JP2017173370A - 波長変換素子、照明装置およびプロジェクター - Google Patents

波長変換素子、照明装置およびプロジェクター Download PDF

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Abstract

【課題】励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減できる波長変換素子を提供する。
【解決手段】波長変換素子43は、蛍光体を含む無機蛍光体46と、無機蛍光体46の屈折率とは異なる屈折率を有するとともに無機蛍光体46の内部に分散された複数の気泡48と、を有する蛍光体層42を備え、複数の気泡48のうち、少なくとも一部の気泡48の形状は、長手方向を有し、複数の気泡48の配向は、全体として異方性を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、波長変換素子、照明装置およびプロジェクターに関する。
近年、プロジェクター用の照明装置として、蛍光体を利用した照明装置が提案されている。この種の照明装置は、光源から射出された励起光を蛍光体に照射して蛍光光を発生させることにより、蛍光光を含む照明光を生成する。下記の特許文献1には、複数の気孔を含有させた蛍光体セラミックスと、励起光を射出する固体光源と、を備えた光源装置が開示されている。
特開2012−64484号公報
蛍光光は、蛍光体の内部を等方的に伝播した後に外部に射出されるため、発光領域(蛍光光の射出領域)は、励起光の入射領域よりも大きくなる。発光領域が大きくなるとエテンデューが大きくなり、蛍光体の後段の集光レンズで呑み込めない成分が生じる。これにより、蛍光光の利用効率が低下する。
特許文献1の光源装置では、蛍光体層に複数の気泡を含有させることによって、蛍光体層に散乱性を持たせ、発光領域の拡大を低減している。ところが、蛍光体層に複数の気泡を含有させると、蛍光光だけでなく、蛍光体層に入射した励起光も散乱される。そのため、励起光の一部は、蛍光体に吸収されずに後方散乱し、蛍光体層の外部へ射出される。これにより、励起光の利用効率が低下する。
本発明の一つの態様は、上記の課題を解決するためになされたものであって、励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減できる波長変換素子を提供することを目的の一つとする。また、本発明の一つの態様は、上記の波長変換素子を備えた照明装置を提供することを目的の一つとする。また、本発明の一つの態様は、上記の照明装置を備えたプロジェクターを提供することを目的の一つとする。
上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様の波長変換素子は、蛍光体を含む主相と、前記主相の屈折率とは異なる屈折率を有するとともに前記主相の内部に分散された複数の副相と、を有する蛍光体層を備え、前記複数の副相のうち、少なくとも一部の前記副相の形状は、長手方向を有し、前記複数の副相の配向は、全体として異方性を有する。
本発明の一つの態様の波長変換素子においては、蛍光体を含む主相の内部に分散された複数の副相のうち、少なくとも一部の副相の形状が長手方向を有し、複数の副相の配向が全体として異方性を有するため、光の散乱性に異方性が生じる。これにより、特定の方向から入射される励起光は透過しやすく、後方散乱されにくいため、励起光の利用効率が高くなる。一方、等方的に発せられる蛍光光は散乱されやすいため、発光領域の拡大が低減される。このようにして、励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減できる波長変換素子が提供できる。
本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記複数の副相の各々は、屈折率異方性を有し、前記蛍光体層は、全体として屈折率異方性を有していていもよい。
この構成によれば、副相の光軸と平行に進行する光の散乱を弱め、光軸と平行な方向以外の方向に進行する光の散乱をより高められる。
本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記複数の副相の各々は、前記副相の長手方向に光軸を有していてもよい。
この構成によれば、複数の副相の光軸を略同一方向に揃えることが比較的容易になる。
本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記複数の副相の各々は、結晶性粒子から構成されていてもよい。
この構成によれば、蛍光光に対する散乱性が高く、かつ、耐熱性の高い蛍光体層を構成しやすい。
本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記複数の副相の各々は、気泡から構成されていてもよい。
この構成によれば、複数の副相の各々を気泡以外の材料で構成する場合に比べ、主相と副相との界面への光の入射前後の進行方向をより大きく変えることができる。
本発明の一つの態様の照明装置は、本発明の一つの態様の波長変換素子と、前記蛍光体を励起させる励起光を射出する光源と、を備え、前記蛍光体層は、前記励起光が入射する光入射面を有し、前記複数の副相の配向方向は、前記光入射面と交差している。
この構成によれば、蛍光体層に入射した励起光は散乱しにくく、蛍光体層の内部で発生した蛍光光は散乱しやすくなる。これにより、励起光の利用効率に優れ、エテンデューが小さい照明装置を実現することができる。
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の照明装置と、前記照明装置から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学系と、を備えている。
この構成によれば、光の利用効率が高いプロジェクターを実現することができる。
