以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキリデン基、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基、及び複素環基は、何ら規定していなければ、各々次の意味である。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、又はヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、又はt−ブチル基が挙げられる。
炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又はイソプロピル基が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、又はヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、又はイソプロポキシ基が挙げられる。
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、例えば、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族単環炭化水素基、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合二環炭化水素基又は炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合三環炭化水素基である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、又はフェナントリル基が挙げられる。
炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基は、無置換である。炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、又はシクロデシル基が挙げられる。
炭素原子数3以上8以下のシクロアルキリデン基は、非置換である。炭素原子数3以上8以下のシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロプロピリデン基、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロへプチリデン基、又はシクロオクチリデン基が挙げられる。
炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基は、非置換である。炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、又はシクロへプチリデン基が挙げられる。
複素環基は、非置換である。複素環基としては、例えば、1個以上(好ましくは1個以上3個以下)のヘテロ原子を含み、芳香性を有する5員又は6員の単環の複素環基;このような単環同士が縮合した複素環基;又は、このような単環と、5員又は6員の炭化水素環とが縮合した複素環基が挙げられる。ヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子からなる群から選択される1種以上である。複素環基の具体例としては、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、イソインドリル基、クロメニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、プリニル基、プテリジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、4H−キノリジニル基、ナフチリジニル基、ベンゾフラニル基、1,3−ベンゾジオキソリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、又はベンズイミダゾリル基が挙げられる。
<1.感光体>
本発明の実施形態に係る電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)は、導電性基体と感光層とを備える。感光層は、電荷発生層と電荷輸送層とを含む。電荷発生層は電荷発生剤を含む。電荷輸送層は、正孔輸送剤とバインダー樹脂とを含む。正孔輸送剤は、一般式(1)又は(2)で表されるトリアリールアミンヒドラゾン誘導体を含む(以下、それぞれトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)及び(2)と記載することがある)。バインダー樹脂は、一般式(3)で表されるポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(3)と記載することがある)を含む。本実施形態に係る感光体は、電気特性及び耐摩耗性を両立することができる。その理由は、以下のように推測される。
トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)及び(2)は、トリフェニルアミン部分の3つのフェニル基のうちの少なくとも1つにフェニルエテニル部分を介してヒドラゾン部分を有する。トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)及び(2)はこのような構造を有するため、π共役系の空間的な広がりが比較的大きく、キャリア(正孔)のトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)及び(2)の分子内における移動距離が大きくなる傾向にある。すなわち、キャリア(正孔)の分子内移動距離が大きくなる傾向にある。また、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)及び(2)は空間的な広がりが比較的大きいπ共役系を有するため、感光層中で複数のトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)及び(2)のπ共役系が互いに重なり易くなり、キャリア(正孔)のトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)及び(2)の各々の分子間における移動距離が小さくなる傾向にある。すなわち、キャリア(正孔)の分子間移動距離が小さくなる傾向にある。よって、キャリア(正孔)の受容性及び輸送性が向上し、感光体の電気特性(例えば、感度特性)を向上させると考えられる。
また、このようにトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)及び(2)はフェニルエテニル部分を介してπ共役系を拡張しているため、炭素−炭素二重結合のπ共役系に比べ、化学的に安定である。また、このようにトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)及び(2)は、極性のあるヒドラゾン部分を有するため、感光層中での分散性に優れる。また、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)及び(2)とポリカーボネート樹脂(3)とが相溶性に優れる傾向にある。このため、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)及び(2)は、感光層中に均一に分散し易い。
更に、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)及び(2)とポリカーボネート樹脂(3)とが相溶性に優れる傾向にあるため、層密度が高い電荷輸送層を形成し易い。このため、感光体の耐摩耗性が優れると考えられる。よって、本実施形態に係る感光体は電気特性(例えば、感度特性)及び耐摩耗性を両立することができると考えられる。
以下、本実施形態に係る感光体を詳細に説明する。図1を参照して、感光体1の構造について説明する。図1は、本実施形態に係る感光体1の一例である感光体を示す概略断面図である。
図1(a)に示すように、感光体1は、導電性基体2と感光層3とを備える。感光層3は、電荷発生層3aと電荷輸送層3bとを備える。感光体1において、導電性基体2上に電荷発生層3aが設けられ、電荷発生層3a上に電荷輸送層3bが設けられる。
図1(b)に示すように、感光体1において、導電性基体2上に電荷輸送層3bが設けられ、電荷輸送層3b上に電荷発生層3aが設けられてもよい。
図1(c)に示すように、感光体1は、導電性基体2と感光層3と中間層(下引き層)4とを備えていてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に備えられる。また、感光層3上には、保護層が設けられていてもよい。
電荷発生層3a及び電荷輸送層3bの厚さは、それぞれの層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。電荷発生層3aの厚さは、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。電荷輸送層3bの厚さは、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
感光層3のうちの電荷発生層3aは、電荷発生層用バインダー樹脂(以下、ベース樹脂と記載することがある)を含んでもよい。電荷発生層3a及び電荷輸送層3bは、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。以下、感光体の各要素(導電性基体、電荷発生剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂、ベース樹脂、添加剤、及び中間層)を説明する。更に、感光体の製造方法を説明する。
<2.導電性基体>
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体としては、例えば、導電性を有する材料で形成される導電性基体、又は導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、又は真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせとしては、例えば、合金が挙げられる。これらの導電性を有する材料の中でも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状又はドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
<3.電荷発生剤>
電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(より具体的には、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、又はアモルファスシリコン等)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、又はキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フタロシアニン系顔料としては、例えば、化学式(C−1)で表される無金属フタロシアニン(以下、化合物(C−1)と記載することがある)又は金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、化学式(C−2)で表されるチタニルフタロシアニン(以下、化合物(C−2)と記載することがある)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、又はクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、Y型、V型、又はII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型又はY型結晶(以下、α型、β型、又はY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニンのV型結晶が挙げられる。クロロガリウムフタロシアニンの結晶としては、クロロガリウムフタロシアニンのII型結晶が挙げられる。
