本発明に係るレーザ発光装置の一例としての実施例1のレーザ発光装置10を、図1から図6を用いて説明する。併せて、その一例としてのレーザ発光装置10を備えるエンジン点火プラグシステムの一例としての実施例1のエンジン点火プラグシステム40について説明する。なお、図1では、エンジン点火プラグシステム40の構成の理解を容易なものとするために、レーザ発光装置10を省略して示す。また、図2では、レーザ発光装置10の構成の理解を容易なものとするために、外郭部材27を省略して示す。さらに、図2から図6では、レーザ発光装置10の構成の理解を容易なものとするために、各部の構成を模式的に示す。
本発明に係るレーザ発光装置としての一実施形態の実施例1のレーザ発光装置10は、図1に示すように、内燃機関の一例としてのエンジン41の点火に用いられてエンジン点火プラグシステム40を構成する。そのエンジン41は、吸気管42に吸気バルブ43が設けられ、排気管44に排気バルブ45が設けられ、燃焼室46がピストン47等により区画されて構成される。その吸気バルブ43および排気バルブ45は、それぞれに接続されたカム48により進退動作されることで、吸気管42または排気管44を適宜開閉する。燃焼室46は、その周壁部に設けられた冷却水路49に供給される冷却水51により冷却される。そして、燃焼室46には、点火プラグ52が設けられる。
その点火プラグ52は、レーザ発光装置10から出射されるレーザ光を用いることにより、優れた着火効率を有する内燃機関用の点火プラグである。点火プラグ52では、レーザ発光装置10からのレーザ光をQスイッチ式のレーザ媒質を含むレーザ共振器に照射してジャイアントパルスを発振させる。また、点火プラグ52では、そのパルス光を集光レンズ等の光学素子を用いてエンジン41の燃焼室46に集光することでエアブレークダウンを発生させることにより、燃焼室46内の混合気の着火を行う。このため、点火プラグ52には、レーザ発光装置10の後述する光ファイバ13の他端(その出射端面13b)が接続される。
このレーザ発光装置10は、エンジン41の近傍で固定されて設けられ、実施例1では、後述する冷却装置30としてのヒートシンク32をエンジン41の外径を形作るエンジン外郭部53に取付支持部を介して固定して設けられる。その取付支持部は、エンジン外郭部53と一体に形成してもよく、エンジン外郭部53とは別体に形成してもよく、ヒートシンク32と一体に形成してもよい。
レーザ発光装置10は、図2および図3に示すように、筐体11に導電体としての各電線12と光ファイバ13とを接続して構成される。このレーザ発光装置10では、各電線12(導電体)を介して電力が供給されると、光ファイバ13を通して高い強度のレーザ光を出力する。その筐体11は、一端が開放された箱状を呈するハウジング部材14と、全体に板状を呈する熱拡散板15と、を備え、ハウジング部材14の開放端を塞ぐように熱拡散板15を取り付けて構成される。
そのハウジング部材14は、図3に示すように、全体に中空の直方体形状を呈し、その一端を開放して形成する。ハウジング部材14には、開放側とは反対側の奥壁14aにレンズ取付穴14bを設け、奥壁14aと直交する下壁14cに2つの電線挿入穴14d(図3では一方のみ示す)を設ける。レンズ取付穴14bは、後述する集光レンズ22を取り付ける箇所であり、両電線挿入穴14dは、電線12を通す箇所である。この両電線挿入穴14dは、密閉性を保ちつつ電線12を通すように構成される。このハウジング部材14の開放端に熱拡散板15が取り付けられる。
その熱拡散板15は、後述するレーザアレイチップ19の筐体11内での位置決めをすべく当該レーザアレイチップ19を設けるベース部材であり、ハウジング部材14と同じ熱伝導率か当該ハウジング部材14よりも高い熱伝導率の材料を用いて形成する。熱拡散板15は、設けたレーザアレイチップ19を冷却するための十分な吸熱面積を確保する大きさ寸法とする。この熱拡散板15は、例えば金属材料等の熱伝導率(熱伝導性)の高い材料を用いて形成し、実施例1では一例として銅を用いる。熱拡散板15には、図1、図3、図4に示すように、レーザアレイチップ19の実装(配置)のためのマウント部16を形成する。そのマウント部16は、実施例1では、熱拡散板15上に絶縁層を設け、その上に互いに接することが無いように複数の導通層を適宜設けて構成する。その絶縁層は、例えば、窒化アルミニウム(AlN(aluminum nitride))を用いて形成することができ、導通層は、例えば、銅(Cu)を用いて形成することができる。このため、マウント部16では、複数の導通層が互いに絶縁層により絶縁された状態で熱拡散板15上に設けられて、レーザアレイチップ19に対する回路を形成する。また、マウント部16には、レーザアレイチップ19を位置決めする位置決め部を設ける。この位置決め部は、レーザアレイチップ19の所定の箇所と接することにより位置決めするものであれば、突起により構成してもよく、凹所により構成してもよい。
熱拡散板15には、図3、図4に示すように、絶縁部材17を設ける。その絶縁部材17は、熱拡散板15に対する電気の伝導を断ちつつ、各電線12および後述する各接続片18を取り付ける箇所を構成する。絶縁部材17は、実施例1では、少なくともマウント部16よりも弾性変形し易い材料(弾性率の低い材料)で形成し、より好適には各接続片18を取り付けた際の当該各接続片18からの応力による変形量を吸収するものとする。この変形量の吸収は、材料における弾性率を考慮しつつ大きさ寸法および形状を設定することで、可能とすることができる。この絶縁部材17は、実施例1では、絶縁性を有する樹脂材料を用いて形成し、一例としてPOM(ポリオキシメチレン(polyoxymethylene))を用いて形成する。この絶縁部材17は、直方体形状を呈し、後述するように各接続片18と各電線12とを電気的に接続しつつそれらを熱拡散板15に取り付ける箇所を構成する。この絶縁部材17には、後述するネジ24の締め付け固定のための固定ネジ穴17a(図4参照)を形成し、各接続片18および各電線12の取り付けを可能とする。
その各電線12および各接続片18は、マウント部16に設けられるレーザアレイチップ19に電力を供給すべく設ける。実施例1では、後述するようにレーザアレイチップ19が100(A)以上の高電流の入力を想定している。そのため、各電線12および各接続片18は、十分な断面積を有するものとする。これに伴い、各電線12は、固定のために大きな力を要することから、一例として先端にリング状の接続端子12aを設ける。また、各接続片18は、導電性材料から為る長尺な板状を呈し、基端に取付穴18a(図4参照)を形成した取付片部18bを設ける。この各接続片18は、後述するように、取付片部18bが絶縁部材17に取り付けられるとともに、その取付片部18bとは反対側の先端部18cがマウント部16に押し当てられる。
