JP2017155516A - 鋼管連結治具及び鋼管連結方法 - Google Patents

鋼管連結治具及び鋼管連結方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼管同士の連結作業を容易にする。【解決手段】鋼管連結治具1は、第1ピン孔16の内径と略同じ長さの外径を有する円柱状をなし、施工時に第1ピン孔16に挿入される主軸部2と、主軸部2よりも小径の曲率であると共に主軸部2の中心軸線A3の方向に延びる円柱であって、主軸部2の外周縁に内接するように主軸部2の端面に固定されたカム軸部3と、を備える。【選択図】図3

Description

本発明は、鋼管連結治具及び鋼管連結方法に関する。
特許文献1には、パイプルーフ工法に利用される鋼管の連結工法が記載されている。この連結工法では、鋼管の先端に設けられた継手管同士がピンによって互いに固定される。ピンを利用した固定にあたっては、一方の継手管に設けられたピン孔を、他方の継手管に設けられたピン孔に重複させる。そして、重複した領域にピンを差し込む。
特開2012−214970号公報
特許文献1の工法では、ピンが挿入される孔の中心を一致させるために、カム構造を有する偏心カム軸を利用する。この偏心カム軸は、主軸部と偏心軸部とを有する。主軸部の中心軸線のまわりに偏心カム軸を回転させると、偏心軸部が主軸部の中心軸線のまわりに公転する。この偏心軸部の公転を利用して、一方のピン孔の中心に他方のピン孔の中心を近づける。ピン孔の内周面と接触する偏心軸部の外周面は、互いに異なる曲率を有する曲面を含む。このような偏心軸部を有する偏心カム軸では、偏心カム軸の曲率が変化する箇所がピン孔の内周面を押圧すると、ピン孔の内周面を傷めるおそれがある。従って、偏心カム軸の回転作業には注意を要することがあった。
そこで、本発明は、鋼管同士の連結作業を容易にする鋼管連結治具と、当該鋼管連結治具を利用する鋼管連結方法を提供することを目的とする。
本発明の一形態は、第1鋼管の第1継手部の内側に第2鋼管の第2継手部が差し込まれ、第1継手部に設けられた第1ピン孔と第2継手部に設けられた第2ピン孔とを貫通するピンによって第1鋼管と第2鋼管とを連結する鋼管連結構造を施工するための鋼管連結治具であって、第1ピン孔の内径と略同じ長さの外径を有する円柱状をなし、施工時に第1ピン孔に挿入される主軸部と、主軸部の端面に設けられ、主軸部よりも小径の曲率であると共に主軸部の中心軸線の方向に延びる円柱であって、主軸部の外周縁に内接するように主軸部の端面に固定されたカム軸部と、を備える。
鋼管の連結作業では、鋼管同士をピン接合する作業を行う。ピンは、第1鋼管の第1継手部に設けられた第1ピン孔と、第2鋼管の第2継手部に設けられた第2ピン孔とに差し込まれる。従って、ピンを第1ピン孔と第2ピン孔に差し込めるように、第1ピン孔の中心軸線と第2ピン孔の中心軸線とを互いに近づける必要がある。まず、第1継手部に第2継手部を第1ピン孔と第2ピン孔との連通する領域が形成されるまで差し込む。次に、第1ピン孔に主軸部を配置すると共に第2ピン孔にカム軸部を配置する。次に、主軸部を主軸部の中心軸線のまわりに回転させる。主軸部は、第1ピン孔の外径は第1ピン孔の内径と略同じ長さである。従って、主軸部は第1ピン孔の内周面に倣わせて容易に回転させることができる。主軸部が回転すると、主軸部の先端に設けられたカム軸部は主軸部の中心軸線のまわりに公転する。このカム軸部は第2ピン孔の内周面に接触しているので、カム軸部が公転すると、カム軸部の外周面は、第2ピン孔の内周面を押圧する。ここで主軸部が第1鋼管の第1ピン孔に配置されているので、主軸部が第1鋼管の軸線方向に移動しない限り、第1鋼管がその軸線方向に移動することはない。そうすると、カム軸部の公転によりカム軸部が第2ピン孔の内周面を押圧すると第1鋼管に対して第2鋼管が引き込まれることになる。従って、第1ピン孔の中心軸線と第2ピン孔の中心軸線とが互いに近づく。そして、円柱状のカム軸部は、円形断面を有するので、カム軸部の外周面が第2ピン孔の内周面に沿って公転するとき、カム軸部から第2ピン孔の内周面に作用する力の方向は連続的に変化する。従って、第2ピン孔の内周面へのダメージが低減される。このため、鋼管連結治具によれば、主軸部を回転させるだけで第1ピン孔の中心軸線と第2ピン孔の中心軸線とが互いに近づく。さらに、第2ピン孔の内周面へのダメージが低減される。よって、鋼管連結治具によれば、鋼管同士の連結作業を容易に行うことができる。
