<第1実施形態>
以下、モータの第1実施形態について説明する。
図1に示すように、モータ31は、有底筒状のハウジング32と、同ハウジング32の内周面に固定された磁石33(図4参照)とを有するステータ34を備えている。ハウジング32の開口部は、略円板状のエンドフレーム35によって閉塞されている。また、磁石33(図4参照)は、N極とS極とが周方向に交互に配置されるようにハウジング32の内周面に固定されている。なお、本実施形態のモータ31は、磁石33の磁極数が「4」となっている。
また、図1及び図4に示すように、モータ31は、磁石33の内側に配置された電機子41を有する。電機子41は、ステータ34に対して回転可能に設けられた回転軸42と、回転軸42に固定された電機子コア43と、電機子コア43に巻装された複数のコイル44と、回転軸42に固定された整流子45とを備えている。
図1、図2(a)及び図4に示すように、電機子コア43は、ハウジング32の内部で磁石33と径方向に対向するとともに、その中心部から放射状に延び周方向に並ぶ16個のティース46を有する。周方向に隣り合うティース46の間の空間は、ティース46に巻回されるコイル44を収容するためのスロット47となっている。電機子コア43は、16個のティース46を有することにより、16個のスロット47を備えている。なお、各スロット47に対して、図2(a)に示すように、時計方向に順に「1」〜「16」のスロット番号を付すことにする。
図1に示すように、整流子45は、回転軸42において電機子コア43よりもハウジング32の開口部寄りの位置に同回転軸42と一体回転可能に固定されており、電機子コア43と共にハウジング32の内部に収容されている。図2(b)に示すように、整流子45は、その外周面に16個のセグメント48を有する。16個のセグメント48は、整流子45の回転方向R(以下、単に回転方向Rとする)の幅が全て等しいとともに、回転方向Rに等角度間隔に配置されている。また、回転方向Rに隣り合うセグメント48同士は回転方向Rに離間している。なお、各セグメント48に対して、図2(b)に示すように、時計方向に順に「1」〜「16」のセグメント番号を付すことにする。以下、「セグメント番号」及び「スロット番号」は、何れも「番号」と省略して記載することにする。
図4に示すように、各コイル44は、前記ティース46に巻回された導線49から構成されている。導線49は、周方向に連続して並んだ3つのティース46に跨って巻回、所謂分布巻にて巻回されている。具体的には、導線49は、番号「2」のセグメント48から番号「11」のスロット47に延び、該番号「11」のスロット47と番号「8」のスロット47との間の3つのティース46に複数回巻回された後に、番号「1」のセグメント48に接続されている。次いで、導線49は、番号「1」のセグメント48から番号「10」のスロット47に延び、該番号「10」のスロット47と番号「7」のスロット47との間の3つのティース46に複数回巻回された後に、番号「16」のセグメント48に接続されている。次いで、導線49は、番号「16」のセグメント48から番号「9」のスロット47に延び、該番号「9」のスロット47と番号「6」のスロット47との間の3つのティース46に複数回巻回された後に、番号「15」のセグメント48に接続されている。同様にして、全てのセグメント48及び全てのスロット47に導線49が巻装されることにより、16個のコイル44が形成されている。即ち、本実施形態のモータ31は、コイル44の数が「16」となっている。
また、整流子45は、同電位となる所定のセグメント48同士を短絡する短絡部材51を備えている。具体的には、番号「1」のセグメント48と番号「9」のセグメント48とが短絡部材51により短絡されている。また、番号「2」のセグメント48と番号「10」のセグメント48とが短絡部材51により短絡されている。更に、番号「3」のセグメント48と番号「11」のセグメント48とが短絡部材51により短絡されている。同様にして、他のセグメント48も短絡部材51により短絡されている。即ち、互いに180°の間隔を有するセグメント48同士が短絡部材51によって短絡されている。
また、図1に示すように、モータ31は、ハウジング32の開口部に配置されたブラシホルダ61を有する。ブラシホルダ61は、エンドフレーム35と略等しい大きさの略円板状をなすベース部材62と、エンドフレーム35に対して固定された4つのブラシ保持部63とを備えている。ベース部材62は、ハウジング32の開口部にエンドフレーム35と軸方向に隣り合って配置されている。
4つのブラシ保持部63は、ベース部材62におけるハウジング32の内側(底部側)を向いた側面に配置されて固定されている。図3に示すように、4つのブラシ保持部63は、ベース部材62において、周方向(回転方向Rに同じ)に離間した4か所に設けられている。本実施形態では、4つのブラシ保持部63は、周方向に等角度間隔(即ち90°間隔)に設けられている。また、各ブラシ保持部63は、径方向に延びるとともに、径方向と直交する断面の形状がベース部材62側に開口した略コ字状をなしている。そして、各ブラシ保持部63の内部には、それぞれ給電ブラシ64が挿入されている。各給電ブラシ64は、径方向に長い略直方体状(四角柱状)をなしている。図1及び図3に示すように、各給電ブラシ64の径方向内側の先端部は、各々が収容されたブラシ保持部63から径方向内側に突出するとともに、整流子45の外周面(即ちセグメント48)に摺接可能に接触している。また、各給電ブラシ64の径方向外側の後端部は、各ブラシ保持部63に収容された圧縮コイルばね65によって径方向内側に付勢されている。
また、ベース部材62におけるブラシ保持部63と反対側の側面には、一対の給電用ターミナル66,67が設けられている。更に、ベース部材62における4つのブラシ保持部63が固定された側面には、雑音防止用の2つのチョークコイル68,69及びコンデンサ71が設けられている。そして、4つの給電ブラシ64のうち同極となる2つの給電ブラシ64から延びるピッグテール72は、一方のチョークコイル68を介して一方の給電用ターミナル66に電気的に接続されている。また、同極となる残りの2つの給電ブラシ64から延びるピッグテール73は、他方のチョークコイル69を介して他方の給電用ターミナル67に電気的に接続されている。なお、コンデンサ71は、一対の給電用ターミナル66,67に電気的に接続されている。そして、給電用ターミナル66,67は、図示しない外部の電源装置に接続される。給電用ターミナル66,67から、チョークコイル68,69及びピッグテール72,73を介して給電ブラシ64に供給された電流は、整流子45を介してコイル44に供給される。すると、電機子41が回転される。なお、本実施形態のモータ31では、電機子41は、一方向にのみ回転される。そして、電機子41(整流子45)の回転に伴って、各給電ブラシ64は、整流子45の複数のセグメント48に順次摺接していく。
ここで、本実施形態の給電ブラシ64について詳述する。
図3及び図5に示すように、4つの給電ブラシ64は、それぞれ前記ブラシ保持部63にて保持されることにより、回転方向Rに角度θ間隔に配置されている。本実施形態では、4つの給電ブラシ64は、回転方向Rに90°間隔に配置されている。また、本実施形態の4つの給電ブラシ64は、外形形状が全て同じ形状をなしている。更に、各給電ブラシ64における回転方向Rの幅D1は、セグメント48における回転方向Rの幅D2と等しくなっている。
図5に示すように、4つの給電ブラシ64のうち2つの給電ブラシ64は、陽極の第1の陽極側給電ブラシ81及び第2の陽極側給電ブラシ82である。また、残りの2つの給電ブラシ64は、陰極の第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陰極側給電ブラシ84である。そして、4つの給電ブラシ64は、回転方向Rに、第1の陽極側給電ブラシ81、第1の陰極側給電ブラシ83、第2の陽極側給電ブラシ82、第2の陰極側給電ブラシ84の順に並んでいる。
第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83は、回転方向Rに電気抵抗値が変化するように構成されている。詳しくは、第1の陽極側給電ブラシ81は、第1の陽極側給電ブラシ81における回転方向Rの前方側の端部(図5において右側の端部)を含む部分に設けられた高抵抗部91と、第1の陽極側給電ブラシ81における高抵抗部91以外の部分に設けられ高抵抗部91よりも電気抵抗値の低い低抵抗部92とから構成されている。同様に、第1の陰極側給電ブラシ83は、第1の陰極側給電ブラシ83における回転方向Rの前方側の端部を含む部分に設けられた高抵抗部91と、第1の陰極側給電ブラシ83における高抵抗部91以外の部分に設けられ高抵抗部91よりも電気抵抗値の低い低抵抗部92とから構成されている。第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の各々において、高抵抗部91と低抵抗部92とは回転方向Rに並んでいる。また、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83は、電気抵抗値の異なる高抵抗部91及び低抵抗部92(2つのブラシ層)が回転方向Rに重なった多層構造をなしている(即ち積層ブラシである)。また、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の各々において、高抵抗部91及び低抵抗部92は、回転方向Rの幅が等しく形成されている。即ち、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の各々における高抵抗部91が占める体積の割合は2分の1である。そして、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の先端面においては、回転方向Rの前方側の半分の領域を高抵抗部91が占め、回転方向Rの後方側の半分の領域を低抵抗部92が占めている。更に、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83は、径方向と直交する断面形状が径方向に一定となっており、同断面においては、高抵抗部91及び低抵抗部92は共に同じ大きさの四角形状をなしている。また、高抵抗部91は、C(炭素)を主成分とした材料を焼成して形成されたものであり、低抵抗部92は、Cu(銅)とC(炭素)とを主成分とした材料を焼成して形成されたものである。