そのマウント部16に設けられるレーザアレイチップ19は、一例として複数の面発光型レーザを配列させて構成する。レーザアレイチップ19は、実施例1では、複数の垂直共振器面発光レーザ(VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER))を適宜配置して構成する。その各VCSELは、円筒状の活性領域と薄膜活性層を挟む反射鏡とから構成され、主面と直交する方向に形成された共振器からレーザ光を出射する。各VCSELは、VCSELアレイ基板にフォトマスクを被膜し、そのフォトマスクのパターンニングに従って形成する。このような構成であることから、レーザアレイチップ19では、各VCSELから適切にレーザ光を出射させるために、高電流(この例では100(A)以上のパルス電流)の入力を要する。これにより、レーザアレイチップ19では、小さな寸法であっても高い強度(光量)のレーザ光を出力することができる。
レーザアレイチップ19では、所定の電力が供給されると、各VCSELからのレーザ光を出射面19aから出射する。このレーザアレイチップ19は、所定の箇所をマウント部16の位置決め部に押し当てることで、位置決めして当該マウント部16に配置する。そして、レーザアレイチップ19は、ワイヤボンディングあるいはフリップチップボンディング等により、マウント部16に形成された回路と電気的に接続してマウント部16に実装する。これにより、レーザアレイチップ19は、ベース部材としての熱拡散板15(そのマウント部16)に正確に位置決めして設けられ、両電線12を介する電力の供給が可能となる。なお、レーザアレイチップ19は、マウント部16の位置決め部に押し当てることに変えて、アライメントマーク等を顕微鏡で見ながら位置決めしてマウント部16に設ける構成であってもよい。このレーザアレイチップ19からのレーザ光の出射方向にコリメータレンズ21を設ける(図3参照)。
そのコリメータレンズ21は、図3に示すように、レーザアレイチップ19(その出射面19a)から発散光束として出射されるレーザ光を平行光束(実際には緩い発散光束)とする。コリメータレンズ21は、実施例1では、レーザアレイチップ19における各VCSELに対応して複数のマイクロレンズを設けてレンズアレイを形成して構成される。このコリメータレンズ21は、レーザアレイチップ19と一体の構成としてもよく、レーザアレイチップ19とは別体の構成としてマウント部16(熱拡散板15)やハウジング部材14に設けてもよい。なお、コリメータレンズ21は、レーザアレイチップ19から出射されるレーザ光を平行光束とするものであれば、他の構成であってもよく、実施例1の構成に限定されるものではない。このコリメータレンズ21を経た平行光束としてのレーザ光の進行方向に集光レンズ22を設ける。
その集光レンズ22は、コリメータレンズ21を経た平行光束としてのレーザ光を集光して、光ファイバ13の入射端面13aに入射させる。このため、実施例1では、コリメータレンズ21と集光レンズ22とが、レーザアレイチップ19から出射されるレーザ光を成形して集光する光学部材として機能する。集光レンズ22は、実施例1では、ハウジング部材14の奥壁14aのレンズ取付穴14bに位置決めされて設けられる。この集光レンズ22を経た集光光束としてのレーザ光の進行方向に光ファイバ13(その入射端面13a)が設けられる。
光ファイバ13は、図3に示すように、一端を入射端面13aとしかつ他端を出射端面13b(図1参照)として、入射端面13a(一端)に入射されたレーザ光を出射端面13b(他端)から出射する。その他端(出射端面13b)は、例えば、レーザ加工機やレーザを利用したエンジン用の点火プラグ等の外部のレーザ使用機器に接続され、実施例1では上述したように点火プラグ52(図1参照)に接続される。この光ファイバ13は、光ファイバ支持部材23に支持されてハウジング部材14に取り付けられる。
その光ファイバ支持部材23は、大きな径寸法の円筒状の取付基部23aと、そこと中心軸を一致させた小さな径寸法の円筒状の支持筒部23bと、を有する。その取付基部23aは、奥壁14aのレンズ取付穴14bを塞ぐ大きさ寸法とする。支持筒部23bは、光ファイバ13を嵌め入れる内径寸法とし、実施例1では、密閉性を保ちつつ光ファイバ13を通す構成とする。光ファイバ支持部材23は、支持筒部23bに光ファイバ13を嵌め入れた状態でハウジング部材14(その奥壁14a)に固定する。すると、光ファイバ支持部材23は、光ファイバ13(その入射端面13a)の中心軸をレンズ取付穴14b(集光レンズ22)の中心軸に一致させつつ、入射端面13aと集光レンズ22との間隔を適切なものとする。このため、光ファイバ13では、集光レンズ22を経た集光光束としてのレーザ光が入射端面13aに適切に入射される。
このレーザ発光装置10は、一例として、以下のように組み付ける。先ず、図3および図4に示すように、熱拡散板15のマウント部16にレーザアレイチップ19を位置決めして実装し、先端部18cをマウント部16に押し当てつつ取付片部18bを絶縁部材17上に載せて各接続片18を設ける。その後、ハウジング部材14の下壁14cの各電線挿入穴14d(図3参照)を通した各電線12の接続端子12aを、絶縁部材17上の取付片部18bの上に載せる(図4参照)。そして、図4に示すように、各電線12のリング状の接続端子12aおよび各接続片18の取付片部18bの取付穴18aを通したネジ24を絶縁部材17の固定ネジ穴17aに捻じ込み、各電線12および各接続片18を絶縁部材17に取り付ける。すると、各電線12(その接続端子12a)と各接続片18(その取付片部18b)とが電気的に接続されるとともに、各接続片18の先端部18cがマウント部16に押し当てられる。これにより、マウント部16に実装したレーザアレイチップ19が、マウント部16および各接続片18を介して、各電線12(その接続端子12a)に電気的に接続される。
また、図3に示すように、ハウジング部材14の奥壁14aのレンズ取付穴14bに集光レンズ22を挿入して位置決め固定する。その後、支持筒部23bに光ファイバ13を嵌め入れた光ファイバ支持部材23(その取付基部23a)を、ハウジング部材14(その奥壁14a)に取り付ける。このとき、光ファイバ支持部材23の取付基部23aとハウジング部材14の奥壁14aとの間に弾性体等の封止部材を介在させる。その後、コリメータレンズ21を適宜設けるとともに、ハウジング部材14の開放端に熱拡散板15を嵌め入れて、ハウジング部材14の開放端を塞ぐように熱拡散板15を取り付ける。このとき、ハウジング部材14の開放端と熱拡散板15との間に弾性体等の封止部材を介在させることで、ハウジング部材14と熱拡散板15とが密閉状態で取り付けられる。
これにより、図2および図3に示すように、レーザ発光装置10が組み付けられる。このレーザ発光装置10では、ハウジング部材14と熱拡散板15と光ファイバ支持部材23とにより、密閉状態として筐体11が形成される。このため、ベース部材としての熱拡散板15は、筐体11の一部を構成して、レーザ発光装置10の外郭の一部を形成する。この筐体11は、熱拡散板15を第1外郭部材とすると、それと第2外郭部材となるハウジング部材14との協働により全体の外郭が形成され、第3外郭部材となる光ファイバ支持部材23により密閉状態を保ちつつ光ファイバ13が取り付けられる。筐体11では、各電線12がハウジング部材14の下壁14cの各電線挿入穴14d(図3参照)を通して設けられるので、各電線12が図2、図3、図5を正面視して下側から外方に突出される。その各電線12は、筐体11(後述する発光本体部26)の下方から、熱拡散板15側(後述する冷却装置30が設けられる側)へと取り回されて、外部の電源装置25(図1参照)に接続される。そして、レーザ発光装置10では、筐体11の内方に、電源装置25から各電線12を経て電力が供給されるレーザアレイチップ19が設けられる。