本発明の第1実施形態のプロジェクターの概略構成図である。 第1実施形態の波長変換素子の断面図である。 比較例の波長変換素子において一つの気泡に対する光の振る舞いを示す図である。 本実施形態の波長変換素子において一つの気泡に対する光の振る舞いを示す図である。 比較例の波長変換素子において複数の気泡における励起光の作用を説明するための図である。 本実施形態の波長変換素子において複数の気泡における励起光の作用を説明するための図である。 比較例の波長変換素子において複数の気泡における蛍光光の作用を説明するための図である。 本実施形態の波長変換素子において複数の気泡における蛍光光の作用を説明するための図である。 シミュレーションでの散乱体を示す斜視図である。 シミュレーションにおいて、蛍光体層から射出される蛍光光の強度分布を示すグラフである。 第2実施形態の波長変換素子における蛍光体層の断面図である。 第3実施形態の波長変換素子における蛍光体層の断面図である。 散乱体の形状と後方散乱との関係を示すグラフである。 第4実施形態の波長変換素子の断面図である。 第5実施形態の波長変換素子の断面図である。 第6実施形態の波長変換素子の断面図である。 第7実施形態の波長変換素子の断面図である。 波長変換素子の変形例を示す断面図である。 波長変換素子の他の変形例を示す断面図である。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図6を用いて説明する。
なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
[プロジェクター]
本実施形態に係るプロジェクターの一例について説明する。
本実施形態のプロジェクターは、スクリーン(被投射面)上にカラー映像を表示する投射型画像表示装置である。プロジェクターは、赤色光、緑色光、青色光の各色光に対応した3つの液晶光変調装置を備えている。プロジェクターは、照明装置の光源として、高輝度・高出力な光が得られる半導体レーザーを備えている。
図1は、本実施形態に係るプロジェクターの光学系を示す概略図である。
図1に示すように、プロジェクター1は、第1照明装置100と、第2照明装置102と、色分離導光光学系200と、液晶光変調装置400Rと、液晶光変調装置400Gと、液晶光変調装置400Bと、クロスダイクロイックプリズム500と、投射光学系600と、を備える。
本実施形態の第1照明装置100は、特許請求の範囲の照明装置に対応する。
第1照明装置100は、第1光源10と、コリメート光学系70と、ダイクロイックミラー80と、コリメート集光光学系90と、回転蛍光板30と、モーター50と、第1レンズアレイ120と、第2レンズアレイ130と、偏光変換素子140と、重畳レンズ150と、を備える。
第1光源10は、励起光として第1の波長帯の青色のレーザー光(発光強度のピーク:約445nm)Eを射出する半導体レーザーから構成されている。第1光源10は、1つの半導体レーザーで構成されていてもよいし、複数の半導体レーザーで構成されていてもよい。
なお、第1光源10は、445nm以外の波長、例えば460nmの青色レーザー光を射出する半導体レーザーを用いることもできる。
本実施形態の第1光源10は、特許請求の範囲の光源に対応する。
第1光源10は、第1光源10から射出されるレーザー光の光軸200axが照明光軸100axと直交するように配置されている。
コリメート光学系70は、第1レンズ72と、第2レンズ74と、を備える。コリメート光学系70は、第1光源10から射出された光を略平行化する。第1レンズ72および第2レンズ74は、凸レンズで構成されている。
ダイクロイックミラー80は、コリメート光学系70からコリメート集光光学系90に至る光路中に、第1光源10の光軸200axと照明光軸100axとの各々に対して45°の角度で交わるように配置されている。ダイクロイックミラー80は、励起光Eを反射させ、赤色光および緑色光を含む黄色の蛍光光Yを透過させる。
コリメート集光光学系90は、ダイクロイックミラー80を通過した励起光Eを集光して回転蛍光板30の波長変換素子43に入射させる機能と、回転蛍光板30から射出された蛍光を略平行化する機能と、を有する。コリメート集光光学系90は、第1レンズ92と、第2レンズ94と、を備えている。第1レンズ92および第2レンズ94は、凸レンズで構成されている。
第2照明装置102は、第2光源710と、集光光学系760と、散乱板732と、コリメート光学系770と、を備えている。
第2光源710は、第1照明装置100の第1光源10と同一の半導体レーザーから構成されている。第2光源710は、1つの半導体レーザーで構成されていてもよいし、複数の半導体レーザーで構成されていてもよい。
集光光学系760は、第1レンズ762と、第2レンズ764と、を備えている。集光光学系760は、第2光源710から射出された青色光Bを散乱板732上もしくは散乱板732の近傍に集光させる。第1レンズ762および第2レンズ764は、凸レンズで構成されている。
散乱板732は、第2光源710からの青色光Bを散乱させ、回転蛍光板30から射出された蛍光光Yの配光分布に近い配光分布を有する青色光Bを生成する。散乱板732として、例えば、光学ガラスからなる磨りガラスを用いることができる。
コリメート光学系770は、第1レンズ772と、第2レンズ774と、を備える。コリメート光学系770は、散乱板732から射出された光を略平行化する。第1レンズ772および第2レンズ774は、凸レンズで構成されている。
第2照明装置102から射出された青色光Bは、ダイクロイックミラー80により反射され、回転蛍光板30から射出されダイクロイックミラー80を透過した蛍光光Yと合成されて白色光Wとなる。白色光Wは、第1レンズアレイ120に入射する。
回転蛍光板30は、モーター50と、基材40と、反射層41と、蛍光体層42と、を備える。回転蛍光板30は、青色光からなる励起光Eが入射する側と同じ側に向けて蛍光光Yを射出する。すなわち、回転蛍光板30は、反射型の回転蛍光板である。
基材40は、例えばアルミニウム、銅等の放熱性に優れた金属製の基材から構成される。基材40は、モーター50により回転軸の周りに回転可能とされている。基材40は、平面形状が円形の板体であり、例えば直径が50mm〜60mm程度に設定され、厚さが1mm〜2mm程度に設定される。
蛍光体層42は、平面形状が円環状の無機蛍光体材料から構成されている。蛍光体層42は、基材40の一面40a側において、回転軸の周りに設けられている。