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましい。電荷輸送層にトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)又は(2)が含有される場合に感光体の電気特性を特に向上させるためには、電荷発生剤としてのY型チタニルフタロシアニンがより好ましい。
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。
(CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法)
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の一例について説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。
短波長レーザー光源を用いた画像形成装置に対して感光体を適用する場合には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。短波長レーザー光の波長は、例えば、350nm以上550nm以下である。
電荷発生剤の含有量は、電荷発生層に含有されるベース樹脂100質量部に対して、5質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、30質量部以上500質量部以下であることがより好ましい。
<4.正孔輸送剤>
[4−1.トリアリールアミンヒドラゾン誘導体]
正孔輸送剤は、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)又は(2)を含む。トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)及び(2)は、それぞれ一般式(1)及び(2)で表される。
一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。n及びkは、各々独立に、1以上3以下の整数を表す。u及びmは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。kが1を表す場合、異なるフェニル基に結合するR1は互いに同一であっても異なってもよい。異なるフェニル基に結合するR2は互いに同一であっても異なってもよい。uが2以上の整数を表す場合に、同一のフェニル基に結合する複数のR1は互いに同一でも異なっていてもよい。mが2以上の整数を表す場合に、同一のフェニル基に結合する複数のR2は互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(2)中、R3及びR4は、各々独立に、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。p及びqは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。異なるフェニル基に結合するR3は互いに同一であっても異なってもよい。異なるフェニル基に結合するR4は互いに同一であっても異なってもよい。pが2以上の整数を表す場合に、同一のフェニル基に結合する複数のR3は互いに同一でも異なっていてもよい。qが2以上の整数を表す場合に、同一のフェニル基に結合する複数のR4は互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(1)中、R1で表される炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R1及びR2で表される炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、置換基を有してよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、又は複素環基が挙げられる。
一般式(1)中、R1及びR2で表される炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、置換基を有してよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、又は複素環基が挙げられる。
一般式(1)中、R1及びR2で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、又は複素環基が挙げられる。
R1の置換位置は、アルケニル基との結合位置に対してフェニル基のオルト位(o位)、メタ位(m位)、又はパラ位(p位)が挙げられ、パラ位が好ましい。R2の置換位置は、窒素原子との結合位置に対してフェニル基のオルト位、メタ位、又はパラ位が挙げられる。
一般式(1)中、R1は炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表し、uは0又は1を表し、mは0を表すことが好ましい。
感光体の電気特性を更に向上させるために、一般式(1)中、nは、比較的大きい数を表すことが好ましく、2又は3を表すことがより好ましい。nの表す数は炭素−炭素二重結合の数を意味するため、nが増加するとトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)のπ共役系の空間的広がりが大きくなり、キャリア(正孔)の分子内移動距離が増加し、及び分子間移動距離が減少することで、キャリア(正孔)の受容性及び輸送性が更に向上すると考えられる。
感光体の耐摩耗性を更に向上させるために、一般式(1)中、nは、比較的小さい数を表すことが好ましく、1を表すことがより好ましい。
感光体の耐摩耗性を更に向上させるために、一般式(1)中、kは、比較的小さい数を表すことが好ましく、1を表すことがより好ましい。
一般式(2)中、R3で表される炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R3及びR4で表される炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、置換基を有してよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、又は複素環基が挙げられる。
一般式(2)中、R3及びR4で表される炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、置換基を有してよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、又は複素環基が挙げられる。
一般式(2)中、R3及びR4で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、又は複素環基が挙げられる。
R3及びR4の置換位置は、窒素原子との結合位置に対してフェニル基のオルト位、メタ位、又はパラ位が挙げられる。R3の置換位置は、パラ位が好ましい。
一般式(2)中、R3は炭素原子数1以上3以下のアルキル基又は炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基を表し、pは1を表し、qは0を表すことが好ましい。
トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)の具体例としては、化学式(HT−1)〜(HT−3)及び(HT−5)〜(HT−7)で表されるトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(以下、それぞれトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)〜(HT−3)及び(HT−5)〜(HT−7)と記載することがある)が挙げられる。トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(2)の具体例としては、化学式(HT−4)で表されるトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(以下、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−4)と記載することがある)が挙げられる。
これらトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)〜(HT−7)のうち、コストの観点から、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−4)及び(HT−6)が好ましい。
[4−2.トリアリールアミンヒドラゾン誘導体の製造]
[4−2−1.トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)の合成]
トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)は、例えば、反応式(R−1)〜(R−6)で表される反応式(以下、それぞれ反応(R−1)〜(R−6)と記載することがある)に従って又はこれに準ずる方法によって製造される。反応(R−1)〜(R−2)では、一般式(E)で表されるジフェニルアルケン誘導体(以下、ジフェニルアルケン誘導体(E)と記載することがある)を得る。反応(R−3)〜(R−5)では、一般式(L)で表されるヒドラゾン誘導体(以下、ヒドラゾン誘導体(L)と記載することがある)を得る。反応(R−6)では、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)を得る。
[反応(R−1)〜(R−2)]
反応(R−1)〜(R−2)において、R1及びuは、それぞれ一般式(1)中のR1及びuと同義である。Xはハロゲン原子を表し、塩素原子を表すことが好ましい。また、n1及びn2は、各々独立に、0以上の整数を表し、n1とn2とnとは、数式n=n1+n2+1を満たす。
反応(R−1)では、一般式(A)で表されるベンゼン誘導体(以下、ベンゼン誘導体(A)と記載することがある)と、化学式(B)で表される亜リン酸トリエチルとを反応させて、一般式(C)で表されるホスホナート誘導体(以下、ホスホナート誘導体(C)と記載することがある)を得る。
ベンゼン誘導体(A)と、亜リン酸トリエチルとの反応比[ベンゼン誘導体(A):亜リン酸トリエチル]は、物質量比(モル比)で1:1〜1:2.5であることが好ましい。ベンゼン誘導体(A)の物質量1モルに対して亜リン酸トリエチルの物質量が1モル以上であると、ホスホナート誘導体(C)の収率が低下しにくい。一方、ベンゼン誘導体(A)の物質量1モルに対して亜リン酸トリエチルの物質量が2.5モル以下であると、反応(R−1)の後に未反応の亜リン酸トリエチルが残留しにくく、ホスホナート誘導体(C)の精製が容易となる。反応(R−1)における反応温度は160℃以上200℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応(R−2)では、ホスホナート誘導体(C)と、一般式(D)で表されるアルデヒド誘導体(以下、アルデヒド誘導体(D)と記載することがある)とを反応させて、ジフェニルアルケン誘導体(E)を得る。反応(R−2)はWittig反応である。
