JP2017179597A - フレキシブルデバイス用基板用基材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
下記特許文献1には、プラスチックフィルム基材上に、透明導電層、有機発光媒体層、陰極層を順次積層し、接着層を介して金属箔が積層された有機EL素子の構造が提案されているが、かかるプラスチックフィルム基材は水分バリア性の点で満足するものではない。
また下記特許文献2には、ステンレス基材上にポリイミド樹脂から成る平坦化層を設けたフレキシブルデバイス用基板が提案されているが、ポリイミド樹脂の吸水性が高いことから、やはり水分バリア性の点で満足するものではない。
更に下記特許文献3には、ステンレス基材上にシリカ系ガラスを製膜したフレキシブル太陽電池基板が提案されているが、シリカ系ガラスは一般にステンレスに比べて熱膨張係数が小さく、ステンレス基材に対する密着性に欠けると共に、シリカ系ガラスは曲げ加工や衝撃に弱いという問題を有している。
また薄膜電気回路やフレキシブルディスプレイの基板として利用可能なガラス基板も種々提案されているが(特許文献4等)、ガラス基板はひねりなどの曲げに弱いという特徴があり、フレキシブルデバイス用基板としてより強度の高いものが望まれている。
本発明者等は、ガラス層表面に形成されるはじきについてその発生原因を研究した結果、ガラス層表面に形成されるはじきは、気泡による破裂痕、樹脂の分解物、或いはガラス溶融時のアウトガスが原因であり、或いは表面張力の影響によるものが原因であることが分かった。
本発明のフレキシブルデバイス用基板用基材においては、
1.前記酸化物膜の算術平均粗さ(Ra)が、30〜100nmの範囲にあること、
2.前記酸化物膜の表面の最大高さ粗さ(Rz)が、420〜900nmの範囲にあること、
3.前記酸化物膜の厚みが、40〜1200nmの範囲にあること、
4.前記酸化物膜の厚みが、500〜1000nmの範囲にあること、
5.前記ニッケルめっき層表層又はニッケル系基材表層に、鉄が存在すること、
6.前記ニッケルめっき層表層又はニッケル系基材表層に存在する鉄のうち、金属鉄が3atomic%以下であること、
7.前記ニッケルめっき層表層又はニッケル系基材表層における酸素の割合が30atomic%以上であること、
8.前記ニッケルめっき層表層又はニッケル系基材表層に存在するニッケルのうち、金属ニッケルの割合が20atomic%以下であること、
が好適である。
また、酸化物膜表面に凹凸が形成されていることにより、ガラス層形成時のガラスの引き拡がりを抑制できることから、ガラス層の表面のはじきの発生を有効に抑制することができる。
更に本発明のフレキシブルデバイス用基板用基材の製造方法によれば、ニッケルめっき金属基材又はニッケル系基材を酸素含有雰囲気中で仮焼することにより、ニッケルめっき層表面又はニッケル系基材表面に上記機能を有する酸化物膜を形成することが可能であり、その結果、表面欠陥のないガラス層を形成可能な、表面に凹凸を有する酸化物膜を容易且つ連続的に製造することができ、生産性及び経済性にも優れている。
前記ニッケルめっき層表面又はニッケル系基材表面には、表面に凹凸を有する酸化物膜が形成されていることが重要な特徴である。
図1は、金属基材10の表面にニッケルめっき層11が形成されたニッケルめっき金属基材を用いた、本発明のフレキシブルデバイス用基板用基材の断面構造を示す図であり、ニッケルめっき層11の表面に、酸化物膜12が形成されており、この酸化物膜12の表面が凹凸12aに形成されている。
本発明のフレキシブルデバイス用基板用基材に用いられる、ニッケルめっき層を形成する金属基材としては、これに限定されないが、鉄、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅等を使用することができ、熱膨張係数が8×10−6〜25×10−6/℃、特に10×10−6〜20×10−6/℃の範囲にあるものを使用することが好ましい。
また本発明においては、ニッケルめっき層を形成することなく、金属基材自体をニッケル系基材、すなわち、純ニッケル板又はニッケル合金板とすることもできる。ニッケル合金板において、ニッケルと合金可能な金属としては、鉄(Fe)、銅(Cu)、クロム(Cr)を用いることができる。
金属基材又はニッケル系基材の厚みは、10〜200μm、特に20〜100μmの範囲にあることが好適であり、これにより十分なフレキシブル性を得ることができる。
