この発明は、例えば、ヒートインシュレータと、内燃機関のエキゾーストマニホールドとの取付部分に用いられる緩衝装置、および緩衝装置を備えた金属カバーに関する。
従来より、エンジンから排出される燃焼排気ガスが内部を通過するエキゾーストマニホールドは、燃焼排気ガスの通過に伴って熱が周辺へ伝播することを抑制するためのヒートインシュレータに覆われている。このエキゾーストマニホールドは、熱を発することだけでなく、エンジンの振動や脈動する燃焼排気ガスの通過によって振動音を発する。
このようなエキゾーストマニホールド(以下、振動部材)に、ヒートインシュレータ(以下、囲繞部材)を直接取り付けると、振動部材の振動に共振して囲繞部材自体が振動源となり、振動音が大きくなるおそれがあるため、例えば、振動部材と囲繞部材との取付部分に用いられる緩衝装置が特許文献1に開示されている。
特許文献1に記載の緩衝装置は、囲繞部材に固定される固定部材と、取付ボルトなどの締結部材によって振動部材に固定されるカラー部材との間に、金属線をメッシュ状に編込み、それを平板なマット状に形成した円環状の緩衝部材を介在させて構成されている。
この緩衝装置は、固定部材と緩衝部材とが固定されている一方、カラー部材と緩衝部材との間に遊動可能な隙間が設けられているため、振動部材から付加された振動のカラー部材から緩衝部材への伝達を抑制し、優れた制振性を有するとされている。
しかし、制振性向上のためにカラー部材と緩衝部材との間に隙間を設けたことにより、カラー部材に対して緩衝部材が相対移動して、緩衝部材がカラー部材に当接することでカタカタと鳴る当接音が、近年普及しているハイブリット車両のモーター駆動時において、異音として搭乗者に聞こえるおそれがあった。
そこで本発明は、安定して優れた制振性を有しながら、当接音の発生を抑制できる緩衝装置、および緩衝装置を備えた金属カバーを提供することを目的とする。
この発明は、振動源である振動部材と、該振動部材を覆う囲繞部材とを連結し、前記振動部材から前記囲繞部材への振動を緩衝する緩衝装置であって、締結部材によって前記振動部材に固定される略筒状のカラー本体、および該カラー本体の軸方向両側から径外側に突出する環状のフランジが備えられたカラー部材と、金属製の線材を編込んで形成され、前記カラー部材および前記囲繞部材の間に配置されるとともに、前記カラー部材に遊嵌する環状の緩衝材で構成された緩衝部材と、前記囲繞部材に固定されるとともに、前記緩衝部材の外周側を固定する環状の固定部材とで構成され、前記緩衝部材の内周側が前記カラー部材に遊嵌され、前記カラー部材と前記緩衝部材との間の隙間において前記緩衝部材と重合配置されるとともに、緩衝材で構成され、前記カラー部材に対する前記緩衝部材の相対移動を弾性変形によって低減させるバネ部材が設けられたことを特徴とする。
上記金属製の線材は、例えば、ステンレス、タングステン、モリブデン、アルミニウム、鉄、ニッケル、および銅などで形成した線材や、素材自体に制振性を有する鉄アルミで形成した線材など、いろいろな機能や特性を有する金属製素材を含むものとする。
上記軸方向は、緩衝部材およびバネ部材の厚み方向と同方向である。
上述の前記カラー部材および前記囲繞部材の間に配置される緩衝部材とは、例えば、間隔を隔てて配置したカラー部材と囲繞部材とを架け渡す緩衝部材、あるいは、カラー部材のフランジと囲繞部材とにサンドイッチ状に挟み込まれる緩衝部材などを含むものとする。なお、間隔を隔てて配置したカラー部材と囲繞部材とを架け渡す場合の緩衝部材は、別部材を用いて囲繞部材とカラー部材とを架け渡してもよい。
上記緩衝材は、厚み方向に湾曲する湾曲変形、厚み方向に圧縮する圧縮変形、面方向に伸縮する伸縮変形、あるいはこれらの組み合わせ変形などの弾性変形が可能なバネ部材を含むものである。なお、面方向は、厚み方向に直交する方向を指す。
上述のカラー部材と緩衝部材との間の隙間とは、カラー部材のフランジと緩衝部材との厚み方向の隙間、およびカラー部材のカラー本体と緩衝部材との径方向の隙間のうち少なくとも一方を含むものとする。
上述の相対移動を低減するとは、カラー部材に対する緩衝部材の厚み方向および径方向の少なくとも一方の方向の相対移動における移動量を低減すること、相対移動における移動速度を低下させること、さらには、相対移動における移動加速度を低下させること、あるいはこれらの組み合わせを含むものとする。
上記バネ部材は、例えば渦巻きバネ、コイルバネ、板バネなどを含むものとする。
この発明により、緩衝装置は安定して優れた制振性を奏しながら、当接音の発生を抑制することができる。
詳述すると、緩衝部材が弾性変形して、振動部材から付加された振動のカラー部材から緩衝部材への伝達を抑制することで囲繞部材への振動を緩衝することに加え、緩衝部材の緩衝作用を阻害することなく、カラー部材と緩衝部材と隙間に配置されるバネ部材がカラー部材に対する緩衝部材の相対移動を弾性変形によって減少させることとなる。
これにより、緩衝部材の緩衝性能を低下させることなく、カラー部材に対する緩衝部材の相対移動を低下させ、緩衝部材がカラー部材に当接することを防止する、あるいは当接しても当該当接による衝撃を緩和させることができる。
つまり、緩衝部材とカラー部材との当接力が低減するため、緩衝部材とカラー部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
したがって、緩衝装置は安定して優れた制振性を有しながら、緩衝部材とカラー部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
また、前記囲繞部材に固定されるとともに、前記緩衝部材の外周側を固定する環状の固定部材が備えられ、前記緩衝部材の内周側を前記カラー部材に遊嵌するため、緩衝装置の緩衝性能を向上することができる。
詳述すると、固定部材に外周側を固定される緩衝部材は、内周側がカラー部材に遊嵌されているため、固定部材を介して囲繞部材とカラー部材とを径方向に架け渡す態様となる。
つまり、緩衝部材は、湾曲による弾性変形を容易に行うことができるため、振動部材から囲繞部材への振動を効率良く緩衝することができる。
したがって、緩衝装置の緩衝性能を向上することができる。
また、線材の線径や素材、あるいはピッチなどにより所望の性能に合ったバネ部材を用いることができるため、汎用性を向上させることができる。
またこの発明の態様として、前記バネ部材のバネ定数を、前記緩衝部材のバネ定数の10分の1以下に設定することができる。
この発明により、緩衝装置の制振性能を向上させながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
詳述すると、バネ部材のバネ定数を緩衝部材のバネ定数の10分の1以下に設定する、つまり、バネ部材と緩衝部材とを異なるバネ定数に設定することで、緩衝部材とバネ部材とが異なる周波数帯域の振動にそれぞれ対応できるため、緩衝装置の制振性能を向上させることができる。
さらに、バネ部材のバネ定数が緩衝部材のバネ定数の10分の1以上である場合には、バネ部材と緩衝部材との変形性能が近似し、荷重が作用することによってバネ部材とともに緩衝部材も弾性変形して、緩衝部材の緩衝性能が低下するおそれがあるが、バネ定数を緩衝部材の10分の1以下に設定したバネ部材は、同等の荷重が作用した場合において、バネ定数が高い緩衝部材よりも弾性変形し易いため、カラー部材と緩衝部材との隙間に配置したバネ部材が荷重に対して弾性変形することで緩衝部材の弾性変形を防止することができる。
つまり、緩衝部材の緩衝性能を低下させることなく、カラー部材との当接による当接力をバネ部材の弾性変形によって吸収し、カラー部材との当接による当接音を低減することができる。
したがって、緩衝装置の制振性能を向上させながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
またこの発明の態様として、前記緩衝部材と前記バネ部材との重合状態の厚みを、前記フランジ同士の間隔よりも厚く形成することができる。
上記重合状態とは、緩衝部材に対してバネ部材の少なくとも一部が厚み方向に接する状態を指す。
この発明により、カラー部材に対する緩衝部材の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
詳述すると、緩衝部材とバネ部材との重合状態の厚みを、フランジ同士の間隔よりも厚く形成することで、バネ定数を緩衝部材よりも低く設定したバネ部材が圧縮された状態でフランジと緩衝部材との隙間を埋め、つまり通常状態において、緩衝部材は弾性変形することなく、バネ部材にプレストレスが作用した状態で組み付けられ、緩衝部材をカラー部材へ付勢することができる。
この場合においても緩衝部材は弾性変形していないため、緩衝部材の緩衝性能を低下させることなく、振動部材から囲繞部材への振動を緩衝部材が確実に緩衝するとともに、カラー部材に対する緩衝部材の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
またこの発明の態様として、前記バネ部材の前記緩衝部材側における端部の径方向への相対移動を規制する移動規制手段を設けることができる。
上記移動規制手段は、例えば、バネ部材の緩衝部材側を固定する固定部材の固定部、あるいはバネ部材の緩衝部材側を係止させる緩衝部材に設けた凸部や凹部などを含むものとする。なお、緩衝部材に設けた凸部は、緩衝部材の一部で構成した凸部、緩衝部材と一体的に設けた凸部、あるいは、緩衝部材と別体で設けた凸部とすることができる。
この発明により、優れた制振性能を奏するとともに、カラー部材と緩衝部材との径方向の当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
詳述すると、緩衝部材または固定部材に対する相対移動を規制されたバネ部材は、緩衝部材側を基端として自由端となるフランジ側によってカラー部材に作用する径方向への相対移動を低減させることができる。したがって、軸方向の振動吸収性能に加えて、径方向への振動吸収性能を確保しながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
またこの発明の態様として、前記移動規制手段を、前記緩衝部材の径外側とともに前記バネ部材の前記緩衝部材側を固定する前記固定部材の固定部で構成することができる。
この発明により、緩衝装置の組み付けによって、緩衝部材または固定部材に対するバネ部材の径方向への相対移動を、簡素な構成で確実かつ容易に防止することができる。
またこの発明の態様として、前記バネ部材を、前記緩衝部材側が前記フランジ側より大径となる平面視渦巻状かつ正面視略錐台状の渦巻きバネで構成することができる。
この発明により、自然長が同等で上端から下端まで同径であるコイルバネと比較して、軸方向への縮み量が大きいため、弾性変形によって振動を緩衝する緩衝部材のカラー部材に対する相対移動代を確保でき、緩衝部材による緩衝性能の低下を確実に防止することができる。
またこの発明の態様として、前記移動規制手段を、前記緩衝部材の前記バネ部材側に設けられた移動規制凸部で構成することができる。
この発明により、バネ部材の緩衝部材側の径を、固定部に固定する場合よりも小径とすることができるため、緩衝装置を構成するバネ部材を小型化できるとともに、小型化したバネ部材を固定部に固定することなく係止させるだけで緩衝部材に容易に組み付けることができ、さらには、緩衝部材または固定部材に対するバネ部材の径方向への相対移動を確実に防止することができる。
またこの発明の態様として、前記バネ部材が、前記緩衝部材側が前記フランジ側より大径となる平面視渦巻状かつ正面視略錐台状の渦巻きバネで構成され、該渦巻きバネの径大な径大部が、前記固定部材の内周より径小であり、前記移動規制凸部が、前記緩衝部材の前記バネ部材側において前記固定部材の内周より径内側に設けられ、前記径大部が係止することができる。
この発明により、自然長が同等で上端から下端まで同径であるコイルバネと比較して、軸方向への縮み量が大きいため、弾性変形によって振動を緩衝する緩衝部材のカラー部材に対する相対移動代を確保でき、緩衝部材による緩衝性能の低下を確実に防止することができる。
またこの発明の態様として、前記バネ部材を、前記緩衝部材の両面に配置することができる。
この発明により、緩衝装置はより確実に安定して優れた制振性を有するとともに、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生をさらに防止することができる。
またこの発明は、上述のような緩衝装置が、交差する方向にそれぞれ延びるコルゲート形状が形成された金属製の板材に取り付けられた金属カバーであることを特徴とする。
この発明により、振動部材からの振動を緩衝装置が緩衝するため、金属カバーは振動部材の振動に共振して振動源となることなく、安定して優れた制振性を有することができるとともに、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
安定して優れた制振性を有しながら、当接音の発生を抑制できる緩衝装置、および緩衝装置を備えた金属カバーを提供することができる。
エンジンの概略正面図。
成形前のヒートインシュレータの概略斜視図。
第1実施形態における緩衝装置の説明図。
第1実施形態における緩衝装置の取付状態をあらわす概略断面図。
第1実施形態における緩衝装置の作用説明図。
他の実施形態における緩衝装置の説明図。
他の実施形態における緩衝装置の説明図。
(第1実施形態)
この発明の第1実施形態を、図1から図5を用いて説明する。
