本発明の位相差フィルムは、フルオレン環含有ポリエステルと、芳香族熱可塑性樹脂(芳香族ポリカーボネートなど)とのポリマーアロイで形成されている。
[フルオレン環含有ポリエステル]
フルオレン環含有ポリエステルは、ジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)とを重合成分とするポリエステルであり、少なくとも一方の重合成分が、フルオレン環含有基を有する重合成分を含んでいる。
フルオレン環含有基としては、例えば、フルオレン−9,9−ジイル基(又は9−フルオレニリデン基)、9−フルオレニル基などが挙げられる。これらのフルオレン環は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。フルオレン環含有基を有する重合成分は、通常、少なくともジカルボン酸成分(A)に含まれる場合が多い。
(ジカルボン酸成分(A))
ジカルボン酸成分(A)は、フルオレン環含有ジカルボン酸成分(A1)[フルオレンジカルボン酸成分(A1)ともいう]を少なくとも1種含んでいてもよい。フルオレンジカルボン酸成分(A1)としては、例えば、フルオレン環の9−位に、炭化水素基(アルキレン基など)を介して、カルボキシル基が結合したフルオレンジカルボン酸成分などが挙げられ、なかでも、代表的なフルオレンジカルボン酸成分(A1)としては、例えば、下記式(1a)又は(1b)で表されるジカルボン酸、並びにそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
(式中、R1及びR2は置換基、k、m及びnはそれぞれ0〜4の整数、X1及びX2は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を示す)。
このようなフルオレンジカルボン酸成分(A1)を含むと、フルオレン環含有ポリエステルに柔軟性を付与し易く成形性を向上できるとともに、負の波長分散特性を有する位相差フィルムを調製し易くなる傾向があるため好ましい。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「エステル形成性誘導体」は、エステル[例えば、アルキルエステル(例えば、低級アルキルエステル、好ましくはC1−4アルキルエステル、特に、メチルエステル、エチルエステルなどのC1−2アルキルエステルなど)など]、酸ハライド(例えば、酸クロライドなど)、酸無水物を含む意味に用いる。また、「エステル形成性誘導体」は、モノエステル(ハーフエステル)又はジエステルであってもよい。
前記式(1a)において、基R1としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などの非反応性置換基が挙げられ、特に、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基(特にアルキル基)である場合が多い。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などのC1−12アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、特にメチル基などのC1−4アルキル基などが挙げられる。
なお、基R1の置換数kが複数(2以上)である場合、フルオレン環中の同一ベンゼン環内の2以上の基R1は、それぞれのベンゼン環内において、同一又は異なっていてもよい。また、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環に置換するそれぞれの基R1は、互いに同一又は異なっていてもよい。フルオレン環を構成する2つのベンゼン環に対する基R1の結合位置(置換位置)は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2−位、7−位、2−及び7−位などが挙げられる。
好ましい置換数kは、例えば、0〜2、好ましくは0又は1、特に0である。なお、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環において、それぞれの置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
なお、前記式(1b)において、基R2及びその置換数mは、前記式(1a)における基R1及び置換数kにそれぞれ対応し、好ましい態様を含めて、同様であってもよい。
前記式(1a)及び(1b)において、基X1及びX2で表される炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−8アルキレン基が例示できる。好ましいアルキレン基は直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキレン基)である。
炭化水素基の置換基としては、例えば、アリール基(フェニル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基など)などが挙げられる。
基X1は直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−3アルキレン基など)である場合が多く、X2は直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基など)である場合が多い。置換基を有する炭化水素基X1は、例えば、1−フェニルエチレン基、1−フェニルプロパン−1,2−ジイル基などであってもよい。
前記式(1b)において、メチレン基の繰り返し数nは、例えば、0〜3程度の整数、好ましくは0〜2程度の整数、さらに好ましくは0又は1であってもよい。
前記式(1a)で表されるジカルボン酸成分として、具体的には、例えば、X1が直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルキレン基である化合物、9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC2−6アルキル)フルオレン及びこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
前記式(1b)で表されるジカルボン酸成分として、具体的には、例えば、n=0であり、かつX2が直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキレン基である化合物、9−(1−カルボキシ−2−カルボキシエチル)フルオレン;n=1であり、かつX2が直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキレン基である化合物、9−(2,3−ジカルボキシプロピル)フルオレンなどの9−(ジカルボキシC2−8アルキル)フルオレン及びこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
これらのフルオレンジカルボン酸成分(A1)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらのフルオレンジカルボン酸成分(A1)のうち、負の波長分散特性を有する位相差フィルムを調製し易い点から、前記式(1a)で表されるジカルボン酸成分、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類が好ましく、なかでも9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC2−6アルキル)フルオレン、さらに好ましくは9,9−ビス(カルボキシC2−4アルキル)フルオレン、特に、9,9−ビス(カルボキシC2−3アルキル)フルオレン及びこれらのエステル形成性誘導体などを含むのが好ましい。
なお、ジカルボン酸成分(A)は、本発明の効果を害しない範囲であれば、さらに他のジカルボン酸成分を含んでいてもよい。他のジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸成分(A2)[ただし、フルオレンジカルボン酸成分(A1)を除く。]{例えば、単環式芳香族ジカルボン酸[例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのベンゼンジカルボン酸;アルキルベンゼンジカルボン酸(例えば、4−メチルイソフタル酸などのC1−4アルキル−ベンゼンジカルボン酸など)など];多環式芳香族ジカルボン酸{例えば、縮合多環式芳香族ジカルボン酸[例えば、ナフタレンジカルボン酸(例えば、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸など)、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C10−24アレーン−ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C10−14アレーン−ジカルボン酸など];アリールアレーンジカルボン酸(例えば、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などのC6−10アリール−C6−10アレーン−ジカルボン酸など);ジアリールアルカンジカルボン酸(例えば、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸などのジC6−10アリールC1−6アルカン−ジカルボン酸など);ジアリールケトンジカルボン酸[例えば、4.4’−ジフェニルケトンジカルボン酸などのジ(C6−10アリール)ケトン−ジカルボン酸など]など}など};脂環族ジカルボン酸成分(A3)[例えば、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのC5−10シクロアルカン−ジカルボン酸など);架橋環式シクロアルカンジカルボン酸(例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などのジ又はトリシクロアルカンジカルボン酸など);シクロアルケンジカルボン酸(例えば、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5−10シクロアルケン−ジカルボン酸);架橋環式シクロアルケンジカルボン酸(例えば、ノルボルネンジカルボン酸などのジ又はトリシクロアルケンジカルボン酸など)など];脂肪族ジカルボン酸成分(A4)[例えば、アルカンジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などのC2−12アルカン−ジカルボン酸など);不飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2−10アルケン−ジカルボン酸など)など];及びこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
