JP2018151627A - 位相差フィルム及びその製造方法、円偏光板並びに画像表示装置 - Google Patents

位相差フィルム及びその製造方法、円偏光板並びに画像表示装置 Download PDF

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善也 大田
克英 沖見
Katsuhide Okimi
克英 沖見
慎一 亀井
Shinichi Kamei
慎一 亀井
将平 金田
Shohei Kaneda
将平 金田
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Abstract

【課題】逆波長分散特性を有する位相差フィルムを用いて、高い生産性で円偏光板を簡便に製造する。【解決手段】長尺方向に対する遅相軸が40〜50°であり、波長550nmにおける面内位相差R0(550)が100〜160nmであり、波長450nmにおける面内位相差R0(450)と前記面内位相差R0(550)との比率R0(450)/R0(550)が0.8以上1未満である長尺状の斜め延伸樹脂フィルムで位相差フィルムを形成する。この位相差フィルムは、ロール体である。延伸樹脂フィルムは延伸ポリエステル樹脂フィルムである。前記延伸ポリエステル樹脂フィルムは、フルオレン骨格を有するポリエステル樹脂を含んでいてもよい。このポリエステル樹脂は、脂環族炭化水素環をさらに有していてもよい。位相差フィルムの平均厚みは20〜100μmである。【選択図】なし

Description

本発明は、広帯域に反射防止性能を有する円偏光板に使用される位相差フィルム及びその製造方法、この位相差フィルムを偏光板に積層した円偏光板、並びにこの円偏光板を備えた画像表示装置に関する。
円偏光板は、1/4波長の位相差を有する1/4波長板と、偏光板(直線偏光板)とを、1/4波長板の遅相軸に対して、偏光板の吸収軸が45°の交差角度となるように貼り合せて形成され、例えば、反射型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、タッチパネルディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの画像表示装置において、偏光状態を制御して画像を表示したり、反射光を吸収して視認性を確保したりするために用いられている。特に、近年、有機ELディスプレイがスマートフォンに搭載されるに伴い、外光反射を防ぐ必要性から円偏光板の重要度が増している。
一般的な1/4波長板は、特定の波長の光に対して機能するため、機能する波長域外の光(例えば、青色)による着色が生じたり、黒表示が不十分となったりして、視認性が低下し易い。そのため、可視光の広帯域において位相差がほぼ1/4波長となる逆波長分散特性を有する位相差フィルムが要求されている。また、近年のスマートフォンでは薄型化が要求されているが、1/4波長位相差フィルムを2枚使用する必要がある正波長分散性フィルムでさらなる薄型化に対応することは困難であり、1枚で使用可能な逆波長分散性フィルムが求められている。
一般的な高分子は波長が長くなるほど位相差が小さくなる正波長分散特性を示すが、逆波長分散特性を示す高分子として、主鎖の芳香環と側鎖の芳香環とが直交した構造単位(カルド構造)と、脂環族炭化水素や環状エーテル(酸素含有複素環)の構造単位と有する共重合ポリカーボネートなどのフィルムが開発され、円偏光板に採用されている。
特開2010−134232号公報(特許文献1)には、ビスフェニルフルオレン骨格及び環状エーテル骨格を有するポリカーボネート共重合体からなり、かつ波長450nm、550nm及び600nmにおけるフィルム面内の位相差値R(450)、R(550)及びR(600)が、R(450)<R(550)<R(600)である光学フィルムが開示されている。この文献の実施例では、押出フィルム又はキャストフィルムを2倍の延伸倍率で一軸延伸することにより、光学フィルムを製造している。
また、特開2012−31369号公報(特許文献2)には、ビスフェニルフルオレン骨格と環状エーテル骨格とを含むポリカーボネート樹脂で形成され、波長450nmで測定した位相差R(450)と、波長550nmで測定したR(550)との比が、0.5≦R(450)/R(550)≦1.0である透明フィルムが開示されている。この文献の実施例では、押出フィルムを1.2〜2倍の延伸倍率で一軸延伸することにより、光学フィルムを製造している。
さらに、特開2015−212368号公報(特許文献3)には、ビスフルオレン骨格と環状エーテル骨格と脂環族炭化水素骨格とを含む繰り返し構造単位を有し、かつ波長450nmにおける位相差R(450)と波長550nmにおける位相差R(550)との比が、0.75≦R(450)/R(550)≦0.93である重縮合系の樹脂を含有する透明フィルムが開示されている。この文献の実施例では、熱プレスシート又は押出フィルムを1.5〜2倍の延伸倍率で一軸延伸することにより、位相差フィルムを製造している。
また、近年、有機ELディスプレイは、スマートフォンやタブレットなどの用途におけるフレキシブルでフォルダブルなディスプレイとして期待されている。このような用途では、折り曲げ性を向上させたり、反りを防ぐ観点から、全体の厚みを薄くする必要があり、円偏光板についても、より薄型化の要求がある。
特開2010−134232号公報 特開2012−31369号公報 特開2015−212368号公報
しかし、上述の位相差フィルムで有機ELディスプレイの円偏光板を作製する場合、位相差フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸とが45°の角度となるように貼り合わせるために、位相差フィルムを延伸方向に対して45°の方向で切り分ける必要がある。そのため、円偏光板の製造は、製造工程が枚葉式になって大量生産できず、生産性が低い。例えば、位相差フィルムが縦一軸延伸によって得られた長尺フィルムのロール体である場合、ロール体から繰り出したフィルムを矩形のシートに裁断して、偏光板と所定の角度に合わせて1枚ごとに貼り合せる作業になるため、連続生産ができず、製造コストが高くなる。さらに、裁断による材料ロスも発生する。
また、円偏光板のより一層の薄型化への要求については、1/4波長位相差フィルムの位相差はフィルム厚みに比例しており、フィルムの薄さと位相差がトレードオフの関係にあることから、両立させることは容易ではない。特に、フルオレン骨格は嵩高く剛直であるため、フルオレン骨格を含む樹脂では、特に延伸の制御が困難である。
そこで、本発明の目的は、逆波長分散特性を有する位相差フィルムを用いて、高い生産性で円偏光板を簡便に製造できる位相差フィルム及びその製造方法、この位相差フィルムを偏光板に積層した円偏光板、並びにこの円偏光板を備えた画像表示装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、逆波長分散特性とフィルムの薄膜化とを両立できる位相差フィルム及びその製造方法、この位相差フィルムを偏光板に積層した円偏光板、並びにこの円偏光板を備えた画像表示装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、斜め延伸しても、位相差を向上でき、皺の発生も抑制できる位相差フィルム及びその製造方法、この位相差フィルムを偏光板に積層した円偏光板、並びにこの円偏光板を備えた画像表示装置を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、樹脂フィルムを斜め延伸して逆波長分散特性を有する位相差フィルムを製造することにより、逆波長分散特性を有する位相差フィルムを用いて、高い生産性で円偏光板を簡便に製造できること、さらに特定のポリエステル樹脂フィルムを湾曲式斜め延伸することにより、斜め延伸しても、高い逆波長分散特性とフィルムの薄膜化とを両立できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の位相差フィルムは、長尺状の延伸樹脂フィルム、特に斜め延伸樹脂フィルムで形成され、長尺方向に対する遅相軸が40〜50°であり、波長550nmにおける面内位相差R(550)が100〜160nmであり、波長450nmにおける面内位相差R(450)と前記面内位相差R(550)との比率R(450)/R(550)が0.8以上1未満である。本発明の位相差フィルムは、ロール体である。前記延伸樹脂フィルムは延伸ポリエステル樹脂フィルムである。前記延伸ポリエステル樹脂フィルムは、フルオレン骨格を有するフルオレン含有ポリエステル樹脂を含んでいてもよい。このフルオレン含有ポリエステル樹脂は、脂環族炭化水素環をさらに有していてもよい。前記フルオレン含有ポリエステル樹脂のガラス転移温度は90〜145℃である。本発明の位相差フィルムの平均厚みは20〜100μmである。