図2は、本実施形態の波長変換素子43の断面図である。
図2に示すように、波長変換素子43は、蛍光体層42と、反射層41と、を備えている。蛍光体層42は、励起光Eが入射する光入射面42aと、光入射面42aと反対側の対向面42bと、を有する。反射防止層44は、蛍光体層42の光入射面42aに設けられている。反射層41は、蛍光体層42の対向面42bに設けられている。波長変換素子43は、反射層41に設けられた接着材層45によって基材40に貼り付けられている。接着材層45としては、例えばシリコーン樹脂が用いられる。
蛍光体層42は、バルク状の無機蛍光体46と、無機蛍光体46の内部に分散された複数の気泡48と、を有する。複数の気泡48の屈折率は、無機蛍光体46の屈折率とは異なる。無機蛍光体46には、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAl12:Ce3+(YAG))系蛍光体、(Sr,Ba)SiO:Eu2+系蛍光体、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu2+系蛍光体、等の黄色光を発光する蛍光体を用いることができる。
本実施形態の無機蛍光体46は、特許請求の範囲の主相に対応する。本実施形態の気泡48は、特許請求の範囲の副相に対応する。
もしくは、黄色光を発光する無機蛍光体46として、緑色蛍光体と赤色蛍光体とを混合した蛍光体を用いてもよい。その場合、緑色蛍光体として、LuAl12:Ce3+系蛍光体、Y:Eu2+系蛍光体、(Ba,Sr)SiO:Eu2+系蛍光体、BaSi12:Eu2+系蛍光体、(Si,Al)(O,N):Eu2+系蛍光体等を用いることができる。赤色蛍光体として、CaAlSiN:Eu2+系蛍光体、CaSi:Eu2+系蛍光体、(Ba,Sr)SiO:Eu2+系蛍光体、BaSi12:Eu2+系蛍光体、KSiF:Mn4+系蛍光体、KTiF:Mn4+系蛍光体等を用いることができる。
複数の気泡48の各々は、例えば楕円球状、棒状等の長手方向を有する形状を呈している。また、複数の気泡48は、各気泡48の長手方向が略同じ方向に揃って配向している。具体的には、複数の気泡48は、各気泡48の長手方向が蛍光体層42の光入射面42aに概ね垂直な方向に配向している。このように、複数の気泡48の配向は、異方性を有している。
このように、長手方向を有する複数の気泡48を無機蛍光体46の内部で所定の方向に配向させる一つの方法として、以下の押し出し成型法が挙げられる。
この方法では、例えばペースト状の無機蛍光体に、各々が細長い形状を有する樹脂製の複数の気泡形成材を混合する。この混合物を押し出し成型することにより、複数の気泡形成材が一方向に配向したグリーンシートを作成する。その後、グリーンシートを焼結し、気泡形成材を気泡に変化させる。これにより、複数の気泡が所定の方向に配向した無機蛍光体が形成される。
長手方向を有する複数の気泡48を所定の方向に配向させる他の方法としては、以下のゲル化凍結法が挙げられる。
この方法では、蛍光体セラミックスの粉体を水溶性高分子の水溶液に分散させたスラリーを作製し、このスラリーをゲル化、凍結、解凍、乾燥、焼結することにより、多数の気泡を有する無機蛍光体が形成される。
反射防止層44は、蛍光体層42の光入射面42aに入射する励起光Eの反射を低減させるための膜である。反射防止層44の具体例としては、例えば蛍光体層42の光入射面42aを鏡面研磨し、その表面に誘電体多層膜を成膜したものなどが挙げられる。
反射層41は、蛍光体層42と接着材層45との間に設けられている。反射層41は、蛍光光Yを高い反射率で反射するように設計されている。反射層41の具体例としては、例えばアルミニウム、銀等の反射率の高い金属反射膜が挙げられる。これにより、反射層41は、基材40側に向かう蛍光光Yの多くを図2の上方(基材40とは反対側)に向けて反射する。
波長変換素子43にはレーザー光からなる励起光Eが入射するため、波長変換素子43において熱が発生する。本実施形態では、基材40を回転させることで、蛍光体層42における励起光Eの入射位置を時間的に変化させている。これにより、蛍光体層42の同じ部分に励起光Eが常時照射され、蛍光体層42が局所的に加熱されて劣化することを低減している。
図1に示すように、第1レンズアレイ120は、ダイクロイックミラー80からの光を複数の部分光束に分割するための複数の第1小レンズ122を有する。複数の第1小レンズ122は、照明光軸100axと直交する面内にマトリクス状に配列されている。
第2レンズアレイ130は、第1レンズアレイ120の複数の第1小レンズ122に対応する複数の第2小レンズ132を有する。第2レンズアレイ130は、後段の重畳レンズ150とともに、第1レンズアレイ120の各第1小レンズ122の像を液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、および液晶光変調装置400Bのそれぞれの画像形成領域もしくはその近傍に結像させる。複数の第2小レンズ132は、照明光軸100axに直交する面内にマトリクス状に配列されている。
偏光変換素子140は、第1レンズアレイ120により分割された各部分光束を、偏光方向が揃った直線偏光光に変換する。
重畳レンズ150は、偏光変換素子140から射出された各部分光束を集光し、液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、および液晶光変調装置400Bのそれぞれの画像形成領域もしくはその近傍で互いに重畳させる。第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130、および重畳レンズ150は、回転蛍光板30から射出された光の面内光強度分布を均一にするインテグレーター光学系を構成する。