フルオレンジカルボン酸成分(A1)に由来する単位の割合は、ジカルボン酸成分(A)全体に対して、例えば、10モル%以上(例えば、30モル%以上)の範囲から選択でき、例えば、50モル%以上(例えば、60モル%以上)、好ましくは70モル%以上(例えば、80モル%以上)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、95モル%程度以上)であってもよく、100モル%(実質的にフルオレンジカルボン酸成分(A1)のみ)であってもよい。フルオレンジカルボン酸成分(A1)の割合が少なすぎると、負の波長分散特性を有する位相差フィルムを調製し難くなるおそれがある。
(ジオール成分(B))
ジオール成分(B)は、負の波長分散特性を有する位相差フィルムを調製し易い点から、フルオレン環含有ジオール(B1)[フルオレンジオール(B1)ともいう]を含んでいてもよい。フルオレンジオール(B1)としては、例えば、9,9−ビスアリールフルオレン環を有するジオールなどが挙げられ、なかでも、代表的なフルオレンジオール(B1)としては、例えば、下記式(2)で表されるジオールなどが挙げられる。
(式中、Zは芳香族炭化水素環、R3及びR4は置換基、pはそれぞれ0〜4の整数、R4は置換基、q及びrはそれぞれ0又は1以上の整数、R5はアルキレン基を示す)。
前記式(2)において、Zで表される芳香族炭化水素環(アレーン環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式芳香族炭化水素環(単環式アレーン環)、多環式芳香族炭化水素環(多環式アレーン環)などが挙げられ、多環式芳香族炭化水素環には、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素環(縮合多環式アレーン環)、環集合芳香族炭化水素環(環集合アレーン環)などが含まれる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、ナフタレン環などの縮合二環式C10−16アレーン環)、縮合三環式アレーン環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい環Zとしては、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環式C10−16アレーン環(好ましくは縮合多環式C10−14アレーン環)が挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
環集合アレーン環としては、ビアレーン環(例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環など)などのビC6−12アレーン環など)、テルアレーン環(例えば、テルフェニレン環などのテルC6−12アレーン環など)などが例示できる。好ましい環集合アレーン環は、ビC6−10アレーン環などが挙げられ、特にビフェニル環が好ましい。
これらのZのうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6−12アレーン環が好ましく、特にベンゼン環などのC6−10アレーン環が好ましい。また、2つのZは、互いに同一又は異なっていてもよい。
基R3及び置換数pは、前記式(1a)における基R1及び置換数kにそれぞれ対応し、好ましい態様を含めて、同様であってもよい。
R4で表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭化水素基{例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基など);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基など);アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6−12アリール基など];アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)など};アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルコキシ基など);シクロアルキルオキシ基(例えば、シクロヘキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など);アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基など);アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基など);アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−10アルキルチオ基など);シクロアルキルチオ基(例えば、シクロヘキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など);アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基など);アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基など);アシル基(例えば、アセチル基などのC1−6アシル基など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基[例えば、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基など);ビス(アルキルカルボニル)アミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのビス(C1−4アルキル−カルボニル)アミノ基など)など]などが例示できる。
これらの基R4のうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましい基R4としては、アルキル基(メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基などのC5−8シクロアルキル基など)、アリール基(フェニル基などのC6−14アリール基など)、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基など)などが挙げられ、特に、アルキル基(特に、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基など)が挙げられる。なお、基R4がアリール基であるとき、基R4は、環Zとともに前記環集合アレーン環を形成してもよい。なお、異なるZにそれぞれ結合する基R4の種類は、同一又は異なっていてもよい。
基R4の置換数qは、0又は1以上の整数であればよく、環Zの種類に応じて適宜選択でき、例えば、0〜8程度の整数、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)程度の整数、さらに好ましくは0〜2程度の整数(例えば、0又は1)、特に0であってもよい。なお、異なる環Zにおける置換数qは、互いに同一又は異なっていてもよい。また、置換数qが2以上である場合、同一の環Zに置換する2以上のR4の種類は、同一又は異なっていてもよい。特に、qが1である場合、Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、R4がメチル基であってもよい。また、R4の置換位置は特に制限されず、環Zと、エーテル結合(−O−)及びフルオレン環の9−位との結合位置以外の位置に置換していればよい。
前記式(2)において、R5としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2−プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルキレン基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2−3アルキレン基(特に、エチレン基)などが挙げられる。
