JP2017179501A - 製造性と耐水素脆性に優れた耐環境用軸受鋼 - Google Patents

製造性と耐水素脆性に優れた耐環境用軸受鋼 Download PDF

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Abstract

【課題】製造性(浸炭時間および加工性)に優れかつ水素脆性剥離による寿命低下を抑制し、長寿命を有する耐環境用軸受鋼の提供。【解決手段】質量%表示で、C:0.5〜1.0%、Si:0.1%以下、Mn:0.4〜1.5%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cr:1.5〜3.5%、Al:0.050%以下、O:0.0015%以下、Ti:0.003%以下、N:0.015%以下、残部Fe及び不可避的不純物の組成からなり、球状化焼なまし後の硬さが92HRB以下、浸炭窒化後の表層N濃度0.1〜1.0%、表層C濃度0.8〜1.5%、表層硬さがHRC58以上64未満で、粒径2μm以上の粗大なCrNまたはMnSiN2の窒化物の個数密度が103個/mm2以下であって、微細な窒化物が分散析出していることを特徴とする製造性と耐水素脆性に優れた耐環境用軸受鋼。【選択図】なし

Description

本発明は製造性(浸炭時間および加工性)に優れ、かつ水素脆性剥離による寿命低下を抑制し、長寿命を有する耐環境用軸受鋼に関する。従来、自動車、産業機器等の軸受部品において高振動・高荷重、急加減速等の厳しい負荷条件下でかつ特定の潤滑油や水混入条件等が複合した場合に、通常の転がり疲労寿命より著しく短寿命の早期剥離が発生する問題があり、この早期剥離の原因は、転がり過程において転動面に水素が発生し、それが内部に侵入することにより水素脆性を生じ、著しく剥離寿命が低下すると考えられている。本発明はこのような問題を解決する手段を提供するものである。
近年、自動車や産業機器に用いられる軸受部品は高性能化、高速化に伴い使用条件が過酷化している。新しい変速機CVT(コンティニュアスリー・バリアブル・トランスミッション)をはじめ潤滑油の種類も多様化しており、従来とは異なる剥離形態による早期剥離を生じる場合があり、問題となっている。
たとえば、自動車のオルタネーター用軸受で、従来型の組織変化であるホワイトバンドとは異なる粒界に沿った樹木状の白色層の組織変化を伴う早期剥離が生じる場合がある。これは、高振動・高荷重の厳しい負荷条件下で潤滑油が分解し、転動面に水素が発生し、内部に侵入することにより水素脆性剥離が生じたためと考えられている。
これに対して、オルタネーター用軸受では潤滑油を変えることにより、この早期剥離を防止してきた。しかし、軸受部品の使用条件の過酷化および多様化により、従来軸受鋼の転動疲労破壊においてほとんど問題にならなかった、水素脆性剥離が発生する条件が増加する傾向にあり、単に潤滑油を変えるだけでは抑制できなくなりつつある。このため、このような転動疲労における水素脆性剥離に対して長寿命の材料が求められていた。
以前より水素脆性による材料強度低下現象は知られている。たとえば、ばねやボルト部品では水等の分解により暴露環境から侵入する拡散性水素が遅れ破壊の原因となっている。耐遅れ破壊性に優れたばね、ボルト用鋼として、微細な炭(窒)化物を多数析出させ、拡散性水素をトラップして、粒界や応力集中部への水素の拡散を抑えた鋼が用いられている。本願発明者は、既に特許文献1において開示したように、SUJ2をベースに種々の合金元素の組み合わせを検討した結果、Vを添加することにより、数十から数百nm程度の微細なV系炭化物を多数生成して、繰り返し疲労条件下での水素脆性による寿命低下を抑えることを見出した。
また、特許文献2に開示したように、Cr添加した軸受鋼でCrの酸化被膜を形成させることで水素侵入を抑制し、水素脆性寿命を長寿命化することができる。
さらなる長寿命化には特許文献3に開示したようにCr,Mn等を添加した肌焼鋼を浸炭窒化処理することにより表層に析出したCrNやMnSiN2などの微細窒化物の水素トラップにより水素脆性寿命を長寿命化することが必要である。