ホスホナート誘導体(C)とアルデヒド誘導体(D)との反応比[ホスホナート誘導体(C):アルデヒド誘導体(D)]は、モル比で、1:1〜1:2.5であることが好ましい。ホスホナート誘導体(C)の物質量1モルに対してアルデヒド誘導体(D)の物質量が1モル以上であると、ジフェニルアルケン誘導体(E)の収率が低下しにくい。ホスホナート誘導体(C)の物質量1モルに対してアルデヒド誘導体(D)の物質量が2.5モル以下であると、未反応のアルデヒド誘導体(D)が残留しにくく、ジフェニルアルケン誘導体(E)の精製が容易となる。
反応(R−2)は、塩基の存在下にて行うことができる。用いられる塩基としては、例えば、ナトリウムアルコキシド(より具体的には、ナトリウムメトキシド、又はナトリウムエトキシド等)、金属水素化物(より具体的には、水素化ナトリウム、又は水素化カリウム等)、又は金属塩(より具体的には、n−ブチルリチウム等)が挙げられる。これらの塩基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
塩基の添加量は、アルデヒド誘導体(D)の物質量1モルに対して1モル以上2モル以下であることが好ましい。アルデヒド誘導体(D)の物質量1モルに対して塩基の添加量が1モル以上であると、反応性が低下しにくい。一方、アルデヒド誘導体(D)の物質量1モルに対して塩基の添加量が2モル以下であると、反応の制御が容易となる。
反応(R−2)は、溶剤中で行うことができる。溶剤としては、例えば、エーテル類(より具体的には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、又はジオキサン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、又はジクロロエタン等)、又は芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、又はトルエン等)が挙げられる。
反応(R−2)では、反応温度は0℃以上50℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上24時間以下であることが好ましい。
[反応(R−1’)〜(R−2’)]
また、ジフェニルアルケン誘導体(E)は、反応式(R−1’)〜(R−2’)で表される反応(以下、それぞれ反応(R−1’)〜(R−2’)と記載することがある)によって得ることもできる。反応(R−1’)〜(R−2’)において、R1及びuは、それぞれ一般式(1)中のR1及びuと同義である。Xはハロゲン原子を表し、塩素原子を表すことが好ましい。また、n3及びn4は、各々独立に、0以上の整数を表し、n3とn4とnとは、数式n=n3+n4+1を満たす。
反応(R−1’)〜(R−2’)では、反応(R−1)〜(R−2)に比べて、置換基R1を有する反応物質(Reactant)からホスホナート誘導体を合成し、最終的にジフェニルアルケン誘導体(E)を合成する点で異なる。詳しくは、反応(R−1’)は、ベンゼン誘導体(A)を一般式(A’)で表されるベンゼン誘導体(以下、ベンゼン誘導体(A’)記載することがある)に変更した以外は、反応(R−1)と同様の反応である。また、反応(R−2’)は、ホスホナート誘導体(C)及びアルデヒド誘導体(D)をそれぞれ一般式(C’)で表されるホスホナート誘導体(以下、ホスホナート誘導体(C’)と記載することがある)及び一般式(D’)で表されるアルデヒド誘導体(以下、アルデヒド誘導体(D’)と記載することがある)に変更した以外は、反応(R−2)と同様の反応である。
[反応(R−3)〜(R−5)]
反応(R−3)〜(R−5)において、R2及びmは、それぞれ一般式(1)中のR2及びmと同義である。Xはハロゲン原子を表し、塩素原子を表すことが好ましい。
反応(R−3)では、一般式(F)で表されるベンゼン誘導体(以下、ベンゼン誘導体(F)と記載することがある)と、化学式(B)で表される亜リン酸トリエチルとを反応させて、一般式(G)で表されるホスホナート誘導体(以下、ホスホナート誘導体(G)と記載することがある)を得る。
ベンゼン誘導体(F)と、亜リン酸トリエチルとの反応比[ベンゼン誘導体(F):亜リン酸トリエチル]は、モル比で1:1〜1:2.5であることが好ましい。ベンゼン誘導体(F)の物質量1モルに対して亜リン酸トリエチルの物質量が1モル以上であると、ホスホナート誘導体(G)の収率が低下しにくい。一方、ベンゼン誘導体(F)の物質量1モルに対して亜リン酸トリエチルの物質量が2.5モル以下であると、反応(R−3)の後に未反応の亜リン酸トリエチルが残留しにくく、ホスホナート誘導体(G)の精製が容易となる。反応(R−3)では、反応温度は160℃以上200℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応式(R−4)では、ホスホナート誘導体(G)と、化学式(H)で表されるテレフタルアルデヒドとを反応させて、一般式(J)で表されるジフェニルエテン誘導体(以下、ジフェニルエテン誘導体(J)と記載することがある)を得る。反応(R−4)はWittig反応である。
ホスホナート誘導体(G)とテレフタルアルデヒドとの反応比[ホスホナート誘導体(G):テレフタルアルデヒド]は、モル比で、1:1〜1:2.5であることが好ましい。ホスホナート誘導体(G)の物質量1モルに対してテレフタルアルデヒドの物質量が1モル以上であると、ジフェニルエテン誘導体(J)の収率が低下しにくい。ホスホナート誘導体(G)の物質量1モルに対してテレフタルアルデヒドの物質量が2.5モル以下であると、未反応のテレフタルアルデヒドが残留しにくく、ジフェニルエテン誘導体(J)の精製が容易となる。
反応(R−4)は、塩基の存在下にて行うことができる。用いられる塩基としては、例えば、反応(R−2)で例示した塩基が挙げられる。塩基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
塩基の添加量は、テレフタルアルデヒドの物質量1モルに対して1モル以上2モル以下であることが好ましい。テレフタルアルデヒドの物質量1モルに対して塩基の添加量が1モル以上であると、反応性が低下しにくい。一方、テレフタルアルデヒドの物質量1モルに対して塩基の添加量が2モル以下であると、反応の制御が容易となる。
反応(R−4)は、溶剤中で行うことができる。溶剤としては、例えば、反応(R−2)で例示した溶媒が挙げられる。
反応(R−4)では、反応温度は0℃以上50℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上24時間以下であることが好ましい。
反応(R−5)では、アルデヒドであるジフェニルエテン誘導体(J)と、第1級アミンであり化学式(K)で表されるアミン誘導体(以下、アミン誘導体(K)と記載することがある)(第1級アミン)とを触媒の存在下で縮合反応させて、酸化させることでヒドラゾン誘導体(L)を得る。アミン誘導体(K)は、塩(例えば、塩酸塩)の形態で添加されてもよい。ジフェニルエテン誘導体(J)とアミン誘導体(K)との反応比[ジフェニルエテン誘導体(J):アミン誘導体(K)]は、モル比で1:1〜1:2.5であることが好ましい。ジフェニルエテン誘導体(J)の物質量1モルに対してアミン誘導体(K)の物質量が1モル以上であると、ヒドラゾン誘導体(L)の収率が低下しにくい。ジフェニルエテン誘導体(J)の物質量1モルに対してアミン誘導体(K)の物質量が2.5モル以下であると、未反応のアミン誘導体(K)が残留しにくく、ヒドラゾン誘導体(L)の精製が容易となる。反応(R−5)では、反応温度は80℃以上140℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。反応(R−5)は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、又はN,N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。反応(R−5)は、酸触媒の存在下で行うことができる。酸触媒としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、濃硫酸、又は塩酸が挙げられる。
[反応(R−6)]
反応(R−6)において、R1、R2、u、m、n、及びkは、それぞれ一般式(1)中のR1、R2、u、m、n、及びkと同義である。Xはハロゲン原子を表し、塩素原子を表すことが好ましい。
反応(R−6)は、例えば、反応式(R−7)〜(R−8)で表される反応(以下、それぞれ反応(R−7)〜(R−8)と記載することがある)、又は反応式(R−7’)〜(R−8’)で表される反応(以下、それぞれ反応(R−7’)〜(R−8’)と記載することがある)で、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)を得る。
反応(R−7)〜(R−8)では、まず、LiNH2(リチウムアミド)にジフェニルアルケン誘導体(E)を反応させて中間生成物であるアミン誘導体(M)を生成し、次いで、ヒドラゾン誘導体(L)と、得られたアミン誘導体(M)とを反応させてトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)を生成する。反応(R−7)〜(R−8)において、R1、R2、u、m、及びnは、それぞれ一般式(1)中のR1、R2、u、m、及びnと同義である。Xはハロゲン原子を表し、塩素原子を表すことが好ましい。
反応式(R−7)では、例えば、(3−k)モル当量のジフェニルアルケン誘導体(E)と、1モル当量のリチウムアミド(LiNH2)とを反応させて、中間生成物であるアミン誘導体(M)(反応式(R−7)〜(R−8)では不記載)を得る。反応(R−7)はカップリング反応である。上記kは、一般式(1)中のkと同義である。kが3を表す場合、反応(R−7)を経ずに後述する反応(R−8)のみを経る。かかる場合、アミン誘導体(M)をリチウムアミドに変更する以外は、反応(R−8)と同様にしてトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)を得る。例えば、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−7)を合成する場合である。
ジフェニルアルケン誘導体(E)とリチウムアミドとの反応比[ジフェニルアルケン誘導体(E):リチウムアミド]は、モル比で、5:1〜1:1であることが好ましい。リチウムアミドの物質量1モルに対してジフェニルアルケン誘導体(E)の物質量が1モル以上であると、アミン誘導体(M)の収率が低下しにくい。一方、リチウムアミドの物質量1モルに対してジフェニルアルケン誘導体(E)の物質量が5モル以下であると、反応(R−7)の後に、未反応のジフェニルアルケン誘導体(E)が残留しにくく、アミン誘導体(M)の精製が容易となる。
反応(R−7)では、反応温度は80℃以上140℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応(R−7)では、触媒としてパラジウム化合物を用いることが好ましい。これにより、反応式(R−7)における活性化エネルギーを低下させることができる。その結果、アミン誘導体(M)の収率をより向上させることができる。
パラジウム化合物としては、例えば、四価パラジウム化合物類、二価パラジウム化合物類、又はその他のパラジウム化合物類が挙げられる。四価パラジウム化合物類としては、例えば、ヘキサクロルパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、又はヘキサクロルパラジウム(IV)酸カリウム四水和物が挙げられる。二価パラジウム化合物類としては、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセテート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラミンパラジウム(II)、又はジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)が挙げられる。その他のパラジウム化合物類としては、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0)、又はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。また、パラジウム化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