図1はエンジン2の概略正面図を示し、図2は緩衝装置10Aが取り付けられたヒートインシュレータ1Aの一部概略斜視図を示し、図3は第1実施形態における緩衝装置10Aの説明図を示している。図3について詳述すると、図3(a)は緩衝装置10Aの概略斜視図を示し、図3(b)は緩衝装置10Aの概略断面図を示している。
図4は第1実施形態における緩衝装置10Aの取付状態をあらわす概略断面図を示し、図5は第1実施形態における緩衝装置10Aの説明図を示している。図5について詳述すると、図5(a)は荷重が作用する前の緩衝装置10Aの概略断面図を示し、図5(b)は荷重が作用している状態の緩衝装置10Aの概略断面図を示している。
なお、図3から図5の図面において、上側を上方とするとともに、下側を下方とする。
ヒートインシュレータ1Aは、図1に示すように、自動車などの車両用エンジン2の側面において、燃焼排気ガスを排出するエキゾーストマニホールド3(以下、エキマニ3)を覆うように取り付けられている。
このヒートインシュレータ1Aは、図2に示すように、インシュレータ基材100に、振動を緩衝する緩衝装置10Aを取り付けて構成しており、エキマニ3に対応する形状に形成して用いられる。なお、インシュレータ基材100には上述したようにエキマニ3を覆う形状で形成され、ヒートインシュレータ1Aを構成しているが、図示を容易にするため、図2では、インシュレータ基材100を平板状で図示している。
インシュレータ基材100は、直交する長手方向および短手方向のそれぞれに沿うコルゲート形状に形成されている。
なお、ヒートインシュレータ1Aに用いるインシュレータ基材100は、コルゲート形状に形成したものに限定せず、例えば、エンボス形状や波形形状などの適宜の形状で形成してもよい。
第1実施形態における緩衝装置10Aは、図3(a)および図3(b)に示すように、略円環状に形成されており、径外側のグロメット30と、平面視中央のカラー部材40と、グロメット30とカラー部材40との間の緩衝重合部材20Aとで構成している。なお、振動を緩衝する緩衝重合部材20Aの径外側をグロメット30に固定するとともに、径内側をカラー部材40に取り付けて構成している。
緩衝装置10Aを構成する緩衝重合部材20Aは、線材を編込んで圧縮形成した圧縮メッシュ21と、平面視渦巻状に巻き回して形成した渦巻きバネ22とを上方からこの順に配置し、上下方向に重合させて構成している。
なお、緩衝重合部材20Aは、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とを上方からこの順に配置することだけに限らず、下方からこの順に配置してもよい。
圧縮メッシュ21は、ステンレス製(SUS316)の線径が0.2mmである円形断面線材をメリヤス編みに編込んで略筒状体に形成し、厚さを1.0mmまで圧縮した円環状に形成することで、バネ定数約12000N/mmの弾性変形性能を有し、湾曲変形および圧縮変形可能となる。
この圧縮メッシュ21は、外径が直径28mmに形成されるとともに、内径が直径12mmに形成され、グロメット30とカラー部材40とを径方向に架け渡す。
なお、圧縮メッシュ21を構成する線材210は、線径を0.2mm、素材をステンレス、外径を直径28mm、内径を直径12mmとすることだけに限らず適宜設定してもよい。また、圧縮メッシュ21は必ずしも圧縮形成する必要はない。
渦巻きバネ22は、円形断面線材を径方向および下方に沿って平面視渦巻状かつ正面視略錐台状に巻き回して下端よりも上端の方が大径となるように形成したバネ部材であって、上端が直径26mmに形成されるとともに、下端が直径10mmに形成され、上下方向における自然長の長さが後述するカラー部材40のフランジ42同士の間隔よりも長く形成されている。
なお、渦巻きバネ24は、上端および下端の直径が上述のように形成されたものに限定しない。
このように形成された渦巻きバネ22は、圧縮メッシュ21のバネ定数の10分の1以下であるバネ定数約0.5N/mmに設定されており、圧縮メッシュ21よりも高い変形性を有する。さらに、圧縮メッシュ21との重合状態において、渦巻きバネ22を構成する円形断面線材が圧縮メッシュ21の主面と接触し、渦巻きバネ22が圧縮メッシュ21を支持できるように、渦巻きバネ22のバネ定数を、圧縮メッシュ21のバネ定数の25000分の1以上である約24000分の1としている。
グロメット30は、金属板を平面視円環状の片断面略S字状に形成されており、緩衝重合部材20Aを保持する第1固定部31と、ヒートインシュレータ1Aを保持する第2固定部32と、第1固定部31および第2固定部32を連結する連結部33とで一体に構成されている。
第1固定部31は、連結部33より径外側に対応する金属板を下方から径内側に折り返した、径内側が開口する倒位の片断面略U字状に形成されており、重合させた圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22との径外側を連結部33とともに加締めて固定している。
一方、第2固定部32は、連結部33より径内側に対応する金属板を上方から径外側に折り返した、径外側が開口する倒位の片断面略U字状に形成されており、ヒートインシュレータ1Aを連結部33とともに加締めて固定している。
カラー部材40は、径に対して高さの低い略筒状体であり、SPCCなどの鉄系材料で構成されている。このカラー部材40は、取付ボルト50の挿通を許容する円筒状のカラー本体41と、カラー本体41の上下両端から径外側に突出する円環状のフランジ部42とを一体に構成している。
カラー本体41の外径は、直径10mmに形成されており、圧縮メッシュ21の内径より小径であり、渦巻きバネ22の内径と同等である。
上下両端に配置されるフランジ42の間隔は、上下方向における圧縮メッシュ21の厚さよりも長く、渦巻きバネ22の自然長よりも短い。つまり、フランジ42の間隔は、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とを重合させた緩衝重合部材20Aの厚み方向の長さより短く形成されている。
さらに、組み付け状態のカラー部材40には、径方向および上下方向に隙間を有する態様で圧縮メッシュ21を遊嵌するとともに、上下方向に圧縮した状態の渦巻きバネ22がカラー本体41に嵌合するように取り付けられることとなる。換言すると、渦巻きバネ22はプレストレストされた状態で緩衝装置10Aに組み付けられることとなる。
なお、カラー本体41の直径は、以上の説明において10mmに限定したが、これだけに限定せず適宜設定することができる。
上述のような緩衝装置10Aは、グロメット30の第1固定部31に緩衝重合部材20Aの径外側を固定するとともに、第2固定部32にインシュレータ基材100を固定し、カラー部材40のフランジ42同士の間に緩衝重合部材20Aの径内側が取り付けられて、組み付けられる。
詳述すると、緩衝重合部材20Aは、カラー部材40に対して、上下のフランジ42の間で遊嵌する圧縮メッシュ21と、圧縮メッシュ21を弾性変形させることなく、上下のフランジ42と圧縮メッシュ21とに挟まれ、圧縮された渦巻きバネ22とが重合されている。
換言すると、渦巻きバネ22は、弾性変形およびカラー部材40との隙間による相対移動によって、振動を吸収する緩衝材として機能する圧縮メッシュ21のカラー部材40に対する相対移動を、圧縮メッシュ21の緩衝作用を損なうことなく低減させるように、圧縮メッシュ21の主面と渦巻きバネ22を構成する円形断面線材とが接触する態様で、圧縮メッシュ21とカラー部材40との間の隙間を埋めており、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の緩衝材として機能している。
そして、緩衝装置10Aをインシュレータ基材100に取り付けて構成したヒートインシュレータ1Aは、図4に示すように、カラー部材40に挿通した取付ボルト50をエキマニ3に形成されたボス3aに螺挿されることで、エキマニ3に固定される。
上述の第1実施形態における緩衝装置10Aは、カラー部材40と圧縮メッシュ21との間の隙間において圧縮メッシュ21と重合配置されるとともに、緩衝材で構成され、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動を弾性変形によって低減させる渦巻きバネ22を設けたことで、安定して優れた制振性を有しながら、圧縮メッシュ21とカラー部材40との当接による当接音の発生を抑制することができる。
詳述すると、エンジン2の駆動あるいは車両の走行に伴うエキマニ3の振動によって、グロメット30とカラー部材40とが相対的に移動しても(図5(a)中の矢印方向)、カラー部材40に対するグロメット30の振動を、圧縮メッシュ21がカラー部材40に対して相対移動しながら弾性変形することで緩衝するとともに、カラー部材40と圧縮メッシュ21と隙間に配置される渦巻きバネ22が上下方向に縮んで吸収する(図5(b)参照)。
つまり、カラー部材40に対するグロメット30の振動を、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とが協働して緩衝することができる。
加えて、カラー部材40と圧縮メッシュ21と隙間に配置される渦巻きバネ22は、渦巻きバネ22が配置されていない場合と比較して、圧縮メッシュ21の弾性変形を阻害して緩衝性能を低下させることなく、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動(相対移動量、相対速度、相対加速度)を低下させる。
これにより、圧縮メッシュ21とカラー部材40とが当接しない、あるいは当接してもその当接力が低減するため、圧縮メッシュ21とカラー部材40との当接による当接音の発生を抑制することができる。
したがって、緩衝装置10Aは安定して優れた制振性を有しながら、圧縮メッシュ21とカラー部材40との当接による当接音の発生を抑制することができる。
さらに、線径や素材、巻きピッチなどによって緩衝材として所望の性能に合った渦巻きバネ22をバネ部材として選定することができ、簡素な構成であるとともに、高い汎用性を有することができる。
また、渦巻きバネ22のバネ定数を、圧縮メッシュ21のバネ定数の10分の1以下である約0.5N/mmに設定したことで、緩衝装置10Aの制振性能を向上させながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
詳述すると、渦巻きバネ22のバネ定数を圧縮メッシュ21のバネ定数の10分の1以下である約0.5N/mmに設定した、つまり、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とを異なるバネ定数に設定したことで、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とが異なる周波数帯域の振動にそれぞれ対応できるため、緩衝装置10Aの制振性能を向上させることができる。
さらに、渦巻きバネのバネ定数が圧縮メッシュのバネ定数の10分の1以上である場合には、圧縮メッシュと渦巻きバネとの変形性能が近似し、荷重が作用することによって渦巻きバネとともに圧縮メッシュも弾性変形して、圧縮メッシュの緩衝性能が低下するおそれがあるが、バネ定数を圧縮メッシュ21の10分の1以下である0.5N/mmに設定した渦巻きバネ22は、同等の荷重が作用した場合において、バネ定数が高い圧縮メッシュ21よりも弾性変形し易いため、カラー部材40と圧縮メッシュ21との隙間に配置した渦巻きバネ22が荷重に対して弾性変形することで圧縮メッシュ21の弾性変形を防止することができる。
つまり、圧縮メッシュ21の緩衝性能を低下させることなく、カラー部材40との当接による当接力を渦巻きバネ22の弾性変形によって吸収し、カラー部材40との当接による当接音を低減することができる。
したがって、緩衝装置10Aの制振性能を向上させながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
さらにまた、渦巻きバネのバネ定数を圧縮メッシュのバネ定数の25000分の1以下とした場合、渦巻きバネが圧縮メッシュを支持することができず、フランジと圧縮メッシュとの隙間を埋めることができない、あるいは、荷重吸収性能を奏することができないおそれがあるが、バネ定数0.5N/mmの渦巻きバネ22は、圧縮メッシュ21のバネ定数の25000分の1以上であるため、圧縮メッシュ21の主面と接触する渦巻きバネ22の円形断面線材が圧縮メッシュ21を確実に支持し、渦巻きバネ22の十分な荷重吸収機能を奏することができる。
また、渦巻きバネ22の上下方向の自然長を、カラー部材40のフランジ42同士の間隔よりも長く形成することで、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
詳述すると、渦巻きバネ22の上下方向の自然長を、カラー部材40のフランジ42同士の間隔よりも長く形成することで、バネ定数を圧縮メッシュ21よりも低く設定した渦巻きバネ22が圧縮された状態でフランジ42と圧縮メッシュ21との隙間を埋め、つまり通常状態において、圧縮メッシュ21は弾性変形することなく、渦巻きバネ22にプレストレスが作用した状態で組み付けられ、圧縮メッシュ21をフランジ42へ付勢することができる。
この場合においても圧縮メッシュ21は弾性変形していないため、圧縮メッシュ21の緩衝性能が低下することなく、エキマニ3からヒートインシュレータ1Aへの振動を圧縮メッシュ21が確実に緩衝するとともに、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