オキシアルキレン基(OR5)の繰り返し数(付加モル数)rは、0又は1以上の整数であればよく、例えば、0〜15(例えば、1〜10)程度の整数、好ましくは0〜8(例えば、1〜6)程度の整数、さらに好ましくは0〜4(例えば、1〜2)程度の整数、特に0又は1(例えば、1)であってもよい。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「繰り返し数(付加モル数)r」は、平均値(算術平均値、相加平均値)又は平均付加モル数であってもよく、好ましい態様は、好ましい整数の範囲と同様であってもよい。繰り返し数rが大きすぎると、屈折率が低下するおそれがある。また、2つの繰り返し数rは、それぞれ同一又は異なっていてもよい。rが2以上の場合、2以上のオキシアルキレン基(OR5)は、同一又は異なっていてもよい。また、異なる環Zにエーテル結合(−O−)を介して結合するオキシアルキレン基(OR5)は互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(2)において、基[−O−(R5O)r−H]の置換位置は、特に限定されず、環Zの適当な位置にそれぞれ置換していればよい。基[−O−(R5O)r−H]の置換位置は、環Zがベンゼン環である場合、フルオレン環の9−位に結合するフェニル基の2−位、3−位、4−位(特に、3−位又は4−位)のいずれかの位置に置換している場合が多い。また、環Zがナフタレン環である場合、フルオレン環の9−位に結合するナフチル基の5〜8−位のいずれかの位置に置換している場合が多く、例えば、フルオレン環の9−位に対して、ナフタレン環の1−位又は2−位が置換し(1−ナフチル又は2−ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5−位、2,6−位などの関係(特に2,6−位の関係)で置換している場合が多い。また、環Zが環集合アレーン環である場合、基[−O−(R5O)r−H]の置換位置は特に限定されず、例えば、フルオレンの9−位に結合するアレーン環又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、環Zがビフェニル環(又は環Zがベンゼン環でR4がフェニル基)の場合、ビフェニル環の3−位又は4−位がフルオレンの9−位に結合していてもよく、ビフェニル環の3−位がフルオレンの9−位に結合する場合、基[−O−(R5O)r−H]の置換位置は、例えば、ビフェニル環の2−位、4−位、5−位、6−位、2’−位、3’−位、4’−位のいずれの位置であってもよく、好ましくは6−位、4’−位のいずれかの位置(特に、6−位)などに置換していてもよい。ビフェニル環の4−位がフルオレンの9−位に結合している場合、基[−O−(R5O)r−H]の置換位置は、ビフェニル環の2−位、3−位、2’−位、3’−位、4’−位のいずれの位置であってもよく、好ましくは2−位、4’−位のいずれかの位置(特に、2−位)などに置換していてもよい。
前記式(2)で表されるジオールとしては、例えば、前記式(2)において、p=0、r=0であるジオール、すなわち、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類;p=0、rが1以上(例えば、1〜10程度)であるジオール、すなわち、9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類などが挙げられる。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、特に断りのない限り、「(ポリ)アルコキシ」とは、アルコキシ基及びポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど];9,9−ビス(ヒドロキシ−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−(モノ又はジ)C1−4アルキル−フェニル)フルオレンなど];9,9−ビス(ヒドロキシ−アリールフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−10アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど];9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−ヒドロキシ−1−ナフチル)フルオレンなど]などが挙げられる。
9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2−4アルコキシフェニル]フルオレンなど};9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アルキルフェニル]フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2−4アルコキシ−(モノ又はジ)C1−4アルキル−フェニル]フルオレンなど};9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アリールフェニル]フルオレン{例えば、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス[C6−10アリール−ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2−4アルコキシフェニル]フルオレンなど};9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2−4アルコキシナフチル]フルオレンなど}などが挙げられる。
これらの前記式(2)で表されるジオールは、単独で又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらの前記式(2)で表されるジオールのうち、好ましくは9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2−4アルコキシC6−10アリール]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類、さらに好ましくは9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至ペンタ)C2−4アルコキシフェニル]フルオレン、特に、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ又はジ)C2−3アルコキシフェニル]フルオレンを含むのが好ましい。
ジオール成分(B)は、重合反応性を高めるとともに、フルオレン環含有ポリエステルに柔軟性を付与して成形性などを向上できる点から、さらに、アルカンジオール(B2)[又はアルキレングリコール(B2)]を含んでいてもよい。
アルカンジオール(B2)として、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどの直鎖状又は分岐鎖状C2−12アルカンジオールなどが挙げられる。
これらのアルカンジオール(B2)は、単独で又は2種以上組み合わせて利用することもできる。これらのアルカンジオール(B2)のうち、直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなど)が好ましく、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルカンジオール、特に、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの直鎖状又は分岐鎖状C2−3アルカンジオールを含むのが好ましい。
また、本発明の効果を害しない限り、ジオール成分(B)は、他のジオール成分を含んでいてもよい。他のジオール成分としては、例えば、ポリアルキレングリコール(B3)[又はポリアルカンジオール(B3)、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリC2−6アルカンジオール、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジ乃至テトラC2−4アルカンジオールなど];脂環族ジオール(B4)[例えば、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなど);ビス(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン(例えば、シクロヘキサンジメタノールなど);後述する芳香族ジオール(B5)の水添物(例えば、ビスフェノールAの水添物など)など];芳香族ジオール(B5)[例えば、ジヒドロキシアレーン(例えば、ヒドロキノン、レゾルシノールなど);芳香脂肪族ジオール(例えば、ベンゼンジメタノールなど);ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールC、ビスフェノールG、ビスフェノールSなど);ビフェノール類(例えば、p,p’−ビフェノールなど)など];及びこれらのジオール成分のC2−4アルキレンオキシド(又はアルキレンカーボネート、ハロアルカノール)付加体[例えば、ビスフェノールA 1モルに対して、2〜10モル程度のエチレンオキシドが付加した付加体など]などが挙げられる。これらの他のジオール成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
フルオレンジオール(B1)及びアルカンジオール(B2)に由来する単位の割合は、ジオール成分(B)全体に対して、例えば、10モル%以上(例えば、30〜100モル%程度)の範囲から選択でき、例えば、50モル%以上(例えば、60〜99モル%)、好ましくは70モル%以上(例えば、80〜98モル%)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、95〜97モル%程度)であってもよく、特に、100モル%、すなわち、ジオール成分(B)が、実質的にフルオレンジオール(B1)及びアルカンジオール(B2)のみで構成されていてもよい。
