物を含むことがある。これは、そのようなタンパク質またはペプチドの産生に関する技術分野では当たり前のことである。
タンパク質は、他の非特異的修飾も、それらのタンパク質の機能に干渉しないのであれば、有することができる。多数の非特異的側鎖修飾が当技術分野において公知であり、そのような修飾をタンパク質の側鎖に施すことができる。そのような修飾としては、例えば、アルデヒドとの反応、その後のNaBH4での還元による、アミノ酸の還元アルキル化、アセトイミド酸メチルでのアミド化、または無水酢酸でのアシル化が挙げられる。
本発明のモノマーおよびポアを含む、本明細書に記載するタンパク質のいずれかは、当技術分野において公知の標準的方法を使用して産生することができる。タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、当技術分野における標準的方法を使用して誘導および複製することができる。タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、当技術分野における標準技術を使用して細菌宿主細胞において発現させることができる。タンパク質は、組換え発現ベクターからのポリペプチドのインサイチュ発現によって細胞において産生されることもある。発現ベクターは、ポリペプチドの発現を制御するための誘導性プロモーターを場合により有する。これらの方法は、Sambrook, J. and Russell, D. (2001). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYに記載されている。
タンパク質は、任意のタンパク質液体クロマトグラフィーシステムによるタンパク質産生生物からの精製後、または組換え発現後、大規模に産生することができる。典型的なタンパク質液体クロマトグラフィーシステムとしては、FPLC、AKTAシステム、Bio−Cadシステム、Bio−Rad BioLogicシステムおよびGilson HPLCシステムが挙げられる。
構築物
本発明は、共有結合している2つ以上のCsgGモノマーを含む構築物であって、モノマーの少なくとも1つが本発明の変異体モノマーである、構築物も提供する。本発明の構築物は、ポアを形成するその能力を保持する。このことは、上で論じたようにして判定することができる。本発明の1つまたは複数の構築物を使用して、ポリヌクレオチドを特徴づける、例えばシークエンシングするためのポアを形成することができる。構築物は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマーを含むことがある。構築物は、好ましくは2つのモノマーを含む。2つ以上のモノマーは、同じであることもあり、または異なることもある。
構築物中の少なくとも1つのモノマーは、本発明の変異体モノマーである。構築物中の2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上または10以上のモノマーが本発明の変異体モノマーであることもある。好ましくは、構築物中のすべてのモノマーが、本発明の変異体モノマーである。変異体モノマーは、同じであることもあり、または異なることもある。好ましい実施形態では、構築物は、本発明の2つの変異体モノマーを含む。
構築物中の本発明の変異体モノマーは、好ましくはほぼ同じ長さである、または同じ長さである。構築物中の本発明の変異体モノマーのバレルは、好ましくはほぼ同じ長さである、または同じ長さである。長さは、アミノ酸の数および/または長さの単位で測定することができる。
構築物は、本発明の変異体モノマーでない1つまたは複数のモノマーを含むことがある。本発明の非変異体モノマーでないCsgG変異体モノマーとしては、上で論じたいずれのアミノ酸/位置も変異されていない配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428もしくは429または配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428もしくは429の比較バリアントを含むモノマーが挙げられる。構築物中の少なくとも1つのモノマーは、配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428もしくは429を含むことがあり、または配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428もしくは429で示される配列の比較バリアントを含むことがある。配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429の比較バリアントは、アミノ酸同一性に基づいて、その全配列にわたって390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429、40または41と少なくとも50%相同である。より好ましくは、比較バリアントは、アミノ酸同一性に基づいて、配列全体にわたって配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429のアミノ酸配列と少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同であることがある。
構築物中のモノマーは、好ましくは遺伝子的に融合されている。モノマーは、構築物全体が単一のポリヌクレオチド配列から発現される場合、遺伝子的に融合されている。構築物をコードする単一のポリヌクレオチド配列を形成するためにモノマーのコード配列をいかなる形で組み合わせてもよい。
モノマーは、いかなる立体配置で遺伝子的に融合されていてもよい。モノマーは、それらの末端アミノ酸によって融合されていることもある。例えば、1つのモノマーのアミノ末端が別のモノマーのカルボキシ末端に融合されていることもある。構築物中の(アミノからカルボキシ方向に)第2のおよび後続のモノマーは、それらのアミノ末端にメチオニンを含むことがある(末端の各々が前のモノマーのカルボキシ末端に融合されている)。例えば、Mが(アミノ末端メチオニンを伴わない)モノマーであり、mMが、アミノ末端メチオニンを伴うモノマーである場合、構築物は、配列M−mM、M−mM−mM、またはM−mM−mM−mMを含むことがある。これらのメチオニンの存在は、通常は、全構築物をコードするポリヌクレオチド中の第2のまたは後続のモノマーをコードするポリヌクレオチドの5’末端の開始コドン(すなわちATG)の発現の結果として生ずる。構築物中の(アミノからカルボキシ方向に)第1のモノマーもメチオニンを含むことがある(例えば、mM−mM、mM−mM−mM、またはmM−mM−mM−mM)。
2つ以上のモノマーが、互いに、直接、遺伝子的に融合されていることもある。モノマーは、好ましくは、リンカーを使用して遺伝子的に融合されている。モノマーの移動性を制限するようにリンカーを設計してもよい。好ましいリンカーは、アミノ酸配列(すなわち、ペプチドリンカー)である。上で論じたペプチドリンカーのいずれかを使用してもよい。
別の好ましい実施形態では、モノマーは、化学的に融合されている。2つのモノマーは、2つの部分が化学的に結合されている、例えば化学的架橋剤によって結合されている場合、化学的に融合されている。上で論じた化学的架橋剤のいずれかを使用してもよい。リンカーは、本発明の変異体モノマーに導入された1つまたは複数のシステイン残基に結合されることもある。あるいは、リンカーは、構築物中のモノマーのうちの1つの末端に結合されることもある。
構築物が様々なモノマーを含有する場合、大過剰のモノマー中のリンカーの濃度を保持することによってモノマー同士の架橋を防止することができる。あるいは、2つのリンカーが使用される「鍵と鍵穴」配置を使用してもよい。各リンカーの一方の末端のみが互いに反応してより長いリンカーを形成することができる。そのリンカーの他方の末端は、各々が様々なモノマーと反応する。そのようなリンカーは、国際出願第PCT/GB10/000132号明細書(国際公開第2010/086602号パンフレットとして公開)に記載されている。
ポリヌクレオチド
本発明は、本発明の変異体モノマーをコードするポリヌクレオチド配列も提供する。変異体モノマーは、上で論じたもののいずれかであってもよい。ポリヌクレオチド配列は、ヌクレオチド同一性に基づいて、全配列にわたって配列番号389と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%相同の配列を好ましくは含む。連続する300以上、例えば375、450、525または600以上のヌクレオチドのストレッチにわたって、少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%または95%ヌクレオチド同一性(「堅い相同性」)があることもある。相同性は、上で説明したように算出することができる。ポリヌクレオチド配列は、遺伝コードの縮重に基づいて配列番号389とは異なる配列を含むことがある。
本発明は、本発明の遺伝子融合構築物のいずれかをコードするポリヌクレオチド配列も提供する。ポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号389で示される配列の2つ以上のバリアントを含む。ポリヌクレオチド配列は、ヌクレオチド同一性に基づいて、全配列にわたって配列番号389と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%の相同性を有する2つ以上の配列を好ましくは含む。連続する600以上、例えば750、900、1050または1200以上のヌクレオチドのストレッチにわたって、少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%または95%ヌクレオチド同一性(「堅い相同性」)があることもある。相同性は、上で説明したように算出することができる。
ポリヌクレオチド配列は、当技術分野における標準的方法を使用して誘導および複製することができる。野生型CsgGをコードする染色体DNAを大腸菌(Escherichia coli)などのポア産生生物から抽出することができる。特異的プライマーを伴うPCRを使用して、ポアサブユニットをコードする遺伝子を増幅することもできる。その後、その増幅された配列は定方向突然変異誘発されることがある。好適な定方向突然変異誘発方法は当技術分野において公知であり、連鎖反応を含む、例えば併用する。本発明の構築物をコードするポリヌクレオチドは、周知の技術、例えば、Sambrook, J. and Russell, D. (2001). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYに記載されている技術を使用して、作製することができる。
その後、その得られたポリヌクレオチド配列をクローニングベクターなどの複製可能な組換えベクターに組み込むことができる。そのベクターを使用して、適合性宿主細胞においてポリヌクレオチドを複製することができる。このように、ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチドを複製可能なベクターに導入すること、適合性宿主にベクターを導入すること、およびベクターの複製を起こさせる条件下で宿主細胞を増殖させることによって作製することができる。ベクターを宿主細胞から回収することができる。ポリヌクレオチドのクローニングに好適な宿主細胞は当技術分野において公知であり、そのような宿主細胞は、下でより詳細に説明する。
ポリヌクレオチド配列を好適な発現ベクターにクローニングすることができる。発現ベクター中のポリヌクレオチド配列は、通常は、宿主細胞によるコード配列の発現をもたらすことができる制御配列に作動可能に連結されている。そのような発現ベクターを使用してポアサブユニットを発現させることができる。
用語「作動可能に連結された」は、記載する成分がそれらの所期の様式で機能することを可能にする関係にある、並置を指す。コード配列に「作動可能に連結された」制御配列は、コード配列の発現が制御配列と適合する条件下で達成されるようにライゲーションされている。同じまたは異なるポリヌクレオチド配列の複数のコピーがベクターに導入されることもある。
その後、その発現ベクターを好適な宿主細胞に導入することができる。このように、本発明の変異体モノマーまたは構築物は、ポリヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入すること、ベクターを適合性細菌宿主細胞に導入すること、およびポリヌクレオチド配列の発現を起こさせる条件下で宿主細胞を増殖させることによって産生することができる。これらの組換え発現モノマーまたは構築物は、宿主細胞膜内で自己集合してポアを構築することができる。あるいは、このようにして産生された組換えポアを宿主細胞から除去し、別の膜に挿入することができる。少なくとも2つの異なるモノマーまたは構築物を含むポアを産生する場合、それらの異なるモノマーまたは構築物を、上記の異なる宿主細胞で別々に発現させ、宿主細胞から除去し、別の膜、例えばウサギ細胞膜または合成膜の中でポアに組立てることができる。
ベクターは、例えば、複製起点、場合によっては前記ポリヌクレオチド配列の発現のためのプロモーター、および場合によってはプロモーターの制御因子を備えている、プラスミド、ウイルスまたはファージベクターでありうる。ベクターは、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子、例えば、テトラサイクリン耐性遺伝子を含有することがある。プロモーターおよび他の発現調節シグナルは、発現ベクターが設計される宿主細胞と適合するように選択することができる。T7、trc、lac、araまたはλLプロモーターが通常は使用される。
宿主細胞は、通常は、モノマーまたは構築物を高レベルで発現する。ポリヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、その細胞を形質転換するために使用された発現ベクターと適合するように選択されることになる。宿主細胞は、通常は細菌細胞、好ましくは大腸菌(Escherichia coli)細胞である。λDE3溶原菌、例えば、C41(DE3)、BL21(DE3)、JM109(DE3)、B834(DE3)、TUNER、OrigamiおよびOrigami Bを有するあらゆる細胞が、T7プロモーターを含むベクターを発現することができる。上に列挙した条件に加えて、Cao et al., 2014, PNAS, Structure of the nonameric bacterial amyloid secretion channel, doi - 1411942111およびGoyal et al., 2014, Nature, 516, 250-253 structural and mechanistic insights into the bacterial amyloid secretion channel CsgGにおいて言及されている方法のいずれかを使用してCsgGタンパク質を発現させることができる。
本発明は、本発明の変異体モノマーまたは本発明の構築物を産生する方法も含む。この方法は、好適な宿主細胞において本発明のポリヌクレオチドを発現させるステップを含む。ポリヌクレオチドは、好ましくはベクターの一部であり、好ましくはプロモーターに作動可能に連結されている。
ポア
本発明は、様々なポアも提供する。本発明のポアは、高い感度で異なるヌクレオチドを識別することができるため、ポリヌクレオチド配列の特徴づけ、例えばシークエンシングに理想的である。ポアは、DNAおよびRNA中の4ヌクレオチドを驚くほど区別することができる。本発明のポアは、メチル化ヌクレオチドと非メチル化ヌクレオチドを区別することさえできる。本発明のポアの塩基分解能は、驚くほど高い。ポアは、4つすべてのDNAヌクレオチドのほぼ完全な分離を示す。さらに、ポアは、ポア内での滞留時間およびポアを通って流れる電流に基づいて、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)とメチル−dCMPとを識別する。
本発明のポアは、広範な条件下で異なるヌクレオチド間の識別をすることもできる。特に、ポアは、核酸の特徴づけ、例えばシークエンシングに好都合である条件下で、ヌクレオチド間の識別をすることになる。本発明のポアが異なるヌクレオチド間の識別をすることができる程度は、印加する電位、塩濃度、緩衝液、温度、ならびに添加剤、例えば尿素、ベタインおよびDTT、の存在を変更することによって制御することができる。このことによって、特にシークエンシングの際、ポアの機能を微調整することが可能になる。このことは、下でより詳細に論じる。本発明のポアを使用して、ヌクレオチドごとにではなく、1つまたは複数のモノマーとの相互作用からポリヌクレオチドポリマーを同定することもできる。
本発明のポアは、単離されていることもあり、実質的に単離されていることもあり、精製されていることもあり、または実質的に精製されていることもある。本発明のポアは、脂質または他のポアなどのいずれの他の成分も完全にない場合、単離または精製されている。ポアは、その所期の使用に干渉しないであろう担体または希釈剤と混合されている場合、実質的に単離されている。例えば、ポアは、10%未満、5%未満、2%未満または1%未満の他の成分、例えばトリブロックコポリマー、脂質または他のポア、を含む形態で存在する場合、実質的に単離または実質的に精製されている。あるいは、本発明のポアは、膜内に存在することもある。好適な膜は、下で論じる。
本発明のポアは、個別のまたは単一のポアとして存在することがある。あるいは、本発明のポアは、2つ以上のポアの均質なまたは不均質な集団で存在することもある。
ホモオリゴマーポア
本発明は、本発明の同一の変異体モノマーを含むCsgGに由来するホモオリゴマーポアも提供する。ホモオリゴマーポアは、本発明の変異体のいずれかを含むことがある。本発明のホモオリゴマーポアは、ポリヌクレオチドの特徴づけ、例えばシークエンシングに理想的である。本発明のホモオリゴマーポアは、上で論じた利点のいずれかを有することができる。
ホモオリゴマーポアは、あらゆる数の変異体モノマーを含有することがある。ポアは、通常は、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10の同一の変異体モノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10の変異体モノマーを含む。ポアは、好ましくは、8つまたは9つの同一の変異体モノマーを含む。1つまたは複数、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10の変異体モノマーは、好ましくは、上で論じたように化学的に修飾される。
ポアを作製する方法は、下でより詳細に論じる。
ヘテロオリゴマーポア
本発明は、本発明の少なくとも1つの変異体モノマーを含むCsgGに由来するヘテロオリゴマーポアも提供する。本発明のヘテロオリゴマーポアは、ポリヌクレオチドの特徴づけ、例えばシークエンシングに理想的である。ヘテロオリゴマーポアは、当技術分野において公知の方法(例えば、Protein Sci. 2002 Jul; 11 (7): 1813-24)を使用して作製することができる。
ヘテロオリゴマーポアは、そのポアを形成するために十分なモノマーを含有する。それらのモノマーは、いかなるタイプのものであってもよい。ポアは、通常は、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含む。ポアは、好ましくは、8つまたは9つのモノマーを含む。
好ましい実施形態では、モノマーのすべて(例えば、モノマーのうちの10、9、8または7つ)が本発明の変異体モノマーであり、それらのうちの少なくとも1つは、他と異なる。より好ましい実施形態では、ポアは、本発明の8つまたは9つの変異体モノマーを含み、それらのうちの少なくとも1つは、他と異なる。それらは、すべてが互いに異なることもある。
ポア中の本発明の変異体モノマーは、好ましくはほぼ同じ長さである、または同じ長さである。ポア中の本発明の変異体モノマーのバレルは、好ましくはほぼ同じ長さである、または同じ長さである。長さは、アミノ酸の数および/または長さの単位で測定することができる。
別の好ましい実施形態では、変異体モノマーの少なくとも1つは、本発明の変異体モノマーではない。この実施形態での残りのモノマーは、好ましくは、本発明の変異体モノマーである。したがって、ポアは、本発明の9つ、8つ、7つ、6つ、5つ、4つ、3つ、2つまたは1つの変異体モノマーを含むことがある。ポア内のいかなる数のモノマーが本発明の変異体モノマーでなくてもよい。ポアは、好ましくは、本発明の7つまたは8つの変異体モノマーと、本発明のモノマーでないモノマーとを含む。本発明の変異体モノマーは、同じであることもあり、または異なることもある。
構築物中の本発明の変異体モノマーは、好ましくはほぼ同じ長さである、または同じ長さである。構築物中の本発明の変異体モノマーのバレルは、好ましくはほぼ同じ長さである、または同じ長さである。長さは、アミノ酸の数および/または長さの単位で測定することができる。
ポアは、本発明の変異体モノマーでない1つまたは複数のモノマーを含むことがある。本発明の変異体モノマーでないCsgGモノマーとしては、上で論じたいずれのアミノ酸/位置も変異/置換されていない配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428もしくは429または配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428もしくは429の比較バリアントを含むモノマーが挙げられる。配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429の比較バリアントは、アミノ酸同一性に基づいて、その全配列にわたって配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429と通常は少なくとも50%相同である。より好ましくは、比較バリアントは、アミノ酸同一性に基づいて、配列全体にわたって配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429のアミノ酸配列と少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同であることがある。
上で論じたすべての実施形態では、変異体モノマーの1つまたは複数、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10が、好ましくは、上で論じたように化学的に修飾される。
ポアを作製する方法は、下でより詳細に論じる。
構築物含有ポア
本発明は、本発明の少なくとも1つの構築物を含むポアも提供する。本発明の構築物は、CsgGに由来する共有結合している2つ以上のモノマーを含み、モノマーの少なくとも1つは本発明の変異体モノマーである。言い換えると、構築物は、1つより多くのモノマーを含有しなければならない。ポアは、そのポアを形成するために十分な構築物および、必要に応じて、モノマーを含有する。例えば、オクタマーポアは、(a)各々が2つの構築物を含む4つの構築物を含むこともあり、(b)各々が4つのモノマーを含む2つの構築物を含むこともあり、または(b)2つのモノマーを含む1つの構築物と、構築物の一部を形成しない6つのモノマーとを含むこともある。例えば、ナノマーポアは、(a)各々が2つの構築物を含む4つの構築物と、構築物の一部を形成しない1つのモノマーとを含むこともあり、(b)各々が4つのモノマーを含む2つの構築物と、構築物の一部を形成しないモノマーとを含むこともあり、または(b)2つのモノマーを含む1つの構築物と、構築物の一部を形成しない7つのモノマーとを含むこともある。構築物とモノマーの他の組合せを当業者は予想することができる。
ポア中のモノマーの少なくとも2つは、本発明の構築物の形態のものである。構築物およびしたがってポアは、本発明の少なくとも1つの変異体モノマーを含む。ポアは、合計で、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを通常は含む(モノマーの少なくとも2つは、構築物中になければならない)。ポアは、好ましくは、8つまたは9つのモノマーを含む(モノマーの少なくとも2つは、構築物中になければならない)。
構築物含有ポアは、ホモオリゴマーである(すなわち、同一の構築物を含む)こともあり、またはヘテロオリゴマー(すなわち、少なくとも1つの構築物が他と異なる場合)であることもある。
ポアは、通常は、(a)2つのモノマーを含む1つの構築物および(b)5つ、6つ、7つまたは8つのモノマーを含有する。構築物は、上で論じたもののいずれかであってもよい。モノマーは、本発明の変異体モノマー、配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429を含むモノマー、および上で論じた通りの配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429の比較バリアントを含む変異体モノマーを含む、上で論じたもののいずれかであってもよい。
別の典型的なポアは、本発明の1つより多くの構築物、例えば、本発明の2つ、3つまたは4つの構築物を含む。必要に応じて、そのようなポアは、そのポアを形成するために十分なさらなるモノマーまたは構築物をさらに含む。さらなるモノマーは、本発明の変異体モノマー、配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429を含むモノマー、および上で論じた通りの配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429の比較バリアントを含む変異体モノマーを含む、上で論じたもののいずれかであってもよい。さらなる構築物は、上で論じたもののいずれであってもよく、あるいは上で論じた配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428もしくは429を含むモノマーまたは配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429の比較バリアントを各々が含む、共有結合している2つ以上のCsgGモノマーを含む構築物であってもよい。
本発明のさらなるポアは、2つのモノマーを含む構築物のみを含み、例えば、ポアは、2つのモノマーを含む4つ、5つ、6つ、7つまたは8つの構築物を含むことがある。少なくとも1つの構築物は、本発明の構築物であり、すなわち、少なくとも1つの構築物中の少なくとも1つのモノマー、好ましくは、少なくとも1つの構築物中の各モノマーは、本発明の変異体モノマーである。2つのモノマーを含む構築物のすべてが本発明の構築物であることもある。
本発明による特異的ポアは、2つのモノマーを各々が含む本発明の4つの構築物であって、各構築物中の少なくとも1つのモノマー、好ましくは各構築物中の各モノマーが本発明の変異体モノマーである、4つの構築物を含む。構築物はオリゴマー化して、各構築物の1つだけのモノマーがポアのチャネルに寄与するような構造を有するポアにすることもできる。通常は、構築物の他のモノマーは、ポアのチャネルの外側にあることになる。例えば、本発明のポアは、2つのモノマーを含む7つ、8つ、9つまたは10の構築物であって、チャネルが7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含む、構築物を含むことがある。
上記の構築物に変異を導入することができる。変異は、交互であることもある。すなわち、2つのモノマー構築物内の各モノマーの変異が異なり、構築物がホモオリゴマーとして組立てられ、その結果、交互修飾となる。言い換えると、MutAおよびMutBを含むモノマーが融合され、A−B:A−B:A−B:A−Bポアを形成するように組立てられる。あるいは、変異は、隣接していることもある。すなわち、同一の変異が構築物中の2つのモノマーに導入され、ついでこの構築物が、異なる変異体モノマーまたは構築物を用いてオリゴマー化される。言い換えると、MutAを含むモノマーが融合され、その後、MutB含有モノマーを用いてA−A:B:B:B:B:B;Bを形成するようにオリゴマー化される。
構築物含有ポア中の本発明のモノマーの1つまたは複数が、上で論じたように化学的に修飾されることもある。
分析物特徴づけ
本発明は、標的分析物の存在、不在または1つもしくは複数の特徴を判定する方法を提供する。この方法は、標的分析物とCsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポアとを、標的分析物がポアに対して、例えばポアを通って、移動するように接触させるステップ、および分析物がポアに対して移動しているときに1回または複数回の測定を行うことによって分析物の存在、不在または1つもしくは複数の特徴を判定するステップを含む。標的分析物をテンプレート分析物または目的の分析物と呼ぶこともある。
方法は、標的分析物とCsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポアとを、標的分析物がポアを通って移動するように接触させるステップを含む。ポアは、通常は、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含む。ポアは、好ましくは、8つまたは9つの同一のモノマーを含む。好ましくは、1つまたは複数、例えば2、3、4、5、6、7、8、9または10、のモノマーが、上で論じたように化学的に修飾される。
CsgGポアは、いずれの生物に由来してもよい。CsgGポアは、配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429で示される配列を含むモノマーを含むことがある。CsgGポアは、配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429で示される配列を各々が含む、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含むことがある(すなわち、ポアは、同じ生物からの同一のモノマーを含むホモオリゴマーである)。CsgGは、配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429で示される配列を各々が含む、モノマーの任意の組合せを含むこともある。例えば、ポアは、配列番号390で示される配列を含む7つのモノマーと、配列番号391で示される配列を含む2つのモノマーとを含むことがある。
CsgG変異体は、あらゆる数の変異体モノマー、例えば、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含むことがある。変異体モノマーは、配列番号390、391、392、393、394、395、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428または429で示される配列の比較バリアントを含むこともある。比較バリアントは、上で論じている。比較バリアントは、ポアを形成することができなければならず、本発明のポアに関して上で論じた相同性%のいずれかを有することがある。
CsgG変異体は、好ましくは9つのモノマーを含み、それらのモノマーの少なくとも1つは、配列番号390で示される配列のバリアントであって、(a)次の位置の1つもしくは複数における変異:N40、Q42、D43、E44、K49、Y51、S54、N55、F56、S57、Q62、E101、N102、E124、E131、R142、D149、T150、E185、R192、D195、E201およびE203、例えば、次の位置の1つもしくは複数における変異:N40、Q42、D43、E44、K49、Y51、S54、N55、F56、S57、Q62、E101、N102、E131、D149、T150、E185、D195、E201およびE203、または次の位置の1つもしくは複数における1つもしくは複数の変異:N40、Q42、D43、E44、K49、Y51、N55、F56、E101、N102、E131、D149、T150、E185、D195、E201およびE203、ならびに/あるいは(b)次の位置の1つもしくは複数の欠失:F48、K49、P50、Y51、P52、A53、S54、N55、F56およびS57、を含むバリアントである。バリアントは、(a)を含むこともあり、(b)を含むこともあり、または(a)と(b)を含むこともある。(a)において、位置N40、Q42、D43、E44、K49、Y51、S54、N55、F56、S57、Q62、E101、N102、R124、E131、R142、D149、E185、R192、D195、E201およびE203のあらゆる数および組合せが、変異されていることがある。上で論じたように、Y51、N55およびF56の1つまたは複数の変異は、ポリヌクレオチドがポアを通って移動するときの電流に寄与するヌクレオチドの数を減少させることによって、ポリヌクレオチドがポアを通って移動しているときの観測電流とポリヌクレオチドとの直接的関連の同定をより容易にすることができる。
(b)において、F48、K49、P50、Y51、P52、A53、S54、N55、F56およびS57のあらゆる数および組合せが、欠失されていることがある。バリアントは、本発明の変異体モノマーに関して上で論じた特異的変異/置換またはそれらの組合せのいずれかを含むことがある。
本発明の方法での使用に好ましいバリアントは、次の置換の1つまたは複数を含む:(a)F56N、F56Q、F56R、F56S、F56G、F56AまたはF56KまたはF56A、F56P、F56R、F56H、F56S、F56Q、F56I、F56L、F56TまたはF56G、(b)N55Q、N55R、N55K、N55S、N55G、N55AまたはN55T、(c)Y51L、Y51V、Y51A、Y51N、Y51Q、Y51SまたはY51G、(d)T150I、(e)S54P、および(f)S57P。バリアントは、(a)〜(f)のあらゆる数および組合せを含むことがある。
本発明の方法での使用に好ましいバリアントは、Q62RまたはQ62Kを含む。
本発明の方法での使用に好ましいバリアントは、D43、E44、Q62またはこれらの任意の組合せ、例えば、D43、E44、Q62、D43/E44、D43/Q62、E44/Q62またはD43/E44/Q62における変異を含む。
バリアントは、
位置Y51、F56、D149、E185、E201およびE203における変異、例えば、Y51N、F56A、D149N、E185R、E201NおよびE203N、
位置N55における変異、例えば、N55AまたはN55S、
位置Y51における変異、例えば、Y51NまたはY51T、
位置S54における変異、例えば、S54P、
位置S57における変異、例えば、S57P、
位置F56における変異、例えば、F56N、F56Q、F56R、F56S、F56G、F56AもしくはF56KもしくはF56A、F56P、F56R、F56H、F56S、F56Q、F56I、F56L、F56TもしくはF56G、
位置Y51およびF56における変異、例えば、Y51AおよびF56A、Y51AおよびF56N、Y51IおよびF56A、Y51LおよびF56A、Y51TおよびF56A、Y51TおよびF56Q、Y51IおよびF56N、Y51LおよびF56N、もしくはY51TおよびF56N、好ましくはY51IおよびF56A、Y51LおよびF56A、もしくはY51TおよびF56A、より好ましくはY51TおよびF56Q、もしくはより好ましくはY51XおよびF56Q(ここでXは任意のアミノ酸である)、
位置N55およびF56における変異、例えば、N55XおよびF56Q(ここでXは任意のアミノ酸である)、
位置Y51、N55およびF56における変異、例えば、Y51A、N55SおよびF56A、Y51A、N55SおよびF56N、もしくはY51T、N55SおよびF56Q、
位置S54およびF56における変異、例えば、S54PおよびF56A、もしくはS54PおよびF56N、
位置F56およびS57における変異、例えば、F56AおよびS57P、もしくはF56NおよびS57P、
位置D149、E185およびE203における変異、例えば、D149N、E185NおよびE203N、
位置D149、E185、E201およびE203における変異、例えば、D149N、E185N、E201NおよびE203N、
位置D149、E185、D195、E201およびE203における変異、例えば、D149N、E185R、D195N、E201NおよびE203N、もしくはD149N、E185R、D195N、E201RおよびE203N、
位置F56およびN102における変異、例えば、F56QおよびN102R、
(a)位置Q62における変異、例えば、Q62RもしくはQ62K、および(b)位置Y51、N55およびF56の1つもしくは複数、例えば、位置Y51、N55、F56、Y51/N55、Y51/F56、N55/F56もしくはY51/N55/F56における変異、例えば、Y51T/F56Q/Q62R、
(i)位置D43、E44、Q62もしくはこれらの任意の組合せ、例えば、位置D43、E44、Q62、D43/E44、D43/Q62、E44/Q62もしくはD43/E44/Q62における変異、および(ii)位置Y51、N55およびF56の1つもしくは複数、例えば、位置Y51、N55、F56、Y51/N55、Y51/F56、N55/F56もしくはY51/N55/F56における変異、例えば、D43N/Y51T/F56Q、E44N/Y51T/F56Q、D43N/E44N/Y51T/F56Q、D43N/Y51T/F56Q/Q62R、E44N/Y51T/F56Q/Q62R、もしくはD43N/E44N/Y51T/F56Q/Q62R、または
位置T150における変異、例えば、T150I
を含むことがある。
本発明の方法での使用に好ましいポアは、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含み、モノマーの各々が、次の置換(a)F56N、F56Q、F56R、F56S、F56G、F56AまたはF56KまたはF56A、F56P、F56R、F56H、F56S、F56Q、F56I、F56L、F56TまたはF56G、(b)N55Q、N55R、N55K、N55S、N55G、N55AまたはN55T、(c)Y51L、Y51V、Y51A、Y51N、Y51Q、Y51SまたはY51G、(d)T150I、(e)S54P、および(f)S57Pのうちの1つまたは複数を含む、配列番号390のバリアントを含む。バリアントは、(a)〜(f)のあらゆる数および組合せを含むことがある。これらの好ましいポア中のモノマーは、好ましくは同一である。
本発明の方法での使用に好ましいポアは、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含み、モノマーの各々が、
を含む、配列番号390のバリアントを含む。