色分離導光光学系200は、ダイクロイックミラー210と、ダイクロイックミラー220と、反射ミラー230と、反射ミラー240と、反射ミラー250と、リレーレンズ260と、リレーレンズ270と、を備える。色分離導光光学系200は、第1照明装置100と第2照明装置102とから得られた白色光Wを赤色光Rと緑色光Gと青色光Bとに分離し、赤色光R、緑色光G、および青色光Bを、対応する液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、および液晶光変調装置400Bに導光する。フィールドレンズ300R、フィールドレンズ300G、およびフィールドレンズ300Bは、色分離導光光学系200と液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、および液晶光変調装置400Bとの間に配置されている。
ダイクロイックミラー210は、赤色光成分を通過させ、緑色光成分および青色光成分を反射するダイクロイックミラーである。ダイクロイックミラー220は、緑色光成分を反射して、青色光成分を通過させるダイクロイックミラーである。 反射ミラー230は、赤色光成分を反射する反射ミラーである。反射ミラー240および反射ミラー250は、青色光成分を反射する反射ミラーである。
ダイクロイックミラー210を通過した赤色光は、反射ミラー230で反射され、フィールドレンズ300Rを通過して赤色光用の液晶光変調装置400Rの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー210で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー220でさらに反射され、フィールドレンズ300Gを通過して緑色光用の液晶光変調装置400Gの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー220を通過した青色光は、リレーレンズ260、入射側の反射ミラー240、リレーレンズ270、射出側の反射ミラー250、およびフィールドレンズ300Bを経て青色光用の液晶光変調装置400Bの画像形成領域に入射する。
液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、および液晶光変調装置400Bは、入射された色光を画像情報に応じて変調し、各色光に対応するカラー画像を形成する。図示を省略したが、液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、および液晶光変調装置400Bの光入射側に、入射側偏光板がそれぞれ配置されている。液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、および液晶光変調装置400Bの光射出側に、射出側偏光板がそれぞれ配置されている。
クロスダイクロイックプリズム500は、液晶光変調装置400R、液晶光変調装置400G、および液晶光変調装置400Bから射出された各画像光を合成してカラー画像を形成する。クロスダイクロイックプリズム500は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。
クロスダイクロイックプリズム500から射出されたカラー画像は、投射光学系600によって拡大投射され、スクリーンSCR上で画像を形成する。投射光学系600は、複数の投射レンズ6で構成されている。
図3は、比較例の波長変換素子において一つの気泡に対する光の振る舞いを示す図である。
比較例として、球状の気泡を含む波長変換素子1001を想定する。
図3に示すように、励起光Eは、蛍光体層1002の光入射面1002aの法線方向から入射した後、蛍光体層1002と気泡1003との界面Kに入射する。このとき、励起光Eの一部は界面Kで反射し、反射光Erが蛍光体層1002の内部を進む。また、励起光Eの他の一部は気泡1003を透過した後、透過光Etが蛍光体層1002の内部を進む。透過光Etは、入射側の界面K、射出側の界面Kの双方で屈折する。このように、励起光Eは、蛍光体層1002と気泡1003との界面Kに入射することにより、進行方向が大きく変わる。
一方、蛍光光は、蛍光体層1002のあらゆる場所で発生し、発光点を中心として等方的に進行する。例えば気泡1003から距離Dだけ離れた発光点P1から射出された蛍光光に着目すると、発光点P1から等方的に射出された蛍光光のうち、角度θ1の範囲内に射出された蛍光光Y1のみが蛍光体層1002と気泡1003との界面Kに入射し、進行方向を変える。角度θ1の範囲外に射出された蛍光光Y2は、界面Kに入射することなく、蛍光体層1002の内部を進む。
図4は、本実施形態の波長変換素子43において一つの気泡に対する光の振る舞いを示す図である。なお、図4では、反射防止層44の図示は省略する。
図4に示すように、本実施形態の波長変換素子43においても、比較例の場合と同様、励起光Eの一部は無機蛍光体46と気泡48との界面Kで反射し、励起光Eの他の一部は気泡48を透過し、反射光Er、透過光Etのそれぞれが蛍光体層42の内部を進む。しかしながら、本実施形態の波長変換素子43は、楕円球状の気泡48の長手方向が光入射面42aの法線方向に略一致しているため、反射光Er、透過光Etともに、光の進行方向がそれ程大きく変わらない。
一方、気泡48から距離Dだけ離れた発光点P2から射出された蛍光光に着目すると、発光点P2から等方的に射出された蛍光光のうち、角度θ2の範囲内に射出された蛍光光Y2のみが無機蛍光体46と気泡48との界面Kに入射し、進行方向を変える。ここで、本実施形態の波長変換素子43は、球状の気泡1003を含む蛍光体層1002を備えた比較例と異なり、楕円球状の気泡48を含む蛍光体層42を備えているため、角度θ2は角度θ1よりも大きくなる。すなわち、発光点P2から等方的に射出された蛍光光のうち、無機蛍光体46と気泡48との界面Kに入射する蛍光光Y2の割合は、本実施形態が比較例よりも大きい。
本実施形態においては、複数の副相の各々が気泡48から構成された例を示したが、複数の副相の各々は必ずしも気泡48に限ることはなく、バルクの無機蛍光体46の屈折率と異なる屈折率を有する材料で構成されていればよい。ただし、複数の副相の各々が気泡48から構成されている場合、界面Kでの屈折率差が最も大きくなるため、複数の副相の各々を気泡以外の材料で構成する場合に比べて、複数の副相への光の入射前後の進行方向をより大きく変えることができる。
また、蛍光体層における複数の気泡の作用については、以下のように考えることができる。