本発明には、樹脂フィルムを斜め方向に延伸する斜め延伸工程を含む前記位相差フィルムの製造方法も含まれる。本発明の製造方法では、テンター式横延伸装置のガイドレールを湾曲させて、前記樹脂フィルムを斜め方向に延伸してもよい。この斜め方向の延伸において、延伸速度は200〜800%/分である。本発明の製造方法において、延伸倍率は2〜5倍である。本発明の製造方法は、押出成形又は溶液キャスト成形により樹脂フィルムを得る製膜工程をさらに含んでいてもよい。
本発明には、前記位相差フィルムと偏光子とを積層した円偏光板も含まれる。また、本発明には、前記円偏光板を備えた画像表示装置、特に、有機ELディスプレイも含まれる。
なお、本願明細書および特許請求の範囲においては、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。すなわち、例えば、炭素数が1のアルキル基は「Cアルキル」で示し、炭素数が6〜10のアリール基は「C6−10アリール」で示す。
本発明では、樹脂フィルムを斜め延伸して位相差フィルムを製造するため、位相差フィルムと偏光子(偏光板)と貼り合わせる際に、位相差フィルムの裁断工程が不要となり、円偏光板をロールツーロール方式で連続生産できる。すなわち、本発明では、逆波長分散特性を有する位相差フィルムを用いて、高い生産性で、反射防止性やリアルブラック性に優れた円偏光板を簡便に製造できる。しかも、ロール体から繰り出した位相差フィルムをそのまま偏光子と貼り合わせることができるため、裁断工程も不要であり、材料ロスも発生せず、安価に製造できる。さらに、特定のポリエステル樹脂を用いて湾曲式斜め延伸するため、高い逆波長分散特性と薄膜化とを両立できる。さらに、位相差を向上でき、かつ皺の発生も抑制できる。
図1は、湾曲式の斜め延伸法における延伸倍率の求め方を説明するための模式図である。
[位相差フィルムの特性]
本発明の位相差フィルムは、押出成形などによって連続的に得られる長尺状の樹脂フィルムを斜め方向に延伸して得られるため、長尺状(無限長状)の形態を有しており、通常、ロール体の形態で保存・運搬される。
本発明の長尺状の位相差フィルムは、長尺方向である長手方向に対して斜め方向に延伸することにより、長尺方向(長手方向)に対する遅相軸が斜め方向に調整されている。すなわち、本発明の位相差フィルムは、長尺方向に対する遅相軸が45°近辺に調整されているため、偏光板の吸収軸(振動面)に対して45°に貼り合わせるためのカッティング工程が不要となり、偏光板との貼り合わせをロールツーロール方式で連続生産できる。詳しくは、偏光板との積層によって円偏光板を形成するためには、位相差フィルムの長尺方向に対する遅相軸の角度(配向角)は40〜50°であればよく、好ましくは41〜49°、さらに好ましくは42〜48°、特に43〜47°である。
本発明の位相差フィルムの面内位相差(正面位相差)Rは、下記式により算出できる。
=(nx−ny)×d
(式中、nxはフィルムの遅相軸方向の屈折率、ny進相軸方向の屈折率、dはフィルムの厚みを示す)。
波長λnmにおける面内位相差をR(λ)とすると、温度20℃、波長550nmにおける面内位相差R(550)は、厚み50μmにおいて100〜160nmであり、好ましくは105〜155nm、さらに好ましくは110〜150nm、特に120〜145nmである。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、厚み50μmにおける面内位相差は、厚み50μmのフィルムの正面位相差であり、厚みdのフィルムの面内位相差を厚み50μmに換算した値である。
本発明の位相差フィルムは、逆波長分散特性を有している。そのため、波長450nmにおける面内位相差R(450)と前記面内位相差R(550)との比率であるR(450)/R(550)は0.8以上1未満であり、好ましくは0.802〜0.9、さらに好ましくは0.805〜0.85、特に0.81〜0.83である。なお、理想的な広帯域1/4波長板は、R(450)/R(550)が0.818程度である。
本発明の位相差フィルムは、斜め延伸で製造されているにも関わらず、薄肉化しても位相差が発現しており、厚みは薄くてもよい。本発明の位相差フィルムの平均厚みは、例えば20〜100μm、好ましくは25〜80μm、さらに好ましくは30〜70μmであり;20〜60μm、特に40〜60μmである。平均厚みが小さすぎると、製膜時の巻き取り性が低下し、安定して巻き取りができなくなる虞がある上に、延伸工程で破断などが発生する虞がある。また、位相差は膜厚に比例するため、位相差の発現も低下する虞がある。一方、平均厚みが大きすぎると、円偏光板の薄型要求に対応できない虞がある上に、偏光子との貼り合せ工程で乾燥時に反りが発生し、最終的に得られた偏光子の光学物性を阻害する虞もある。
[位相差フィルムの材質]
本発明の位相差フィルムは、前記光学特性を有する延伸樹脂フィルムであればよい。樹脂フィルムを構成する樹脂の種類は特に限定されず、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましく、フルオレン骨格を有するポリエステル樹脂(フルオレン含有ポリエステル樹脂)を含むのが特に好ましい。
(フルオレン含有ポリエステル樹脂)
フルオレン骨格を有するポリエステル樹脂(フルオレン含有ポリエステル樹脂)は、ジオール成分及びジカルボン酸成分の少なくとも一方の成分がフルオレン骨格を含んでいればよい。
(1)フルオレンジオール
フルオレン含有ポリエステル樹脂を構成するジオール成分がフルオレン骨格を含む場合、ジオール成分は、例えば、重合成分として、下記式(1)で表されるフルオレンジオールを含んでいてもよい。
(式中、Zは芳香族炭化水素環、R及びRはそれぞれ置換基、kは0〜4の整数、m及びnはそれぞれ0又は1以上の整数、Aはアルキレン基を示す)。
前記式(1)において、Zで表される芳香族炭化水素環(アレーン環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式芳香族炭化水素環(単環式アレーン環)、多環式芳香族炭化水素環(多環式アレーン環)などが挙げられ、多環式芳香族炭化水素環には、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素環(縮合多環式アレーン環)、環集合芳香族炭化水素環(環集合アレーン環)などが含まれる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環、縮合三環式アレーン環などの縮合二乃至四環式アレーン環が挙げられ、縮合二環式アレーン環としては、例えば、ナフタレン環などの縮合二環式C10−16アレーン環が挙げられ、縮合三環式アレーン環としては、例えば、アントラセン環、フェナントレン環が挙げられる。好ましい環Zとしては、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環式C10−16アレーン環、好ましくは縮合多環式C10−14アレーン環が挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
環集合アレーン環としては、ビアレーン環、テルアレーン環などが例示でき、ビアレーン環としては、ビC6−12アレーン環、例えば、ビフェニル環;ビナフチル環;1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環などのフェニルナフタレン環が例示でき、テルアレーン環としては、テルC6−12アレーン環、例えば、テルフェニレン環が例示できる。好ましい環集合アレーン環は、ビC6−10アレーン環などが挙げられ、特にビフェニル環が好ましい。
これらのZのうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6−12アレーン環が好ましく、特にベンゼン環などのC6−10アレーン環が好ましい。また、2つのZは、互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(1)において、Rで表される置換基としては、例えば、炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子などが挙げられ、炭化水素基のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基などが例示でき、炭化水素基のアリール基としては、フェニル基などのC6−10アリール基などが例示でき、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。これらのRのうち、アルキル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましい。さらに、アルキル基は、例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、好ましくはメチル基などのC1−3アルキル基、さらに好ましくはメチル基などのC1−2アルキル基が好ましい。
の置換数kは、0〜4の整数であり、例えば、0〜3、好ましくは0〜2の整数であり、さらに好ましくは0又は1、特に0である。なお、フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環において、それぞれの置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよく、それぞれのRの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、kが2以上である場合、同一のベンゼン環に置換する2以上のRの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、Rの置換位置は特に制限されず、例えば、フルオレン環の2位乃至7位のいずれであってもよく、通常、2位、3位及び7位のいずれかである。
前記式(1)において、Rで表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子;炭化水素基;アルコキシ基;シクロアルキルオキシ基;アリールオキシ基;アラルキルオキシ基;アルキルチオ基;シクロアルキルチオ基;アリールチオ基;アラルキルチオ基;アシル基;ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基が例示できる。
前記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれ;炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基;アリール基;アラルキル基などが例示でき;アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基などが例示でき;シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基などが例示でき;アリール基としては、フェニル基、アルキルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6−12アリール基などが例示でき、アルキルフェニル基としては、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)などが例示でき;アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基などが例示できる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルコキシ基などが例示でき;シクロアルキルオキシ基としては、シクロヘキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基などが例示でき;アリールオキシ基としては、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基などが例示でき;アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基などが例示でき;アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−10アルキルチオ基などが例示でき;シクロアルキルチオ基としては、シクロヘキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基などが例示でき;アリールチオ基としては、チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基などが例示でき;アラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基などが例示でき;アシル基としては、アセチル基などのC1−6アシル基などが例示でき;置換アミノ基としては、ジアルキルアミノ基、ビス(アルキルカルボニル)アミノ基などが例示でき、ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基などが例示でき、ビス(アルキルカルボニル)アミノ基としては、ジアセチルアミノ基などのビス(C1−4アルキル−カルボニル)アミノ基などが例示できる。
これらのRのうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられ、炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられる。好ましいRとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基などが挙げられ、アルキル基としては、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基などが挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基などのC5−8シクロアルキル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基などのC6−14アリール基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基などが挙げられる。特に、アルキル基として、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基が挙げられ、アリール基として、フェニル基などのC6−10アリール基などが挙げられる。なお、Rがアリール基であるとき、Rは、Zとともに前記環集合アレーン環を形成してもよい。なお、異なるZにそれぞれ結合するRの種類は、同一又は異なっていてもよい。
の置換数mは、0又は1以上の整数であればよく、Zの種類に応じて適宜選択でき、例えば0〜8の整数であってもよく、好ましい置換数mは、以下段階的に、0〜4の整数、0〜3の整数、0〜2の整数、0又は1であり、特に0である。なお、異なるZにおける置換数mは、互いに同一又は異なっていてもよい。また、置換数m1が2以上である場合、同一のZに置換する2以上のRの種類は、同一又は異なっていてもよい。特に、mが1である場合、Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、Rがメチル基である。また、Rの置換位置は特に制限されず、Zと、エーテル結合(−O−)及びフルオレン環の9位との結合位置以外の位置に置換していればよい。
前記式(1)において、Aとしては、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2−プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルキレン基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2−3アルキレン基、特に、エチレン基が挙げられる。