本発明で使用するためのCsgG変異体は、好ましくは9つのモノマーを含み、それらのモノマーの少なくとも1つは、位置Y51、N55およびF56の1つもしくは複数に変異を含む、配列番号390で示される配列のバリアントである。本発明の方法での使用に好ましいポアは、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含み、モノマーの各々が、位置Y51、N55およびF56の1つもしくは複数に変異を含む、配列番号390のバリアントを含む。これらの好ましいポア中のモノマーは、好ましくは同一である。バリアントは、Y51、N55、F56、Y51/N55、Y51/F56、N55/F56、またはY51/N55/F56における変異を含むことがある。バリアントは、上で論じた位置Y51、N55およびF56の1つもしくは複数における、およびあらゆる組合せでの、特異的変異のいずれかを含むことがある。Y51、N55およびF56の1つもしくは複数がいかなるアミノ酸で置換されていてもよい。Y51は、F、M、L、I、V、A、P、G、C、Q、N、T、S、E、D、K、HまたはR、例えば、A、S、T、NまたはQで置換されていることがある。N55は、F、M、L、I、V、A、P、G、C、Q、T、S、E、D、K、HまたはR、例えば、A、S、TまたはQで置換されていることがある。F56は、M、L、I、V、A、P、G、C、Q、N、T、S、E、D、K、HまたはR、例えば、A、S、T、NまたはQで置換されていることがある。バリアントは、以下の1つまたは複数をさらに含むことがある:(i)次の位置における1つまたは複数の変異(すなわち、次の位置の1つもしくは複数における変異)(i)N40、D43、E44、S54、S57、Q62、R97、E101、E124、E131、R142、T150およびR192;(iii)Q42RまたはQ42K;(iv)K49R;(v)N102R、N102F、N102YまたはN102W;(vi)D149N、D149QまたはD149R;(vii)E185N、E185QまたはE185R;(viii)D195N、D195QまたはD195R;(ix)E201N、E201QまたはE201R;(x)E203N、E203QまたはE203R;ならびに(xi)次の位置の1つもしくは複数の欠失:F48、K49、P50、Y51、P52、A53、S54、N55、F56およびS57。バリアントは、上で論じた(i)および(iii)〜(xi)の組合せのいずれかを含むことがある。バリアントは、(i)および(iii)〜(xi)について上で論じた実施形態のいずれかを含むことがある。
(1)本発明の方法での使用に好ましいバリアントは、または(2)本発明の方法での使用に好ましいポアは、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含み、モノマーの各々が、Y51R/F56Q、Y51N/F56N、Y51M/F56Q、Y51L/F56Q、Y51I/F56Q、Y51V/F56Q、Y51A/F56Q、Y51P/F56Q、Y51G/F56Q、Y51C/F56Q、Y51Q/F56Q、Y51N/F56Q、Y51S/F56Q、Y51E/F56Q、Y51D/F56Q、Y51K/F56Q、またはY51H/F56Qを含む、配列番号390のバリアントを含む。
(1)本発明の方法での使用に好ましいバリアントは、または(2)本発明の方法での使用に好ましいポアは、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含み、モノマーの各々が、Y51T/F56Q、Y51Q/F56Q、またはY51A/F56Qを含む、配列番号390のバリアントを含む。
(1)本発明の方法での使用に好ましいバリアントは、または(2)本発明の方法での使用に好ましいポアは、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含み、モノマーの各々が、Y51T/F56F、Y51T/F56M、Y51T/F56L、Y51T/F56I、Y51T/F56V、Y51T/F56A、Y51T/F56P、Y51T/F56G、Y51T/F56C、Y51T/F56Q、Y51T/F56N、Y51T/F56T、Y51T/F56S、Y51T/F56E、Y51T/F56D、Y51T/F56K、Y51T/F56H、またはY51T/F56Rを含む、配列番号390のバリアントを含む。
(1)本発明の方法での使用に好ましいバリアントは、または(2)本発明の方法での使用に好ましいポアは、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含み、モノマーの各々が、Y51T/N55Q、Y51T/N55S、またはY51T/N55Aを含む、配列番号390のバリアントを含む。
(1)本発明の方法での使用に好ましいバリアントは、または(2)本発明の方法での使用に好ましいポアは、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含み、モノマーの各々が、Y51A/F56F、Y51A/F56L、Y51A/F56I、Y51A/F56V、Y51A/F56A、Y51A/F56P、Y51A/F56G、Y51A/F56C、Y51A/F56Q、Y51A/F56N、Y51A/F56T、Y51A/F56S、Y51A/F56E、Y51A/F56D、Y51A/F56K、Y51A/F56H、またはY51A/F56Rを含む、配列番号390のバリアントを含む。
(1)本発明の方法での使用に好ましいバリアントは、または(2)本発明の方法での使用に好ましいポアは、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含み、モノマーの各々が、Y51C/F56A、Y51E/F56A、Y51D/F56A、Y51K/F56A、Y51H/F56A、Y51Q/F56A、Y51N/F56A、Y51S/F56A、Y51P/F56A、またはY51V/F56Aを含む、配列番号390のバリアントを含む。
(1)本発明の方法での使用に好ましいバリアントは、または(2)本発明の方法での使用に好ましいポアは、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含み、モノマーの各々が、
を含む、配列番号390のバリアントを含む。
(1)本発明の方法での使用に好ましいバリアントは、または(2)本発明の方法での使用に好ましいポアは、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含み、モノマーの各々が、
を含む、配列番号390のバリアントを含む。
これらの好ましいポア中のモノマーは、好ましくは同一である。
本発明の方法での使用に好ましいポアは、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10のモノマー、例えば、7つ、8つ、9つまたは10のモノマーを含み、モノマーの各々が、F56A、F56P、F56R、F56H、F56S、F56Q、F56I、F56L、F56TまたはF56Gを含む、配列番号390のバリアントを含む。これらの好ましいポア中のモノマーは、好ましくは同一である。
CsgG変異体は、本実施例において開示する配列番号390のバリアントのいずれかを含むことがあり、または本実施例において開示するポアのいずれかを含むことがある。
CsgG変異体は、最も好ましくは本発明のポアである。
ステップ(a)および(b)は、好ましくは、膜を介して印加される電位を用いて行われる。下でより詳細に論じるように、印加される電位によって、通常は、ポアとポリヌクレオチド結合タンパク質との複合体が形成される結果となる。印加される電位は、電圧電位であることがある。あるいは、印加される電位は、化学的電位であることもある。これについての一例は、両親媒性層を横断する塩勾配の使用である。塩勾配は、Holden et al., J Am Chem Soc. 2007 Jul 11; 129(27):8650-5に開示されている。
方法は、標的分析物の存在、不在または1つもしくは複数の特徴を判定する方法である。方法は、少なくとも1つの標的分析物の存在、不在または1つもしくは複数の特徴を判定する方法であることがある。方法は、2つ以上の標的分析物の存在、不在または1つもしくは複数の特徴の判定に関することがある。方法は、あらゆる数の分析物、例えば、2、5、10、15、20、30、40、50、100以上の分析物の存在、不在または1つもしくは複数の特徴の判定を含むことができる。1つまたは複数の分析物のあらゆる数の特徴、例えば、1、2、3、4、5、10以上の特徴を判定することができる。
標的分析物は、好ましくは、金属イオン、無機塩、ポリマー、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、色素、漂白剤、医薬品、診断剤、レクリエーショナルドラッグ、爆発物または環境汚染物質である。方法は、同じタイプの2つ以上の分析物、例えば、2つ以上のタンパク質、2つ以上のヌクレオチドまたは2つ以上の医薬品の存在、不在または1つもしくは複数の特徴の判定に関することもある。あるいは、方法は、異なるタイプの2つ以上の分析物、例えば、1つもしくは複数のタンパク質、1つもしくは複数のヌクレオチドおよび1つもしくは複数の医薬品の存在、不在または1つもしくは複数の特徴の判定に関することもある。
標的分析物を細胞から分泌することができる。あるいは、標的分析物は、細胞内に存在する分析物であることもあり、したがって、本発明を行う前に該分析物を細胞から抽出しなければならない。
分析物は、好ましくは、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチドおよび/またはタンパク質である。アミノ酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、天然に存在することもあり、または天然に存在しないこともある。ポリペプチドまたはタンパク質は、合成または修飾アミノ酸を含有することができる。アミノ酸に対する多数の異なるタイプの修飾が当技術分野において公知である。好適なアミノ酸およびそれらの修飾は、上記である。本発明の目的について、標的分析物を当技術分野において利用できる任意の方法によって修飾することができると解されたい。
タンパク質は、酵素、抗体、ホルモン、増殖因子または増殖調節タンパク質、例えばサイトカインであることができる。サイトカインは、インターロイキン、好ましくはIFN−1、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−12およびIL−13、インターフェロン、好ましくはIL−γ、ならびに他のサイトカイン、例えばTNF−αから選択することができる。タンパク質は、細菌タンパク質、真菌タンパク質、ウイルスタンパク質または寄生虫由来タンパク質であってもよい。
標的分析物は、好ましくは、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである。ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドは、下で論じる。オリゴヌクレオチドは、通常は50以下のヌクレオチド、例えば、40以下、30以下、20以下、10以下または5以下のヌクレオチドを有する、短いヌクレオチドポリマーである。オリゴヌクレオチドは、脱塩基および修飾ヌクレオチドを含む、下で論じるヌクレオチドのいずれかを含むことがある。
標的ポリヌクレオチドなどの標的分析物は、下で論じる好適な試料のいずれかの中に存在することがある。
ポアは、通常は、下で論じるような膜内に存在する。下で論じる方法を使用して標的分析物をその膜とカップリングすることまたはその膜に送達することができる。
下で論じる測定のいずれかを使用して、標的分析物の存在、不在または1つもしくは複数の特徴を判定することができる。方法は、好ましくは、標的分析物とポアとを、分析物がポアに対して、例えばポアを通って、移動するように接触させるステップ、および分析物がポアに対して移動しているときにポアを通過する電流を測定することによって分析物の存在、不在または1つもしくは複数の特徴を判定するステップを含む。
標的分析物は、電流が分析物に特異的な様式でポアを通って流れた場合(すなわち、ポアを通って流れる、分析物と関連づけられる特有の電流が検出された場合)、存在する。分析物は、電流がヌクレオチドに特異的な様式でポアを通って流れなかった場合、不在である。対照実験を分析物の存在下で行って、ポアを通って流れる電流に対するその分析物の影響の与え方を判定することができる。
本発明を使用して、類似した構造の分析物をそれらがポアを通過する電流に与える異なる影響に基づいて区別することができる。個々の分析物を、単一分子レベルで、それらがポアと相互作用するときのそれらの電流振幅から同定することができる。本発明を使用して、特定の分析物が試料中に存在するか否かを判定することもできる。本発明を使用して、試料中の特定の分析物の濃度を測定することもできる。CsgG以外のポアを使用する分析物特徴づけは、当技術分野において公知である。
ポリヌクレオチド特徴づけ
本発明は、標的ポリヌクレオチドを特徴づける、例えば、ポリヌクレオチドをシークエンシングする方法を提供する。ナノポアを使用してポリヌクレオチドを特徴づけるまたはシークエンシングするための2つの主要戦略、すなわち、鎖特徴づけ/シークエンシングおよびエキソヌクレアーゼ特徴づけ/シークエンシングがある。本発明の方法は、両方の方法に関しうる。
鎖シークエンシングの場合、DNAは、印加電位に伴ってまたは反発してナノポアを通って移行される。二本鎖DNAに対して漸進的にまたは前進的に作用するエキソヌクレアーゼを、印加電位のもとで残りの一本鎖を送り込むためにポアのシス側で使用することができ、または逆転電位のもとでトランス側で使用することができる。同様に、二本鎖DNAを巻き戻すヘリカーゼも、同じように使用することができる。ポリメラーゼも使用することができる。シークエンシング用途のために印加電位に逆らって鎖移行を要する可能性もあるが、逆転電位のもとではまたは電位のない状態ではDNAが酵素によって最初に「捕らえられる」はずである。その後、結合後に電位が切り替わると、鎖は、シスからトランスへとポアを通過し、伸長された高次構造で電流によって保持される。一本鎖DNAエキソヌクレアーゼまたは一本鎖DNA依存性ポリメラーゼは、分子モーターとして作用して、ポアを通って移行されたばかりの一本鎖を印加電位に反発してトランスからシスへ、制御された段階的様式で引き戻すことができる。
一実施形態では、標的ポリヌクレオチドを特徴づける方法は、標的配列とポアおよびヘリカーゼ酵素とを接触させるステップを含む。あらゆるヘリカーゼを方法において使用することができる。好適なヘリカーゼは、下で論じる。ヘリカーゼは、ポアに対して2つのモードで作用することができる。第一に、方法は、好ましくは、ヘリカーゼが印加された電圧の結果として生ずる場に伴ってポアを通る標的配列の移動を制御するように、ヘリカーゼを使用して行われる。このモードでは、DNAの5’末端が先ずポア内に捕捉され、酵素は、標的配列が最終的に二重層のトランス側に移行するまで場に伴って標的配列をポアに通すように、DNAのポア内への移動を制御する。あるいは、方法は、好ましくは、印加電圧の結果として生ずる場に反発してポアを通る標的配列の移動をヘリカーゼ酵素が制御するように行われる。このモードでは、DNAの3’末端が先ずポア内に捕捉され、酵素は、標的配列が最終的に二重層のシス側に押し戻されるまで印加された場に反発してポアから引き出されるように、ポアを通るDNAの移動を制御する。
エキソヌクレアーゼシークエンシングの場合、エキソヌクレアーゼは、標的ポリヌクレオチドの一方の末端から個々のヌクレオチドを遊離させ、これらの個々のヌクレオチドが下で論じるように同定される。別の実施形態では、標的ポリヌクレオチドを特徴づける方法は、標的配列とポアおよびエキソヌクレアーゼ酵素とを接触させるステップを含む。下で論じるエキソヌクレアーゼのいずれかを方法において使用することができる。酵素を下で論じるようにポアに共有結合させることができる。
エキソヌクレアーゼは、通常は、ポリヌクレオチドの一方の末端にしっかりつかまっていてその配列をその末端から1ヌクレオチドずつ消化する酵素である。エキソヌクレアーゼは、ポリヌクレオチドを5’から3’方向にまたは3’から5’方向に消化することができる。エキソヌクレアーゼが結合するポリヌクレオチドの末端は、通常は、使用する酵素の選択によっておよび/または当技術分野において公知の方法を使用して判定される。ポリヌクレオチドのいずれかの末端でヒドロキシル基またはキャップ構造を使用して、ポリヌクレオチドの特定の末端とのエキソヌクレアーゼの結合を防止または助長することが通常はできる。
方法は、ポリヌクレオチドをエキソヌクレアーゼと、ヌクレオチドがポリヌクレオチドの末端から上で論じたような割合のヌクレオチドの特徴づけまたは同定を可能にする速度で消化されるように接触させるステップを含む。これを行う方法は、当技術分野において周知である。例えば、エドマン分解を使用してポリペプチドの末端から単一のアミノ酸を順次消化し、その結果、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してそれらを同定することができる。類似の方法を本発明において使用することができる。
エキソヌクレアーゼが機能する速度は、通常は野生型エキソヌクレアーゼの最適速度より遅い。本発明の方法でのエキソヌクレアーゼの活性に好適な速度は、毎秒0.5〜1000ヌクレオチド、毎秒0.6〜500ヌクレオチド、毎秒0.7〜200ヌクレオチド、毎秒0.8〜100ヌクレオチド、毎秒0.9〜50ヌクレオチド、または毎秒1〜20もしくは10ヌクレオチドの消化を含む。この速度は、好ましくは、毎秒1、10、100、500または1000ヌクレオチドである。エキソヌクレアーゼ活性の好適な速度を様々な方法で達成することができる。例えば、活性の最適速度が低下されたバリアントエキソヌクレアーゼを本発明に従って使用することができる。
鎖特徴づけ実施形態では、方法は、ポリヌクレオチドをCsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポアと、ポリヌクレオチドがポアに対して、例えばポアを通って、移動するように接触させるステップ、およびポリヌクレオチドがポアに対して移動しているときに1回または複数回の測定を行い、測定がポリヌクレオチドの1つまたは複数の特徴を示し、それによって標的ポリヌクレオチドを特徴づけるステップを含む。
エキソヌクレオチド特徴づけ実施形態では、方法は、ポリヌクレオチドを、CsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポア、およびエキソヌクレアーゼと、エキソヌクレアーゼが標的ポリヌクレオチドの一方の末端から個々のヌクレオチドを消化し、個々のヌクレオチドがポアに対して、例えばポアを通って移動するように、接触させるステップ、および個々のヌクレオチドがポアに対して移動しているときに1回または複数回の測定を行い、測定が個々のヌクレオチドの1つまたは複数の特徴を示し、それによって標的ポリヌクレオチドを特徴づけるステップを含む。
個々のヌクレオチドは、単一のヌクレオチドである。個々のヌクレオチドは、ヌクレオチド結合によって別のヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと結合されていないヌクレオチドである。ヌクレオチド結合は、別のヌクレオチドの糖基と結合しているヌクレオチドのリン酸基の1つを含む。個々のヌクレオチドは、通常は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500、少なくとも1000または少なくとも5000ヌクレオチドの別のポリヌクレオチドと結合しているヌクレオチドによって結合されていないものである。例えば、個々のヌクレオチドは、DNAまたはRNA鎖などの標的ポリヌクレオチド配列から消化されたものである。ヌクレオチドは、下で論じるもののいずれかであってもよい。
個々のヌクレオチドは、あらゆる様式で、あらゆる部位で、ポアと相互作用することができる。ヌクレオチドは、好ましくは、上で論じたようなアダプターによってまたはそのようなアダプターとともにポアと可逆的に結合する。ヌクレオチドは、最も好ましくは、それらがポアを通って膜を通過しているときにアダプターによってまたはアダプターとともにポアと可逆的に結合する。ヌクレオチドは、それらがポアを通って膜を通過しているときにアダプターによってまたはアダプターとともにポアのバレルまたはチャネルと可逆的に結合することもできる。
個々のヌクレオチドとポアとの相互作用中、ヌクレオチドは、そのヌクレオチドに特異的な様式でポアを通って流れる電流に作用するのが一般的である。例えば、特定のヌクレオチドは、ポアを通って流れる電流を特定の平均時間にわたって、特定の程度に低減させることになる。言い換えると、ポアを通って流れる電流は、特定のヌクレオチドに特有のものである。対照実験を行って、特定のヌクレオチドがポアを通って流れる電流に与える影響を判定することができる。その後、試験試料に対する本発明の方法の実施の結果を、そのような対照実験から導出されたものと比較して、試料中の特定のヌクレオチドを同定することができ、または特定のヌクレオチドが試料中に存在するかどうかを判定することができる。ポアを通って流れる電流に特定のヌクレオチドを示す形で影響を与える周波数を使用して、試料中のそのヌクレオチドの濃度を判定することができる。試料中の異なるヌクレオチドの比も算出することができる。例えば、dCMPのメチル−dCMPに対する比を算出することができる。
方法は、標的ポリヌクレオチドの1つまたは複数の特徴を測定するステップを含む。標的ポリヌクレオチドをテンプレートポリヌクレオチドまたは目的のポリヌクレオチドと呼ぶこともある。
この実施形態は、CsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポアも使用する。標的分析物に関して上で論じたポアおよび実施形態のいずれかを使用することができる。
ポリヌクレオチド
核酸などのポリヌクレオチドは、2つ以上のヌクレオチドを含む高分子である。ポリヌクレオチドまたは核酸は、あらゆるヌクレオチドのあらゆる組合せを含むことがある。ヌクレオチドは、天然に存在することもあり、または人工的なものであることもある。ポリヌクレオチド中の1つまたは複数のヌクレオチドは、酸化またはメチル化されることもある。ポリヌクレオチド中の1つまたは複数のヌクレオチドは、損傷されることもある。例えば、ポリヌクレオチドは、ピリミジンダイマーを含むことがある。そのようなダイマーは、概して紫外線によって損傷され、皮膚黒色腫の主原因である。ポリヌクレオチド中の1つまたは複数のヌクレオチドは、例えば標識またはタグで、修飾されることもある。好適な標識は、下で説明する。ポリヌクレオチドは、1つまたは複数のスペーサーを含むこともある。
ヌクレオチドは、通常は、核酸塩基、糖および少なくとも1つのリン酸基を含有する。核酸塩基と糖がヌクレオシドを形成する。
核酸塩基は、通常は複素環式のものである。核酸塩基としては、プリンおよびピリミジン、より具体的にはアデニン(A)、グアニン(G)、チミジン(T)、ウラシル(U)およびシトシン(C)が挙げられるが、これらに限定されない。
糖は、通常はペントース糖である。ヌクレオチド糖としては、リボースおよびデキストロースが挙げられるが、これらに限定されない。糖は、好ましくはデオキシリボースである。
ポリヌクレオチドは、好ましくは次のヌクレオシドを含む:デオキシアデノシン(dA)、デオキシウリジン(dU)および/またはチミジン(dT)、デオキシグアノシン(dG)ならびにデオキシシチジン(dC)。
ヌクレオチドは、通常は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである。ヌクレオチドは、通常は、一リン酸、二リン酸または三リン酸を含有する。ヌクレオチドは、3つより多くのリン酸、例えば、4つまたは5つのリン酸を含むこともある。リン酸は、ヌクレオチドの5’側に結合されることもあり、または3’側に結合されることもある。ヌクレオチドとしては、アデノシン一リン酸(AMP)、グアノシン一リン酸(GMP)、チミジン一リン酸(TMP)、ウリジン一リン酸(UMP)、5−メチルシチジン一リン酸、5−ヒドロキシメチルシチジン一リン酸、シチジン一リン酸(CMP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)およびデオキシメチルシチジン一リン酸が挙げられるが、これらに限定されない。ヌクレオチドは、好ましくは、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMP、dCMPおよびdUMPから選択される。
ヌクレオチドは、脱塩基性である(すなわち、核酸塩基を欠いている)ことがある。ヌクレオチドは、核酸塩基および糖も欠いていることがある(すなわち、C3スペーサーである)。
ポリヌクレオチド中のヌクレオチドは、いかなる様式で互いに結合されていてもよい。ヌクレオチドは、通常は、それらの糖およびリン酸基によって核酸の場合と同様に結合されている。ヌクレオチドは、それらの核酸塩基によってピリミジンダイマーの場合のように接続されていることもある。
ポリヌクレオチドは、一本鎖状であることもあり、または二本鎖状であることもある。ポリヌクレオチドの少なくとも一部分は、好ましくは二本鎖状である。
ポリヌクレオチドは、核酸、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)であることができる。ポリヌクレオチドは、1本のDNA鎖にハイブリダイズしている1本のRNA鎖を含むことができる。ポリヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、またはヌクレオチド側鎖を有する他の合成ポリマーなどの、当技術分野において公知のいかなる合成核酸であってもよい。PNA主鎖は、ペプチド結合によって連結された反復N−(2−アミノエチル)−グリシン単位で構成されている。GNA主鎖は、ホスホジエステル結合によって連結された反復グリコール単位で構成されている。TNA主鎖は、ホスホジエステル結合によって互いに連結された反復トレオース糖で構成されている。LNAは、リボース部分の2’酸素と4’炭素を接続する余分な架橋を有する、上で論じたようなリボヌクレオチドから形成される。架橋核酸(BNA)は、修飾RNAヌクレオチドである。BNAは、束縛または隔絶RNAと呼ばれることもある。BNAモノマーは、「固定された」C3’−endo糖パッカリングを有する5員、6員またはさらには7員の架橋構造を含有することができる。架橋をリボースの2’,4’位に合成的に組み込んで、2’,4’−BNAモノマーを生成する。
ポリヌクレオチドは、最も好ましくはリボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)である。
ポリヌクレオチドは、あらゆる長さであることができる。例えば、ポリヌクレオチドは、長さ少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400または少なくとも500ヌクレオチドまたはヌクレオチド対であることができる。ポリヌクレオチドは、長さ1000ヌクレオチドもしくはヌクレオチド対以上、長さ5000ヌクレオチドもしくはヌクレオチド対以上、または長さ100000ヌクレオチドもしくはヌクレオチド対以上であることができる。
あらゆる数のポリヌクレオチドを調査することができる。例えば、本発明の方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、100以上のポリヌクレオチドの特徴づけに関することがある。2つ以上のポリヌクレオチドを特徴づける場合、それらは、異なるポリヌクレオチドであることもあり、同じポリヌクレオチドの2つの実例であることもある。
ポリヌクレオチドは、天然に存在することもあり、または人工的なものであることもある。例えば、方法を使用して、製造されたオリゴヌクレオチドの配列を検証することができる。方法は、通常はin vitroで行われる。
試料
ポリヌクレオチドは、通常は、あらゆる好適な試料中に存在する。本発明は、通常は、ポリヌクレオチドを含有することが分かっているまたは含有すると推測される試料を用いて行われる。あるいは、本発明は、試料を用いて、その試料中に存在することが分かっているまたは予想されるポリヌクレオチドの同一性を確認するため行われることもある。
試料は、生体試料であってもよい。本発明は、あらゆる生物または微生物から得られたまたは抽出された試料を使用してin vitroで行うことができる。生物または微生物は、通常は、古細菌性、原核性または真核性であり、通常は、五界、すなわち植物界、動物界、菌界、原核生物界および原生生物界、の1つに属する。本発明は、あらゆるウイルスから得られたまたは抽出された試料を用いてin vitroで行うことができる。試料は、好ましくは流体試料である。試料は、通常は患者の体液を含む。試料は、尿、リンパ液、唾液、粘液または羊水であってもよいが、好ましくは血液、血漿または血清である。
試料は、通常は、起源がヒトであるが、代替的に、別の哺乳類動物からのもの、例えば、商業飼育動物、例えばウマ、ウシ、ヒツジ、魚、ニワトリもしくはブタからのものであってもよく、または代替的にペット、例えばネコもしくはイヌであってもよい。あるいは、試料は、植物起源のもの、例えば、商品作物、例えば、穀類、マメ科植物、果実または野菜、例えば、コムギ、オオムギ、オートムギ、キャノーラ、トウモロコシ、ダイズ、イネ、ダイオウ、バナナ、リンゴ、トマト、ジャガイモ、ブドウ、タバコ、マメ、レンズマメ、サトウキビ、カカオノキ、ワタから得られた試料であってもよい。
試料は、非生体試料であってもよい。非生体試料は、好ましくは流体試料である。非生体試料の例としては、外科用流体、水、例えば飲用水、海水または河川水、および検査室検査用の試薬が挙げられる。
試料は、通常は、本発明で使用される前に、例えば、遠心分離によって、または望ましくない分子もしくは細胞、例えば赤血球を濾過して取り除く膜を通過させることによって処理される。試料は、採取され次第、測定されることもある。試料がアッセイ前に、好ましくは−70℃で保存されることがあることも一般的である。
特徴づけ
方法は、ポリヌクレオチドの2、3、4または5以上の特徴を測定するステップを含むことがある。1つまたは複数の特徴は、好ましくは、(i)ポリヌクレオチドの長さ、(ii)ポリヌクレオチドの同一性、(iii)ポリヌクレオチドの配列、(iv)ポリヌクレオチドの二次構造、および(v)ポリヌクレオチドが修飾されているか否かから選択される。{i}、{ii}、{iii}、{iv}、{v}、{i,ii}、{i,iii}、{i,iv}、{i,v}、{ii,iii}、{ii,iv}、{ii,v}、{iii,iv}、{iii,v}、{iv,v}、{i,ii,iii}、{i,ii,iv}、{i,ii,v}、{i,iii,iv}、{i,iii,v}、{i,iv,v}、{ii,iii.iv}、{ii,iii,v}、{ii,iv,v}、{iii,iv,v}、{i,ii,iii,iv}、{i,ii,iii,v}、{i,ii,iv,v}、{i,iii,iv,v}、{ii,iii,iv,v}または{i,ii,iii,iv,v}などの、(i)〜(v)のいずれの組合せを、本発明に従って測定してもよい。上に列挙した組合せのいずれかを含む(i)〜(v)の異なる組合せを、第2のポリヌクレオチドと比較して、第1のポリヌクレオチドについて測定することができる。
(i)については、ポリヌクレオチドの長さを、例えば、ポリヌクレオチドとポアとの相互作用の数、またはポリヌクレオチドとポアとの相互作用の継続時間を判定することによって測定することができる。
(ii)については、ポリヌクレオチドの同一性を、多数の方法で測定することができる。ポリヌクレオチドの同一性は、ポリヌクレオチドの配列の測定とともに測定されることもあり、またはポリヌクレオチドの配列の測定を伴わずに測定されることもある。先に述べた測定は容易であり、ポリヌクレオチドをシークエンシングし、それによって同定する。後で述べた測定は、いくつかの方法で行うことができる。例えば、ポリヌクレオチド内の特定のモチーフの存在を(ポリヌクレオチドの残存配列を測定せずに)測定してもよい。あるいは、その方法の中で特定の電気および/または光シグナルを測定することによって、ポリヌクレオチドが特定の源に由来すると同定されることもある。
(iii)については、ポリヌクレオチドの配列を、以前に記載されたように判定することができる。好適なシークエンシング方法、特に電気的測定を用いるものは、Stoddart D et al., Proc Natl Acad Sci, 12;106(19):7702-7、Lieberman KR et al., J Am Chem Soc. 2010;132(50):17961-72、および国際出願国際公開第2000/28312号パンフレットに記載されている。
(iv)については、二次構造を様々な方法で測定することができる。例えば、その方法が電気的測定を含む場合、滞留時間の変化、またはポアを通って流れる電流の変化を使用して、二次構造を測定してもよい。これによって、一本鎖ポリヌクレオチド領域と二本鎖ポリヌクレオチド領域を区別することが可能になる。
(v)については、あらゆる修飾の存在または不在を測定することができる。この方法は、ポリヌクレオチドがメチル化によって、酸化によって、損傷によって、1つもしくは複数のタンパク質でまたは1つもしくは複数の標識、タグもしくはスペーサーで修飾されているか否かを判定することを好ましくは含む。特異的修飾は、ポアとの特異的相互作用をもたらすことになり、下で説明する方法を用いてそのような特異的相互作用を測定することができる。例えば、メチルシトシンを、各ヌクレオチドとのその相互作用中にポアを通って、流れる電流に基づいて、シトシンと区別してもよい。
標的ポリヌクレオチドをCsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポアと接触させる。ポアは、通常は膜内に存在する。好適な膜は、下で論じる。ポアが膜内に存在する膜/ポア系の調査に適しているあらゆる装置を使用して方法を行うことができる。膜貫通ポアセンシングに適しているあらゆる装置を使用して方法を行うことができる。例えば、装置は、水溶液を含むチャンバーと、そのチャンバーを2区画に分ける遮断壁とを含む。遮断壁は、通常は、ポアを含有する膜が形成される開口部を有する。あるいは、遮断壁は、ポアが存在する膜を形成する。
国際出願第PCT/GB08/000562号明細書(国際公開2008/102120号パンフレット)に記載されている装置を使用して方法を行ってもよい。
様々な異なるタイプの測定を行うことができる。この測定は、限定ではないが、電気的測定および光学的測定を含む。可能な電気的測定としては、電流測定、インピーダンス測定、トンネル効果測定(Ivanov AP et al., Nano Lett. 2011 Jan 12; 11(1):279-85)、およびFET測定(国際公開出願第2005/124888号パンフレット)が挙げられる。光学的測定を電気的測定と併用してもよい(Soni GV et al., Rev Sci Instrum. 2010 Jan; 81(1):014301)。測定は、膜貫通電流測定、例えば、ポアを通って流れるイオン電流の測定であることもある。
Stoddart D et al., Proc Natl Acad Sci, 12; 106(19):7702-7、Lieberman KR et al., J Am Chem Soc. 2010;132(50):17961-72、および国際出願国際公開第2000/28312号パンフレットに記載されているような標準的単一チャネル記録機器を使用して、電気的測定を行ってもよい。あるいは、例えば国際出願国際公開第2009/077734号パンフレットおよび国際出願国際公開第2011/067559号パンフレットに記載されているような多チャネルシステムを使用して、電気的測定を行ってもよい。
方法は、好ましくは、膜を介して印加される電位を用いて行われる。印加される電位は、電圧電位であることがある。あるいは印加される電位は、化学的電位であることもある。この方法の例は、両親媒性層などの膜を横断する塩勾配の使用である。塩勾配は、Holden et al., J Am Chem Soc. 2007 Jul 11; 129(27):8650-5に開示されている。場合によっては、ポリヌクレオチドがポアに対して移動するときにポアを通過する電流を使用して、ポリヌクレオチドの配列を推定または判定する。これが鎖シークエンシングである。
方法は、ポリヌクレオチドがポアに対して移動するときにポアを通過する電流を測定するステップを含むことがある。したがって、方法で使用される装置は、電位を印加することができる電気回路であって、膜およびポアを横断する電気シグナルを測定することができる電気回路も含むことがある。方法は、パッチクランプまたは電圧固定を使用して行われることもある。方法は、好ましくは電圧固定の使用を含む。
本発明の方法は、ポリヌクレオチドがポアに対して移動するときポアを通過する電流を測定するステップを含むことがある。膜貫通タンパク質ポアを通るイオン電流の測定に好適な条件は、当技術分野において公知であり、実施例において開示する。方法は、通常は、膜とポアを介して印加される電圧を用いて行われる。使用される電圧は、通常は、+5V〜−5V、例えば、+4V〜−4V、+3V〜−3V、または+2V〜−2Vである。使用される電圧は、通常は、−600mV〜+600mV、または−400mV〜+400mVである。使用される電圧は、好ましくは、−400mV、−300mV、−200mV、−150mV、−100mV、−50mV、−20mVおよび0mVから選択される下限と+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mVおよび+400mVから独立して選択される上限とを有する範囲である。使用される電圧は、より好ましくは、100mV〜240mVの範囲、および最も好ましくは120mV〜220mVの範囲である。増加された印加電位の使用により、ポアによる異なるヌクレオチド間の識別を増すことが可能である。
方法は、通常は、金属塩、例えばアルカリ金属塩、ハロゲン化物塩、例えば塩化物塩、例えばアルカリ金属塩化物塩などの、任意の電荷担体の存在下で行われる。電荷担体としては、イオン性液体または有機塩、例えば塩化テトラメチルアンモニウム、塩化トリメチルフェニルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウムもしくは塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを挙げることができる。上で論じた例示的装置では、塩は、チャンバー内の水溶液中に存在する。塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化セシウム(CsCl)、またはフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムの混合物が通常は使用される。KCl、NaCl、およびフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムの混合物が好ましい。電荷担体は、膜に対して非対称であることがある。例えば、電荷担体のタイプおよび/または濃度が膜の両側で異なることがある。
塩濃度は、飽和時のものでありうる。塩濃度は、3M以下であることができるが、通常は0.1〜2.5M、0.3〜1.9M、0.5〜1.8M、0.7〜1.7M、0.9〜1.6M、または1M〜1.4Mである。塩濃度は、好ましくは、150mM〜1Mである。方法は、好ましくは、少なくとも0.3M、例えば、少なくとも0.4M、少なくとも0.5M、少なくとも0.6M、少なくとも0.8M、少なくとも1.0M、少なくとも1.5M、少なくとも2.0M、少なくとも2.5Mまたは少なくとも3.0Mの塩濃度を使用して行われる。高い塩濃度は、高いシグナル対ノイズ比をもたらし、正常電流変動のバックグラウンドに対してヌクレオチドの存在を示す電流を同定することを可能にする。
方法は、通常は緩衝液の存在下で行われる。上で論じた例示的装置では、緩衝液は、チャンバー内の水溶液中に存在する。いかなる緩衝液を本発明の方法において使用してもよい。通常は、緩衝液はリン酸緩衝液である。他の好適な緩衝液は、HEPESおよびTris−HCl緩衝液である。方法は、通常は、4.0〜12.0,4.5〜10.0、5.0〜9.0.5.5〜8.8、6.0〜8.7、または7.0〜8.8、または7.5〜8.5のpHで行われる。使用されるpHは、好ましくは約7.5である。