カム軸部は、円柱状の本体軸部と、本体軸部の中心軸線と重複する回転軸線を有し、本体軸部の外周面に対して回転軸線のまわりに回転可能に設けられたすべり輪部と、を有することとしてもよい。この構成によれば、カム軸部が第2ピン孔の内周面に沿って公転するときに、本体軸部に対してすべり輪部が回転する。このすべり輪部の回転によれば、カム軸部と第2ピン孔の内周面との間の摩擦力が低減される。従って、鋼管同士の連結作業において、鋼管連結治具を回転させるトルクが低減されるので、連結作業を容易にすることができる。また、摩擦力の低減によれば、第2ピン孔の内周面へのダメージを低減することもできる。
本発明の別の形態は、鋼管連結治具を利用して、第1鋼管の第1継手部に第2鋼管の第2継手部を連結する鋼管連結方法であって、鋼管連結治具を準備する第1工程と、第1継手部に設けられた第1ピン孔と第2継手部に設けられた第2ピン孔とが重複した部分が形成される位置まで第2鋼管を第1鋼管に差し込む第2工程と、鋼管連結治具を利用して、第1ピン孔の中心軸線と第2ピン孔の中心軸線とを互いに近づける第3工程と、を有し、鋼管連結治具は、第1ピン孔の内径と略同じ長さの外径を有する円柱状をなし、第1ピン孔に挿入される主軸部と、主軸部の端面に設けられ、主軸部よりも小径の曲率であると共に主軸部の中心軸線の方向に延びる円柱であって、主軸部の外周縁に内接するように主軸部の端面に固定されたカム軸部と、を含み、第3工程は、第1ピン孔に主軸部が配置されると共に重複する部分にカム軸部が配置された鋼管連結治具を主軸部の中心軸線のまわりに回転させることにより、第1ピン孔の中心軸線と第2ピン孔の中心軸線とを互いに近づける工程を含む。
この鋼管連結方法は、上述した鋼管連結治具を利用する。従って、主軸部を回転させるだけで第1ピン孔の中心軸線と第2ピン孔の中心軸線とが互いに近づく。さらに、第2ピン孔の内周面へのダメージが低減される。よって、鋼管連結方法によれば、鋼管同士の連結作業が容易になる。
第1工程は、カム軸部の外径が互いに異なる複数の鋼管連結治具を準備する工程を含み、第3工程は、鋼管連結治具を利用して、第1ピン孔の中心軸線と第2ピン孔の中心軸線とを互いに近づける工程と、カム軸の外径が鋼管連結治具よりも大きい別の鋼管連結治具を配置する工程と、別の鋼管連結治具を利用して、第1ピン孔の中心軸線と第2ピン孔の中心軸線とを互いにさらに近づける工程と、を含んでもよい。カム軸部が主軸部の中心軸線のまわりに公転していくと、カム軸部と第2ピン孔の内周面との接触部の位置が変化する。この位置が変化すると、カム軸部が第2ピン孔の内周面を押圧する力の方向も変化する。この力の方向は、当初は第2鋼管が差し込まれる方向と一致するが、カム軸部が公転するにつれて第2鋼管が差し込まれる方向からずれる。そうすると、第2鋼管を第1鋼管に向けて差し込む力は第2鋼管が差し込まれる方向と力の角度に対応して減少していく。ここでカム軸部が第2ピン孔の内周面を押圧する力は、カム軸部の外径が大きいほど大きくなる。従って、カム軸部をある程度公転させた後に、別の鋼管連結治具に交換する。この別の鋼管連結治具は、当初の鋼管連結治具よりもカム軸部の外径が大きいので、カム軸部が第2ピン孔の内周面を押圧する力を大きくすることが可能になる。従って、鋼管同士をいっそう容易に連結することができる。
第1継手部は、少なくとも2個の第1ピン孔を有し、第2継手部は、第1ピン孔のそれぞれに対応する少なくとも2個の第2ピン孔を有し、第1工程は、カム軸の外径が同じである2個の鋼管連結治具を準備する工程を含み、第3工程は、カム軸の外径が同じである2個の鋼管連結治具のそれぞれを配置する工程と、鋼管連結治具を主軸部の中心軸線のまわりに互いに逆方向へ回転させることにより、第1ピン孔の中心軸線と第2ピン孔の中心軸線とを互いに近づける工程と、を含んでもよい。
鋼管連結治具を回転させたとき、カム軸部は第2ピン孔の内周面を押圧する。この押圧力の方向は、カム軸部の公転位置によって連続的に変化する。従って、第2鋼管の差し込まれる方向を基準としたとき、押圧力は、第2鋼管の差し込まれる方向における第1分力と、当該方向に対して直交する方向における第2分力とに分解できる。ここで、2個の鋼管連結治具を互いに逆方向に回転させると、それぞれのカム軸部における押圧力の第2分力は、互いに逆方向を向く。従って、第2分力は互いに打ち消し合うので、鋼管連結治具を回転させたとき、第1分力のみが残る。従って、この工程によれば、第1鋼管に対して第2鋼管を、第1鋼管又は第2鋼管の中心軸線に沿った方向に直線的に移動させながら差し込むことが可能になる。そして、このような差し込みの形態によれば、差し込み作業に伴う第1継手部及び第2継手部へのダメージを低減させることができる。