また、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84は、回転方向Rに電気抵抗値が一定(即ち、電気抵抗値が変化しない構成)となっている。また、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84の電気抵抗値は、低抵抗部92よりも高く、本実施形態では高抵抗部91と等しい。そして、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84は、高抵抗部91と同様に、C(炭素)を主成分とした材料を焼成して形成されたものである。
また、陽極の2つの給電ブラシ64は、第1の陽極側給電ブラシ81における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置する時に、第2の陽極側給電ブラシ82における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置するように配置されている。同様に、陰極の2つの給電ブラシ64は、第1の陰極側給電ブラシ83における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置する時に、第2の陰極側給電ブラシ84における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置するように配置されている。例えば、図5に示すように、第1の陽極側給電ブラシ81の回転方向Rの中央が番号「2」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置する時に、第2の陽極側給電ブラシ82の回転方向の中央が番号「10」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置する。そして、第1の陰極側給電ブラシ83の回転方向Rの中央が番号「6」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置する時に、第2の陰極側給電ブラシ84の回転方向Rの中央が番号「14」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置する。また、全ての給電ブラシ64は、摺接中のセグメント48の隣のセグメント48に同時に接触するように配置されている。即ち、全ての給電ブラシ64は、新たにセグメント48に接触するタイミングが同じになるように配置されている。
次に、本実施形態の特徴的な作用とその効果を記載する。
(1)一般的に、給電ブラシは、セグメントに接触し始める時とセグメントから離間する時に火花が発生する。特に、給電ブラシがセグメントから離間する時に大きな火花が発生し、この時の火花によって給電ブラシの摩耗が大きく進行する。また、モータ31においては、どの給電ブラシ64においても、回転する整流子45のセグメント48から離間する時に火花が発生する場合には、火花は、給電ブラシ64における回転方向Rの前方側の端部で発生する。そして、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83における回転方向Rの前方側の端部を含む部分に設けられた高抵抗部91と、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84とは、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の低抵抗部92よりも電気抵抗値が高い。即ち、何れの給電ブラシ81〜84においても、回転方向Rの前方側の端部は、低抵抗部92よりも電気抵抗値が高くなっている。従って、各給電ブラシ64がセグメント48から離間するときに大きな火花が発生することが抑制される。
また、第2の陽極側給電ブラシ82におけるセグメント48に摺接する部分が欠けていたり同第2の陽極側給電ブラシ82ががたついたりして、第2の陽極側給電ブラシ82よりも第1の陽極側給電ブラシ81の方がセグメント48から離間するタイミングが遅くなる可能性がある。この場合においても、第1の陽極側給電ブラシ81における回転方向Rの前方側の端部は、電気抵抗値の高い高抵抗部91であるため、第1の陽極側給電ブラシ81の全体が低抵抗部92と同じ電気抵抗値である場合に比べて大きな火花の発生が抑制され、火花による摩耗が低減される。同様に、第2の陰極側給電ブラシ84におけるセグメント48に摺接する部分が欠けていたり同第2の陰極側給電ブラシ84ががたついたりして、第2の陰極側給電ブラシ84よりも第1の陰極側給電ブラシ83の方がセグメント48から離間するタイミングが遅くなる可能性がある。この場合においても、第1の陰極側給電ブラシ83における回転方向Rの前方側の端部は、電気抵抗値の高い高抵抗部91であるため、第1の陰極側給電ブラシ83の全体が低抵抗部92と同じ電気抵抗値である場合に比べて大きな火花の発生が抑制され、火花による摩耗が低減される。
これらのことから、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84に比べて電気抵抗値の低い低抵抗部92を有する第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の寿命の低下を抑制することができる。
また、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の低抵抗部92は、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84よりも電気抵抗値が低い。そのため、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83における電気的な損失が大きくなることを抑制することができる。従って、全ての給電ブラシ64が高抵抗の給電ブラシで構成される場合に比べて、モータ31の出力の低下を抑制することができる。
また、全ての給電ブラシ64が、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83のように回転方向Rに電気抵抗値が変化する給電ブラシであるわけではない。そのため、全ての給電ブラシが整流子の回転方向に電気抵抗値が変化するものである場合に比べて、給電ブラシ64の製造が煩雑となることや、給電ブラシ64の製造コストが高くなることを抑制することができる。
(2)第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83は、電気抵抗値の異なる高抵抗部91及び低抵抗部92(複数のブラシ層)が回転方向Rに重なった多層構造をなしている。そのため、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の電気抵抗値を、回転方向Rに容易に変化させることができる。そして、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の各々における回転方向Rの前方側の端部に、低抵抗部92よりも電気抵抗値の高い高抵抗部91を容易に設けることができる。
(3)陽極の第1の陽極側給電ブラシ81及び第2の陽極側給電ブラシ82は、回転方向Rの幅が等しい。また、陰極の第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陰極側給電ブラシ84は、回転方向Rの幅が等しい。また、本実施形態では、全ての給電ブラシ64の回転方向Rの幅が等しい。そのため、陽極及び陰極の両極の複数の給電ブラシ64を製造するための成形型を1種類とすることが可能となる。従って、給電ブラシ64を製造するための設備費を低減させることができる。
(4)陽極の第1の陽極側給電ブラシ81及び第2の陽極側給電ブラシ82は、摺接中のセグメント48の隣のセグメント48に同時に接触する。また、陰極の第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陰極側給電ブラシ84は、摺接中のセグメント48の隣のセグメント48に同時に接触する。即ち、陽極及び陰極の複数の給電ブラシ64は、摺接するセグメント48が切り替わるとき、新しく摺接するセグメント48に接触するタイミングが同じである。一般的に、陽極及び陰極の少なくとも一方の極の給電ブラシが複数であるモータは、これら給電ブラシの摺接するセグメントが切り替わる際、摺接中のセグメントの隣に位置するセグメントにこれらの給電ブラシが同時に接触するように構成されている。そのため、このような既存のモータに対して、給電ブラシを保持するブラシホルダ等を変更しなくとも、給電ブラシの長寿命化を目的とした本実施形態の第1の陽極側給電ブラシ81、第2の陽極側給電ブラシ82、第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陰極側給電ブラシ84を適用することが可能である。そして、これら給電ブラシ81〜84をこのような既存のモータに適用することにより、当該既存の構成のモータにおいて、各給電ブラシにおける大きな火花の発生を抑制することができる。
