<第1実施形態>
以下、モータの第1実施形態について説明する。
図1に示すように、モータ31は、有底筒状のハウジング32と、同ハウジング32の内周面に固定された磁石33(図5参照)とを有するステータ34を備えている。ハウジング32の開口部は、略円板状のエンドフレーム35によって閉塞されている。また、磁石33(図5参照)は、N極とS極とが周方向に交互に配置されるようにハウジング32の内周面に固定されている。なお、本実施形態のモータ31は、磁石33の磁極数が「4」となっている。
また、図1及び図5に示すように、モータ31は、磁石33の内側に配置された電機子41を有する。電機子41は、ステータ34に対して回転可能に設けられた回転軸42と、回転軸42に固定された電機子コア43と、電機子コア43に巻装された複数のコイル44と、回転軸42に固定された整流子45とを備えている。
図1、図2(a)及び図5に示すように、電機子コア43は、ハウジング32の内部で磁石33と径方向に対向するとともに、その中心部から放射状に延び周方向に並ぶ16個のティース46を有する。周方向に隣り合うティース46の間の空間は、ティース46に巻回されるコイル44を収容するためのスロット47となっている。電機子コア43は、16個のティース46を有することにより、16個のスロット47を備えている。なお、各スロット47に対して、図2(a)に示すように、時計方向に順に「1」〜「16」のスロット番号を付すことにする。
図1に示すように、整流子45は、回転軸42において電機子コア43よりもハウジング32の開口部寄りの位置に同回転軸42と一体回転可能に固定されており、電機子コア43と共にハウジング32の内部に収容されている。図2(b)に示すように、整流子45は、その外周面に16個のセグメント48を有する。16個のセグメント48は、整流子45の回転方向R(以下、単に回転方向Rとする)の幅が全て等しいとともに、回転方向Rに等角度間隔に配置されている。また、回転方向Rに隣り合うセグメント48同士は回転方向Rに離間している。なお、各セグメント48に対して、図2(b)に示すように、時計方向に順に「1」〜「16」のセグメント番号を付すことにする。以下、「セグメント番号」及び「スロット番号」は、何れも「番号」と省略して記載することにする。
図5に示すように、各コイル44は、前記ティース46に巻回された導線49から構成されている。導線49は、周方向に連続して並んだ3つのティース46に跨って巻回、所謂分布巻にて巻回されている。具体的には、導線49は、番号「2」のセグメント48から番号「11」のスロット47に延び、該番号「11」のスロット47と番号「8」のスロット47との間の3つのティース46に複数回巻回された後に、番号「1」のセグメント48に接続されている。次いで、導線49は、番号「1」のセグメント48から番号「10」のスロット47に延び、該番号「10」のスロット47と番号「7」のスロット47との間の3つのティース46に複数回巻回された後に、番号「16」のセグメント48に接続されている。次いで、導線49は、番号「16」のセグメント48から番号「9」のスロット47に延び、該番号「9」のスロット47と番号「6」のスロット47との間の3つのティース46に複数回巻回された後に、番号「15」のセグメント48に接続されている。同様にして、全てのセグメント48及び全てのスロット47に導線49が巻装されることにより、16個のコイル44が形成されている。即ち、本実施形態のモータ31は、コイル44の数が「16」となっている。
また、整流子45は、同電位となる所定のセグメント48同士を短絡する短絡部材51を備えている。具体的には、番号「1」のセグメント48と番号「9」のセグメント48とが短絡部材51により短絡されている。また、番号「2」のセグメント48と番号「10」のセグメント48とが短絡部材51により短絡されている。更に、番号「3」のセグメント48と番号「11」のセグメント48とが短絡部材51により短絡されている。同様にして、他のセグメント48も短絡部材51により短絡されている。即ち、互いに180°の間隔を有するセグメント48同士が短絡部材51によって短絡されている。
また、図1に示すように、モータ31は、ハウジング32の開口部に配置されたブラシホルダ61を有する。ブラシホルダ61は、エンドフレーム35と略等しい大きさの略円板状をなすベース部材62と、エンドフレーム35に対して固定された4つのブラシ保持部63とを備えている。ベース部材62は、ハウジング32の開口部にエンドフレーム35と軸方向に隣り合って配置されている。
4つのブラシ保持部63は、ベース部材62におけるハウジング32の内側(底部側)を向いた側面に配置されて固定されている。各ブラシ保持部63は、例えば、真鍮の板材から形成されている。図3に示すように、4つのブラシ保持部63は、ベース部材62において、周方向(回転方向Rに同じ)に離間した4か所に設けられている。そして、各ブラシ保持部63は、径方向に延びるとともに、径方向と直交する断面の形状がベース部材62側に開口した略コ字状をなしている。
各ブラシ保持部63の内側には、それぞれ給電ブラシ64が挿入されている。各給電ブラシ64は、径方向に長い略直方体状(四角柱状)をなしている。なお、各ブラシ保持部63の内部空間は、給電ブラシ64の寸法誤差や、同給電ブラシ64の温度変化に伴う膨張を許容できるように、内側に挿入される給電ブラシ64よりも僅かに大きくなっている。即ち、各ブラシ保持部63の内周面は、挿入される給電ブラシ64の外周面よりも僅かに大きくなっている。そのため、ブラシ保持部63の内周面と給電ブラシ64の外周面との間に、若干の隙間が設定されている。そして、図1及び図3に示すように、各給電ブラシ64の径方向内側の先端部は、各々が収容されたブラシ保持部63から径方向内側に突出するとともに、整流子45の外周面(即ちセグメント48)に摺接可能に接触している。また、図1、図3及び図4に示すように、各給電ブラシ64の径方向外側の後端部は、各ブラシ保持部63に収容された付勢部材65によって整流子45側に付勢されている。なお、本実施形態の付勢部材65は、圧縮コイルばねである。そして、各給電ブラシ64は、各々が挿入されたブラシ保持部63によって回転方向Rの移動が規制されるとともに、各給電ブラシ64における後端から先端に向かう方向の移動がブラシ保持部63によって案内される。
図3に示すように、ベース部材62におけるブラシ保持部63と反対側の側面には、一対の給電用ターミナル66,67が設けられている。更に、ベース部材62における4つのブラシ保持部63が固定された側面には、雑音防止用の2つのチョークコイル68,69及びコンデンサ71が設けられている。そして、4つの給電ブラシ64のうち同極となる2つの給電ブラシ64から延びるピッグテール72は、一方のチョークコイル68を介して一方の給電用ターミナル66に電気的に接続されている。また、同極となる残りの2つの給電ブラシ64から延びるピッグテール73は、他方のチョークコイル69を介して他方の給電用ターミナル67に電気的に接続されている。なお、コンデンサ71は、一対の給電用ターミナル66,67に電気的に接続されている。そして、給電用ターミナル66,67は、図示しない外部の電源装置に接続される。給電用ターミナル66,67から、チョークコイル68,69及びピッグテール72,73を介して給電ブラシ64に供給された電流は、整流子45を介してコイル44に供給される。すると、電機子41が回転される。なお、本実施形態のモータ31では、電機子41は、一方向にのみ回転される。そして、電機子41(整流子45)の回転に伴って、各給電ブラシ64は、整流子45の複数のセグメント48に順次摺接していく。
ここで、本実施形態の給電ブラシ64について詳述する。
図3及び図6に示すように、それぞれ前記ブラシ保持部63にて保持された4つの給電ブラシ64は、回転方向Rに離間して配置されている。
図6に示すように、4つの給電ブラシ64のうち2つの給電ブラシ64は、陽極の第1の陽極側給電ブラシ81及び第2の陽極側給電ブラシ82である。また、残りの2つの給電ブラシ64は、陰極の第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陰極側給電ブラシ84である。そして、4つの給電ブラシ64は、回転方向Rに、第2の陰極側給電ブラシ84、第2の陽極側給電ブラシ82、第1の陰極側給電ブラシ83、第1の陽極側給電ブラシ81の順に並んでいる。また、本実施形態では、第1の陽極側給電ブラシ81と第1の陰極側給電ブラシ83とが同じ外形形状をなすとともに、第2の陽極側給電ブラシ82と第2の陰極側給電ブラシ84とが同じ外形形状をなしている。
