以下に、本発明に係るレーザモジュールの実施形態および各実施例について図面を参照しつつ説明する。先ず、本発明に係るレーザモジュールの概念を、図1から図4に示す実施形態に係るレーザモジュール10を用いて説明する。なお、図1、図2および図4では、レーザモジュール10の構成の理解を容易なものとするために、各部の構成を模式的に示している。
本発明に係るレーザモジュールとしての一実施形態のレーザモジュール10は、図1および図2に示すように、筐体11に各電線12と光ファイバ13とが接続されて構成される。このレーザモジュール10では、各電線12を介して電力が供給されると、光ファイバ13を通して高い強度のレーザ光を出力する。その筐体11は、一端が開放された箱状を呈するハウジング部材14と、全体に板状を呈する熱拡散板15と、を備え、ハウジング部材14の開放端を塞ぐように熱拡散板15が取り付けられて構成される。
そのハウジング部材14は、図2に示すように、全体に中空の直方体形状を呈し、その一端が開放されて形成されている。ハウジング部材14には、開放側とは反対側の奥壁14aにレンズ取付穴14bが設けられ、奥壁14aと直交する下壁14cに2つの電線挿入穴14d(図2では一方のみ示す)が設けられている。レンズ取付穴14bは、後述する集光レンズ22を取り付けるための箇所であり、両電線挿入穴14dは、電線12を通すための箇所である。この両電線挿入穴14dは、密閉性を保ちつつ電線12を通すように構成されている。
より詳細には、このハウジング部材14には、図3に示すように、開放端にフランジ部14eが設けられ、そのフランジ部14eには一対の位置決め穴14f(図3では一方のみ示す)と複数の取付穴14gとが設けられている。フランジ部14eは、この実施形態では、ハウジング部材14の両側から外側へと突出する板状を呈する。位置決め穴14fは、各フランジ部14eに1つずつ設けられており、対応するフランジ部14eを貫通して形成されている。各取付穴14gは、熱拡散板15を取り付けるための穴であり、各フランジ部14eに貫通して複数設けられている。また、ハウジング部材14には、奥壁14aに複数の固定ネジ穴14hが設けられている。この各固定ネジ穴14hは、後述する光ファイバ支持部材24を取り付けるためのネジ穴であり、奥壁14aを部分的に穿つとともに内周壁面にネジ溝が設けられて形成されている。このハウジング部材14の開放端に熱拡散板15が取り付けられる。
その熱拡散板15は、筐体11内での後述するレーザアレイチップ19の位置決めをすべくレーザアレイチップ19が設けられるベース部材であり、ハウジング部材14と同じ熱伝導率か当該ハウジング部材14よりも熱伝導率の高い材料を用いて形成される。熱拡散板15は、例えば金属材料等の熱伝導率(熱伝導性)の高い材料を用いて形成され、この実施形態では一例として銅を用いている。この熱拡散板15には、図2から図4に示すように、レーザアレイチップ19の実装(配置)のためのマウント部16が形成されている。そのマウント部16は、熱拡散板15上に絶縁層(図7および図8の後述する絶縁層16a参照)と、導通層(図7および図8の後述する導通層16bおよび導通層16c参照)と、が適宜設けられて形成され、レーザアレイチップ19に対する回路を構成する。また、マウント部16には、レーザアレイチップ19の位置決めをする位置決め部が設けられている。この位置決め部は、レーザアレイチップ19の所定の箇所と接することにより位置決めするものであれば、突起により構成されていてもよく、凹所により構成されていてもよい。
熱拡散板15には、この実施形態では、図3に示すように、一対の位置決めピン15aと複数の取付ネジ穴15bとを設けている。この各位置決めピン15aは、ハウジング部材14の各フランジ部14eに設けた位置決め穴14fに対応して設けられ、その位置決め穴14fへと挿入することが可能とされている。各位置決めピン15aは、それぞれが対応する位置決め穴14fへと挿入されると、熱拡散板15のハウジング部材14に対する位置を所定のものとする。各取付ネジ穴15bは、ハウジング部材14の各フランジ部14eに設けた各取付穴14gに対応して設けられ、その取付穴14gを経たネジ部材の締め付け固定を可能とする。
また、熱拡散板15には、図2から図4に示すように、絶縁部材17が設けられる。その絶縁部材17は、熱拡散板15に対する電気の伝導を断ちつつ、各電線12および後述する各電極18を取り付ける箇所を構成する。絶縁部材17は、この実施形態では、絶縁性を有する樹脂材料を用いて形成し、一例としてPOM(ポリオキシメチレン(polyoxymethylene))を用いて形成する。この絶縁部材17は、直方体形状を呈し、後述するように各電極18と各電線12とを電気的に接続しつつそれらを熱拡散板15に取り付ける箇所を構成する。この絶縁部材17には、後述するネジ25の締め付け固定を可能とする固定ネジ穴17a(図4参照)が形成され、各電極18および各電線12の取り付けが可能とされている。
その各電線12および各電極18は、マウント部16に設けられるレーザアレイチップ19に電力を供給するものである。この実施形態では、後述するようにレーザアレイチップ19が100(A)以上の高電流の入力を想定している。そのため、各電線12および各電極18は、十分な断面積を有するものとしている。これに伴い、各電線12は、固定のために大きな力を要することから、一例として先端にリング状の端子12aを設けている。また、各電極18は、導電性材料から為る長尺な板状を呈し、基端に取付穴18aが形成された取付片部18bが設けられている。この各電極18は、後述するように、取付片部18bが絶縁部材17に取り付けられるとともに、その取付片部18bとは反対側の先端部18cがマウント部16に押し当てられる。
そのマウント部16に設けられるレーザアレイチップ19は、複数の面発光型レーザを配列させて構成している。レーザアレイチップ19は、この実施形態では、複数の垂直共振器面発光レーザ(VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER))を適宜配置して構成している。その各VCSELは、円筒状の活性領域と薄膜活性層を挟む反射鏡とから構成され、主面と直交する方向に形成された共振器からレーザ光を出射する。各VCSELは、VCSELアレイ基板にフォトマスクを被膜し、そのフォトマスクのパターンニングに従って形成する。このような構成であることから、レーザアレイチップ19では、各VCSELから適切にレーザ光を出射させるために、高電流(この例では100(A)以上)の入力を要するものとしている。これにより、レーザアレイチップ19では、小さな寸法であっても高い強度(光量)のレーザ光を出力することができる。
レーザアレイチップ19では、所定の電力が供給されることにより、各VCSELからのレーザ光が出射面19aから出射される。このレーザアレイチップ19は、所定の箇所をマウント部16の位置決め部に押し当てることで、位置決めされてマウント部16に配置される。そして、レーザアレイチップ19は、ワイヤボンディングあるいはフリップチップボンディング等により、マウント部16において構成された回路と電気的に接続されてマウント部16に実装される。これにより、レーザアレイチップ19は、ベース部材としての熱拡散板15(そのマウント部16)に正確に位置決めされて設けられる。なお、レーザアレイチップ19は、マウント部16の位置決め部に押し当てることに変えて、アライメントマーク等を顕微鏡で見ながら位置決めしてマウント部16に設ける構成であってもよい。このレーザアレイチップ19からのレーザ光の出射方向にコリメータレンズ21が設けられる。
そのコリメータレンズ21は、レーザアレイチップ19(その出射面19a)から発散光束として出射されるレーザ光を平行光束(実際には緩い発散光束)とする。コリメータレンズ21は、この実施形態では、レーザアレイチップ19における各VCSELに対応して複数のマイクロレンズを設けてレンズアレイを構成することにより構成する。このコリメータレンズ21は、レーザアレイチップ19と一体の構成としてもよく、レーザアレイチップ19と別体の構成としてマウント部16(熱拡散板15)やハウジング部材14に設けるものであってもよい。なお、コリメータレンズ21は、レーザアレイチップ19から出射されるレーザ光を平行光束とするものであれば、他の構成であってもよく、この実施形態の構成に限定されるものではない。このコリメータレンズ21を経た平行光束としてのレーザ光の進行方向に集光レンズ22が設けられる。