第1継手部は、少なくとも2個の第1ピン孔を有し、第2継手部は、第1ピン孔のそれぞれに対応する少なくとも2個の第2ピン孔を有し、第1工程は、カム軸の外径が同じである2個の鋼管連結治具を準備する工程を含み、第3工程は、カム軸の外径が同じである2個の鋼管連結治具のそれぞれを配置する工程と、鋼管連結治具を主軸部の中心軸線のまわりに同じ方向へ回転させることにより、第1ピン孔の中心軸線と第2ピン孔の中心軸線とを互いに近づける工程と、を含んでもよい。
2個の鋼管連結治具を同じ方向に回転させると、それぞれのカム軸部における押圧力の第2分力は、互いに同じ方向を向く。従って、鋼管連結治具を回転させたときには、第1分力の力によって第1鋼管に対して第2鋼管が直線的に移動する動きと、第2分力の力によって第1鋼管に対して第2鋼管が第1鋼管又は第2鋼管の中心軸線のまわりに回転する動きとが生じる。ここで、第2鋼管が中心軸線のまわりに回転しつつ移動すると、カム軸部の公転によって変化するカム軸部と第2ピン孔の内周面との接触位置が常に同じ位置に保たれる。従って、鋼管接続治具を回転させたとき、カム軸部から第2ピン孔の内周面へ及ぼされる力の方向を第2鋼管の差し込み方向に維持することが可能になる。よって、鋼管同士をいっそう容易に連結することができる。
本発明に係る鋼管連結治具及び鋼管連結方法によれば、鋼管同士を容易に連結することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る鋼管連結治具及び鋼管連結方法が適用される鋼管連結構造を示す図である。 図2は、鋼管連結方法の主要な工程を示す図である。 図3は、第1実施形態に係る鋼管連結治具の斜視図である。 図4は、2個の鋼管連結治具を逆方向に回したときの動作を示す図である。 図5は、第1実施形態に係る鋼管連結方法のフロー図である。 図6は、鋼管連結治具を交換する理由を説明するための図である。 図7は、治具の回転方向を示す図である。 図8は、第2実施形態に係る鋼管連結方法のフロー図である。 図9は、2個の鋼管連結治具を同じ方向に回したときの動作を示す図である。 図10は、治具の回転方向を示す図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、連通する説明を省略する。
<第1実施形態>
第1実施形態に係る鋼管連結治具と当該治具を利用した鋼管接続方法について説明する。図1は、本実施形態に係る鋼管連結治具を利用して施工される鋼管連結構造を示す。図1に示されるように、鋼管連結構造は、外鋼管10(第1鋼管)に内鋼管20(第2鋼管)が連結される構造である。このような鋼管連結構造は、例えば、パイプルーフ工法などで施工される鋼管構造に利用される。
外鋼管10は、第1本体部11と第1継手部12とを有する。第1継手部12は、内鋼管20が差し込まれる部分である。従って、第1継手部12は、第1本体部11の端部に形成されると共に第1本体部11の内径D1よりも大きい内径D2を有する。第1本体部11と第1継手部12とは内径が異なるので、第1本体部11の端面の一部は、第1継手部12の側に露出して第1端面13を形成する。第1端面13には、輪状のパッキン14が配置される。第1継手部12は、複数の第1ピン孔16を有する。第1ピン孔16は、外鋼管10に差し込まれた内鋼管20の抜けを防止するためのピン31が差し込まれる貫通孔である。第1ピン孔16は、外鋼管10の中心軸線A1のまわりに例えば60度の間隔をもって、等間隔に設けられる。