方法は、0℃〜100℃、15℃〜95℃、16℃〜90℃、17℃〜85℃、18℃〜80℃、19℃〜70℃、または20℃〜60℃で行われることがある。方法は、通常は室温で行われる。方法は、場合により、酵素機能を支援する温度、例えば、約37℃で行われる。
ポリヌクレオチド結合タンパク質
鎖特徴づけ方法は、ポリヌクレオチドをポリヌクレオチド結合タンパク質と、タンパク質がポリヌクレオチドのポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御するように接触させるステップを好ましくは含む。
より好ましくは、方法は、(a)ポリヌクレオチドをCsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポア、およびポリヌクレオチド結合タンパク質と、タンパク質がポリヌクレオチドのポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御するように接触させるステップ、ならびに(b)ポリヌクレオチドがポアに対して移動しているときに1回または複数回の測定を行い、測定がポリヌクレオチドの1つまたは複数の特徴を示し、それによってポリヌクレオチドを特徴づけるステップを含む。
より好ましくは、方法は、(a)ポリヌクレオチドをCsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポア、およびポリヌクレオチド結合タンパク質と、タンパク質がポリヌクレオチドのポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御するように接触させるステップ、ならびに(b)ポリヌクレオチドがポアに対して移動しているときにポアを通る電流を測定し、電流がポリヌクレオチドの1つまたは複数の特徴を示し、それによってポリヌクレオチドを特徴づけるステップを含む。
ポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポリヌクレオチドと結合することおよびポアを通るその移動を制御することができる、あらゆるタンパク質であることができる。当技術分野ではタンパク質がポリヌクレオチドと結合するか否かを判定することは容易である。タンパク質は、通常は、ポリヌクレオチドと相互作用し、ポリヌクレオチドの少なくとも1つの特性を修飾する。タンパク質は、ポリヌクレオチドを切断して個々のヌクレオチドまたはより短いヌクレオチド鎖、例えばジもしくはトリヌクレオチド、にすることによって、ポリヌクレオチドを修飾することがある。タンパク質は、ポリヌクレオチドを特異的位置に配向または移動させること、すなわちその移動を制御することによって、ポリヌクレオチドを修飾することもある。
ポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくは、ポリヌクレオチドハンドリング酵素(polynucleotide handling enzyme)に由来する。ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、ポリヌクレオチドと相互作用してポリヌクレオチドの少なくとも1つの特性を修飾することができるポリペプチドである。酵素は、ポリヌクレオチドを切断して個々のヌクレオチドまたはより短いヌクレオチド鎖、例えばジもしくはトリヌクレオチド、にすることによって、ポリヌクレオチドを修飾することがある。酵素は、ポリヌクレオチドを特異的位置に配向または移動させることによって、ポリヌクレオチドを修飾することもある。ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、ポリヌクレオチドに結合することができ、かつポアを通るその移動を制御することができるのであれば、酵素活性を示す必要がない。例えば、酵素は、その酵素活性を除去するように修飾されることもあり、または酵素として作用することを妨げる条件下で使用されることもある。そのような条件は、下でより詳細に論じる。
ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、好ましくは、核酸分解酵素に由来する。酵素の構築物に使用されるポリヌクレオチドハンドリング酵素は、より好ましくは、酵素分類(EC)群3.1.11、3.1.13、3.1.14、3.1.15、3.1.16、3.1.21、3.1.22、3.1.25、3.1.26、3.1.27、3.1.30および3.1.31のいずれかのメンバーに由来する。酵素は、国際出願第PCT/GB10/000133号明細書(国際公開第2010/086603号パンフレットとして公開)に開示されているもののいずれかであってもよい。
好ましい酵素は、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、ヘリカーゼおよびトポイソメラーゼ、例えばジャイレースである。好適な酵素としては、大腸菌(E. coli)からのエキソヌクレアーゼ(配列番号399)、大腸菌(E. coli)からのエキソヌクレアーゼIII酵素(配列番号401)、高度好熱菌(T. thermophilus)からのRecJ(配列番号403)、およびバクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼ(配列番号405)、TatDエキソヌクレアーゼ、ならびにこれらのバリアントが挙げられるが、それらに限定されない。配列番号403で示される配列またはそのバリアントを構成する3つのサブユニットは相互作用してトリマーエキソヌクレアーゼを形成する。これらのエキソヌクレアーゼを本発明のエキソヌクレアーゼ方法において使用することもできる。ポリメラーゼは、PyroPhage(登録商標)3173 DNAポリメラーゼ(Lucigen(登録商標)Corporationから市販されている)、SDポリメラーゼ(Bioron(登録商標)から市販されている)、またはそのバリアントであってもよい。酵素は、好ましくは、Phi29 DNAポリメラーゼ(配列番号397)またはそのバリアントである。トポイソメラーゼは、好ましくは、部分分類(EC)群5.99.1.2および5.99.1.3のいずれかについてのメンバーである。
酵素は、最も好ましくは、ヘリカーゼ、例えば、Hel308 Mbu(配列番号406)、Hel308 Csy(配列番号407)、Hel308 Tga(配列番号408)、Hel308 Mhu(配列番号409)、Tral Eco(配列番号410)、XPD Mbu(配列番号411)またはそのバリアントに由来する。いかなるヘリカーゼを本発明で使用してもよい。ヘリカーゼは、Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、例えばTralヘリカーゼもしくはTrwCヘリカーゼ、XPDヘリカーゼまたはDdaヘリカーゼであることがあり、またはこれらに由来することもある。ヘリカーゼは、国際出願第PCT/GB2012/052579号明細書(国際公開第2013/057495号パンフレットとして公開)、同第PCT/GB2012/053274号明細書(国際公開第2013/098562号パンフレットとして公開)、同第PCT/GB2012/053273号明細書(国際公開第2013/098561号パンフレットとして公開)、同第PCT/GB2013/051925号明細書(国際公開第2014/013260号パンフレットとして公開)、同第PCT/GB2013/051924号明細書(国際公開第2014/013259号パンフレットとして公開)、同第PCT/GB2013/051928号明細書(国際公開第2014/013262号パンフレットとして公開)および同第PCT/GB2014/052736号明細書に開示されている、ヘリカーゼ、修飾ヘリカーゼまたはヘリカーゼ構築物のいずれかであってもよい。
ヘリカーゼは、好ましくは、配列番号413(Trwc Cba)で示される配列もしくはそのバリアント、配列番号406(Hel308 Mbu)で示される配列もしくはそのバリアント、または配列番号412(Dda)で示される配列もしくはそのバリアントを含む。バリアントは、膜貫通ポアについて下で論じる点のいずれかでネイティブ配列と異なることがある。配列番号412の好ましいバリアントは、(a)E94CおよびA360Cまたは(b)E94C、A360C、C109AおよびC136A、次いで場合により(ΔM1)G1G2(すなわち、M1の欠失、次いで追加のG1およびG2)を含む。
あらゆる数のヘリカーゼを本発明に従って使用することができる。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のヘリカーゼが使用されることもある。一部の実施形態では、異なる数のヘリカーゼが使用されることもある。
本発明の方法は、好ましくは、ポリヌクレオチドと2つ以上のヘリカーゼを接触させるステップを含む。2つ以上のヘリカーゼは、通常は同じヘリカーゼである。2つ以上のヘリカーゼは、異なるヘリカーゼであることもある。
2つ以上のヘリカーゼは、上で言及したヘリカーゼのいかなる組合せであってもよい。2つ以上のヘリカーゼは、2つ以上のDdaヘリカーゼであることもある。2つ以上のヘリカーゼは、1つまたは複数のDdaヘリカーゼと1つまたは複数のTrwCヘリカーゼであることもある。2つ以上のヘリカーゼは、同じヘリカーゼの異なるバリアントであることもある。
2つ以上のヘリカーゼは、好ましくは、互いに結合される。2つ以上のヘリカーゼは、より好ましくは、互いに共有結合される。いかなる順序で、およびいかなる方法を使用して、ヘリカーゼを結合させてもよい。本発明での使用に好ましいヘリカーゼ構築物は、国際出願第PCT/GB2013/051925号明細書(国際公開第2014/013260号パンフレットとして公開)、同第PCT/GB2013/051924号明細書(国際公開第2014/013259号パンフレットとして公開)、同第PCT/GB2013/051928号明細書(国際公開第2014/013262号パンフレットとして公開)および同第PCT/GB2014/052736号明細書に記載されている。
配列番号397、399、401、403、405、406、407、408、409、410、411、412または413のバリアントは、配列番号397、399、401、403、405、406、407、408、409、410、411、412または413のものとは異なるアミノ酸配列を有する酵素であって、ポリヌクレオチド結合能力を保持する酵素である。この能力を、当技術分野において公知の任意の方法を使用して測定することができる。例えば、バリアントをポリヌクレオチドと接触させることができ、ポリヌクレオチドと結合するおよびポリヌクレオチドに沿って移動するその能力を測定することができる。バリアントは、ポリヌクレオチドの結合を助長する修飾ならびに/または高い塩濃度および/もしくは室温でその活性を助長する修飾を含むことがある。バリアントは、ポリヌクレオチドに結合する(すなわち、ポリヌクレオチド結合活性を保持する)がヘリカーゼとして機能しない(すなわち、移動を助長するためのすべての必要成分、例えばATPおよびMg2+、が備わっているときポリヌクレオチドに沿って移動しない)ように修飾されることもある。そのような修飾は、当技術分野において公知である。例えば、ヘリカーゼ中のMg2+結合ドメインの修飾は、通常は、ヘリカーゼとして機能しないバリアントをもたらす。これらのタイプのバリアントは、分子ブレーキとして作用(下記参照)することができる。
配列番号397、399、401、403、405、406、407、408、409、410、411、412または413のアミノ酸配列の全長にわたって、バリアントは、好ましくは、アミノ酸同一性に基づいてその配列と少なくとも50%相同であることになる。より好ましくは、バリアントポリペプチドは、アミノ酸同一性に基づいて、配列全体にわたって配列番号397、399、401、403、405、406、407、408、409、410、411、412または413のアミノ酸配列と少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同でありうる。連続する200以上、例えば230、250、270、280、300、400、500、600、700、800、900または1000以上のアミノ酸のストレッチにわたって、少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%または95%アミノ酸同一性(「堅い相同性」)があることもある。相同性は、上で論じたように判定される。バリアントは、上記配列番号390に関して上で論じた点のいずれかで野生型配列と異なることがある。酵素をポアに共有結合されることもある。いかなる方法を使用して酵素をポアに共有結合させてもよい。
好ましい分子ブレーキは、TrwC Cba−Q594A(変異Q594Aを有する配列番号413)である。このバリアントは、ヘリカーゼとして機能しない(すなわち、ポリヌクレオチドに結合するが、移動を助長するためのすべての必要な成分、例えばATPおよびMg2+、が備わっているときにポリヌクレオチドに沿って移動しない)。
鎖シークエンシングの場合、ポリヌクレオチドは、印加電位に伴ってまたは反発してポアを通って移行される。二本鎖ポリヌクレオチドに対して漸進的にまたは前進的に作用するエキソヌクレアーゼを、印加電位のもとで残りの一本鎖を送り込むためにポアのシス側で使用することができ、または逆転電位のもとでトランス側で使用することができる。同様に、二本鎖DNAを巻き戻すヘリカーゼも、同じように使用することができる。ポリメラーゼも使用することができる。シークエンシング用途のために印加電位に逆らって鎖移行を要する可能性もあるが、逆転電位のもとではまたは電位のない状態ではDNAが酵素によって最初に「捕らえられる」はずである。その後、結合後に電位が切り替わると、鎖は、シスからトランスへとポアを通過し、伸長された高次構造で電流によって保持される。一本鎖DNAエキソヌクレアーゼまたは一本鎖DNA依存性ポリメラーゼは、分子モーターとして作用して、ポアを通って移行されたばかりの一本鎖を印加電位に反発してトランスからシスへ、制御された段階的様式で引き戻すことができる。
あらゆるヘリカーゼを方法において使用することができる。ヘリカーゼは、ポアに対して2つのモードで作用することができる。第一に、方法は、好ましくは、ヘリカーゼによってポリヌクレオチドが印加電圧の結果として生ずる場に伴ってポアを通って移動するように、ヘリカーゼを使用して行われる。このモードでは、ポリヌクレオチドの5’末端が先ずポア内に捕捉され、ヘリカーゼによってポリヌクレオチドは、最終的に膜のトランス側に移行するまで場に伴ってポアに通されるように、ポア内に移動する。あるいは、方法は、好ましくは、ヘリカーゼによってポリヌクレオチドが印加された電圧の結果として生ずる場に反発してポアを通って移動するように行われる。このモードでは、ポリヌクレオチドの3’末端が先ずポア内に捕捉され、ヘリカーゼによってポリヌクレオチドは、最終的に膜のシス側に押し戻されるまで印加された場に反発してポアから引き出されるように、ポアを通って移動する。
方法は、反対方向で行われることもある。ポリヌクレオチドの3’末端が先ずポア内に捕捉されることがあり、ヘリカーゼによってポリヌクレオチドは、最終的に膜のトランス側に移行するまで場に伴ってポアを通されるようにポア内に移動することもある。
ヘリカーゼに移動を助長するために必要な成分が備わっていない場合、またはヘリカーゼがその移動を妨げるもしくは防止するように修飾されている場合、ヘリカーゼはポリヌクレオチドに結合し、印加された場によってポリヌクレオチドがポアの中に引き入れられたときにポリヌクレオチドの移動を遅速させるブレーキとして作用することができる。この不活性モードでは、ポリヌクレオチドが3’から下って捕捉されるのか5’から下って捕捉されるのかは問題にならず、問題になるのは、酵素がブレーキとして作用してポリヌクレオチドをポア内のトランス側の方に引き入れる、印加される場である。不活性モードでの場合のヘリカーゼによるポリヌクレオチドの移動制御は、漸減、スライドおよび制動はじめとする多数の方法で説明することができる。ヘリカーゼ活性を欠いているヘリカーゼバリアントもこのようにして使用することができる。
ポリヌクレオチドをポリヌクレオチド結合タンパク質およびポアといかなる順番で接触させてもよい。ポリヌクレオチドをヘリカーゼなどのポリヌクレオチド結合タンパク質およびポアと接触させる場合、ポリヌクレオチドは、先ず第一に、タンパク質と複合体を形成することが好ましい。ポアを介して電圧を印加すると、ポリヌクレオチド/タンパク質複合体はポアと複合体を形成し、ポアを通るポリヌクレオチドの移動を制御する。
ポリヌクレオチド結合タンパク質を使用する方法におけるあらゆるステップが、通常は、遊離ヌクレオチドまたは遊離ヌクレオチド類似体とポリヌクレオチド結合タンパク質の作用を助長する酵素補因子との存在下で行われる。遊離ヌクレオチドは、上で論じた個々のヌクレオチドのいずれかの1つまたは複数でありうる。遊離ヌクレオチドとしては、アデノシン一リン酸(AMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン一リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、チミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シチジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシウリジン二リン酸(dUDP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)およびデオキシシチジン三リン酸(dCTP)が挙げられるが、これらに限定されない。遊離ヌクレオチドは、好ましくは、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMPまたはdCMPから選択される。遊離ヌクレオチドは、好ましくはアデノシン三リン酸(ATP)である。酵素補因子は、構築物が機能することを可能にする因子である。酵素補因子は、好ましくは二価金属カチオンである。二価金属カチオンは、好ましくは、Mg2+、Mn2+、Ca2+またはCo2+である。酵素補因子は、最も好ましくはMg2+である。
ヘリカーゼおよび分子ブレーキ
好ましい実施形態では、方法は、
(a)1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数の分子ブレーキが結合されたポリヌクレオチドを用意するステップ、
(b)ポリヌクレオチドをCsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポアと接触させ、1つまたは複数のヘリカーゼおよび分子ブレーキが一緒にされ、両方がポアに対する、例えばポアを通る、ポリヌクレオチドの移動を制御するように、ポアにわたって電位を印加するステップ、ならびに
(c)ポリヌクレオチドがポアに対して移動しているときに1回または複数回測定を行い、測定がポリヌクレオチドの1つまたは複数の特徴を示し、それによってポリヌクレオチドを特徴づけるステップ
を含む。
このタイプの方法は、国際出願第PCT/GB2014/052737号パンフレットにおいて詳細に論じられている。
1つまたは複数のヘリカーゼは、上で論じたもののいずれかであってもよい。1つまたは複数の分子ブレーキは、ポリヌクレオチドと結合してそのポリヌクレオチドのポアを通る移動を遅速させる、あらゆる化合物または分子であることができる。1つまたは複数の分子ブレーキは、ポリヌクレオチドと結合する1つまたは複数の化合物を好ましくは含む。1つまたは複数の化合物は、好ましくは、1つまたは複数の大環状分子である。好適な大環状分子としては、シクロデキストリン、カリックスアレーン、環状ペプチド、クラウンエーテル、ククルビツリル、ピラーアレーン、これらの誘導体またはそれら組合せが挙げられるが、それらに限定されない。シクロデキストリンまたはその誘導体は、Eliseev, A. V., and Schneider, H-J. (1994) J. Am. Chem. Soc. 116, 6081-6088に開示されているもののいずれかであってもよい。この作用物質は、より好ましくは、ヘプタキス−6−アミノ−β−シクロデキストリン(am7−βCD)、6−モノデオキシ−6−モノアミノ−β−シクロデキストリン(am1−βCD)またはヘプタキス−(6−デオキシ−6−グアニジノ)−シクロデキストリン(gu7−βCD)である。
1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、1つまたは複数の一本鎖結合タンパク質(SSB)である。1つまたは複数の分子ブレーキは、正味負電荷を有さないカルボキシ末端(C末端)領域を含む一本鎖結合タンパク質(SSB)、または(ii)そのC末端領域にそのC末端領域の正味負電荷を減少させる1つもしくは複数の修飾を含む修飾SSBである。1つまたは複数の分子ブレーキは、最も好ましくは、国際出願第PCT/GB2013/051924号明細書(国際公開第2014/013259号パンフレットとして公開)に開示されているSSBの1つである。
1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質である。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポリヌクレオチドと結合することおよびポアを通るその移動を制御することができる、あらゆるタンパク質であることができる。当技術分野ではタンパク質がポリヌクレオチドと結合するか否かを判定することは容易である。タンパク質は、通常は、ポリヌクレオチドと相互作用し、ポリヌクレオチドの少なくとも1つの特性を修飾する。タンパク質は、ポリヌクレオチドを切断して個々のヌクレオチドまたはより短いヌクレオチド鎖、例えばジもしくはトリヌクレオチド、にすることによって、ポリヌクレオチドを修飾することがある。その部分は、ポリヌクレオチドを特定の位置に配向または移動させること、すなわち、その移動を制御することによって修飾することもある。
ポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくは、ポリヌクレオチドハンドリング酵素に由来する。1つまたは複数の分子ブレーキは、上で論じたポリヌクレオチドハンドリング酵素のいずれかに由来するものであってもよい。分子ブレーキとして作用するPhi29ポリメラーゼ(配列番号396)の修飾バージョンは、米国特許第5,576,204号明細書に開示されている。1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくはヘリカーゼに由来する。
ヘリカーゼに由来するあらゆる数の分子ブレーキを使用することができる。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のヘリカーゼが、分子ブレーキとして使用されることがある。2つ以上のヘリカーゼが分子ブレーキとして使用される場合、その2つ以上のヘリカーゼは、通常は同じヘリカーゼである。2つ以上のヘリカーゼは、異なるヘリカーゼであることもある。
2つ以上のヘリカーゼは、上で言及したヘリカーゼのいかなる組合せであってもよい。2つ以上のヘリカーゼは、2つ以上のDdaヘリカーゼであることがある。2つ以上のヘリカーゼは、1つまたは複数のDdaヘリカーゼと1つまたは複数のTrwCヘリカーゼであることもある。2つ以上のヘリカーゼは、同じヘリカーゼの異なるバリアントであることもある。
2つ以上のヘリカーゼは、好ましくは、互いに結合される。2つ以上のヘリカーゼは、より好ましくは、互いに共有結合される。いかなる順序で、いかなる方法を使用して、ヘリカーゼを結合させてもよい。ヘリカーゼに由来する1つまたは複数の分子ブレーキは、少なくとも1つの配座状態でポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離することができるポリヌクレオチド結合ドメイン内の開口のサイズを低減させるように、好ましくは修飾される。これは、国際公開第2014/013260号パンフレットに開示されている。
本発明での使用に好ましいヘリカーゼ構築物は、国際出願第PCT/GB2013/051925号明細書(国際公開第2014/013260号パンフレットとして公開)、同第PCT/GB2013/051924号明細書(国際公開第2014/013259号パンフレットとして公開)、同第PCT/GB2013/051928号明細書(国際公開第2014/013262号パンフレットとして公開)および同第PCT/GB2014/052736号明細書に記載されている。
1つまたは複数のヘリカーゼが活性モードで使用される場合(すなわち、1つまたは複数のヘリカーゼに移動を助長するためのすべての必要成分、例えばATPおよびMg2+が備わっているとき)、1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、(a)不活性モードで使用される(すなわち、移動を助長するための必要成分の不在下で使用される、もしくは能動移動ができない)、(b)その1つもしくは複数の分子ブレーキが1つもしくは複数のヘリカーゼとは反対方向に移動する活性モードで使用される、または(c)その1つもしくは複数の分子ブレーキが1つもしくは複数のヘリカーゼと同じ方向に、1つもしくは複数のヘリカーゼより遅く移動する活性モードで使用される。
1つまたは複数のヘリカーゼが不活性モードで使用される場合(すなわち、1つまたは複数のヘリカーゼに移動を助長するためのすべての必要成分、例えばATPおよびMg2+が備わっていないとき、もしくは能動移動ができない)、1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、(a)不活性モードで使用される(すなわち、移動を助長するための必要成分の不在下で使用される、もしくは能動移動ができない)、または(b)その1つもしくは複数の分子ブレーキがポリヌクレオチドに沿って、ポリヌクレオチドと同じ方向にポアを通って移動する、活性モードで使用される。
1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数の分子ブレーキを、ポリヌクレオチドのいかなる位置に結合させてもよく、その結果、それらは一緒になり、両方がポリヌクレオチドのポアを通る移動を制御する。1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数の分子ブレーキは、少なくとも1ヌクレオチド離れており、例えば、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも5000、少なくとも10,000、少なくとも50,000ヌクレオチド以上離れている。方法が、一方の末端にYアダプターおよび他方の末端にヘアピンループアダプターが備わっている二本鎖ポリヌクレオチドの特徴づけに関する場合、好ましくはYアダプターに1つまたは複数のヘリカーゼが結合され、好ましくはヘアピンループアダプターに1つまたは複数の分子ブレーキが結合される。この実施形態では、1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、ポリヌクレオチドに結合するがヘリカーゼとして機能しないように修飾されている1つまたは複数のヘリカーゼである。Yアダプターに結合された1つまたは複数のヘリカーゼは、好ましくは、下でより詳細に論じるようにスペーサーで停止される。ヘアピンループアダプターに結合された1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくはスペーサーで停止されない。1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、1つまたは複数のヘリカーゼがヘアピンループに達したとき一緒になる。1つまたは複数のヘリカーゼは、Yアダプターをポリヌクレオチドに結合させる前にYアダプターに結合させてもよく、またはYアダプターをポリヌクレオチドに結合させた後にYアダプターに結合させてもよい。1つまたは複数の分子ブレーキは、ヘアピンループアダプターをポリヌクレオチドに結合させる前にヘアピンループアダプターに結合させてもよく、またはヘアピンループアダプターをポリヌクレオチドに結合させた後にヘアピンループアダプターに結合させてもよい。
1つまたは複数のヘリカーゼと1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、互いに結合されない。1つまたは複数のヘリカーゼと1つまたは複数の分子ブレーキは、より好ましくは、互いに共有結合されない。1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、国際出願第PCT/GB2013/051925号明細書(国際公開第2014/013260号パンフレットとして公開)、同第PCT/GB2013/051924号明細書(国際公開第2014/013259号パンフレットとして公開)、同第PCT/GB2013/051928号明細書(国際公開第2014/013262号パンフレットとして公開)および同第PCT/GB2014/052736号明細書に記載されているように結合されない。
スペーサー
1つまたは複数のヘリカーゼを、国際出願第PCT/GB2014/050175号パンフレットにおいて論じられているように1つまたは複数のスペーサーで停止させてもよい。国際出願に開示されている1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数のスペーサーのいずれの立体配置を本発明において使用してもよい。
ポリヌクレオチドの一部がポアに侵入し、印加された電位の結果として生じる場に沿ってポアを通って移動する場合、1つまたは複数のヘリカーゼは、ポリヌクレオチドがポアを通って移動するとそのポアによってスペーサーを超えて移動する。これは、(1つまたは複数のスペーサーを含む)ポリヌクレオチドがポアを通って移動し、1つまたは複数のヘリカーゼがそのポアの上部に残存するためである。
1つまたは複数のスペーサーは、好ましくはポリヌクレオチドの一部であり、例えば、スペーサーはポリヌクレオチド配列に割り込んでいる。1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、ポリヌクレオチドにハイブリダイズされた1つまたは複数の遮断分子、例えばスピードバンプ、の一部ではない。
ポリヌクレオチド内にあらゆる数のスペーサーがあることがあり、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のスペーサーがあることがある。好ましくは、ポリヌクレオチド内に2つ、4つまたは6つのスペーサーがある。ポリヌクレオチドの異なる領域内に1つまたは複数のスペーサーがあることもあり、例えば、Yアダプターおよび/またはヘアピンループアダプター内に1つまたは複数のスペーサーがあることもある。
1つまたは複数のスペーサーは、1つまたは複数のヘリカーゼが活性モードであっても克服することができないエネルギー障壁を、各々がもたらす。1つまたは複数のスペーサーは、(例えばポリヌクレオチド中のヌクレオチドから塩基を除去することにより)ヘリカーゼの牽引力を低減させることによって、または(例えば嵩高い化学基を使用して)1つもしくは複数のヘリカーゼの移動を物理的に遮断することによって、1つまたは複数のヘリカーゼを停止させることができる。
1つまたは複数のスペーサーは、1つまたは複数のヘリカーゼを停止させるあらゆる分子または分子の組合せを含むことができる。1つまたは複数のスペーサーは、1つまたは複数のヘリカーゼがポリヌクレオチドに沿って移動しないように防止する、あらゆる分子または分子の組合せを含むことができる。1つまたは複数のヘリカーゼが、膜貫通ポアおよび印加電位の不在下で1つまたは複数のスペーサーで停止されるか否かを判定することは容易である。例えば、スペーサーを超えて移動し、DNAの相補鎖を置換するヘリカーゼの能力を、PAGEによって測定することができる。
1つまたは複数のスペーサーは、通常は、ポリマーなどの直鎖状分子を含む。1つまたは複数のスペーサーは、通常は、ポリヌクレオチドとは異なる構造を有する。例えば、ポリヌクレオチドがDNAである場合、1つまたは複数のスペーサーは通常はDNAではない。詳細には、ポリヌクレオチドが、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)である場合、1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、またはヌクレオチド側鎖を有する合成ポリマーを含む。1つまたは複数のスペーサーは、1つまたは複数のヌクレオチドをポリヌクレオチドと反対方向で含むことがある。例えば、ポリヌクレオチドが5’から3’への方向である場合、1つまたは複数のスペーサーは、1つまたは複数のヌクレオチドを3’から5’への方向で含むことがある。ヌクレオチドは、上で論じたもののいずれかであってもよい。
1つまたは複数のスペーサーは、1つもしくは複数のニトロインドール、例えば1つもしくは複数の5−ニトロインドール、1つもしくは複数のイノシン、1つもしくは複数のアクリジン、1つもしくは複数の2−アミノプリン、1つもしくは複数の2,6−ジアミノプリン、1つもしくは複数の5−ブロモ−デオキシウリジン、1つもしくは複数の逆位チミジン(逆位dT)、1つもしくは複数の逆位ジデオキシチミジン(ddT)、1つもしくは複数のジデオキシシチジン(ddC)、1つもしくは複数の5−メチルシチジン、1つもしくは複数の5−ヒドロキシメチルシチジン、1つもしくは複数の2’−O−メチルRNA塩基、1つもしくは複数のイソデオキシシチジン(イソdC)、1つもしくは複数のイソデオキシグアノシン(イソdG)、1つもしくは複数のiSpC3基(すなわち、糖および塩基を欠いているヌクレオチド)、1つもしくは複数の光切断性(PC)基、1つもしくは複数のヘキサンジオール基、1つもしくは複数のスペーサー9(iSp9)基、1つもしくは複数のスペーサー18(iSp18)基、ポリマーまたは1つもしくは複数のチオール結合を好ましくは含む。1つまたは複数のスペーサーは、これらの基のあらゆる組合せを含むことがある。これらの基の多くは、IDT(登録商標)(Integrated DNA Technologies(登録商標))から市販されている。
1つまたは複数のスペーサーは、あらゆる数のこれらの基を含有することがある。例えば、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、5−ブロモ−デオキシウリジン、逆位dT、ddT、ddC、5−メチルシチジン、5−ヒドロキシメチルシチジン、2’−O−メチルRNA塩基、イソdC、イソdG、iSpC3基、PC基、ヘキサンジオール基およびチオール結合については、1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上含む。1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、2、3、4、5、6、7、8以上のiSp9基を含む。1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、2、3、4、5または6以上のiSp18基を含む。最も好ましいスペーサーは、4つのiSp18基である。
ポリマーは、好ましくは、ポリペプチドまたはポリエチレングリコール(PEG)である。ポリペプチドは、好ましくは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上のアミノ酸を含む。PEGは、好ましくは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上のモノマーユニットを含む。
1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、1つまたは複数の脱塩基ヌクレオチド(すなわち、核酸塩基を欠いているヌクレオチド)、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上の脱塩基ヌクレオチドを含む。核酸塩基は、脱塩基ヌクレオチドでは、−H(idSp)または−OHによって置換されていることがある。1つまたは複数の隣接ヌクレオチドから核酸塩基を除去することによって、脱塩基スペーサーをポリヌクレオチドに挿入することができる。例えば、ポリヌクレオチドは、3−メチルアデニン、7−メチルグアニン、1,N6−エテノアデニンイノシンまたはヒポキサンチンを含むように修飾されることがあり、核酸塩基は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラーゼ(hAAG)を使用してこれらのヌクレオチドから除去されることがある。あるいは、ポリヌクレオチドは、ウラシルを含むように修飾されることがあり、核酸塩基は、ウラシル−DNAグリコシラーゼ(UDG)で除去されることもがる。一実施形態では、1つまたは複数のスペーサーは、いかなる脱塩基ヌクレオチドも含まない。
1つまたは複数のヘリカーゼは、各々の直鎖状分子スペーサーによって(すなわちそれらの前で)停止されることもあり、または各々の直鎖状分子スペーサーで停止されることもある。直鎖状分子スペーサーが使用される場合、ポリヌクレオチドには、1つまたは複数のヘリカーゼが超えて移動することになる各スペーサーの末端に隣接してポリヌクレオチドの二本鎖領域が好ましくは備えられている。この二本鎖領域は、通常は、隣接スペーサーで1つまたは複数のヘリカーゼを停止させるのに役立つ。二本鎖領域の存在は、方法が約100mM以下の塩濃度で行われる場合、特に好ましい。各二本鎖領域は、通常は、長さ少なくとも10、例えば少なくとも12ヌクレオチドである。本発明において使用されるポリヌクレオチドが一本鎖状である場合、二本鎖領域は、より短いポリヌクレオチドをスペーサーに隣接する領域にハイブリダイズすることによって形成することができる。このより短いポリヌクレオチドは、通常は、ポリヌクレオチドと同じヌクレオチドから形成されるが、異なるヌクレオチドから形成されることもある。例えば、より短いポリヌクレオチドは、LNAから形成されることがある。
直鎖状分子スペーサーが使用される場合、ポリヌクレオチドには、好ましくは、1つまたは複数のヘリカーゼが超えて移動することになる末端とは反対側の各スペーサーの末端に遮断分子が備えられている。この遮断分子は、1つまたは複数のヘリカーゼが各スペーサーで停止した状態を確実に維持するのに役立つことができる。その遮断分子は、1つまたは複数のヘリカーゼを、該ヘリカーゼが溶液に拡散する場合、ポリヌクレオチド上に保持するのにも役立つことができる。遮断分子は、1つまたは複数のヘリカーゼを物理的に停止させる、下で論じる化学基のいずれかであることができる。遮断分子は、ポリヌクレオチドの二本鎖領域であることもある。
1つまたは複数のスペーサーは、1つまたは複数のヘリカーゼを物理的に停止させる1つまたは複数の化学基を好ましくは含む。1つまたは複数の化学基は、好ましくは、1つまたは複数のペンダント化学基である。1つまたは複数の化学基は、ポリヌクレオチド中の1つまたは複数の核酸塩基に結合されていることもある。1つまたは複数の化学基は、ポリヌクレオチド主鎖に結合されていることもある。2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上などのあらゆる数の化学基が存在することがある。好適な基としては、フルオロフォア、ストレプトアビジンおよび/またはビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニンおよび/または抗ジゴキシゲニンならびにジベンジルシクロオクチン基が挙げられるが、これらに限定されない。