オキシアルキレン基(OA)の繰り返し数(付加モル数)nは、0又は1以上の整数であればよく、例えば0〜15であってもよく、好ましい繰り返し数nは、以下段階的に、1〜10、0〜8、0〜4;若しくは、以下段階的に、1〜6の整数、1〜2の整数、特に1である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「繰り返し数(付加モル数)」は、平均値(算術平均値、相加平均値)又は平均付加モル数であってもよく、好ましい態様は、好ましい整数の範囲と同様である。繰り返し数nが大きすぎると、屈折率が低下するおそれがある。また、2つの繰り返し数nは、それぞれ同一又は異なっていてもよい。nが2以上の場合、2以上のオキシアルキレン基(OA)は、同一又は異なっていてもよい。また、異なるZにエーテル結合(−O−)を介して結合するオキシアルキレン基(OA)は互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(1)において、基[−O−(AO)−]の置換位置は、特に限定されず、Zの適当な置換位置にそれぞれ置換していればよい。基[−O−(AO)−]の置換位置は、Zがベンゼン環である場合、フルオレン環の9位に結合するフェニル基の2位、3位、4位、特に、3位又は4位のいずれかの位置に置換している場合が多い。
前記式(1)で表されるフルオレンジオールとしては、例えば、前記式(1)において、k=0、n=0であるフルオレンジオール、すなわち、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類;k=0、nが1以上、好ましくは1〜10であるフルオレンジオール、すなわち、9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類などが挙げられる。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、特に断りのない限り、「(ポリ)アルコキシ」とは、アルコキシ基及びポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(ヒドロキシ−アルキルフェニル)フルオレンが挙げられ;9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられ;9,9−ビス(ヒドロキシ−アルキルフェニル)フルオレンとして、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−(モノ又はジ)C1−4アルキル−フェニル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン;9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アルキルフェニル]フルオレンが挙げられ、9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレンとしては、例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2−4アルコキシフェニル]フルオレンが挙げられ;9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アルキルフェニル]フルオレンとしては、例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2−4アルコキシ−(モノ又はジ)C1−4アルキル−フェニル]フルオレンが挙げられる。
これらの前記式(1)で表されるフルオレンジオールは、単独で又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらのフルオレンジオールのうち、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−(モノ又はジ)C1−4アルキル−フェニル)フルオレン、9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2−4アルコキシC6−10アリール]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類が好ましく、9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至ペンタ)C2−4アルコキシフェニル]フルオレンがさらに好ましく、例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ又はジ)C2−3アルコキシフェニル]フルオレンが特に好ましい。
(2)他のジオール成分
フルオレン含有ポリエステル樹脂を構成する重合成分である他のジオール成分には、脂肪族ジオール、ポリアルキレングリコール、脂環族ジオール、複素脂環族ジオール、芳香族ジオールなどが含まれる。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどの直鎖状又は分岐鎖状C2−12アルカンジオールが挙げられる。
ポリアルキレングリコール(又はポリアルカンジオール)としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリC2−6アルカンジオール、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジ乃至テトラC2−4アルカンジオールが挙げられる。
脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオールなどのシクロアルカンジオール;シクロヘキサンジメタノールなどのビス(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン;ビスフェノールAの水添物などの後述する芳香族ジオールの水添物が挙げられる。
複素脂環族ジオール(ヘテロ環式ジオール)としては、例えば、イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、又はこれらのアルキル置換体などの誘導体が挙げられる。
芳香族ジオールとしては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノールなどのジヒドロキシアレーン;ベンゼンジメタノールなどの芳香脂肪族ジオール;ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールG、ビスフェノールSなどのビスフェノール類;p,p’−ビフェノールなどのビフェノール類など;及びこれらのジオール成分のC2−4アルキレンオキシド(又はアルキレンカーボネート、ハロアルカノール)付加体、例えば、1モルのビスフェノールAに対して、2〜10モルのエチレンオキシドが付加した付加体が挙げられる。
これら他のジオール成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルカンジオール、イソソルビドなどの酸素含有複素脂環族ジオール(酸素含有ヘテロ環式ジオール)が好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルカンジオールがさらに好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの直鎖状又は分岐鎖状C2−3アルカンジオールが特に好ましい。
(3)フルオレンジカルボン酸
フルオレン含有ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分がフルオレン骨格を含む場合、ジカルボン酸成分は、例えば、重合成分として、下記式(2−1)及び/又は(2−2)で表されるフルオレンジカルボン酸を含んでいてもよい。
(式中、R及びRは置換基、p及びqはそれぞれ0〜4の整数、A及びAは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、rは0〜4の整数を示す)。
前記式(2−1)、(2−2)において、A及びAで表される炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2−エチルエチレン基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−8アルキレン基が例示できる。好ましいアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキレン基、特にメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキレン基である。