第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83は、回転方向Rに電気抵抗値が一定(即ち、電気抵抗値が変化しない構成)となっている。また、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84は、回転方向Rに電気抵抗値が一定(即ち、電気抵抗値が変化しない構成)となっている。そして、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84は、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83よりも電気抵抗値が高い。即ち、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83は、その全体が、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84よりも電気抵抗値の低い低抵抗部92となっている。なお、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83は、例えば、Cu(銅)とC(炭素)とを主成分とした材料を焼成して形成されたものである。また、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84は、例えば、C(炭素)を主成分とした材料を焼成して形成されたものである。
第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83における回転方向Rの幅D1は、セグメント48における回転方向Rの幅D2よりも狭くなっている。本実施形態では、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の回転方向Rの幅D1は、セグメント48の回転方向Rの幅D2の2分の1となっている。また、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84における回転方向Rの幅D3は、セグメント48における回転方向Rの幅D2と等しくなっている。
そして、第2の陽極側給電ブラシ82は、第2の陰極側給電ブラシ84から回転方向Rに角度θだけずれた位置に配置されている。また、第1の陰極側給電ブラシ83は、第2の陽極側給電ブラシ82から回転方向Rに角度(θ−α1)だけずれた位置、即ち、第2の陰極側給電ブラシ84から回転方向Rに角度(2θ−α1)だけずれた位置に配置されている。更に、第1の陽極側給電ブラシ81は、第1の陰極側給電ブラシ83から回転方向Rに角度θだけずれた位置、即ち、第2の陽極側給電ブラシ82から回転方向Rに角度(2θ−α1)だけずれた位置に配置されている。そして、第1の陽極側給電ブラシ81と第2の陰極側給電ブラシ84とは回転方向Rに角度(θ+α1)だけずれている。なお、本実施形態では、角度θは90°である。また、角度α1は予め設定される角度であり、本実施形態では、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83における回転方向Rの幅D1の半分に相当する角度となっている。
また、陽極の2つの給電ブラシ64は、第1の陽極側給電ブラシ81における回転方向Rの後方側の端部が、セグメント48における回転方向Rの後方側の端部に位置する時に、第2の陽極側給電ブラシ82における回転方向Rの後方側の端部が、セグメント48における回転方向Rの後方側の端部に位置するように配置されている。同様に、陰極の2つの給電ブラシ64は、第1の陰極側給電ブラシ83における回転方向Rの後方側の端部が、セグメント48における回転方向Rの後方側の端部に位置する時に、第2の陰極側給電ブラシ84における回転方向Rの後方側の端部が、セグメント48における回転方向Rの後方側の端部に位置するように配置されている。例えば、図6に示すように、第1の陽極側給電ブラシ81の回転方向Rの後方側の端部が番号「2」のセグメント48の回転方向Rの後方側の端部に位置する時に、第2の陽極側給電ブラシ82の回転方向の後方側の端部が番号「10」のセグメント48の回転方向Rの後方側の端部に位置する。そして、第2の陽極側給電ブラシ82が番号「10」のセグメント48のみに接触している場合、第1の陽極側給電ブラシ81は番号「10」のセグメント48と短絡された番号「2」のセグメント48のみに接触する。また、第1の陰極側給電ブラシ83の回転方向Rの後方側の端部が番号「6」のセグメント48の回転方向Rの後方側の端部に位置する時に、第2の陰極側給電ブラシ84の回転方向Rの後方側の端部が番号「14」のセグメント48の回転方向Rの後方側の端部に位置する。そして、第2の陰極側給電ブラシ84が番号「14」のセグメント48のみに接触している場合、第1の陰極側給電ブラシ83は番号「14」のセグメント48と短絡された番号「6」のセグメント48のみに接触する。このように、全ての給電ブラシ64は、摺接中のセグメント48の隣のセグメント48に同時に接触するように配置されている。即ち、全ての給電ブラシ64は、新たにセグメント48に接触するタイミングが同じになるように配置されている。
4つの給電ブラシ64の回転方向Rの配置位置及び幅が上記のように構成されることにより、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84の整流終了時間(セグメント48から離間する時間)が、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の整流終了時間よりも所定時間だけ遅くなる。なお、この場合、上記したように、同極の第1の陽極側給電ブラシ81及び第2の陽極側給電ブラシ82は、短絡部材51により短絡されたセグメント48にそれぞれ接触し、同極の第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陰極側給電ブラシ84は、短絡部材51により短絡されたセグメント48にそれぞれ接触する。そのため、各給電ブラシ81〜84は、同一のコイル44を整流するようになっている。
また、図4及び図6に示すように、第2の陽極側給電ブラシ82の後端面82b(整流子45に接触する先端面82aと反対側の端面)、及び第2の陰極側給電ブラシ84の後端面84b(整流子45に接触する先端面84aと反対側の端面)は、付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの前方側に向けるように傾斜している。なお、第2の陽極側給電ブラシ82と第2の陰極側給電ブラシ84とは外形形状が同じであるため、以下、第2の陽極側給電ブラシ82の形状についてのみ説明をして、第2の陰極側給電ブラシ84の形状の説明を省略する。
図7に示すように、第2の陽極側給電ブラシ82における回転方向Rの両側面82c,82dは、互いに平行をなしている。そして、第2の陽極側給電ブラシ82は、回転軸42(図1参照)の軸方向から見て当該両側面82c,82dが整流子45の直径方向と平行をなすように配置されている。なお、第2の陽極側給電ブラシ82を内側に保持したブラシ保持部63において、回転方向Rに対向する一対の内側面63a,63bは、互いの間の間隔が第2の陽極側給電ブラシ82における回転方向Rの幅よりも若干広くなっている。更に、当該一対の内側面63a,63bは、回転軸42(図1参照)の軸方向から見て整流子45の直径方向と平行をなしている。そして、ブラシ保持部63の内側では、第2の陽極側給電ブラシ82の側面82cとブラシ保持部63の内側面63aとが回転方向Rに対向し、第2の陽極側給電ブラシ82の側面82dとブラシ保持部63の内側面63bとが回転方向Rに対向している。
そして、第2の陽極側給電ブラシ82の後端面82bは、第2の陽極側給電ブラシ82における回転方向Rの前方側の側面82cから後方側の側面82dに向かうにつれて整流子45の外周面に近づくように傾斜した平面状をなしている。第2の陽極側給電ブラシ82を整流子45に向けて付勢する付勢部材65は、この後端面82bを整流子45に向けて付勢している。第2の陽極側給電ブラシ82を付勢する付勢部材65がこのような後端面82bを整流子45に向けて付勢することにより、同付勢部材65の付勢力Fのベクトルは回転方向Rの前方側を向く。即ち、付勢力Fのベクトルは、第2の陽極側給電ブラシ82における回転方向Rの中央を通り回転方向Rと直交する直線L1よりも回転方向Rの前方側を向く。
次に、本実施形態の作用について説明する。
一般的に、給電ブラシは、セグメントに接触し始める時とセグメントから離間する時に火花が発生する。特に、給電ブラシがセグメントから離間する時に大きな火花が発生し、この時の火花によって給電ブラシの摩耗が大きく進行する。本実施形態のモータにおいては、同極の第1の陽極側給電ブラシ81と第2の陽極側給電ブラシ82とは、第2の陽極側給電ブラシ82の方が同電位のセグメント48から離間する時間が遅い。また、同極の第1の陰極側給電ブラシ83と第2の陰極側給電ブラシ84とは、第2の陰極側給電ブラシ84の方が同電位のセグメント48から離間する時間が遅い。そのため、セグメント48から離間する時間が遅い第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84においてのみ該セグメント48から離間する時の火花が発生するようになる。即ち、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83よりも電気抵抗値が高い第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84においてのみセグメント48から離間する時の火花が発生するようになる。そして、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84が回転する整流子45のセグメント48から離間する時に火花が発生する場合には、火花は、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84における回転方向Rの前方側の端部で発生する。