しかしながら、SCM440等の肌焼鋼を浸炭窒化処理する場合は、所定の表層C濃度およびC濃度深さ分布を得るために長時間の浸炭処理が必要となり生産性が低下する。浸炭時間を短時間化し生産性を高めるためには、初期C濃度の高いSUJ2に代表される軸受鋼に浸炭窒化することが求められていた。
しかし、SUJ2に代表される軸受鋼にCr,Mn等の合金元素を添加するだけでは素材硬さが上昇し、被削性や冷間鍛造等の加工性が低下してしまう。
以上のことから、短時間の浸炭窒化処理が可能な軸受鋼を用いて水素脆性寿命を長寿命化するためCr,Mn等の合金元素を添加し、かつ所定の加工性を確保するために素材硬さを抑制した鋼の開発が求められていた。
特開2006−213981号公報 特開平5−26244号公報 特開2011−225936号公報
本発明は、上記のような事情を背景としてなされたもので、本発明の目的は浸炭窒化時間の短時間化のためSUJ2に代表される軸受鋼をベースとして合金元素(化学成分の組成比率)を適正化し、浸炭窒化処理することで、従来、水素脆性剥離が生じていた雰囲気条件において使用したとしても、優れた転動疲労寿命を有し、かつ冷間鍛造性や被削性等の加工性に優れた耐環境用軸受鋼を提供することにある。
浸炭窒化による水素脆性寿命の改善は、表層に析出する微細窒化物の水素トラップによる。微細窒化物はCrNとMnSiN2が生成しており、その改善にはCr、Mn量を増加することが有効である。
しかし、軸受鋼でCr、Mn量を増加するだけでは球状化焼なまし後の素材硬さが93HRB以上と高くなる。素材硬さを低減するためにはC濃度を下げることが有効だが、C濃度を下げすぎると浸炭窒化時間が長時間化して製造性を低下してしまう。
一方、Si低減は硬さ低減に効果があると共に生成窒化物数を増加し耐水素脆性を改善することを見出した。これは、Si低減することにより生成窒化物がMnSiN2からCrNに変化することで総窒化物数が増加することおよび母層の靱性が向上するためと考えられる。
本願発明者は種々の試験を行い、製造性(浸炭時間および加工性)と耐水素脆性を両立できるC量とSi量の成分範囲を見出した。
また、Si量低減により焼入性は低下するが、Mn量を添加することで耐水素脆性を改善しかつ焼入性も補完できることを見出した。
すなわち、本発明の軸受鋼は、合金元素の含有率が質量%表示で、C:0.5〜1.0%、Si:0.1%以下、Mn:0.4〜1.5%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cr:1.5〜3.5%、Al:0.050%以下、O:0.0015%以下、Ti:0.003%以下、N:0.015%以下、残部Fe及び不可避的不純物の組成からなり、球状化焼なまし後の硬さが92HRB以下、浸炭窒化後の表層N濃度0.1〜1.0%、表層C濃度0.8〜1.5%、表層硬さがHRC58以上64未満で、粒径2μm以上の粗大なCrNまたはMnSiN2の窒化物の個数密度が103個/mm2以下であって、微細な窒化物が分散析出していることを特徴とする製造性と耐水素脆性に優れた耐環境用軸受鋼である。
また、本発明の軸受鋼は、上記合金元素に加えてV:0.05〜2.0%、Ni:0.1〜3.0%、Mo:0.05〜2.0%のうち1種または2種以上をさらに含むことが好ましい。
すなわち、本発明の軸受鋼は、質量%表示で、C:0.5〜1.0%、Si:0.1%以下、Mn:0.4〜1.5%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cr:1.5〜3.5%、Al:0.050%以下、O:0.0015%以下、Ti:0.003%以下、N:0.015%以下であって、V:0.05〜2.0%、Ni:0.1〜3.0%、Mo:0.05〜2.0%のうち1種または2種以上をさらに含み、残部Fe及び不可避的不純物の組成からなるものであることが好ましい。
本発明によれば、製造性(浸炭時間および加工性)に優れかつ水素脆性剥離による寿命低下を抑制し、長寿命を有する耐環境用軸受鋼を提供することができる。
実施例における浸炭窒化条件の一例を示した図である。 2円筒ころがり疲労試験の方法の説明図である。
本発明の軸受鋼について説明する。