パラジウム化合物の添加量は、ジフェニルアルケン誘導体(E)の物質量1モルに対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
パラジウム化合物は、配位子を含む構造であってもよい。これにより、反応(R−7)の反応性を向上させることができる。配位子としては、例えば、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフリルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ(t−ブチル)ホスフィン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、又は2,2’−ビス[(ジフェニルホスフィノ)ジフェニル]エーテルが挙げられる。配位子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。配位子の添加量は、ジフェニルアルケン誘導体(E)の物質量1モルに対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
反応(R−7)は、塩基の存在下で行われることが好ましい。これにより、反応系中で発生するハロゲン化水素がすみやかに中和され、触媒活性を向上させることができる。その結果、アミン誘導体(M)の収率を向上させることができる。
塩基は、無機塩基であってもよいし、有機塩基であってもよい。有機塩基としては、例えば、アルカリ金属アルコシド(より具体的には、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、又はカリウムtert−ブトキシド等)が好ましく、ナトリウムメトキシドがより好ましい。無機塩基としては、例えば、リン酸三カリウム、又はフッ化セシウムが挙げられる。
反応(R−7)は、溶剤中で行うことができる。溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン、又はジメチルホルムアミドが挙げられる。
反応(R−8)では、例えば、kモル当量のヒドラゾン誘導体(L)と、反応(R−7)で得られた1モル当量のアミン誘導体(M)とを反応させて、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)を得る。反応(R−8)はカップリング反応である。上記kは、一般式(1)中のkと同義である。
ヒドラゾン誘導体(L)と、アミン誘導体(M)との反応比[ヒドラゾン誘導体(L):中間体化合物]は、モル比で、5:1〜1:1であることが好ましい。ヒドラゾン誘導体(L)物質量がアミン誘導体(M)の物質量1モルに対して1モル以上であると、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)の収率が低下しにくい。一方、ヒドラゾン誘導体(L)物質量がアミン誘導体(M)の物質量1モルに対して5モル以下であると、反応(R−8)の後に未反応のヒドラゾン誘導体(L)が残留しにくく、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)の精製が容易となる。
反応(R−8)では、反応温度は80℃以上140℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応(R−8)では、触媒としてパラジウム化合物を用いることが好ましい。これにより、反応(R−8)における活性化エネルギーを低下させることができる。その結果、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)の収率をより向上させることができる。
パラジウム化合物としては、例えば、反応(R−7)で例示されるパラジウム化合物が挙げられる。パラジウム化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
パラジウム化合物の添加量は、ヒドラゾン誘導体(L)の物質量1モルに対して0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
このようなパラジウム触媒は、配位子を含む構造であってもよい。これにより、反応(R−8)の反応性を向上させることができる。配位子としては、例えば、反応(R−7)で例示される配位子が挙げられる。配位子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。配位子の添加量は、ヒドラゾン誘導体(L)の物質量1モルに対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
反応(R−8)は、塩基の存在下で行われることが好ましい。これにより、反応系中で発生するハロゲン化水素がすみやかに中和され、触媒活性を向上させることができる。その結果、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)の収率を向上させることができる。
塩基は、無機塩基であってもよいし、有機塩基であってもよい。有機塩基及び無機塩基としては、例えば、反応式(R−7)で例示される有機塩基及び無機塩基が挙げられる。
ヒドラゾン誘導体(L)の物質量1モルに対して、パラジウム化合物を0.0005モル以上20モル以下加えた場合、塩基の添加量は、1モル以上10モル以下であることが好ましく、1モル以上5モル以下であることがより好ましい。
反応(R−8)は、溶剤中で行うことができる。溶剤としては、例えば、反応式(R−7)で表される反応で例示される溶剤が挙げられる。
[反応(R−7’)〜(R−8’)]
反応(R−7’)〜(R−8’)では、例えば、1モル当量のLiNH2にkモル当量のヒドラゾン誘導体(L)を反応させて中間生成物であるアミン誘導体(N)を生成し、次いで、ジフェニルアルケン誘導体(E)と、得られたアミン誘導体(N)(反応式(R−7’)〜(R−8’)では不記載)とを反応させてトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)を生成する。反応(R−7’)〜(R−8’)において、R1、R2、u、m、及びnは、それぞれ一般式(1)中のR1、R2、u、m、及びnと同義である。Xはハロゲン原子を表し、塩素原子を表すことが好ましい。上記kは、一般式(1)中のkと同義である。
反応(R−7’)は、ジフェニルアルケン誘導体(E)をヒドラゾン誘導体(L)に変更し、反応比を変更した以外は、反応(R−7)と同様の反応である。反応(R−8’)は、ジフェニルアルケン誘導体(E)とLiNH2との反応で生成するアミン誘導体(M)を、ヒドラゾン誘導体(L)とLiNH2との反応で生成するアミン誘導体(N)に変更し、反応比を変更し、及びヒドラゾン誘導体(L)をジフェニルアルケン誘導体(E)に変更した以外は、反応(R−8)と同様の反応である。
なお、kが3を表すトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)を合成する場合(例えば、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−7)を合成する場合)、反応(R−7’)において、反応物質(Reactant)の物質量の比率(LiNH2:ヒドラゾン誘導体(L))を、例えば1:3として合成することができる。かかる場合、反応(R−8’)を経ないでkが3を表すトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)を得る。
これらの反応以外に必要に応じて適宜な工程(例えば、精製工程)を含んでもよい。精製方法としては、例えば、公知の方法(より具体的には、ろ過、クロマトグラフィー、又は晶折等)が挙げられる。
[4−2−2.トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(2)の合成]
トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(2)は、例えば、反応式(R−9)で表される反応(以下、反応(R−9)と記載することがある)に従って又はこれに準ずる方法によって製造される。
反応(R−9)において、R3、R4、p、及びqは、それぞれ一般式(2)中のR3、R4、p、及びqと同義である。Xは、ハロゲン原子を表し、塩素原子を表すことが好ましい。
反応(R−9)では、例えば、1モル当量の化学式(P)で表されるヒドラゾン誘導体(以下、ヒドラゾン誘導体(P)と記載することがある)と、1モル当量の化学式(Q)で表されるジフェニルアミン誘導体(以下、ジフェニルアミン誘導体(Q)と記載することがある)とを反応させて、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(2)を合成する。
ヒドラゾン誘導体(P)と、ジフェニルアミン誘導体(Q)との反応比[ヒドラゾン誘導体(P):ジフェニルアミン誘導体(Q)]は、モル比で、5:1〜1:1であることが好ましい。ヒドラゾン誘導体(P)の物質量がジフェニルアミン誘導体(Q)の物質量1モルに対して1モル以上であると、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(2)の収率が低下しにくい。一方、ヒドラゾン誘導体(P)の物質量がジフェニルアミン誘導体(Q)の物質量1モルに対して5モル以下であると、反応(R−9)の後に未反応のヒドラゾン誘導体(P)が残留しにくく、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(2)の精製が容易となる。
反応(R−9)では、反応温度は80℃以上140℃以下であることが好ましく、反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応(R−9)では、触媒としてパラジウム化合物を用いることが好ましい。これにより、反応(R−9)における活性化エネルギーを低下させることができる。その結果、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(2)の収率をより向上させることができる。
パラジウム化合物としては、例えば、反応(R−7)で例示されるパラジウム化合物が挙げられる。パラジウム化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
パラジウム化合物の添加量は、ヒドラゾン誘導体(P)の物質量1モルに対して0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
このようなパラジウム触媒は、配位子を含む構造であってもよい。これにより、反応(R−9)の反応性を向上させることができる。配位子としては、例えば、反応(R−7)で例示される配位子が挙げられる。配位子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。配位子の添加量は、ヒドラゾン誘導体(P)の物質量1モルに対して、0.0005モル以上20モル以下であることが好ましく、0.001モル以上1モル以下であることがより好ましい。
反応(R−9)は、塩基の存在下で行われることが好ましい。これにより、反応系中で発生するハロゲン化水素がすみやかに中和され、触媒活性を向上させることができる。その結果、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(2)の収率を向上させることができる。