内鋼管20は、第2本体部21と第2継手部22とを有する。第2本体部21の外径E2は、外鋼管10の外径D3と略同じである。第2継手部22は、外鋼管10の第1継手部12に差し込まれる部分である。従って、第2継手部22の外径E1は、内鋼管の第2本体部21の外径E2よりも小さい。また、第2継手部22の外径E1は、第1継手部12の内径D2と略同じである。第2継手部22の内径E3は、外鋼管10の第1本体部11における内径D1と略同じである。第2継手部22の先端面23は、外鋼管10の第1端面13と対面する。従って、外鋼管10に内鋼管20が連結された状態では、外鋼管10の第1端面13と内鋼管20の先端面23とが互いに対面し、それらの面の間において第1パッキン14が押しつぶされる。第2本体部21と第2継手部22とは外径が異なるので、第2本体部21の端面は、第2継手部22の側に露出して第2端面24を形成する。第2継手部22には輪状の第2パッキン27が配置される。外鋼管10に内鋼管20が連結された状態では、外鋼管10の先端面17と内鋼管20の第2端面24とが互いに対面し、それらの面の間において第2パッキン27が押しつぶされる。第2継手部22は、複数の第2ピン孔26を有する。第2ピン孔26は、外鋼管10に差し込まれた内鋼管20の抜けを防止するためのピン31が差し込まれる貫通孔である。第2ピン孔26は、内鋼管20の中心軸線A2のまわりに例えば60度の間隔をもって、等間隔に設けられる。すなわち、第2ピン孔26は、外鋼管10の第1ピン孔16に略対応する位置に設けられる。
ここで、外鋼管10に内鋼管20を連結する方法について簡単に説明する。図2の(a)部に示されるように、外鋼管10と内鋼管20とを同軸上に配置し、外鋼管10の第1継手部12と、内鋼管20の第2継手部22とを互いに対面させる。次に、図2の(b)部に示されるように、第1ピン孔16から第2ピン孔26の一部が見えるまで第1継手部12の内部に第2継手部22を挿入する。次に、図2の(c)部に示されるように、第1ピン孔16と第2ピン孔26とを重複させる。この重複は、厳密に重複している必要はなく、ピン31の軸部32(図1参照)を差し込み可能な程度に、第1ピン孔16と第2ピン孔26とが重なっていればよい。そして、図2の(d)部に示されるように、第1継手部12の外周側からピン31を差し込む。以上の工程により、外鋼管10に内鋼管20が連結される。
ピン31を差し込むためには第1ピン孔16と第2ピン孔26とを重複させる必要があり、例えば、中心軸線A1の方向及び第1継手部12の円周方向にそれらの位置を微調整する必要がある。ここで、図2の(d)部を参照すると、外鋼管10に内鋼管20を連結した状態では、第1パッキン14と第2パッキン27とが外鋼管10の中心軸線A1の方向に押しつぶされている。そうすると、ピン31を差し込むためには、第1パッキン14と第2パッキン14とを押しつぶす程度に第1継手部12に第2継手部22を差し込む必要がある。ここで、内鋼管20を外鋼管10に引き込むために鋼管の外周面に凹凸部を設け、当該凹凸部を利用して引き込む構造も考えられる。しかし、鋼管の外周面には止水ゴムなどを密着させることがあり、平滑であることが望ましい。そのうえ、第1継手部12の内径形状と第2継手部22の外周形状とは理想的には真円であるが、一般にはゆがみを有する。従って、第1継手部12に第2継手部22がスムースに挿入されないこともありえる。従って、第1ピン孔16と第2ピン孔26とを重複させる作業には労力を要することが多かった。
本実施形態に係る鋼管連結治具は、上述した第1ピン孔16と第2ピン孔26とを重複させる作業に用いられるものであり、簡易且つ少ない労力によってピン31の挿入作業を可能にする。
図3の(a)部及び(b)部に示されるように、鋼管連結治具1は、外径が互いに異なる2個の円柱状の部材を組み合わせて構成される。鋼管連結治具1は、主軸部2と、カム軸部3と、を有する。主軸部2は、第1ピン孔16に配置される円柱状の部材である。主軸部2の外径F1は、第1ピン孔16の内径と略同じ長さ或いは、第1ピン孔16の内径よりわずかに小さい。また、主軸部2の中心軸線A3に沿った長さは、第1継手部12における板厚と略同じである。主軸部2の上端面2aには、鋼管連結治具1を回転させるレバー(不図示)を取り付けるための突起4が設けられる。
主軸部2の下端面2bには、カム軸部3が取り付けられる。カム軸部3は、第2ピン孔26に配置される円柱状の部材である。カム軸部3の中心軸線A4に沿った長さは、第2継手部22における板厚と略同じである。カム軸部3の外径F2は、主軸部2の外径F1よりも小さい。例えば、カム軸部3の外径F2は、主軸部2の外径F1の約1/2である。カム軸部3は、一定の曲率を有する円形断面を有する。カム軸部3は、主軸部2の中心軸線A3の方向から見て、主軸部2の外周縁に内接するように主軸部2に固定される。