図5は、比較例の波長変換素子1001において複数の気泡の励起光に対する作用を説明するための図であり、蛍光体層の光入射面の法線方向から見た平面図である。
図6は、本実施形態の波長変換素子43において複数の気泡の励起光に対する作用を説明するための図であり、蛍光体層の光入射面の法線方向から見た平面図である。
図7は、比較例の波長変換素子1001において複数の気泡の蛍光光に対する作用を説明するための図であり、蛍光体層の光入射面に垂直な任意の平面で切断した断面図である。
図8は、本実施形態の波長変換素子43において複数の気泡の蛍光光に対する作用を説明するための図であり、蛍光体層の光入射面に垂直な任意の平面で切断した断面図である。
以下の検討において、比較例の波長変換素子における一つの気泡の体積と、本実施形態の波長変換素子における一つの気泡の体積と、が等しいと仮定する。
上述したように、比較例の気泡1003は球状であり、本実施形態の気泡48は楕円球状であり、比較例の気泡1003と本実施形態の気泡48とは体積が等しい。そのため、各蛍光体層の光入射面の法線方向から見たとき、図5および図6に示すように、蛍光体層1002,42の単位面積当たりの複数の気泡1003,48の占有面積は、本実施形態の方が比較例よりも小さい。したがって、単位面積当たりの蛍光体層1002,42に入射した励起光のうち、気泡1003,48に入射しない励起光の割合は、本実施形態の方が比較例よりも多い。
一方、蛍光体層の光入射面と平行な方向から見たとき、図7および図8に示すように、蛍光体層1002,42の単位面積当たりの複数の気泡1003,48の占有面積は、本実施形態の方が比較例よりも大きい。したがって、断面の単位面積を光入射面と平行な方向に進行する蛍光光のうち、気泡1003,48に入射する蛍光光の割合は、本実施形態の方が比較例よりも多い。
以上の作用をまとめると、光入射面と垂直な方向に進行する励起光に対する散乱性は、本実施形態の波長変換素子43の方が比較例の波長変換素子1001よりも小さい。一方、光入射面と平行な方向に進行する蛍光光に対する散乱性は、本実施形態の波長変換素子43の方が比較例の波長変換素子1001よりも大きい。これにより、本実施形態の波長変換素子43では、励起光の後方散乱が従来よりも少なくなり、蛍光体の励起に寄与する励起光の割合が増える結果、励起光の利用効率が向上する。また、本実施形態の波長変換素子43では、蛍光光に対する散乱性が比較例よりも高められることで蛍光光の光入射面と平行な方向への伝播が低減されるため、発光領域の拡大が低減される。このように、本実施形態によれば、励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減できる波長変換素子43を提供することができる。
また、本実施形態によれば、上記の波長変換素子43が用いられたことにより、励起光の利用効率に優れ、エテンデューが小さい第1照明装置100を実現することができる。また、本実施形態によれば、上記の第1照明装置100が用いられたことにより、高効率のプロジェクター1を実現することができる。
本発明者は、本実施形態の波長変換素子43の効果を実証するためのシミュレーションを行った。
以下、その結果について説明する。
シミュレーション条件として、蛍光体層の主相を構成する蛍光体としてYAG結晶体を用い、その内部に副相として複数の気泡を分散させる構成とした。図9に示すように、気泡48の形状は楕円球状とし、楕円の長軸aを4.0μm、楕円の短軸bおよび短軸cをともに0.5μmとした。蛍光体層における励起光の入射領域は一辺の長さが1.0mmの正方形状の領域とし、励起光の強度分布はトップハット形状とした。また、蛍光光の射出領域の一辺の長さが、後述する相対強度の1/2値においてそれぞれ1.1mm、1.2mm、1.4mmとなるように、気泡の量を調整した。
図10は、シミュレーション結果を示すグラフであって、蛍光体層から射出される蛍光光の強度分布を示している。グラフの横軸は蛍光体層の位置[mm]を示しており、グラフの縦軸は相対強度[a.u.]を示している。
蛍光光は蛍光体層の内部を横方向に伝播し、蛍光体層から射出される。そのため、励起光の入射領域の中心位置で蛍光光の強度は最大値となり、入射領域の周辺に向けて強度は低下する。したがって、励起光の入射領域R0の一辺の長さが1.0mmであるとき、蛍光光の射出領域の一辺の長さは1.0mmよりも大きくなる。ここでは、蛍光光の相対強度の最大値を1としたとき、相対強度が最大値の1/2以上になる射出領域R1の一辺の長さを1/2値と称し、相対強度が最大値の1/5以上になる射出領域R2の一辺の長さを1/5値と称する。
蛍光光の射出領域の一辺の長さ、すなわち蛍光光の広がり幅が1/2値でそれぞれ1.1mm、1.2mm、1.4mmのとき、蛍光体層に入射した励起光のうち後方散乱した励起光の割合、および気泡率を表1に示す。なお、気泡率は、蛍光体層の単位体積当たりの複数の気泡が占める体積の割合である。
Figure 2017173370
表1に示すように、気泡率を0.40%から4.30%に大きくすることにより、蛍光光の広がり幅を1/2値で1.4mmから1.1mm、1/5値で1.8mmから1.6mmに小さくすることができた。ただし、比較例の波長変換素子の場合、気泡率を0.4%から4.30%に大きくすると、励起光の後方散乱割合が0.9%から20.7%に増加し、励起光の利用効率が大きく低下した。これに対し、本実施形態の波長変換素子の場合、気泡率を0.40%から4.30%に大きくしても、励起光の後方散乱割合を3.3%に抑えることができ、比較例に比べて励起光の利用効率を高めることができた。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図11を用いて説明する。
第2実施形態のプロジェクターおよび照明装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置全体の説明は省略し、波長変換素子についてのみ説明する。
図11は、第2実施形態の波長変換素子の断面図である。図11は、第1実施形態における図2に対応している。
図11において、図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