その集光レンズ22は、コリメータレンズ21を経た平行光束としてのレーザ光を集光して、光ファイバ13の入射端面13aに入射させる。このため、この実施形態では、コリメータレンズ21と集光レンズ22とが、レーザアレイチップ19から出射されるレーザ光を成形して集光する光学部材として機能する。集光レンズ22は、この実施形態では、ハウジング部材14の奥壁14aに設けられたレンズ取付穴14bに設けられる。詳細には、集光レンズ22は、図3に示すように、レンズ取付穴14bに挿入して位置決めされ、その後からレンズ取付穴14bに挿入した押えリング23によりレンズ取付穴14bに固定される。これにより、集光レンズ22は、ハウジング部材14に正確に位置決めされて設けられる。この集光レンズ22を経た集光光束としてのレーザ光の進行方向に光ファイバ13(その入射端面13a)が設けられる。
光ファイバ13は、図2に示すように、一端を入射端面13aとしかつ他端を出射端面として、入射端面13aに入射されたレーザ光を出射端面(他端)から出射する。その他端(出射端面)は、例えば、レーザ加工機やレーザを利用したエンジン用の点火プラグ等の外部のレーザ使用機器に接続される。この光ファイバ13は、光ファイバ支持部材24に支持されることで、集光レンズ22を経た集光光束としてのレーザ光を適切に入射させるべく入射端面13aを集光レンズ22に対して所定の位置として、ハウジング部材14に取り付けられる。
その光ファイバ支持部材24は、図3に示すように、大きな径寸法の円筒状の取付基部24aと、そこと中心軸を一致させた小さな径寸法の円筒状の支持筒部24bと、を有する。その取付基部24aは、奥壁14aのレンズ取付穴14bを塞ぐ大きさ寸法とされ、ハウジング部材14の奥壁14aに設けられた複数の固定ネジ穴14hに対応して複数の取付穴24cが設けられている。支持筒部24bは、光ファイバ13を嵌め入れる内径寸法とされている。この支持筒部24bは、この実施形態では、密閉性を保ちつつ光ファイバ13を通すように構成されている。光ファイバ支持部材24は、支持筒部24bに光ファイバ13を嵌め入れた状態で、複数の取付穴24cを経たネジ部材が対応する固定ネジ穴14hに固定されることで、奥壁14aに固定される。すると、光ファイバ支持部材24は、光ファイバ13(その入射端面13a)の中心軸をレンズ取付穴14b(集光レンズ22)の中心軸に一致させつつ、入射端面13aと集光レンズ22との間隔を適切なものとする。
このレーザモジュール10は、一例として、以下のように組み付けられる。先ず、図3および図4に示すように、熱拡散板15のマウント部16にレーザアレイチップ19を位置決めして実装し、先端部18cをマウント部16に押し当てつつ取付片部18bを絶縁部材17上に載せて各電極18を設ける。その後、ハウジング部材14の下壁14cの各電線挿入穴14d(図2参照)を通した各電線12の端子12aを、絶縁部材17上の取付片部18bの上に載せる(図4参照)。そして、図4に示すように、各電線12のリング状の端子12aおよび各電極18の取付片部18bの取付穴18aを通したネジ25を絶縁部材17の固定ネジ穴17aに捻じ込むことにより、各電線12および各電極18を絶縁部材17に取り付ける。すると、各電線12(その端子12a)と各電極18(その取付片部18b)とが電気的に接続されるとともに、各電極18の先端部18cがマウント部16に押し当てられる。これにより、マウント部16に実装したレーザアレイチップ19が、マウント部16および各電極18を介して、各電線12(その端子12a)に電気的に接続される。
また、図3に示すように、ハウジング部材14の奥壁14aのレンズ取付穴14bに集光レンズ22を挿入して位置決めし、その後からレンズ取付穴14bに押えリング23を挿入して、集光レンズ22をレンズ取付穴14bに位置決め固定する。その後、支持筒部24bに光ファイバ13を嵌め入れた光ファイバ支持部材24(その取付基部24a)を、複数の取付穴24cを経たネジ部材を対応する固定ネジ穴14hに固定することで、ハウジング部材14(その奥壁14a)に取り付ける。このとき、光ファイバ支持部材24の取付基部24aとハウジング部材14の奥壁14aとの間に弾性体等の封止部材を介在させる。
その後、コリメータレンズ21を適宜設けるとともに、熱拡散板15に設けた一対の位置決めピン15aを、ハウジング部材14の各フランジ部14eに設けた位置決め穴14fに挿入しつつ、ハウジング部材14の開放端に熱拡散板15を宛がう。このとき、ハウジング部材14の開放端と熱拡散板15との間に弾性体等の封止部材を介在させる。そして、ハウジング部材14の各フランジ部14eに設けた各取付穴14gを経たネジ部材を、熱拡散板15に設けた各取付ネジ穴15bに締め付け固定することにより、ハウジング部材14の開放端を塞ぐように熱拡散板15を取り付ける。そのハウジング部材14と熱拡散板15とは、密閉状態で取り付けられている。
これにより、図1および図2に示すように、レーザモジュール10が組み付けられる。このレーザモジュール10では、ハウジング部材14と熱拡散板15と光ファイバ支持部材24とにより、密閉状態として筐体11が形成される。このため、ベース部材としての熱拡散板15は、筐体11の一部を構成して、レーザモジュール10の外郭の一部を形成する。この筐体11は、熱拡散板15を第1外郭部材とすると、それと第2外郭部材となるハウジング部材14との協働により全体の外郭が形成され、第3外郭部材となる光ファイバ支持部材24により密閉状態を保ちつつ光ファイバ13の取り付けが可能となる。そして、レーザモジュール10では、筐体11の内方に、各電線12から各電極18およびマウント部16を介して電力が供給されるレーザアレイチップ19が設けられている。また、レーザモジュール10では、筐体11の内方に、レーザアレイチップ19から出射されたレーザ光を光ファイバ13(その入射端面13a)へと導くコリメータレンズ21および集光レンズ22が設けられている。
このレーザモジュール10では、外部の電源装置に接続した両電線12から、各電極18およびマウント部16を経て、レーザアレイチップ19に電力を供給する。すると、レーザモジュール10では、レーザアレイチップ19(その出射面19a)から発散光束としてレーザ光が出射され、そのレーザ光がコリメータレンズ21によって平行光束とされて集光レンズ22に進行する。レーザモジュール10では、平行光束とされたレーザ光を集光レンズ22が光ファイバ13の入射端面13aに集光し、光ファイバ13を通してレーザ光を出射端部(他端)から外部へと出力させる。これにより、レーザモジュール10では、高い強度のレーザ光を、光ファイバ13の他端(出射端面)に接続したレーザ使用機器へと出力することができる。
ここで、レーザモジュール10では、レーザアレイチップ19が複数のVCSELが高い密度で設けられて構成されていることから、そのレーザアレイチップ19から高い密度で熱が発生する。このため、レーザモジュール10では、図2に破線で示すように、外郭を形成する筐体11の一部を構成する熱拡散板15に冷却装置30を宛がうことで、レーザアレイチップ19を冷却する。その冷却装置30としては、例えば、空冷式か液冷式かを問わずヒートシンクを用いることができ、空冷式の場合には自然対流によるものであっても送風ファン等を用いる強制対流によるものであってもよい。また、冷却装置30としては、ヒートシンクの放熱先の温度を十分に低く出来ない場合には、熱拡散板15とヒートシンクとの間にペルチェ素子を設ける構成であってもよい。
本発明に係るレーザモジュールの一実施形態のレーザモジュール10では、レーザアレイチップ19を実装するマウント部16を設けた熱拡散板15(ベース部材)で筐体11の一部を構成しているので、その熱拡散板15を外郭に位置させることができる。このため、レーザモジュール10では、外側から熱拡散板15に冷却装置30を宛がうことでレーザアレイチップ19を冷却することができるので、筐体11の内部に塵埃が入り込むことを防止しつつレーザアレイチップ19を冷却することができる。これにより、レーザモジュール10では、コリメータレンズ21や集光レンズ22に塵埃が付着することを防止しつつ、レーザアレイチップ19を冷却することができる。このことから、レーザモジュール10では、レーザアレイチップ19の発熱に起因してコリメータレンズ21や集光レンズ22が線膨張により形状や取付位置の変化することを防止しつつ、コリメータレンズ21や集光レンズ22への塵埃の付着を防止することができる。よって、レーザモジュール10では、高い強度のレーザ光を出力することができる。
また、レーザモジュール10では、筐体11の一部を構成する熱拡散板15(ベース部材)を熱伝導率の高い材料で形成するとともに、その熱拡散板15にレーザアレイチップ19を実装するマウント部16を設けている。このため、レーザモジュール10では、熱拡散板15自体を冷却することで、直接的にレーザアレイチップ19を冷却することができるので、全体の大型化を招くことを防止することができる。これは、例えば、筐体が熱伝導率の低い材料で形成されている場合により強力な冷却機能を有する冷却装置を用いる必要があることや、コリメータレンズ21や集光レンズ22への塵埃の付着を防止すべく筐体を二重構造とする必要があることによる。このことは、例えば、筐体の一部が熱伝導率の高い材料で形成されていても、当該材料とは別の箇所にレーザアレイチップ19が設けられている場合には同様である。よって、レーザモジュール10では、コリメータレンズ21や集光レンズ22に塵埃が付着することを防止することを可能としつつ小型化を実現することができ、高い強度のレーザ光を出力することができる。