(5)第1の陽極側給電ブラシ81における高抵抗部91が占める体積の割合は、2分の1である。同様に、第1の陰極側給電ブラシ83における高抵抗部91が占める体積の割合は、2分の1である。そのため、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83における電気的な損失が大きくなることをより抑制しつつ、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の火花による摩耗を低減させることができる。従って、モータ31の出力の低下を抑えつつ、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の寿命の低下を抑制することができる。
(6)陽極の第1の陽極側給電ブラシ81と第2の陽極側給電ブラシ82とは、回転方向Rの幅が等しいとともに、摺接中のセグメント48の隣のセグメント48に同時に接触する。従って、第1の陽極側給電ブラシ81と第2の陽極側給電ブラシ82とは、セグメント48から離間する時間が同じとなる。同様に、陰極の第1の陰極側給電ブラシ83と第2の陰極側給電ブラシ84とは、回転方向Rの幅が等しいとともに、摺接中のセグメント48の隣のセグメント48に同時に接触する。従って、第1の陰極側給電ブラシ83と第2の陰極側給電ブラシ84とは、セグメント48から離間する時間が同じとなる。そして、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84よりも電気抵抗値の低い低抵抗部92を有する第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83は、セグメント48から離間する側の端部である回転方向Rの前方側の端部に低抵抗部92よりも電気抵抗値の高い高抵抗部91を有する。そのため、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83がセグメント48から離間するときに大きな火花が発生することが抑制されている。従って、低抵抗部92を有する第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83と、低抵抗部92よりも電気抵抗値の高い第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84とが同じタイミングでセグメント48から離間する構成としても、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の火花摩耗による寿命の低下を抑制することができる。
<第2実施形態>
以下、モータの第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成及び対応する構成に同一の符号を付してその説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態のモータは、上記第1実施形態の第1の陽極側給電ブラシ81に代えて第1の陽極側給電ブラシ101を備えるとともに、上記第1実施形態の第1の陰極側給電ブラシ83に代えて第1の陰極側給電ブラシ103を備えている。なお、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103の外形形状及び配置位置は、上記第1実施形態の第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の外形形状及び配置位置と同じである。
第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103は、各給電ブラシ101,103における回転方向Rの前方側の端部(図6において右側の端部)を含む部分に設けられた高抵抗部91と、高抵抗部91よりも回転方向Rの後方側に設けられた低抵抗部92とから構成され、回転方向Rに電気抵抗値が変化するように構成されている。そして、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103の各々において、高抵抗部91と低抵抗部92とは回転方向Rに並んでいる。また、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103は、電気抵抗値の異なる高抵抗部91及び低抵抗部92(2つのブラシ層)が回転方向Rに重なった多層構造をなしている(即ち積層ブラシである)。
また、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103の各々において、高抵抗部91の回転方向Rの幅は、低抵抗部92の回転方向Rの幅よりも狭くなっている。本実施形態では、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103の各々において、高抵抗部91の回転方向Rの幅は、各給電ブラシ101,103の回転方向Rの幅の約4分の1の幅であり、低抵抗部92の回転方向の幅は、各給電ブラシ101,103の回転方向Rの幅の約4分の3の幅となっている。そして、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103の各々における高抵抗部91が占める体積の割合は、約4分の1である。更に、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103の先端面においては、回転方向Rの前方側の約4分の1の領域を高抵抗部91が占め、残りの領域を低抵抗部92が占めている。また、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103は、径方向と直交する断面形状が径方向に一定となっている。そして、同断面においては、高抵抗部91が各給電ブラシ101,103における回転方向Rの幅の約4分の1の幅を有する四角形状、低抵抗部92が各給電ブラシ101,103における回転方向Rの幅の約4分の3の幅を有する四角形状をなしている。
本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(4),(6)と同様の作用とその効果に加えて、以下の作用とその効果を得ることができる。
(7)第1の陽極側給電ブラシ101における高抵抗部91が占める体積の割合は、約4分の1である。同様に、第1の陰極側給電ブラシ103における高抵抗部91が占める体積の割合は、約4分の1である。そのため、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103における電気的な損失が大きくなることを更に抑制しつつ、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103の火花による摩耗を低減させることができる。従って、モータの出力の低下を更に抑えつつ、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103の寿命の低下を抑制することができる。
<第3実施形態>
以下、モータの第3実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成及び対応する構成に同一の符号を付してその説明を省略する。
図7に示すように、第1の陰極側給電ブラシ83は、第1の陽極側給電ブラシ81から回転方向Rに角度θだけずれた位置に配置されている。また、第2の陽極側給電ブラシ82は、第1の陰極側給電ブラシ83から回転方向Rに角度(θ+α)だけずれた位置、即ち、第1の陽極側給電ブラシ81から回転方向Rに角度(2θ+α)だけずれた位置に配置されている。更に、第2の陰極側給電ブラシ84は、第2の陽極側給電ブラシ82から回転方向Rに角度θだけずれた位置、即ち、第1の陰極側給電ブラシ83から回転方向Rに角度(2θ+α)だけずれた位置に配置されている。そして、第2の陰極側給電ブラシ84と第1の陽極側給電ブラシ81とは回転方向Rに角度(θ−α)だけずれている。なお、本実施形態では、角度θは90°である。また、角度αは予め設定される角度であり、本実施形態では、各給電ブラシ64における回転方向Rの幅の半分に相当する角度となっている。
そのため、例えば、図7のように第2の陽極側給電ブラシ82が番号「10」のセグメント48のみに接触している場合、第1の陽極側給電ブラシ81は番号「10」のセグメント48と短絡された番号「2」のセグメント48及び当該番号「2」のセグメント48の回転方向Rの後方側に位置する番号「1」のセグメント48に跨って接触する。そして、第1の陽極側給電ブラシ81においては、回転方向Rの後方側の低抵抗部92が番号「1」のセグメント48に接触し、回転方向Rの前方側の高抵抗部91が番号「2」のセグメント48に接触している。また、この場合、第2の陰極側給電ブラシ84が番号「14」のセグメント48のみに接触している場合、第1の陰極側給電ブラシ83は番号「14」のセグメント48と短絡された番号「6」のセグメント48及び当該番号「6」のセグメント48の回転方向Rの後方側に位置する番号「5」のセグメント48に跨って接触する。そして、第1の陰極側給電ブラシ83においては、回転方向Rの後方側の低抵抗部92が番号「5」のセグメント48に接触し、回転方向Rの前方側の高抵抗部91が番号「6」のセグメント48に接触している。
