JP2017214475A - 光学部材用硬化性樹脂組成物、光学部材用樹脂、光学部材、レンズ及びカメラモジュール - Google Patents

光学部材用硬化性樹脂組成物、光学部材用樹脂、光学部材、レンズ及びカメラモジュール Download PDF

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【課題】硬化することで得られる光学部材用樹脂が高い透明性、屈折率及びガラス転移点を有する光学部材用硬化性樹脂組成物、光学部材用樹脂、レンズ等の光学部材、並びに該レンズを含むカメラモジュールを提供する。【解決手段】下記式(1)で表されるフェノキシフェニル(メタ)アクリレート誘導体(A)及び重合開始剤(B)を含有する光学部材用硬化性樹脂組成物。(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2及びR3は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシロキシ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基またはニトロ基を示す。)【選択図】なし

Description

本発明は、光学部材用硬化性樹脂組成物、光学部材用樹脂、光学部材、レンズ及びカメラモジュールに関する。
高屈折率の単官能(メタ)アクリレートとして、芳香環構造を複数有する化合物が提案されており、各種光学部材の原料として検討されている。しかし、これらの化合物は、ガラス転移点が低いため、高温での形状精度にも高い信頼性が要求される光学レンズなどの用途に適応することは困難であった。
一方で、高屈折率の多官能(メタ)アクリレートであるフルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレートは、高いガラス転移点を有することが知られているが、常温で固体あるいは超高粘度の液体であるため、低粘度の(メタ)アクリレートで希釈した組成物として、注型やコーティングなどの工程で使用されている。フルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレート化合物の特長である高屈折率を維持するために、希釈用の(メタ)アクリレートとしては、上記のような芳香環構造を複数有する単官能の(メタ)アクリレートが用いられることが多い。
例えば、特許文献1には、フルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレートをo−フェニルフェノキシエチルアクリレートで希釈した光学材料用樹脂組成物から、高屈折率かつ透明性に優れる硬化物が得られ、プラスチックレンズ等のような注型物に使用できることが開示されている。また、特許文献2には、フルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレートを3−フェノキシベンジルアクリレートで希釈した光学材料用樹脂組成物から、高屈折率かつ透明性に優れる硬化物が得られ、光学プラスチックレンズ用材料として有用であることが開示されている。
特開2008−94987号公報 特開2010−248358号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の光学材料用樹脂組成物では、得られる硬化物の透明性及び屈折率は高いものの、ガラス転移点が低い希釈用の(メタ)アクリレートが用いられているため、その硬化物のガラス転移点も低位であり、高温での形状精度に高い信頼性が要求される光学レンズなどの用途に適するものではない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、硬化することで得られる光学部材用樹脂が高い透明性、屈折率及びガラス転移点を有する光学部材用硬化性樹脂組成物、光学部材用樹脂、レンズ等の光学部材、並びに該レンズを含むカメラモジュールを提供することを目的とする。
本発明は、以下の[1]〜[8]である。
[1]下記式(1)で表されるフェノキシフェニル(メタ)アクリレート誘導体(A)及び重合開始剤(B)を含有する光学部材用硬化性樹脂組成物。
Figure 2017214475
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2及びR3は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシロキシ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基またはニトロ基を示す。)
[2]下記式(2)で表されるフルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレート(C)をさらに含有する[1]に記載の光学部材用硬化性樹脂組成物。
Figure 2017214475
(式(2)中、R4、R5、R6及びR7は各々独立に、水素原子またはメチル基を示し、mは0〜5の整数を示し、nは0〜5の整数を示す。)
[3]前記(A)成分、前記(C)成分、及び、前記(A)成分と前記(C)成分以外のその他のラジカル重合性ビニル系単量体(D)の総量100質量%中、前記(A)成分が10〜100質量%、前記(C)成分が0〜90質量%、前記(D)成分が0〜30質量%であり、前記(A)成分、前記(C)成分及び前記(D)成分の総量100質量部に対して、前記(B)成分を0.01〜10質量部含有する、[1]または[2]に記載の光学部材用硬化性樹脂組成物。
[4]前記式(1)で表されるフェノキシフェニル(メタ)アクリレート誘導体(A)由来のモノマー単位を含有する光学部材用樹脂。
[5]前記式(2)で表されるフルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレート(C)由来のモノマー単位をさらに含有する[4]に記載の光学部材用樹脂。
[6][4]または[5]に記載の光学部材用樹脂を含む光学部材。
[7][4]または[5]に記載の光学部材用樹脂を含むレンズ。
[8][7]に記載のレンズを含むカメラモジュール。
本発明によれば、硬化することで得られる光学部材用樹脂が高い透明性、屈折率及びガラス転移点を有する光学部材用硬化性樹脂組成物、光学部材用樹脂、レンズ等の光学部材、並びに該レンズを含むカメラモジュールを提供することができる。
