本発明の多層光学フィルムは、芳香族熱可塑性樹脂で形成された第1の熱可塑性樹脂層と、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するフルオレンポリエステル樹脂で形成された第2の熱可塑性樹脂層とを含んでいる。
[第1の熱可塑性樹脂層]
第1の熱可塑性樹脂層を形成する芳香族熱可塑性樹脂として、代表的には、例えば、芳香族ポリカーボネート、ポリアルキレンアリレートなどが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもでき、例えば、芳香族ポリカーボネート及びポリアルキレンアリレートからなる群より選択される少なくとも1つの芳香族熱可塑性樹脂で形成されていてもよい。
(芳香族ポリカーボネート)
芳香族ポリカーボネートは、少なくとも芳香族骨格を含んでいればよく、例えば、下記式(1)で表される構成単位(又はビスフェノール類由来の構成単位)を有するビスフェノール型ポリカーボネートなどが挙げられる。
[式中、Xは、ビスフェノール(ビ又はビスフェノール)類の残基を示す]。
なお、「ビスフェノール類の残基」は、「ビスフェノール類」から2つのフェノール性ヒドロキシル基を除いた2価の残基を意味し、本明細書中において、「ビスフェノール類」(ビスフェノール類として例示される化合物を含む)は、対応する「ビスフェノール類の残基」と同義に用いる場合がある。
前記式(1)において、Xで表されるビスフェノール類の残基としては、例えば、ビスフェノール類{例えば、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAD)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシC6−12アリール)C1−6アルカン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン(ビスフェノールG)などのビス(C1−6アルキル−ヒドロキシC6−12アリール)C1−6アルカンなど];ビス(ヒドロキシアリール)−アリールアルカン類[例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(ビスフェノールAP)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ジフェニルメタン(ビスフェノールBP)などのビス(ヒドロキシC6−12アリール)−(モノ又はジ)C6−12アリール−C1−6アルカンなど];ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類[例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)などのビス(ヒドロキシC6−12アリール)C4−10シクロアルカンなど];ビス(ヒドロキシアリール)エーテル類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどのビス(ヒドロキシC6−12アリール)エーテルなど];ビス(ヒドロキシアリール)ケトン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどのビス(ヒドロキシC6−12アリール)ケトンなど];ビス(ヒドロキシアリール)スルフィド類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのビス(ヒドロキシC6−12アリール)スルフィドなど];ビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのビス(ヒドロキシC6−12アリール)スルホキシドなど];ビス(ヒドロキシアリール)スルホン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)などのビス(ヒドロキシC6−12アリール)スルホンなど];ビフェノール類[例えば、o,o’−ビフェノール、m,m’−ビフェノール、p,p’−ビフェノールなどのジヒドロキシ−ビC6−10アレーンなど];9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−ヒドロキシ−1−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス[(モノ又はジ)C1−4アルキル−ヒドロキシC6−10アリール]フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス[C6−10アリール−ヒドロキシC6−10アリール]フルオレンなど)など];及びこれらのC2−4アルキレンオキシド付加体(例えば、ビスフェノール1モルに対して、エチレンオキシドが1〜10モル程度付加した付加体など)など}に対応する残基などが挙げられる。
これらのX(又はビスフェノール類由来の構成単位)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。芳香族ポリカーボネート(又はビスフェノール型ポリカーボネート)は、前記ビスフェノール類のうち、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールFなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1−4アルカン由来の構成単位を有するのが好ましく、特に、ビスフェノールA由来の構成単位を有するのが好ましい。
ビスフェノール類(特に、ビスフェノールA)由来の構成単位の割合は、例えば、構成単位全体に対する割合が、例えば、50モル%以上(例えば、60〜100モル%)、好ましくは70モル%以上(例えば、80〜100モル%)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、95〜100モル%)程度であってもよく、実質的に100モル%(ビスフェノールA型ポリカーボネート)であるのが好ましい。
芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などにより測定でき、ポリスチレン換算で、例えば、10000〜100000程度の範囲から選択でき、例えば、10000〜70000、好ましくは15000〜60000、さらに好ましくは20000〜50000程度であってもよい。芳香族ポリカーボネートの分子量がこの範囲にあると、成形性が向上し易い。
芳香族ポリカーボネートのガラス転移温度Tgは、例えば、100〜250℃程度の範囲から選択でき、例えば、110〜200℃、好ましくは120〜180℃、さらに好ましくは130〜160℃程度であってもよい。Tgが高すぎると、成形性が低下するおそれがあり、低すぎると耐熱性が低下するおそれがある。
芳香族ポリカーボネートのおける屈折率は、温度20℃、波長589nmにおいて、例えば、1.55〜1.65、好ましくは1.56〜1.62、さらに好ましくは1.58〜1.60程度であってもよい。
なお、本明細書において、重量平均分子量Mw、ガラス転移温度Tg、及び屈折率は、後述する実施例に記載の方法などにより測定してもよい。
芳香族ポリカーボネートは、慣用の方法、例えば、ホスゲン法やエステル交換法などにより製造できる。
(ポリアルキレンアリレート)
ポリアルキレンアリレートは、ジオール成分由来の構成単位(ジオール単位)とジカルボン酸成分由来の構成単位(ジカルボン酸単位)とで形成され、ジオール単位は、アルカンジオール単位を主要な単位として含み、ジカルボン酸単位は、アレーンジカルボン酸単位を主要な単位として含んでいる。すなわち、ポリアルキレンアリレートは、単独重合体(ホモポリエステル)であってもよく、共重合体(コポリエステル)であってもよい。
なお、本明細書において、「ジオール成分由来の構成単位」又は「ジオール単位」は、「ジオール成分」の2つのヒドロキシル基から、水素原子を除いた単位(又は2価の基)を意味し、「ジオール成分」(ジオール成分として例示される化合物を含む)は、対応する「ジオール単位」と同義に用いる場合がある。また、同様に、「ジカルボン酸成分由来の構成単位」又は「ジカルボン酸単位」は、「ジカルボン酸成分」の2つのカルボキシル基から、OH(ヒドロキシル基)を除いた単位(又は2価の基)を意味し、「ジカルボン酸成分」(ジカルボン酸成分として例示される化合物を含む)は、対応する「ジカルボン酸単位」と同義に用いる場合がある。
前記アルカンジオール成分由来の構成単位(又はアルカンジオール単位)は、下記式(2a)で表される構成単位である。
(式中、Aはアルキレン基を示す)。