また、渦巻きバネ22を、上端が下端より大径となる平面視渦巻状かつ正面視略錐台状に形成することで、自然長が同等で上端から下端まで同径であるコイルバネと比較して、上下方向への縮み量が大きいため、弾性変形によって振動を緩衝する圧縮メッシュ21のカラー部材40に対する相対移動代を確保でき、圧縮メッシュ21による緩衝性能の低下を確実に防止することができる。
また、渦巻きバネ22における上方の径外側を、圧縮メッシュ21における径外側とともにグロメット30の第1固定部31に加締めて固定することで、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
詳述すると、第1固定部31の固定によって、圧縮メッシュ21またはグロメット30に対する相対移動を簡素な構成で確実かつ容易に規制された渦巻きバネ22は、第1固定部31に固定されていない部分によってカラー部材40に作用する径方向への相対移動を低減させることができる。したがって、径方向への振動吸収性能を確保しながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
また、ヒートインシュレータ1Aは、上述のような緩衝装置10Aをインシュレータ基材100に取り付けて構成したことで、エキマニ3からの振動を緩衝装置10Aが緩衝するため、ヒートインシュレータ1Aはエキマニ3の振動に共振して振動源となることなく、安定して優れた制振性を有することができるとともに、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生を抑制することができる。
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の金属カバーは、実施形態のヒートインシュレータ1Aに対応し、
以下同様に、
金属製の板材および囲繞部材は、インシュレータ基材100に対応し、
振動部材は、エキマニ3に対応し、
緩衝部材、及び第1緩衝部材は、圧縮メッシュ21に対応し、
バネ部材は、渦巻きバネ22に対応し、
固定部材は、グロメット30に対応し、
移動規制手段および固定部は、第1固定部31に対応し、
移動規制凸部は、後述する凸部212に対応し、
締結部材は、取付ボルト50に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、上述の第1実施形態で説明した緩衝装置10Aと異なる構成の緩衝装置10C〜10F,10J,10Kであってもよい。これら緩衝装置10C〜10F,10J,10Kについて、上述した緩衝装置10Aと同様の構成の説明を省略し、他の実施形態における緩衝装置10C〜10Fをあらわす図6及び他の実施形態における緩衝装置10J及び10Kをあらわす図7を用いて簡単に説明する。
図6について詳述すると、図6(a)は緩衝装置10Cの概略断面図を示し、図6(b)は緩衝装置10Dの概略断面図を示し、図6(c)は緩衝装置10Eの概略断面図を示し、図6(d)は緩衝装置10Fの概略断面図を示している。
図7について詳述すると、図7(a)は緩衝装置10Jの概略断面図を示し、図7(b)は緩衝装置10Kの概略断面図を示している。
緩衝装置10Cは、図6(a)に示すように、下面に底面視環状の凸部212を形成した圧縮メッシュ21Cと、渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Cを用いてもよい。この緩衝重合部材20Cは、渦巻きバネ22の外周を凸部212の内周面に係止して構成している。
また、緩衝装置10Dは、図6(b)に示すように、下面に底面視環状で溝状の凹部213を形成した圧縮メッシュ21Dと、渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Dを用いてもよい。この緩衝重合部材20Dは、渦巻きバネ22の上端を凹部213に嵌合させて構成している。なお、凹部213は、線材を編込むことで形成される編目凹部とは異なり、積極的に形成した環状の溝である。
また、緩衝装置10Eは、図6(c)に示すように、圧縮メッシュ21Cと、圧縮メッシュ21Cの上下両面に配置した1組の渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Eを用いてもよい。この緩衝重合部材20Eは、下方の渦巻きバネ22を第1固定部31で固定するとともに、上方の渦巻きバネ22を上面に設けた凸部212に係止している。
また、緩衝装置10Fは、図6(d)に示すように、圧縮メッシュ21と、圧縮メッシュ21の下面に配置した倒位の渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Fを用いてもよい。この場合、カラー部材40Fは、カラー本体41の上端のフランジ42よりも大径のフランジ42Fを下端に配置し、フランジ42Fの上面に凸部421を設け、子の凸部421に渦巻きバネ22の下端を係止させる。
以上のように構成した緩衝装置10C〜10Fは、渦巻きバネ22を小型化して圧縮メッシュ21に容易に組み付けることができ、さらには、上述した第1実施形態における緩衝装置10Aと同様、圧縮メッシュ21C,21Dやグロメット30に対する渦巻きバネ22の径方向への相対移動を確実に防止することができる。
上述のようにグロメット30を用いてインシュレータ基材100と圧縮メッシュ21とを連結し、圧縮メッシュ21とフランジ42との間の隙間に渦巻きバネ22を配置する態様の緩衝装置10A〜10Fとは異なり、以下で説明する緩衝装置10J及び10Kは、フランジ42同士の間において、インシュレータ基材100と、圧縮メッシュ21Jと、渦巻きバネ22Jとをこの順にサンドイッチ状に重合させてもよい。
詳述すると、緩衝装置10Jは、図7(a)に示すように、インシュレータ基材100の下面に配置した圧縮メッシュ21と、圧縮メッシュ21Jの下面に配置した渦巻きバネ22Jとで構成した緩衝重合部材20Jを、インシュレータ基材100とともにフランジ42同士の間に配置してもよい。
この場合、緩衝重合部材20Jは、圧縮メッシュ21Jの下面に設けた凸部212に渦巻きバネ22Jの上端を係止して構成している。
もちろん、図7(b)に示すように、インシュレータ基材100を介して上記緩衝重合部材20Jを板厚方向に対称配置させて緩衝装置10Kを構成してもよい。
以上のように構成した緩衝装置10J及び10Kは、インシュレータ基材100を圧縮メッシュ21Jで緩衝するとともに、圧縮メッシュ21Jのカラー部材40に対する相対移動を渦巻きバネ22Jによって低減するため、上述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記圧縮メッシュ21は、ステンレス製(SUS316)の線材を用いることのみならず、例えば、タングステン、モリブデン、アルミニウム、鉄、ニッケル、および銅などで構成した線材であってもよく、さらには、素材自体に制振性を有する鉄アルミなど、いろいろな機能や特性を有する金属製の素材を用いてもよい。
1A…ヒートインシュレータ
100…インシュレータ基材
3…エキマニ
10A,10C〜10F,10J,10K…緩衝装置
21,21C,21D,21J…圧縮メッシュ
210…第1線材
212…凸部
22…渦巻きバネ
30…グロメット
31…第1固定部
40,40F…カラー部材
41…カラー本体
42,42F…フランジ
50…取付ボルト
この発明は、例えば、ヒートインシュレータと、内燃機関のエキゾーストマニホールドとの取付部分に用いられる緩衝装置、および緩衝装置を備えた金属カバーに関する。
従来より、エンジンから排出される燃焼排気ガスが内部を通過するエキゾーストマニホールドは、燃焼排気ガスの通過に伴って熱が周辺へ伝播することを抑制するためのヒートインシュレータに覆われている。このエキゾーストマニホールドは、熱を発することだけでなく、エンジンの振動や脈動する燃焼排気ガスの通過によって振動音を発する。
このようなエキゾーストマニホールド(以下、振動部材)に、ヒートインシュレータ(以下、囲繞部材)を直接取り付けると、振動部材の振動に共振して囲繞部材自体が振動源となり、振動音が大きくなるおそれがあるため、例えば、振動部材と囲繞部材との取付部分に用いられる緩衝装置が特許文献1に開示されている。
特許文献1に記載の緩衝装置は、囲繞部材に固定される固定部材と、取付ボルトなどの締結部材によって振動部材に固定されるカラー部材との間に、金属線をメッシュ状に編込み、それを平板なマット状に形成した円環状の緩衝部材を介在させて構成されている。
この緩衝装置は、固定部材と緩衝部材とが固定されている一方、カラー部材と緩衝部材との間に遊動可能な隙間が設けられているため、振動部材から付加された振動のカラー部材から緩衝部材への伝達を抑制し、優れた制振性を有するとされている。
しかし、制振性向上のためにカラー部材と緩衝部材との間に隙間を設けたことにより、カラー部材に対して緩衝部材が相対移動して、緩衝部材がカラー部材に当接することでカタカタと鳴る当接音が、近年普及しているハイブリット車両のモーター駆動時において、異音として搭乗者に聞こえるおそれがあった。
そこで本発明は、安定して優れた制振性を有しながら、当接音の発生を抑制できる緩衝装置、および緩衝装置を備えた金属カバーを提供することを目的とする。
この発明は、振動源である振動部材と、該振動部材を覆う囲繞部材とを連結し、前記振動部材から前記囲繞部材への振動を緩衝する緩衝装置であって、締結部材によって前記振動部材に固定される略筒状のカラー本体、および該カラー本体の軸方向両側から径外側に突出する環状のフランジが備えられたカラー部材と、金属製の線材を編込んで形成され、前記カラー部材および前記囲繞部材の間に配置されるとともに、前記カラー部材に遊嵌する環状の緩衝材で構成された緩衝部材と、前記囲繞部材に固定されるとともに、前記緩衝部材の外周側を固定する環状の固定部材とで構成され、前記緩衝部材の内周側が前記カラー部材に遊嵌され、前記カラー部材と前記緩衝部材との間の隙間において前記緩衝部材と重合配置されるとともに、緩衝材で構成され、前記カラー部材に対する前記緩衝部材の相対移動を弾性変形によって低減させるバネ部材が設けられたことを特徴とする。
上記金属製の線材は、例えば、ステンレス、タングステン、モリブデン、アルミニウム、鉄、ニッケル、および銅などで形成した線材や、素材自体に制振性を有する鉄アルミで形成した線材など、いろいろな機能や特性を有する金属製素材を含むものとする。
上記軸方向は、緩衝部材およびバネ部材の厚み方向と同方向である。
上述の前記カラー部材および前記囲繞部材の間に配置される緩衝部材とは、例えば、間隔を隔てて配置したカラー部材と囲繞部材とを架け渡す緩衝部材、あるいは、カラー部材のフランジと囲繞部材とにサンドイッチ状に挟み込まれる緩衝部材などを含むものとする。なお、間隔を隔てて配置したカラー部材と囲繞部材とを架け渡す場合の緩衝部材は、別部材を用いて囲繞部材とカラー部材とを架け渡してもよい。
上記緩衝材は、厚み方向に湾曲する湾曲変形、厚み方向に圧縮する圧縮変形、面方向に伸縮する伸縮変形、あるいはこれらの組み合わせ変形などの弾性変形が可能なバネ部材を含むものである。なお、面方向は、厚み方向に直交する方向を指す。
上述のカラー部材と緩衝部材との間の隙間とは、カラー部材のフランジと緩衝部材との厚み方向の隙間、およびカラー部材のカラー本体と緩衝部材との径方向の隙間のうち少なくとも一方を含むものとする。
上述の相対移動を低減するとは、カラー部材に対する緩衝部材の厚み方向および径方向の少なくとも一方の方向の相対移動における移動量を低減すること、相対移動における移動速度を低下させること、さらには、相対移動における移動加速度を低下させること、あるいはこれらの組み合わせを含むものとする。
上記バネ部材は、例えば渦巻きバネ、コイルバネ、板バネなどを含むものとする。
この発明により、緩衝装置は安定して優れた制振性を奏しながら、当接音の発生を抑制することができる。
詳述すると、緩衝部材が弾性変形して、振動部材から付加された振動のカラー部材から緩衝部材への伝達を抑制することで囲繞部材への振動を緩衝することに加え、緩衝部材の緩衝作用を阻害することなく、カラー部材と緩衝部材と隙間に配置されるバネ部材がカラー部材に対する緩衝部材の相対移動を弾性変形によって減少させることとなる。
これにより、緩衝部材の緩衝性能を低下させることなく、カラー部材に対する緩衝部材の相対移動を低下させ、緩衝部材がカラー部材に当接することを防止する、あるいは当接しても当該当接による衝撃を緩和させることができる。
つまり、緩衝部材とカラー部材との当接力が低減するため、緩衝部材とカラー部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
したがって、緩衝装置は安定して優れた制振性を有しながら、緩衝部材とカラー部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
また、前記囲繞部材に固定されるとともに、前記緩衝部材の外周側を固定する環状の固定部材が備えられ、前記緩衝部材の内周側を前記カラー部材に遊嵌するため、緩衝装置の緩衝性能を向上することができる。
詳述すると、固定部材に外周側を固定される緩衝部材は、内周側がカラー部材に遊嵌されているため、固定部材を介して囲繞部材とカラー部材とを径方向に架け渡す態様となる。
つまり、緩衝部材は、湾曲による弾性変形を容易に行うことができるため、振動部材から囲繞部材への振動を効率良く緩衝することができる。
したがって、緩衝装置の緩衝性能を向上することができる。
また、線材の線径や素材、あるいはピッチなどにより所望の性能に合ったバネ部材を用いることができるため、汎用性を向上させることができる。
