JP2012083695A - 光源装置およびプロジェクター - Google Patents

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Abstract

【課題】色ムラがなく光の利用効率が高い光源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】可視光領域の励起光を射出するレーザー光源10と、励起光の一部を透過させるとともに、励起光によって励起されて可視光領域の蛍光を発する発光素子30と、を備え、発光素子30は、光透過性を有する基材と、基材の内部に含まれる複数の蛍光体粒子と、基材の内部に含まれる光透過性を有する複数のフィラー粒子と、を含む発光層42を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、光源装置およびプロジェクターに関するものである。
従来、プロジェクターにおいては、光源として超高圧水銀ランプなどの放電ランプが用いられるのが一般的であった。ところが、この種の放電ランプは、寿命が比較的短い、瞬時点灯が難しい、ランプから放射される紫外線が液晶ライトバルブを劣化させる、等の課題がある。そこで、放電ランプに代わる方式の光源を用いた投射型画像表示装置が提案されている。
このような光源として、蛍光を利用して白色光を形成する方式のものが知られている。例えば、紫外線を射出するLEDを用いて蛍光体を照明することにより、発光光(蛍光)として白色光を取り出す光源装置が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、特許文献1の装置では、LEDは単位面積あたりの光エネルギーが小さいため、発光光の光量を増大させるために多くのLEDを並べて配置する必要がある。すると複数のLED全体を光源として考えた場合、従来のプロジェクター光源と比べてエテンデュー(光源の発光面積と集光可能な立体角の積で与えられるパラメーター)が大きくなるため、光利用効率が低下してしまう。
そこで、LEDに代わる高出力の光源としてレーザー光源を用いた光源装置が提案されている(例えば特許文献2,3参照)。特許文献2,3の光源装置では、蛍光体を励起させる励起光(青色光)の光源であるレーザー光源と、光の三原色に対応する複数の色光を発する蛍光体と、を有している。そして、複数種の蛍光体を円板上に周方向に種類毎に領域を分けて蛍光膜として配置し、円板を回転させながら複数の蛍光膜にレーザー光を照射することにより、発せられる蛍光を時間毎に異ならせる構成としている。これにより、複数の色光が時間積分され、混色することで白色光を射出する光源装置としている。
特開2005−274957号公報 特開2009−277516号公報 米国特許第7547114号明細書
しかしながら、特許文献2,3の装置では、エテンデューを小さくすることは可能である一方で次のような問題がある。
第1に、光源装置が励起光として青色光を射出するレーザー光源を用い、当該青色光と蛍光体で発せられる色光(蛍光)とを混色して白色光とする構成の場合、蛍光はランバーシアンに散乱するのに対し、レーザー光である青色光は直進性が強くあまり拡散しない(散乱度が小さい)ため、異なる拡散状態の光を発することになる。すると、形成された白色光を拡大しスクリーンに照射したときに色ムラ(輝度ムラ)が生じてしまう。なお、ランバーシアンとは、発光強度の観測角に対する分布が、観測角のcos(余弦)に比例する発光分布のことである。
また第2に、蛍光体から発せられる蛍光は全方位に射出されるため、レーザー光照射により発光した蛍光は、蛍光膜内を面内方向に伝播した上で蛍光膜の外に射出される。したがって、蛍光膜に照射されるレーザー光のスポット径が小さくても、発せられる蛍光のスポット径は拡大し、エテンデューを増大させてしまう。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、上記の課題のうち少なくとも一つを解決し、色ムラが小さく光の利用効率が高い光源装置を提供することを目的とする。また、このような光源装置を有し、高品質な画像表示が可能なプロジェクターを提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明の光源装置は、可視光領域の励起光を射出するレーザー光源と、前記励起光の一部を透過させるとともに、前記励起光によって励起されて可視光領域の蛍光を発する発光素子と、を備え、前記発光素子は、光透過性を有する基材と、該基材の内部に含まれる複数の蛍光体粒子と、該基材の内部に含まれる光透過性を有する複数のフィラー粒子と、を含む発光層を有することを特徴とする。
この構成によれば、光源装置から射出される光は、励起光と蛍光とが混色した色の光となる。その際、励起光は、発光層内において蛍光体粒子やフィラー粒子の表面で一部が反射・屈折することで散乱し拡散する。そのため、直進性が高い励起光は、フィラー粒子を含まない場合よりも大きく拡散して広がるため、蛍光の広がりに近づく。また、蛍光体粒子から等方的に発せられる蛍光も、発光層内の蛍光体粒子やフィラー粒子の表面で一部が反射・屈折することで散乱され、光源装置の射出面の方向へ進行する蛍光の成分が増加する。そのため、フィラー粒子を含まない場合と比較して、蛍光が光源装置の射出面と平行な方向に発光層内を進行する平面視における距離を抑制することができ、発せられる蛍光のスポット径の拡大を抑制することができる。結果として、色ムラが抑制され光の利用効率が高い光源装置とすることが可能となる。
本発明においては、前記複数のフィラー粒子の平均粒子径は、前記励起光を幾何光学散乱させる大きさであることが望ましい。
この構成によれば、フィラー粒子においては、励起光、および励起光よりも長波長の蛍光は、後方散乱が生じにくくなる。そのため、光の利用効率が高い光源装置とすることが可能となる。
本発明においては、前記複数のフィラー粒子の平均粒子径は、5μm以上であることが望ましい。
この構成によれば、効果的に幾何光学散乱を生じさせ、後方散乱を抑制することが可能となる。
本発明においては、前記複数の蛍光体粒子の平均粒子径は、前記励起光を幾何光学散乱させる大きさであることが望ましい。