代表的なアルカンジオール成分由来の構成単位(又はアルカンジオール単位)としては、例えば、アルカンジオール{例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどの直鎖状又は分岐鎖状C2−10アルカンジオール、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルカンジオール、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルカンジオール(特にエチレングリコール)など}に対応する構成単位が例示できる。すなわち、式(2a)において、代表的な基Aとしては、前記アルカンジオールに対応するアルキレン基などが例示できる。
これらの基A(又はアルカンジオール単位)は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。好ましい基Aとしては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルキレン基などが挙げられ、なかでも、エチレン基、トリメチレン基、1,4−ブタンジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基(特にエチレン基)などが特に好ましい。
ポリアルキレンアリレートのジオール単位は、本発明の効果を害しない限り、他のジオール成分由来の構成単位(他のジオール単位)を共重合単位として含み、共重合体を形成してもよい。他のジオール単位としては、例えば、他のジオール成分{例えば、ポリアルカンジオール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリC2−6アルカンジオール、好ましくはジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどの(ジ又はトリ)C2−4アルカンジオールなど);脂環族ジオール[例えば、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなどのC5−8シクロアルカンジオールなど);ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン(例えば、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C5−8シクロアルカンなど)など];芳香族ジオール[例えば、ジヒドロキシアレーン(例えば、ハイドロキノン、レゾルシノールなどのジヒドロキシC6−10アレーンなど);芳香脂肪族ジオール(例えば、ベンゼンジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1−4アルキル)C6−10アレーン);芳香族ポリカーボネートの項に記載のビスフェノール類(ただし、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類を除く。)[例えば、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1−4アルカンなど]など]など}に対応する構成単位が挙げられる。
アルカンジオール単位の割合は、ポリアルキレンアリレートのジオール単位全体に対して、例えば、50モル%以上(例えば、60〜100モル%)、好ましくは70モル%以上(例えば、80〜95モル%)、さらに好ましくは90モル%以上などであってもよい。
ポリアルキレンアリレートのジカルボン酸単位は、アレーンジカルボン酸成分由来の構成単位(アレーンジカルボン酸単位)、すなわち、下記式(3)で表される構成単位を主要な単位として含んでいる。
(式中、B1はアリーレン基を示す)。
代表的なアレーンジカルボン酸成分由来の構成単位(又はアレーンジカルボン酸単位)としては、例えば、アレーンジカルボン酸成分[例えば、ベンゼンジカルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸);ナフタレンジカルボン酸(例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸など);縮合三環式アレーンジカルボン酸(例えば、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸など)などのC6−14アレーン−ジカルボン酸、好ましくはC6−10アレーン−ジカルボン酸(特にテレフタル酸、イソフタル酸などのベンゼンジカルボン酸)など]に対応する構成単位が挙げられる。すなわち、式(3)において、代表的な基B1としては、前記アレーンジカルボン酸成分に対応するアリーレン基などが例示できる。なお、本明細書において、「ジカルボン酸成分」とは、ジカルボン酸の他、そのエステル形成性誘導体[例えば、ジカルボン酸低級アルキルエステル(メチルエステルなどのC1−2アルキルエステルなど)、ジカルボン酸ハライド、ジカルボン酸無水物など]を含む意味に用いる。
これらの基B1(又はアレーンジカルボン酸単位)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。好ましい基B1としては、例えば、C6−14アリーレン基、好ましくはフェニレン基、ナフチレン基(例えば、2,6−ナフチレン基など)などのC6−10アリーレン基、さらに好ましくはフェニレン基(o−フェニレン基、m−フェニレン基、p-フェニレン基、特に、p−フェニレン基)などが挙げられる。
ポリアルキレンアリレートのジカルボン酸単位は、本発明の効果を害しない限り、他のジカルボン酸成分由来の単位(他のジカルボン酸単位)を共重合単位として含み、共重合体を形成してもよい。他のジカルボン酸単位としては、例えば、他のジカルボン酸成分{例えば、脂肪族ジカルボン酸[アルカンジカルボン酸(例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC2−20アルカン−ジカルボン酸など);不飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2−10アルケン−ジカルボン酸など)など];脂環族ジカルボン酸[例えば、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのC4−12シクロアルカン−ジカルボン酸、好ましくはC5−10シクロアルカン−ジカルボン酸、さらに好ましくはC5−8シクロアルカン−ジカルボン酸など);架橋環式シクロアルカンジカルボン酸(例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などのジ又はトリシクロC7−10アルカン−ジカルボン酸など);シクロアルケンジカルボン酸(例えば、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5−10シクロアルケン−ジカルボン酸);架橋環式シクロアルケンジカルボン酸(例えば、ノルボルネンジカルボン酸など)など];アルキルアレーンジカルボン酸[例えば、アルキルイソフタル酸(例えば、4−メチルイソフタル酸などのC1−4アルキル−イソフタル酸など)などのC1−4アルキルC6−10アレーン−ジカルボン酸など];ジアリールアルカンジカルボン酸(例えば、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)エタンなどのジC6−10アリールC1−10アルカン−ジカルボン酸など);ジアリールエーテルジカルボン酸(例えば、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などのジC6−10アリールエーテル−ジカルボン酸など);ジアリールケトンジカルボン酸(例えば、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノンなどのジC6−10アリール−ケトン−ジカルボン酸など);アリールアレーンジカルボン酸(例えば、2,2’−ビフェニルジカルボン酸などのC6−10アリール−C6−10アレーン−ジカルボン酸など);フルオレン骨格を有するジカルボン酸[2,7−ジカルボキシフルオレンなどのジカルボキシフルオレン;9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC2−6アルキル)フルオレン;9−(1,2−ジカルボキシエチル)フルオレン、9−(2,3−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9−(ジカルボキシC2−6アルキル)フルオレンなど];スルホン酸基又はその塩を有するジカルボン酸(例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸など)など}に対応する構成単位が挙げられる。