また、カム軸部3は、滑り機構5を有する。滑り機構5は、円柱状の本体軸部6と、本体軸部6の中心軸線A4と重複する回転軸線を有するすべり輪部7と、を有する。すべり輪部7は、本体軸部6の外周面に対して回転軸線のまわりに回転可能に設けられる。
次に、この鋼管連結治具1の動作について説明する。
図4の(a)部〜(e)部は、第1ピン孔16と第2ピン孔26とを重複させる動作を模式的に示した図である。図4の(a)部〜(e)部において、二点鎖線は現在の状態であり、点線はその直前の状態を示す。まず、(a)部に示されるように、第1ピン孔16の中心軸線A3の方向から見て、第1ピン孔16に第2ピン孔26の一部を重複させる。この重複した部分は、レンズの断面のような形状を有する。具体的には、第1ピン孔16と第2ピン孔26の重複した部分において中心軸線A1に沿った長さがカム軸部3の外径F2より大きくなるまで内鋼管20を外鋼管10に差し込む。そして、鋼管連結治具1を配置する。主軸部2は、第1ピン孔16に配置され、カム軸部3は、重複部分に配置される。次に、主軸部2を反時計回りに回転させる。図4の(b)部は、主軸部2を反時計回りに22.5°だけ回転させた状態を示す。
主軸部2は、第1ピン孔16に嵌っている。従って、主軸部2に許される運動は、中心軸線A3まわりの回転運動だけである。主軸部2が中心軸線A3のまわりに回転すると、カム軸部3は、中心軸線A3のまわりに公転する。このとき、カム軸部3の外周面は、第2ピン孔26の内周面に当接しているので、この接触部G2においてカム軸部3から第2ピン孔26の内周面へ力H1が作用する。ここで、図4に示された状態は、カム軸部3と第2ピン孔26との間に摩擦がないと仮定した場合の状態である。摩擦を考慮する場合には、力H1の方向は偏向する。この力H1は、接触部G2と第2ピン孔26の中心軸線(カム軸部3の中心軸線A4)とを結んだ方向を有する。そして、力H1を構成する第1分力H1aが内鋼管20を外鋼管10側に引き込む動作に寄与する。
従って、図4の(c)部〜(e)部に示されるように、鋼管連結治具1を反時計回りに90°回転させることにより、第1ピン孔16と第2ピン孔26とが重複する。図4の(c)部は、鋼管連結治具1を反時計回りに45°だけ回転させたときの様子を示し、図4の(d)部は、鋼管連結治具1を反時計回りに67.5°だけ回転させたときの様子を示し、図4の(e)部は、鋼管連結治具1を反時計回りに90°だけ回転させたときの様子を示す。ここで、図4の(e)部に示されるように、鋼管連結治具1を反時計回りに90°だけ回転させた状態では、引き込む動作に寄与する第1分力H1aはゼロになる。しかし、鋼管連結治具1をさらに反時計回りに回転させると第1分力H1aは徐々に大きくなるので、鋼管連結治具1を180°回転させることにより確実に第1ピン孔16と第2ピン孔26とを重複させることができる。すなわち、鋼管連結治具1によれば、鋼管連結治具1を回転させるだけで、外鋼管10に対して内鋼管20を中心軸線A1に沿って引き込む動作と、第1ピン孔16と第2ピン孔26とを重複させる位置合わせ動作とを行うことができる。
次に、より具体的な鋼管連結方法について、図5に示すフロー図を参照しつつ説明する。
まず、複数の鋼管連結治具を準備する(工程S1、第1工程)。この工程S1では、4個の治具を準備する。具体的には、カム軸部3が第1の外径である第1鋼管連結治具1Aを2個準備する。そして、カム軸部3が第2の外径である第2鋼管連結治具1Bを2個準備する。第2の外径は、第1の外径よりも大きい。
次に、外鋼管10に内鋼管20を差し込む(工程S2、第2工程)。上述したように、第1ピン孔16から第2ピン孔26の一部が見えるまで第1継手部12の内部に第2継手部22を挿入する(図2の(b)部参照)。
次に、第1鋼管連結治具1Aを配置する(工程S3)。例えば、2個の第1鋼管連結治具1Aを、外鋼管10の中心軸線A1を挟んで対向する一対の第1ピン孔16に配置する。