フルオレンジオール(B1)に由来する単位と、アルカンジオール(B2)に由来する単位との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=50/50〜100/0(例えば、50/50〜99/1)程度の範囲から選択でき、例えば、60/40〜97/3(例えば、65/35〜95/5)、好ましくは68/32〜92/8(例えば、70/30〜90/10)、さらに好ましくは73/27〜88/12(例えば、75/25〜85/15)程度であってもよい。また、高い重合反応性、高い成形性(又は柔軟性)及び/又は高い位相差が必要な場合、フルオレンジオール(B1)に由来する単位とアルカンジオール(B2)に由来する単位との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=10/90〜90/10(例えば、20/80〜85/15)、好ましくは30/70〜80/20(例えば、40/60〜70/30)、さらに好ましくは45/55〜65/35(例えば、50/50〜60/40)程度であってもよい。フルオレンジオール(B1)に由来する単位の割合が少な過ぎると、負の波長分散特性を有する位相差フィルムを調製し難くなるおそれがある。
また、フルオレン環含有基を有する重合成分に由来する単位[フルオレンジカルボン酸成分(A1)及びフルオレンジオール(B1)に由来する単位の総量]の割合は、フルオレン環含有ポリエステルの構成単位全体に対して、例えば、10モル%以上(例えば、30〜100モル%程度)の範囲から選択でき、例えば、50モル%以上(例えば、60〜99モル%)、好ましくは70モル%以上(例えば、80〜97モル%)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、90〜95モル%程度)であってもよい。また、高い重合反応性、高い成形性(又は柔軟性)及び/又は高い位相差が必要な場合、前記割合は、例えば、50〜95モル%(例えば、55〜90モル%)、好ましくは65〜85モル%(例えば、70〜85モル%)、さらに好ましくは75〜80モル%程度であってもよい。フルオレン環含有基を有する重合成分に由来する単位の割合が少な過ぎると、耐熱性が低下するおそれがあり、さらに、負の波長分散特性を有する位相差フィルムを調製し難くなるおそれがある。
(フルオレン環含有ポリエステルの製造方法及びその特性)
フルオレン環含有ポリエステルの製造方法は、ジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)とを反応させればよく、慣用の方法、例えば、エステル交換法、直接重合法などの溶融重合法、溶液重合法、界面重合法などで調製でき、溶融重合法が好ましい。なお、反応は、重合方法に応じて、溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。
ジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)との使用割合(又は仕込み割合)は、通常、前者/後者(モル比)=例えば、1/1.2〜1/0.8、好ましくは1/1.1〜1/0.9)程度であってもよい。なお、反応において、各ジカルボン酸成分(A)及びジオール成分(B)の使用量(使用割合)は、必要に応じて、各成分などを過剰に用いて反応させてもよい。例えば、反応系から留出可能なエチレングリコールなどのアルカンジオール(B2)は、フルオレン環含有ポリエステル中に導入される割合(又は導入割合)よりも過剰に使用してもよい。
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、慣用のエステル化触媒、例えば、金属触媒などが利用できる。金属触媒としては、例えば、アルカリ金属(ナトリウムなど);アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、遷移金属(マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルト、チタンなど);周期表第13族金属(アルミニウムなど);周期表第14族金属(ゲルマニウムなど);周期表第15族金属(アンチモンなど)などを含む金属化合物が用いられる。金属化合物としては、例えば、アルコキシド、有機酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩など)、無機酸塩(ホウ酸塩、炭酸塩など)、金属酸化物などであってもよく、これらの水和物であってもよい。代表的な金属化合物としては、例えば、ゲルマニウム化合物(例えば、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、シュウ酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウム−n−ブトキシドなど);アンチモン化合物(例えば、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモンエチレンリコレートなど);チタン化合物(例えば、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウムなど);マンガン化合物(酢酸マンガン・4水和物など);カルシウム化合物(酢酸カルシウム・1水和物など)などが例示できる。
これらの触媒は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。複数の触媒を用いる場合、反応の進行に応じて、各触媒を添加することもできる。これらの触媒のうち、酢酸マンガン・4水和物、酢酸カルシウム・1水和物、二酸化ゲルマニウムなどが好ましい。触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分(A)1モルに対して、0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜40×10−4モル程度であってもよい。
また、反応は、必要に応じて、熱安定剤(例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、亜リン酸、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトなどのリン化合物など)や酸化防止剤などの安定剤の存在下で行ってもよい。熱安定剤の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分(A)1モルに対して、0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜40×10−4モル程度であってもよい。
反応は、通常、不活性ガス(例えば、窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気中で行ってもよい。また、反応は、減圧下(例えば、1×102〜1×104Pa程度)で行うこともできる。反応温度は、重合方法に応じて選択でき、例えば、溶融重合法における反応温度は、150〜300℃、好ましくは180〜290℃、さらに好ましくは200〜280℃程度であってもよい。
このようにして得られるフルオレン環含有ポリエステルのガラス転移温度Tgは、例えば、100〜200℃程度の範囲から選択でき、例えば、110〜170℃、好ましくは115〜150℃、さらに好ましくは120〜140℃程度であってもよい。ガラス転移温度Tgが高すぎると、成形性が低下して、溶融製膜が困難になるおそれがあり、低すぎると耐熱性が低下するおそれがある。
前記フルオレン環含有ポリエステルの重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などにより測定でき、ポリスチレン換算で、例えば、20000〜100000程度の範囲から選択でき、例えば、25000〜80000(例えば、50000〜70000)、好ましくは30000〜70000(例えば、55000〜65000)、さらに好ましくは35000〜60000(例えば、40000〜50000)程度であってもよい。重量平均分子量Mwが低すぎると、延伸による薄膜化が困難になるおそれがある。
前記フルオレン環含有ポリエステルの屈折率異方性(又は複屈折)は、前記ポリエステル単独で形成したフィルムを、延伸倍率3倍で一軸延伸した延伸フィルムの複屈折(3倍複屈折)により評価してもよい。延伸温度(ガラス転移温度Tg+10)℃、延伸速度25mm/分の延伸条件で調製した前記延伸フィルムの3倍複屈折は、測定温度20℃、波長600nmにおいて、例えば、−100×10−4〜+100×10−4(例えば、−80×10−4〜+50×10−4)程度の範囲から選択でき、例えば、−60×10−4〜+20×10−4、好ましくは−50×10−4〜0、さらに好ましくは−30×10−4〜−10×10−4程度であってもよい。また、負の波長分散特性を有する位相差フィルムを調製し易い点から、フルオレン環含有ポリエステルは、負の屈折率異方性を示すのが好ましく、例えば、−45×10−4〜−0.1×10−4(例えば、−40×10−4〜−1×10−4)、好ましくは−35×10−4〜−5×10−4(例えば、−33×10−4〜−10×10−4)、さらに好ましくは−30×10−4〜−15×10−4(例えば、−25×10−4〜−20×10−4)程度であってもよく、通常、−29×10−4〜−16×10−4(例えば、−27×10−4〜−18×10−4)程度であってもよい。3倍複屈折がプラス側に大きすぎると、負の波長分散特性を有する位相差フィルムを調製し難くなるおそれがある。なお、本発明では、前記フルオレンジカルボン酸成分(A1)や、前記フルオレンジオール(B1)などの導入割合(又は共重合比)を調整して、フルオレン環含有ポリエステルが負の屈折率異方性を示すよう容易に制御できる。