さらに、レーザモジュール10では、筐体11の一部を構成する熱拡散板15(ベース部材)を熱伝導率の高い材料で形成するとともに、その熱拡散板15にレーザアレイチップ19を実装するマウント部16を設けている。このため、レーザモジュール10では、冷却装置30を熱拡散板15から外し、次に熱拡散板15をハウジング部材14から外し、次に電線12を熱拡散板15から外すことで、レーザアレイチップ19が設けられた熱拡散板15を取り外すことができる。これにより、レーザモジュール10では、新しいレーザアレイチップ19が位置決め固定されて実装されている新しい熱拡散板15を用いて、上記したように組み付けることで、新しいレーザアレイチップ19に交換することができる。このことから、レーザモジュール10では、冷却装置30を交換することなく、レーザアレイチップ19を交換することができ、ランニングコストの低減を図ることができる。これは、例えば、冷却装置を熱拡散板に冷媒を通すことのように熱拡散板が冷却装置の一部を形成する構成とすると、レーザアレイチップ19の交換に伴って冷却装置の交換も必要となることによる。
レーザモジュール10では、レーザアレイチップ19を高い精度で位置決めして熱拡散板15に設けている。また、レーザモジュール10では、集光レンズ22を高い精度で位置決めしてハウジング部材14に設けている。さらに、レーザモジュール10では、コリメータレンズ21を、高い精度で位置決めして熱拡散板15またはハウジング部材14に設けている。そして、レーザモジュール10では、熱拡散板15とハウジング部材14とが高い精度で位置決めして取り付けられる。加えて、レーザモジュール10では、新しい熱拡散板15を用いることで、新しいレーザアレイチップ19に交換するものとしている。これらのことから、レーザモジュール10では、レーザアレイチップ19と光学部材(コリメータレンズ21や集光レンズ22)との高い位置決め精度を確保しつつ、レーザアレイチップ19を交換することができる。よって、レーザモジュール10では、高い強度のレーザ光を継続して出力することができる。
レーザモジュール10では、外側から熱拡散板15に冷却装置30を宛がいレーザアレイチップ19を冷却するので、レーザアレイチップ19の発熱に起因して熱拡散板15が温度上昇するような状況であっても、レーザアレイチップ19の温度上昇を防止することができる。このことにより、レーザモジュール10では、集光レンズ22で集光した後のレーザ光のビームスポット径が大きくなることを防止して、安定して高い光量のレーザ光を出射することができる。
レーザモジュール10では、筐体11の一部を形成する熱拡散板15を、同じく筐体11の一部を形成するハウジング部材14と比較して、同じ熱伝導率か高い熱伝導率の材料用いて形成している。このため、レーザモジュール10では、ハウジング部材14を介して熱拡散板15の熱が変化することを防止することができるので、熱拡散板15をより効率良く冷却することができ、用いる冷却装置30をより小型化することができる。
レーザモジュール10では、レーザアレイチップ19を設けた熱拡散板15で、筐体11の一部を形成していることから、部品点数を削減することができ、小型化およびコストを低減することができる。
したがって、本発明に係るレーザモジュールとしての実施例1のレーザモジュール10では、小型化を実現しつつ高い強度のレーザ光を出力することができる。
次に、本発明のレーザモジュールの具体的な一例としての実施例1のレーザモジュール10Aについて、図5から図10を用いて説明する。この実施例1のレーザモジュール10Aは、上記した実施形態のレーザモジュール10におけるマウント部16および冷却装置30の構成を具体化するとともに、各電線12および各電極18を絶縁部材17に取り付けることによる作用を明確にした例である。この実施例1のレーザモジュール10Aは、基本的な概念および構成は上記した実施形態のレーザモジュール10と同様であることから、等しい概念および構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。なお、図9および図10では、各電線12および各電極18を絶縁部材17に取り付けることによる作用の理解を容易なものとするために、それらの部材の様子を強調して示している。
実施例1のレーザモジュール10Aでは、図5および図6に示すように、冷却装置30として、ペルチェ素子31とヒートシンク32とを用いており、熱拡散板15にペルチェ素子31を介してヒートシンク32を宛がう構成とする。すなわち、冷却装置30では、第1冷却部材としてのペルチェ素子31が熱拡散板15(そこに取り付けられたレーザアレイチップ19)を冷却し、第2冷却部材としてのヒートシンク32がペルチェ素子31(第1冷却部材)を冷却する。そのペルチェ素子31は、吸熱部となる冷却面31aを熱拡散板15に宛がい、かつ放熱部となる放熱面31bをヒートシンク32(その後述する吸熱部32a)に宛がって設ける。ペルチェ素子31は、電力線31cを介して所定の温度差となるように制御する。その所定の温度差は、熱拡散板15(レーザアレイチップ19)において保ちたい温度と、ヒートシンク32において放熱が可能な温度と、により設定する。これは、ヒートシンク32において放熱が可能な温度が、当該ヒートシンク32(その後述する放熱部32b)が設置される環境温度に応じて変化することによる。
そして、ペルチェ素子31は、実施例1では、冷却面31aを、熱拡散板15においてマウント部16(レーザアレイチップ19)が設けられた領域と絶縁部材17が設けられた領域との双方に対応する大きさ寸法としている。このペルチェ素子31は、冷却面31aを、絶縁部材17におけるマウント部16(レーザアレイチップ19)および絶縁部材17が設けられた領域の双方に対応させて熱拡散板15に宛がっている。すなわち、冷却装置30としてのペルチェ素子31(その冷却面31a)は、熱拡散板15を介在させてマウント部16(レーザアレイチップ19)と絶縁部材17とに対向するように、熱拡散板15に宛がって設けられている。加えて、ペルチェ素子31は、実施例1では、冷却面31aにおける中心付近を、マウント部16(レーザアレイチップ19)に最も接近させて、冷却面31aを熱拡散板15に宛がっている。ここで、ペルチェ素子31では、一般に冷却面31aの中心付近が冷却強度の最も高くなる箇所(冷却中心位置)となることから、冷却強度が最も高い箇所をマウント部16(レーザアレイチップ19)に最も接近させたこととなる。このことは、ヒートシンク32(吸熱部32a)であっても同様であることから、ペルチェ素子31を設けない場合には、吸熱部32aの中心付近をマウント部16(レーザアレイチップ19)に最も接近させて、吸熱部32aを熱拡散板15に宛がう。
その絶縁部材17は、実施例1では、少なくともマウント部16よりも弾性変形し易い材料(弾性率の低い材料)で形成し、より好適には後述するように各電極18を取り付けた際の当該各電極18からの応力による変形量を吸収するものとする。この変形量の吸収は、材料における弾性率を考慮しつつ大きさ寸法および形状を設定することで、可能とすることができる。絶縁部材17は、実施例1では、上記した実施形態と同様に、絶縁性を有する樹脂材料の一例としてPOM(ポリオキシメチレン(polyoxymethylene))を用いて形成する。
ヒートシンク32は、ペルチェ素子31の放熱面31bが宛がわれて伝達される吸熱部32aの熱を、複数のフィンが形成された放熱部32bで放熱させる。このヒートシンク32は、実施例1では、空冷式とされている。このため、ヒートシンク32は、放熱部32bから周辺の空気に放熱することにより、吸熱部32aに宛がわれたペルチェ素子31の放熱面31bの温度を下げる。なお、ヒートシンク32では、求められる冷却能力に応じて、送風ファンを設けて放熱部32bに強制対流を生じさせてもよい。
レーザモジュール10Aでは、図7および図8に示すように、マウント部16が構成されてレーザアレイチップ19が実装される。そのマウント部16は、熱拡散板15上に絶縁層16aを設け、その上に互いに接することが無いように2つの導通層16bおよび導通層16cを設けて形成されている。その絶縁層16aは、例えば、窒化アルミニウム(AlN(aluminum nitride))を用いて形成することができる。また、導通層16bおよび導通層16cは、例えば、銅(Cu)を用いて形成することができる。このため、マウント部16では、2つの導通層16bと導通層16cとが互いに絶縁層16aにより絶縁された状態で熱拡散板15上に設けられることで、回路が形成されている。