アルキレン基の置換基としては、例えば、フェニル基などのアリール基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基が例示できる。
は、例えば、エチレン基、プロピレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基である場合が多く、Aは、例えば、メチレン基、エチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルキレン基である場合が多い。置換基を有するアルキレン基Aは、例えば、1−フェニルエチレン基、1−フェニルプロパン−1,2−ジイル基である。
係数rは0〜4の整数から選択でき、通常、0〜2、好ましくは0又は1である。
前記式(2−1)及び(2−2)において、基R及びRは、好ましい態様を含め、前記式(1)記載のRとそれぞれ同一であり、p及びqは、好ましい態様を含め、前記式(1)記載のkとそれぞれ同一である。
前記式(2−1)で表される代表的な化合物は、AがC2−6アルキレン基である化合物、例えば、9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC2−6アルキル)フルオレンを含む。前記式(2−2)で表される代表的な化合物は、r=0であり、かつAがC1−6アルキレン基である化合物、例えば、9−(1,2−ジカルボキシエチル)フルオレン、r=1であり、かつAがC1−6アルキレン基である化合物、例えば、9−(2,3−ジカルボキシプロピル)フルオレンなどの9−(ジカルボキシC2−6アルキル)フルオレンを含む。
これらのフルオレンジカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、前記式(2−1)で表される化合物、例えば、9,9−ビス(カルボキシC1−4アルキル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類が好ましい。
なお、フルオレンジカルボン酸は、エステル形成性誘導体であってもよい。エステル形成性誘導体としては、ジカルボン酸低級アルキルエステル(メチルエステルなどのC1−2アルキルエステルなど)、ジカルボン酸ハライド、ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
(4)他のジカルボン酸成分
フルオレン含有ポリエステル樹脂を構成する重合成分である他のジカルボン酸成分には、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが含まれる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アルカンジカルボン酸;不飽和脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、アルカンジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC1−20アルカン−ジカルボン酸などが挙げられ;不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などのC2−10アルケン−ジカルボン酸などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸;架橋環式シクロアルカンジカルボン酸;シクロアルケンジカルボン酸;架橋環式シクロアルケンジカルボン酸が挙げられる。シクロアルカンジカルボン酸としては、例えば、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など)、シクロヘプタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸などのC4−12シクロアルカン−ジカルボン酸が挙げられ、シクロヘキサンジカルボン酸としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。架橋環式シクロアルカンジカルボン酸としては、例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などの(ジ又はトリ)シクロC7−10アルカン−ジカルボン酸が挙げられ;シクロアルケンジカルボン酸としては、例えば、シクロペンテンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸(テトラヒドロフタル酸など)、シクロオクテンジカルボン酸などのC5−10シクロアルケン−ジカルボン酸が挙げられ;架橋環式シクロアルケンジカルボン酸としては、例えば、ノルボルネンジカルボン酸などの(ジ又はトリ)シクロC7−10アルケン−ジカルボン酸が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、アレーンジカルボン酸成分;アルキルアレーンジカルボン酸;アリールアレーンジカルボン酸;前記式(2−1)及び(2−2)で表されるフルオレンジカルボン酸以外のフルオレンジカルボン酸(2,7−ジカルボキシフルオレンなどのジカルボキシフルオレン)などが挙げられる。アレーンジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸などのベンゼンジカルボン酸;2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸などが挙げられ;アルキルアレーンジカルボン酸としては、4−メチルイソフタル酸などのアルキルイソフタル酸などが挙げられ;アリールアレーンジカルボン酸としては、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。
これら他のジカルボン酸成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、シクロヘキサンジカルボン酸成分などのC5−8シクロアルカン−ジカルボン酸、特に、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
なお、他のジカルボン酸成分も、フルオレンジカルボン酸と同様に、エステル形成性誘導体であってもよい。
(5)好ましいフルオレン含有ポリエステル樹脂
前記フルオレン含有ポリエステル樹脂は、フルオレン骨格を有していればよいが、フルオレン骨格に加えて、脂肪族炭化水素環、脂環族炭化水素環及び複素脂環族炭化水素環、特に脂肪族炭化水素環及び脂環族炭化水素環を有するポリエステル樹脂が好ましい。
詳しくは、前記フルオレン含有ポリエステル樹脂のうち、前記式(1)で表されるフルオレンジオール及び/又は前記式(2)で表されるフルオレンジカルボン酸を重合成分として含むポリエステル樹脂が好ましく、前記式(1)で表されるフルオレンジオールを重合成分として含むポリエステル樹脂が特に好ましい。
前記式(1)で表されるフルオレンジオールを重合成分として含むポリエステル樹脂は、ジオール成分として、脂肪族ジオール及び/又は複素脂環族ジオールを含むのが好ましく、エチレングリコールなどの直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルカンジオール及び/又はイソソルビドなどの複素脂環族ジオールを含むのがさらに好ましく、斜め延伸において、逆波長分散特性とフィルムの薄膜化とを両立でき、皺の発生も抑制できる点から、直鎖状又は分岐鎖状C2−3アルカンジオールを含むのが特に好ましい。
ジオール成分において、式(1)で表されるフルオレンジオールと、直鎖状又は分岐鎖状C2−3アルカンジオールなどのジオール成分とのモル比(樹脂中の構成単位比)は、前者/後者=99/1〜10/90程度の範囲から選択でき、好ましい範囲は、以下段階的に、95/5〜20/80、90/10〜30/70、80/20〜40/60、70/30〜50/50、65/35〜55/45である。フルオレンジオールの割合が少なすぎると、逆波長分散特性が低下する虞があり、逆に多すぎると、斜め延伸による成形性が低下する虞がある。
式(1)で表されるフルオレンジオール及びエチレングリコールなどのジオール成分の合計割合(樹脂中の構成単位の割合)は、ジオール成分全体に対して50モル%以上であってもよく、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であり、特に100モル%である。両成分の割合が少なすぎると、逆波長分散特性と斜め延伸の成形性とを向上できない虞がある。