次に、ハンドルなどを利用して第1鋼管連結治具1Aを45°だけ回転させる(工程SS4、図4の(c)部参照)。第1鋼管連結治具1Aの回転によりカム軸部3が内鋼管20の第2ピン孔26を押圧する方向は、勘合方向(中心軸線A1の方向)とは一致しない。そこで、2個の第1鋼管連結治具1Aを利用する。そして、回転方向は、それぞれの第1鋼管連結治具1Aにおいて逆方向とする。この逆方向とは、図7の(a)部に示されるように、外鋼管10を展開した状態における回転方向の関係である。外鋼管10の外周面10aからみて一方のピン孔31Aに配置される第1鋼管連結治具1Aの回転方向R1を軸線A6まわりの反時計方向とし、他方のピン孔31Bに配置される第1鋼管連結治具1Aの回転方向R2を軸線A6のまわりの時計方向とする。一方、図6の(b)部に示されるように、外鋼管10を立体的にみたときには、回転方向R1,R2は同じ方向であるとも言える。このように、第1鋼管連結治具1Aを互いに異なる方向に回した場合には、内鋼管20は、外鋼管10に対して中心軸線A1に沿って直線的に差し込まれていく。
具体的には、図4に示されるように、鋼管連結治具1を回転させたとき、カム軸部3は第2ピン孔26の内周面を押圧する。この力H1は、カム軸部3の公転位置によって連続的に変化する。従って、内鋼管20の差し込まれる方向(中心軸線A1の方向)を基準としたとき、力H1は、中心軸線A1の方向における第1分力H1aと、当該方向に対して直交する方向における第2分力H1bとに分解できる。ここで、2個の第1鋼管連結治具1Aを互いに逆方向に回転させる。図4の(f)部は、時計方向に45°だけ第1鋼管連結治具1Aを回転させたときの様子を示す。反時計方向に45°だけ第1鋼管連結治具1Aを回転させたときの様子を示す図4の(c)部と比較すると、それぞれのカム軸部3における力H1の第2分力H1bは、互いに逆方向を向くことがわかる。従って、第2分力H1bは互いに打ち消し合うので、鋼管連結治具1を回転させたとき、第1分力H1aのみが残る。従って、内鋼管20は、外鋼管10の中心軸線A1に沿った方向に直線的に移動しながら外鋼管10に差し込まれる。
ここで、カム軸部3が公転するとき、カム軸部3の外周面は、第2ピン孔26の内周面に押し付けられているので、接触部G2における接線方向に摩擦力が作用する。しかし、本実施形態の鋼管連結治具1は、カム軸部3が第2ピン孔26の内周面に沿って公転するときに、カム軸部3の本体軸部6に対してすべり輪部7が回転する。このすべり輪部7の回転によれば、カム軸部3と第2ピン孔26の内周面との間の摩擦力が低減される。従って、鋼管同士の連結作業において、鋼管連結治具1を回転させるトルクが低減されるので、連結作業を容易にすることができる。また、摩擦力の低減によれば、第2ピン孔の内周面へのダメージを低減することもできる。
次に、2個の第1鋼管連結治具1Aを取り外し(工程S5)、その後、2個の第2鋼管連結治具1Bを配置する(工程S6)。なお、第1鋼管連結治具1Aを取り外すことなく、第1鋼管連結治具1Aが配置された第1ピン孔16とは別の第1ピン孔16に2個の第2鋼管連結治具1Bを配置してもよい。
次に、ハンドルなどを利用して第2鋼管連結治具1Bを初期位置から90°の位置まで回転させる(工程S7、図6の(e)部参照)、さらに初期位置から180°の位置まで回転させる。ここで、回転方向は、工程S4と同様にそれぞれの第2鋼管連結治具1Bにおいて逆方向とする。
ここで、第1鋼管連結治具1Aから第2鋼管連結治具1Bに交換する理由について説明する。図6の(a)部〜(e)部に示されるように、カム軸部3が主軸部2の中心軸線A3のまわりに回転していくと、カム軸部3が中心軸線A3のまわりに公転するので、カム軸部3と第2ピン孔26の内周面との接触部G2の位置が変化する。接触部G2の位置が変化すると、カム軸部3が第2ピン孔26の内周面を押圧する力H1の方向も変化する。この力H1の方向は、当初は内鋼管20が差し込まれる方向と一致するが(図6の(a)部参照)、カム軸部3が公転するにつれて内鋼管20が差し込まれる方向からずれる(図6の(b)部参照)。そうすると、内鋼管20の差し込みに寄与する力H1の第1分力H1aは内鋼管20が差し込まれる方向と力H1の間の角度に対応して減少する。
ここでカム軸部3が第2ピン孔26の内周面を押圧する力は、カム軸部3の外径F2が大きいほど大きくなる。従って、カム軸部3をある程度公転させた後に、第2鋼管連結治具1Bに交換する(図6の(c)部参照)。第2鋼管連結治具1Bは、第1鋼管連結治具1Aよりもカム軸部3の外径F2が大きいので、カム軸部3が第2ピン孔26の内周面を押圧する力H2を大きくすることが可能になる。さらに、大径のカム軸部3によれば、カム軸部3から第2ピン孔26の内周面に及ぼされる力H2の方向が外鋼管10の中心軸線A1に近づく。従って、主軸部2に加えられる力を効率よく内鋼管20を差し込む力(第1分力H1a)に変換することが可能になる。