第1実施形態の波長変換素子43では、全ての気泡48が、蛍光体層42の光入射面に垂直な方向に配向していた。これに対して、図11に示すように、第2実施形態の波長変換素子52においては、複数の気泡48のうち、一部の気泡48aは、長手方向が蛍光体層53の光入射面53aに垂直な方向を向くように配向している。また、他の気泡48bは、長手方向が光入射面53aに垂直な方向とずれた方向を向くように配向している。ただし、複数の気泡48は、全体として長手方向が蛍光体層53の光入射面53aに概ね垂直な方向を向くように配向している。したがって、第2実施形態の場合も、第1実施形態と同様、複数の気泡48の各々の形状は長手方向を有し、複数の気泡48の配向は異方性を有している。
第2実施形態においても、励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減できる波長変換素子52を提供することができる、という第1実施形態と同様の効果が得られる。
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図12および図13を用いて説明する。
第3実施形態のプロジェクターおよび照明装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置全体の説明は省略し、波長変換素子についてのみ説明する。
図12は、第3実施形態の波長変換素子の断面図である。図12は、第1実施形態における図2に対応している。
図12において、図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
第1実施形態の波長変換素子43では、全ての気泡48が、長手方向を有していた。これに対して、図12に示すように、第3実施形態の波長変換素子55においては、複数の気泡48のうち、一部の気泡48aは、形状が楕円球状であり、長手方向を有している。気泡48aは、長手方向が蛍光体層56の光入射面56aに垂直な方向を向くように配向している。一方、他の気泡48cは、形状が球状であり、長手方向を有していない。この例では、長手方向を有する気泡48aは、長手方向を有していない気泡48cよりも多い。このように、第3実施形態の波長変換素子55では、複数の気泡48のうち、一部の気泡48aの形状は長手方向を有しており、複数の気泡48の配向は全体として異方性を有している。
第3実施形態においても、励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減できる波長変換素子を提供することができる、という第1実施形態と同様の効果が得られる。
本発明者は、上記の気泡48aと気泡48cとの含有割合と励起光の後方散乱の割合との関係を調べるシミュレーションを行った。
図13は、シミュレーション結果を示すグラフである。グラフの横軸は、球形状気泡(長手方向を有していない気泡48c)の含有割合[%]を示している。グラフの縦軸は、後方散乱割合(蛍光体層に入射した励起光の光量に対する後方散乱した励起光の量の割合)[%]を示している。
図13に示すように、球形状の気泡48cの含有割合が40%未満になると、励起光の後方散乱が低下する割合が増加し、気泡48cの含有割合が20%未満になると、励起光の後方散乱が低下する割合が急激に増加する。以上のことから、楕円球状の気泡48aの含有割合は60%以上とすることが好ましく、気泡48aの含有割合は80%以上とすることがより好ましいことが判った。
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について、図14を用いて説明する。
第4実施形態のプロジェクターおよび照明装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置全体の説明は省略し、波長変換素子についてのみ説明する。
図14は、第4実施形態の波長変換素子の断面図である。図14は、第1実施形態における図2に対応している。
図14において、図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
第1〜第3実施形態の波長変換素子において、蛍光体層は、バルク状の無機蛍光体と複数の気泡とを有していた。これに対して、図14に示すように、第4実施形態の波長変換素子58において、蛍光体層59は、バインダー60と、複数の蛍光体粒子61と、複数の気泡48と、を備えている。複数の蛍光体粒子61および複数の気泡48は、バインダー60の内部に略均一に分散している。複数の気泡48は、形状が楕円球状であり、長手方向を有している。複数の気泡48は、長手方向が蛍光体層59の光入射面59aに概ね垂直な方向を向くように配向している。したがって、第4実施形態の波長変換素子58において、複数の気泡48は長手方向を有しており、複数の気泡48の配向は、全体として異方性を有している。
バインダー60は、透光性を有する無機材料もしくは有機材料で構成される。具体的には、無機材料として、例えばガラス、もしくはアルミナ、YAG、LuAGなどの透光性酸化物セラミックスなどが用いられる。有機材料としては、例えばアクリル樹脂などの樹脂材料が用いられる。蛍光体粒子61としては、第1実施形態で挙げた蛍光体の粒子が用いられる。
第4実施形態においても、励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減できる波長変換素子を提供することができる、という第1実施形態と同様の効果が得られる。
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態について、図15を用いて説明する。
第5実施形態のプロジェクターおよび照明装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置全体の説明は省略し、波長変換素子についてのみ説明する。
以下の第5〜第7実施形態では、散乱体(副相)が屈折率異方性を有する例を挙げる。
図15は、第5実施形態の波長変換素子の断面図である。図15は、第1実施形態における図2に対応している。
図15において、図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