このように、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84の回転方向Rの配置位置を角度αだけずらすと、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84の整流終了時間(セグメント48から離間する時間)が、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の整流終了時間よりも所定時間だけ遅くなる。なお、この場合、上記したように、同極の第1の陽極側給電ブラシ81及び第2の陽極側給電ブラシ82は、短絡部材51により短絡されたセグメント48にそれぞれ接触し、同極の第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陰極側給電ブラシ84は、短絡部材51により短絡されたセグメント48にそれぞれ接触する。そのため、各給電ブラシ81〜84は、同一のコイル44を整流するようになっている。そして、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83に対して第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84の整流終了時間が所定時間だけ遅くなるため、各セグメント48から離間する時の火花は、高抵抗の第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84においてのみ発生するようになる。
本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(3),(5)と同様の作用とその効果に加えて、以下の作用とその効果を得ることができる。
(8)第2の陽極側給電ブラシ82は、当該第2の陽極側給電ブラシ82と同極の第1の陽極側給電ブラシ81よりもセグメント48から離間する時間が遅くなるように配置されている。同様に、第2の陰極側給電ブラシ84は、当該第2の陰極側給電ブラシ84と同極の第1の陰極側給電ブラシ83よりもセグメント48から離間する時間が遅くなるように配置されている。そのため、セグメント48から離間する時間が遅い第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84においてのみ該セグメント48から離間する時の火花が発生するようになる。従って、低抵抗部92を有する第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83とセグメント48との間で火花が発生することが抑制されるため、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の寿命の低下をより抑制することができる。また、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84は、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の低抵抗部92よりも電気抵抗値が高いため、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84がセグメント48から離間する時に大きな火花が発生することが抑制される。従って、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84においてのみセグメント48から離間する時の火花が発生する構成であっても、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84の火花摩耗による寿命の低下を抑制することができる。
<第4実施形態>
以下、モータの第4実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成及び対応する構成に同一の符号を付してその説明を省略する。
図8に示すように、本実施形態のモータに備えられた第1の陽極側給電ブラシ111、第2の陽極側給電ブラシ112、第1の陰極側給電ブラシ113及び第2の陰極側給電ブラシ114は、全て同じ外形形状をなすとともに、回転方向Rに等角度間隔(本実施形態では90°間隔)に配置されている。また、回転方向Rに、第1の陽極側給電ブラシ111、第1の陰極側給電ブラシ113、第2の陽極側給電ブラシ112、第2の陰極側給電ブラシ114の順に並んでいる。
各給電ブラシ111〜114における回転方向Rの幅D3(代表して第2の陰極側給電ブラシ114にのみ図示している)は、セグメント48(任意の1つのセグメント48)における回転方向Rの幅D2よりも広く、且つ、セグメント48における回転方向Rの幅D2の2倍の幅よりも狭くなっている。本実施形態では、各給電ブラシ111〜114における回転方向Rの幅D3は、セグメント48における回転方向Rの幅D2の約1.5倍の幅となっている。
また、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113は、各給電ブラシ111,113における回転方向Rの前方側の端部(図8において右側の端部)を含む部分に設けられた高抵抗部91と、高抵抗部91よりも回転方向Rの後方側に位置する低抵抗部92とから構成され、回転方向Rに電気抵抗値が変化する。そして、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の各々において、高抵抗部91と低抵抗部92とは回転方向Rに並んでいる。また、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113は、電気抵抗値の異なる高抵抗部91及び低抵抗部92(2つのブラシ層)が回転方向Rに重なった多層構造をなしている(即ち積層ブラシである)。
また、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の各々において、高抵抗部91の回転方向Rの幅は、低抵抗部92の回転方向の幅よりも狭くなっている。本実施形態では、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の各々において、高抵抗部91の回転方向Rの幅は、各給電ブラシ111,113の回転方向Rの幅の約3分の1の幅であり、低抵抗部92の回転方向Rの幅は、各給電ブラシ111,113の回転方向Rの幅の約3分の2の幅となっている。そして、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の各々における高抵抗部91が占める体積の割合は、約3分の1である。更に、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の先端面においては、回転方向Rの前方側の約3分の1の領域を高抵抗部91が占め、残りの領域を低抵抗部92が占めている。また、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113は、径方向と直交する断面形状が径方向に一定となっている。そして、同断面においては、高抵抗部91が各給電ブラシ111,113における回転方向Rの幅の約3分の1の幅を有する四角形状、低抵抗部92が各給電ブラシ111,113における回転方向Rの幅の約3分の2の幅を有する四角形状をなしている。
第2の陽極側給電ブラシ112及び第2の陰極側給電ブラシ114は、上記第1実施形態の第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84と同様に、回転方向Rに電気抵抗値が一定(即ち、電気抵抗値が変化しない構成)となっている。そして、第2の陽極側給電ブラシ112及び第2の陰極側給電ブラシ114の電気抵抗値は、低抵抗部92よりも高く、本実施形態では高抵抗部91と等しい。
このようにすると、例えば、図8のように第2の陽極側給電ブラシ112の回転方向Rの中央が番号「10」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置する場合、第2の陽極側給電ブラシ112は、番号「10」のセグメント48及び同番号「10」のセグメント48の両側に位置する番号「9」,「11」のセグメント48に跨って接触する。そして、第1の陽極側給電ブラシ111は、その回転方向Rの中央が番号「10」のセグメント48と短絡された番号「2」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置し、番号「2」のセグメント48及び同番号「2」のセグメント48の両側に位置する番号「1」,「3」のセグメント48に跨って接触する。またこの場合、第2の陰極側給電ブラシ114は、その回転方向Rの中央が番号「14」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置し、番号「14」のセグメント48及び同番号「14」のセグメント48の両側に位置する番号「13」,「15」のセグメント48に跨って接触する。そして、第1の陰極側給電ブラシ113は、その回転方向Rの中央が番号「14」のセグメント48と短絡された番号「6」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置し、番号「6」のセグメント48及び同番号「6」のセグメント48の両側に位置する番号「5」,「7」のセグメント48に跨って接触する。
本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(4),(6)と同様の作用とその効果に加えて、以下の作用とその効果を得ることができる。
(9)第1の陽極側給電ブラシ111における高抵抗部91が占める体積の割合は、約3分の1である。同様に、第1の陰極側給電ブラシ113における高抵抗部91が占める体積の割合は、約3分の1である。そのため、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113における電気的な損失が大きくなることを更に抑制しつつ、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の火花による摩耗を低減させることができる。従って、モータの出力の低下を更に抑えつつ、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の寿命の低下を抑制することができる。