このレーザ発光装置10では、電源装置25に接続した両電線12から、各接続片18およびマウント部16を経て、レーザアレイチップ19に電力を供給する。すると、レーザ発光装置10では、レーザアレイチップ19(その出射面19a)から発散光束としてレーザ光を出射され、そのレーザ光がコリメータレンズ21によって平行光束とされて集光レンズ22に進行する。レーザ発光装置10では、平行光束とされたレーザ光を集光レンズ22が光ファイバ13の入射端面13aに集光し、光ファイバ13を通してレーザ光を出射端面13b(他端)((図1参照))から外部へと出力させる。これにより、レーザ発光装置10では、高い強度のレーザ光を、光ファイバ13の他端(出射端面13b)に接続したレーザ使用機器(実施例1では点火プラグ52(図1参照))に出力することができる。このことから、レーザ発光装置10では、筐体11およびそこに設けられた各構成が発光本体部26として機能し、各電線12が発光本体部26に電流を供給する導電体として機能する。
ここで、レーザ発光装置10では、小さな寸法であっても高い強度(光量)のレーザ光を出力するために、複数のVCSELを設けて形成したレーザアレイチップ19を用いている。このレーザ発光装置10では、レーザアレイチップ19を適切に駆動させる、すなわち各VCSELから適切にレーザ光を出射させるために、高電流(この例では100(A)以上)の入力を要するものとしている。このため、レーザアレイチップ19では、駆動により熱が発生するが、高温とされると寿命が短くなりかつ出力も低下する虞がある。このことから、レーザアレイチップ19では、適切に冷却しつつ駆動する必要があり、実施例1では、駆動時であっても略50(℃)以下に保つことを目標とする。
このため、レーザ発光装置10では、外郭を形成する筐体11の一部を構成する熱拡散板15に冷却装置30を宛がうことで、レーザアレイチップ19すなわち発光本体部26を冷却する。その冷却装置30としては、例えば、放熱部材としての空冷式のヒートシンクに送風機構としての送風ファンからの気流で強制対流を形成したものを用いることができる。また、冷却装置30としては、例えば、放熱部材としてのヒートシンクの放熱先の温度を十分に低く出来ない場合には、熱拡散板15とヒートシンクとの間にペルチェ素子等の熱電素子を設ける構成とする。
実施例1のレーザ発光装置10では、冷却装置30として、熱電素子としてのペルチェ素子31と、放熱部材としてのヒートシンク32と、送風機構としての送風ファン33と、を用いる。この冷却装置30は、熱拡散板15にペルチェ素子31を介してヒートシンク32を宛がい、そのヒートシンク32(その後述する放熱部32b)に向けて送風ファン33が気流を形成する(空気を送る)構成とする。冷却装置30では、第1冷却部材としてのペルチェ素子31が熱拡散板15(そのレーザアレイチップ19)を冷却し、第2冷却部材としてのヒートシンク32がペルチェ素子31を冷却し、第3冷却部材としての送風ファン33がヒートシンク32を冷却する。
そのペルチェ素子31は、吸熱部となる冷却面31aを熱拡散板15に宛がい、かつ放熱部となる放熱面31bをヒートシンク32(その後述する吸熱部32a)に宛がって設ける。ペルチェ素子31は、電力線31cを介して所定の温度差となるように制御する。その所定の温度差は、熱拡散板15(レーザアレイチップ19(発光本体部26))において保ちたい温度と、ヒートシンク32において放熱が可能な温度と、により設定する。これは、ヒートシンク32における放熱が可能な温度が、当該ヒートシンク32(その後述する放熱部32b)が設置される環境温度に応じて変化することによる。
そして、ペルチェ素子31は、実施例1では、冷却面31aを、熱拡散板15においてマウント部16(レーザアレイチップ19)が設けられた領域と絶縁部材17が設けられた領域との双方に対応する大きさ寸法とする。このペルチェ素子31は、冷却面31aを、絶縁部材17におけるマウント部16(レーザアレイチップ19)および絶縁部材17が設けられた領域の双方に対応させて熱拡散板15に宛がう。すなわち、冷却装置30としてのペルチェ素子31(その冷却面31a)は、熱拡散板15を介在させてマウント部16(レーザアレイチップ19)と絶縁部材17とに対向するように、熱拡散板15に宛がって設ける。加えて、ペルチェ素子31は、実施例1では、冷却面31aにおける中心付近を、マウント部16(レーザアレイチップ19)に最も接近させて、冷却面31aを熱拡散板15に宛がう。ここで、ペルチェ素子31では、一般に冷却面31aの中心付近が冷却強度の最も高くなる箇所(冷却中心位置)となることから、冷却強度が最も高い箇所をマウント部16(レーザアレイチップ19)に最も接近させている。このことは、ヒートシンク32(後述する吸熱部32a)であっても同様であることから、ペルチェ素子31を設けない場合には、吸熱部32aの中心付近をマウント部16(レーザアレイチップ19)に最も接近させて、吸熱部32aを熱拡散板15に宛がう。
ヒートシンク32は、ペルチェ素子31の放熱面31bが宛がわれて伝達される吸熱部32aの熱を、複数のフィン32c(図2参照)が形成された放熱部32bで放熱させる。このヒートシンク32は、放熱部32bから周辺の空気に放熱することにより、吸熱部32aに宛がわれたペルチェ素子31の放熱面31bの温度を下げる。その放熱部32bは、実施例1では、図2、図5を正面視して、上下方向に伸びる複数のフィン32cを左右方向に並列させて構成する。このため、放熱部32bでは、各フィン32cが、後述するように送風ファン33からの気流を、図2、図3、図5を正面視して上下方向へと案内することができる。ここで、レーザ発光装置10では、上述したように、各電線12(導電体)を筐体11(発光本体部26)の下方から熱拡散板15側(冷却装置30が設けられる側)へと取り回している。このため、放熱部32b(その各フィン32c)は、後述する送風ファン33からの気流の一部を各電線12(導電体)に向けて案内する(図5の矢印A2参照)。換言すると、レーザ発光装置10では、放熱部32b(各フィン32c)から熱を吸収して当該放熱部32b(各フィン32c)から排出される空気(排気)の一部が各電線12に向かうように、ヒートシンク32(放熱部32b(各フィン32c))と各電線12との位置関係(レイアウト)を設定している。
送風ファン33は、羽根部33aを回転可能に収容する筐体に取込口33bおよび送風口33cが設けられて構成される。この送風ファン33は、電力が供給されて羽根部33aが回転駆動されることにより、取込口33bから周辺の空気を取り込み、その取り込んだ空気を送風口33cから所定の方向へと送り出して、所定の方向への気流を形成する。この送風ファン33は、送風口33cをヒートシンク32の放熱部32bに正対して設け、放熱部32bに強制対流を生じさせて熱伝達を促す。