この構成によれば、フィラー粒子と同様に蛍光体粒子においても、励起光、および励起光よりも長波長の蛍光は、後方散乱が生じにくくなる。そのため、光の利用効率が高い光源装置とすることが可能となる。
本発明においては、前記複数の蛍光体粒子の平均粒子径は、5μm以上であることが望ましい。
この構成によれば、効果的に幾何光学散乱を生じさせ、後方散乱を抑制することが可能となる。
本発明においては、前記発光層の膜厚が、前記複数の蛍光体粒子の平均粒子径の10倍以下の厚さであることが望ましい。
この構成によれば、発せられる蛍光のスポット径拡大を抑制することができる。
本発明においては、前記複数のフィラー粒子は、前記基材の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料からなることが望ましい。
この構成によれば、フィラー粒子表面での全反射が抑制されるため、後方散乱光を低減し、光の利用効率を高めることができる。
本発明においては、前記複数のフィラー粒子は、前記基材の屈折率の1.2倍以上1.3倍以下である屈折率を有する材料からなることが望ましい。
この構成によれば、励起光の後方散乱を抑制しつつ効果的に前方散乱を促進して、色ムラを抑制することができる。また、蛍光の散乱を効果的に促進して、エテンデューの増加を抑制し、光の利用効率を高めることができる。
本発明においては、前記複数の蛍光体粒子は、前記基材の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料からなることが望ましい。
この構成によれば、蛍光体粒子表面での全反射が抑制されるため、後方散乱光を低減し、光の利用効率を高めることができる。
本発明においては、前記複数の蛍光体粒子は、前記基材の屈折率の1.2倍以上1.3倍以下である屈折率を有する材料からなることが望ましい。
この構成によれば、励起光の後方散乱を抑制しつつ効果的に前方散乱を促進して、色ムラを抑制することができる。また、蛍光の散乱を効果的に促進して、エテンデューの増加を抑制し、光の利用効率を高めることができる。
本発明においては、前記複数の蛍光体粒子および前記複数のフィラー粒子の総体積が、前記発光層の体積の35%以上45%以下であることが望ましい。
この構成によれば、励起光の前方散乱光に係る配光特性が十分な特性となり、また、後方散乱光も少なくなるため、色ムラがなく光の利用効率が高い光源装置を提供することが可能となる。また、発せられる蛍光のスポット径拡大を抑制することができる。
本発明においては、前記発光素子は、前記発光層において前記励起光が入射する側の面に、前記励起光を透過し前記蛍光を反射する波長選択膜を有することが望ましい。
この構成によれば、蛍光の後方散乱光を前方に反射することができるため、光の利用効率が高い光源装置を提供することが可能となる。
本発明においては、前記基材の形成材料が、樹脂組成物であることが望ましい。
この構成によれば、発光層の形成や加工が容易となる。
本発明においては、前記基材の形成材料が、無機材料からなることが望ましい。
この構成によれば、発光層の形成後に真空プロセスにおいて修飾することが可能となるため、発光層の表面に、反射防止膜や波長選択膜など種々の機能構造を形成しやすくなり、設計自由度が高くなる。
また、本発明のプロジェクターは、上述の光源装置と、前記光源装置から射出される光を変調する光変調素子と、前記光変調素子によって変調された光を投写する投写光学系と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、上述の光源装置を有するため、被投射面における色ムラが抑制されて高品質な画像表示が可能なプロジェクターを提供することができる。
第1実施形態の光源装置およびプロジェクターを示す模式図である。 光源装置および発光層の発光特性を示すグラフである。 発光素子の概略説明図である。 偏光変換素子の概略説明図である。 発光層の内部での光の挙動を示す模式図である。 第2実施形態の光源装置を示す模式図である。 実施例で使用する測定装置の説明図である。 実施例で使用する測定装置の説明図である。 実施例で使用する測定装置の説明図である。 実施例の測定結果を示すグラフである。
[第1実施形態]
以下、図1〜図5を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る光源装置およびプロジェクターについて説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
図1は、本実施形態の光源装置100およびプロジェクターPJを示す模式図である。図に示すようにプロジェクターPJは、光源装置100、色分離光学系200、液晶ライトバルブ(光変調素子)400R,400G,400B、色合成素子500、投写光学系600を含んでいる。
プロジェクターPJは、概略すると以下のように動作する。光源装置100から射出された光は、色分離光学系200により複数の色光に分離される。色分離光学系200により分離された複数の色光は、それぞれ対応する液晶ライトバルブ400R,400G,400Bに入射して変調される。液晶ライトバルブ400R,400G,400Bにより変調された複数の色光は、色合成素子500に入射して合成される。色合成素子500により合成された光は、投写光学系600により壁やスクリーン等のスクリーンSCRに拡大投写され、フルカラーの投写画像が表示される。以下、プロジェクターPJの各構成要素について説明する。
光源装置100は、レーザー光源10、集光光学系20、発光素子30、コリメート光学系60、レンズアレイ120,130、偏光変換素子140、重畳レンズ150がこの順に配置された構成になっている。
レーザー光源10は、後述する発光素子30が備える蛍光物質を励起させる励起光として、青色(発光強度のピーク:約445nm、図2(a)参照)のレーザー光を射出する。図2(a)において、符号Bで示すのは、レーザー光源10が励起光として射出する色光成分である。なお、レーザー光源10は、複数(図では3つ)備えることとしても良く、1つだけレーザー光源を用いることとしても良い。また、後述する蛍光物質を励起させることができる波長の光であれば、445nm以外のピーク波長を有する色光を射出するレーザー光源であっても構わない。