また、第2の陽極側給電ブラシ82の後端面82b、及び第2の陰極側給電ブラシ84の後端面84bは、付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの前方側に向けるように傾斜している。そのため、図7に示すように、第2の陽極側給電ブラシ82の後端面82bを整流子45に向けて付勢部材65が付勢すると、回転方向Rに沿って第2の陽極側給電ブラシ82を回転方向Rの前方側に押圧する分力Faが生じる。そして、第2の陽極側給電ブラシ82は、この分力Faによって回転方向Rの前方側に押圧されることにより、同第2の陽極側給電ブラシ82における回転方向Rの前方側の側面82cをブラシ保持部63における回転方向Rの前方側の内側面63aに押し付けた状態となる。なお、第2の陽極側給電ブラシ82は、ブラシ保持部63における回転方向Rの前方側の内側面63aに案内されながら、回転方向Rと直交する方向(第2の陽極側給電ブラシ82の後端から先端に向かう方向)に移動可能である。また、付勢部材65の付勢力Fには、回転方向Rと直交する方向の分力Fbも生じるため、この分力Fbによって第2の陽極側給電ブラシ82は整流子45の外周面(セグメント48)に押し付けられる。これらのことから、第2の陽極側給電ブラシ82における回転方向Rの前方側の端部、即ちセグメント48から離間する端部を、安定してセグメント48に接触させることができる。
なお、第2の陽極側給電ブラシ82と第2の陰極側給電ブラシ84とは外形形状が同じであるため、第2の陰極側給電ブラシ84についても同様の作用が得られる。
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)回転する整流子45のセグメント48から第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84が離間する時に火花が発生する場合には、火花は、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84における回転方向Rの前方側の端部、即ちセグメント48から離間する端部で発生する。そして、第2の陽極側給電ブラシ82の後端面82b及び第2の陰極側給電ブラシ84の後端面84bは、付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの前方側に向けるように傾斜している。そのため、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84は、付勢部材65の付勢力F(分力Fa)によってブラシ保持部63に対して回転方向Rの前方側に押し付けられることになる。これにより、整流子45の回転時に第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84の各々における回転方向Rの前方側の端部がたつくことが抑制される。従って、第2の陽極側給電ブラシ82のがたつきに起因して第2の陽極側給電ブラシ82よりも遅く第1の陽極側給電ブラシ81がセグメント48から離間することを抑制することができる。また、第2の陰極側給電ブラシ84のがたつきに起因して第2の陰極側給電ブラシ84よりも遅く第1の陰極側給電ブラシ83がセグメント48から離間することを抑制することができる。その結果、複数の給電ブラシ64のうち、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84に比べて電気抵抗値の低い第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83で火花が発生することを抑制することができる。そして、ひいては、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84に比べて電気抵抗値の低い第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の寿命の低下を抑制することができる。
(2)第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83は、回転方向Rの全部が第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84よりも電気抵抗値の低い低抵抗部92であり、回転方向Rに電気抵抗値が一定である。そのため、これら第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の製造が容易である。そして、このような第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83を備えたモータ31であっても、第2の陽極側給電ブラシ82のがたつきに起因して同給電ブラシ82よりも遅く第1の陽極側給電ブラシ81がセグメント48から離間すること、並びに、第2の陰極側給電ブラシ84のがたつきに起因して同給電ブラシ84よりも遅く第1の陰極側給電ブラシ83がセグメント48から離間することが抑制されている。従って、全体が第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84よりも電気抵抗値の低い第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83で火花が発生することが抑制される。よって、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の全体が第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84よりも電気抵抗値が低い構成であっても、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の寿命の低下を抑制することができる。
(3)第2の陽極側給電ブラシ82は、当該第2の陽極側給電ブラシ82と同極の第1の陽極側給電ブラシ81よりもセグメント48から離間する時間が遅くなるように配置されている。同様に、第2の陰極側給電ブラシ84は、当該第2の陰極側給電ブラシ84と同極の第1の陰極側給電ブラシ83よりもセグメント48から離間する時間が遅くなるように配置されている。そのため、セグメント48から離間する時間が遅い第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84においてのみ該セグメント48から離間する時の火花が発生するようになる。従って、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84よりも電気抵抗値の低い第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83とセグメント48との間で火花が発生することが抑制されるため、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83の寿命の低下をより抑制することができる。また、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84は、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83よりも電気抵抗値が高いため、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84がセグメント48から離間する時に大きな火花が発生することが抑制される。従って、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84においてのみセグメント48から離間する時の火花が発生する構成であっても、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84の火花摩耗による寿命の低下を抑制することができる。
<第2実施形態>
以下、モータの第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成及び対応する構成に同一の符号を付してその説明を省略する。
図8に示すように、第1の陽極側給電ブラシ101及び第2の陽極側給電ブラシ102は、上記第1実施形態の第1の陽極側給電ブラシ81及び第2の陽極側給電ブラシ82に代えてモータに備えられるものである。また、第1の陰極側給電ブラシ103及び第2の陰極側給電ブラシ104は、上記第1実施形態の第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陰極側給電ブラシ84に代えてモータに備えられるものである。そして、第1の陽極側給電ブラシ101と第1の陰極側給電ブラシ103とが同じ外形形状をなし、第2の陽極側給電ブラシ102と第2の陰極側給電ブラシ104とが同じ外形形状をなしている。また、全ての給電ブラシ101〜104は、回転方向Rの幅D4が等しくなっている。図8には、代表して第1の陽極側給電ブラシ101についてのみ、回転方向Rの幅D4を図示している。本実施形態では、各給電ブラシ101〜104の回転方向Rの幅D4は、セグメント48の回転方向Rの幅D2よりも狭く、且つセグメント48の回転方向Rの幅D2の半分の幅よりも広い値となっている。