加えて、実施例1のレーザ発光装置10では、発光本体部26すなわち筐体11および光ファイバ支持部材23を取り囲んで外郭部材27を設ける。その外郭部材27は、送風ファン33(送風機構)により生じた気流が発光本体部26(筐体11や光ファイバ支持部材23)に当たることを防止する。外郭部材27は、実施例1では、発光本体部26を収容可能な直方体形状を呈し、光ファイバ開口27aと電線開口27bと冷却開口27cとを有する。その光ファイバ開口27aは、光ファイバ支持部材23に支持されて発光本体部26から突出される光ファイバ13を通す箇所である。電線開口27bは、ハウジング部材14の両電線挿入穴14dから筐体11(発光本体部26)の外方に突出される電線12を通す箇所である。冷却開口27cは、熱拡散板15に宛がわれる冷却装置30(実施例1ではペルチェ素子31)を通す箇所である。このため、レーザ発光装置10では、発光本体部26すなわち筐体11および光ファイバ支持部材23が外郭部材27に取り囲まれた状態で、電源装置25から電線12を介して電力が供給されて光ファイバ13の他端(出射端面13b)から高い強度のレーザ光を出力する。
このレーザ発光装置10は、図1に示すように、エンジン点火プラグシステム40を構成して内燃機関の一例としてのエンジン41の点火に用いられる。そのエンジン点火プラグシステム40では、レーザ発光装置10が駆動されると、レーザアレイチップ19から出力されたレーザ光がコリメータレンズ21によって平行光とされ、そのレーザ光が集光レンズ22で集光されて光ファイバ13の入射端面13aに入射する。そして、そのレーザ光は、光ファイバ13を通して出射端面13bから点火プラグ52に入射される。すると、点火プラグ52では、レーザ光でレーザ共振器を照射してジャイアントパルスを発振させ、そのパルス光を光学素子でエンジン41の燃焼室46に集光することでエアブレークダウンを発生させる。これにより、エンジン点火プラグシステム40は、燃焼室46内の混合気を着火させてエンジン41を駆動させる。
ここで、例えばエンジンルームのようなエンジン41が設けられた環境では、主にエンジン41からの発熱により温度が高くなる。そして、レーザ発光装置10では、放熱部材としてのヒートシンク32がエンジン41の周辺の気体に対して放熱部32bで熱を放出するので、エンジン41の周辺の気体の温度により冷却機能が左右される。ここで、図1に示すエンジン点火プラグシステム40では、レーザ発光装置10およびエンジン41を駆動させた状態において、エンジン41の周辺の温度が略80(℃)程度となった。これは、エンジン41の周辺では、冷却水路49に供給される冷却水51による冷却や大気への放熱により温度上昇が抑制されているものの、燃焼に起因して発熱するエンジン41(エンジン外郭部53)で温められることによる。このため、エンジン41の周辺は、略50(℃)以下に保つことを目標とするレーザアレイチップ19を配置するには高温である。このことから、実施例1のレーザ発光装置10では、冷却装置30として、ヒートシンク32(放熱部材)および送風ファン33(送風機構)に加えてペルチェ素子31(熱電素子)を併せて用いている。
このレーザ発光装置10では、図5に示すように、送風ファン33が取込口33bから周辺の空気を取り込んで気流を形成することから(矢印A1参照)、その送風ファン33からの気流(送られる空気)の温度がエンジン41の周辺の温度の略80(℃)となる。このため、レーザ発光装置10では、ヒートシンク32の温度を送風ファン33からの空気の温度(エンジン41の周辺の温度)よりも高くするように、ペルチェ素子31の表裏(冷却面31aと放熱面31b)の温度差ΔTを制御する。実施例1のレーザ発光装置10では、その温度差ΔTを55(℃)(ΔT=55)とする。すると、送風ファン33からの空気の温度が略80(℃)であるのに対して、放熱部32bで放熱を行うことによりヒートシンク32を略90(℃)とすることができ、ペルチェ素子31の放熱面31b(図3参照)を略100(℃)とすることができた。このため、ペルチェ素子31の冷却面31a(図3参照)を略45(℃)とすることができ、それにより冷却されるレーザアレイチップ19の温度を略50(℃)とすることができた。このとき、送風ファン33からの気流により放熱部32bから排出された空気(排気(矢印A2、A3参照))の温度は略83(℃)となっていた。これにより、レーザ発光装置10では、レーザアレイチップ19を目標とした略50(℃)以下に保つことができる。
このレーザ発光装置10では、レーザアレイチップ19が100(A)以上の高電流が入力されて駆動されることから、電源装置25から電流が送られる導電体としての各電線12でも熱が発生する。ここで、図5と基本的に同じ構成であって、正面視して、各電線12(導電体)を筐体11(発光本体部26)の手前側から熱拡散板15側(冷却装置30が設けられる側)へと取り回したレーザ発光装置10Xを図6に示す。このレーザ発光装置10Xでは、各電線12(導電体)を取り回す位置を除くと、実施例1のレーザ発光装置10(図5参照)と等しい構成であることから、等しい構造の個所にはレーザ発光装置10と同様の符号を用いて、詳細な説明は省略する。レーザ発光装置10Xでは、上述したレーザ発光装置10(図5参照)と同様の温度分布となるように冷却装置30を調節した状態において、各電線12(導電体)の温度を調べたところ略110(℃)程度まで上昇した。この状態での温度関係は、「レーザアレイチップ19<各電線12の温度」となる。このため、レーザ発光装置10Xでは、各電線12(導電体)が発光本体部26(筐体11)に接続されているので、略110(℃)とされた各電線12(導電体)から、略50(℃)としているレーザアレイチップ19(発光本体部26)へ向けて熱が伝達される。すると、冷却装置30では、レーザアレイチップ19で発生した熱に加えて、各電線12から伝達される熱も冷却することとなり、負荷が増大してしまったり、レーザアレイチップ19(発光本体部26)を十分に冷却できなくなってしまったりする虞がある。
また、レーザ発光装置10Xでは、ヒートシンク32の放熱部32b(その各フィン32c)に送風ファン33からの気流が送られるが、その気流により放熱部32b(各フィン32c)から熱を吸収した空気が排出される(矢印A2、A3参照)。ここで、レーザ発光装置10Xは、エンジン41(図1参照)が配置された環境に設けられることから、放熱部32b(各フィン32c)から排出された空気(排気)の一部がエンジン41やそれを覆う部材等からなる隔壁部材54に当たって発光本体部26へ向かう虞がある(矢印A2、A4参照)。なお、レーザ発光装置10Xでは、放熱部32b(各フィン32c)からの排気のうち、図6を正面視して上側へと向かう排気(矢印A3)は発光本体部26へ向かわない位置関係とされ、レーザ発光装置10(図5等参照)でも同様とされている。その排気の温度は、上述したように略83(℃)となっていることから、温度関係は、「レーザアレイチップ19<排気の温度」となる。このため、放熱部32b(各フィン32c)からの排気の一部(矢印A2)が発光本体部26へ向かうと(矢印A4参照)、当該排気が、略50(℃)のレーザアレイチップ19(発光本体部26)を積極的に温めるように作用する。すると、冷却装置30では、レーザアレイチップ19で発生した熱に加えて、排気により加えられた熱も冷却することとなり、負荷が増大したり、レーザアレイチップ19(発光本体部26)を十分に冷却できなくなることが懸念される。