なお、上記工程S4、S5、S6、S7は、第3工程を構成する。
続いて、複数の第1ピン孔16及び第2ピン孔26のうち、第2鋼管連結治具1Bが配置されていない箇所について、ピン31を差し込む(工程S8)。そして、第2鋼管連結治具1Bを取り外し(工程S9)、第2鋼管連結治具1Bが配置されていた第1ピン孔16及び第2ピン孔26にもピン31を差し込む(工程S10)。以上の工程S1からS10により外鋼管10に内鋼管20が連結される。
本実施形態に係る鋼管連結治具1及び鋼管連結方法によれば、鋼管連結治具1の主軸部2を回転させるだけで第1ピン孔16の中心軸線と第2ピン孔26の中心軸線とを互いに近づけることができる。さらに、第2ピン孔26の内周面へのダメージが低減される。よって、鋼管同士の連結作業を容易にすることができる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る鋼管連結方法について説明する。図8のフロー図に示されるように、第2実施形態に係る鋼管連結方法は、2個の鋼管連結治具を回転させる工程S4A、S7Aにおいて、互いに逆方向へ回すことなく、同じ方向に回す点で第1実施形態に係る鋼管連結方法と相違する。第2実施形態に係る鋼管連結方法に用いる鋼管連結治具は、第1実施形態に係る鋼管連結治具と同じである。
ここで、2個の鋼管連結治具1を同じ方向に回転させるとは、図10の(a)部に示されるように、外鋼管10を展開した状態における回転方向の関係である。外鋼管10の外周面10aからみて一方のピン孔31Aに配置される第1鋼管連結治具1Aの回転方向R1を軸線A6まわりの反時計方向とし、他方のピン孔31Bに配置される第1鋼管連結治具1Aの回転方向R3を軸線A6のまわりの反時計方向とする。図10の(b)部に示されるように、外鋼管10を立体的にみたときには、回転方向R1に対して回転方向R3は逆であるとも言える。
2個の鋼管連結治具1を同じ方向に回転させると、それぞれのカム軸部3における力H1の第2分力H1bは、互いに同じ方向を向く。従って、鋼管連結治具1を回転させたときには、第1分力H1aの力によって外鋼管10に対して内鋼管20が直線的に移動する動きと、第2分力H1bの力によって外鋼管10に対して内鋼管20が外鋼管10の中心軸線A1のまわりに回転する動きとが生じる。ここで、図9の(a)部〜(e)部に示されるように、内鋼管20が中心軸線A1のまわりに回転しつつ移動すると、カム軸部3と第2ピン孔26の内周面上における接触部G2の位置が常に同じ位置に保たれる。換言すると、鋼管連結治具1を回転させた場合に、カム軸部3と第2ピン孔26との間の相対的な位置関係は変化しない。従って、鋼管連結治具1を回転させたとき、カム軸部3から及ぼされる力H1の方向を中心軸線A1の方向(すなわち、内鋼管20の差し込み方向)に維持することが可能になる。よって、鋼管同士をいっそう容易に連結することができる。
また、第2実施形態に係る鋼管連結方法では、鋼管連結治具1の回転角度が増すに従って、カム軸部3と第2ピン孔26との接触部G2が移動し、主軸部2の中心軸線A3から接触部G2までの距離が増大する。そうすると、引き寄せに起因する反力が増大する傾向にある。そこで、工程S6において第2鋼管連結治具1Bに交換している。
なお、上述した実施形態は本発明に係る鋼管連結治具及び鋼管連結方法の一例を示すものである。本発明に係る鋼管連結治具及び鋼管連結方法は、実施形態に係る鋼管連結治具及び鋼管連結方法に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、変形し又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、鋼管連結治具1を取り外すことなく、ピンとして用いてもよい。この場合には、主軸部2の長さを第1ピン孔16の深さと第2ピン孔26の深さの合計長さとする。そして、鋼管連結方法において、工程S4、S7を行うときには、主軸部2の一部が第1ピン孔16に配置され、その他の部分は第1ピン孔16から突出した状態となる。そして、第1ピン孔16と第2ピン孔26とが重複したとき、主軸部2を押し込む。このような構成及び方法とすることにより、鋼管連結治具1をピンとして利用することができる。