図15に示すように、第5実施形態の波長変換素子62において、蛍光体層63は、バルク状の無機蛍光体46と、複数の結晶性粒子64と、を有する。複数の結晶性粒子64の各々は、形状が柱状であり、長手方向を有している。複数の結晶性粒子64は、長手方向が蛍光体層63の光入射面63aに概ね垂直な方向を向くように配向している。
また、複数の結晶性粒子64の各々は、屈折率異方性を有し、長手方向に光軸を有している。したがって、複数の結晶性粒子64は、光軸が蛍光体層63の光入射面63aに概ね垂直な方向を向くように配向している。これにより、無機蛍光体46は屈折率異方性を有していないが、蛍光体層63は、全体として屈折率異方性を有している。また、バルク状の無機蛍光体46は、第1実施形態と同様のものである。
本実施形態の結晶性粒子64は、特許請求の範囲の副相に対応する。
屈折率異方性を有する結晶性粒子64として、光学異方性を有する複屈折結晶を用いることができる。複屈折結晶に対して光軸以外の方向から光を入射した光は、互いに異なる方向に進む2本の光線に分離される。
複屈折結晶として、一軸結晶と二軸結晶のいずれを用いてもよい。一軸結晶としては、例えば水晶、方解石などの正方晶系材料、六方晶系材料が挙げられる。二軸結晶としては、例えばKGW,KTP,LBOなどの斜方晶系材料、単斜方晶系材料、三斜方晶系材料が挙げられる。二軸結晶を用いる場合には、いずれか一方の光軸が蛍光体層63の光入射面63aに概ね垂直な方向を向くように、結晶性粒子64を配向させればよい。
第5実施形態の波長変換素子62においては、励起光Eは、蛍光体層63の光入射面63aの法線方向から入射し、結晶性粒子64の光軸Jに平行な方向に進む。そのため、結晶性粒子64は、光入射面63aの法線方向から入射した励起光Eに対しては、複屈折性を示さない。これにより、励起光Eの散乱は少なく、後方散乱割合が減少する。一方、蛍光光Yは、蛍光体層63の内部で発生して等方的に進むため、結晶性粒子64の光軸J以外の方向から結晶性粒子64に入射する。このとき、結晶性粒子64は、蛍光光Yに対しては複屈折性を示すため、散乱割合が多くなる。その結果、蛍光光Yは蛍光体層63の内部を横方向に進みにくいため、蛍光光Yの射出領域の拡大が低減される。
すなわち、第5実施形態においては、個々の散乱体(副相)が長手方向を有し、複数の散乱体が配向異方性を有するという第1〜第4実施形態で述べた作用に、励起光Eと蛍光光Yに対する複屈折性が互いに異なる、という作用が加わることにより、励起光Eの散乱を小さく、蛍光光Yの散乱を大きくすることができる。これにより、第5実施形態においても、励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減できる波長変換素子62を提供することができる、という第1実施形態と同様の効果が得られる。
波長変換素子62は、第1実施形態で述べた方法によって製造することができる。
また、本実施形態においては、複数の副相の各々が結晶性粒子64から構成されているため、蛍光光Yに対する散乱性が高く、かつ、耐熱性の高い蛍光体層63を構成しやすい。ただし、複屈折材料として、高分子液晶などを用いることもできる。
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態について、図16を用いて説明する。
第6実施形態のプロジェクターおよび照明装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置全体の説明は省略し、波長変換素子についてのみ説明する。
図16は、第6実施形態の波長変換素子の断面図である。図16は、第1実施形態における図2に対応している。
図16において、図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
第5実施形態の波長変換素子62では、全ての結晶性粒子64は、長手方向が蛍光体層63の光入射面63aに垂直な方向を向くように配向していた。これに対して、図16に示すように、第6実施形態の波長変換素子66において、複数の結晶性粒子64のうち、一部の結晶性粒子64aは、長手方向が蛍光体層67の光入射面67aに概ね垂直な方向を向くように配向している。また、他の結晶性粒子64bは、長手方向が蛍光体層67の光入射面67aに垂直な方向とずれた方向を向くように配向している。ただし、複数の結晶性粒子64は、全体として長手方向が蛍光体層67の光入射面67aに概ね垂直な方向を向くように配向している。したがって、一部の結晶性粒子64aは、光軸Jが蛍光体層67の光入射面67aに概ね垂直な方向を向くように配向し、他の結晶性粒子64bは、光軸Jが蛍光体層67の光入射面67aに垂直な方向とずれた方向を向くように配向している。
第6実施形態においても、励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減できる波長変換素子66を提供することができる、という第1実施形態と同様の効果が得られる。
[第7実施形態]
以下、本発明の第7実施形態について、図17を用いて説明する。
第7実施形態のプロジェクターおよび照明装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置全体の説明は省略し、波長変換素子についてのみ説明する。
図17は、第7実施形態の波長変換素子の断面図である。図17は、第1実施形態における図2に対応している。
図17において、図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
第5〜第6実施形態の波長変換素子において、蛍光体層は、バルク状の無機蛍光体と複数の結晶性粒子とを有していた。これに対して、図17に示すように、第7実施形態の波長変換素子68において、蛍光体層69は、バインダー60と、複数の蛍光体粒子61と、複数の結晶性粒子64と、を備えている。複数の蛍光体粒子61および複数の結晶性粒子64は、バインダー60の内部に略均一に分散している。
複数の結晶性粒子64は、形状が柱状であり、長手方向を有している。複数の結晶性粒子64は、長手方向が蛍光体層69の光入射面69aに概ね垂直な方向を向くように配向している。したがって、複数の結晶性粒子64は、長手方向を有しており、複数の結晶性粒子64の配向は、全体として異方性を有している。バインダー60および蛍光体粒子61は、第4実施形態で挙げたものと同様である。
