本開示に係るレーザ発光装置の一例としての実施例1のレーザ発光装置10を、図1から図4を用いて説明する。併せて、その一例としてのレーザ発光装置10を備えるエンジン点火プラグシステムの一例としての実施例1のエンジン点火プラグシステム40について説明する。なお、図1では、エンジン点火プラグシステム40の構成の理解を容易とすべくレーザ発光装置10を省略して示す。また、図2では、レーザ発光装置10の構成の理解を容易とすべく外装部材28を省略して示す。さらに、図2から図4では、レーザ発光装置10の構成の理解を容易なものとすべく各部の構成を模式的に示す。
本開示に係るレーザ発光装置としての一実施形態の実施例1のレーザ発光装置10は、図1に示すように、エンジン点火プラグシステム40を構成して、内燃機関の一例としてのエンジン41の点火に用いられる。そのエンジン41は、吸気管42に吸気バルブ43が設けられ、排気管44に排気バルブ45が設けられ、燃焼室46がピストン47等により区画されて構成される。その吸気バルブ43および排気バルブ45は、それぞれに接続されたカム48により進退動作されることで、吸気管42または排気管44を適宜開閉する。燃焼室46は、その周壁部に設けられた冷却水路49に供給される冷却水51により冷却される。そして、燃焼室46には、点火プラグ52が設けられる。
その点火プラグ52は、レーザ発光装置10から出射されるレーザ光を用いて着火するもので、優れた着火効率を有する内燃機関用の点火プラグである。点火プラグ52では、レーザ発光装置10からのレーザ光をQスイッチ式のレーザ媒質を含むレーザ共振器に照射してジャイアントパルスを発振させる。また、点火プラグ52では、そのパルス光を集光レンズ等の光学素子を用いてエンジン41の燃焼室46に集光してエアブレークダウンを発生させることで、燃焼室46内の混合気の着火を行う。このため、点火プラグ52には、レーザ発光装置10の後述する光ファイバ13の他端(その出射端面13b)が接続される。
このレーザ発光装置10は、エンジン41の近傍で固定されて設けられ、実施例1では、後述する冷却装置30としてのヒートシンク32がエンジン41の外径を形作るエンジン外郭部53に取付支持部を介して固定されて設けられる。その取付支持部は、エンジン外郭部53と一体に形成してもよく、エンジン外郭部53とは別体に形成してもよく、ヒートシンク32と一体に形成してもよい。
レーザ発光装置10は、図2および図3に示すように、筐体11に導電体としての各電線12と光ファイバ13とを接続して構成する。このレーザ発光装置10では、各電線12(導電体)を介して電力を供給すると、光ファイバ13を通して高い強度のレーザ光を出力する。その筐体11は、一端が開放された箱状を呈するレンズ保持部材14と、全体に板状を呈する熱拡散板15と、を備え、レンズ保持部材14の開放端を塞ぐように熱拡散板15を取り付けて構成する。
そのレンズ保持部材14は、図3に示すように、全体に中空の直方体形状を呈し、その一端(14a)を開放し、その開放端面14aを同一平面上に位置させて形成する。レンズ保持部材14は、後述する集光レンズ23を保持する保持部材であり、その保持する集光レンズ23よりも高い熱伝導率を有するものとする。このレンズ保持部材14は、例えば、鉄や銅やステンレス等の金属材料を用いて形成し、実施例1では一例としてアルミニウムを用いて形成する。レンズ保持部材14には、開放側とは反対側の奥壁14bにレンズ保持穴16を設け、奥壁14bと直交する下壁14cに2つの電線挿入穴14d(図3では一方のみ示す)を設ける。その両電線挿入穴14dは、電線12を通す箇所であり、密閉性を保ちつつ電線12を通す。
レンズ保持穴16は、後述する集光レンズ23を保持する箇所であり、その集光レンズ23を嵌め入れ可能な大内径部16aと、そこに嵌め入れた集光レンズ23の脱落を防止すべく大内径部16aよりも小さな内径寸法の小内径部16bと、を有する。その大内径部16aでは、レンズ保持穴16の中心軸線を取り囲んで内周を規定する内側面16cを当該中心軸線と平行な面とすることで、嵌め入れた集光レンズ23の後述する外側面23cとの面接触を可能とする。また、大内径部16a(その内側面16c)は、レンズ保持穴16の中心軸線が伸びる方向で見た寸法を、その中心軸線が伸びる方向で見た集光レンズ23の外側面23cの寸法よりも大きくする。このため、内側面16c(その面積)は、面接触可能とされた外側面23c(その面積)よりも大きくなる。レンズ保持穴16では、大内径部16aと小内径部16bとの段差により奥端面16dを形成し、その奥端面16dをレンズ保持穴16の中心軸線に直交する平面とする。このレンズ保持部材14の開放端(開放端面14a)に熱拡散板15を取り付ける。
その熱拡散板15は、後述するレーザアレイチップ21の筐体11内での位置決めをすべく当該レーザアレイチップ21を設けるベース部材である。熱拡散板15は、設けたレーザアレイチップ21で発生する熱を効率的に拡散する機能を有する熱拡散部材であり、レーザアレイチップ21の冷却のための十分な吸熱面積を確保する大きさとする。この熱拡散板15は、実施例1では、その周縁部をレンズ保持部材14の開放端面14aに面接触させつつレンズ保持部材14の開放端を塞ぐことのできる大きさの平板状を呈する。熱拡散板15は、保持部材としてのレンズ保持部材14以上(同じかそれよりも高い)の熱伝導率を有するものとし、例えば金属材料等の熱伝導率(熱伝導性)の高い材料を用いて形成し、実施例1では銅を用いて形成する。
この熱拡散板15には、図1、図3、図4に示すように、後述するレーザアレイチップ21の実装(配置)のためのマウント部17を設ける。そのマウント部17は、実施例1では、熱拡散板15上に絶縁層を設け、その上に互いに接しないように複数の導通層を適宜設けて構成する。その絶縁層は、例えば、窒化アルミニウム(AlN(aluminum nitride))を用いて形成し、導通層は、例えば、銅(Cu)を用いて形成する。マウント部17では、熱拡散板15上において、絶縁層により互いに絶縁された複数の導通層でレーザアレイチップ21に対する回路を形成する。また、マウント部17には、レーザアレイチップ21を位置決めする位置決め部を設ける。この位置決め部は、レーザアレイチップ21の所定の箇所と接して位置決めすれば、突起で構成してもよく、凹所で構成してもよい。
熱拡散板15には、図3、図4に示すように、絶縁部材18を設ける。その絶縁部材18は、熱拡散板15に対する電気の伝導を断ちつつ、各電線12および後述する各電極片19を取り付ける箇所を構成する。絶縁部材18は、実施例1では、少なくともマウント部17よりも弾性変形し易い材料(弾性率の低い材料)で形成し、より好適には各電極片19を取り付けた際の当該各電極片19からの応力による変形量を吸収するものとする。この変形量の吸収は、材料における弾性率を考慮しつつ寸法および形状を設定することで可能となる。この絶縁部材18は、実施例1では、絶縁性を有する樹脂材料を用いて形成し、一例としてPOM(ポリオキシメチレン(polyoxymethylene))を用いて形成する。この絶縁部材18は、直方体形状を呈し、後述するように各電極片19と各電線12とを電気的に接続しつつそれらを熱拡散板15に取り付ける箇所を構成する。この絶縁部材18には、後述するネジ26の締め付け固定のための固定ネジ穴18a(図4参照)を形成し、各電極片19および各電線12の取り付けを可能とする。
その各電線12および各電極片19は、マウント部17に設けるレーザアレイチップ21に電力を供給するために、互いに電気的に接続されて絶縁部材18に取り付けられる。後述するように、各電線12は、外部の電源装置に接続され、各電極片19は、マウント部17を介してレーザアレイチップ21に接続される。実施例1では、後述するようにレーザアレイチップ21が100(A)以上の高電流の入力を想定しているため、各電線12および各電極片19は、十分な断面積を有するものとする。これに伴い、各電線12では、固定のために大きな力が作用するので、一例として先端にリング状の接続端子12aを設ける。また、各電極片19は、導電性材料から為る長尺な板状を呈し、基端に取付穴19a(図4参照)を有する取付片部19bを設ける。この各電極片19は、後述するように、取付片部19bが絶縁部材18に取り付けられるとともに、その取付片部19bとは反対側の先端部19cがマウント部17に押し当てられる。