レーザアレイチップ19は、一方の端子群を導通層16bに接続するとともに、他方の端子群を導通層16cに接続することにより、マウント部16に形成された回路に実装する。このレーザアレイチップ19は、実施例1では、一方の端子群をワイヤボンディング(ワイヤ26参照)により導通層16bに接続し、他方の端子群をフリップチップボンディングにより導通層16cに接続している。そして、一方の電極18の先端部18cを導通層16bに押し当てるとともに、他方の電極18の先端部18cを導通層16cに押し当てることで、両電線12を介してレーザアレイチップ19に電力を供給することができる。これにより、レーザアレイチップ19を駆動することができる。
次に、このように複数のVCSELを設けて形成したレーザアレイチップを用いるレーザモジュールの技術の課題について、図9および図10も合わせて用いて説明する。なお、図9は、実施例1のレーザモジュール10Aにおいて絶縁部材17に各電極18を取り付けた際の作用を説明するための説明図である。また、図10は、比較のためにレーザモジュール10Xにおいて絶縁部材17Sに各電極18を取り付けた際の作用を説明するための説明図である。そのレーザモジュール10Xは、絶縁部材17に替えて絶縁部材17Sを用いることを除くと、実施例1のレーザモジュール10Aと等しい構成であることから、等しい構造の個所にはレーザモジュール10Aと同様の符号を用いて、詳細な説明は省略する。また、図9および図10では、絶縁部材17と絶縁部材17Sとにおける差異の理解を容易なものとするために、電極18、絶縁部材17、熱拡散板15の変形の様子を強調して示している。
レーザモジュール10Aでは、小さな寸法であっても高い強度(光量)のレーザ光を出力するために、複数のVCSELを設けて形成したレーザアレイチップ19を用いている。このため、レーザモジュール10Aでは、レーザアレイチップ19を適切に駆動させる、すなわち各VCSELから適切にレーザ光を出射させるために、高電流(この例では100(A)以上)の入力を要するものとしている。このことから、レーザモジュール10Aでは、異常発熱に起因する焼き切れ等の不具合を防止するために、十分な断面積を有する各電線12および各電極18を用いる必要がある。これに伴い、各電線12および各電極18は、強い剛性と重量を持つこととなり大型化してしまうので、固定のために大きな力を要することとなる。
ここで、各電線12は、マウント部16(その導通層16bおよび導通層16c)に直に接属することが望ましい。ところが、レーザモジュール10Aでは、上記したように各電線12の固定のために大きな力を要することから、マウント部16に直に接属するとマウント部16やそこに実装されたレーザアレイチップ19が微少ではあるが変位する虞がある。すると、レーザアレイチップ19に対するコリメータレンズ21や集光レンズ22の位置精度に影響し、レーザモジュール10Aにおけるレーザアレイチップ19から出射されるレーザ光の利用効率という観点において、高い強度のレーザ光の出力にも影響を及ぼす虞がある。
本発明に係るレーザモジュール10Aでは、絶縁性を有する樹脂材料(実施例1ではPOM)で形成した絶縁部材17を熱拡散板15に設けている。そして、レーザモジュール10Aでは、各電極18および各電線12を絶縁部材17にネジ25で締め付け固定するとともに、その各電極18の先端部18cをマウント部16(その導通層16bおよび導通層16c)に押し当てている。このため、レーザモジュール10Aでは、マウント部16に各電極18の先端部18cが押し当てられ、電気的に接続されることで、各電線12および各電極18の熱拡散板15への取り付けを確実なものとしつつ、その取り付けに要する大きな力がマウント部16(その導通層16bおよび導通層16c)に作用することを防止することができる。
特に、レーザモジュール10Aでは、熱拡散板15を、少なくともマウント部16よりも弾性変形し易い材料(弾性率の低い材料)であって、各電極18を取り付けた際の当該各電極18からの応力による変形量を吸収するものとしている。ここで、各電極18では、加工精度が十分ではなく形状が歪んでいる場合が考えられ、図9および図10に示す例では取付片部18bに対して先端部18cが屈曲しているものとする。このような場合であっても、レーザモジュール10Aでは、図9に示すように、先端部18cをマウント部16に押し当てつつ取付片部18bを絶縁部材17にネジ25で締め付け固定した各電極18の応力を、絶縁部材17が変形して吸収することができる。この作用の比較のために、絶縁部材17に替えて、セラミック等の硬質な脆性材料を絶縁部材17Sとして設けたレーザモジュール10Xを図10に示す。そのレーザモジュール10Xでは、絶縁部材17Sが硬質な脆性材料であることから、絶縁部材17Sが変形しないので、電極18の応力を吸収することができない。すると、レーザモジュール10Xでは、各電極18の応力により、絶縁部材17Sに固定した取付片部18bを起点として、マウント部16に押し当てた先端部18cが当該マウント部16を変位させて熱拡散板15を変形させる虞がある。すると、レーザモジュール10Xでは、マウント部16やそこに実装されたレーザアレイチップ19が変位し、レーザアレイチップ19から出射されるレーザ光の利用効率が低下して、高い強度のレーザ光の出力に影響を及ぼすことが考えられる。また、レーザモジュール10Xでは、絶縁部材17Sが電極18の応力に耐え切れず、割れてしまうことも考えられる。これに対して、レーザモジュール10Aでは、図9に示すように、各電極18の応力を絶縁部材17が変形することで吸収することができるので、例えば各電極18が歪んでいた場合であっても、高い強度のレーザ光を出力することができる。
ところで、レーザモジュール10Aでは、筐体11の内部に樹脂部材を使用すると、そこから気体成分として炭化水素等の汚染物質が経時的に放散される虞があり、その汚染物質がレーザ光により光分解されると堆積物となる。その堆積物は、レーザアレイチップ19の出射面19aやコリメータレンズ21や集光レンズ22に付着すると、レーザアレイチップ19から出射されるレーザ光の利用効率の低下を招いてしまう。このような汚染物質は、樹脂部材が高温となるにしたがって放散量が増加するのに対して、樹脂部材を低温に保つと放散量を抑制できることを実験により確認している。このため、レーザモジュール10Aでは、冷却装置30として用いるペルチェ素子31の冷却面31aを、マウント部16(レーザアレイチップ19)と絶縁部材17とに対向させるべく熱拡散板15に宛がっている。これにより、レーザモジュール10Aでは、熱拡散板15を介してマウント部16(レーザアレイチップ19)と絶縁部材17との双方を冷却することができる。このため、レーザモジュール10Aでは、絶縁部材17を設けることに起因して、堆積物の付着により、レーザアレイチップ19から出射されるレーザ光の利用効率の低下を抑制することができる。
実施例1のレーザモジュール10Aでは、基本的に実施形態のレーザモジュール10と同様の構成であることから、基本的に実施形態と同様の効果を得ることができる。
それに加えて、実施例1のレーザモジュール10Aでは、熱拡散板15に設けた樹脂材料で形成した絶縁部材17に各電極18および各電線12を絶縁部材17にネジ25で締め付け固定し、各電極18の先端部18cをマウント部16に押し当てている。このため、レーザモジュール10Aでは、各電線12および各電極18の熱拡散板15への取り付けを確実なものとしつつ、その取り付けに要する大きな力がマウント部16(その導通層16bおよび導通層16c)に作用することを防止することができる。これにより、レーザモジュール10Aでは、十分な断面積を有する各電線12および各電極18を用いても、マウント部16やレーザアレイチップ19の変位を防止することができるので、高い強度のレーザ光を出力することができる。
また、実施例1のレーザモジュール10Aでは、熱拡散板15を、少なくともマウント部16よりも弾性変形し易い材料(弾性率の低い材料)で形成している。このため、レーザモジュール10Aでは、絶縁部材17に締め付け固定した各電極18の応力を当該絶縁部材17が変形して吸収することができる。このことは、各電線12における応力に対しても同様に作用する。これにより、レーザモジュール10Aでは、例えば、各電極18の形状が歪んでいる場合であっても、マウント部16やレーザアレイチップ19の変位を防止することができるので、コストの低減を図りつつ高い強度のレーザ光を出力することができる。特に実施例1のレーザモジュール10Aでは、熱拡散板15を、各電極18を取り付けた際の当該各電極18からの応力による変形量を吸収するものとしている。このため、レーザモジュール10Aでは、各電極18の形状が歪んでいる場合であっても、マウント部16やレーザアレイチップ19の変位をより確実に防止することができ、コストの低減を図りつつ高い強度のレーザ光を出力することができる。