前記フルオレン環含有ポリエステルの屈折率は、温度20℃、波長589nmにおいて、例えば、1.55〜1.7(例えば、1.6〜1.68)、好ましくは1.6〜1.67、さらに好ましくは1.62〜1.65程度であってもよく、通常、1.61〜1.65(例えば、1.62〜1.64)程度であってもよい。
前記フルオレン環含有ポリエステルのアッベ数は、温度20℃において、例えば、30以下(例えば、17〜30)、好ましくは28以下(例えば、19〜26)、さらに好ましくは25以下(例えば、20〜24程度)であってもよく、通常、26以下(例えば、22〜25程度)であってもよい。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、ガラス転移温度Tg、重量平均分子量Mw、3倍複屈折、屈折率及びアッベ数は、後述する実施例に記載の方法などにより測定できる。
[芳香族熱可塑性樹脂]
芳香族熱可塑性樹脂としては、例えば、芳香族ポリエーテル(例えば、ポリフェニレンエーテルなど)、芳香族ポリエステル(例えば、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレートなどの非晶性芳香族ポリエステルなど)、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリアミド[例えば、ポリアミド6T(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミドMXD6(m−キシリレンジアミンとアジピン酸との重合体)などの半芳香族ポリアミドなど)などが挙げられる。これらの芳香族熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの芳香族熱可塑性樹脂のうち、前記フルオレン環含有ポリエステルとポリマーアロイ(特に、完全相溶状態のポリマーアロイ)を形成し易い観点から、芳香族ポリカーボネートを含むのが好ましい。
芳香族ポリカーボネートは、ジオール成分(C)を重合成分とするポリカーボネートであり、ジオール成分(C)は、芳香族ジオール(C1)を少なくとも含んでいる。
芳香族ジオール(C1)としては、例えば、前記フルオレン環含有ポリエステルの項において、フルオレンジオール(B1)、芳香族ジオール(B5)及びそのC2−4アルキレンオキシド(又はアルキレンカーボネート、ハロアルカノール)付加体として例示したジオール成分と同様のジオール成分などが挙げられる。これらの芳香族ジオール(C1)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの芳香族ジオール(C1)のうち、負の波長分散特性を有する位相差フィルムを調製し易い観点から、少なくとも(ビ又は)ビスフェノール類又はそのC2−4アルキレンオキシド付加体を含むのが好ましい。
(ビ又は)ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノール類{例えば、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAD)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシC6−12アリール)C1−6アルカン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン(ビスフェノールG)などのビス(C1−6アルキル−ヒドロキシC6−12アリール)C1−6アルカンなど];ビス(ヒドロキシアリール)−アリールアルカン類[例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(ビスフェノールAP)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ジフェニルメタン(ビスフェノールBP)などのビス(ヒドロキシC6−12アリール)−(モノ又はジ)C6−12アリール−C1−6アルカンなど];ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類[例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)などのビス(ヒドロキシC6−12アリール)C4−10シクロアルカンなど];ビス(ヒドロキシアリール)エーテル類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどのビス(ヒドロキシC6−12アリール)エーテルなど];ビス(ヒドロキシアリール)ケトン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどのビス(ヒドロキシC6−12アリール)ケトンなど];ビス(ヒドロキシアリール)スルフィド類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのビス(ヒドロキシC6−12アリール)スルフィドなど];ビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのビス(ヒドロキシC6−12アリール)スルホキシドなど];ビス(ヒドロキシアリール)スルホン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)などのビス(ヒドロキシC6−12アリール)スルホンなど]など};ビフェノール類[例えば、o,o’−ビフェノール、m,m’−ビフェノール、p,p’−ビフェノールなどのジヒドロキシ−ビC6−10アレーンなど]などが挙げられる。
C2−4アルキレンオキシド付加体としては、例えば、前記(ビ又は)ビスフェノール(例えば、ビスフェノールAなど)1モルに対して、エチレンオキシドが1〜10モル(例えば、1〜5モル)程度付加した付加体などが挙げられる。これらの(ビ又は)ビスフェノール類又はそのC2−4アルキレンオキシド付加体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
これらの(ビ又は)ビスフェノール類又はそのC2−4アルキレンオキシド付加体のうち、ビスフェノール類を含むのが好ましく、なかでも、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、特に、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシC6−10アリール)C1−4アルカンなどを含むのが好ましい。これらの好ましいビスフェノール類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
本発明の効果を害しない限り、ジオール成分(C)は、他のジオール成分(C2)を含んでいてもよい。他のジオール成分(C2)としては、例えば、前記フルオレン環含有ポリエステルの項において、アルカンジオール(B2)、ポリアルカンジオール(B3)、脂環族ジオール(B4)及びこれらのC2−4アルキレンオキシド(又はアルキレンカーボネート、ハロアルカノール)付加体として例示したジオール成分と同様のジオール成分、末端ヒドロキシル基を有するポリ(又はオリゴ)エステルジオール(例えば、ポリエチレンアジペートなど)などが挙げられる。
芳香族ジオール(C1)[例えば、ビスフェノール類(特に、ビスフェノールA)など]由来の単位の割合は、例えば、ジオール成分(C)全体に対して、例えば、10モル%以上(例えば、30モル%以上)の範囲から選択でき、例えば、50モル%以上(例えば、60〜100モル%)、好ましくは70モル%以上(例えば、80〜98モル%)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、95〜97モル%程度)であってもよく、実質的に100モル%であるのが好ましい。そのため、芳香族ポリカーボネートとしては、ビスフェノール型ポリカーボネートが好ましく、特に、ビスフェノールA型ポリカーボネートであるのが好ましい。芳香族ジオール(C1)由来の単位の割合が少なすぎると、負の波長分散特性を有する位相差フィルムが調製し難くなるおそれがあり、また、ポリマーアロイを形成し難くなるおそれがある。
なお、芳香族ポリカーボネートは、慣用の方法、例えば、ホスゲン法やエステル交換法などにより製造できる。
芳香族熱可塑性樹脂(芳香族ポリカーボネートなど)のガラス転移温度Tgは、例えば、100〜250℃(例えば、100〜230℃)程度の範囲から選択でき、例えば、110〜200℃、好ましくは120〜180℃、さらに好ましくは130〜160℃程度であってもよい。ガラス転移温度Tgが高すぎると、成形性が低下するおそれがあり、低すぎると耐熱性が低下するおそれがある。
芳香族熱可塑性樹脂(芳香族ポリカーボネートなど)の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などにより測定でき、ポリスチレン換算で、例えば、10000〜100000程度の範囲から選択でき、例えば、10000〜70000、好ましくは15000〜60000、さらに好ましくは20000〜50000程度であってもよい。芳香族熱可塑性樹脂(芳香族ポリカーボネートなど)の分子量がこの範囲にあると、成形性が向上し易い。
芳香族熱可塑性樹脂(芳香族ポリカーボネートなど)、通常、正の屈折率異方性を示す場合が多い。芳香族熱可塑性樹脂の屈折率異方性(又は複屈折)は、前記フルオレン環含有ポリエステルと同様に、3倍複屈折により評価してもよい。延伸温度(ガラス転移温度Tg+10)℃、延伸速度25mm/分の延伸条件で調製した延伸フィルムの3倍複屈折は、測定温度20℃、波長600nmにおいて、例えば、+50×10−4〜+250×10−4程度の範囲から選択でき、例えば、+100×10−4〜+200×10−4、好ましくは+130×10−4〜+180×10−4、さらに好ましくは+150×10−4〜+170×10−4程度であってもよい。3倍複屈折が小さすぎると、負の波長分散特性を有する位相差フィルムを調製し難くなるおそれがある。