ポリヌクレオチド中の異なるスペーサーは、異なる停止分子を含むことがある。例えば、あるスペーサーは、上で論じた直鎖状分子の1つを含むことがあり、別のスペーサーは、1つまたは複数のヘリカーゼを物理的に停止させる1つまたは複数の化学基を含むことがある。スペーサーは、上で論じた直鎖状分子のいずれか、ならびに1つまたは複数のヘリカーゼを物理的に停止させる1つまたは複数の化学基、例えば1つ以上の脱塩基およびフルオロフォアを含むことがある。
ポリヌクレオチドのタイプおよび本発明の方法が行われる条件に依存して、好適なスペーサーを設計することができる。大部分のヘリカーゼは、DNAに結合し、DNAに沿って移動するため、DNAではない何かを使用してそれらを停止させることができる。好適な分子は、上で論じている。
本発明の方法は、好ましくは、遊離ヌクレオチドの存在下、および/またはヘリカーゼ補因子の存在下で行われる。このことは、下でより詳細に論じる。膜貫通ポアおよび印加電位の不在下では、1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、遊離ヌクレオチドの存在下および/またはヘリカーゼ補因子の存在下で1つまたは複数のヘリカーゼを停止させることができる。
本発明の方法が、遊離ヌクレオチドおよび(1つまたは複数のヘリカーゼが活性モードであるように)下で論じるようなヘリカーゼ補因子の存在下で行われる場合、通常は、1つまたは複数のより長いスペーサーを使用して、1つまたは複数のヘリカーゼをポリヌクレオチド上で確実に停止させた後、それらを膜貫通ポアと接触させ、電位を印加する。遊離ヌクレオチドおよび(1つまたは複数のヘリカーゼが不活性モードであるように)ヘリカーゼの不在下では、1つまたは複数のより短いスペーサーを使用することができる。
塩濃度も、1つまたは複数のヘリカーゼを停止させる1つまたは複数のスペーサーの能力に影響を及ぼす。膜貫通ポアおよび印加電位の不在下では、1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、約100mM以下の塩濃度で1つまたは複数のヘリカーゼを停止させることができる。本発明の方法で使用される塩濃度が高いほど、概して使用される1つまたは複数のスペーサーは短く、逆もまた同様である。
特徴の好ましい組合せを下の表3に示す。
方法は、2つ以上のヘリカーゼをスペーサーを超えて移動させることに関することもある。そのような場合、スペーサーの長さを通常は増加させて、ポアおよび印加電位の不在下で後従ヘリカーゼがスペーサーを超えて先導ヘリカーゼを押さないようにする。方法が、1つまたは複数のスペーサーを超えて2つ以上のヘリカーゼを移動させることに関する場合、上で論じたスペーサー長は、少なくとも1.5倍、例えば2倍、2.5倍または3倍増加されることがある。例えば、方法が、1つまたは複数のスペーサーを超えて2つ以上のヘリカーゼを移動させることに関する場合、上の表3の第3列におけるスペーサー長は、1.5倍、2倍、2.5倍または3倍増加されることがある。
膜
本発明のポアは、膜内に存在することがある。本発明の方法では、ポリヌクレオチドを膜内のCsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポアと通常は接触させる。あらゆる膜を本発明に従って使用することができる。好適な膜は、当技術分野において周知である。膜は、好ましくは両親媒性層である。両親媒性層は、親水性部分と親油性部分両方を有する両親媒性分子、例えばリン脂質、から形成される層である。両親媒性分子は、合成のものであることもあり、または天然に存在することもある。天然に存在しない両親媒性物質、および単層を形成する両親媒性物質は、当技術分野において周知であり、例えば、ブロックコポリマーを含む(Gonzalez-Perez et al., Langmuir, 2009, 25, 10447-10450)。ブロックコポリマーは、2つ以上のモノマーサブユニットが互いに重合して単一ポリマー鎖を生成する高分子材料である。ブロックコポリマーは、通常は、各モノマーサブユニットが一因となる特性を有する。しかし、ブロックコポリマーは、個々のサブユニットから形成されたポリマーが有さない固有の特性を有することもある。ブロックコポリマーは、モノマーサブユニットの1つが疎水性(すなわち親油性)であるが他のサブユニットは水性媒体中にあるとき親水性であるように、工学的に操作することができる。この場合、ブロックコポリマーは、両親媒特性を有することおよび生体膜を模倣する構造を形成することができる。ブロックコポリマーは、(2つのモノマーサブユニットからなる)ジブロックであることがあるが、両親媒性物質として挙動する、より複雑な配置を形成するように、2つより多くのモノマーサブユニットから構築されることもある。コポリマーは、トリブロック、テトラブロックまたはペンタブロックコポリマーであることがある。膜は、好ましくは、トリブロックコポリマー膜である。
古細菌双極性テトラエーテル脂質は、脂質が単層膜を形成するように構築される、天然に存在する脂質である。これらの脂質は、厳しい生物環境で生き残る好極限性細菌、好熱菌、好塩菌および好酸菌において一般に見出される。それらの安定性は、最終二重層の融合された性質に由来すると考えられている。親水性−疎水性−親水性の一般モチーフを有するトリブロックポリマーを生成することによってこれらの生物学的エンティティーを模倣するブロックコポリマー材料を構築することは容易である。この材料は、脂質二重層と同様に挙動し、かつ小胞から層状の膜までの範囲の相挙動を包含する、モノマー膜を形成することができる。これらのトリブロックコポリマーから形成される膜は、生体脂質膜に勝るいくつかの利点を保持する。トリブロックコポリマーを合成するので、まさにその構築を注意深く制御して、膜を形成するためにならびにポアおよび他のタンパク質と相互作用するために必要な正確な鎖長および特性を得ることができる。
ブロックコポリマーは、脂質複素材として分類されないサブユニットから構築されることもある。例えば、疎水性ポリマーは、シロキサンまたは他の非炭化水素系モノマーから製造されることもある。ブロックコポリマーの親水性小部分は、低いタンパク質結合特性を有することもでき、この低いタンパク質結合特性によって、未加工の生体試料に曝露されたときに高度に耐性である膜の生成が可能になる。このヘッド基ユニットは、非古典的脂質ヘッド基に由来することもある。
トリブロックコポリマー膜は、生体脂質膜と比較して増加された機械的および環境安定性、例えば、より高い動作温度またはpH範囲も有する。ブロックコポリマーの合成性は、ポリマーに基づく膜を広範な用途に合わせてカスタマイズするためのプラットホームをもたらす。
膜は、最も好ましくは、国際出願第PCT/GB2013/052766号または同第PCT/GB2013/052767号パンフレットに開示されている膜の1つである。
両親媒性分子は、ポリヌクレオチドのカップリングを助長するように化学的に修飾されるまたは官能化されることがある。
両親媒性層は、単層であることもあり、または二重層であることもある。両親媒性層は、通常は平面状である。両親媒性層は、湾曲していることもある。両親媒性層は、支持されていることもある。
両親媒性膜は、通常は自然移動性であり、本質的に二次元流体としておおよそ108cm・s−1の脂質拡散速度で作用する。これは、ポアおよびカップリングされたポリヌクレオチドが通常は両親媒性膜内で移動することができることを意味する。
膜は、脂質二重層であることがある。脂質二重層は、細胞膜のモデルであり、ある範囲の実験研究用の優れたプラットホームとして役立つ。例えば、脂質二重層を単一チャネル記録による膜タンパク質のin vitro研究に使用することができる。あるいは、脂質二重層をバイオセンサーとして使用して、ある範囲の物質の存在を検出することができる。脂質二重層は、あらゆる脂質二重層であることができる。好適な脂質二重層としては、平面状脂質二重層、支持二重層またはリポソームが挙げられるが、これらに限定されない。脂質二重層は、好ましくは平面状脂質二重層である。好適な脂質二重層は、国際出願第PCT/GB08/000563号明細書(国際公開2008/102121号パンフレットとして公開)、国際出願第PCT/GB08/004127号明細書(国際公開第2009/077734号パンフレットとして公開)および国際出願第PCT/GB2006/001057号明細書(国際公開第2006/100484号パンフレットとして公開)に開示されている。
脂質二重層を形成する方法は、当技術分野において公知である。脂質二重層は、脂質単層が水溶液/空気界面に、その界面に対して垂直である開口部の両側を超えて担持される、モンタル(Montal)およびミューラー(Mueller)の方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 1972; 69: 3561-3566)によって、一般に形成される。通常、脂質を電解質水溶液の表面に、先ず脂質を有機溶媒に溶解し、次いで溶媒の液滴を開口部の両側の水性溶液の表面で蒸発させることによって、加える。有機溶媒を蒸発させたら、二重層が形成されるまで、開口部の両側の溶液/空気界面を開口部を超えて物理的に上下に移動させる。平面状脂質二重層は、膜の開口部を横断して形成されることもあり、または開口を横断して凹所の中に形成されることもある。
モンタルおよびミューラーの方法は、タンパク質ポア挿入に適している良質脂質二重層を形成する対費用効果の高い比較的容易な方法であるため、評判がよい。他の一般的な二重層形成方法としては、先端部浸漬、二重層の塗装、および脂質二重層のパッチクランプが挙げられる。
先端部浸漬二重層形成は、脂質の単層を担持している試験溶液の表面に開口部表面(例えばピペット先端部)を触れさせることを必要とする。この場合もやはり、有機溶媒に溶解された脂質の液滴を溶液表面で蒸発させることによって先ず脂質単層が溶液/空気界面で生成される。次いで、二重層がラングミュア(Langumur)・シェーファー(Schaefer)法によって形成され、溶液表面に対して開口部を移動させる機械的自動化を必要とする。
塗装される二重層については、有機溶媒に溶解された脂質の液滴が開口部に直接塗布され、その開口部が試験水溶液に沈められる。脂質溶液は、塗装用刷毛または同等物を使用して開口部全面に薄く塗られる。溶媒が薄くなることで、脂質二重層が形成される結果となる。しかし、二重層からの溶媒の完全除去は困難であり、したがって、この方法によって形成される二重層は、安定性がより低く、電気化学的測定中にノイズをより生じやすい。
パッチクランプは、生体細胞膜の研究に一般に使用される。細胞膜が吸引によってピペットの末端部にクランプされ、膜のパッチがその開口部全体に付着される。この方法は、リポソームをクランプする(その後、リポソームが破裂してピペットの開口部全面を封止する脂質二重層を残す)ことによる脂質二重層の生成に適している。この方法は、安定した巨大な単層状のリポソームと、ガラス表面を有する材料への小開口部の作製とを必要とする。
リポソームは、超音波処理、抽出またはモザファリ(Mozafari)法(Colas et al., (2007) Micron 38:841-847)によって形成することができる。
好ましい実施形態において、脂質二重層は、国際出願第PCT/GB08/004127号明細書(国際公開第2009/077734号パンフレットとして公開)に記載されているように形成される。有利には、この方法では脂質二重層が乾燥脂質から形成される。最も好ましい実施形態では、脂質二重層は、国際公開第2009/077734号パンフレット(PCT/GB08/004127)に記載されているように開口を横断して形成される。
脂質二重層は、2つの対向する脂質層から形成される。2つの脂質層は、それらの疎水性テール基が互いに向き合って疎水性の内部を形成するように配置される。脂質の親水性ヘッド基は、その二重層の両側の水性環境に向かって外側に向いている。二重層は、これらに限定されるものではないが脂質無秩序相(流体層状)、液体無秩序相、固体無秩序相(層状ゲル相、インターデジティテッドゲル相)および平面状二重層結晶(層状サブゲル相、層状結晶相)を含む、多数の脂質相に存在することがある。
脂質二重層を形成するあらゆる脂質組成物を使用することができる。脂質組成物は、必要な特性、例えば、表面電荷、膜タンパク質を支持する能力、充填密度または機械的特性を有する脂質二重層が形成されるように選択される。脂質組成物は、1つまたは複数の異なる脂質を含むことができる。例えば、脂質組成物は、100以下の脂質を含有することができる。脂質組成物は、好ましくは、1〜10の脂質を含有する。脂質組成物は、天然に存在する脂質および/または人工脂質を含むことがある。
脂質は、通常は、ヘッド基と、界面部分と、同じであってもまたは異なってもよい2つの疎水性テール基とを含む。好適なヘッド基としては、中性ヘッド基、例えばジアシルグリセリド(DG)およびセラミド(CM)、双性イオン性ヘッド基、例えばホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)およびスフィンゴミエリン(SM)、負電荷を有するヘッド基、例えばホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、リン酸(PA)およびカルジオリピン(CA)、ならびに正電荷を有するヘッド基、例えばトリメチルアンモニウム−プロパン(TAP)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な界面部分としては、天然に存在する界面部分、例えば、グリセロール系またはセラミド系部分が挙げられるが、これらに限定されない。好適な疎水性テール基としては、飽和炭化水素鎖、例えばラウリン酸(n−ドデカン酸)、ミリスチン酸(n−テトラデカン酸)、パルミチン酸(n−ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(n−オクタデカン酸)およびアラキドン酸(n−エイコサン酸)、不飽和炭化水素鎖、例えばオレイン酸(シス−9−オクタデカン酸)、ならびに分岐炭化水素鎖、例えばフィタノイルが挙げられるが、これらに限定されない。不飽和炭化水素鎖の鎖長ならびに不飽和炭化水素鎖中の二重結合の位置および数は、様々でありうる。分岐炭化水素鎖の鎖長ならびに分岐炭化水素鎖中のメチル基などの分枝の位置および数は、様々でありうる。疎水性テール基を界面部分にエーテルまたはエステルとして連結することができる。脂質は、ミコール酸であってもよい。
脂質を化学的に修飾することもできる。脂質のヘッド基またはテール基は、化学的に修飾されることがある。ヘッド基が化学的に修飾されている好適な脂質としては、PEG修飾脂質、例えば1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000]、官能化PEG脂質、例えば1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[ビオチニル(ポリエチレングリコール)2000]、ならびに結合用に修飾された脂質、例えば1,2−ジオレイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(スクシニル)および1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(ビオチニル)が挙げられるが、これらに限定されない。テール基が化学的に修飾されている好適な脂質としては、重合性脂質、例えば1,2−ビス(10,12−トリコサジイノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、フッ素化脂質、例えば1−パルミトイル−2−(16−フルオロパルミトイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、変性脂質、例えば1,2−ジパルミトイル−D62−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、ならびにエーテル連結脂質、例えば1,2−ジ−O−フィタニル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンが挙げられるが、これらに限定されない。脂質は、ポリヌクレオチドのカップリングを助長するように化学的に修飾されるまたは官能化されることもある。
両親媒性層、例えば脂質組成物は、通常は、層の特性に影響を及ぼす1つまたは複数の添加剤を含む。好適な添加剤としては、脂肪酸、例えばパルミチン酸、ミリスチン酸およびオレイン酸、脂肪アルコール、例えばパルミチン酸アルコール、ミリスチン酸アルコールおよびオレイン酸アルコール、ステロール、例えばコレステロール、エルゴステロール、ラノステロール、シトステロールおよびスチグマステロール、リゾリン脂質、例えば1−アシル−2−ヒドロキシ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、ならびにセラミドが挙げられるが、これらに限定されない。
別の好ましい実施形態では、膜は固体層を含む。固体層は、これらに限定されるものではないがマイクロエレクトロニクス材料、絶縁材料、例えばSi3N4、Al2O3およびSiO、有機および無機ポリマー、例えば、ポリアミド、プラスチック、例えばTeflon(登録商標)またはエラストマー、例えば二成分付加硬化シリコーンゴム、およびガラスを含む、有機材料と無機材料両方から形成することができる。固体層は、グラフェンから形成されることもある。好適なグラフェン層は、国際出願第PCT/US2008/010637号明細書(国際公開第2009/035647号パンフレットとして公開)に開示されている。膜が固体層を含む場合、ポアは、通常は、固体層の中に、例えば、固体層の穴、壁、間隙、チャネル、トレンチ、細隙の中に含まれている両親媒性膜または層中に存在する。当業者は、好適な固体/両親媒性ハイブリッド系を調製することができる。好適な系は、国際公開第2009/020682号パンフレットおよび国際公開第2012/005857号パンフレットに開示されている。上で論じた両親媒性膜または層のいずれかを使用することができる。
方法は、通常は、(i)ポアを含む人工両親媒性層、(ii)ポアを含む単離された自然に存在する脂質二重層、または(iii)中にポアが挿入された細胞を使用して行われる。方法は、通常は、人工トリブロックコポリマー層などの人工両親媒性層を使用して行われる。層は、他の膜貫通および/または膜内タンパク質ならびに他の分子をポアに加えて含むことがある。好適な装置および条件は、下で論じる。本発明の方法は、通常はin vitroで行われる。
カップリング
ポリヌクレオチドは、好ましくは、ポアを含む膜とカップリングされる。方法は、ポアを含む膜とポリヌクレオチドをカップリングするステップを含むことがある。ポリヌクレオチドは、好ましくは、1つまたは複数のアンカーを使用して膜とカップリングされる。いかなる公知の方法を使用してポリヌクレオチドを膜とカップリングしてもよい。
各アンカーは、ポリヌクレオチドとカップリング(結合)する基、および膜とカップリング(結合)する基を含む。各アンカーは、ポリヌクレオチドおよび/または膜と共有結合でカップリング(結合)することができる。Yアダプターおよび/またはヘパリンループアダプターが使用される場合、ポリヌクレオチドは、好ましくは、アダプターを使用して膜とカップリングされる。
あらゆる数のアンカー、例えば、2、3、4以上のアンカーを使用して、ポリヌクレオチドを膜とカップリングすることができる。例えば、各々がポリヌクレオチドと膜の両方と別々にカップリング(結合)する2つのアンカーを使用して、ポリヌクレオチドを膜にカップリングしてもよい。
1つまたは複数のアンカーは、1つもしくは複数のヘリカーゼおよび/または1つもしくは複数の分子ブレーキを含むことがある。
膜が両親媒性層、例えば、コポリマー膜または脂質二重層である場合、1つまたは複数のアンカーは、好ましくは、膜中に存在するポリペプチドアンカー、および/または膜中に存在する疎水性アンカーを含む。疎水性アンカーは、好ましくは、脂質、脂肪酸、ステロール、カーボンナノチューブ、ポリペプチド、タンパク質またはアミノ酸、例えばコレステロール、パルミチン酸またはトコフェロールである。好ましい実施形態では、1つまたは複数のアンカーはポアではない。
膜の成分、例えば、両親媒性分子、コポリマーまたは脂質は、1つまたは複数のアンカーを形成するように化学的に修飾されるまたは官能化されることがある。好適な化学的修飾および膜の成分を官能化する好適な方法の例は、下でより詳細に論じる。膜成分のあらゆる割合、例えば、少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも1%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%または100%を、官能化することができる。
ポリヌクレオチドが膜に直接カップリングされることもある。膜にポリヌクレオチドをカップリングするために使用される1つまたは複数のアンカーは、好ましくはリンカーを含む。1つまたは複数のアンカーが1つまたは複数、例えば2、3、4以上、のリンカーを含むこともある。1つのリンカーが、1つより多く、例えば2、3、4以上、のポリヌクレオチドを膜とカップリングするために使用されることもある。
好ましいリンカーとしては、ポリマー、例えばポリヌクレオチド、ポリエチレングリコール(PEG)、多糖類およびポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。これらのリンカーは、直鎖状であってもよく、分岐していてもよく、または環状であってもよい。例えば、リンカーは、環状ポリヌクレオチドであることがある。ポリヌクレオチドは、環状ポリヌクレオチドリンカーを用いて相補配列にハイブリダイズすることもある。
1つもしくは複数のアンカーまたは1つもしくは複数のリンカーは、切断して破壊することができる成分、例えば、制限部位または光解離性基を含むこともある。
官能化されたリンカー、およびそれらが分子をカップリングできる方法は、当技術分野において公知である。例えば、マレイミド基で官能化されたリンカーは、タンパク質中のシステイン残基と反応して、該システイン残基に結合することになる。本発明に関連して、タンパク質は、膜中に存在することもあり、またはポリヌクレオチドとカップリング(もしくは結合)するために使用されることもある。このことは、下でより詳細に論じる。
ポリヌクレオチドの架橋は、「鍵と鍵穴」配置を使用して回避することができる。各リンカーの一方の末端のみが互いに反応してより長いリンカーを形成することがあり、リンカーの他方の末端は、各々がポリヌクレオチドまたは膜とそれぞれ反応する。そのようなリンカーは、国際出願第PCT/GB10/000132号明細書(国際公開第2010/086602号パンフレットとして公開)に記載されている。
下で論じるシークエンシング実施形態ではリンカーの使用が好ましい。ポリヌクレオチドが、ポアと相互作用しているときにはアンカップリングしない(すなわち、ステップ(b)でもステップ(e)でもアンカップリングしない)という意味で膜に直接、永続的にカップリングされている場合には、膜とポアとの距離のためシークエンシング実験をポリヌクレオチドの末端まで継続することができないので、一部の配列データが失われることになる。リンカーを使用すればポリヌクレオチドを完了まで処理することができる。
カップリングは、永続的または安定性であることがある。言い換えれば、カップリングは、ポリヌクレオチドが、ポアと相互作用しているときに膜とカップリングされたままであるようなカップリングであることがある。
カップリングは、一時的であることもある。言い換えれば、カップリングは、ポリヌクレオチドが、ポアと相互作用しているとき、膜からアンカップリングされうるカップリングであることもある。
アプタマー検出などの、ある特定の実施形態については、一時的な性質のカップリングが好ましい。永続的または安定性リンカーがポリヌクレオチドの5’または3’末端のどちらか一方に直接結合されており、リンカーが膜と膜貫通ポアのチャネル間の距離より短い場合には、シークエンシング実験をポリヌクレオチドの末端まで継続することができないので、一部の配列データが失われることになる。カップリングが一時的である場合には、カップリングされた末端から無作為に膜がなくなると、ポリヌクレオチドを完了まで処理することができる。永続的/安定性連結または一時的連結を形成する化学基は、下でより詳細に論じる。コレステロールまたは脂肪アシル鎖を使用して、ポリヌクレオチドを両親媒性層またはトリブロックコポリマー膜と一時的にカップリングすることもできる。6〜30炭素原子の長さを有するあらゆる脂肪酸、例えば、ヘキサデカン酸を使用することができる。
好ましい実施形態では、核酸などのポリヌクレオチドは、トリブロックコポリマーまたは脂質二重層などの両親媒性層とカップリングされる。核酸の合成脂質二重層へのカップリングは、様々な異なる繋留戦略を用いて以前に行われている。これらのことを下の表4に要約する。
合成ポリヌクレオチドおよび/またはリンカーは、コレステロール、トコフェロール、パルミチン酸、チオール、脂質およびビオチン基などの好適なアンカー基の直接付加に容易に適合する修飾ホスホロアミダイトを合成反応中に使用して、官能化することができる。これらの様々な結合用化学物質は、ポリヌクレオチドへの結合の一連の選択肢をもたらす。異なる修飾基各々がポリヌクレオチドにわずかに異なる方法でカップリングし、カップリングは必ずしも永続的であるとは限らないため、膜へのポリヌクレオチドの滞留に異なる時間が費やされる。一時的カップリングの利点は、上で論じている。
リンカーへのまたは官能化膜へのポリヌクレオチドのカップリングは、相補的反応性基またはアンカー基をそのポリヌクレオチドに付加させることができることを条件に、多数の他の手段によって果たすこともできる。ポリヌクレオチドのどちらか一方の末端への反応性基の付加は、以前に報告されている。T4ポリヌクレオチドキナーゼおよびATPγSを使用して、チオール基をssDNAまたはdsDNAの5’に付加させることができる(Grant, G. P. and P. Z. Qin (2007). "A facile method for attaching nitroxide spin labels at the 5' terminus of nucleic acids." Nucleic Acids Res 35(10): e77)。T4ポリヌクレオチドキナーゼおよびγ−[2−アジドエチル]−ATPまたはγ−[6−アジドヘキシル]−ATPを使用して、アジド基をssDNAまたはdsDNAの5’リン酸に付加させることができる。チオールまたはクリックケミストリーを使用して、チオール、ヨードアセトアミドOPSSもしくはマレイミド基(チオールに対して反応性)またはDIBO(ジベンゾシクロオクチン)もしくはアルキン基(アジドに対して反応性)のどちらか一方を含有するテザーをポリヌクレオチドに共有結合させることができる。末端トランスフェラーゼを使用して、ビオチン、チオールおよびフルオロフォアなどの化学基のより多様な選択物を付加させて、ssDNAの3’に修飾オリゴヌクレオチドを組み込むことができる(Kumar, A., P. Tchen, et al., (1988). "Nonradioactive labeling of synthetic oligonucleotide probes with terminal deoxynucleotidyl transferase." Anal Biochem 169(2): 376-82)。ストレプトアビジン/ビオチンおよび/またはストレプトアビジン/デスチオビオチンカップリングをあらゆる他のポリヌクレオチドに使用することができる。下の実施例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびストレプトアビジン/デスチオビオチンを使用してポリヌクレオチドを膜とカップリングすることができる方法を説明する。末端トランスフェラーゼと好適に修飾されたヌクレオチド(例えばコレステロールまたはパルミチン酸)を使用してアンカーがポリヌクレオチドに直接付加されうる可能性もありうる。
1つまたは複数のアンカーは、好ましくは、ポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションによって膜とカップリングする。1つまたは複数のアンカーのハイブリダイゼーションによって、上で論じたような一時的な様式でのカップリングが可能になる。ハイブリダイゼーションは、1つまたは複数のアンカーのいかなる部分に存在してもよく、例えば、1つまたは複数のアンカーとポリペプチドの間に、1つまたは複数のアンカー内に、または1つまたは複数のアンカーと膜の間に存在してもよい。例えば、リンカーは、互いにハイブリダイズされている2つ以上のポリヌクレオチド、例えば、3、4または5つのポリヌクレオチドを含むことがある。1つまたは複数のアンカーは、ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることがある。1つまたは複数のアンカーは、(下で論じるように)ポリヌクレオチドに直接ハイブリダイズすることもあり、またはポリヌクレオチドに結合されたYアダプターおよび/もしくはリーダー配列に直接ハイブリダイズすることもあり、またはポリヌクレオチドに結合されたヘアピンループアダプターに直接ハイブリダイズすることもある。あるいは、1つまたは複数のアンカーが1つまたは複数、例えば2つまたは3つ、の中間ポリヌクレオチド(または「スプリント」)にハイブリダイズされることがあり、中間ポリヌクレオチドは、(下で論じるように)ポリヌクレオチドに、ポリヌクレオチドに結合されたYアダプターおよび/もしくはリーダー配列に、またはポリヌクレオチドに結合されたヘアピンループアダプターにハイブリダイズされる。
1つまたは複数のアンカーは、一本鎖ポリヌクレオチドを含むこともあり、または二本鎖ポリヌクレオチドを含むこともある。アンカーの一部分が一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチドにライゲーションされていることもある。T4 RNAリガーゼIを使用する短いssDNA片のライゲーションが報告されている(Troutt, A. B., M. G. McHeyzer-Williams, et al., (1992). "Ligation-anchored PCR: a simple amplification technique with single-sided specificity." Proc Natl Acad Sci U S A 89(20): 9823-5)。あるいは、一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチドいずれかを二本鎖ポリヌクレオチドにライゲーションし、その後、2本の鎖を熱または化学変性によって分離することができる。二本鎖ポリヌクレオチドに対しては、その二重鎖の末端の一方もしくは両方に1本の一本鎖ポリヌクレオチドを付加させること、または一方もしくは両方の末端に二本鎖ポリヌクレオチドを付加させることが可能である。一本鎖ポリヌクレオチドの二本鎖ポリヌクレオチドへの付加については、この付加を、一本鎖ポリヌクレオチドの他の領域へのライゲーションの場合と同様にT4 RNAリガーゼIを使用して果たすことができる。次に、二本鎖ポリヌクレオチドの二本鎖ポリヌクレオチドへの付加については、ライゲーションは、ポリヌクレオチドおよび付加されたポリヌクレオチドそれぞれの相補的3’dA/dTテールを用いる(多くの試料調製用途について鎖状体またはダイマー形成を防止するために常例的に行われているような)「平滑末端型」であることもあり、またはポリヌクレオチドの制限消化および適合性アダプターのライゲーションによって生成された「突出末端」の使用であることもある。次に、二重鎖が融解されると、各々の一本鎖は、一本鎖ポリヌクレオチドが5’末端、3’末端でのライゲーションもしくは修飾に使用された場合には5’もしくは3’修飾のいずれか一方、または二本鎖ポリヌクレオチドがライゲーションに使用された場合には両方の修飾を有することになる。
ポリヌクレオチドが合成鎖である場合、そのポリヌクレオチドの化学合成中に1つまたは複数のアンカーを組み込むことができる。例えば、反応性基が結合されたプライマーを使用してポリヌクレオチドを合成することができる。
アデニル化ポリヌクレオチドは、アデノシン一リン酸をポリヌクレオチドの5’リン酸に結合させるライゲーション反応における中間体である。この中間体の生成には、NEBからの5’DNAアデニル化キットなどの様々なキットが利用可能である。さらにまた、反応中に修飾ヌクレオチド三リン酸をATPで置換することによって、ポリヌクレオチドの5’に反応性基(例えばチオール、アミン、ビオチン、アジドなど)の付加が可能でありうる。5’DNAアデニル化キットと好適に修飾されたヌクレオチド(例えばコレステロールまたはパルミチン酸)を使用してアンカーがポリヌクレオチドに直接付加されうる可能性もありうる。
ゲノムDNA部分の一般的な増幅法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用である。ここで、2つの合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用して、DNAの同じ部分の多数のコピーを生成することができ、この場合、各コピーの二重鎖における各鎖の5’が合成ポリヌクレオチドとなる。ポリメラーゼを利用することによって、単一または複数のヌクレオチドを一本鎖または二本鎖DNAの3’末端に付加させることができる。使用することができるポリメラーゼの例としては、ターミナルトランスフェラーゼ、クレノウおよび大腸菌(E. coli)ポリ(A)ポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。さらにまた、反応中に修飾ヌクレオチド三リン酸をATPで置換することによって、コレステロール、チオール、アミン、アジド、ビオチンまたは脂質などのアンカーを二本鎖ポリヌクレオチドに組み込むことができる。したがって、増幅されたポリヌクレオチドの各コピーは、アンカーを含有することになる。
理想的には、ポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドを官能化する必要なく、膜とカップリングされる。これは、1つもしくは複数のアンカー、例えばポリヌクレオチド結合タンパク質または化学基、を膜とカップリングし、1つもしくは複数のアンカーをポリヌクレオチドと相互作用させることによって、または膜を官能化することによって、果たすことができる。1つまたは複数のアンカーを本明細書に記載する方法のいずれかによって膜とカップリングしてもよい。特に、1つまたは複数のアンカーは、1つまたは複数のリンカー、例えばマレイミド官能化リンカーを含むことがある。
この実施形態では、ポリヌクレオチドは、通常RNA、DNA、PNA、TNAまたはLNAであり、二本鎖状であってもよく、または一本鎖状であってもよい。この実施形態は、ゲノムDNAポリヌクレオチドに特に適している。
1つまたは複数のアンカーは、一本鎖もしくは二本鎖ポリヌクレオチドと、ポリヌクレオチド内の特異的ヌクレオチド配列と、またはポリヌクレオチド内の修飾ヌクレオチドのパターンと、またはポリヌクレオチド上に存在する任意の他のリガンドとカップリング、結合または相互作用する、あらゆる基を含むことができる。
アンカーに使用するために好適な結合タンパク質としては、下に列挙するものを含めて、大腸菌(E. coli)一本鎖結合タンパク質、P5一本鎖結合タンパク質、T4 gp32一本鎖結合タンパク質、TOPO V dsDNA結合領域、ヒトヒストンタンパク質、大腸菌(E. coli)HU DNA結合タンパク質、および他の古細菌性、原核性または真核性一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチド(または核酸)結合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
特異的ヌクレオチド配列は、転写因子、リボソーム、エンドヌクレアーゼ、トポイソメラーゼまたは複製開始因子によって認識される配列でありうる。修飾ヌクレオチドのパターンは、メチル化または損傷のパターンでありうる。
1つまたは複数のアンカーは、ポリヌクレオチドとカップリングする、ポリヌクレオチドと結合する、ポリヌクレオチドにインターカレートする、またはポリヌクレオチドと相互作用する、あらゆる基を含むことができる。この基は、静電相互作用、水素結合相互作用、またはファンデルワールス相互作用によって、ポリヌクレオチドにインターカレートするまたはポリヌクレオチドと相互作用することがある。そのような基としては、リシンモノマー、ポリリシン(ssDNAまたはdsDNAと相互作用することになる)、臭化エチジウム(dsDNAにインターカレートすることになる)、ユニバーサル塩基またはユニバーサルヌクレオチド(任意のポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができる)、およびオスミウム錯体(メチル化塩基と反応することができる)が挙げられる。したがって、ポリヌクレオチドと膜を、その膜に結合された1つまたは複数のユニバーサル塩基を使用してカップリングすることができる。各ユニバーサルヌクレオチドは、1つまたは複数のリンカーを使用して膜とカップリングすることができる。ユニバーサルヌクレオチドは、好ましくは、次の核酸塩基のうちの1つを含む:ヒポキサンチン、4−ニトロインドール、5−ニトロインドール、6−ニトロインドール、ホルミルインドール、3−ニトロピロール、ニトロイミダゾール、4−ニトロピラゾール、4−ニトロベンゾイミダゾール、5−ニトロインダゾール、4−アミノベンゾイミダゾールまたはフェニル(C6−芳香族環)。ユニバーサルヌクレオチドは、より好ましくは、次のヌクレオシドのうちの1つを含む:2’−デオキシイノシン、イノシン、7−デアザ−2’−デオキシイノシン、7−デアザ−イノシン、2−アザ−デオキシイノシン、2−アザ−イノシン、2−O’−メチルイノシン、4−ニトロインドール2’−デオキシリボヌクレオシド、4−ニトロインドールリボヌクレオシド、5−ニトロインドール2’デオキシリボヌクレオシド、5−ニトロインドールリボヌクレオシド、6−ニトロインドール2’−デオキシリボヌクレオシド、6−ニトロインドールリボヌクレオシド、3−ニトロピロール2’−デオキシリボヌクレオシド、3−ニトロピロールリボヌクレオシド、ヒポキサンチンの非環状糖類似体、ニトロイミダゾール2’−デオキシリボヌクレオシド、ニトロイミダゾールリボヌクレオシド、4−ニトロピラゾール2’−デオキシリボヌクレオシド、4−ニトロピラゾールリボヌクレオシド、4−ニトロベンゾイミダゾール2’−デオキシリボヌクレオシド、4−ニトロベンゾイミダゾールリボヌクレオシド、5−ニトロインダゾール2’−デオキシリボヌクレオシド、5−ニトロインダゾールリボヌクレオシド、4−アミノベンゾイミダゾール2’−デオキシリボヌクレオシド、4−アミノベンゾイミダゾールリボヌクレオシド、フェニルC−リボヌクレオシド、フェニルC−2’−デオキシリボシルヌクレオシド、2’−デオキシネブラリン、2’−デオキシイソグアノシン、K−2’−デオキシリボース、P−2’−デオキシリボースおよびピロリジン。ユニバーサルヌクレオチドは、より好ましくは、2’−デオキシイノシンを含む。ユニバーサルヌクレオチドは、より好ましくは、IMPまたはdIMPである。ユニバーサルヌクレオチドは、最も好ましくは、dPMP(2’−デオキシ−P−ヌクレオシド一リン酸)またはdKMP(N6−メトキシ−2,6−ジアミノプリン一リン酸)である。