またこの発明の態様として、前記バネ部材のバネ定数を、前記緩衝部材のバネ定数の10分の1以下に設定することができる。
この発明により、緩衝装置の制振性能を向上させながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
詳述すると、バネ部材のバネ定数を緩衝部材のバネ定数の10分の1以下に設定する、つまり、バネ部材と緩衝部材とを異なるバネ定数に設定することで、緩衝部材とバネ部材とが異なる周波数帯域の振動にそれぞれ対応できるため、緩衝装置の制振性能を向上させることができる。
さらに、バネ部材のバネ定数が緩衝部材のバネ定数の10分の1以上である場合には、バネ部材と緩衝部材との変形性能が近似し、荷重が作用することによってバネ部材とともに緩衝部材も弾性変形して、緩衝部材の緩衝性能が低下するおそれがあるが、バネ定数を緩衝部材の10分の1以下に設定したバネ部材は、同等の荷重が作用した場合において、バネ定数が高い緩衝部材よりも弾性変形し易いため、カラー部材と緩衝部材との隙間に配置したバネ部材が荷重に対して弾性変形することで緩衝部材の弾性変形を防止することができる。
つまり、緩衝部材の緩衝性能を低下させることなく、カラー部材との当接による当接力をバネ部材の弾性変形によって吸収し、カラー部材との当接による当接音を低減することができる。
したがって、緩衝装置の制振性能を向上させながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
またこの発明の態様として、自然長の前記バネ部材と前記緩衝部材とが重合された厚みが、前記フランジ同士の間隔よりも厚くてもよい。
上記重合状態とは、緩衝部材に対してバネ部材の少なくとも一部が厚み方向に接する状態を指す。
この発明により、カラー部材に対する緩衝部材の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
詳述すると、自然長の前記バネ部材と前記緩衝部材とが重合された厚みを、フランジ同士の間隔よりも厚く形成することで、バネ定数を緩衝部材よりも低く設定したバネ部材が圧縮された状態でフランジと緩衝部材との隙間を埋め、つまり通常状態において、緩衝部材は弾性変形することなく、バネ部材にプレストレスが作用した状態で組み付けられ、緩衝部材をカラー部材へ付勢することができる。
この場合においても緩衝部材は弾性変形していないため、緩衝部材の緩衝性能を低下させることなく、振動部材から囲繞部材への振動を緩衝部材が確実に緩衝するとともに、カラー部材に対する緩衝部材の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
またこの発明の態様として、前記バネ部材の前記緩衝部材側における端部の径方向への相対移動を規制する移動規制手段を設けることができる。
上記移動規制手段は、例えば、バネ部材の緩衝部材側を固定する固定部材の固定部、あるいはバネ部材の緩衝部材側を係止させる緩衝部材に設けた凸部や凹部などを含むものとする。なお、緩衝部材に設けた凸部は、緩衝部材の一部で構成した凸部、緩衝部材と一体的に設けた凸部、あるいは、緩衝部材と別体で設けた凸部とすることができる。
この発明により、優れた制振性能を奏するとともに、カラー部材と緩衝部材との径方向の当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
詳述すると、緩衝部材または固定部材に対する相対移動を規制されたバネ部材は、緩衝部材側を基端として自由端となるフランジ側によってカラー部材に作用する径方向への相対移動を低減させることができる。したがって、軸方向の振動吸収性能に加えて、径方向への振動吸収性能を確保しながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
またこの発明の態様として、前記移動規制手段を、前記緩衝部材の径外側とともに前記バネ部材の前記緩衝部材側を固定する前記固定部材の固定部で構成することができる。
この発明により、緩衝装置の組み付けによって、緩衝部材または固定部材に対するバネ部材の径方向への相対移動を、簡素な構成で確実かつ容易に防止することができる。
またこの発明の態様として、前記バネ部材を、前記緩衝部材側が前記フランジ側より大径となる平面視渦巻状かつ正面視略錐台状の渦巻きバネで構成することができる。
この発明により、自然長が同等で上端から下端まで同径であるコイルバネと比較して、軸方向への縮み量が大きいため、弾性変形によって振動を緩衝する緩衝部材のカラー部材に対する相対移動代を確保でき、緩衝部材による緩衝性能の低下を確実に防止することができる。
またこの発明の態様として、前記移動規制手段を、前記緩衝部材の前記バネ部材側に設けられた移動規制凸部で構成することができる。
この発明により、バネ部材の緩衝部材側の径を、固定部に固定する場合よりも小径とすることができるため、緩衝装置を構成するバネ部材を小型化できるとともに、小型化したバネ部材を固定部に固定することなく係止させるだけで緩衝部材に容易に組み付けることができ、さらには、緩衝部材または固定部材に対するバネ部材の径方向への相対移動を確実に防止することができる。
またこの発明の態様として、前記バネ部材が、前記緩衝部材側が前記フランジ側より大径となる平面視渦巻状かつ正面視略錐台状の渦巻きバネで構成され、該渦巻きバネの径大な径大部が、前記固定部材の内周より径小であり、前記移動規制凸部が、前記緩衝部材の前記バネ部材側において前記固定部材の内周より径内側に設けられ、前記径大部が係止することができる。
この発明により、自然長が同等で上端から下端まで同径であるコイルバネと比較して、軸方向への縮み量が大きいため、弾性変形によって振動を緩衝する緩衝部材のカラー部材に対する相対移動代を確保でき、緩衝部材による緩衝性能の低下を確実に防止することができる。
またこの発明の態様として、前記バネ部材を、前記緩衝部材の両面に配置することができる。
この発明により、緩衝装置はより確実に安定して優れた制振性を有するとともに、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生をさらに防止することができる。
またこの発明は、上述のような緩衝装置が、交差する方向にそれぞれ延びるコルゲート形状が形成された金属製の板材に取り付けられた金属カバーであることを特徴とする。
この発明により、振動部材からの振動を緩衝装置が緩衝するため、金属カバーは振動部材の振動に共振して振動源となることなく、安定して優れた制振性を有することができるとともに、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
安定して優れた制振性を有しながら、当接音の発生を抑制できる緩衝装置、および緩衝装置を備えた金属カバーを提供することができる。
エンジンの概略正面図。
成形前のヒートインシュレータの概略斜視図。
第1実施形態における緩衝装置の説明図。
第1実施形態における緩衝装置の取付状態をあらわす概略断面図。
第1実施形態における緩衝装置の作用説明図。
他の実施形態における緩衝装置の説明図。
他の実施形態における緩衝装置の説明図。
(第1実施形態)
この発明の第1実施形態を、図1から図5を用いて説明する。
図1はエンジン2の概略正面図を示し、図2は緩衝装置10Aが取り付けられたヒートインシュレータ1Aの一部概略斜視図を示し、図3は第1実施形態における緩衝装置10Aの説明図を示している。図3について詳述すると、図3(a)は緩衝装置10Aの概略斜視図を示し、図3(b)は緩衝装置10Aの概略断面図を示している。
図4は第1実施形態における緩衝装置10Aの取付状態をあらわす概略断面図を示し、図5は第1実施形態における緩衝装置10Aの説明図を示している。図5について詳述すると、図5(a)は荷重が作用する前の緩衝装置10Aの概略断面図を示し、図5(b)は荷重が作用している状態の緩衝装置10Aの概略断面図を示している。
なお、図3から図5の図面において、上側を上方とするとともに、下側を下方とする。
ヒートインシュレータ1Aは、図1に示すように、自動車などの車両用エンジン2の側面において、燃焼排気ガスを排出するエキゾーストマニホールド3(以下、エキマニ3)を覆うように取り付けられている。
このヒートインシュレータ1Aは、図2に示すように、インシュレータ基材100に、振動を緩衝する緩衝装置10Aを取り付けて構成しており、エキマニ3に対応する形状に形成して用いられる。なお、インシュレータ基材100には上述したようにエキマニ3を覆う形状で形成され、ヒートインシュレータ1Aを構成しているが、図示を容易にするため、図2では、インシュレータ基材100を平板状で図示している。
インシュレータ基材100は、直交する長手方向および短手方向のそれぞれに沿うコルゲート形状に形成されている。
なお、ヒートインシュレータ1Aに用いるインシュレータ基材100は、コルゲート形状に形成したものに限定せず、例えば、エンボス形状や波形形状などの適宜の形状で形成してもよい。
第1実施形態における緩衝装置10Aは、図3(a)および図3(b)に示すように、略円環状に形成されており、径外側のグロメット30と、平面視中央のカラー部材40と、グロメット30とカラー部材40との間の緩衝重合部材20Aとで構成している。なお、振動を緩衝する緩衝重合部材20Aの径外側をグロメット30に固定するとともに、径内側をカラー部材40に取り付けて構成している。
緩衝装置10Aを構成する緩衝重合部材20Aは、線材を編込んで圧縮形成した圧縮メッシュ21と、平面視渦巻状に巻き回して形成した渦巻きバネ22とを上方からこの順に配置し、上下方向に重合させて構成している。
なお、緩衝重合部材20Aは、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とを上方からこの順に配置することだけに限らず、下方からこの順に配置してもよい。
圧縮メッシュ21は、ステンレス製(SUS316)の線径が0.2mmである円形断面線材をメリヤス編みに編込んで略筒状体に形成し、厚さを1.0mmまで圧縮した円環状に形成することで、バネ定数約12000N/mmの弾性変形性能を有し、湾曲変形および圧縮変形可能となる。
この圧縮メッシュ21は、外径が直径28mmに形成されるとともに、内径が直径12mmに形成され、グロメット30とカラー部材40とを径方向に架け渡す。
なお、圧縮メッシュ21を構成する線材210は、線径を0.2mm、素材をステンレス、外径を直径28mm、内径を直径12mmとすることだけに限らず適宜設定してもよい。また、圧縮メッシュ21は必ずしも圧縮形成する必要はない。
渦巻きバネ22は、円形断面線材を径方向および下方に沿って平面視渦巻状かつ正面視略錐台状に巻き回して下端よりも上端の方が大径となるように形成したバネ部材であって、上端が直径26mmに形成されるとともに、下端が直径10mmに形成され、上下方向における自然長の長さが後述するカラー部材40のフランジ42同士の間隔よりも長く形成されている。
なお、渦巻きバネ24は、上端および下端の直径が上述のように形成されたものに限定しない。
このように形成された渦巻きバネ22は、圧縮メッシュ21のバネ定数の10分の1以下であるバネ定数約0.5N/mmに設定されており、圧縮メッシュ21よりも高い変形性を有する。さらに、圧縮メッシュ21との重合状態において、渦巻きバネ22を構成する円形断面線材が圧縮メッシュ21の主面と接触し、渦巻きバネ22が圧縮メッシュ21を支持できるように、渦巻きバネ22のバネ定数を、圧縮メッシュ21のバネ定数の25000分の1以上である約24000分の1としている。
グロメット30は、金属板を平面視円環状の片断面略S字状に形成されており、緩衝重合部材20Aを保持する第1固定部31と、ヒートインシュレータ1Aを保持する第2固定部32と、第1固定部31および第2固定部32を連結する連結部33とで一体に構成されている。
第1固定部31は、連結部33より径外側に対応する金属板を下方から径内側に折り返した、径内側が開口する倒位の片断面略U字状に形成されており、重合させた圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22との径外側を連結部33とともに加締めて固定している。
一方、第2固定部32は、連結部33より径内側に対応する金属板を上方から径外側に折り返した、径外側が開口する倒位の片断面略U字状に形成されており、ヒートインシュレータ1Aを連結部33とともに加締めて固定している。
カラー部材40は、径に対して高さの低い略筒状体であり、SPCCなどの鉄系材料で構成されている。このカラー部材40は、取付ボルト50の挿通を許容する円筒状のカラー本体41と、カラー本体41の上下両端から径外側に突出する円環状のフランジ部42とを一体に構成している。
カラー本体41の外径は、直径10mmに形成されており、圧縮メッシュ21の内径より小径であり、渦巻きバネ22の内径と同等である。
上下両端に配置されるフランジ42の間隔は、上下方向における圧縮メッシュ21の厚さよりも長く、渦巻きバネ22の自然長よりも短い。つまり、フランジ42の間隔は、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とを重合させた緩衝重合部材20Aの厚み方向の長さより短く形成されている。
さらに、組み付け状態のカラー部材40には、径方向および上下方向に隙間を有する態様で圧縮メッシュ21を遊嵌するとともに、上下方向に圧縮した状態の渦巻きバネ22がカラー本体41に嵌合するように取り付けられることとなる。換言すると、渦巻きバネ22はプレストレストされた状態で緩衝装置10Aに組み付けられることとなる。