すなわち、レーザ発光装置10Xでは、各電線12が略110(℃)まで上昇し得ることを考慮すると、温度関係が「レーザアレイチップ19(発光本体部26)<エンジン41の周辺の温度<排気の温度<ヒートシンク32(放熱部32b)の温度<各電線12の温度」となる。このことは、基本的に同様の構成であるレーザ発光装置10(図5等参照)でも同様である。このため、レーザ発光装置10(10X)では、放熱部32b(各フィン32c)からの排気や周辺で生じた気流が、ヒートシンク32(放熱部32b)や各電線12に対しては冷却作用を有し、レーザアレイチップ19(発光本体部26)に対しては温度上昇の要因となる。
そして、レーザ発光装置10では、図5に示すように、ヒートシンク32(放熱部32b(各フィン32c))と各電線12との位置関係(レイアウト)の設定により、放熱部32b(各フィン32c)からの排気の一部が各電線12に向かう(矢印A2参照)。このため、レーザ発光装置10では、放熱部32b(各フィン32c)からの排気で各電線12を冷却することができる。これにより、レーザ発光装置10では、各電線12の温度を略90(℃)とすることができ、レーザ発光装置10X(図6参照)と比較して、略20(℃)低下させることができた。これは、レーザ発光装置10では、排気の一部を各電線12に送っていることから、レーザ発光装置10X(図6参照)のように何らの風が当たっていない状態と比較して、各電線12と周囲気流との熱伝達率を3倍程度上昇させたことが考えられる。このため、レーザ発光装置10では、各電線12とレーザアレイチップ19(発光本体部26)との温度差を小さくすることができるので、各電線12からレーザアレイチップ19(発光本体部26)へ向けた熱の伝達を抑制することができる。
また、レーザ発光装置10では、発光本体部26すなわち筐体11および光ファイバ支持部材23を取り囲んで外郭部材27を設けている。このため、レーザ発光装置10では、放熱部32b(各フィン32c)からの排気の一部が隔壁部材54に当たって発光本体部26(筐体11や光ファイバ支持部材23)へ向かっても(矢印A4参照)、当該排気が外郭部材27に当たる。これにより、レーザ発光装置10では、放熱部32b(各フィン32c)からの排気の一部が発光本体部26に当たることを防止することができ、当該排気の熱が発光本体部26やその筐体11の中のレーザアレイチップ19を積極的に温めるように作用することを防止できる。
これらにより、レーザ発光装置10では、レーザ発光装置10Xと比較して、レーザアレイチップ19へと伝達される熱量を略5(W)減少させることができ、冷却装置30(主にペルチェ素子31や送風ファン33)の負荷を減少させることができる。このため、レーザ発光装置10では、レーザ発光装置10Xよりも少ないエネルギーで、当該レーザ発光装置10Xと同等の冷却効果を得ることができる。換言すると、レーザ発光装置10では、高温な環境下で高電流が供給されてレーザアレイチップ19(発光本体部26)を駆動しつつ、レーザ発光装置10Xと比較してレーザアレイチップ19(発光本体部26)を効率良く冷却することができる。
本発明に係るレーザ発光装置の一実施形態のレーザ発光装置10では、ヒートシンク32(放熱部32b(各フィン32c))を冷却すべく設けられた送風ファン33による気流の一部を、レーザアレイチップ19(発光本体部26)に電流を送る各電線12に当てる。このため、レーザ発光装置10では、レーザアレイチップ19(発光本体部26)の熱を放熱させる機能を有するヒートシンク32を各電線12に宛がうものではないので、それらによるレーザアレイチップ19(発光本体部26)の冷却機能を損なうことを防止することができる。また、レーザ発光装置10では、ヒートシンク32を冷却すべく設けられた送風ファン33による気流の一部を各電線12に当てることから、新たな冷却部材の追加を招くことのない簡易な構成で当該各電線12と周囲気流との熱伝達率を向上させることができる。このため、レーザ発光装置10では、高温な環境下で高電流が供給されて駆動されるレーザアレイチップ19(発光本体部26)のヒートシンク32による冷却機能を損なうことなく、簡易な構成で各電線12を冷却することができる。
また、レーザ発光装置10では、レーザアレイチップ19(発光本体部26)を冷却する冷却装置30として、ヒートシンク32および送風ファン33に加えて、ペルチェ素子31(熱電素子)を設けている。このため、レーザ発光装置10では、温度が高い環境であっても、ペルチェ素子31の表裏の温度差を制御することで、ヒートシンク32による放熱によりレーザアレイチップ19(発光本体部26)を冷却することができる。これにより、レーザ発光装置10では、例えば、エンジンルームのようなエンジン41(図1参照)が設けられて温度が高い環境であっても、レーザアレイチップ19(発光本体部26)を周囲の温度よりも低い温度まで冷却することができる。
さらに、レーザ発光装置10では、ペルチェ素子31(熱電素子)に加えて、防風機構としての外郭部材27を設けている。このため、レーザ発光装置10では、送風機構としての送風ファン33により生じた気流が発光本体部26に当たることを防止することができる。ここで、レーザ発光装置10では、ペルチェ素子31(熱電素子)を設けることで、レーザアレイチップ19(発光本体部26)を周囲の温度よりも低い温度まで冷却している。このことから、レーザ発光装置10では、送風ファン33(送風機構)により生じた気流が、周囲の温度よりも低い温度とされたレーザアレイチップ19(発光本体部26)に対しては温度上昇の要因となる。よって、レーザ発光装置10では、外郭部材27を設けることで、温度が高い環境において送風ファン33(送風機構)により生じた気流が、レーザアレイチップ19(発光本体部26)を積極的に温めるように作用することを防止することができる。
レーザ発光装置10では、送風ファン33からの気流によりヒートシンク32(放熱部32b)から熱を吸収して排出された空気(排気)の一部を、レーザアレイチップ19(発光本体部26)に電流を送る各電線12に当てる。換言すると、レーザ発光装置10では、最も冷却が求められるレーザアレイチップ19(発光本体部26)に対しては最も低温の気流を送って冷却し、その排気を利用して各電線12の冷却を行う。このレーザ発光装置10では、送風ファン33から送ってヒートシンク32(放熱部32b)を冷却し終えた空気(排気)の一部を各電線12の冷却に用いるので、ヒートシンク32によるレーザアレイチップ19(発光本体部26)の冷却効果を損なうことはない。ここで、ヒートシンク32からの放熱を100(W)として、送風ファン33からヒートシンク32に2(m3/min)の風量で空気を送った場合、そのヒートシンク32(放熱部32b(各フィン32c))を経た空気の温度上昇が略3(℃)となる。そして、レーザ発光装置10では、各電線12を介して高電流が供給されてレーザアレイチップ19(発光本体部26)が駆動されることから、その各電線12の温度は極めて高くなる。このため、レーザ発光装置10では、高温な環境下でヒートシンク32(放熱部32b)を冷却し終えた空気(排気)の一部であっても、その空気(排気)を各電線12に送る(所謂強制空冷する)ことで当該各電線12を効率良く冷却することができる。よって、レーザ発光装置10では、レーザアレイチップ19(発光本体部26)のヒートシンク32による冷却機能を損なうことなく、各電線12を冷却することができる。