1つまたは複数のアンカーは、フーグスティーン(Hoogsteen)水素結合(2つの核酸塩基が水素結合によって一緒に保持される)または逆フーグスティーン水素結合(一方の核酸塩基が他方の核酸塩基に対して180°回転される)によってポリヌクレオチドとカップリング(または結合)されることもある。例えば、1つまたは複数のアンカーは、ポリヌクレオチドとフーグスティーン水素結合または逆フーグスティーン水素結合を形成する、1つもしくは複数のヌクレオチド、1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドまたは1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含むことがある。これらのタイプの水素結合は、第3のポリヌクレオチド鎖を二本鎖らせんの周りに巻きつかせ、三重鎖を形成させる。1つまたは複数のアンカーは、二本鎖ポリヌクレオチドと、その二本鎖二重鎖と三重鎖を形成することによって、カップリング(または結合)することもある。
この実施形態では、膜成分の少なくとも1%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%または100%が官能化されることもある。
1つまたは複数のアンカーがタンパク質を含む場合、それらのアンカーは、例えば、そのタンパク質が膜と適合性である外部疎水性領域を既に有する場合、さらなる官能化なしに直接膜内に係留することができる。そのようなタンパク質の例としては、膜貫通タンパク質、膜内タンパク質および膜タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、タンパク質は、膜と適合性である遺伝子的に融合された疎水性領域を伴って発現されることもある。そのような疎水性タンパク質領域は、当技術分野において公知である。
1つまたは複数のアンカーは、好ましくは、膜との接触前にポリヌクレオチドと混合されるが、1つまたは複数のアンカーを膜と接触させ、その後、ポリヌクレオチドと接触させてもよい。
別の態様では、ポリヌクレオチドは、上記の方法を使用して特異的結合基によって認識されうるように官能化されることがある。具体的には、ポリヌクレオチドは、リガンド、例えば、ビオチン(ストレプトアビジンと結合させるため)、アミロース(マルトース結合タンパク質もしくは融合タンパク質と結合させるため)、Ni−NTA(ポリヒスチジンと、もしくはポリヒスチジンタグ付きタンパク質と結合させるため)、またはペプチド(例えば抗原)で官能化されることがある。
好ましい実施形態によると、ポアを優先的に通り抜けるリーダー配列にポリヌクレオチドを結合させる場合、1つまたは複数のアンカーを使用してポリヌクレオチドを膜とカップリングすることができる。リーダー配列は、下でより詳細に論じる。好ましくは、ポリヌクレオチドは、ポアを優先的に通り抜けるリーダー配列に結合(例えばライゲーション)される。そのようなリーダー配列は、ホモポリマー型ポリヌクレオチドまたは脱塩基領域を含むことがある。リーダー配列は、1つまたは複数のアンカーに直接、または1つもしくは複数の中間ポリヌクレオチド(もしくはスプリント)を介して、ハイブリダイズするように設計されるのが一般的である。そのような場合、1つまたは複数のアンカーは、通常は、リーダー配列内の配列に相補的であるまたは1つもしくは複数の中間ポリヌクレオチド(もしくはスプリント)内の配列に相補的であるポリヌクレオチド配列を含む。そのような場合、1つまたは複数のスプリントは、通常は、リーダー配列内の配列に相補的であるポリヌクレオチド配列を含む。
化学結合に使用される分子の例は、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)である。市販のキット(Thermo Pierce、部品番号22980)を使用して反応性基をポリヌクレオチドの5’に付加させることもできる。好適な方法には、ヒスチジン残基およびNi−NTAを使用する一時的親和性結合はもちろん、反応性システイン、リシンまたは非天然アミノ酸による、より頑強な共有結合も含まれるが、これらに限定されない。
二本鎖ポリヌクレオチド
ポリヌクレオチドは、二本鎖状であることがある。ポリヌクレオチドが二本鎖状である場合、方法は、接触ステップの前に、ヘアピンループなどの架橋部分をポリヌクレオチドの一方の末端にライゲーションするステップを好ましくはさらに含む。その場合、ポリヌクレオチドを本発明に従ってポアと接触させながらまたは接触させる前に、ポリヌクレオチドの2本の鎖を分離することができる。ポアを通るポリヌクレオチドの移動がポリヌクレオチド結合タンパク質、例えばヘリカーゼ、または分子ブレーキによって制御されるので、2本の鎖を分離することができる。
このようにして二本鎖構築物の両方の鎖を連結させ、調べることによって、特徴づけの効率および精度が増す。
架橋部分は、標的ポリヌクレオチドの2本の鎖を連結させることができる。架橋部分は、通常は、標的ポリヌクレオチドの2本の鎖を共有結合で連結する。架橋部分は、その架橋部分が一本鎖ポリヌクレオチドの膜貫通ポアを通る移動に干渉しないことを条件に、標的ポリヌクレオチドの2本の鎖を連結させることができるあらゆるものであることができる。
当技術分野において公知のあらゆる好適な手段によって架橋部分を標的ポリヌクレオチドに連結させることができる。架橋部が別途合成され、標的ポリヌクレオチドに化学的に結合または酵素的にライゲーションされることもある。あるいは、架橋部分が標的ポリヌクレオチドのプロセシング中に生成されることもある。
架橋部分は、標的ポリヌクレオチドに、その標的ポリヌクレオチドの一方の末端にまたは末端付近に連結される。架橋部分は、好ましくは、標的ポリヌクレオチドに、その標的ポリヌクレオチドの末端の10ヌクレオチド以内に連結される。
好適な架橋部分としては、高分子リンカー、化学的リンカー、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、架橋部分は、DNA、RNA、修飾DNA(例えば脱塩基DNA)、RNA、PNA、LNAまたはPEGを含む。架橋部分は、より好ましくはDNAまたはRNAである。
架橋部分は、最も好ましくは、ヘアピンループまたはヘアピンループアダプターである。好適なヘアピンアダプターは、当技術分野において公知の方法を使用して設計することができる。ヘアピンループは、いかなる長さであってもよい。ヘアピンループは、通常は、長さ110ヌクレオチド以下、例えば、100ヌクレオチド以下、90ヌクレオチド以下、80ヌクレオチド以下、70ヌクレオチド以下、60ヌクレオチド以下、50ヌクレオチド以下、40ヌクレオチド以下、30ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、または10ヌクレオチド以下である。ヘアピンループは、好ましくは、長さ約1〜110、2〜100、5〜80、または6〜50ヌクレオチドである。ヘアピンループがアダプターの分別選択可能性に関与する場合、50〜110ヌクレオチドなどの、より長いヘアピンループ長が好ましい。同様に、ヘアピンループが、下で論じるような選択可能結合に関与しない場合、1〜5ヌクレオチドなどの、より短いヘアピンループ長が好ましい。
ヘアピンアダプターは、第1および/または第2のポリヌクレオチドのどちらか一方の末端、すなわち5’または3’末端にライゲーションされることがある。当技術分野において公知のいかなる方法を使用して、ヘアピンアダプターを第1および/または第2のポリヌクレオチドにライゲーションしてもよい。リガーゼ、例えば、T4 DNAリガーゼ、大腸菌(E. coli)DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、Tma DNAリガーゼおよび9ON DNAリガーゼを使用して、ヘアピンアダプターをライゲーションすることができる。
当技術分野において公知のいかなる方法を使用してポリヌクレオチドの2本の鎖を分離してもよい。例えば、ポリヌクレオチド結合タンパク質によって、または脱ハイブリダイゼーションに有利に働く条件を使用して、それらの鎖を分離することができる(脱ハイブリダイゼーションに有利に働く条件の例としては、高温、高pH、ならびに水素結合または塩基対合を破壊することができる作用物質、例えばホルムアミドおよび尿素、の添加が挙げられるが、これらに限定されない)。
ヘアピンアダプターは、選択可能結合部分を好ましくは含む。これによって、第1および/または第2のポリヌクレオチドを精製または単離することが可能になる。選択可能結合部分は、その結合特性に基づいて選択することができる部分である。したがって、選択可能結合部分は、好ましくは、表面と特異的に結合する部分である。選択可能結合部分は、本発明に使用される他の部分よりはるかに大きい程度に表面と結合する場合、その表面に特異的に結合する。好ましい実施形態において、部分は、本発明に使用されるいかなる他の部分も結合しない表面と結合する。
好適な選択的結合部分は、当技術分野において公知である。好ましい選択的結合部分としては、ビオチン、ポリヌクレオチド表面、抗体、抗体断片、例えばFabおよびScSv、抗原、ポリヌクレオチド結合タンパク質、ポリヒスチジンテールおよびGSTタグが挙げられるが、これらに限定されない。最も好ましい選択的結合部分は、ビオチンおよび選択可能ポリヌクレオチド配列である。ビオチンは、アビジンで被覆された表面と特異的に結合する。選択可能ポリヌクレオチド配列は、相同配列で被覆された表面と特異的に結合(すなわちハイブリダイズ)する。あるいは、選択可能ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド結合タンパク質で被覆された表面と特異的に結合する。
ヘアピンアダプターおよび/または選択可能結合部分は、切る、切り目を入れる、切断するまたは加水分解することができる領域を含むことができる。そのような領域は、第1および/または第2のポリヌクレオチドを、そのポリヌクレオチドが結合されている表面から精製または単離後に除去することを可能にするように設計することができる。好適な領域は、当技術分野において周知である。好適な領域としては、RNA領域、デスチオビオチンおよびストレプトアビジンを含む領域、ジスルフィド結合、および光切断性領域が挙げられるが、これらに限定されない。
二本鎖標的ポリヌクレオチドは、好ましくは、ヘアピンループまたはヘアピンループアダプターなどの架橋部分の反対側の末端にリーダー配列を含む。リーダー配列は、下でより詳細に論じる。
ラウンドザコーナーシークエンシング(Round the corner sequencing)
好ましい実施形態では、標的二本鎖ポリヌクレオチドには一方の末端に架橋部分、例えば、ヘアピンループまたはヘアピンループアダプターが備えられており、方法は、ポリヌクレオチドをポアと、ポリヌクレオチドの両方の鎖がポアを通って移動するように接触させるステップと、ポリヌクレオチドの両方の鎖がポアに対して移動しているときに1回または複数回の測定を行い、測定がポリヌクレオチドの鎖の1つまたは複数の特徴を示し、それによって標的二本鎖ポリヌクレオチドを特徴づけるステップとを含む。別の好ましい実施形態では、標的二本鎖ポリヌクレオチドには一方の末端に架橋部分、例えば、ヘアピンループまたはヘアピンループアダプターが備えられており、方法は、ポリヌクレオチドをポアおよびエキソヌクレアーゼと、ポリヌクレオチドの両方の鎖が消化されて個々のヌクレオチドになるように接触させるステップを含む。上で論じた実施形態のいずれかがこの方法に同等に適用される。
リーダー配列
鎖特徴づけ/シークエンシング方法における接触ステップの前に、方法は、ポアを優先的に通り抜けるリーダー配列をポリヌクレオチドに結合させるステップを好ましくは含む。リーダー配列は、本発明の方法を助長する。リーダー配列は、ポアを優先的に通り抜けるように、およびそれによってポリヌクレオチドのポアを通る移動を助長するように、設計される。リーダー配列を使用して、ポリヌクレオチドを上で論じたような1つまたは複数のアンカーに連結させることもできる。
リーダー配列は、通常はポリマーを含む。ポリマーは、好ましくは負電荷を有する。ポリマーは、好ましくは、ポリヌクレオチド、例えばDNAもしくはRNA、修飾ポリヌクレオチド(例えば脱塩基DNA)、PNA、LNA、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリペプチドである。リーダーは、好ましくはポリヌクレオチドを含み、より好ましくは一本鎖ポリヌクレオチドを含む。リーダー配列は、上で論じたポリヌクレオチドのいずれかを含むことができる。一本鎖リーダー配列は、最も好ましくは、DNAの1本の鎖、例えば、ポリdT部分を含む。リーダー配列は、好ましくは1つまたは複数のスペーサーを含む。
リーダー配列は、あらゆる長さであることができるが、通常は、長さ10〜150ヌクレオチド、例えば、長さ20〜150ヌクレオチドである。リーダーの長さは、方法に使用される膜貫通ポアに通常は依存する。
リーダー配列は、好ましくは、下で定義するようなYアダプターの一部である。
二重カップリング
本発明の方法は、二本鎖ポリヌクレオチドの二重カップリングを含むことがある。好ましい実施形態では、本発明の方法は、
(a)一方の末端にYアダプターを有し、他方の末端にヘアピンループアダプターなどの架橋部分アダプターを有する、二本鎖ポリヌクレオチドを用意するステップであって、Yアダプターがポリヌクレオチドを膜とカップリングするための1つまたは複数の第1のアンカーを含み、架橋部分アダプターがポリヌクレオチドを膜とカップリングするための1つまたは複数の第2のアンカーを含み、架橋部分アダプターの膜へのカップリング強度がYアダプターの膜へのカップリング強度より大きい、ステップ、
(b)ステップ(a)で用意されたポリヌクレオチドを、CsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポアと、ポリヌクレオチドがポアに対して、例えばポアを通って、移動するように接触させるステップ、および
(c)ポリヌクレオチドがポアに対して移動しているときに1回または複数回の測定を行い、測定が、ポリヌクレオチドの1つまたは複数の特性を示し、それによって標的ポリヌクレオチドを特徴づけるステップ
を含む。
このタイプの方法は、英国特許出願公開第1406147号(1406147.7)明細書において詳細に論じられている。
二本鎖ポリヌクレオチドには一方の末端にYアダプターがおよび他方の末端に架橋部分アダプターが備えられている。Yアダプターおよび/または架橋部分アダプターは、通常はポリヌクレオチドアダプターである。それらのアダプターは、上で論じたポリヌクレオチドのいずれかから形成することができる。
Yアダプターは、通常は、(a)二本鎖領域、および(b)一本鎖領域または他方の末端に相補的でない領域を含む。Yアダプターは、一本鎖領域を含む場合、オーバーハングを有すると記述されることがある。Yアダプター内の非相補領域の存在がこのアダプターをY形にする。二本鎖部分とは異なり2本の鎖が通常は互いにハイブリダイズしないからである。Yアダプターは、1つまたは複数の第1のアンカーを含む。アンカーは、上でより詳細に論じている。
Yアダプターは、ポアを優先的に通り抜けるリーダー配列を好ましくは含む。このことは、上で論じている。
架橋部分アダプターは、上で論じたような選択可能結合部分を好ましくは含む。架橋部分アダプターおよび/または選択可能結合部分は、上で論じたように切る、切り目を入れる、切断するまたは加水分解することができる領域を含むことができる。
1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数の分子ブレーキが上で論じたように使用される場合、Yアダプターが好ましくは1つまたは複数のヘリカーゼを含み、架橋部分アダプターが好ましくは1つまたは複数の分子ブレーキを含む。
当技術分野において公知のいかなる方法を用いてYアダプターおよび/または架橋部分アダプターをポリヌクレオチドにライゲーションしてもよい。リガーゼ、例えば、T4 DNAリガーゼ、大腸菌(E. coli)DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、Tma DNAリガーゼおよび9ON DNAリガーゼを使用して、一方または両方のアダプターをライゲーションすることができる。あるいは、下で論じる本発明の方法を使用してアダプターをポリヌクレオチドに付加させることができる。
好ましい実施形態では、方法のステップa)は、二本鎖ポリヌクレオチドを、該二本鎖ポリヌクレオチドが一方の末端にYアダプターをおよび他方の末端に架橋部分アダプターを含むように修飾することを含む。あらゆる修飾様式を使用することができる。方法は、好ましくは、本発明に従って二本鎖ポリヌクレオチドを修飾することを含む。このことは、下でより詳細に論じる。修飾方法と特徴づけ方法をいかなる形で組み合わせてもよい。
架橋部分アダプターの膜とのカップリング(または結合)強度は、Yアダプターの膜とのカップリング(または結合)強度より大きい。この強度を任意の方法で測定することができる。カップリング(または結合)強度の好適な測定方法は、英国特許出願公開第1406147号(1406147.7)明細書の実施例に開示されている。
架橋部分アダプターのカップリング(または結合)強度は、好ましくは、Yアダプターのカップリング(または結合)強度の少なくとも1.5倍、例えば、アンカーアダプターのカップリング(または結合)強度の少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍である。架橋部分アダプターの膜に対する親和定数(Kd)は、好ましくは、Yアダプターの親和定数の少なくとも1.5倍、例えば、Yアダプターのカップリング強度の少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍である。
架橋部分アダプターがYアダプターより強く膜とカップリング(または結合)する方法はいくつかある。例えば、架橋部分アダプターは、Yアダプターより多くのアンカーを含むことがある。例えば、架橋部分アダプターは、2つ、3つ以上の第2のアンカーを含むことがあり、これに対してYアダプターは、1つの第1のアダプターを含むことがある。
1つまたは複数の第2のアンカーの膜とのカップリング(または結合)強度は、1つまたは複数の第1のアンカーの膜とのカップリング(または結合)強度より大きいことがある。1つまたは複数の第2のアンカーの架橋部分アダプターとのカップリング(または結合)強度は、1つまたは複数の第1のアンカーのYアダプターとのカップリング(または結合)強度より大きいことがある。1つまたは複数の第1のアンカーおよび1つまたは複数の第2のアンカーは、それらのそれぞれのアダプターにハイブリダイゼーションによって結合されていることがあり、このハイブリダイゼーション強度は、1つまたは複数の第1のアンカーにおけるより1つまたは複数の第2のアンカーにおけるほうが大きい。これらの実施形態のあらゆる組合せも本発明に使用することができる。カップリング(または結合)強度は、当技術分野において公知の技術を使用して測定することができる。
1つまたは複数の第2のアンカーは、膜とカップリング(または結合)する1つまたは複数の第1のアンカー中の1つまたは複数の基より大きい強度でその膜とカップリング(または結合)する1つまたは複数の基を好ましくは含む。好ましい実施形態では、架橋部分アダプター/1つまたは複数の第2のアンカーは、コレステロールを使用して膜とカップリング(または結合)し、Yアダプター/1つまたは複数の第1のアンカーは、パルミチン酸を使用して膜とカプリング(または結合)する。コレステロールは、パルミチン酸より強くトリブロックコポリマー膜および脂質膜と結合する。代替実施形態では、架橋部分アダプター/1つまたは複数の第2のアンカーは、パルミチン酸などのモノアシル化学種を使用して膜とカップリング(または結合)し、Yアダプター/1つまたは複数の第1のアンカーは、ジパルミトイルホスファチジルコリンなどのジアシル化学種を使用して膜とカップリング(または結合)する。
ヘアピンループおよびリーダー配列の付加
用意する前に、二本鎖ポリヌクレオチドをMuAトランスポサーゼ、および二本鎖MuA基質の集団と接触させてもよく、この場合、集団中の基質の一部は、リーダー配列を含むYアダプターであり、また集団中の基質の一部はヘアピンループアダプターである。トランスポサーゼは、二本鎖ポリヌクレオチド分析物を断片化し、それらの断片の一方または両方の末端にMuA基質をライゲーションする。これは、一方の末端にリーダー配列をおよび他方にヘアピンループを含む、複数の修飾二本鎖ポリヌクレオチドを生成する。その場合、本発明の方法を使用して修飾二本鎖ポリヌクレオチドを調査することができる。
集団中の各基質は、好ましくは、ユニバーサルヌクレオチドの少なくとも1つのオーバーハングを含み、したがって、トランスポサーゼがテンプレートポリヌクレオチドを断片化し、基質を二本鎖断片の一方または両方の末端にライゲーションし、その結果、複数の断片/基質構築物を生成する。この場合、方法は、オーバーハングを構築物中の断片にライゲーションすることによって複数の修飾二本鎖ポリヌクレオチドを生成するステップをさらに含む。好適なユニバーサルヌクレオチドは、上で論じている。オーバーハングは、好ましくは、長さ5ヌクレオチドである。
あるいは、集団中の各基質は、好ましくは、(i)少なくとも1つのオーバーハングと、(ii)少なくとも1つのオーバーハングと同じ鎖内に、テンプレートポリヌクレオチド中に存在しないヌクレオシドを含む少なくとも1つのヌクレオチドとを含み、したがって、トランスポサーゼがテンプレートポリヌクレオチドを断片化し、二本鎖断片の一方または両方の末端に基質をライゲーションし、その結果、複数の断片/基質構築物を生成する。この場合、方法は、(a)少なくとも1つのヌクレオチドを選択的に除去することにより構築物からオーバーハングを除去することによって一本鎖ギャップを含む複数の二本鎖構築物を生成するステップ、および(b)構築物中の一本鎖ギャップを修復することによって複数の修飾二本鎖ポリヌクレオチドを生成するステップをさらに含む。ポリヌクレオチドは、通常は、ヌクレオシド:デオキシアデノシン(dA)、デオキシウリジン(dU)および/またはチミジン(dT)、デオキシグアノシン(dG)ならびにデオキシシチジン(dC)を含む。ポリヌクレオチド中に存在しないヌクレオシドは、好ましくは、脱塩基性、アデノシン(A)、ウリジン(U)、5−メチルウリジン(m5U)、シチジン(C)もしくはグアノシン(G)であるか、または尿素、5,6−ジヒドロキシチミン、チミングリコール、5−ヒドロキシ−5−メチルヒダントイン(5-hydroxy-5 methylhydanton)、ウラシルグリコール、6−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロチミン(6-hyroxy-5,6-dihdrothimine)、メチルタルトロニル尿素、7,8−ジヒドロ−8−オキソグアニン(8−オキソグアニン)、8−オキソアデニン、fapy−グアニン、メチル−fapy−グアニン、fapy−アデニン、アフラトキシンB1−fapy−グアニン、5−ヒドロキシ−シトシン、5−ヒドロキシ−ウラシル、3−メチルアデニン、7−メチルグアニン、1、N6−エタノアデニン、ヒポキサンチン、5−ヒドロキシウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、5−ホルミルウラシルもしくはシス−syn−シクロブタンピリミジンダイマーを含む。少なくとも1つのヌクレオチドは、好ましくは、オーバーハングからの10ヌクレオチド以下である。少なくとも1つのヌクレオチドは、オーバーハング中の第1のヌクレオチドである。オーバーハング中のヌクレオチドのすべてが、テンプレートポリヌクレオチド中に存在しないヌクレオシドを好ましくは含む。
これらのMuAベースの方法は、国際出願第PCT/GB2014/052505号パンフレットに開示されている。それらは、英国特許出願公開第1406147号(1406147.7)明細書においても詳細に論じられている。
1つまたは複数のヘリカーゼを、二本鎖ポリヌクレオチドおよびMuAトランスポサーゼと接触させる前に、MuA基質Yアダプターに結合させてもよい。あるいは、1つまたは複数のヘリカーゼを、二本鎖ポリヌクレオチドおよびMuAトランスポサーゼと接触させる前に、MuA基質Yアダプターに結合させてもよい。
1つまたは複数の分子ブレーキを、二本鎖ポリヌクレオチドおよびMuAトランスポサーゼと接触させる前に、MuA基質ヘアピンループアダプターに結合させてもよい。あるいは、1つまたは複数の分子ブレーキを、二本鎖ポリヌクレオチドおよびMuAトランスポサーゼと接触させる前に、MuA基質ヘアピンループアダプターに結合させてもよい。
アンカップリング
本発明の方法は、複数の標的ポリヌクレオチドの特徴づけおよび少なくとも第1の標的ポリヌクレオチドのアンカップリングを含むことがある。
好ましい実施形態では、本発明は、2つ以上の標的ポリヌクレオチドの特徴づけを含む。方法は、
(a)第1の試料中の第1のポリヌクレオチドを用意するステップ、
(b)第2の試料中の第2のポリヌクレオチドを用意するステップ、
(c)1つまたは複数のアンカーを使用して第1の試料中の第1のポリヌクレオチドを膜とカップリングするステップ、
(d)第1のポリヌクレオチドを、CsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポアと、ポリヌクレオチドがポアに対して、例えばポアを通って、移動するように接触させるステップ、
(e)第1ポリヌクレオチドがポアに対して移動しているときに1回または複数回の測定を行い、測定が第1のポリヌクレオチドの1つまたは複数の特徴を示し、それによって第1のポリヌクレオチドを特徴づけるステップ、
(f)第1のポリヌクレオチドを膜からアンカップリングするステップ、
(g)1つまたは複数のアンカーを使用して第2の試料中の第2のポリヌクレオチドを膜とカップリングするステップ、
(h)第2のポリヌクレオチドを、CsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポアと、第2ポリヌクレオチドがポアに対して、例えばポアを通って、移動するように接触させるステップ、および
(i)第2のポリヌクレオチドがポアに対して移動しているときに1回または複数回の測定を行い、測定が第2のポリヌクレオチドの1つまたは複数の特徴を示し、それによって第2のポリヌクレオチドを特徴づけるステップ
を含む。
このタイプの方法は、英国特許出願公開第1406155号(1406155.0)明細書において詳細に論じられている。
ステップ(f)(すなわち、第1のポリヌクレオチドのアンカップリング)をステップ(g)の前に(すなわち、第2のポリヌクレオチドを膜とカップリングする前に)行ってもよい。ステップ(g)をステップ(f)の前に行ってもよい。第1のポリヌクレオチドをアンカップリングする前に第2のポリヌクレオチドを膜とカップリングする場合、ステップ(f)は、好ましくは、膜からの第1のポリヌクレオチドの選択的アンカップリング(すなわち、膜からの第2のポリヌクレオチドではなく第1のポリヌクレオチドのアンカップリング)を含む。当業者は、選択的アンカップリングを果たす系を設計することができる。ステップ(f)および(g)を同時に行ってもよい。このことは、下でより詳細に論じる。
ステップ(f)では、第1のポリヌクレオチドの少なくとも10%が好ましくは膜からアンカップリングされる。例えば、第1のポリヌクレオチドの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%が膜からアンカップリングされることもある。好ましくは、第1のポリヌクレオチドのすべてが膜からアンカップリングされる。膜からアンカップリングされる第1のポリヌクレオチドの量は、ポアを使用して判定することができる。このことは、実施例において開示する。
第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは、互いに異なることがある。あるいは、第1および第2のポリヌクレオチドは、異なるポリヌクレオチドであることがある。そのような場合、第2のポリヌクレオチドを添加する前に第1の試料の少なくとも一部を除去する必要がないこともある。このことは、下でより詳細に論じる。方法が3つ以上のポリヌクレオチドの調査に関する場合、それらのポリヌクレオチドは、すべてが互いに異なることもあり、またはそれらの一部が互いに異なることもある。
第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチドの2つの実例であることもある。第1のポリヌクレオチドが、第2のポリヌクレオチドと同一であることもある。これは、較正を可能にする。方法が、3つ以上のポリヌクレオチドの調査に関する場合、それらのポリヌクレオチドは、すべてが同じポリヌクレオチドの3つ以上の実例であることもあり、またはそれらの一部が同じポリヌクレオチドの別個の実例であることもある。
第1の試料および第2の試料は、互いに異なることがある。例えば、第1の試料はヒトに由来することがあり、第2の試料はウイルスに由来することがある。第1および第2試料が互いに異なる場合、それらの試料は、同じ第1および第2のポリヌクレオチドを含有することもあり、または含有することが疑われることもある。方法が3つ以上の試料の調査に関する場合、それらの試料は、すべてが互いに異なることもあり、またはそれらの一部が互いに異なることもある。
第1の試料および第2の試料は、好ましくは、同じ試料の2つの実例である。第1の試料は、好ましくは、第2の試料と同一である。これは、較正を可能にする。方法が、3つ以上の試料の調査に関する場合、それらの試料は、すべてが同じ試料の3つ以上の実例であることもあり、またはそれらの一部が同じ試料の別個の実例であることもある。
あらゆる数のポリヌクレオチドを調査することができる。例えば、本発明の方法は、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、100以上のポリヌクレオチドの特徴づけに関することがある。本発明の方法を使用して3つ以上のポリヌクレオチドを調査する場合、第2のポリヌクレオチドも膜からアンカップリングされ、必要数のステップが第3のポリヌクレオチドに加えられる。同じことが4つ以上のポリヌクレオチドについても言える。
本発明の方法は、第1のポリヌクレオチドを膜からアンカップリングするステップを含む。本発明の方法は、3つ以上のポリヌクレオチドを調査することになる場合、第2のポリヌクレオチドを膜からアンカップリングするステップを含むことがある。
公知のいかなる方法を使用して第1のポリヌクレオチドを膜からアンカップリングしてもよい。第1のポリヌクレオチドは、好ましくは、ステップ(f)では膜貫通ポアを使用して膜からアンカップリングされない。第1のポリヌクレオチドは、好ましくは、電圧または印加電位を使用して膜からアンカップリングされない。
ステップ(f)は、好ましくは、膜から1つまたは複数のアンカーを除去することによってその膜から第1のポリヌクレオチドをアンカップリングすることを含む。アンカーを除去したら、他の(または別の)アンカーを使用して第2のポリヌクレオチドをその膜とカップリングする。第2のポリヌクレオチドのカップリングに使用するアンカーは、第1のポリヌクレオチドをカップリングするために使用した同じタイプのアンカーであってもよく、または異なるタイプのアンカーであってもよい。
ステップ(f)は、1つまたは複数のアンカーを、その1つまたは複数のアンカーに対して、そのアンカーが膜に対して有する親和性より高い親和性を有する作用物質と接触させることを好ましくは含む。分子の特異的結合能力を判定するための競合結合または免疫放射定量測定アッセイの様々なプロトコルが当技術分野において周知である(例えば、Maddox et al., J. Exp. Med. 158, 1211-1226, 1993を参照されたい)。作用物質は、アンカーを膜から除去することによって第1のポリヌクレオチドをアンカップリングする。作用物質は、好ましくは糖である。1つまたは複数のアンカーが膜に対して有する親和性より高い親和性で1つまたは複数のアンカーと結合するいずれの糖を使用してもよい。糖は、シクロデキストリンまたは下で論じるようなその誘導体であることもある。
1つまたは複数のアンカーがコレステロールなどの疎水性アンカーを含む場合、作用物質は、好ましくは、シクロデキストリンもしくはその誘導体または脂質である。シクロデキストリンまたはその誘導体は、Eliseev, A. V., and Schneider, H-J. (1994) J. Am. Chem. Soc. 116, 6081-6088に開示されているもののいずれかであってもよい。この作用物質は、より好ましくは、ヘプタキス−6−アミノ−β−シクロデキストリン(am7−βCD)、6−モノデオキシ−6−モノアミノ−β−シクロデキストリン(am1−βCD)またはヘプタキス−(6−デオキシ−6−グアニジノ)−シクロデキストリン(gu7−βCD)である。本明細書において開示する脂質のいずれかを使用することができる。
アンカーがストレプトアビジン、ビオチンまたはデスチオビオチンを含む場合、作用物質は、好ましくは、ビオチン、デスチオビオチンまたはストレプトアビジンである。ビオチンとデスチオビオチンの両方は、ストレプトアビジンが膜と結合するより高い親和性でストレプトアビジンと結合し、逆もまた同様である。ビオチンは、ストレプトアビジンに対してデスチオビオチンより強い親和性を有する。したがって、ストレプトアビジンを含むアンカーは、ビオチンまたはストレプトアビジンを使用して膜から除去することができるし、逆もまた同様である。
アンカーがタンパク質を含む場合、作用物質は、好ましくは、タンパク質と特異的に結合する抗体またはその断片である。抗体は、あるタンパク質と優先的なまたは高い親和性で結合するが、他のまたは異なるタンパク質とは結合しないまたは低い親和性でしか結合しない場合、そのタンパク質と特異的に結合する。抗体は、110−6M以下、より好ましくは1×10−7M以下、5×10−8M以下、より好ましくは×10−8M以下、またはより好ましくは5×10−9M以下のKdで結合する場合、優先的なまたは高い親和性で結合する。抗体は、1×10−6M以上、より好ましくは1×10−5M以上、より好ましくは1×10−4M以上、より好ましくは1×10−3M以上、よりいっそう好ましくは1×10−2M以上のKdで結合する場合、低い親和性で結合する。いずれの方法を使用して結合または特異的結合を検出してもよい。抗体のタンパク質との結合を定量的に測定する方法は、当技術分野において周知である。抗体は、モノクローナル抗体であってもよいし、またはポリクローナル抗体であってもよい。抗体の好適な断片には、Fv、F(ab’)およびF(ab’)2断片はもちろん、一本鎖抗体も含まれるが、これらに限定されない。さらに、抗体またはその断片は、キメラ抗体もしくはその断片、CDRグラフト抗体もしくはその断片、またはヒト化抗体もしくはその断片であってもよい。
ステップ(f)は、1つまたは複数のアンカーの膜とカップリングする能力を低減させる作用物質と1つまたは複数のアンカーを接触させることを好ましくは含む。例えば、作用物質は、1つまたは複数のアンカーの構造および/または疎水性に干渉することによって膜とカップリングするそれらの能力を低減させることができる。アンカーがコレステロールを含む場合、作用物質は、好ましくはコレステロールデヒドロゲナーゼである。アンカーが脂質を含む場合、作用物質は、好ましくはホスホリパーゼである。アンカーがタンパク質を含む場合、作用物質は、好ましくはプロテイナーゼまたは尿素である。好適なアンカーと作用物質の他の組合せは、当業者には明らかである。
ステップ(f)は、好ましくは、第1のポリヌクレオチドから1つまたは複数のアンカーを分離することによって、第1のポリヌクレオチドを膜からアンカップリングすることを含む。これを任意の手法で行うことができる。例えば、リンカーを含むアンカーの場合、そのリンカーを切断することができる。この実施形態は、ハイブリダイゼーションによる連結に関わるアンカーに特に適用できる。そのようなアンカーは、上で論じている。
ステップ(f)は、第1のポリヌクレオチドおよび1つまたは複数のアンカーを、その1つまたは複数のアンカーとの結合について第1のポリヌクレオチドと競合する作用物質と接触させることによって、第1のポリヌクレオチドを膜からアンカップリングすることを好ましくは含む。競合的結合を判定および測定する方法は、当技術分野において公知である。作用物質は、好ましくは、1つまたは複数のアンカーとのハイブリダイゼーションについて第1のポリヌクレオチドと競合するポリヌクレオチドである。例えば、ハイブリダイゼーションに関わる1つまたは複数のアンカーを使用して第1のポリヌクレオチドを膜とカップリングする場合、ポリヌクレオチドは、1つまたは複数のアンカーをハイブリダイゼーション部位に同じくハイブリダイズするポリヌクレオチドと接触させることによってアンカップリングすることができる。ポリヌクレオチド作用物質は、通常は、第1のポリヌクレオチドおよび1つまたは複数のアンカーの濃度より高い濃度で添加される。あるいは、ポリヌクレオチド作用物質は、1つまたは複数のアンカーに第1のポリヌクレオチドより強くハイブリダイズすることができる。
ステップ(f)は、より好ましくは、(i)第1のポリヌクレオチドおよび1つまたは複数のアンカーを、尿素、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオトレイトール(DTT)、ストレプトアビジンもしくはビオチン、UV線、酵素または結合剤と接触させるステップ、(ii)第1のポリヌクレオチドおよび1つまたは複数のアンカーを加熱するステップ、または(iii)pHを変更するステップを含む。尿素、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)またはジチオトレイトール(DTT)は、アンカーを分解することができ、第1のポリヌクレオチドを膜から分離することができる。アンカーがストレプトアビジン−ビオチン連結を含む場合には、ストレプトアビジン作用物質は、ビオチンとの結合について競合することになる。アンカーがストレプトアビジン−デスチオビオチン連結を含む場合には、ビオチン作用物質は、ストレプトアビジンとの結合について競合することになる。UV線は、光解離性基を分解するために使用することができる。酵素および結合剤は、アンカーを切断、破壊または分解するために使用することができる。好ましい酵素としては、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼまたはヘリカーゼが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい結合剤としては、酵素、抗体もしくはその断片、または一本鎖結合タンパク質(SSB)が挙げられるが、これらに限定されない。下で論じる酵素または上で論じた抗体のいずれかを使用してもよい。熱およびpHは、ハイブリダイゼーションおよび他の連結を破壊するために使用することができる。
第1のポリヌクレオチドを1つまたは複数のアンカーから分離することによって第1のポリヌクレオチドを膜からアンカップリングした場合、1つまたは複数のアンカーは、膜内に残存することになる。ステップ(g)は、好ましくは、第1のポリヌクレオチドから分離された1つまたは複数のアンカーを使用して第2のポリヌクレオチドを膜とカップリングすることを含む。例えば、第2のポリヌクレオチドに、膜内に残存する1つまたは複数のアンカーにハイブリダイズする1つまたは複数のポリヌクレオチドを備えさせることもできる。あるいは、ステップ(g)は、好ましくは、第1のポリヌクレオチドから分離されたものからの1つまたは複数の別個のアンカー(すなわち、1つまたは複数の他のアンカー)を使用して第2のポリヌクレオチドを膜とカップリングすることを含む。1つまたは複数の別個のアンカーは、第1のポリヌクレオチドを膜とカップリングするために使用した同じタイプのアンカーであってもよく、または異なるタイプのアンカーであってもよい。ステップ(g)は、好ましくは、第1のポリヌクレオチドから分離された1つまたは複数のアンカーとは異なる1つまたは複数のアンカーを使用して第2のポリヌクレオチドを膜とカップリングすることを含む。