そのマウント部17に設けられるレーザアレイチップ21は、一例として複数の面発光型レーザを配列させて構成する。レーザアレイチップ21は、実施例1では、複数の垂直共振器面発光レーザ(VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER))を適宜配置して構成する。その各VCSELは、円筒状の活性領域と薄膜活性層を挟む反射鏡とから構成され、主面と直交する方向に形成された共振器からレーザ光を出射する。各VCSELは、VCSELアレイ基板にフォトマスクを被膜し、そのフォトマスクのパターンニングに従って形成する。このような構成であるので、レーザアレイチップ21では、各VCSELから適切にレーザ光を出射させるために、高電流(この例では100(A)以上のパルス電流)の入力を要する。これにより、レーザアレイチップ21では、小さな寸法であっても高い強度(光量)のレーザ光を出力できる。
レーザアレイチップ21では、所定の電力が供給されると、各VCSELからのレーザ光を出射面21aから出射する。このレーザアレイチップ21は、所定の箇所をマウント部17の位置決め部に押し当てて位置決めして、当該マウント部17に配置する。そして、レーザアレイチップ21は、ワイヤボンディングあるいはフリップチップボンディング等により、マウント部17に形成された回路と電気的に接続して当該マウント部17に実装する。これにより、レーザアレイチップ21は、ベース部材としての熱拡散板15(そのマウント部17)に正確に位置決めして設けられ、両電線12および各電極片19を介する電力の供給が可能となる。なお、レーザアレイチップ21は、マウント部17の位置決め部に押し当てることに変えて、アライメントマーク等を顕微鏡で見ながら位置決めしてマウント部17に設ける構成でもよい。このレーザアレイチップ21からのレーザ光の出射方向にコリメータレンズ22を設ける(図3参照)。
そのコリメータレンズ22は、図3に示すように、レーザアレイチップ21(その出射面21a)から発散光束として出射されるレーザ光を平行光束(実際には緩い発散光束)とする。コリメータレンズ22は、実施例1では、レーザアレイチップ21における各VCSELに対応させて複数のマイクロレンズを設けてレンズアレイを形成して構成する。このコリメータレンズ22は、レーザアレイチップ21と一体の構成としてもよく、レーザアレイチップ21とは別体の構成としてマウント部17(熱拡散板15)やレンズ保持部材14に設けてもよい。なお、コリメータレンズ22は、レーザアレイチップ21から出射されるレーザ光を平行光束とすれば、他の構成でもよく実施例1の構成に限定されない。このコリメータレンズ22を経た平行光束としてのレーザ光の進行方向に集光レンズ23を設ける。
その集光レンズ23は、ガラス材料から形成され、コリメータレンズ22を経た平行光束としてのレーザ光を集光して、光ファイバ13の入射端面13aに入射させる。このため、実施例1では、集光レンズ23が、レーザアレイチップ21から出射されるレーザ光を所定の位置としての入射端面13a(光ファイバ13)に集光する集光レンズとして機能する。この集光レンズ23は、実施例1では、コリメータレンズ22側を凸面23aとしかつその反対側を平面23bとする平凸形状としており、その光軸を取り囲みつつ凸面23aと平面23bとを繋ぐ外側面23cを当該光軸に平行な面とする。集光レンズ23では、凸面23a、平面23bおよび外側面23cからなる外表面に反射防止処理膜23dを設けている。その反射防止処理膜23dは、フレネル反射による光量の減少を防止するものであり、実施例1では、ARコーティングを施して形成する。
この集光レンズ23は、実施例1では、レンズ保持部材14の奥壁14bのレンズ保持穴16に位置決めされて設けられる。詳細には、集光レンズ23は、レンズ保持穴16の大内径部16aに平面23b側から挿入し、外側面23cを大内径部16aの内側面16cに面接触させつつ集光レンズ23の平面23bをレンズ保持穴16の奥端面16dに面接触させる。これにより、集光レンズ23は、光軸をレンズ保持穴16の中心軸線に一致させた状態で、その光軸(中心軸線)が伸びる方向で見たレンズ保持穴16内での位置が決められる。そして、集光レンズ23の後(コリメータレンズ22側)から押えリング24をレンズ保持穴16(大内径部16a)に挿入し、その押えリング24を集光レンズ23の凸面23aに押し当てつつ固定することで、集光レンズ23をレンズ保持穴16に固定して保持させる。これにより、集光レンズ23は、保持部材としてのレンズ保持部材14に正確に位置決めされて設けられる。この集光レンズ23を経た集光光束としてのレーザ光の進行方向に、光ファイバ13(その入射端面13a)を設ける。なお、押えリング24および小内径部16b(奥端面16d)は、集光レンズ23における有効径(有効光束径)の外側位置に接触可能な径寸法としている。
光ファイバ13は、図3に示すように、一端を入射端面13aとしかつ他端を出射端面13b(図1参照)として、入射端面13a(一端)に入射されたレーザ光を出射端面13b(他端)から出射する。その他端(出射端面13b)は、例えば、レーザ加工機やレーザを利用したエンジン用の点火プラグ等の外部のレーザ使用機器に接続され、実施例1では上述したように点火プラグ52(図1参照)に接続される。この光ファイバ13は、光ファイバ支持部材25に支持されてレンズ保持部材14に取り付けられる。
その光ファイバ支持部材25は、大きな径寸法の円筒状の取付基部25aと、そこと中心軸線を一致させた小さな径寸法の円筒状の支持筒部25bと、を有する。その取付基部25aは、奥壁14bのレンズ保持穴16を塞ぐ外形寸法とする。支持筒部25bは、光ファイバ13を嵌め入れる内径寸法とし、実施例1では、密閉性を保ちつつ光ファイバ13を通す構成とする。光ファイバ支持部材25は、支持筒部25bに光ファイバ13を嵌め入れた状態でレンズ保持部材14(その奥壁14b)に固定する。すると、光ファイバ支持部材25は、光ファイバ13(その入射端面13a)の中心軸線をレンズ保持穴16(集光レンズ23)の中心軸線に一致させつつ、入射端面13aと集光レンズ23との間隔を適切なものとする。このため、光ファイバ13では、集光レンズ23を経た集光光束としてのレーザ光が入射端面13aに適切に入射される。
このレーザ発光装置10は、一例として、以下のように組み付ける。先ず、図3および図4に示すように、熱拡散板15のマウント部17にレーザアレイチップ21を位置決めして実装し、先端部19cをマウント部17に押し当てつつ取付片部19bを絶縁部材18上に載せて各電極片19を設ける。その後、レンズ保持部材14の下壁14cの各電線挿入穴14d(図3参照)を通した各電線12の接続端子12aを、絶縁部材18上の取付片部19bの上に載せる(図4参照)。そして、図4に示すように、各電線12のリング状の接続端子12aおよび各電極片19の取付片部19bの取付穴19aを通したネジ26を絶縁部材18の固定ネジ穴18aに捻じ込み、各電線12および各電極片19を絶縁部材18に取り付ける。すると、各電線12(その接続端子12a)と各電極片19(その取付片部19b)とが電気的に接続されるとともに、各電極片19の先端部19cがマウント部17に押し当てられる。これにより、マウント部17に実装したレーザアレイチップ21が、マウント部17および各電極片19を介して、各電線12(その接続端子12a)に電気的に接続される。