集光光学系20は、複数の凸レンズである第1レンズ22と、複数の第1レンズ22を介した光が共通して入射する凸レンズである第2レンズ24と、を備えている。集光光学系20は、レーザー光源10から射出されるレーザー光の光線軸上に配置され、複数のレーザー光源10から射出された励起光を集光する。
発光素子30は、レーザー光源10から射出される励起光(青色光)の一部を透過させるとともに、残部を吸収し黄色(発光強度のピーク:約550nm、図2(b)参照)の蛍光に変換する機能を有する。
図3は、発光素子30の概略説明図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は図3(a)の線分A−Aにおける矢視断面図、図3(c)は発光素子30が有する発光層42の模式図である。
図3(a)に示すように、発光素子30は、円板40と、円板40上において周方向に連続して形成された単一の発光層42とを有し、さらに図3(b)に示すように円板40と発光層42との間に設けられた波長選択膜44を有している。発光素子30は、円板40の発光層42が形成されていない側が集光光学系20側に面するように配置され、また、集光光学系20により集光される励起光の焦点位置が発光層42と重なるように配置されている。例えば、円形の発光素子30の直径は50mmであり、平面視で発光素子30の中心から約22.5mm離れた位置に励起光が入射するように発光素子30が設けられている。
円板40は、励起光である青色光を透過する物質を形成材料としており、例えば、石英ガラス、水晶、サファイア(単結晶コランダム)、透明樹脂などを用いることができる。これらの中では、励起光による加熱で変形しないように無機物である石英ガラス、水晶、サファイアが好適に用いられる。
発光層42は、レーザー光源10から射出される励起光(青色光)の一部を透過させるとともに、残部を吸収し黄色(発光強度のピーク:約550nm、図2(b)参照)の蛍光に変換する。発光層42から射出される光は、青色の励起光と黄色の蛍光とが混色することで白色光を形成している。なお、図2(b)において符号Rで示した成分は、発光層42が射出する黄色光のうち赤色光として利用可能な色光成分であり、符号Gで示した成分は、同様に緑色光として利用可能な色光成分である。発光層42の構成については後に詳述する。
波長選択膜44は、青色光を透過し、青色光よりも長波長の光(例えば、480nmよりも長波長の光)を反射する波長選択性を有している。このような波長選択膜44は、例えば誘電体多層膜によって形成されている。青色光である励起光は波長選択膜44を透過し、発光層42を照射する。
さらに図3(c)に示すように、発光層42は、光透過性を有する基材421と、蛍光を発する複数の蛍光体粒子422と、光透過性を有する粒子状の物質である複数のフィラー粒子423と、を有している。
基材421の内部には、複数の蛍光体粒子422および複数のフィラー粒子423が含まれている。基材421の形成材料としては、光透過性を有する樹脂材料(樹脂組成物)を用いることができ、中でも高い耐熱性を有するシリコーン樹脂(屈折率:約1.4)を好適に用いることができる。
なお、用いる樹脂材料は、前述のように励起光である青色光を透過する物質であれば、2種以上の樹脂材料を混合した組成物(樹脂組成物)であってもよい。さらに、蛍光体粒子422、フィラー粒子423の他に、例えば、機械的強度向上を目的とした添加材が含まれた組成物であってもかまわない。
蛍光体粒子422は、図1に示すレーザー光源10から射出される励起光を吸収し蛍光を発する粒子状の蛍光物質である。例えば、蛍光体粒子422には、波長が約445nmの青色光によって励起されて蛍光を発する物質が含まれており、レーザー光源10が射出する励起光の一部を、図2(b)に示すように、赤色の波長帯域から緑色の波長帯域までを含む光に変換して射出する。このような蛍光体粒子422として、平均粒径が1μmから数十μm程度のものが高い発光効率を示すことが知られている。蛍光体粒子422としては、通常知られたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体を用いることができる。例えば、平均粒径が10μmの(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ceで示される組成のYAG系蛍光体(屈折率:約1.8)を用いることができる。
なお、蛍光体粒子422の形成材料は、1種であっても良く、2種以上の形成材料を用いて形成されている粒子を混合したものを蛍光体粒子422として用いることとしても良い。
フィラー粒子423は、発光層42に入射する励起光および蛍光体粒子422から発せられる蛍光を拡散させる機能を有している。フィラー粒子423の形成材料としては、光透過性を有する粒子状物質であれば、樹脂材料や無機材料など広範な種類の材料を用いることができる。なかでも、高い耐熱性を有する無機材料を好適に用いることができ、例えば平均粒径が10μmのAl(屈折率:約1.8)を用いることができる。
複数の蛍光体粒子422および複数のフィラー粒子423の総体積は、発光層42の体積の35%〜45%になるように調製されている。蛍光体粒子422の体積は、必要とする蛍光の強度や蛍光の波長により設定され、フィラー粒子423の量は、総体積が発光層42の体積の35%〜45%になるように調製されている。ここで、発光層42の体積とは、複数の蛍光体粒子422の総体積と複数のフィラー粒子423の総体積と基材421の体積との和である。
図1に戻って、発光素子30は円板40の中心にモーター50が接続され、円板40の中心を通る法線を回転軸として回転可能に設けられている。モーター50は、発光素子30を使用時において例えば7500rpmで回転させる。この場合、発光素子30上の励起光が照射される領域(ビームスポット)は、約18m/秒で移動する。すなわち、モーター50は、発光素子30上におけるビームスポットの位置を変位させる位置変位手段として機能する。これにより、励起光が発光素子30上の同一の位置を照射し続けないため、照射位置の熱劣化を防止し、装置を長寿命化することができる。
コリメート光学系60は、発光素子30からの光の広がりを抑える第1レンズ62と、第1レンズ62から入射される光を略平行化する第2レンズ64とを備え、全体として発光素子30から射出された光を平行化するものである。第1レンズ62と第2レンズ64とは凸レンズで構成されている。