(10)各給電ブラシ111〜114の回転方向Rの幅D3は、セグメント48の回転方向Rの幅D2よりも広い。即ち、各給電ブラシ111〜114の周方向の幅は、セグメント48の周方向の幅よりも広い。そのため、周方向の幅がセグメントの周方向の幅と等しい給電ブラシと比べて、各給電ブラシ111〜114の体積が大きくなっている。従って、各給電ブラシ111〜114の火花摩耗による寿命の低下をより抑制することができる。
<第5実施形態>
以下、モータの第5実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成及び対応する構成に同一の符号を付してその説明を省略する。
図9に示すように、本実施形態のモータは、上記第1実施形態の第1の陽極側給電ブラシ81に代えて第1の陽極側給電ブラシ121を備えるとともに、上記第1実施形態の第1の陰極側給電ブラシ83に代えて第1の陰極側給電ブラシ123を備えている。第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123の外形形状及び配置位置は、上記第1実施形態の第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の外形形状及び配置位置と同じである。従って、第1の陽極側給電ブラシ121の回転方向Rの中央が、同給電ブラシ121が摺接しているセグメント48の回転方向Rの中央に位置する時に、第1の陽極側給電ブラシ121と同極の第2の陽極側給電ブラシ82の回転方向Rの中央が、同給電ブラシ82が摺接しているセグメント48の回転方向Rの中央に位置する。同様に、第1の陰極側給電ブラシ123の回転方向Rの中央が、同給電ブラシ123が摺接しているセグメント48の回転方向Rの中央に位置する時に、第1の陰極側給電ブラシ123と同極の第2の陰極側給電ブラシ84の回転方向Rの中央が、同給電ブラシ84が摺接しているセグメント48の回転方向の中央に位置する。
第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123は、各給電ブラシ121,123における回転方向Rの両端部にそれぞれ高抵抗部91を有する。そして、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123の各々において、2つの高抵抗部91の間の部分は低抵抗部92となっている。このように、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123の各々は、2つの高抵抗部91と1つの低抵抗部92とが回転方向Rに並ぶことにより、回転方向Rに電気抵抗値が変化するように構成されている。また、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123は、電気抵抗値の異なる高抵抗部91と低抵抗部92とが回転方向Rに重なった多層構造をなしている(即ち積層ブラシである)。
また、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123の各々において、高抵抗部91の回転方向Rの幅は、低抵抗部92の回転方向Rの幅よりも狭くなっている。本実施形態では、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123の各々において、各高抵抗部91の回転方向の幅は、各給電ブラシ121,123の回転方向Rの幅の約4分の1の幅となっている。また、低抵抗部92の回転方向の幅は、各給電ブラシ121,123の回転方向Rの幅の約4分の2の幅となっている。そして、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123の各々における2つの高抵抗部91が占める体積の割合は、約4分の2である。更に、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123の先端面においては、回転方向Rの前方側の約4分の1の領域を一方の高抵抗部91が占めるとともに、回転方向Rの後方側の約4分の1の領域を他方の高抵抗部91が占めており、残りの領域を低抵抗部92が占めている。また、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123は、径方向と直交する断面形状が径方向に一定となっている。そして、同断面においては、各高抵抗部91が各給電ブラシ121,123における回転方向Rの幅の約4分の1の幅を有する四角形状、低抵抗部92が各給電ブラシ121,123における回転方向Rの幅の約4分の2の幅を有する四角形状をなしている。
本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(6)と同様の作用とその効果に加えて、以下の作用とその効果を有する。
(11)第1の陽極側給電ブラシ121の回転方向Rの中央が、同給電ブラシ121が摺接しているセグメント48の回転方向Rの中央に位置する時に、第1の陽極側給電ブラシ121と同極の第2の陽極側給電ブラシ82の回転方向Rの中央が、同給電ブラシ82が摺接しているセグメント48の回転方向Rの中央に位置する。同様に、第1の陰極側給電ブラシ123の回転方向Rの中央が、同給電ブラシ123が摺接しているセグメント48の回転方向Rの中央に位置する時に、第1の陰極側給電ブラシ123と同極の第2の陰極側給電ブラシ84の回転方向Rの中央が、同給電ブラシ84が摺接しているセグメント48の回転方向の中央に位置する。そのため、本実施形態のモータを、両方向回転するモータとすることが可能となる。
そして、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123は、各給電ブラシ121,123における回転方向Rの両端部に高抵抗部91を有する。そのため、整流子45が周方向の何れの方向に回転しても、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123における整流子45の回転方向の前方側の端部に高抵抗部91が存在することになる。従って、整流子45が何れの方向に回転しても、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123がセグメント48から離間する時に火花が発生する場合には、高抵抗部91において火花が発生することになる。よって、両方向回転のモータにおいても、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84に比べて電気抵抗値の低い低抵抗部92を有する第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123の寿命の低下を抑制することができる。
<第6実施形態>
以下、モータの第6実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成及び対応する構成に同一の符号を付してその説明を省略する。
図10に示す本実施形態のモータ131は、磁石33の磁極数が「6」となっている。また、モータ131に備えられた電機子132の電機子コア133は、周方向に並ぶ26個のティース46を有することにより、24個のスロット47を備えている。なお、各スロット47に対して、図10に示すように、回転方向Rに順に「1」〜「24」のスロット番号を付すことにする。
また、電機子132の整流子134は、その外周面に周方向に等角度間隔に設けられた24個のセグメント48を有する。なお、各セグメント48に対して、図10に示すように、回転方向Rに順に「1」〜「24」のセグメント番号を付すことにする。
前記電機子コア133には、導線49が巻回されることにより複数のコイル135が巻装されている。導線49は、周方向に連続して並んだ3つのティース46に跨って巻回、所謂分布巻にて巻回されている。具体的には、導線49は、番号「24」のセグメント48から番号「1」のスロット47に延び、該番号「1」のスロット47と番号「4」のスロット47との間の3つのティース46に複数回巻回された後に、番号「1」のセグメント48に接続されている。次いで、導線49は、番号「1」のセグメント48から番号「2」のスロット47に延び、該番号「2」のスロット47と番号「5」のスロット47との間の3つのティース46に複数回巻回された後に、番号「3」のセグメント48に接続されている。次いで、導線49は、番号「3」のセグメント48から番号「4」のスロット47に延び、該番号「4」のスロット47と番号「7」のスロット47との間の3つのティース46に複数回巻回された後に、番号「4」のセグメント48に接続されている。同様にして、全てのセグメント48及び全てのスロット47に導線49が巻装されることにより、24個のコイル135が形成されている。即ち、本実施形態のモータ131は、コイル135の数が「24」となっている。
また、整流子134は、同電位となる所定のセグメント48同士、本実施形態では120°間隔に配置されたセグメント48同士を短絡する短絡部材51を備えている。具体的には、番号「1」,「9」,「17」の3つのセグメント48が短絡部材51により短絡されている。また、番号「2」,「10」,「18」の3つのセグメント48が短絡部材51により短絡されている。更に、番号「3」,「11」,「19」の3つのセグメント48が短絡部材51により短絡されている。同様にして、他のセグメント48も短絡部材51により短絡されている。