アレーンジカルボン酸単位の割合は、ポリアルキレンアリレートのジカルボン酸単位全体に対して、例えば、50モル%以上(例えば、60〜100モル%)、好ましくは70モル%以上(例えば、80〜95モル%)、さらに好ましくは90モル%以上などであってもよい。
ポリアルキレンアリレートは、加熱や延伸処理による樹脂の結晶化(及びそれに伴う白化)を抑制し易い点から、ポリアルキレンアリレートは、共重合ポリアルキレンアリレートが好ましい。共重合単位(又は共重合成分)としては、前記アルカンジオール単位、前記他のジオール単位、前記アレーンジカルボン酸単位及び前記他のジカルボン酸単位からなる群より選択される単位であってもよく、本発明の効果を害しない限り、ヒドロキシカルボン酸単位(又はヒドロキシカルボン酸成分)[例えば、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸など]などであってもよい。
これらの共重合単位は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。共重合単位のうち、樹脂の結晶性を低下し易い単位、例えば、非対称な分子構造を有する単位(イソフタル酸など)、脂環族骨格を有する単位(脂環族ジオール、脂環族ジカルボン酸など)などを含むのが好ましく、特にイソフタル酸を含むが好ましい。
共重合単位の割合は、構成単位全体に対して、例えば、0.1モル%以上(例えば、1〜30モル%程度)、好ましくは5モル%以上(例えば、10〜20モル%程度)であってもよい。
代表的な共重合ポリアルキレンアリレートとしては、例えば、共重合ポリエチレンテレフタレート、共重合ポリトリメチレンテレフタレート、共重合ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエチレンナフタレートなどの共重合ポリC2−6アルキレンC6−10アリレート、好ましくは共重合ポリC2−4アルキレンC6−10アリレート、特に、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートなどのイソフタル酸変性ポリC2−4アルキレンテレフタレートであるのが好ましい。
ポリアルキレンアリレートの重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などにより測定でき、ポリスチレン換算で、例えば、3000〜1000000程度の範囲から選択でき、例えば、5000〜800000、好ましくは8000〜600000、さらに好ましくは10000〜500000(例えば、30000〜500000)程度であってもよい。
ポリアルキレンアリレートのガラス転移温度Tgは、例えば、30〜250℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜100℃程度であってもよい。Tgが高すぎると、成形性が低下するおそれがあり、低すぎると耐熱性が低下するおそれがある。
ポリアルキレンアリレートの屈折率は、温度20℃、波長589nmにおいて、例えば、1.54〜1.65、好ましくは1.56〜1.62、さらに好ましくは1.58〜1.60程度であってもよい。
ポリアルキレンアリレートは、慣用の方法、例えば、直接重合法(直接エステル化法)又はエステル交換法などにより、ジオール成分とジカルボン酸成分とを縮合反応させて製造できる。
これらの芳香族熱可塑性樹脂のうち、機械的特性、耐熱性、低透湿性などの特性に優れる点から、芳香族ポリカーボネートを含むのが好ましい。成形性及び低透湿性に優れる点からは、ポリアルキレンアリレートを含むのが好ましい。なお、芳香族熱可塑性樹脂は、本発明の効果を害しない限り、他の樹脂(例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリシクロアルキレンアリレートなどの透明樹脂など)を含んでいてもよい。
[第2の熱可塑性樹脂層]
第2の熱可塑性樹脂層は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するフルオレンポリエステル樹脂で形成されている。前記フルオレンポリエステル樹脂は、ジオール単位及びジカルボン酸単位で構成され、これらの構成単位のうち、少なくとも一方が9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する構成単位を含んでいればよく、前記9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する構成単位は、通常、フルオレンポリエステル樹脂のジオール単位が含んでいる場合が多い。
(フルオレンポリエステル樹脂のジオール単位)
代表的な9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する構成単位としては、例えば、前記式(2b)で表される構成単位(以下、フルオレンジオール単位又はフルオレンジオール成分ともいう)などであってもよい。
(式中、Zは芳香族炭化水素環、R1は置換基、kは0〜4の整数、R2は置換基、mは0又は1以上の整数、R3はアルキレン基、nは0又は1以上の整数を示す)。
前記式(2b)において、環Zで表される芳香族炭化水素環(アレーン環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式芳香族炭化水素環(単環式アレーン環)、多環式芳香族炭化水素環(多環式アレーン環)などが挙げられ、多環式芳香族炭化水素環には、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素環(縮合多環式アレーン環)、環集合芳香族炭化水素環(環集合アレーン環)などが含まれる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、ナフタレン環などの縮合二環式C10−16アレーン環)、縮合三環式アレーン環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい環Zとしては、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環式C10−16アレーン環(好ましくは縮合多環式C10−14アレーン環)が挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
環集合アレーン環としては、ビアレーン環(例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環など)などのビC6−12アレーン環など)、テルアレーン環(例えば、テルフェニレン環などのテルC6−12アレーン環など)などが例示できる。好ましい環集合アレーン環は、ビC6−10アレーン環などが挙げられ、特にビフェニル環が好ましい。
これらの環Zのうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6−12アレーン環が好ましく、特にベンゼン環などのC6−10アレーン環が好ましい。また、2つの環Zは、互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(2b)において、R1で表される置換基としては、例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6−10アリール基など)など]、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)などが挙げられる。これらの基R1のうち、アルキル基[例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基(特に、メチル基などのC1−3アルキル基)]、シアノ基、ハロゲン原子が好ましく、特にアルキル基(例えば、メチル基などのC1−2アルキル基など)が好ましい。