塩基は、無機塩基であってもよいし、有機塩基であってもよい。有機塩基及び無機塩基としては、例えば、反応(R−7)で例示する有機塩基及び無機塩基が挙げられる。
ヒドラゾン誘導体(P)の物質量1モルに対して、パラジウム化合物を0.0005モル以上20モル以下を加えた場合、塩基の添加量は、1モル以上10モル以下であることが好ましく、1モル以上5モル以下であることがより好ましい。
反応(R−9)は、溶剤中で行うことができる。溶剤としては、例えば、反応(R−7)で例示する溶剤が挙げられる。
これらの反応以外に、必要に応じて適宜な工程(例えば、精製工程)を含んでもよい。精製方法としては、例えば、公知の方法(より具体的には、ろ過、クロマトグラフィー、又は晶折等)が挙げられる。
[4−3.他の正孔輸送剤]
感光層は、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)及び(2)以外の正孔輸送剤を含有してもよい。このような正孔輸送剤としては、例えば、含窒素環式化合物又は縮合多環式化合物を使用することができる。含窒素環式化合物及び縮合多環式化合物としては、例えば、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体又はN,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物又はトリアゾール系化合物が挙げられる。これらの正孔輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)又は(2)の含有量は、感光層に含有される正孔輸送剤100質量部に対して、80質量以上であることが好ましく、90質量部以上であることがより好ましく、100質量部であることが更に好ましい。
正孔輸送剤の含有量は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
<5.バインダー樹脂>
バインダー樹脂は、ポリカーボネート樹脂(3)を含む。ポリカーボネート樹脂(3)は、一般式(3)で表される繰返し単位を有する。
一般式(3)中、R5、R6、R7、及びR8は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。R7及びR8は、互いに結合して形成される炭素原子数3以上8以下のシクロアルキリデン基を表してもよい。
一般式(3)中、R5及びR6の表す炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基が好ましい。R7及びR8の表す炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(3)中、R7及びR8が互いに結合して形成される炭素原子数3以上8以下のシクロアルキリデン基は、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基がより好ましく、シクロヘキシリデン基が好ましい。
一般式(3)中、R5、R6、R7、及びR8は、各々独立に、水素原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、R7及びR8は互いに異なる、又はR7及びR8は互いに結合して形成される炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基を表すことが好ましい。
感光体の電気特性を更に向上させるために、一般式(3)中、R7及びR8は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は互いに結合して形成される炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基を表すことが好ましい。
感光体の耐摩耗性を更に向上させるために、一般式(3)中、R7及びR8は、互いに結合して形成される炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基を表すことが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(3)の具体例としては、化学式(Resin−1)〜(Resin−4)で表される繰返し単位を有するポリカーボネート樹脂(以下、それぞれポリカーボネート樹脂(Resin−1)〜(Resin−4)と記載することがある)が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(3)の製造方法は、ポリカーボネート樹脂(3)を製造できれば、特に限定されない。これらの製造方法として、例えば、ホスゲン法、エステル交換反応させる方法、又は他の公知の方法が挙げられる。ホスゲン法は、ポリカーボネート樹脂(3)の繰返し単位を形成するためのジオール化合物(例えば、一般式(3−1)で表されるジオール化合物)とジハロゲン化カルボニルとを界面縮重合させる方法である。エステル交換させる方法は、ジオール化合物とジフェニルカーボネートとをエステル交換反応させる方法である。界面重縮合反応は、例えば、ジハロゲン化カルボニル(より具体的には、ホスゲン等)を用いて、酸結合剤及び溶媒の存在下で行われてもよい。なお、一般式(3−1)中のR5、R6、R7、及びR8は、それぞれ一般式(3)中のR5、R6、R7、及びR8と同義である。
バインダー樹脂は、ポリカーボネート樹脂(3)以外の他のバインダー樹脂を含んでもよい。他のバインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネート樹脂(3)以外のポリカーボネート樹脂)、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂又はポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂又はメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ−アクリル酸系樹脂(エポキシ化合物のアクリル酸誘導体付加物)又はウレタン−アクリル酸系樹脂(ウレタン化合物のアクリル酸誘導体付加物)が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、40,000以上であることが好ましく、40,000以上52,500以下であることがより好ましく、45,000以上50,500以下であることが更に好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が40,000以上であると、感光体の耐摩耗性を向上させ易い。バインダー樹脂の粘度平均分子量が52,500以下であると、感光層の形成時にバインダー樹脂が溶剤に溶解し易くなり、電荷輸送層用塗布液の粘度が高くなり過ぎない。その結果、電荷輸送層を形成し易くなる。
<6.ベース樹脂>
電荷発生層はベース樹脂を含有する。ベース樹脂は、感光体に適用できるベース樹脂である限り、特に制限されない。ベース樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂又はポリエステル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂又はその他架橋性の熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ−アクリル酸系樹脂(エポキシ化合物のアクリル酸誘導体付加物)又はウレタン−アクリル酸系樹脂(ウレタン化合物のアクリル酸誘導体付加物)が挙げられる。ベース樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電荷発生層に含有されるベース樹脂は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂とは異なることが好ましい。ベース樹脂がバインダー樹脂と異なれば、電荷輸送層に用いる溶剤にベース樹脂が溶解しにくく、電荷輸送層形成の際に、電荷発生層のベース樹脂が溶解しにくく、均一な電荷発生層を形成し易いからである。一般的に、感光体の製造では、例えば、導電性基体上に電荷発生層を形成し、電荷発生層上に電荷輸送層を形成する。このため、電荷輸送層を形成する際に、電荷発生層上に電荷輸送層用塗布液を塗布する。
<7.添加剤>
感光体の感光層は、必要に応じて、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(より具体的には、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、消光剤、又は紫外線吸収剤等)、電子アクセプター化合物、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、又はレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール(より具体的には、ジ(tert−ブチル)p−クレゾール等)、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、スピロクロマン、スピロインダノン若しくはこれらの誘導体、有機硫黄化合物、又は有機燐化合物が挙げられる。
<8.中間層>
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
無機粒子としては、例えば、金属(より具体的には、アルミニウム、鉄、又は銅)、金属酸化物(より具体的には、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、又は酸化亜鉛等)の粒子、又は非金属酸化物(より具体的には、シリカ等)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤は、感光層の添加剤と同様である。
<9.感光体の製造方法>
感光体は、例えば、以下のように製造される。まず、電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液を調製する。電荷発生層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、電荷発生層を形成する。続いて、電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布し、乾燥させることによって、電荷輸送層を形成する。これにより、感光体が製造される。
電荷発生剤及び必要に応じて添加される成分(例えば、ベース樹脂及び各種の添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより、電荷発生層用塗布液は調製される。正孔輸送剤としてのトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)又は(2)、バインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂(3)、及び必要に応じて添加される成分(例えば、電子アクセプター化合物、及び各種添加剤)を溶剤に溶解又は分散させることにより、電荷輸送層用塗布液は調製される。
電荷発生層用塗布液、及び電荷輸送層用塗布液(以下、塗布液と記載することがある)に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノール)、脂肪族炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン、又はシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、又はクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸エチル又は酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。感光体の製造時の作業性を向上させるためには、溶剤として非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散機を用いることができる。
塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
塗布液を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、又はバーコート法が挙げられる。
塗布液を乾燥する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
以上、本実施形態に係る感光体について説明した。本実施形態の感光体によれば、感光体の電気特性を向上させることができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
<1.感光体の材料>
電荷発生層及び電荷輸送層を形成するための材料として、以下の正孔輸送剤、電荷発生剤、バインダー樹脂を準備した。
[1−1.正孔輸送剤]
正孔輸送剤として、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)〜(HT−7)を準備した。トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)〜(HT−7)は、それぞれ以下の方法で製造した。
[1−1−1.トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)の製造]
反応式(r−1)〜(r−5)及び反応式(r−7)〜(r−8)で表される反応(以下、それぞれ反応(r−1)〜(r−5)及び反応(r−7)〜(r−8)と記載することがある)に従ってトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)を合成した。反応(r−1)〜(r−2)では、ジフェニルアルケン誘導体(1E)を得た。反応(r−3)〜(r−5)では、ヒドラゾン誘導体(1L)を得た。次いで、反応(r−7)〜(r−8)では、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)を得た。以下、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)の合成方法を詳細に説明する。
[ジフェニルアルケン誘導体(1E)]
反応(r−1)〜(r−2)に従って、ジフェニルアルケン誘導体(1E)を合成した。
(ホスホナート誘導体(1C)の合成)
反応(r−1)では、200mL容のフラスコに、ベンゼン誘導体(1A)(16.1g、0.1mol)と、化学式(B)で表される亜リン酸トリエチル(25g、0.15mol)とを加え、180℃で8時間攪拌した後、室温まで冷却した。その後、未反応の又は残留した亜リン酸トリエチルを減圧留去し、ホスホナート誘導体(1C)を白色液体として得た。ホスホナート誘導体(1C)のベンゼン誘導体(1A)からの収量は、24.1g(収率:92モル%)であった。
(ジフェニルアルケン誘導体(1E)の合成)
反応(r−2)では、500mL容の二口フラスコに、得られたホスホナート誘導体(1C)(13g、0.05mol)を0℃で加えた。フラスコ内を、アルゴンガスで置換した。その後、フラスコ内に、乾燥テトラヒドロフラン(100mL)と28%ナトリウムメトキシド(9.3g、0.05mol)とを加え、30分間攪拌した。その後、乾燥テトラヒドロフラン(300mL)中のアルデヒド誘導体(1D)(7g、0.05mol)を加え、室温で12時間攪拌した。得られた混合物を、イオン交換水に注ぎ、トルエンで抽出した。得られた有機層を、イオン交換水で5回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。得られた残渣を、トルエン/メタノール(20mL/100mL)で精製し、ジフェニルアルケン誘導体(1E)を白色結晶として得た。ジフェニルアルケン誘導体(1E)のホスホナート誘導体(1C)からの収量は、9.8g(収率:80モル%)であった。
[ヒドラゾン誘導体(1L)]
反応(r−3)〜(r−5)に従って、ヒドラゾン誘導体(1L)を合成した。
(ホスホナート誘導体(1G)の合成)
上述したホスホナート誘導体(1C)の合成と同様の方法により、反応(r−3)に従って、ベンゼン誘導体(1F)と化学式(B)で表される亜リン酸トリエチルとからホスホナート誘導体(1G)を得た。
(ジフェニルエテン誘導体(1J)の合成)
反応(r−4)では、500mL容の二口フラスコに、得られたホスホナート誘導体(1G)(13g、0.05mol)を0℃で加えた。フラスコ内を、アルゴンガスで置換した。その後、フラスコ内に、乾燥テトラヒドロフラン(100mL)と28%ナトリウムメトキシド(9.3g、0.05mol)とを加え、30分間攪拌した。その後、乾燥テトラヒドロフラン(300mL)中の化学式(H)で表されるテレフタルアルデヒド(13.4g、0.1mol)を加え、室温で12時間攪拌した。得られた混合物を、イオン交換水に注ぎ、トルエンで抽出した。得られた有機層をイオン交換水で5回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。得られた残渣を、トルエン/メタノール(20mL/100mL)で精製し、ジフェニルエテン誘導体(1J)を白色結晶として得た。ジフェニルエテン誘導体(1J)のホスホナート誘導体(1G)からの収量は、6.5g(収率:56モル%)であった。
(ヒドラゾン誘導体(1L)の合成)
反応(r−5)では、ジフェニルエテン誘導体(1J)11g(0.045モル)と、ジフェニルヒドラジン塩酸塩(1K)10g(0.045モル)と、トルエン100mLとをフラスコに投入し、トルエン溶液を調製した。調製したトルエン溶液に更に、p−トルエンスルホン酸を0.0045モル当量投入した。Dean−Stark反応管を備えた装置に、フラスコをセットし、4時間、脱水し還流した。反応後、フラスコ内容物をイオン交換水に加え、トルエンを用いて抽出した。得られた有機層(トルエン)をイオン交換水で5回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、溶媒を留去した。その結果、残渣を得た。得られた残渣をトルエン/エタノール(体積比V/V=1/9)で晶析し、ヒドラゾン誘導体(1L)を白色結晶として得た。ヒドラゾン誘導体(1L)のジフェニルエテン誘導体(1J)からの収量は、12.5g(収率67モル%)であった。
[トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)]
反応(r−7)〜(r−8)に従って、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)を合成した。
反応(r−7)では、三口フラスコに、反応(r−2)で得られたジフェニルアルケン誘導体(1E)5.2g(0.02mol)、トリシクロヘキシルホスフィン0.0662g(0.000189mol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.0864g(0.0000944mol)、ナトリウムt−ブトキシド4g(0.042mol)、リチウムアミド(LiNH2)0.24g(0.010mol)、及び蒸留したо−キシレン(500mL)を加えた。フラスコ内を、アルゴンガスで置換した。その後、フラスコ内容物を、120℃で5時間攪拌し、室温まで冷却した。得られた混合物を、イオン交換水で3回洗浄し、有機層を得た。有機層に、無水硫酸ナトリウムと活性白土とを加え、乾燥処理及び吸着処理を行った。その後、得られた有機層を減圧留去し、о−キシレンを除去した。得られた残渣を、クロロホルム/ヘキサン(体積比V/V=1/1)で晶析し、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)の中間生成物(アミン誘導体(1M))を得た。アミン誘導体(1M)は、反応式(r−7)〜(r−8)において記載していない。得られたアミン誘導体(1M)のジフェニルアルケン誘導体(1E)からの収量は2.7g(収率:61モル%)であった。
反応(r−8)では、三口フラスコに、反応(r−7)で得られたアミン誘導体(1M)(2.6g、0.006mol)、反応(r−5)で得られたヒドラゾン誘導体(1L)(2.4g、0.006mol)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.020543g、5.87×10-5mol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.026853g、2.93×10-5mol)、ナトリウムtert−ブトキシド(1g、0.010mol)、及び蒸留したо−キシレン(200mL)を加えた。フラスコ内を、アルゴンガスで置換した。その後、フラスコ内容物を、120℃で5時間攪拌し、室温まで冷却した。得られた混合物を、イオン交換水で3回洗浄し、有機層を得た。有機層に、無水硫酸ナトリウムと活性白土とを加え、乾燥処理及び吸着処理を行った。その後、得られた有機層を減圧留去し、о−キシレンを除去した。得られた残渣を、展開溶媒としてクロロホルム/ヘキサン(体積比V/V=1/1)を用いて晶析し、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)を得た。アミン誘導体(1M)からのトリアリールヒドラゾン誘導体(HT−1)の収量は3.1g(収率:66モル%)であった。
[1−1−2.トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−2)〜(HT−3)及び(HT−6)の製造]
以下の点を変更した以外は、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)の製造と同様の方法で、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−2)〜(HT−3)及び(HT−6)をそれぞれ製造した。なお、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−2)〜(HT−3)及び(HT−6)の製造において使用される各反応物(Reactant)の物質量は、特に記載がなければ、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)の製造において対応する反応物の物質量と同じである。
表1にジフェニルアルケン誘導体(E)及びLiNH2の添加量、これらの反応比、並びにアミン誘導体(M)の収量及び収率を示す。反応(r−7)で使用するジフェニルアルケン誘導体(1E)をジフェニルアルケン誘導体(2E)〜(4E)の何れかに変更した。その結果、中間生成物であるアミン誘導体(1M)の代わりにアミン誘導体(2M)〜(4M)の何れかを得た。表1中、反応比は、反応(r−7)におけるジフェニルアルケン誘導体(E)及びLiNH2の物質量の比率(ジフェニルアルケン誘導体(E)の物質量:リチウムアミドの物質量)を示す。また、ジフェニルアルケン誘導体(2E)〜(4E)の構造をそれぞれ以下に示す。