また、モータ131は、整流子134の外周面に摺接する6つの給電ブラシ64を備えている。本実施形態の6つの給電ブラシ64は、整流子134の回転方向Rに60°間隔に配置されている。また、本実施形態の6つの給電ブラシ64は、外形形状が全て同じ形状をなしており、各給電ブラシ64における回転方向Rの幅がセグメント48における回転方向Rの幅と等しくなっている。
6つの給電ブラシ64のうち3つの給電ブラシ64は、陽極の給電ブラシであって、第1の陽極側給電ブラシ141a,141b及び第2の陽極側給電ブラシ142である。また、残りの2つの給電ブラシ64は、陰極の給電ブラシであって、第1の陰極側給電ブラシ143a,143b及び第2の陰極側給電ブラシ144である。そして、6つの給電ブラシ64は、回転方向Rに、第1の陽極側給電ブラシ141a、第1の陰極側給電ブラシ143a、第1の陽極側給電ブラシ141b、第1の陰極側給電ブラシ143b、第2の陽極側給電ブラシ142、第2の陰極側給電ブラシ144の順に並んでいる。
なお、第1の陽極側給電ブラシ141a,141b及び第1の陰極側給電ブラシ143a,143bは、上記第1実施形態の第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83と同様の構成であり、それぞれ高抵抗部91及び低抵抗部92を有する。また、第2の陽極側給電ブラシ142及び第2の陰極側給電ブラシ144は、上記第1実施形態の第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84と同様の構成である。
また、陽極の3つの給電ブラシ64は、第1の陽極側給電ブラシ141a,141bの各々における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置する時に、第2の陽極側給電ブラシ142における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置するように配置されている。同様に、陰極の3つの給電ブラシ64は、第1の陰極側給電ブラシ143a,143bの各々における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置する時に、第2の陰極側給電ブラシ144における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置するように配置されている。例えば、図10に示すように、第1の陽極側給電ブラシ141aの回転方向Rの中央が番号「2」のセグメント48の回転方向Rの中央に、第1の陽極側給電ブラシ141bの回転方向Rの中央が番号「10」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置する時には、第2の陽極側給電ブラシ142の回転方向Rの中央が番号「18」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置する。同様に、第1の陰極側給電ブラシ143aの回転方向Rの中央が番号「6」のセグメント48の回転方向Rの中央に、第1の陰極側給電ブラシ143bの回転方向Rの中央が番号「14」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置する時には、第2の陰極側給電ブラシ144の回転方向Rの中央が番号「22」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置する。また、全ての給電ブラシ64は、摺接中のセグメント48の隣のセグメント48に同時に接触するように配置されている。即ち、全ての給電ブラシ64は、新たにセグメント48に接触するタイミングが等しくなるように配置されている。
上記した本実施形態においても、上記第1実施形態の(1)〜(6)と同様の作用とその効果を得ることができる。
<第7実施形態>
以下、モータの第7実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態及び上記第6実施形態と同一の構成及び対応する構成に同一の符号を付してその説明を省略する。
図11に示す本実施形態のモータ151は、磁石33の磁極数が「6」となっている。また、モータ151に備えられた電機子152の電機子コア153は、周方向に並ぶ9個のティース46を有することにより、9個のスロット47を備えている。なお、各スロット47に対して、図11に示すように、回転方向Rに順に「1」〜「9」のスロット番号を付すことにする。
また、電機子152の整流子154は、その外周面に周方向に等角度間隔に設けられた9個のセグメント48を有する。なお、各セグメント48に対して、図11に示すように、回転方向Rに順に「1」〜「9」のセグメント番号を付すことにする。
前記電機子コア153には、導線49が巻回されることにより複数のコイル155が巻装されている。導線49は、各ティース46に集中巻にて巻回されている。具体的には、導線49は、番号「1」のセグメント48から番号「1」のスロット47に延び、番号「1」のスロット47と番号「2」のスロット47との間のティース46に複数回巻回されることにより1つのコイル155を構成し、番号「2」のセグメント48に接続されている。また、導線49は、番号「2」のセグメント48から番号「2」のスロット47に延び、番号「2」のスロット47と番号「3」のスロット47との間のティース46に複数回巻回されることにより1つのコイル155を構成し、番号「3」のセグメント48に接続されている。また、導線49は、番号「3」のセグメント48から番号「3」のスロット47に延び、番号「3」のスロット47と番号「4」のスロット47との間のティース46に複数回巻回されることにより1つのコイル155を構成し、番号「4」のセグメント48に接続されている。同様にして、全てのセグメント48及び全てのスロット47に導線49が巻装されることにより、9個のコイル155が形成されている。即ち、本実施形態のモータ151は、コイル155の数が「9」となっている。
また、整流子154は、同電位となる所定のセグメント48同士、本実施形態では120°間隔に配置されたセグメント48同士を短絡する短絡部材51を備えている。具体的には、番号「1」,「4」,「7」の3つのセグメント48が短絡部材51により短絡されている。また、番号「2」,「5」,「8」の3つのセグメント48が短絡部材51により短絡されている。更に、番号「3」,「6」,「9」の3つのセグメント48が短絡部材51により短絡されている。
また、モータ151は、整流子154の外周面に摺接する6つの給電ブラシ64を備えている。本実施形態の6つの給電ブラシ64は、上記第6実施形態と同様に、第1の陽極側給電ブラシ141a,141b、第2の陽極側給電ブラシ142、第1の陰極側給電ブラシ143a,143b及び第2の陰極側給電ブラシ144である。本実施形態では、各給電ブラシ141a,141b,142,143a,143b,144の配置位置は上記第6実施形態と同じであるが、各給電ブラシ141a,141b,142,143a,143b,144の回転方向Rの幅は、セグメント48の回転方向Rの幅の2分の1の幅となっている。
そして、陽極の第1の陽極側給電ブラシ141a,141bの各々における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置する時に、陽極の第2の陽極側給電ブラシ142における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置するようになっている。また、陰極の第1の陰極側給電ブラシ143a,143bの各々における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置する時に、陰極の第2の陰極側給電ブラシ144における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置するようになっている。
上記した本実施形態においても、上記第1実施形態の(1)〜(6)と同様の作用とその効果を得ることができる。
なお、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・第1の陽極側給電ブラシ81,101,111,121,141a,141b及び第1の陰極側給電ブラシ83,103,113,123,143a,143bの各々における高抵抗部91が占める体積の割合は、上記各実施形態の割合に限らず、適宜変更してもよい。
・第1の陽極側給電ブラシ81,101,111,121,141a,141b及び第1の陰極側給電ブラシ83,103,113,123,143a,143b、並びに、第2の陽極側給電ブラシ82,112,142及び第2の陰極側給電ブラシ84,114,144における回転方向Rの幅は、上記各実施形態の幅に限らず、適宜変更してもよい。
例えば、上記第1実施形態において、陽極及び陰極の少なくとも一方の極の複数の給電ブラシ64の回転方向Rの幅が等しくなるようにしてもよい。この例について、図12を参照して詳述する。第1の陽極側給電ブラシ81の回転方向Rの幅を「T1」、第1の陰極側給電ブラシ83の回転方向Rの幅を「T2」、第2の陽極側給電ブラシ82の回転方向Rの幅を「T3」、第2の陰極側給電ブラシ84の回転方向Rの幅を「T4」とする。そして、次の条件1〜4の何れかを満たすようにしてもよい。
条件1:T1=T3
条件2:T2=T4
条件3:T1=T3、T2=T4
条件4:T1=T2=T3=T4