R1の置換数kは、0〜4の整数であり、例えば、0〜3程度の整数、好ましくは0〜2程度の整数、さらに好ましくは0又は1、特に0である。なお、フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環において、それぞれの置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよく、それぞれのR1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、kが2以上である場合、同一のベンゼン環に置換する2以上のR1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、R1の置換位置は特に制限されず、例えば、フルオレン環の2−位乃至7−位(2−位、3−位及び7−位など)であってもよい。
前記式(2b)において、R2で表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭化水素基{例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基など);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基など);アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6−12アリール基など];アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)など};アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルコキシ基など);シクロアルキルオキシ基(例えば、シクロヘキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など);アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基など);アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基など);アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−10アルキルチオ基など);シクロアルキルチオ基(例えば、シクロヘキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など);アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基など);アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基など);アシル基(例えば、アセチル基などのC1−6アシル基など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基[例えば、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基など)、ビス(アルキルカルボニル)アミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのビス(C1−4アルキル−カルボニル)アミノ基など)など]などが例示できる。
これらの基R2のうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましい基R2としては、アルキル基(メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基などのC5−8シクロアルキル基など)、アリール基(フェニル基などのC6−14アリール基など)、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基など)などが挙げられ、特に、アルキル基(特に、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基など)が挙げられる。なお、R2がアリール基であるとき、R2は、Zとともに前記環集合アレーン環を形成してもよい。なお、異なるZにそれぞれ結合するR2の種類は、同一又は異なっていてもよい。
R2の置換数mは、0又は1以上の整数であればよく、Zの種類に応じて適宜選択でき、例えば、0〜8程度の整数、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)程度の整数、さらに好ましくは0〜2程度の整数(例えば、0又は1)、特に0であってもよい。なお、異なるZにおける置換数mは、互いに同一又は異なっていてもよい。また、置換数mが2以上である場合、同一のZに置換する2以上のR2の種類は、同一又は異なっていてもよい。特に、mが1である場合、Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、R2がメチル基であってもよい。また、R2の置換位置は特に制限されず、Zと、エーテル結合(−O−)及びフルオレン環の9−位との結合位置以外の位置に置換していればよい。
前記式(2b)において、R3としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2−プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルキレン基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2−3アルキレン基(特に、エチレン基)などが挙げられる。
オキシアルキレン基(OR3)の繰り返し数(付加モル数)nは、0又は1以上の整数であればよく、例えば、0〜15(例えば、1〜10)程度の整数、好ましくは1〜6(例えば、1〜4)程度の整数、さらに好ましくは1又は2、特に1であってもよい。なお、繰り返し数(付加モル数)nは、平均値(算術平均値、相加平均値)又は平均付加モル数であってもよく、好ましい態様は、前記整数の範囲と同様である。繰り返し数nが大きすぎると、屈折率が低下するおそれがある。また、2つの繰り返し数nは、それぞれ同一又は異なっていてもよい。nが2以上の場合、2以上のオキシアルキレン基(OR3)は、同一又は異なっていてもよい。また、異なるZにエーテル結合(−O−)を介して結合するオキシアルキレン基(OR3)は互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(2b)において、基[−O−(R3O)n−]の置換位置は、特に限定されず、Zの適当な置換位置にそれぞれ置換していればよい。基[−O−(R3O)n−]の置換位置は、Zがベンゼン環である場合、フルオレン環の9−位に結合するフェニル基の2−位、3−位、4−位(特に、3−位又は4−位)のいずれかの位置に置換している場合が多い。また、Zがナフタレン環である場合、フルオレン環の9−位に結合するナフチル基の5〜8−位のいずれかの位置に置換している場合が多く、例えば、フルオレン環の9−位に対して、ナフタレン環の1−位又は2−位が置換し(1−ナフチル又は2−ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5−位、2,6−位などの関係(特に2,6−位の関係)で置換している場合が多い。また、Zが環集合アレーン環である場合、基[−O−(R3O)n−]の置換位置は特に限定されず、例えば、フルオレンの9−位に結合するアレーン環又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、Zがビフェニル環(又はZがベンゼン環でR2がフェニル基)の場合、ビフェニル環の3−位又は4−位がフルオレンの9−位に結合していてもよく、ビフェニル環の3−位がフルオレンの9−位に結合する場合、基[−O−(R3O)n−]の置換位置は、例えば、ビフェニル環の2−位、4−位、5−位、6−位、2’−位、3’−位、4’−位のいずれの位置であってもよく、好ましくは6−位、4’−位のいずれかの位置(特に、6−位)などに置換していてもよい。ビフェニル環の4−位がフルオレンの9−位に結合している場合、基[−O−(R3O)n−]の置換位置は、ビフェニル環の2−位、3−位、2’−位、3’−位、4’−位のいずれの位置であってもよく、好ましくは2−位、4’−位のいずれかの位置(特に、2−位)などに置換していてもよい。