本発明に係るカメラモジュールの一実施形態を示す断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの総称である。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称であり、[CH2=C(R)−C(=O)−](Rは水素原子またはメチル基を示す)で表される。
[光学部材用硬化性樹脂組成物]
本発明に係る光学部材用硬化性樹脂組成物(以下、「硬化性樹脂組成物」ともいう)は、下記式(1)で表されるフェノキシフェニル(メタ)アクリレート誘導体(A)(以下、「(A)成分」ともいう)及び重合開始剤(B)(以下、「(B)成分」ともいう)を含有する。本発明に係る光学部材用硬化性樹脂組成物は、下記式(2)で表されるフルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレート(C)(以下、「(C)成分」ともいう)、(A)成分と(C)成分以外のその他のラジカル重合性単量体成分(D)(以下、「(D)成分」ともいう)、及びその他の成分をさらに含有してもよい。
Figure 2017214475
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2及びR3は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシロキシ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基またはニトロ基を示す。)
Figure 2017214475
(式(2)中、R4、R5、R6及びR7は各々独立に、水素原子またはメチル基を示し、mは0〜5の整数を示し、nは0〜5の整数を示す。)
以下、本発明に係る硬化性樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
((A)成分)
(A)成分は、前記式(1)で表されるフェノキシフェニル(メタ)アクリレート誘導体であり、ラジカル重合性単量体である。
式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2及びR3は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシロキシ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基またはニトロ基を示す。R2及びR3は、水素原子であることが好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等の炭素数1〜12のアルコキシカルボニル基が挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。アシロキシ基としては、アセチロキシ基、プロピオニルオキシ基等が挙げられる。ジアルキルアミノ基としては、上記炭素数1〜12のアルキル基から選択されるアルキル基を有するジアルキルアミノ基が挙げられる。
本発明で使用される(A)成分としては、特に限定されないが、例えば、2−フェノキシフェニル(メタ)アクリレート、3−フェノキシフェニル(メタ)アクリレート、4−フェノキシフェニル(メタ)アクリレート等の無置換フェノキシフェニル(メタ)アクリレート類;2−クロロ−5−フェノキシフェニル(メタ)アクリレート、2−ブロモ−4−(2−ブロモフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート等のハロゲン置換フェノキシフェニル(メタ)アクリレート類;5−メチル−2−(3−メチルフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート、2−メチル−3−(2−メチルフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート等のアルキル基置換フェノキシフェニル(メタ)アクリレート類;2−メトキシ−6−(2−メトキシフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート、4−メトキシ−3−フェノキシフェニル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−4−(2−メトキシフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基置換フェノキシフェニル(メタ)アクリレート類;2−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート、3−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート、4−(4−メトキシカルボニルフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート等のアルコキシカルボニル基置換フェノキシフェニル(メタ)アクリレート類;2−(4−アセチルフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート、3−(4−アセチルフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート、4−(4−アセチルフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート等のアシル基置換フェノキシフェニル(メタ)アクリレート類;4−(4−アセチロキシフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート等のアシロキシ基置換フェノキシフェニル(メタ)アクリレート類;6−(ジメチルアミノ)−3−[6−(ジメチルアミノ)フェノキシ]フェニル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)−5−フェノキシフェニル(メタ)アクリレート、4−[4−(ジエチルアミノ)フェノキシ]フェニル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノ基置換フェノキシフェニル(メタ)アクリレート類;3−シアノ−2−フェノキシフェニル(メタ)アクリレート、2−シアノ−5−フェノキシフェニル(メタ)アクリレート、4−(4−シアノフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート等のシアノ基置換フェノキシフェニル(メタ)アクリレート類;3−(4−ニトロフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート、4−(4−ニトロフェノキシ)フェニル(メタ)アクリレート等のニトロ基置換フェノキシフェニル(メタ)アクリレート類;あるいは、以上述べたフェノキシフェニル(メタ)アクリレートに含まれる置換基から選択される置換基を複数組み合わせて有するフェノキシフェニル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