本発明の軸受鋼は、後述する化学成分(組成)からなる鋼材であり、少なくとも球状化焼なまし処理および浸炭窒化焼入れ焼戻し処理の2つの処理を行うことで、優れた製造性と耐水素脆性とを備える耐環境用軸受鋼として用いることができるものである。
本発明の軸受鋼は、後述する特定の化学成分(組成)からなる鋼材であって、球状化焼なましを行った場合に、その直後の硬さが92HRB以下であり、浸炭窒化を行った場合に、その直後の表層N濃度が0.1〜1.0%、表層C濃度が0.8〜1.5%、表層硬さがHRC58以上64未満であり、粒径2μm以上の粗大なCrNまたはMnSiN2の窒化物の個数密度が103個/mm2以下である鋼材であれば、球状化焼なまし処理および浸炭窒化焼入れ焼戻し処理の2つの処理を行った後の鋼材であっても、これら2つの処理のうち少なくとも1つの処理を行う前の鋼材であってもよい。
いずれであっても、本発明の軸受鋼に相当する。
本発明の耐環境用軸受鋼の化学成分の限定理由について説明する。以下、特に断りがない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
Cの含有量(0.5〜1.0%)について、Cは転がり軸受として強度を確保するために必須の元素である。しかし、C量が0.5%を下回ると強度を維持するために必要な表面C濃度およびC濃度深さ分布を得るために長時間の浸炭処理が必要となり製造性が低下するため、C含有量の下限を0.5%に限定した。しかし、C量が1.0%を超えて含有された場合、球状化焼なまし後の素材硬さが高くなり、冷間鍛造性や被削性等の加工性の低下が生じることが判明したため、C量の上限値は1.0%とした。
Siの含有量(0.1%以下)について、Siは鋼を製造する際に脱酸剤として用いられる。しかし、0.1%を超えて添加すると球状化焼なまし後の素材硬さを高め、被削性や冷間鍛造性を低下させるとともに、浸炭窒化後の窒化物形態がCrNからMnSiN2に変化することで水素トラップサイトとなる総窒化物数が減少し、耐水素脆性も低下させるため、その上限値を0.1%とした。
Mnの含有量(0.4〜1.5%)について、Mnは鋼を製造する際に脱酸に用いられる元素である。Mnは焼入れ性を改善する元素であり、冷間鍛造性や被削性のためにCやSi量を抑制したことによる焼入れ性の低下を補完するとともに、浸炭窒化後の水素トラップサイトとなるMnSiN2を微細に、増加析出することで耐水素脆性を改善することができるが、この効果を得るためには0.4%以上のMn量が必要なためMnの下限値を0.4%とした。しかし、1.5%を超えて多量にMnを含有すると球状化焼なまし後の素材硬さを高め被削性や冷間鍛造性を低下させるため、Mn含有量の上限を1.5%に限定した。
Pの含有量(0.03%以下)について、Pは鋼のオーステナイト粒界に偏析し、靭性や転動疲労寿命の低下を招くため、0.03%をP含有量の上限とした。
Sの含有量(0.03%以下)について、Sは鋼の熱間加工性を害し、鋼中での非金属介在物を形成して靭性や転動寿命を低下させるため、可及的に少なくすることが望ましいが、Sは切削加工性を向上する効果も有しているため、0.03%をSの上限値とした。
Crの含有量(1.5〜3.5%)について、Crは焼入れ性の改善と炭化物による硬さの確保と寿命改善とのために添加される。さらに、浸炭窒化後にCrNを析出することで水素トラップサイトとなり耐水素脆性を改善することができる。この効果を得るためには1.5%以上の添加が必要であるため、Cr含有量の下限値を1.5%に限定した。しかし、3.5%を超えて含有すると、球状化焼なまし後の素材硬さを高め被削性や冷間鍛造性を低下させるとともに大型の炭窒化物が生成し、転動疲労寿命の低下が生じるためCr含有量の上限を3.5%とした。
Alの含有量(0.050%以下)について、Alは鋼の製造時の脱酸剤として使用されるが、硬質の非金属介在物を生成し、転動疲労寿命を低下させるため低減することが望ましい。0.050%を超えてAlが多量に含有されると顕著な転動疲労寿命の低下が認められるため、Al含有量の上限を0.050%とした。