前記式(2b)で表される構成単位(フルオレンジオール単位又はフルオレンジオール成分)としては、例えば、前記式(2b)において、k=0、n=0である構成単位、すなわち、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類に対応するジオール単位;k=0、nが1以上(例えば、1〜10程度など)である構成単位、すなわち、9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類に対応するジオール単位などが挙げられる。なお、本明細書において、特に断りのない限り、「(ポリ)アルコキシ」とは、アルコキシ基及びポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど];9,9−ビス(ヒドロキシ−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−(モノ又はジ)C1−4アルキル−フェニル)フルオレンなど];9,9−ビス(ヒドロキシ−アリールフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−C6−10アリール−フェニル)フルオレンなど];9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−ヒドロキシ−1−ナフチル)フルオレンなど]などが挙げられる。
9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2−4アルコキシフェニル]フルオレンなど};9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アルキルフェニル]フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2−4アルコキシ−(モノ又はジ)C1−4アルキル−フェニル]フルオレンなど};9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アリールフェニル]フルオレン{例えば、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2−4アルコキシ−C6−10アリール−フェニル]フルオレンなど};9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2−4アルコキシナフチル]フルオレンなど}などが挙げられる。
これらの前記式(2b)で表される構成単位(フルオレンジオール単位)は、単独で又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらのフルオレンジオール単位のうち、好ましくは9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2−4アルコキシC6−10アリール]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類、さらに好ましくは9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至ペンタ)C2−4アルコキシフェニル]フルオレン、特に、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ又はジ)C2−3アルコキシフェニル]フルオレンに対応するジオール単位を含むのが好ましい。
フルオレンポリエステル樹脂のジオール単位は、重合効率を向上できる点などから、さらに、アルカンジオール成分由来の構成単位、すなわち、前記式(2a)で表される構成単位を有していてもよい。
(式中、Aはアルキレン基を示す)。
アルカンジオール成分由来の構成単位及び基A(アルキレン基)は、前記ポリアルキレンアリレートの項に例示したアルカンジオールに対応する構成単位及び基A(アルキレン基)などが例示でき、それぞれ好ましい態様を含めて同様であってもよい。
前記式(2b)で表される構成単位と、前記式(2a)で表される構成単位とを含むフルオレンポリエステル樹脂は、複屈折が低く、靱性及び成形性も高い。そのためか、押出成形や延伸処理も容易にでき、本発明の多層光学フィルムを高倍率で延伸しても、面方向のレタデーションの発現(又は上昇)を抑制する効果も高いようである。また、前記式(2a)で表される構成単位の導入割合を調整(例えば、後述する割合などに調整)して、屈折率やガラス転移温度を制御し、多層光学フィルムにおける透明性(光透過率)や、成形性を向上することもできる。
フルオレンポリエステル樹脂のジオール単位は、本発明の効果を害しない限り、他のジオール単位を有していてもよい。他のジオール単位(又は他のジオール成分由来の構成単位)としては、前記ポリアルキレンアリレートの項に記載の他のジオール単位に例示した単位などが挙げられる。
前記式(2b)で表される構成単位は、ジオール単位全体に対して、例えば、1モル%以上又は5モル%以上(例えば、10〜100モル%程度)の範囲から選択でき、例えば、30モル%以上(例えば、30〜99モル%程度)、好ましくは50モル%以上(例えば、50〜95モル%程度)、さらに好ましくは60モル%以上(例えば、60〜90モル%程度)、特に、65モル%以上(例えば、65〜85モル%程度)であってもよい。前記式(2b)で表される構成単位の割合が少な過ぎると、多層光学フィルムの面方向のレタデーション値が上昇し易くなるおそれがある。また、フルオレンポリエステル樹脂(第2の熱可塑性樹脂層)の屈折率が低下して、芳香族熱可塑性樹脂(第1の熱可塑性樹脂層)との屈折率差が上昇し易く、多層光学フィルムの透明性が低下するおそれもある。
前記式(2b)で表される構成単位と、前記式(2a)で表される構成単位との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/99〜100/0又は10/90〜100/0(例えば、30/70〜99/1)程度の範囲から選択でき、例えば、50/50〜95/5(例えば、55/45〜93/7)、好ましくは60/40〜90/10(例えば、62/38〜88/12)、さらに好ましくは65/35〜85/15(例えば、67/33〜83/17)程度であってもよい。
なお、必要に応じて、3以上のヒドロキシル基を有するポリオール成分(又はポリオール成分)[例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのアルカンポリオールなど]に対応するポリオール単位を少量[例えば、ジオール単位及びポリオール単位の総量に対して、10モル%以下(例えば、0.1〜8モル%、好ましくは0.2〜5モル%)程度]導入してもよい。ポリオール単位の割合が多すぎると、成形性が低下するおそれがある。
(フルオレンポリエステル樹脂のジカルボン酸単位)
フルオレンポリエステル樹脂のジカルボン酸単位としては、耐熱性を維持又は向上できる点から、シクロアルカンジカルボン酸単位又はアレーンジカルボン酸単位、すなわち、下記式(4)で表される構成単位を含むのが好ましい。
(式中、B2はシクロアルカンジイル基又はアリーレン基を示す)。
代表的な前記式(4)で表される構成単位としては、例えば、前記ポリアルキレンアリレートの項において、他のジカルボン酸単位として例示したシクロアルカンジカルボン酸成分に対応する構成単位;又は前記式(3)で表される構成単位として例示したアレーンジカルボン酸成分に対応する構成単位などが例示でき、好ましい態様を含めて同様であってもよい。
すなわち、式(4)において、代表的な基B2としては、前記シクロアルカンジカルボン酸成分に対応するシクロアルカンジイル基;又はアレーンジカルボン酸成分に対応するアリーレン基などが例示できる。B2がシクロアルカンジイル基である場合、例えば、C4−12シクロアルカンジイル基、好ましくはC5−10シクロアルカンジイル基、さらに好ましくはC5−8シクロアルカンジイル基(特に、1,4−シクロヘキサンジイル基などのシクロヘキサンジイル基)などが挙げられる。このようなB2を含むと、延伸などによる複屈折の上昇を抑制できる。
B2がアリーレン基である場合、例えば、C6−14アリーレン基、好ましくはフェニレン基、ナフチレン基(例えば、2,6−ナフチレン基など)などのC6−10アリーレン基、さらに好ましくはフェニレン基(o−フェニレン基、m−フェニレン基、p-フェニレン基、特に、p−フェニレン基)などが挙げられる。このようなB2を含むと、耐熱性をより一層向上できる。そのため、アリーレン基の導入割合でフルオレンポリエステル樹脂のTgを調整して、多層光学フィルムの延伸処理を容易にすることができ、成形性を向上できる。