第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103は、回転方向Rに電気抵抗値が一定(即ち、電気抵抗値が変化しない構成)となっている。また、第2の陽極側給電ブラシ102及び第2の陰極側給電ブラシ104は、回転方向Rに電気抵抗値が一定(即ち、電気抵抗値が変化しない構成)となっている。そして、第2の陽極側給電ブラシ102及び第2の陰極側給電ブラシ104は、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103よりも電気抵抗値が高い。即ち、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103は、その全体が、第2の陽極側給電ブラシ102及び第2の陰極側給電ブラシ104よりも電気抵抗値の低い低抵抗部92となっている。
そして、第2の陽極側給電ブラシ102は、第2の陰極側給電ブラシ104から回転方向Rに角度θだけずれた位置に配置されている。また、第1の陰極側給電ブラシ103は、第2の陽極側給電ブラシ102から回転方向Rに角度(θ−α2)だけずれた位置、即ち、第2の陰極側給電ブラシ104から回転方向Rに角度(2θ−α2)だけずれた位置に配置されている。更に、第1の陽極側給電ブラシ101は、第1の陰極側給電ブラシ103から回転方向Rに角度θだけずれた位置、即ち、第2の陽極側給電ブラシ102から回転方向Rに角度(2θ−α2)だけずれた位置に配置されている。そして、第1の陽極側給電ブラシ101と第2の陰極側給電ブラシ104とは回転方向Rに角度(θ+α2)だけずれている。なお、本実施形態では、角度θは90°である。また、角度α2は予め設定される角度である。
また、陽極の2つの給電ブラシ64は、第1の陽極側給電ブラシ101における回転方向Rの後方側の端部が、セグメント48における回転方向Rの後方側の端部に位置する時に、第2の陽極側給電ブラシ102における回転方向Rの前方側の端部が、セグメント48における回転方向Rの前方側の端部に位置するように配置されている。同様に、陰極の2つの給電ブラシ64は、第1の陰極側給電ブラシ103における回転方向Rの後方側の端部が、セグメント48における回転方向Rの後方側の端部に位置する時に、第2の陰極側給電ブラシ104における回転方向Rの前方側の端部が、セグメント48における回転方向Rの前方側の端部に位置するように配置されている。例えば、図8に示すように、第1の陽極側給電ブラシ101の回転方向Rの後方側の端部が番号「2」のセグメント48の回転方向Rの後方側の端部に位置する時に、第2の陽極側給電ブラシ102の回転方向の前方側の端部が番号「10」のセグメント48の回転方向Rの前方側の端部に位置する。そして、第2の陽極側給電ブラシ102が番号「10」のセグメント48のみに接触している場合、第1の陽極側給電ブラシ101は番号「10」のセグメント48と短絡された番号「2」のセグメント48のみに接触する。また、第1の陰極側給電ブラシ103の回転方向Rの後方側の端部が番号「6」のセグメント48の回転方向Rの後方側の端部に位置する時に、第2の陰極側給電ブラシ104の回転方向Rの前方側の端部が番号「14」のセグメント48の回転方向Rの前方側の端部に位置する。そして、第2の陰極側給電ブラシ104が番号「14」のセグメント48のみに接触している場合、第1の陰極側給電ブラシ103は番号「14」のセグメント48と短絡された番号「6」のセグメント48のみに接触する。
4つの給電ブラシ101〜104の回転方向Rの配置位置及び幅が上記のように構成されることにより、第2の陽極側給電ブラシ102及び第2の陰極側給電ブラシ104の整流終了時間(セグメント48から離間する時間)が、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103の整流終了時間よりも所定時間だけ遅くなる。なお、この場合、上記したように、同極の第1の陽極側給電ブラシ101及び第2の陽極側給電ブラシ102は、短絡部材51により短絡されたセグメント48にそれぞれ接触し、同極の第1の陰極側給電ブラシ103及び第2の陰極側給電ブラシ104は、短絡部材51により短絡されたセグメント48にそれぞれ接触する。そのため、各給電ブラシ101〜104は、同一のコイル44を整流するようになっている。そして、第1の陽極側給電ブラシ101及び第1の陰極側給電ブラシ103に対して第2の陽極側給電ブラシ102及び第2の陰極側給電ブラシ104の整流終了時間が所定時間だけ遅くなるため、各セグメント48から離間する時の火花は、高抵抗の第2の陽極側給電ブラシ102及び第2の陰極側給電ブラシ104においてのみ発生するようになる。
また、図8及び図9に示すように、第2の陽極側給電ブラシ102の後端面102b(整流子45に接触する先端面102aと反対側の端面)、及び第2の陰極側給電ブラシ104の後端面104b(整流子45に接触する先端面104aと反対側の端面)は、付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの前方側に向けるように傾斜している。なお、第2の陽極側給電ブラシ102と第2の陰極側給電ブラシ104とは外形形状が同じであるため、以下、第2の陽極側給電ブラシ102の形状についてのみ説明をして、第2の陰極側給電ブラシ104の形状の説明を省略する。
第2の陽極側給電ブラシ102における回転方向Rの両側面102c,102dは、互いに平行をなしている。そして、第2の陽極側給電ブラシ102は、回転軸42(図1参照)の軸方向から見て当該両側面102c,102dが整流子45の直径方向と平行をなすように配置されている。なお、第2の陽極側給電ブラシ102を内側に保持したブラシ保持部63において、回転方向Rに対向する一対の内側面63a,63bは、互いの間の間隔が第2の陽極側給電ブラシ82における回転方向Rの幅よりも若干広くなっている。そして、ブラシ保持部63の内側では、第2の陽極側給電ブラシ102の側面102cとブラシ保持部63の内側面63aとが回転方向Rに対向し、第2の陽極側給電ブラシ102の側面102dとブラシ保持部63の内側面63bとが回転方向Rに対向している。
そして、第2の陽極側給電ブラシ102の後端面102bは、第2の陽極側給電ブラシ102における回転方向Rの前方側の側面102cから後方側の側面102dに向かうにつれて整流子45の外周面に近づくように傾斜した平面状をなしている。第2の陽極側給電ブラシ102を整流子45に向けて付勢する付勢部材65は、この後端面102bを整流子45に向けて付勢している。第2の陽極側給電ブラシ102を付勢する付勢部材65がこのような後端面102bを整流子45に向けて付勢することにより、同付勢部材65の付勢力Fのベクトルは回転方向Rの前方側を向く。即ち、付勢力Fのベクトルは、第2の陽極側給電ブラシ102における回転方向Rの中央を通り回転方向Rと直交する直線L2よりも回転方向Rの前方側を向く。
次に、本実施形態の作用について説明する。
第2の陽極側給電ブラシ102の後端面102b、及び第2の陰極側給電ブラシ104の後端面104bは、付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの前方側に向けるように傾斜している。そのため、図9に示すように、第2の陽極側給電ブラシ102の後端面102bを整流子45に向けて付勢部材65が付勢すると、回転方向Rに沿って第2の陽極側給電ブラシ102を回転方向Rの前方側に押圧する分力Faが生じる。そして、第2の陽極側給電ブラシ102は、この分力Faによって回転方向Rの前方側に押圧されることにより、同第2の陽極側給電ブラシ102における回転方向Rの前方側の側面102cをブラシ保持部63における回転方向Rの前方側の内側面63aに押し付けた状態となる。なお、第2の陽極側給電ブラシ102は、ブラシ保持部63における回転方向Rの前方側の内側面63aに案内されながら、回転方向Rと直交する方向(第2の陽極側給電ブラシ102の後端から先端に向かう方向)に移動可能である。また、付勢部材65の付勢力Fには、回転方向Rと直交する方向の分力Fbも生じるため、この分力Fbによって第2の陽極側給電ブラシ102は整流子45の外周面(セグメント48)に押し付けられる。これらのことから、第2の陽極側給電ブラシ102における回転方向Rの前方側の端部、即ちセグメント48から離間する端部を、安定してセグメント48に接触させることができる。
なお、第2の陽極側給電ブラシ102と第2の陰極側給電ブラシ104とは外形形状が同じであるため、第2の陰極側給電ブラシ104についても同様の作用が得られる。
本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(3)と同様の効果を得ることができる。
<第3実施形態>
以下、モータの第3実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成及び対応する構成に同一の符号を付してその説明を省略する。