これらの中でも、光学部材用樹脂の透明性を高くできる点から、2−フェノキシフェニル(メタ)アクリレート、3−フェノキシフェニル(メタ)アクリレート、4−フェノキシフェニル(メタ)アクリレート等の無置換フェノキシフェニル(メタ)アクリレート類が好ましく、光学部材用樹脂の屈折率を高くできる点から、4−フェノキシフェニル(メタ)アクリレートがより好ましく、光学部材用樹脂のガラス転移点を高くできる点から、4−フェノキシフェニルメタクリレートがさらに好ましい。これら(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(A)成分の含有量は、(A)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量%に対して、10〜100質量%であることが好ましく、20〜90質量%であることがより好ましく、30〜80質量%であることがさらに好ましい。(A)成分の含有量が10〜100質量%であれば、屈折率とガラス転移温度の高い光学部材用樹脂を得ることができる。
((B)成分)
(B)成分としてはラジカル重合開始剤が挙げられ、例えば光重合開始剤、熱重合開始剤、レドックス重合に用いられる過酸化物などが挙げられる。(B)成分の種類は、重合方法に応じて適宜選択することができる。
光重合開始剤は、光重合に用いられるラジカル重合開始剤である。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン型化合物;t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン等のアントラキノン型化合物;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン等のアルキルフェノン型化合物;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン型化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド型化合物;フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等のフェニルグリオキシレート型化合物などが挙げられる。これらの中でも、硬化物の着色を抑制できる点で、アルキルフェノン型化合物が好ましく、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンがより好ましい。また、硬化物の内部まで十分に硬化されやすくなる点で、アシルホスフィンオキサイド型化合物が好ましく、硬化物の着色を抑制できる点で、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドがより好ましい。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱重合開始剤は、熱重合に用いられるラジカル重合開始剤である。熱重合開始剤としては例えば有機過酸化物、アゾ化合物などが挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール;1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等のパーオキシエステルなどが挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリック酸、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライドなどが挙げられる。
これらの熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。熱重合開始剤としては、硬化物に気泡が生じにくい点から、有機過酸化物が好ましい。硬化性樹脂組成物の硬化時間とポットライフとのバランスを考慮すると、有機過酸化物の10時間半減期温度は35〜80℃が好ましく、40〜75℃がより好ましく、45〜70℃がさらに好ましい。10時間半減期温度が35℃以上であれば、常温で硬化性樹脂組成物がゲル化しにくくなり、ポットライフが良好となる。一方、10時間半減期温度が80℃以下であれば、硬化性樹脂組成物の硬化時間を短縮できる。このような有機過酸化物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどが挙げられる。1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの市販品としては、例えばパーオクタ(登録商標)O(商品名、日油株式会社製、10時間半減期温度:65.3℃)等が挙げられる。t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの市販品としては、例えばパーブチル(登録商標)O(商品名、日油株式会社製、10時間半減期温度:72.1℃)等が挙げられる。ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートの市販品としては、例えばパーロイル(登録商標)TCP(商品名、日油株式会社製、10時間半減期温度:40.8℃)等が挙げられる。