また、図3に示すように、レンズ保持部材14の奥壁14bのレンズ保持穴16(その大内径部16a)に集光レンズ23を平面23b側から挿入し、外側面23cを内側面16cに面接触させつつ平面23bを奥端面16dに面接触させて位置決めする。このとき、レンズ保持穴16(その内側面16cおよび奥端面16d)と、集光レンズ23(その外側面23cおよび平面23b)と、の間に伝熱グリス27を介在させる。その伝熱グリス27は、高い熱伝導性を有する材料から為る潤滑剤であり、実施例1では、シリコングリスを用いる。そして、集光レンズ23の後(コリメータレンズ22側)から押えリング24をレンズ保持穴16に挿入し、その押えリング24を集光レンズ23の凸面23aに押し当てつつ固定して、集光レンズ23をレンズ保持穴16に位置決め固定する。なお、集光レンズ23とレンズ保持穴16との間に、後述する封止部材を適宜設けても良い。
その後、支持筒部25bに光ファイバ13を嵌め入れた光ファイバ支持部材25(その取付基部25a)を、レンズ保持部材14(その奥壁14b)に取り付ける。このとき、光ファイバ支持部材25の取付基部25aとレンズ保持部材14の奥壁14bとの間に弾性体等の封止部材を介在させる。その後、コリメータレンズ22を適宜設けるとともに、レンズ保持部材14の開放端面14aに熱拡散板15(その周縁部)を押し当てて、レンズ保持部材14の開放端を塞ぎつつ熱拡散板15を取り付ける。このとき、レンズ保持部材14の開放端面14aと熱拡散板15(周縁部)との間に弾性体等の封止部材および上記した伝熱グリス27を介在させることで、レンズ保持部材14と熱拡散板15とを密閉状態としつつ熱抵抗を小さくして取り付けられる。このため、レンズ保持穴16(その内側面16cおよび奥端面16d)と集光レンズ23(その外側面23cおよび平面23b)との間、およびレンズ保持部材14の開放端面14aと熱拡散板15との間に介在させた伝熱グリス27は、それらの間の熱抵抗を小さくする伝熱促進部材として機能する。なお、伝熱促進部材は、レンズ保持穴16と集光レンズ23との間、およびレンズ保持部材14と熱拡散板15との間の熱抵抗を小さくすべく、それらの間に介在させるものであればよく、実施例1の構成に限定されない。
これにより、図2および図3に示すように、レーザ発光装置10が組み付けられる。このレーザ発光装置10では、レンズ保持部材14と熱拡散板15と光ファイバ支持部材25とにより、密閉状態の筐体11が形成される。このため、保持部材としてのレンズ保持部材14とベース部材としての熱拡散板15とは、筐体11の一部を構成してレーザ発光装置10の外郭の一部を形成する。この筐体11は、熱拡散板15を第1外郭部材とすると、それと第2外郭部材となるレンズ保持部材14との協働により全体の外郭が形成され、第3外郭部材となる光ファイバ支持部材25により密閉状態を保ちつつ光ファイバ13が取り付けられる。筐体11では、各電線12がレンズ保持部材14の下壁14cの各電線挿入穴14d(図3参照)を通して設けられ、その各電線12が筐体11から外部の電源装置に接続される。そして、レーザ発光装置10では、筐体11の内方に、電源装置から各電線12を経て電力が供給されるレーザアレイチップ21が設けられる。なお、実施例1では、筐体11から外部へと各電線12を進出させていたが、各電極片19のような電極を筐体11の外部へと進出させてもよく、上記した実施例1に限定されない。
このレーザ発光装置10では、外部の電源装置に接続した両電線12から、各電極片19およびマウント部17を経て、レーザアレイチップ21に電力を供給する。すると、レーザ発光装置10では、レーザアレイチップ21(その出射面21a)から発散光束としてのレーザ光が出射され、そのレーザ光がコリメータレンズ22によって平行光束とされて集光レンズ23に進行する。レーザ発光装置10では、平行光束とされたレーザ光を集光レンズ23が光ファイバ13の入射端面13aに集光し、光ファイバ13を通してレーザ光を出射端面13b(他端)((図1参照))から外部へと出力させる。これにより、レーザ発光装置10では、高い強度のレーザ光を、光ファイバ13の他端(出射端面13b)に接続したレーザ使用機器(実施例1では点火プラグ52(図1参照))に出力できる。このことから、レーザ発光装置10では、熱拡散板15上に設けたレーザアレイチップ21がレーザ光源部として機能する。
ここで、レーザ発光装置10では、小さな寸法であっても高い強度(光量)のレーザ光を出力するために、複数のVCSELを設けて形成したレーザアレイチップ21を用いている。このレーザ発光装置10では、レーザアレイチップ21を適切に駆動させる、すなわち各VCSELから適切にレーザ光を出射させるために、高電流(この例では100(A)以上)の入力を要するものとしている。このため、レーザアレイチップ21では、駆動により熱が発生するが、高温とされると寿命が短くなりかつ出力も低下する虞がある。このことから、レーザアレイチップ21では、適切に冷却しつつ駆動する必要がある。
このため、レーザ発光装置10では、レーザ光源部としてのレーザアレイチップ21に冷却装置30の吸熱機能部を宛がい、その吸熱機能部で吸収した熱を冷却装置30の放熱機能部で放熱することで、そのレーザアレイチップ21を冷却する。冷却装置30としては、例えば、放熱部材としての空冷式のヒートシンクに送風機構としての送風ファンからの気流で強制対流を形成したものを用いることができる。また、冷却装置30としては、例えば、放熱部材としてのヒートシンクの放熱先の温度を十分に低く出来ない場合には、熱拡散板15とヒートシンクとの間にペルチェ素子等の熱電素子を設ける構成とする。
実施例1のレーザ発光装置10では、冷却装置30として、レーザ発光装置10の外郭としての筐体11の一部を構成する熱拡散板15と、熱電素子としてのペルチェ素子31と、放熱部材としてのヒートシンク32と、送風機構としての送風ファン33と、を用いる。この冷却装置30は、熱拡散板15にペルチェ素子31を介してヒートシンク32を宛がい、そのヒートシンク32(その後述する放熱部32b)に向けて送風ファン33が気流を形成する(空気を送る)構成とする。冷却装置30では、第1冷却部材としてのペルチェ素子31が熱拡散板15(そこに設けたレーザアレイチップ21)を冷却し、第2冷却部材としてのヒートシンク32がペルチェ素子31を冷却し、第3冷却部材としての送風ファン33がヒートシンク32を冷却する。
ペルチェ素子31(熱電素子)は、周囲の温度よりも低い温度にレーザアレイチップ21(レーザ光源部)を冷却すべく、熱拡散板15(熱拡散部材)とヒートシンク32(放熱部材)との間に設けられる。このペルチェ素子31は、吸熱部となる冷却面31aを熱拡散板15に宛がい、かつ放熱部となる放熱面31bをヒートシンク32(その後述する吸熱部32a)に宛がって設ける。ペルチェ素子31は、電力線31cを介して所定の温度差となるように制御する。その所定の温度差は、熱拡散板15(レーザアレイチップ21(レーザ光源部))において保ちたい温度と、ヒートシンク32において放熱が可能な温度と、により設定する。これは、ヒートシンク32における放熱が可能な温度が、当該ヒートシンク32(その後述する放熱部32b)が設置される環境温度に応じて変化することによる。
そして、ペルチェ素子31は、好適な例として、冷却面31aを、熱拡散板15においてレンズ保持部材14の開放端面14aが面接触された箇所に対応する大きさ、すなわち熱拡散板15を介在させて開放端面14aに対向可能な大きさとする。このペルチェ素子31は、実施例1では、冷却面31aが熱拡散板15(その外側の面)と略等しい形状および寸法とし、冷却面31aを全面に亘り熱拡散板15に宛がいつつその熱拡散板15を介して開放端面14aに対向させる。このことは、ヒートシンク32(後述する吸熱部32a)であっても同様であり、ペルチェ素子31を設けない場合には、熱拡散板15を介して吸熱部32aを開放端面14aに対向させる。
ヒートシンク32は、ペルチェ素子31の放熱面31bが宛がわれて伝達される吸熱部32aの熱を、複数のフィン32c(図2参照)が設けられた放熱部32bで放熱させる。このヒートシンク32は、放熱部32bから周辺の空気に放熱することで、吸熱部32aに宛がわれたペルチェ素子31の放熱面31bの温度を下げる。その放熱部32bは、実施例1では、図2を正面視して、上下方向に伸びる複数のフィン32cを左右方向に並列させて構成する。この放熱部32b(その各フィン32c)を冷却すべく送風ファン33を設ける。