レンズアレイ120,130は、コリメート光学系60から射出された光の輝度分布を均一化するものである。レンズアレイ120は、複数の第1小レンズ122を含んでおり、レンズアレイ130は複数の第2小レンズ132を含んでいる。第1小レンズ122は、第2小レンズ132と1対1で対応している。コリメート光学系60から射出された光は、複数の第1小レンズ122に空間的に分かれて入射する。第1小レンズ122は、入射した光を対応する第2小レンズ132に結像させる。これにより、複数の第2小レンズ132の各々に、二次光源像が形成される。なお、第1小レンズ122,第2小レンズ132の外形形状は、液晶ライトバルブ400R,400G,400Bの画像形成領域の外形形状と略相似形となっている。
偏光変換素子140は、レンズアレイ120,130から射出された光Lの偏光状態を揃えるものである。図4に示すように、偏光変換素子140は、複数の偏光変換セル141を含んでいる。偏光変換セル141は、第2小レンズ132と1対1で対応している。第2小レンズ132に形成された二次光源像からの光Lは、この第2小レンズ132に対応する偏光変換セル141の入射領域142に入射する。
偏光変換セル141の各々には、入射領域142に対応させて、偏光ビームスプリッタ膜143(以下、PBS膜143と称する)及び位相差板145が設けられている。入射領域142に入射した光Lは、PBS膜143によりPBS膜143に対するP偏光L1とS偏光L2とに分離される。P偏光L1、S偏光L2の一方の偏光(ここではS偏光L2)は、反射部材144で反射した後、位相差板145に入射する。位相差板145に入射したS偏光L2は、位相差板145により偏光状態が他方の偏光(ここではP偏光L1)の偏光状態に変換されてP偏光L3になり、P偏光L1とともに射出される。
重畳レンズ150は、偏光変換素子140から射出された光を被照明領域にて重畳させるものである。光源装置100から射出された光は、空間的に分割された後、重畳されることにより輝度分布が均一化されて光線軸100ax周りの軸対称性が高められる。
色分離光学系200は、ダイクロイックミラー210、ダイクロイックミラー220、ミラー230、ミラー240、ミラー250、フィールドレンズ300R、フィールドレンズ300G,フィールドレンズ300B、リレーレンズ260、リレーレンズ270を含んでいる。ダイクロイックミラー210、ダイクロイックミラー220は、例えばガラス表面に誘電体多層膜を積層したものである。ダイクロイックミラー210、ダイクロイックミラー220は、所定の波長帯域の色光を選択的に反射させ、それ以外の波長帯域の色光を透過させる特性を有している。ここでは、ダイクロイックミラー210が緑色光と青色光とを反射させ、ダイクロイックミラー220が緑色光を反射させる。
光源装置100から射出された光Lは、ダイクロイックミラー210に入射する。光Lのうちの赤色光Rは、ダイクロイックミラー210を通ってミラー230に入射し、ミラー230で反射してフィールドレンズ300Rに入射する。赤色光Rは、フィールドレンズ300Rにより平行化された後に、液晶ライトバルブ400Rに入射する。
光Lのうちの緑色光Gと青色光Bとは、ダイクロイックミラー210で反射して、ダイクロイックミラー220に入射する。緑色光Gは、ダイクロイックミラー220で反射してフィールドレンズ300Gに入射する。緑色光Gは、フィールドレンズ300Gにより平行化された後に、液晶ライトバルブ400Gに入射する。
ダイクロイックミラー220を通った青色光Bは、リレーレンズ260を通りミラー240で反射した後、リレーレンズ270を通りミラー250で反射してフィールドレンズ300Bに入射する。青色光Bは、フィールドレンズ300Bにより平行化された後に、液晶ライトバルブ400Bに入射する。
液晶ライトバルブ400R,液晶ライトバルブ400G,液晶ライトバルブ400Bは、例えば透過型の液晶ライトバルブ等の光変調装置により構成される。液晶ライトバルブ400R,液晶ライトバルブ400G,液晶ライトバルブ400Bは、画像情報を含んだ画像信号を供給するPC等の信号源(図示略)と電気的に接続されている。液晶ライトバルブ400R,液晶ライトバルブ400G,液晶ライトバルブ400Bは、供給された画像信号に基づいて、入射光を画素ごとに変調して画像を形成する。液晶ライトバルブ400R,液晶ライトバルブ400G,液晶ライトバルブ400Bは、それぞれ赤色画像、緑色画像、青色画像を形成する。液晶ライトバルブ400R,液晶ライトバルブ400G,液晶ライトバルブ400Bにより変調された光(形成された画像)は、色合成素子500に入射する。
色合成素子500は、ダイクロイックプリズム等により構成される。ダイクロイックプリズムは、4つの三角柱プリズムが互いに貼り合わされた構造になっている。三角柱プリズムにおいて貼り合わされる面は、ダイクロイックプリズムの内面になる。ダイクロイックプリズムの内面に、赤色光が反射し緑色光が透過するミラー面と、青色光が反射し緑色光が透過するミラー面とが互いに直交して形成されている。ダイクロイックプリズムに入射した緑色光は、ミラー面を通ってそのまま射出される。ダイクロイックプリズムに入射した赤色光、青色光は、ミラー面で選択的に反射あるいは透過して、緑色光の射出方向と同じ方向に射出される。このようにして3つの色光(画像)が重ね合わされて合成され、合成された色光が投写光学系600によってスクリーンSCRに拡大投写される。
次に、図5を用いて発光層42の内部での光の挙動について説明する。図5は、発光層42の内部での光の挙動を示す模式図であり、図5(a)は、ある蛍光体粒子422aに照射された励起光である青色レーザー光(青色光Lb)について、図5(b)は、蛍光体粒子422aで発せられる蛍光Lyについて、それぞれ挙動を例示した図である。また、図中で青色光Lbまたは蛍光Lyを示す矢印の長さは、各光の光量を表している。
(青色光)
図5(a)に示すように、蛍光体粒子422aに照射されたにも関わらず吸収されなかった青色光Lbのうち、一部は蛍光体粒子422aの表面で反射され、残りは蛍光体粒子422aの内部を透過する。蛍光体粒子422の屈折率は、周りの基材421の屈折率と異なるため、蛍光体粒子422aを透過する光は、蛍光体粒子422aの表面で屈折し、該反射した成分と合わせて青色光Lbの散乱に寄与する。