なお、カラー本体41の直径は、以上の説明において10mmに限定したが、これだけに限定せず適宜設定することができる。
上述のような緩衝装置10Aは、グロメット30の第1固定部31に緩衝重合部材20Aの径外側を固定するとともに、第2固定部32にインシュレータ基材100を固定し、カラー部材40のフランジ42同士の間に緩衝重合部材20Aの径内側が取り付けられて、組み付けられる。
詳述すると、緩衝重合部材20Aは、カラー部材40に対して、上下のフランジ42の間で遊嵌する圧縮メッシュ21と、圧縮メッシュ21を弾性変形させることなく、上下のフランジ42と圧縮メッシュ21とに挟まれ、圧縮された渦巻きバネ22とが重合されている。
換言すると、渦巻きバネ22は、弾性変形およびカラー部材40との隙間による相対移動によって、振動を吸収する緩衝材として機能する圧縮メッシュ21のカラー部材40に対する相対移動を、圧縮メッシュ21の緩衝作用を損なうことなく低減させるように、圧縮メッシュ21の主面と渦巻きバネ22を構成する円形断面線材とが接触する態様で、圧縮メッシュ21とカラー部材40との間の隙間を埋めており、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の緩衝材として機能している。
そして、緩衝装置10Aをインシュレータ基材100に取り付けて構成したヒートインシュレータ1Aは、図4に示すように、カラー部材40に挿通した取付ボルト50をエキマニ3に形成されたボス3aに螺挿されることで、エキマニ3に固定される。
上述の第1実施形態における緩衝装置10Aは、カラー部材40と圧縮メッシュ21との間の隙間において圧縮メッシュ21と重合配置されるとともに、緩衝材で構成され、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動を弾性変形によって低減させる渦巻きバネ22を設けたことで、安定して優れた制振性を有しながら、圧縮メッシュ21とカラー部材40との当接による当接音の発生を抑制することができる。
詳述すると、エンジン2の駆動あるいは車両の走行に伴うエキマニ3の振動によって、グロメット30とカラー部材40とが相対的に移動しても(図5(a)中の矢印方向)、カラー部材40に対するグロメット30の振動を、圧縮メッシュ21がカラー部材40に対して相対移動しながら弾性変形することで緩衝するとともに、カラー部材40と圧縮メッシュ21と隙間に配置される渦巻きバネ22が上下方向に縮んで吸収する(図5(b)参照)。
つまり、カラー部材40に対するグロメット30の振動を、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とが協働して緩衝することができる。
加えて、カラー部材40と圧縮メッシュ21と隙間に配置される渦巻きバネ22は、渦巻きバネ22が配置されていない場合と比較して、圧縮メッシュ21の弾性変形を阻害して緩衝性能を低下させることなく、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動(相対移動量、相対速度、相対加速度)を低下させる。
これにより、圧縮メッシュ21とカラー部材40とが当接しない、あるいは当接してもその当接力が低減するため、圧縮メッシュ21とカラー部材40との当接による当接音の発生を抑制することができる。
したがって、緩衝装置10Aは安定して優れた制振性を有しながら、圧縮メッシュ21とカラー部材40との当接による当接音の発生を抑制することができる。
さらに、線径や素材、巻きピッチなどによって緩衝材として所望の性能に合った渦巻きバネ22をバネ部材として選定することができ、簡素な構成であるとともに、高い汎用性を有することができる。
また、渦巻きバネ22のバネ定数を、圧縮メッシュ21のバネ定数の10分の1以下である約0.5N/mmに設定したことで、緩衝装置10Aの制振性能を向上させながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
詳述すると、渦巻きバネ22のバネ定数を圧縮メッシュ21のバネ定数の10分の1以下である約0.5N/mmに設定した、つまり、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とを異なるバネ定数に設定したことで、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とが異なる周波数帯域の振動にそれぞれ対応できるため、緩衝装置10Aの制振性能を向上させることができる。
さらに、渦巻きバネのバネ定数が圧縮メッシュのバネ定数の10分の1以上である場合には、圧縮メッシュと渦巻きバネとの変形性能が近似し、荷重が作用することによって渦巻きバネとともに圧縮メッシュも弾性変形して、圧縮メッシュの緩衝性能が低下するおそれがあるが、バネ定数を圧縮メッシュ21の10分の1以下である0.5N/mmに設定した渦巻きバネ22は、同等の荷重が作用した場合において、バネ定数が高い圧縮メッシュ21よりも弾性変形し易いため、カラー部材40と圧縮メッシュ21との隙間に配置した渦巻きバネ22が荷重に対して弾性変形することで圧縮メッシュ21の弾性変形を防止することができる。
つまり、圧縮メッシュ21の緩衝性能を低下させることなく、カラー部材40との当接による当接力を渦巻きバネ22の弾性変形によって吸収し、カラー部材40との当接による当接音を低減することができる。
したがって、緩衝装置10Aの制振性能を向上させながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
さらにまた、渦巻きバネのバネ定数を圧縮メッシュのバネ定数の25000分の1以下とした場合、渦巻きバネが圧縮メッシュを支持することができず、フランジと圧縮メッシュとの隙間を埋めることができない、あるいは、荷重吸収性能を奏することができないおそれがあるが、バネ定数0.5N/mmの渦巻きバネ22は、圧縮メッシュ21のバネ定数の25000分の1以上であるため、圧縮メッシュ21の主面と接触する渦巻きバネ22の円形断面線材が圧縮メッシュ21を確実に支持し、渦巻きバネ22の十分な荷重吸収機能を奏することができる。
また、渦巻きバネ22の上下方向の自然長を、カラー部材40のフランジ42同士の間隔よりも長く形成することで、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
詳述すると、渦巻きバネ22の上下方向の自然長を、カラー部材40のフランジ42同士の間隔よりも長く形成することで、バネ定数を圧縮メッシュ21よりも低く設定した渦巻きバネ22が圧縮された状態でフランジ42と圧縮メッシュ21との隙間を埋め、つまり通常状態において、圧縮メッシュ21は弾性変形することなく、渦巻きバネ22にプレストレスが作用した状態で組み付けられ、圧縮メッシュ21をフランジ42へ付勢することができる。
この場合においても圧縮メッシュ21は弾性変形していないため、圧縮メッシュ21の緩衝性能が低下することなく、エキマニ3からヒートインシュレータ1Aへの振動を圧縮メッシュ21が確実に緩衝するとともに、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
また、渦巻きバネ22を、上端が下端より大径となる平面視渦巻状かつ正面視略錐台状に形成することで、自然長が同等で上端から下端まで同径であるコイルバネと比較して、上下方向への縮み量が大きいため、弾性変形によって振動を緩衝する圧縮メッシュ21のカラー部材40に対する相対移動代を確保でき、圧縮メッシュ21による緩衝性能の低下を確実に防止することができる。
また、渦巻きバネ22における上方の径外側を、圧縮メッシュ21における径外側とともにグロメット30の第1固定部31に加締めて固定することで、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
詳述すると、第1固定部31の固定によって、圧縮メッシュ21またはグロメット30に対する相対移動を簡素な構成で確実かつ容易に規制された渦巻きバネ22は、第1固定部31に固定されていない部分によってカラー部材40に作用する径方向への相対移動を低減させることができる。したがって、径方向への振動吸収性能を確保しながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
また、ヒートインシュレータ1Aは、上述のような緩衝装置10Aをインシュレータ基材100に取り付けて構成したことで、エキマニ3からの振動を緩衝装置10Aが緩衝するため、ヒートインシュレータ1Aはエキマニ3の振動に共振して振動源となることなく、安定して優れた制振性を有することができるとともに、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生を抑制することができる。
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の金属カバーは、実施形態のヒートインシュレータ1Aに対応し、
以下同様に、
金属製の板材および囲繞部材は、インシュレータ基材100に対応し、
振動部材は、エキマニ3に対応し、
緩衝部材、及び第1緩衝部材は、圧縮メッシュ21に対応し、
バネ部材は、渦巻きバネ22に対応し、
固定部材は、グロメット30に対応し、
移動規制手段および固定部は、第1固定部31に対応し、
移動規制凸部は、後述する凸部212に対応し、
締結部材は、取付ボルト50に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、上述の第1実施形態で説明した緩衝装置10Aと異なる構成の緩衝装置10C〜10F,10J,10Kであってもよい。これら緩衝装置10C〜10F,10J,10Kについて、上述した緩衝装置10Aと同様の構成の説明を省略し、他の実施形態における緩衝装置10C〜10Fをあらわす図6及び他の実施形態における緩衝装置10J及び10Kをあらわす図7を用いて簡単に説明する。
図6について詳述すると、図6(a)は緩衝装置10Cの概略断面図を示し、図6(b)は緩衝装置10Dの概略断面図を示し、図6(c)は緩衝装置10Eの概略断面図を示し、図6(d)は緩衝装置10Fの概略断面図を示している。
図7について詳述すると、図7(a)は緩衝装置10Jの概略断面図を示し、図7(b)は緩衝装置10Kの概略断面図を示している。
緩衝装置10Cは、図6(a)に示すように、下面に底面視環状の凸部212を形成した圧縮メッシュ21Cと、渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Cを用いてもよい。この緩衝重合部材20Cは、渦巻きバネ22の外周を凸部212の内周面に係止して構成している。
また、緩衝装置10Dは、図6(b)に示すように、下面に底面視環状で溝状の凹部213を形成した圧縮メッシュ21Dと、渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Dを用いてもよい。この緩衝重合部材20Dは、渦巻きバネ22の上端を凹部213に嵌合させて構成している。なお、凹部213は、線材を編込むことで形成される編目凹部とは異なり、積極的に形成した環状の溝である。
また、緩衝装置10Eは、図6(c)に示すように、圧縮メッシュ21Cと、圧縮メッシュ21Cの上下両面に配置した1組の渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Eを用いてもよい。この緩衝重合部材20Eは、下方の渦巻きバネ22を第1固定部31で固定するとともに、上方の渦巻きバネ22を上面に設けた凸部212に係止している。
また、緩衝装置10Fは、図6(d)に示すように、圧縮メッシュ21と、圧縮メッシュ21の下面に配置した倒位の渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Fを用いてもよい。この場合、カラー部材40Fは、カラー本体41の上端のフランジ42よりも大径のフランジ42Fを下端に配置し、フランジ42Fの上面に凸部421を設け、子の凸部421に渦巻きバネ22の下端を係止させる。
以上のように構成した緩衝装置10C〜10Fは、渦巻きバネ22を小型化して圧縮メッシュ21に容易に組み付けることができ、さらには、上述した第1実施形態における緩衝装置10Aと同様、圧縮メッシュ21C,21Dやグロメット30に対する渦巻きバネ22の径方向への相対移動を確実に防止することができる。
上述のようにグロメット30を用いてインシュレータ基材100と圧縮メッシュ21とを連結し、圧縮メッシュ21とフランジ42との間の隙間に渦巻きバネ22を配置する態様の緩衝装置10A〜10Fとは異なり、以下で説明する緩衝装置10J及び10Kは、フランジ42同士の間において、インシュレータ基材100と、圧縮メッシュ21Jと、渦巻きバネ22Jとをこの順にサンドイッチ状に重合させてもよい。
詳述すると、緩衝装置10Jは、図7(a)に示すように、インシュレータ基材100の下面に配置した圧縮メッシュ21と、圧縮メッシュ21Jの下面に配置した渦巻きバネ22Jとで構成した緩衝重合部材20Jを、インシュレータ基材100とともにフランジ42同士の間に配置してもよい。
この場合、緩衝重合部材20Jは、圧縮メッシュ21Jの下面に設けた凸部212に渦巻きバネ22Jの上端を係止して構成している。
もちろん、図7(b)に示すように、インシュレータ基材100を介して上記緩衝重合部材20Jを板厚方向に対称配置させて緩衝装置10Kを構成してもよい。