さらに、実施例1のレーザモジュール10Aでは、冷却装置30として用いるペルチェ素子31の冷却面31aを、熱拡散板15を介在させて、マウント部16(レーザアレイチップ19)と絶縁部材17との双方に対向させて設けている。このため、レーザモジュール10Aでは、マウント部16(レーザアレイチップ19)と絶縁部材17との双方を冷却することができるので、絶縁部材17を低温に保つことができる。これにより、レーザモジュール10Aでは、絶縁部材17を設けることによる堆積物の付着に起因して、レーザアレイチップ19からのレーザ光の利用効率が低下することを抑制することができる。このことは、レーザモジュール10Aでは、絶縁部材17がレーザアレイチップ19や光学部材(コリメータレンズ21や集光レンズ22)とともに筐体11に密閉して設けられていることから、より効果的である。
実施例1のレーザモジュール10Aでは、冷却装置30として用いるペルチェ素子31の冷却面31aを、熱拡散板15を介在させて、マウント部16(レーザアレイチップ19)と絶縁部材17との双方に対向させて設けている。このため、レーザモジュール10Aでは、レーザアレイチップ19を冷却するために設けた冷却装置30(ペルチェ素子31およびヒートシンク32)を用いて絶縁部材17を冷却することができる。ここで、高い密度で複数のVCSELが設けられて構成されたレーザアレイチップ19を十分に冷却するためには、一般に冷却装置30の吸熱部(ペルチェ素子31の冷却面31a)が冷却対象となるレーザアレイチップ19よりも大きくなる。そこで、レーザモジュール10Aでは、冷却装置30の吸熱部(冷却面31a)をレーザアレイチップ19、すなわちそれが実装されるマウント部16のみではなく、絶縁部材17にも対向させ、吸熱部(冷却面31a)の大きさを効率良く利用する。その結果、レーザモジュール10Aでは、レーザアレイチップ19と絶縁部材17とを十分に冷却することができる。
実施例1のレーザモジュール10Aでは、ペルチェ素子31の冷却面31aにおける中心付近をマウント部16(レーザアレイチップ19)に対向させて、冷却面31aを熱拡散板15に宛がっている。このため、レーザモジュール10Aでは、冷却強度が高い箇所をマウント部16(レーザアレイチップ19)に最も接近させることができるので、熱の発生源となるレーザアレイチップ19をより効果的に冷却しつつ、絶縁部材17も併せて冷却することができる。
実施例1のレーザモジュール10Aでは、熱拡散板15に対する電気の伝導を断ちつつ各電極18および各電線12を取り付ける箇所を構成し、その各電線12および各電極18における応力を吸収するための絶縁部材17を、樹脂材料により構成している。このため、レーザモジュール10Aでは、コストの低減を図りつつ高い強度のレーザ光を出力することができる。
実施例1のレーザモジュール10Aでは、熱拡散板15とハウジング部材14とで形成した筐体11内にレーザアレイチップ19や絶縁部材17を設けるとともに、その熱拡散板15を介してレーザアレイチップ19および絶縁部材17を冷却している。このため、レーザモジュール10Aでは、簡易な構成としつつコストの低い樹脂材料で絶縁部材17を形成しても、絶縁部材17からの堆積物の付着に起因するレーザアレイチップ19から出射されるレーザ光の利用効率の低下を防止することができる。これは、以下のことによる。樹脂材料を用いる場合、筐体内において、堆積物の発生源となる樹脂材料を密封することにより、レーザアレイチップ19やコリメータレンズ21や集光レンズ22とは異なる区画に樹脂材料を設ける二重に密封する構造とすることが考えられる。ところが、二重に密封する構造では、高コスト化を招くとともに、大型化を招いてしまう。これに対して、レーザモジュール10Aでは、熱拡散板15とハウジング部材14とで形成した筐体11内に設ける一重の構造であることから、二重構造とすることと比較して簡易な構成とすることができ、コストの削減を図ることができる。このことは、経年劣化に起因して交換が必要となるレーザモジュール10Aにおいては、より大きな効果を得ることができる。
したがって、本発明に係るレーザモジュールとしての実施例1のレーザモジュール10Aでは、小型化を実現しつつ高い強度のレーザ光を出力することができる。
なお、実施例1のレーザモジュール10Aでは、各電極18および各電線12を絶縁部材17にネジ25で締め付け固定している。しかしながら、十分な断面積を有する各電線12および各電極18であっても十分な強度で絶縁部材17に固定することができるものであれば、他の構成であってもよく、上記した実施例1の構成に限定されるものではない。
また、実施例1のレーザモジュール10Aでは、各電極18の先端部18cをマウント部16(その導通層16bおよび導通層16c)に押し当てる、すなわち電極18の弾性力を利用して各電極18とマウント部16とを電気的に接続している。しかしながら、各電線12および各電極18の熱拡散板15(絶縁部材17)への取り付けに要する大きな力がマウント部16に作用することを防止するものであれば、他の構成であってもよく、上記した実施例1の構成に限定されるものではない。
次に、本発明のレーザモジュールの一例としての実施例2のレーザモジュール10Bについて、図11から図13を用いて説明する。この実施例2のレーザモジュール10Bは、冷却装置30Bの構成が上記した実施例1のレーザモジュール10Aにおける冷却装置30の構成とは異なる例である。この実施例2のレーザモジュール10Bは、基本的な概念および構成は実施例1のレーザモジュール10Aと同様であることから、等しい概念および構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
実施例2のレーザモジュール10Bでは、図11から図13に示すように、冷却装置30Bとして、液冷式のヒートシンク33を用いている。このヒートシンク33は、吸熱ブロック34に冷媒管35が接続されて構成されている。その吸熱ブロック34は、全体に直方体形状を呈し、液体冷媒36を通すための冷媒通路34a(図13参照)が設けられ、吸熱部としての平坦な吸熱面34bを熱拡散板15に宛がって設けられる。冷媒通路34aは、熱拡散板15(吸熱面34b)と平行であって両電極18(その先端部18c)が並列する方向に、吸熱ブロック34を貫通して形成されている。冷媒管35は、吸熱ブロック34(その冷媒通路34a)に液体冷媒36を供給する管であり、冷媒通路34aに接続されるとともに、熱交換器を通るものとされている。ヒートシンク33では、吸熱面34bを、熱拡散板15を介在させてマウント部16(レーザアレイチップ19)と絶縁部材17とに対向させるように、熱拡散板15に宛がって設けられている。そして、ヒートシンク33は、冷媒通路34aをマウント部16(レーザアレイチップ19)に最も接近させて、吸熱面34bを熱拡散板15に宛がっている。
実施例2のレーザモジュール10Bでは、基本的に実施例1のレーザモジュール10Aと同様の構成であることから、基本的に実施例1のレーザモジュール10Aと同様の効果を得ることができる。
それに加えて、実施例2のレーザモジュール10Bでは、冷却装置30Bとして液冷式のヒートシンク33を用いていることから、設置位置の自由度をより高めることができる。すなわち、実施例1のレーザモジュール10Aのように複数のフィンが形成された放熱部32bを有するヒートシンク32を用いる場合には、放熱部32bの周辺の通気を考慮する必要がある。これに対して、レーザモジュール10Bでは、細長いチューブ等により形成した冷媒管35により液体冷媒36をヒートシンク33(その冷媒通路34a)に供給すれば良いので、より狭い空間であっても配置することができる。
また、実施例2のレーザモジュール10Bでは、冷却装置30Bとして用いるヒートシンク33の吸熱面34bを、マウント部16(レーザアレイチップ19)と絶縁部材17とに対向させるように熱拡散板15に宛がっている。このため、レーザモジュール10Bでは、マウント部16(レーザアレイチップ19)と絶縁部材17との双方を冷却することができるので、絶縁部材17を低温に保つことができる。これにより、レーザモジュール10Bでは、絶縁部材17を設けることに起因して、レーザアレイチップ19からのレーザ光の利用効率が低下することを防止することができる。