このとき、蛍光体粒子422やフィラー粒子423の平均粒径(10μm)は、青色光Lbの波長(約445nm)に比べて10倍以上大きいため、蛍光体粒子422やフィラー粒子423で生じる散乱は幾何光学散乱となる。幾何光学散乱は、後方散乱が前方散乱と比較して非常に小さくなる特徴を有するため、発光層42に入射した青色光Lbが後方に向けて反射または屈折することによって損失する確率は小さい。
青色光Lbのうち前方に散乱した成分は、他の蛍光体粒子422やフィラー粒子423に当たる度に屈折・反射を繰り返す。その際、青色光Lbは、蛍光体粒子422に当たる度にその一部は蛍光体粒子422に吸収され、蛍光Lyに変換されるか熱に変わる。
ここで、発光層42内にフィラー粒子423が無かった場合、発光層42の内部で散乱する青色光Lbは、蛍光体粒子422に照射される際の蛍光Lyや熱への変換により減少する。対して、発光層42に入射する青色光Lbの光線軸方向に透過する成分は、蛍光体粒子422に照射されない成分、すなわち蛍光Lyや熱への変換により減少しない成分を含む。そのため、発光層42を透過した後の青色光Lbの配光特性は、入射光の光線軸方向に強度が大きく、放射角が非常に小さい、という特徴を持つ。
これに対し本実施形態では、発光層42に青色光Lbを吸収せず反射・屈折のみを生じさせるフィラー粒子423を添加している。フィラー粒子423で散乱する青色光Lb(図中、符号αで示す)は減少しないことから、入射光の光線軸方向に射出される青色光Lbの強度を低下させ、拡散する青色光Lbの増大に寄与することができる。
また、フィラー粒子423の平均粒径を青色光Lbの波長(約445nm)の10倍以上にすることにより、フィラー粒子423による散乱は幾何光学散乱となる。そのため、光の利用効率をさらに高めることができる。
蛍光体粒子422の平均粒径が後方散乱の前方散乱に対する割合に及ぼす影響が、フィラー粒子423の平均粒径が後方散乱の前方散乱に対する割合に及ぼす影響と同様であることは言うまでもない。
さらに、レーザー光である青色光Lbは、可干渉性を有するために、変調された画像がスクリーン投影される際に、スクリーン上にスペックルノイズといわれる干渉縞を生じ、映像の品質を著しく劣化させるおそれがある。しかし、本実施形態では、青色光Lbがフィラー粒子423で散乱し、さらに、フィラー粒子423が包埋されている発光層42は、円板40の法線周りに回転している。そのため、発光層42を透過する青色光Lbは動的な光散乱が加えられ、映像のスペックルノイズが低減する効果も得られる。
(黄色光)
発光層42に入射した青色光Lbのうち、発光層42内部の蛍光体粒子422に照射された成分の一部は蛍光体粒子422に吸収され、一部が熱に変わる。残りの成分は蛍光体粒子422を構成する蛍光体の電子を励起する。そして、励起された電子が基底状態に戻る際に、蛍光Lyが放出される。蛍光Lyは青色光Lbよりも長波長の光である。発光した蛍光Lyは、蛍光体粒子422から全方位に等方的に放射される。
発光層42内で発光した蛍光Lyは、励起光の青色光Lbと異なり、発光点である蛍光体粒子422aから全方位に等方的な配光特性で発光する。発光層42と不図示の円板40との間には、黄色を反射する波長選択膜44が存在するため、後方に向けて射出される蛍光Lyは前方に向けて反射される。しかし一方で、蛍光Lyは、外部から指向性を持って入射される青色光Lbとは異なり、蛍光体粒子422aから全方位に射出されるため、発光層42の内部を面内方向に伝播しやすく、発光層42の外側に出て行きにくい。
本実施形態の発光素子30では、蛍光体粒子422やフィラー粒子423は、基材421よりも屈折率が高いため、蛍光Lyは蛍光体粒子422やフィラー粒子423の表面で全反射し難く、各粒子の内部を通過して屈折によって散乱され、光路が変化する機会を持つ。蛍光Lyが発光層42の内部を面内方向に伝播すると、蛍光体粒子422の表面やフィラー粒子423の表面で反射および屈折して光路が変化する確率が高くなる。そのため、発光層42の面内方向に蛍光Lyが伝播するにつれて、発光層42の外に向かう成分(図中、符号αで示す)が増加する。言い換えれば、発光層42の面内方向に蛍光Lyが伝播するにつれて、発光層42の内部を面内方向に伝播する成分が減少する。
すなわち、発光層42内にフィラー粒子423を加えることで、蛍光Lyの散乱源を増やし、発光層42の外に向かう成分を増加させることにより、蛍光Lyが発光層42の内部を面内方向に伝播する平面視における距離を短くすることができる。その結果、蛍光Lyが射出されるスポット径を小さくすることができる。
なお、発光層42の内部を面内方向に伝播する蛍光Lyを完全に除去することはできないため、発光層42上の蛍光Lyのスポット径は、青色光のビームスポット径よりも大きくなってしまう。発光層42における蛍光Lyのスポット径の拡大は、発光層42の膜厚を薄くすること、および蛍光体粒子422およびフィラー粒子423の濃度を高くすることで抑えることができる。例えば、発光層42の厚さを100μmとし、複数の蛍光体粒子422の総体積を発光層42の体積の30%とし、複数のフィラー粒子423の総体積を発光層42の体積の10%としたとき、蛍光Lyのスポット径は70μm程度となる。
(粒子の添加量)
ここで、発光層42中の蛍光体粒子422やフィラー粒子423の濃度を上げていくと、青色光Lbが蛍光体粒子422またはフィラー粒子423に当たる確率がさらに増える。すると、波長選択膜44側に反射・屈折する青色光Lbが増加し、前方に射出されない光を増やす結果につながってしまう。
実験の結果、複数の蛍光体粒子422および複数のフィラー粒子423の総体積が、発光層42の体積の35%以上であるときに、発光層42を透過する青色光Lbの配光特性が(cosθ)に比例する特性を有することが分かった。発光層42を透過する青色光Lbこのような特性を有する場合、図1に示すコリメート光学系60によって効率的に青色光Lbを受光できるようになり、スクリーン上での青色光Lbの均一化に寄与することができる。