芳香族熱可塑性樹脂(芳香族ポリカーボネートなど)の屈折率は、温度20℃、波長589nmにおいて、例えば、1.55〜1.65、好ましくは1.56〜1.62、さらに好ましくは1.58〜1.60程度であってもよい。
前記芳香族熱可塑性樹脂(芳香族ポリカーボネートなど)のアッベ数は、温度20℃において、例えば、40以下(例えば、24〜37)、好ましくは35以下(例えば、26〜34)、さらに好ましくは33以下(例えば、28〜32程度)であってもよい。
[ポリマーアロイの調製方法及びその特性]
フルオレン環含有ポリエステルと、芳香族熱可塑性樹脂(芳香族ポリカーボネートなど)とは、異種の高分子であるにもかかわらず、混合すると樹脂成分が完全相溶状態又は安定なミクロ相分離状態となり、相溶化剤を用いなくても、容易にポリマーアロイを形成できる。なお、ポリマーアロイにおいて、樹脂成分は、完全相溶状態であるのが好ましい。樹脂成分の混合方法は特に制限されず、慣用の方法、例えば、溶媒に両樹脂成分を溶解する方法、混練機(又は押出機)により溶融混合する方法などであってもよい。位相差フィルム成形後の残存溶媒による光学的特性(例えば、位相差、波長分散特性など)の低下を防止できる点から、溶融混合する方法であるのが好ましい。
前記溶融混合において、温度は、例えば、200〜300℃(例えば、230〜290℃)程度であってもよい。混練機(又は押出機)のスクリュー有効長さLとスクリュー径Dとの比(L/D)は、例えば、20〜60(例えば、40〜50)程度であってもよい。スクリュー径Dは、例えば、10〜20mm(例えば、12〜18mm)程度であってもよい。回転速度は、例えば、50〜500rpm(例えば、100〜300rpm)程度であってもよい。
このようにして得られるポリマーアロイを用いて位相差フィルムを形成すると、各樹脂成分の混合割合により、フィルムの位相差やその波長分散特性を容易に制御できる。特に、負の屈折率異方性を示すフルオレン環含有ポリエステルと、正の屈折率異方性を示す芳香族熱可塑性樹脂(芳香族ポリカーボネートなど)とを組み合わせると、広い可視光域で負の波長分散特性を有する位相差フィルム(例えば、広帯域1/4波長板など)を容易に作製できる。
フルオレン環含有ポリエステルと、芳香族熱可塑性樹脂(芳香族ポリカーボネートなど)との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=1/99〜99/1(例えば、10/90〜97/3)程度の範囲から選択でき、例えば、30/70〜95/5、好ましくは50/50〜90/10、さらに好ましくは60/40〜88/12(例えば、65/35〜85/15)、特に、67/33〜83/17(例えば、70/30〜80/20)程度であってもよく、広帯域1/4波長板に適した位相差及びその波長分散特性(例えば、後述するRe(450)/Re(550)など)に調整し易い観点から、72/28〜95/5(例えば、74/26〜90/10)、好ましくは74/26〜85/15(例えば、75/25〜80/20)、さらに好ましくは74/26〜78/22(例えば、74/26〜76/24)程度であってもよい。フルオレン環含有ポリエステルの割合が少なすぎると、負の波長分散特性を有する位相差フィルムが調製し難くなるおそれがある。
また、ポリマーアロイは完全に相溶し易いため、1つのガラス転移温度Tgを有していてもよく、前記ガラス転移温度Tgは、例えば、100〜160℃(例えば、100〜150℃)程度の範囲から選択でき、例えば、110〜140℃、好ましくは115〜135℃、さらに好ましくは120〜130℃(例えば、125〜128℃)程度であってもよい。ガラス転移温度Tgが高すぎると、成形性が低下するおそれがある。
なお、ポリマーアロイは、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、下記式(3)で表される化合物を添加剤として含んでいてもよい。
(式中、Z1は単環式又は縮合多環式芳香族炭化水素環、R6及びR7は置換基、s、t及びuは0以上の整数を示す)。
前記式(3)において、環Z1で表される単環式又は縮合多環式芳香族炭化水素環としては、前記式(2)の環Zで例示した単環式アレーン環、縮合多環式アレーン環と、好ましい態様も含めてそれぞれ同様であってもよい。これらの環Z1のうち、ベンゼン環又はナフタレン環(特に、ベンゼン環)が好ましい。2以上の異なる環Z1は、互いに同一又は異なっていてもよい。
基R6で表される置換基としては、例えば、前記式(2)の基R4で例示した置換基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など)、アミノ基などが例示できる。
これらの基R6のうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。
基R7で表される置換基としては、前記基R6で例示した置換基と好ましい態様を含めて同様であってもよい。
置換数sは、環Z1に応じて選択でき、例えば、0〜6の整数、好ましくは0〜4(例えば、0〜2)の整数、さらに好ましくは0又は1(例えば、0)程度であってもよい。
置換数tは、環Z1に応じて選択でき、例えば、0〜7の整数、好ましくは0〜5(例えば、0〜2)の整数、さらに好ましくは0又は1(例えば、0)程度であってもよい。
異なる環Z1に置換する基R6及び基R7の種類は、それぞれ互いに同一又は異なっていてもよく、異なる環Z1における複数の置換数s及びtの値は、それぞれ互いに同一又は異なっていてもよい。置換数s又はtが2以上である場合、同一の環Z1に置換する基R6又は基R7の種類は、それぞれ互いに同一又は異なっていてもよい。また、基R6及びR7のそれぞれの置換位置は特に制限されず、基R6又はR7がそれぞれ置換する環Z1と隣接する環Z1との結合位置以外の位置に置換していればよい。
繰り返し数uは、0以上の整数から選択でき、例えば、0〜10の整数、好ましくは0〜6(例えば、1〜4)の整数、さらに好ましくは0〜2の整数(特に、1)程度であってもよい。
代表的な前記式(3)で表される化合物としては、例えば、環Z1がベンゼン環、uが0〜2程度の化合物、例えば、ビフェニル類(例えば、ビフェニルなど)、ターフェニル(又はテルフェニル)類(例えば、p−ターフェニル、m−ターフェニル、o−ターフェニルなど)、クォーターフェニル類(例えば、p−クォーターフェニル、4,4’’’−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニルなど)などが挙げられる。これらの前記式(3)で表される化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらのうち、ターフェニル類(特に、p−又はm−ターフェニル)が好ましい。これらのターフェニル類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
ポリマーアロイは、前記式(3)で表される化合物を含むことにより、溶融流動性の調整が容易になり、成形性(又は成膜性)が向上し易くなるのみならず、前記式(3)で表される化合物がポリマーアロイを形成するフルオレン環含有ポリエステル及び/又は芳香族熱可塑性樹脂の主鎖に沿って配向(又は配列)するためか、光学特性(例えば、位相差、波長分散特性(特に、位相差)など)を調整(改善又は向上)できる場合がある。
前記式(3)で表される化合物の割合は、フルオレン環含有ポリエステル及び芳香族熱可塑性樹脂の総量100重量部に対して、例えば、0〜50重量部、好ましくは0.01〜30重量部(例えば、0.05〜10重量部)、さらに好ましくは0.1〜8重量部(例えば、0.5〜5重量部)程度であってもよい。
また、ポリマーアロイは、本発明の効果を妨げない限り、他の種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤(エステル類、フタル酸系化合物、エポキシ化合物、スルホンアミド類など)、難燃剤(無機系難燃剤、有機系難燃剤、コロイド難燃物質など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、帯電防止剤、充填剤(酸化物系無機充填剤、非酸化物系無機充填剤、金属粉末など)、発泡剤、消泡剤、滑剤、離型剤(天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸又はその金属塩、酸アミド類など)、易滑性付与剤(例えば、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、カオリンなどの無機微粒子;(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂(架橋ポリスチレン樹脂など)などの有機微粒子)、相溶化剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の添加方法は、慣用の方法、例えば、一軸又は二軸押出装置を用いて、溶融混練する方法などにより添加してもよく、ポリマーアロイを調製する際に添加してもよい。
[位相差フィルムの調製方法及びその特性]
本発明の位相差フィルムは、前記ポリマーアロイを製膜し、必要に応じて、製膜したフィルムを延伸することにより調製できる。製膜方法(又は製膜工程)は、特に制限されず、例えば、キャスティング法(又は溶液キャスト法、溶液流延法)、エキストルージョン法(インフレーション法、Tダイ法などの溶融押出法)、カレンダー法などにより調製でき、成形性に優れるだけでなく、残留溶媒による光学的特性の低下を防止できる観点から、Tダイ法などの溶融押出法であるのが好ましい。本発明では、ポリマーアロイでフィルムを形成するためか、剛直なフルオレン環を含んでいても、又は成形性が低い芳香族熱可塑性樹脂(芳香族ポリカーボネートなど)を含んでいても、位相差フィルムは溶融押出法(又は溶融製膜)で容易に成形でき、かつ薄膜化可能である。