本発明のフレキシブルデバイス用基板用基材において、金属基材表面に形成されるニッケルめっき層は、ニッケルめっきによって形成される層であり、後述するように電解めっき又は無電解めっきの何れであってもよい。ニッケルめっき層は、図1に示した例では、金属基材の一方の表面にのみ形成されていたが、もちろん金属基材の両面に形成されていてもよい。
ニッケルめっき層の厚みは、上記酸化物膜を含んだ値で0.1〜10μm、特に0.5〜5μmの範囲にあることが好適であり、上記範囲よりもニッケルめっき層の厚みが薄いと、上記範囲にある場合に比してガラス層の密着性が劣るようになり、一方、上記範囲よりもニッケルめっき層の厚みが厚くても更なる効果は期待できず、経済性に劣るようになる。
ニッケルめっき層は、金属基材との界面に合金層を有していてもよい。
前述したとおり、本発明においては、ニッケルめっき層又はニッケル系基材の表面に、表面が凹凸の酸化物膜が形成されていることが重要な特徴であり、この酸化物とガラスとが反応することにより密着層が形成され、ガラス層の密着性が向上される。従って、ニッケルめっき層又はニッケル系基材の表面に存在する金属ニッケルは20atomic%以下、特に18atomic%以下であることが好ましい。
酸化物膜は、ニッケルめっき層又はニッケル系基材の表面が後述する酸素含有雰囲気中で仮焼されることにより形成されるニッケル酸化物から少なくとも成るが、ニッケル酸化物と金属基材から拡散した金属の酸化物から成っていてもよい。
すなわち、金属素材として鋼板を用いた場合や、ニッケル系基材としてニッケル−鉄合金板を用いた場合には、ニッケルめっき層又はニッケル系基材の表面に鉄が存在することが望ましく、この表面に存在する鉄は酸化物として存在することにより、上記ニッケル酸化物と相俟ってガラス層の密着性をさらに向上できることから、ニッケルめっき層表層又はニッケル系基材表層に存在する鉄のうち金属鉄は3atomic%以下であることが好ましい。
酸化物膜表面における凹凸(表面粗度)は、算術平均粗さ(Ra)が30〜100nm、特に50〜90nmの範囲にあり、最大高さ粗さ(Rz)が420〜900nm、特に600〜850nmの範囲にあるように形成されていることが望ましい。
またこの酸化物膜の厚みは、40〜1200nm、好ましくは500〜1000nm、より好ましくは500〜900nmの範囲にあることが望ましい。上記範囲よりも酸化物膜の厚みが薄い場合には、上記範囲にある場合に比してニッケルめっき層又はニッケル系基材の表面改質が不十分になるおそれがあり、一方上記範囲よりも酸化物膜の厚みが厚い場合には、上記範囲にある場合に比してニッケルめっき層表層又はニッケル系基材表層の合金化が進みニッケルめっき層表層又はニッケル系基材表層が脆弱化されるおそれがあり、ニッケルめっき層表層又はニッケル系基材表層が剥離するおそれがある。
本発明のフレキシブルデバイス用基板用基材は、金属基材の少なくとも一方の表面にニッケルめっき層が形成されて成るニッケルめっき金属基材又はニッケル系基材を酸素含有雰囲気中で焼成することにより、ニッケルめっき層表面又はニッケル系基材表面に酸化物膜を形成する酸化物膜形成工程、を含む製造方法により製造することができる。
本発明のフレキシブルデバイス用金属基板において、ニッケルめっき金属基材におけるニッケルめっき層の形成方法自体は従来公知の方法により行うことができる。
ニッケルめっき層形成工程においては、用いる金属基材によって処理方法が異なるが、金属基材として鋼板を使用する場合には、めっき処理に先立って、アルカリ電解等により脱脂を行い、水洗した後、硫酸浸漬等による酸洗等の従来公知の前処理を施す。
前処理が施された金属基材を、前述したとおり、電解めっき、無電解めっき等従来公知のめっき方法によってニッケルめっき層を形成することができる。連続生産性の観点から電解めっきによることが好ましい。ニッケルめっき浴は、ワット浴、スルファミン酸浴等一般に広く使用されている浴を公知の処方に従って、公知の電解条件で使用することができる。尚、ニッケルめっき層は前述したとおり、0.1〜10μm、特に0.5〜5μmの範囲の厚みとなるように形成されることが好ましい。
本発明のフレキシブルデバイス用基板用基材の製造方法においては、ニッケルめっき金属基材のニッケルめっき層表面又はニッケル系基材表面を酸素含有雰囲気中で仮焼することにより、ニッケルめっき層表面又はニッケル系基材表面に凹凸を有する酸化物膜を形成することが重要である。