逆に複数の蛍光体粒子422および複数のフィラー粒子423の総体積が過多である場合、後方散乱が増え、発光層42から前方に射出される青色光Lbや蛍光Lyの量が減ってしまう。実験では、複数の蛍光体粒子422および複数のフィラー粒子423の総体積が、発光層42全体の体積の45%を超えるときに、発光層42に入射する青色光の全量に対する、後方散乱する青色光の光量の割合が5%を超えることが分かった。したがって、複数の蛍光体粒子422および複数のフィラー粒子423の総体積が、発光層42全体の体積の35%以上45%以下となるように、フィラー粒子423の添加量を決定することが好ましい。
(粒子の屈折率)
また、発光層42による青色光Lbの後方散乱量は、発光層42の内部に含まれる粒子の屈折率に影響されることが分かった。例えば、フィラー粒子423にZrOやTiOのような屈折率が2を超える高屈折率材料を用いた場合、後方散乱量は10%を超える。また、発光層42の内部に含まれる粒子の屈折率が基材421の材料の屈折率に対して1.3倍よりも大きくなると、後方散乱量は大きく増大することがわかった。また、発光層42の内部に含まれる粒子の屈折率が基材421の材料の屈折率に対して1.2倍よりも小さくなると、後方散乱量は小さくなるが、屈折率差が十分ではなく、目的とする光の散乱を生じさせることが難しくなることがわかった。
したがって、蛍光体粒子422の屈折率やフィラー粒子423の屈折率が、基材421の材料の屈折率に対して1.2倍以上かつ1.3倍以下であれば、青色光Lbの後方散乱を小さく抑えつつ効果的に前方散乱を促進して、色ムラを抑制することができる。また、蛍光Lyの光の散乱を効果的に促進して、エテンデューの増加を抑制し、光の利用効率を高めることができる。
(発光層の膜厚)
発光層42の膜厚が薄いほど、発光層42の膜厚方向に足し合わせた蛍光体粒子422の量は、発光層42の位置によるばらつきが大きい。このことは、発光層42の膜厚が薄いほど、青色光Lbが発光層42を膜厚方向に通過する際に青色光Lbが照射される蛍光体粒子422の量は、発光層42の位置によるばらつきが大きいということを意味する。その結果、射出光に含まれる青色光Lbと蛍光Lyとの割合の発光層42の面内でのばらつきが大きくなる。したがって、発光層42が薄いほど、蛍光Lyのスポット径の拡大を抑えることができるものの、一方で発光層42から射出される光の色度を制御し難くなる。
また、蛍光体粒子422の平均粒径の略5倍程度まで発光層42を薄くすると、膜厚制御を行うことが極端に困難になり、同様に射出光の色度を制御しにくくなる。
これに対し本実施形態では、発光層42の厚さを100μmにすることによって、xy色度図における色度バラツキをΔx、Δyともに0.02以内に抑えている。
以上のような構成の光源装置100によれば、直進性が高い青色光Lb(励起光)は発光層42の内部において蛍光体粒子422やフィラー粒子423の表面で一部が反射・屈折することで散乱し拡散する。そのため、直進性が高い励起光は、フィラー粒子423を含まない場合よりも大きく拡散して広がり、蛍光Lyの広がりに近づく。
また、蛍光体粒子422から等方的に発せられる蛍光も、発光層42の内部において蛍光体粒子422やフィラー粒子423の表面で一部が反射・屈折することで散乱され、光源装置100の射出面の方向へ進行する蛍光の成分が増加する。そのため、フィラー粒子423を含まない場合と比較して、蛍光Lyが光源装置100の射出面と平行な方向に発光層42の内部を伝播する平面視における距離を抑制することができ、発せられる蛍光Lyのスポット径の拡大を抑制することができる。
その結果、発光層42を透過した青色光Lbの配光特性と発光層42から射出される蛍光Lyの配光特性との相違に起因する色ムラが抑制され、光の利用効率が高い光源装置100とすることが可能となる。
また、以上のような構成のプロジェクターPJによれば、被投射面における色ムラが抑制されて高品質な画像表示が可能なプロジェクターPJとすることができる。
なお、本実施形態においては、発光素子30に青色の励起光を照射し、黄色の蛍光が発せられることとして説明したが、これに限らず、種々の色の励起光と蛍光との組み合わせを適宜選択することができる。
また、本実施形態においては、モーター50を用いて発光素子30を回転運動させ、青色光の集光位置が同一箇所にならないようにすることとしたが、これに限らない。例えば電歪素子のような振動素子を発光素子30に取り付け、発光層42に面方向に平行な方向に振動させることにより、集光位置を変位させる構成とすることもできる。
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態に係る光源装置の説明図であり、第2実施形態の光源装置が有する発光素子の説明図である。図6(a)は側面図、図6(b)は発光素子70の概略断面図である。本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図6(a)(b)に示すように、発光素子70は、内部に蛍光体粒子とフィラー粒子とが分散した円板71と、円板71における青色光Lbの入射面に設けられた波長選択膜72と、円板71における光L(青色光Lbと蛍光Lyとが混色した光)の射出面に設けられた反射防止膜73と、を有している。なお、本実施形態では、円板71が、第1実施形態の発光素子30における円板40と発光層42との機能を兼ねている。
円板71は、図6(b)に示すように、光透過性を有する基材711と、蛍光を発する複数の蛍光体粒子422と、光透過性を有する粒子状の物質である複数のフィラー粒子423と、を有している。
基材711は、光透過性を有する無機材料を用いることができ、例えば、ホウ珪酸ガラス(屈折率:約1.5)のような光学ガラスを好適に用いることができる。
波長選択膜72は、第1実施形態の発光素子30が有する波長選択膜44と同様の構成のものを用いることができる。波長選択膜72は、青色光を透過し、青色光よりも長波長の光(例えば、480nmよりも長波長の光)を反射する波長選択性を有している。
反射防止膜73は、円板71から射出される光を効率的に外部に射出可能とするために、円板71と空気層との界面における反射を抑制する機能を有している。反射防止膜73としては、通常知られた構成のものを採用することができ、例えば、SiO、TiO、ニオブ酸などの誘電体を原料として、真空プロセスにおいて誘電体多層膜を形成することにより形成することができる。