さらに、実施例2のレーザモジュール10Bでは、冷媒通路34aをマウント部16(レーザアレイチップ19)に最も接近させて吸熱面34bを熱拡散板15に宛がって、ヒートシンク33を設けている。ここで、上記した構成のヒートシンク33では、冷媒管35から供給される液体冷媒36が冷媒通路34aを通過する箇所が、冷却強度が最も高く(冷却中心位置)となる。このため、レーザモジュール10Bでは、吸熱ブロック34(ヒートシンク33)における冷却強度が最も高くなる箇所をマウント部16(レーザアレイチップ19)に最も接近させることができる。これにより、レーザモジュール10Bでは、熱の発生源となるレーザアレイチップ19をより効果的に冷却しつつ、絶縁部材17も併せて冷却することができる。
したがって、本発明に係るレーザモジュールとしての実施例2のレーザモジュール10Bでは、小型化を実現しつつ高い強度のレーザ光を出力することができる。
なお、実施例2のレーザモジュール10Bでは、ヒートシンク33の冷媒通路34aに液体冷媒36を通すものとしていたが、例えば気体冷媒を通すものであってもよく、実施例2の構成に限定されるものではない。
また、実施例2のレーザモジュール10Bでは、冷却装置30Bとして液冷式のヒートシンク33のみを用いていたが、冷媒管35が通る熱交換器の周辺温度が高い場合等には、実施例1のレーザモジュール10Aと同様にペルチェ素子31を併せて用いるものとしてもよく、実施例2の構成に限定されるものではない。
次に、本発明のレーザモジュールの一例としての実施例3のレーザモジュール10Cについて、図14および図15を用いて説明する。この実施例3のレーザモジュール10Cは、冷却装置30Cとしてのヒートシンク33Cの構成が、上記した実施例2のレーザモジュール10Bにおける冷却装置30Bのヒートシンク33の構成とは異なる例である。この実施例3のレーザモジュール10Cは、基本的な概念および構成は実施例2のレーザモジュール10Bと同様であることから、等しい概念および構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
実施例3のレーザモジュール10Cでは、図14および図15に示すように、冷却装置30Cとして、液冷式のヒートシンク33Cを用いている。このヒートシンク33Cでは、吸熱ブロック34Cに直方体に外形形状と略等しい形状の空間が内部に設けられ、その空間すなわち吸熱ブロック34Cの内方の全体を冷媒通路34Caとしている。そして、ヒートシンク33Cでは、熱拡散板15とは反対側から熱拡散板15(吸熱面34b)と直交する方向に、一方の冷媒管35Caが設けられている。また、ヒートシンク33Cでは、熱拡散板15(吸熱面34b)と平行であって各電線12が伸びる方向に、他方の冷媒管35Cbが設けられている。このヒートシンク33Cでは、冷媒管35Caから冷媒通路34Caに液体冷媒36が供給されて当該冷媒通路34Caを充填し、その冷媒通路34Caから冷媒管35Cbを経て液体冷媒36が排出される。そして、ヒートシンク33Cは、冷媒管35Caの延長方向にマウント部16(レーザアレイチップ19)を位置させて、吸熱面34bを熱拡散板15に宛がっている。
実施例3のレーザモジュール10Cでは、基本的に実施例2のレーザモジュール10Bと同様の構成であることから、基本的に実施例2のレーザモジュール10Bと同様の効果を得ることができる。
それに加えて、実施例3のレーザモジュール10Cでは、冷媒管35Caの延長方向にマウント部16(レーザアレイチップ19)を位置させて、吸熱面34bを熱拡散板15に宛がっている。このため、レーザモジュール10Cでは、熱の発生源となるレーザアレイチップ19をより効果的に冷却しつつ、絶縁部材17も併せて冷却することができる。これは、以下のことによる。液体冷媒36を通すことで吸熱する吸熱ブロックでは、液体冷媒36の圧力損失が大きい箇所で熱伝達率が大きくなる。そして、上記した構成のヒートシンク33Cでは、冷媒管35Caから供給される液体冷媒36が噴流として冷媒通路34Caの内壁面にぶつかる箇所で圧力損失が大きくなる。このことから、レーザモジュール10Cでは、冷媒管35Caの延長方向が、吸熱ブロック34C(ヒートシンク33C)において冷却強度が最も高くなる箇所(冷却中心位置)となる。よって、レーザモジュール10Cでは、吸熱ブロック34C(ヒートシンク33C)における冷却強度が最も高くなる箇所をマウント部16(レーザアレイチップ19)に最も接近させることができる。このため、レーザモジュール10Cでは、熱の発生源となるレーザアレイチップ19をより効果的に冷却しつつ、絶縁部材17も併せて冷却することができる。
したがって、本発明に係るレーザモジュールとしての実施例3のレーザモジュール10Cでは、小型化を実現しつつ高い強度のレーザ光を出力することができる。
次に、本発明のレーザモジュールの一例としての実施例4のレーザモジュール10Dについて、図16から図18を用いて説明する。この実施例4のレーザモジュール10Dは、冷却装置30Dとしてのヒートシンク33Dの構成が、上記した実施例2のレーザモジュール10Bにおける冷却装置30Bのヒートシンク33の構成とは異なる例である。この実施例4のレーザモジュール10Dは、基本的な概念および構成は実施例2のレーザモジュール10Bと同様であることから、等しい概念および構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。なお、図18では、液体冷媒36の温度分布(温度変化)の理解を容易なものとするために、冷媒管35Daから冷媒通路34Daを経て冷媒管35Dbに至る液体冷媒36の流路を実線で示すとともに、吸熱ブロック34Dを二点鎖線で示している。
実施例4のレーザモジュール10Dでは、図16および図17に示すように、冷却装置30Dとして、液冷式のヒートシンク33Dを用いている。このヒートシンク33Dでは、熱拡散板15(吸熱面34b)と平行であってマウント部16(レーザアレイチップ19)と絶縁部材17とが並列する方向に、吸熱ブロック34Dを貫通して冷媒通路34Daが形成されている。そして、ヒートシンク33Dでは、冷媒通路34Daが伸びる方向であってマウント部16(レーザアレイチップ19)側に一方の冷媒管35Daが設けられ、同方向であって絶縁部材17側に他方の冷媒管35Dbが設けられている。このヒートシンク33Dでは、冷媒管35Daから冷媒通路34Daに液体冷媒36が供給され、その液体冷媒36が冷媒通路34Daを通過して冷媒管35Dbを経て排出される。そして、ヒートシンク33Dは、冷媒通路34Daにおける冷媒管35Da側をマウント部16(レーザアレイチップ19)に最も接近させて、吸熱面34bを熱拡散板15に宛がっている。このため、吸熱ブロック34Dは、液体冷媒36の流れる方向で見て、冷媒通路34Daにおける上流側をマウント部16(レーザアレイチップ19)に対向させるとともに、下流側を絶縁部材17に対向させて設けられている。
実施例4のレーザモジュール10Dでは、基本的に実施例2のレーザモジュール10Bと同様の構成であることから、基本的に実施例2のレーザモジュール10Bと同様の効果を得ることができる。
それに加えて、実施例4のレーザモジュール10Dでは、冷媒通路34Daにおける冷媒管35Da側をマウント部16(レーザアレイチップ19)に最も接近させて吸熱面34bを熱拡散板15に宛がっている。また、レーザモジュール10Dでは、マウント部16(レーザアレイチップ19)側の冷媒管35Daから冷媒通路34Daに液体冷媒36を供給し、絶縁部材17側の冷媒管35Dbから冷媒通路34Daの液体冷媒36を排出する。このため、レーザモジュール10Dでは、熱の発生源となるレーザアレイチップ19をより効果的に冷却しつつ、絶縁部材17も併せて冷却することができる。これは、上記した構成のヒートシンク33では、図18に示すように、供給される液体冷媒36が冷媒通路34Daを通過する箇所であって、液体冷媒36の流れで見て上流側が冷却強度の最も高くなる箇所(冷却中心位置)となることによる。よって、レーザモジュール10Dでは、吸熱ブロック34D(ヒートシンク33D)の冷却強度の最も高くなる箇所をマウント部16(レーザアレイチップ19)に最も接近させることができる。このため、レーザモジュール10Dでは、レーザアレイチップ19をより効果的に冷却しつつ、絶縁部材17も併せて冷却することができる。
したがって、本発明に係るレーザモジュールとしての実施例4のレーザモジュール10Dでは、小型化を実現しつつ高い強度のレーザ光を出力することができる。
次に、本発明のレーザモジュールの一例としての実施例5のレーザモジュール10Eについて、図19から図22を用いて説明する。この実施例5のレーザモジュール10Eは、出射するレーザ光を内燃機関の点火に用いる例である。この実施例5のレーザモジュール10Eは、基本的な概念および構成は実施例1のレーザモジュール10Aと同様であることから、等しい概念および構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。また、図19から図22では、レーザモジュール10Eを省略して示している。