仮焼条件は、前述した酸化物膜が形成される限り、特に限定されないが、仮焼温度が550〜900℃、特に750〜850℃の温度であることが好ましい。仮焼時間は、酸素含有雰囲気の酸素濃度、仮焼温度によって適宜変更することができるが、大気中で上記温度範囲で仮焼する場合には、上記仮焼温度で、5〜120秒間仮焼することが好適である。酸化物膜は、前述したとおり、40〜1200nm、好ましくは500〜1000nm、より好ましくは500〜900nmの範囲となるように形成されることが好ましい。
尚、本工程の酸化物膜形成のための焼成により、仮焼条件によっては、ニッケルめっき層或いはニッケル系基材の表面に合金層が形成される場合がある。
本発明のフレキシブルデバイス用基板用基材は、前述したとおり、絶縁層としてガラス層を有するフレキシブルデバイス用基板の基材として好適に用いることができる。
本発明のフレキシブルデバイス用基板用基材の表面に凹凸を有する酸化物膜上に形成可能なガラス層としては、従来より有機EL照明等の絶縁層或いは透明基板として使用されていたものを制限なく使用することができ、これに限定されないが、錫−リン酸系ガラス、ビスマス系ガラス、バナジウム系ガラス、鉛系ガラス等の低融点ガラスを例示することができる。これらの中でも、水分バリア性に優れ、金属基材との密着性に優れたビスマス系ガラスを好適に積層することができる。
ビスマス系ガラスとしては、軟化点温度が300〜500℃の電気絶縁性を有するビスマス系ガラスが好適であり、特にガラス組成としてBi2O3を主成分(特に70重量%以上)含有するものが好ましい。
本発明のフレキシブルデバイス用基板用基材上に形成されたガラス層は、表面粗度(Ra)が10nm以下と平滑であり、はじきという表面欠陥もない。
1.ニッケルめっき鋼板
[金属基材]
金属基材として、下記に示す化学組成を有する普通鋼の冷間圧延板(厚さ50μm)を焼鈍脱脂して得られた鋼板を準備した。
組成:C;0.03重量%、Si;0.01重量%、Mn;0.25重量%、P;0.008重量%、S;0.005重量%、Al;0.051重量%、残部;Feおよび不可避的に含有する成分を含む。
[ニッケルめっき層の形成]
次いで、準備した鋼板(サイズ:縦12cm、横10cm、厚み50μm)について、アルカリ電解脱脂、硫酸浸漬の酸洗を行った後、下記条件にてニッケルめっきを行い、厚さ1μm、表面粗度(Ra)30.1nmのニッケルめっき層を両面に形成した。
浴組成:硫酸ニッケル300g/L、塩化ニッケル40g/L、ほう酸35g/L、ピット抑制剤(ラウリル硫酸ナトリウム)0.4mL/L
pH:4〜4.6
浴温:55℃〜60℃
電流密度:25A/dm2
ニッケル系基材として、厚さ100μmの純ニッケル板を準備した。
上記ニッケルめっき鋼板及び純ニッケル板を用いて、表1に示す条件で、基材No.1〜3,5〜7,15のニッケルめっき鋼板、及び基材No.13,14の純ニッケル板を薄鋼板熱処理シュミレーター(真空理工株式会社製、品番;CCT−AV)を用いて仮焼した。基材No.4,12は比較のため仮焼を行わなかった。また基材No.8〜11についてはNH雰囲気下で仮焼した。
仮焼されたニッケルめっき鋼板、基材No.4のニッケルめっき鋼板、仮焼された純ニッケル板及び基材No.12の純ニッケル板について、表面粗度として算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ粗さ(Rz)、表面酸化物の厚みについて調べた。結果を表1にあわせて示す。
また、基材No.1,2,6,10について仮焼後のニッケルめっき層表面のSEM写真、及び基材No.4のニッケルめっき層表面のSEM写真を図2に示す。
尚、表1の酸化物膜の厚み、表面粗度(Ra,Rz)については、以下の方法により測定した。
算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ粗さ(Rz):JIS B 0601に準拠して、顕微鏡(オリンパス社製、ナノサーチ顕微鏡、品番;OLS3500)のSPM測定モードで測定した。
酸化物膜厚み:フィールドエミッションオージェマイクロプローブ(AES:日本電子社製 品番JAMP−9500F)を用いて測定した。
上記基材No.1,4,6,10,11の表層について、炭素,酸素,鉄,ニッケルの割合(合計100atomic%)と、金属鉄,鉄酸化物の割合(合計100atomic%),及び金属ニッケル、ニッケル酸化物の割合(合計100atomic%)とを、スキャニングXPSマイクロプローブ(XPS装置 アルバックファイ社製 品番PHI5000VersaProbeII)を用いて測定した。結果を表2に示す。