なお、Al含有量を0.005%未満とするためには鋼製造コストの上昇が生じるため、Alの含有量の下限を0.005%にすることが好ましい。
Tiの含有量(0.003%以下)、O(酸素)の含有量(0.0015%以下)、Nの含有量(0.015%以下)について、Ti、OおよびNは鋼中に酸化物、窒化物を形成し非金属介在物として疲労破壊の起点となり、転動疲労寿命を低下させるため、Ti:0.003%、O:0.0015%、N:0.015%を各元素の上限とした。
Vの含有量(0.05〜2.0%)について、Vは粒径数百nm以下の微細なV系炭化物を析出し、鋼中で拡散性水素をトラップすることにより水素脆性剥離を抑制する効果がある。この効果を得るためにはV含有量は0.05%以上であることが好ましい。しかし、2.0%を超えて多量に含有すると被削性や鍛造性等の加工性が低下するため、V含有量の上限値は2.0%であることが好ましい。
Niの含有量(0.1〜3.0%)について、Niは転動疲労過程での組織変化を抑制、転動疲労寿命を向上する。また、Niの添加は靭性および耐食性の改善にも効果がある。これらの効果を得るために、Ni含有量が0.1%以上であると好ましい。しかし、3.0%を超えて多量に含有すると鋼の焼入れ時に多量の残留オーステナイトを生成し、所定の硬さが得られなくなるとともに、鋼材のコストが上昇する可能性があるため、Ni含有量の上限値は3.0%であることが好ましい。
Moの含有量(0.05〜2.0%)について、Moは鋼の焼入れ性を改善するとともに、炭化物中に固溶することにより焼戻し時の硬さの低下を抑制する効果がある。この効果を得るためには、Mo含有量が0.05%以上であると好ましい。しかし、2.0%を超えて多量に含有すると鋼材のコストが上昇し、熱間加工性や切削性が低下する可能性があるため、Moの上限値は2.0%であることが好ましい。
このように本発明の軸受鋼は、特定比率でC、Si、Mn、P、S、Cr、Al、O、Ti、Nを含む鋼材であって、さらにV、Ni、Moのうち1種または2種以上を含むものであることが好ましく、残部は、Feおよび不可避的不純物であってよい。
Fe中に含まれ得る不可避的不純物として、従来公知の成分を挙げられる。例えば、Cu等が挙げられる。不可避的不純物の含有率は少ないほど好ましい。
次に、本発明の耐環境軸受用鋼の表面硬さおよびCrNまたはMnSiN2窒化物について言及する。
<表面硬さHRC58以上64未満について>
焼戻し後の表面硬さと転動疲労寿命には相関が認められ、表面硬さが高いほど転動疲労寿命は長くなる傾向がある。特に、焼戻し処理後の表面硬さがHRC58以下になると急激に転動疲労寿命が低下し、寿命のばらつきも大きくなるため、焼戻し処理後の表面硬さを58HRC以上とした。また、HRC64未満とする理由は、表面硬さが高くなると水素脆性に対する感受性が高くなり、水素脆性剥離により著しく転動疲労寿命が低下するためである。
なお、表面硬さ(HRC)の測定方法は、後述する。
<粒径2μm以上の粗大なCrNまたはMnSiN2窒化物の個数が103個/mm2以下について>
水素脆性型面疲労強度の改善には、微細窒化物を多数析出させることが必要である。すなわち、窒化物のうち水素トラップに有効な窒化物は、粒径300nm以下の微細なCr窒化物(例えばCrN)、及びMnとSiの複合窒化物(例えばMnSiN2)である。しかし、表層N濃度や合金元素を高めると、粒径の大きい粗大な窒化物が形成されやすくなり、強度低下の要因となる。粒径2μm以上の粗大なCrNまたはMnSiN2の窒化物の個数割合が103個/mm2を超えると、著しく水素脆性型面疲労強度が低下するため、粒径2μm以上の粗大な窒化物の個数割合の上限を103個/mm2とした。
なお、粒径2μm以上の粗大なCrNまたはMnSiN2窒化物の個数の測定方法は、後述する。
<表層C濃度(表層炭素濃度):0.8〜1.5%>
表層Cは、転がり軸受として強度を確保するために必須の元素であり、所定の熱処理後硬さを維持するためには表層C濃度が0.8%以上は必要であるため、表層C濃度の下限を0.80%に規定した。一方、表層C濃度が1.5%を超えると、大型の炭化物が生成し、転動疲労寿命の低下が生じることが判明したため、表層C濃度の上限を1.5%とした。