第7実施形態においても、励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減できる波長変換素子68を提供することができる、という第1実施形態と同様の効果が得られる。
上記第1〜第7実施形態においては、励起光の光入射面から蛍光光を射出させる反射型の波長変換素子の例を挙げた。ただし、本発明の一つの態様は、反射型の波長変換素子に限らず、透過型の波長変換素子に適用することもできる。
図18は、透過型の波長変換素子の例を示す断面図である。
図18において、図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
図18に示すように、波長変換素子76は、蛍光体層42と、選択反射層77と、を備えている。波長変換素子76は、選択反射層77に設けられた接着材層45により光透過性を有する基材78に貼り付けられている。この波長変換素子76の場合、励起光Eは基材78の側から入射させる。そのため、蛍光体層42の選択反射層77に接する側の面が光入射面42aとなり、光入射面42aと反対側の面が光射出面42bとなる。選択反射層77は、励起光Eを選択的に透過させ、蛍光光Yを選択的に反射させる。
透過型の波長変換素子76においても、励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減することができる。
また、上記第1〜第7実施形態においては、回転蛍光板を構成する波長変換素子の例を挙げた。ただし、本発明の一つの態様は、回転型の波長変換素子に限らず、固定型の波長変換素子に適用することもできる。
図19は、固定型の波長変換素子の例を示す断面図である。
図19において、図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
図19に示すように、波長変換素子82は、固定型の基材83の一面に接着材層45により貼り付けられている。波長変換素子82の要部の構成は、第1実施形態と同様であり、反射型の例である。なお、透過型の波長変換素子を光透過性を有する基材の一面に貼り付けた構成としてもよい。
このように、固定型の波長変換素子82においても、励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減することができる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記第5〜第7実施形態では、複数の結晶性粒子(副相)の各々の形状が長手方向を有し、さらに結晶性粒子の長手方向に屈折率異方性の光軸を有する例を挙げた。この構成に代えて、複数の副相の各々の形状が長手方向を有しておらず、さらに複数の副相の屈折率異方性の光軸が略一方向に揃って配向している構成であってもよい。例えば複数の結晶性粒子の各々の形状は球状であってもよい。結晶性粒子の形状が球状であったとしても、複数の結晶性粒子の光軸が光入射面に概ね垂直な方向に配向していれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
その他、波長変換素子および照明装置を構成する各構成要素の数、形状、材料、配置等については、適宜変更が可能である。また、上記実施形態では、3つの光変調装置を備えるプロジェクターを例示したが、1つの光変調装置でカラー映像を表示するプロジェクターに本発明を適用することも可能である。さらに、光変調装置としては、上述した液晶パネルに限らず、例えばデジタルミラーデバイスなどを用いることもできる。
その他、プロジェクターの各種構成要素の形状、数、配置、材料等については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。
また、上記実施形態では本発明による照明装置をプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限られない。本発明による照明装置は、照明器具や自動車のヘッドライト等にも適用することができる。
1…プロジェクター、42,53,56,59,63,67,69…蛍光体層、42a…光入射面、43,52,55,58,62,66,68,76…波長変換素子、46…無機蛍光体(主相)、48…気泡(副相)、61…蛍光体粒子、64…結晶性粒子(副相)、100…第1照明装置(照明装置)。

Claims (7)

  1. 蛍光体を含む主相と、前記主相の屈折率とは異なる屈折率を有するとともに前記主相の内部に分散された複数の副相と、を有する蛍光体層を備え、
    前記複数の副相のうち、少なくとも一部の前記副相の形状は、長手方向を有し、
    前記複数の副相の配向は、全体として異方性を有する、波長変換素子。
  2. 前記複数の副相の各々は、屈折率異方性を有し、
    前記蛍光体層は、全体として屈折率異方性を有する、請求項1に記載の波長変換素子。
  3. 前記複数の副相の各々は、前記副相の長手方向に光軸を有する、請求項2に記載の波長変換素子。
  4. 前記複数の副相の各々は、結晶性粒子から構成されている、請求項2または請求項3に記載の波長変換素子。
  5. 前記複数の副相の各々は、気泡から構成されている、請求項1に記載の波長変換素子。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の波長変換素子と、
    前記蛍光体を励起させる励起光を射出する光源と、を備え、
    前記蛍光体層は、前記励起光が入射する光入射面を有し、
    前記複数の副相の配向方向は、前記光入射面と交差している、照明装置。
  7. 請求項6に記載の照明装置と、
    前記照明装置から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
    前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学系と、を備えた、プロジェクター。
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