レーザ発光装置10では、防風機構としての外郭部材27を、発光本体部26(筐体11や光ファイバ支持部材23)を取り囲む構成としている。このため、レーザ発光装置10では、送風機構としての送風ファン33による気流が発光本体部26の周辺に生じた場合であっても当該気流が外郭部材27に当たるので、気流が発光本体部26に当たることを防止することができる。また、外郭部材27(防風機構)は、発光本体部26を取り囲むものであることから、送風ファン33(送風機構)による気流や他に起因する気流が意図しない場所や方向に生じた場合であっても、当該気流が発光本体部26に当たることを確実に防止することができる。これにより、レーザ発光装置10では、温度が高い環境において周辺に生じた気流が、発光本体部26に当たることで当該発光本体部26を積極的に温めるように作用することを防止することができる。
レーザ発光装置10では、ヒートシンク32(放熱部32b(各フィン32c))と各電線12との位置関係(レイアウト)の設定により、放熱部32b(各フィン32c)からの排気の一部を各電線12に向かわせる。詳細には、放熱部32bにおける各フィン32cが伸びる方向に、各電線12を取り回すことにより、放熱部32b(各フィン32c)からの排気の一部を各電線12に向かわせる。このため、レーザ発光装置10では、排気の一部を各電線12に向かわせるためだけに新たな部材を設けることなく、簡易な構成で放熱部32b(各フィン32c)からの排気で各電線12を冷却することができる。
本発明に係るエンジン点火プラグシステムの一実施形態のエンジン点火プラグシステム40では、発光本体部26(レーザアレイチップ19)および各電線12を適切に冷却することができる。このため、エンジン点火プラグシステム40では、高温な環境下であっても、発光本体部26(レーザアレイチップ19)の寿命が短くなることや出力が低下することを防止することができ、内燃機関の一例としてのエンジン41を適切に点火させることができる。
したがって、本発明に係るレーザ発光装置としての実施例1のレーザ発光装置10では、高温な環境下で高電流が供給されて発光本体部26(レーザアレイチップ19)が駆動される場合であっても、発光本体部26(レーザアレイチップ19)の冷却機能の低下を招くことなく簡易な構成で導電体(各電線12)を冷却することができる。
なお、上記した実施例1では、送風ファン33からの気流によりヒートシンク32の放熱部32b(各フィン32c)から排出された空気(排気)を各電線12(導電体)に当てる構成としている。しかしながら、送風ファン33からの気流において、ヒートシンク32(放熱部32b(各フィン32c))に当てる前の気流、あるいはヒートシンク32(放熱部32b(各フィン32c))に当たらない気流を各電線12に当てる構成としてもよい。前者とする場合、送風ファン33からヒートシンク32(放熱部32b(各フィン32c))に向かう気流の一部が、各電線12の熱を吸収したものとなるので、その放熱部32b(各フィン32c)での熱の吸収に大きな影響を与えないようにする必要がある。
次に、本発明のレーザ発光装置の一例としての実施例2のレーザ発光装置10Aについて、図7を用いて説明する。この実施例2のレーザ発光装置10Aは、実施例1のレーザ発光装置10とは異なり気流案内機構を設ける例である。この実施例2のレーザ発光装置10Aは、基本的な概念および構成は実施例1のレーザ発光装置10と同様であることから、等しい概念および構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
実施例2のレーザ発光装置10Aでは、図7に示すように、冷却装置30としてのヒートシンク32Aを、発光本体部26よりも下方へと伸びる大きさ寸法とし、隔壁部材54に至るものとする。このため、ヒートシンク32Aでは、放熱部32bの各フィン32cが送風ファン33側において発光本体部26よりも下方の隔壁部材54まで伸びて設けられる。このヒートシンク32Aでは、送風ファン33からの気流を、送風ファン33側において図7を正面視して上下方向へと案内するとともに、その下側では発光本体部26よりも下方の隔壁部材54まで案内する。このため、ヒートシンク32Aの放熱部32b(各フィン32c)から熱を吸収した排気の一部は、放熱部32b(各フィン32c)により案内されて下側へと向かい隔壁部材54に至る。その放熱部32b(各フィン32c)は、隔壁部材54まで伸びて設けられているため、下側へと案内された排気は、発光本体部26側へと向かうことが防止され、送風ファン33側へと向かう(矢印A5参照)。ここで、レーザ発光装置10Aでは、レーザ発光装置10と同様に、放熱部32b(各フィン32c)からの排気のうち、図7を正面視して上側へと向かう排気(矢印A3)は発光本体部26へ向かわない位置関係とされている。
また、ヒートシンク32Aでは、筐体11(発光本体部26)から伸びる各電線12を通すための電線穴32dが設けられている。この各電線穴32dは、実施例2では、各電線12に触れることなく当該各電線12を通すことのできる大きさ寸法とされている。各電線穴32dには、筐体11の下側から外方に伸びる各電線12が、発光本体部26側から送風ファン33側へと通される。これにより、各電線穴32dを経た各電線12は、図7を正面視して送風ファン33の下側であって、ヒートシンク32A(放熱部32b(各フィン32c))により排気が案内される位置(矢印A5参照)に取り回される。
これらのことから、レーザ発光装置10Aでは、ヒートシンク32Aが、送風ファン33により生じる気流を発光本体部26から遠ざける方向に案内しており、送風ファン33により生じる気流の一部を各電線12へ向けて案内する気流案内機構として機能する。また、レーザ発光装置10Aでは、ヒートシンク32Aが、送風ファン33により生じた気流が発光本体部26に当たることを防ぐ防風機構としての機能を併せ持つ、すなわち防風機構を兼ねている。このことから、実施例2のレーザ発光装置10Aでは、防風機構としての外郭部材27を設けていない。
実施例2のレーザ発光装置10Aでは、基本的に実施例1のレーザ発光装置10と同様の構成であることから、基本的に実施例1と同様の効果を得ることができる。
それに加えて、実施例2のレーザ発光装置10Aでは、送風ファン33(送風機構)により生じる気流の一部を各電線12(導電体)へ向けて案内する気流案内機構(ヒートシンク32A)を設けている。このため、レーザ発光装置10Aでは、送風ファン33(送風機構)により生じる気流の一部を、より確実に各電線12(導電体)に当てることができるので、各電線12(導電体)をより適切に冷却することができる。