レドックス重合に用いられる過酸化物としては、例えばジベンゾイルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。これらの過酸化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、レドックス重合には、通常、レドックス系重合開始剤が用いられる。レドックス系重合開始剤は、過酸化物と還元剤とを併用した重合開始剤である。上述した過酸化物をレドックス系重合開始剤として使用する場合、還元剤との組み合わせの一例は以下の通りである。
(1)ジベンゾイルパーオキサイド(過酸化物)と、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン等の芳香族3級アミン類(還元剤)との組み合わせ。
(2)ハイドロパーオキサイド(過酸化物)と金属石鹸類(還元剤)との組み合わせ。
(3)ハイドロパーオキサイド(過酸化物)とチオ尿素類(還元剤)との組み合わせ。
これら(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。(B)成分の含有量は、硬化性樹脂組成物の硬化に要する時間や、光学部材用樹脂の透明性、強度などの点から、(A)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜7質量部であることがより好ましく、0.2〜3質量部であることがさらに好ましい。
((C)成分)
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分に加え、さらに、前記式(2)で表される(C)成分を含有していてもよい。(C)成分は、フルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレートであり、ラジカル重合性単量体である。(C)成分を光学部材用硬化性樹脂組成物に加えることにより、光学部材用樹脂の屈折率やガラス転移点を高めることができる。
前記式(2)において、R4、R5、R6及びR7は各々独立に、水素原子またはメチル基を示す。硬化物の耐熱安定性が高まる観点から、R4及びR7は、水素原子が好ましい。また、硬化物の屈折率がより高まる観点から、R5及びR6は、水素原子が好ましい。すなわち、R4〜R7は、全て水素原子であることが好ましい。
前記式(2)において、mは0〜5の整数を示し、nは0〜5の整数を示す。m及びnがそれぞれ5以下の整数であることにより、硬化物の屈折率やガラス転移点が高くなる。硬化性樹脂組成物の粘度が成形に適した値となり、成形性が向上することから、m及びnはそれぞれ0〜4の整数が好ましく、それぞれ1〜3の整数がより好ましく、それぞれ1または2であることがさらに好ましい。
(C)成分としては、市販品を用いることができる。例えば、R4、R5、R6及びR7がいずれも水素原子であり、m及びnがいずれも1の化合物である、オグソールEA−0200(商品名、大阪ガスケミカル株式会社製)、NKエステルA−BPEF(商品名、新中村化学工業株式会社製)などが挙げられる。これら(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(C)成分の含有量は、(A)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量%に対して、0〜90質量%であることが好ましく、10〜90質量%であることがより好ましく、20〜80質量%であることがさらに好ましい。(C)成分を含有することで、光学部材用樹脂の屈折率とガラス転移温度をさらに高めることができる。また、(C)成分の含有量を90質量%以下とすることで、(A)成分及び(D)成分による希釈が可能となり、硬化性樹脂組成物の粘度を低下することができる。
((D)成分)
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、及び必要に応じて(C)成分に加え、さらに、(D)成分を含有していてもよい。(D)成分は、前記(A)成分及び(C)以外のその他のラジカル重合性ビニル系単量体である。(D)成分は、分子構造内に1つのラジカル重合性ビニル基を有する単官能化合物であってもよく、分子構造内に2つ以上のラジカル重合性ビニル基を有する多官能化合物であってもよい。(D)成分としては、単官能の(メタ)アクリルモノマー、多官能の(メタ)アクリルモノマー、その他のビニル基含有モノマーなどが挙げられる。
単官能の(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、マレイン酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル等のカルボキシル基を含有する(メタ)アクリレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルフェニル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、(1−ナフチル)メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン等の環状構造を含有する(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ(メタ)アクリレート;3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
多官能の(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能の(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能の(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能の(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
その他のビニル基含有モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどが挙げられる。
これらの(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。(D)成分の含有量は、(A)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量%に対して、0〜30質量%であることが好ましく、0〜25質量%であることがより好ましく、0〜20質量%であることがさらに好ましい。(D)成分を含有することにより、粘度を調整しやすくなるが、(D)成分の含有量が多くなるほど、光学部材用樹脂の屈折率やガラス転移点が低下する傾向にある。