1…鋼管連結治具、2…主軸部、3…カム軸部、10…外鋼管(第1鋼管)、20…内鋼管(第2鋼管)、11…第1本体部、12…第1継手部、16…第1ピン孔、21…第2本体部、22…第2継手部、26…第2ピン孔、27…パッキン、31…ピン。

Claims (6)

  1. 第1鋼管の第1継手部の内側に第2鋼管の第2継手部が差し込まれ、前記第1継手部に設けられた第1ピン孔と前記第2継手部に設けられた第2ピン孔とを貫通するピンによって前記第1鋼管と前記第2鋼管とを連結する鋼管連結構造を施工するための鋼管連結治具であって、
    前記第1ピン孔の内径と略同じ長さの外径を有する円柱状をなし、前記施工時に前記第1ピン孔に挿入される主軸部と、
    前記主軸部よりも小径の曲率であると共に前記主軸部の中心軸線の方向に延びる円柱であって、前記主軸部の外周縁に内接するように前記主軸部の端面に設けられたカム軸部と、を備える鋼管連結治具。
  2. 前記カム軸部は、円柱状の本体軸部と、前記本体軸部の中心軸線と重複する回転軸線を有し、前記本体軸部の外周面に対して前記回転軸線のまわりに回転可能に設けられたすべり輪部と、を有する、請求項1に記載の鋼管連結治具。
  3. 鋼管連結治具を利用して、第1鋼管の第1継手部に第2鋼管の第2継手部を連結する鋼管連結方法であって、
    前記鋼管連結治具を準備する第1工程と、
    前記第1継手部に設けられた第1ピン孔と前記第2継手部に設けられた第2ピン孔とが重複した部分が形成される位置まで前記第2鋼管を前記第1鋼管に差し込む第2工程と、
    前記鋼管連結治具を利用して、前記第1ピン孔の中心軸線と前記第2ピン孔の中心軸線とを互いに近づける第3工程と、を有し、
    前記鋼管連結治具は、前記第1ピン孔の内径と略同じ長さの外径を有する円柱状をなし、前記第1ピン孔に挿入される主軸部と、前記主軸部の端面に設けられ、前記主軸部よりも小径の曲率であると共に前記主軸部の中心軸線の方向に延びる円柱であって、前記主軸部の外周縁に内接するように前記主軸部の端面に固定されたカム軸部と、を含み、
    前記第3工程は、前記第1ピン孔に前記主軸部が配置されると共に前記重複する部分に前記カム軸部が配置された前記鋼管連結治具を前記主軸部の中心軸線のまわりに回転させることにより、前記第1ピン孔の中心軸線と前記第2ピン孔の中心軸線とを互いに近づける工程を含む、鋼管連結方法。
  4. 前記第1工程は、前記カム軸部の外径が互いに異なる複数の前記鋼管連結治具を準備する工程を含み、
    前記第3工程は、前記鋼管連結治具を利用して、前記第1ピン孔の中心軸線と前記第2ピン孔の中心軸線とを互いに近づける工程と、前記カム軸の外径が前記鋼管連結治具よりも大きい別の前記鋼管連結治具を配置する工程と、別の前記鋼管連結治具を利用して、前記第1ピン孔の中心軸線と前記第2ピン孔の中心軸線とを互いにさらに近づける工程と、を含む、請求項3に記載の鋼管連結方法。
  5. 前記第1継手部は、少なくとも2個の前記第1ピン孔を有し、
    前記第2継手部は、前記第1ピン孔のそれぞれに対応する少なくとも2個の前記第2ピン孔を有し、
    前記第1工程は、前記カム軸の外径が同じである2個の前記鋼管連結治具を準備する工程を含み、
    前記第3工程は、前記カム軸の外径が同じである2個の前記鋼管連結治具のそれぞれを配置する工程と、前記鋼管連結治具を前記主軸部の中心軸線のまわりに互いに逆方向へ回転させることにより、前記第1ピン孔の中心軸線と前記第2ピン孔の中心軸線とを互いに近づける工程と、を含む、請求項3又は4に記載の鋼管連結方法。
  6. 前記第1継手部は、少なくとも2個の前記第1ピン孔を有し、
    前記第2継手部は、前記第1ピン孔のそれぞれに対応する少なくとも2個の前記第2ピン孔を有し、
    前記第1工程は、前記カム軸の外径が同じである2個の前記鋼管連結治具を準備する工程を含み、
    前記第3工程は、
    前記カム軸の外径が同じである2個の前記鋼管連結治具のそれぞれを配置する工程と、前記鋼管連結治具を前記主軸部の中心軸線のまわりに同じ方向へ回転させることにより、前記第1ピン孔の中心軸線と前記第2ピン孔の中心軸線とを互いに近づける工程と、を含む、請求項3又は4に記載の鋼管連結方法。
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