また、位相差フィルムは、無延伸フィルムであってもよいが、延伸することにより、所望の位相差に調整し易く、かつ薄膜化し易い点から、通常、延伸フィルムである場合が多い。
延伸処理(又は延伸工程)は、通常、一軸延伸で行われる。一軸延伸は、固定端一軸延伸、自由端一軸延伸のいずれであってもよいが、ネックインが少なく、物性値の調整が容易である点から、固定端一軸延伸が好ましい。延伸方向は、フィルムの長手方向に対して延伸する縦延伸、幅方向に延伸する横延伸、斜め方向(例えば、長手方向に対し45°の角度をなす方向など)に延伸する斜め延伸のいずれであってもよい。延伸方法は特に限定されず、ロール間延伸方法、加熱ロール延伸方法、圧縮延伸方法、テンター延伸方法などの慣用の方法であってもよい。
延伸温度は、例えば、(Tg−10)〜(Tg+20)℃(例えば、Tg〜(Tg+8)℃)、好ましくは(Tg−5)〜(Tg+10)℃(例えば、(Tg+4)〜(Tg+6)℃)、さらに好ましくは(Tg−3)〜(Tg+5)℃(例えば、(Tg+2)〜(Tg+5)℃)程度であってもよい。具体的な温度としては、例えば、100〜150℃(例えば、105〜130℃)、好ましくは110〜145℃(例えば、115〜125℃)、さらに好ましくは120〜140℃(例えば、129〜133℃)程度であってもよい。延伸温度が、前述の範囲に対して高すぎる又は低すぎると、所望の位相差を発現し難くなるだけでなく、フィルムが均一に延伸できなかったり、破断するおそれもある。
延伸倍率は、特に制限されず、例えば、1.1〜10倍(例えば、1.3〜8倍)、好ましくは1.5〜6倍(例えば、1.8〜5倍)、さらに好ましくは2〜4倍(例えば、2〜3倍、特に3倍)程度であってもよい。延伸倍率が低すぎると、所望の位相差が得られないおそれがある。延伸倍率が高すぎると、位相差が高くなり過ぎたり、負の波長分散特性を有する位相差フィルムが調製し難くなるおそれがあるだけでなく、フィルムが破断するおそれもある。しかし、本発明の位相差フィルムは、前記ポリマーアロイで形成されるためか、剛直なフルオレン環を含むにもかかわらず、延伸してもフィルムが破断し難い。そのため、フィルムは、延伸により容易に薄膜化できる。
延伸速度は、例えば、1〜100mm/分(例えば、10〜90mm/分)、好ましくは20〜80mm/分(例えば、30〜75mm/分)、さらに好ましくは50〜70mm/分(例えば、55〜65mm/分)程度であってもよい。
なお、位相差フィルムは、本発明の効果を害しない限り、必要に応じて、他のフィルム(又はコーティング層)を積層してもよい。例えば、位相差フィルム表面に、界面活性剤や離型剤、微粒子を含有したポリマー層をコーティングして、易滑層を形成してもよい。
このようにして得られる位相差フィルムは、剛直なフルオレン環を含んでいても、及び/又は成形性が低い芳香族熱可塑性樹脂(芳香族ポリカーボネートなど)を含んでいても、薄膜(又は薄肉)に成形でき、薄膜化しても大きな位相差を示す。そのため、位相差フィルムの厚み(又は平均厚み)は、例えば、5〜200μm(例えば、5〜100μm)程度の範囲から選択でき、例えば、10〜80μm(例えば、15〜70μm)、好ましくは20〜60μm(例えば、25〜55μm)、さらに好ましくは30〜50μm(例えば、33〜45μm)程度であってもよく、通常、35〜55μm(例えば、40〜50μm)程度であってもよい。
また、位相差フィルムの正面位相差(又は面方向の位相差)Reは、下記式により算出できる。
Re=(nx−ny)×d
(式中、nxはフィルムの遅相軸方向の屈折率、ny進相軸方向の屈折率、dはフィルムの厚みを示す)。
上記式から明らかなように、通常、位相差フィルムは、厚みが薄くなると位相差の値が小さくなる。しかし、本発明の位相差フィルムは、薄膜に成形しても、比較的高い位相差を有している。波長λnmにおける正面位相差をRe(λ)とすると、波長550nmにおける正面位相差Re(550)は、温度20℃、厚み50μmにおいて、例えば、10nm以上(例えば、20〜300nm程度)の範囲から選択でき、例えば、30nm以上(例えば、50〜200nm程度)、好ましくは60nm以上(例えば、80〜170nm程度)、さらに好ましくは90nm以上(例えば、100〜120nm程度)、特に、120nm以上(例えば、130〜150nm程度)であってもよく、通常、100〜150nm(例えば、105〜110nm程度)、好ましくは110〜150nm程度であってもよい。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、厚み50μmにおける正面位相差(又は面方向の位相差)は、厚み50μmのフィルムの正面位相差であってもよく、厚みdのフィルムの正面位相差を厚み50μmに換算した値であってもよい。
本発明では、ポリマーアロイにおける各樹脂成分の割合を調整することにより、負の波長分散特性を有する位相差フィルムを容易に調製できる。そのため、波長450、550及び650nmにおけるそれぞれの正面位相差Re(450)、Re(550)及びRe(650)が、温度20℃において、下記式(i)を満たすよう制御できる。
0.64≦Re(450)/Re(550)<1 (i)。
前記式(i)において、Re(450)/Re(550)の範囲は、例えば、0.68〜0.99、好ましくは0.72〜0.97(例えば、0.77〜0.96)、さらに好ましくは0.80〜0.94(例えば、0.82〜0.92)、特に0.80〜0.91(例えば、0.82〜0.90)程度であってもよい。
なお、理想的な広帯域1/4波長板は、下記式を満たしている。
Re(450)/Re(550)=0.818
Re(λ)=λ/4
(式中、λは波長を示す)。
上記式を満たす理想的な広帯域1/4波長板に近い位相差フィルムを調製するために、モノマー種、共重合比、延伸条件など種々の検討がなされている。これらの因子は互いに密接に影響し合う傾向にあり、調整が難しいだけでなく、さらに、近年の薄膜化の要求にも対応するために、厚みの制約と併せて考慮する必要があるため、所望の特性を有する位相差フィルムを調製するのは極めて困難である。このような位相差フィルムは、通常、共重合体で形成する場合が多く、前記特性の調整のため、共重合成分やその共重合比などを検討する必要があり、樹脂の調製が煩雑になる傾向がある。しかし、本発明の位相差フィルムでは、ポリマーアロイを形成する各樹脂成分の混合割合を変えるだけで、位相差及びその波長分散特性などを簡便に調整でき、しかも、薄膜化可能である。そのため、本発明の位相差フィルムは、1/4波長板(例えば、広帯域1/4波長板)として好適に利用できる。また、本発明の位相差フィルムは、前記位相差フィルムと偏光板とを含む円偏光板や、前記円偏光板を備えた画像表示装置などに好適に利用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。評価方法及び原料を以下に示す。
[評価方法]
(ガラス転移温度Tg)
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製「DSC 6220」)を用い、アルミパンに試料を入れ、30℃から200℃の範囲でTgを測定した。
(分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィ(東ソー(株)製「HLC−8120GPC」)を用い、試料をクロロホルムに溶解させ、ポリスチレン換算で、重量平均分子量Mwを測定した。
(屈折率)
多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製「DR−M2/1550」)を用い、測定温度20℃、波長589nmで測定した。
(アッベ数)
多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製「DR−M2/1550」)を用い、測定温度20℃で、波長486nm(F線)、589nm(d線)及び656nm(C線)における各屈折率nF、nd及びnCを測定し、下記式により算出した。
(nd−1)/(nF−nC)。
(3倍複屈折)
3倍複屈折の測定に用いた試験片は、フルオレン環含有ポリエステルを160〜240℃でプレス成形し、得られたフィルム(厚み100〜400μm)を15mm×50mmの短冊状に切り出して作製した。このフィルムをガラス転移温度Tg+10℃の温度で測定用試験片を25mm/分で3倍延伸し、延伸フィルムを得た。
リタデーション測定装置(大塚電子(株)製「RETS−100」)を用い、回転検光子法により、測定温度20℃、波長600nmでリタデーションを測定し、このリタデーション値を測定部位の厚みで除することで算出した。
(Re(450)、Re(550)及びRe(450)/Re(550))
リタデーション測定装置(大塚電子(株)製「RETS−100」)を用いて、測定温度20℃で、延伸フィルムのRe(450)、Re(550)を測定し、得られた結果より、膜厚50μmに換算した値を算出した。また、Re(450)/Re(550)は、Re(450)の値をRe(550)の値で除することにより算出した。
(平均厚み)
測厚計((株)ミツトヨ製「マイクロメーター」)を用いて、フィルムの長手方向に対して、チャック間を等間隔に3点測定し、その平均値を算出した。
[原料]
FDPM:9,9−ビス(2−メトキシカルボニルエチル)フルオレン[9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン(又はフルオレン−9,9−ジプロピオン酸)のジメチルエステル]、特開2005−89422号公報の実施例1記載のアクリル酸t−ブチルをアクリル酸メチル[37.9g(0.44モル)]に変更したこと以外は同様にして合成したもの