(その他の成分)
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、前記(A)〜(D)成分以外の、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、アクリル系重合体、ゴム、シリカ粒子、ジルコニア、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、揺変剤、離型剤、充填剤、蛍光体、顔料等が挙げられる。これらのその他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明に係る硬化性樹脂組成物は、上記各成分の中でも、酸化防止剤を含有することが好ましい。硬化性樹脂組成物が酸化防止剤を含有することにより、硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性を向上することができ、また、光学部材用樹脂の酸化による着色を抑制できる。
酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系酸化防止剤;トリエチルホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤;ジヘキシルスルフィド、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステリアル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)等の硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤を用いる場合、酸化防止剤の含有量は、(A)成分、(C)成分及び(D)成分の総量100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜7質量部であることがより好ましく、0.2〜3質量部であることがさらに好ましい。酸化防止剤の含有量が0.01質量部以上であることにより、光学部材用樹脂の酸化による着色を抑制できる。また、酸化防止剤の含有量が5質量部以下であることにより、硬化物の透明性が良好となる。
(硬化性樹脂組成物の製造方法)
硬化性樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、前記(A)成分及び前記(B)成分と、必要に応じて、さらに前記(C)成分、前記(D)成分、前記その他の成分とを、常温で撹拌混合する方法や加熱混合する方法などが挙げられる。前記(B)成分として熱重合開始剤を用いる場合には、硬化性樹脂組成物の安定性の点から、常温で撹拌混合して硬化性樹脂組成物を得る方法、または(B)成分以外の成分を加熱混合した後に冷却し、常温で前記(B)成分を加えて撹拌混合し、硬化性樹脂組成物を得る方法などが挙げられる。加熱混合により硬化性樹脂組成物を製造する場合には、相溶性が良好となり、より均一に混合できる観点から、40〜100℃の加熱下で混合することが好ましい。また、同様の観点から、混合の際の攪拌時間は0.1〜5時間であることが好ましい。
(作用効果)
以上説明した本発明に係る硬化性樹脂組成物は、前記(A)成分及び前記(B)成分を含み、必要に応じて、さらに前記(C)成分、前記(D)成分、前記その他の成分を含む。したがって、本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いることにより、透明性、屈折率及びガラス転移点の高い光学部材用樹脂が得られる。
[光学部材用樹脂]
本発明に係る光学部材用樹脂は、上述した本発明に係る硬化性樹脂組成物を硬化することによって得られる。すなわち、本発明に係る光学部材用樹脂は、本発明に係る硬化性樹脂組成物の硬化物であり、前記(A)成分由来のモノマー単位を含む。さらに、硬化性樹脂組成物が(C)成分及び/または(D)成分を含む場合、光学部材用樹脂は(A)成分由来のモノマー単位と、(C)成分及び/または(D)成分由来のモノマー単位とを含む。
光学部材用樹脂を得る方法としては、例えば、本発明に係る硬化性樹脂組成物を所定の形状としておき、これを硬化させて所定の形状を有する光学部材用樹脂を得る方法が挙げられる。このようにして所定の形状を有する光学部材用樹脂を得る方式としては、例えば、硬化性樹脂組成物を塗工するコーティング方式、ポッティング成形方式、キャスティング成形方式、プリンティング成形方式、液体樹脂射出成形方式(LIM方式)、トランスファー成形方式などが挙げられる。また、硬化性樹脂組成物を硬化する方法としては、硬化性樹脂組成物に含まれる重合開始剤((B)成分)の種類に応じて、光重合、熱重合及びレドックス重合のいずれかの方法を採用できる。
光重合により硬化性樹脂組成物を硬化して光学部材用樹脂を得る場合、硬化性樹脂組成物に照射する光の波長は特に制限されないが、波長が200〜400nmの紫外線を照射することが好ましい。紫外線の光源の具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、UV−LEDランプなどが挙げられる。
硬化性樹脂組成物を光重合した後には、アフターキュアーをさらに行うことが好ましい。これにより、光学部材用樹脂中に残存する未反応の(メタ)アクリロイル基の量を減少させることができ、光学部材用樹脂の強度をより高めることができる。アフターキュアーの条件としては、70〜150℃で0.01〜24時間が好ましく、80〜130℃で0.1〜10時間がより好ましい。
熱重合により硬化性樹脂組成物を硬化して光学部材用樹脂を得る場合、硬化条件は特に限定されないが、着色が抑制された光学部材用樹脂が得られやすい観点から、硬化温度は40〜200℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。LIM方式やトランスファー成形方式などのように、予め加熱された型に硬化性樹脂組成物を注入して成形する場合の硬化時間(加熱時間)は、硬化温度によっても異なるが、例えば硬化温度が100℃の場合、1〜180秒が好ましく、1〜120秒がより好ましく、1〜60秒がさらに好ましい。一方、キャスティング成形方式のように常温の型に硬化性樹脂組成物を注入後、加熱する場合の硬化時間は、硬化温度によっても異なるが、例えば硬化温度が70℃の場合、5分〜5時間が好ましく、10分〜3時間がより好ましい。