これらの基B2(又は前記式(4)で表される構成単位)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの基B2のうち、多層光学フィルムにおける光学的特性(例えば、低複屈折性、高透明性など)をより一層向上できる観点からは、シクロアルカンジイル基(例えば、C5−8シクロアルカンジイル基など)、特に、1,4−シクロヘキサンジイル基などのシクロヘキサンジイル基が特に好ましい。また、芳香族熱可塑性樹脂及びフルオレンポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgを同程度に調整し易く、成形性を向上できる観点からは、芳香族熱可塑性樹脂としてのポリアルキレンアリレート(共重合ポリエチレンテレフタレートなど)では、B2がシクロアルカンジイル基(例えば、シクロヘキサンジイル基、好ましくは1,4−シクロヘキサンジイル基など)を含むのが好ましく、芳香族熱可塑性樹脂としての芳香族ポリカーボネート(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)では、B2がアリーレン基(例えば、フェニレン基、好ましくはp−フェニレン基など)を含むのが好ましい。
フルオレンポリエステル樹脂のジカルボン酸単位は、本発明の効果を害さない範囲で、上述のジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよい。このような他のジカルボン酸単位としては、例えば、前記ポリアルキレンアリレートの項に例示した他のジカルボン酸単位(ただし、シクロアルカンジカルボン酸成分に対応する構成単位を除く)などが挙げられる。
前記式(4)で表される構成単位の割合は、フルオレンポリエステル樹脂のジカルボン酸単位全体に対して、例えば、50モル%以上(例えば、60〜100モル%)、好ましくは70モル%以上(例えば、80〜100モル%)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、95〜100モル%)程度であってもよく、実質的に、前記式(4)で表される構成単位のみであってもよい。
フルオレンポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などにより測定でき、ポリスチレン換算で、例えば、10000〜200000(例えば、15000〜150000)程度の範囲から選択でき、例えば、20000〜120000(例えば、20000〜100000)、好ましくは25000〜90000(例えば、30000〜85000)、さらに好ましくは33000〜80000(例えば、35000〜55000程度であってもよい。
フルオレンポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば、50〜250℃程度の範囲から選択でき、例えば、70〜200℃、好ましくは100〜180℃、さらに好ましくは130〜160℃程度であってもよい。Tgが高すぎると、成形性が低下するおそれがあり、低すぎると耐熱性が低下するおそれがある。なお、フルオレンポリエステル樹脂の構成単位を調整して、Tgを前記芳香族熱可塑性樹脂のTg付近の温度に制御して、成形性を向上してもよい。
フルオレンポリエステル樹脂の屈折率は、温度20℃、波長589nmにおいて、例えば、1.56〜1.66、好ましくは1.58〜1.64、さらに好ましくは1.60〜1.63程度であってもよい。なお、フルオレンポリエステル樹脂の構成単位を調整して、屈折率を前記芳香族熱可塑性樹脂の屈折率付近の値に制御して、透明性を向上してもよい。
フルオレンポリエステル樹脂の製造方法は、ジオール成分とジカルボン酸成分とを反応させればよく、慣用の方法、例えば、エステル交換法、直接重合法などの溶融重合法、溶液重合法、界面重合法などで調製でき、溶融重合法が好ましい。なお、反応は、重合方法に応じて、溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。
ジオール成分とジカルボン酸成分との使用割合は、通常、前者/後者(モル比)=例えば、1/1.2〜1/0.8、好ましくは1/1.1〜1/0.9)程度であってもよい。なお、反応において、各ジオール成分及びジカルボン酸成分の使用量(使用割合)は、必要に応じて、各成分などを過剰に用いて反応させてもよい。例えば、反応系から留出可能なエチレングリコールなどのアルカンジオール成分は、フルオレンポリエステル樹脂中に導入されるアルカンジオール単位の割合よりも過剰に使用してもよい。
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、慣用のエステル化触媒、例えば、金属触媒などが利用できる。金属触媒としては、例えば、アルカリ金属(ナトリウムなど);アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、遷移金属(マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルト、チタンなど);周期表第13族金属(アルミニウムなど);周期表第14族金属(ゲルマニウムなど);周期表第15族金属(アンチモンなど)などを含む金属化合物が用いられる。金属化合物としては、例えば、アルコキシド、有機酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩など)、無機酸塩(ホウ酸塩、炭酸塩など)、金属酸化物などであってもよく、代表的には、例えば、ゲルマニウム化合物(例えば、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、シュウ酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウム−n−ブトキシドなど);アンチモン化合物(例えば、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモンエチレンリコレートなど);チタン化合物(例えば、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウムなど)などが例示できる。
これらの触媒は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらの触媒のうち、二酸化ゲルマニウムが好ましい。触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分1モルに対して、0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜40×10−4モル程度であってもよい。
また、反応は、必要に応じて、熱安定剤(例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、亜リン酸、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトなどのリン化合物など)や酸化防止剤などの安定剤の存在下で行ってもよい。
反応は、通常、不活性ガス(窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気中で行ってもよい。また、反応は、減圧下(例えば、1×102〜1×104Pa程度)で行うこともできる。反応温度は、重合方法に応じて選択でき、例えば、溶融重合法における反応温度は、150〜300℃、好ましくは180〜290℃、さらに好ましくは200〜280℃程度であってもよい。
なお、本発明の多層光学フィルム(第1及び/又は第2の熱可塑性樹脂層)は、本発明の効果を害しない限り、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、安定剤(例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤など)、易滑性付与剤(例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、カオリンなどの無機微粒子;アクリル樹脂、スチレン樹脂(ポリスチレン(又は架橋ポリスチレン)など)などの有機微粒子など)、界面活性剤、離型剤、帯電防止剤、耐光剤、難燃剤、ゲル化防止剤などが挙げられる。
多層光学フィルムを偏光板保護フィルムとして利用する場合、偏光子(偏光素子又は偏光機能層)中のヨウ素の劣化を抑制する点から、第1及び/又は第2の熱可塑性樹脂層には、紫外線吸収剤を添加するのが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン類(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなど);ベンゾトリアゾール類[例えば、2−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)]フェノール]など]などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。このような紫外線吸収剤を使用することにより、波長380nm以下の紫外線を遮断(例えば、波長380nmの光透過率が10%以下程度に遮断)できる。