好ましい実施形態では、ステップ(f)および(g)は、膜を第2のポリヌクレオチドと、第2のポリヌクレオチドが1つまたは複数のアンカーとの結合について第1のポリヌクレオチドと競合し、その第1のポリヌクレオチドを置換するように接触させることによって、膜から第1のポリヌクレオチドをアンカップリングすることを含む。例えば、ハイブリダイゼーションに関わる1つまたは複数のアンカーを使用して第1のポリヌクレオチドを膜とカップリングする場合、第1のポリヌクレオチドは、1つまたは複数のアンカー中のハイブリダイゼーション部位に同じくハイブリダイズするポリヌクレオチドと結合された第2のポリヌクレオチドとアンカーを接触させることによって、アンカップリングすることができる。第2のポリヌクレオチドは、通常は、第1のポリヌクレオチドおよび1つまたは複数のアンカーの濃度より高い濃度で添加される。あるいは、第2のポリヌクレオチドは、1つまたは複数のアンカーに第1のポリヌクレオチドより強くハイブリダイズすることができる。
除去および洗浄
第1のポリヌクレオチドをステップ(f)で膜からアンカップリングするが、それを必ずしも除去するまたは洗い流すとは限らない。第2のポリヌクレオチドを第1のポリヌクレオチドと容易に区別することができる場合、第1のポリヌクレオチドを除去する必要はない。
ステップ(f)と(g)の間に、方法は、好ましくは、第1の試料の少なくとも一部を膜から除去するステップをさらに含む。第1の試料の少なくとも10%、例えば、第1の試料の20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%が除去されることがある。
方法は、好ましくは、膜から第1の試料のすべてを除去するステップをさらに含む。これを任意の方法で行うことができる。例えば、第1のポリヌクレオチドをアンカップリングした後、膜を緩衝液で洗浄することができる。好適な緩衝液は、下で論じる。
修飾ポリヌクレオチド
特徴づけの前に、標的ポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドとポリメラーゼ、および遊離ヌクレオチドの集団とを、そのポリメラーゼが標的ポリヌクレオチドをテンプレートとして使用して修飾ポリヌクレオチドを形成する(ポリメラーゼは、修飾ポリヌクレオチドを形成するときに標的ポリヌクレオチド中のヌクレオチド化学種の1つまたは複数を、異なるヌクレオチド化学種で置換する)条件下で接触させることによって修飾されることがある。その場合、1つまたは複数のヘリカーゼがポリヌクレオチドに結合され1つまたは複数の分子ブレーキがポリヌクレオチドに結合された修飾ポリヌクレオチドを得ることができる。このタイプの修飾は、英国特許出願公開第1403096号(1403096.9)明細書に記載されている。上で論じたポリメラーゼのいずれかを使用してもよい。ポリメラーゼは、好ましくは、クレノウまたは9o Northである。
テンプレートポリヌクレオチドをポリメラーゼと、ポリメラーゼがテンプレートポリヌクレオチドをテンプレートとして使用して修飾ポリヌクレオチドを形成する条件下で接触させる。そのような条件は、当技術分野において公知である。例えば、ポリヌクレオチドを、New England Biolabs(登録商標)からの緩衝液などの市販ポリメラーゼ緩衝液中でポリメラーゼと接触させるのが一般的である。温度は、好ましくは、クレノウについては好ましくは20〜37℃、9o Northについては60〜75℃である。プライマーまたは3’ヘアピンをポリメラーゼ伸長の核形成点として使用するのが一般的である。
膜貫通ポアを使用するポリヌクレオチドの特徴づけ、例えばシークエンシングは、通常は、k個のヌクレオチド(kは正の整数である)で構成されているポリマーユニット(すなわち「k−mer」)の分析を含む。このことは、国際出願第PCT/GB2012/052343号明細書(国際公開第2013/041878号パンフレットとして公開)において論じられている。異なるk−merについての電流測定値間に明白な差があることが望ましいが、これらの測定値の一部が重複することはよくあることである。特に、k−mer中のポリマーユニットの数が多いと、すなわちkの値が大きいと、ポリヌクレオチドについての情報、例えばポリヌクレオチドの基礎配列の推定値、の導出が害されて、異なるk−merによって生じた測定値を分離することが困難になりうる。
標的ポリヌクレオチド中の1つまたは複数のヌクレオチド化学種を修飾ポリヌクレオチド中の異なるヌクレオチド化学種で置換することによって、修飾ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチド中のものとは異なるk−merを含有する。修飾ポリヌクレオチド中の異なるk−merは、標的ポリヌクレオチド中のk−emrとは異なる電流測定値を生じさせることができるため、修飾ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドとは異なる情報を与える。修飾ポリヌクレオチドからのこの追加情報は、標的ポリヌクレオチドの特徴づけを容易にすることができる。場合によっては、修飾ポリヌクレオチド自体を特徴づけるほうが容易であることもある。例えば、電流測定値間の離隔が増したもしくは明白な離隔を有するk−mer、またはノイズ低下を有するk−merを含むように、修飾ポリヌクレオチドを設計することができる。
ポリメラーゼは、好ましくは、修飾ポリヌクレオチドを形成するときに標的ポリヌクレオチド中の2つ以上のヌクレオチド化学種を異なるヌクレオチド化学種で置換する。ポリメラーゼは、標的ポリヌクレオチド中の2つ以上のヌクレオチド化学種の各々を異質のヌクレオチド化学種で置換することもある。ポリメラーゼは、標的ポリヌクレオチド中の2つ以上のヌクレオチド化学種の各々を同じヌクレオチド化学種で置換することもある。
標的ポリヌクレオチドがDNAである場合、その修飾されたものの中の異なるヌクレオチド化学種は、通常は、アデニン、グアニン、チミン、シトシンもしくはメチルシトシンとは異なる核酸塩基を含む、および/またはデオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、デオキシシチジンもしくはデオキシメチルシチジンとは異なるヌクレオシドを含む。標的ポリヌクレオチドがRNAである場合、修飾ポリヌクレオチド中の異なるヌクレオチド化学種は、通常は、アデニン、グアニン、ウラシル、シトシンもしくはメチルシトシンとは異なる核酸塩基を含む、および/またはアデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジンもしくはメチルシチジンとは異なるヌクレオシドを含む。異なるヌクレオチド化学種は、上で論じたユニバーサルヌクレオチドのいずれかであることができる。
ポリメラーゼは、1つまたは複数のヌクレオチド化学種を、その1つまたは複数のヌクレオチド化学種に不在の化学基または原子を含む異なるヌクレオチド化学種で置換することもある。化学基は、プロピニル基、チオ基、オキソ基、メチル基、ヒドロキシメチル基、ホルミル基、カルボキシ基、カルボニル基、ベンジル基、プロパルギル基、またはプロパルギルアミン基であることがある。
ポリメラーゼは、1つまたは複数のヌクレオチド化学種を、その1つまたは複数のヌクレオチド化学種中に存在する化学基または原子を欠いているヌクレオチド化学種で置換することもある。ポリメラーゼは、1つまたは複数のヌクレオチド化学種を、電気陰性度が変更された異なるヌクレオチド化学種で置換することもある。電気陰性度が変更された異なるヌクレオチド化学種は、好ましくはハロゲン原子を含む。
方法は、好ましくは、修飾ポリヌクレオチド中の1つまたは複数の異なるヌクレオチド化学種から核酸塩基を選択的に除去するステップをさらに含む。
分析物送達
標的分析物を、好ましくは、その分析物を膜の方に送達する微粒子に結合させる。このタイプの送達は、英国特許出願公開第1418469号(1418469.1)明細書に記載されている。あらゆるタイプの微粒子および結合方法を使用することができる。
他の特徴づけ方法
別の実施形態では、ポリメラーゼによって標的ポリヌクレオチドに付加され、その後、遊離される標識化学種を検出することによって、ポリヌクレオチドを特徴づける。ポリメラーゼは、ポリヌクレオチドをテンプレートとして使用する。各々の標識化学種が各々のヌクレオチドに特異的である。ポリヌクレオチドを、CsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポア、ポリメラーゼおよび標識ヌクレオチドと、各ヌクレオチドに特異的な標識を含有するリン酸塩標識化学種がポリメラーゼによってポリヌクレオチドに逐次的に付加されるように接触させる。標識化学種を、それらがヌクレオチドから遊離される前に(すなわち、それらが標的ポリヌクレオチドに付加されているときに)、またはヌクレオチドから遊離された後に、ポアを使用して検出することができる。
ポリメラーゼは、上で論じたもののいずれかであってもよい。ポアを使用してリン酸塩標識化学種を検出することによってポリヌクレオチドを特徴づける。このタイプの方法は、欧州特許出願第13187149号明細書(13187149.3)(欧州特許出願公開第2682460号明細書として公開)明細書に開示されている。上で論じた実施形態のいずれかがこの方法に同等に適用される。
標識化学種の例としては、ポリマー、ポリエチレングリコール、糖、シクロデキストリン、フルオロフォア、薬物、代謝物、ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなタグの非限定的な例は、Kumar et al., Sci Rep. 2012; 2:684. Epub 2012 Sep 21の著述の中で見つけることができる。
センサーを形成する方法
本発明は、標的ポリヌクレオチドを特徴づけるためのセンサーを形成する方法も提供する。この方法は、CsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポアと、ポリヌクレオチド結合タンパク質、例えばヘリカーゼまたはエキソヌクレアーゼとの複合体を形成するステップを含む。標的ポリヌクレオチドの存在下でポアをタンパク質と接触させ、次いでポアを介して電位を印加することによって、複合体を形成することができる。印加される電位は、上に記載したように、化学的電位であってもよく、または電圧電位であってもよい。あるいは、ポアをタンパク質に共有結合させることによって複合体を形成することができる。共有結合の方法は当技術分野において公知であり、例えば、国際出願第PCT/GB09/001679号明細書(国際公開第2010/004265号パンフレット)および同第PCT/GB10/000133号明細書(国際公開第2010/086603号パンフレット)に開示されている。複合体は、標的ポリヌクレオチドを特徴づけるためのセンサーである。方法は、好ましくは、CsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポアと、ヘリカーゼとの複合体を形成するステップを含む。上で論じた実施形態のいずれかがこの方法に同等に適用される。
本発明は、標的ポリヌクレオチドを特徴づけるためのセンサーも提供する。このセンサーは、CsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポア、とポリヌクレオチド結合タンパク質との複合体を含む。上で論じた実施形態のいずれかが本発明のセンサーに同等に適用される。
キット
本発明は、標的ポリヌクレオチドを特徴づけるためのキットも提供する。このキットは、CsgGポアまたはその変異体、例えば本発明のポアと、膜の成分とを含む。膜は、好ましくは、成分から形成される。ポアは、好ましくは、膜内に存在する。キットは、上で開示した膜のいずれか、例えば両親媒性層またはトリブロックコポリマー膜、の成分を含むことができる。
キットは、ポリヌクレオチド結合タンパク質をさらに含むことがある。上で論じたポリヌクレオチド結合タンパク質のいずれかを使用することができる。
キットは、ポリヌクレオチドを膜とカップリングさせるための1つまたは複数のアンカーをさらに含むことがある。
キットは、好ましくは、二本鎖ポリヌクレオチドを特徴づけるためのキットであり、好ましくは、Yアダプターおよびヘアピンループアダプターを含む。Yアダプターには、好ましくは、1つまたは複数のヘリカーゼが結合されており、ヘアピンループアダプターには、好ましくは、1つまたは複数の分子ブレーキが結合されている。Yアダプターは、ポリヌクレオチドを膜とカップリングするための1つまたは複数の第1のアンカーを好ましくは含み、ヘアピンループアダプターは、ポリヌクレオチドを膜にカップリングするための1つまたは複数の第2のアンカーを好ましくは含み、ヘアピンループアダプターの膜とのカップリング強度は、好ましくは、Yアダプターのその膜とのカップリング強度より大きい。
本発明のキットは、上述の実施形態のいずれかを行うことを可能にする1つまたは複数の他の試薬または器具をさらに含むことがある。そのような試薬または器具は、次のものの1つまたは複数を含む:好適な緩衝液(水溶液)、対象から試料を得るための手段(例えば、容器、もしくは針を備えている器具)、ポリヌクレオチドを増幅および/もしくは発現させるための手段、または電圧固定もしくはパッチクランプ装置。試薬は、流体試料によってそれらの試薬が再懸濁されるように、乾燥状態でキット内に存在することがある。キットは、場合により、キットを本発明の方法で使用することを可能にする説明書、またはその方法をどの生物に使用してもよいのかに関する詳説も含むことがある。
装置
本発明は、標的ポリヌクレオチドなどの標的分析物を特徴づけるための装置も提供する。この装置は、複数のCsgGポアまたはそれらの変異体、および複数の膜を含む。複数のポアは、好ましくは、複数の膜内に存在する。ポアおよび膜の数は、好ましくは等しい。好ましくは、単一のポアが各膜内に存在する。
装置は、好ましくは、本発明の方法を行うための説明書をさらに含む。装置は、分析物分析のための従来の装置のいずれか、例えば、アレイまたはチップであることができる。本発明の方法に関して上で論じた実施形態のいずれかが本発明の装置に同等に適用できる。装置は、本発明のキット中に存在する機構のいずれかをさらに含むことができる。
装置は、好ましくは、本発明の方法を行うために組立てられる。
装置は、好ましくは、
複数のポアおよび膜を支持することができ、かつポアおよび膜を使用して分析物の特徴づけを行うために操作可能である、センサーデバイスと、
特徴づけを行うための材料を送達するための少なくとも1つのポートと
を含む。
あるいは、装置は、好ましくは、
複数のポアおよび膜を支持することができ、かつポアおよび膜を使用して分析物の特徴づけを行うために操作可能であるセンサーデバイスと、
特徴づけを行うための材料を保持するための少なくとも1つのリザーバーと
を含む。
装置は、より好ましくは、
膜ならびに複数のポアおよび膜を支持することができ、かつポアおよび膜を使用して分析物の特徴づけを行うために操作可能である、センサーデバイスと、
特徴づけを行うための材料を保持するための少なくとも1つのリザーバーと、
少なくとも1つのリザーバーからセンサーデバイスに制御可能に材料を供給するように構成されている流体工学システムと、
それぞれの試料を受けるための1つまたは複数の容器と
を含み、流体工学システムは、1つまたは複数の容器からセンサーデバイスに試料を選択的に供給するように構成されている。
装置は、国際出願第PCT/GB08/004127号明細書(国際公開第2009/077734号パンフレットとして公開)、PCT/GB10/000789号明細書(国際公開第2010/122293号パンフレットとして公開)、国際出願第PCT/GB10/002206号明細書(国際公開第2011/067559号パンフレットとして公開)または国際出願第PCT/US99/25679号明細書(国際公開第00/28312号パンフレットとして公開)に記載されているもののいずれかであってもよい。
以下の実施例は、本発明を例証するものである。
実施例
CsgGのクローニングおよび株
外膜に局在するC−末端StrepIIタグCsgG(pPG1)および周辺質のC−末端StrepIIタグCsgGC1S(pPG2)を産生するための発現構築物は記述されている(Goyal, P. et al., Acta Crystallogr. F. Struct. Biol. Cryst. Commun. 2013, 69, 1349-1353)。セレノメチオニン標識の場合、収量を増加させるためにStrepIIタグCsgGC1Sを細胞質で発現させた。したがって、プライマー5’−TCT TTA AC CGC CCC GCC TAA AG−3’(フォワード)(配列番号437)、および5’−CAT TTT TTG CCC TCG TTA TC−3’(リバース) (pPG3)(配列番号438)によるインバースPCRを使用して、N−末端シグナルペプチドを除去するようにpPG2を変化させた。表現型アッセイの場合、大腸菌(E.coli)BW25141(大腸菌(E.coli)NVG2)のcsgG欠失変異体を、[Datsenko, K. A. et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 97, 6640-6645 (2000)] に記述される方法によって(プライマー5’−AAT AAC TCA ACC GAT TTT TAA GCC CCA GCT TCA TAA GGA AAA TAA TCG TGT AGG CTG GAG CTG CTT C−3’(配列番号439)および5’−CGC TTA AAC AGT AAA ATG CCG GAT GAT AAT TCC GGC TTT TTT ATC TGC ATA TGA ATA TCC TCC TTA G−3’(配列番号440)を使用して)構築した。Cysアクセス可能性アッセイのためおよびチャネル狭窄の表現型プロービングのために使用する様々なCsgG置換変異体を、trcプロモーターの制御下でcsgGを含有するpTRC99aベクターであるpMC2(Robinson, L. S., et al., Mol. Microbiol., 2006, 59, 870-881)から開始する部位特異的変異誘発(QuikChangeプロトコール;Stratagene)によって構築した。
タンパク質の発現および精製
CsgGおよびCsgGC1Sを、記述されるように発現および精製した(Robinson, L. S., et al., Mol. Microbiol., 2006, 59, 870-881)。簡単に説明すると、CsgGを、pPG1で形質転換した大腸菌(E.coli)BL21(DE3)において組換えにより産生させ、単離された外膜から緩衝液A(50mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、1mM EDTA、1mMジチオスレイトール(DTT))中の1%n−ドデシル−β−D−マルトシド(DDM)を使用して抽出した。StrepIIタグCsgGを5ml Strep−Tactin Sepharoseカラム(Iba, GmBH)にロードして、0.5%テトラエチレングリコールモノオクチルエーテル(C8E4;Affymetrix)および4mMラウリルジメチルアミン−N−オキシド(LDAO;Affymetrix)を補充した緩衝液Aの20カラム容積で洗浄することによって洗浄剤を交換した。2.5mM D−デスチオビオチンを添加してタンパク質を溶出させて、結晶化実験のために5mg・ml−1に濃縮した。セレノメチオニン標識の場合、CsgGC1Sを、pPG3で形質転換したメチオニン栄養素要求株B834(DE3)において産生させて、40mg・L−1L−セレノメチオニンを補充したM9最少培地で増殖させた。細胞ペレットを、cOmplete Protease Inhibitor Cocktail(Roche)を補充した50mM Tris−HCl pH8.0、150mM NaCl、1mM EDTA、5mM DTTに再懸濁させて、20×103lb in−2で作動するTSシリーズ細胞破砕装置(Constant Systems Ltd)の中に通過させることによって破砕した。標識したCsgGC1Sを記述されるように精製した(Robinson, L. S., et al., Mol. Microbiol., 2006, 59, 870-881)。セレノメチオニンの酸化を防止するために精製手順を通してDTT(5mM)を添加した。
CsgEを、pNH27を有する大腸菌(E.coli)NEBC2566細胞において産生させた(Nenninger, A. A. et al., Mol. Microbiol. 2011, 81, 486-499)。25mM Tris−HCl pH8.0、150mM NaCl、25mMイミダゾール、5%(容量/容量)グリセロール中の細胞溶解物をHisTrap FF(GE Healthcare)にロードした。CsgE−hisを、20mM Tris−HCl pH8.0、150mM NaCl、5%(容量/容量)グリセロール緩衝液中で500mMイミダゾールへの直線勾配で溶出させた。CsgEを含有する分画に250mM(NH4)2SO4を補充して、20mM Tris−HCl pH8.0、100mM NaCl、250mM(NH4)2SO4、5%(容量/容量)グリセロールで平衡にした5ml HiTrap Phenyl HPカラム(GE Healthcare)に適用した。20mM Tris−HCl pH8.0、10mM NaCl、5%(容量/容量)グリセロールへの直線勾配を溶出のために適用した。CsgE含有分画を、20mM Tris−HCl pH8.0、100mM NaCl、5%(容量/容量)グリセロールに平衡にしたSuperose 6 Prep Grade 10/600(GE Healthcare)カラムにロードした。
溶液中のオリゴマー化状態の評価
洗浄剤可溶化CsgG(0.5%C8E4、4mM LDAO)およびCsgGC1Sのそれぞれ約0.5mgを、25mM Tris−HCI pH8.0、500mM NaCl、1mM DTT、4mM LDAO、および0.5%C8E4(CsgG)、または25mM Tris−HCl pH8.0、200mM NaCl(CsgGC1S)で平衡にしたSuperdex 200 10/300 GL分析的ゲルろ過カラム(GE Healthcare)に適用して0.7ml 分−1で実験を行った。カラムの溶出体積をウシサイログロブリン、ウシγ−グロブリン、ニワトリ卵アルブミン、ウマミオグロビン、およびビタミンB12(Bio−Rad)によって較正した(図7)。洗浄剤可溶化タンパク質である膜抽出CsgGの20μgも同様に3〜10%ブルーネイティブPAGEで、Swamy, M., et al., Sci. STKE 2006, p14, [http://dx.doi.Org/10.1126/stke.3452006pl4(2006)]に記述される手順を使用して実験した(図7)。NativeMark(Life Technologies)非染色タンパク質標準物質(7μl)を分子量推定のために使用した。成熟CsgGは、C9対称性を有する別個のノナマーポア形成粒子として、ならびにノナマーポアのテール−テールダイマー(すなわち、D9対称性を有するオクタデカマー)として主に見出された。ナノポアセンシング用途の目的のために、タンパク質の好ましい状態は、単一ノナマーポアである。D9オクタデカマーポアに対してノナマーポアの集団を、サイズ排除クロマトグラフィーの前に試料を加熱することによって、および/またはナノポアセンシング用途のために脂質二重層に挿入することによって、増加させることができる。
結晶化、データ収集、および構造の決定
セレノメチオニン標識CsgC1Sを3.8mg・ml−1となるように濃縮して、100mM酢酸ナトリウム、pH4.2、8% PEG 4000、および100mMマロン酸ナトリウムpH7.0を含有する溶液に対して、シッティングドロップ蒸気拡散によって結晶化した。結晶を、15%グリセロールを補充した結晶化緩衝液中でインキュベートして、液体窒素中で急速凍結した。洗浄剤可溶化CsgGを5mg・ml−1となるように濃縮して、100mM Tris−HCl pH8.0、8% PEG 4000、100mM NaCl、および500mM MgCl2を含有する溶液に対してハンギングドロップ蒸気拡散によって結晶化させた。結晶を液体窒素中で急速凍結して、結晶化溶液中に存在する洗浄剤によって凍結保護した。結晶条件を最適にするためおよび良好な回折品質を有する結晶に関してスクリーニングするために、結晶を、beamlines Proxima−1およびProxima−2a(Soleil, France)、PX−I(Swiss Light Source, Switzerland)、I02、I03、I04、およびI24(Diamond Light Source, UK)およびID14eh2、ID23eh1、およびID23eh2(ESRF, France)において分析した。CsgGC1SおよびCsgGの構造決定のために使用した最終回折データをそれぞれbeamlines I04およびI03で収集した(表5)。
CsgGC1Sの回折データをXia2およびXDSパッケージを使用して処理した(Winter, G., J. Appl. Cryst., 2010, 43, 186-190; Kabsch, W., Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 2010, 66, 125-132)。CsgGC1Sの結晶は、a=101.3Å、b=103.6Å、c=141.7Å、α=111.3°、β=90.5°、γ=118.2°の単位格子寸法を有する空間群P1に属し、非対称単位にタンパク質16コピーを含有する。構造決定および精密化のために、波長0.9795Åで収集したデータを、最高分解能シェルでの|/σ|カットオフ2に基づいて2.8Åで切り捨てした。単波長異常分散(SAD)実験から計算した実験的位相を使用して、構造を解析した。全体で92個のセレン部位が、ShelxCおよびShelxD(Sheldrick, G. M., Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 2010, 66, 479-485)を使用して非対称単位に位置づけられ、これらを精密化して、Sharp(Bricogne, G., Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 2003, 59, 2023-2030)による位相計算のために使用した(フェージングパワー(phasing power)0.79、性能指数(FOM)0.25)。実験的位相を密度修正してParrot(Cowtan, K., Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 2010, 66, 470-478)を使用して非結晶学的対称性(NCS)によって平均化した(図7、FOM 0.85)。最初のモデルを、Buccaneer(Cowtan, K., Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 2006, 62, 1002-1011)によって作製して、Phenix refine(Adams, P. D. et al. Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 2010, 66, 213-221)による最尤推定精密化の繰り返しラウンド、ならびにCoot(Emsley, P. et al., Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 2010, 66, 486-501)の手動での検分およびモデル(再)構築によって精密化した。最終的な構造は16個のCsgGC1S鎖に属する3,700個の残基中に28,853原子を含有し(図7)、molprobity(Davis, I. W. et al., Nucleic Acids Res. 35 (Suppl 2), W375-W383)スコアは1.34であり;残基の98%がRamachandranプロットの好ましい領域(許容領域の99.7%)に存在する。電子密度マップは、可能性がある溶媒分子に対応する明白な密度を示さず、したがって、水分子またはイオンはその中に組み込まれなかった。精密化の初期および後期で厳密なローカルNCS制限をそれぞれ使用して、精密化を通して16回のNCS平均を維持した。
CsgGの回折データを波長0.9763Åで単結晶から収集し、XDSパッケージ(Winter, G., J. Appl. Cryst. 2010, 43, 186-190; Kabsch, W., Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 2010, 66, 125-132)を使用して、非対称単位にCsgG18コピーおよび72%溶媒含有量を包含する、単位格子寸法a=161.7Å、b=372.3Å、c=161.8Å、およびβ=92.9°の空間群C2に指数化してスケーリングした。構造決定および精密化のための回折データを、逆格子方向a*、b*、およびc*に沿って3.6Å、3.7Å、および3.8Åの分解限界となるように、楕円形に切り捨てし、Diffraction Anisotropy Server(Strong, M. et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 2006, 103, 8060-8065)によって異方性にスケーリングした。CsgGC1Sモノマーを使用する分子置換は、成功しなかった。自己回転関数の分析により、非対称単位におけるD9対称性が明らかとなった(示していない)。CsgGC1Sの構造に基づいて、C8からC9オリゴマーに移行すると、粒子周囲のプロトマー間アークは、45°から40°に変化するプロトマー間角度とほぼ同じままであり、計算される半径の増加は約4Åであるという仮定に基づいてノナマー検索モデルを作成した。検索モデルとしての計算されたノナマーを使用して、2コピーを含有するという分子置換の解がPhaser(McCoy, A. J. et al., J. Appl. Cryst. 2007, 40, 658-674)によって見出された。密度修正およびNCS平均電子密度マップ(Parrot [Cowtan, K., Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 2010, 66, 470-478];図8)の精査によって、TM1およびTM2の手動での構築、タンパク質コアにおける隣接残基のリモデリングを行い、ならびにCsgGC1Sモデルで欠失しており、N−末端脂質アンカーにα1ヘリックスを連結させる残基2〜18の構築を行った。CsgGモデルの精密化は、初回および最終精密化ラウンドに関してそれぞれ、Buster−TNT(Smart, O. S. et al., Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 2012, 68, 368-380)およびRefmac5(Murshudov, G. N. et al., Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr., 2011, 67, 355-367)によって実施した。18回のローカルNCS制限を、精密化を通して適用し、σ0.01のjelly−body精密化およびProsmart(Nicholls, R. A., Long, F. & Murshudov, G. N., Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 2011, 68, 404-417)によって作成された水素結合の制限を用いて、Refmac5を実行した。最終構造は、18CsgG鎖に属する4,451個の残基中に34,165個の原子を含有し(図7)、molprobityスコアは2.79であった。残基の93.0%がRamachandranプロットの好ましい領域(許容領域の99.3%)に存在する。N−末端脂質アンカーに対応する明白な電子密度は識別できなかった。
コンゴーレッドアッセイ
コンゴーレッド結合の分析に関して、Lysogeny Broth(LB)中、37℃で増殖させた細菌の一晩培養物をLB培地でD600が0.5に達するまで希釈した。試料5μlを、アンピシリン(100mg・l−1)、コンゴーレッド(100mg・l−1)、および0.1%(重量/容量)イソプロピルβ−D−チオガラクトシド(IPTG)を補充したLBアガープレートにスポットした。プレートを室温(20〜22℃)で48時間インキュベートして、curli発現を誘導した。コロニーの形態の発達および色素の結合を48時間目に観察した。
システインアクセス可能性アッセイ
システイン変異体を、部位特異的変異誘発を使用してpMC2において作製して、大腸菌(E.coli)LSR12(Chapman, M. R. et al., Science, 2002, 295, 851-855)において発現させた。一晩増殖させた細菌培養物を、1mM IPTGおよび100mg・l−1アンピシリンを含有するLBアガープレートにスポットした。プレートを室温でインキュベートして、細胞を48時間後に擦り取り、PBS 1mLに再懸濁させ、D600を使用して標準化した。超音波処理によって細胞を溶解して、4℃、3,000gで20秒間遠心分離して、細胞溶解物および懸濁させた膜から非破砕細胞を除去した。上清中のタンパク質を15mMメトキシポリエチレングリコール−マレイミド(MAL−PEG 5kDa)によって室温で1時間標識した。100mM DTTによって反応を停止させて、50.4 Tiローターにおいて40,000r.p.m.(約100,000g)で4℃で20分間遠心分離して、全ての膜をペレットにした。ペレットを1%ラウロイルサルコシン酸ナトリウムによって洗浄して、細胞膜を可溶化させて再度遠心分離した。得られた外膜を、1%DDMを含有するPBSを使用して懸濁し、可溶化した。ニッケルビーズによる金属親和性プルダウンをSDS−PAGEおよび抗Hisウェスタンブロットに使用した。空のpMC2ベクターを有する大腸菌(E.coli)LSR12細胞を陰性対照として使用した。
ATR−FTIR分光法
ATR−FTIR測定を、液体窒素冷蔵テルル化カドミウム水銀検出器およびGolden Gate反射測定用アクセサリ(Specac)を備えたEquinox 55赤外線分光光度計(Bruker)において乾燥空気で絶えずパージしながら実施した。内部反射測定用元素はダイヤモンド結晶(2mm×2mm)であり、ビーム入射角は45°であった。それぞれの精製タンパク質試料(1μl)を結晶の表面に広げて、気体窒素流で乾燥させて被膜を形成させた。分解能2cm−1で記録された各スペクトルは、シグナル対ノイズ比を改善するための積算処理が平均で128回であった。スペクトルは全て水蒸気の関与を差し引いて処理し、アポダイゼーションによって最終分解能4cm−1で平滑化して、アミドI結合(1,700〜1,600cm−1)の領域で標準化して、その比較を可能にした(Goormaghtigh, E. ; Ruysschaert, J. M., Spectrochim. Acta, 1994, 50A, 2137-2144)。
ネガティブ染色EMおよび対称性の決定
ネガティブ染色EMを使用して、CsgG、CsgGC1S、およびCsgEの溶液中のオリゴマー化状態をモニターした。CsgE、CsgGC1S、およびamphipol結合CsgGを0.05mg・ml−1の濃度に調節して、グロー放電カーボンコーティング銅グリッド(CF−400; Electron Microscopy Sciences)に適用した。1分間インキュベートした後、試料をブロットし、次いで洗浄して2%酢酸ウラニルで染色した。画像を、電圧120kVで作動するTecnai T12 BioTWIN LaB6顕微鏡で、倍率49,000倍で800〜2,000nmのデフォーカスにより収集した。コントラスト伝達関数(CTF)、位相フリッピング、および粒子選択は、クライオ−EMに関して記述されたように実施した。膜抽出CsgGに関して、オクタデカマー粒子(全体で1,780個)を、ノナマーおよび上面図から個別に分析した。精製CsgEに関して、全体で2,452個の粒子を分析した。三次元モデルを、以下のCsgG−CsgEのクライオ−EM分析に関して記述されたように得て、数ラウンドの多重参照配列アライメント(MRA)、多重統計分析(MSA)、およびアンカーセット精密化によって精密化した。全ての場合において、標準化および中心化後、クライオ−EMの章で記述したようにIMAGIC−4Dを使用して画像を分類した。特徴的な図に対応する最善のクラスを各組の粒子に関して選択した。CsgG上面図の対称性の決定は、クラスあたりおおよそ20個の画像の最善のクラス平均を使用して行った。回転方向の自己相関関数はIMAGICを使用して計算してプロットした。
ネガティブ染色EMおよび対称性の決定
ネガティブ染色EMを使用して、CsgG、CsgGC1S、およびCsgEの溶液中のオリゴマー化状態をモニターした。CsgE、CsgGC1S、およびamphipol結合CsgGを0.05mg・ml−1の濃度に調節して、グロー放電カーボンコーティング銅グリッド(CF−400; Electron Microscopy Sciences)に適用した。1分間インキュベートした後、試料をブロットし、次いで洗浄して2%酢酸ウラニルで染色した。画像を、電圧120kVで作動するTecnai T12 BioTWIN LaB6顕微鏡で、倍率49,000倍で800〜2,000nmのデフォーカスにより収集した。コントラスト伝達関数(CTF)、位相フリッピング、および粒子選択は、クライオ−EMに関して記述されたように実施した。膜抽出CsgGに関して、オクタデカマー粒子(全体で1,780個)を、ノナマーおよび上面図から個別に分析した。精製CsgEに関して、全体で2,452個の粒子を分析した。三次元モデルを、以下のCsgG−CsgEのクライオ−EM分析に関して記述されたように得て、数ラウンドの多重参照配列アライメント(MRA)、多重統計分析(MSA)、およびアンカーセット精密化によって精密化した。全ての場合において、標準化および中心化後、クライオ−EMの章で記述したようにIMAGIC−4Dを使用して画像を分類した。特徴的な図に対応する最善のクラスを各組の粒子に関して選択した。CsgG上面図の対称性の決定は、クラスあたりおおよそ20個の画像の最善のクラス平均を使用して行った。回転方向の自己相関関数はIMAGICを使用して計算してプロットした。
CsgG−CsgE複合体の形成