その送風ファン33は、図3に示すように、羽根部33aを回転可能に収容する筐体に、取込口33bおよび送風口33cを設けて構成する。この送風ファン33は、電力が供給されて羽根部33aが回転駆動されることで、取込口33bから周辺の空気を取り込み、その取り込んだ空気を送風口33cから所定の方向へと送り出して、所定の方向への気流を形成する。この送風ファン33は、送風口33cをヒートシンク32の放熱部32bに正対して設け、放熱部32bに強制対流を生じさせて熱伝達を促す。
このような構成のため、実施例1のレーザ発光装置10では、筐体11の一部を構成する熱拡散板15を、冷却装置30としても機能させている。そして、レーザ発光装置10では、設けられたレーザアレイチップ21の熱を拡散する熱拡散板15と、その熱拡散板15に宛がわれたペルチェ素子31の吸熱部32aと、が冷却装置30の吸熱機能部となる。また、実施例1のレーザ発光装置10では、ペルチェ素子31の放熱面31bと、その放熱面31bが宛がわれるヒートシンク32と、その放熱部32bに強制対流を生じさせる送風ファン33と、が冷却装置30の放熱機能部となる。
加えて、実施例1のレーザ発光装置10では、レンズ保持部材14を取り囲んで外装部材28を設ける。その外装部材28は、レーザ発光装置10(筐体11(レンズ保持部材14))が設置される環境(周囲の雰囲気)からレンズ保持部材14に熱が流入することを抑制する。外装部材28は、レンズ保持部材14よりも低い熱伝導率を有するものとし、実施例1では、プラスチック樹脂を用いて形成する。この外装部材28は、実施例1では、レンズ保持部材14(その外表面)に接しつつ当該レンズ保持部材14および光ファイバ支持部材25を取り囲む一端開放の直方体形状を呈し、光ファイバ開口28aと電線開口28bと冷却開口28cとを有する。その光ファイバ開口28aは、光ファイバ支持部材25に支持されてレンズ保持部材14から突出される光ファイバ13を通す箇所である。電線開口28bは、レンズ保持部材14の両電線挿入穴14dから筐体11の外方に突出される電線12を通す箇所である。冷却開口28cは、レーザアレイチップ21(レーザ光源部)を冷却する冷却装置30を通す箇所であり、開放された一端により形成され、実施例1では、ペルチェ素子31の冷却面31a(吸熱部)に接触する。このため、外装部材28は、レンズ保持部材14が保持する集光レンズ23とともに当該レンズ保持部材14を全体に亘って覆うとともに、そのレンズ保持部材14が宛がわれる冷却装置30の吸熱機能部を覆う。そして、レーザ発光装置10では、筐体11(レンズ保持部材14)および光ファイバ支持部材25が外装部材28に取り囲まれた状態で、電源装置から電線12を介して電力が供給されて光ファイバ13の他端(出射端面13b)から高い強度のレーザ光を出力する。
このレーザ発光装置10は、図1に示すように、エンジン点火プラグシステム40を構成して内燃機関の一例としてのエンジン41の点火に用いられる。そのエンジン点火プラグシステム40では、レーザ発光装置10が駆動されると、レーザアレイチップ21から出力されたレーザ光がコリメータレンズ22によって平行光とされ、そのレーザ光が集光レンズ23で集光されて光ファイバ13の入射端面13aに入射する。そして、そのレーザ光は、光ファイバ13を通して出射端面13bから点火プラグ52に入射される。すると、点火プラグ52では、レーザ光でレーザ共振器を照射してジャイアントパルスを発振させ、そのパルス光を光学素子でエンジン41の燃焼室46に集光することでエアブレークダウンを発生させる。これにより、エンジン点火プラグシステム40は、燃焼室46内の混合気を着火させてエンジン41を駆動させる。
ここで、例えばエンジンルームのようなエンジン41が設けられた環境では、主にエンジン41からの発熱により温度が高くなる。そして、レーザ発光装置10では、冷却装置30における放熱部材としてのヒートシンク32がエンジン41の周辺の気体(雰囲気)に対して放熱部32bで熱を放出するので、エンジン41の周辺の気体の温度により冷却機能が左右される。ここで、エンジン41の周辺では、冷却水路49に供給される冷却水51による冷却や大気への放熱により温度上昇が抑制されているものの、燃焼に起因して発熱するエンジン41(エンジン外郭部53)で温められるので、レーザアレイチップ21(レーザ光源部)を配置するには高温である。このことから、実施例1のレーザ発光装置10では、冷却装置30として、熱拡散板15(熱拡散部材)、ヒートシンク32(放熱部材)および送風ファン33(送風機構)に加えてペルチェ素子31(熱電素子)を併せて用いている。
このレーザ発光装置10では、送風ファン33が取込口33bから周辺の空気を取り込んで気流を形成するため、その送風ファン33からの気流(送られる空気)の温度がエンジン41の周辺の温度となる。このため、レーザ発光装置10では、ヒートシンク32の温度を送風ファン33からの空気の温度(エンジン41の周辺の温度)よりも高くするように、ペルチェ素子31の表裏(冷却面31aと放熱面31b)の温度差ΔTを制御する。すると、レーザ発光装置10では、送風ファン33からの空気の温度よりも高い温度のヒートシンク32であっても、ペルチェ素子31の放熱面31b(図3参照)を冷却することができ、ペルチェ素子31の冷却面31a(図3参照)をレーザアレイチップ21の冷却に十分な温度まで下げることができる。これにより、レーザ発光装置10では、設置される周辺雰囲気がレーザアレイチップ21(レーザ光源部)を配置するには高温であっても、当該レーザアレイチップ21を目標とした温度以下に保つことができる。
このレーザ発光装置10では、レーザアレイチップ21が高い強度(光量)のレーザ光を出力するので、そのレーザ光を集光する集光レンズ23が当該レーザ光の一部を熱エネルギーとして吸収して、集光レンズ23の温度上昇を招く虞がある。その場合、集光レンズ23では、光学性能に温度依存性があるので、レーザ光を所定の位置(実施例1では光ファイバ13の入射端面13a)に集光できなくなる虞がある。その集光レンズ23の光学性能の温度依存性は、集光レンズ23における温度変化に伴う屈折率の変化や形状の変化に起因するものと考えられる。レーザ発光装置10では、光ファイバ13の入射端面13aに適切に集光できなくなると、その入射端面13aにレーザアレイチップ21からのレーザ光の全ての光束を入射(導入)させることができなくなり、当該レーザ光の利用効率が低下する。このため、レーザ発光装置10では、レーザアレイチップ21(レーザ光源部)を適切に駆動しても、目標とする光量を適切に出力できなくなる虞がある。
これに対し、レーザ発光装置10では、集光レンズ23を保持する保持部材としてのレンズ保持部材14を、集光レンズ23よりも高い熱伝導率を有するものとし、集光レンズ23および冷却装置30(実施例1では熱拡散板15)と面接触させている。このため、レーザ発光装置10では、集光レンズ23の熱をレンズ保持部材14へと効率良く伝達し、その熱をレンズ保持部材14が拡散し、そのレンズ保持部材14を冷却装置30が効率良く冷却する。これにより、レーザ発光装置10では、集光レンズ23がレーザ光の一部を熱エネルギーとして吸収しても、レンズ保持部材14を介して冷却装置30により集光レンズ23を冷却できるので、当該集光レンズ23の温度の上昇を効果的に抑制できる。
ここで、レーザ発光装置10では、レンズ保持部材14が高い熱伝導率を有することから、設置される周辺雰囲気が高温であるとその周辺雰囲気の熱がレンズ保持部材14に流入し、冷却装置30の負担の増加を招いたりレーザアレイチップ21(レーザ光源部)を適切に冷却できなくなったり集光レンズ23の温度の上昇を招いたりする虞がある。ここで、レンズ保持部材14に流入する熱をQ(W)とすると、当該熱が流入しない場合と比べて、ペルチェ素子31では略3Q(W)前後の電力の増加を招いてしまう。特に、実施例1のレーザ発光装置10では、エンジン41(図1参照)が配置された高温の環境に設けられ、ペルチェ素子31(熱電素子)を設けることでレーザアレイチップ21(レーザ光源部)を冷却しているので、このようなレンズ保持部材14への熱の流入による問題が生じる可能性が高い。