これらの添加剤は、慣用の方法、例えば、一軸又は二軸押出装置(分散性の点から好ましくは二軸押出装置)を用いて、樹脂(例えば、芳香族熱可塑性樹脂、フルオレンポリエステル樹脂など)と溶融混練する方法などにより添加してもよい。添加剤は、樹脂の製膜前に予め添加してもよいが、例えば、樹脂を溶融製膜する際に、樹脂を製膜装置に供給するための押出装置を用いて溶融混練する方が、経済的に有利であるため好ましい。
[多層光学フィルム]
多層光学フィルムは、前記第1及び第2の熱可塑性樹脂層を含む2層構造であってもよく、第1及び第2の熱可塑性樹脂層のうち、少なくとも一方の樹脂層を、少なくとも1つの他方の樹脂層に対して、複数層に積層した3層以上の多層構造であってもよい。多層光学フィルムの層数は、例えば、2〜10層、好ましくは2〜8層、さらに好ましくは2〜5層(特に、2層又は3層)程度であってもよい。層数が多すぎると、各層の厚み制御などが困難で、製膜工程が煩雑になり易く、装置コストも上昇するおそれがある。なお、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂層(メタクリル樹脂層など)を含んでいてもよいが、第1及び第2の熱可塑性樹脂層で形成するのが好ましい。
多層光学フィルムは、第1の熱可塑性樹脂層の少なくとも一方の面に、第2の熱可塑性樹脂層が積層されていると、高複屈折化し易い第1の熱可塑性樹脂を含むにもかかわらず、複屈折を低減できるため好ましい。しかも、押出成形や延伸処理により薄膜化しても、複屈折の増加を有効に抑制できる。特に、多層光学フィルムの構成から予測される面方向のレタデーション値に比べて、意外にも、実測値は著しく低い値を示す。前記予測されるレタデーション値としては、例えば、各樹脂層単層フィルムのレタデーション値(多層光学フィルムの総厚みに換算したレタデーション値)と、各層の厚み比から算出される加重平均値(又は各層のRe値の合計)などであってもよい。
さらに、第2の熱可塑性樹脂層は、特定のフルオレン骨格を有しているため、屈折率の高い層を形成できる。そのため、例えば、メタクリル樹脂などの汎用の透明樹脂に比べて、第1の熱可塑性樹脂層との屈折率差を低減でき、可視光全域に亘り、光透過率が高く、透明性にも優れている。
第1の熱可塑性樹脂層を形成する芳香族熱可塑性樹脂は、他の樹脂層やコーティング層などとの密着(又は接着)性が低い場合がある。しかし、本発明では、第2の熱可塑性樹脂層として、フルオレンポリエステル樹脂を積層するため、接着又は粘着層を介することなく直接的に積層しても、層間の密着性が高く、多層光学フィルムは成形性及び取扱い性に優れている。この理由は定かではないが、フルオレンポリエステル樹脂における9,9−ビスアリールフルオレン骨格のカルド構造により樹脂相溶性が高く、芳香族熱可塑性樹脂との親和性に優れるためと推測される。
また、フルオレンポリエステル樹脂(又は第2の熱可塑性樹脂層)は、他の樹脂層などとの密着性(接着性)にも優れるため、多層光学フィルムと、光学部材(他の光学フィルムなど)やコーティング層又は処理層[例えば、接着(粘着又は易接着)層、ハードコート層、反射防止処理層、防眩処理層、易滑性賦与層など]などとを密着し易い点から、多層光学フィルムの少なくとも一方の表面層を、第2の熱可塑性樹脂層(II)で形成するのが好ましい。
代表的な多層光学フィルムの多層構造としては、第1の熱可塑性樹脂層を(I)、第2の熱可塑性樹脂層を(II)と表した場合、例えば、2層構造[(I)/(II)]、3層構造[(I)/(II)/(I)又は(II)/(I)/(II)]などが挙げられ、なかでも、2層構造[(I)/(II)]又は3層構造[(II)/(I)/(II)]であるのが好ましい。
前記3層構造[(II)/(I)/(II)]などのように、多層光学フィルムが、複数の第1及び/又は第2の熱可塑性樹脂層を有する場合、複数の第1及び/又は第2の熱可塑性樹脂層を形成する樹脂の種類は、それぞれ異なっていてもよいが、成形性や調製のし易さなどの観点から、それぞれ同一の樹脂で形成されるのが好ましい。特に、2つの表面層が同一樹脂で形成され、かつ表面層同士の厚みが同程度の3層構造である場合、収縮率の違いにより多層光学フィルムのカールするのを抑制できるため好ましい。
第1の熱可塑性樹脂層(I)の総厚みと、第2の熱可塑性樹脂層(II)の総厚みとの割合は、例えば、前者(I)/後者(II)=10/90〜99/1程度の範囲から選択でき、例えば、30/70〜98/2、好ましくは40/60〜95/5、さらに好ましくは45/55〜90/10程度であってもよい。第2の熱可塑性樹脂層(II)の総厚みの割合が低すぎると、複屈折が大きくなるおそれがある。しかし、本発明では、第2の熱可塑性樹脂層(II)の総厚みの割合が比較的低くても、意外にも低複屈折の多層光学フィルムが得られるため、前記総厚みの割合は、例えば、(I)/(II)=50/50〜99/1程度の範囲から選択でき、例えば、60/40〜97/3(例えば、60/40〜90/10)、好ましくは70/30〜95/5(例えば、70/30〜85/15)、さらに好ましくは75/25〜93/7(例えば、75/25〜80/20)、特に80/20〜90/10程度であってもよい。第1の熱可塑性樹脂層の割合を比較的大きくできるため、多層光学フィルムは、薄膜化しても、芳香族熱可塑性樹脂に由来する機械的特性(例えば、引張強さなど)、耐熱性、低透湿性などにも優れている。また、フルオレンポリエステル樹脂が比較的高価であるため、第2の熱可塑性樹脂層(II)の総厚み比が小さいと、経済的にも有利である。なお、多層光学フィルムを延伸する場合、延伸前後において、前記総厚みの割合(厚み比)は同等程度であってもよい。また、前記総厚みの割合は、例えば、電子顕微鏡などにより、断面観察することにより測定してもよい。
多層光学フィルムの厚み((I)及び(II)の総厚みの合計値)は、例えば、1〜400μm(例えば、5〜300μm)程度の範囲から選択でき、例えば、10〜250μm、好ましくは20〜200μm(例えば、30〜150μm)、さらに好ましくは40〜120μm(例えば、50〜100μm)、特に、55〜90μm(例えば、60〜80μm)程度であってもよい。本発明の多層光学フィルムは、機械的性質(例えば、引張強さなど)、寸法安定性、成形性などにも優れるため、極めて薄いフィルム(例えば、厚み70μm以下のフィルムなど)を調製できる。
多層光学フィルムの面方向のレタデーション値Reは、波長587nm、厚み(又は厚み換算)25μmにおいて、例えば、0〜300nm(例えば、0.01〜200nm)程度の範囲から選択でき、例えば、0〜100nm(例えば、0.1〜50nm)、好ましくは0〜30nm(例えば、0.1〜20nm)、さらに好ましくは0〜10nm(例えば、0.3〜7nm)程度であってもよい。通常、薄膜化すると、複屈折が大きなフィルムとなるが、本発明の多層光学フィルムは、高倍率の延伸処理などにより薄膜化しても、低いレタデーション値を維持できる。そのため、低複屈折性と薄膜化とを両立できる。レタデーション値は、例えば、後述する実施例に記載の方法により測定してもよい。
(製造方法)
多層光学フィルムは、各樹脂層を製膜して積層する製膜工程を経て調製できる。代表的な製造方法としては、例えば、第1及び第2の熱可塑性樹脂層のうち、一方の樹脂層又はフィルムに、他方の樹脂溶液を用いてコーティングする樹脂コーティング法、Tダイから押出した一方の樹脂層又はフィルムを、他方の樹脂層又はフィルムに貼り合せる押出しラミネート法などであってもよいが、複数の押出機で溶融混練した第1及び第2の熱可塑性樹脂層をTダイから押出して、フィルム状に成形する共押出法(共押出成形)であると、安価に効率良く製造できるため好ましい。
共押出法においては、芳香族熱可塑性樹脂及びフルオレンポリエステル樹脂のペレットを用いてもよい。前記ペレットは、水分率が100ppm未満となるように乾燥してもよい。乾燥した各樹脂ペレットは、必要に応じて、添加剤と混合し、それぞれ押出機に供給して、多層フィードブロックを用いて各層を積層状態で合流させ、スリット状のダイからシート状に溶融押出を行ってもよい。押出機のシリンダー温度は、例えば、200〜300℃、好ましくは230〜260℃程度であってもよい。さらに、溶融状態のシートを、静電印加法を用いてキャスティングロールに密着させて冷却固化し、多層フィルムを得てもよい。なお、前記多層フィードブロックに代えて、マルチマニホールドダイを用いてもよい。また、共押出成形において、各溶融樹脂は、樹脂中に含まれる異物を除去するために、高精度ろ過を行ってもよい。高精度ろ過に用いるろ材は、除去性能に優れる点から、ステンレス焼結体であると好ましい。