なお、表層C濃度の測定方法は、後述する。
<表層N濃度(表層窒素濃度):0.1〜1.0%>
表層Nは、微細な窒化物を表層に生成することにより水素トラップサイトとして働き、耐水素脆性を改善する。また、鋼の軟化抵抗性を改善することにより転動寿命を向上させる。これらの効果を得るためには表層N濃度が0.1%以上は必要であるため、表層N濃度の下限を0.1%とした。一方、表層N濃度が1.0%を超えると、残留オーステナイトの生成により表面硬さを低下させ、所定の表面硬さが得られなくなるため、表層N濃度の上限を1.0%とした。
なお、表層N濃度の測定方法は、後述する。
本発明の軸受鋼の製造方法は特に限定されない。前述のような特定の化学成分(組成)を含むように原料を調整し、従来公知の方法で溶解し、固化することで本発明の軸受鋼を得ることができる。
また、本発明の軸受鋼が前述のような特定の化学成分(組成)を含むように原料を調整し、従来公知の方法で溶解し、固化した後、圧延し、球状化焼なまし処理を行い、さらに浸炭窒化焼入れ焼戻し処理を行うことで、優れた製造性と耐水素脆性とを備える耐環境用軸受鋼となる。
ここで圧延は、熱間圧延および低温圧延であることが好ましい。例えば1000〜1200℃での熱間圧延を行った後、700〜900℃での冷間圧延を行うことが好ましい。
また、球状化焼なまし処理は、700〜800℃に加熱し、1〜10時間保持した後、−5〜−30℃/時間で450〜700℃まで冷却し、その後、空冷する処理が例示される。
また、浸炭窒化焼入れ焼戻し処理は、後述する図1に示す処理が例示される。
以下、本発明の実施例について説明する。表1に示す化学成分の材料を150kgの真空溶解で溶製し、加熱温度1200℃で3時間保持した後、鍛造温度1200℃、終止温度900℃で熱間鍛造により直径32mmと直径65mmの棒鋼を製造した。この後、焼ならし処理として920℃に加熱し、2時間保持した後空冷し、さらに球状化焼なまし処理として760℃に加熱し、3時間保持した後、−15℃/時間で650℃まで冷却した後空冷し、各試験の素材(以下「球状化焼なまし材」ともいう)とした。
ここで球状化焼なまし硬さを測定した。球状化焼なまし硬さは、直径32mmの球状化焼なまし材の横断面(棒鋼の長手方向の軸に垂直な面)が露出した硬さ試験片を作製し、横断面の1/2半径部位をロックウエル硬さ計でHRB硬さ(JIS Z2245)を4点平均で求めた。
表2の「球状化焼なまし硬さ(HRB)」の欄に測定結果を示す。
次に、直径32mmの球状化焼なまし材から断面直径25mm、長さ100mmの試験片を削り出し、種々の浸炭窒化条件で処理を行った。浸炭窒化処理は浸炭ガスにアンモニアガスを加えた混合雰囲気中で、種々の浸炭窒化条件(浸炭温度、浸炭時間、カーボンポテンシャル、アンモニア濃度)で処理を行い、焼入れ焼戻し処理を行った。図1は、用いた浸炭窒化条件の一例である。
なお、表1のNo.5およびNo.12の鋼材については、オーステナイト中のN濃度が高くなるとマルテンサイト変態開始温度(Ms点)が低下し、焼入れ後の残留オーステナイト量が増加し、表層硬さが不足する可能性があったため、650℃で1時間保持する中間焼鈍を行ない、840℃で2次焼入れを行なった。
上記のような浸炭窒化焼入れ焼戻し処理を行なって得た試験片について外周を深さ0.15mm研削し、その外周部について5点平均でロックウエル硬さ(JIS Z2245に準拠)を求めた。
表2の「表層硬さ(HRC)」の欄に結果を示す。
その後、上記のような浸炭窒化焼入れ焼戻し処理を行なって得た試験片を横断面(棒鋼の長手方向の軸に垂直な面)が露出するように樹脂内に埋め込み、横断面を研磨仕上げし、表層部のC、N濃度をEPMAで分析した。
結果を表2の「表層C濃度」、「表層N濃度」の欄に示す。
ここで、表層C、N濃度は最表層から深さ10μm位置までのC、N濃度の最大値(ピーク値)とした。
さらに、同試験片について、FE−SEMおよび元素分析(EDX)を用いて表層から深さ100μmまでの深さ領域に存在する粒径2μm以上の窒化物の個数を測定し、観察領域の面積で除して、粒径2μm以上の粗大な窒化物の個数密度(個/mm2)を求めた。