図10に示すように、本実施形態のモータは、上記第1実施形態の第1の陽極側給電ブラシ81に代えて第1の陽極側給電ブラシ111を備えるとともに、上記第1実施形態の第1の陰極側給電ブラシ83に代えて第1の陰極側給電ブラシ113を備えている。第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113は、回転方向Rの幅が、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84における回転方向Rの幅と等しい。即ち、本実施形態では、全ての給電ブラシ82,84,111,113の回転方向Rの幅が等しく、セグメント48における回転方向Rの幅と等しい幅になっている。また、これらの給電ブラシ82,84,111,113は、回転方向Rに等角度間隔(本実施形態では90°間隔)に配置されている。
第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113は、回転方向Rに電気抵抗値が変化するように構成されている。詳しくは、第1の陽極側給電ブラシ111は、第1の陽極側給電ブラシ111における回転方向Rの前方側の端部(図10において左側の端部)を含む部分に設けられた高抵抗部91と、第1の陽極側給電ブラシ111における高抵抗部91以外の部分に設けられ高抵抗部91よりも電気抵抗値の低い低抵抗部92とから構成されている。同様に、第1の陰極側給電ブラシ113は、第1の陰極側給電ブラシ113における回転方向Rの前方側の端部を含む部分に設けられた高抵抗部91と、第1の陰極側給電ブラシ113における高抵抗部91以外の部分に設けられ高抵抗部91よりも電気抵抗値の低い低抵抗部92とから構成されている。なお、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の各々における高抵抗部91は、本実施形態では、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84と電気抵抗値が等しい。
第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の各々において、高抵抗部91と低抵抗部92とは回転方向Rに並んでいる。また、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113は、電気抵抗値の異なる高抵抗部91及び低抵抗部92(2つのブラシ層)が回転方向Rに重なった多層構造をなしている(即ち積層ブラシである)。また、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の各々において、高抵抗部91及び低抵抗部92は、回転方向Rの幅が等しく形成されている。即ち、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の各々における高抵抗部91が占める体積の割合は2分の1である。そして、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の先端面においては、回転方向Rの前方側の半分の領域を高抵抗部91が占め、回転方向Rの後方側の半分の領域を低抵抗部92が占めている。更に、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113は、径方向と直交する断面形状が径方向に一定となっており、同断面においては、高抵抗部91及び低抵抗部92は共に同じ大きさの四角形状をなしている。また、高抵抗部91は、C(炭素)を主成分とした材料を焼成して形成されたものであり、低抵抗部92は、Cu(銅)とC(炭素)とを主成分とした材料を焼成して形成されたものである。
また、陽極の2つの給電ブラシ64は、第1の陽極側給電ブラシ111における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置する時に、第2の陽極側給電ブラシ82における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置するように配置されている。同様に、陰極の2つの給電ブラシ64は、第1の陰極側給電ブラシ113における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置する時に、第2の陰極側給電ブラシ84における回転方向Rの中央が、摺接中のセグメント48における回転方向Rの中央に位置するように配置されている。例えば、図10に示すように、第1の陽極側給電ブラシ111の回転方向Rの中央が番号「2」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置する時に、第2の陽極側給電ブラシ82の回転方向の中央が番号「10」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置する。そして、第1の陰極側給電ブラシ113の回転方向Rの中央が番号「6」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置する時に、第2の陰極側給電ブラシ84の回転方向Rの中央が番号「14」のセグメント48の回転方向Rの中央に位置する。また、全ての給電ブラシ64は、摺接中のセグメント48の隣のセグメント48に同時に接触するように配置されている。即ち、全ての給電ブラシ64は、新たにセグメント48に接触するタイミングが同じになるように配置されている。
上記した本実施形態によれば、上記第1実施形態の第2の陽極側給電ブラシ82の後端面82b及び第2の陰極側給電ブラシ84の後端面84bに関する作用と同様の作用に加えて、以下の作用を奏する。
本実施形態のモータにおいては、同極の第1の陽極側給電ブラシ111と第2の陽極側給電ブラシ82とは、同電位のセグメント48から離間する時間が同じである。更に、同極の第1の陰極側給電ブラシ113と第2の陰極側給電ブラシ84とは、同電位のセグメント48から離間する時間が同じである。そのため、全ての給電ブラシ82,84,111,113においてセグメント48から離間する時に火花が発生する可能性がある。給電ブラシ82,84,111,113が回転する整流子45のセグメント48から離間する時に火花が発生する場合には、火花は、給電ブラシ82,84,111,113における回転方向Rの前方側の端部で発生する。
そして、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113における回転方向Rの前方側の端部を含む部分に設けられた高抵抗部91と、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84とは、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の低抵抗部92よりも電気抵抗値が高い。即ち、何れの給電ブラシ82,84,111,113においても、回転方向Rの前方側の端部は、低抵抗部92よりも電気抵抗値が高くなっている。従って、各給電ブラシ82,84,111,113がセグメント48から離間するときに大きな火花が発生することが抑制される。
また、第2の陽極側給電ブラシ82におけるセグメント48に摺接する部分が欠けていたり同第2の陽極側給電ブラシ82ががたついたりして、第2の陽極側給電ブラシ82よりも第1の陽極側給電ブラシ111の方がセグメント48から離間するタイミングが遅くなる可能性がある。この場合においても、第1の陽極側給電ブラシ111における回転方向Rの前方側の端部は、電気抵抗値の高い高抵抗部91であるため、第1の陽極側給電ブラシ111の全体が低抵抗部92と同じ電気抵抗値である場合に比べて大きな火花の発生が抑制され、火花による摩耗が低減される。同様に、第2の陰極側給電ブラシ84におけるセグメント48に摺接する部分が欠けていたり同第2の陰極側給電ブラシ84ががたついたりして、第2の陰極側給電ブラシ84よりも第1の陰極側給電ブラシ113の方がセグメント48から離間するタイミングが遅くなる可能性がある。この場合においても、第1の陰極側給電ブラシ113における回転方向Rの前方側の端部は、電気抵抗値の高い高抵抗部91であるため、第1の陰極側給電ブラシ113の全体が低抵抗部92と同じ電気抵抗値である場合に比べて大きな火花の発生が抑制され、火花による摩耗が低減される。