硬化性樹脂組成物を熱重合した後には、アフターキュアーをさらに行うことが好ましい。アフターキュアーの条件としては、50〜150℃で0.1〜10時間が好ましく、70〜130℃で0.2〜5時間がより好ましい。
レドックス重合により硬化性樹脂組成物を硬化して光学部材用樹脂を得る場合、レドックス系重合開始剤を用いることで、5〜40℃の常温で硬化することができる。得られる光学部材用樹脂に残存する未反応の(メタ)アクリロイル基の量を減少させることができ、光学部材用樹脂の強度をより高めることができる点から、硬化温度は15〜40℃が好ましい。また、硬化性樹脂組成物がゲル化しにくく、安定的に取り扱える点から、予め還元剤を硬化性樹脂組成物に溶解させておき、これに過酸化物を追加する手順で硬化を実施する方法が好ましい。
(光学部材用樹脂の透明性)
光学部材用樹脂の透明性について、光学部材用樹脂の厚さが1mmの場合、全光線透過率が80%以上、ヘーズが2%以下であることが好ましく、全光線透過率が85%以上、ヘーズが1%以下であることがより好ましく、全光線透過率が90%以上、ヘーズが0.5%以下であることがさらに好ましい。なお、全光線透過率及びヘーズは、後述する方法により測定される値である。
(光学部材用樹脂の屈折率)
光学部材用樹脂の屈折率(nD)について、25℃におけるナトリウムD線(589nm)での測定値が、1.600以上であることが好ましく、1.605以上であることがより好ましく、1.610以上であることがさらに好ましい。光学部材用樹脂の屈折率が1.600以上であれば、透明光学部材に適用した場合に多様な光学設計が可能となり、様々な用途へ適用できる。なお、屈折率は、後述する方法により測定される値である。
(光学部材用樹脂のガラス転移点)
光学部材用樹脂のガラス転移点は、90℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。光学部材用樹脂のガラス転移点が90℃以上であれば、85℃、85%RHの標準的な高温高湿試験環境においても光学部材用樹脂の形状が安定する(すなわち、変形しにくい)ため、光学部材に適用した場合に光学部材としての信頼性が向上する。なお、本発明において、「光学部材用樹脂のガラス転移点」とは、動的粘弾性測定装置にて光学部材用樹脂の動的粘弾性及び損失正接を測定し、損失正接(tanδ)が最大値を示す温度である。具体的には、光学部材用樹脂のガラス転移点は、後述する方法により測定される値である。
[光学部材]
本発明に係る光学部材は、本発明に係る光学部材用樹脂を含む。例えば、該光学部材は、該光学部材用樹脂を成形して作製される。該成形は、硬化性樹脂組成物を硬化した後に行ってもよく、硬化と同時に行ってもよい。成形方法としては、コーティング方式、ポッティング成形方式、キャスティング成形方式、プリンティング成形方式、LIM方式、トランスファー成形方式などが挙げられる。成形時の硬化方法は、光学部材の透明性が良好となる点から、光重合または熱重合が好ましい。
光学部材としては、例えば、発光ダイオードモジュール、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、カメラ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)デバイス、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル、電子ペーパー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、プロジェクター等に使用されるフィルム、シート、レンズ、光導波路、封止材、充填材、接着剤、反射材、粘着剤、波長変換材などが挙げられる。本発明に係る光学部材は、高い透明性、高い屈折率及び高いガラス転移点を有するため、カメラレンズ等のレンズとして特に有用である。
[レンズ]
本発明に係るレンズは、本発明に係る光学部材用樹脂を含む。該レンズは、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ等の電子機器、自動車のバックカメラ、ドライブレコーダー等に備え付けられるカメラモジュール等に用いられる。本発明に係るレンズは、本発明に係る光学部材用樹脂からなる成形品であってもよいが、平面ガラス、曲面ガラスまたはガラスウエハー等の透明基材と、該透明基材の片面または両面上に形成された本発明に係る光学部材用樹脂とからなるハイブリッドレンズであってもよい。
レンズの成形方法としては、上下型で硬化性樹脂組成物を挟み込んだ後、加熱または光照射により樹脂を硬化することでレンズを得るキャスティング方式などが挙げられる。キャスティング方式としては、レンズ個片を1点ずつ成形する方法や、複数のレンズ形状が転写されたウエハーを成形した後、レンズ個片を切り出すウエハーレベル方式などが挙げられる。
[カメラモジュール]
本発明に係るカメラモジュールは、本発明に係るレンズを含む。図1に、本発明に係るカメラモジュールの一例の断面図を示す。図1に示すカメラモジュール100は、本発明に係るレンズであるカメラレンズ1a、1b及び赤外線カットフィルター5を備えるレンズホルダー2と、センサーチップ4及びボンディングワイヤ6a、6bを備える基板3とを具備する。基板3上に、レンズホルダー2が積層されている。なお、図1に示すカメラモジュール100が備えるカメラレンズは2枚であるが、カメラレンズは1枚であってもよいし、3枚以上であってもよい。複数枚のレンズを備える場合、ガラス製のカメラレンズが混在していてもよい。
また、その他の構成のカメラモジュールとしては、ウエハー上に形成された、レンズとイメージセンサーウエハーとの接着積層体をダイシングするウエハーレベル方式によって形成されるカメラモジュールが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例中の「部」は「質量部」を意味する。また、本実施例における測定及び評価は、以下の方法に従って実施した。
[測定方法]
<ガスクロマトグラフ(以下、「GC」という)>