実施例5のレーザモジュール10Eでは、図19に示すように、内燃機関の一例としてのエンジン40の点火(エンジン点火プラグシステム)に用いるために設けられている。そのエンジン40は、吸気管41に吸気バルブ42が設けられ、排気管43に排気バルブ44が設けられ、燃焼室45がピストン46等により区画されて構成されている。その吸気バルブ42および排気バルブ44は、それぞれに接続されたカム47により進退動作されることで、吸気管41または排気管43を適宜開閉する。燃焼室45は、その周壁部に設けられた冷却水路48に供給される冷却水49により冷却される。そして、燃焼室45には、点火プラグ51が設けられている。
その点火プラグ51は、レーザモジュール10Eから出射されるレーザ光を用いることにより、優れた着火効率を有する内燃機関用点火プラグである。点火プラグ51では、レーザモジュール10Eからのレーザ光をQスイッチ式のレーザ媒質を含むレーザ共振器に照射してジャイアントパルスを発振させる。また、点火プラグ51では、そのパルス光を集光レンズ等の光学素子を用いてエンジン40の燃焼室45に集光することでエアブレークダウンを発生させることにより、燃焼室45内の混合気の着火を行う。このため、点火プラグ51には、レーザモジュール10Eの光ファイバ13の他端(その出射端面)が接続されている。
そのレーザモジュール10Eは、冷却装置30としてのヒートシンク32を、エンジン40の外径を形作るエンジン外郭部52に固定して設けられる。実施例5では、エンジン40のエンジン外郭部52に取付支持部53を設け、その取付支持部53でヒートシンク32を支持することにより、レーザモジュール10Eをエンジン外郭部52に固定している。その取付支持部53は、エンジン外郭部52と一体に形成してもよく、エンジン外郭部52とは別体に形成してもよい。なお、取付支持部53は、ヒートシンク32と一体に形成して、エンジン外郭部52に取り付けることを可能とするものであってもよい。
このエンジン40では、レーザモジュール10Eが駆動されると、レーザアレイチップ19から出力されたレーザ光がコリメータレンズ21によって平行光とされ、そのレーザ光が集光レンズ22で集光されて光ファイバ13の入射端面13aに入射する。そして、そのレーザ光は、光ファイバ13を通して点火プラグ51に入射される。すると、点火プラグ51では、レーザ光でレーザ共振器を照射してジャイアントパルスを発振させ、そのパルス光を光学素子でエンジン40の燃焼室45に集光することでエアブレークダウンを発生させる。これにより、エンジン40では、燃焼室45内の混合気の着火が行われて駆動する。
このレーザモジュール10Eは、冷却装置30(ペルチェ素子31およびヒートシンク32)により、レーザアレイチップ19を十分に冷却する必要がある。実施例5では、駆動時であってもレーザアレイチップ19を略50(℃)以下に保つことを目標とする。ここで、例えばエンジンルームのようなエンジン40が設けられた環境では、主にエンジン40からの発熱により温度が高くなることから、レーザモジュール10Eをどのように配置するかがポイントとなる。
一つの方法としてレーザモジュール10Eをエンジン外郭部52(エンジン40)から大きな間隔を置いて設ける方法が考えられるが、この方法ではレーザモジュール10Eから点火プラグ51へとレーザ光を送る光ファイバ13の長さが必要となる。しかしながら、光ファイバ13が高価であるのでコストの低減の妨げとなる。そこで、図20に示すように、レーザモジュール10Eをエンジン40の近くであっても、エンジン外郭部52とは離して設けることが考えられる。この場合、放熱部材としてのヒートシンク32は、エンジン40の周辺の気体に対して放熱部32bで熱を放出することとなるので、エンジン40の周辺の気体の温度により冷却機能が左右される。このように配置したレーザモジュール10Eおよびエンジン40を駆動させた状態における温度分布は、以下のようになった。エンジン40は、燃焼に起因して発熱しているが、冷却水路48に供給される冷却水49による冷却や大気への放熱により、エンジン外郭部52が略85(℃)に保たれている。それに伴って、エンジン40の周辺の温度は、エンジン40(エンジン外郭部52)で温められることにより、略80(℃)程度となっている。このため、エンジン40の周辺は、略50(℃)以下に保つことを目標とするレーザアレイチップ19を配置するには高温であることから、レーザモジュール10Eでは冷却装置30としてペルチェ素子31を併せて用いている。
そして、レーザモジュール10Eでは、ヒートシンク32の温度をエンジン40のエンジン外郭部52の温度よりも高くするように、ペルチェ素子31の表裏(冷却面31aと放熱面31b)の温度差を制御する。この例のレーザモジュール10Eでは、当該温度差ΔT=50(℃)としている。すると、エンジン40の周辺の温度が略80(℃)であるのに対して、ヒートシンク32で放熱を行うことにより当該ヒートシンク32を略93(℃)とすることができ、ペルチェ素子31の放熱面31bを略97(℃)とすることができた。このため、ペルチェ素子31の冷却面31aを略47(℃)とすることができ、それにより冷却されるレーザアレイチップ19の温度を略50(℃)とすることができた。このとき、筐体11のハウジング部材14の外郭温度は、略48(℃)となっていた。この状態での温度関係は、「レーザアレイチップ19<エンジン40の周辺の温度<エンジン外郭部52≦ヒートシンク32」となる。
ここで、図21に示すように、図20と同じ条件であってペルチェ素子31を用いない場合の温度分布を調べたところ以下のようになった。エンジン40の周辺の温度略80(℃)に対して、ヒートシンク32で放熱を行うことにより当該ヒートシンク32が略83(℃)となり、そのヒートシンク32では十分に冷却することができないためレーザアレイチップ19の温度が略86(℃)となった。このとき、筐体11のハウジング部材14の外郭温度は、略84(℃)となっていた。この状態での温度関係は、「エンジン40の周辺の温度<ヒートシンク32<レーザアレイチップ19≒エンジン外郭部52」となる。このように、レーザアレイチップ19では、略86(℃)が高過ぎることから、寿命が縮まってしまう虞がある。ところで、図20に示すように、レーザモジュール10Eをエンジン外郭部52とは離して設けることが望ましいが、レーザモジュール10Eを浮かして配置することができないので、どこかに取り付ける必要がある。
ここで、図22に示すように、レーザモジュール10Eの筐体11のハウジング部材14を直にエンジン外郭部52に接触させて設けた場合の温度分布を調べたところ以下のようになった。エンジン40の周辺の温度が略80(℃)であるのに対して、ヒートシンク32で放熱を行うことにより当該ヒートシンク32が略118(℃)となり、ペルチェ素子31の放熱面31bが略126(℃)となった。そして、ペルチェ素子31の冷却面31aが略76(℃)となり、それにより冷却されるレーザアレイチップ19の温度が略79(℃)となり、筐体11のハウジング部材14の外郭温度が略77(℃)となっていた。これは、以下のことが考えられる。エンジン外郭部52とレーザモジュール10Eとを離していた場合に、エンジン外郭部52が85(℃)に対してハウジング部材14の外郭温度が略48(℃)であったことから、接触させるとエンジン外郭部52からハウジング部材14へと大量の熱が流入する。これに伴って筐体11を構成する熱拡散板15の温度が上昇することにより、ヒートシンク32およびペルチェ素子31ではその冷却面31aを略76(℃)とするのが限界となってしまった。この状態での温度関係は、「エンジン40の周辺の温度<レーザアレイチップ19<エンジン外郭部52<ヒートシンク32」となる。
これに対して、実施例5のレーザモジュール10Eでは、図19に示すように、冷却装置30としてのヒートシンク32を、エンジン40の外径を形作るエンジン外郭部52に取付支持部53により固定して設けている。このため、温度分布を調べたところ以下のようになった。エンジン40の周辺の温度が略80(℃)であるのに対して、ヒートシンク32で放熱を行うことにより当該ヒートシンク32を略90(℃)とすることができ、ペルチェ素子31の放熱面31bを略94(℃)とすることができた。このため、ペルチェ素子31の冷却面31aを略44(℃)とすることができ、それにより冷却されるレーザアレイチップ19の温度を略47(℃)とすることができた。このとき、筐体11のハウジング部材14の外郭温度は、略45(℃)となっていた。この状態での温度関係は、「レーザアレイチップ19<エンジン40の周辺の温度<エンジン外郭部52≦ヒートシンク32」となる。このレーザモジュール10Eでは、エンジン外郭部52とレーザモジュール10Eとを離していた場合(図20参照)と比較しても、より効果的にレーザアレイチップ19を冷却することができた。