CsgG−CsgE複合体形成に関して、CsgG(0.5%C8E4、4mM LDAO、25mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、1mM DTT中で24mg・ml−1タンパク質)120mlを洗浄剤脱安定化リポソーム(1mg・ml−1 1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)および0.4%LDAO)300mlに添加して氷中で5分間インキュベートした後、A8−35 amphipolsの100mg・ml−1保存液90mlを添加することによって、精製CsgG中の可溶化洗浄剤を、Amphipols A8−35(Anatrace)に交換した。氷中でさらに15分間インキュベートした後、試料をSuperose 6 10/300 GL(GE Healthcare)カラムにロードして、200mM NaCl、2.5%キシリトール、25mM Tris−HCl、pH8、0.2mM DTT中でゲルろ過を実施した。200mM NaCl、2.5%キシリトール、25mM Tris−HCl、pH8、0.2mM DTT中の精製モノマーCsgEの等量を、CsgEおよびCsgGに関してそれぞれ15および5mMのタンパク質最終濃度でamphipol可溶化CsgGに添加して、試料を0.5×TBE緩衝液中で4.5%ネイティブPAGEにおいて18℃、125Vで泳動させた。第二の変性寸法に関して、CsgG−CsgE複合体に対応するバンドを、同じゲル上で同時に泳動させた未染色レーンから切り出して、Laemmli緩衝液(60mM Tris−HCl pH6.8、2%SDS、10%グリセロール、5% 2−メルカプトエタノール、0.01%ブロモフェノールブルー)中で5分間沸騰させて、4〜20%SDS−PAGEにおいて泳動させた。精製CsgEおよびCsgGを対照試料としての複合体と共に泳動させた。ゲルを、肉眼による可視化のためにInstantBlue Coomassie、またはSDS−PAGEにおいてCsgEおよびCsgGバンドの蛍光検出(Typhoon FLA 9000)によるCsgG−CsgE複合体の化学量論的評価のためにSYPROオレンジによって染色し、CsgG/CsgE比0.97を生じた。
CsgG−CsgEのクライオ−EM
クライオ電子顕微鏡を使用して、C9 CsgG−CsgE複合体の溶液中の構造を決定した。上記のように調製したCsgG−CsgE複合体は、HisTrap FF(GE Healthcare)に結合させて溶出させ、非結合CsgGを除去して、これを溶出させ、20mAで30秒間グロー放電させたQuantifoil R2/2カーボンコーティンググリッド(Quantifoil Micro Tools GmbH)に直ちに適用した。試料を、自動システム(Leica)を使用して液体窒素中で急速凍結して、電圧200kVで作動するFEI F20顕微鏡下で、低用量条件で50,000倍の名目上の倍率、および1.4〜3mmのデフォーカス範囲で観察した。画像フレームをFalcon II検出器で記録した。標本レベルのピクセルサイズは、1.9Å/ピクセルであった。CTFパラメータを、CTFFIND3(Mindell, J. A. & Grigorieff, N., J. Struct. Biol. 2003, 142, 334-347)を使用して評価し、位相フリッピングをSPIDER(Shaikh, T. R. et al., Nature Protocols, 2008, 3, 1941-1974)で行った。粒子を、BOXER(EMAN2; Tang, G. et al., J. Struct. Biol., 2007, 157, 38-46)を使用してCTF補正顕微鏡写真から自動的に選択した。10%を超える非点収差を有する画像を破棄した。全体で1,221個の粒子を75個の顕微鏡写真から選択して128ピクセル×128ピクセルのボックスにウィンドウ化した。画像を同じ平均値および標準偏差に標準化して、約200Åの低分解能カットオフでハイパスフィルターを通過させた。それらを中心化した後MSAの第一ラウンドに供した。IMAGIC−4D(Image Science Software)の参照画像を使用しない分類を使用して、最初の参照セットを得た。C9円柱状粒子の特徴的な側面図に対応する最善のクラスをMRAの参照として使用した。CsgG−CsgE複合体に関して、最初の三次元モデルを、角度の再構成(Image Science Software)によって決定した方向を有する複合体の1,221個の粒子を包含する最善の125個の特徴的な図(良好なコントラストおよび明確な特徴を有する)から計算した。三次元マップをMRA、MSA、およびアンカーセット精密化の繰り返しラウンドによって精密化した。分解能は、0.5の基準レベルに従ってフーリエシェル相関(FSC)によって24Åであると推定された(図5)。
マップおよび図面の可視化は、UCSF Chimera(Pettersen, E. F. et al., J. Comput. Chem., 2004, 25, 1605-1612)で実施した。
CsgGおよびCsgG+CsgEポアの単一チャネル電流分析
陰性電場電位において、CsgGポアは2つのコンダクタンス状態を示す。図5は、通常(+50、0、および−50mVで測定)、および低コンダクタンス型(0、+50、および−50mVで測定)それぞれの代表的な単一チャネル電流トレースを示す。全観察時間(n=22)の間に、2つの状態の間での変換は観察されず、コンダクタンス状態が、長い寿命(数秒から数分の時間尺度)を有することを示している。左下のパネルは、+50mVおよび−50mVで獲得したCsgGポアの通常および低コンダクタンス型の電流ヒストグラムを示す(n=33)。通常および低コンダクタンス型を有するCsgGポアのI−V曲線を右下のパネルに示す。データは、少なくとも4回の独立した記録からの平均値および標準偏差を表す。低コンダクタンス型の性質または生理的存在は不明である。
図6は、アクセサリ因子CsgEで滴定したCsgGチャネルの電気生理学の結果を示す。プロットは、CsgE濃度の関数として、開、中間、および閉状態のチャネルの分画を示す。CsgGの開状態および閉状態を図6に図示する(それぞれ、0nMおよび100nM CsgE)。CsgEの濃度を10nM超に増加させると、CsgGポアは閉鎖する。この効果は+50mV(左)および−50mV(右)で起こり、ポアの遮断がCsgGポアへのCsgE(計算pI 4.7)の電気泳動によって引き起こされる可能性を除外する。頻度の低い(<5%)中間状態は、開状態のチャネルコンダクタンスのほぼ半分を有する。これはCsgEによって誘導されるCsgGチャネルの不完全な閉鎖を表しうる;あるいは、これは電解質溶液の残留CsgGモノマーが膜に埋もれたポアに結合することによって引き起こされるCsgGダイマーの一時的な形成を表しうる。3つの状態の分画を、単一チャネル電流トレースの全ての時点のヒストグラム分析から得た。ヒストグラムは、最大3つの状態のピーク面積を生じ、所定の状態の分画は、対応するピーク面積を記録における他の全ての状態の合計で除することによって得た。陰性電場電位では、2つの開コンダクタンス状態が識別され、これはCsgGに関する知見と類似である(aを参照されたい)。開状態のチャネルの変化形はいずれもより高濃度のCsgEで遮断されたことから、図6における「開状態」トレース(0nM)は、両方のコンダクタンス型を組み合わせている。プロットにおけるデータは、3回の独立した記録の平均値および標準偏差を表す。
結晶構造、サイズ排除クロマトグラフィー、およびEMは、洗浄剤抽出CsgGポアが、より高いタンパク質濃度で非ネイティブのテール−テールスタックダイマーを形成することを示している(例えば、D9粒子としての2つのノナマー、図7)。これらのダイマーはまた、単一チャネル記録でも観察することができる。上のパネルは、+50、0、および−50mV(左から右に)でのスタックされたCsgGポアの単一チャネル電流トレースを示す。左下のパネルは、+50および−50mVで記録されたダイマーCsgGポアの電流ヒストグラムを示す。+50および−50mVでの実験的コンダクタンス、それぞれ、+16.2±1.8および−16.0±3.0pA(n=15)は、23pAという理論的計算値に近い。右下のパネルは、スタックされたCsgGポアのI−V曲線を示す。データは、6回の独立した記録の平均値および標準偏差を表す。
CsgEがスタックされたCsgGポアに結合して遮断する能力を、電気生理学によって試験した。10または100nM CsgEの存在下で+50mV(上)または−50mV(下)でのスタックされたCsgGポアの単一チャネル電流トレースを示す。電流トレースは、そうでなければ飽和濃度のCsgEがスタックされたCsgGダイマーに関してポア閉鎖を引き起こさないことを示している。これらの知見は、EMおよび部位特異的変異誘発によって識別されるように、CsgG−CsgE接触域がヘリックス2およびCsgG周辺質キャビティの口部分にマッピングされることと良好に一致する(図5および6)。
胆汁酸塩毒性アッセイ
外膜の透過性を、胆汁酸塩を含有するアガープレートでの増殖の減少によって調べた。pLR42(Nenninger, A. A. et al., Mol. Microbiol., 2011, 81, 486-499)およびpMC2(Robinson, L. S. et al., Mol. Microbiol., 2006, 59, 870-881)の両方を有する大腸菌(E.coli)LSR12(Chapman, M. R. et al., Science, 2002, 295, 851-855)細胞(または誘導されたヘリックス2変異体)の10倍連続希釈液(5ml)を、0.2%(重量/容量)L−アラビノースを含むまたは含まない、100mg・l−1アンピシリン、25mg・l−1クロラムフェニコール、1mM IPTGを含有するMcConkeyアガープレートにスポットした。37℃で一晩インキュベートした後、コロニーの増殖を調べた。
単一チャネル電流記録
単一チャネル電流記録は、NanionのOrbit 16キットによって同時の高分解能電気的記録を使用して実施した。簡単に説明すると、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(Avanti Polar Lipids)の水平二重層を、16チャネルのマルチ電極キャビティアレイ(MECA)チップ(lonera)(del Rio Martinez, J. M., ACS NanoSmall, 2014, 5, 8080-8088)において(ピコリットル容積以下の)マイクロキャビティの上に形成した。二重層の上または下のシスおよびトランスキャビティはいずれも1.0M KCl、25mM Tris−HCl pH8.0を含有した。チャネルを膜に挿入するために、25mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、1mM DTT、0.5%C8E4、5mM LDAOに溶解したCsgGを、最終濃度90〜300nMとなるようにシス区画に添加した。CsgGチャネルとCsgEとの相互作用を試験するために、25mM Tris−HCl pH8.0、150mM NaCl中に溶解した後者のタンパク質溶液を最終濃度0.1、1、10および100nMとなるようにシス区画に添加した。+50mVおよび−50mVの保持電圧で(シス側を接地)、Tecella Triton 16−チャネル増幅器を使用してロウパスフィルタリング周波数3kHzおよびサンプリング周波数10kHzで膜通過電流を記録した。電流のトレースをpClampスイートのClampfit(Molecular Devices)を使用して分析した。Origin 8.6(Microcal)(Movileanu, L, Nature Biotechnol., 2000, 18, 1091-1095)を使用してプロットを作製した。
測定された電流を、3つのセグメント、すなわち膜貫通区画、周辺質前庭、および両者を接続する内部チャネル狭窄で構成されるようにモデル化したCsgGのX線構造のポア寸法に基づいて計算された電流と比較した。最初の2つのセグメントは、円錐形状のセグメントとなるようにモデル化されたが、狭窄は円柱状として表された。対応する抵抗R1、R2、およびR3はそれぞれ、以下のように計算された:
R1=L1/(πD1d1κ)
R2=L2/(πD2d2κ)
R3=L3/(πD1d2κ)
式中、L1、L2、およびL3はセグメントの軸方向の長さであり、それぞれ、3.5、4.0、および2.0nmであると測定され、D1、d1、D2、およびd2は、セグメント1および2の最大および最小直径であり、それぞれ4.0、0.8、3.4、および0.8nmであると測定された。導電率κは、10.6S・m−1の値を有する。電流は、R1、R2、およびR3ならびに電圧V=50mVを
I=V/(R1+R2+R3)
に代入することによって計算した。
アクセス抵抗は、予想される電流を有意に変化させないことが見出された。
上記の記録のような単一チャネル電流記録を、分析物の存在下で行ってもよく、それによってチャネルはバイオセンサーの役割を引き受けることができる。
モデルポリアラニン鎖によるCsgG狭窄の分子動力学シミュレーション
CsgG狭窄は、図9に示されるようにC末端からN末端方向に細長いコンフォメーションでチャネルの中を貫通するポリアラニン鎖によってモデル化されている。CsgGトランスポーターの中の基質の通過はそれ自身、配列特異的ではない(Nenninger, A. A. et al., Mol. Microbiol., 2011, 81, 486-499; Van Gerven, N. et al, Mol. Microbiol. 2014, 91, 1022-1035 2014)。明確にするために、通過するポリペプチド鎖の推定の相互作用をモデル化するためにポリアラニン鎖を使用した。モデル領域は、それぞれが残基47〜58個を含む9個の同心円のCsgG C−ループで構成される。狭窄内部の側鎖を、Asn55およびPhe56と表示するスティック表示で示す。狭窄内部のポリアラニン残基(+1から+5と表示される残基)の10Å以内の溶媒分子(水)を点で示す。図9cは、図9bに示されるように位置するポリアラニン鎖のモデル化溶媒和を示し、明確にするためにC−ループを除去している(ポリアラニン鎖全体の10Å以内の溶媒分子を示す)。Asn55およびPhe56の環の最高点では、ポリアラニン鎖の溶媒和は、ペプチド骨格とアミドクランプ側鎖とをつなぐ単一の水シェルに低減される。Tyr51環におけるほとんどの側鎖は、CsgG(およびCsgGC1S)X線構造で観察されたその内向きの中心を向く位置と比較して溶媒に向かって回転している。モデルは、AMBER99SB−ILDN(Lindorff-Larsen, K. et al., Proteins 2010, 78, 1950-1958)力場を使用し、C−ループ末端の残基(Gln47およびThr58)のCa原子の位置が制限されている、GROMACS(Pronk, S. et al., Bioinformatics, 2013, 29, 845-854)による40ナノ秒の全原子の明白な溶媒分子動力学シミュレーションの結果である。
核酸シークエンシングのためのCsgGナノポアの使用
Phi29 DNAポリメラーゼ(DNAP)は、膜内に位置する変異体または野生型CsgGナノポアがポアの中でのオリゴマープローブDNA鎖の制御された運動を可能にするために分子モーターとして使用されうる。ポアに電圧を印加すると、ナノポアのいずれかの側の塩溶液中のイオンの運動により電流が生じうる。プローブDNAがポアの中を移動すると、ポアの中のイオン流はDNAによって変化する。この情報は、配列依存的であることが示されており、実施例14における上記の測定などの電流測定から正確にプローブの配列を読み取ることができる。
本実施例は、CsgG内のDNAの挙動を調べるために実行されるシミュレーションを記述する。
材料および方法
DNA転位に対するCsgG−Ecoおよび様々な変異体のエネルギー障壁の程度を調べるために操舵分子動力学シミュレーションを実施した。シミュレーションは、GROMACSパッケージバージョン4.0.5を使用して、GROMOS 53a6力場およびSPC水モデルによって実施した。CsgG−Eco(配列番号390)の構造を、タンパク質データバンクから受託コード4UV3として得た。CsgG−Eco変異体のモデルを作成するために、野生型のタンパク質構造をPyMOLを使用して変異させた。調べた変異体は、CsgG−Eco−(F56A)(変異F56Aを有する配列番号390)、CsgG−Eco−(F56A−N55S)(変異F56A/N55Sを有する配列番号390)、およびCsgG−Eco−(F56A−N55S−Y51A)(変異F56A/N55S/Y51Aを有する配列番号390)であった。
次に、DNAをポアに入れた。異なる2つの系を設定した:
i.ポアに、狭窄領域の真上(残基56環の上おおよそ5〜10Å)に1つのグアニンヌクレオチドを入れた。
ii.DNAの一本鎖(ssDNA)を、5‘末端がポアのベータ−バレル側に向かうようにポアの軸に沿って入れた。この設定において、ssDNAは、ポアの全長にわたって予めその中を貫通していた。
次に、シミュレーションボックスを溶媒和して、最急降下アルゴリズムを使用してエネルギーを最小限にした。
それぞれのシステムを、BerendsenサーモスタットおよびBerendsenバロスタットを300Kとなるように使用してNPTアンサンブルにおいてシミュレートした。シミュレーションを通して、ポアの骨格に制限を適用した。
DNAをポアの中から引き抜くために、1グアニンシミュレーションにおいてリン原子に引き抜き力を適用した。ssDNAシミュレーションでは、引き抜き力を鎖の5‘末端のリン原子に適用した。引き抜き力は、上記のDNAリン原子と、ポア軸に対して平行に定速で移動する想像上の点との間にばねをつなぐことによって、定速で適用した。ばねはいかなる形状も有しないか、またはいかなる流体力学的抗力も受けないことに注意されたい。ばね定数は5kJmol−1Å−2に等しかった。
結果
1G転位
図12に示すように、引き抜き力の時間に対するプロットは、ヌクレオチドが、野生型CsgE−Ecoポアにおけるフェニルアラニン残基F56の環の中に入るには大きい障壁が存在することを示している。調べたCsgG−Eco変異体に関してグアニン転位に対する有意な障壁は観察されなかった。
ssDNA転位
ssDNA転位に関して、それぞれの実行が異なる引き抜き速度(100Å/ナノ秒および10Å/ナノ秒)を適用する2つのシミュレーションをポア毎に実行した。より速い引き抜き速度シミュレーションを図示する図13に示すように、野生型CsgGポアは、ssDNAの転位を可能にするために最大の引き抜き力を必要とした。より遅い引き抜き速度シミュレーションを図示する図14に示すように、CsgG−Eco(野生型、配列番号390)およびCsgG−Eco−(F56A)ポアはいずれも、ssDNA転位を可能にするためには最大の力を適用する必要があった。ssDNA転位にとって必要な引き抜き力をCsgGとMspAベースラインポアの間で比較すると、類似のレベルのssDNA転位を許容するためにはCsgGポアの変異が必要であることを示唆している。
本実施例は、いくつかのCsgG変異体の特徴づけを記述する。
材料および方法
実験を設定する前に、DNA構築物X(最終濃度0.1nM、構築物Xの概略図および説明に関しては図22を参照されたい)を、T4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360C(変異E94C/C109A/C136A/A360Cを有する配列番号412、緩衝液(151.5mM KCl、25mMリン酸カリウム、5%グリセロール、pH7.0、1mM EDTA)中で提供されるナノポア系に最終濃度10nMで添加)で、室温で5分間プレインキュベートした。5分後、TMAD(100μM)をプレミクスに添加して、混合物をさらに5分間インキュベートした。最後に、MgCl2(ナノポア系に添加して最終濃度1.5mM)、ATP(ナノポア系に添加して最終濃度1.5mM)、KCl(ナノポア系に添加して最終濃度500mM)、およびリン酸カリウム緩衝液(ナノポア系に添加して最終濃度25mM)をプレミクスに添加した。
緩衝液(25mM リン酸カリウム緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム(II)、150mMフェリシアン化カリウム(III)、pH8.0)中のブロックコポリマーに挿入した多種のCsgGナノポア1つから、電気的測定を得た。ブロックコポリマーに挿入した1つのポアが得られた後、緩衝液(2mL、25mM リン酸カリウム緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム(II)、150mMフェリシアン化カリウム(III)、pH8.0)を系の中に流して過剰量のいかなるCsgGナノポアも除去した。500mM KCl、25mM リン酸カリウム、1.5mM MgCl2、1.5mM ATP、pH8.0の150μlを系に流した。10分後、500mM KCl、25mMリン酸カリウム、1.5mM MgCl2、1.5mM ATP、pH8.0の150μlを系に流して、次いで、酵素(T4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360C、最終濃度10nM)、DNA構築物X(最終濃度0.1nM)、燃料(MgCl2、最終濃度1.5mM、ATP、最終濃度1.5mM)プレミックス(全体で150μl)をナノポア1つの実験系に流した。実験を−120mVで実行して、ヘリカーゼ制御DNA運動をモニターした。
結果
範囲の増加を示すポア(図15〜17、および27〜39)
CsgG−Eco−(StrepII(C))(StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は、約10pAの範囲を有する(図15(a)を参照されたい)が、以下のCsgG−Ecoポア変異体は、電流範囲の増加を示した−
1− CsgG−Eco−(Y51N−F56A−D149N−E185R−E201N−E203N−StrepII(C))9(変異Y51N/F56A/D149N/E185R/E201N/E203Nを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約30pAの範囲を示した(図15(b)を参照されたい)。
2− CsgG−Eco−(N55A−StrepII(C))9(変異N55Aを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約35pAの範囲を示した(図15(c)を参照されたい)。
3− CsgG−Eco−(N55S−StrepII(C))9(変異N55Sを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約40pAの範囲を示した(図16(a)を参照されたい)。
4− CsgG−Eco−(Y51N−StrepII(C))9(変異Y51Nを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約40pAの範囲を示した(図16(b)を参照されたい)。
5− CsgG−Eco−(Y51A−F56A−StrepII(C))9(変異Y51A/F56Aを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約30pAの範囲を示した(図16(c)を参照されたい)。
6− CsgG−Eco−(Y51A−F56N−StrepII(C))9(変異Y51A/F56Nを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約20pAの範囲を示した(図17(a)を参照されたい)。
7− CsgG−Eco−(Y51A−N55S−F56A−StrepII(C))9(変異Y51A/N55S/F56Aを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約30pAの範囲を示した(図17(b)を参照されたい)。
8− CsgG−Eco−(Y51A−N55S−F56N−StrepII(C))9(変異Y51A/N55S/F56Nを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約30pAの範囲を示した(図17(c)を参照されたい)。
13− CsgG−Eco−(F56H−StrepII(C))9(変異F56Hを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約35pAの範囲を示した(図27を参照されたい)。
14− CsgG−Eco−(F56Q−StrepII(C))9(変異F56Qを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約40pAの範囲を示した(図28を参照されたい)。
15− CsgG−Eco−(F56T−StrepII(C))9(変異F56Tを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約35pAの範囲を示した(図29を参照されたい)。
16− CsgG−Eco−(S54P/F56A−StrepII(C))9(変異S54P/F56Aを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約35pAの範囲を示した(図30を参照されたい)。
17− CsgG−Eco−(Y51T/F56A−StrepII(C))9(変異Y51T/F56Aを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約30pAの範囲を示した(図31を参照されたい)。
18− CsgG−Eco−(F56P−StrepII(C))9(変異F56Pを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約30pAの範囲を示した(図32を参照されたい)。
19− CsgG−Eco−(F56A−StrepII(C))9(変異F56Aを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約40pAの範囲を示した(図33を参照されたい)。
20− CsgG−Eco−(Y51T/F56Q−StrepII(C))9(変異Y51T/F56Qを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約30pAの範囲を示した(図34を参照されたい)。
21− CsgG−Eco−(N55S/F56Q−StrepII(C))9(変異N55S/F56Qを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約35pAの範囲を示した(図35を参照されたい)。
22− CsgG−Eco−(Y51T/N55S/F56Q−StrepII(C))9(変異Y51T/N55S/F56Qを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約35pAの範囲を示した(図36を参照されたい)。
23− CsgG−Eco−(F56Q/N102R−StrepII(C))9(変異F56Q/N102Rを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約30pAの範囲を示した(図37を参照されたい)。
24− CsgG−Eco−(Y51Q/F56Q−StrepII(C))9(変異Y51Q/F56Qを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約40pAの範囲を示した(図38を参照されたい)。
25− CsgG−Eco−(Y51A/F56Q−StrepII(C))9(変異Y51A/F56Qを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は約35pAの範囲を示した(図39を参照されたい)。
スループットの増加を示すポア(図18および19)
図18および19から認められうるように、以下の変異体ポア(以下の9〜12)は、4時間でチャネルあたり多数のヘリカーゼ制御DNA運動(図18および19においてXと表示)を示したのに対し、図18(a)に示すCsgG−Eco−(StrepII(C))9(StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は、4時間でチャネルあたりわずか1または2のヘリカーゼ制御DNA運動(図18(a)においてXと表示)をしばしば示し、その代わりに延長したブロック領域(図18(a)においてYと表示)を示した。
9− CsgG−Eco−(D149N−E185N−E203N−StrepII(C))9(変異D149N/E185N/E203Nを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)(図18(b))。
10− CsgG−Eco−(D149N−E185N−E201N−E203N−StrepII(C))9(変異D149N/E185N/E201N/E203Nを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)(図18(c))。
11− CsgG−Eco−(D149N−E185R−D195N−E201N−E203N−StrepII(C))9(変異D149N/E185R/D195N/E201N/E203Nを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)(図19(a))。
12− CsgG−Eco−(D149N−E185R−D195N−E201R−E203N−StrepII(C))9(変異D149N/E185R/D195N/E201R/E203Nを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)(図19(b))。
挿入の増加を示すポア(図20および21)
図20および21の比較によってわかるように、図21に示される変異体ポアCsgG−Eco−(T150I−StrepII(C))9(変異T150Iを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)は、CsgG−Eco−(StrepII(C))(StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)ポア(図20を参照されたい)と比較して増加したポア数(約4〜5倍)で膜に存在した。図20および21の矢印は、4時間の実験でブロックコポリマーに挿入されたCsgG−Ecoナノポアの数を図示した(図20の130〜140個、および図21の1〜11個は、それぞれ個別のナノポア実験に対応した)。CsgG−Eco−(StrepII(C))(StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している、配列番号390)に関して、3つの実験は、1つのナノポアの挿入を示したが、変異体ポア(CsgG−Eco−(T159I−StrepII(C))9)に関して、それぞれの実験は、少なくとも1つのナノポアの挿入を示し、いくつかの実験は多数のポア挿入を示した。
本実施例は、CsgGポアを精製するために開発された大腸菌(E.coli)精製法を記述する。
材料および方法
ポリペプチドPro−CsgG−Eco−(StrepII(C))(StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合しており、Proが配列番号436であり、N−末端に結合している配列番号390)をコードするDNAをGenScript USA Inc.が合成し、アンピシリン耐性遺伝子を含むpT7ベクターにクローニングした。pT7ベクターのタンパク質発現を、イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘導した。DNA溶液の濃度を400ng/μlに調節した。DNA(1μl)を使用してLemo21(DE3)コンピテント大腸菌(E.coli)細胞(50μl、NEB、カタログ番号C2528H)を形質転換した。形質転換の前に、Lemo21(DE3)細胞(Gene Bridges GmbH、Germany)からCsgG遺伝子をノックアウトした。次に、細胞を、アンピシリン(0.1mg/ml)を含むLB寒天に播種して、37℃で約16時間インキュベートした。
アンピシリンを含有するLBプレート上で増殖させた細菌コロニーは、CsgGプラスミドを取り込んだ。そのような1つのコロニーを使用して、カルベニシリン(0.1mg/ml)を含有するLB培地(100ml)の開始培養物に接種した。開始培養物を、OD600が1.0〜1.2に達するまで撹拌しながら37℃で増殖させた。開始培養物を使用して、カルベニシリン(0.1mg/ml)およびラムノース(500μM)を含有する新しいLB培地500mLにO.D.600が0.1となるように接種した。培養物を、OD600が0.6に達するまで、37℃で撹拌しながら増殖させた。次に、培養物の温度を18℃に調節して、IPTG(最終濃度0.2mM)を添加して誘導を開始した。誘導は、撹拌しながら18℃で約18時間行った。
誘導後、培養物を6,000gで30分間の遠心分離によりペレットにした。ペレットを、プロテアーゼ阻害剤(Merck Millipore、539138)、ベンゾナーゼヌクレアーゼ(Sigma、E1014)、および1×バグバスター(Merck Millipore、70921)pH8.0を含む50mM Tris、300mM NaClに懸濁させた(ペレット1グラムあたり緩衝液約10ml)。懸濁液を、完全に均一になるまで十分に混合した後、試料を4℃のローラーミキサーに約5時間移した。溶解物を20,000gで45分間の遠心分離によりペレットにして、上清を0.22μmのPESシリンジフィルターを通してろ過した。CsgGを含有する上清(試料1として知られる)を、カラムクロマトグラフィーによる精製のために残した。
試料1を5ml Strep Trepカラム(GE Healthcare)に適用した。カラムを、10カラム容積の安定なベースラインが維持されるまで25mM Tris、150mM NaCl、2mM EDTA、0.01%DDM、pH8によって洗浄した。次いで、カラムを25mM Tris、2M NaCl、2mM EDTA、0.01%DDM、pH8によって洗浄後、150nM緩衝液に戻した。10mMデスチオビオチンによって溶出を行った。CsgGタンパク質のStrep trap(GE Healthcare)精製のクロマトグラフィートレースの一例を図23に示す。溶出ピーク1をE1と表示する。図24は、初回Strep精製後のCsgG−Ecoタンパク質の典型的なSDS−PAGE可視化の例を示す。レーン1〜3は、矢印で示されるようにCsgGタンパク質を含有する主要な溶出ピーク(図23においてE1と表示)を示す。レーン4〜6は、混入物を含有する主要な溶出ピーク(図23においてE1と表示)のテール部の溶出分画に対応した。
溶出ピークをプールして、65℃で15分間加熱し、熱に不安定な混入タンパク質を除去した。加熱した溶液を20,000gで10分間の遠心分離に供して、ペレットを破棄した。上清を、25mM Tris、150mM NaCl、2mM EDTA、0.01%DDM、0.1%SDS、pH8中で120ml Sephadex S200カラム(GE Healthcare)によるゲルろ過に供した。タンパク質のトリプトファン成分が少ないために220nmでモニタリングを行った。試料は約55mLの容積で溶出した(図25は、サイズ排除カラムトレースを示し、55mLの試料ピークを星印で表示する)。溶出ピークを4〜20%TGX(図26、Bio Rad)で泳動させて、目的のポアCsgG−Eco−(StrepII(C))(StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端に結合している配列番号390)の存在を確認した。同定された分画をプールして50kD Amiconスピンカラムによって濃縮した。
本実施例は、CsgG−Eco−(Y51T/F56Q)−(StrepII(C))9(Y51T/F56Q変異を有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端ポア変異体20に結合している配列番号390)とT4 Dda−(E94C/C109A/C136A/A360C)(変異E94C/C109A/C136A/A360Cを有し、次いで(ΔM1)G1G2である配列番号412)との相互作用を調べるために実行するシミュレーションを記述する。
シミュレーション方法
GROMACSパッケージバージョン4.0.5を使用して、GROMOS 53a6力場およびSPC水モデルによってシミュレーションを実施した。
CsgG−Eco(Y51T/F56Q)−(StrepII(C))9(Y51T/F56Q変異を有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端ポア変異体20に結合している配列番号390)モデルは、タンパク質データバンクの受託コード4UV3および4Q79で見出されるCsgGの結晶構造に基づいた。関連する変異を、PyMOLを使用して作製した。得られたポアモデルを、次に最急降下アルゴリズムを使用してエネルギーを最小限にした。T4 Dda−(E94C/C109A/C136A/A360C)(変異E94C/C109A/C136A/A360Cを有し、(ΔM1)G1G2である配列番号412)モデルは、タンパク質データバンクの受託コード3UPUに見出されるDda1993構造に基づいた。この場合も、関連する変異を、PyMOLを使用して作製し、モデルを最急降下アルゴリズムを使用してエネルギーを最小限にした。
T4 Dda−(E94C/C10A/C136A/A360C)(変異E94C/C109A/C136A/A360Cを有し、(ΔM1)G1G2である配列番号412)モデルを次に、CsgG−Eco(Y51T/F56Q)−(StrepII(C))9(変異Y51T/F56Qを有し、StrepII(C)が配列番号435であり、C−末端ポア変異体20に結合している配列番号390)の上に置いた。異なる初回酵素コンフォメーション(実行1〜3(0ns)、図40を参照されたい)について、3つのシミュレーションを実施した。
全ての酵素コンフォメーションにおいて、DNAの5‘末端がポアの方向を向くように酵素を配置したところ、酵素はシミュレーションを通して制限を受けなかった。ポアの骨格は制限され、シミュレーションボックスは溶媒和された。系を、BerendsenサーモスタットおよびBerendsenバロスタットを300Kで使用してNPTアンサンブルにおいて40ナノ秒間シミュレートした。
酵素とポアとの間の接触を、GROMACS分析ソフトウェアとローカルな手書きコード(locally written code)の両方を使用して分析した。以下の表は、ポアおよび酵素アミノ酸の両方について観察された接触数を示す。表6〜8は、酵素上のアミノ酸接点と相互作用するポア上のアミノ酸接点を示す。3つのシミュレーションのうち2つにおいて、酵素はポアの上部で傾斜する(実行2および3(20、30、および40ナノ秒)、図40および41を参照されたい)。実行1は、酵素が傾斜せずそのため、表6において高い相互作用を有することが示された点を、ポアキャップ上の酵素安定性を増加させるために最適化できることを示している。
チャネル狭窄においてCsgGナノポアが核酸を捕捉する能力
核酸シークエンシングのためのナノポアの使用は、ナノポアによる一本鎖DNAの捕捉および貫通を必要とする。本実施例において、CsgG WTタンパク質の単一チャネル電流トレースを、一本鎖DNAオーバーハングを有するDNAヘアピンの存在下で追跡した。図56に示す本実施例のトレースは、+50mVまたは−50mVの間隔(矢印で示す)で測定される電位に応答して変化する電流を示す。最後の+50mVセグメントにおける下向き電流の遮断は、内部ポア構築の中への一本鎖ヘアピンの末端が貫通していることを表し、ほぼ完全な電流の遮断が起こる。電場を−50mVに逆転させると、ポアの電気泳動の遮断解除が起こる。新たな+50mVエピソードによって、再度DNAヘアピン結合およびポア遮断が起こる。+50mVセグメントにおいて、ヘアピン構造のアンフォールディングによって、電流遮断の逆転によって示される電流遮断の終了が起こりうる。配列3’ GCGGGGAGCGTATTAGAGTTGGATCGGATGCAGCTGGCTACTGACGTCATGACGTCAGTAGCCAGCATGCATC CGATC−5’(配列番号441)を有するヘアピンを最終濃度10nMで小室のシス側に添加した。
本実施例は、変化した内部狭窄を有する変異体CsgGポアの生成を記述する。