以上のように構成した緩衝装置10J及び10Kは、インシュレータ基材100を圧縮メッシュ21Jで緩衝するとともに、圧縮メッシュ21Jのカラー部材40に対する相対移動を渦巻きバネ22Jによって低減するため、上述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記圧縮メッシュ21は、ステンレス製(SUS316)の線材を用いることのみならず、例えば、タングステン、モリブデン、アルミニウム、鉄、ニッケル、および銅などで構成した線材であってもよく、さらには、素材自体に制振性を有する鉄アルミなど、いろいろな機能や特性を有する金属製の素材を用いてもよい。
1A…ヒートインシュレータ
100…インシュレータ基材
3…エキマニ
10A,10C〜10F,10J,10K…緩衝装置
21,21C,21D,21J…圧縮メッシュ
210…第1線材
212…凸部
22…渦巻きバネ
30…グロメット
31…第1固定部
40,40F…カラー部材
41…カラー本体
42,42F…フランジ
50…取付ボルト
この発明は、例えば、ヒートインシュレータと、内燃機関のエキゾーストマニホールドとの取付部分に用いられる緩衝装置、および緩衝装置を備えた金属カバーに関する。
従来より、エンジンから排出される燃焼排気ガスが内部を通過するエキゾーストマニホールドは、燃焼排気ガスの通過に伴って熱が周辺へ伝播することを抑制するためのヒートインシュレータに覆われている。このエキゾーストマニホールドは、熱を発することだけでなく、エンジンの振動や脈動する燃焼排気ガスの通過によって振動音を発する。
このようなエキゾーストマニホールド(以下、振動部材)に、ヒートインシュレータ(以下、囲繞部材)を直接取り付けると、振動部材の振動に共振して囲繞部材自体が振動源となり、振動音が大きくなるおそれがあるため、例えば、振動部材と囲繞部材との取付部分に用いられる緩衝装置が特許文献1に開示されている。
特許文献1に記載の緩衝装置は、囲繞部材に固定される固定部材と、取付ボルトなどの締結部材によって振動部材に固定されるカラー部材との間に、金属線をメッシュ状に編込み、それを平板なマット状に形成した円環状の緩衝部材を介在させて構成されている。
この緩衝装置は、固定部材と緩衝部材とが固定されている一方、カラー部材と緩衝部材との間に遊動可能な隙間が設けられているため、振動部材から付加された振動のカラー部材から緩衝部材への伝達を抑制し、優れた制振性を有するとされている。
しかし、制振性向上のためにカラー部材と緩衝部材との間に隙間を設けたことにより、カラー部材に対して緩衝部材が相対移動して、緩衝部材がカラー部材に当接することでカタカタと鳴る当接音が、近年普及しているハイブリット車両のモーター駆動時において、異音として搭乗者に聞こえるおそれがあった。
そこで本発明は、安定して優れた制振性を有しながら、当接音の発生を抑制できる緩衝装置、および緩衝装置を備えた金属カバーを提供することを目的とする。
この発明は、振動源である振動部材と、該振動部材を覆う囲繞部材とを連結し、前記振動部材から前記囲繞部材への振動を緩衝する緩衝装置であって、締結部材によって前記振動部材に固定される略筒状のカラー本体、および該カラー本体の軸方向両側から径外側に突出する環状のフランジが備えられたカラー部材と、金属製の線材を編込んで形成され、前記カラー部材および前記囲繞部材の間に配置されるとともに、前記カラー部材に遊嵌する環状の緩衝材で構成された緩衝部材と、前記囲繞部材に固定されるとともに、前記緩衝部材の外周側を固定する環状の固定部材とで構成され、前記緩衝部材の内周側が前記カラー部材に遊嵌され、前記カラー部材と前記緩衝部材との間の隙間において前記緩衝部材と重合配置されるとともに、緩衝材で構成され、前記カラー部材に対する前記緩衝部材の相対移動を弾性変形によって低減させるバネ部材が設けられ、前記バネ部材のバネ定数が、前記緩衝部材のバネ定数の10分の1以下に設定されるとともに、自然長の前記バネ部材と前記緩衝部材とが重合された厚みが、前記フランジ同士の間隔よりも厚いことを特徴とする。
上記金属製の線材は、例えば、ステンレス、タングステン、モリブデン、アルミニウム、鉄、ニッケル、および銅などで形成した線材や、素材自体に制振性を有する鉄アルミで形成した線材など、いろいろな機能や特性を有する金属製素材を含むものとする。
上記軸方向は、緩衝部材およびバネ部材の厚み方向と同方向である。
上述の前記カラー部材および前記囲繞部材の間に配置される緩衝部材とは、例えば、間隔を隔てて配置したカラー部材と囲繞部材とを架け渡す緩衝部材、あるいは、カラー部材のフランジと囲繞部材とにサンドイッチ状に挟み込まれる緩衝部材などを含むものとする。なお、間隔を隔てて配置したカラー部材と囲繞部材とを架け渡す場合の緩衝部材は、別部材を用いて囲繞部材とカラー部材とを架け渡してもよい。
上記緩衝材は、厚み方向に湾曲する湾曲変形、厚み方向に圧縮する圧縮変形、面方向に伸縮する伸縮変形、あるいはこれらの組み合わせ変形などの弾性変形が可能なバネ部材を含むものである。なお、面方向は、厚み方向に直交する方向を指す。
上述のカラー部材と緩衝部材との間の隙間とは、カラー部材のフランジと緩衝部材との厚み方向の隙間、およびカラー部材のカラー本体と緩衝部材との径方向の隙間のうち少なくとも一方を含むものとする。
上述の相対移動を低減するとは、カラー部材に対する緩衝部材の厚み方向および径方向の少なくとも一方の方向の相対移動における移動量を低減すること、相対移動における移動速度を低下させること、さらには、相対移動における移動加速度を低下させること、あるいはこれらの組み合わせを含むものとする。
上記バネ部材は、例えば渦巻きバネ、コイルバネ、板バネなどを含むものとする。
上記重合状態とは、緩衝部材に対してバネ部材の少なくとも一部が厚み方向に接する状態を指す。
この発明により、緩衝装置は安定して優れた制振性を奏しながら、当接音の発生を抑制することができる。
詳述すると、緩衝部材が弾性変形して、振動部材から付加された振動のカラー部材から緩衝部材への伝達を抑制することで囲繞部材への振動を緩衝することに加え、緩衝部材の緩衝作用を阻害することなく、カラー部材と緩衝部材と隙間に配置されるバネ部材がカラー部材に対する緩衝部材の相対移動を弾性変形によって減少させることとなる。
これにより、緩衝部材の緩衝性能を低下させることなく、カラー部材に対する緩衝部材の相対移動を低下させ、緩衝部材がカラー部材に当接することを防止する、あるいは当接しても当該当接による衝撃を緩和させることができる。
つまり、緩衝部材とカラー部材との当接力が低減するため、緩衝部材とカラー部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
したがって、緩衝装置は安定して優れた制振性を有しながら、緩衝部材とカラー部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
また、前記囲繞部材に固定されるとともに、前記緩衝部材の外周側を固定する環状の固定部材が備えられ、前記緩衝部材の内周側を前記カラー部材に遊嵌するため、緩衝装置の緩衝性能を向上することができる。
詳述すると、固定部材に外周側を固定される緩衝部材は、内周側がカラー部材に遊嵌されているため、固定部材を介して囲繞部材とカラー部材とを径方向に架け渡す態様となる。
つまり、緩衝部材は、湾曲による弾性変形を容易に行うことができるため、振動部材から囲繞部材への振動を効率良く緩衝することができる。
したがって、緩衝装置の緩衝性能を向上することができる。
また、線材の線径や素材、あるいはピッチなどにより所望の性能に合ったバネ部材を用いることができるため、汎用性を向上させることができる。
また、前記バネ部材のバネ定数を、前記緩衝部材のバネ定数の10分の1以下に設定することで、緩衝装置の制振性能を向上させながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
詳述すると、バネ部材のバネ定数を緩衝部材のバネ定数の10分の1以下に設定する、つまり、バネ部材と緩衝部材とを異なるバネ定数に設定することで、緩衝部材とバネ部材とが異なる周波数帯域の振動にそれぞれ対応できるため、緩衝装置の制振性能を向上させることができる。
さらに、バネ部材のバネ定数が緩衝部材のバネ定数の10分の1以上である場合には、バネ部材と緩衝部材との変形性能が近似し、荷重が作用することによってバネ部材とともに緩衝部材も弾性変形して、緩衝部材の緩衝性能が低下するおそれがあるが、バネ定数を緩衝部材の10分の1以下に設定したバネ部材は、同等の荷重が作用した場合において、バネ定数が高い緩衝部材よりも弾性変形し易いため、カラー部材と緩衝部材との隙間に配置したバネ部材が荷重に対して弾性変形することで緩衝部材の弾性変形を防止することができる。
つまり、緩衝部材の緩衝性能を低下させることなく、カラー部材との当接による当接力をバネ部材の弾性変形によって吸収し、カラー部材との当接による当接音を低減することができる。
したがって、緩衝装置の制振性能を向上させながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
また、自然長の前記バネ部材と前記緩衝部材とが重合された厚みが、前記フランジ同士の間隔よりも厚いため、カラー部材に対する緩衝部材の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
詳述すると、自然長の前記バネ部材と前記緩衝部材とが重合された厚みを、フランジ同士の間隔よりも厚く形成することで、バネ定数を緩衝部材よりも低く設定したバネ部材が圧縮された状態でフランジと緩衝部材との隙間を埋め、つまり通常状態において、緩衝部材は弾性変形することなく、バネ部材にプレストレスが作用した状態で組み付けられ、緩衝部材をカラー部材へ付勢することができる。
この場合においても緩衝部材は弾性変形していないため、緩衝部材の緩衝性能を低下させることなく、振動部材から囲繞部材への振動を緩衝部材が確実に緩衝するとともに、カラー部材に対する緩衝部材の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
またこの発明は、振動源である振動部材と、該振動部材を覆う囲繞部材とを連結し、前記振動部材から前記囲繞部材への振動を緩衝する緩衝装置であって、締結部材によって前記振動部材に固定される略筒状のカラー本体、および該カラー本体の軸方向両側から径外側に突出する環状のフランジが備えられたカラー部材と、金属製の線材を編込んで形成され、前記カラー部材および前記囲繞部材の間に配置されるとともに、前記カラー部材に遊嵌する環状の緩衝材で構成された緩衝部材と、前記囲繞部材に固定されるとともに、前記緩衝部材の外周側を固定する環状の固定部材とで構成され、前記緩衝部材の内周側が前記カラー部材に遊嵌され、前記カラー部材と前記緩衝部材との間の隙間において前記緩衝部材と重合配置されるとともに、緩衝材で構成され、前記カラー部材に対する前記緩衝部材の相対移動を弾性変形によって低減させるバネ部材が設けられ、前記バネ部材の前記緩衝部材側における端部の径方向への相対移動を規制する移動規制手段が設けられ、前記移動規制手段が、前記緩衝部材の径外側とともに前記バネ部材の前記緩衝部材側を固定する前記固定部材の固定部で構成され、前記バネ部材が、前記緩衝部材側が前記フランジ側より大径となる平面視渦巻状かつ正面視略錐台状の渦巻きバネで構成されたことを特徴とする。
上記移動規制手段は、例えば、バネ部材の緩衝部材側を固定する固定部材の固定部、あるいはバネ部材の緩衝部材側を係止させる緩衝部材に設けた凸部や凹部などを含むものとする。なお、緩衝部材に設けた凸部は、緩衝部材の一部で構成した凸部、緩衝部材と一体的に設けた凸部、あるいは、緩衝部材と別体で設けた凸部とすることができる。
この発明により、緩衝装置は安定して優れた制振性を奏しながら、当接音の発生を抑制することができる。
詳述すると、緩衝部材が弾性変形して、振動部材から付加された振動のカラー部材から緩衝部材への伝達を抑制することで囲繞部材への振動を緩衝することに加え、緩衝部材の緩衝作用を阻害することなく、カラー部材と緩衝部材と隙間に配置されるバネ部材がカラー部材に対する緩衝部材の相対移動を弾性変形によって減少させることとなる。
これにより、緩衝部材の緩衝性能を低下させることなく、カラー部材に対する緩衝部材の相対移動を低下させ、緩衝部材がカラー部材に当接することを防止する、あるいは当接しても当該当接による衝撃を緩和させることができる。
つまり、緩衝部材とカラー部材との当接力が低減するため、緩衝部材とカラー部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
したがって、緩衝装置は安定して優れた制振性を有しながら、緩衝部材とカラー部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
また、前記バネ部材の前記緩衝部材側における端部の径方向への相対移動を規制する移動規制手段を設けることにより、優れた制振性能を奏するとともに、カラー部材と緩衝部材との径方向の当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
詳述すると、緩衝部材または固定部材に対する相対移動を規制されたバネ部材は、緩衝部材側を基端として自由端となるフランジ側によってカラー部材に作用する径方向への相対移動を低減させることができる。したがって、軸方向の振動吸収性能に加えて、径方向への振動吸収性能を確保しながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