装置:Agilent Technologies製、Agilent 6890N(商品名)
カラム:DB−5(30m×0.32mm、膜厚0.25μm)
カラム温度条件:50℃(5min)→10℃/min→280℃(2min)
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラム流量:3.69(ml/min)
全流量:190.9(ml/min)、
線速度:53(cm/s)
スプリット比:50:1
入口圧:105.6(kPa)
サンプル:サンプル10mgをアセトン1mlで希釈しGCに1μL注入
なお、各化合物の純度は、GCの測定におけるピーク面積から次式により算出した。
純度(%)=(A/B)×100
ここで、Aは目的生成物のピーク面積の合計、Bは全ピーク面積の合計を表す。
また、実得収率は、次式により算出した。
実得収率(%)=(C/D)×100
ここで、Cは目的生成物のmol数、Dは基準となる原料のmol数を表す。
1H−NMR>
装置:日本電子株式会社製、GSX−270 FT−NMR(商品名)
周波数:270MHz
サンプル:各化合物10mgを1gの重ジメチルスルホキシドに溶解
測定モード:1H一次元モード
<全光線透過率及びヘーズの測定>
直径約50mm×厚さ約1mmの硬化物の全光線透過率及びヘーズを、ヘーズメーター(商品名:HM−150型、村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。
<屈折率の測定>
厚さ約100μmの硬化物の屈折率(ナトリウムD線(589nm)、25℃)を、多波長アッベ屈折計(商品名:DR−M2、株式会社アタゴ製)により測定した。なお、測定中間液として、イオウヨウ化メチレン(株式会社アタゴ製)を用いた。
<ガラス転移点の測定>
約4mm×35mm×厚さ1mmの硬化物の動的粘弾性及び損失正接を測定し、損失正接(tanδ)が最大値を示す温度を、該硬化物のガラス転移点とした。測定には、動的粘弾性測定装置(商品名:RSA−II、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いた。測定条件は引っ張りモードとした。測定周波数は10Hzとした。
[合成例1]
反応容器に、無水メタクリル酸57.8g(大阪有機工業株式会社製、0.375mol)、4−フェノキシフェノール46.5g(和光純薬工業株式会社製、0.250mol)、酸化マグネシウム1.0g(神島化学工業株式会社製、商品名:スターマグU、0.025mol)、トルエン125.0gを投入した。重合防止のため、空気を12mL/分で吹き込みながら、反応液の温度を70℃まで加熱し、1時間撹拌したところ、GCで4−フェノキシフェノールの消失を確認した。反応液を30℃まで冷却して、メタノール7.5mLを投入し、1.5時間撹拌した。さらに、17.0質量%炭酸カリウム水溶液125.0gを投入し、1.5時間撹拌した。分液漏斗を用いて水層を除き、得られた有機層を純水250gで2回洗浄した。洗浄した有機層に、重合防止剤として、[4,4’−(フタロイルジオキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)]−1,1’−ジイルビスオキシル0.064g(MRCユニテック株式会社製)を添加した後、ロータリーエバポレーターを用いて低沸分を留去した。残渣を減圧下にて蒸留精製することにより、沸点123℃/0.4hPa、純度99.9%の4−フェノキシフェニルメタクリレート58.3g(0.229mol)を得た。4−フェノキシフェノール基準の実得収率は91.6%である。
なお、4−フェノキシフェノールのGCの保持時間は18.3分、4−フェノキシフェニルメタクリレートのGCの保持時間は21.0分である。得られた4−フェノキシフェニルメタクリレートの1H−NMRのスペクトルを確認したところ、次の結果が得られた。
7.44−7.33(ppm):m、2H of O−Ph
7.27−7.12(ppm):m、3H of O−Ph
7.09−7.01(ppm):m、4H of O−Ph−O
6.28−6.24(ppm):d、1H of CH2=C
5.89−5.88(ppm):d、1H of CH2=C
2.04−2.00(ppm):s、3H of CH3−C
[実施例1]
<硬化性樹脂組成物の調製>
冷却器を備えた反応容器に、(A)成分として、合成例1で合成した4−フェノキシフェニルメタクリレートを100部と、(B)成分として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:IRGACURE(登録商標)184、BASF社製、光重合開始剤)3部とを加えた。これを70℃で2時間撹拌することにより、硬化性樹脂組成物を得た。
<光学部材用樹脂の作製>
得られた硬化性樹脂組成物を、厚さ1mmのシリコーンシートをガスケットとして、2枚のガラス板で挟み込み、高圧水銀灯で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射して光重合した後、100℃で30分間加熱した。冷却後、板ガラスを除去し、全光線透過率及びヘーズの測定に用いる直径約50mm、厚さ約1mmの光学部材用樹脂を得た。同様の方法により、約4mm×35mmの長方形状を切り抜いた厚さ1mmのシリコーンシートをガスケットとして用いることで、ガラス転移点の測定に用いる約4mm×35mm×厚さ1mmの光学部材用樹脂を得た。また、同様の方法により、厚さ約100μmのポリエステルテープを用いることで、屈折率の測定に用いる厚さ約100μmの光学部材用樹脂を得た。
得られた光学部材用樹脂を用いて、前記方法により、全光線透過率、ヘーズ、屈折率及びガラス転移点を測定した。結果を表1に示す。なお、表1における各成分の単位は「部」である。
[実施例2〜8、10]
表1に記載の配合組成に変更した以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物を調製し、光学部材用樹脂を作製し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例9]
<硬化性樹脂組成物の調製>