また、レーザ発光装置10Aでは、送風ファン33(送風機構)により生じる気流を、放熱部32b(各フィン32c)が伸びる方向(上下方向)の下側へと案内した後に、発光本体部26側ではなく送風ファン33側へと案内する。これにより、レーザ発光装置10Aでは、送風ファン33(送風機構)により生じる気流を、レーザアレイチップ19(発光本体部26)から遠ざける方向に案内している。これにより、レーザ発光装置10Aでは、簡易な構成で、送風ファン33(送風機構)により生じる気流がレーザアレイチップ19(発光本体部26)へ向けて進行することを防止することができ、防風機構を兼ねることができる。
さらに、レーザ発光装置10Aでは、放熱部材としてのヒートシンク32Aで気流案内機構を構成している。このため、レーザ発光装置10Aでは、ヒートシンク32Aの構成を変化させるだけで気流案内機構を設けることができ、送風ファン33(送風機構)による気流がレーザアレイチップ19(発光本体部26)に当たることを防止することができる。特に、実施例2では、放熱部材としてのヒートシンク32A(その放熱部32b(各フィン32c))の大きさ寸法を変更することで気流案内機構を構成していることから、より簡易に気流案内機構を設けることができる。
レーザ発光装置10Aでは、放熱部材としてのヒートシンク32Aを隔壁部材54まで伸びる構成とすることにより、送風ファン33(送風機構)により生じる気流がレーザアレイチップ19(発光本体部26)に当たることを防止している。このように、レーザ発光装置10Aでは、ヒートシンク32Aの大きさ寸法や配置を周辺の構成に応じて変化させるだけで、送風ファン33(送風機構)による気流がレーザアレイチップ19(発光本体部26)に当たることを防止することができる。
したがって、本発明に係るレーザ発光装置としての実施例2のレーザ発光装置10Aでは、高温な環境下で高電流が供給されて発光本体部26(レーザアレイチップ19)が駆動される場合であっても、発光本体部26(レーザアレイチップ19)の冷却機能の低下を招くことなく簡易な構成で導電体(各電線12)を冷却することができる。
なお、実施例2のレーザ発光装置10Aでは、防風機構としての外郭部材27(図5等参照)を設けていないが、外郭部材27を設けるものとしてもよい。このように外郭部材27を設けると、想定しない経路を経て送風ファン33により生じた気流等が発光本体部26側へと向かう場合であっても、当該気流により発光本体部26が温められることを確実に防止することができる。
また、実施例2のレーザ発光装置10Aでは、気流案内機構(ヒートシンク32A)が、送風ファン33(送風機構)により生じる気流をレーザアレイチップ19(発光本体部26)から遠ざける方向に案内している。しかしながら、気流案内機構は、送風ファン33(送風機構)により生じる気流の一部を導電体へ向けて案内するとともに、当該気流がレーザアレイチップ19(発光本体部26)に当たることを防ぐものであればよく、上記した実施例2の構成に限定されるものではない。
次に、本発明のレーザ発光装置の一例としての実施例4のレーザ発光装置10Cについて、図9を用いて説明する。この実施例4のレーザ発光装置10Cは、気流案内機構の構成が上記した実施例2のレーザ発光装置10Aおよび実施例3のレーザ発光装置10Bとは異なる例である。この実施例4のレーザ発光装置10Cは、基本的な概念および構成は実施例1のレーザ発光装置10および実施例2のレーザ発光装置10Aと同様であることから、等しい概念および構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
実施例4のレーザ発光装置10Cでは、図9に示すように、正面視して送風ファン33Cが形成する気流の方向を上下方向(取込口33bと送風口33cとを上下方向)とし、ヒートシンク32の上端に送風口33cを対向させて送風ファン33Cを設けている。このため、送風ファン33Cからの気流は、ヒートシンク32の放熱部32bにおける各フィン32cが伸びる方向に沿って、上側から下側に向けて形成される。
また、レーザ発光装置10Cでは、冷却装置30としてのヒートシンク32および送風ファン33Cに関連して気流ダクト35を設けている。その気流ダクト35は、断面が矩形状の筒状を呈し、送風ファン33Cとヒートシンク32との間の送風側ダクト351と、ヒートシンク32から先の排気側ダクト352と、を有する。
その送風側ダクト351は、送風ファン33Cからの気流をヒートシンク32の放熱部32b(各フィン32c)へ向けて案内する。送風側ダクト351は、一端351aを送風ファン33Cの少なくとも送風口33cを取り囲む大きさ寸法とし、実施例4では送風ファン33Cの下端を取り囲む大きさ寸法とする。また、送風側ダクト351は、他端351bをヒートシンク32の上端を取り囲む大きさ寸法とする。この送風側ダクト351は、その一端351aを送風ファン33Cの下端を取り囲むように当該下端に取り付け、他端351bをヒートシンク32の上端を取り囲むように当該上端に取り付ける。
排気側ダクト352は、放熱部32b(各フィン32c)からの排気を、後述するように隔壁部材54上に設けた導電体(各電線12、電極コネクタ36、各電線12P)へ向けて案内する。この排気側ダクト352は、図9を正面視して、一端352aにおける前後方向(紙面と交わる方向)で見た幅寸法および左右方向で見た長さ寸法をヒートシンク32と等しくしている。気流ダクト35は、その一端352aをヒートシンク32の下端を取り囲むように当該下端に取り付け、発光本体部26から光ファイバ13が突出される側へと折り曲げて隔壁部材54上に伸ばし、他端352bを隔壁部材54上に設置する。
加えて、レーザ発光装置10Cでは、発光本体部26(筐体11)の下方から突出される各電線12を、発光本体部26から光ファイバ13が突出される側へと取り回している。そして、レーザ発光装置10Cでは、その各電線12を、隔壁部材54上に設けた電極コネクタ36に接続する。この電極コネクタ36は、レーザ発光装置10Cと電源装置25(図1参照)との接続および断絶を容易とするものであり、実施例4では、電源装置25(図1参照)に対するモジュール交換等の利便性を高めるために設けている。このため、電極コネクタ36には、接続された各電線12Pを介して電源装置25(図1参照)が接続される。このため、レーザ発光装置10Cでは、各電線12、電極コネクタ36および各電線12Pが、発光本体部26に電流を供給する導電体として機能する。この電極コネクタ36および各電線12Pでは、各電線12と同様に、レーザアレイチップ19に100(A)以上の高電流の入力することから、その供給の際に熱が発生する。このことから、レーザ発光装置10Cでは、図9を正面視して、排気側ダクト352の他端352bよりも右側の隔壁部材54上に各電線12を取り回し、その先(左側)に電極コネクタ36および各電線12Pを設けている。
このレーザ発光装置10Cでは、送風ファン33Cからのすべての気流が、送風側ダクト351に案内されて、上側からヒートシンク32の放熱部32b(各フィン32c)へと向かう。そして、レーザ発光装置10Cでは、送風ファン33Cからの気流によりヒートシンク32の放熱部32b(各フィン32c)から熱を吸収した排気が、図9を正面視して上下方向の下側に進行する。レーザ発光装置10Cでは、ヒートシンク32の下端を取り囲むように排気側ダクト352の一端352aが設けられていることから、すべての排気が一端352aから排気側ダクト352の内方に進行して他端352bに向かう(矢印A7参照)。すると、レーザ発光装置10Cでは、排気側ダクト352の他端352bが図9を正面視した右側へ向けて隔壁部材54上に伸ばして設置されているので、排気がその他端352bから隔壁部材54上で右側へ進行する。このため、気流ダクト35により案内された排気は、発光本体部26側へと向かうことが防止され、隔壁部材54上の導電体(各電線12、電極コネクタ36、各電線12P)側へと向かう(矢印A8参照)。