このように、発光素子70では、円板71の表面に波長選択膜72や反射防止膜73が設けられている。第1実施形態の発光素子30が有する発光層42は、蛍光体粒子やフィラー粒子を包埋する基材421として樹脂材料(樹脂組成物)を採用していたため、形成が容易であるという利点を有する反面、基材421が真空プロセスで損傷するおそれがあるため、発光層42の形成後に誘電体多層膜を形成することは困難であった。
しかし、発光素子70では、円板71において蛍光体粒子やフィラー粒子を包埋する基材711が無機材料であるため、真空プロセスで損傷することなく、円板71の形成後に誘電体多層膜を設けることができ、円板71の両面に波長選択膜72と反射防止膜73とを設けることができる。
このような発光素子70は、例えば、次のようにして製造する。
まず、基材711となるガラス材料をフリット(粉体状)材として、蛍光体粒子422およびフィラー粒子423と混合する。これらの混合は、乾式或いは湿式のいずれの方法も採用することができる。
次いで、混合した粉体を、例えば、室温から50℃までの温度条件でプレスを行って押し固め、板状に加工した後、フリット材のガラスが熔ける温度で焼成を行い、フリット材、蛍光体粒子422、フィラー粒子423の混合物を焼結させる。これにより、蛍光体粒子422およびフィラー粒子423が内部に均一に分散した板材が得られる。この板材を円形に加工して、円板71を製造する。
次いで、得られる焼結体について、両面を研磨して表面を平坦化するとともに、全体を目的の厚みに近づける。発光素子70においては、円板71が薄いほど全体が軽量化され、駆動のための動力も少なくて済むことから好ましい。しかし一方で、薄すぎると発光素子70全体の強度を確保することが困難となる。そのため、円板71の材料である焼結体の厚みは、100μm以上500μm以下、より好ましくは100μm以上300μm以下程度にする。
次いで、目的の円板形状となるように、例えば砥粒ホーン加工等を行う。その後、加工された円板の両表面に鏡面化加工を行い、一方の面には波長選択膜72を形成し、他方の面には反射防止膜73を形成することにより、目的とする発光素子70を得ることができる。
以上のような発光素子70を有する光源装置においても、上述の光源装置100と同様に、円板71を透過した青色光Lbの配光特性と円板71から射出される蛍光Lyの配光特性との相違に起因する色ムラが抑制され、光の利用効率が高い光源装置とすることが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
以下、モデルサンプルを用いて測定した実施例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例では、シリコーン樹脂と発光体粒子(YAG:Ce)とフィラー粒子とを混合した混合物を、ガラス板上に設けられた波長選択膜44の上に塗布し、シリコーン樹脂を硬化させることにより、上記実施形態における発光素子のモデルサンプルを作製した。
(配光特性の評価方法)
図7に示すような配光測定システム1000(光源配光測定システムIS−LI、CYBERNET SYSTEMS社製)を用いた。
モデルサンプルSを、内部が反射材質でコーティングされたドーム1100の壁面に配置し、レーザー光源1200から射出され平行化レンズ1300で平行化された励起光MBを、スリット1400を介してモデルサンプルSに照射した。モデルサンプルSにおいては、ガラス板SA側から発光層SBに励起光MBを照射し、ドーム1100内に設けられた不図示の測定プローブで透過光の配光分布を測定した。
測定においては、まず透過光の全光について配光分布を測定し、次いで等色関数の青色光のフィルターを介して透過光の配光分布を測定して、これらの差分から透過光に含まれる青色光の配光分布を求めた。
(後方散乱率の測定方法)
図8に示す測定装置2000を用いた。
モデルサンプルSを、内部が反射材質でコーティングされた積分球2100の壁面に配置し、レーザー光源2200から射出され導波路2300により導かれる励起光をモデルサンプルSに照射した。モデルサンプルSにおいては、ガラス板SA側から発光層SBに励起光を照射し、積分球2100内に設けられた測定プローブ2400で後方散乱光の量を測定した。バッフル2500は、モデルサンプルSの後方散乱光が直接測定プローブに入射しないように遮光するためのものである。
測定においては、後方散乱光の光量を測定し、照射する励起光の光量で除算することで、後方散乱率を求めた。
(発光層における蛍光の広がりの測定方法)
図9に示す測定装置3000を用いた。
レーザー光源3100から射出され平行化レンズ3200で平行化された励起光MBを、スリット3300の手前に配置したモデルサンプルSに照射した。モデルサンプルSにおいては、ガラス板SA側から発光層SBに励起光MBを照射した。透過光は、青色光を反射するダイクロイックミラー3400を透過させた後に、減光フィルターを備えた撮像装置3500で撮像し、モデルサンプルS上の蛍光のスポット径を測定した。
同様に、モデルサンプルSとダイクロイックミラー3400とを用いず、励起光を直接撮像装置3500で撮像し、励起光のスポット径を測定した。
(フィラーの粒子径)
フィラーの粒子径が互いに異なる複数のモデルサンプルを作製し、後方散乱との関係について測定した。測定条件を表1に示し、測定結果を表2に示す。表中、蛍光体粒子の体積比は、作製した発光層全体の体積に対する複数の蛍光体粒子の総体積の比であり、フィラー粒子の体積比は、作製した発光層全体の体積に対する複数のフィラー粒子の総体積の比である。
Figure 2012083695
Figure 2012083695
測定の結果、フィラー径が5μmよりも小さいと、後方散乱率が増加する傾向にあることが分かった。そのため、フィラー径が5μm以上であれば、光の利用効率が高い光源装置100とすることが可能となる。
ここでは、フィラー粒子423の径と後方散乱率との関係について説明したが、蛍光体粒子422の径と後方散乱率との関係についても、同様な結果が得られる。
(フィラーの添加率)
フィラーの添加率が互いに異なる複数のモデルサンプルを作製し、各物性値との関係について測定した。測定条件を表3に示す。
Figure 2012083695
図10は、フィラーの添加率を変更した場合の青色光の配光分布について示すグラフである。図に示すように、フィラー濃度が高いほど青色光は拡散する傾向があることが分かる。また、フィラーの濃度が5%より少ないと配光特性が(cosθ)のカーブより若干小さくなることが分かった。なお、フィラーの濃度が5%の場合、複数の蛍光体粒子422および複数のフィラー粒子423の総体積は、発光層42全体の体積の35%である。