これに対し、レーザ発光装置10では、レンズ保持部材14よりも低い熱伝導率を有する外装部材28を、レンズ保持部材14を取り囲んで設けているので、周辺雰囲気(その熱)からレンズ保持部材14を遮断できる。このため、レーザ発光装置10では、周辺雰囲気の熱がレンズ保持部材14に流入することを抑制できるので、設置される周辺雰囲気の温度に拘わらず、集光レンズ23の温度の上昇を抑制できる。これらにより、レーザ発光装置10では、高温な環境下で高電流が供給されてレーザアレイチップ21(レーザ光源部)を駆動しても、集光レンズ23の温度の上昇をより効果的に抑制できる。
本開示に係るレーザ発光装置の一実施形態のレーザ発光装置10では、レンズ保持部材14(保持部材)が、保持する集光レンズ23よりも高い熱伝導率を有し、集光レンズ23および冷却装置30(実施例1では熱拡散板15)と面接触する。このため、レーザ発光装置10では、レンズ保持部材14(保持部材)を介して、集光レンズ23と冷却装置30(熱拡散板15)とを熱的に連続させることができる。これにより、レーザ発光装置10では、集光レンズ23がレーザ光の一部を熱エネルギーとして吸収しても、レンズ保持部材14を介して冷却装置30により集光レンズ23を冷却できるので、当該集光レンズ23の温度の上昇を効果的に抑制できる。このため、レーザ発光装置10では、温度変化に伴う屈折率の変化や形状の変化等に起因する集光レンズ23の光学性能の変化を防止でき、目標とする光量を適切に出力できる。
また、レーザ発光装置10では、レーザアレイチップ21(レーザ光源部)を冷却するための冷却装置30にレンズ保持部材14を面接触させることで、集光レンズ23の温度の上昇を抑制する。このため、レーザ発光装置10では、集光レンズ23の温度の上昇を抑制のためだけの新たな冷却部材の追加を招くことのない簡易な構成で、レーザアレイチップ21(レーザ光源部)を適切に冷却できるとともに集光レンズ23の温度の上昇を抑制できる。
さらに、レーザ発光装置10では、レンズ保持部材14が、高い熱伝導率を有するため、集光レンズ23が熱エネルギーを吸収してもその熱を拡散できるので、レンズ保持穴16の周辺部に熱が溜まることを防止できる。そして、レーザ発光装置10では、そのレンズ保持部材14を冷却装置30に面接触させることで、レンズ保持部材14全体の温度の上昇を抑制でき、レンズ保持穴16を含めたレンズ保持部材14全体の温度上昇に起因する変形を防止できる。このため、レーザ発光装置10では、レンズ保持部材14(レンズ保持穴16)の変形に起因する集光レンズ23の位置ずれによりレーザ光を所定の位置(実施例1では光ファイバ13の入射端面13a)に集光できなくなることを防止でき、目標とする光量を適切に出力できる。
レーザ発光装置10では、レーザアレイチップ21(レーザ光源部)を冷却する冷却装置30として、熱拡散板15、ヒートシンク32および送風ファン33に加えて、ペルチェ素子31(熱電素子)を設けている。このため、レーザ発光装置10では、温度が高い環境であっても、ペルチェ素子31の表裏の温度差を制御することで、ヒートシンク32による放熱によりレーザアレイチップ21(レーザ光源部)および集光レンズ23を冷却できる。これにより、レーザ発光装置10では、例えば、エンジンルームのようなエンジン41(図1参照)が設けられて温度が高い環境であっても、レーザアレイチップ21(レーザ光源部)を周囲の温度よりも低い温度まで冷却することができ、集光レンズ23の温度上昇を抑制できる。
レーザ発光装置10では、集光レンズ23を平凸レンズとし、その平面23bをレンズ保持部材14のレンズ保持穴16の奥端面16dに面接触させることで、集光レンズ23とレンズ保持部材14とを面接触させている。このため、レーザ発光装置10では、簡易な構成で集光レンズ23を位置決めしつつ当該集光レンズ23をレンズ保持部材14に面接触させることができる。
レーザ発光装置10では、平凸レンズとした集光レンズ23の外側面23cを、レンズ保持部材14のレンズ保持穴16の大内径部16aの内側面16cに面接触させることで、集光レンズ23とレンズ保持部材14とを面接触させている。このため、レーザ発光装置10では、簡易な構成で集光レンズ23を位置決めしつつ当該集光レンズ23をレンズ保持部材14に面接触させることができる。加えて、レーザ発光装置10では、平凸レンズとした集光レンズ23の平面23bをレンズ保持部材14の奥端面16dに面接触させるとともに、その集光レンズ23の外側面23cをレンズ保持部材14の内側面16cに面接触させている。このため、レーザ発光装置10では、集光レンズ23とレンズ保持穴16(レンズ保持部材14)との接触面積を大きくできる。特に、レーザ発光装置10では、レンズ保持穴16(内側面16c)の中心軸線が伸びる方向で見た寸法を、その中心軸線が伸びる方向で見た集光レンズ23の外側面23cの寸法よりも大きくしている。このため、レーザ発光装置10では、集光レンズ23の外側面23cを全域に亘りレンズ保持穴16(内側面16c)に面接触させることができ、集光レンズ23とレンズ保持穴16(内側面16c)との接触面積を大きくできる。これにより、レーザ発光装置10では、集光レンズ23とレンズ保持穴16との熱の伝達経路を大きくすることができ、より適切に集光レンズ23の温度上昇を抑制できる。
レーザ発光装置10では、伝熱促進部材としての伝熱グリス27を介在させて、集光レンズ23および冷却装置30(実施例1では熱拡散板15)をレンズ保持部材14(保持部材)に面接触させている。このため、レーザ発光装置10では、面接触させた集光レンズ23および冷却装置30とレンズ保持部材14との間の熱抵抗をより減少できるので、集光レンズ23の温度上昇をより適切に抑制できる。また、レーザ発光装置10では、伝熱促進部材としての伝熱グリス27を用いているので、集光レンズ23をレンズ保持穴16内に挿入する作業を円滑なものにできる。
レーザ発光装置10では、凸面23a、平面23bおよび外側面23cからなる集光レンズ23の外表面に反射防止処理膜23dを設けている。ここで、反射防止処理膜23dでは、温度上昇に起因する集光レンズ23との熱膨張差により熱応力が生じることや、温度上昇による劣化が生じることにより、適切な性能を発揮できなくなる虞がある。このレーザ発光装置10では、集光レンズ23の外表面の反射防止処理膜23dにレンズ保持部材14(保持部材)が面接触するので、当該反射防止処理膜23dの温度上昇も抑制できる。これにより、レーザ発光装置10では、集光レンズ23の温度上昇に起因する光学性能の変化を防止できるとともに、反射防止処理膜23dの温度上昇に起因して性能を発揮できなくなることを防止でき、目標とする光量をより適切に出力できる。
レーザ発光装置10では、レンズ保持部材14よりも低い熱伝導率を有する外装部材28を、レンズ保持部材14を取り囲んで設けている。このため、レーザ発光装置10では、設置される環境が高温の雰囲気であっても、環境(周囲の雰囲気)からレンズ保持部材14への熱の流入を抑制できる。これにより、レーザ発光装置10では、設置される周辺雰囲気の温度に拘わらず、周辺雰囲気の熱がレンズ保持部材14に流入することを抑制でき、集光レンズ23の温度の上昇を適切に抑制できる。また、レーザ発光装置10では、周辺雰囲気の熱がレンズ保持部材14に流入することを抑制できるので、冷却装置30(主にペルチェ素子31(熱電素子))の負担の増加を抑制でき、レーザアレイチップ21(レーザ光源部)を適切に冷却できる。特に、レーザ発光装置10では、外装部材28が、レンズ保持部材14とともに、集光レンズ23や光ファイバ支持部材25を取り囲んでいる。このため、レーザ発光装置10では、周辺雰囲気の熱が、集光レンズ23に流入することや光ファイバ支持部材25を介してレンズ保持部材14や集光レンズ23に流入することも抑制でき、集光レンズ23の温度の上昇をより適切に抑制できる。