表2にアミン誘導体(M)及びヒドラゾン誘導体(L)の添加量、これらの反応比、並びにトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(1)の収量及び収率を示す。反応(r−8)で使用するアミン誘導体(1M)をアミン誘導体(2M)〜(4M)の何れかに変更した。その結果、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)の代わりに、それぞれトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−2)〜(HT−3)及び(HT−6)を得た。表2中、反応比は、反応(r−8)におけるアミン誘導体(M)及びヒドラゾン誘導体(L)の物質量の比率(アミン誘導体(M)の物質量:ヒドラゾン誘導体(L)の物質量)を示す。
(ジフェニルアルケン誘導体(2E)及び(4E)の合成)
反応(r−7)で使用したジフェニルアルケン誘導体(2E)及び(4E)は、以下の方法で製造した。表3にホスホナート誘導体(C)及びアルデヒド誘導体(D)の添加量、これらの反応比、並びにジフェニルアルケン誘導体(E)の収量及び収率を示す。反応(r−2)で使用するホスホナート誘導体(1C)をホスホナート誘導体(2C)又は(4C)に変更した。その結果、ジフェニルアルケン誘導体(1E)の代わりにそれぞれジフェニルアルケン誘導体(2E)又は(4E)を得た。表3中、反応比は、反応(r−2)におけるホスホナート誘導体(C)及びアルデヒド誘導体(D)の物質量の比率(ホスホナート誘導体(C)の物質量:アルデヒド誘導体(D)の物質量)を示す。また、アルデヒド誘導体(2D)及び(4D)の構造をそれぞれ以下に示す。
(ジフェニルアルケン誘導体(3E)の合成)
反応(r−2’)に従って、反応(r−7)で使用したジフェニルアルケン誘導体(3E)を合成した。
反応(r−2’)では、500mL容の二口フラスコに、得られたホスホナート誘導体(3C’)(13g、0.05mol)を0℃で加えた。フラスコ内を、アルゴンガスで置換した。その後、フラスコ内に、乾燥テトラヒドロフラン(100mL)と28%ナトリウムメトキシド(9.3g、0.05mol)とを加え、30分間攪拌した。その後、乾燥テトラヒドロフラン(300mL)中のアルデヒド誘導体(3D’)(6g、0.05mol)を加え、室温で12時間攪拌した。得られた混合物を、イオン交換水に注ぎ、トルエンで抽出した。得られた有機層を、イオン交換水で5回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。得られた残渣を、トルエン/メタノール(20mL/100mL)で精製し、ジフェニルアルケン誘導体(3E)を白色結晶として得た。ジフェニルアルケン誘導体(3E)のホスホナート誘導体(3C’)からの収量は、9.6g(収率:88モル%)であった。
(ホスホナート誘導体(3C’)の合成)
反応(r−1’)に従って、反応(r−2’)で使用したホスホナート誘導体(3C’)を合成した。
反応(r−1’)では、200mL容のフラスコに、ベンゼン誘導体(3A’)(15.2g、0.1mol)と、化学式(B)で表される亜リン酸トリエチル(25g、0.15mol)とを加え、180℃で8時間攪拌した後、室温まで冷却した。その後、未反応の又は残留した亜リン酸トリエチルを減圧留去し、ホスホナート誘導体(3C’)を白色液体として得た。ホスホナート誘導体(3C’)のベンゼン誘導体(3A’)からの収量は、23.5g(収率:92モル%)であった。
[1−1−3.トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−5)の製造]
反応式(r−7’)〜(r−8’)で表される反応(以下、それぞれ反応(r−7’)〜(r−8’)と記載することがある)に従って、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−5)を製造した。
反応(r−7’)では、三口フラスコに、反応(r−5)で得られたヒドラゾン誘導体(1L)8.2g(0.02mol)、トリシクロヘキシルホスフィン0.0662g(0.000189mol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.0864g(0.0000944mol)、ナトリウムtert−ブトキシド4g(0.042mol)、リチウムアミド(LiNH2)0.24g(0.010mol)、及び蒸留したо−キシレン(500mL)を加えた。フラスコ内を、アルゴンガスで置換した。その後、フラスコ内容物を、120℃で5時間攪拌し、室温まで冷却した。得られた混合物を、イオン交換水で3回洗浄し、有機層を得た。有機層に、無水硫酸ナトリウムと活性白土とを加え、乾燥処理及び吸着処理を行った。その後、得られた有機層を減圧留去し、о−キシレンを除去した。得られた残渣を、クロロホルム/ヘキサン(体積比V/V=1/1)で晶析し、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−5)の中間生成物(アミン誘導体(5N))を得た。アミン誘導体(5N)は、反応式(r−7’)〜(r−8’)において記載していない。得られたアミン誘導体(5N)のヒドラゾン誘導体(1L)からの収量は4.6g(収率:58モル%)であった。
反応(r−8’)では、三口フラスコに、反応(r−7’)で得られたアミン誘導体(5N)(4.6g、0.006mol)、反応(r−2)で得られたジフェニルアルケン誘導体(2E)(1.3g、0.006mol)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.020543g、5.87×10-5mol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.026853g、2.93×10-5mol)、ナトリウムtert−ブトキシド(1g、0.010mol)、及び蒸留したо−キシレン(200mL)を加えた。フラスコ内を、アルゴンガスで置換した。その後、フラスコ内容物を、120℃で5時間攪拌し、室温まで冷却した。得られた混合物を、イオン交換水で3回洗浄し、有機層を得た。有機層に、無水硫酸ナトリウムと活性白土とを加え、乾燥処理及び吸着処理を行った。その後、得られた有機層を減圧留去し、о−キシレンを除去した。得られた残渣を、展開溶媒としてクロロホルム/ヘキサン(体積比V/V=1/1)を用いて晶析し、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−5)を得た。アミン誘導体(5N)からのトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−5)の収量は3.8g(収率:69モル%)であった。
[1−1−4.トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−7)の製造]
以下の反応式で表される反応に従って、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−7)を合成した。
三口フラスコに、反応(r−5)で得られたヒドラゾン誘導体(1L)12.3g(0.03mol)、トリシクロヘキシルホスフィン0.087g(0.000248mol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.113g(0.000123mol)、ナトリウムtert−ブトキシド5.0g(0.053mol)、リチウムアミド(LiNH2)0.24g(0.010mol)、及び蒸留したо−キシレン(500mL)を加えた。フラスコ内を、アルゴンガスで置換した。その後、フラスコ内容物を、120℃で5時間攪拌し、室温まで冷却した。得られた混合物を、イオン交換水で3回洗浄し、有機層を得た。有機層に、無水硫酸ナトリウムと活性白土とを加え、乾燥処理及び吸着処理を行った。その後、得られた有機層を減圧留去し、о−キシレンを除去した。得られた残渣を、展開溶媒としてクロロホルム/ヘキサン(体積比V/V=1/1)を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−7)を得た。トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−7)の収量は7.7g(収率:65モル%)であった。
[1−1−5.トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−4)の製造]
反応式(r−9)で表される反応(以下、反応(r−9)と記載することがある)に従って、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−4)を製造した。
反応(r−9)では、三口フラスコに、ジフェニルアミン誘導体(1Q)(3.20g、0.015mol)、ヒドラゾン誘導体(1P)(6.13g、0.015mol)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.020543g、5.87×10-5mol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.026853g、2.93×10-5mol)、ナトリウムtert−ブトキシド(1g、0.010mol)、及び蒸留したо−キシレン(200mL)を加えた。なお、ヒドラゾン誘導体(1P)は、ヒドラゾン誘導体(1L)と同様に、反応(r−5)で合成した。フラスコ内を、アルゴンガスで置換した。その後、フラスコ内容物を、120℃で5時間攪拌し、室温まで冷却した。得られた混合物を、イオン交換水で3回洗浄し、有機層を得た。有機層に、無水硫酸ナトリウムと活性白土とを加え、乾燥処理及び吸着処理を行った。その後、得られた有機層を減圧留去し、о−キシレンを除去した。得られた残渣を、展開溶媒としてクロロホルム/ヘキサン(体積比V/V=1/1)を用いて晶析し、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−4)を得た。ジフェニルアミン誘導体(1Q)からのトリアリールヒドラゾン誘導体(HT−4)の収量は5.3g(収率:60モル%)であった。
次に、プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、製造したトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)〜(HT−7)の1H−NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。これらのうち、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−4)及び(HT−2)を代表例として挙げる。
図2に、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−4)の1H−NMRスペクトルを示す。図2中、縦軸は信号強度を示し、横軸は化学シフト値(ppm)を示す。以下にトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−4)及び(HT−2)の化学シフト値をそれぞれ示す。
トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−4):1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ=7.55−7.59(m, 2H), 7.38−7.46(m, 6H), 7.30−7.35(m, 2H), 7.13−7.22(m, 7H), 6.90−7.10(m, 10H), 6.80−6.86(m, 2H), 3.80(s, 3H), 2.31(s, 3H).
トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−2):1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ=7.57−7.61(m, 5H), 7.37−7.48(m, 15H), 7.00−7.34(m, 23H).