このことから、レーザ発光装置10Cでは、気流ダクト35が、送風ファン33Cにより生じる気流を発光本体部26から遠ざける方向に案内しており、送風ファン33により生じる気流の一部を導電体へ向けて案内する気流案内機構として機能する。また、レーザ発光装置10Cでは、気流ダクト35が、送風ファン33Cにより生じた気流が発光本体部26に当たることを防ぐ防風機構としての機能を併せ持つ、すなわち防風機構を兼ねている。このことから、実施例4のレーザ発光装置10Cでは、防風機構としての外郭部材27を設けていない。
実施例4のレーザ発光装置10Cでは、基本的に実施例1のレーザ発光装置10および実施例2のレーザ発光装置10Aと同様の構成であることから、基本的に実施例1のレーザ発光装置10および実施例2のレーザ発光装置10Aと同様の効果を得ることができる。
それに加えて、実施例4のレーザ発光装置10Cでは、送風ファン33C(送風機構)からの気流を、気流ダクト35により、放熱部32b(各フィン32c)へと案内した後に、導電体が取り回された側へと案内する。これにより、レーザ発光装置10Cでは、送風ファン33C(送風機構)により生じる気流を、レーザアレイチップ19(発光本体部26)から遠ざける方向に案内している。これにより、レーザ発光装置10Cでは、簡易な構成で、送風ファン33(送風機構)により生じる気流がレーザアレイチップ19(発光本体部26)へ向けて進行することを防止することができ、防風機構を兼ねることができる。
また、レーザ発光装置10Cでは、送風ファン33C(送風機構)およびヒートシンク32(放熱部材)に関連して設けた気流ダクト35で気流案内機構を構成している。このため、レーザ発光装置10Cでは、気流ダクト35の構成や姿勢(向き)を変化させるだけで気流案内機構を設けることができ、送風ファン33C(送風機構)による気流がレーザアレイチップ19(発光本体部26)に当たることを防止することができる。
さらに、レーザ発光装置10Cでは、気流ダクト35における送風側ダクト351で、送風ファン33Cからのすべての気流をヒートシンク32の放熱部32b(各フィン32c)へ向けて案内する。また、レーザ発光装置10Cでは、気流ダクト35における排気側ダクト352で、放熱部32b(各フィン32c)からのすべての排気を、隔壁部材54上に設けた導電体(各電線12、電極コネクタ36、各電線12P)へ向けて案内する。このため、レーザ発光装置10Cでは、送風ファン33Cからの気流をすべて利用してヒートシンク32の放熱部32b(各フィン32c)を冷却するとともに、そこからの排気をすべて利用して導電体を冷却することができる。また、レーザ発光装置10Cでは、送風ファン33Cからの気流を集中させて流速を高めた状態でヒートシンク32の放熱部32b(各フィン32c)に当てることができるので、その放熱部32b(各フィン32c)での放熱効果をより高めることができる。さらに、レーザ発光装置10Cでは、放熱部32b(各フィン32c)からの排気を集中させて流速を高めた状態で導電体に当てることができるので、その導電体での放熱効果をより高めることができる。これにより、レーザ発光装置10Cでは、より効果的にレーザアレイチップ19(発光本体部26)を冷却することができる。
したがって、本発明に係るレーザ発光装置としての実施例4のレーザ発光装置10Cでは、高温な環境下で高電流が供給されて発光本体部26(レーザアレイチップ19)が駆動される場合であっても、発光本体部26(レーザアレイチップ19)の冷却機能の低下を招くことなく簡易な構成で導電体(各電線12)を冷却することができる。
なお、実施例4のレーザ発光装置10Cでは、防風機構としての外郭部材27(図5等参照)を設けていないが、外郭部材27を設けるものとしてもよい。このように外郭部材27を設けると、想定しない経路を経て送風ファン33により生じた気流等が発光本体部26側へと向かう場合であっても、当該気流により発光本体部26が温められることを確実に防止することができる。
なお、上記した各実施例では、本発明に係るレーザ発光装置の一例としての各実施例のレーザ発光装置10について説明したが、レーザ光を出射する発光本体部と、前記発光本体部の熱を放熱すべく前記発光本体部に宛がわれる放熱部材と、前記放熱部材へ向けた気流を生じさせる送風機構と、前記発光本体部に電流を供給する導電体と、を備え、前記導電体には、前記送風機構により生じる気流の一部が当てられるレーザ発光装置であればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
また、上記した各実施例では、レーザ光を内燃機関の点火に用いる例を示していたが、レーザ加工機等のレーザ使用機器で用いるべく光ファイバ13の出射端面13b(他端)を当該レーザ使用機器に接続するものであってもよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
さらに、上記した各実施例では、導電体として、各電線12と、電極コネクタ36および各電線12P(実施例4のみ)と、を示している。しかしながら、導電体は、発光本体部(26)に電流を供給するものであればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
上記した各実施例では、熱電素子としてのペルチェ素子31を示している。しかしながら、熱電素子は、周囲の温度よりも低い温度に発光本体部(26)を冷却すべくその発光本体部と放熱部材(ヒートシンク32)との間に設けられるものであればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
上記した実施例1から実施例3では、送風機構の一例としての送風ファン33を、送風口33cをヒートシンク32の放熱部32bに正対させて設けている。しかしながら、送風機構(送風ファン33)は、放熱部材(ヒートシンク32)へ向けた気流を生じさせるものであれば、実施例4の送風ファン33Cのようにヒートシンク32の放熱部32bにおける各フィン32cが伸びる方向に向けて気流を生じさせるべくもうけてもよく、他の配置であってもよく、上記した実施例1から実施例3に限定されるものではない。
上記した各実施例では、それぞれの特徴となる構成を個別に設けていたが、例えば、実施例4の送風側ダクト351を実施例1から実施例3に適用する等のように他の実施例の構成を適宜組み合わせるものであってもよく、上記した各実施例の構成に限定されるものではない。
以上、本発明のレーザ発光装置を各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については各実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。