レーザ発光装置10では、外装部材28により、レンズ保持部材14および光ファイバ支持部材25を取り囲んでいる。このため、レーザ発光装置10では、光ファイバ13を適切に支持すべく、光ファイバ支持部材25を金属材料等の高い熱伝導率を有する材料で形成しても、環境(周囲の雰囲気)から光ファイバ支持部材25への熱の流入を抑制できる。
レーザ発光装置10では、外装部材28の冷却開口28cを冷却装置30における吸熱機能部となるペルチェ素子31の冷却面31a(吸熱部)に接触させて、外装部材28でレンズ保持部材14を取り囲んでいる。ここで、レーザ発光装置10では、ペルチェ素子31(熱電素子)を設けることで、レーザアレイチップ21(レーザ光源部)やレンズ保持部材14を周囲の温度よりも低い温度まで冷却している。このため、レーザ発光装置10では、冷却装置30により冷却されるレンズ保持部材14とともに冷却装置30における冷たい箇所(吸熱機能部)を周辺雰囲気(その熱)から遮断でき、集光レンズ23の温度の上昇をより適切に抑制できる。
レーザ発光装置10では、レーザ光源部として、複数の面発光型レーザが配列されたレーザアレイチップ21を用いている。ここで、面発光型半導体レーザが高い密度で配置されていると、熱源が集中することで高い密度で熱が発生する。しかしながら、レーザ発光装置10では、そのレーザアレイチップ21(レーザ光源部)に冷却装置30(実施例1では熱拡散板15)を宛がうとともに、その冷却装置30(熱拡散板15)にレンズ保持部材14を面接触させている。このため、レーザ発光装置10では、レーザアレイチップ21(レーザ光源部)を適切に冷却しつつ、集光レンズ23の温度の上昇を適切に抑制できる。特に、レーザ発光装置10では、冷却装置30において冷却強度が最も高くなる箇所(冷却中心位置)となるペルチェ素子31の冷却面31aの中心付近(ヒートシンク32でも同様である)に、レーザアレイチップ21を設けたマウント部17を接近させている。そして、レーザ発光装置10では、冷却装置30の冷却面31aの周縁部にレンズ保持部材14(その開放端面14a)を面接触させている。このため、レーザ発光装置10では、最も冷却が求められるレーザアレイチップ21(レーザ光源部)に対しては冷却装置30の冷却中心位置で冷却しているので、そのレーザアレイチップ21(レーザ光源部)の冷却機能を損なうことなく、集光レンズ23を冷却できる。
レーザ発光装置10では、レーザアレイチップ21(レーザ光源部)を設けた熱拡散板15にレンズ保持部材14(その開放端面14a)を面接触させている。このため、レーザ発光装置10では、熱拡散板15の全面に亘りペルチェ素子31(その冷却面31a)を宛がうことができるので、熱拡散板15を介してレーザアレイチップ21(レーザ光源部)および集光レンズ23を適切に冷却できる。
本開示に係るエンジン点火プラグシステムの一実施形態のエンジン点火プラグシステム40では、レーザ光源部(レーザアレイチップ21)および集光レンズ23を適切に冷却できる。このため、エンジン点火プラグシステム40では、高温な環境下であっても、レーザ光源部(レーザアレイチップ21)の寿命が短くなることや出力が低下することを防止することができ、内燃機関の一例としてのエンジン41を適切に点火させることができる。
したがって、本開示に係るレーザ発光装置としての実施例1のレーザ発光装置10では、高い強度のレーザ光を集光レンズ23で集光しても、その集光レンズ23の温度上昇を抑制できる。
なお、上記した実施例1では、本開示に係るレーザ発光装置の一例としての実施例1のレーザ発光装置10について説明したが、レーザ光を出射するレーザ光源部と、前記レーザ光源部から出射されるレーザ光を所定の位置に集光する集光レンズと、前記集光レンズと面接触しつつ前記集光レンズを保持する保持部材と、前記レーザ光源部を冷却すべく前記レーザ光源部に宛がわれる冷却装置と、を備え、前記保持部材は、前記集光レンズよりも高い熱伝導率を有し、前記冷却装置に面接触するレーザ発光装置であればよく、上記した実施例1に限定されない。
また、上記した実施例1では、レンズ保持部材14の開放端面14aを冷却装置30としても機能する熱拡散板15に面接触させていたが、図5に示すレーザ発光装置10Aの構成としてもよい。そのレーザ発光装置10Aでは、熱拡散板15Aをレンズ保持部材14の内方に嵌め入れることができる大きさとして、レンズ保持部材14の開放端面14aを冷却装置30としてのヒートシンク32(その吸熱部32a)に面接触させている。このレーザ発光装置10Aでは、基本的に実施例1のレーザ発光装置10と同様の構成であることから、基本的に実施例1と同様の効果を得ることができる。それに加えて、レーザ発光装置10Aでは、ペルチェ素子31の冷却面31aでは周縁部が相対的に冷却強度が低くなるが、その周縁部にレンズ保持部材14の開放端面14aを直に面接触させているので、集光レンズ23の温度上昇をより適切に抑制できる。
さらに、上記した実施例1では、冷却装置30において熱拡散板15とヒートシンク32とを別体の構成としていたが、図6に示すレーザ発光装置10Bの構成としてもよい。そのレーザ発光装置10Bでは、熱拡散板(15)とヒートシンク(32)とを一体化したヒートシンク32Bを用いており、その吸熱部32Baにレーザアレイチップ21を設けている。そのヒートシンク32Bでは、熱拡散板15と同様に設けたレーザアレイチップ21で発生する熱を効率的に拡散する機能も併せて有しており、このような機能は例えば金属材料等の熱伝導率(熱伝導性)の高い材料を用いて形成することで実現でき、図6の例では銅を用いて形成する。このレーザ発光装置10Bでは、基本的に実施例1のレーザ発光装置10と同様の構成であることから、基本的に実施例1と同様の効果を得ることができる。それに加えて、レーザ発光装置10Bでは、簡単な構成としつつレーザ発光装置10における熱拡散板15とヒートシンク32との間の熱抵抗を無くすことができ、レーザアレイチップ21(レーザ光源部)をより適切に冷却しつつ、集光レンズ23の温度の上昇をより適切に抑制できる。なお、このヒートシンク32Bを用いる場合であっても、図5のレーザ発光装置10Aのように、レンズ保持部材14の開放端面14aをヒートシンク32B(その吸熱部32Ba)に直に面接触させてもよい。
上記した実施例1では、冷却装置30としての空冷式のヒートシンク32を用いていたが、図7に示すレーザ発光装置10Cの構成としてもよい。そのレーザ発光装置10Cでは、液冷式のヒートシンク32Cを用いている。そのヒートシンク32Cは、冷媒通路32Ceが形成された吸熱ブロック32Cdにより吸熱部32Caが規定され、その冷媒通路32Ceに冷却水が適宜供給される。その冷却水は、エンジン点火プラグシステム40の冷却水路49に供給される冷却水51を用いてもよく、他から供給してもよい。このレーザ発光装置10Cでは、その他の構成は実施例1のレーザ発光装置10と同様であり、基本的に実施例1と同様の効果を得ることができる。なお、このヒートシンク32Cを用いる場合であっても、図5のレーザ発光装置10Aのように、レンズ保持部材14の開放端面14aをヒートシンク32C(その吸熱部32Ca)に直に面接触させてもよい。
上記した実施例1および図5から図7に示す例では、集光レンズ23をレーザアレイチップ21(レーザ光源部)側からレンズ保持部材14のレンズ保持穴16に挿入していたが、図8に示すレーザ発光装置10Dの構成としてもよい。そのレーザ発光装置10Dでは、レンズ保持部材14Dのレンズ保持穴16Dを、実施例1のレーザ発光装置10のレンズ保持穴16とは光軸方向で見て逆向きの構成としており、レンズ保持部材14Dの外側から集光レンズ23(その平面23b)をレンズ保持穴16Dに挿入する。レーザ発光装置10Dは、その他の構成は実施例1のレーザ発光装置10と同様であるので、基本的に実施例1と同様の効果を得ることができる。なお、このように集光レンズ23の向きを逆側とする場合であっても、図5のレーザ発光装置10Aのようにレンズ保持部材14の開放端面14aをヒートシンク32C(その吸熱部32Ca)に直に面接触させてもよく、図6のレーザ発光装置10Bのように一体型のヒートシンク32Bを用いてもよく、図7のレーザ発光装置10Cのように液冷式のヒートシンク32Cを用いてもよい。