また例えば、上記第1実施形態において、陽極及び陰極の少なくとも一方の極の複数の給電ブラシ64の各コイル44に対する整流開始時間及び整流終了時間が同じになるように構成してもよい。この例について、図13を参照して詳述する。図13に示すように、陽極の給電ブラシである第1の陽極側給電ブラシ81における回転方向Rの後方側の端部と、同じく陽極の給電ブラシである第2の陽極側給電ブラシ82における回転方向Rの後方側の端部との間のずれ角度を「θ1」とする。更に、同第1の陽極側給電ブラシ81における回転方向Rの前方側の端部と、同第2の陽極側給電ブラシ82における回転方向Rの前方側の端部との間のずれ角度を「θ2」とする。なお、第1の陽極側給電ブラシ81及び第2の陽極側給電ブラシ82の各々において、回転方向Rの後方側の端部は、摺接するセグメント48が切り替わるときに新しく摺接するセグメント48に接触し始める端部であり、回転方向Rの前方側の端部は、セグメント48から離間する端部である。また、陽極の給電ブラシである第1の陽極側給電ブラシ81及び第2の陽極側給電ブラシ82が接触する2つのセグメント48における、回転方向Rの後方側の端部のずれ角度(回転方向Rの後方側の端部間の角度)を「θ3」、回転方向Rの前方側の端部のずれ角度(回転方向Rの前方側の端部間の角度)を「θ4」とする。なお、第1の陽極側給電ブラシ81及び第2の陽極側給電ブラシ82が接触する2つのセグメント48は、短絡部材51で短絡された2つのセグメント48であり、図13に示す状態では、番号「2」,「10」のセグメント48である。そして、「θ1=θ3、θ2=θ4」を満たすように構成されている。このようにすることで、第1の陽極側給電ブラシ81と第2の陽極側給電ブラシ82とは、摺接中のセグメント48から隣のセグメント48に接触し始める時間と接触し終わる時間が同じになる。即ち、第1の陽極側給電ブラシ81と整流子45とによる各コイル44に対する整流開始時間及び整流終了時間と、第2の陽極側給電ブラシ82と整流子45とによる各コイル44に対する整流開始時間及び整流終了時間とが同じになる。
そして、陰極の給電ブラシである第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陰極側給電ブラシ84も同様に構成されている。即ち、第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陰極側給電ブラシ84の回転方向Rの後方側の端部のずれ角度(後方側の端部間の角度)と、これら給電ブラシ83,84が接触する2つのセグメント(短絡部材51で短絡された2つのセグメント48)の回転方向Rの後方側の端部のずれ角度(後方側の端部間の角度)とが等しくなっている。且つ、第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陰極側給電ブラシ84の回転方向Rの前方側の端部のずれ角度(前方側の端部間の角度)と、これら給電ブラシ83,84が接触する2つのセグメントの回転方向Rの前方側の端部のずれ角度(前方側の端部間の角度)とが等しくなっている。
なお、図13に示す例では、陽極及び陰極の両方の極の2つずつの給電ブラシ64の各コイル44に対する整流開始時間及び整流終了時間が同じになるように構成されている。しかしながら、陽極の給電ブラシ64(即ち第1の陽極側給電ブラシ81及び第2の陽極側給電ブラシ82)のみ、若しくは陰極の給電ブラシ64(即ち第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陰極側給電ブラシ84)のみが、図13に示す例のように構成されてもよい。
上記各例のようにしても、上記第1実施形態の(1)と同様の作用とその効果を得ることができる。更に、給電ブラシのみを変更するだけで、給電ブラシ以外の部品は既存のモータ(例えば電気抵抗値が等しい複数の給電ブラシを備えたモータ)の部品を使用することができる。従って、モータの製造コストを低減させることができる。なお、第2乃至第7実施形態についても、上記の各例と同様に構成することで、同様の作用とその効果を得ることができる。
・上記第1実施形態では、陽極の第1の陽極側給電ブラシ81と第2の陽極側給電ブラシ82とは、摺接中のセグメント48の隣のセグメント48に同時に接触する。また、第1の陽極側給電ブラシ81と第2の陽極側給電ブラシ82とは、セグメント48から同時に離間する。しかしながら、第1の陽極側給電ブラシ81が摺接中のセグメント48の隣のセグメント48に接触する時間(タイミング)と、第2の陽極側給電ブラシ82が摺接中のセグメント48の隣のセグメント48に接触する時間(タイミング)とは、必ずしも同じでなくてもよい。また、第1の陽極側給電ブラシ81と第2の陽極側給電ブラシ82とは、セグメント48から必ずしも同時に離間しなくてもよい。陰極の第1の陰極側給電ブラシ83と第2の陰極側給電ブラシ84についても同様である。また、第2,4〜7実施形態についても同様である。
・上記第1実施形態では、第1の陽極側給電ブラシ81における回転方向Rの中央が、同給電ブラシ81が摺接しているセグメント48における回転方向Rの中央に位置する時に、同給電ブラシ81と同極の第2の陽極側給電ブラシ82における回転方向Rの中央が、同給電ブラシ82が摺接しているセグメント48における回転方向の中央に位置する。同様に、第1の陰極側給電ブラシ83における回転方向Rの中央が、同給電ブラシ83が摺接しているセグメント48における回転方向Rの中央に位置する時に、同給電ブラシ83と同極の第2の陰極側給電ブラシ84における回転方向Rの中央が、同給電ブラシ84が摺接しているセグメント48における回転方向の中央に位置する。しかしながら、各給電ブラシ81〜83は、必ずしもこのように配置されなくてもよい。なお、このことは、第2,4〜7実施形態においても同様である。
・上記各実施形態では、第2の陽極側給電ブラシ82,112,142及び第2の陰極側給電ブラシ84,114,144と高抵抗部91とは電気抵抗値が等しい。しかしながら、第2の陽極側給電ブラシ82,112,142及び第2の陰極側給電ブラシ84,114,144と高抵抗部91とは、電気抵抗値が異なっていてもよい。例えば、高抵抗部91は、第2の陽極側給電ブラシ82,112,142及び第2の陰極側給電ブラシ84,114,144よりも電気抵抗値が高くてもよい。この場合、例えば、第2の陽極側給電ブラシ82,112,142及び第2の陰極側給電ブラシ84,114,144と高抵抗部91とは、焼成時間を異ならせることにより電気抵抗値を異なる値とする。このようにすると、第2の陽極側給電ブラシ82,112,142及び第2の陰極側給電ブラシ84,114,144は、第1の陽極側給電ブラシ81,101,111,121,141a,141b及び第1の陰極側給電ブラシ83,103,113,123,143a,143bの高抵抗部91よりも電気抵抗値が低い。従って、第2の陽極側給電ブラシ82,112,142及び第2の陰極側給電ブラシ84,114,144と高抵抗部91との電気抵抗値が等しい場合に比べて、第2の陽極側給電ブラシ82,112,142及び第2の陰極側給電ブラシ84,114,144にも電流が流れるようにできる。同時に、第1の陽極側給電ブラシ81,101,111,121,141a,141b及び第1の陰極側給電ブラシ83,103,113,123,143a,143bにおいて高抵抗部91よりも電気抵抗値の低い低抵抗部92に大電流が流れることを抑制することができる。従って、第1の陽極側給電ブラシ81,101,111,121,141a,141b及び第1の陰極側給電ブラシ83,103,113,123,143a,143bの寿命の低下をより抑制することができる。また、この場合においても、第2の陽極側給電ブラシ82,112,142及び第2の陰極側給電ブラシ84,114,144は、第1の陽極側給電ブラシ81,101,111,121,141a,141b及び第1の陰極側給電ブラシ83,103,113,123,143a,143bの低抵抗部92よりも電気抵抗値が高い。そのため、第2の陽極側給電ブラシ82,112,142及び第2の陰極側給電ブラシ84,114,144がセグメント48から離間するときに同第2の陽極側給電ブラシ82,112,142及び第2の陰極側給電ブラシ84,114,144において大きな火花が発生することは抑制される。
・上記第1〜4,6,7実施形態では、第1の陽極側給電ブラシ81,101,111,141a,141b及び第1の陰極側給電ブラシ83,103,113,143a,143bは、高抵抗部91と低抵抗部92との2つのブラシ層が回転方向Rに重なった2層の積層構造をなしている。また、上記第5実施形態では、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123は、2つの高抵抗部91と1つの低抵抗部92との3つのブラシ層が回転方向Rに重なった3層の積層構造をなしている。しかしながら、各給電ブラシ81,101,111,121,141a,141b,83,103,113,123,143a,143bを構成するブラシ層の数は、これに限らない。各給電ブラシ81,101,111,121,141a,141b,83,103,113,123,143a,143bは、電気抵抗値が異なる複数のブラシ層が回転方向Rに積層されていればよい。例えば、各給電ブラシ81,101,111,121,141a,141b,83,103,113,123,143a,143bにおいて、低抵抗部92を、高抵抗部91よりも電気抵抗値の低い複数のブラシ層が回転方向Rに重なった積層構造としてもよい。
・上記各実施形態では、第1の陽極側給電ブラシ81,101,111,121,141a,141b及び第1の陰極側給電ブラシ83,103,113,123,143a,143bは、高抵抗部91と低抵抗部92とが回転方向Rに重なった積層構造をなす積層ブラシである。しかしながら、第1の陽極側給電ブラシ81,101,111,121,141a,141b及び第1の陰極側給電ブラシ83,103,113,123,143a,143bは、必ずしも積層構造をなさなくてもよい。第1の陽極側給電ブラシ81,101,111,121,141a,141b及び第1の陰極側給電ブラシ83,103,113,123,143a,143bは、各給電ブラシにおける回転方向Rの前方側の端部を含む部分に高抵抗部91を有し、且つ高抵抗部91と回転方向Rに並び高抵抗部91よりも電気抵抗値の低い低抵抗部92を有するように、回転方向Rに電気抵抗値が変化する構成であればよい。例えば、第1の陽極側給電ブラシ81,101,111,121,141a,141b及び第1の陰極側給電ブラシ83,103,113,123,143a,143bは、回転方向Rに沿って各給電ブラシにおける回転方向Rの後方側の端部から前方側の端部に向かうにつれて徐々に電気抵抗値が高くなるように構成されたものであってもよい。