冷却器を備えた反応容器に、(A)成分として、合成例1で合成した4−フェノキシフェニルメタクリレートを50部と、(C)成分として、NKエステルA−BPEF(商品名、新中村化学工業株式会社製、前記式(2)において、R4、R5、R6及びR7の全てが水素原子であり、m及びnがいずれも1である化合物)50部を加え、70℃で2時間撹拌した。これを室温に冷却した後、(B)成分として、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名:パーオクタO、日油株式会社製、熱重合開始剤、10時間半減期温度:65.3℃)3部を加え、さらに10分間攪拌して、硬化性樹脂組成物を得た。
<光学部材用樹脂の作製>
得られた硬化性樹脂組成物を、厚さ1mmのシリコーンシートをガスケットとして、2枚のガラス板で挟み込み、90℃で1時間加熱して熱重合した後、さらに100℃で30分間加熱した。冷却後、板ガラスを除去し、全光線透過率及びヘーズの測定に用いる直径約50mm、厚さ約1mmの光学部材用樹脂を得た。同様の方法により、約4mm×35mmの長方形状を切り抜いた厚さ1mmのシリコーンシートをガスケットとして用いることで、ガラス転移点の測定に用いる約4mm×35mm×厚さ1mmの光学部材用樹脂を得た。また、同様の方法により、厚さ約100μmのポリエステルテープを用いることで、屈折率の測定に用いる厚さ約100μmの光学部材用樹脂を得た。
得られた光学部材用樹脂を用いて、前記方法により全光線透過率、ヘーズ、屈折率及びガラス転移点を測定した。結果を表1に示す。
[比較例1〜3]
表1に記載の配合組成に変更した以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物を調製し、光学部材用樹脂を作製し、評価した。結果を表に示す。


Figure 2017214475
表1中に記載の各成分の詳細を以下に記す。
・4−フェノキシフェニルメタクリレート:合成例1で合成した4−フェノキシフェニルメタクリレート
・IRGACURE184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:IRGACURE184、BASF社製、光重合開始剤)
・パーオクタO:1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名:パーオクタO、日油株式会社製、10時間半減期温度:65.3℃、熱重合開始剤)
・A−BPEF:前記式(2)において、R4、R5、R6及びR7の全てが水素原子であり、m及びnがいずれも1である化合物(商品名:NKエステルA−BPEF、新中村化学工業株式会社製)
・o−フェニルフェノキシエチルアクリレート(商品名:NKエステルA−LEN−10、新中村化学工業株式会社製)
・3−フェノキシベンジルアクリレート(商品名:ライトアクリレートPOB−A、共栄社化学株式会社製)
表1に示すように、各実施例で得られた硬化性樹脂組成物を用いて作製した光学部材用樹脂は、高い透明性、屈折率及びガラス転移点を有していた。一方、(A)成分の代わりにo−フェニルフェノキシエチルアクリレートを用いた比較例1及び2の硬化物は、ガラス転移点が低かった。また、(A)成分の代わりに3−フェノキシベンジルアクリレートを用いた比較例3の硬化物も、ガラス転移点が低かった。
100 カメラモジュール
1a、1b カメラレンズ
2 レンズホルダー
3 基板
4 センサーチップ
5 赤外線カットフィルター
6a、6b ボンディングワイヤ

Claims (8)

  1. 下記式(1)で表されるフェノキシフェニル(メタ)アクリレート誘導体(A)及び重合開始剤(B)を含有する光学部材用硬化性樹脂組成物。
    Figure 2017214475
    (式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2及びR3は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシロキシ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基またはニトロ基を示す。)
  2. 下記式(2)で表されるフルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレート(C)をさらに含有する請求項1に記載の光学部材用硬化性樹脂組成物。
    Figure 2017214475
    (式(2)中、R4、R5、R6及びR7は各々独立に、水素原子またはメチル基を示し、mは0〜5の整数を示し、nは0〜5の整数を示す。)
  3. 前記(A)成分、前記(C)成分、及び、前記(A)成分と前記(C)成分以外のその他のラジカル重合性ビニル系単量体(D)の総量100質量%中、前記(A)成分が10〜100質量%、前記(C)成分が0〜90質量%、前記(D)成分が0〜30質量%であり、前記(A)成分、前記(C)成分及び前記(D)成分の総量100質量部に対して、前記(B)成分を0.01〜10質量部含有する、請求項1または2に記載の光学部材用硬化性樹脂組成物。
  4. 下記式(1)で表されるフェノキシフェニル(メタ)アクリレート誘導体(A)由来のモノマー単位を含有する光学部材用樹脂。
    Figure 2017214475
    (式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2及びR3は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシロキシ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基またはニトロ基を示す。)
  5. 下記式(2)で表されるフルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレート(C)由来のモノマー単位をさらに含有する請求項4に記載の光学部材用樹脂。
    Figure 2017214475
    (式(2)中、R4、R5、R6及びR7は各々独立に、水素原子またはメチル基を示し、mは0〜5の整数を示し、nは0〜5の整数を示す。)
  6. 請求項4または5に記載の光学部材用樹脂を含む光学部材。
  7. 請求項4または5に記載の光学部材用樹脂を含むレンズ。
  8. 請求項7に記載のレンズを含むカメラモジュール。
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