上記した実施例1、図5から図8、図11に示す例および後述する実施例2から実施例6では、集光レンズ23を、平凸形状としていたが、コリメータレンズ22を経たレーザ光を集光して所定の位置(各例では光ファイバ13の入射端面13a)に入射させれば、他の構成であってもよい。その他の構成として、例えば、集光レンズを両凸形状とした場合には、外側面23cと同様に、両凸面を繋ぐ外側面を光軸に平行な面とすることで、レンズ保持部材14のレンズ保持穴16(そのの内側面16c)に面接触させることができる。また、レンズ保持部材14のレンズ保持穴(その奥端面16dに相当する箇所)の形状を凸面のように湾曲した面に倣うものとして、集光レンズとレンズ保持穴とを面接触させてもよい。さらに、上記した実施例1および図5から図8に示す例では、集光レンズ23をガラス材料から形成していたが、コリメータレンズ22を経たレーザ光を集光して所定の位置(光ファイバ13の入射端面13a)に入射させれば、樹脂材料で形成してもよく、他の材料で形成してもよく、上記した各例の構成に限定されない。
上記した実施例1、図5、図7、図8に示す例、後述する実施例2および実施例3では、冷却装置30として、熱電素子としてペルチェ素子31を用いている。しかしながら、その熱電素子は、レーザアレイチップ21(レーザ光源部)に要求される温度と周囲雰囲気の温度とヒートシンク32(放熱部材)や送風ファン33(送風機構)における冷却機能とを勘案して適宜設ければよく、上記した各例の構成に限定されない。また、熱電素子は、周囲の温度よりも低い温度にレーザ光源部(レーザアレイチップ21)を冷却すべくそのレーザ光源部と放熱部材(ヒートシンク32)との間に設けるものであればよく、上記した実施例1に限定されない。このことは、上記した実施例1および図5、図6、図8に示す例で設けた冷却装置30の送風機構としての送風ファン33や、実施例1および図5から図8に示す例で設けた外装部材28も同様である。
上記した実施例1および図5から図8に示す例では、レーザ光を内燃機関の点火に用いる例を示していたが、レーザ加工機等のレーザ使用機器で用いるべく光ファイバ13の出射端面13b(他端)を当該レーザ使用機器に接続してもよく、上記した実施例1に限定されない。
次に、本開示の一実施形態である実施例2のレーザ発光装置10Eについて、図9および図10を用いて説明する。レーザ発光装置10Eは、実施例1のレーザ発光装置10とは一部の構成が異なる例である。レーザ発光装置10Eは、基本的な概念、構成および効果は図1から図4に示す実施例1のレーザ発光装置10と同様であるので、等しい構成の個所には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
実施例2のレーザ発光装置10Eは、冷却装置30によるレーザ光源部(レーザアレイチップ21)および集光レンズ23の冷却の精度を、実施例1よりも高めるものである。レーザ発光装置10Eは、図9に示すように、サーミスタ61と温度制御装置62とを有する。サーミスタ61は、レーザ発光装置10Eにおいてレーザ光を出力させるレーザ出力機構、すなわちレーザ光源部(レーザアレイチップ21)やそれが設けられる熱拡散板15や集光レンズ23やレンズ保持部材14等の温度を検出する温度検出部の一例である。サーミスタ61は、実施例2では、レーザ出力機構のうちの熱拡散板15の温度t1を検出するために設けられ、自らに接続された検出線61aを経て検出した温度t1(その信号)を温度制御装置62に送る。これに伴い、外装部材28には、検出線61aを通す検出開口28dが設けられている。
温度制御装置62は、冷却装置30の放熱機能部(ペルチェ素子31(熱電素子)の放熱面31b、ヒートシンク32、送風ファン33(送風機構))における放熱量の調節のために設けられる。実施例2の温度制御装置62は、ペルチェ素子31の温度を制御するものとされ、ペルチェ素子31の電力線31cが接続されているとともにサーミスタ61の検出線61aが接続されている。温度制御装置62は、サーミスタ61が検出した温度t1に基づいて、熱拡散板15が予め設定された目標温度T1となるように、熱拡散板15に宛がわれた冷却面31aの温度を調節する。すなわち、温度制御装置62は、温度t1が目標温度T1よりも高いと、十分に冷却できていないので冷却面31aの温度を下げ、温度t1が目標温度T1よりも低いと、過度に冷却しているので冷却面31aの温度を上げる(冷却を緩和する)。このとき、温度t1と目標温度T1との差分に応じて冷却面31aの温度を調節してもよく、差分に拘わらず所定の温度に調節してもよい。冷却面31aの温度は、実施例1では、電力線31cから供給する電流値等を制御することで調節する。目標温度T1は、一点の数値であってもよく、所定の幅(範囲)を持つものであっても良い。
次に、レーザ発光装置10Eにおいて、温度制御装置62が冷却温度の調節のためにペルチェ素子31の温度を制御する温度制御処理の一例について、図10を用いて説明する。温度制御処理は、内蔵するメモリに記憶されたプログラムに基づいて温度制御装置62が実行する。以下では、この図10のフローチャートの各ステップ(各工程)について説明する。このフローチャートは、レーザ発光装置10Eが駆動されて、冷却面31aと放熱面31bとを設定された所定の温度差とするように温度制御装置62がペルチェ素子31を制御すると開始される。
ステップS1では、サーミスタ61から温度t1を取得して、ステップS2へ進む。
ステップS2では、温度t1が目標温度T1と同じか否かを判断し、YESの場合はステップS3へ進み、NOの場合はステップS4へ進む。ステップS2では、目標温度T1が所定の幅を有する場合は、温度t1が目標温度T1内にあるか否かを判断する。
ステップS3では、冷却面31aの温度を維持して、ステップS7へ進む。ステップS3では、温度t1が目標温度T1と同じなので、この時点で行っているペルチェ素子31の制御すなわち冷却面31aの温度を維持する。
ステップS4では、温度t1が目標温度T1よりも高いか否かを判断し、YESの場合はステップS5へ進み、NOの場合はステップS6へ進む。
ステップS5では、冷却面31aの温度を下げて、ステップS7へ進む。ステップS5では、熱拡散板15が目標温度T1となるように冷却面31aの温度を下げる。
ステップS6では、冷却面31aの温度を上げて、ステップS7へ進む。ステップS6では、熱拡散板15が目標温度T1となるように冷却面31aの温度を上げる。
ステップS7では、レーザ発光装置10Eが停止されたか否かを判断し、YESの場合はこの温度制御処理を終了し、NOの場合はステップS8へ進む。ステップS7では、レーザ発光装置10Eが停止されたか否か、すなわち冷却装置30でレーザ光源部(レーザアレイチップ21)を冷却する必要がなくなったか否かを判断する。
ステップS8では、サンプリング間隔Δtとなったか否かを判断し、YESの場合はステップS1に戻り、NOの場合はステップS8を繰り返す。ステップS8では、ステップS1で温度t1を取得してからの経過時間がサンプリング間隔Δtとなるまで待機し、サンプリング間隔ΔtとなるとステップS1に戻る。
レーザ発光装置10Eは、駆動されると冷却装置30によるレーザ光源部(レーザアレイチップ21)の冷却が開始される。そのとき、温度制御装置62は、図10のフローチャートに示す温度制御処理を行うことで、サーミスタ61が検出した温度t1に基づいて、熱拡散板15が目標温度T1となるようにペルチェ素子31の冷却面31aの温度を調節する。これにより、冷却装置30は、熱拡散板15の温度を常に目標温度T1の近傍とすることができ、レーザ光源部(レーザアレイチップ21)をより適切に冷却できるとともに、レンズ保持部材14(保持部材)を介して集光レンズ23をより適切に冷却できる。