前記式(1)で表されるフルオレンジオール及び直鎖状又は分岐鎖状C2−3アルカンジオールを重合成分として含むポリエステル樹脂は、逆波長分散特性と斜め延伸の成形性とを両立できる点から、ジカルボン酸成分として、脂環族ジカルボン酸を含むのが好ましく、シクロヘキサンジカルボン酸成分などのC5−8シクロアルカン−ジカルボン酸を含むのが特に好ましい。
脂環族ジカルボン酸の割合(樹脂中の構成単位の割合)は、ジカルボン酸成分全体に対して50モル%以上であってもよく、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であり、特に100モル%である。脂環族ジカルボン酸成分の割合が少なすぎると、逆波長分散特性と斜め延伸の成形性とを向上できない虞がある。
(6)フルオレン含有ポリエステル樹脂の製造方法及び特性
フルオレン含有ポリエステル樹脂の製造方法は、原料としてのジオール成分とジカルボン酸成分とを反応させればよく、慣用の方法、例えば、エステル交換法や直接重合法などの溶融重合法;溶液重合法;界面重合法などで調製でき、溶融重合法が好ましい。なお、反応は、重合方法に応じて、溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。
ジオール成分とジカルボン酸成分との使用割合は、通常、前者/後者(モル比)=1/1.2〜1/0.8、好ましくは1/1.1〜1/0.9程度である。なお、反応において、各ジオール成分及びジカルボン酸成分の使用量(使用割合)は、必要に応じて、各成分などを過剰に用いて反応させてもよい。例えば、反応系から留出可能なエチレングリコールなどのアルキレングリコール成分は、フルオレン含有ポリエステル樹脂中に導入されるアルキレングリコール単位の割合よりも過剰に使用してもよい。
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、慣用のエステル化触媒又はエステル交換触媒、重縮合触媒などを利用できる。
エステル化触媒(エステル交換触媒)としては、例えば、アルカリ金属;アルカリ土類金属、遷移金属などの金属化合物などが挙げられ、アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムなどが例示でき、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどが例示でき、遷移金属としては、マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルト、チタンなどが例示できる。金属化合物は、酢酸塩、プロピオン酸塩などの有機酸塩であってもよい。これらのエステル化触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、酢酸マンガンや酢酸カルシウムなどの酢酸塩が好ましい。
エステル化触媒の使用量は、ジカルボン酸成分1モルに対して、例えば0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜10×10−4モルである。
重縮合触媒としては、アルカリ金属;アルカリ土類金属;遷移金属;周期表第13族金属;周期表第14族金属;周期表第15族金属などを含む金属化合物が用いられ、アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどが挙げられ、遷移金属としては、マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルト、チタンなどが挙げられ、周期表第13族金属としては、アルミニウムなどが挙げられ、周期表第14族金属としては、ゲルマニウムなどが挙げられ、周期表第15族金属としては、アンチモンなどが挙げられる。金属化合物としては、アルコキシド、有機酸塩、無機酸塩、金属酸化物などが挙げられ、有機酸塩としては、酢酸塩、シュウ酸塩などが挙げられ、無機酸塩としては、ホウ酸塩、炭酸塩などが挙げられる。代表的には、例えば、ゲルマニウム化合物;アンチモン化合物;チタン化合物が例示でき、ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、シュウ酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウム−n−ブトキシドなどが例示でき;アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモンエチレンリコレートなどが例示でき;チタン化合物としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウムなどが例示できる。これらの重縮合触媒は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、二酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物が好ましい。
重縮合触媒の使用量は、ジカルボン酸成分1モルに対して、例えば0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜40×10−4モルである。
また、反応は、必要に応じて、熱安定剤や光安定剤、酸化防止剤などの安定剤、重合調整剤などの存在下で行ってもよく、熱安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、亜リン酸、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトなどのリン化合物などが挙げられる。安定剤の使用量は、ジカルボン酸成分1モルに対して、例えば0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜40×10−4モルである。
反応は、通常、不活性ガス雰囲気中で行ってもよく、不活性ガスとしては、窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどが挙げられる。また、反応は、1×10〜1×10Pa程度の減圧下で行うこともできる。反応温度は、重合方法に応じて選択でき、例えば、溶融重合法における反応温度は、例えば150〜300℃、好ましくは180〜290℃、さらに好ましくは200〜280℃である。
このようにして得られるフルオレン含有ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば50〜150℃の範囲から選択でき、好ましい範囲は、以下段階的に、70〜150℃、80〜145℃、90〜145℃であり、特に好ましくは100〜140℃である。Tgが高すぎると、斜め延伸の成形性が低下する虞があり、低すぎると耐熱性が低下する虞がある。フルオレン含有ポリエステル樹脂は、適度なガラス転移温度を有するため、斜め延伸しても、高い位相差を発現でき、皺や割れの発生も抑制できる。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、ガラス転移温度Tgは、後述する実施例に記載の方法などにより測定できる。
フルオレン含有ポリエステル樹脂は、分子量(重量平均分子量Mwなど)が大きいという特色がある。フルオレン含有ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などにより測定でき、ポリスチレン換算で、例えば30000〜200000の範囲から選択でき、好ましい範囲は、以下段階的に、40000〜150000、50000〜100000、60000〜80000である。前記ポリエステル樹脂は、分子量及び重合度が大きく(分子鎖が長く)、機械的特性(破断伸び、柔軟性など)に優れている。そのため、斜め延伸してもフィルムの破断を有効に防止でき、均一に延伸できる。
(他の添加剤)