・上記第1実施形態では、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83は、径方向と直交する断面において、高抵抗部91が回転方向Rの前方側に位置する四角形状をなし、低抵抗部92が回転方向Rの後方側に位置し高抵抗部91と同様の四角形状をなすように形成されている。しかし、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83は、各給電ブラシ81,83における回転方向Rの前方側の端部を含む部分に設けられた高抵抗部91と、高抵抗部91と回転方向Rに並び高抵抗部91よりも電気抵抗値の低い低抵抗部92とを有し、回転方向Rに電気抵抗値が変化するものであればよい。このことは、第2〜7実施形態の第1の陽極側給電ブラシ101,111,121,141a,141b及び第1の陰極側給電ブラシ103,113,123,143a,143bについても同様である。
例えば、図14(a)に示すように、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83は、径方向と直交する断面において、高抵抗部91が、対角線L1よりも回転方向Rの前方側となる部分を占める三角形状をなし、低抵抗部92が、対角線L1よりも回転方向Rの後方側となる部分を占める三角形状をなすものであってもよい。なお、図14(a)では、断面を示すハッチングを省略している。この第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83は、径方向に断面形状が一定となっている。更に、この第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83は、電気抵抗値の異なる2つのブラシ層(即ち高抵抗部91と低抵抗部92)が回転方向Rに重なった多層構造をなしている。
また例えば、第5実施形態の第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123を、図14(b)に示すように構成してもよい。なお、図14(b)では、断面を示すハッチングを省略している。図14(b)に示す例では、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123の径方向と直交する断面において、低抵抗部92は、各給電ブラシ121,123における回転方向Rの中央部で三角形状をなしている。また、同断面において、2つの高抵抗部91は、同断面における回転方向Rの両端を含み低抵抗部92の回転方向Rの両側の領域を占める三角形状をなしている。因みに、同断面において、低抵抗部92は、同断面における回転方向Rと直交する方向の一辺を底辺とする二等辺三角形状をなし、2つの高抵抗部91は、二等辺三角形状をなす低抵抗部92の長さの等しい2つの辺を斜辺とする直角三角形状をなしている。なお、この第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123は、径方向に断面形状が一定となっている。更に、この第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123は、電気抵抗値の異なる低抵抗部92と2つの高抵抗部91とが回転方向Rに重なった多層構造をなしている。このような第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123が両方向回転するモータに備えられると、モータが何れの方向に回転した場合にも、上記第1実施形態の(1)と同様の作用とその効果を得ることができる。
・上記第1実施形態では、モータ31は、陽極の2つの給電ブラシ64(即ち第1の陽極側給電ブラシ81及び第2の陽極側給電ブラシ82)と、陰極の2つの給電ブラシ64(即ち第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陰極側給電ブラシ84)との合計4個の給電ブラシを備えている。しかしながら、モータ31に備えられる給電ブラシ64の数はこれに限らず、陽極及び陰極の少なくとも一方の極が複数であればよい。
例えば、図15に示すように、モータを、第1の陽極側給電ブラシ81、第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陽極側給電ブラシ82の合計3つの給電ブラシを備えた構成としてもよい。図15に示す例では、各給電ブラシ81〜83の配置位置は、上記第1実施形態と同じである。また例えば、図16に示すように、モータを、第1の陰極側給電ブラシ83、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84の合計3つの給電ブラシを備えた構成としてもよい。図16に示す例では、各給電ブラシ82〜83の配置位置は、上記第1実施形態の配置位置と同じである。なお、第2〜5実施形態においても、同様にして給電ブラシ64の数を変更してもよい。
また、上記第6実施形態のモータ131において、例えば、図17に示すように、第1の陽極側給電ブラシ141bと第1の陰極側給電ブラシ143bとを省略してもよい。図17に示す例では、第1の陽極側給電ブラシ141aから回転方向Rに60°離間した位置に第1の陰極側給電ブラシ143aが配置され、第1の陰極側給電ブラシ143aから回転方向Rに60°離間した位置に第2の陽極側給電ブラシ142が配置されている。更に、第2の陽極側給電ブラシ142から回転方向Rに60°離間した位置に第2の陰極側給電ブラシ144が配置されている。なお、上記第7実施形態のモータにおいても、同様にして、陽極及び陰極の少なくとも一方の極の給電ブラシ64の数が複数となるように給電ブラシ64の数を変更してもよい。
そして、上記した例のようにすると、給電ブラシ64の数が減少されるため、モータの製造コストを低減させることができる。また、部品点数が低減されるため、給電ブラシ64の組み付けが容易となる。
・上記各実施形態では、高抵抗部91は、C(炭素)を主成分とした材料を焼成して形成されたものであり、低抵抗部92は、Cu(銅)とC(炭素)とを主成分とした材料を焼成して形成されたものである。しかしながら、高抵抗部91を構成する材料及び低抵抗部92を構成する材料は、これに限らない。高抵抗部91及び低抵抗部92は、高抵抗部91よりも低抵抗部92の方が電気抵抗値が低くなるように形成されたものであればよい。なお、低抵抗部92は、第2の陽極側給電ブラシ82,112,142及び第2の陰極側給電ブラシ84,114,144よりも電気抵抗値が低くなるように形成される。
・複数の給電ブラシ64の配置位置は、上記実施形態の配置位置に限らず、適宜変更してもよい。
・上記各実施形態において、セグメント48の数、コイル44,135,155の数、及び磁石33の磁極の数は適宜変更してもよい。
・上記各実施形態及び上記各変更例を組み合わせて実施してもよい。
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のモータにおいて、前記第1の給電ブラシは、前記第1の給電ブラシにおける前記整流子の回転方向の両端部に設けられた2つの前記高抵抗部と、2つの前記高抵抗部の間に設けられた前記低抵抗部とから構成されていることを特徴とするモータ。
この構成によれば、整流子が周方向の何れの方向に回転しても、第1の給電ブラシにおける整流子の回転方向の前方側の端部に高抵抗部が存在することになる。従って、整流子が何れの方向に回転しても、第1の給電ブラシがセグメントから離間する時に火花が発生する場合には、高抵抗部において火花が発生することになる。よって、両方向回転のモータにおいても、第2の給電ブラシに比べて電気抵抗値の低い低抵抗部を有する第1の給電ブラシの寿命の低下を抑制することができる。
(ロ)請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のモータにおいて、同極の前記第1の給電ブラシ及び前記第2の給電ブラシは、前記第1の給電ブラシよりも前記第2の給電ブラシの方が前記セグメントから離間する時間が遅くなるように設けられていることを特徴とするモータ。
この構成によれば、セグメントから離間する時間が遅い第2の給電ブラシにおいてのみ該セグメントから離間する時の火花が発生するようになる。従って、第1の給電ブラシとセグメントとの間で火花が発生することが抑制されるため、第1の給電ブラシの寿命の低下をより抑制することができる。また、第2の給電ブラシは、第1の給電ブラシの低抵抗部よりも電気抵抗値が高いため、第2の給電ブラシがセグメントから離間する時に大きな火花が発生することが抑制される。従って、第2の給電ブラシにおいてのみ火花がセグメントから離間する時の火花が発生する構成であっても、第2の給電ブラシの火花摩耗による寿命の低下を抑制することができる。
(ハ)請求項1乃至請求項6、前記(イ)及び前記(ロ)の何れか1項に記載のモータにおいて、前記第1の給電ブラシにおける前記高抵抗部が占める体積の割合は、2分の1以下であることを特徴とするモータ。
この構成によれば、第1の給電ブラシにおける電気的な損失が大きくなることをより抑制しつつ、第1の給電ブラシの火花による摩耗を低減させることができる。従って、モータの出力の低下をより抑えつつ、第1の給電ブラシの寿命の低下を抑制することができる。