結果を表2に示す。
また、直径32mmの球状化焼なまし材から、断面直径26.3mmの円筒粗加工試験片を得た後、各々の試験片について前述の浸炭窒化処理を行ない、その後、表面の0.15mmを研削仕上げする粗加工を行って、試験面直径26mmの円筒試験片を作製した。そして、この円筒試験片について、図2に示すローラーピッチング試験機(ニッコークリエイト社製)を用いて2円筒ころがり疲労試験を行った。図2において18は円筒の試験片で、この図2に示す方法では、試験片18に対してJIS SUJ2の焼入れ焼戻し材から成る相手円筒20を所定面圧で押し付け、その状態でモータ22により軸24を介して試験片18を回転させるとともに、モータ22の回転をギア26,28を介して軸30に伝達して、相手円筒20を回転させることにより行った。
ここで相手円筒はSUJ2の焼入れ焼戻し材で、形状は軸方向に曲率半径150mmのクラウニングを有する直径130mmの円筒である。試験条件は水素脆性型の面疲労剥離を再現する条件で行った。水素脆性を生じる潤滑油を用い、水素脆性型の早期転動疲労破壊が生じる試験条件(油温90℃、すべり率−60%、面圧3Gpa、回転数1500rpm)で試験を行なった。ここで、すべり率とは試験円筒と相手円筒の周速の差と試験円筒の周速の比率である。試験は同一条件で4点行い、平均寿命を求めた。
表2に試験結果を示す。
表2に示すように本発明に相当する本発明鋼は、いずれも表面硬さ(HRC)は58以上64未満であり、表層C量は0.8〜1.5%の範囲、表層N量は0.1〜1.0%の範囲であり、粒径2μm以上の粗大な窒化物数が103個/mm2以下である。
また、本発明鋼の2円筒試験の平均寿命は10.6〜19.3×106回と優れる。一方、比較鋼では鋼種No.13、15、1、2において同平均寿命が0.5〜4.7×106回と、いずれも水素脆性により低寿命である。
なお、比較鋼における鋼種No.1および2は、化学成分は本発明鋼における鋼種No.1および2と同じであるが、浸炭窒化後の表層C,N濃度あるいは表層硬さが範囲外となった例である。一方、鋼種No.14,16は同寿命が10.4〜12.1×106回と長寿命であるが、球状化焼なまし後の素材硬さが93,94HRBと高く製造性に劣る。
表2の比較鋼のうち鋼種No.13は化学成分の内Siが高く、粗大な窒化物が生成し低寿命となった例である。
No.14はC量が高いため素材硬さが高くなった例である。
No.15はMn量が低いため低寿命となった例である。
No.16はCr量が高く素材硬さが高くなった例である。
比較例のうち鋼種No.1,2を用いた例は、化学成分は本発明鋼における鋼種No.1および2と同じであるが、以下の理由により低寿命となった例である。
鋼種No.1は浸炭窒化時のカーボンポテンシャルが低く(Cp=0.7%程度)、そのため表層C濃度が低く、表層硬さが低下し低寿命となった例である。
鋼種No.2は窒化を行わず表層N濃度が低く、低寿命となった例である。

Claims (2)

  1. 質量%表示で、
    C:0.5〜1.0%
    Si:0.1%以下
    Mn:0.4〜1.5%
    P:0.03%以下
    S:0.03%以下
    Cr:1.5〜3.5%
    Al:0.050%以下
    O:0.0015%以下
    Ti:0.003%以下
    N:0.015%以下
    残部Fe及び不可避的不純物の組成からなり、球状化焼なまし後の硬さが92HRB以下、浸炭窒化後の表層N濃度0.1〜1.0%、表層C濃度0.8〜1.5%、表層硬さがHRC58以上64未満で、粒径2μm以上の粗大なCrNまたはMnSiN2の窒化物の個数密度が103個/mm2以下であって、微細な窒化物が分散析出していることを特徴とする製造性と耐水素脆性に優れた耐環境用軸受鋼。
  2. V:0.05〜2.0%
    Ni:0.1〜3.0%
    Mo:0.05〜2.0%
    のうち1種または2種以上をさらに含む、請求項1に記載の製造性と耐水素脆性に優れた耐環境用軸受鋼。
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