本発明の位相差フィルムは、本発明の効果を妨げない限り、種々の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、充填剤、発泡剤、消泡剤、滑剤、離型剤、易滑性付与剤が挙げられ、可塑剤としては、エステル類、フタル酸系化合物、エポキシ化合物、スルホンアミド類などが挙げられ、難燃剤としては、無機系難燃剤、有機系難燃剤、コロイド難燃物質などが挙げられ、安定剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられ、充填剤としては、酸化物系無機充填剤、非酸化物系無機充填剤、金属粉末などが挙げられ、離型剤としては、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸又はその金属塩、酸アミド類などが挙げられ、易滑性付与剤としては、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、カオリンなどの無機微粒子;(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂(架橋ポリスチレン樹脂など)などの有機微粒子などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの添加剤の割合は、樹脂、特にフルオレン含有ポリエステル樹脂100重量部に対して、例えば30重量部以下、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。
これらの添加剤は、慣用の方法、例えば、一軸又は二軸押出装置(分散性の点から好ましくは二軸押出装置)を用いて、樹脂、特にフルオレン含有ポリエステル樹脂と溶融混練する方法などにより添加してもよい。添加剤は、樹脂の製膜前に予め添加してもよいが、例えば、樹脂を溶融製膜する際に、樹脂を製膜装置に供給するための押出装置を用いて溶融混練する方が、経済的に有利であるため好ましい。
[位相差フィルムの製造方法]
本発明の位相差フィルムの製造方法は、樹脂フィルムを斜め方向に延伸する斜め延伸工程を含む。
(斜め延伸工程)
斜め延伸工程において、樹脂フィルムを斜め方向に延伸する方法としては、例えば、同時二軸式の斜め延伸法、湾曲式の斜め延伸法などが挙げられる。
同時二軸式の斜め延伸法は、テンター式同時二軸延伸装置において、左右のクリップの駆動系が独立した装置を用いる方法であってもよい。左右のクリップが異なる速度で移動を開始することにより延伸が開始され、一対の先行したクリップと遅れたクリップを結ぶ直線方向に延伸される。延伸倍率及び配向角(位相差フィルムの長尺方向に対する遅相軸の角度)は、入口と出口のフィルム幅及び左右のクリップの速度差を設定して調整できる。
湾曲式の斜め延伸法は、テンター式横延伸装置(幅方向に延伸する装置)において、樹脂フィルムの進行方向を途中で変える(樹脂フィルムの両側部をクリップして搬送するためのガイドレールを湾曲させる)ことにより、MD方向(機械方向又は長手方向)に対して樹脂フィルムを斜め方向に延伸する方法であってもよい。湾曲式の斜め延伸法では、左右のクリップの移動速度は等速であるが、左右のクリップがTD方向(幅方向)に拡幅しながら進行方向が変わる湾曲部を通過する際に、樹脂フィルムの進行方向に対して斜めの張力(湾曲状通路の内側と外側との走行距離の違いにより発生する張力)が作用することにより斜め延伸が行われる。延伸倍率は、入口と出口のフィルム幅の比で調整することができる。また、配向角は、樹脂フィルムの繰出方向と巻取方向とを可変式にすることにより、フィルムの繰出方向と巻取り方向との角度を変えて調整できる。
フィルムの繰出方向と巻取方向との角度は、延伸倍率などの延伸条件に応じて適宜選択できるが、ガイドレール(又はレール)の湾曲部の角度θを30〜60°程度に調整すればよく、例えば40〜50°、好ましくは41〜49°、さらに好ましくは42〜48°、特に43〜47°に調整すればよい。
なお、ガイドレールの湾曲部の角度θは、図1に示すように、湾曲部(図1中の濃色領域である延伸ゾーン)2における繰出側1の始端部(外周の始端部からガイドレール及びフィルムの幅方向に延びる線)と、巻取側3の外周の終端部からガイドレールの幅方向(フィルムの長手方向に対して垂直な方向)に延びる線との角度、即ち、湾曲部2における終端部と、繰出側3のガイドレールの幅方向との角度を意味する。なお、図1における湾曲部2において、外周及び内周は略均質な曲線を形成している。
斜め延伸は、同時二軸式の斜め延伸法、湾曲式の斜め延伸法のいずれの方法によっても可能であるが、位相差が発現し易く、かつ皺や割れの発生も抑制できる点から、湾曲式の斜め延伸法が好ましい。
斜め延伸は、未延伸の樹脂フィルムを延伸してもよいが、一段目に横延伸した樹脂フィルムを斜め延伸する二段で行ってもよい。
延伸温度(二段で延伸する場合は、双方の延伸温度)は、樹脂フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)より高く、融点以下の温度であればよいが、例えばTg+5〜Tg+30℃、好ましくはTg+8〜Tg+20℃、さらに好ましくはTg+10〜Tg+15℃である。延伸温度が高すぎると、配向緩和が強くなり、十分な位相差が発現しない虞があり、Tgに近い温度で延伸すると、位相差が発現し易いが、破断する虞がある。
延伸倍率は、例えば2〜5倍程度の範囲から選択でき、好ましい範囲は、以下段階的に、2.5〜5倍、2.8〜5倍、3〜4.5倍であり、特に好ましくは3.1〜4.0倍である。横延伸と斜め延伸の二段で延伸する場合は、横延伸の延伸倍率と斜め延伸の延伸倍率の積が、得られた位相差フィルムの延伸倍率(合計の延伸倍率)になる。延伸倍率が低すぎると、十分な位相差が発現しない虞があり、逆に高すぎると、破断する虞がある。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、湾曲式の斜め延伸法における延伸倍率は、以下のように求めることができる。すなわち、湾曲式の斜め延伸法では、図1に示すように、繰出側1から搬送される樹脂シートは、延伸ゾーン2(図1中の濃色の領域)において湾曲した状態で搬送されることにより斜め延伸され、巻取側3まで搬送されて巻き取られる。斜め延伸倍率Rは、延伸前のフィルムの幅をW0、延伸後のフィルムの幅をW1、延伸終了時における一対のクリップ間の距離を斜め方向の延伸長さとしてW2、ガイドレールの湾曲部の角度をθとしたとき、R=W2/W0=W1/(W0cosθ)で定義される。
延伸速度(二段で延伸する場合は、双方の延伸速度)は、10〜2000%/分、好ましくは100〜1000%/分程度の範囲から選択でき、斜め延伸、特に湾曲式の斜め延伸では、例えば150〜1000%/分程度の範囲から選択でき、好ましい範囲は、以下段階的に、200〜800%/分、300〜700%/分であり;さらに好ましい範囲は、以下段階的に、250〜500%/分、250〜400%/分、270〜370%/分、300〜350%/分である。延伸速度が速いほど位相差が高くなる傾向にあるが、速すぎると破断する虞があり、遅すぎると十分な位相差が発現しない虞がある。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、湾曲式の斜め延伸法における延伸速度は、下記式に基づいて測定できる。
延伸速度=[(R−1)/t]×100
[式中、Rは、前記延伸倍率であり、tは、延伸ゾーンである湾曲部を通過するのに要した時間(分)である]。
斜め延伸における延伸方式は、空気中で延伸する乾式延伸法、水中で延伸する湿式延伸法のいずれであってもよく、双方を併用してもよい。
(樹脂フィルムの製膜工程)
本発明の位相差フィルムの製造方法は、前記斜め延伸工程の前工程として、前記斜め延伸工程に供される樹脂フィルムの製膜工程をさらに有していてもよい。
樹脂フィルムの製膜工程において、樹脂フィルムを製膜する方法としては、例えば、キャスティング法(溶液流延法)、エキストルージョン法(インフレーション法、Tダイ法などの溶融押出法)、カレンダー法などにより調製できるが、容易に長尺状の樹脂フィルムを製造でき、斜め延伸工程において、容易に連続生産できる点から、Tダイを用いた溶融押出法などの押出成形法、溶液キャスト成形法が好ましく、押出成形が特に好ましい。溶融押出法としては、樹脂、特にフルオレン含有ポリエステル樹脂のガラス転移温度や融点に応じて、成形条件を調整し、慣用の方法で成形できる。
製膜工程で得られる樹脂フィルムの平均厚みは、例えば50〜300μm、好ましくは80〜200μm、さらに好ましくは100〜180μm、特に120〜170μmである。
[円偏光板及び画像表示装置]
本発明の位相差フィルムは、1/4波長位相差フィルムとして、偏光子(偏光板)とそのまま貼り合せることで円偏光板を形成できる。偏光子としては、通常、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムが使用される。