また、前記移動規制手段を、前記緩衝部材の径外側とともに前記バネ部材の前記緩衝部材側を固定する前記固定部材の固定部で構成することにより、緩衝装置の組み付けによって、緩衝部材または固定部材に対するバネ部材の径方向への相対移動を、簡素な構成で確実かつ容易に防止することができる。
また、前記バネ部材を、前記緩衝部材側が前記フランジ側より大径となる平面視渦巻状かつ正面視略錐台状の渦巻きバネで構成することにより、自然長が同等で上端から下端まで同径であるコイルバネと比較して、軸方向への縮み量が大きいため、弾性変形によって振動を緩衝する緩衝部材のカラー部材に対する相対移動代を確保でき、緩衝部材による緩衝性能の低下を確実に防止することができる。
またこの発明は、振動源である振動部材と、該振動部材を覆う囲繞部材とを連結し、前記振動部材から前記囲繞部材への振動を緩衝する緩衝装置であって、締結部材によって前記振動部材に固定される略筒状のカラー本体、および該カラー本体の軸方向両側から径外側に突出する環状のフランジが備えられたカラー部材と、金属製の線材を編込んで形成され、前記カラー部材および前記囲繞部材の間に配置されるとともに、前記カラー部材に遊嵌する環状の緩衝材で構成された緩衝部材と、前記囲繞部材に固定されるとともに、前記緩衝部材の外周側を固定する環状の固定部材とで構成され、前記緩衝部材の内周側が前記カラー部材に遊嵌され、前記カラー部材と前記緩衝部材との間の隙間において前記緩衝部材と重合配置されるとともに、緩衝材で構成され、前記カラー部材に対する前記緩衝部材の相対移動を弾性変形によって低減させるバネ部材が設けられ、前記バネ部材の前記緩衝部材側における端部の径方向への相対移動を規制する移動規制手段が設けられ、前記移動規制手段が、前記緩衝部材の前記バネ部材側に設けられた移動規制凸部で構成され、前記バネ部材が、前記緩衝部材側が前記フランジ側より大径となる平面視渦巻状かつ正面視略錐台状の渦巻きバネで構成され、該渦巻きバネの径大な径大部が、前記固定部材の内周より径小であり、前記移動規制凸部が、前記緩衝部材の前記バネ部材側において前記固定部材の内周より径内側に設けられ、前記径大部が係止したことを特徴とする。
この発明により、緩衝装置は安定して優れた制振性を奏しながら、当接音の発生を抑制することができる。
詳述すると、緩衝部材が弾性変形して、振動部材から付加された振動のカラー部材から緩衝部材への伝達を抑制することで囲繞部材への振動を緩衝することに加え、緩衝部材の緩衝作用を阻害することなく、カラー部材と緩衝部材と隙間に配置されるバネ部材がカラー部材に対する緩衝部材の相対移動を弾性変形によって減少させることとなる。
これにより、緩衝部材の緩衝性能を低下させることなく、カラー部材に対する緩衝部材の相対移動を低下させ、緩衝部材がカラー部材に当接することを防止する、あるいは当接しても当該当接による衝撃を緩和させることができる。
つまり、緩衝部材とカラー部材との当接力が低減するため、緩衝部材とカラー部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
したがって、緩衝装置は安定して優れた制振性を有しながら、緩衝部材とカラー部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
また、前記バネ部材の前記緩衝部材側における端部の径方向への相対移動を規制する移動規制手段を設けることにより、優れた制振性能を奏するとともに、カラー部材と緩衝部材との径方向の当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
詳述すると、緩衝部材または固定部材に対する相対移動を規制されたバネ部材は、緩衝部材側を基端として自由端となるフランジ側によってカラー部材に作用する径方向への相対移動を低減させることができる。したがって、軸方向の振動吸収性能に加えて、径方向への振動吸収性能を確保しながら、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
また、前記移動規制手段を、前記緩衝部材の前記バネ部材側に設けられた移動規制凸部で構成することにより、バネ部材の緩衝部材側の径を、固定部に固定する場合よりも小径とすることができるため、緩衝装置を構成するバネ部材を小型化できるとともに、小型化したバネ部材を固定部に固定することなく係止させるだけで緩衝部材に容易に組み付けることができ、さらには、緩衝部材または固定部材に対するバネ部材の径方向への相対移動を確実に防止することができる。
また、前記バネ部材が、前記緩衝部材側が前記フランジ側より大径となる平面視渦巻状かつ正面視略錐台状の渦巻きバネで構成され、該渦巻きバネの径大な径大部が、前記固定部材の内周より径小であり、前記移動規制凸部が、前記緩衝部材の前記バネ部材側において前記固定部材の内周より径内側に設けられ、前記径大部が係止することにより、自然長が同等で上端から下端まで同径であるコイルバネと比較して、軸方向への縮み量が大きいため、弾性変形によって振動を緩衝する緩衝部材のカラー部材に対する相対移動代を確保でき、緩衝部材による緩衝性能の低下を確実に防止することができる。
またこの発明の態様として、前記バネ部材を、前記緩衝部材の両面に配置することができる。
この発明により、緩衝装置はより確実に安定して優れた制振性を有するとともに、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生をさらに防止することができる。
またこの発明は、上述のような緩衝装置が、交差する方向にそれぞれ延びるコルゲート形状が形成された金属製の板材に取り付けられた金属カバーであることを特徴とする。
この発明により、振動部材からの振動を緩衝装置が緩衝するため、金属カバーは振動部材の振動に共振して振動源となることなく、安定して優れた制振性を有することができるとともに、カラー部材と緩衝部材との当接による当接音の発生を抑制することができる。
安定して優れた制振性を有しながら、当接音の発生を抑制できる緩衝装置、および緩衝装置を備えた金属カバーを提供することができる。
エンジンの概略正面図。
成形前のヒートインシュレータの概略斜視図。
第1実施形態における緩衝装置の説明図。
第1実施形態における緩衝装置の取付状態をあらわす概略断面図。
第1実施形態における緩衝装置の作用説明図。
他の実施形態における緩衝装置の説明図。
他の実施形態における緩衝装置の説明図。
(第1実施形態)
この発明の第1実施形態を、図1から図5を用いて説明する。
図1はエンジン2の概略正面図を示し、図2は緩衝装置10Aが取り付けられたヒートインシュレータ1Aの一部概略斜視図を示し、図3は第1実施形態における緩衝装置10Aの説明図を示している。図3について詳述すると、図3(a)は緩衝装置10Aの概略斜視図を示し、図3(b)は緩衝装置10Aの概略断面図を示している。
図4は第1実施形態における緩衝装置10Aの取付状態をあらわす概略断面図を示し、図5は第1実施形態における緩衝装置10Aの説明図を示している。図5について詳述すると、図5(a)は荷重が作用する前の緩衝装置10Aの概略断面図を示し、図5(b)は荷重が作用している状態の緩衝装置10Aの概略断面図を示している。
なお、図3から図5の図面において、上側を上方とするとともに、下側を下方とする。
ヒートインシュレータ1Aは、図1に示すように、自動車などの車両用エンジン2の側面において、燃焼排気ガスを排出するエキゾーストマニホールド3(以下、エキマニ3)を覆うように取り付けられている。
このヒートインシュレータ1Aは、図2に示すように、インシュレータ基材100に、振動を緩衝する緩衝装置10Aを取り付けて構成しており、エキマニ3に対応する形状に形成して用いられる。なお、インシュレータ基材100には上述したようにエキマニ3を覆う形状で形成され、ヒートインシュレータ1Aを構成しているが、図示を容易にするため、図2では、インシュレータ基材100を平板状で図示している。
インシュレータ基材100は、直交する長手方向および短手方向のそれぞれに沿うコルゲート形状に形成されている。
なお、ヒートインシュレータ1Aに用いるインシュレータ基材100は、コルゲート形状に形成したものに限定せず、例えば、エンボス形状や波形形状などの適宜の形状で形成してもよい。
第1実施形態における緩衝装置10Aは、図3(a)および図3(b)に示すように、略円環状に形成されており、径外側のグロメット30と、平面視中央のカラー部材40と、グロメット30とカラー部材40との間の緩衝重合部材20Aとで構成している。なお、振動を緩衝する緩衝重合部材20Aの径外側をグロメット30に固定するとともに、径内側をカラー部材40に取り付けて構成している。
緩衝装置10Aを構成する緩衝重合部材20Aは、線材を編込んで圧縮形成した圧縮メッシュ21と、平面視渦巻状に巻き回して形成した渦巻きバネ22とを上方からこの順に配置し、上下方向に重合させて構成している。
なお、緩衝重合部材20Aは、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とを上方からこの順に配置することだけに限らず、下方からこの順に配置してもよい。
圧縮メッシュ21は、ステンレス製(SUS316)の線径が0.2mmである円形断面線材をメリヤス編みに編込んで略筒状体に形成し、厚さを1.0mmまで圧縮した円環状に形成することで、バネ定数約12000N/mmの弾性変形性能を有し、湾曲変形および圧縮変形可能となる。
この圧縮メッシュ21は、外径が直径28mmに形成されるとともに、内径が直径12mmに形成され、グロメット30とカラー部材40とを径方向に架け渡す。
なお、圧縮メッシュ21を構成する線材210は、線径を0.2mm、素材をステンレス、外径を直径28mm、内径を直径12mmとすることだけに限らず適宜設定してもよい。また、圧縮メッシュ21は必ずしも圧縮形成する必要はない。
渦巻きバネ22は、円形断面線材を径方向および下方に沿って平面視渦巻状かつ正面視略錐台状に巻き回して下端よりも上端の方が大径となるように形成したバネ部材であって、上端が直径26mmに形成されるとともに、下端が直径10mmに形成され、上下方向における自然長の長さが後述するカラー部材40のフランジ42同士の間隔よりも長く形成されている。
なお、渦巻きバネ24は、上端および下端の直径が上述のように形成されたものに限定しない。
このように形成された渦巻きバネ22は、圧縮メッシュ21のバネ定数の10分の1以下であるバネ定数約0.5N/mmに設定されており、圧縮メッシュ21よりも高い変形性を有する。さらに、圧縮メッシュ21との重合状態において、渦巻きバネ22を構成する円形断面線材が圧縮メッシュ21の主面と接触し、渦巻きバネ22が圧縮メッシュ21を支持できるように、渦巻きバネ22のバネ定数を、圧縮メッシュ21のバネ定数の25000分の1以上である約24000分の1としている。
グロメット30は、金属板を平面視円環状の片断面略S字状に形成されており、緩衝重合部材20Aを保持する第1固定部31と、ヒートインシュレータ1Aを保持する第2固定部32と、第1固定部31および第2固定部32を連結する連結部33とで一体に構成されている。
第1固定部31は、連結部33より径外側に対応する金属板を下方から径内側に折り返した、径内側が開口する倒位の片断面略U字状に形成されており、重合させた圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22との径外側を連結部33とともに加締めて固定している。
一方、第2固定部32は、連結部33より径内側に対応する金属板を上方から径外側に折り返した、径外側が開口する倒位の片断面略U字状に形成されており、ヒートインシュレータ1Aを連結部33とともに加締めて固定している。
カラー部材40は、径に対して高さの低い略筒状体であり、SPCCなどの鉄系材料で構成されている。このカラー部材40は、取付ボルト50の挿通を許容する円筒状のカラー本体41と、カラー本体41の上下両端から径外側に突出する円環状のフランジ部42とを一体に構成している。
カラー本体41の外径は、直径10mmに形成されており、圧縮メッシュ21の内径より小径であり、渦巻きバネ22の内径と同等である。
上下両端に配置されるフランジ42の間隔は、上下方向における圧縮メッシュ21の厚さよりも長く、渦巻きバネ22の自然長よりも短い。つまり、フランジ42の間隔は、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とを重合させた緩衝重合部材20Aの厚み方向の長さより短く形成されている。
さらに、組み付け状態のカラー部材40には、径方向および上下方向に隙間を有する態様で圧縮メッシュ21を遊嵌するとともに、上下方向に圧縮した状態の渦巻きバネ22がカラー本体41に嵌合するように取り付けられることとなる。換言すると、渦巻きバネ22はプレストレストされた状態で緩衝装置10Aに組み付けられることとなる。
なお、カラー本体41の直径は、以上の説明において10mmに限定したが、これだけに限定せず適宜設定することができる。
上述のような緩衝装置10Aは、グロメット30の第1固定部31に緩衝重合部材20Aの径外側を固定するとともに、第2固定部32にインシュレータ基材100を固定し、カラー部材40のフランジ42同士の間に緩衝重合部材20Aの径内側が取り付けられて、組み付けられる。
詳述すると、緩衝重合部材20Aは、カラー部材40に対して、上下のフランジ42の間で遊嵌する圧縮メッシュ21と、圧縮メッシュ21を弾性変形させることなく、上下のフランジ42と圧縮メッシュ21とに挟まれ、圧縮された渦巻きバネ22とが重合されている。