このことは、取付支持部53を介する接触によりヒートシンク32からエンジン40へと熱を流出させることができたことが考えられる。これは、エンジン外郭部52とレーザモジュール10Eとを離しているとエンジン外郭部52が85(℃)に対してヒートシンク32が略93(℃)であったことによる。ここで、エンジン40では、ヒートシンク32から流入する熱により高温化することが考えられる。ところが、レーザモジュール10Eの発熱量は、ペルチェ素子31における発熱を含んでもせいぜい100(W)程度であるとともに、その大半が周辺の大気に逃げていき、残りがヒートシンク32からエンジン40に流入する。これに対して、エンジン40では、発熱量は数百(kW)のレベルであることから、ヒートシンク32から流入する熱量の影響を略無視することができる。加えて、エンジン40では、熱容量がレーザモジュール10Eに対して極めて大きいことから、レーザモジュール10Eからの熱の流入に起因する温度への影響は殆どないものと考えることができる。
実施例5のレーザモジュール10Eでは、基本的に実施例1のレーザモジュール10Aと同様の構成であることから、基本的に実施例1のレーザモジュール10Aと同様の効果を得ることができる。
それに加えて、実施例5のレーザモジュール10Eでは、冷却装置30としてのヒートシンク32を、取付支持部53により、エンジン40の外径を形作るエンジン外郭部52に固定して設けている。このため、レーザモジュール10Eでは、エンジン外郭部52からの熱の流入に起因するレーザアレイチップ19の冷却効果の低減を防止することができ、効果的にレーザアレイチップ19を冷却することができる。また、レーザモジュール10Eでは、エンジン外郭部52に固定して設けていることから、光ファイバ13を長くすることを防止することができるので、コストの低減を図ることができる。
また、実施例5のレーザモジュール10Eでは、ペルチェ素子31の表裏(冷却面31aと放熱面31b)の温度差を制御することにより、ヒートシンク32の温度をエンジン40のエンジン外郭部52の温度よりも高くしている。このため、レーザモジュール10Eでは、ヒートシンク32からエンジン40へと熱を流出させることができることから、エンジン40をヒートシンク32の冷却に用いることができるので、より効果的にレーザアレイチップ19を冷却することができる。
したがって、本発明に係るレーザモジュールとしての実施例5のレーザモジュール10Eでは、小型化を実現しつつ高い強度のレーザ光を出力することができる。
なお、実施例5のレーザモジュール10Eでは、冷却装置30としてのヒートシンク32を、取付支持部53により、エンジン40の外径を形作るエンジン外郭部52に固定して設けている。しかしながら、エンジン外郭部52から筐体11(そのハウジング部材14)への熱の流入を防止しつつ、ヒートシンク32をエンジン外郭部52に取り付けるものであれば、上記した効果を得ることができる。このため、例えば、筐体11(そのハウジング部材14)とエンジン外郭部52との間に図19に二点鎖線で示すように断熱部材54を設けるものであってもよく、他の構成であってもよく、実施例5の構成に限定されるものではない。
次に、本発明のレーザモジュールの一例としての実施例6のレーザモジュール10Fについて、図23を用いて説明する。この実施例6のレーザモジュール10Fは、出射するレーザ光を内燃機関の点火に用いる例であって、この実施例5のレーザモジュール10Eとは冷却装置30Fの構成が異なる例である。この実施例6のレーザモジュール10Fは、基本的な概念および構成は実施例2のレーザモジュール10Bと同様であることから、等しい概念および構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。また、図23では、レーザモジュール10Fを省略して示している。さらに、実施例6のレーザモジュール10Fは、実施例5のレーザモジュール10Eと同様のエンジン40に設けられていることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
実施例6のレーザモジュール10Fでは、図23に示すように、冷却装置30Fとして、ペルチェ素子31と液冷式のヒートシンク33を用いており、熱拡散板15にペルチェ素子31を介してヒートシンク33を宛がう構成とする。そのペルチェ素子31は、実施例1のレーザモジュール10Aに用いたものと同様である。このようにペルチェ素子31を用いるのは、後述するようにヒートシンク33がエンジン40を冷却するための冷却水49を冷媒として用いて冷却することによる。
ヒートシンク33では、冷媒通路34aが形成された吸熱ブロック34に、冷媒管35Faと冷媒管35Fbが接続されている。冷媒管35Faと冷媒管35Fbとは、エンジン40の燃焼室45の周壁部に設けられた冷却水路48に接続されている。このヒートシンク33では、冷媒管35Faを通して冷却水路48の冷却水49が吸熱ブロック34の冷媒通路34aに供給されるとともに、冷媒通路34aの冷却水49が冷媒管35Fbを通して排出される。
実施例6のレーザモジュール10Fでは、基本的に実施例2のレーザモジュール10Bと同様の構成であることから、基本的に実施例2のレーザモジュール10Bと同様の効果を得ることができる。また、実施例6のレーザモジュール10Fでは、内燃機関の点火に用いることに関しては、基本的に実施例5のレーザモジュール10Eと同様の構成であることから、基本的に実施例5のレーザモジュール10Eと同様の効果を得ることができる。
それに加えて、実施例6のレーザモジュール10Fでは、冷却装置30Fとして液冷式のヒートシンク33を用いていることから、設置位置の自由度をより高めることができる。すなわち、実施例5のレーザモジュール10Eのように複数のフィンが形成された放熱部32bを有するヒートシンク32を用いる場合には、放熱部32bの周辺の通気を考慮する必要がある。これに対して、レーザモジュール10Fでは、細長いチューブ等により形成した冷媒管35Faと冷媒管35Fbとにより液体冷媒36をヒートシンク33(その冷媒通路34a)に供給すれば良いので、より狭い空間であっても配置することができる。
また、実施例6のレーザモジュール10Fでは、冷却装置30Fとしてのヒートシンク33の冷媒管35Faと冷媒管35Fbとを、エンジン40の燃焼室45の周壁部に設けられた冷却水路48に接続している。このため、レーザモジュール10Fでは、ヒートシンク33の冷却のためだけに冷却水49から熱を放出させる熱交換器を設ける必要がないので、より小型化を図ることができる。
さらに、実施例6のレーザモジュール10Fでは、冷却装置30Fとして液冷式のヒートシンク33に加えてペルチェ素子31を用いていることから、エンジン40を冷却するための冷却水49を用いて冷却するマウント部16(レーザアレイチップ19)を適切に冷却することができる。
したがって、本発明に係るレーザモジュールとしての実施例6のレーザモジュール10Fでは、小型化を実現しつつ高い強度のレーザ光を出力することができる。
なお、上記した実施形態および各実施例では、本発明に係るレーザモジュールの一例としての各実施例のレーザモジュール10について説明したが、複数の面発光型レーザが配列されたレーザアレイチップと、前記レーザアレイチップが設けられるベース部材と、前記レーザアレイチップから出射されるレーザ光を成形して集光する光学部材と、前記光学部材により集光されたレーザ光が入射される光ファイバと、前記レーザアレイチップと前記光学部材とを収納する筐体と、を備え、前記ベース部材は、前記筐体の一部を構成して外郭の一部を形成するレーザモジュールであればよく、上記した実施形態および各実施例に限定されるものではない。
また、上記した実施形態および各実施例では、ベース部材の一例としての熱拡散板15に冷却装置(30、30B、30C、30D、30F)を宛がうものとしている。しかしながら、レーザアレイチップ19や光学部材(コリメータレンズ21、集光レンズ22)を収容する筐体11の一部を、レーザアレイチップ19が設けられるベース部材(熱拡散板15)で構成するものであればよく、上記した実施形態および各実施例に限定されるものではない。
さらに、上記した実施例5および実施例6では、レーザ光を内燃機関の点火に用いる例を示していたが、レーザ加工機等のレーザ使用機器で用いるべく光ファイバ13の出射端面(他端)を当該レーザ使用機器に接続するものであってもよく、上記した実施例5および実施例6に限定されるものではない。
以上、本発明のレーザモジュールを実施形態および各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施形態および各実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。