前記方法で得られた位相差フィルムは、偏光子との密着性を向上させるため、コロナ処理やプラズマ処理、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの強塩基水溶液による表面改質処理に供してもよい。また、位相差フィルムの表面に、プライマー層などの薄膜を形成してもよい。これらの表面改質処理や薄膜の形成は、製膜工程を経た後に行ってもよく、斜め延伸工程を経た後に行ってもよい。
本発明の円偏光板は、前記位相差フィルムと偏光子とを積層した積層体であればよいが、通常、偏光子の位相差フィルムが積層された面の反対面に、透明保護フィルムが積層されている。透明保護フィルムとしては、PVAフィルムとの接着性が高く、光学的に透明な材料であればよいが、透明性、機械的強度が高い点や、光学的異方性が少ない点などから、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルムなどのセルロースエステル系フィルム、変性アクリル樹脂系フィルム、超高複屈折ポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム、シクロオレフィン系フィルムなどが汎用される。
本発明の円偏光板の層間には、接着剤が介在していてもよい。接着剤としては、一般的に水系接着剤が使用される。水系接着剤としては、例えば、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス接着剤、水系ポリウレタン接着剤、水系ポリエステル接着剤などが挙げられる。これらのうち、ポリビニルアルコール系接着剤が好ましい。
本発明の円偏光板は、例えば、偏光子の一方の面に、偏光子の吸収軸と、位相差フィルムの長尺方向とを平行にして貼り合せ、偏光子の他方の面に透明保護フィルムを貼り合せる方法で製造できる。本発明では、位相差フィルムをロール体で供給できるためロールツーロール方式で、各フィルムを貼り合せることでき、生産性が高く、材料ロスもなく、製造コストにも優れる。
本発明の画像表示装置は、得られた円偏光板を光学フィルムとして備えている。本発明の画像表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機ELディスプレイなどが挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に評価項目を示す。
[ガラス転移温度]
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製「DSC 6220」)を用いて、JIS K 7121に準拠して、ガラス転移温度Tgを測定した。
[平均厚み]
測厚計((株)ミツトヨ製「マイクロメーター」)により測定した。なお、平均厚みは、フィルムの長手方向に対して、チャック間を等間隔に3点測定し、その平均値を算出した。
[位相差]
逆波長分散性フィルムの面内位相差R(550)と位相差の波長分散特性R(450)/R(550)は、位相差計(大塚電子(株)製「RETS−100」)を用いて、波長450nm及び550nmで測定した。測定値はフィルム厚さ50μmに換算した値を示す。
[配向角]
位相差計(大塚電子(株)製「RETS−100」)を用いて、配向角を測定した。
実施例1
(共重合ポリエステル樹脂の重合)
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)0.6モル、エチレングリコール(関東化学(株)製)2.4モル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(日興リカ(株)製)1.0モルを反応槽に投入し、溶解させた後、エステル化触媒として、酢酸マンガン・4水和物(関東化学(株)製)0.05重量部及び酢酸カルシウム・1水和物(関東化学(株)製)0.1重量部を投入し、撹拌しながら常法に従って、230℃まで徐々に加熱し、エステル交換反応を行った。所定量のメタノールを系外に抜き出した後、重合触媒の酸化ゲルマニウム(関東化学(株)製)0.2重量部と着色防止剤のトリメチルリン酸(関東化学(株)製)0.2重量部を投入し、減圧しながら加熱し、270℃、0.13KPaに到達後、所定のトルクに達するまで撹拌を続けた。重合物は缶底より抜出し、水中をくぐらせたストランドを切断して樹脂ペレットを得た。得られた樹脂のガラス転移温度を測定した。
(逆波長分散性フィルムの製膜)
Tダイを装着した二軸押出装置(スクリュー径40mm、L/D=32)に、得られた樹脂ペレットを供給して、シリンダー温度260℃で、有効幅500mmのフィルムを押出してロールに巻き取った。厚さは150μmであった。
(斜め延伸処理)
前記フィルムのロールを湾曲式のテンター式延伸装置を用いて、入口のフィルム幅143mm、出口のフィルム幅396mm(延伸倍率は3.9倍)、クリップの移動速度1.2m/分(延伸速度は209%/分)、延伸温度120℃、ガイドレールの湾曲部の角度θ45°で斜め延伸を行った。延伸後の得られたフィルムの位相差、配向角及び厚みを測定した。
実施例2〜3及び比較例1〜4
延伸前のフィルムの厚みや延伸条件を変えた以外は実施例1と同様にして、逆波長分散フィルムを製造し、位相差、配向角及び厚みを測定した。
実施例4〜5及び比較例5〜6
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)0.8モル、エチレングリコール(関東化学(株)製)2.2モル、トランス体比率が98モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル1.0モルを用いる以外は実施例1と同様の方法で重合を行い、樹脂を調製した。さらに、延伸前のフィルムの厚みや延伸条件を変えた以外は実施例1と同様にして、逆波長分散フィルムを製造し、位相差、配向角及び厚みを測定した。
実施例及び比較例で得られた位相差フィルムの評価結果を表1に示す。
表1に示されるように、本発明の位相差フィルムは斜め延伸によって理想的な1/4波長板の位相差と波長分散特性を示し、長尺方向(長手方向)に対してほぼ斜め45°に配向している。
1…繰出側
2…延伸ゾーン
3…巻取側

Claims (15)

  1. 長尺状の斜め延伸樹脂フィルムで形成され、長尺方向に対する遅相軸が40〜50°であり、波長550nmにおける面内位相差R(550)が100〜160nmであり、波長450nmにおける面内位相差R(450)と前記面内位相差R(550)との比率R(450)/R(550)が0.8以上1未満である位相差フィルム。
  2. ロール体である請求項1記載の位相差フィルム。
  3. 延伸樹脂フィルムが延伸ポリエステル樹脂フィルムである請求項1又は2記載の位相差フィルム。
  4. 延伸ポリエステル樹脂フィルムがフルオレン骨格を有するフルオレン含有ポリエステル樹脂を含む請求項1〜3のいずれかに記載の位相差フィルム。
  5. フルオレン含有ポリエステル樹脂が脂環族炭化水素環をさらに有する請求項4記載の位相差フィルム。
  6. フルオレン含有ポリエステル樹脂のガラス転移温度が90〜145℃である請求項4又は5記載の位相差フィルム。
  7. 平均厚みが20〜100μmである請求項1〜6のいずれかに記載の位相差フィルム。
  8. 樹脂フィルムを斜め方向に延伸する斜め延伸工程を含む請求項1〜7のいずれかに記載の位相差フィルムの製造方法。
  9. テンター式横延伸装置のガイドレールを湾曲させて斜め方向に延伸する請求項8記載の製造方法。
  10. 延伸速度が200〜800%/分である請求項8又は9記載の製造方法。
  11. 延伸倍率が2〜5倍である請求項8〜10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 押出成形又は溶液キャスト成形により樹脂フィルムを得る製膜工程をさらに含む請求項8〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 請求項1〜7のいずれかに記載の位相差フィルムと偏光子とを積層した円偏光板。
  14. 請求項13記載の円偏光板を備えた画像表示装置。
  15. 有機ELディスプレイである請求項14記載の画像表示装置。
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