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)回転する整流子45のセグメント48から各給電ブラシ82,84,111,113が離間する時に火花が発生する場合には、火花は、各給電ブラシ82,84,111,113における回転方向Rの前方側の端部、即ちセグメント48から離間する端部で発生する。そして、第2の陽極側給電ブラシ82の後端面82b及び第2の陰極側給電ブラシ84の後端面84bは、付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの前方側に向けるように傾斜している。そのため、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84は、付勢部材65の付勢力F(分力Fa)によってブラシ保持部63に対して回転方向Rの前方側に押し付けられることになる。これにより、整流子45の回転時に第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84の各々における回転方向Rの前方側の端部ががたつくことが抑制される。従って、第2の陽極側給電ブラシ82のがたつきに起因して第2の陽極側給電ブラシ82よりも遅く第1の陽極側給電ブラシ111がセグメント48から離間することを抑制することができる。また、第2の陰極側給電ブラシ84のがたつきに起因して第2の陰極側給電ブラシ84よりも遅く第1の陰極側給電ブラシ113がセグメント48から離間することを抑制することができる。その結果、複数の給電ブラシ64のうち、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84に比べて電気抵抗値の低い低抵抗部92を有する第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113で火花が発生することを抑制することができる。そして、ひいては、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84比べて電気抵抗値の低い低抵抗部92を有する第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の寿命の低下を抑制することができる。
(2)陽極の第1の陽極側給電ブラシ111と第2の陽極側給電ブラシ82とは、回転方向Rの幅が等しいとともに、摺接中のセグメント48の隣のセグメント48に同時に接触する。従って、第1の陽極側給電ブラシ111と第2の陽極側給電ブラシ82とは、セグメント48から離間する時間が同じとなる。同様に、陰極の第1の陰極側給電ブラシ113と第2の陰極側給電ブラシ84とは、回転方向Rの幅が等しいとともに、摺接中のセグメント48の隣のセグメント48に同時に接触する。従って、第1の陰極側給電ブラシ83と第2の陰極側給電ブラシ84とは、セグメント48から離間する時間が同じとなる。そして、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84よりも電気抵抗値の低い低抵抗部92を有する第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113は、セグメント48から離間する側の端部である回転方向Rの前方側の端部に低抵抗部92よりも電気抵抗値の高い高抵抗部91を有する。そのため、第1の陽極側給電ブラシ81及び第1の陰極側給電ブラシ83がセグメント48から離間するときに大きな火花が発生することが抑制されている。従って、低抵抗部92を有する第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113と、低抵抗部92よりも電気抵抗値の高い第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84とが同じタイミングでセグメント48から離間する構成としても、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の火花摩耗による寿命の低下を抑制することができる。
(3)第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の低抵抗部92は、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84よりも電気抵抗値が低い。そのため、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113における電気的な損失が大きくなることを抑制することができる。従って、全ての給電ブラシ64が高抵抗の給電ブラシで構成される場合に比べて、モータの出力の低下を抑制することができる。
(4)全ての給電ブラシ64が、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113のように回転方向Rに電気抵抗値が変化する給電ブラシであるわけではない。そのため、全ての給電ブラシが整流子の回転方向に電気抵抗値が変化するものである場合に比べて、給電ブラシ64の製造が煩雑となることや、給電ブラシ64の製造コストが高くなることを抑制することができる。
<第4実施形態>
以下、モータの第4実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成及び対応する構成に同一の符号を付してその説明を省略する。
図11に示すように、本実施形態の第1の陽極側給電ブラシ121は、上記第1実施形態の第1の陽極側給電ブラシ81の後端部の形状を変更したものである。また、本実施形態の第1の陰極側給電ブラシ123は、上記第1実施形態の第1の陰極側給電ブラシ83の後端部の形状を変更したものである。
図11及び図12に示すように、第1の陽極側給電ブラシ121の後端面121b(整流子45に接触する先端面121aと反対側の端面)、及び第1の陰極側給電ブラシ123の後端面123b(整流子45に接触する先端面123aと反対側の端面)は、付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの前方側に向けるように傾斜している。なお、第1の陽極側給電ブラシ121と第1の陰極側給電ブラシ123とは外形形状が同じであるため、以下、第1の陽極側給電ブラシ121の形状についてのみ説明をして、第1の陰極側給電ブラシ123の形状の説明を省略する。
第1の陽極側給電ブラシ121における回転方向Rの両側面121c,121dは、互いに平行をなしている。そして、第1の陽極側給電ブラシ121は、回転軸42(図1参照)の軸方向から見て当該両側面121c,121dが整流子45の直径方向と平行をなすように配置されている。なお、第1の陽極側給電ブラシ121を内側に保持したブラシ保持部63において、回転方向Rに対向する一対の内側面63a,63bは、互いの間の間隔が第1の陽極側給電ブラシ121における回転方向Rの幅よりも若干広くなっている。そして、ブラシ保持部63の内側では、第1の陽極側給電ブラシ121の側面121cとブラシ保持部63の内側面63aとが回転方向Rに対向し、第1の陽極側給電ブラシ121の側面121dとブラシ保持部63の内側面63bとが回転方向Rに対向している。
第1の陽極側給電ブラシ121の後端面121bは、第1の陽極側給電ブラシ121における回転方向Rの前方側の側面121cから後方側の側面121dに向かうにつれて整流子45の外周面に近づくように傾斜した平面状をなしている。そして、第1の陽極側給電ブラシ121を整流子45に向けて付勢する付勢部材65は、この後端面121bを整流子45に向けて付勢している。第1の陽極側給電ブラシ121を付勢する付勢部材65がこのような後端面121bを整流子45に向けて付勢することにより、同付勢部材65の付勢力Fのベクトルは回転方向Rの前方側を向く。即ち、付勢力Fのベクトルは、第1の陽極側給電ブラシ121における回転方向Rの中央を通り回転方向Rと直交する直線L3よりも回転方向Rの前方側を向く。
上記した本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用に加えて、以下の作用を奏する。
第1の陽極側給電ブラシ121の後端面121b、及び第1の陰極側給電ブラシ123の後端面123bは、付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの前方側に向けるように傾斜している。そのため、図12に示すように、第1の陽極側給電ブラシ121の後端面121bを整流子45に向けて付勢部材65が付勢すると、回転方向Rに沿って第1の陽極側給電ブラシ121を回転方向Rの前方側に押圧する分力Faが生じる。そして、第1の陽極側給電ブラシ121は、この分力Faによって回転方向Rの前方側に押圧されることにより、同第1の陽極側給電ブラシ121における回転方向Rの前方側の側面121cをブラシ保持部63における回転方向Rの前方側の内側面63aに押し付けた状態となる。なお、第1の陽極側給電ブラシ121は、ブラシ保持部63における回転方向Rの前方側の内側面63aに案内されながら、回転方向Rと直交する方向(第1の陽極側給電ブラシ121の後端から先端に向かう方向)に移動可能である。また、付勢部材65の付勢力Fには、回転方向Rと直交する方向の分力Fbも生じるため、この分力Fbによって第1の陽極側給電ブラシ121は整流子45の外周面(セグメント48)に押し付けられる。これらのことから、第1の陽極側給電ブラシ121における回転方向Rの前方側の端部、即ちセグメント48から離間する端部を、安定してセグメント48に接触させることができる。
なお、第1の陽極側給電ブラシ121と第1の陰極側給電ブラシ123とは外形形状が同じであるため、第1の陰極側給電ブラシ123についても同様の作用が得られる。