また、前述したように、多層光学フィルムを成形し易くするために、フルオレンポリエステル樹脂のTgが、芳香族熱可塑性樹脂のTg付近の温度になるように、重合成分を調整して、共押出成形してもよい。
本発明の多層光学フィルムは、未延伸フィルムであってもよいが、薄膜化でき、機械的特性も向上する点から、延伸フィルム(例えば、1軸延伸フィルム、2軸延伸フィルムなど)であってもよい。通常、多層フィルムは、延伸処理などで薄膜化を試みると、各樹脂層界面の密着性や、各樹脂の特性[機械的特性、熱的特性(例えば、ガラス転移温度、融点などに起因する流動性、熱膨張性など)など]の違いなどにより、層間が剥離したり、厚みが不均一になるなど、薄膜化が困難な場合が多い。しかし、本願発明では、第1及び第2の熱可塑性樹脂層の密着性が高く、芳香族熱可塑性樹脂及びフルオレンポリエステル樹脂の前記特性が比較的近いためか、可塑剤などを使用しなくても、成形性が高く、剥離することなく、容易に薄膜化できる。
延伸方法は、特に制限されず、1軸延伸又は2軸延伸のいずれであってもよい。1軸延伸は、例えば、縦方向(流れ方向)、横方向(幅方向)又は斜め方向などの一方向に延伸して行うことができ、2軸延伸はフィルムを縦横2方向に延伸して行うことができる。延伸(例えば、1軸延伸)は、湿式延伸法又は乾式延伸法で行ってもよく、2軸延伸では、テンター法(フラット法)、チューブ法などを利用できる。これらの延伸方法のうち、延伸によるレタデーションの発現を抑制して低複屈折性を維持し易く、厚みの均一性に優れる点から、2軸延伸、特に、テンター法が好ましい。2軸延伸は、逐次2軸延伸であってもよいが、同時2軸延伸する方がレタデーションの上昇を抑制し易く好ましい。また、2軸延伸は、方向により強度や収縮性が異なる偏延伸であってもよいが、縦横に等しい強度及び収縮性をもつ等延伸の方が好ましい。
延伸成形(延伸処理又は延伸工程)は、加熱しながら行ってもよい。延伸温度としては、各層を形成する樹脂のガラス転移温度Tg(例えば、各樹脂のTgのうち、最も高い温度)と、融点Tm(例えば、各樹脂のTmうち、最も低い温度)との間の適当な温度で行ってもよく、例えば、70〜250℃、好ましくは100〜220℃、さらに好ましくは130〜200℃(例えば、150〜190℃)程度であってもよい。温度が高すぎると、樹脂層の流動性が高くなり過ぎ、成形性や厚みの均一性などが低下するおそれがある。温度が低すぎると、フィルムが破断するおそれがある。なお、比較的高い温度で延伸する方が、レタデーションの抑制効果が高いようである。
延伸倍率は、1軸延伸及び2軸延伸の各方向それぞれについて、例えば、1.1〜10倍、好ましくは1.2〜8倍、さらに好ましくは1.5〜6倍、特に、1.8〜4倍程度であってもよい。通常、芳香族ポリカーボネートフィルムなどは、延伸による薄膜化で割れ易くなるため、低倍率でなければ延伸できない。しかし、本発明では、第2の熱可塑性樹脂層と組み合わせているためか成形性が向上し、延伸倍率が高くても、容易に延伸できる。
(偏光板保護フィルム)
本発明の多層光学フィルムは、低レタデーション(低複屈折)であるため、虹むらなどを生じ難いだけでなく、低透湿性や耐熱性(熱安定性)にも優れるため、水分や熱による偏光子(偏光機能層、偏光素子)の劣化を有効に抑制できる点から、偏光板保護フィルム(偏光子保護フィルム)として好適に利用できる。そのため、偏光機能層と、前記偏光板保護フィルムとを含む偏光板や、この偏光板を含む画像表示装置を形成してもよい。
また、多層光学フィルムは、機械的特性(引張強度など)、寸法安定性、成形性などにも優れるため、薄膜化が可能であり、近年の偏光板保護フィルムの薄型化(例えば、70μm以下など)の要求に対して、充分に対応できる。
さらに、芳香族熱可塑性樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂や共重合ポリエチレンテレフタレート系樹脂など)は、比較的安価に調達できること、多層光学フィルムが溶融押出製膜法(共押出法など)で簡便かつ大量に製造できることなどから、経済的に有利である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、評価方法及び用いた樹脂原料について記載する。
(分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィ(東ソー(株)製「HLC−8120GPC」)を用い、試料をクロロホルムに溶解させ、ポリスチレン換算で、分子量(重量平均分子量Mw)を測定した。
(ガラス転移温度)
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製「DSC 6220」)を用いて、JIS K 7121に準拠して、ガラス転移温度Tgを測定した。
(屈折率)
多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製、「DR−M2/1550」)を用い、光源波長589nm、測定温度20℃で測定した。
(位相差)
王子計測機器(株)製「KOBRA−WR」を用い、平行ニコル回転法にて、面方向のレタデーション値(Re)を波長587nmで測定し、厚み25μmの値(Re(25μm))に換算した。
(芳香族熱可塑性樹脂)
PC:芳香族ポリカーボネート、帝人(株)製「PanliteK−1300Y」、屈折率(温度20℃、波長589nm)1.585
PET:共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂、ベルポリエステルプロダクツ(株)製「BELLPET IFG8L」、屈折率(温度20℃、波長589nm)1.576。
(フルオレンポリエステル樹脂)
樹脂II(II):下記、合成例1により調製した。
(合成例1)
反応器にテレフタル酸ジメチル58重量部、エチレングリコール41重量部、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン92重量部を加え、撹拌しながら160〜230℃に徐々に加熱溶融し、エステル交換反応を行った後、酸化ゲルマニウム0.06重量部を加え、270℃、1Torr以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。内容物を反応器から取り出し、フルオレンポリエステル樹脂(樹脂II)のペレットを得た。1H−NMRを測定したところ、フルオレンポリエステル樹脂に導入されたジオール単位の70モル%は、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン由来であった。このフルオレンポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは40000、ガラス転移温度Tgは142℃、屈折率(温度20℃、波長589nm)は、1.632であった。
(実施例1〜25)
製膜工程
110℃で一晩熱風乾燥したPCと、90℃で一晩真空乾燥した樹脂IIとを原料として、押出機2基を有するTダイ押出成形機を用いて共押出成形し、表1記載の層構成、厚み比及び総厚みを有する2種2層の多層光学フィルムを調製した。なお、シリンダー温度は、PC側:235〜245℃、樹脂II側:240〜250℃に設定した。各層の厚み比は、各押出機のスクリュー回転数を調整して制御した。
延伸工程
実施例2〜5、7〜10、12〜15、17〜20及び22〜25で得られた多層光学フィルムは、表1に記載の延伸条件により、テンター延伸装置を用いて、1軸延伸又は同時2軸延伸した。なお、表1において、延伸倍率は、1軸延伸では、縦方向(流れ方向)に延伸した倍率を示し、同時2軸延伸では、縦方向(流れ方向)及び横方向(幅方向)に延伸した倍率を示す。
(実施例26〜31)
PCに代えて、PETを用いること以外は、実施例1〜25の製膜工程と同様にして、多層光学フィルムを調製した。
(比較例1〜2)
PC、樹脂IIを使用し、Tダイ押出成形機を用いて、それぞれの樹脂の単層フィルムを製膜した。
得られた多層光学フィルムの評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、比較例のRe(25μm)及び各実施例の厚み比から予測されるレタデーション値に比べて、実施例(実測値)は、極めて低い値を示した。特に、2軸延伸した実施例では、延伸により薄膜化しているにもかかわらず、意外にもレタデーション値が低く、薄膜化と低複屈折性とを両立している。