実施例2のレーザ発光装置10Eは、基本的に実施例1のレーザ発光装置10と同様の構成であるので、基本的に実施例1と同様の効果を得られる。
それに加えて、レーザ発光装置10Eは、温度制御装置62が、サーミスタ61が検出した温度t1に基づいて、熱拡散板15が目標温度T1となるようにペルチェ素子31の冷却面31aの温度を調節するので、レーザ光源部(レーザアレイチップ21)や集光レンズ23をより適切に冷却できる。
したがって、本開示に係るレーザ発光装置の実施例2のレーザ発光装置10Eでは、高い強度のレーザ光を集光レンズ23で集光しても、その集光レンズ23の温度上昇を抑制できる。
なお、上記した実施例2では、サーミスタ61が検出した熱拡散板15の温度t1に基づいて、ペルチェ素子31(その冷却面31a)の温度を制御していたが、図11に示すレーザ発光装置10Fの構成としてもよい。レーザ発光装置10Fでは、サーミスタ63が、レーザ出力機構のうちのレンズ保持部材14の温度t2を検出するために設けられている。これに伴い、外装部材28には、検出開口28dに替えて、サーミスタ63の検出線63aを通す検出開口28eが設けられている。レーザ発光装置10Fでは、温度制御装置62Fが、サーミスタ63が検出した温度t2に基づいて、レンズ保持部材14が予め設定された目標温度T2となるように、ペルチェ素子31の冷却面31aの温度を調節する。レーザ発光装置10Fでは、基本的に実施例2のレーザ発光装置10Eと同様の構成であることから、基本的に実施例2と同様の効果を得ることができる。それに加えて、レーザ発光装置10Fでは、レンズ保持部材14が目標温度T2となるように冷却面31aの温度を調節するので、集光レンズ23をより適切に冷却できる。
次に、本開示の一実施形態である実施例3のレーザ発光装置10Gについて、図12および図13を用いて説明する。レーザ発光装置10Gは、実施例1のレーザ発光装置10とは一部の構成が異なる例である。レーザ発光装置10Gは、基本的な概念、構成および効果は図1から図4に示す実施例1のレーザ発光装置10と同様であるので、等しい構成の個所には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
実施例3のレーザ発光装置10Gは、冷却装置30によるレーザ光源部(レーザアレイチップ21)および集光レンズ23の冷却の精度を、実施例2のレーザ発光装置10Eと同様の思想で実施例1よりも高めるものである。レーザ発光装置10Gは、図12に示すように、サーミスタ61とサーミスタ63と温度制御装置62Gとを有する。サーミスタ61は、実施例2の図9に示すものと同様であり、サーミスタ63は、実施例2の他の例である図11に示すものと同様である。
温度制御装置62Gは、基本的に実施例2の図9および図11に示すものと同様であり、サーミスタ61の検出線61aおよびサーミスタ63の検出線63aが接続されている。温度制御装置62Gは、熱拡散板15が予め設定された目標温度T1である通常の状態では、レンズ保持部材14が予め設定された目標温度T2となるように冷却面31aの温度を調節する。また、温度制御装置62Gは、熱拡散板15が目標温度T1よりも高い温度となると、熱拡散板15が目標温度T1となるように冷却面31aの温度を調節するように制御を切り替える。換言すると、温度制御装置62Gは、通常の状態では図11のレーザ発光装置10Fと同様に動作し、熱拡散板15が所望の温度よりも高い温度となると図9のレーザ発光装置10Eと同様に動作する。このとき、検出した温度(t1、t2)と目標温度(T1、T2)との差分に応じて冷却面31aの温度を調節してもよく、差分に拘わらず所定の温度に調節してもよい。ここで、熱拡散板15が所望の温度よりも高い温度となる場面としては、例えば、電気回路の経時劣化による電気抵抗の増加が原因で発熱が増大することが考えられる。これにより、温度制御装置62Gは、レーザ光源部(レーザアレイチップ21)が過度に高温となることに起因する不具合や寿命の急速な短縮を防ぐ。
次に、レーザ発光装置10Gにおいて、温度制御装置62Gが冷却温度の調節のためにペルチェ素子31の温度を制御する温度制御処理の一例について、図13を用いて説明する。温度制御処理は、基本的に図10のフローチャートに示す温度制御処理と同様であり、内蔵するメモリに記憶されたプログラムに基づいて温度制御装置62Gが実行する。以下では、この図13のフローチャートの各ステップ(各工程)について説明する。
ステップS11では、サーミスタ61から温度t1とサーミスタ63から温度t2とを取得して、ステップS12へ進む。
ステップS12では、温度t1が目標温度T1よりも高いか否かを判断し、YESの場合はステップS13へ進み、NOの場合はステップS14へ進む。
ステップS13では、目標温度T1とすべく冷却面31aの温度を下げて、ステップS19へ進む。ステップS13では、熱拡散板15が目標温度T1となるように冷却面31aの温度を下げる。
ステップS14では、温度t1が目標温度T1と同じか否かを判断し、YESの場合はステップS15へ進み、NOの場合はステップS16へ進む。
ステップS15では、冷却面31aの温度を維持して、ステップS19へ進む。
ステップS16では、温度t2が目標温度T2よりも高いか否かを判断し、YESの場合はステップS17へ進み、NOの場合はステップS18へ進む。
ステップS17では、目標温度T2とすべく冷却面31aの温度を下げて、ステップS19へ進む。ステップS17では、レンズ保持部材14が目標温度T2となるように冷却面31aの温度を下げる。
ステップS18では、目標温度T2とすべく冷却面31aの温度を上げて、ステップS19へ進む。ステップS18では、レンズ保持部材14が目標温度T2となるように冷却面31aの温度を上げる。
ステップS19では、レーザ発光装置10Gが停止されたか否かを判断し、YESの場合はこの温度制御処理を終了し、NOの場合はステップS20へ進む。
ステップS20では、サンプリング間隔Δtとなったか否かを判断し、YESの場合はステップS11に戻り、NOの場合はステップS20を繰り返す。
レーザ発光装置10Gは、駆動されると冷却装置30によるレーザ光源部(レーザアレイチップ21)の冷却が開始される。そのとき、温度制御装置62Gは、図13のフローチャートに示す温度制御処理を行うことで、熱拡散板15の温度t1が目標温度T1よりも低い場合ではサーミスタ63が検出した温度t2に基づいて、レンズ保持部材14が目標温度T2となるように冷却面31aの温度を調節する。また、温度制御装置62Gは、その温度制御処理を行うことで、熱拡散板15の温度t1が目標温度T1よりも高くなると、熱拡散板15が目標温度T1となるように冷却面31aの温度を下げる。これにより、冷却装置30は、通常の状態ではレンズ保持部材14の温度を常に目標温度T2の近傍とすることができるとともに熱拡散板15の温度を目標温度T1よりも低くすることができ、レーザ光源部(レーザアレイチップ21)および集光レンズ23をより適切に冷却できる。
実施例3のレーザ発光装置10Gは、基本的に実施例1のレーザ発光装置10と同様の構成であるので、基本的に実施例1と同様の効果を得られる。
それに加えて、レーザ発光装置10Gは、熱拡散板15の温度を目標温度T1よりも低くしつつ、レンズ保持部材14が目標温度T2となるようにペルチェ素子31の冷却面31aの温度を調節するので、レーザ光源部(レーザアレイチップ21)や集光レンズ23をより適切に冷却できる。
したがって、本開示に係るレーザ発光装置の実施例3のレーザ発光装置10Gでは、高い強度のレーザ光を集光レンズ23で集光しても、その集光レンズ23の温度上昇を抑制できる。
なお、実施例2および実施例3では、図3のレーザ発光装置10にサーミスタ61やサーミスタ63を設けているが、図5のレーザ発光装置10Aや図8のレーザ発光装置10Dに設けてもよく、実施例2および実施例3の構成に限定されない。