上記試料1、4,6,12〜14の表層について、上記XPS装置を用いて鉄の存在を確認した。結果を表3に示す。
脱脂工程:基材1〜15の表面をアルコールに浸したガーゼで拭き取り、脱脂した。
塗膜形成工程:水とバインダとを混合したバインダ液を用意し、バインダ液と、下記組成のビスマス系ガラスフリットとを重量比が50:50になるように乳鉢で混合し、セラミック製ロールにて分散処理を行ない、塗膜形成用ガラスペーストを作製した。そして、各基材の表面に塗膜形成用ガラスペーストを焼成後の膜厚が20μmになるようにバーコーターで塗布し、塗膜を形成した。
ガラス組成:ガラスフリットとして、Bi2O3が70wt%以上を主成分として含有するビスマス系ガラスフリットを用いた。
焼成工程:プログラム可能な電気炉を用いて、乾燥(温度:160℃、時間:2分)、焼成(温度:750℃、時間:10秒)を行なった。
ガラス層が形成されたフレキシブルデバイス用基板について、ガラス膜中の気泡の有無、はじきの有無について、下記のように評価した。結果を表4に示す。
はじきの主原因は気泡であるが、気泡起因以外のはじきもあるため、気泡の有無と、全はじき(気泡起因のものを含む)の有無を分けて評価した。
[気泡評価]
気泡評価は、100×100mmサイズのフレキシブルデバイス用基板につき、光学顕微鏡にて焦点を各基材表面(各基材とガラス層の界面)からガラス層表面方向に焦点移動していく際に気泡が確認できるか否かで判断した。
[はじき評価]
はじき評価は、同じ100×100mmサイズのフレキシブルデバイス用基板につき、目視確認できるはじきの個数を下記の評価基準で評価した。
◎:はじきは皆無
○:はじき個数5個未満
△:はじき個数が5個以上10個未満
×:はじき個数が10個以上
[総合評価]
上記気泡評価及びはじき評価から、下記の基準で総合評価を行った。
◎:気泡、はじき共に皆無
○:気泡はあるが、はじき個数が10個未満
×:気泡があり、はじき個数が10個以上
また本発明のフレキシブルデバイス用基板用基材は、上記ガラス層が形成される用途に特に好適に使用できるが、これに限定されず、スパッタリングや蒸着による無機膜や、或いはポリイミド樹脂等の樹脂膜を形成することも可能である。
Claims (10)
- 金属基材の少なくとも一方の表面にニッケルめっき層が形成されて成るニッケルめっき金属基材又はニッケル系基材から成るフレキシブルデバイス用基板用基材であって、
前記ニッケルめっき層表面又はニッケル系基材表面には、凹凸を有する酸化物膜が形成されていることを特徴とするフレキシブルデバイス用基板用基材。 - 前記酸化物膜の算術平均粗さ(Ra)が、30〜100nmの範囲にある請求項1記載のフレキシブルデバイス用基板用基材。
- 前記酸化物膜の表面の最大高さ粗さ(Rz)が、420〜900nmの範囲にある請求項1又は2記載のフレキシブルデバイス用基板用基材。
- 前記酸化物膜の厚みが、40〜1200nmの範囲にある請求項1〜3の何れかに記載のフレキシブルデバイス用基板用基材。
- 前記酸化物膜の厚みが、500〜1000nmの範囲にある請求項1〜4の何れかに記載のフレキシブルデバイス用基板用基材。
- 前記ニッケルめっき層の表層又はニッケル系基材表層に、鉄が存在する請求項1〜5の何れかに記載のフレキシブルデバイス用基板用基材。
- 前記ニッケルめっき層の表層又はニッケル系基材表層に存在する鉄のうち、金属鉄が3atomic%以下である請求項6記載のフレキシルブルデバイス用基板用基材。
- 前記ニッケルめっき層表層又はニッケル系基材表層における酸素の割合が30atomic%以上である請求項1〜7記載のフレキシブルデバイス用基板用基材。
- 前記ニッケルめっき層表層又はニッケル系基材表層に存在するニッケルのうち、金属ニッケルの割合が20atomic%以下である請求項1〜8の何れかに記載のフレキシブルデバイス用基板用基材。
- 金属基材の少なくとも一方の表面にニッケルめっき層が形成されて成るニッケルめっき金属基材又はニッケル系基材を酸素含有雰囲気中で焼成することにより、ニッケルめっき層表面又はニッケル系基材表面に酸化物膜を形成することを特徴とするフレキシブルデバイス用基板用基材の製造方法。
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