1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−4)及び(HT−2)が得られていることを確認した。他のトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)、(HT−3)、及び(HT−5)〜(HT−7)も同様にして、1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)、(HT−3)、及び(HT−5)〜(HT−7)がそれぞれ得られていることを確認した。なお、1H−NMRスペクトルは、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−4)のみ示す。
[1−1−6.化合物(HT−A)〜(HT−B)の準備]
正孔輸送剤として化学式(HT−A)で表される化合物(以下、化合物(HT−A)と記載することがある)、及び化学式(HT−B)で表される化合物(以下、化合物(HT−B)と記載することがある)を準備した。
[1−2.電荷発生剤]
電荷発生剤として、上述の化合物(C−1)及び化合物(C−2)を準備した。化合物(C−1)は、化学式(C−1)で表される無金属フタロシアニン(X型無金属フタロシアニン)であった。また、化合物(C−1)の結晶構造はX型であった。化合物(C−2)は、化学式(C−2)で表されるチタニルフタロシアニン(Y型チタニルフタロシアニン)であった。また、化合物(C−2)の結晶構造はY型であった。また、化合物(C−2)のX線回折スペクトルは、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有していた、
[1−3.バインダー樹脂]
バインダー樹脂として、上述のポリカーボネート樹脂(Resin−1)〜(Resin−4)を準備した。ポリカーボネート樹脂(Resin−1)〜(Resin−4)の粘度平均分子量は、それぞれ45,000、49,100、51,200、及び47,800であった。更にバインダー樹脂として化学式(Resin−5)で表される繰返し単位を有するバインダー樹脂(以下、バインダー樹脂(Resin−5)と記載することがある)を準備した。ポリカーボネート樹脂(Resin−5)の粘度平均分子量は、50,500であった。
<2.感光体の製造>
[2−1.感光体の製造]
感光層を形成するための材料を用いて、感光体(A−1)〜(A−10)及び感光体(B−1)〜(B−3)を製造した。
[2−1−1.感光体(A−1)の製造]
(下引き層の形成)
はじめに、表面処理された酸化チタン(テイカ株式会社製「試作品SMT−02」、数平均一次粒径10nm)を準備した。詳しくは、アルミナとシリカとを用いて表面処理し、更に、表面処理された酸化チタンを湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて表面処理したものを準備した。次いで、表面処理された酸化チタン(2質量部)と、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、及びポリアミド610の四元共重合ポリアミド樹脂(東レ株式会社製「ナイロン樹脂アミラン(登録商標)CM8000」)(1質量部)とを、メタノール(10質量部)、ブタノール(1質量部)、及びトルエン(1質量部)を含む溶剤に対して添加した。これらをビーズミルを用いて5時間混合し、溶剤中に材料を分散させた。これにより、下引層用塗布液を作製した。
得られた下引層用塗布液を、目開き5μmのフィルターを用いてろ過した。その後、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長246mm)の表面に、中間層用塗布液をディップコート法を用いて塗布した。続いて、塗布した下引層用塗布液を130℃で30分間乾燥させて、導電性基体(ドラム状支持体)上に下引き層(膜厚2μm)を形成した。
(電荷発生層の形成)
次に、電荷発生剤として化合物(C−2)(Y型チタニルフタロシアニン)(1.5質量部)と、バインダー樹脂としてポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックBX−5」)(1質量部)とを、溶媒(分散媒)としてプロピレングリコールモノメチルエーテル40質量部及びテトラヒドロフラン40質量部の混合溶媒に対して添加した。これらをビーズミルを用いて2時間混合し、溶剤中に材料を分散させて、電荷発生層用塗布液を作製した。得られた電荷発生層用塗布液を、目開き3μmのフィルターを用いてろ過した。次いで、得られたろ過液を、上述のようにして形成された下引き層上にディップコート法を用いて塗布し、50℃で5分間乾燥させた。これにより、下引き層上に電荷発生層(膜厚0.3μm)を形成した。
(電荷輸送層の形成)
次に、正孔輸送剤としてのトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)(50質量部)と、添加剤としてのフェノール系酸化防止剤(BASF社製「イルガノックス(登録商標)1010」)(2質量部)、バインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂(Resin−1)(粘度平均分子量45,000)(100質量部)とを、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)(560質量部)及びトルエン(140質量部)の混合溶媒に添加した。THFとトルエンとの混合比は体積比(THF/トルエン)で560/140=8/2であった。循環型超音波分散装置を用いてこれらを12時間混合し、溶剤中に材料を分散又は溶解させた。その結果、電荷輸送層用塗布液を調製した。調製した電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層用塗布液と同様の方法で電荷発生層上に塗布し、120℃にて60分乾燥し、膜厚30μmの電荷輸送層を形成し感光体(A−1)を作製した。
[2−1−2.感光体(A−2)〜(A−10)及び感光体(B−1)〜(B−3)の製造]
以下の点を変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同様の方法で、感光体(A−2)〜(A−10)及び感光体(B−1)〜(B−3)をそれぞれ製造した。感光体(A−1)の製造に用いた正孔輸送剤としてのトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)を、表4に示す種類の正孔輸送剤に変更した。なお、表4に感光体(A−1)〜(A−10)及び感光体(B−1)〜(B−3)の構成を示す。表4中、HTMは、正孔輸送剤を示す。表4中、HTM欄のHT−1〜HT−7及びHT−A〜HT−Bは,それぞれトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)〜(HT−7)、及び化合物(HT−A)〜(HT−B)を示す。
<3.感光体の電気特性の評価>
製造した感光体(A−1)〜(A−10)及び感光体(B−1)〜(B−3)の各々に対して、電気特性を評価した。電気特性の評価は、温度23℃及び湿度50%RHの環境下で行った。まず、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の表面を−600Vに帯電させた。次いで、バンドパスフィルターを用いて、ハロゲンランプの白色光から単色光(波長780nm、半値幅20nm、光エネルギー1.5μJ/cm2)を取り出した。取り出された単色光を、感光体の表面に照射した。照射が終了してから66.7ミリ秒経過した時の感光体の表面電位を測定した。測定された表面電位を、感度電位(VL、単位V)とした。測定された感光体の感度電位(VL)を、表4に示す。なお、感度電位(VL)の絶対値が小さいほど、感光体の電気特性が優れていることを示す。
<4.感光体の耐摩耗性の評価>
感光体(A−1)〜(A−10)及び感光体(B−1)〜(B−3)の何れかの製造において調製した電荷輸送層用塗布液を、アルミパイプ(直径:78mm)に巻きつけたポリプロピレンシート(厚さ0.3mm)に塗布した。これを、120℃で60分乾燥し、膜厚30μmの電荷輸送層が形成された摩耗評価試験用のシートを作製した。
このポリプロピレンシートから電荷輸送層を剥離し、ウィールS−36(テーバー社製)に貼り付け、サンプルを作製した。作製したサンプルをロータリーアブレージョンテスター(株式会社東洋精機製作所製)にセットし、摩耗輪CS−10(テーバー社製)を用い、荷重750gfかつ回転速度60rpmの条件で1,000回転させ、摩耗評価試験を実施した。摩耗評価試験前後のサンプルの質量変化である摩耗減量(mg/1000回転)を測定した。表4に摩耗減量を示す。なお、摩耗減量が小さいほど、感光体の耐摩耗性が優れていることを示す。
表4に示すように、感光体(A−1)〜(A−10)では、電荷輸送層は正孔輸送剤としてトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)〜(HT−7)の何れか1種を含有していた。これらトリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−1)〜(HT−7)は、一般式(1)又は(2)で表されるトリアリールアミンヒドラゾン誘導体であった。感光体(A−1)〜(A−10)では、電荷輸送層はバインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(Resin−1)〜(Resin−4)の何れか1種を含有していた。これらポリカーボネート樹脂(Resin−1)〜(Resin−4)は、一般式(3)で表されるポリカーボネート樹脂であった。
感光体(A−1)〜(A−10)では、感度電位が−105V以上−85V以下であり、摩耗減量が8.8mg以上11.6mg以下であった。
表4に示すように、感光体(B−1)〜(B−2)では、電荷輸送層はそれぞれ正孔輸送剤として化合物(HT−A)〜(HT−B)の何れか1種を含有していた。化合物(HT−A)〜(HT−B)は、一般式(1)及び(2)で表されるトリアリールアミンヒドラゾン誘導体の何れでもなかった。感光体(B−3)では、電荷輸送層はバインダー樹脂としてバインダー樹脂(Resin−5)を含有していた。バインダー樹脂(Resin−5)一般式(3)で表されるポリカーボネート樹脂ではなかった。
感光体(B−1)〜(B−2)では、感度電位がそれぞれ−135V及び−138Vであった。表4中「−」は測定しなかったことを示す。感光体(B−3)では、感度電位が−88Vであり、摩耗減量は15.0mgであった。
よって、感光体(A−1)〜(A−10)は、感光体(B−1)〜(B−3)に比べ、電気特性(感度特性)及び耐摩耗性を両立することが明らかである。
表5にトリアリールアミンヒドラゾン誘導体のジフェニルアルケニル部分の二重結合の数と、感光体の感度電位との関係を示す。なお、表5中の二重結合の数は、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体のジフェニルアルケニル部位におけるアルケニル中の二重結合の数を示す。トリアリールアミンヒドラゾン誘導体(HT−4)ではジフェニルアルケニル部位はないが、二重結合の個数を0個としてカウントした。表5に示すように、感光体(A−1)〜(A−4)では、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体の二重結合の数が増加するに従い、感光体の感度電位が増加した。よって、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体のπ共役系の空間的広がりが大きくなるに従い、感光体の感度特性が向上することが示された。一方、表5に示すように、感光体(A−1)〜(A−4)では、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体の二重結合の数が減少するに従い、感光体の摩耗減量が減少した。よって、トリアリールアミンヒドラゾン誘導体のπ共役系の空間的広がりが小さくなるに従い、感光体の耐摩耗性が向上することが示された。