本実施例において、狭窄ループにおける配列PYPA(残基50〜53)がGGに置換されている変異体CsgGポアであるCsgG−ΔPYPAに関して、安定性およびチャネル特性を証明する。この変異体に関して38〜63位の狭窄モチーフは、配列番号354に対応する。この変異は、ポアの読み取りヘッド、すなわちセンシング用途の際に測定される導電率が基質の結合またはポアの貫通の性質に対して最も感受性があるポアの最も狭い部分、の複雑さを低減するために、ポア狭窄からY51の除去および狭窄ループの短縮を予見している。PYPA配列の置換は、CsgGノナマーの安定性を保持し、図57に示されるように導電率の増加を有するポアが得られる。
CsgG−ΔPYPAポア変異体を、Nanion(Munich、Germany)のOrbit 16キットによる同時の高分解能電気的記録を使用する単一チャネル電流記録によって分析した。簡単に説明すると、1,2−ジフタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(Avanti Polar Lipids)の水平二重層を、16−チャネルマルチ電極キャビティアレイ(MECA)チップ(lonera、Freiburg、Germany)51においてマイクロキャビティ(ピコリットル容積以下の)の上に形成した。二重層の上および下のシスおよびトランスキャビティの両方が、1.0M KCl、25mM Tris−HCl、pH8.0を含有した。チャネルを膜に挿入するために、25mM Tris、pH8.0、500mM NaCl、1mM DTT、0.5%C8E4、5mM LDAOに溶解したCsgGを、最終濃度100nMでシス区画に添加した。H膜通過電流を、Tecella Triton 16チャネル増幅器を使用して、ロウパスフィルタリング周波数3kHzおよびサンプリング周波数10kHzで+50mVおよび−50mV(シス側を接地)の保持電位で記録した。電流のトレースをpClampスイート(Molecular Devices、USA)のClampfitを使用して分析した。
本実施例は、細菌アミロイド分泌チャネルCsgGに対する構造的および力学的洞察を記述する。
Curliは、バクテロイデス属(Bacteroidetes)およびプロテオバクテリア(Proteobacteria)(主にaおよびc綱)1〜3によって形成される菌膜バイオフィルムにおける細胞外マトリクスの主要なタンパク質成分を構成する機能的アミロイド線維である。これらは、病原性の株において適応度の利点をもたらし、細菌血症の際に強い炎症促進性応答を誘導する1,4,5。Curliの形成は、外膜リポタンパク質CsgGおよび2つの可溶性アクセサリタンパク質であるCsgEおよびCsgF6,7を含む専用のタンパク質分泌機構を必要とする。本明細書において、本発明者らは、非脂質化可溶性型ならびにそのネイティブな膜抽出コンフォメーションの大腸菌(Escherichia coli)CsgGのX線構造を報告する。CsgGは、二重層を横切る36ストランドのβ−バレルを生じて、周辺質のケージ様の前庭に接続される9個のアンチコドン結合ドメイン様単位で構成されるオリゴマー輸送複合体を形成する。膜貫通ドメインと周辺質ドメインとは、分泌ポアの中に細長いポリペプチド基質を誘導しうる、3つのスタックされた同心円のフェニルアラニン、アスパラギン、およびチロシン環で構成される0.9nmのチャネル狭窄によって隔てられている。特異性因子CsgEは、分泌チャネルの周辺質面に結合して閉じるノナマーアダプターを形成し、24,000Å3の狭窄前小室を作製する。本発明者らの構造、機能、および電気生理学分析は、CsgGが、拡散に基づくエントロピー駆動性の輸送機構を用いると予想される無ゲートの非選択的タンパク質分泌チャネルであることを暗示している。
Curliは、アミロイド原線維の構造および物理的特徴を有する細菌表面付属器であり、ヒトの変性性疾患7〜9由来のものが最もよく知られている。しかし、curliなどの細菌アミロイドの役割は、バイオフィルム形成を促進することである4、10。タンパク質ミスフォールディングの産物である病原性のアミロイドとは異なり、curliの形成は、2つの専用のオペロン、大腸菌(Escherichia coli)におけるcsgBAC(curli特異的遺伝子BAC)およびcsgDEFG(図46)6,7においてコードされるタンパク質によって調整されている。分泌後、CsgBは、CsgAサブユニットの核を形成してcurli線維となる7,11,12。CsgAおよびCsgBの分泌および細胞外沈着はそれぞれ、2つの可溶性アクセサリ因子であるCsgEおよびCsgF、ならびに外膜に位置する262残基のリポタンパク質であるCsgGに依存する13〜16。加水分解可能なエネルギー源または外膜でのイオン勾配がないために、CsgGは、代替のエネルギー賦活輸送機構を通して作動しなければならないタンパク質転位因子の特殊なクラスに分類される。構造モデルが不在であるため、CsgGが生体膜を超えて調節された様式で非常に安定なアミロイド様の線維の分泌および集合をどのように促進するのかに関する動力学的研究はこれまで、不可解なままであった。
外膜に挿入する前に、リポタンパク質は、リポタンパク質局在(Lol)経路17によって周辺質を超えて誘導される。本発明者らは、ポア形成タンパク質および毒素で観察されるプレポア形態18と類似の、可溶性の周辺質中間体として、非脂質化CsgG(CsgGC1S)を単離できることを観察した。CsgGC1Sは、別個のオリゴマー複合体の小さい分画に加えて、モノマーとして主に見出された(図47)19。可溶性のCsgGC1Sオリゴマーは、結晶化され、その構造は2.8Åであると決定され、テール−テール相互作用で結合した2つの環状オクタマー複合体(C8)からなる8回二平面対称性(D8)を有するヘキサデカマー粒子であることが判明した(図47および図46)。CsgGC1Sプロトマーは、アミノおよびカルボキシ末端(それぞれ、αNおよびαC、図42および図48a〜c)で2つのα−ヘリックスと共に伸長するアンチコドン結合ドメイン(ABD)様の折り畳みを示す。さらなるCsgG特異的エレメントは、β1とα1とを連結する細長いループであり、ループにおける2つの挿入は、β3−β4およびβ5−α3と、隣接するモノマー間でのパッキングによってCsgGオリゴマー化に関係する細長いα2ヘリックスを接続する(図42b)。さらに、β3−β5シートの背部と細長いβ1−α1ループの間にプロトマー間の接点が形成される(図48d、e)。
CsgGC1Sの構造において、α1をN−末端脂質アンカーに連結させる残基1〜17は、無秩序であり、明白な膜貫通(TM)ドメインを識別することができない(図42)。CsgGC1Sおよびネイティブの膜抽出CsgGの全反射測定フーリエ変換赤外分光法(ATR−FTIR)は、膜抽出CsgGがβシート領域(1,625〜1,630cm−1)においてより高い吸収を有すること、ならびにランダムコイルおよびα−ヘリカル領域(それぞれ、1,645〜1,650cm−1および1,656cm−1、図43a)で同時に低減することを明らかにし、膜会合CsgGがβ−バレルドメインを含有することを示唆している。β鎖形成の候補となる一連の配列は、β3−β4(残基134〜154)とβ5−α3(残基184〜204)とを接続する秩序化が不良な細長いループに見出された;これらが欠失すると、curli形成が失われた(図43b)。洗浄剤抽出CsgGの結晶構造は、両方の領域のコンフォメーションの再配列により2つの隣接するβ−ヘアピンが形成され、β3−β4(TM1)およびβ5−α3(TM2)によって形成されるβシートを伸長させることを確認した(図43c)。CsgGオリゴマーにおいてそれらが近接位置にあることにより、複雑な36ストランドのβ−バレルを生じた(図43d)。結晶化されたCsgGC1SオリゴマーはD8対称性を示したが、CsgG構造はD9対称性を示し、CsgGプロトマーは、中心軸に対して5°回転し、放射軸に沿って4Åの並進を除き、同等のプロトマー間接触を保持した(図47)。この知見は、膜抽出CsgGに関してC9およびD9対称性のみを見出した単粒子電子顕微鏡によって明らかとなった溶液中のオリゴマー状態と一致する(図47)。非脂質化試料中にモノマーが主に存在すること、および膜結合タンパク質との対称性のミスマッチは、膜挿入の前に、CsgGがモノマーのLolA−結合型で外膜を標的とすること、ならびにC8およびD8粒子がCsgGC1Sの高濃度溶液のアーチファクトであることを主張する。さらに、本発明者らは、単離された大腸菌(E.coli)外膜において、観察されたテール−テールダイマー形成に閉じ込められる残基をシステインに置換すると、マレイミドポリエチレングリコール(PEG、5kDa;図49)による標識に対してアクセス可能であることから、D9複合体ではなくてC9ノナマーが生理的に重要な粒子を形成することを示している。
このため、CsgGは、幅120Åで高さ85Åのノナマー輸送複合体を形成する。複合体は、内径40Åの36ストランドのβバレルを通して外膜を横切る(図43e)。N−末端脂質アンカーは、隣接するプロトマーを包む18残基のリンカーによってコアドメインから隔てられている(図48d)。N−末端Cysにおけるジアシルグリセロールおよびアミド連結アシル鎖は、電子密度マップでは分解されていないが、Leu2の位置に基づいて、脂質アンカーは、β−バレルの外壁に隣接すると予想される。周辺質側では、トランスポーターは、ヘリックス2によって形成された50Åの開口部を周辺質に開く、内径35Åで高さ40Åの溶媒アクセス可能な大きいキャビティを形成する(図43e)。その頂点において、この周辺質前庭は、β1とα1とを接続する保存された12残基のループ(C−ループ;図43eおよび44a、b)によってTMチャネルから隔てられており、これは分泌導管を9.0Åの溶媒除外直径へと狭窄する(図44a、c)。これらのポアの寸法は、残基5個が狭窄の高さに及ぶ1または2個の(例えば、ループ構造の)細長いポリペプチドセグメントの存在と適合する(図50)。狭窄の管腔内層は、残基Tyr51、Asn55、およびPhe56の側鎖によって形成された3つのスタックされた同心円の環で構成される(図44a、b)。炭疽菌PA63毒素において、位相学的に同等の同心円のPhe環(Φ−クランプと呼ばれる)は、転位チャネルの入口に存在し、ポリペプチドの捕捉および通過を触媒する20〜22。CsgG様転位因子の多重配列アライメントは、Phe56の絶対的な保存およびAsn55のSerまたはThrへの保存的変化を示す(図51)。Phe56またはAsn55からAlaへの変異によって、curli産生がほぼ失われるが(図44d)、Asn55からSerへの置換は、野生型の分泌レベルを保持し、Φ−クランプのスタックされた立体配置の後に、CsgG狭窄に水素結合ドナー/アクセプターが続く必要性を共に暗に示す(図44bおよび図51)。
平面リン脂質二重層に再構成されたCsgGの単一チャネル電流記録によって、標準的な電解質条件および+50mVまたは−50mVの電位を使用して、それぞれ43.1±4.5pA(n=33)または−45.1±4.0pA(n=13)の定常電流が得られた(図44e、fおよび図52)。観察された電流は、単純な3セグメントポアモデルおよびX線構造で見られる中心狭窄の寸法に基づいて計算された46.6pAという予想される値と良好に一致した(図44c)。第二の低コンダクタンスコンフォメーションもまた、陰性電場電位で観察することができた(−26.2±3.6pA(n=13);図52)。しかし、この化学種が生理的条件で存在するか否かは不明である。
本発明者らの構造データおよび単一チャネル記録は、CsgGが無ゲートのペプチド拡散チャネルを形成することを暗示している。モデルペプチド拡散チャネルであるPA63において、ポリペプチドの通過は、転位チャネルにおける拡散ステップを調整するΔpH駆動性のブラウンラチェットに依存する20〜22。しかし、そのようなプロトン勾配は、外膜には存在せず、代替の駆動力を必要とする。高濃度のCsgGは周辺質ポリペプチドの非選択的拡散的漏出を促進するが、分泌はネイティブ条件ではCsgAに特異的であり、周辺質因子CsgEを必要とする16,23。過剰量のCsgEの存在下では、精製CsgGは、ネイティブPAGEにおいてより遅く移動する化学種を形成する(図45a)。SDS−PAGE分析は、この新しい化学種が、1:1の化学量論で存在するCsgG−CsgE複合体からなることを示している(図45b)。プルダウンアフィニティ精製により単離されたCsgG−CsgEのクライオ電子顕微鏡(クライオ−EM)による可視化により、CsgGノナマーに対応する9回対称粒子、ならびに単粒子EMおよびサイズ排除クロマトグラフィーによっても同様に観察されたC9 CsgEオリゴマーとサイズおよび形状が類似の、周辺質前庭の入口部でさらなるキャッピング密度が明らかとなった(図45c〜e、および図53)。観察されたCsgG−CsgE接触界面の位置は、CsgGヘリックス2における点突然変異を遮断することによって裏付けられた(図53)。キャッピング機能と一致して、単一チャネル記録により、転位因子に対するCsgEの結合がそのイオンコンダクタンスの特異的サイレンシングを引き起こすことが示された(図45fおよび図52)。このCsgEによるチャネルのキャッピングは、CsgEノナマー結合の関数において全か無かの応答であるように思われた。飽和すると、CsgE結合はチャネルの完全な遮断を誘導したが、約10nMでは、CsgE結合と解離事象との間の平衡によって、転位因子は、間欠的に遮断されるかまたは完全に開状態となった。1nMまたはそれ未満では、モノマーCsgEとの短時間の遭遇により、一過性の(<1ミリ秒)部分的遮断事象が起こりうる。
このため、CsgGおよびCsgEは、GroELシャペロニンおよびGroESコシャペロニン24で見出される、見たところ基質結合キャビティおよびカプセル化蓋構造を想起させる、約24,000A3の中心キャビティを閉じ込めるケージ化複合体を形成するように思われる。CsgG−CsgEの閉じ込めは、129残基のCsgAの完全なまたは部分的捕捉と適合性であろう。転位基質のケージ化は、最近、ABC毒素で観察されている25。アンフォールドされたポリペプチドの空間的拘束によって、そのコンフォメーション空間の減少が起こり、シャペロニンの場合のポリペプチドフォールディングにとって都合がよいことが示されているエントロピー電位を生じる24,26。同様に、本発明者らは、curliの輸送において、CsgG前庭におけるcurliサブユニットの局所的高濃度およびコンフォメーションの拘束によって、転位チャネルの上でエントロピー自由エネルギー勾配が生成されるであろうと推測する(図45g)。狭窄の中に捕捉されると、ポリペプチド鎖は、CsgE媒介拘束および/または分泌チャネル近傍の基質捕捉により生成されるエントロピー電位によって調整されるブラウン拡散によって、次第に外側へと移動すると予想される。プレ狭窄キャビティ内で完全に拘束されるためには、アンフォールドされた129残基のポリペプチドのバルク溶媒への逃避は、最大約80kcal・mol−1(約340kJ・mol−1;参考文献27)のエントロピー自由エネルギー放出に対応するであろう。基質のドッキングおよび拘束に関する初回のエントロピーコストは、CsgG−CsgE−CsgA複合体の集合の際に放出される結合エネルギー、および周辺質でのすでに低下したCsgAエントロピーによって少なくとも部分的に代償される可能性がある。理論的見地から、CsgAの分泌複合体への動員に関して可能性がある3つの経路を想定することができる(図54)。
Curli誘導バイオフィルムは、病原性の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)において適応度およびビルレンス因子を形成する4,5。その独自の分泌および集合特性はまた、(生物)工学応用に関する関心が急速に得つつある23,28,29。2つの重要な分泌成分に関する本発明者らの構造の特徴づけおよび生化学試験は、加水分解可能なエネルギー源、膜電位またはイオン勾配の不在下でのアンフォールドされたタンパク質基質の膜転位のための反復機構の暫定モデルを提供する(図45eおよび図54)。提唱される分泌モデルに関与する要因の完全なバリデーションおよび脱構築は、輸送の動力学を正確に1分子レベルで追跡するために転位因子のインビトロ再構成を必要とするであろう。
方法
クローニングおよび株。外膜局在C−末端StrepII−タグCsgG(pPG1)および周辺質のC−末端StrepIIタグCsgGC1S(pPG2)を産生するための発現構築物は、参考文献19に記述されている。セレノメチオニン標識の場合、収量を増加させるために、StrepIIタグCsgC1Sを細胞質で発現させた。したがって、プライマー5’−TCTTTAACCGCCCCGCCTAAAG−3’(フォワード)および5’−CATTTTTTGCCCTCGTTATC−3’(リバース)(pPG3)による逆転写PCRを使用してN−末端シグナルペプチドを除去するようにpPG2を変化させた。表現型アッセイの場合、大腸菌(E.coli)BW25141(大腸菌(E.coli)NVG2)のcsgG欠失変異体を、参考文献30に記載される方法によって構築した(プライマー5’−AATAACTCAACC GAT TTT TAA GCC CCA GCT TCA TAA GGA AAA TAA TCG TGT AGG CTG GAG CTG CTT C−3’および5’−CGC TTA AAC AGT AAA ATG CCG GAT GAT AAT TCC GGC TTT TTT ATC TGC ATA TGA ATA TCC TCC TTA G−3’によって)。Cysアクセス可能性アッセイおよびチャネル狭窄の表現型プロービングのために使用する様々なCsgG置換変異体を、trcプロモーターの制御下でcsgGを含有するpTRC99aベクター14であるpMC2から開始する部位特異的変異誘発(QuikChangeプロトコール;Stratagene)によって構築した。
タンパク質発現および精製。CsgGおよびCsgGC1Sを、記述のように発現させて精製した19。簡単に説明すると、CsgGを、pPG1で形質転換した大腸菌(E.coli)BL21(DE3)において組み換えにより産生させ、単離された外膜から、緩衝液A(50mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、1mM EDTA、1mMジチオスレイトール(DTT))中で1%n−ドデシル−b−D−マルトシド(DDM)を使用して抽出した。StrepIIタグCsgGを5ml Strep−Tactin Sepharoseカラム(Iba GmbH)にロードして、0.5%テトラエチレングリコールモノオクチルエーテル(C8E4;Affymetrix)および4mMラウリルジメチルアミン−N−オキシド(LDAO;Affymetrix)を補充した緩衝液Aの20カラム容積で洗浄することによって洗浄剤を交換した。2.5mM D−デスチオビオチンを添加してタンパク質を溶出させて、結晶化実験のために5mg・ml−1に濃縮した。セレノメチオニン標識に関して、CsgGC1Sを、pPG3で形質転換したMet栄養素要求株B834(DE3)において産生させて、40mg・l−1L−セレノメチオニンを補充したM9最少培地で増殖させた。細胞ペレットを、cOmpleteプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を補充した50mM Tris−HCl pH8.0、150mM NaCl、1mM EDTA、5mM DTTに懸濁させて、20×103lb・in−2で作動するTSシリーズ細胞破砕装置(Constant Systems Ltd)の中を通過させて破砕した。標識されたCsgGC1Sを、記述されるように精製した19。セレノメチオニンの酸化を防止するために、精製手順を通してDTT(5mM)を添加した。
CsgEを、pNH27を有する大腸菌(E.coli)NEB2566細胞において産生させた(参考文献16)。25mM Tris−HCl、pH8.0、150mM NaCl、25mMイミダゾール、5%(容量/容量)グリセロール中の細胞溶解物をHisTrap FF(GE Healthcare)にロードした。CsgE−hisを、20mM Tris−HCl、pH8.0、150mM NaCl、5%(容量/容量)グリセロール緩衝液中で500mMイミダゾールへの直線勾配によって溶出した。CsgEを含有する分画に250mM(NH4)2SO4を補充して、20mM Tris−HCl、pH8.0、100mM NaCl、250mM(NH4)2SO4、5%(容量/容量)グリセロールで平衡にした5ml HiTrap Phenyl HPカラム(GE Healthcare)に適用した。20mM Tris−HCl、pH8.0、10mM NaCl、5%(容量/容量)グリセロールへの直線勾配を、溶出のために適用した。CsgE含有分画を、20mM Tris−HCl、pH8.0、100mM NaCl、5容量%グリセロールで平衡にしたSuperose 6 Prep Grade 10/600(GE Healthcare)カラムにロードした。
溶液中のオリゴマー化状態の評価。洗浄剤可溶化CsgG(0.5%C8E4、4mM LDAO)およびCsgGC1Sのそれぞれ約0.5mgを、25mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、1mM DTT、4mM LDAO、および0.5%C8E4(CsgG)または25mM Tris−HCl pH8.0、200mM NaCl(CsgGC1S)によって平衡にしたSuperdex 200 10/ 300 GL分析的ゲルろ過カラム(GE Healthcare)に適用して、0.7ml・分−1で実験した。カラムの溶出体積をウシサイログロブリン、ウシγ−グロブリン、ニワトリ卵アルブミン、ウマミオグロビンおよびビタミンB12(Bio−Rad)によって較正した(図47)。膜抽出CsgG、洗浄剤可溶化タンパク質20mgも同様に、参考文献31に記述される手順を使用して3〜10%ブルーネイティブPAGEで泳動させた(図47)。NativeMark(Life Technologies)未染色タンパク質標準物質(7ml)を分子量推定のために使用した。
結晶化、データ収集、および構造の決定。セレノメチオニン標識CsgGC1Sを3.8mg・ml−1に濃縮して、100mM酢酸ナトリウム、pH4.2、8%PEG4000、および100mMマロン酸ナトリウムpH7.0を含有する溶液に対して、シッティングドロップ蒸気拡散によって結晶化した。結晶を、15%グリセロールを補充した結晶化緩衝液中でインキュベートして、液体窒素中で急速凍結した。洗浄剤可溶化CsgGを5mg・ml−1に濃縮して、100mM Tris−HCl pH8.0、8%PEG4000、100mM NaClおよび500mM MgCl2を含有する溶液に対してハンギングドロップ蒸気拡散によって結晶化した。結晶を液体窒素中で急速凍結して、結晶化溶液中に存在する洗浄剤によって凍結保護した。結晶条件の最適化および良好な回折品質を有する結晶に関するスクリーニングのために、結晶をbeamlines Proxima−1およびProxima−2a(Soleil、France)、PX−I(Swiss Light Source、Switzerland)、I02、I03、I04、およびI24(Diamond Light Source、UK)、ならびにID14eh2、ID23eh1、およびID23eh2(ESRF、France)で分析した。CsgGC1SおよびCsgGの構造決定のために使用する最終的な回折データをそれぞれ、beamlines I04およびI03で収集した(データ収集および精密化統計値に関しては図55aを参照されたい)。CsgGC1Sの回折データをXia2およびXDSパッケージを使用して処理した32,33。CsgGC1Sの結晶は、非対称単位にタンパク質16コピーを含有する、単位格子寸法a=101.3Å、b=103.6Å、c=141.7Å、α=111.3°、β=90.5°、γ=118.2°の空間群P1に属した。構造の決定および精密化のために、波長0.9795Åで収集したデータを、最高分解能シェルにおいて2の|/δ|カットオフに基づいて2.8Åで切り捨てた。単波長異常分散(SAD)実験から計算した実験的位相を使用して構造を分解した。全体で92個のセレン部位が、ShelxCおよびShelxD34を使用して非対称単位に位置づけられ、これを精密化して、Sharp35による位相計算(フェージングパワー0.79、性能指数(FOM)0.25)のために使用した。実験的位相を密度修正して、Parrot36(図55;FOM0.85)を使用して非結晶学的対称性(NCS)によって平均した。最初のモデルは、Buccaneer37が構築して、Phenix refine38による最尤推定精密化の数ラウンドおよび手動精査、ならびにCoot39におけるモデル(再)構築によって精密化した。最終構造は、16CsgGC1S鎖に属する3,700個の残基中に原子28,853個を含有し(図47)、molprobity40スコアは1.34であった;残基の98%がRamachandranプロットの好ましい領域(許容領域の99.7%)に存在する。電子密度マップは、可能な溶媒分子に対応する明白な密度を示さず、したがって水分子またはイオンは含まれなかった。精密化の初期および後期ステージでそれぞれ、厳密およびローカルNCS制限を使用して、精密化を通して16回のNCS平均化を維持した。
CsgGの回折データを、波長0.9763Åで単結晶から収集して、XDSパッケージ32,33を使用して、非対称単位にCsgG18コピーおよび72%溶媒含有量を包含する、単位格子寸法a=161.7Å、b=372.3Å、c=161.8Å、およびβ=92.9°の空間群C2に指数化およびスケーリングした。構造決定および精密化のための回折データを、逆格子方向a*、b*、およびc*に沿って3.6Å、3.7Å、および3.8Åの分解能限界となるように楕円形に切り捨てて、Diffraction Anisotropy Server41によって異方性にスケーリングした。CsgGC1Sモノマーを使用する分子置換は成功しなかった。自己回転関数の分析により、非対称単位におけるD9対称性が明らかとなった(示していない)。CsgGC1Sの構造に基づいて、C8からC9オリゴマーに移行した後、粒子周囲でのプロトマー間アークは、45°から40°まで変化したプロトマー間角とほぼ同じままであり、半径が計算上約4Å増加すると仮定して、ノナマー検索モデルを作成した。検索モデルとして計算されたノナマーを使用して、2コピーを含有する分子置換の解が、Phaser42によって見出された。密度修正およびNCS平均電子密度マップの精査(Parrot36、図55)により、TM1およびTM2の手動での構築ならびにタンパク質コアにおける隣接残基のリモデリング、ならびにCsgGC1Sモデルでは失われており、N−末端脂質アンカーにα1ヘリックスを結合させる残基2〜18の構築が可能となった。CsgGモデルの精密化を、初回および最終精密化ラウンドにおいてそれぞれ、Buster−TNT43およびRefmac5(参考文献44)によって行った。精密化を通して18回のローカルNCS制限を適用し、Refmac5を、シグマ0.01によるゼリーボディ精密化およびProsmart45によって生成された水素結合制限を用いて実行した。最終構造は、18CsgG鎖に属する4,451個の残基中に34,165個の原子を含有し(図47)、molprobityスコアは2.79であり、残基の93.0%がRamachandranプロットの好ましい領域(許容領域の99.3%)に存在する。N−末端脂質アンカーに対応する明白な電子密度は識別できなかった。
コンゴーレッドアッセイ。コンゴーレッド結合の分析に関して、Lysogenyブロス(LB)中、37℃で増殖させた細菌の一晩培養物を、D600が0.5に達するまでLB培地で希釈した。試料5μlを、アンピシリン(100mg・l−1)、コンゴーレッド(100mg・l−1)、および0.1%(重量/容量)イソプロピルβ−D−チオガラクトシド(IPTG)を補充したLBアガープレートにスポットした。プレートを室温(20〜22℃)で48時間インキュベートして、curli発現を誘導した。コロニー形態の発生および色素結合を48時間観察した。
システインアクセス可能性アッセイ。システイン変異体を、部位特異的変異誘発を使用してpMC2において作製し、大腸菌(E.coli)LSR12において発現させた(参考文献7)。一晩増殖させた細菌培養物を、1mM IPTGおよび100mg・l−1アンピシリンを含有するLBアガープレートにスポットした。プレートを室温でインキュベートして、細胞を48時間後に擦り取り、PBS 1mlに懸濁させて、D600を使用して標準化した。細胞を超音波処理によって溶解して、4℃、3,000gで20秒間遠心分離して、非破砕細胞を細胞溶解物から除去して、膜を懸濁させた。上清中のタンパク質を15mMメトキシポリエチレングリコール−マレイミド(MAL−PEG、5kDa)によって室温で1時間標識した。100mM DTTによって反応を停止させて、50.4 Tiローターにおいて4℃、40,000r.p.m.(約100,000g)で20分間遠心分離して、全ての膜をペレットにした。ペレットを1%ラウロイルサルコシン酸ナトリウムで洗浄して、細胞膜を可溶化し、再度遠心分離した。得られた外膜を、1%DDMを含有するPBSを使用して再懸濁させて可溶化した。ニッケルビーズによる金属親和性プルダウンをSDS−PAGEおよび抗Hisウェスタンブロットのために使用した。空のpMC2ベクターを有する大腸菌(E.coli)LSR12細胞を、陰性対照として使用した。
ATR−FTIR分光法。ATR−FTIR測定を、液体窒素冷蔵テルル化カドミウム水銀検出器およびGolden Gate反射測定用アクセサリ(Specac)を備えたEquinox 55赤外線分光光度計(Bruker)において、乾燥空気で絶えずパージながら実施した。内部反射測定用元素はダイヤモンド結晶(2mm×2mm)であり、ビーム入射角は45°であった。各精製タンパク質試料(1μl)を結晶表面に広げて気体窒素流下で乾燥させて被膜を形成させた。分解能2cm−1で記録された各スペクトルは、シグナル対ノイズ比を改善するための積算処理が平均で128回であった。スペクトルは全て水蒸気の関与を差し引いて処理し、アポダイゼーションによって最終分解能4cm−1で平滑化して、アミドIバンド(1,700〜1,600cm−1)の領域で標準化して、その比較を行った46。
ネガティブ染色EMおよび対称性の決定。ネガティブ染色EMを使用して、CsgG、CsgGC1SおよびCsgEの溶液中のオリゴマー化状態をモニターした。CsgE、CsgGC1S、およびamphipol結合CsgGを0.05mg・ml−1の濃度に調節して、グロー放電カーボンコーティング銅グリッド(CF−400;Electron Microscopy Sciences)に適用した。1分間インキュベートした後、試料をブロットして、次いで洗浄および2%酢酸ウラニルで染色した。画像を、電圧120kVで作動するTecnai T12 BioTWIN LaB6顕微鏡で、倍率49,000倍および800〜2,000nmの間のデフォーカスにより収集した。コントラスト伝達関数(CTF)、位相フリッピングおよび粒子選択を、クライオ−EMに関して記述したように実施した。膜抽出CsgGに関して、オクタデカマー粒子(全体で1,780個)を、ノナマーおよび上面図から個別に分析した。精製CsgEに関して、全体で2,452個の粒子を分析した。以下のCsgG−CsgEクライオ−EM分析に記述されるように三次元モデルを得て、数ラウンドの多重参照配列アライメント(MRA)、多重統計分析(MSA)、およびアンカーセット精密化によって精密化した。全ての場合において、標準化および中心化後、クライオ−EM選択に記述されるようにIMAGIC−4Dを使用して画像を分類した。特徴的な図面に対応する最善のクラスを各セットの粒子に関して選択した。CsgG上面図の対称性の決定は、クラスあたりほぼ20個の画像を使用して最善のクラス平均を使用して実施した。回転方向の自己相関関数を、IMAGICを使用して計算し、プロットした。
CsgG−CsgE複合体の形成。CsgG−CsgE複合体形成に関して、精製CsgG中の可溶化洗浄剤を、CsgG(0.5%C8E4、4mM LDAO、25mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、1mM DTT中に24mg・ml−1タンパク質)120μlを洗浄剤脱安定化リポソーム(1mg・ml−1の1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)および0.4%LDAO)300μlに添加し、氷上で5分間インキュベートした後、100mg・ml−1保存液にA8−35 amiphipols 90mlを添加することによって、Amphipols A8−35(Anatrace)に交換した。氷上でさらに15分間インキュベートした後、試料をSuperose 6 10/300 GL(GE Healthcare)カラムにロードして、200mM NaCl、2.5%キシリトール、25mM Tris−HCl pH8、0.2mM DTT中でゲルろ過を行った。200mM NaCl、2.5%キシリトール、25mM Tris−HCl pH8、0.2mM DTT中での精製モノマーCsgEの等量を、amphipol可溶化CsgGに、CsgEおよびCsgGに関してそれぞれ最終タンパク質濃度15および5μMで添加して、試料を4.5%ネイティブPAGEにおいて0.5×TBE緩衝液中で125V、18℃で泳動させた。二次元変性の場合、CsgG−CsgE複合体に対応するバンドを、同じゲルで同時に泳動させた未染色レーンから切り出して、Laemmli緩衝液(60mM Tris−HCl pH6.8、2%SDS、10%グリセロール、5%2−メルカプトエタノール、0.01%ブロモフェノールブルー)中で5分間沸騰させて、4〜20%SDS−PAGEで泳動させた。精製CsgEおよびCsgGを対照試料として複合体と共に泳動させた。ゲルを視覚的に調べるためにInstantBlue Coomassieによって、またはSDS−PAGE上のCsgEおよびCsgGバンドの蛍光検出(Typhoon FLA 9000)によるCsgG−CsgE複合体の化学量論的評価のためにSYPROオレンジによって染色し、CsgG/CsgE比0.97を得た。
CsgG−CsgEクライオ−EM。クライオ電子顕微鏡を使用して、C9 CsgG−CsgE複合体の溶液中の構造を決定した。上記のように調製したCsgG−CsgE複合体を、HisTrap FF(GE Healthcare)に結合させて溶出し、未結合CsgGを除去して、溶出後直ちに、20mAで30秒間グロー放電されているQuantifoil R2/2カーボンコーティンググリッド(Quantifoil Micro Tools GmbH)に適用した。試料を、自動システム(Leica)を使用して液体窒素中で瞬間凍結し、電圧200kVで作動するFEI F20顕微鏡下で、低用量条件下で名目上の倍率50,000倍、および1.4〜3μmのデフォーカス範囲で観察した。画像フレームをFalcon II検出器で記録した。標本レベルのピクセルサイズはピクセルあたり1.9Åであった。CTFパラメータを、CTFFIND3(参考文献47)を使用して評価して、位相フリッピングをSPIDER48で実施した。粒子を、BOXER(EMAN2、参考文献49)を使用してCTF補正顕微鏡写真から自動的に選択した。10%を超える非点収差を有する画像を破棄した。全体で1,221個の粒子を75個の顕微鏡写真から選択して、128ピクセル×128ピクセルのボックスにウィンドウ化した。画像を同じ平均値および標準偏差に標準化して、約200Åの低分解能カットオフでハイパスフィルターを通過させた。これらを中心化した後、第一ラウンドのMSAに供した。最初の参照物質の組を、IMAGIC−4D(Image Science Software)における参照物質なしの分類を使用して得た。C9円柱粒子の特徴的な側面図に対応する最善のクラスをMRAの参照物質として使用した。CsgG−CsgE複合体に関して、最初の三次元モデルを、複合体粒子1,221個を包含する最善の125個の特徴的な図面(良好なコントラストおよび良好に定義された特徴を有する)から計算して、角度の再構成によって方向を決定した(Image Science Software)。MRA、MSA、およびアンカーセット精密化の繰り返しラウンドによって三次元マップを精密化した。分解能は、0.5基準レベルに従ってフーリエシェル相関(FSC)によって24Åであると推定された(図52)。マップおよび図面の可視化は、UCSF Chimera50において実施した。
胆汁酸塩毒性アッセイ。胆汁酸塩を含有するアガープレートでの増殖の減少によって外膜透過性を調べた。pLR42(参考文献16)およびpMC2(参考文献14)(または誘導されたヘリックス2変異体)の両方を有する大腸菌(E.coli)LSR12(参考文献7)細胞の10倍連続希釈液(5μl)を、100μg・l−1アンピシリン、25μg・l−1クロラムフェニコール、1mM IPTGを含有し、0.2%(重量/容量)L−アラビノースを含むまたは含まないMcConkeyアガープレートにスポットした。37℃で一晩インキュベートした後、コロニーの増殖を調べた。
単一チャネル電流記録。単一チャネル電流記録を、NanionのOrbit 16キットによる平行高解像電気的記録を使用して行った。簡単に説明すると、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(Avanti Polar Lipids)の水平二重層を、16チャネルマルチ電極キャビティアレイ(MECA)チップ(lonera)51の(ピコリットル容積以下の)マイクロキャビティ上に形成した。二重層の上および下のシスおよびトランスキャビティはいずれも、1.0M KCl、25mM Tris−HCl pH8.0を含有した。チャネルを膜に挿入するために、25mM Tris−HCl pH8.0、500mM NaCl、1mM DTT、0.5%C8E4、5mM LDAOに溶解したCsgGをシス区画に最終濃度90〜300nMとなるように添加した。CsgGチャネルとCsgEとの相互作用を試験するために、25mM Tris−HCl pH8.0、150mM NaClに溶解したCsgEタンパク質溶液をシス区画に最終濃度0.1、1、10、および100nMで添加した。膜通過電流を、Tecella Triton 16−チャネル増幅器を使用して、ロウパスフィルタリング周波数3kHzおよびサンプリング周波数10kHzで+50mVおよび−50mV(シス側を接地した)の保持電位で記録した。電流のトレースをpClampスイートのClampfit(Molecular Devices)を使用して分析した。プロットをOrigin 8.6(Microcal)52を使用して作製した。
測定された電流を、3つのセグメント、膜貫通区分、周辺質前庭、および両者を接続する内部チャネル狭窄で構成されるようにモデル化したCsgGのX線構造のポア寸法に基づいて計算された電流と比較した。最初の2つのセグメントは円錐形状のセグメントとなるようにモデル化された。狭窄を円柱として表した。対応する抵抗R1、R2、およびR3をそれぞれ、以下のように計算した:
R1=L1/(πD1d1κ)
R2=L2/(πD2d2κ)
R3=L3/(πD1d2κ)
式中、L1、L2、およびL3はセグメントの軸方向の長さであり、それぞれ、3.5、4.0、および2.0nmであると測定され、D1、d1、D2、およびd3は、セグメント1および2の最大および最小直径であり、それぞれ4.0、0.8、3.4、および0.8nmであると測定された。導電率κは、10.6Sm−1の値を有する。電流は、R1、R2、およびR3ならびに電圧V=50mVを
I=V/(R1+R2+R3)
に代入することによって計算された。
アクセス抵抗性は予想電流を有意に変化させないことが見出された。
参考文献