本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(3)と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(1)全ての給電ブラシ64の後端面、即ち、第1の陽極側給電ブラシ121の後端面121b、第2の陽極側給電ブラシ82の後端面82b、第1の陰極側給電ブラシ123の後端面123b、及び第2の陰極側給電ブラシ84の後端面84bは、それぞれ付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの前方側に向けるように傾斜している。そのため、全ての給電ブラシ82,84,121,123は、付勢部材65の付勢力Fによってブラシ保持部63に対して回転方向Rの前方側に押し付けられることになる。従って、整流子45の回転時に全ての給電ブラシ82,84,121,123ががたつくことが抑制される。よって、第2の陽極側給電ブラシ82よりも遅く第1の陽極側給電ブラシ121がセグメント48から離間すること、並びに、第2の陰極側給電ブラシ84よりも遅く第1の陰極側給電ブラシ123がセグメント48から離間することをより抑制することができる。その結果、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84に比べて電気抵抗値の低い第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123で火花が発生することをより抑制することができる。また、各給電ブラシ82,84,121,123のがたつきに起因する騒音の発生を抑制することができる。
(2)第1の陽極側給電ブラシ121の後端面121b及び第1の陰極側給電ブラシ123の後端面123bは、付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの前方側に向けるように傾斜している。そのため、セグメント48に対して第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84よりも大きな電流を流すことができる第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123は、付勢部材65の付勢力Fによってブラシ保持部63に対して回転方向Rの前方側に押し付けられることになる。このようにすると、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123の各々における回転方向Rの後方側の端部(即ちセグメント48から離間する端部)が、セグメント48に対してより安定して接触する。従って、第1の陽極側給電ブラシ121及び第1の陰極側給電ブラシ123ががたつくことを更に抑制できる。
<第5実施形態>
以下、モータの第5実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態及び上記第4実施形態と同一の構成及び対応する構成に同一の符号を付してその説明を省略する。
図13に示すように、本実施形態の第1の陽極側給電ブラシ131は、上記第4実施形態の第1の陽極側給電ブラシ121の後端部の形状を変更したものである。また、本実施形態の第1の陰極側給電ブラシ133は、上記第4実施形態の第1の陰極側給電ブラシ123の後端部の形状を変更したものである。
図13及び図14に示すように、第1の陽極側給電ブラシ131の後端面131b(整流子45に接触する先端面121aと反対側の端面)、及び第1の陰極側給電ブラシ133の後端面133b(整流子45に接触する先端面123aと反対側の端面)は、付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの後方側に向けるように傾斜している。なお、第1の陽極側給電ブラシ131と第1の陰極側給電ブラシ133とは外形形状が同じであるため、以下、第1の陽極側給電ブラシ131の形状についてのみ説明をして、第1の陰極側給電ブラシ133の形状の説明を省略する。
第1の陽極側給電ブラシ131の後端面131bは、第1の陽極側給電ブラシ131における回転方向Rの後方側の側面121dから前方側の側面121cに向かうにつれて整流子45の外周面に近づくように傾斜した平面状をなしている。そして、第1の陽極側給電ブラシ131を整流子45に向けて付勢する付勢部材65は、この後端面131bを整流子45に向けて付勢している。第1の陽極側給電ブラシ131を付勢する付勢部材65がこのような後端面131bを整流子45に向けて付勢することにより、同付勢部材65の付勢力Fのベクトルは回転方向Rの後方側を向く。即ち、付勢力Fのベクトルは、第1の陽極側給電ブラシ131における回転方向Rの中央を通り回転方向Rと直交する直線L3よりも回転方向Rの後方側を向く。
上記した本実施形によれば、上記第1実施形態と同様の作用に加えて、以下の作用を奏する。
第1の陽極側給電ブラシ131の後端面131b、及び第1の陰極側給電ブラシ133の後端面133bは、付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの後方側に向けるように傾斜している。そのため、図14に示すように、第1の陽極側給電ブラシ131の後端面131bを整流子45に向けて付勢部材65が付勢すると、回転方向Rに沿って第1の陽極側給電ブラシ131を回転方向Rの後方側に押圧する分力Fcが生じる。そして、第1の陽極側給電ブラシ131は、この分力Fcによって回転方向Rの後方側に押圧されることにより、同第1の陽極側給電ブラシ131における回転方向Rの後方側の側面121dをブラシ保持部63における回転方向Rの後方側の内側面63bに押し付けた状態となる。なお、第1の陽極側給電ブラシ131は、ブラシ保持部63における回転方向Rの後方側の内側面63bに案内されながら、回転方向Rと直交する方向(第1の陽極側給電ブラシ131の後端から先端に向かう方向)に移動可能である。また、付勢部材65の付勢力Fには、回転方向Rと直交する方向の分力Fbも生じるため、この分力Fbによって第1の陽極側給電ブラシ131は整流子45の外周面(セグメント48)に押し付けられる。これらのことから、第1の陽極側給電ブラシ131における回転方向Rの後方側の端部、即ち切り替わるセグメント48に接触し始める端部を、安定してセグメント48に接触させることができる。
なお、第1の陽極側給電ブラシ131と第1の陰極側給電ブラシ133とは外形形状が同じであるため、第1の陰極側給電ブラシ133についても同様の作用が得られる。
本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(3)と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(1)第1の陽極側給電ブラシ131の後端面131b、及び第1の陰極側給電ブラシ133の後端面133bは、それぞれ付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの後方側に向けるように傾斜している。そのため、これら給電ブラシ131,133は、付勢部材65の付勢力Fによってブラシ保持部63に対して回転方向Rの後方側に押し付けられる。また、第2の陽極側給電ブラシ82の後端面82b、及び第2の陰極側給電ブラシ84の後端面84bは、それぞれ付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの前方側に向けるように傾斜している。そのため、これら給電ブラシ82,84は、付勢部材65の付勢力Fによってブラシ保持部63に対して回転方向Rの前方側に押し付けられる。従って、整流子45の回転時に全ての給電ブラシ82,84,131,133ががたつくことが抑制される。よって、第2の陽極側給電ブラシ82よりも遅く第1の陽極側給電ブラシ131がセグメント48から離間すること、並びに、第2の陰極側給電ブラシ84よりも遅く第1の陰極側給電ブラシ133がセグメント48から離間することをより抑制することができる。その結果、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84に比べて電気抵抗値の低い第1の陽極側給電ブラシ131及び第1の陰極側給電ブラシ133で火花が発生することをより抑制することができる。また、各給電ブラシ82,84,131,133のがたつきに起因する騒音の発生を抑制することができる。
(2)第1の陽極側給電ブラシ131の後端面131b、及び第1の陰極側給電ブラシ133の後端面133bは、付勢部材65による付勢力Fのベクトルを回転方向Rの後方側に向けるように傾斜している。そのため、セグメント48に対して第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84よりも大きな電流を流すことができる第1の陽極側給電ブラシ131及び第1の陰極側給電ブラシ133は、付勢部材65の付勢力によってブラシ保持部63に対して回転方向Rの後方側に押し付けられることになる。このようにすると、第1の陽極側給電ブラシ131及び第1の陰極側給電ブラシ133における回転方向Rの後方側の端部(即ち接触するセグメント48が切り替わる時に新しくセグメントに接触し始める端部)とセグメント48との接触状態を安定させることができる。従って、第1の陽極側給電ブラシ131及び第1の陰極側給電ブラシ133ががたつくことを更に抑制できる。その結果、第1の陽極側給電ブラシ131及び第1の陰極側給電ブラシ133における回転方向Rの後方側の端部とセグメント48との間の接触抵抗を低く抑えることができる。従って、第1の陽極側給電ブラシ131及び第1の陰極側給電ブラシ133の摩耗をより抑制することができ、ひいては、第1の陽極側給電ブラシ131及び第1の陰極側給電ブラシ133の寿命の低下をより抑制することができる。