また下表4には、フィラーの添加率を変更した場合の後方散乱率の測定結果を示す。表に示す結果からは、フィラーの濃度が15%を超えると、後方散乱率が5%を超えて増加する傾向にあることが分かった。なお、フィラーの濃度が15%の場合、複数の蛍光体粒子422および複数のフィラー粒子423の総体積は、発光層42全体の体積の45%である。従って、複数の蛍光体粒子422および複数のフィラー粒子423の総体積は、発光層42全体の体積の35%以上45%以下であることが好ましい。
Figure 2012083695
(フィラーの屈折率)
フィラーの屈折率が互いに異なる複数のモデルサンプルを作製し、後方散乱率との関係について測定した。測定条件を表5に、測定結果を表6に、幾何光学散乱のレイトレーシングシミュレーションにより求めたシミュレーション結果を表7にそれぞれ示す。
Figure 2012083695
Figure 2012083695
Figure 2012083695
測定の結果、フィラー粒子の屈折率がおよそ2を超えると、後方散乱率が増加する傾向にあることが分かった。シミュレーション結果からもフィラー粒子の屈折率が基材の屈折率の1.3倍よりも高くなると、後方散乱率が5%を超えて増加する傾向が見て取れる。
ここでは、フィラー粒子423の屈折率と後方散乱率との関係について説明したが、蛍光体粒子422の屈折率と後方散乱率との関係についても、同様な結果が得られる。
(発光層の膜厚)
発光層の膜厚が互いに異なる複数のモデルサンプルを作製し、スポット径との関係について測定した。測定条件は表5と同様である。表8に、蛍光のスポット径の拡大量と発光層42の膜厚との関係を示す。
Figure 2012083695
表8に示すように、膜厚が増加すると、励起光のスポット径と比べて蛍光のスポット径が大きくなる傾向にあることが分かった。したがって、発光層42の膜厚が、蛍光体粒子422の平均粒子径の10倍以下の厚さであれば、発せられる蛍光のスポット径の拡大を抑制することができる。
10…レーザー光源、30,70…発光素子(発光手段)、42…発光層、44,72…波長選択膜、71…円板(発光層)、100…光源装置、400R,400G,400B…液晶ライトバルブ(光変調素子)、421,711…基材、422…蛍光体粒子、423…フィラー粒子、600…投写光学系、Ly…蛍光(蛍光)、Lb…青色光(励起光)、PJ…プロジェクター、

Claims (15)

  1. 可視光領域の励起光を射出するレーザー光源と、
    前記励起光の一部を透過させるとともに、前記励起光によって励起されて可視光領域の蛍光を発する発光素子と、を備え、
    前記発光素子は、光透過性を有する基材と、該基材の内部に含まれる複数の蛍光体粒子と、該基材の内部に含まれる光透過性を有する複数のフィラー粒子と、を含む発光層を有することを特徴とする光源装置。
  2. 前記複数のフィラー粒子の平均粒子径は、前記励起光を幾何光学散乱させる大きさであることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
  3. 前記複数のフィラー粒子の平均粒子径は、5μm以上であることを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
  4. 前記複数の蛍光体粒子の平均粒子径は、前記励起光を幾何光学散乱させる大きさであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光源装置。
  5. 前記複数の蛍光体粒子の平均粒子径は、5μm以上であることを特徴とする請求項4に記載の光源装置。
  6. 前記発光層の膜厚が、前記複数の蛍光体粒子の平均粒子径の10倍以下の厚さであることを特徴とする請求項4または5に記載の光源装置。
  7. 前記複数のフィラー粒子は、前記基材の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料からなることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光源装置。
  8. 前記複数のフィラー粒子は、前記基材の屈折率の1.2倍以上1.3倍以下である屈折率を有する材料からなることを特徴とする請求項7に記載の光源装置。
  9. 前記複数の蛍光体粒子は、前記基材の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料からなることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光源装置。
  10. 前記複数の蛍光体粒子は、前記基材の屈折率の1.2倍以上1.3倍以下である屈折率を有する材料からなることを特徴とする請求項9に記載の光源装置。
  11. 前記複数の蛍光体粒子および前記複数のフィラー粒子の総体積が、前記発光層の体積の35%以上45%以下であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の光源装置。
  12. 前記発光素子は、前記発光層において前記励起光が入射する側の面に、前記励起光を透過し前記蛍光を反射する波長選択膜を有することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の光源装置。
  13. 前記基材の形成材料が、樹脂組成物であることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の光源装置。
  14. 前記基材の形成材料が、無機材料からなることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の光源装置。
  15. 請求項1から14のいずれか1項の光源装置と、前記光源装置から射出される光を変調する光変調素子と、前記光変調素子によって変調された光を投写する投写光学系と、を備えることを特徴とするプロジェクター。
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