換言すると、渦巻きバネ22は、弾性変形およびカラー部材40との隙間による相対移動によって、振動を吸収する緩衝材として機能する圧縮メッシュ21のカラー部材40に対する相対移動を、圧縮メッシュ21の緩衝作用を損なうことなく低減させるように、圧縮メッシュ21の主面と渦巻きバネ22を構成する円形断面線材とが接触する態様で、圧縮メッシュ21とカラー部材40との間の隙間を埋めており、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の緩衝材として機能している。
そして、緩衝装置10Aをインシュレータ基材100に取り付けて構成したヒートインシュレータ1Aは、図4に示すように、カラー部材40に挿通した取付ボルト50をエキマニ3に形成されたボス3aに螺挿されることで、エキマニ3に固定される。
上述の第1実施形態における緩衝装置10Aは、カラー部材40と圧縮メッシュ21との間の隙間において圧縮メッシュ21と重合配置されるとともに、緩衝材で構成され、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動を弾性変形によって低減させる渦巻きバネ22を設けたことで、安定して優れた制振性を有しながら、圧縮メッシュ21とカラー部材40との当接による当接音の発生を抑制することができる。
詳述すると、エンジン2の駆動あるいは車両の走行に伴うエキマニ3の振動によって、グロメット30とカラー部材40とが相対的に移動しても(図5(a)中の矢印方向)、カラー部材40に対するグロメット30の振動を、圧縮メッシュ21がカラー部材40に対して相対移動しながら弾性変形することで緩衝するとともに、カラー部材40と圧縮メッシュ21と隙間に配置される渦巻きバネ22が上下方向に縮んで吸収する(図5(b)参照)。
つまり、カラー部材40に対するグロメット30の振動を、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とが協働して緩衝することができる。
加えて、カラー部材40と圧縮メッシュ21と隙間に配置される渦巻きバネ22は、渦巻きバネ22が配置されていない場合と比較して、圧縮メッシュ21の弾性変形を阻害して緩衝性能を低下させることなく、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の相対移動(相対移動量、相対速度、相対加速度)を低下させる。
これにより、圧縮メッシュ21とカラー部材40とが当接しない、あるいは当接してもその当接力が低減するため、圧縮メッシュ21とカラー部材40との当接による当接音の発生を抑制することができる。
したがって、緩衝装置10Aは安定して優れた制振性を有しながら、圧縮メッシュ21とカラー部材40との当接による当接音の発生を抑制することができる。
さらに、線径や素材、巻きピッチなどによって緩衝材として所望の性能に合った渦巻きバネ22をバネ部材として選定することができ、簡素な構成であるとともに、高い汎用性を有することができる。
また、渦巻きバネ22のバネ定数を、圧縮メッシュ21のバネ定数の10分の1以下である約0.5N/mmに設定したことで、緩衝装置10Aの制振性能を向上させながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
詳述すると、渦巻きバネ22のバネ定数を圧縮メッシュ21のバネ定数の10分の1以下である約0.5N/mmに設定した、つまり、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とを異なるバネ定数に設定したことで、圧縮メッシュ21と渦巻きバネ22とが異なる周波数帯域の振動にそれぞれ対応できるため、緩衝装置10Aの制振性能を向上させることができる。
さらに、渦巻きバネのバネ定数が圧縮メッシュのバネ定数の10分の1以上である場合には、圧縮メッシュと渦巻きバネとの変形性能が近似し、荷重が作用することによって渦巻きバネとともに圧縮メッシュも弾性変形して、圧縮メッシュの緩衝性能が低下するおそれがあるが、バネ定数を圧縮メッシュ21の10分の1以下である0.5N/mmに設定した渦巻きバネ22は、同等の荷重が作用した場合において、バネ定数が高い圧縮メッシュ21よりも弾性変形し易いため、カラー部材40と圧縮メッシュ21との隙間に配置した渦巻きバネ22が荷重に対して弾性変形することで圧縮メッシュ21の弾性変形を防止することができる。
つまり、圧縮メッシュ21の緩衝性能を低下させることなく、カラー部材40との当接による当接力を渦巻きバネ22の弾性変形によって吸収し、カラー部材40との当接による当接音を低減することができる。
したがって、緩衝装置10Aの制振性能を向上させながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生を確実に防止することができる。
さらにまた、渦巻きバネのバネ定数を圧縮メッシュのバネ定数の25000分の1以下とした場合、渦巻きバネが圧縮メッシュを支持することができず、フランジと圧縮メッシュとの隙間を埋めることができない、あるいは、荷重吸収性能を奏することができないおそれがあるが、バネ定数0.5N/mmの渦巻きバネ22は、圧縮メッシュ21のバネ定数の25000分の1以上であるため、圧縮メッシュ21の主面と接触する渦巻きバネ22の円形断面線材が圧縮メッシュ21を確実に支持し、渦巻きバネ22の十分な荷重吸収機能を奏することができる。
また、渦巻きバネ22の上下方向の自然長を、カラー部材40のフランジ42同士の間隔よりも長く形成することで、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
詳述すると、渦巻きバネ22の上下方向の自然長を、カラー部材40のフランジ42同士の間隔よりも長く形成することで、バネ定数を圧縮メッシュ21よりも低く設定した渦巻きバネ22が圧縮された状態でフランジ42と圧縮メッシュ21との隙間を埋め、つまり通常状態において、圧縮メッシュ21は弾性変形することなく、渦巻きバネ22にプレストレスが作用した状態で組み付けられ、圧縮メッシュ21をフランジ42へ付勢することができる。
この場合においても圧縮メッシュ21は弾性変形していないため、圧縮メッシュ21の緩衝性能が低下することなく、エキマニ3からヒートインシュレータ1Aへの振動を圧縮メッシュ21が確実に緩衝するとともに、カラー部材40に対する圧縮メッシュ21の当接による当接音の発生を確実に低減させることができる。
また、渦巻きバネ22を、上端が下端より大径となる平面視渦巻状かつ正面視略錐台状に形成することで、自然長が同等で上端から下端まで同径であるコイルバネと比較して、上下方向への縮み量が大きいため、弾性変形によって振動を緩衝する圧縮メッシュ21のカラー部材40に対する相対移動代を確保でき、圧縮メッシュ21による緩衝性能の低下を確実に防止することができる。
また、渦巻きバネ22における上方の径外側を、圧縮メッシュ21における径外側とともにグロメット30の第1固定部31に加締めて固定することで、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
詳述すると、第1固定部31の固定によって、圧縮メッシュ21またはグロメット30に対する相対移動を簡素な構成で確実かつ容易に規制された渦巻きバネ22は、第1固定部31に固定されていない部分によってカラー部材40に作用する径方向への相対移動を低減させることができる。したがって、径方向への振動吸収性能を確保しながら、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生をより確実に防止することができる。
また、ヒートインシュレータ1Aは、上述のような緩衝装置10Aをインシュレータ基材100に取り付けて構成したことで、エキマニ3からの振動を緩衝装置10Aが緩衝するため、ヒートインシュレータ1Aはエキマニ3の振動に共振して振動源となることなく、安定して優れた制振性を有することができるとともに、カラー部材40と圧縮メッシュ21との当接による当接音の発生を抑制することができる。
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の金属カバーは、実施形態のヒートインシュレータ1Aに対応し、
以下同様に、
金属製の板材および囲繞部材は、インシュレータ基材100に対応し、
振動部材は、エキマニ3に対応し、
緩衝部材、及び第1緩衝部材は、圧縮メッシュ21に対応し、
バネ部材は、渦巻きバネ22に対応し、
固定部材は、グロメット30に対応し、
移動規制手段および固定部は、第1固定部31に対応し、
移動規制凸部は、後述する凸部212に対応し、
締結部材は、取付ボルト50に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、上述の第1実施形態で説明した緩衝装置10Aと異なる構成の緩衝装置10C〜10F,10J,10Kであってもよい。これら緩衝装置10C〜10F,10J,10Kについて、上述した緩衝装置10Aと同様の構成の説明を省略し、他の実施形態における緩衝装置10C〜10Fをあらわす図6及び他の実施形態における緩衝装置10J及び10Kをあらわす図7を用いて簡単に説明する。
図6について詳述すると、図6(a)は緩衝装置10Cの概略断面図を示し、図6(b)は緩衝装置10Dの概略断面図を示し、図6(c)は緩衝装置10Eの概略断面図を示し、図6(d)は緩衝装置10Fの概略断面図を示している。
図7について詳述すると、図7(a)は緩衝装置10Jの概略断面図を示し、図7(b)は緩衝装置10Kの概略断面図を示している。
緩衝装置10Cは、図6(a)に示すように、下面に底面視環状の凸部212を形成した圧縮メッシュ21Cと、渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Cを用いてもよい。この緩衝重合部材20Cは、渦巻きバネ22の外周を凸部212の内周面に係止して構成している。
また、緩衝装置10Dは、図6(b)に示すように、下面に底面視環状で溝状の凹部213を形成した圧縮メッシュ21Dと、渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Dを用いてもよい。この緩衝重合部材20Dは、渦巻きバネ22の上端を凹部213に嵌合させて構成している。なお、凹部213は、線材を編込むことで形成される編目凹部とは異なり、積極的に形成した環状の溝である。
また、緩衝装置10Eは、図6(c)に示すように、圧縮メッシュ21Cと、圧縮メッシュ21Cの上下両面に配置した1組の渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Eを用いてもよい。この緩衝重合部材20Eは、下方の渦巻きバネ22を第1固定部31で固定するとともに、上方の渦巻きバネ22を上面に設けた凸部212に係止している。
また、緩衝装置10Fは、図6(d)に示すように、圧縮メッシュ21と、圧縮メッシュ21の下面に配置した倒位の渦巻きバネ22とで構成した緩衝重合部材20Fを用いてもよい。この場合、カラー部材40Fは、カラー本体41の上端のフランジ42よりも大径のフランジ42Fを下端に配置し、フランジ42Fの上面に凸部421を設け、子の凸部421に渦巻きバネ22の下端を係止させる。
以上のように構成した緩衝装置10C〜10Fは、渦巻きバネ22を小型化して圧縮メッシュ21に容易に組み付けることができ、さらには、上述した第1実施形態における緩衝装置10Aと同様、圧縮メッシュ21C,21Dやグロメット30に対する渦巻きバネ22の径方向への相対移動を確実に防止することができる。
上述のようにグロメット30を用いてインシュレータ基材100と圧縮メッシュ21とを連結し、圧縮メッシュ21とフランジ42との間の隙間に渦巻きバネ22を配置する態様の緩衝装置10A〜10Fとは異なり、以下で説明する緩衝装置10J及び10Kは、フランジ42同士の間において、インシュレータ基材100と、圧縮メッシュ21Jと、渦巻きバネ22Jとをこの順にサンドイッチ状に重合させてもよい。
詳述すると、緩衝装置10Jは、図7(a)に示すように、インシュレータ基材100の下面に配置した圧縮メッシュ21と、圧縮メッシュ21Jの下面に配置した渦巻きバネ22Jとで構成した緩衝重合部材20Jを、インシュレータ基材100とともにフランジ42同士の間に配置してもよい。
この場合、緩衝重合部材20Jは、圧縮メッシュ21Jの下面に設けた凸部212に渦巻きバネ22Jの上端を係止して構成している。
もちろん、図7(b)に示すように、インシュレータ基材100を介して上記緩衝重合部材20Jを板厚方向に対称配置させて緩衝装置10Kを構成してもよい。
以上のように構成した緩衝装置10J及び10Kは、インシュレータ基材100を圧縮メッシュ21Jで緩衝するとともに、圧縮メッシュ21Jのカラー部材40に対する相対移動を渦巻きバネ22Jによって低減するため、上述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記圧縮メッシュ21は、ステンレス製(SUS316)の線材を用いることのみならず、例えば、タングステン、モリブデン、アルミニウム、鉄、ニッケル、および銅などで構成した線材であってもよく、さらには、素材自体に制振性を有する鉄アルミなど、いろいろな機能や特性を有する金属製の素材を用いてもよい。
1A…ヒートインシュレータ
100…インシュレータ基材
3…エキマニ
10A,10C〜10F,10J,10K…緩衝装置
21,21C,21D,21J…圧縮メッシュ
210…第1線材
212…凸部
22…渦巻きバネ
30…グロメット
31…第1固定部
40,40F…カラー部材
41…カラー本体
42,42F…フランジ
50…取付ボルト