なお、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の各々における高抵抗部91が占める体積の割合は、上記第3実施形態の割合に限らず、適宜変更してもよい。
・上記第3実施形態では、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84と高抵抗部91とは電気抵抗値が等しい。しかしながら、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84と高抵抗部91とは、電気抵抗値が異なっていてもよい。例えば、高抵抗部91は、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84よりも電気抵抗値が高くてもよい。この場合、例えば、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84と高抵抗部91とは、焼成時間を異ならせることにより電気抵抗値を異なる値とする。このようにすると、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84は、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の高抵抗部91よりも電気抵抗値が低い。従って、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84と高抵抗部91との電気抵抗値が等しい場合に比べて、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84にも電流が流れるようにできる。同時に、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113において高抵抗部91よりも電気抵抗値の低い低抵抗部92に大電流が流れることを抑制することができる。従って、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の寿命の低下を更に抑制することができる。また、この場合においても、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84は、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113の低抵抗部92よりも電気抵抗値が高い。そのため、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84がセグメント48から離間するときに同第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84において大きな火花が発生することは抑制される。
・上記第3実施形態では、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113は、高抵抗部91と低抵抗部92との2つのブラシ層が回転方向Rに重なった2層の積層構造をなしている。しかしながら、各給電ブラシ111,113を構成するブラシ層の数は、これに限らない。例えば、第1の陽極側給電ブラシ111及び第1の陰極側給電ブラシ113は、回転方向Rの両端部にそれぞれ設けられた2つの高抵抗部91と当該2つの高抵抗部91の間に設けられた1つの低抵抗部92との3つのブラシ層からなるものであってもよい。
・上記第3実施形態では、高抵抗部91は、C(炭素)を主成分とした材料を焼成して形成されたものであり、低抵抗部92は、Cu(銅)とC(炭素)とを主成分とした材料を焼成して形成されたものである。しかしながら、高抵抗部91を構成する材料及び低抵抗部92を構成する材料は、これに限らない。高抵抗部91及び低抵抗部92は、高抵抗部91よりも低抵抗部92の方が電気抵抗値が低くなるように形成されたものであればよい。なお、低抵抗部92は、第2の陽極側給電ブラシ82及び第2の陰極側給電ブラシ84よりも電気抵抗値が低くなるように形成される。
・上記第1実施形態では、モータ31は、陽極の2つの給電ブラシ64(即ち第1の陽極側給電ブラシ81及び第2の陽極側給電ブラシ82)と、陰極の2つの給電ブラシ64(即ち第1の陰極側給電ブラシ83及び第2の陰極側給電ブラシ84)との合計4個の給電ブラシを備えている。しかしながら、モータ31に備えられる給電ブラシ64の数はこれに限らず、陽極及び陰極の少なくとも一方の極が複数であればよい。このことは、第2〜第5実施形態のモータにおいても同様である。例えば、上記第1実施形態のモータ31において、第2の陰極側給電ブラシ84を省略した構成としてもよい。このようにすると、給電ブラシ64の数が減少されるため、モータの製造コストを低減させることができる。また、部品点数が低減されるため、給電ブラシ64の組み付けが容易となる。
・上記第1、第2、第4及び第5実施形態では、第1の陽極側給電ブラシ81,101,121,131及び第1の陰極側給電ブラシ83,103,123,133は、Cu(銅)とC(炭素)とを主成分とした材料を焼成して形成されたものである。また、第2の陽極側給電ブラシ82,102及び第2の陰極側給電ブラシ84、104は、C(炭素)を主成分とした材料を焼成して形成されたものである。しかしながら、第1の陽極側給電ブラシ81,101,121,131、第1の陰極側給電ブラシ83,103,123,133、第2の陽極側給電ブラシ82,102及び第2の陰極側給電ブラシ84、104を構成する材料は、これに限らない。第1の陽極側給電ブラシ81,101,121,131及び第2の陽極側給電ブラシ82,102は、第2の陽極側給電ブラシ82,102よりも第1の陽極側給電ブラシ81,101,121,131の電気抵抗値が低くなるように形成されたものであればよい。同様に、第1の陰極側給電ブラシ83,103,123,133及び第2の陰極側給電ブラシ84、104は、第2の陰極側給電ブラシ84、104よりも第1の陰極側給電ブラシ83,103,123,133の電気抵抗値が低くなるように形成されたものであればよい。
・第1の陽極側給電ブラシ81,101,111,121,131、第1の陰極側給電ブラシ83,103,113,123,133、第2の陽極側給電ブラシ82,102及び第2の陰極側給電ブラシ84,104の回転方向Rの配置位置及び回転方向Rの幅は、上記各実施形態の配置位置及び幅に限らず、適宜変更してもよい。ただし、同極の第1の陽極側給電ブラシ81,101,111,121,131と第2の陽極側給電ブラシ82,102とは、セグメント48から離間する時間が同じ、若しくは第2の陽極側給電ブラシ82,102の方がセグメント48から離間する時間が遅くなるように構成する。同様に、同極の第1の陰極側給電ブラシ83,103,113,123,133と第2の陰極側給電ブラシ84,104とは、セグメント48から離間する時間が同じ、若しくは第2の陰極側給電ブラシ84,104の方がセグメント48から離間する時間が遅くなるように構成する。
・上記各実施形態の付勢部材65は、圧縮コイルばねである。しかしながら、付勢部材65は、各給電ブラシ64を整流子45側に付勢できるものであれば、圧縮コイルばねに限らない。例えば、付勢部材65は、捩りコイルばねであってもよい。
・各給電ブラシ64を保持するブラシ保持部63の構成は、上記実施形態の構成に限らない。例えば、ブラシ保持部63は、樹脂材料よりなり、ベース部材62と一体に設けられたものであってもよい。
・上記各実施形態において、セグメント48の数、コイル44の数、及び磁石33の磁極の数は適宜変更してもよい。
・上記各実施形態及び上記各変更例を組み合わせて実施してもよい。
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)請求項2に記載のモータにおいて、前記第1の給電ブラシの後端面は、前記付勢部材による付勢力のベクトルを前記整流子の回転方向の前方側に向けるように傾斜していることを特徴とするモータ。
この構成によれば、セグメントに対して第2の給電ブラシよりも大きな電流を流すことができる第1の給電ブラシは、付勢部材の付勢力によってブラシ保持部に対して整流子の回転方向の前方側に押し付けられることになる。このようにすると、第1の給電ブラシにおける整流子の回転方向の後方側の端部(即ちセグメントから離間する端部)が、セグメントに対してより安定して接触する。従って、第1の給電ブラシががたつくことを更に抑制できる。
(ロ)請求項1乃至請求項3、及び前記(イ)の何れか1項に記載のモータにおいて、前記第1の給電ブラシは、前記整流子の回転方向の全部が低抵抗部であり、前記整流子の回転方向に電気抵抗値が一定であることを特徴とするモータ。
この構成によれば、第1の給電ブラシは、整流子の回転方向の全部が低抵抗部であり、整流子の回転方向に電気抵抗値が一定であるため、同第1の給電ブラシの製造が容易である。そして、このような第1の給電ブラシを備えたモータであっても、第2の給電ブラシのがたつきに起因して第2の給電ブラシよりも遅く第1の給電ブラシがセグメントから離間することが抑制されているため、全体が第2の給電ブラシよりも電気抵抗値の低い第1の給電ブラシで火花が発生することが抑制される。よって、第1の給電ブラシの全体が第2の給電ブラシよりも電気抵抗値が低い構成であっても、第1の給電ブラシの寿命の低下を抑制することができる。