BPEF:9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
EG:エチレングリコール
PC:ビスフェノールA型ポリカ−ボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロンH−4000」、ガラス転移温度Tgは144℃、屈折率は1.583、アッベ数は30、3倍複屈折は+159×10−4
p−tPh:パラターフェニル、東京化成工業(株)製
m−tPh:メタターフェニル、東京化成工業(株)製。
[合成例1]
FDPM 1.00モル、BPEF 0.80モル、EG 2.20モルに、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え、撹拌しながら徐々に加熱溶融した。230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10−4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで、徐々に昇温、減圧しながらEGを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、フルオレン環含有ポリエステル1のペレットを調製した。
得られたペレットを、1H−NMRにより分析したところ、フルオレン環含有ポリエステル1に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPM由来であり、導入されたジオール成分の80モル%がBPEF由来、20モル%がEG由来であった。
得られたフルオレン環含有ポリエステル1のガラス転移温度Tgは126℃、重量平均分子量Mwは43600、屈折率は1.6351、アッベ数は23.5、3倍複屈折は−22.4×10−4であった。
[実施例1〜25]
合成例1で作製したフルオレン環含有ポリエステル1とPCとを、表1に示す割合で投入し、二軸押出機((株)テクノベル製「KZW15−30MG」、L/D=45、スクリュー径D15mm、回転速度200rpm)を用いて、温度260℃で溶融押出成形し、Tダイ、巻取り装置を用いて、厚み100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを60mm×60mmのサイズに切り出し、表1に記載の延伸温度及び延伸倍率、並びに延伸速度60mm/分で固定端一軸延伸して、延伸フィルムを作製した。
得られたフィルムのガラス転移温度Tg、Re(450)、Re(550)、Re(450)/Re(550)及び延伸後のフィルムの平均厚みを表1に示す。
[参考例1〜2]
合成例1で作製したフルオレン環含有ポリエステル1又はPCを、それぞれ単独で用いる以外は、実施例1〜25と同様にして延伸フィルムを作製した。
得られたフィルムのガラス転移温度Tg、Re(450)、Re(550)、Re(450)/Re(550)及び延伸後のフィルムの平均厚みを表1に示す。
[合成例2]
FDPM 1.00モル、BPEF 0.70モル、EG 2.30モルを用いる以外は、合成例1と同様の方法により、フルオレン環含有ポリエステル2のペレットを調製した。
得られたペレットを、1H−NMRにより分析したところ、フルオレン環含有ポリエステル2に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPM由来であり、導入されたジオール成分の70モル%がBPEF由来、30モル%がEG由来であった。
得られたフルオレン環含有ポリエステル2のガラス転移温度Tgは114.9℃、重量平均分子量Mwは57150、屈折率は1.6327、アッベ数は23.9、3倍複屈折は−30.4×10−4であった。
[実施例26〜40]
合成例2で作製したフルオレン環含有ポリエステル2とPCとを、表2に示す割合で投入し、実施例1〜25と同様の方法により厚み100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを60mm×60mmのサイズに切り出し、表2に記載の延伸温度及び延伸倍率、並びに延伸速度60mm/分で固定端一軸延伸して、延伸フィルムを作製した。
得られたフィルムのガラス転移温度Tg、Re(450)、Re(550)、Re(450)/Re(550)及び延伸後のフィルムの平均厚みを表2に示す。
[参考例3〜5]
合成例2で作製したフルオレン環含有ポリエステル2を単独で用いる以外は、実施例26〜40と同様にして延伸フィルムを作製した。
得られたフィルムのガラス転移温度Tg、Re(450)、Re(550)、Re(450)/Re(550)及び延伸後のフィルムの平均厚みを表2に示す。
[合成例3]
FDPM 1.00モル、BPEF 0.60モル、EG 2.40モルを用いる以外は、合成例1と同様の方法により、フルオレン環含有ポリエステル3のペレットを調製した。
得られたペレットを、1H−NMRにより分析したところ、フルオレン環含有ポリエステル3に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPM由来であり、導入されたジオール成分の60モル%がBPEF由来、40モル%がEG由来であった。
得られたフルオレン環含有ポリエステル3のガラス転移温度Tgは111.7℃、重量平均分子量Mwは63750、屈折率は1.6259、アッベ数は24.5、3倍複屈折は−26.8×10−4であった。
[実施例41〜55]
合成例3で作製したフルオレン環含有ポリエステル3とPCとを、表3に示す割合で投入し、実施例1〜25と同様の方法により厚み100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを60mm×60mmのサイズに切り出し、表3に記載の延伸温度及び延伸倍率、並びに延伸速度60mm/分で固定端一軸延伸して、延伸フィルムを作製した。
得られたフィルムのガラス転移温度Tg、Re(450)、Re(550)、Re(450)/Re(550)及び延伸後のフィルムの平均厚みを表3に示す。
[参考例6〜8]
合成例3で作製したフルオレン環含有ポリエステル3を単独で用いる以外は、実施例41〜55と同様にして延伸フィルムを作製した。
得られたフィルムのガラス転移温度Tg、Re(450)、Re(550)、Re(450)/Re(550)及び延伸後のフィルムの平均厚みを表3に示す。
[合成例4]
FDPM 1.00モル、BPEF 0.50モル、EG 2.50モルを用いる以外は、合成例1と同様の方法により、フルオレン環含有ポリエステル4のペレットを調製した。
得られたペレットを、1H−NMRにより分析したところ、フルオレン環含有ポリエステル4に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPM由来であり、導入されたジオール成分の50モル%がBPEF由来、50モル%がEG由来であった。
得られたフルオレン環含有ポリエステル4のガラス転移温度Tgは105.5℃、重量平均分子量Mwは64450、屈折率は1.6242、アッベ数は24.7、3倍複屈折は−18.8×10−4であった。
[実施例56〜70]
合成例4で作製したフルオレン環含有ポリエステル4とPCとを、表4に示す割合で投入し、実施例1〜25と同様の方法により厚み100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを60mm×60mmのサイズに切り出し、表4に記載の延伸温度及び延伸倍率、並びに延伸速度60mm/分で固定端一軸延伸して、延伸フィルムを作製した。
得られたフィルムのガラス転移温度Tg、Re(450)、Re(550)、Re(450)/Re(550)及び延伸後のフィルムの平均厚みを表4に示す。
[参考例9〜11]
合成例4で作製したフルオレン環含有ポリエステル4を単独で用いる以外は、実施例56〜70と同様にして延伸フィルムを作製した。
得られたフィルムのガラス転移温度Tg、Re(450)、Re(550)、Re(450)/Re(550)及び延伸後のフィルムの平均厚みを表4に示す。
表1〜4から明らかなように、実施例のフィルムを形成するポリマーアロイは、いずれも完全相溶系で1つのガラス転移温度Tgを有しており、かつTgも高く良好な耐熱性を示した。また、実施例1〜21、23、25〜37、41〜52及び56〜68で調製したフィルムの位相差は、負の波長分散特性を示した。いずれの実施例においても、フィルムが破断することはなく、厚み80μm程度以下(特に、50μm程度以下)まで延伸でき、しかも、位相差も十分に高かった。
[実施例71〜99]
合成例1で作製したフルオレン環含有ポリエステル1 75重量部と、PC 25重量部と、表5に示す割合のp−tPh又はm−tPhとを投入し、実施例1〜25と同様の方法により厚み100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを60mm×60mmのサイズに切り出し、表5に記載の延伸温度及び延伸倍率、並びに延伸速度60mm/分で固定端一軸延伸して、延伸フィルムを作製した。
得られたフィルムのガラス転移温度Tg、Re(450)、Re(550)、Re(450)/Re(550)及び延伸後のフィルムの平均厚みを表5に示す。
表5から明らかなように、添加剤としてターフェニルを混合しても、いずれも完全相溶系で1つのガラス転移温度Tgを有しており、かつTgも高く良好な耐熱性を示した。また、調製したフィルムの位相差は、全て負の波長分散特性を示した。いずれの実施例においても、フィルムが破断することはなく、厚み100μm程度以下(特に、60μm程度以下)まで延伸でき、しかも、位相差も十分に高かった。